第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、連綿と引き継がれる「住友事業精神」と「住友電工グループ経営理念」のもと、公正な事業活動を通して社会に貢献していくことを不変の基本方針としています。

この基本方針を堅持し、「公益を重視し、ステークホルダーの皆様との共栄を図る」という「五方よし」*(マルチステークホルダーキャピタリズム)の考え方に基づいて、ステークホルダーとの適切な協働を通じ、適正な

コーポレートガバナンスに基づく経営の透明性・公正性を確保し、その充実に取り組むことにより、当社グループの持続的な成長と中長期的な企業価値の向上とともに、これらのゴーイングコンサーンとしての成果のステークホルダーの皆様への着実な還元を図ることとしています。

* 「五方よし」:当社経営における「分配」についての基本的な考え方を表現したもの(Goho Yoshi)。

 

[住友事業精神]

住友の事業は、今から約400年前、銅と銀を吹き分ける「南蛮吹き」と呼ばれる技術による銅精錬事業に遡り、その後別子銅山における鉱山業を中心に発展を遂げてきました。こうした事業の隆盛を支えてきた精神的基盤が「住友事業精神」であり、住友家初代・住友政友が後生に遺した商いの心得『文殊院旨意書』を礎とし、住友の先人により何代にもわたって深化・発展を遂げてきたものです。その要諦は、1891年に改訂された住友家法の中で「営業の要旨」として端的に示されています。

営業の要旨  ※ここでは、住友合資会社社則(1928年制定)より抜粋しました。

第一条  我が住友の営業は、信用を重んじ確実を旨とし、以てその鞏固隆盛を期すべし
第二条  我が住友の営業は、時勢の変遷、理財の得失を計り、弛張興廃することあるべしと雖も、

苟も浮利に趨り、軽進すべからず

この他にも、『技術の重視』、『人材の尊重』、『企画の遠大性』、『自利利他、公私一如』といった精神が今に至るまで脈々と受け継がれています。

 

[住友電工グループ経営理念]  ※創業100周年を機に明文化(1997年6月)

住友電工グループは、

・顧客の要望に応え、最も優れた製品・サービスを提供します。

・技術を創造し、変革を生み出し、絶えざる成長に努めます。

・社会的責任を自覚し、よりよい社会、環境づくりに貢献します。

・高い企業倫理を保持し、常に信頼される会社を目指します。

・自己実現を可能にする、生き生きとした企業風土を育みます。

 

(2) 経営戦略及び経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

<住友電工グループ2030ビジョン>

当社グループは、様々な社会変革が起こりつつある中で当社グループの目指す姿を示すため、2030年を節目とする長期ビジョン「住友電工グループ2030ビジョン」を策定し、2022年5月に公表いたしました。ステークホルダーの皆様のご理解のもと、当社グループが一体となり企業価値向上に取り組み、「Glorious Excellent Company*」の企業像実現を目指してまいります。

* Glorious Excellent Company:”Glorious”は「住友事業精神」と「住友電工グループ経営理念」という精神的基盤を具現化したあるべき姿、”Excellent”は具体的・定量的な事業目標達成の意を込めています。

 

 

住友電工グループ「2030ビジョン」

グリーンな地球と安心・快適な暮らし

- その実現へ技術で挑戦し続けます -

Connect with Innovation

 

1.経営方針

「住友事業精神」と「住友電工グループ経営理念」を堅持し、「事業を通じて公益に資する」という経営哲学のもと、常に公益を重視し、ステークホルダーの皆様との共栄を図っていくことを基本思想としています。そして、この基本思想のもと、これからも「トップテクノロジー」を追求し、グループの総合力とイノベーションにより、世界のインフラ・産業の発展を支えていきたいと考え、当社グループの存在価値(パーパス)を次のように定義しました。

 

住友電工グループの存在価値(パーパス)

トップテクノロジーを追求し、つなぐ・ささえる技術をイノベーションで進化させ、

グループの総合力により、より良い社会の実現に貢献していく

 

今後も様々なリスクに的確に対応しながら、世界で活躍する当社グループ28万人(2022年3月末現在)の従業員による新たな価値の創造を通じ、グローバル市場の多様なニーズに応え、永続的な企業価値向上に取り組んでいきたいと考えています。

 

2.2030年の社会像と事業領域

当社グループは「安心」「快適」な社会への貢献に加え、「グリーン」な環境社会の実現に、グループの総力を挙げて取り組みます。そして、この目指す社会像の実現に向けて、これからも幅広く「インフラや産業を支える製品・サービス」を提供します。

 

3.事業の方向性

「エネルギー」「情報通信」「モビリティ」を3つの注力分野と位置づけ、取り組んでいきます。

また、これらの注力3分野を支える高機能製品の提供や、グリーン化に向けた様々な取組みを展開します。

 

4.経営基盤と目標

ビジョンの実現に向けて、「的確・迅速・柔軟」に変化に対応できる強い組織づくりを進めるため、3つのグループ共有資本(人的資本・知的資本・財務資本)の充実を図るとともに、3つの推進力(研究開発・サプライチェーン・モノづくり)の強化に取り組み、中長期的な企業価値向上を目指します。

 

<中期経営計画2025>

上記の「2030ビジョン」を踏まえ、2023年度から2025年度の3カ年の実行計画として「中期経営計画2025」を策定し、2023年5月に公表しました。

「中期経営計画2025」の具体的な内容は、以下のとおりです。

 

1.基本方針

「中期経営計画2025」は、「つなぐ・ささえる技術でグリーン社会の未来を拓く」をスローガンに、「脱炭素社会の進展」や「情報化社会の進化」に伴うグローバルな事業機会を確実に捉え、グループの総合力で成長戦略を推進するとともに経営基盤の強化に取り組み、その成長の成果を適切にマルチステークホルダーの皆様へ分配していくことを基本方針としています。

2.マルチステークホルダーキャピタリズム(「五方よし」)

当社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上には、マルチステークホルダーの皆様との協働が不可欠であり、成長の成果を着実にマルチステークホルダーの皆様に還元していくこととしています。このことを「マルチステークホルダーキャピタリズム(「五方よし」)」の実践として、具体的には、以下のそれぞれの指標・目標の実現に向けて取り組んでまいります。0102010_001.png

 

3.成長戦略

成長を牽引する「エネルギー」「情報通信」「モビリティ」の注力3分野において、「脱炭素社会」「情報化社会」で広がる事業機会を捉えたグループ横断的な9つのテーマを「成長テーマ」として位置づけ、それらへの取組みを通して技術で新たな価値を創造し、「グリーンな地球と安心・快適な暮らし」の実現へ貢献してまいります。

 

0102010_002.png

 

また、5つの事業セグメントにおける売上高・営業利益の目標及び成長戦略については以下の通りです。

 

                                    (単位:億円)

 

 

売上高

営業利益

 

2022年度実績

2025年度目標

2022年度実績

2025年度目標

環境エネルギー

9,282

10,200

379

500

情報通信

2,503

2,800

219

250

自動車

21,868

25,000

557

1,100

エレクトロニクス

3,660

3,600

383

300

産業素材他

3,633

3,900

240

350

全社 計

40,056

44,000

1,774

2,500

 

・環境エネルギー

2030への方針

グリーン社会の未来に向けて、脱炭素に資する製品・サービスを提供することで、

次世代のエネルギーインフラをグローバルにささえます

2025成長戦略

事業環境

世界各国で再生可能エネルギーの大量導入に向けた大型投資が本格化し、遠隔地を

結ぶ長距離送電や電力需給のバランス調整が求められる中、高電圧技術を進化させ、

電力系統の更なる強化・効率化に貢献します

2025成長戦略

取組方針

①大型連系線向け超高圧直流ケーブル

・国内外での製造能力・施工力の大幅な増強

・環境に優しい高性能絶縁材料の開発

・プロジェクトリスク管理力の向上

・戦略的パートナーとの連携強化

 

②再生可能エネルギー向け製品・サービス

・グループ会社(日新電機、住友電設)との連携強化によるソリューションの提案

・洋上風力用アレイケーブル、エクスポートケーブルの大容量化と拡販

・レドックスフロー電池の大型案件獲得・地産地消推進、家庭用蓄電池のEV連携

機能を搭載した新製品投入

 

③電動車用駆動モータ平角巻線

・電動車の高電圧化に対応する次世代品・差別化製品の上市

・電動車の普及拡大に対応した製造能力の増強、生産性の改善

・グローバルな供給体制の構築

 

・情報通信

2030への方針

AIや仮想空間の活用などに必要な大容量・低遅延通信を低消費電力にて実現する

オール光ネットワークやBeyond5Gの発展に、オリジナリティのある多彩な製品を

提供していきます

2025成長戦略

事業環境

データドリブン社会の進展により通信データ量は年率約30%で増加、通信ネット

ワークの大容量・低遅延化がますます求められる中、多彩な製品・サービスで

ソリューションを提案し、低消費電力型通信ネットワークの実現に貢献します

2025成長戦略

取組方針

①データセンタ内・間の光通信関連製品

・圧送用高密度光ケーブルの展開

・極低損失光コネクタにより、低消費電力化

・光通信用InP(インジウムリン)デバイスの高速化・省エネ性能向上とInP基板

品質向上

 

②大容量光通信向け高機能・高付加価値製品

・マルチコア光ファイバを大陸間海底光通信で実用化

・光ファイバ融着接続機にAI/DX機能を搭載し、施工業務を高度化

・光ファイバの高性能化(極低損失・耐曲げ性能向上)

 

③大容量携帯無線通信(5G/Beyond5G)向けデバイス・機器

・携帯無線基地局用GaN(窒化ガリウム)デバイスの広帯域化と省エネ性能向上、

生産能力の増強

・工場/交通向けなどの産業用5G端末、5Gアクセス光伝送装置供給開始

 

・自動車

2030への方針

ワイヤーハーネスの更なる進化と、電動化・高速通信化への対応で、モビリティの

「つなげる」パートナーとして「つながる」ビジネスを拡大します

2025成長戦略

事業環境

2025年には、電動車(BEV、Full-HEV、PHEV、FCV)が世界の自動車生産台数の

約30%を占め、自動運転技術や安全支援機能がますます高度化する中、従来ハーネスの進化に加え、電動化・高速通信・インフラ連携の技術を進化させ、モビリティの発展に貢献します

2025成長戦略

取組方針

①ワイヤーハーネスのグローバル供給体制

・軽量化に寄与するアルミハーネスの更なる拡販

・地産地消など、グローバル最適地生産体制の再構築

・ワイヤーハーネスの新設計、新工法の実現

・DXによるサプライチェーンの見える化

 

②拡大するCASE*市場をとらえた新製品

・電動化の進展に高圧製品や電池関連部品の供給を拡大

・通信機能の増加/高速化に対応した新製品開発加速

・既存顧客とのパートナー関係強化・協業推進

・欧米及び新興EVメーカーへの参入

 

③モビリティの新時代へ、グループ内連携

・高分子材料を用いた次世代モビリティ向け新製品の開発強化、既存事業である

防振ゴムやホースの製造拠点再編や事業体質強化(住友理工)

・交通システムや電力システムとの連携による、コネクティッド事業とEVエネル

ギーマネジメント事業の拡大

* CASE:自動車業界のトレンドを表す言葉で、Connected(つながる)、Autonomous(自動運転)、Shared

(シェアリング)、Electric(電動化)の頭文字をとったもの。

 

・エレクトロニクス

2030への方針

情報化社会やCASEの進展に求められる新しいニーズをとらえ、高機能配線材を開発・提供するとともに、環境や医療に役立つ製品の拡販も進めます

2025成長戦略

事業環境

GX(グリーントランスフォーメーション)、DX、CASEに代表されるさまざまな社会・産業の変革が加速する中、当社独自技術の高機能素材・配線技術を幅広い分野に提供し、快適で環境に優しい社会の実現に貢献します

2025成長戦略

取組方針

①次世代情報端末をささえる高機能FPC

・超微細回路形成技術と多層化による更なる差別化

・高速伝送パフォーマンスに優れたフッ素樹脂・高周波対応FPCの開発を推進

・電動化をはじめとするCASE対応FPCの事業規模拡大

 

②電動化など幅広い用途で使われる高機能電線

・EV用バッテリー電極リード線の需要増に対応する増産体制構築

・情報電線及び車載・航空機用高圧ケーブルの開発・能力増強

・人工衛星やロボットまで幅広い用途に高機能電線を供給

 

③環境や医療に貢献する高機能部材

・半導体製造装置用精密ろ過膜の生産能力増強

・水処理膜モジュールの高性能化、高付加価値膜の開発

・カテーテル用など医療分野における高機能材の開発・拡販

 

・産業素材他

2030への方針

材料加工技術を更に進化させ、グリーン社会に役立つ高精度・高強度な製品でインフラ・産業の発展を幅広くささえます

2025成長戦略

事業環境

さまざまな産業が転換期を迎え、モノづくりやモノの使われ方が変化していく中、

これまで培ってきた高度な素材加工技術を電動車やグリーン関連施設などの幅広い

分野に展開し、グリーン社会の実現に貢献します

2025成長戦略

取組方針

①差別化と生産体制強化をすすめる切削工具

・次世代CBNや新材種で電動車や風力発電、航空機部品の切削用途に需要を開拓

・加工の改善点や工具寿命を予測するセンシング技術とデータ活用で差別化を図り

新たな需要を発掘

・切削加工全般のグローバルなサービス体制強化

 

②技術進化と伸長市場への展開を図る超硬材料

・電動車向け磁石用切断ダイヤ砥石や電子部品用高精度カッターを拡販

・革新技術・生産能力増により車載・医療用途でヒートシンクを拡販

・核融合市場向けに超硬耐熱機能を有するタングステンモノブロックを供給

 

③インフラ強化や環境へ貢献する高精度・高強度材

・需要増が見込まれる北米・アジア地域で高耐久・高付加価値PC鋼線を拡販

・インフラ構造物やのり面地盤を見守る光ファイバ組込み式PC鋼材の開発・拡販

・焼結部品のEV用製品の拡充、非車載分野への展開

 

4.基盤強化

経営基盤(研究開発・モノづくり・サプライチェーン・財務資本・人的資本・知的資本)を更に強化し、変化に強い企業体質を構築してまいります。

特に、「研究開発」において、顧客ニーズを捉えた現行事業の進化や未来社会ニーズを捉えた新規テーマへの挑戦に取り組むとともに、世界最高水準を実現する「モノづくり力」や構造的変化と急激な変動に対応できる「強靭なサプライチェーン」の構築に向けた取組みを進めてまいります。

 

(3) 経営環境、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

今後の経済情勢は、政治的・地政学的リスクの一層の高まりや、物価上昇の継続に伴う金融引締めの長期化により、世界経済に減速感が生まれることが懸念され、当社グループを取り巻く事業環境は予断を許さない状況が続くものと予想されます。

このような情勢のもと、当社グループは、ありたい将来像「Glorious Excellent Company」の実現を目指して、長期ビジョン「住友電工グループ2030ビジョン」で掲げている「グリーンな地球と安心・快適な暮らし」の実現に向けて、グループが一体となり企業価値向上に取り組み、その成果をステークホルダー、すなわち、「従業員」「お客様」「お取引先」「地域社会」「株主・投資家」に着実に分配していくというマルチステークホルダーキャピタリズム(「五方よし」)に基づく経営を実践してまいります。

具体的には、製造業の基本であるS(安全)、E(環境)、Q(品質)、C(コスト)、D(物流・納期)、D(研究開発)の更なるレベルアップに取り組むとともに、資産効率向上については、重要指標としているROIC*の改善に向けて、棚卸資産残高や営業債権・債務残高の適正化、設備投資案件の厳選実施、高付加価値品へのシフトなどの取り組みを一層強化してまいります。長期ビジョンの実現に向けたマイルストーンとして2023年度からスタートした「中期経営計画2025」の達成に向け、グループの総合力で成長戦略を推進するとともに経営基盤の強化に取り組み、各事業においては次の施策を進めてまいります。

* ROIC:Return on Invested Capital(投下資産利益率)の略。

 

環境エネルギー関連事業では、電力ケーブルにおいては、国内の設備更新需要等の捕捉に加え、脱炭素化に貢献する国家・地域間連系線や再生可能エネルギー関連の受注に努めるとともに、生産能力増強、コスト低減、品質向上、新製品開発、プロジェクトマネジメント強化にも注力してまいります。電動車向けのモーター用平角巻線においては、コスト低減による収益力の向上と、電動車の高電圧化に対応する次世代品の開発、グローバルな供給体制の構築を進めてまいります。さらに、2023年5月に完全子会社化した日新電機㈱とのさらなるシナジー創出に取り組むとともに、住友電設㈱も含めたグループ総合力を活かして、一層の受注拡大に努めてまいります。

 

情報通信関連事業では、顧客の投資抑制や在庫調整による一時的な需要停滞が一部継続するものの、第5世代移動通信システム(5G)の世界的な展開、クラウドサービス*市場の着実な成長に加え、生成AI*の急速な普及によるデータセンター関連市場の一層の拡大など、当社の技術力をより発揮できる市場環境への変化が見えつつあります。これらの需要を確実に捕捉すべく、光ケーブルや光配線機器、光デバイスの新製品、海底ケーブル用の極低損失・大容量光ファイバ、世界で初めて量産を開始したマルチコアファイバ、5G基地局用の高効率な電子デバイス、新方式採用が進むアクセス系ネットワーク機器など、低消費電力等耐環境性能を含めた高機能製品の開発・拡販を継続・加速するとともに、徹底したコスト削減による収益性の改善に努めてまいります。

* クラウドサービス:従来は利用者が手元のコンピュータで利用していたデータやソフトウェアを、ネットワーク経由で、サービスとして利用者に提供するもの。

* 生成AI     :質問や作業指示等に応え、画像や文章、音楽、映像、プログラム等の多様なコンテンツを生成するAI(人工知能:Artificial Intelligence)。

 

自動車関連事業では、モビリティの「つなげる」パートナーとして「つながる」ビジネスの拡大を目指し、一層のコスト低減と資産効率化の徹底、軽量化ニーズに対応したアルミハーネスのさらなる拡販、生産自動化やコスト低減に繋がる新設計・新工法の拡充など従来ハーネスの進化に取り組んでまいります。また、グループ内連携や顧客とのパートナー関係の強化・協業により、電動車向けの高電圧ハーネス、高速通信用のコネクタなど今後も拡大が見込まれるCASE市場をとらえた新製品創出・拡販にも努めてまいります。住友理工㈱では、自動車用防振ゴム及びホースなどの分野において、既存事業の効率化を図りつつ、次世代モビリティ向けの新製品開発に重点を置き、事業の成長と収益力の向上に一層取り組んでまいります。

 

エレクトロニクス関連事業では、FPCにおいては、微細回路形成技術を活かした高機能品の拡販や、徹底したコスト低減、さらなる高機能化に取り組むとともに、CASE対応製品や医療用製品の拡販、高周波化に対応した新製品の開発を加速してまいります。照射架橋技術を活用した電動車の電池端子用リード線(タブリード)、電動パーキングブレーキ用電線、熱収縮チューブ、さらにはフッ素樹脂加工技術を活かした多孔質水処理膜製品においても、多様な客先ニーズを捕捉して事業の拡大を図ってまいります。また、2023年5月に完全子会社化した㈱テクノアソシエとのさらなるシナジー創出にも取り組んでまいります。

 

産業素材関連事業では、超硬工具においては、グローバルな営業力の強化により、主力の自動車分野に加えて、建設機械、農業機械、エレクトロニクス分野等での需要を確実に捕捉するとともに、電動車、航空機、半導体、再生可能エネルギー関連などの新規開拓も進め、市場シェアの拡大に努めてまいります。焼結部品は、電動車や非車載向けの新製品開発・拡販とコスト競争力の一段の強化を図ってまいります。PC鋼材やばね用鋼線は、グローバルな製造販売体制の強化と新製品開発による収益力の向上に取り組んでまいります。

研究開発では、多様な技術創出の「要」となる研究開発の活性化・スピードアップを目指し、社会課題からの

バックキャスティングやプロセスの高度化・効率化、オープンイノベーションや社外との連携強化に取り組んでまいります。具体的な取り組みとしては、現行事業の進化として、事業部門・営業部門との密な関係や顧客とのパートナー関係を活かし、注力事業分野を中心に、送電網強化と再生可能エネルギーの安定供給、通信ネットワークの大容量・低遅延化、モビリティにおける電動化などのテーマに取り組んでまいります。また新規テーマの挑戦として、「地球」「暮らし」「ヒト」の3つを新たな価値領域として定め、「地球」の持続可能性のため、省エネル

ギー、再生エネルギー、材料循環等の研究を推進するとともに、安心で安全な「暮らし」、「ヒト」の可能性の拡大を目指す研究を推進してまいります。

最後に、法令遵守や企業倫理の維持は、当社経営の根幹をなすものであり、企業として存続・発展するための絶対的な基盤と考えております。今後とも、住友事業精神の「萬事入精(ばんじにっせい)」「信用確実」「不趨浮利(ふすうふり)」*という理念のもと、社会から信頼される公正な企業活動の実践に真摯に取り組んでまいります。また、住友事業精神と住友電工グループ経営理念の基本的な価値軸はSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)にも相通ずるものであると考えており、サステナビリティを巡る課題である、気候変動などの地球環境問題への配慮、人権の尊重、従業員の健康・労働環境への配慮や公正・適切な処遇、取引先との公正・適正な取引、自然災害等の危機管理を通じて、持続可能な社会の実現に向けて取り組んでまいります。

* 萬事入精:まず一人の人間として、何事にも誠心誠意を尽くすべきとの考え。

信用確実:何よりも信用を重んじること。

不趨浮利:常に公共の利益との一致を求め、一時的な目先の利益、不当な利益の追求を厳に戒めること。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。

 

(1) サステナビリティ

① ガバナンス

サステナビリティを巡る課題、すなわち、気候変動などの地球環境問題への配慮、人権の尊重、従業員の健康・労働環境への配慮や公正・適切な処遇、取引先との公正・適正な取引、自然災害等の危機管理への取組みは、ゴーイングコンサーンとして永続的に企業価値を向上させ、マルチステークホルダーとの共栄を図るために必要不可欠な要素であるとの認識に立ち、当社グループは、これらの課題解決に取り組んでまいります。

具体的には、「トップテクノロジーを追求しつなぐ・ささえる技術をイノベーションで進化させグループの総合力によりより良い社会の実現に貢献していくことを存在価値と定め、「安心して暮らせる社会」、「快適で住みやすい社会」、「グリーンな環境社会を目指す社会像として掲げその実現に貢献してまいります

またその取組みについて価値創造ストーリーとしてまとめた統合報告書」、活動実績をまとめたCSRブックにて社内外に発信しステークホルダーの皆様からのフィードバックを受けて更なる活動に反映していくというサイクルを回してまいります

当社グループでは、上記の基本方針のもと、サステナビリティ経営の推進にあたり、社長を委員長とする「サステナビリティ経営推進委員会」を設置し、関係する取組みの報告を(各委員会から)受けつつ、これらの取組みが一貫して推進されるよう方針等を協議し助言を行う体制としています。

 

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② 戦略

「中期経営計画2025」における当社グループのサステナビリティへの主な取組みは次のとおりであります。

 

<環境(Environment)>

「グリーンな地球環境を目指すオペレーション」「事業を通じた地球環境への貢献」「身近なエコ活動(エコ活動2030)の推進」の3つの活動に取り組みます。

(グリーンな地球環境を目指すオペレーション)

a.CO2排出量削減(Scope1+2)

・省エネ・創エネ・購エネ(※1)による電源の脱炭素化

・特に省エネ、自助努力で地球環境への負荷を最小化

b.CO2排出量削減(Scope3)

・グリーン調達・物流への取組み強化

・LCAへの取組み強化

c.サーキュラーエコノミー推進

・リサイクルしやすい製品設計・材料開発

・不良低減や分別による廃棄物削減、水資源循環

d.環境汚染防止

・環境事故ゼロ、環境負荷物質削減

 

(事業を通じた地球環境への貢献)

a.グリーン貢献売上

・社会のグリーン化を後押しする製品・サービス

b.エコ製品売上

・環境に優しい性能を有する製品・サービスの売上

 

(身近なエコ活動(エコ活動2030)の推進)

a.「地球にイイこと(※2)」

 

(注)1.※1 創エネ:太陽光発電等による電力創出、購エネ:再エネ電力調達

2.※2 生物多様性保全活動、地域清掃、緑化活動等

 

<社会(Social)/ガバナンス(Governance)>

人権の尊重、コンプライアンスの遵守を徹底するとともに、社会の一員として自立的な社会貢献活動に積極的に取り組みます。

(人権の尊重)

a.(グループ内)人権デューデリジェンス

・リスクの調査、防止・軽減措置

b.(グループ内)人権教育

・差別・ハラスメント等の人権問題に関する研修や啓発

c.(お取引先)サプライヤー行動規範

・「サプライヤー行動規範」に基づいた、人権及び労働関係に関する取組みの要請

 

(コンプライアンスの遵守)

a.(グループ内)コンプライアンス体制の維持・強化

・行動規範(※)、競争法遵守等の研修実施

・グループ各社各部体制整備、状況確認

・相談・申告窓口の利用促進

b.(お取引先)コンプライアンスに関する取組み推進

・「サプライヤー行動規範」の周知

・相談・申告窓口の周知

・「責任ある鉱物調達」への取組み

 

(※)当社グループでは、「Code of Conduct/行動規範」において、法令遵守に加え、公正競争、贈賄防止、

機密情報や知的財産の保護、人権尊重、環境保全等について基本方針を規定しています。

(社会への貢献)

・社会貢献基金を通じた人材育成・学術振興、その他環境保全をはじめ広範囲にわたっての寄付の実施

・各拠点における地域貢献活動の推進

・社員のボランティア活動に対する継続的支援

・スポーツ活動への積極的な支援

 

③ リスク管理

当社グループでは、サステナビリティに関するリスク管理も含めて、各リスクについての評価及び対応を、重要性の判断基準を定める「リスクマネジメントの基本方針(※)」に沿って、リスクの軽重を判断した上で実施しております。グループ横断的リスクについては、各リスクを所管するコーポレートスタッフ部門や、当該部門の担当役員が主催する委員会が対応策をグループ内に展開し、各事業の遂行に伴う固有リスクについては、各事業部門が主体で管理を行うこととしています。

 

※「リスクマネジメントの基本方針」

・業績への影響や品質と安全性の確保

・安定的供給の社会的使命

・従業員、顧客、取引先、地域社会及び株主・投資家等のステークホルダーとの良好な関係維持

・法令遵守、企業倫理の維持

・住友事業精神、グループ経営理念及びグループ企業行動憲章に表された事項

 

④ 指標及び目標

当社グループのサステナビリティへの取組みに関する主な指標及び目標は次のとおりであります。

 

<環境(Environment)>

a.CO2排出量削減(2018年度対比削減率)

Scope1+2 2025年度17.5% 2030年度30.0%

Scope3    2025年度8.7%  2030年度15.0%

b.グリーン貢献売上 2025年度7,000億円以上

c.エコ製品売上   2025年度1兆円以上

d.2030年度までに20以上の国/地域で300以上の「地球にイイこと」

 

<社会(Social)/ガバナンス(Governance)>

a.社会貢献活動への拠出額は税引後利益の1%を目安に実施

 

(2) 人的資本

① ガバナンス

(1) サステナビリティ ① ガバナンス」に記載のとおり、「サステナビリティ経営推進委員会」を設置し、サステナビリティを巡る取組みの基本方針を制定するとともに、人材の多様性の確保を含む人材の育成や社内環境整備への対応につき、具体的な目標や進め方の議論等を行っています。

 

② 戦略

当社グループにおける人材の育成に関する方針及び取組み、並びに社内環境整備に関する方針及び取組みは、次のとおりであります。

 

<人材の育成に関する方針及び取組み>

(人材の育成に関する方針)

当社グループは、住友事業精神に則り、人材の尊重を重視した経営を行っておりますが、人材に関する基本方針を明確化するため2011年9月に「Sumitomo Electric Group Global Human Resource Management Policy(グローバルHRMポリシー)」を制定しました。

 

[グローバルHRMポリシー]2011年制定

・あらゆる人材が住友電工グループの一員として活躍し、仕事を通じて成長し、自己実現し、社会に貢献できる会社を目指します。

・人種、民族、国籍、宗教、年齢、性別、性自認、性的指向、障がいの有無等にかかわらず、様々なキャリア機会を提供し、グローバルな適材適所の実現を目指します。

・組織の創造性を高め、永続的に発展するため、多様性を重視し、ダイバーシティの推進に取り組みます。

・グローバルな事業展開を支えるグローバルリーダーの育成に取り組みます。グローバルリーダーとは、住友の事業精神と住友電工グループの経営理念を理解し、ダイバーシティに富んだチームをリードできる人を意味します。

(人材の育成に関する取組み(SEIユニバーシティ))

人材育成の取組みとして、当社グループの事業戦略を遂行するための能力・技術・技能・知識向上を目的とした研修や、社員が一体感を持って経営ビジョンに向かって邁進し、理念・価値観・文化を共有するための研修等を実施しており、これらを構成する人材育成体系を、SEIユニバーシティと総称しております。

一人ひとりの成長には、「本人の自己啓発への強い意欲」と「職場上司の指導と対話」が重要であり、そのために、目標管理・キャリア対話、業務遂行(OJT)、人事評価・ローテーションのサイクルを回しています。これをSEIユニバーシティの研修・教育を通じて支援し、個々人の人材価値の向上を図っています。

<社内環境整備に関する方針及び取組み>

(社内環境整備に関する方針)

当社グループでは、永続的な企業価値の向上のため、グローバルHRMポリシーや住友電工グループ人権方針、住友電工グループ健康経営宣言等に基づき、人権の尊重、健康で安全安心な働きやすい環境の整備、多様性の包摂などに取り組んでいます。「人への投資」を通じて、あらゆる人材が活躍・自己実現し、社会に貢献できる企業への基盤づくりを行っていきます。

 

[住友電工グループ人権方針]2019年制定

住友電工グループは、基本精神である「住友事業精神」と「住友電工グループ経営理念」に基づく高い企業倫理の下、公正な事業活動を行うことを不変の基本方針としています。

住友電工グループは、今後もグローバル社会とともに発展していくにあたり、自らのすべての事業活動が、人権尊重を前提に成り立っているものでなければならないと認識しています。

住友電工グループは、人権尊重の取り組みをグループ全体で推進し、その責務を果たす努力をしていきます。詳細はウェブサイトをご参照ください。(https://sumitomoelectric.com/jp/sustainability/csr/sociality/office)

 

[住友電工グループ健康経営宣言]2015年制定

住友電工グループは社員の健康管理を重視し、「健康経営」の実現に向けた取組みを推進します。

当社では、創業以来、住友の伝統である「事業は人なり」と言われる人間尊重に立脚した経営を脈々と受け継いでおり、中期経営計画においても「人材基盤」を企業の持続的な発展成長のための最も重要な経営資源の1つと位置付けています。

本健康経営宣言に基づく、健康増進活動に取組む社員への積極的な支援と、組織的な健康増進施策の推進により、社員の健康意識(ヘルスリテラシー)を高め、「社会から高く評価され、信頼されるとともに、社員が健康で活き活きと活躍できる」企業グループを目指します。

 

(社内環境整備に関する取組み)

a.人権の尊重

「住友電工グループ企業行動憲章」及び「Code of Conduct/行動規範」において、人権の尊重、差別・ ハラスメントの禁止を定めています。また、 2019年3月に制定した「人権方針」において、 国際基準に

則った人権尊重の取組みを推進していくことを明確に示しています。また、社員への啓発とともに、国内外グループ会社、ビジネスパートナーなどに対する定期的な実態調査を開始しました。全ての事業活動が、人権尊重を前提に成り立っているものでなければならないと認識し、人権尊重の取組みをグループ全体で推進し、その責務を果たしていきます。

 

b.多様な人材が活躍できる環境整備

社会や事業の変化に対応しながら、新たな事業機会の補足に向け、「多様な視点」「信頼関係」「能力の発揮」を掛け合わせ、総和以上の力を発揮する「ダイバーシティ&インクルージョン」を実現すべく、多様な人材が最大限能力を発揮できる組織風土・環境整備に取り組んでいます。

 

・グローバル人材の育成

能力と資質のある人材が、グループ各社の経営を担い、更には個社を越えて広く活躍し、キャリアアップを目指すことができる人事制度として、上場会社の子会社を除く海外子会社役員もしくは同相当者にあたる幹部人材を「グローバル幹部人材」として認定しており、現在、42人(2024年4月1日時点)が認定されています。

 

・エリアコミッティ活動の推進

グローバル幹部や海外グループ各社の次世代リーダーが、地域・国で共通の経営課題についてグループ一体となり取り組むエリアコミッティは、グループ会社間のシナジー創出に加え、参加者の貴重な成長機会にもなっています。当活動は、2011年に北米で始まり、現在は米州、欧州、東南アジア・豪州、中華圏の4地域で500名を超えるグループ社員が参画し、人材育成やモノづくり強化など多種多様なテーマに取り組んでいます。

 

・多様な人材の採用

多様な人材の採用に向け、当社では新卒採用者の女性比率の目標を事務系40%、技術系15%としています。また、キャリア採用を積極的に進め、早期の活躍や定着に向け様々な施策を行うと同時に、障がい者の雇用促進にも取り組んでいます。

 

・女性活躍の推進

当社では、全ての社員が一層活躍できる風土醸成と組織の成長発展に繋げる重要な取組みとして、女性活躍を推進しています。具体的には、出産・育児期に上司との対話を強化する仕組みづくりや女性管理職候補の成長支援を目的としたメンタリングプログラムのほか、新人女性部下を持つ管理職のためのマネジメント研修の実施や女性マネージャーの育成計画の策定・モニタリング等を行っており、現在では約120名の女性管理職が活躍しています。女性活躍推進は、将来的な当社の成長発展に向けた重要な取り組みとして、今後も継続的に推進してまいります。

・障がい者雇用

特例子会社「すみでんフレンド㈱」を設立し、障がい者の雇用を促進しております。2024年3月末現在、障がい者99人を含む162人の社員が従事しております。当社及びすみでんフレンド㈱を含むグループ適用認定会社の計26社合算の障がい者雇用率は2.64%(2023年6月1日時点)となっています。

 

c.活き活きとした職場環境づくり

個人の挑戦や成長を促進し、多様な人材が強みを活かして活躍する、エンゲージメントの高い組織づくりに取り組んでいます。2022年度からは、従来の調査を拡充する形でエンゲージメントサーベイを実施し、社員のエンゲージメントの状況を把握することで、組織活性化や各種施策の企画・立案に活用しています。

2023年度は、当社及び国内外グループ会社120社(昨年度67社)を対象に、国内約4万人(同2.4万人)、海外20か国(同6か国)約1.4万人(同0.2万人)が参加しました。継続して調査に参加した約1,000の職場のうち、対話機会の増加、ハラスメント研修の実施、部門方針の情報発信強化などの職場改善活動の結果、約6割で総合指標である「持続可能なエンゲージメント」スコアの改善傾向が見られています。エンゲージメントの高い職場づくりを通じ、社員が一層活き活きと働けるよう引き続き取り組みます。

 

・多様な働き方の実現と、仕事と生活の両立支援

三現主義を重視した職場運営や直接的な対話を伴った人材育成を実現するため出社での勤務を基本としていますが、社員一人ひとりの生活を様々な面からサポートすべく、柔軟な働き方の実現や生産性の向上を目的に在宅勤務の活用も積極的に進めています。また、男性の育児参画推進を目的とした施策として、男性育児休業取得率100%を目標に掲げ、2022年10月より必須化しています。さらに、「配偶者育児サ

ポート面談」など長期で育休を取得しやすい環境整備のための様々な取組みを行っています。

 

・健康経営の推進

持続的な発展成長を実現するためには、社員一人ひとりの健康が不可欠であると考え、2015年に「住友電工グループ健康経営宣言」を定め、2017年からは人事担当役員をトップとした健康維持・増進活動「健活!」を開始しました。「生活習慣病の予防・改善」「運動習慣づくり・スポーツ奨励」「メンタルヘルスケア」の3つの観点から、健康増進に取り組む社員への組織的支援を推進しています。

 

③ リスク管理

(1) サステナビリティ ③ リスク管理」をご参照ください。

 

④ 指標及び目標

当社グループにおける人材の育成及び社内環境整備への取組みに関する主な指標、並びに当該指標に係る目標及び実績は、次のとおりであります。

 

指標

2025年度

目標

2023年度

実績

対象範囲

(注)

人材育成

経営幹部研修受講者数

100人/3年

36人

F

マネジメント研修(MPSS)受講者数

2,300人/3年

859人

F

研修受講時間

20時間/人・年

12.8時間/人・年

F

社内環境

整備

男性育休取得比率

100

98

A

女性管理職比率

4.0

3.7

A

(注)Aは当社を指し、Fは国内外連結子会社(上場子会社を除く)を指します。

 

(3) 気候変動(TCFD(※)提言に沿った情報開示)

※TCFD:気候関連財務情報開示タスクフォース

① ガバナンス

当社グループでは、「住友電工グループ企業行動憲章」の中で「地球環境への配慮」を掲げ、地球環境保全について自主的、積極的に行動し、持続可能な社会づくりに貢献しています。また、「(1) サステナビリティ ①ガバナンス」に記載のとおり、「サステナビリティ経営推進委員会」を設置し、サステナビリティを巡る取組みの基本方針を制定するとともに、気候変動問題をはじめとする地球環境への対応につき、具体的な目標や進め方の議論等を行っています。さらに、専門的見地から具体的な方策を検討するため、「地球環境推進委員会」を設け、温室効果ガス排出削減など、気候変動に関する取組みを推進しています。

② 戦略

当社グループでは、社内で使用するエネルギーの削減と再エネ比率の向上、提供する製品・サービスを通じての温室効果ガス排出削減に取り組んでいます。また、世界的な平均気温の上昇を産業革命以前に比べて1.5℃に抑制するシナリオと、平均気温が4℃上昇するシナリオを設定して気候変動に伴うリスク及び機会が事業に及ぼす影響を分析し、今後の取組みについて検討を行っています。なお、シナリオ分析の結果については、当社ウェブサイトをご参照ください。          (https://sumitomoelectric.com/jp/sustainability/tcfd)

③ リスク管理

(1) サステナビリティ ③ リスク管理」をご参照ください。

地球環境保全のような最重要課題については、「リスク管理委員会」主導のもと、安全環境部が中心となって、「全社環境委員会」及び「地球環境推進委員会」での審議内容を踏まえ、関係するコーポレートスタッフ部門と連携しながら目標や取組み方針を策定します。その内容を踏まえ、各事業部門は自部門の目標を設定のうえ活動を推進しています。また、気候変動に伴うリスクへの対応については、コンプライアンス・リスク管理室が中心となって事業継続計画(BCP)の策定を促すなど、安全の確保を最優先としながらも、災害発生時の被害最小化や事業の継続性確保に注力することとしています。

 

④ 指標及び目標

当社グループでは、2030年及び2050年の温室効果ガス排出削減目標を設定し、生産活動やサプライチェーンにおける温室効果ガス排出削減に取り組んでいます。なお、2030年目標については、国際的イニシアチブ「SBTi(Science Based Targets initiative)」からの認定を取得しています。目標達成を目指し、自助努力により「地球環境への負荷を最小化する」という観点から、「省エネ」に最大限注力するとともに、「創エネ」にも取り組み、未達分を「購エネ」によって補完することを基本方針として温室効果ガス排出削減を推進します。その具体的な手段として、地球環境への負荷を最小化するという観点から、生産性向上や新技術導入による「省エネ」、太陽光発電などによりグリーンエネルギーを創り出す「創エネ」、再エネ電力調達による「購エネ」の3つに分けて、具体的なターゲットを設けて活動を展開しています。なお、2022年度は、温室効果ガス排出量(Scope1+2)を2018年度比で16.2%削減することができました。2023年度の実績については、2024年10月頃に当社ウェブサイトにて公表予定であります。     (https://sumitomoelectric.com/jp/sustainability/tcfd)

今後も2030年度目標の達成に向け、着実な取組みを推進していきます。

 

温室効果ガス排出削減目標と実績

2030年

目標

2030年までに、Scope1+2(※):30%削減、Scope3(※):15%削減(2018年度対比)

2050年

目標

2050年までに、カーボンニュートラルの達成(温室効果ガス排出実質ゼロ)

(※)Scope1+2:当社グループ自らによる温室効果ガスの直接排出と、他社から供給された電気・熱・蒸気の使用に伴う間接排出

Scope3:Scope1, Scope2以外の間接排出

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3【事業等のリスク】

当社グループでは、グループ横断的な主要リスクについては、各リスクを所管するコーポレートスタッフ部門や当該部門担当の取締役等(「役付取締役、役付執行役員」をいう。)が主催する各種委員会がグループ内に展開する対応策や事故事例・防止策に従い、各部門が所管事業の遂行に伴うリスクを再評価のうえリスク管理を行い、また、部門固有のリスクについては、専門的知見を有するコーポレートスタッフ部門や外部専門家の支援を適宜受けながらリスクの軽減等を行うこととしております。

これらの活動を推進するため、各部門及び関係会社ごとに年1回「リスクの棚卸し」を実施しており、様々なリスクが発生した場合の影響度、発生頻度などの評点化を行い、総合的に評価したうえで、優先的に取り組むべき「重要リスク」を抽出し、対策を検討・実施しております。

これらの活動は、経営会議メンバーで構成するリスク管理委員会が、リスク管理規程に従い統轄しており、棚卸しの中で全社共通的に重要と考えられるリスクについてはコンプライアンス・リスク管理室より本委員会へ報告され、メンバー間で認識の共有化と対策の検討が行われるとともに、監査役、内部監査部門及び各リスクを所管する各コーポレートスタッフ部門とも連携しながらリスクをモニタリングする体制を敷いております。

このようなリスク管理体制のもと、また、幅広い分野にわたってグローバルに展開する当社の事業活動も考慮のうえ、当社グループの経営成績及び財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性のある主要なリスクを以下のとおり記載しております。ただし、以下は当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、記載以外のリスクも存在し、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(政治経済情勢・需要変動・法律・規制の変更等に係るリスク)

当社グループは、環境エネルギー関連、情報通信関連、自動車関連、エレクトロニクス関連及び産業素材関連他の各需要分野にわたって事業を展開しております。また、地域的には、日本の他、米州、アジア、欧州、北アフリカ等に進出しております。これまで、当社では事業継続の観点から、生産拠点の一国集中を避けて複数拠点の分散を行うことでリスクの軽減を図ってきたため、当社グループの経営成績、財政状態ならびにキャッシュ・フローは、特定の地域・取引先・製品・技術等に過度に依存する状況にはありませんが、各分野や各地域に特有の需要変動や、技術革新に起因する製品ライフサイクル短期化、また、国内外の政治情勢の影響を受けることがあります。海外におけるテロ・暴動・紛争等のリスクに対しては、リスクコンサルタント等の専門家や政府関係機関等より情報収集を行うとともに、有事の際には現地拠点の安全確認、現地情報の社内展開を行っております。さらに、欧米、中国、東南アジアに地域コーポレート会社を設置し、必要に応じて弁護士やコンサルタント等の専門家と契約するなどしてコーポレート機能を強化して、リスク管理の側面からも各地域における関係会社の支援をしております。

なお、当社グループ製品の多くは、最終消費財の部品や社会インフラ用の素材・システムなどであるため、景気循環の影響を受けることはもとより、顧客の購買政策の変化や設備投資に対する政策的判断、競合会社との価格競争激化などの影響を受けることがあります。

また、各市場において、以下のように完全には回避することの困難なリスクが存在しており、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

・地政学的な環境の変化、輸出入規制や関税率の引き上げ等により、売上が減少、もしくは原価率が悪化するリスク

・各国の国内及び国際間取引に係る租税制度の変更等により税金コストが上昇するリスク

・外貨規制、ハイパーインフレーション、テロ、感染症等により投資資金の回収が不可能となるリスク

 

(コンプライアンス全般に係るリスク)

当社グループは、グローバルに事業を遂行するにあたり、国内外の各種法令の適用を受けております。これらの法令違反行為や企業倫理に悖る行為を行うことにより、法令に基づく処罰、訴訟の提起及び信用・評判の失墜など当社グループの経営に重大な影響を与える可能性があります。

当社グループでは、コンプライアンスは、経営の根幹をなすものであり、存続・発展していくための絶対的な基盤であるとして、「住友事業精神」の「萬事入精」「信用確実」「不趨浮利」という理念に基づき、社会から信頼される公正な企業活動の実践に取り組んでおります。具体的には、社長が委員長を務めるコンプライアンス委員会の下、コンプライアンス・リスク管理室が世界各拠点の法務部門等と連携しながら、当社グループにおける各コンプライアンス活動全体の調整・確認を行うとともに、コンプライアンスの基本姿勢を示す行動規範の制定、コンプライアンスの意識・理解を高める教育の実施、及び内部通報制度の周知・積極的な利用の呼びかけなどを通じて、法令違反行為及び企業倫理に悖る行為の発生可能性を低減するよう努めております。

特に競争法違反及び贈収賄に係るリスクは、欧米を含む厳しい各国法令が適用され、違反時のリスクが高いと考えられます。違反時には、当局への罰金の支払い、役職員個人への刑罰、株主代表訴訟、顧客との取引停止及び信用・評判の失墜など当社グループの経営に重大な影響を与える可能性があります。関連規程の制定、対面研修・Eラーニングの実施、各部・各社におけるこれらのコンプライアンスを担う責任者の設置、ならびに内部通報制度の周知・積極的な利用の呼びかけなどの対応策を実施することにより、運用面でも違反行為の発生可能性を低減するように努めております。

(人権に係るリスク)

当社グループは、基本精神である「住友事業精神」と「住友電工グループ経営理念」に基づく高い企業倫理の下、人権尊重の取り組みを推進しております。

具体的には、コンプライアンスの基本姿勢を規定した「住友電工グループ行動規範」にて、人権の尊重、差別・ハラスメントの禁止等を定め、社内教育を当社グループで実施しております。また、様々なステークホルダーのニーズに応え、国際基準に則った人権尊重の取り組みを推進していくことを明確に示すため、「住友電工グループ人権方針」を制定し、当社グループの事業活動における人権への影響を特定し、対応していくため人権デューデリジェンスを実施しております。

さらに、当社グループのサプライチェーンにおいても「住友電工グループサプライヤー行動規範」に基づく実態調査や働きかけ等を通じ、人権尊重の取り組みを推進しております。

上記のとおり、当社グループは、人権尊重を事業活動の大前提と認識し、グループ全体で取り組みを推進しておりますが、事業活動において人権問題が発生した場合、ステークホルダーからの信用失墜等により当社グループの経営に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(気候変動のリスク)

当社グループでは「住友電工グループ経営理念」に基づき、地球的視野に立った、環境保全への取り組みを経営の最重要課題として位置付け、「環境方針」を制定しております。本方針のもと、これまでも省エネルギーや再生可能エネルギーの導入など、温室効果ガス排出の削減に取り組んでおりますが、さらなる排出削減を目指し、2050年までにカーボンニュートラル達成を目標に、削減目標に関してSBTi認定を取得し、グループ全体で取り組んでおります。

また、当社グループはグローバルに事業を展開していることから、各国・各地域において、気候変動が一因とされる集中豪雨や大型台風の被害を受ける可能性が高まっておりますが、下記の「自然災害や感染症に関するリスク」に記載する対応策を実施し、リスクに対処しております。

世界的に地球環境保全への取り組みが強化される中、欧州では国境炭素税導入や電池規則へのLCA(ライフサイクルアセスメント)などが検討されており、顧客から当社グループの製品のカーボンフットプリント(CFP)削減を求められるケースも生じております。これらへの対応不備や遅れは、機会損失となり得ます。加えて、温室効果ガス排出削減に向け、これまで以上に太陽光発電施設等の導入やグリーン電力の購入が必要となる可能性や、炭素税増税によるエネルギー調達コストの上昇などにより、業績に影響を及ぼす可能性があります。

これらリスクに対しては、全社環境委員会や地球環境推進委員会等が、行政・顧客を含む社会動向の把握、事業部門及び関係者の環境保全への取り組みに対する監査及び指導を通じて、リスク低減に取り組んでおります。

(自然災害や感染症に関するリスク)

当社グループは、阪神・淡路大震災や東日本大震災といった巨大地震、又は集中豪雨、大型台風等により被害を受けた経験や新型インフルエンザやコロナウイルス感染症の流行を踏まえ、大規模自然災害や感染爆発(パンデミック)が発生した際も重要業務を継続し、迅速な復旧を図るため、事業継続計画(BCP)の策定と、BCPの継続的な改善を図る事業継続マネジメント(BCM)を推進するなど、従来より対策を講じております。

一方、当社グループはグローバルな事業展開を拡大していることから、各国・各地域において巨大地震や風水害等の直接的な被害を受ける可能性があることに加え、顧客の被災や物流網の寸断、電力不足等により生産活動が計画通り進まない可能性があります。また、当社グループの国内拠点の一部が、30年以内に70%程度の確率で発生が見込まれる南海トラフ巨大地震や首都直下地震の想定被災地域あるいは沿岸地域等に存在していることもあり、大規模な地震が発生した場合には津波や液状化等による重大な被害を受ける可能性があり、当社グループの生産活動をはじめとする事業活動全般に影響を及ぼす可能性があるほか、売上減少や修繕費用の支出を余儀なくされるなど、当社グループの経営成績及び財政状態等に大きな影響を及ぼす可能性があります。これらのリスクに対処するため、当社グループでは、当社各拠点及び各関係会社で同時開催する「統合防災訓練」を毎年2回、継続的に開催し、防災意識を高めております。また、対策本部設置による情報伝達・共有訓練も同時に行っております。

さらに、建屋の耐震改修を進め、主要な建屋は現行の耐震基準と同等以上の耐震性能を確保するようにしております。また、災害時も重要システムが停止しないよう、伊丹コンピュータセンターのバックアップセンターを横浜に設置し、年に1回、復旧訓練(BCP訓練)を実施しております。

新型インフルエンザ等感染症が世界的に流行した場合は、当社グループの生産活動をはじめとする事業活動全般に影響を及ぼす可能性があるほか、顧客需要の低迷やサプライチェーンの混乱などが生じる可能性があります。当社グループ従業員の健康と安全の確保を最優先に在宅勤務リモートワークの積極的な活用などで感染防止対策の徹底を

図っていきます。

(産業事故等のリスク)

当社グループは、各製造拠点において火災・爆発、感電、有害物質の漏洩等について、点検と対策を計画的に進め、産業事故や環境汚染等の公害事故の発生防止を実施しております。特に火災については、他社及び当社グループで過去に発生した事故・ヒヤリ分析から未然防止に向けた活動を積極的に進めております。

産業事故については、重要設備の停止による生産活動への悪影響を最小限に抑えるために、日常的及び定期的な設備保全を行う一方、老朽化更新を計画的に進めております。また、これまでの労働災害の原因分析を基に再発防止策を展開し、日々安全な職場の構築・維持に努めております。

環境汚染等の公害事故については、環境保護を含めた各国規制の把握不全ならびに新たな法・規制改正といったリスクが存在します。これらのリスクに対処するため、当社グループでは、各製造拠点においてグループ共通の管理基準に基づく厳格な自己管理のもと操業を行っております。また、施設診断やコンプライアンス(法令遵守)監査を実施することで、公害事故の発生の未然防止及び再発防止策の立案に努めております。しかしながら、予期せぬ事態により産業事故や公害事故が発生し、当該事故が当社グループの業務及び地域社会に大きな影響を及ぼした場合、これに伴い生ずる社会的信用の失墜、補償等を含む事故対応費用、生産活動の停止による機会損失及び顧客に対する補償等により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(人材確保に係るリスク)

当社グループは、多岐にわたる事業領域においてグローバルに事業を展開しております。こうした事業活動を支える人材の確保や流出防止ができない場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、人材の育成と活用を経営の最重要事項として位置付けており、「住友事業精神」にある「事業は人なり」の精神を今に受け継いできております。こうした考え方に立脚し、あらゆる人材が仕事を通じて成長し自己実現を図れ、社会に貢献できる会社を目指し、ダイバーシティ&インクルージョンの推進や働きやすい環境の整備、健康経営の推進を行っています。また強固な人材・組織基盤づくりのため、エンゲージメントを強化する施策や競争力のある報酬処遇制度を整備する他、各種施策を進めることで人材の確保や流出防止に努めるとともに、ものづくり教育や高度な専門性を磨く研修などを通じ、人材の育成にも努めております。また、ものづくり人材や高度な専門性、技術を保有する人材の採用を進めるため、世界各地においてグローバルまたは各地域で活躍する人材の採用活動を行い、人材確保に努めております。

(金利の変動によるリスク)

当社グループは、資金需要、金融市場環境及び調達手段のバランスを考慮し資金調達を実施しております。当社グループでは、設備投資のための長期安定的な資金を必要とするため、長期固定金利の長期借入や社債発行による調達が中心となっていることから、金利の短期的な変動による影響は比較的受けにくくなっておりますが、金利が中長期的に上昇した場合は、長期借入や社債等による資金調達コストを上昇させ、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(為替レートの変動によるリスク)

当社グループは世界各地で製造・販売活動を展開し、グループ各社は所在国通貨やそれ以外の通貨で売買等取引を行っており、各通貨の短期的な為替変動による変動リスクがあります。

当社グループでは、売買等取引通貨の一致、為替予約取引等の手段により各通貨の短期的な為替変動による影響を最小限にとどめるようにしておりますが、中長期にわたる大幅な為替変動は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループは、在外連結子会社及び在外持分法適用関連会社の個別財務諸表を主に現地通貨ベースで作成しており、連結財務諸表の作成時に円換算しております。従って、現地通貨ベースでの業績に大きな変動がない場合でも、期末円換算時の米国ドル、ユーロ等の為替レート変動が業績に影響を及ぼす可能性があります。

(原材料等の調達に係るリスク)

当社グループは、電線・ケーブルなど銅を主たる原材料とした製品を多数有しております。このうち主要な製品の販売価格については、ロンドン金属取引所の市況価格を反映した銅価格に基づいて決定するという商慣習が普及しており市況価格変動リスクを回避しております。しかし一部の製品についてはこのような価格決定方法を採用していないため、数年に一度起こる急激な市況価格の上昇は、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性がありますが、価格転嫁交渉により損益への影響は最小限にとどまると考えております。

その他の非鉄金属、鉄鋼、石油化学製品、半導体等の原材料や副資材の調達についても、当社グループでの共同購買など有利購買活動を強化しておりますが、各産業の構造変化による諸資材の急激な市況価格の上昇や需給の逼迫が当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また希少金属については、産出国の政策による輸出規制や供給制限で必要量の調達が困難となる可能性があり、他の原材料や副資材についても、自然災害、感染症の蔓延、供給者の倒産、戦争、テロ、ストライキ等により、必要量の調達が困難となる可能性があるため、代替が利かない重要部材は戦略的に備蓄を行う等の対策を講じ、影響を最小限にとどめるよう取り組んでおります。

(取引先の信用リスク)

当社グループは、国内外の様々な顧客と取引を行っており、掛け売りなどの信用供与を行っています。取引相手の財政状態の悪化や経営破綻等が生じた場合、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに悪影響を及ぼす可能性があります。

かかるリスクへの対応として、当社グループでは、定期的な信用調査や信用リスクに応じた取引限度額の設定、債権回収状況のモニタリングなど、信用リスクの管理のための施策を実施しています。

(保有有価証券の時価の下落によるリスク)

当社グループは、取引先との長期的・安定的な関係の構築・強化や、事業・技術提携の円滑化を主たる目的として、ROE、ROICへの影響や寄与等を勘案し、中長期的な企業価値向上に資するかという観点より、取引先等の政策保有株式を保有しております。保有目的に適さなくなった株式、あるいは中長期的な企業価値の向上に資することのなくなった株式は処分の検討を行っております。また原則、売買目的の株式は保有していないため、株式市況の変動が経営に直接与えるリスクは比較的小さいと考えられますが、株式市況が大幅に悪化した場合は、自己資本比率を低下させる可能性があります。

(退職給付債務に係るリスク)

当社グループは、ポイント制の退職一時金、確定給付企業年金の他、確定拠出年金制度を導入しています。従業員の退職給付債務及び費用については、割引率等数理計算上で設定される前提条件や年金資産の長期期待運用収益率に基づき算出しております。実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、さらには、株式や債券等の価格下落に伴う年金資産の時価減少や、長期金利の低下に伴う割引率の引き下げなどにより、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

企業年金基金の年金資産運用にあたっては、運用基本方針の策定、資産構成や資産配分の決定、運用機関の選定等に際し、外部の運用コンサルティング会社の意見を聴取し、理事長の諮問機関として設けている財務担当役員や労働組合の代表者等からなる資産運用委員会に諮り助言を受けた上で、理事会、代議員会での議決を行う体制となっております。

(知的財産に係るリスク)

当社グループは、特許権、商標権等の知的財産権の取得により自社事業の保護を図るとともに、他社の知的財産権に対しても細心の注意を払っております。事業活動推進時には、知的財産権問題には十分に留意しておりますが、製品技術の進化、海外での事業活動の拡大、デジタル化の進展に伴う情報通信技術の利用やアプリの導入、流通経路の複雑化等により、当社グループの製品が意図せず他社の知的財産権を侵害した場合、販売中止、設計変更等の処置をとらざるを得ない可能性があります。当社グループ事業に関わる部品等の供給者、当社製品の顧客、事業の協業先など、多くの関係先と市場環境に関する情報を共有し、適切な契約を締結することにより、問題の発生抑止と影響の軽減を図っております。

各国の法制度や執行状況の相違により、他社による当社グループの知的財産権への侵害に対して常に十分な保護が得られるとは限らず、市場の確保が難しくなる可能性があります。このため、事業を展開する各国・地域の最新の知的財産環境情報を収集し、事業防衛に効果的な権利網の構築を図っております。

(情報の流出及びサイバーセキュリティに関するリスク)

当社グループは事業活動を通じて、自社及び顧客・取引先の営業秘密、ノウハウ、データ等の機密情報を保有しています。また国内外において20万人を超えるグループ従業員の個人情報も有しております。競争力の源泉としての機密情報や、世界的に規制強化の動きがある個人情報は、企業における管理の重要性が増しております。また、近年は、IoTやDXの活用に伴い生産システムやサプライチェーンも含めたネットワーク環境の重要性が増しており、さらには生成AIの安全な活用が急務となっています。

しかしながら、サイバー攻撃が増加・巧妙化しており、当社や国内外の関係会社もしくは関係取引先等へのランサムウェア、コンピューターウイルス感染、不正アクセス等のサイバー攻撃や、故意・過失、その他予期せぬ事態から、当社製品やサービスが影響を受け、情報漏えい、システム停止や重要業務の停止等、海外拠点も含めた当社グ

ループの事業活動に影響する可能性は皆無ではありません。

このような事態が生じた場合、当社グループの社会的信用の失墜、ブランドイメージの低下、損害賠償や規制当局による金銭的な賦課の発生(EU一般データ保護規則(GDPR)では最大当社グループ売上高の4%に上る場合がある)などにより、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

これらのリスクに対し、機密情報や個人情報の秘密保持、情報機器やクラウドサービス等の利用については、社内規程の整備、情報開示先との契約締結、個人情報保護方針の制定・公開、それらの教育による周知徹底、事故時の報告を含む管理体制の整備を行っております。加えて、当社グループにおける情報セキュリティマネジメントの強化とセキュリティ対策の高度化を進め、リスク低減に努めております。

具体的には、国際標準に準拠、最新の知見を反映した情報セキュリティポリシーの下「業務システム」「生産設備」「製品」の領域において、部門・関係会社に責任者を任命して取り組んでいます。業務システムでは、ウイルス対策や脆弱性対応などの基本対策を徹底し、セキュリティ教育や攻撃メール訓練などによる従業員の意識向上にも注力しています。生産設備では、業務と生産設備のネットワークを分離すると共に、生産設備のパソコンのセキュリ

ティ対策を徹底しています。製品では、全社のセキュア開発運用対策標準に従って、製品・サービスのセキュリティ向上に努めています。

(製品及びサービスの欠陥によるリスク)

当社グループは国内外で事業を展開していますが、グループ共通の「住友電工グループ 品質管理基準」に基づいて体系化した品質管理の仕組みを各部門において構築し、製品及びサービスの品質向上や品質不正の未然防止に万全の注意を払っております。全社機能としては、各部門の業務の仕組みや運用状況の点検や監査、各階層を対象とした品質管理教育を系統立てて行い、品質管理基準の遵守に努めております。また、万一の事態に備え、製造物責任保険に加入する等の対策を講じております。しかしながら、予期せぬ事態により、製品及びサービスの欠陥等の品質問題が発生し、顧客に対する製品納入の遅れや工場の生産性の低下、さらには大規模なリコールや製造物責任につながる可能性は皆無ではありません。このような事態が生じた場合、当社グループの社会的信用の失墜、ブランドイメージの低下、製品の回収費用や損害賠償の発生などにより、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであり、その達成を保証するものではありません。

 

(1) 経営成績等の状況の概要

①  経営成績

 

売上高

(百万円)

営業利益

(百万円)

経常利益

(百万円)

親会社株主に帰属

する当期純利益

(百万円)

当連結会計年度

4,402,814

226,618

215,341

149,723

前連結会計年度

4,005,561

177,443

173,348

112,654

増減率(%)

9.9

27.7

24.2

32.9

 

当連結会計年度の世界経済は、米国は個人消費が底堅く推移して景気回復が続きましたが、欧州は金融引締めの継続により景気は足踏み状態となり、中国は不動産市況悪化などにより成長ペースが鈍化しました。日本経済は、企業収益改善を背景に設備投資拡大に向けた動きもあり、世界的な物価上昇の影響は受けつつも、景気は緩やかに回復しました。

当社グループを取り巻く事業環境につきましては、情報通信分野では顧客の投資抑制や在庫調整により厳しい事業環境が続きましたが、自動車分野では半導体等の部品供給不足の緩和に伴い自動車生産の回復が進んだほか、環境エネルギー分野でも旺盛な需要が継続しました。このような環境のもと、当連結会計年度の連結決算は、売上高は、ワイヤーハーネス、防振ゴム、電力ケーブルなどの拡販に努め、また円安の影響もあり、4,402,814百万円(前連結会計年度4,005,561百万円、9.9%増)と前連結会計年度に比べ増収となりました。利益面では、売上増加に加えて、徹底した生産性改善やコスト低減、売値改善に努め、営業利益は226,618百万円(前連結会計年度177,443百万円、27.7%増)と前連結会計年度に比べ増益、営業利益率は5.1%(前連結会計年度4.4%、0.7ポイント上昇)となりました。営業外収益は、持分法による投資利益の増加などにより12,052百万円増の44,048百万円、営業外費用は、支払利息の増加などにより19,234百万円増の55,325百万円となり、経常利益は215,341百万円(前連結会計年度173,348百万円、24.2%増)と前連結会計年度に比べ増益となりました。特別利益では投資有価証券売却益66,834百万円を計上しました。特別損失では、固定資産除却損5,834百万円、減損損失9,421百万円、事業構造改善費用15,613百万円に加え、事業損失引当金繰入額12,762百万円を計上し、合計では43,630百万円となりました。この結果、税金等調整前当期純利益は238,545百万円となりました。ここから法人税等69,584百万円及び非支配株主に帰属する当期純利益19,238百万円を差し引いた結果、親会社株主に帰属する当期純利益は149,723百万円(前連結会計年度112,654百万円、32.9%増)と前連結会計年度に比べ増益となりました。また、棚卸資産の圧縮など資産効率の改善にも取り組み、税引前ROICは7.6%(前連結会計年度6.6%)と、前連結会計年度を上回る結果となりました。

 

セグメントごとの経営成績は次のとおりです。

 

売上高

営業利益又は営業損失

前連結会計年度

(百万円)

当連結会計年度

(百万円)

増減率

(%)

前連結会計年度

(百万円)

当連結会計年度

(百万円)

増減率

(%)

環境エネルギー

928,239

979,977

5.6

37,920

42,890

13.1

情報通信

250,325

206,074

△17.7

21,926

△11,552

自動車

2,186,849

2,596,404

18.7

55,745

144,674

159.5

エレクトロニクス

366,013

356,478

△2.6

38,349

29,297

△23.6

産業素材他

363,296

364,185

0.2

23,978

21,067

△12.1

合計

4,094,722

4,503,118

10.0

177,918

226,376

27.2

調整額

△89,161

△100,304

△475

242

連結損益計算書

計上額

4,005,561

4,402,814

9.9

177,443

226,618

27.7

 

環境エネルギー関連事業は、電力ケーブルや電動車向けのモーター用平角巻線の拡販により、売上高は979,977百万円と51,738百万円(前連結会計年度比5.6%)の増収となりました。営業利益は、売上増加に加えて、銅価変動の影響もあり、42,890百万円と4,970百万円の増益となりました。売上高営業利益率は4.4%と0.3ポイント上昇しました。なお、工事・プラント受注高は440,442百万円(当連結会計年度末の受注残高は493,210百万円)と、前連結会計年度比69,582百万円(18.8%)増加しました。

セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ64,099百万円増加の982,852百万円となりました。

情報通信関連事業は、通信事業者やデータセンター事業者の投資抑制と在庫調整の影響により、光ファイバ・ケーブルや光・電子デバイスの需要が減少し、売上高は206,074百万円と44,251百万円(17.7%)の減収となりました。営業損失は、売上減少に加えて、数量減少に伴う生産性悪化などもあり、11,552百万円と33,478百万円の悪化となりました。

セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ9,635百万円減少の287,333百万円となりました。

自動車関連事業は、半導体等の部品供給不足の緩和に伴う自動車生産の回復により、ワイヤーハーネスや自動車電装部品、防振ゴムの需要が増加し、売上高は2,596,404百万円と409,555百万円(18.7%)の増収となりました。営業利益は、売上増加に加えて、生産性の改善などもあり、144,674百万円と88,929百万円の増益となりました。売上高営業利益率は5.6%と3.1ポイント上昇しました。

セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ213,570百万円増加の2,173,494百万円となりました。

エレクトロニクス関連事業は、電子ワイヤー、熱収縮チューブの民生用途の需要が減少したことに加え、FPCの主要顧客向けの需要減少もあり、売上高は356,478百万円と9,535百万円(2.6%)の減収となりました。営業利益は、売上減少に加えて、人件費の上昇などもあり、29,297百万円と9,052百万円の減益となりました。売上高営業利益率は8.2%と2.3ポイント低下しました。

セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ33,339百万円増加の313,255百万円となりました。

産業素材関連事業他は、超硬工具の需要が中国や日本国内で減少しましたが、円安の影響により、売上高は364,185百万円と889百万円(0.2%)の増収となりました。営業利益は21,067百万円と、需要減少に加えて、人件費の上昇もあり、2,911百万円の減益となりました。売上高営業利益率は5.8%と0.8ポイント低下しました。

セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ99,283百万円増加の994,403百万円となりました。

なお、各セグメントの営業利益又は営業損失は、連結損益計算書の営業利益又は営業損失に対応しております。

②  財政状態

 

資産合計

(百万円)

負債合計

(百万円)

純資産合計

(百万円)

自己資本比率

(%)

当連結会計年度末

4,365,397

1,933,509

2,431,888

50.6

前連結会計年度末

4,013,008

1,902,189

2,110,819

47.3

増減

352,389

31,320

321,069

3.3

 

当連結会計年度末の資産合計は、主に年金資産の時価上昇に伴う退職給付に係る資産の増加に加え、保有株式の時価上昇に伴う投資有価証券の増加などにより、前連結会計年度末に比べ352,389百万円増加し、4,365,397百万円となりました。

当連結会計年度末の負債合計は、借入金減少の一方で、社債や繰延税金負債の増加などにより、前連結会計年度末に比べ31,320百万円増加し、1,933,509百万円となりました。

当連結会計年度末の純資産合計は、配当金支払の一方で、親会社株主に帰属する当期純利益の計上や為替換算調整勘定及び退職給付に係る調整累計額の増加などにより、前連結会計年度末に比べ321,069百万円増加し2,431,888百万円となりました。自己資本比率は50.6%と、前連結会計年度末対比3.3ポイント上昇しております。

③  キャッシュ・フロー

 

営業活動による

キャッシュ・フロー

(百万円)

投資活動による

キャッシュ・フロー

(百万円)

財務活動による

キャッシュ・フロー

(百万円)

現金及び現金同等物の残高

(百万円)

当連結会計年度

393,465

△123,809

△292,313

268,273

前連結会計年度

265,191

△147,821

△98,290

279,432

増減

128,274

24,012

△194,023

△11,159

 

まず、営業活動によるキャッシュ・フローで393,465百万円の資金を獲得(前連結会計年度比128,274百万円の収入増加)しました。これは、税金等調整前当期純利益238,545百万円と減価償却費206,331百万円との合計、すなわち事業の生み出したキャッシュ・フローが444,876百万円あり、これに運転資本の増減などを差し引いた結果であります。

投資活動によるキャッシュ・フローでは、123,809百万円の資金を使用(前連結会計年度比24,012百万円の支出減少)しました。これは、設備投資に伴う有形固定資産の取得による支出179,323百万円や投資有価証券の売却による収入70,141百万円などがあったことによるものであります。

なお、営業活動によるキャッシュ・フローから投資活動によるキャッシュ・フローを差し引いたフリー・

キャッシュ・フローは、269,656百万円のプラス(前連結会計年度は117,370百万円のプラス)となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローでは、292,313百万円の資金の減少(前連結会計年度は98,290百万円の資金の減少)となりました。これは、社債の発行による収入があった一方、借入金の減少や配当金の支払などが

あったことによるものであります。

以上により、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末より11,159百万円(4.0%)減少し268,273百万円となりました。また、当連結会計年度末における有利子負債は、前連結会計年度末より158,869百万円減少し801,499百万円となり、有利子負債から現金及び現金同等物を差し引いたネット有利子負債は、147,710百万円減少し533,226百万円となりました。

④  生産、受注及び販売の実績

当社及び連結子会社の生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。

このため生産、受注及び販売の状況については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ①  経営成績」に記載のセグメントごとの経営成績に関連付けて示しております。

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

①  経営成績等の状況の分析

当社グループは、長期ビジョン「住友電工グループ2030ビジョン」の実現に向けたマイルストーンとして当連結会計年度からスタートした「中期経営計画2025」において、経営上の目標の達成状況を、売上高、営業利益、税引前ROICを重要な指標として測定することとしております。

当連結会計年度における「売上高」は4,402,814百万円(前連結会計年度比397,253百万円増)、「営業利益」は226,618百万円(前連結会計年度比49,175百万円増)、「税引前ROIC」は7.6%(前連結会計年度比1.0ポイント上昇)と、いずれの指標も前連結会計年度を上回る結果となりました。なお、営業利益の前連結会計年度比での増減要因は以下のとおりとなっております。

前期営業利益

177,443

百万円

売上数量の増加

26,000

 

売値の低下・品種構成の変化

△34,000

 

銅価・資材価格変動の影響

3,000

 

物流コストの減少

25,000

 

収益体質の改善

33,000

 

為替変動の影響

10,000

 

その他

△13,825

 

当期営業利益

226,618

 

 

②  キャッシュ・フローの状況の分析、資本の財源及び資金の流動性に係る状況

当社グループの資金需要のうち主なものは、事業運営に必要な設備資金や運転資金であり、必要資金については自己資金の充当及び金融機関からの借入や社債発行等により調達しております。

当社グループは、健全かつ強固な財務体質を維持することを基本方針とし、自己資本比率を50%水準に維持することとしております。当連結会計年度末における「自己資本比率」は50.6%(前連結会計年度末比3.3ポイント上昇)となりました。

また、資金の流動性を確保するために、金融機関とコミットメントライン契約を締結するとともに、当連結会計年度末現在において、日本格付研究所(JCR)より「AA(長期)、J-1+(短期)」、格付投資情報センター(R&I)より「AA-(長期)、a-1+(短期)」の格付を取得しております。

キャッシュ・フローの状況については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ③  キャッシュ・フロー」に記載のとおりであります。

 

③  重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。また、連結財務諸表を作成する際には、当連結会計年度末日時点の資産・負債及び当連結会計年度の収益・費用を認識・測定するため、合理的な見積り及び仮定を使用する必要があります。当社グループが採用している会計方針のうち重要なものについては、「第5  経理の状況」の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」及び「重要な会計方針」に記載しております。また、当社グループが用いた会計上の見積りのうち重要なものについては、「第5  経理の状況」の「重要な会計上の見積り」に記載しております。

5【経営上の重要な契約等】

当連結会計年度において、経営上の重要な契約等の決定又は締結等はありません。

6【研究開発活動】

当社及び連結子会社は、「技術を創造し、変革を生み出し、絶えざる成長に努めます」との経営理念の下、社会の変革・伸長分野に焦点を合わせ、オリジナリティがあり、かつ収益力のある新事業・新製品の開発に努めております。また、将来の社会ニーズを踏まえ、当社グループの次代の成長を担う研究テーマの発掘・育成にも積極的に取り組んでおります。

環境エネルギー関連事業、情報通信関連事業、自動車関連事業、エレクトロニクス関連事業、産業素材関連事業他の各事業分野及び共通基盤技術における当連結会計年度の主な成果は以下のとおりであります。

また、当連結会計年度における研究開発費の総額は141,992百万円であります。

(1) 環境エネルギー関連事業

超電導や次世代送電網の分野でのネットワーク技術を活用したエネルギーソリューション事業など、新しい分野への進出を図るとともに、蓄電池、電力ケーブルなどエネルギー分野での積極的な開発を推進しております。

超電導の分野では、溶液塗布熱分解法による低コスト希土類系高温超電導線材の実用化に取り組んでおります。また、世界初の安定した超電導接続技術を開発し、永久電流で磁場を発生することが可能なコイルを実現いたしました。これらの技術により、高温超電導線材のNMR(核磁気共鳴装置)やMRI(磁気共鳴画像)への展開や小型核融合炉用マグネットへの応用が期待できます。

次世代送電網の分野では、自然エネルギーの導入、省エネルギー、電力網の分散管理といった社会ニーズに対応すべく、レドックスフロー電池(蓄電池)について、大規模システムによる実証運転を実施しております。また、分散型電源を統合的に監視し最適な制御を行うためのエネルギーマネジメントシステム、送電線の増容量化と過負荷保護を実現する架空線ダイナミックレーティングシステムの開発にも注力しております。

HEV(ハイブリッド自動車)などの環境対応車に多用されるニッケル水素電池の集電体として上市しているニッケル製セルメットを各種燃料電池、水素製造電極向けに展開するため、高温耐久性を付与した耐熱セルメットや、耐強酸性を高めた耐食セルメットを開発しております。また、EV(電気自動車)やHEV等の環境対応車の分野では、固有の高分子材料の合成技術を駆使し、駆動モーター等に適用する高性能平角巻線の開発にも取り組んでおり、モーターの高性能化に貢献する薄肉皮膜で高度な電気絶縁性を発揮する次世代平角巻線の開発に注力しております。

電力ケーブルの技術開発では、長距離直流連系線、再生エネルギー関連の需要伸長に対応すべく、超高圧直流

ケーブル、洋上風力向けケーブルの開発や送電線路に用いられるシステム製品を開発しております。

住友電設㈱では、社会や顧客の多様化するニーズに応えるべく、脱炭素化社会実現に向けた技術、省エネルギー技術、IoTや5Gを活用した監視・エネルギー管理等のビルマネジメントシステム、工場向け統合セキュリティシステム、ローカル5Gシステム、HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)による食品衛生管理をクラウドで一元管理するシステムなど、最新技術、情報化技術を活用し、新技術、新工法、各種システムの開発に取り組んでおります。

日新電機㈱では、電力システム改革の進展や環境配慮への要請の高まり、持続可能な社会に向けた動きに対応すべく、研究開発に取り組んでおります。

電力・環境システム分野では、コンパクト化及び環境負荷の低減を狙いとした製品開発と共に、多様な分散型電源が導入拡大される社会において電力供給を支えるための技術や製品、システムの開発、工場・水処理設備の進化に資する監視制御、蓄電池を含むエネルギー管理やIoT関連の技術や製品、システムの開発を進めております。

ビーム・プラズマ分野では、社会を支える材料・部品・デバイスの進化に資するべく、半導体製造用イオン注入装置や電子線照射装置、ファインコーティング装置の技術研究や製品開発を進めております。

また、送配電機器・エネルギーソリューション事業を強化すべく、日新電機㈱の研究開発部門を融合した新たな組織、日新住電エネルギーシステム開発センターを2024年4月1日に開設いたしました。

当事業に係る研究開発費は21,345百万円であります。

(2) 情報通信関連事業

光通信関連製品、デバイス関連製品、化合物半導体材料、ネットワーク・システム関連製品などの分野において、総合的に研究開発を行っております。

光通信関連製品では、光ファイバ・ケーブルの伝送容量向上や長距離化に向け、新タイプの細径光ファイバや高耐曲げ性・高耐側圧性の光ファイバの開発と製品化に取り組んでおります。また、伝送容量の飛躍的拡大に向けては、1本の光ファイバ中に複数のコアを有するマルチコア型光ファイバ及び関連光部品・接続技術の実用に向けた開発・実証を更に進めております。一方で、従来のテレコム光通信で培った技術の展開として、データセンターにおける情報機器内や情報機器間の高速大容量伝送に適した光配線製品を開発しております。特に、新型光コネクタや情報機器内の高密度光配線を実現する光部品などの製品開発と市場開拓を進めております。

デバイス関連分野では、光通信用デバイス及び無線通信用電子デバイス関連の新製品をいち早く市場に投入することにより、事業拡大に努めております。光通信用デバイス関連製品では、データセンター用機器等に搭載される支線系対応製品や、長距離幹線機器に対応したコヒーレント伝送用デバイスを開発しております。無線通信デバイス関連製品では、高効率・高出力のGaN(窒化ガリウム)トランジスタを開発し、携帯基地局用途に製品化しておりますが、5G及び次世代通信用にさらなる効率改善、高周波/広帯域化に取り組んでおります。また、これらデバイス技術の蓄積を活かし、多様な分野への応用が期待できる近赤外、中赤外領域の製品開発も進めております。

化合物半導体材料では、高速通信用の光デバイスや無線通信用電子デバイスなどに用いられるInP(インジウムリン)及びGaAs(ガリウムヒ素)系エピタキシャルウエハの新製品開発を進めております。

ネットワーク・システム関連分野では、持続可能で強靭な社会を支える情報通信機器・システムの研究開発を推進しております。光・無線技術及びその融合技術を活用し、5G/Beyond 5G向けネットワークやオール光ネットワークを支える光伝送システム、無線伝送システム及びそのコアとなる部品の研究開発に、通信事業者とも連携しながら取り組んでおります。

当事業に係る研究開発費は21,656百万円であります。

(3) 自動車関連事業

モビリティ分野の主要製品である自動車関連製品においては、顧客目線の開発・提案が求められており、マーケティング機能を強化し、車の進化に対応した新技術をタイムリーに製品化することが重要となります。そこでマーケティングから製品開発までを一貫体制で実施することによる方針決定のスピードアップや重複機能の解消による効率化、及びループシナジーの更なる推進を目的に、2023年10月に当社のCAS-EV開発推進部が担当してきた自動車関連製品のマーケティングと先行開発に係る事業を㈱オートネットワーク技術研究所へ承継し、新たな研究開発体制を整備いたしました。新体制の㈱オートネットワーク技術研究所では、CASEやSDGsなどの社会の大きな流れに対応すべく顧客とのパートナー活動を深化させ、得意とする情報通信やエネルギー関連技術を活かしたワイヤーハーネス及びエレクトロニクス機器などの新製品の開発を行っております。

ワイヤーハーネスに関しては、次世代車載システムにパワー供給や情報伝送するためのネットワークアーキテクチャを顧客と共に構想し、システム設計を行うと共に、それに必要な要素技術の開発を進めております。例えば自動運転や安全運転支援などで必要になる高速通信用ハーネス・コネクタの開発を進めております。また本格普及が進んでいるEV・HEV向けの高圧ハーネス・コネクタ、バッテリー内配線モジュールなどの開発にも取り組んでおります。

エレクトロニクス機器に関しては、給電・分配・変換・蓄電に関わる車載電源機器や、車内の情報配線のハブ機能となる車載ゲートウェイなどの開発を進めております。さらに当社事業であるエネルギーや通信の社会基盤と車が繋がる変革に対応した新しいシステムやサービスの開発にも取り組んでおります。

一方、新製品の開発効率化や高いレベルの品質確保に不可欠な試験・分析・評価・解析技術など基盤技術の開発を推進しております。環境試験装置や分析装置等の評価設備の充実を図るとともに、DX化を推し進めCAE(Computer-Aided Engineering)技術を用いたシミュレーション技術も充実させており、強度、発熱などを予測し製品開発を効率化しております。またAIを活用した材料の選定、性能予測、最適化などを行うことで、大幅な工数削減を実現しております。

また、交通インフラ関連では、車両・歩行者等のセンサの開発、コネクティッドカー管理やEVを含むエネマネ需給最適化に資するクラウド技術の開発を行っております。

住友理工㈱では、自動車分野でCASEをはじめとした技術革新に対応した製品や関連技術などについて、研究開発・技術確立を進めております。また、DX推進の一つとして独自の加硫シミュレーション技術の確立に取り組んでおります。

新商品開発センターでは、圧力の検知により、バイタルデータ(呼吸成分や心拍成分などの生体情報)を推定することが可能な独自開発の「スマートラバー(SR)センサ」を応用し、ドライバーモニタリングシステムを開発中であります。国立研究開発法人産業技術総合研究所との連携研究室を2020年10月に設立し、実証実験を継続しております。さらに、EVで注目される熱マネジメントへの対応製品として、車室内の断熱効果を高める薄膜高断熱材「ファインシュライト™ 」は、その断熱性能が認められ令和4年度愛知発明表彰「愛知発明賞」を受賞したほか、冷却系ホースや電池用の断熱材、バッテリー冷却板などの開発も進めており、省エネや環境負荷軽減に貢献できる製品でさらなる技術開発を進めます。

自動車分野以外でも、エレクトロニクス分野、インフラ・住環境分野、ヘルスケア分野などにおいて、材料技術・センサ技術等を活かした新製品・新サービスの研究開発を進めており、ヘルスケア分野では、SRセンサを応用した「モニライフシリーズ」が令和5年度中部地方発明表彰「文部科学大臣賞」と、令和5年度愛知発明表彰「発明奨励賞」を受賞いたしました。

当事業に係る研究開発費は84,970百万円であります。

(4) エレクトロニクス関連事業

当社固有の材料技術、マイクロ・ナノテクノロジーをベースに、FPC、電子ワイヤー製品、照射架橋製品、多孔質フッ素樹脂膜製品など広範な新材料や部品の開発を行っております。FPCでは、携帯機器や医療機器等向けの次世代微細回路製品、車載向けの高耐熱性電子回路製品、5Gやミリ波など高周波用途向け部材の開発に取り組んでおります。また、電子デバイス用の低線膨張率の高放熱素材、独自の多孔化技術を適用した半導体用途向けの微小孔径の多孔質フッ素樹脂膜の開発にも注力しております。

当事業に係る研究開発費は5,312百万円であります。

(5) 産業素材関連事業他

超硬合金、ダイヤモンド、立方晶窒化硼素、コーティング薄膜、特殊鋼線、鉄系焼結部品やセラミックスに関する当社固有の材料技術とプロセス技術を駆使し、切削用工具・研削用工具や超精密加工用工具、各種自動車機構部品、機能部品等の開発を進めております。

切削用工具・研削用工具開発においては、今後、市場が伸長していく航空機分野及び半導体分野を重点ターゲットとし、計算科学を活用した硬質材料の開発、コーティング技術開発を進めております。

ダイヤモンドでは、超精密加工や高品位加工用工具素材として使用することを目的として、独自の原料技術や超高圧技術で単結晶ダイヤモンド素材や新材料開発及び精密加工技術開発に注力しております。また、量子センサ用ダイヤモンド素材開発にも取り組んでおります。

当事業に係る研究開発費は8,710百万円であります。

今後の成長を担う新規分野への挑戦として、水素エネルギー社会を実現する技術開発を行っております。また次世代の電線や高強度材料として期待されるカーボンナノチューブの長尺化にも独自製法で取り組んでおります。

そのほか、脱炭素社会実現のキーデバイスとして期待されているSiCパワーデバイスでは、エピ基板及びデバイスの製品化を進めております。当社SiCエピ基板は高品質が好評で、生産能力増強を進めております。デバイスでは、当社独自構造のV溝型トランジスタを開発し、車載分野や産業機械分野への製品展開を進めております。

以上の各事業分野の研究開発及び生産、品質などを支える解析技術の分野では、電子顕微鏡による原子構造の観察や、ポリマーの分子構造解析など、最先端技術により、モノづくりの品質強化を行っております。これに加え、公益財団法人佐賀県産業振興機構・九州シンクロトロン光研究センターに当社グループ専用のビームラインを保有し、放射光による世界トップ水準の原子スケール解析を常時利用することで、製品開発の加速や知的財産権の強化などを進めております。また、大規模計算や計算科学など高度な計算機シミュレーション技術の開発に加え、計算処理能力向上にも注力しており、生産プロセスの改善、新製品設計最適化により、製品の信頼性向上を推進しております。その他、中国・蘇州市に中国解析センターを設置し、当社グループのグローバル展開を支えております。

モノづくり力を更に強化するために、IoTやAIを精度よく、かつ効率よく活用する技術開発を進めるとともに、改善事例をパターン化し、当社グループの様々な工場に対し、迅速に横展開するシステムの開発を進めてまいります。

また、新材料の研究開発を加速するために、MI(マテリアルズ・インフォマティクス)や、PI(プロセス・インフォマティクス)の研究開発を組織的に進めてまいります。

2020年度に伊丹製作所内に「CRystal Lab.」を開所し、部門横断的な研究開発の加速に取り組んでおります。大阪製作所内の研究本館「WinDLab」を研究・開発活動の中核とし、横浜製作所に情報通信分野の研究開発拠点を置き、米国カリフォルニア州のICS(Innovation Core SEI,Inc.)の他、欧州・中国等の海外の研究拠点を活用して、広い視野で事業の成長を目指します。

また、当社グループ全体として、これらの研究開発の成果を早期に収穫すべく努めるとともに、企業の社会的責任を自覚し、先進情報通信インフラ構築、省エネ、省資源、環境保護を一層前進させる研究にも注力してまいります。