当企業グループは、経営理念「独創的な技術を核に、新しい価値を創造し、活力とゆとりある社会の発展に貢献します。」およびビジョン(目指す姿)「つなげる技術の、その先へ。」をもとに、社員一人ひとりが、課題認識、対策を自ら認識し、4つの行動指針(①誠実に正しく、迅速に行動する。②自ら考え行動する。③変革を恐れず挑戦する。④チームサクサとして活動する。)に沿って推進してまいります。
また、現行中期経営計画(サクサは変わる。)の最終年度として、3つの戦略「事業を変える。」「財務を変える。」「ガバナンスを変える。」に取組むとともに、2024年度を初年度とした次期「中期経営計画(2025年3月期~2027年3月期)」の策定を開始し、新たにキャピタルアロケーションの考え方を決議、公表いたしました。
さらに、当社は、「事業ポートフォリオの変革」を実現するためには、経営と事業が一体となった体制で推進することが必要であると判断し、2024年7月1日付で当企業グループのプロダクト事業を展開する中核会社であるサクサ株式会社を吸収合併するとともに、純粋持株会社体制を解消し成長戦略への経営資源投入(リソースシフト等)を積極的に行ってまいります。
なお、当企業グループは、2024年5月29日に2024年度から2026年度までの3か年を計画期間とする中期経営計画を策定し、公表いたしました。同中期経営計画において「共に創る未来」をテーマに、お客様・パートナー・SAXAとの共創を通じて、中堅・中小企業のDX推進のサポーターとなることを目指すとともに、モノづくり as a Service により事業ポートフォリオを変革し、お客様の成長を促す新たな価値提供を実現する成長戦略を実行してまいります。
当企業グループのサステナビリティに関する考え方および取組は、次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当企業グループが判断したものです。
価値創造とサステナビリティ推進
当企業グループは、「独創的な技術を核に、新しい価値を創造し、活力とゆとりある社会の発展に貢献します。」を企業理念とし、心地よい暮らし、つまり、安心で安全、快適で便利な環境の実現に向けて「つなげる技術の、その先へ。」をビジョン(目指す姿)として掲げています。
「つなげる技術」は、‘モノづくり’ ‘コトづくり’を通じて、ヒトとヒト、モノとヒト、モノとモノをつなげる技術を言い、「つなげる技術」を核に、様々なステークホルダーとの共創により、お客様とサクサがつながります。その「つなげる技術」をさらにつなげて、お客様の明日(明日の社会)へとつなげていく、すなわち持続可能な社会の実現を目指します。
近年、当企業グループが属する情報通信ネットワーク関連市場は技術革新とともにサービスの高度化が進む中で、サイバーセキュリティなどの新たな社会課題も生まれています。社会環境の変化とともに、当企業グループに寄せられる期待や要請はより高度化・広範化しており、これらに応えるべく、特にサステナビリティ面における経営課題を「サステナビリティ重要課題」として明確化しました。この課題への取り組みを通じて、社会課題の解決を図るとともに、企業価値の向上を目指します。
サステナビリティ重要課題
当企業グループは、持続可能な社会の実現や当企業グループの持続的な成長と企業価値の向上を図るため、サステナビリティ推進委員会を設置し、活動を行っております。
サステナビリティ推進委員会は、委員長を代表取締役社長、事務局をサステナビリティ担当部門、委員を当社および当企業グループ各社から委員長が任命した者で構成して、当企業グループのサステナビリティ方針に則り、当企業グループの活動方針、計画等を審議するとともに、そこで決定された取組みを推進、サポートを行います。
審議内容については、適宜、取締役会に報告します。これにより取締役会によるサステナビリティ活動へのガバナンス体制を構築しております。
当社では年2回、リスクについて当企業グループ各社から当社リスクマネジメント部門に報告し、その後、当社代表取締役社長が委員長となるコンプライアンス・リスクマネジメント委員会に報告し、リスクおよび機会を識別、評価及び管理しております。
(1)戦略
当企業グループは、上記のガバナンスおよびリスク管理をとおして、気候関連リスクを重要なサステナビリティ項目と認識しております。
気候変動が、短期、中期、長期にわたり、企業経営にどのような影響を与えるかについて、1.5℃シナリオ、4℃シナリオの移行リスク、物理的リスクを想定し、事業および財務へのインパクトを評価しています。(表1、表3参照)
上記の移行リスク、物理的リスク以外にも、環境マネジメントシステムに関連する①外部および内部の課題、②順守義務、③ステークホルダーのニーズおよび期待、④著しい環境側面を考慮し、1.5℃シナリオ、4℃シナリオにおけるリスクおよび機会を特定し、対応策を策定しております。(表2、4参照)
(表1)1.5℃シナリオにおける移行リスク、物理的リスク
(表2)1.5℃シナリオにおける主なリスクおよび機会/対応策
(表3)4℃シナリオにおける移行リスク、物理的リスク
(表4)4℃シナリオにおける主なリスクおよび機会/対応策
(2)指標および目標
当企業グループは、気候変動関連について地球温暖化を重要なリスクと認識し、その防止を目的に脱炭素化の目標をSBTi(*)基準に則り以下のとおり定めました。
・Scope1+2におけるCO2排出量を2030年度までに2022年度比42%削減します。
(1.5℃水準)
・Scope3におけるCO2排出量を2030年度までに2022年度比25%削減します。
(well-below 2℃水準)
(*)SBTi:パリ協定が求める水準と整合した温室効果ガス排出削減目標の設定を企業に促すイニシアチブ
参考:気候変動への対応の指標と目標に対する進捗状況
(1)戦略
①人財育成に関する取り組み方針
当企業グループは、コンプライアンス意識を持ち、コミュニケーションを取りながら自ら考え挑戦し続ける人財の育成を目指しております。具体的には、サクサ株式会社(連結子会社)では、新入社員から育成ステージに合わせた教育・研修プログラムの整備、メンバー個人の成長支援と組織としての成果創出につなげるためのマネジメント教育等を実施することで、全階層への効果的な教育施策を導入し、早期から自律的な業務遂行と外部環境変化に対応できる人財の育成を目指します。また、タレントマネジメントシステムによる人事情報の一元管理を行いながら、人事ローテーションガイドラインに基づくジョブローテーションを実施することで、効果的な人財育成を目指しています。
②働き方改革の取り組み
サクサ株式会社は、「柔軟な働き方による業務の効率性、労働生産性の向上」および「ワーク・ライフ・バランス」等を目的として、テレワーク制度を運用しています。テレワークは、在宅勤務のほか、提携するサテライトオフィスを利用することができ働き方に応じた柔軟性のある仕組みとしています。また、2023年8月からはフレックスタイム制におけるフレキシブルタイムを拡大し、ワーク・ライフ・バランスの実効性を高める取り組みを進めています。
③健康経営の取り組み
当企業グループは、社員の健康保持・増進への積極的な取り組みによって、社員の活力向上、労働生産性向上および組織の活性化等をもたらすとともに、業績向上や企業価値向上へつなげるため、健康経営を推進しています。サクサ健康保険組合との連携のもと、社員が心身ともに健やかで仕事ができるように様々な施策を実行しています。特に、メンタル不調を未然に防ぐためにストレスチェックを活用したセルフケアの強化を推進し、その重要性を定着させる取り組みを進めています。
こうした取り組みをさらに効果的なものとし、社員の心身の健康に寄与させていくため、「サクサグループ健康経営宣言」を公表し、2024年3月にはサクサ株式会社が健康経営優良法人に前年度に引き続いて認定されました。2023年度の具体的取り組み施策としては、当社およびサクサ株式会社において「禁煙デー」の実施、定期健康診断における二次検査対象者の受診率改善に向けたフォローアップ等に取り組みました。
④労働安全衛生の取り組み
サクサグループは、安全衛生管理組織、災害防止対策、疾病予防対策およびその他安全衛生の維持、向上に関する基本的事項を定め、職場における社員の安全と健康を確保し、快適な作業環境づくりと生産性の向上を推進しています。
⑤ダイバーシティの方針・取り組み
多様化する顧客ニーズへの対応や急激な少子高齢化に伴う労働力不足、採用競争の激化などの社会情勢を受け、多様な人財が最大限能力を発揮できる環境構築がこれまで以上に求められています。誰もが働きやすく、活躍できる職場づくりを目指すことを目的に、サクサグループでは2021年に「ダイバーシティ&インクルージョン推進委員会(D&I推進委員会)」を発足し、継続的な活動を推進しています。
第三期では、グループ各社の実態に沿った活動を推進すべく、各社別の推進体制を構築するとともに、グループ全体での活動進捗の確認と情報共有を四半期に1回行うことで、グループ一体となった取り組みを継続しています。
主な取り組み内容
当企業グループでは、人財の多様性の確保を含む人財育成に関する方針および社内環境整備に関する方針について、指標の内容並びに当該指標を用いた目標および実績は、次のとおりです。
数値目標
当企業グループの経営成績、財政状況およびキャッシュ・フロー等の業績に影響を及ぼし、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある主なリスクには、次のようなものがあります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2024年3月31日)現在において、当企業グループが判断したものであります。
(1) 経済環境に関するリスク
①経済動向について
当企業グループは、国内売上比率が高く、日本国内の情報通信ネットワーク関連市場およびアミューズメント市場の経済状況の影響を受けます。これらの市場における景気後退とそれらに伴い需要が縮小した場合、当企業グループの業績および財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、資材等のコスト低減を目的に中国、東南アジア等からの調達およびこれらの地域に製造委託しており、これらの地域の経済情勢や治安状況などが悪化することにより、当企業グループの業績と財政状況に悪影響を及ぼす可能性もあります。
②為替および金利の変動について
当企業グループの外貨建での取引は、輸入超過の状態であり、為替相場の変動によって影響を受けます。
当企業グループでは、一部に為替予約等の対応策を講じておりますが、円安傾向が強まった場合は調達価格を押し上げ、当企業グループの業績と財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当企業グループは金利変動リスクにもさらされており、リスク回避のための様々な手段を講じておりますが、急激な金利変動は、当企業グループの業績と財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
③株式市況の変動について
国内の株式市場の動向は、当企業グループの保有する株式の評価額に大きく影響を及ぼします。したがって、株式市場が低迷した場合、保有株式の評価損の計上や企業年金資産の運用損の発生等により、当企業グループの業績と財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(2) 当企業グループの事業活動に関するリスク
①市場環境について
当企業グループが関連する情報通信ネットワーク関連市場は、急速な技術革新の進展や激しい競争にさらされております。市場要求に対応した新商品のタイムリーな提供とサービスの向上により市場シェアの拡大に努めてまいりますが、競合会社の新たな市場参入とシェア獲得競争により、当企業グループの商品・サービスが激しい価格競争にさらされ、競争の結果、想定した需要が得られない場合や商品価格が大きく下落する場合は、棚卸資産として計上されている商品の評価損処理等を行う可能性があり、当企業グループの業績と財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、アミューズメント市場は、規制環境や市場環境が大きく変化しており、事業規模に見合った事業効率化を図っておりますが、法的規制等に重大な変更が加えられた場合、当企業グループの業績と財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
②生産活動について
当企業グループの生産活動には、資材、部品、製造装置その他供給品のタイムリーな調達が不可欠です。当企業グループでは、生産体制・調達体制の革新を図り、必要な資材等をタイムリーかつ適正な価格で確保して効率的な生産活動を遂行しておりますが、供給の遅延、中断や業界内の需要増加等があった場合、必要な資材等を効率的に確保できない可能性があり、当企業グループの業績と財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
③技術革新および顧客ニーズへの対応について
当企業グループは、常に技術、市場の変化を的確に捉え、お客様のニーズに応える新商品の開発に努めてまいりますが、それらの商品をタイムリーに提供することができない場合、当企業グループの業績と財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。また、市場の要求するサービスの多様化等により新商品の開発過程が長期化した場合、当企業グループの商品が市場に投入される前から陳腐化し商品性を失う可能性があります。
④システム開発リスク
当企業グループがお客様にシステムやサービスを提供するシステムインテグレーション事業では、一般に請負契約の形態で受注を受けてから納期までにシステムを完成し、お客様に提供する完成責任を負っていますが、当初想定していた見積もりからの乖離や、開発段階において、プロジェクト管理等に問題が発生した場合、想定を超える原価の発生や納期遅延に伴う損害に対する賠償金の支払い等により、当企業グループの業績と財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑤特定の取引先への販売依存について
当企業グループの取引において、一部の取引先への連結売上高に占める依存度が高くなっており、当該取引先が事業または技術上の重大な問題もしくは調達方針の変更など、何らかの理由により当企業グループの取引額が減少した場合、当企業グループの業績と財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑥人材の確保について
当企業グループはさらなる成長を目指すために、優秀な人材を確保し、維持する必要がありますが、その人材を確保できなかった場合、または多数離職した場合、当企業グループの事業目的の達成が困難になる可能性があります。
(3) 法的規制および訴訟に関するリスク
①欠陥商品の発生
当企業グループは、「ISO9001」認証を取得し、商品の品質保証には細心の注意を払っておりますが、経時変化や、想定外の品質異常等により、将来的に当企業グループの商品に欠陥が発生しないという保証はありません。
欠陥が発生し、製造物賠償責任保険での補償を超える損害賠償の請求や当企業グループの信用失墜は、当企業グループの業績と財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
②情報セキュリティに関するリスクについて
当企業グループは、事業遂行に関連して、機密情報・個人情報を保有しており、情報漏洩対策やウイルス防御システムの導入など、これらの情報の管理に万全を期しておりますが、サイバー攻撃等による情報セキュリティ事故など予期せぬ事態により流出する可能性は皆無ではありません。
このような事態が生じた場合、社会的信用に影響を与え、その対応のための多額の費用負担やブランド価値の低下が発生し、当企業グループの業績と財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
③環境に関する規制について
当企業グループの事業活動は、大気汚染、水質汚濁、有害物質の使用および取扱い、廃棄物処理、商品リサイクル等を規制するさまざまな環境法令の適用を受けており、過去、現在、将来の事業活動に関し環境責任リスクがあります。
当企業グループでは「ISO14001」に基づく環境マネジメントシステムをグループ全体で構築し、環境保全活動に取組んでおりますが、将来、環境に関する規制が一層厳しくなり、有害物質等の除去義務が追加された場合、これらに係る費用が発生し、当企業グループの業績と財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
④その他法的規制等について
当企業グループが関連する事業は国内または国際的規制に従って行っております。法規制には、商取引、独占禁止、知的財産権、電気製品の安全性および電気通信事業の変更に関する法規制、国の安全保障に関する法規制および輸出入に関する法規制等があります。
これらの法規制や当局の法令解釈が従来よりも厳しくなることなどにより、当企業グループがこれら法規制に従うことができなくなった場合、当企業グループの事業活動は制限を受けることになり、当企業グループの業績と財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑤コンプライアンスに関するリスク
当企業グループは企業倫理の確立による健全な事業活動を基本とする「グループ企業行動憲章」と「グループ行動規範」を定め、コンプライアンス推進体制を構築し、役員および社員等への教育啓蒙活動を推進し、企業倫理の向上および法令順守の強化に努めています。
しかしながら、コンプライアンス上のリスクを完全に回避できない可能性があり、法令等に抵触する事態が発生した場合、当企業グループの社会的信用に影響を与え、その対応のための多額の費用負担やブランド価値の低下が発生し、当企業グループの業績と財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(4) その他のリスクについて
①災害等による影響について
当企業グループは、地震、風水害、停電等の災害に備え、開発・製造設備や各種情報を保管する情報システム関連設備等に対して定期的に点検、検査およびバックアップなどを整備しています。
しかしながら、これによって、災害等による被害を完全に排除できることを保証するものではなく、当企業グループの事業活動に悪影響を与え、かつ、物的、人的な損害に関する費用を発生させ、当企業グループの業績と財政状況にも悪影響を及ぼす可能性があります。
また、新型コロナウイルスについては、感染症法上、第5類に分類されましたが、今後新たな変異株や新たな感染症の世界的な流行が生じた場合には、当企業グループ部品調達の遅延等、生産活動への影響を及ぼす可能性があり、経過によっては、当企業グループの事業活動は制限を受けることになり、当企業グループの業績と財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
②退職給付債務について
当企業グループでは、キャッシュ・バランス型確定給付企業年金制度を適用しており、市場金利や株式市況の変動によるリスクを最小限に留める対策を講じておりますが、割引率の低下や運用の利回りの悪化は、当企業グループの業績と財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
③会計基準等の変更について
当企業グループでは、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して会計処理を行っておりますが、会計基準の設定や変更により従来の会計方針を変更した場合に、当企業グループの業績と財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度における当企業グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態および経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国の経済は、新型コロナウイルスの感染症法上における位置づけが5類感染症になるなど、経済活動の正常化がみられるものの、依然として原材料や原油価格の上昇ならびに高止まり、外国為替相場における円安の継続、地政学リスクの継続など先行き不透明な状況で推移しました。また、当企業グループにおいては、資材および部品の調達価格の高騰による事業活動への影響がありました。
このような経済環境の中で、当企業グループは、2021年6月に2021年度から2023年度の3か年を計画期間とした中期経営計画(サクサは変わる。)を公表し、2026年3月期には、売上高400億円、営業利益25億円、ROE6.5%以上を長期目標に、3つの戦略「事業を変える。」「財務を変える。」「ガバナンスを変える。」を掲げ、取組んでまいりました。
「事業を変える。」について、連結子会社であるサクサ株式会社は、DX化を求めている中堅・中小企業の課題をITで解決する当企業グループの製品・サービス「Office AGENT」シリーズとして、ランサムウェアやサイバー攻撃の脅威から企業を守り安心・安全・快適・便利なオフィス空間を実現するUTM(統合脅威管理アプライアンス)「SS7000Ⅱ」シリーズの提供(2023年5月)、お客様のワークスタイル変化に対応した小規模事業者向けのボタン電話装置「OPTYS(オプティス)」の提供(2023年10月)、電子帳簿保存法改正に伴い義務化された電子取引データの保存・管理を効率的・安全に管理できる電子データ管理ゲートウェイ「DG1000」の提供(2023年11月)をしてまいりました。また、連結子会社である株式会社システム・ケイは、車両ナンバー認識システムとAI技術を利用したシステムの開発を通してお客様の課題解決に取組んでおります。同社は、国土交通省港湾局主催の情報通信技術に関わるサウンディング調査に参加し、2024年4月適用のトラックドライバーの時間外労働規制による労働力不足に対し内航フェリー・RORO船ターミナルの荷役効率化を提案(2023年6月)、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)の種子島宇宙センターの車両識別システムの更新整備入札において車両ナンバー認識システムとAI技術を活用したシステムで応札し落札(2023年7月)、株式会社テレビ北海道が開発したリモート監視システム「バーチャルマスターオペレーター」と同社の顔認証システムを連携させた総合監視システムをSECURITY SHOW 2024に出展(2024年3月)いたしました。
さらに、相模原オフィスにおいて連結子会社であるサクサプロアシスト株式会社が運営していた販売物流機能について、相模原オフィスの移転にあわせ、グループ外の物流サービス提供会社へ業務移管しました(2023年8月)。
「財務を変える。」について、保有資産の有効活用を図るため、政策保有株式の縮減(3銘柄売却)を実施しました。連結子会社であるサクサ株式会社が相模原に保有する不動産の収益化に向け、相模原オフィスから新横浜オフィスに移転(2023年8月)するとともに、新宿オフィスの閉鎖(2023年5月)を行いました。さらには、株主還元水準の改善および資本効率の向上を図るため自己株式の取得(2024年2月)を行いました。
「ガバナンスを変える。」について、当企業グループは、コーポレートガバナンスの強化に継続して取組むとともに、持続成長する企業への変革に向け、つなげる技術(強み)を核としたプロダクト・ソリューションの提供を通じて、サステナブルな社会(明日の社会)を実現し、SDGs達成に貢献する活動に取組んでおります。
当連結会計年度において、持続可能な社会の実現や当企業グループの持続的な成長と企業価値の向上を図るため、サステナビリティ活動を推進することを目的とした「サステナビリティ推進委員会」および当社取締役会において、気候変動に関連した地球温暖化を重要なリスクと認識し、その抑止を目的に脱炭素化の目標を定めてCO2排出量の削減に取組んでおります。連結子会社であるサクサ株式会社において、環境配慮型樹脂の使用を実現した製品の提供に向けて取組みました。
また、多様な人材活用による新たな価値を創造し、相互に認めあう組織風土を醸成していくことを目的に設置した「ダイバーシティ&インクルージョン推進委員会」において、当企業グループの女性の若年層に対するキャリアデザイン研修(2023年9月)、中堅およびリーダークラスの女性従業員に対するキャリアデザイン研修(2023年12月)を実施。サクサ株式会社の開発拠点の移転(新横浜オフィスの開設)に際しては、開発環境を整備、働き方改革を実現するため新たなオフィス環境の整備を行いました。
さらに、当企業グループは株式会社東京証券取引所に提出(2020年12月)した「改善報告書」に掲げた、倫理観・道徳観を醸成し定着するための「コンプライアンス研修」を開催(2023年6月、8月、12月および2024年2月)いたしました。「率直にモノが言える職場環境」を目指した企業風土改革の継続した取組みとして、当連結会計年度においては当企業グループの全社員を対象とした、当社社長と意見交換を行う場「経営とサクサグループの未来を語る会2023」を当企業グループに勤務する従業員を対象に開催いたしました。
なお、2021年度から2023年度の3か年を計画期間とした中期経営計画(サクサは変わる。)について、当連結会計年度が計画期間の最終年度であることから、2024年度を初年度とした次期「中期経営計画(2025年3月期~2027年3月期)」の策定を開始するとともに、次期中期経営計画を見据えたキャピタルアロケーションの考え方を決議(2024年2月)いたしました。
当連結会計年度の売上高は、40,948百万円(前年同期比3,628百万円増加)となりました。成長事業の売上高は、ビジュアルソリューションにおいて、連結子会社である株式会社システム・ケイが取組むIP監視カメラシステムの販売が増加したこと、SIビジネスにおいて特定顧客向け構築案件の販売が増加したことにより、10,880百万円(前年同期比354百万円増加)となりました。
また、基盤事業の売上高は、ボタン電話装置において、自社ブランドおよび特定顧客向けともに資材および部品を一定数確保でき継続してお客様の需要にお応えできたこと、さらに自社ブランドボタン電話装置については、2023年10月に発売した小規模事業者向けのボタン電話装置の販売が好調なこと、販売パートナーの店内シェアアップに努めたことで販売数量が増加しました。また、アミューズメント市場において、新カードユニットへの入替需要の高まりから、カードリーダライタ等の販売が増加したこと、さらにEMSにおいて産業用機器向けの需要が増加したことから、30,068百万円(前年同期比3,275百万円増加)となりました。
利益面では、メーカ代理店からの資材および部品調達価格の上昇ならびに高止まり、新横浜オフィス開設に伴う開発環境等の整備、人財投資はありましたが、売上高の増加による増益となったこと、二次流通業者からの資材および部品調達および品質コストが減少したことにより経常利益が3,406百万円(前年同期比1,019百万円増加)、特別利益に投資有価証券売却益322百万円、特別損失に特別退職金37百万円等を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、2,800百万円(前年同期比2,198百万円増加)となりました。
分野別の営業の概況は、次のとおりです。
(ネットワークソリューション分野)
ネットワークソリューション分野の売上高は、26,134百万円(前年同期比705百万円増加)となりました。これは、主にボタン電話装置において、自社ブランドおよび特定顧客向けともに資材および部品を一定数確保できお客様の需要にお応えできたこと、さらに自社ブランドボタン電話装置については、2023年10月に発売した小規模事業者向けのボタン電話装置の販売が好調なこと、販売パートナーの店内シェアアップに努めたことで販売数量が増加したこと、また、ビジュアルソリューションにおいてIP監視カメラシステムの販売が増加、SIビジネスにおいて特定顧客向け構築案件の販売が増加したことによるものです。
(セキュリティソリューション分野)
セキュリティソリューション分野の売上高は、14,813百万円(前年同期比2,922百万円増加)となりました。これは、アミューズメント市場において、新カードユニットへの入替需要の高まりから、カードリーダライタ等の販売が増加したこと、さらにEMSにおいて産業用機器向けの需要が増加したことによるものです。
当期の財政状況の概況は、次のとおりです。
当連結会計年度末の純資産は、配当金の支払い、自己株式の取得等をしたものの、親会社株主に帰属する当期純利益の計上および退職給付に係る調整累計額の増加により、前連結会計年度末に比べ3,473百万円増加し28,368百万円、総資産は304百万円減少し41,473百万円となったことにより、自己資本比率は68.4%となりました。
増減の主なものは、以下のとおりです。
流動資産では、受取手形、売掛金及び契約資産および電子記録債権が回収により1,729百万円減少し、現金及び預金が税金等調整前当期純利益による収入とあわせ1,233百万円増加となったこと、棚卸資産が翌期以降の販売に向けた商品及び製品の増加などにより537百万円増加となったことから、流動資産全体で前連結会計年度末に比べ176百万円増加いたしました。
固定資産では、有形固定資産がサクサ株式会社の新横浜オフィス開設に伴う設備投資等により271百万円増加したものの、無形固定資産は償却が進んだことにより20百万円、投資有価証券が売却および時価評価により610百万円それぞれ減少したことなどにより、固定資産全体で480百万円の減少となりました。
負債では、仕入債務が支払いにより1,559百万円、借入金が返済により1,708百万円、退職給付に係る負債が退職給付信託資産の時価の上昇により1,430百万円それぞれ減少したことから、負債全体で3,777百万円減少となりました。
当期末における現金及び現金同等物は、前期末残高に比べ1,233百万円増加し、9,368百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、3,737百万円の収入(前年同期は1,731百万円の収入)となりました。これは棚卸資産の増加および仕入債務の減少はありましたが、税金等調整前当期純利益の計上、売上債権の減少等によるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、569百万円の支出(前年同期は666百万円の支出)となりました。これは投資有価証券の売却による収入はありましたが、設備投資による支出および資産除去債務の履行による支出が発生したことによるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローは、1,967百万円の支出(前年同期は74百万円の収入)となりました。これは借入金の返済、配当金の支払い、自己株式の取得を行ったことによるものです。
当企業グループは、事業区分が単一セグメントでありますが、本項目における分野別情報は、前連結会計年度と同一の区分によっております。
当連結会計年度における生産実績を分野別に示すと、次のとおりであります。
(注)1 金額は、販売価格によっております。
2 上記のほか下記の仕入製品があります。
(注)金額は、仕入価格によっております。
当連結会計年度における受注実績を分野別に示すと、次のとおりであります。
当連結会計年度における販売実績を分野別に示すと、次のとおりであります。
(注)主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合
(注)NTTグループは、東日本電信電話株式会社、西日本電信電話株式会社およびエヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社等であります。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当企業グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末(2024年3月31日)現在において判断したものであります。
当企業グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
この連結財務諸表の作成にあたり、決算日における資産・負債の報告数値および偶発債務の開示ならびに報告期間における収入・費用の報告数値に影響を与える見積りおよび仮定の設定を行わなければなりません。
当企業グループの経営陣は、過去の実績や状況に応じ合理的であると考えられる様々な要因に基づき、見積りおよび判断を行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
特に、以下の重要な会計方針が、当企業グループの連結財務諸表の作成において使用された重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすものと考えております。
なお、半導体を中心とした部材調達難と販売機会損失等、当企業グループの事業活動に与える影響を合理的に反映することが難しい要素もありますが、期末時点で入手可能な情報を基に検証等を行っております。
a. 機器組込みソフトウェア(販売目的ソフトウェアのうち、連結子会社であるサクサ株式会社にかかるもの) は定額法により減価償却費を計上しており、販売可能な見込有効期間に基づく償却額を計上しております。また各年度の未償却残高が、翌連結会計年度以降の見込販売収益の金額を超過している場合には、当該超過額について、一時の費用又は損失として処理しております。見込販売収益の算出に用いた主要な仮定は、見込販売数量であり、見込販売数量は市場環境の変化に影響を受けるため、見積りの不確実性が高く、情報通信ネットワーク製品の陳腐化に伴い、見込販売収益が大幅に減少した場合には、一時に費用又は損失が発生する可能性があります。
b. 売掛金、貸付金等の債権については、決算日以降に発生すると予測される貸倒損失に備えるため、適正な見積りに基づき貸倒引当金を計上しておりますが、顧客等の財政状況が悪化し、その支払能力が低下した場合、追加引当が必要となる可能性があります。
c. 製品保証費用については、出荷済製品のアフターサービス費用等の発生に備え、過去の実績に基づくアフターサービス費用の見積りに基づき製品保証引当金を計上しております。三現主義の徹底と広範囲にわたる品質管理システムの運用により品質向上に努めておりますが、実際の品質不良率または修理コストが見積りと異なった場合、アフターサービス費用の見積額の修正が必要となる可能性があります。
d. 受注残高のうち、損失の発生が見込まれるものについて、将来の損失に備えるため、その損失見込額を受注損失引当金として計上しております。将来、発生原価が見積額を上回ると予想される場合、追加引当が必要になる可能性があります。
e. 投資については、回復可能性があると認められない株式等の評価減を実施しておりますが、投資先の財政状態が悪化した場合、評価損の追加計上の可能性があります。
f. 繰延税金資産については、将来の課税所得および継続的な税務計画を検討し、回収可能性が高いと考えられる金額に減額するため評価性引当金を計上しております。この評価性引当金は当連結会計年度末で判断したものであり、将来の課税所得および税務計画の変更等により追加計上または取崩しが発生する可能性があります。
当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識および分析については、「(1) 経営成績等の状況の概要」に記載しております。
当企業グループの経営成績に重要な影響を与える要因として、当企業グループの主力市場である情報通信ネットワーク関連市場においては、多様化、高度化したネットワークを活用した様々な事業が生まれるなど大きな変化が続いております。
このような市場環境の変化と資材調達環境の変化により、当企業グループの業績も影響を受けます。
そのため当企業グループは、このような変化に柔軟に対応し、現在の事業環境および入手可能な情報に基づき、最善の経営方針を立案するよう心がけております。
また、経営成績に影響を及ぼす可能性のあるリスクについては、「3〔事業等のリスク〕」に記載しております。
当企業グループの経営戦略の現状と見通しにつきましては、多様化するお客様のニーズにお応えするため、お客様視点に立った安心、安全、快適、便利な環境を実現するソリューションをタイムリーに提供し続け、事業成長に向けた収益体質改善のための諸施策に取組んでまいります。
a.キャッシュ・フローの状況
キャッシュ・フローの状況については、「(1) 経営成績等の状況の概要」に記載しております。
b.資金需要と財務政策
当企業グループは、運転資金および設備投資資金につきましては、内部資金を充当し、必要に応じ金融機関からの借入により調達することとしております。このうち借入による資金調達に関しましては、運転資金については主に期限が1年以内の短期借入金により調達しており、設備投資資金等については長期借入金等により調達しております。
また、資産効率の向上、営業活動によるキャッシュ・フローの確保およびシンジケーション方式によるコミットメントライン5,000百万円を含む未使用借入枠12,033百万円により、当面の運転資金および設備投資資金を調達することが可能と考えております。
(1)連結子会社の吸収合併
当社およびサクサ株式会社は、2024年5月20日開催の取締役会において、2024年7月1日を効力発生日として、当社を吸収合併存続会社、当社の連結子会社であるサクサ株式会社を吸収合併消滅会社とする吸収合併を行うことをそれぞれ決議し、同日付けで合併契約を締結いたしました。
なお、当社は合併後に2024年7月1日付けで商号を「サクサ株式会社」に変更することを予定しております。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」をご参照ください。
(2)連結子会社の吸収合併
当社は、2023年5月29日開催の取締役会において、株式会社ソアーの全株式を取得し、当社の連結子会社とすることを決議し、同日付けで株式譲渡契約を締結しました。なお、2024年7月31日付で株式の取得手続きを行う予定であります。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」をご参照ください。
当企業グループにおける研究開発活動は、ネットワークソリューション分野およびセキュリティソリューション分野について、事業運営に直結した新技術、新商品の開発のほか、未来のビジネスシーンの実現とお客様に更なる価値を提供する製品・サービスの創出に向けた新たなコア技術を確立するために研究開発(R&D)を進めています。
当連結会計年度は、安心、安全、快適、便利を実現するソリューションを提供するために必要となる音声、映像、データおよびアプリケーションに関わる研究開発を通し、DX化を求めている中堅・中小企業の課題をIT製品・サービスで解決する「Office AGENT」シリーズとして、「SECURITY/次世代情報セキュリティ対策」「WORKSTYLE/次世代ワークスタイル変革」および「COMMUNICATION/次世代コミュニケーション活用」の3つのデジタル革新を実現することに重点をおき活動しました。
なお、当連結会計年度の研究開発費総額は、
(1) ネットワークソリューション分野の商品開発
当連結会計年度のネットワークソリューション分野の研究開発費の金額は、1,941百万円です。
主な活動として、中堅・中小企業のオフィスにおける情報セキュリティの強化や業務効率化および円滑なコミュニケーションを実現するための「IPネットワーク等の製品やサービスの充実」ならびに「AI画像認識技術による様々な用途に応じたソリューション技術の確立」などの開発を進めました。
主な取り組みとして、小規模事業者向けのボタン電話装置「OPTYS」ならびに電子帳簿保存法改正に伴い義務化された電子取引データの保存、管理できる電子データ管理ゲートウェイ「DG1000」を開発しました。
(2) セキュリティソリューション分野の商品開発
当連結会計年度のセキュリティソリューション分野の研究開発費の金額は、846百万円です。
主な活動として、Office AGENT セキュリティとしてオートホン装置の後継機開発および、監視・防犯・マーケティングなど高精細映像によるリアルタイムでの判断や確認が必要となる市場向けの「AI画像認識技術による様々な用途に応じたソリューション」などを進めました。
(3) 研究開発(R&D)
当連結会計年度のR&D分野の研究開発費の金額は、550百万円です。
主な活動として、未来のビジネスシーンの実現とお客様に更なる価値を提供する製品・サービスの創出に向けた新たなコア技術(IPネットワーク技術およびAI技術)の確立ならびに地球規模の環境対策に活かすべく新規樹脂技術の製品実用化に向けたR&Dに取り組みました。
主な取り組みとして、IPネットワーク技術は「BLE5.1の方向検知をベースとした位置特定技術」、AI技術は「感情認識AIの技術検討」、新規樹脂技術は「バイオマスプラスチック・リサイクルプラスチックの技術検討」を進めました。