<ミッションと長期ビジョン>
企業を取り巻く環境はさまざま変化しておりますが、中でも「気候変動への対応と海洋環境の保全」「資源の持続可能な調達」「健康課題の解決」「多様な人財が活躍できる社会の実現」は、当社が特に取り組むべき重要な社会課題と認識しております。このような課題に対応するべく、当社はミッション(存在意義)をあらためて定義した上で、長期ビジョン「人にも地球にもやさしい食を世界にお届けするリーディングカンパニー」として「2030年のありたい姿」を明確にしました。

当社がこれまで110余年かけて培った資源アクセス力、研究開発力、生産技術、品質保証力、世界各国に張り巡らせたグローバルリンクス・ローカルリンクスで構成される*バリューチェーンの強みと特長を活かし、「心と体を豊かにする新しい食」、「社会課題を解決する新しい食」を提供してまいります。
*「バリューチェーンの強みと特長」の詳細は「統合報告書2023」P.23~32をご覧ください。
https://www.nissui.co.jp/ir/download/integrated_report/2023_integrated_report_a3all.pdf
<長期ビジョン「2030年のありたい姿」>
人にも地球にもやさしい食を世界にお届けするリーディングカンパニー 「Good Foods 2030」

長期ビジョン「Good Foods 2030」の達成に向け、マルチステークホルダーへ配慮しながら持続可能な社会への価値を創造する“サステナビリティ経営”を推進するとともに、ROIC活用により成長分野へ経営資源を集中する“事業ポートフォリオマネジメント”を強化し、企業価値向上に努めます。
海外マーケットでの伸長、養殖事業・ファインケミカル事業の成長と差別化を加速し、2030年には、海外所在地売上高比率を50%、売上高1兆円、営業利益500億円を稼げる企業を目指します。


<中期経営計画と6つの基本戦略>
2030年の長期ビジョンを実現するため、当社は2022年度~2024年度までの3ヶ年を対象とする中期経営計画「Good Foods Recipe1」を策定し、以下6つの基本戦略で取り組んでいます。

<中期経営計画における投資と財務戦略>
成長と財務安全性の両立を図り、株主還元は配当性向30%以上を目指します。

(基本戦略の進捗状況)
<設備投資計画の進捗状況>
資源アクセスの強化や海外事業などの成長分野に積極的に投資します。

<マテリアリティ>
ニッスイグループでは、2016年度に特定したマテリアリティ(重要課題)に基づきサステナビリティ経営への進化に取り組んできましたが、外部環境の複雑化に対応すべく、2023年度においてマテリアリティの見直しを行いました。見直しにあたっては、マテリアリティの位置づけを「ニッスイグループの持続的な成長と中長期的な企業価値向上(ミッション・ビジョンの実現)に向けて優先的に取り組むべき経営上の重要課題」としています。2024年度は、長期ビジョン「Good Foods 2030」の達成に向けて、マテリアリティをベースに次期中期経営計画における戦略の策定やKPIの設定を進めます。また、見直したマテリアリティについては、それぞれ対応する推進組織を設置し、執行役員以上が責任者を務め経営視点で取り組むことで、持続可能な社会に向けて価値を創造するサステナビリティ経営を推進していきます。
マテリアリティの特定プロセス


注:マテリアリティおよびマテリアリティ特定プロセスの詳細については、サステナビリティサイトをご参照ください。
https://nissui.disclosure.site/ja/themes/85
(1)サステナビリティ全般
<ニッスイグループのサステナビリティ>
ニッスイグループは創業以来、様々な自然の恵みを活用して事業を行ってきました。創業の理念、ミッションに掲げるサステナブルな事業活動は私たちの重要な使命です。私たちはニッスイの5つの遺伝子(お客様を大切にする、現場主義、グローバル、イノベーション、使命感)、サステナビリティ行動宣言に基づき、ステークホルダーの皆さまとの連携・協働のもと、事業を通じて重要課題(マテリアリティ)に取り組み、社会課題の解決を目指します。

<ガバナンス>
当社グループでは、持続的な成長と企業価値向上の実現に向けてサステナビリティ経営を進めており、その推進組織として、全執行役員と社外取締役で構成し、CEOを委員長とするサステナビリティ委員会を設置しています。サステナビリティを巡る各課題については、サステナビリティ委員会傘下のテーマ別の8つの部会において、委員長が指名した部会長(執行役員)と、部会長により任命されたメンバーで部門横断的に対応を行っています。また、年6回開催するサステナビリティ委員会では、各部会からの報告や提案を受けてサステナビリティを巡る課題に係る具体的な目標や方針、施策を検討しており、取締役会への定期的な報告を通じて、取締役会からの意見や助言をその取り組みに反映しています。
また2030年の長期ビジョン、経営計画達成に向けて役員報酬体系を2022年度より改定し、業務執行取締役の変動報酬部分の評価指標に、水産物の持続可能性や自社グループ拠点のCO2排出量削減等のサステナビリティ目標の達成度を加えています。

<戦略>
長期ビジョンでは、環境価値、社会価値、人財価値、経済価値の4つの価値創出を目指しており、サステナビリティ経営をビジョン達成のための柱の一つとして位置付けています。サステナビリティ課題をリスクと機会の両面から捉え、環境価値、社会価値、人財価値の創出に取り組むことで非財務資本を強化し、経済価値の創出につなげます。
<リスク管理>
当社グループは、事業活動の妨げとなるリスクを未然に防止し損失発生を最小限に抑え、経営資源の保全と事業の継続に最善を尽くすため、「リスクマネジメント方針」を制定しています。全執行役員で構成され、社長が委員長を務めるリスクマネジメント委員会がリスクマネジメントシステムの構築と運用と定期的な取締役会への報告を行っております。サステナビリティ課題を含む重要リスクについては、サステナビリティ委員会を中心に対応しています。リスクの詳細は「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご覧ください。
<指標と目標>
2022年4月に策定した長期ビジョン、中期経営計画では、環境価値、社会価値、人財価値および経済価値の創出に向け、サステナビリティ目標として7つのKPIを定めました。サステナビリティ委員会により各指標の進捗状況がモニタリングされ、結果に基づき取り組みに反映しています。
(注)対象範囲はニッスイ個別
(2)テーマ別課題
≪人的資本への対応≫
① 人的資本の考え方
2022年、ミッション・長期ビジョンを再定義するとともに、社名を日本水産株式会社から株式会社ニッスイに変更、「健やかな生活とサステナブルな未来を実現する新しい“食”の創造」をミッションとして掲げ、2030年の長期ビジョンを“人にも地球にもやさしい食を世界にお届けするリーディングカンパニー”としました。
長期ビジョンでは、社会・人財・環境価値を生み出し経済価値に繋げる事を目指しており、最もキーとなる要素を人財価値と位置づけ、「新たな挑戦を通して食のイノベーション・価値創造を実現できる人財」こそビジョンを実現できると考えています。

② 推進体制
これまで取締役会、執行役員会の議案は、事業の成長戦略やサステナビリティ、ガバナンスを中心としたものでしたが、2023年より経営戦略と連動した「人財戦略」を個別の議題として掲げ議論をスタートしました。さらに2024年度には、社長を委員長とした「人財育成委員会」を設置、指名委員会と連動しながら、体系的にCEOまでのサクセッションについても議論することとしました。

③ 経営戦略と人財戦略
ニッスイグループは長期ビジョン「Good Foods 2030」において「サステナビリティ経営の推進」と「事業ポートフォリオマネジメント強化」を両軸に企業価値向上を目指しています。事業ポートフォリオマネジメント強化では、持続的に成長が見込まれる領域に経営資源を集中する事としており、「海外事業」「ファインケミカル事業」「国内外養殖事業」を成長事業領域と定めています。
成長事業には人的資本を含む経営資源を投入していく必要がありますが、中長期視点でそれぞれの事業領域に必要となる人財の素養・能力の深い議論までには至らず、足下の不足感の共有と対策の議論に留まっております。2024年度は次期中期経営計画に向けマテリアリティをベースに改めて経営戦略・事業ポートフォリオを検討していることから、この議論と合わせメリハリの効いた人財戦略に移行してまいります。
④ 人財戦略の基本的な考え方
ニッスイグループでは全世界で多くの社員が働いており、様々な価値観を持った社員同士の知・経験がイノベーションの創出、「新しい食」の創造へ繋がっていくと考え、ニッスイでは性別・国籍・学歴など属性によらない「バックキャスティング力、自立・自律業務遂行力、多様な価値観を受け入れられる力」を持つ人財の確保に努めています。
働き方や価値観の多様化の中においても、社員一人ひとりがありたい姿を描き、そこに向けて自らの意志で自律的に仕事に取り組み、自己成長を続けることが、継続的な成長・強い組織づくりに繋がると考えているからです。自立した人財とは、独力で問題解決し意思決定し実行できる人財であり、自律した人財とは環境や状況に合わせ自分をコントロールでき、それに向けて自分を高めていく人財で、これらには「変革の意志を持って、誠実真摯に仕事に取り組み、自己の成長とチームの成長を同時に成し遂げていくこと」に情熱を持ち続けられる事を求めております。人財育成に当たっては、この「求める人財像」を社員一人ひとりが念頭に置き、仕事を通じて成長することができる様に育成を進めています。
<コース別概要>
「バックキャスティング力、自立・自律業務遂行力、多様な価値観を受け入れられる力」を育てるための、ニッスイのコース制度は下図のとおりの体系で構成しています。

人財戦略として重視しているポイントは、次の通りです。
(イ)多様な人財の確保と育成
知・経験のダイバーシティを大切な資産と考え、属性によらない多様な人財の確保に努めています。個性や強みを発揮できる様、ダイバーシティ部会を設置、その中で女性活躍と障害者雇用について具体的な施策を実行しています。また、同質性の高い組織の改革、専門性の高い業務の拡大に対応するため経験者の採用を増やすとともに、新卒・経験者を問わず一人ひとりが活躍できるコース別人事制度の運用と組織風土醸成に努めています。
(ロ)サクセッション
ニッスイのみならず、グループ各社の役員まで含めた経営人財の一貫したサクセッションの議論が不足しておりこれを早急に進めます。長期視点で経営に必要な素養を見極め、人財を確保・育成する具体的な施策とモニタリングを行う仕組みを構築します。これまでは、課長以上の組織責任者に求める人財要件の定義、対象者の人財プールづくりと育成プラン作成、子会社等での経営経験や外部研修派遣等の施策にとどまっていました。グループ会社の役員まで含めた経営人財の一貫したサクセッションの議論が不足しておりこれを早急に進めます。長期視点で経営に必要な素養を見極め、人財を確保・育成する具体的な施策とモニタリングを行う仕組みを構築します。これまでは、課長以上の組織責任者に求める人財要件の定義、対象者の人財プールづくりと育成プラン作成、子会社等での経営経験や外部研修派遣等の施策にとどまっていました。
(ハ)グローバル人財
ニッスイグループは全世界で様々な社員が働いており、様々な価値観を持った社員同士の知・経験の多様性が「新しい食」の創造へ繋がっていくと考えております。特に世界中のいかなる複雑・不確実なビジネス環境においても、相手と良好な関係を築き、背景や環境を問わず力を発揮できる人をグローバル人財と位置付け、国籍を問わずその確保と育成に努めています。
(ニ)専門性の高い人財
R&D、サステナビリティ、ガバナンス、DXなどの専門性の高い人財の確保は、これまで以上に経営の重要なファクターとなっております。2024年度に導入した社外で通用する高い専門性を持つ人財を処遇する職種(ネクストエキスパート職)を弾力的に運用し、専門性の高い人財の確保と育成を急ぎます。R&D、サステナビリティ、ガバナンス、DXなどの専門性の高い人財の確保は、これまで以上に経営の重要なファクターとなっております。2024年度に導入した社外で通用する高い専門性を持つ人財を処遇する職種(ネクストエキスパート職)を弾力的に運用し、専門性の高い人財の確保と育成を急ぎます。
(ホ)現場マネジメント人財
成長する事業の持続性を担保するには、現場をマネジメントする人財とグループ各社にある技術・技能を適切に活用・伝承する人財の確保と育成が不可欠です。
ラインマネジメントを託す人財(プロフェッショナル職)については、高い視座と幅広い視野を身に着けるよう、OFF-JTとOJT(部門を超えた異動経験付与等)の組み合わせで人財育成を図っています。また、社内の専門家として技術・技能等を武器に業務に従事する人財(スペシャリスト職)は、その専門性を適切に評価するアセスメントの運営で優秀な人財の定着と成長を図っています。グループ各社においても事業展開に必要な人財の確保に努めており、入社後は各社によるOJTだけでなく、ニッスイ主催の階層別教育も実施しています。
⑤ 具体的な取り組み
(イ)-1 多様な人財確保
ニッスイグループは各社の経営の独自性を尊重する経営スタイルで、人財についてもこれまで各社それぞれが独自に確保・育成をしてきております。しかしながら、今後事業を成長させていくためには、ニッスイが人財の確保と育成をリードすることがポイントであると考えております。
ニッスイでは、性別や国籍、学歴など、属性によらない「バックキャスティング力、自立・自律業務遂行力、多様な価値観を受け入れられる力」を持つ人財の確保に努めています。
採用に当たっては、AI選考ツールも活用し受験者のポテンシャルを見極める多面的な評価方法を取り入れるほか、様々な経験を持つ経験者採用を増やし組織を活性化しています。現在では新卒と経験者の年間採用数は概ね同レベルで、2024年3月には正社員に占める経験者が32%を超えるだけでなく、幹部職員においても既に経験者が約25%を占めており、同質性の強かった組織から脱却しつつあります。また、退職者に対する「カムバック制度」も設けており、退職した社員が再び活躍できる門戸も整備し、他での経験を当社で生かしてもらうことを期待しています。
グループ各社における人財確保については、2024年度より合同企業説明会を開催、母集団形成に努めるとともに、採用担当者連絡会を通して採用手法や各社課題感および人財情報の共有を始めました。
(イ)-2 女性活躍推進
ニッスイグループで多様性の指標のひとつである女性活躍推進は優先的に取り組んでおり、ニッスイは2030年までに女性管理職比率を20%まで向上することを目指しています。2021年1月からは「30% Club Japan」に参画し、女性の採用および登用に関する数値目標を定め、社内制度の整備を進めながら女性がより一層活躍できる風土の醸成に取り組んでいます。
近年、ニッスイでは採用者に占める女性の比率を50%程度まで高めてきており、管理職の母数となる女性職員比率は向上してきているものの、女性職員比率は20%程度にとどまっており、なかなか高まらないことが課題となっています。また、育児休業や子の看護休暇の取得期間や取得率に男女差があるなど、当社においても他社と同様、依然として育児期の女性への負担が大きいことも分かりました。
一方、社内のキャリア意向調査においては、マネジメントを目指す女性職員63%が更に上位の役割を担うべく、早期に昇格試験に挑戦したいと申告しており、キャリア意欲が向上してきています。そのため、2023年度は女性職員に対するスキルアップや管理職および本人に対する無意識バイアスのコントロールに向けた取組み等に加え、多様な働き方を受け入れる組織風土作りを進めるため、男性育児休職取得推進をスタートしました。グループ各社においても、育児や介護、病気療養等様々な事情を抱える社員が増加していることを踏まえ、今後は誰もが能力を最大限発揮し、主体的にキャリアアップできる組織風土作りを推進していきます。
<男性育児休職取得率及び日数の推移>
(イ)-3 障害者雇用
多様な個人が能力を発揮しやすい環境を整備し、その活躍に報いることで更なる成長を促し働く人の幸福につながる状態を目指し、障害者雇用に取り組んでいます。一人ひとりの特性や強みを活かしていくため、営業や工場を含めた各部門と協働し合理的配慮の提供をはじめ多面的なサポートを行い、安心して働き活躍できる環境づくりに取り組んできました。この結果、2024年4月現在の障害者雇用率は法定を超える2.90%に達することができました。今後は、障害者が活躍する部門の拡大に加え、ニッスイグループで障害者雇用を通した多様性の理解・受容への経験値向上を目指し、施策を展開してまいります。
(ロ)サクセッション
2024年度8月より社長を委員長として、取締役、指名委員会の事務局である経営企画担当執行役員、人事担当執行役員の8名で構成する「人財育成委員会」を設置します。指名委員会の議論とリンクしながら、ニッスイのみならず、グループ各社の役員まで含めた経営人財の一貫したサクセッションの議論を開始します。10年単位の長期的なビジョンをふまえた事業ごとの経営人財に求められる素養と行動を見極めるとともに、必要なスキル経験を再整備のうえ、外部からの採用も含めた人財の確保、育成する具体的な施策とモニタリングを行う仕組みを構築、実行してまいります。
(ハ)グローバル人財
海外展開の加速を実現するためには、世界中のいかなる複雑・不確実なビジネス環境においても、相手と良好な関係を築き、背景や環境を問わず力を発揮できる人財は必須です。国際志向があり一定以上の語学力がある人財について、スピーキグテスト等で把握するとともに、各部署における国際業務を可視化しOFF-JTとも組み合わせることで、より実務対応能力の高い人財の育成に取り組んでおります。また、国際業務のある海外持株会社への出向など配置の適正化を行うとともに、異文化理解の研修や語学研修などを実施しております。また、あわせて非日本国籍の登用も積極的に進めてまいります。

(ニ)専門性の高い人財
昨今、R&D、サステナビリティ、ガバナンス、DXなど高い専門性をもつ人財は経営の重要なファクターとなる一方、こうした人財の確保は年々難易度が高くなっております。この対応として、2023年に社外で認められる高い専門性を有する人財を処遇する「ネクストエキスパート職」を新設しました。新制度を活用し、R&D部門の様に中長期的スパンで成果を生み出す人財、サステナビリティやガバナンスなどの新しい社会課題の解決に取り組める人財、DX・IT といった最先端思考・技術を備えた人財を確保してまいります。また、既存の社員においても職種間の変更を柔軟にすることで、まだ見ぬ専門性を発掘するとともに、自律的なキャリア形成を支援していきます。
(ホ)成長事業のマネジメント人財
事業の持続性を担保するには、現場をマネジメントする人財と技術・技能を適切に活用・伝承する人財の確保と育成が不可欠で、具体的には、養殖事業においては、養殖の高度化を進めることで差別化を図り成長を目指していますが、実現のためには、養殖基盤研究、親魚管理や種苗生産、デジタルを活用した養殖生産管理、養殖成績を左右する餌料開発・魚病抑制、最終製品の製造、販売に至るまで、サプライチェーン全体で様々なスキル・経験を持った人財が必要です。また、現場でマネージする人財も必須です。ニッスイが中心となりR&Dから生産・販売に至る人財確保のため、地域行政や各漁協、教育機関とも連携し取り組んでいきます。
ファインケミカル事業については薬事・申請ノウハウに通じた人財が必要であるとともに、生産現場を支える製造技術・品質管理のノウハウを持った人財の確保が課題です。現場を支える専門性を有する人財は、採用だけでなく、R&D、生産工場、開発間での人財交流を通して製品情報・生産工程の理解を深めるなど専門性を高める取組みを進めてまいります。
⑥ 組織風土と環境整備について
多様な人財が自由闊達に意見を交わし議論できる、心理的安全性の高い組織風土はミッションに近づくための重要な要素ですが、同時に職場で得られるやりがいや達成感とともに、オフタイムも充実できることも大事だと考えています。ニッスイグループは、2017年一人ひとりが能力を十分に発揮できること、社員やその家族のQOLの向上を目指して心と体の健康をサポートする「健康経営宣言」をしています。「Good Foods 2030」においても、健康経営は人財価値向上の重要施策のひとつであるとし、以下の取組みを進めております。
(イ)従業員エンゲージメント
2021年からニッスイでは、従業員の思い入れや貢献意欲、愛着心等を測定するために従業員エンゲージメント調査を定期的に実施しています。職場ごとに対処すべき課題を抽出し、アクションプランを実行しています。2023年度は総合評価が11.6%アップした一方、「階層間の意思疎通」については引き続き課題となっており、更なる取組みを進めてまいります。なお、本調査は当社のみで実施しておりますが、今後はグループ各社にも展開し、自発的貢献意欲の向上と組織風土や職場状況を改善する施策を実施する計画です。
<エンゲージメントスコアの推移>

<課題に対する打ち手>
「階層間の意思疎通」の改善には、課長と課員を繋ぐ施策が必要と考え2023年に「360度多面診断」を実施しました。組織責任者のマネジメント行動やリーダーシップに関する取り組み姿勢を360度で評価、各自で信頼関係構築状況を確認とフォロー教育を実施しました。2024年度は課題のある「生産・品質管理」「ロジスティクス」の2部門の底上げを図る活動に注力しています。
(ロ)ブランドプロミス(ミッション)の社内浸透活動について
2022年度よりブランドプロミス(ミッション)の社内外浸透活動を行ってまいりました。2024年度は新たに「ミッションへの共感とブランディング」をマテリアリティと位置づけ「ブランディング部会」を立ち上げました。社内浸透活動をさらに強化してまいります。
社内浸透に関わる部会の活動は以下になります。
・従業員のやりがいや働きがいを高めることで、従業員エンゲージメントや企業競争力を向上させる。
・業務への主体的な取り組みや、枠にとらわれない新たな挑戦を後押しする風土を醸成し、個人と組織の成長を共に実現する
2023年度は「GOOD FOODS Talk」として、すべての職場でミッションへの理解、共感を深め、新しい食の創造に繋がる活動について、複数回の話し合いを行いました。2024年度は共感を自らの行動に繋げ全社の一体感を醸成してまいります。
また、グループ各社については、経営陣の集まる会議においてミッションを説明し、国内では「新しい食」についてディスカッションする場を設けるとともに、2023年度はグループの部署長以上を対象にミッションへの理解および自社での展開を検討するワークショップを実施致しました。今後はグループ社内報や7か国語で作成したブランドブックを発行するとともに、新たにBrandStoryBook動画の配信なども行うなど、海外も含めた浸透活動も検討してまいります。
(ハ)働きやすい環境づくり
<制度面>
ニッスイにおいては、目標取得率や取得推奨日を定め、休暇取得計画を作成し部署内で休暇予定を共有することで、業務の事前調整や休暇取得管理の一助としており、休暇取得率は向上しています。
また、コアタイムのないフレックスタイム、テレワーク、時間単位有給休暇などの柔軟な働き方に向けた制度改定をおこなうとともに、IT化や適正な人員配置などを通じた時間外勤務の削減を進めています。
(※1)従来、一定の事由により取得できる有給の特別休暇等を含めていましたが、理由を問わず自由に取得できる年次有給休暇の利用度合いを計る本来の趣旨に基づき、対象を年次有給休暇のみとし過去の実績から修正しています。
<オフィス環境>
オフィスの環境面では、社員同士のコミュニケーションを円滑にするため、部署単位で利用できるエリアを設定し、その範囲で座席を使用するグループアドレス席を設置する一方、コロナ終息後の出社率増加を想定し個人ブースやファミレス席など誰でも自由に使えるフリーアドレス席も設置しました。また、自宅近くや出張先等でも仕事が出来るよう契約のサテライトオフィスも活用し、働く拠点の選択肢を広げています。また、ペーパレス化等場所の制約を受けない働き方への取り組みも進める事で、活発なコミュニケーションを実現し、よりパフォーマンスが発揮できる環境を整備しています。
(ニ)健康経営
ニッスイグループは、一人ひとりが能力を十分に発揮できることと、社員やその家族のQOLの向上を目指して心と体の健康をサポートする「健康経営宣言」を2017年にしています。
ニッスイは2018年に水産・農林業で初めて「健康経営優良法人」に選ばれて以降、水産物由来の機能性成分を活かした施策で社員の健康づくりに注力していること等が評価され、2019年から5年連続で「健康経営銘柄」に選定されました。2023年度は課題となっているメンタルヘルスやがんへの対策を強化し、非正規社員も含めた相談体制の整備や疾病の早期発見に向けた新たな検査に対する費用補助等など、心身ともにさらなる健康増進を図っています。
ニッスイグループの健康経営については2022年にキックオフミーティングを行い、各社で実態に沿った年度健康目標を定めるとともに、達成のために各社間の協力・連携を推進することで成長を後押ししています。2023年度は取組の結果、7社が「健康経営優良法人2024」(うち1社は「ブライト500」)に選定されました。2024年度は連携をさらに強化し、好事例を共有展開して健康経営への取組を加速します。
⑦ 指標(KPI)
ニッスイにおける主な研修プログラムの体系は以下の通りです。人財の基本的な戦略である、①多様な人財の確保と育成、②サクセッション、③グローバル人財、④専門性の高い人財、⑤現場マネジメント人財の視点から研修内容と対象者を定めております。
また、人財戦略で掲げた取組みの進捗については以下の通りです。
(※1)採用数は現時点の計画を記載していることから、特に経験者については状況に応じ変動致します。
≪自然資本の持続可能性向上に向けた対応≫
当社グループのビジネスは自然資本に依存しており、様々な生態系サービスの恵みを受けて事業を行っていることから、自然資本の持続可能性が損なわれることは、大きなリスクであると認識しています。特に気候変動は当社グループをとりまく様々なリスクと関連しており、また、生物多様性も気候変動と相互に影響しあって、原材料調達などのリスクに大きく影響します。そのためこれらの環境課題に対して、統合的なアプローチと対応が重要であり、 リスクに対応することでレジリエンスを高め、成長機会につなげていくことが重要と考えています。
①気候変動への対応(TCFD提言への取組)
<ガバナンス>
気候変動問題については、CFOがプロジェクトオーナーを務める部門横断型プロジェクト「TCFD対応プロジェクト」において、リスク・機会の分析と財務インパクト対応策の検討を行っています。検討結果はサステナビリティ委員会での審議を経て取締役会に報告し、取締役会からの意見や助言を反映しています。CO2排出量削減などの気候変動緩和策については、サステナビリティ委員会傘下の環境部会がグループ全体の取り組みを推進しています。

<戦略>
連結売上高の95%以上を占める水産事業、食品事業、ファインケミカル事業を対象とし、TCFD提言に基づく気候変動のシナリオ分析を2つのシナリオで実施しました。気候変動リスクと機会の特定、財務インパクトの評価を行い、その対応策を検討しました。明確化された重要なリスクと機会に対して、対応策を講じることで、リスクの低減と機会の確実な獲得につなげ、気候変動に対してレジリエントな状態を目指します。
(イ)戦略におけるシナリオ分析の概要
TCFDの提言に従い、気候変動シナリオ分析を実施しました。分析対象は水産事業と食品事業、FC事業とし、バリューチェーン全体を幅広く分析しました。1.5℃/2℃および4℃の気温上昇時の世界を想定し、リスク・機会の抽出と2030年における財務インパクトの評価、および対応策を検討しました。
その結果、1.5℃/2℃シナリオでは炭素税の導入による操業コストが事業成長の阻害要因となり、積極的なGHG削減とともに生産活動の効率化に取り組み、新たな顧客需要を捉えることにより、事業成長につなげることが可能であることがわかりました。また、4℃シナリオでは自然災害の激甚化に伴う物理リスクが事業成長の阻害要因となり、養殖事業の高度化に取り組みこれらのリスクに対応することで収益への影響を最小化することが必要であることがわかりました。
1.5℃/2℃シナリオ
影響時期は、短期(3年以内)、中期(3-10年以内)、長期(10-20年程度)とした。
(注1)ICP:インターナルカーボンプライシング
(注2)LCA:ライフサイクルアセスメント
4℃シナリオ
影響時期は、短期(3年以内)、中期(3-10年以内)、長期(10-20年程度)とした。
(ロ)カーボンプライシングの影響
財務インパクトの中でも特に影響が大きかったカーボンプライシングについては、将来CO2排出量(Scope 1、2)を2030年売上予測に基づいて算出し、2℃シナリオ、4℃シナリオごとのIEAの予測(注1)による炭素価格を掛け合わせて運営コストの影響金額を算出しました。2030年目標であるCO2排出量を総量で30%削減することにより、グループ全体で2℃シナリオでは44.1億円、4℃シナリオでは17.6億円の削減につながることがわかりました。
炭素税:2℃シナリオ時 135ドル/t‐CO2、4℃シナリオ時 54ドル/t‐CO2と仮定、為替レートはいずれのシナリオも1ドル=118円と仮定
(注1)IEA World Energy Outlook 2022
(注2)対応策なし:Scope 1、2を対象とし、基準年度である2018年度と同様の原単位でCO2が排出されると仮定
(注3)対応策あり:Scope 1、2を対象とし、2030年目標を達成することでCO2排出量が2018年度から30%削減されると仮定
(ハ)天然水産資源(カタクチイワシ・スケソウダラ)の影響評価
調達量が多く重要な魚種であるカタクチイワシとスケソウダラについて、FAOのモデルを使用して2種類のシナリオで2030年、2050年の漁獲可能量の変化を評価しました。その結果、1.5℃シナリオにおいては両魚種ともに微減が予想されました。4℃シナリオにおいては、カタクチイワシは2030年、2050年ともに減少となり、スケソウダラは2030年は微増、2050年は増加が予想されました。2030年時点での漁獲可能量の変化率は大きくないため、財務への影響は軽微であることが確認されました。しかし、2050年の漁獲可能量の変化率は比較的大きいため、特に減少が予想されるカタクチイワシについては、対応策を確実に進めていく必要があります。
漁獲可能量の変化率 (%)

出所:FAO (国連食糧農業機関)「Impacts of climate change on fisheries and aquaculture(2018)」を参考に当社推計
(ニ)水リスクの評価
水リスク評価のグローバルスタンダードのうち、2021年度は世界自然保護基金(WWF)のWater Risk Filterを用いて国内の製造・物流拠点全体の評価を行いましたが、水リスク評価の際には拠点別の影響額を試算するために浸水深のデータが必要であることから、2022年度以降は分析粒度が細かくより精緻なデータ収集が可能である世界資源研究所(WRI)のAqueduct(アキダクト)を用いて、国内・海外の生産・物流拠点別に評価を行いました。
水害による生産中断に伴う機会損失については、各拠点の所在地に示されるAqueductの浸水深により拠点別に運転停止日数・在庫毀損率を特定し、財務影響金額を算定しました。財務へ影響は中程度であることを確認しました。また、水ストレス(渇水)については、最も高いリスクレベルに該当する拠点はありませんでしたが、日本、タイ、北米、南米の生産拠点の一部が、水ストレス下にある地域に所在していることがわかりました。今後は継続的に使用水の削減に取り組むとともに、水リスク評価方法の精緻化についても検討を進めていきます。
■Aqueductによる洪水リスク評価結果(拠点数)
■Aqueductによる渇水リスク評価結果(拠点数)と水使用量
(ホ)戦略への反映
シナリオ分析の結果を受けて、中期経営計画「Good Foods Recipe1」では、優先度の高い対応策から事業計画に反映し、戦略との整合を図っています。
<リスク管理>
当社グループでは、中長期的な経営戦略を見据えた重要リスクを特定するため、マテリアリティをリスクマネジメントの起点としています。2023年度に実施したマテリアリティの見直しに伴い、重要リスクについても見直しを行いました。特定した気候関連の重要リスクは以下の通りです。なお、マテリアリティの見直しに際しては、TCFDやTNFDの取り組みにおける「気候関連・自然関連のリスクと機会」の検討結果を反映させています。リスクの詳細は「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご覧ください。
気候変動に関連するリスク・機会の分析と対応策については、常務執行役員(CFO)がオーナーを務める部門横断型の「TCFD対応プロジェクト」が環境部会と連動して検討しています。
<指標と目標>
長期ビジョン「Good Foods 2030」において、2018年度比で、2030年にCO2排出量を総量で30%削減し、2050年までにカーボンニュートラルを実現することを掲げています。グループグローバルでの目標達成に向け、各事業所における省エネ施策の実施やエネルギー使用量の少ない高効率設備への更新、再生可能エネルギーの使用など、CO2削減計画を策定し、積極的に取り組んでいきます。
Scope 3についてはGHGプロトコルに整合した環境省のガイドラインに従い、15のカテゴリーに分け算定しました。今後はデータの精度向上を図り、排出量の多いカテゴリー1の削減方法の検討などを行い、当社グループにおけるCO2排出量の削減をさらに推進します。また、調達する天然水産物、プラスチック、フードロス、水などについても、持続可能な利用を実現するための目標と施策をそれぞれ掲げ、取り組みを推進していきます。
(イ)CO2排出量の推移

(ロ)目標
(注1)ODP:Ocean Disclosure Project。SFP(Sustainable Fisheries Partnership)が2015 年に設立した、シーフードの調達を自主的に開示するためのオンライン報告プラットフォーム。
②生物多様性への対応(TNFD提言への取組)
当社グループは生物多様性を守ることの重要性を考え、2014年に環境憲章を改訂し、行動方針に「生物多様性の保全」の推進をうたっています。当社グループの強みは、世界各地から水産物をはじめとした素材を調達できる資源アクセスであり、価値創造の源泉となっている一方で、事業活動を通じて自然資本に大きく依存し、また、影響を与えています。地球や海の恵みを受けて事業を営んでいることを常に心にとめ、バリューチェーンにおける生物多様性への依存と影響を把握し、その上で事業活動による負の影響の回避・低減に努めるとともに、復元・再生に取り組みます。
また、当社グループは、2023年9月にTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)フォーラムに加盟し、2023年12月にTNFD Adopterに登録しました。TNFD最終提言v1.0で推奨される開示推奨項目を、「ガバナンス」、「戦略」、「リスクと影響の管理」、「指標と目標」の4つの柱に沿って開示しています。
(注):TNFD提言への取り組みの詳細は、TNFDレポートをご参照ください。
https://nissui.disclosure.site/assets/pdf/89/2023_tnfd_ja.pdf
<ガバナンス>
自然資本・生物多様性に関連する取り組みは、「水産資源持続部会」、「サステナブル調達部会」、「海洋環境部会」、「プラスチック部会」、「環境部会」、「人権部会」の6部会を中心に対応しており、各部会では方針や戦略の立案・実行を行い、サステナビリティ委員会に報告しています。年6回開催されるサステナビリティ委員会では、各部会からの報告や提案を受けてサステナビリティを巡る課題に係る具体的な目標や方針、施策を検討しています。また、取締役会への定期的な報告を通じて、取締役会からの意見や助言をその取り組みに反映しています。

<戦略>
漁業と養殖における自然への依存と影響の関係を整理するため、LEAPアプローチ(注1)に沿って「依存と影響」の診断と「リスクと機会」の評価を行い、以下のように整理しました。なお、今回の評価では、バリューチェーン最上流における自然との接点である「漁業」および「養殖」を対象とし、外部ツール「ENCORE(注2)」を使用した一次評価を行った上で、当社グループの操業実態に合わせた二次評価(定性評価)を行いました。その結果、漁業では海域や水産資源などの海洋生態系サービスに大きく依存し、漁獲によって水産資源量や生物種に影響を与えていることが分かりました。養殖では、陸域・水域・海域の利用に加え、水温や水質などの生態系調整サービスに大きく依存している一方で、給餌による水質悪化など、養殖場水域の汚染により自然へ影響を与えていることが分かっています。
(注1)LEAPアプローチ:TNFDが開発した、自然関連のリスクと機会を評価するためのガイダンス。分析プロセスであるLocate、Evaluate、Assess、Prepareの頭文字をとったもの。
(注2)ENCORE:ビジネスセクターと生産プロセスごとの自然資本への依存と影響を評価するツール。

■リスクと機会の評価
<漁業>
自社にとってのリスクと機会
<養殖>
自社にとってのリスクと機会
<リスクと影響の管理>
当社グループでは、中長期的な経営戦略を見据えた重要リスクを特定するため、マテリアリティをリスクマネジメントの起点としています。2023年度に実施したマテリアリティの見直しに伴い、重要リスクについても見直しを行いました。特定した自然資本・生物多様性に関わる重要リスクは以下の通りです。なお、マテリアリティの見直しに際しては、TCFDやTNFDの取り組みにおける「気候関連・自然関連のリスクと機会」の検討結果を反映させています。リスクの詳細は「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご覧ください。
気候変動に関連するリスク・機会の分析と対応策については、常務執行役員(CFO)がオーナーを務める部門横断型の「TCFD対応プロジェクト」が環境部会と連動して検討しています。また、バリューチェーン上の自然資本関連のリスク・機会の分析と対応策については、水産資源持続部会、海洋環境部会、サステナブル調達部会、人権部会、において検討し、サステナビリティ委員会での議論の後に取締役会に報告され、取締役会から受けた意見や助言を施策に反映しています。
<指標と目標>
当社グループは、水産資源の持続性確保や海洋環境の保全を経営課題と位置付けて取り組んでおり、以下の指標と目標を用いて自然関連の依存・影響、リスク・機会を管理しています。
(注1)ODP:Ocean Disclosure Project。SFP(Sustainable Fisheries Partnership)が2015 年に設立した、シーフードの調達を自主的に開示するためのオンライン報告プラットフォーム。
(注2)GSSI:Global Sustainable Seafood Initiative。持続可能な水産物認証プログラムを検証する国際パートナーシップ。
(注3)RFMO:Regional fisheries management organizations。水産資源の保存及び持続可能な利用の実現を目指し、個別の条約に基づいて設置される国際機関。
(1)当社グループのリスクマネジメント
①リスクマネジメントの考え方
当社は、「リスクマネジメント規程」において、企業の存続に影響を与えると考えられる事象発生の不確実性を「リスク」、企業が経営を行っていく上で事業に関連する内外の様々なリスクを適切に関する活動を「リスクマネジメント」と定義しており、適切な「リスクマネジメント」の実行が経営の重要課題であると認識しています。
②リスクマネジメントの基本方針
当社グループは、水産物をはじめとする資源から様々な食品や医薬品原料などを製造し、世界の人々に対して供給することを使命としており、その責務を果たすべく安定した生産・販売の継続に努めています。そのような観点から、「リスクマネジメント規程」において、当社グループでは、事業活動の妨げとなるリスクの未然防止に努め、緊急時には人命尊重を第一に損失の発生を最小限に抑え、被災者支援など社会への配慮を行うとともに経営資源の保全と事業の継続に最善を尽くすことで、企業価値を維持・向上していくことをリスクマネジメントの基本方針として掲げています。
③リスクマネジメント体制
当社は、リスクマネジメントの実効性を高めるため、全社的リスクマネジメントシステムの構築とその維持・向上を任務とする、社長直轄の組織であるリスクマネジメント委員会を設置しています。同委員会は全執行役員によって構成され、社長が委員長を務め、リスクマネジメント担当執行役員は、取締役会へ定期的に活動報告をしています。
また2023年度からグループ全体のリスクマネジメント体制の再構築に着手しました。従来、リスクマネジメント委員会では、情報セキュリティ・倫理(コンプライアンス)・労務安全衛生・災害BCPといった重要なオペレーショナルリスクやハザードリスクを管理する4部会を傘下に置いていました。一方で、サステナビリティに関するリスクはサステナビリティ委員会、 品質に関するリスクは品質保証委員会が管理しており、また、その他の事業リスク等については執行役員会で議論されるなど、課題テーマごとのリスクマネジメント体制となっていました。
これを、グループ全体のリスクを適宜、的確に捉える新しい体制への見直しを図っています。具体的には、リスクマネジメント委員会・サステナビリティ委員会・品質保証委員会・執行役員会の事務局が連携して、重要リスク対応を全社グループ視点で一元管理する体制へ移行し、リスク対応に優先順位を付けて経営戦略に落とし込み、将来の成長の機会とリスクの的確なマネジメントを目指します。
新しいリスクマネジメント体制を踏まえ、リスクマネジメント委員会は全社重要リスクを一元的に把握・管理する統合リスク管理機能として、次の事項を審議・承認し、取締役会へ報告することで、全社的リスクマネジメントシステムの構築とその維持・向上の役割を果たしていきます。
(注1)重要リスク:当社のグループ経営において極めて重要度が高く優先的に対応すべきと判断したリスク
(注2)重要リスク管理組織:重要リスクごとに設置し、全社横断的なリスク対応計画の管理責任を負う組織
④リスクマネジメントプロセス
当社グループでは、新しいリスクマネジメント体制において、リスクマネジメントプロセスを年間のPDCAサイクルとして、リスクマネジメント活動を推進していきます。
中長期的な経営戦略を見据えた重要リスクを特定するため、マテリアリティをリスクマネジメントの起点としており、マテリアリティを見直すタイミングで、定期的に重要リスクの見直しを図っていきます。ただし大きな環境変化があった場合は、年度の進捗確認・評価で議論します。

⑤重要リスクの特定プロセス
当社グループは、中長期的に企業価値を維持・向上していくためには、政治・経済・社会・テクノロジーなどの外部環境の変化がもたらすリスクと機会に戦略的に対応することが重要と考えています。当社グループでは、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記述の通り、昨今の外部環境の変化を捉えたマテリアリティの見直しを行い、その過程でマテリアリティに関連する機会とリスクを抽出・分析し、中長期的な重要課題・事業戦略に重大な影響を及ぼすと認識するリスク項目を重要リスクとして特定しました。
また、プラスとマイナスの影響を持ち併せたリスクとマイナスの影響を主とするリスクの両方を統合管理するリスクマネジメント体制へ移行するにあたり、前者を経営戦略リスク、後者を経営基盤リスクの2つに分類して整理しています。

■重要リスクの特定プロセス

<「リスク項目の特定」と「リスク評価」について>
マテリアリティに関連するリスクを抽出・分析し、リスク属性で整理した結果、17のリスク項目を特定しました。その中から、中長期的な重要課題・事業戦略に及ぼす影響を評価し、極めて重大と判断した11の重要リスクは以下の通りです。
■リスクマネジメント推進体制図

(2)重要リスク
当社グループの戦略・事業その他を遂行する上でのリスクについて、投資家の判断に重大な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を記載しています。以下に記載したリスクは、当社グループの全てのリスクを網羅したものではなく、記載以外のリスクも存在し、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があります。なお、本文中における将来に関する事項は、別段の記載がない限り当年度末において当社が判断した内容に基づきます。
≪経営戦略リスク≫
(戦略1)人的資本への対応に関するリスク
<概要>当社グループの経営計画達成のために、事業創出・企画運営の能力のある経営を担う人財、海外国内を問わず活躍できるグローバル人財やプロフェッショナル人財、各生産拠点で成果を上げる人財の確保と育成が必要ですが、日本国内の少子高齢化と人口減少が進むにつれ、国内での優秀な人財確保が難しくなりつつあります。また、多様な人財が働けるダイバーシティ対応に後れをとると、必要な人財確保が困難になると想定されます。
<主な対応策>
当社グループでは、経営戦略と連動した人財戦略・人財育成を実行していますが、今後の事業展開にあたり、事業を牽引する人財育成が急務である一方、専門性をもって事業に貢献する人財の確保もまた重要であると考えており、社内の多様な価値観・キャリア志向尊重の観点から、外部にも通用する専門性の高い人財を育成・処遇しています。若手社員については、複数の事業・職種を経験することで、視座を高め、仕事の幅を広げ、変化対応力を高めることを狙いとした「育成ローテーション」を実施しています。将来海外で活躍するグローバル人財候補を育成する「グローバル人財育成制度」も2016年より展開しています。
従業員エンゲージメントは2021年度から測定しており、抽出された課題に対して個別にアクションプランを策定し実行することで組織風土の改善を促しています。また、ミッションの社内浸透を図るとともに、全社員が新しい“食”について考え、意見交換を行うことでエンゲージメントの向上につなげる取り組み「GOOD FOODS Talk」を2023年度より全職場で実施しています。今後は国内グループ会社にも展開し、各社において自発的貢献意欲の向上と組織風土や職場状況を改善する施策を実施していきます。
少子高齢化による労働人口の減少に伴う人手不足の深刻化への対応としては、多様な働き方の実現、労働環境・労働条件の改善などにより、選ばれる企業を目指しています。人財のリテンションと同時に、自動化や業務改善による省人化・省力化で生産性向上を図ることで、変化に対応できる人財ポートフォリオを構築していきます。
※詳細は「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)テーマ別課題 人的資本への対応」をご参照ください。
(戦略2)気候変動への対応に関するリスク
<概要>近年、世界中で気候変動が深刻化し、その影響はますます顕著になっています。温暖化による異常気象や自然災害は、当社グループの原材料調達、生産、物流、販売など様々な事業活動に深刻な影響を及ぼす可能性があります。また、気候変動に対応する新たな規制や市場動向の変化によって、当社のビジネスモデルが脅かされる可能性もあります。
<主な対応策>
当社グループでは、CO2排出量を2030年までに30%削減すること(2018年度対比・総量)をサステナビリティ目標として設定し、削減に取り組んでいます。生産拠点においては、省エネルギー推進や高効率機器への入替、燃料転換(電化、水素等)、魚油・廃油の燃料活用に加え、太陽光発電設備の導入や再生可能エネルギー由来電力への切り替えを積極的に進め、CO2排出量の削減に取り組みます。
気候変動に伴う漁獲量の減少や調達コストの増加に対しては、産地の分散化や調達ネットワークの構築、代替原料の開発などを進め、サプライチェーンのレジリエンスを高めます。
風水害の激甚化や渇水による事業停止リスクへの対応としては、BCPの見直しやハザードマップ等を活用した詳細なリスク評価を進め、拠点の移転や分散の検討も進めます。
※詳細は「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)テーマ別課題 自然資本の持続可能性向上に向けた対応 ①気候変動への対応(TCFD提言への取組)」をご参照ください。
(戦略3)生物多様性への対応に関するリスク
<概要>水産資源の減少により漁獲制限などの規制が強化され、当社グループの漁業や原材料調達に影響を及ぼす可能性があります。また水産業界全体に及んで水産物の流通量が減少した場合、水産物価格の上昇によって消費者の水産物離れを招くなど、水産物市場の縮小も考えられます。また、近年、日常生活に欠かせない飲食料品の容器包装や事業活動に使用されるプラスチックの海洋環境への影響が社会課題に取り上げられており、プラスチックごみによる海洋汚染は、生態系破壊や生物減少に繋がり、食品や水産事業での原料調達や食の安全性に影響を及ぼす可能性があります。
<主な対応策>
当社グループでは、2023年度よりTNFDのLEAPアプローチ(注1)を活用して自然への依存と影響を把握し、事業活動による負の影響の回避・軽減に努めています。
水産資源の持続的な利用については、持続可能な調達比率100%を2030年に向けたサステナビリティ目標として設定し、3年毎に「取り扱い水産物の資源状態調査」を実施しています。調査結果を分析し、調達の見直しや認証品の取り扱い比率向上などの対応策を講じることで、持続可能な水産物の利用に繋げています。
また、養殖においては、養殖漁場の沖合化や自動給餌制御システムの活用などにより、海洋環境への負荷軽減を図っています。また、天然資源に依存しない完全養殖の魚種拡大や、陸上養殖による海洋環境への負荷低減にも取り組んでいます。
海洋のサステナビリティ課題の解決に向けては一社のみでは解決できない課題も多く、SeaBOS(注2)などの業界イニシアティブを通じて、国内外のステークホルダーと連携した対応も行っています。
(注1)LEAPアプローチ : TNFDが開発した、自然関連のリスクと機会を評価するためのガイダンス。
分析プロセスであるLocate、Evaluate、Assess、Prepareの頭文字をとったもの。
(注2)SeaBOS : Seafood Business for Ocean Stewardship、持続的な水産ビジネスを目指すイニシアティブ。
※詳細は「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)テーマ別課題 自然資本の持続可能性向上に向けた対応 ②生物多様性への対応(TNFD提言への取り組み)をご参照ください。
(戦略4)サプライチェーンの環境・人権に関するリスク
<概要>企業活動のグローバル化の進展に伴い、サプライチェーンにおける企業活動が環境・人権に及ぼす負の影響が顕在化し、国際機関や国家による基準作りや法整備が進んでいます。
当社グループとしても、事業活動に関連して、人間が生まれながら当然に持つべき自由や権利を侵してしまう可能性がある、そのリスクをしっかり把握し、対処していく必要があります。サプライチェーン上で環境配慮や人権尊重に欠ける問題が生じた場合、調達が困難となるだけでなく、訴訟や行政罰、企業イメージの低下や不買運動に繋がる可能性もあります。
<主な対応策>
当社グループでは、サプライチェーンにおける潜在的な人権リスクを把握し、そのリスクに対処することで、ライツホルダー(企業が尊重すべき人権の主体)への負の影響を最小化することを重視しています。また、サプライチェーンのすべての段階における環境・人権リスクの低減には、サプライヤーとより強く協働する必要があり、「サプライヤーガイドライン」を通じて、特に強制労働や児童労働の禁止、IUU漁業(違法・無報告・無規制漁業)により漁獲された水産物および原材料を取り扱わないことを強く求めています。ニッスイ個別の一次サプライヤーに対しては、ガイドラインの配布と説明、 同意確認書の署名回収を進め、SAQ(自己評価アンケート)や対話によりガイドライン遵守状況を確認しています。今後は優先して確認すべき原材料や産地の特定を行い、より詳細な確認を進めていきます。
当社グループ内においては、年に一度の「外国人労働者の労働環境調査」を通じて、各事業所における外国人労働者の人権への負の影響の発生防止、軽減に努めています。救済の仕組みとして、当社グループ内の内部通報制度とは別に、外部のプラットフォームを活用して当社グループ内の外国人労働者を対象とした相談窓口を設置しています。また、サプライヤーなどその他のステークホルダーについても、同様に外部のプラットフォームを活用した相談窓口を設置しています。
(戦略5)海外事業展開に関するリスク
<概要>当社グループ主要戦略のひとつとして、海外展開の加速を目指し、水産・食品事業における北米・欧州での更なる拡大とアジアでの事業基盤構築、ファインケミカル事業における医薬品原料の海外展開を掲げていますが、事業展開する国において、経済環境および法規制の変更等の各国固有のリスクが顕在化した場合、事業の基本的戦略や収支に影響を与える可能性があります。
<主な対応策>
当社グループでは、2030年に海外所在地売上高比率50%を目指しており、グループガバナンスの取り組みをより一層強化しています。具体的には、当社グループの強みの一つに「グローバルリンクス」があり、資源アクセスから生産・販売に至る各機能を担う国内外の企業ネットワークで、各社が独自の強みを生かしつつシナジーを発揮していることが特色ですが、食文化や価値観は世界各地で異なります。意思決定の迅速性の観点などから、現地マネジメントに裁量を委ねるべきところは委ね、一方で、リスクコントロールや資本効率などの観点では、グローバルガバナンスを強化し、グリップを効かせることが重要と考えています。
ガバナンスの実効性を高めるためには、ルールづくりや管理・監査などのシステムを強化することはもちろんですが、それ以上に、「新しい“食”の創造」というミッションを共有し、志を同じくすることが重要であると考えています。そのため、ミッション・長期ビジョンの浸透に継続的に取り組んでいます。2023年度、グローバルリンクスのシンボルマークを刷新しました。新しいシンボルマークのもとでミッションを共有することで、グループの一体感を改めて刺激し求心力を高めています。
(戦略6)地政学的問題に関するリスク
<概要>近年、地政学的な要因が事業に影響を及ぼす可能性を考慮する必要性が高まっていると認識されています。例えば、台湾を巡る緊張の高まり、米国と中国の覇権争い、米中対立構造における日本の対応などの要因により、当社グループが事業を展開するエリアにおいて、台湾有事、輸出入制限、差別的な措置、商品不買運動、技術の分断、データに関する規制等の具体的なリスクが想定され、これらが顕在化した場合には、当社グループの中長期経営方針の実行や業績に多大な影響を及ぼす可能性があります。
<主な対応策>
当社グループでは、地政学的リスクに関する動向の情報収集と分析をもとに、リスクシナリオの策定及びリスクの把握を行い、その影響を低減するための適切な対策の検討を進めてまいります。既に、事業展開国・地域におけるカントリーリスクの調査、情報収集、評価をもとに、資源アクセス強化による調達先の分散の検討、複数拠点からの製品供給体制の構築を図っております。引き続き、情勢を注視しながら、事業活動に及ぼす影響の最小化に向けたサプライチェーンの強靭化に努めてまいります。
≪経営基盤リスク≫
(基盤1)製品の安全安心・品質に関するリスク
<概要>安全性や品質管理に対する消費者の関心が一層高まっているなか、国内外を問わず、安全、安心な商品を提供していくことが強く求められており、食を取り扱う当社グループでは、より一層の安全性、品質管理が求められていると認識しています。製品の品質事故や、表示偽装などの品質不正といったお客様の安全安心を脅かす事象が発生すると、当社グループ全体への信用が損なわれ、ブランド価値が大きく棄損し、事業継続に重大な影響を及ぼす可能性があります。
<主な対応策>
当社グループでは、品質保証憲章において、全ての役職員が同じ方向を向いて行動するよう、品質保証の理念をもとに品質方針・行動指針を制定し、その下に品質保証に関する各基準を定めています。
製商品の品質の安全性を確保する基準として、関連法規より厳格な当社独自の様々な「ニッスイ品質保証基準」を設けております。同基準には、HACCP(注1)の考え方を基本としたニッスイ工場認定基準を核に、使用水基準、薬剤管理基準、防虫管理基準、樹脂部品基準、原材料基準、包材基準、アレルギー物質のコンタミ防止基準、フードディフェンス基準などがあります。
ニッスイブランド商品はニッスイ工場認定基準により認定した工場のみで生産しており、認定後も品質保証部による定期的な監査を実施、工場指導を行っております。また工場間の情報共有や課題解決を目的とし、工場経営者会議、工場品質管理担当者会議などを定期的に開催しております。
また、生産工場におけるFSSC22000(注2)認証取得、原材料情報の一元管理体制の構築、グローバルでの検査体制の確立およびエクセレントラボによる検査精度の向上などの取り組みも行っております。引き続き、従業員への品質教育の強化に努め、食品安全文化の醸成を図ってまいります。
(注1)HACCP : Hazard Analysis and Critical Control Pointの略。食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因(ハザード)を把握した上で、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程の中で、それらの危害要因を除去または低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保する衛生管理の手法。国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の合同機関である食品規格(コーデックス) 委員会が発表し,各国にその採用を推奨しております。日本では2020年の食品衛生法の改正に伴いHACCPによる衛生管理が義務化されています。
(注2)FSSC22000 : Food Safety System Certificationの略。FSSC22000財団(Foundation FSSC22000)により開発された食品安全のためのマネジメントシステム規格。食品小売業界が中心の非営利団体、国際食品安全イニシアティブ(GFSI:Global Food Safety Initiative)により、食品安全の認証スキームの一つとして承認された規格です。
(基盤2)情報セキュリティに関するリスク
<概要>今後、生産・物流・販売でのシステム連携による効率化が進むにつれ、システム停止による事業活動への影響は増加すると考えられます。システム停止はハードウェア障害、ソフトウェアのバグや脆弱性、人為的ミスなど、様々な要因によって引き起こされますが、昨今では外部サイバー攻撃に代表される情報セキュリティリスクが最も懸念される要因となっています。また、情報セキュリティインシデントが生じた場合、システム停止による直接的な影響にとどまらず、信頼性が低下する他、損害賠償等の多額の費用負担発生など当社グループに重大な影響を及ぼす可能性があります。
<主な対応策>
グループ経営を進める中、当社グループ内でデータ漏洩、システム破壊が発生すると、グループ全体の事業に大きく影響を与える可能性があります。
そこで、当社国内グループでは、個人情報や経営、事業、研究などに関する重要な情報の漏洩・紛失を防止するため、「情報セキュリティ基本方針」などの規程やルールの徹底、システムの管理体制の強化、教育や訓練を含めた人的対策の領域において、各到達点を具体的に策定し、ニッスイグループIT部門会議を定期的に開催するなどの取り組みにより均質化を進めてまいりました。
また、2024年度からは海外グループを含む全グループに対し、サイバー攻撃を受けるリスクの高い社外公開サーバの脆弱性を検知するサービスを導入し、リスクを検知した場合、グループ会社に通知し是正措置を促す体制づくりを進めています。
引き続き、グループ会社の情報セキュリティ対策が有効に機能しているかを定期的に確認し、情報セキュリティ確保への継続的な改善・向上に努めてまいります。
(基盤3)コンプライアンスに関するリスク
<概要>当社グループは、日本および事業を行う海外における多岐にわたる法規制の適用を受けており、当社グループによる法令違反や社会規範に反した行動等により、法令による処罰・訴訟の提起・社会的制裁を受け、規制遵守対応のためのコストが大きく増加する可能性があります。また、お客様をはじめとしたステークホルダーの信頼を失うことにより、レピュテーションやブランド価値が大きく毀損し、当社グループの事業継続に重大な影響を及ぼす可能性があります。
<主な対応策>
当社グループでは、企業としての責任を果たすため、倫理憲章を制定し、国内外の法令および社内諸規程の遵守といった、コンプライアンスの徹底に取り組んでいます。
これら当社グループのコンプライアンス向上施策の策定・実施を行うため倫理部会を設置しています。また、法令等に違反している疑いのある行為について、当社グループの役職員が通報できる内部通報制度を設けており(社内外に窓口を設置)、倫理部会は内部通報制度の適正な運営も担っています。
内部通報制度の運営やコンプライアンスアンケートの実施等により、法令等に違反する疑いのある行為やコンプライアンス課題を早期発見し、関係する役員・部門と協働して、個別事象の是正はもちろん、必要な場合に再発防止策も含めて検討のうえ実施しています。また、コンプライアンス向上施策として、2020年度より、当社グループの子会社と個別にコンプライアンスワークショップを実施しコンプライアンスに関するありたい姿を共有、各社のコンプライアンス課題・施策について協議を行うことにより、当社グループ全体のコンプライアンス向上を推進しております。
(基盤4)大規模自然災害・事故に関するリスク
<概要>大規模な地震、津波、台風、洪水等の自然災害に関連するリスクは年々高まっており、国内外問わず、世界各地で大規模災害が現実のものとなっており、今後も中長期的に継続するとともに規模の拡大が懸念されています。このような大規模な自然災害の発生により、従業員の被害、工場損壊、設備故障及びユーティリティー(電気、ガス、水)遮断による製造停止、物流機能停止により原材料資材の調達及び製品出荷が不能となり、更に事務所施設の損壊、交通機関マヒによる従業員の通勤不能等も併せて、当社グループの事業継続に重大な影響を及ぼす可能性があります。
<主な対応策>
当社グループでは、大規模災害に直面した場合でも人命を第一とした上で、従業員・お客様・ステークホルダーにとって必要な支援・サービス等を継続するため、「災害BCP基本方針」の下に「災害BCP部会」で事業継続計画を推進しております。
近年、首都直下型や南海トラフなどの大型地震に関して高い確率で発生が予測されています。そこで、大規模災害の発生時に、災害対策本部が各拠点やグループ各社から迅速に情報を収集し、的確な判断・対応を取ることが出来るよう、安否確認や拠点被害報告等の情報収集システムの整備に取り組むと同時に、災害対策本部訓練も定期的に実施し、初動対応力強化を図っております。従業員に対しては、防災意識の向上と災害時の初動確認を目的とし、各システムの操作確認訓練や防災教育eラーニングを実施しております。
また、地球温暖化による気候変動は、台風・洪水などの自然災害の頻度を増加させ、激甚化させる傾向にあります。その対応として、自然災害リスク(地震・風水災等)の影響度定量評価の実施やオールハザード型BCP(注1)への見直しに向けた検討なども進めてまいります。
(注1) オールハザード型BCP : リスク(原因事象)を問わず、必要な経営資源が何らかの理由で被害を受けた場合の(結果事象)の影響に基づき、対応策を考える事業継続計画
(基盤5)労働安全衛生に関するリスク
<概要>企業価値向上に最も重要な要素は「人財」と考えていることから、労働環境の維持・向上が経営戦略に重要な影響を及ぼし、多様性を尊重して働きやすい職場環境の維持、向上に努める必要があると認識していますが、各施策が計画通りに進捗せず、労働災害や健康被害、ハラスメント等が発生した場合には、業務パフォーマンスの悪化や労災補償、ブランド価値の毀損が発生し、当社グループの事業継続に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
<主な対応策>
当社グループでは、年度毎に重点課題と活動計画を策定、労務安全衛生部会にて定期的な進捗報告を行い、取り組み内容を横展開することにより、管理体制の強化につなげています。
2024年度の主な取り組み内容は以下の通りです。
<労働安全>
安全の基本行動、リスクアセスメントとPDCA、共通ルールの整備を重点課題とし、以下を中心に取り組んでまいります。
1.新人教育、安全意識の再強化
(各事業所年間計画の重点項目に「新人の安全意識向上」を盛り込み、また指導を行うリーダーに対し必要な教育の再定義、対象明確化と受講推進を実施)
2.重篤災害対策への注力
(休業災害の削減に向けて重篤率の高い転落・転倒・激突等災害の対策を推進、転倒リスクチェックや指さし呼称、リスクアセスメントの実践者養成を強化)
3.各事業の安全レベル向上
(グループ共通の安全ルール制定に向けた情報収集)
<ハラスメント・労働時間>
法令等遵守に向けたHowを考える機会創出と情報のグループ内展開を重点課題とし、以下を中心に取り組んでまいります。
1.研修実施とグループ会社展開
(ハラスメントやメンタルヘルスについて、学ぶべき原理原則に加えて、NG行動の理解だけではなく「どうするべきか」の視点から内容を検討)
2.グループ人事労務会議含む各社連携強化
(労務問題全般について、個別に現地訪問も実施しながらヒアリング、指導、情報交換を実施)
(1)経営成績
当連結会計年度におけるわが国経済は、ウクライナ情勢の長期化に起因するインフレなどにより景気の先行きに不安感があるなか、新型コロナウイルスが5類感染症に移行したことや全国旅行支援などにより、人流やインバウンド需要の回復が進み経済環境に改善傾向が見られました。
世界経済(連結対象期間1-12月)につきましては、欧米とも高インフレや政策金利の引き上げが続くなか、米国は雇用環境の改善や個人消費の増加が続き景気は堅調に推移しました。一方、欧州では金融引き締めなどにより需要が減速しドイツを中心に景気が低調に推移しました。
当社および当社グループにつきましては、食品事業が国内外とも値上げ効果や原料価格の低下があり大幅な増益となりました。一方で、水産事業は国内漁業が堅調に推移したものの、国内外で主力の鮭鱒・すりみなどの市況下落の影響を受け減益となりました。
このような状況下、当連結会計年度の営業成績は、売上高は8,313億75百万円(前期比631億94百万円増)、営業利益は296億63百万円(前期比51億75百万円増)、経常利益は319億63百万円(前期比41億87百万円増)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は政策保有株式の売却等もあり238億50百万円(前期比26億17百万円増)となり、営業利益・親会社株主に帰属する当期純利益は過去最高益となりました。なお、前期には連結子会社の日水製薬株式会社(現・島津ダイアグノスティクス株式会社)の売却益を計上しています。
配当金につきましては、期末配当金を1株当たり14円と致しました。これにより実施済みの中間配当金1株当たり10円とあわせ、年間配当金は1株当たり24円(前期18円)となりました。
(単位:百万円)
セグメント別の経営成績は次のとおりであります。
(単位:百万円)
① 水産事業
水産事業につきましては、漁撈事業、養殖事業、加工・商事事業を営んでおります。
<当連結会計年度の概況>
水産事業では売上高は3,368億92百万円(前期比85億57百万円増)となり、営業利益は106億97百万円(前期比78億81百万円減)となりました。
漁撈事業:前期比で増収、増益
<日本>
・いわし、さばなどの漁獲が堅調に推移し増収・増益となりました。
養殖事業:前期比で増収、減益
<日本>
・銀鮭は養殖オペレーションの改善により斃死・成長遅れもなく水揚げ数量が増加し、養殖まぐろは販売価格が堅調に推移しました。養殖ぶりは昨年、市場への供給が少ないなかで完全養殖ぶりの強みを活かし好調でしたが、本年は供給が例年並みに戻ったことから価格が弱含みとなり反動減となりました。この結果、国内全体では増収・減益となりました。
<南米>
・生育環境改良による生残率の改善やトラウトの販売数量増加もあり増収となりましたが、年央から販売価格が前年を下回りはじめ、期末における在池魚評価(注1)の影響が大きく減益となりました。
加工・商事事業:前期比で増収、減益
<日本>
・外食・産業給食向け商品の値上げ効果に加え、えび・魚油・ミールなどの販売が好調に推移し増収となりましたが、鮭鱒・すりみ・輸入冷凍まぐろなど水産市況が調整局面に入ったことから、不採算在庫の早期処分等を進めました。第4四半期は増益となったものの通期では減益となりました。
<北米>
・北米加工は、すけそうだらの漁獲枠増加により生産数量が増加した反面、人件費などのコストアップに加え、供給増によるすりみ・フィレ価格の大幅下落により減益となりました。
<欧州>
・水産市況が調整局面に入り荷動きも低下したことに加え、すけそうだらなどの在庫評価減があり減益となりました。

② 食品事業
食品事業につきましては、加工事業およびチルド事業を営んでおります。
<当連結会計年度の概況>
食品事業では売上高は4,432億97百万円(前期比612億49百万円増)となり、営業利益は272億91百万円(前期比158億64百万円増)となりました。
加工事業:前期比で増収、増益
<日本>
・家庭用・業務用とも値上げや単品別収支管理を進めたことにより収益構造が改善し増収・増益となりました。業務用は人流回復の効果もあり外食・量販店惣菜向け冷凍食品の販売が数量・金額とも堅調に推移しましたが、家庭用は値上げに加えコンビニエンスストア・外食の回復影響などもあり、増収となったものの販売数量は減少しました。
<北米>
・家庭用・業務用ともに値上げ効果が継続していることに加え、家庭用はインフレ影響で市場が低迷するなかでシェアを拡大、業務用は原料価格低下もあり増収・増益となりました。
<欧州>
・英国の改善に加え、スペイン・イタリアなどへ販売エリア拡大を進めました。ドイツでは販売数量の減少が見られましたが、値上げ効果に加え原料価格が低下し始めたこともあり増収・増益となりました。
チルド事業:前期比で増収、増益
・人流回復でコンビニエンスストア向けおにぎり・サラダの販売が増加するなどベンダー事業が好調に推移しました。また、2023年7月から同業のベンダー事業を営む株式会社グルメデリカが連結子会社として加わったことも寄与し増収・増益となりました。

③ ファイン事業
ファイン事業につきましては、医薬原料、機能性原料(注2)および機能性食品(注3)などの生産・販売を行っております。
<当連結会計年度の概況>
ファイン事業では売上高は156億96百万円(前期比94億19百万円減)となり、営業損失は1億71百万円(前期比18億97百万円減)となりました。
・医薬原料の米国向け輸出の中断、巣ごもり需要が一巡したことによる通信販売の反動減に加え、2022年9月まで日水製薬株式会社(現・島津ダイアグノスティクス株式会社)が連結子会社であったこともあり、減収・減益が大きくなりました。

④ 物流事業
物流事業については、冷蔵倉庫事業、配送事業、通関事業を営んでおります。
<当連結会計年度の概況>
物流事業では売上高は152億13百万円(前期比2億74百万円減)となり、営業利益は15億36百万円(前期比57百万円減)となりました。
・人件費などのコストアップに対して作業の効率化・保管料の値上げを進めたことにより収益性は改善したものの、通関事業において取扱い数量が減少したことに加え、日水物流株式会社南港物流センター開業(2024年1月)のための費用が発生したこともあり減収・減益となりました。
(注1) 国際財務報告基準(IFRS)に基づき、海面養殖魚(在池魚)について出荷想定価格による評価を実施。
(注2) サプリメントの原料や乳児用粉ミルク等に添加する素材として使用されるEPA・DHAなど。
(注3) 主に通信販売している機能性表示食品「ごま豆乳仕立てのみんなのみかたDHA」、特定保健用食品「イマークS」などの健康食品。
生産、受注及び販売の実績は、次の通りであります。
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと次の通りであります。
(注) 1.金額は、販売価格によります。
② 受注実績
受注生産は行っておりません。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと次の通りであります。
(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
(単位:百万円)
資産合計は前連結会計年度末に比べて573億70百万円増の6,063億84百万円(10.4%増)となりました。
流動資産は208億17百万円増の3,251億67百万円(6.8%増)となりました。売上増加などにより受取手形及び売掛金が126億1百万円増加したこと、棚卸資産が81億90百万円増加したことが主な要因です。
固定資産は365億53百万円増の2,812億17百万円(14.9%増)となりました。新規連結化などにより有形固定資産が172億90百万円増加しました。
負債合計は前連結会計年度末に比べて207億2百万円増の3,490億80百万円(6.3%増)となりました。
流動負債は140億44百万円増の2,128億16百万円(7.1%増)となりました。支払手形及び買掛金が64億84百万円増加したことが主な要因です。
固定負債は66億57百万円増の1,362億63百万円(5.1%増)となりました。長期借入金が48億15百万円増加したことが主な要因です。
純資産合計は前連結会計年度末に比べて366億68百万円増の2,573億4百万円(16.6%増)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益を238億50百万円計上したこと、剰余金の配当を62億31百万円行ったこと、円安の影響により為替換算調整勘定が104億19百万円増加したこと、新規連結化などにより非支配株主持分が43億18百万円増加したことなどによります。
① キャッシュ・フローの状況
(単位:百万円)
営業活動によるキャッシュ・フローは、544億86百万円の収入(前期比510億89百万円の収入増)となりました。税金等調整前当期純利益および減価償却費の合計が570億82百万円となり、運転資本の減少による資金の増加が35億40百万円となった一方で、法人税等の支払額が47億93百万円あったことなどによるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、377億22百万円の支出(前期比151億50百万円の支出増)となりました。国内における生産設備への投資等に伴う有形固定資産の取得による支出が252億22百万円あったことが主な要因です。
財務活動によるキャッシュ・フローは、123億93百万円の支出(前期は174億13百万円の収入)となりました。短期借入金が84億41百万円減少したことや配当金の支払額が62億22百万円あったことが主な要因です。
② 資金調達方針
当社は、事業活動を円滑に行うため、コストを抑えた安定資金の調達を目指し、直接金融を含めた多様な手段の中から最適な資金調達方法を選択しています。
間接金融については、スワップ等を利用した長期固定資金と変動の短期資金のバランスを概ね1:1を基本に、経済情勢等に応じ長期固定資金の比率を上げるなど、機動的に対応することで金利変動リスクを低減し安定資金を確保しています。調達通貨は円・米ドル・ユーロを基本に各国の事業規模に応じた調達とすることで為替リスクを軽減しています。また、複数の金融機関とコミットメントラインを設定しており、経済環境の急激な変化による資金調達難等の流動性リスクに備えております。
資金の効率性の側面では、国内はキャッシュ・マネジメント・システム(CMS)を活用、海外は各国の税制等を考慮のうえ、海外グループ間の資金融通等を本社で一元管理しています。なお、北米は日本同様、統括会社でCMSを導入し北米における資金を管理しています。
③ 調達方法
四半期ごとにグループの資金需要を予想し市場環境を考慮したうえで、最適な資金調達方法を策定、取締役会で審議しています。
長期資金については、毎期の償還額にも配慮しつつ、長期間に亘り構築してきた幅広くかつ良好な関係にある複数の金融機関から借入を行っています。また、相対借入に加え、市場性の高いシンジケート・ローンや健康経営・環境対応などESG関連の格付けを活用した調達も行っています。短期資金については、借入枠を締結し資金需要に応じて機動的に調達しています。
今後もコストを抑えた安定資金を調達するため調達方法の多様化を図ってまいります。
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。連結財務諸表を作成するにあたって、棚卸資産の評価、固定資産等の減損、繰延税金資産の回収可能性などの資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いております。過去の実績等を踏まえ合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。なお、特にIFRSを適用している在外子会社で保有する生物資産の評価(在池魚評価)については、生物資産を販売費用等の追加コスト控除後の公正価値で測定し、取得原価との差額の変動額を純損益として認識しており、その測定には生物資産の正味売却価額や生残率等を見積もる必要があることから、市場動向や養殖成績などによって公正価値評価額が大きく変動する可能性があります。海外及び国内養殖会社の仕掛魚の評価、国内養殖会社の固定資産の減損に関する見積りや前提条件については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
今後の方針については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
該当事項はありません。
当社グループは、水産品、食品、医薬品を含む機能性素材および養殖技術において「食」と「健康」に関する研究開発を行っています。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は
当社は、東京イノベーションセンターを中心に水産・食品・ファイン事業に関連する技術開発、商品開発活動を展開しております。水産に関しては自然な外観と食感を維持する「シーフードプロ技術」の適応拡大を進めています。食品に関しては、味・香りの基礎研究や米、野菜、鶏等の原料まで遡った研究を行い、独自の加工技術と組み合わせた食品の高品質化に取り組んでいます。また、タンパク質摂取の在り方の多様化に対応するために、植物タンパク質の利用研究も行っています。機能性素材に関しては、高純度EPAの研究を深化させるとともに新しい医薬・機能性脂質の研究、スケソウダラのタンパク質「速筋タンパク」の研究開発を行っています。養殖に関しては、大分海洋研究センターを中心に、ブリをはじめとした養殖魚の育種、陸上養殖、データサイエンスなどの研究を行っています。