第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

  当社グループは、「良いつながりを広げ新たな価値を提供する」ことを使命とし、次の経営方針及び行動指針の

 もと、企業価値を高める事業戦略を進めてまいります。

 (経営方針)

 ・多様で高品質な商品とサービスをグローバルに提供する

 ・常に自己革新に努め、成長の持続と社会的信用の向上を追求する

 ・企業統治を重視し、環境と安全に配慮しながら、企業価値の最大化に努める

 ・サステナビリティ基本方針のもとに持続可能な社会の実現に貢献する

 (行動指針)

 ・お客様の立場を考え「モノ作りのパートナー」として信頼される

 ・活発な意見交換を行い、情熱とスピードとチームワークで挑戦する

 ・各人が能力向上に努めるとともに、均等な機会と公平な評価を重視する

 ・グループの発展と社員の幸福を追求する

 

(2)経営環境

 世界経済は、世界的なインフレ圧力の緩和が見込まれるものの、ウクライナ、中東情勢や米中対立等の地政学リスクにより、当面は不透明な経営環境が続くものと予想されます。 エレクトロニクス業界におきましては、急速な技術革新(生成AIや5Gサービス、IoTの普及、自動車市場における電装化の進展等)により、市場規模は中長期にわたり一段と拡大していくものと予想されます。このような状況の中、当社グループは、競争が激化するエレクトロニクス業界において、市場環境の変化に柔軟に対応し、付加価値を創造し続けることで新たな需要を取り込み、以下「(3)経営戦略及び対処すべき課題」に記載の諸施策を実行することで、更なる企業価値向上を図ってまいります。

 

(3)経営戦略及び対処すべき課題

 当社グループは、2023年4月より3ヵ年の中期経営戦略をスタートいたしました。持続的な成長を図るため、高付加価値な商材及びサービスを提供し、国内外有力顧客や中長期的にポテンシャルのあるマーケット及び地域の攻略を図ると共に、M&A・アライアンス等にも積極的に取り組んでまいります。エレクトロニクスの力で豊かな未来を切り拓くべく、変化するお客様のニーズに応えられる総合力を持つとともに、持続可能な社会の実現に貢献し、人々の暮らしを豊かにする企業を目指し、企業価値の最大化に努めてまいります。

 

① 高付加価値型ビジネスの強化

 独自の企画開発、設計機能を強化することに加え、それらを基にしたモジュール化や完成品(ODM)の提案力を強化してまいります。また、高機能な日本製商材と価格競争力に優れた新興国製商材を使い分け、顧客の要望に合致した最適な解決策を提案してまいります。

 

② 国内外の有力顧客の開拓

 国内有力顧客、中国系及び米系有力顧客の獲得に向け、専属チームの新設や顧客開発拠点への当社出店など、経営資源の重点配分を行ってまいります。また、これまで強化してきた技術力・品質管理能力等を活用することで、顧客ニーズの深掘りを行い、競争力のある商材や付加価値のあるサービス等を提供して、顧客基盤の拡大を図ってまいります。

 

③ 自動車領域への注力

 CASE(コネクティッド、自動運転、シェアリング、電動化)化等の急速な技術革新に対応するため、経営資源を重点配分することに加え、豊田通商グループの持つ様々な機能、ノウハウ及び海外拠点網を活用し、さらなる成長スピードの加速を図ってまいります。

 

④ ポテンシャルエリアの本格開拓

 当社グループにとって開拓余地の大きいポテンシャルエリアである、欧米及びASEANの本格開拓を行ってまいります。欧米においては、主に自動車関連ビジネスへのリソースを積極的に投入し、グローバル顧客に対してのスペックイン活動を強化してまいります。ASEANにおいては、中国からの生産移管が進んでいることから、得意先の動向を注視し、当社グループのネットワークを活用することで、万全なフォロー体制を整えてまいります。また、完成品ビジネスにおける中国でのパートナー開拓の成功例を横展開する等、高付加価値型ビジネスを強化してまいります。

 

⑤ 開発部の機能強化

 事業創出の観点から開発部の機能を見直し、豊田通商グループや戦略地域・拠点との連携を強化してまいります。従来のマーケット推進機能はそのままに、マーケットの枠を超えて新規大型ビジネスの創出、投融資案件の模索、実行等、全社戦略の推進を行う部隊を設置し、戦略・事業創出機能を強化してまいります。

 

⑥ M&A・アライアンスによる顧客基盤・事業領域の拡大

 顧客基盤、事業領域の拡大を推進するため、当社マーケット戦略との整合性及びエレクトロニクス業界との親和性を重視しつつ、販路の拡大、技術及び人財の獲得等、積極的な投資を進めてまいります。

 

⑦ サステナビリティと人的資本への取り組み

 当社グループは、地球環境に配慮したビジネスの展開及び社会課題への取り組みを実践するため、事業を通じて優先的に取り組むべき重要課題(マテリアリティ)を特定しております。マテリアリティを軸とするワーキンググループを活性化させ、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。また、人財育成及びエンゲージメント向上施策等を実行し、人的資本経営を推進してまいります。

 

 

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(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、株主及び投資家の皆様を意識した経営を行うため、株主資本コスト(7~9%程度)を上回るリターンを測る経営指標としてROE(親会社所有者帰属持分当期利益率)の向上を目指します。また親会社の所有者に帰属する当期利益率も、商社の販売活動の結果である売上総利益の確保と、為替の管理も含めた事業活動全体の生産性を示す有効な経営指標と考えております。これらの数値の毎年の変遷を観測し、経営にフィードバックさせてまいります。

  連結でのROE及び親会社の所有者に帰属する当期利益率の変遷は以下のとおりとなっております。

 

2020年3月期

2021年3月期

2022年3月期

2023年3月期

2024年3月期

R   O   E

6.5%

7.0%

9.4%

11.5%

8.5%

親会社の所有者に

帰属する当期利益率

1.9%

2.0%

2.7%

3.0%

2.9%

    *当社は2024年3月期から、国際会計基準(IFRS)に基づいて連結財務諸表を作成しております。

     このため、2020年3月期実績から2022年3月期実績は日本基準を基に算出しており、

     2023年3月期実績は日本基準をIFRS基準に置きなおして算出しております。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ全般に関する考え方及び取組

 ①ガバナンス

 当社グループは、サステナビリティに関する具体的な取り組みについて、サステナビリティ委員会において、全社横断的な施策の検討・立案と進捗管理を行っております。同委員会は、代表取締役社長を委員長とし、業務執行取締役、コーポレート本部長、開発系執行役員等を委員として構成されており、その活動状況を定期的に取締役会に報告しております。

 また、同委員会の直下には、各マテリアリティ及び気候変動に関するワーキンググループを設置しております。各ワーキンググループは、それぞれの課題解決に向けた検討や取り組み状況のモニタリングを行い、その結果を定期的に同委員会に報告しております。

 

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②戦略

 当社グループは、世界のモノ作りパートナーとして、「良いつながりを広げ新たな価値を提供する」という経営理念のもと、地球環境に配慮したビジネスの展開及び社会課題への取り組みを、リスク対応と同時に重要な事業機会であると捉え、事業活動を通じて持続可能な社会の実現に貢献し、企業価値の向上を目指していくことを、サステナビリティ基本方針として掲げております。

 また、社会及び当社グループが直面する課題に対し、事業活動を通じて優先的に取り組むべき重要課題(マテリアリティ)を特定しております。中期経営戦略においても「サステナビリティと人的資本への取り組み」を重点施策の一つとしており、マテリアリティを軸に、ビジネスを通じた社会課題の解決につながる戦略を立案し、その実現へ貢献できるよう取り組んでまいります。

 主な戦略については、「第2 事業の状況」の「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)経営戦略及び対処すべき課題」、以下「(2)気候変動への対応」、以下「(3)人的資本」をご参照ください。

 

 ③リスク管理

 当社グループは、当社グループの事業活動や収益等に与える影響が大きいと考えられるサステナビリティに関するリスクに対し、サステナビリティ委員会において評価・対応策の検討を行い、同委員会直下のワーキンググループが、具体的な対応策を講じ、取り組み施策の成果としての指標をモニタリングしてまいります。

 なお、同委員会及びワーキンググループにおけるリスクへの対応状況は、定期的に取締役会に報告してまいります。

 

④指標及び目標

 当社グループは、マテリアリティを軸として、下記の指標を目標に掲げ、取り組んでおります。

 a.安心安全な社会の実現

  イ.交通事故のない社会の実現に向けて、自動運転・運転支援製品等の進化に貢献し、2026年3月期までに

    下記の数値を目標としております。

    ・安全運転支援に関連する売上収益 325億円(2024年3月期:248億円)

 

  ロ.適切な医療環境の整備に向けて、医療に対するアクセサビリティの向上や、医療機器の進化に貢献し、

    2026年3月期までに下記の数値を目標としております。

    ・医療機器に関連する売上収益 122億円(2024年3月期:64億円)

 

 b.環境負荷の低減と循環型社会の実現

  イ.環境負荷の低減と循環型社会の実現に向けて、クリーンエネルギーの普及等に貢献し、2026年3月期ま

    でに下記の数値を目標としております。

    ・環境対応車、クリーンエネルギー(太陽光、洋上風力等)に関連する売上収益 160億円(2024年3月期:

     107億円)

    ・環境配慮に関連する売上収益 55億円(2024年3月期:27億円)

 

(2)気候変動への対応

 当社グループは、気候変動問題を重要な社会課題として認識しており、当社グループにとってリスクであると同時

に新たな事業機会をもたらすものと捉え、事業活動を通じて脱炭素社会への移行への実現に貢献してまいります。

 

 気候変動に対する考え方

 ・事業活動においては、2021年度におけるGHG排出量(Scopel+Scope2)を基準に、2030年度までに50%削減すること

  を目指し、更に2050年度にカーボンニュートラルとすることを目標とします。

 ・当社グループは、世界のモノ作りパートナーとして、環境に配慮した部材の納入を通じ、脱炭素社会の実現に貢献します。

 

 ①ガバナンス

 気候変動に関するガバナンスは、サステナビリティ全般に関するガバナンスに組み込まれています。気候変動に関する課題については、気候変動に関するワーキンググループにて具体的な取り組みの検討・実施と結果のモニタリングを行います。取り組み内容とモニタリング結果については、サステナビリティ委員会において審議のうえ取締役会に上程・報告され、取締役会の監督・代表取締役の指示のもとで、課題への対応が適切に実施される体制を構築しております。

 なお、詳細については、「(1)サステナビリティ全般に関する考え方及び取組 ①ガバナンス」をご参照ください。

 

 ②戦略

 気候変動が当社グループの事業活動や収益等に与える影響について、IEA(国際エネルギー機関)及びIPCC(気候変動に関する政府間パネル)等の気候変動シナリオを参照し、リスクと機会の特定を行いました。

 なお、当社グループでは、2021年度におけるScope1+Scope2のGHG排出量を基準に、2030年度までに50%削減することを目指しており、今回のシナリオ分析においても同様に2030年を分析のタイムフレームとしています。

 

参照シナリオ

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気候変動リスクと機会

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 ③リスク管理

 気候変動に関するリスク管理は、サステナビリティ全般に関するリスク管理に組み込まれています。気候変動に関するリスクについては、サステナビリティ委員会及び気候変動に関するワーキンググループが具体的な対応策を講じ、取り組み施策の成果としての指標をモニタリングしてまいります。

 なお、詳細については、「(1)サステナビリティ全般に関する考え方及び取組 ③リスク管理」をご参照ください。

 

 ④指標及び目標

 当社グループは、脱炭素社会の実現に向けた方針として、当社グループの2021年度におけるScope1+Scope2のGHG排出量を基準に、2030年度までに50%削減することを目指し、さらに2050年度にカーボンニュートラルとする目標を策定しました。当該目標の達成に向けて、事業活動におけるGHG排出量の削減に取り組んでまいります。

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(3)人的資本

 ①戦略

 当社グループは、人財を重要な資産の一つと位置づけ、経営理念や中期経営戦略等の方向性を踏まえ、「求める人財像」や「人財育成方針」を定めております。また、人財の多様性についても積極的に受け入れ、組織の活性化を図るとともに活用機会の創出に努めております。

 この考え方をもとに、多様な価値観を尊重し、変化の激しい市場環境にスピードをもって対応できる人財を育成することが事業創造と成長の源泉であると認識しております。

 

 ・エレマテックの求める人財像

  会社の健全な成長に寄与し、企業価値向上に貢献できる人財

 

 1.倫理観をもって折り目正しく行動できる人財

 2.自己の成長に意欲を持ち、チャレンジし続けることができる人財

 3.多様な価値観を尊重し、国境に関係なくモノづくりのパートナーとして社会に貢献する人財

 4.情熱を持ってチームで成果を上げ続けることに喜びを感じる人財

 

 ・人財育成方針

 当社は、「新たな価値を創造し、顧客を開拓すること、業務の改善と質の向上及び完璧な業務遂行を追求し続けることで、社内外に貢献する人財を育成する」ことを人財育成方針としております。人財育成を中長期的な視点で捉え、その方針を支える6つの柱を定めた上で、取り組みを進めております。

 階層別研修をはじめとする各種研修の企画・実施や学習支援制度の充実を図ることに加え、全ての役職員間及び組織内のあらゆる階層における均等な機会を提供してまいります。

 

 <方針を支える柱>

 1.初期教育の重点化  新卒入社後3年以内は、同質レベルでの教育を集中して行う

 2.計画的育成     新卒入社後10年以内に当社のコアを担う人財とするべく、計画的に育成する

 3.均等な機会     業務に必要な事項については、教育機会を平等に与える

 4.自己革新支援    能力向上に努める意欲がある者に、最大限の支援と教育機会を与える

 5.多様な価値観の理解 多様な価値観を理解して、グローバルな視点での業務遂行が可能な人財に育成する

6.育成異動      個人の成長度合いにあわせ、業務範囲の拡大と知識・スキル・経験値の向上を目的と

            した計画的な異動を実施する

 

 なお、当社グループは、多数の国・地域に進出して事業活動を行っております。円滑に事業活動を行うためには、各国・各地域の文化・風土に合わせた人財育成が肝要であると考えており、グループ各社において、それぞれ人財育成に取り組んでおります。そのため、上記は、連結グループで主要な事業を営む当社単体における人財育成方針を記載しております。

 

 ・社内環境整備方針

 当社グループは、人種、国籍、性別、年齢が異なる人々が活き活きと協業する多様性が確保され、全ての役職員間及び組織内のあらゆる階層における平等な機会とオープンなコミュニケーションが促進されることを目指し、人財育成、職場環境整備等に積極的に取り組んでいきたいと考えております。環境整備については、多様性のあるオープンな職場環境を促進する事を目指し、すでに取り組んでいる育児介護の両立支援制度等、中長期的なキャリア形成に貢献する支援制度等の環境整備を進めてまいります。

 また、人財の多様性を促進するにあたり、「女性役職員の登用」「外国人財の登用」「中途採用者の登用」について目標を掲げ、取り組んでおります。

 

 ②指標及び目標

 当社グループは、人財の多様性を促進するにあたり、下記の指標を目標に掲げ、取り組んでおります。

 

a.女性役職員の登用

 各世代層のパイプライン形成とキャリア意識醸成及び環境整備に継続的に取り組み、将来的に経営の意思決定に関わる女性役職員を増やすため、2030年度までに下記の数値を目標としております。

  ・総合職女性社員の採用比率 30%(2024年3月期:30.6%)

  ・総合職の女性社員比率   15%(2024年3月末時点:9.6%)

  ・女性管理職比率      5%(2024年3月末時点:1.9%)

 

b.外国人財の登用

 人財育成の強化、人事制度の整備等を進め、グローバルでの競争優位を実現するため、2030年度までに下記の数値を目標としております。

  ・海外現地法人の上級管理職に就く外国人財 50名程度(2024年3月末時点:40名)

 

c.中途採用者の登用

 様々なバックグラウンド、専門性を有する人財を積極的に採用しており、管理職の中途採用者比率は60%以上、役員においては70%以上の水準を占めております。今後も引き続き、経営人財、専門人財を確保するとともに、人種、国籍、性別、年齢等の異なる多様な人財の確保を図るため、下記の数値を目標としています。

  ・総合職に占める中途採用者比率 50%程度を維持(2024年3月末時点:68.9%)

 

 なお、上記a.c.については、連結グループで取り組みを進めているものの、関連する指標のデータ管理を全てのグループ会社で行っておらず、連結グループでの記載が困難であることから、主要な事業を営む当社単体における指標及び目標を記載しております。

 

 「管理職に占める女性労働者の割合」「男性労働者の育児休業取得率」「労働者の男女の賃金の差異」については、「第1 企業の概況」5.従業員の状況(4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異をご参照ください。

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、株主及び投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクには、以下のようなものがあると考えております。当社グループは、これらのリスクが将来発生し得るという認識のもと、発生の回避及び発生した場合の対応に努めてまいります。ただし、これらは全てのリスクを網羅したものではなく、現時点では予見できないもの、もしくは現時点では重要とは認識していないリスクの影響を将来受ける可能性があります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

  (1)エレクトロニクス業界の業況に関するリスク

 当社グループは、カーエレクトロニクス、スマートフォン等情報機器端末、産業機器、医療機器など、様々なエレクトロニクス製品分野を対象に、国内及び海外において電子材料・電子部品、設備等を販売及び加工・組立することに加え、設計及び製造受託することを主たる業務としております。また近年では、他社ブランド製品を設計から製造(当社では製造は外部へ委託しております)まで行うODMビジネスにも力を入れております。このため当社グループの業績は、エレクトロニクス業界全体の業況の影響を受けることとなります。当社グループとしましては、より多数の顧客へ多彩な商材を提供するリスク分散経営を推進しておりますが、取引の対象であるエレクトロニクス業界全体の業況が悪化した場合、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。

 

  (2)技術革新に関するリスク

 当社グループが取り扱っているエレクトロニクス製品は、技術の進歩が非常に早いため、得意先の製品のライフサイクルの影響を受けるほか、技術革新によってより有利な他社製品が出現した場合、自社で取扱う商品の競争力の低下、コモディティ化、不動在庫化、価格低下等のリスクがあります。このため常に新技術への対応をはじめ、市場調査力や商品開発力の強化、独自性のある商品提案力の向上が必要となります。

 当社グループでは営業部門、開発部、技術部及び環境・品質保証部が連携して新技術への対応や新技術を活用した企画・提案に努め、常により利益を生み出す新商材や新ビジネスの開拓に努めておりますが、こうした技術革新へのキャッチアップが十分にできなかった場合、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。

 

  (3)得意先の業況に関するリスク

 当社グループの得意先は、製品の低価格化、世界的なシェア競争等の厳しい事業環境に置かれております。また国内外における様々な経済環境の動向により、短期間の間に製品の需要が大きく変動することがあります。このような中、当社グループは各得意先に対して高付加価値かつ高品質の商材を掘り起こして供給するとともに、得意先の拡大及び開拓に努めております。

 しかしながら、得意先の製品が市場での優位性を失って需要が低迷したり、それに伴う大幅な生産調整が行われたりした場合、当該得意先に商品を供給している当社グループの売上も同様に減少したり、不動在庫が発生したりすることになります。このように得意先の業況が悪化した場合、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。

 

  (4)仕入先の業況に関するリスク

 当社グループは、技術力及び競争力のある国内外の様々な企業を仕入先としております。仕入先各社とは、良好な取引関係を維持しておりますが、仕入先の事業方針変更、事業再編や販売政策の見直し等があった場合、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。

 

  (5)品質不良、リコール、環境基準及び品質保証に関するリスク

 当社グループが供給する商品もしくは商品が組み込まれた製品について、得意先における品質不良や市場におけるリコール等が発生し、当社グループがその損害賠償を負担せざるを得なくなった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 また昨今、電気電子機器等を対象とした有害物質使用の規制が強まっており、これに適合した商品を供給できる品質管理体制の維持向上がより重要となっております。このため当社グループでは仕入先との連携を深め、日本を含む各国の環境基準や品質基準に適合した商品を得意先に提供できるよう、全社的な対応を行っておりますが、当社グループの取扱商品に環境基準に適合しない物質が混入するといった事態が発生し、得意先より請求される損害賠償を負担せざるを得ない事態となった場合、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

 

  (6)海外事業に関するリスク

 多くの国内メーカーが国際的な販路の拡大、また生産コストの低減・効率化等を目的として、国内生産拠点の海外移転や海外生産拠点の集約及び再配置、もしくは海外EMSメーカー(電子機器製造における設計、製造に加えて、開発や物流管理までを請け負う受託製造サービス会社)に設計や生産の委託を行っております。

 当社グループは、こうした動きに対応するとともに海外メーカーへの販売推進を図るため、海外現地法人を通じて海外における商品の供給体制を確立し、内外でのコスト競争力と事業の収益性を高めてまいりました。この結果、当社グループにおける2024年3月期の連結売上収益に対する海外売上収益比率は、51.1%となっており、なかでも中国への売上収益は21.8%、その他アジア(韓国、インド、東南アジア等)は22.1%となっております。このため海外各国における政治情勢、経済環境、法律や政策の変化やその国固有の事情によって、当社グループの販売及び事業活動が制限される等の事態が生じた場合や、そうした変化への対応が十分に出来なかった場合、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。

 

  (7)信用に関するリスク

 当社グループは、国内の大手企業との取引拡大に努めつつも、高付加価値を生んでいる中小企業の開拓や取引も推進しております。また中国系メーカーをはじめとする新たな海外取引先の開拓にも注力するなど、グローバルな事業展開を進めております。

 当社グループでは、こうした国内外の各取引先と取引を行うにあたり独自の与信審査制度を導入しており、取引先ごとに社内規程に基づいた信用限度額を設定して与信管理を実施するとともに、取引先の信用力について定期的なモニタリングを行い、貸倒れリスクの回避を図っております。しかしながら、日本を含む各国の経済環境や景気の変化、取引先固有の事情等によって債権等が回収不能になった場合、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)為替変動に関するリスク

 当社グループは、今後も海外における事業の比重が大きくなることが予想されます。外貨建てでの取引に加え、当社グループの海外現地法人は、各社とも外貨建てで財務諸表を作成しております。当社グループの連結財務諸表は、これら海外現地法人の財務諸表を日本円に換算して作成していることから、日本円に対するその他の通貨価値の上昇または下落により、連結上の利益または損失が発生する可能性があります。このため当社グループでは、為替予約を活用しております。さらに連結子会社から当社への配当を実施し、連結決算における在外営業活動体の換算差額の増減による為替変動リスクの低減を図っております。しかしながら、これによって完全に為替変動リスクを回避できるわけではなく、大幅かつ急激な為替変動があった場合、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。

 

  (9)自然災害、感染症等に関するリスク

地震、大雨、洪水等の自然災害や異常気象、感染症の蔓延、戦争、テロ、暴動その他予測の範囲を超える事態が発生した場合、当社グループの社員や事務所、システム等に対する被害が発生し、事業活動に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、このような事態に備え、BCP(事業継続計画)を策定しております。その他、安否確認システムの活用、災害備蓄品の購入、防災訓練の実施等、様々な対策も講じております。

しかしながら、これによって全ての影響を排除することができるとは限らず、国内外経済の下振れ、取引先の減産や生産停止、航空便の減少や海上コンテナの不足に起因する運賃の高騰などが、今後の事業活動に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)情報システムに関するリスク

 当社グループで使用しているシステムに関しては、適切なセキュリティやバックアップ体制を整えておりますが、予測の範囲を超える大規模停電、災害、コンピュータウイルスの感染、不正アクセスといった原因によって、システムの停止、データの消失等の事態が発生した場合、通常の事業活動に支障が生じ、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)新規取引先との売上取引の実在性に関するリスク

 当社グループは、国内外で新規商材を開拓するとともに、海外で非日系得意先へ商材を展開しております。その際に、多様な仲介取引を行う商社としての性質に鑑み、架空・循環取引が行われるリスクに注意を払っております。

 それらのリスクを含む新規得意先との取引に係る2024年3月期の売上収益は、連結財務諸表において28億6百万円(連結売上収益の1.4%)、財務諸表において5億3百万円(売上高の0.4%)に上っており、これらの実在性のリスクに対しては十分に注意を払っております。このため新規取引の開始にあたっては、得意先及び仕入先の調査を始めとする取引審査を行い、取引の実在性・適正性を確認しております。

 また、直送取引については、社内ガイドラインの策定・運用を行っております。これらを通して当社グループが架空・循環取引の当事者となるリスクを事前に回避する対策をとっております。

 しかしながら、当社グループの把握できない事情により、こうした架空・循環取引の当事者となるような事態が生じた場合、予期せぬ損失の発生など、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要及び経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 当社グループは、当連結会計年度から従来の日本基準に替えてIFRSを適用しており、前連結会計年度の数値もIFRSに組替えて比較分析を行っております。

 

(1)財政状態の分析

 

前連結会計年度

2023年3月期

当連結会計年度

2024年3月期

増減

資産合計(百万円)

114,598

117,212

2,613

負債合計(百万円)

49,566

47,963

△1,603

資本合計(百万円)

65,032

69,249

4,217

親会社所有者帰属持分比率(%)

56.7

59.1

2.3

 資産は、「現金及び現金同等物」が増加したこと等により、前連結会計年度末比2.3%増の1,172億12百万円となりました。

 負債は、「営業債務及びその他の債務」及び「未払法人所得税等」が減少したこと等により、前連結会計年度末比3.2%減の479億63百万円となりました。

 資本は、「利益剰余金」及び「その他の資本の構成要素」が増加したこと等により、前連結会計年度末比6.5%増の692億49百万円となりました。なお、親会社所有者帰属持分比率は、59.1%となりました。

 

(2)経営成績の分析

 

前連結会計年度

2023年3月期

当連結会計年度

2024年3月期

増減率(%)

売上収益(百万円)

239,871

194,350

△19.0

営業活動に係る利益(百万円)

11,478

9,052

△21.1

税引前利益(百万円)

10,477

8,116

△22.5

親会社の所有者に帰属する当期利益(百万円)

7,192

5,729

△20.3

 

 当連結会計年度のエレクトロニクス業界におきましては、自動車の電装化の需要は拡大傾向で推移したものの、中国の景気回復の遅れや、スマートフォンの需要縮小の影響等により、電子部品の生産は低調に推移しました。

 このような状況下、当社グループが従前より注力している自動車関連ビジネスにおいては、需要が拡大しているEV向けにヒーターモジュール、モーター用関連部材及びバッテリー用関連商材等の拡販に取り組んだ結果、好調に推移いたしました。一方で前期に業績を牽引したドライブレコーダーの販売においては、需要一巡の影響を受け、加えて、電子部品関連ビジネスにおいては、電子部品業界全体で生産が低迷したことにより、低調に推移いたしました。また、ディスプレイ及びゲーム機関連ビジネス等においても、最終製品の需要縮小等により、低調に推移いたしました。

 以上のような結果、当連結会計年度の売上収益は、前期比19.0%減の1,943億50百万円となりました。営業活動に係る利益は、売上収益の減少により、前期比21.1%減の90億52百万円となりました。税引前利益は、営業活動に係る利益の減少により前期比22.5%減の81億16百万円となりました。親会社の所有者に帰属する当期利益は、前期比20.3%減の57億29百万円となりました。

 当社は株主資本コストを7~9%程度と認識しておりますが、ROEは当期利益の減少を主要因として前期比3.0ポイント減の8.5%となりました。今後もROEの向上を目指すべく、株主資本コストを意識した経営を行い、各施策の取り組み強化を図ってまいります。

 

セグメント別の概況

区分

前連結会計年度

2023年3月期

当連結会計年度

2024年3月期

増減率

売上収益

当期利益

売上収益

当期利益

売上収益

当期利益

日本

百万円

133,452

百万円

4,536

百万円

106,521

百万円

5,836

△20.2

28.7

中国

54,058

2,842

40,379

1,992

△25.3

△29.9

その他アジア

34,672

1,222

29,373

1,204

△15.3

△1.4

欧米

17,689

285

18,075

513

2.2

80.1

調整額

△1,693

△3,817

合計

239,871

7,192

194,350

5,729

△19.0

△20.3

 

(日本)

 自動車関連ビジネスは、需要が拡大しているEV向けにヒーターモジュール、モーター用関連部材及びバッテリー関連商材等の拡販に取り組んだ結果、増収となりました。一方で、ドライブレコーダー等のアフターマーケット向け製品は、需要一巡の影響を受けたことにより販売が減少し、減収となりました。以上のことから、売上収益は前期比20.2%減の1,065億21百万円となりました。当期利益は、売上収益の減少により売上総利益は減少したものの、当社連結子会社より受領した受取配当金の増加に伴い、前期比28.7%増の58億36百万円となりました。

 同地域におきましては、ODMビジネスの展開等による付加価値の向上及び自動車関連ビジネスの拡大、国内有力顧客の開拓が課題であると認識しております。ODMビジネスにつきましては、営業・品質保証・設計の専門家集団により組成されたODMチームにより、企画・設計、製造、品質管理、配送の全てを一元管理するサービスを展開し、自動車関連ビジネスにつきましては、EV化及び電装化の進展に伴う各種関連商材の拡販に加え、車載ユニット完成品など、需要が増加傾向にあるモジュールビジネスを拡大してまいります。また、国内有力顧客の開拓につきましては、幅広い商材の提案及び高付加価値型ビジネスの推進に向けて国内拠点の連携をより一層強化し、グローバルに競争力のある顧客の開拓に取り組んでまいります。

 

(中国)

 ゲーム機関連ビジネスは、当社取扱商材採用モデルの需要縮小等により、減収となりました。液晶関連ビジネスは、スマートフォンの需要縮小の影響等により、減収となりました。以上のことから、売上収益は前期比25.3%減の403億79百万円となりました。当期利益は、売上収益の減少に伴う売上総利益の減少により、前期比29.9%減の19億92百万円となりました。

 同地域におきましては、中国系スマートフォンメーカーの攻略及び自動車関連ビジネスの拡大が課題であると認識しております。中国系スマートフォンメーカーの攻略につきましては、市場の拡大が見込まれるフォルダブル(折りたたみ式)スマートフォン用等の高機能な商材や、意匠関連等中国系メーカーの需要に合致した商材を中心に提案を行ってまいります。また、自動車関連ビジネスにつきましては、中国系メーカーにEV関連商材等の提案を行い、新規顧客の開拓に取り組んでまいります。

 

(その他アジア)

 自動車関連ビジネスは、新規ビジネスの獲得等により、増収となりました。一方、電子部品関連ビジネスにおいて、電子部品業界全体で生産が低迷した影響により、減収となりました。以上のことから、売上収益は前期比15.3%減の293億73百万円となりました。当期利益は、売上総利益率は改善したものの、増員に伴う人件費の増加及び物流費の増加等により、前期比1.4%減の12億4百万円となりました。

 同地域におきましては、中国からの生産移管が進んでおり、その確実な取り込みが課題であると認識しております。得意先の動向を注視し、当社グループのネットワークを活用することで、万全なフォロー体制を整えてまいります。また、完成品ビジネスにおける中国でのパートナー開拓成功例の横展開を行うべく、仕入先の発掘に取り組んでまいります。

 

(欧米)

 白物家電関連ビジネスは、当社取扱商材採用モデルの需要縮小等により、減収となりました。一方、自動車関連ビジネスは新規ビジネスの獲得等により、増収となりました。以上のことから、売上収益は前期比2.2%増の180億75百万円となりました。当期利益は、高採算案件の獲得に伴う売上総利益率の改善等により、前期比80.1%増の5億13百万円となりました。

 同地域におきましては、米系有力顧客の開拓及び自動車関連ビジネスの拡大が課題であると認識しております。米系有力顧客の開拓につきましては、サンノゼのショールーム活用により獲得した新規案件の大玉化に向け、競争力のある日本製商材を中心に提案を行ってまいります。また、自動車関連ビジネスにつきましては、2023年5月に開設しましたポーランド事務所に加え、拠点の拡充等リソースを積極的に投入し、日本において受注実績のあるモジュールビジネスの海外展開等に取り組んでまいります。

 

(3)キャッシュ・フローの分析

 

前連結会計年度

2023年3月期

当連結会計年度

2024年3月期

営業活動によるキャッシュ・フロー(百万円)

5,597

14,911

投資活動によるキャッシュ・フロー(百万円)

△872

△1,160

財務活動によるキャッシュ・フロー(百万円)

△2,986

△5,657

現金及び現金同等物(百万円)

32,966

42,139

 当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末より91億72百万円増加し、421億39百万円となりました。

 営業活動によるキャッシュ・フローは、149億11百万円の収入(前年同期は55億97百万円の収入)となりました。主な要因としましては、税引前利益が81億16百万円、営業債権及びその他の債権の減少による資金獲得が109億9百万円、棚卸資産の減少による資金獲得が3億60百万円、営業債務及びその他の債務の減少による資金流出が32億28百万円、法人所得税の支払による資金流出が33億6百万円であります。

 投資活動によるキャッシュ・フローは、11億60百万円の支出(前年同期は8億72百万円の支出)となりました。主な要因としましては、有形固定資産の取得による資金流出が10億48百万円であります。

 財務活動によるキャッシュ・フローは、56億57百万円の支出(前年同期は29億86百万円の支出)となりました。主な要因としましては、配当金の支払による資金流出が36億44百万円であります。

 

(4)仕入及び販売の実績

①生産実績及び受注実績

 該当事項はありません。

②仕入実績

 当連結会計年度における商品の仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前期比増減率(%)

日本(百万円)

117,547

△23.8

中国(百万円)

32,571

△10.2

その他アジア(百万円)

14,642

△0.6

欧米(百万円)

11,859

△13.9

合計(百万円)

176,620

△19.4

(注)セグメント間の取引について相殺消去しております。

 

③販売実績

 当連結会計年度における商品の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前期比増減率(%)

日本(百万円)

106,521

△20.2

中国(百万円)

40,379

△25.3

その他アジア(百万円)

29,373

△15.3

欧米(百万円)

18,075

2.2

合計(百万円)

194,350

△19.0

(注)1.セグメント間の取引について相殺消去しております。

2.最近2連結会計年度の主な販売先グループ(主な販売先とその子会社)別の販売実績及び当該販売実績

  の総販売実績に対する割合は100分の10未満であるため、記載を省略しております。

 

(5)重要性がある会計方針及び見積り

 当社グループにおける重要性がある会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 2.作成の基礎(3)重要な会計上の判断、見積り及び仮定」に記載しておりますが、特に次の重要性がある会計方針が連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えております。

 (営業債権の評価)

 損失評価引当金

 当社グループは、営業債権の貸倒損失に備えるため、信用減損していない債権と信用減損している債権に区分し、常に全期間の予想信用損失に等しい金額で損失評価引当金を測定しております。このうち、信用減損していない債権に対する損失評価引当金は債権の期日経過状況、貸倒実績に基づき、将来の経済状況等の予測を考慮して損失評価引当金を測定しております。取引先の財政状態の評価や売上債権の滞留状況を含む回収可能性の検討、及び将来の経済状況等の予測については、経営者の判断を伴うものであり、それらの状況の変化によっては、損失評価引当金の追加計上が必要となる可能性があります。

 

(6)資本の財源及び資金の流動性の分析

 資金需要の主なものは、商品の購入代金及び人件費等の販売費及び一般管理費の支払いによるものであります。当社グループは、これらの資金需要に対し、まず営業キャッシュ・フローで獲得した資金等を投入し、不足分について金融機関からの借入により調達しております。

 また、売掛債権回収の早期化、在庫の削減等による運転資本の効率化や不稼動・非効率固定資産の削減等、資金の効率化を進めております。

 利益配分については、株主の皆様に対する利益配分を経営の重要課題と位置づけ、中期的な業績の見通しや投資計画に基づくキャッシュ・フローの状況を勘案し、当連結会計年度より配当性向(連結)50%もしくはDOE(親会社所有者帰属持分配当率)3%の両基準で算出した数値のいずれか高い金額を目安とすることを基本方針としております。

 なお、当連結会計年度末の資金需要に対する金融機関からの短期借入金残高は2億96百万円であります。
 当連結会計年度末の流動比率は241.1%となっており、流動性の点で当社グループの財務健全性を維持しております。

 

(7)並行開示情報

 連結財務諸表規則(第7章及び第8章を除く。以下「日本基準」という。)により作成した要約連結財務諸表、要約連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項の変更は、以下のとおりであります。

 なお、日本基準により作成した当連結会計年度の要約連結財務諸表については、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく監査を受けておりません。

 また、日本基準により作成した要約連結財務諸表につきましては、百万円未満を切り捨てて記載しております。

 

①要約連結貸借対照表(日本基準)

(単位:百万円)

 

 

前連結会計年度

(2023年3月31日)

当連結会計年度

(2024年3月31日)

資産の部

 

 

流動資産

107,306

108,096

固定資産

 

 

有形固定資産

3,431

3,981

無形固定資産

287

247

投資その他の資産

2,887

3,401

固定資産合計

6,606

7,630

資産合計

113,913

115,727

 

 

 

負債の部

 

 

流動負債

46,530

43,884

固定負債

1,804

2,314

負債合計

48,335

46,198

 

 

 

純資産の部

 

 

株主資本

62,196

63,919

その他の包括利益累計額

3,381

5,609

純資産合計

65,577

69,529

負債純資産合計

113,913

115,727

 

②要約連結損益計算書及び要約連結包括利益計算書(日本基準)

要約連結損益計算書

(単位:百万円)

 

 

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

売上高

239,774

194,457

売上原価

212,390

170,353

売上総利益

27,384

24,103

販売費及び一般管理費

15,331

15,674

営業利益

12,052

8,429

営業外収益

190

249

営業外費用

1,112

1,082

経常利益

11,130

7,595

特別損失

43

80

税金等調整前当期純利益

11,086

7,515

法人税等合計

3,390

2,147

当期純利益

7,696

5,367

親会社株主に帰属する当期純利益

7,696

5,367

 

要約連結包括利益計算書

(単位:百万円)

 

 

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当期純利益

7,696

5,367

その他の包括利益合計

816

2,227

包括利益

8,512

7,595

(内訳)

 

 

親会社株主に係る包括利益

8,512

7,595

 

③要約連結株主資本等変動計算書(日本基準)

前連結会計年度(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)

(単位:百万円)

 

 

株主資本

その他の包括利益

累計額

純資産合計

当期首残高

57,079

2,565

59,645

当期変動額

5,116

816

5,932

当期末残高

62,196

3,381

65,577

 

当連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)

(単位:百万円)

 

 

株主資本

その他の包括利益

累計額

純資産合計

当期首残高

62,196

3,381

65,577

当期変動額

1,723

2,227

3,951

当期末残高

63,919

5,609

69,529

 

④要約連結キャッシュ・フロー計算書(日本基準)

(単位:百万円)

 

 

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

営業活動によるキャッシュ・フロー

4,910

14,250

投資活動によるキャッシュ・フロー

△872

△1,160

財務活動によるキャッシュ・フロー

△2,299

△4,996

現金及び現金同等物に係る換算差額

475

1,079

現金及び現金同等物の増減額(△は減少)

2,213

9,172

現金及び現金同等物の期首残高

30,753

32,966

現金及び現金同等物の期末残高

32,966

42,139

 

⑤要約連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項の変更

前連結会計年度(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)

(会計方針の変更)

(ASC第842号「リース」)

 当社グループの米国会計基準適用子会社は、当連結会計年度の期首より、ASC第842号「リース」を適用しております。これにより、借手のリース取引については、原則すべてのリースを貸借対照表に資産及び負債として計上しております。

 当該会計基準の適用にあたっては、経過措置として認められている本基準の適用による累積的影響額を適用開始日に認識する方法を採用しております。

 本基準の適用に伴い、当連結会計年度の期首において、有形固定資産の「その他(純額)」に含まれる使用権資産が25百万円、流動負債の「その他」に含まれるリース債務が17百万円、固定負債の「その他」に含まれるリース債務が7百万円それぞれ増加しております。

 なお、この変更に伴う当連結会計年度の損益に与える影響は軽微であります。

 

当連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)

(会計方針の変更)

 国際会計基準(IFRS)を適用している子会社は当連結会計年度の期首よりIAS12号の修正単一の取引か ら生じた資産及び負債に関連する繰延税金を適用しております

 この適用により取引時に同額の将来加算一時差異と将来減算一時差異を生じさせる取引に関する当初認識時の会計処理が明確化され当該将来加算一時差異と将来減算一時差異について繰延税金負債及び繰延税金資産が連結貸借対照表にそれぞれ認識されます

 なお当該会計方針の変更による当連結財務諸表に与える影響は軽微であります

 

 

 

(8)経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報

 IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と日本基準により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項は、以下のとおりであります。

前連結会計年度(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)

 「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 30.初度適用」に記載のとおりであります。

 

当連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)

(リース)

 日本基準において、借手のリースはファイナンス・リースとオペレーティング・リースに分類し、オペレーティング・リースについては通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を行っておりました。IFRSでは借手のリースについて当該分類を行わず、短期リース及び原資産が少額であるリースを除くすべてのリースについて使用権資産及びリース負債を認識することが求められております。

 この結果、IFRSでは日本基準に比べて、使用権資産が1,558百万円、リース負債が1,674百万円増加しております。

 

 

 

 

5【経営上の重要な契約等】

 当社は、下記のとおり契約を締結しております。

(1)資本業務提携契約

契約締結先

 契約日

契約内容の概要

 豊田通商株式会社

 2011年8月1日

・①販売チャネルの共有、②物流機能の活用・集約、③技術・ノウハウの相互提供、共同研究、④人材交流の分野における業務提携を協議する。

・業務提携の具体的な内容を検討するため、両社共同で「業務提携に関する委員会」を設置の上、業務提携の具体化について協議する。

 

 

6【研究開発活動】

 当社グループは、ユーザー、仕入先と共同で商品開発に取り組んでおりますが、技術開発の主体は相手方にあるため、特記すべき事項はありません。