当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は以下のとおりであります。なお、本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は有価証券報告書提出日(2023年6月23日)現在において判断したものであります。
1.全社課題
当社グループは、2020年度から2022年度までを対象とする中期経営戦略において、2030年から2050年にかけての中長期的な当社グループの目標である「豊かな社会」、「循環型社会」及び「脱炭素社会」の構築に貢献するという会社の目指す姿の実現に向け、「事業ポートフォリオの最適化」、「事業競争力の徹底追求」及び「新製品・新事業の創出」という3つの全社方針を掲げて取り組みを進めてまいりました。「事業ポートフォリオの最適化」については、事業の整理を進めたことにより、事業の選択は概ね完了いたしましたが、財務目標については、売上高及び営業利益は目標を達成したものの、エネルギー価格や原材料価格高騰などの影響や持分法による投資損失の計上等により、経常利益及びROICは目標未達となり、事業競争力の強化や収益性の改善に課題が残っております。
こうしたなか、当社グループは、2023年2月10日付で、2023年度から2030年度までを対象とする中期経営戦略(以下「中経2030」といいます。)を新たに策定いたしました。中経2030においては、「人と社会と地球のために」という企業理念のもと、「循環をデザインする」という新たなビジョンを掲げ、「持続可能な社会(豊かな社会、循環型社会、脱炭素社会)を実現する」ことをミッションとしており、今後、企業価値の向上に向けて、中経2030に基づく諸施策を実施してまいります。中経2030の概要は以下のとおりです。
①目指す姿
(イ)私たちの目指す姿
当社グループは、「人と社会と地球のために、循環をデザインし、持続可能な社会を実現する」ことを私たちの目指す姿とし、自社の持つ強みをもとに金属資源の循環を強化し、対象範囲、展開地域、規模の拡大によりバリューチェーン全体での成長実現に取り組んでまいります。
(ロ)戦略ロードマップ
中経2030においては、2023年度から2025年度までの3年間をPhase1、2026年度から2030年度までの5年間をPhase2とし、私たちの目指す姿の実現を図ります。Phase1においては、プロダクト型事業を中心にコスト競争力強化に基づく利益成長・収益性改善を進めるとともに、資源循環などの中長期の成長領域への投資を実行します。Phase2においては、対象領域の拡大や海外を含む地域展開により事業拡大を図ってまいります。
(ハ)財務目標
Phase1の最終年度である2025年度では、売上高1兆9,400億円、営業利益700億円、経常利益870億円、ROIC 5.5%、ROE 10.0%、EBITDA 1,500億円、ネットD/Eレシオ 0.7倍、ネット有利子負債/EBITDA倍率 3.5倍を計画しています。
Phase2の最終年度である2030年度では、売上高2兆円、営業利益1,300億円、経常利益1,800億円、ROIC 9.0%、ROE 13.6%、EBITDA 2,600億円、ネットD/Eレシオ 0.5倍以下、ネット有利子負債/EBITDA倍率 2.0倍以下を目標としています。
(ニ)キャピタルアロケーション
Phase1においては、対象期間累計キャッシュイン4,200億円に対して、成長投資2,300億円、維持更新投資1,300億円、配当など600億円のキャッシュアウトを計画しております。Phase2においては、対象期間累計キャッシュイン7,900億円に対して、成長投資3,300億円、維持更新投資2,100億円、配当など1,800億円、有利子負債削減700億円のキャッシュアウトを計画しています。
(ホ)株主還元
当社は、株主に対する利益還元が経営の最重要目的の一つであるという認識のもと、利益配分については、期間収益、内部留保、財務体質等の経営全般にわたる諸要素を総合的に判断の上、決定する方針としております。
中経2030期間中の利益配分については、Phase1の2023年度から2025年度の期間において、配当性向30%を目途に利益還元を行います。また、Phase2の2026年度から2030年度の期間においても株主還元の充実を図ります。なお、自己株式取得については、キャッシュフローの状況、株価、及びネットD/Eレシオ等の財務規律を踏まえ、引き続き機動的に行うことを検討してまいります。
②企業価値向上に向けた取り組み
(イ)事業ポートフォリオ経営
Phase1ではコスト削減・プロセス最適化などの施策を実施し、ROIC改善による収益性の向上を目指してまいります。Phase2では長期の先行投資を要する資源事業も含め全事業でROICと事業別WACCの差となるROICスプレッドがプラスとなり、投下資本を乗じたエコノミックプロフィット(=ROICスプレッド×投下資本、以下「EP」)の最大化を目指してまいります。
事業ポートフォリオ経営の方針は次のとおりです。
・ 成長性と収益性の2軸で事業ポートフォリオを管理、経営資源の配分を最適化
・ 事業の成長性をEBITDA成長率で評価し、市場の成長率で補完
・ 企業価値向上に向け、ROICスプレッドの維持・向上を図りつつ、EPの増加を目指す
・ 金属事業カンパニーと環境リサイクル事業の統合(製錬・資源循環)による効率化を図り、事業価値向上を
加速
(ロ)投資配分と利益貢献
2030年度までの成長投資総額5,600億円のうち、鉱山投資やタングステン事業への投資など循環型社会貢献に2,500億円、高機能製品カンパニー及び加工事業カンパニーの競争力強化に2,800億円、地熱発電事業強化など脱炭素社会への貢献に300億円の投資を計画しています。
投資配分の考え方は次のとおりです。
・ ミッションへの適合、及び、維持更新と成長投資のバランスを考慮し投資対象を選定
・ 事業特性に応じたリターンを評価し、事業間で適正に配分
・ 事業毎の財務健全性を保ちつつ、全体のネットD/Eレシオ 1倍以下の財務規律を維持
(ハ)コスト競争力強化
中経2030では、コスト競争力強化にも取り組み、総額約240億円(Phase1:約90億円、Phase2:約150億円)のコスト削減をいたします。
営業利益に対するコスト削減累計額の比率は、2025年度で約13%、2030年度で約19%を見込んでいます。
③事業戦略
中経2030における事業別の目標及び事業戦略は次のとおりです。
・金属事業カンパニー
目標:非鉄金属の資源循環におけるリーダー
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事業戦略 |
資源事業 |
●銅鉱床に含まれる希少資源の確保・回収に向けた技術開発の推進 ●継続的な鉱山投資による権益の獲得と銅精鉱の安定確保 ●銅鉱山でのSX-EW※による銅供給量の拡大 |
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製錬・資源循環 事業 |
●資源循環の推進に向けたネットワーク強化・規模拡大 ●電気銅生産能力の拡大 ●E-Scrap類の処理拡大によるリサイクル率アップ ●レアアース、レアメタルリサイクル事業の創出 ●国内及び海外展開の加速(E-Scrap、家電、自動車リサイクル) |
※SX-EW:Solvent extraction and electrowinning 溶媒抽出と電解採取の2段階からなる湿式製錬プロセス
・高機能製品カンパニー
目標:グローバル・ファースト・サプライヤー
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事業戦略 |
銅加工 事業 |
●伸銅品リサイクル率を向上し、スクラップのプラットフォーム基盤を確立 ●海外(ルバタ社):成長市場(xEV、医療、環境)への迅速な参入 ●国内工場をマザー工場と位置づけ、海外に新たな川下工場を検討し、海外顧客への拡販、サービスを強化 |
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電子材料 事業 |
●事業ポートフォリオの継続的な組み換えによる高資本効率経営 ●成長領域の注力製品への戦略投資 ●新規事業創出や事業提携の推進及びそのための人材育成と確保 ●ものづくり力とDXの強化による生産高度化、稼ぐ力の追求 ●カーボンニュートラルに向けた事業、社会的価値(SDGs)の提供 |
・加工事業カンパニー
目標:グローバルで顧客が認めるタングステン製品のリーディングカンパニー
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事業戦略 |
加工事業 |
戦略市場で自律した事業展開を目指し、真のグローバル企業へ変革する <超硬工具事業> ●素材とコーティング技術の強みを活かした高効率製品を世界No.1品質で安定的に提供 <タングステン事業> ●超硬工具向けに加え、二次電池向け等に事業規模を拡大 ●環境対応力の強化 <ソリューション事業> ●ものづくり現場へのコト売りを事業化 |
・再生可能エネルギー事業
目標:再エネ電力自給率100%に向けた再エネ発電の拡大
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事業戦略 |
再生可能 エネルギー 事業 |
再生可能エネルギー事業を全社的な取り組みとして戦略本社に集約し、長期的な視野で事業の拡大を推進 ●地熱事業の拡大に向け、3年に1箇所のペースで新規開発を実施 ●将来的に発電コスト低下が見込まれる風力発電への新規参入 ●新規バイオガスプラントの更なる拠点の展開 |
なお、当社は2023年4月1日付で、従来の環境・エネルギー事業カンパニーが所管する「環境リサイクル事業」を金属事業カンパニーに統合し、「再生可能エネルギー事業」を戦略本社に新設する「再生可能エネルギー事業部」に移管する組織変更を実施いたしました。(これにより、同日付で環境・エネルギー事業カンパニーは廃止となりました。)
④カーボンニュートラル
当社グループの温室効果ガス排出量のうち、事業者自らによる直接排出であるScope1及び供給されたエネルギー利用に伴う間接排出であるScope2を2030年度に47%以上(2020年度比)削減し、2045年度までにカーボンニュートラル実現を目指します。また、Scope1とScope2以外の事業者の活動に関連する他社の排出であるScope3を2030年度に13%以上(2020年度比)削減します。さらに、2050年度までに当社の再生可能エネルギー由来の電力自給率100%を目指します。
⑤経営基盤強化
次のとおり、グループ共通の課題に対する取り組みを強化するとともに、経営基盤の強化も引き続き行い、企業価値向上を図ってまいります。
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ものづくり戦略 |
●中経2030に基づく工場ビジョンの策定、及び工場実力評価と課題設定・解決を追求 ●ボトムアップ活動、ものづくり基盤強化、技術開発・改善による「ものづくり力の別格化」 |
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研究開発戦略 |
●新製品・新技術・新事業創出を通して、持続的な企業価値向上を実現 |
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人事戦略 |
●人材の価値最大化と「勝ち」にこだわる組織づくり ●共創と成長を生み出す基盤の構築 |
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DX戦略 |
●データとデジタル技術を活用し、ビジネス付加価値向上、オペレーション競争力向上、経営スピード向上の3本柱を推進 ●開始から2年以上が経過する中で、ものづくりの強化と従来テーマの着実な実行を行うべく、テーマ再編成、体制強化等を行い、「MMDX2.0」として新たなフェーズへ |
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IT戦略 |
●MMCグループIT WAYを実現するため、データ活用・働き方・セキュリティの観点から事業を支えるITモダナイゼーションの推進 ●100億円規模の投資を行い、2030年度におけるITコストは売上高比率1.0%以下 |
2.事業別課題
●金属事業
主要製品である銅地金は、中長期的には需要の増加が見込まれ、短期的にも中国経済の回復が需要を牽引することが見込まれます。また、主要原料である銅精鉱の調達は、大規模新規鉱山における生産開始が予定されている一方、製錬能力の拡大は限定的であることから、需給バランスは緩和することが見込まれます。他方で、E-Scrap市場の競争激化やエネルギーコストの高騰等への対応が急務となっております。
このような状況のもと、資源事業では、権益を保有する鉱山において、着実にプロジェクトを遂行するほか、継続的な鉱山投資による権益の獲得と銅精鉱の安定確保のため、中規模銅鉱山への新規参画に向けた検討を進めてまいります。また、銅鉱山におけるSX-EW(湿式製錬)への参画による電気銅の供給能力拡大や、銅鉱床に含まれる希少資源の確保・回収に向けた技術開発を推進してまいります。
製錬・資源循環事業では、当社独自の三菱プロセスの環境的優位性を最大限に活かしつつ、有価金属の回収技術を一層発展させ、廃棄された製品を分解・分離して、銅製錬プロセスへ投入可能な原料を取り出し、有価金属を抽出するリサイクルプロセスの効率的な運営に取り組んでまいります。E-Scrap類の処理能力拡大に向け、小名浜製錬所への前処理設備の導入や直島製錬所の銅精鉱処理能力の増強を図るとともに、Exurban社への出資を通じた米国におけるE-Scrapビジネスの拡大や廃自動車等からのLIBリサイクルの事業化を推進してまいります。
●高機能製品
高機能製品の市場環境は、自動車関連需要についてはEV化による高電圧化、大電流化及び車載関連製品の高度化により、半導体関連需要についてはEV化やIoT化の進展等により、それぞれ中長期的な成長が期待されます。しかしながら、足許では、自動車関連では半導体や各種部材等の調達不安があるほか、半導体関連では市況に減速感がみられるなど、主要顧客やサプライヤーの生産活動の動向等が懸念されることから、経済情勢や市場環境を注視してまいります。
このような状況のもと、銅加工品は、次世代自動車、半導体などの成長市場を中心に高性能な製品を提供してまいりましたが、更なる需要の増加に応えるべく、生産能力を現行から約3割増強させる総額約300億円の設備投資を着実に進めております。さらに、マーケティングや研究開発、販売体制の強化を進め、開発・製造・販売が一体となって高付加価値製品を提供することにより、収益力を強化してまいります。
電子材料は、半導体、次世代自動車などの成長市場向けの注力製品に対して、M&Aを含む積極的な投資を行い、新事業の創出や既存事業の拡大を進めてまいります。2023年度より、新たに事業部横断の開発組織を設置し、新事業・新製品の開発を加速させるとともに既存事業間のシナジー強化を目指してまいります。さらに、事業ポートフォリオの継続的な組み替えにより高資本効率経営に取り組んでまいります。これらにより、持続的に成長する高収益事業体となることを目指してまいります。
●加工事業
超硬製品の市場環境は、中長期的には安定成長が見込まれ、また、短期的には、航空宇宙産業等の需要が牽引し、緩やかな回復基調となることが見込まれます。しかしながら、足許では、新型コロナウイルス感染症の流行やウクライナ情勢によるサプライチェーンの混乱、エネルギーや原材料価格の高騰等の影響が残るほか、国内を中心とした自動車の生産回復の遅れによる需要後退等のリスクも懸念されることから、経済情勢や市場環境の動向を注視してまいります。
このような状況のもと、超硬工具事業では、海外販売強化による売上拡大、スマートファクトリー化によるコストダウン及びDX活用による販管費削減等により、収益改善を進めてまいります。タングステン事業では、超硬工具向けに加え、マサン・ハイテック・マテリアルズ社との協業による二次電池市場へのタングステン供給とリサイクル基盤を構築し、事業規模拡大を行います。ソリューション事業では、ものづくり現場へのコト売りの事業化を目指し、M&Aやテクニカルセンターの活用のほか、事業会社の設立も視野に検討を深めてまいります。そのために、まずはデジタル技術による切削加工ソリューション提供の拡充を進めてまいります。
●再生可能エネルギー事業
再生可能エネルギー事業の事業環境は、中長期的な社会課題として、都市型廃棄物の効率的処理やエネルギー資源の効率的な活用、温室効果ガスの排出削減要請といった環境問題への対応を強化することが強く求められております。
このような状況のもと、昨年12月に運転を開始した小又川新水力発電所の効率最大化に取り組むほか、進行中の安比地熱発電所(2024年4月に運転開始予定)の建設をスケジュールどおりに進めてまいります。また、食品廃棄物のバイオガス化事業においては、集荷量の確保及び安定操業に注力するとともに、新規拠点の展開に向けた検討を進めてまいります。また、人材育成にも注力するほか、事業拡大に向けて、新規の地熱地域及び風力発電事業の調査を行うとともに、海外展開についても検討を深めてまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は以下のとおりであります。なお、本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は有価証券報告書提出日(2023年6月23日)現在において判断したものであります。
(1)ガバナンス及びリスク管理に関する事項
①ガバナンス
当社は、コーポレート・ガバナンス基本方針において、当社グループの中長期的な企業価値の向上を実現するためには、サステナビリティを巡る課題への対応が必要不可欠と認識し、グローバルな事業活動のなかで廃棄物や資源のリサイクル及び省エネルギーの推進を行うなど、社会的課題の解決に積極的に取組むことにより、持続可能な社会の構築への貢献と中長期的な企業価値の向上の両立を目指すこと、及び「サステナビリティ基本方針」に基づき、サステナビリティを巡る課題に対し、適切に対応していくことを定めています。
2021年12月1日付で策定したサステナビリティ基本方針は、当社グループのサステナビリティに関連する規定・方針類を束ねる上位方針として位置付けており、関連する方針として、人権方針、環境方針、調達方針等を定めています。これらの方針等に基づき、取組を進めてまいります。
URL:https://www.mmc.co.jp/corporate/ja/sustainability/
また、取締役会がサステナビリティに関する取組のモニタリングに留まらず、異なる視点からサステナビリティへ取組む方向性を能動的に検討し、社内に示していくべく、取締役会の下に「サステナビリティ委員会」を設置しております。また、執行役社長(本部長)、関係部署の担当執行役(副本部長)、関係部署の部長等によって構成される「サステナブル経営推進本部」(※)を設置し、サステナビリティを含む各種経営課題に一元的に対応する体制を構築しております。これらを含めた当社のコーポレート・ガバナンスの概要は、「
(※)2023年7月1日付でサステナビリティ経営体制を刷新することに伴い、サステナブル経営推進本部をSCQ推進本部へ改組するとともに、専門部会の構成を一部変更する予定としております。
②リスク管理
当社グループでは、重大リスクをグループ全体のリスク、事業固有のリスク(事業全体の運営に重大な影響を及ぼすリスク)、及び事業拠点固有のリスク(拠点運営に重大な影響を及ぼすリスク)として、各階層が担うべき役割(計画の策定、実行、支援、モニタリング/レビュー)を明確にしています。特に本社の管理部門/事業部門は、事業拠点で確実に対策が実行されるよう、半期毎に事業拠点とリスクコミュニケーションを図り、実施状況や課題を共有し必要な支援を協議のうえ実施しています。
リスクマネジメントに関する活動状況については半期毎にモニタリング/レビューし、結果はサステナブル経営推進本部、戦略経営会議、及び取締役会等に報告され、リスクの状況を経営層でモニタリング/レビューしています。
(2)戦略及び指標・目標に関する事項
当社は、2023年2月10日付で、2023年度から2030年度までを対象とする中期経営戦略(以下「中経2030」)を策定いたしました。中経2030においては、2050年度の再生可能エネルギー電力自給率100%に向けて、再生可能エネルギー事業を全社的な取組として戦略本社に集約し、長期的な視野で事業の拡大を推進することとしております。加えて、当社グループの温室効果ガス(以下「GHG」)排出量について2030年度までの削減目標を定め、2045年度までのカーボンニュートラル実現を目指すこととしております。また、人事戦略については、「人こそが新しい価値を創造し、当社グループの持続的成長の源泉である」という考えのもと、人材の価値最大化と「勝ち」にこだわる組織づくり、及び共創と成長を生み出す基盤の構築に取組むこととしております。
(3)気候変動への対応
1)ガバナンス及びリスク管理に関する事項
①ガバナンス
当社は、気候変動対応を含む経営戦略を分掌する執行役を置き、戦略本社に専門部署を設置し、当社グループの気候変動対応を推進しております。また、サステナブル経営推進本部の専門部会である気候変動対応部会では、気候関連財務情報開示タスクフォース提言に基づいたシナリオ分析、気候関連リスク及び機会の評価・管理、GHG削減のための実行計画の策定・管理、及びその他気候変動に関する協議及び情報共有を推進しています。同部会活動のモニタリングについては、執行役社長を本部長とするサステナブル経営推進本部にて報告・審議等を経たうえで、四半期毎に戦略経営会議、取締役会に報告しています。
②リスク管理
当社グループでは、気候変動に関するリスクを当社グループの業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性がある主要なリスクの1つとして認識しており、当社グループのリスクマネジメント活動の中で取組を進めています。当社グループのリスクマネジメント体制及び運用状況、重大リスクの選定プロセス等の詳細は
2)戦略に関する事項
気候変動に関する機会については、気候変動に関する政策等の強化により、省エネ・GHG排出削減に貢献する技術や製品・サービスの需要が拡大すると想定しています。当社グループは、脱炭素化に貢献する素材・製品の製造、非鉄金属資源リサイクル、地熱発電等の再生可能エネルギーの開発・利用促進、CO2回収・有効利用に関する技術開発、保有する山林の保全活動等に取組むことで、経済的価値と社会的価値の両立を目指していきます。
①シナリオ分析
当社グループは、2021年3月、気候変動が当社グループの事業に与える影響(リスクと機会)について把握し、リスクの低減及び機会の獲得に向けた対策を検討するため、シナリオを設定し、その分析を実施しました。移行リスクと機会については、2023年2月に中経2030との整合性を取りながら、シナリオ分析の更新、指標・目標の設定を行いました(全事業共通で1テーマ、3つの大テーマについて事業毎に計9テーマ)。今後はこの指標・目標に基づいたモニタリングを実施していくことにしています。
※赤字は新テーマ
②物理的リスク(水)
当社グループにおける水使用量の大部分(約91%)は冷却水としての海水であり、淡水(工業用水や地下水等)の使用量は相対的に少ないものとなっています。しかし、淡水の不足は事業活動に影響を及ぼすおそれがあるため、当社グループの事業運営では、必要な水量及び水質を確保することが不可欠です。また、台風や豪雨による洪水災害といった近年の頻発する水関連の問題とそれに伴う影響の大きさを考慮し、これらに対するリスク管理を行っています。
事業所では水リスクの低減策をそれぞれ進めており、水資源確保への対策については水の循環利用や水使用量の少ない設備の導入・更新等による節水に取組み、洪水対策については建屋・ポンプ・電気設備等の嵩上げや排水ポンプの設置、増水を想定した訓練等に取組んでいます。また、事業所からの排水水質異常や水質事故の防止のため、法規制を上回る独自の排水基準の設定による管理、水質異常時に検知できるセンサー・自動排水停止システムの導入等に取組んでいます。
3)指標・目標に関する事項
当社は、当社グループのGHG排出量(Scope1及びScope2)の削減目標として、2030年度までに47%削減(2020年度比)とし、2045年度までにGHG排出量を実質ゼロとするカーボンニュートラルの実現を目指す中長期目標を設定しました。
中長期目標の達成に向け、2030年度までに主に製造拠点の省エネ、設備改善等へ105億円の投資を行い、GHG排出量削減に取組みます。また、2045年度のカーボンニュートラル実現のため、当社が強みを持つ地熱発電等の再生可能エネルギーの開発、利用拡大を進め、目標値として2035年度に自社使用電力の再生可能エネルギー利用率を100%、その内の66%を自社再生可能エネルギー由来電力とすることを定めています。これに伴い、2030年度までに再生可能エネルギー事業へ300億円の投資を行います。
2021年度におけるScope1・2排出量内訳[千t-CO2e]
(セメント事業、アルミ事業、多結晶シリコン事業を除く。)
|
分類 |
単体 |
国内グループ |
海外グループ |
計 |
|
|
Scope1 |
エネルギー起源(燃料等) |
109 |
380 |
7 |
496 |
|
非エネルギー起源 |
64 |
246 |
2 |
312 |
|
|
小計 |
173 |
626 |
9 |
808 |
|
|
Scope2 |
エネルギー起源(電力等) |
248 |
188 |
86 |
523 |
|
合計 |
421 |
814 |
96 |
1,331 |
|
(4)人的資本に関する取組(人材の多様性確保を含む)
当社グループは、「人と社会と地球のために、循環をデザインし、持続可能な社会を実現すること」を「私たちの目指す姿」として掲げています。事業活動を通じてこの目指す姿を推進していくのは人であり、「人こそが新しい価値を創造し、当社グループの持続的成長の源泉である」と考えています。
人材を資源やコストではなく「資本」として捉え、直近ではHuman Resources Transformation、略してHRXを通じて、人材育成の加速、キャリア自律の促進、タレントマネジメントシステム導入による人材情報の見える化など、投資を通じて人材の成長に取組んでいます。今後もHRXの取組を更に深化させながら、人事戦略「人材の価値最大化と『勝ち』にこだわる組織づくり」、「共創と成長を生み出す基盤の構築」を通じて、個人と会社がともに成長し、企業価値の向上を実現させていくための人的資本への投資を進めてまいります。
①ガバナンス
当社は、当社グループの人事戦略を分掌する執行役を置き、戦略本社に人事戦略(ダイバーシティ&インクルージョンを含む)担当部署を設置し、当社グループの人的資本に関する取組を推進しております。また、執行役をメンバーとする「人材委員会」での人事課題の審議・共有、次世代経営人材育成プログラムへの執行役の関与等により、当社グループの人的資本への取組、経営戦略・事業戦略と人事戦略とを連動させる取組を推進しております。また、2023年4月にはCHRO(Chief Human Resources Officer)の設置も行っております。
②戦略
当社グループでは、これまで取組んできたHRXを発展させ、中経2030を実現するための人事戦略を以下のとおり定めています。
<2022年度までの取組事例>
・執行役と人事担当者で構成される「人材委員会」を設置。人材の採用、育成、異動・配置、ダイバーシティ&インクルージョンをはじめとする各種主要人事施策の審議、及び実効性の検証、改良に向けた検討の実施
・管理職層に対する「職務型人事制度」の適用による役割・責任に応じた評価・処遇・配置の実現
・1-on-1の実施、社内公募制度の活性化、教育研修体系の整備とオンライン学習拡充による、自律的キャリア形成の支援
・タレントマネジメントシステムの導入による人材情報の見える化と活用
・執行役社長をトップとする推進体制のもと、従業員の健康を最優先にすることを目的とした、健康経営の推進
・執行役と従業員との対話機会の設定
③指標と目標
経営戦略達成のための重要な人的資本に係る指標と目標として、以下3点を設定しています。
a)経営リーダー候補の継続的確保育成
当社グループが中長期的に成長していくためには、それを牽引する経営リーダーを育成する必要があることから、次世代経営人材育成プログラムに沿い、将来の経営リーダーになり得る人材を選抜し、育成を進めています。このプログラムを通じて育成される経営リーダー候補者を順次増加させていき、執行役後継候補者に占める次世代経営人材育成プログラム選抜者比2022年度実績51%を、2030年度までに80%とする目標を設定しています。
b)意思決定層における多様性の確保
当社グループの持続的な成長のためには、既存の枠組みにとらわれないイノベーションの創出が必要であると考えています。そのためには、多様な人材を確保・育成し、多様な個性を認め合い、異なる意見から新たな価値を創出する意識・風土醸成が欠かせません。このことから、2021年に、ダイバーシティ&インクルージョンに関する方針を明確化するとともに、当社の管理職層における多様な属性(女性、外国人、経験者採用、障がい者)の割合2020年度実績16%を、2030年度までに30%(※1)まで引き上げる目標を設定しています(2022年度実績は22%)。
c)エンゲージメントの継続的向上
当社グループの経営戦略・事業戦略を実行するのは人です。一人ひとりが持つ個性を受け入れ、尊重し、最大の組織パフォーマンスを発揮しながら、働きがいを感じることのできる企業を目指し、働きがい向上に向けた各種施策を進めています。2022年度より、年に1度、当社の全従業員を対象としたエンゲージメントサーベイを開始し、施策の効果を測ることとしております。今後も各施策を更に推進していくことにより、エンゲージメントサーベイ全設問における肯定的回答率2022年度実績71%を、2030年度までに80%(※2)まで引き上げることを目標として設定しています。
とりわけ、会社の持続的成長に影響を及ぼす「意思決定層における多様性の確保」に向けた取組については、その属性別にも以下の指標と目標(※1)を設定しています。
〇女性
2020年度末時点における当社の全管理職に占める女性管理職の割合は2.1%です。当社では、近年における総合職の新卒採用に占める女性比率は従来の目標である「25%以上」を概ね達成していますが、今後はこの水準を更に向上させるとともに、経験者採用の強化、キャリア加速や人脈形成の支援、多様な経験蓄積による実力の養成等により、女性管理職の人数を2025年度末までに2020年度末比約2.5倍、2025年度末時点の全管理職に占める割合を5%以上にすることを目指しています(2022年度末時点における女性管理職の人数は45名で、全管理職に占める割合は2.5%)。
〇外国人
2020年度末時点における当社の全管理職に占める外国人管理職の割合は約1%です。今後も積極的な新卒・経験者採用を継続するとともに、キャリア支援や職場環境の整備等により、2025年度末までに、外国人管理職の人数を2020年度末比約2.5倍にすることを目指しています(2022年度末時点における外国人管理職数は2020年度末比約1.5倍)。
〇経験者採用
2020年度末時点における当社の全管理職に占める経験者採用の割合は約12%です。近年、当社では経験者採用に注力しており、最近3年間の管理職層及び総合職の新規採用においては、年間採用者に占める経験者採用比率は約40%です。今後も研修や社内人脈形成等の入社後サポート体制強化やキャリア支援等により、2025年度末までに、全管理職における経験者採用の人数を2020年度末比約1.5倍にすることを目指しています(2022年度末時点における経験者採用管理職数は2020年度末比約1.3倍)。
※1:対象は当社正社員(当社からの出向者を含み、当社への出向者は含みません)
※2:対象は当社正社員(当社への出向者を含み、当社からの出向者は含みません)
1.重大リスクの選定プロセス
当社グループでは、経営上、事業運営上の重大なリスクを、本社管理部門にて毎年度網羅的に洗い出し評価したうえで、最終的には戦略経営会議において社会情勢や経営環境及びグループの経営課題等を踏まえ、対処すべき優先順位付けを行っています。また、事業固有の重大なリスクについても、本社事業部門にて毎年度、洗い出し評価したうえで、事業部門が本社管理部門に対し説明する会議(ビジネスレビュー)を経て決定し、その後進捗状況を確認しています。
2.当社グループのリスクマネジメント体制及び運用状況
上記の重大リスクに、拠点で事業拠点固有のリスクを洗い出し、評価したものを加え、各拠点で実施計画を策定のうえ、リスクマネジメント活動を行っています。活動状況については半期ごとにモニタリング/レビューし、結果はサステナブル経営推進本部、戦略経営会議、及び取締役会等に報告され、リスクの状況を経営層でモニタリング/レビューしています(図1参照)。
重大リスクをグループ全体のリスク、事業固有のリスク(事業全体の運営に重大な影響を及ぼすリスク)、及び事業拠点固有のリスク(拠点運営に重大な影響を及ぼすリスク)として、各階層が担うべき役割(計画の策定、実行、支援、モニタリング/レビュー)を明確にしています(図2参照)。特に本社の管理部門/事業部門は、事業拠点で確実に対策が実行されるよう、半期ごとに事業拠点とリスクコミュニケーションを図り、実施状況や課題を共有し必要な支援を協議のうえ実施しています(図3参照)。
また、個々の重大リスクのシナリオを策定し、統一化した評価基準に基づく、影響度と発生可能性の定量的/定性的な評価を行い、リスク発現時のイメージを具体化し、共有しています(図4参照)。
新型コロナウイルス感染症の対応については、 2020年1月に危機管理担当役員を本部長とする対策本部を本社に設置し、国内外の感染状況に応じたグループとしての対応指針を策定し周知、実行するとともに、事業継続計画の見直し等を実施してきました。
図1:リスクマネジメント体制
図2:重大リスクの位置づけ
図3:リスクマネジメントサイクル
図4:リスクの評価基準
3.事業等のリスク
経営者が当社グループの業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。
なお、以下の内容は、当社グループの全てのリスクを網羅するものではありません。本項においては、将来に関する事項が含まれていますが、当該事項は2023年6月23日現在において判断したものです。
(1)地政学、国際情勢、海外経済情勢 (発生可能性:高、影響度:大)
当社グループは、海外31の国・地域に生産及び販売拠点等を有し、海外事業は当社グループの事業成長の重要な基盤と位置付けています。
ウクライナ情勢やそれに伴う諸外国によるロシアへの経済制裁やウクライナへの軍事支援、米国・中国をはじめとする二国間関係等により、国際関係は不安定な状況が続き先行きは依然として不透明になっております。当社グループが進出する国、地域等において、政情不安、国家間の紛争や一方的な侵攻、政変等の地政学リスクが顕在化した場合、当社グループの事業活動に支障が生じ、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また上記リスクのほか、グローバルな事業展開に関するリスクとして、各国・地域の経済情勢、予期しない政策や規制、取引先の事業戦略や商品展開の変更等が想定され、当社グループの事業活動に支障が生じ、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があり、これらのリスクは常に潜在的に存在していると判断しています。
これらのリスクに対しては、従来からのリスク低減回避策やBCP等を更に徹底していくとともに、常に情勢を注視・モニタリングし、事業戦略、海外投資等の見直しを行います。また、現地拠点からの情報共有や各事業間の連携により、これら情勢の変化に適切に対応しています。海外における法的規制等個別のカントリーリスクに関する情報収集とグループ内の共有、周知に努めています。
特に、金属事業においては、銅生産国における国家や地方政府による資源事業への介入、銅精鉱の世界的な需給バランスの変動、銅精鉱の品位低下等、当社グループの管理が及ばない事象による影響を受けるリスクがあります。これらに対しましては、持続可能な原料ポートフォリオの形成の一環として、銅精鉱買鉱先の国・地域の分散、効果的な優良鉱山プロジェクトへの投資を推進しつつ、一方でE-Scrap(各種電子機器類の廃基板)をはじめとするリサイクル原料を積極的に利用することで、原料を安定的に確保してまいります。
(2)市場動向 (発生可能性:中、影響度:大)
当社グループは、様々な業界に対し、製品及びサービスを提供していますが、世界経済情勢の変化や顧客の市場の急速な変化と顧客の市場占有率の変化、顧客の事業戦略または商品展開の変更等、市場・顧客動向は常に変動し、以下に述べるリスクの発生時期は様々であると想定していますが、常に潜在的に存在していると判断しています。
自動車業界は電動化による内燃機関の減少、CASE(Connected、Autonomous、Shared & Services、Electric)やMaaS(Mobility as a Service)による構造変化が想定され、生活様式や社会の変化によるモビリティに関するニーズが変化することにより、切削工具等の製品の需要減少が生じることが想定されます。このような業界と顧客市場の変化に的確に対応できない場合は、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
このため、自動車部品の変化による新たな需要の獲得を目指すとともに、医療など新たな産業を視野に入れた市場開拓を目指し、ソリューションなど新たな価値の提供によりシェアの維持・拡大を目指します。また、電動化が進展しても需要が継続する足回り部品の製造に使用される切削工具需要への拡販を目指し、新たな加工方法や新素材に対応した切削技術による市場展開等に取り組んでいます。
また、当社グループは、半導体業界向けに電子材料等を供給しており、半導体市況の動向が、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。このため、特徴のある高品質な製品提供による重要顧客との信頼関係強化、高付加価値な製品の開発等によるシェア拡大等を検討しています。
セメントの国内需要は、長期に亘り縮小傾向が続き、現在の国内需要はピーク時の半分以下となっています。社会に不可欠な素材であり中長期的にも一定規模以上の需要が確保される見込みでありますが、需要減少が加速すると、セメント事業継続が困難になる可能性があります。このため、2022年4月1日付でUBE三菱セメント株式会社への事業承継によって生産・物流・販売機能の合理化効果を創出し、また海外では今後の成長が期待できる地域での事業拡大・新規開拓を目指します。
(3)原材料・ユーティリティ価格の変動 (発生可能性:高、影響度:大)
1)原材料価格
非鉄金属原材料、石炭等の調達価格は、国際商品相場、為替相場、及び海上運賃等の変動の影響を受けます。これら原材料価格等の高騰等により調達価格が上昇した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。国際商品相場、及び為替相場等の大きな変動は過去にも発生し、今後も数年に一度程度の頻度で発生する可能性があると想定しています。
このため、金属事業における銅精鉱に関しては原材料調達ルートの複線化、安定的な調達先の確保や海外鉱山への投資等、加工事業のタングステン原料等の非鉄金属原材料に関しては調達先の拡大、リサイクル原料の使用比率の向上等に取り組む等、原材料価格への影響の最小化に努めます。
2)ユーティリティ価格
原油、石炭、天然ガスの調達コストの大幅な上昇によりエネルギー価格も高騰し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼしております。これら価格の更なる上昇や値上げ等が生じた場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。エネルギー価格の上昇リスクが顕在化している現在の状況からも、省エネ設備の導入推進、あるいは自家消費型太陽光発電システムの導入を進めることで購入電力量の削減を図ってまいります。
(4)調達品 (発生可能性:中、影響度:大)
当社グループの生産活動における資材、部品その他の部材調達に関し、需要の急拡大による供給量の制限や品質不良による調達量不足や原料・熱エネルギー源となる資源の枯渇、ユーティリティ会社の設備故障、重要サプライヤーの被災や倒産等により減産が生じた場合、当社グループの生産活動に支障が生じ、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。様々な要因により発生するリスクのため発生時期は明確ではありませんが、常に潜在的に存在し備えるべきリスクと判断しています。
さらに、セメント事業の分野においては、製造工程の省エネに取り組むとともに、現在天然資源の代替として受け入れている廃棄物・副産物の受け入れを拡大し、原料及び資源等の枯渇の防止に努めています。
(5)気候変動 (発生可能性:高、影響度:大)
気候変動に対する政策及び法規制が強化され炭素価格制度(排出権取引制度や炭素税)が導入、強化された場合など、温室効果ガス(GHG:Greenhouse Gas)排出量に応じたコストが発生することにより当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、脱炭素社会への移行に伴い、当社の従来からの製品市場において縮小が見込まれる分野も存在しており、新たな市場拡大分野への対応が遅れた場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。気候変動に関しては、全世界的にカーボンニュートラルの動きが高まっており、我が国においても2050年のカーボンニュートラルへの取り組みが宣言される中、近い将来に想定される規制強化に向けた迅速な対応が必要であると判断しています。
このため、2030年度に向けたGHG削減目標を見直し、省エネ設備の導入や再生可能エネルギーの使用を拡大することにより、当社グループの事業活動により排出されるGHGの削減に取り組んでいます。また、当社グループ製品の市場競争力を向上するため、製造プロセスの改善や環境配慮型製品の開発、CO2回収・有効利用・貯留(CCUS:Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)など環境負荷を低減する技術開発を推進しています。
一方、気候変動に関する政策等の強化により、省エネ・GHG排出削減に貢献する技術や製品・サービスの需要が拡大することが予想され、ビジネス機会が増大すると想定しています。当社グループでは、脱炭素化に貢献する素材・製品・技術の開発、地熱発電等の再生可能エネルギーの開発・利用促進、CO2回収・利用に関する実証試験・技術開発の推進、保有する山林の保全活動等に取り組んでいます。
(6)自然災害・異常気象 (発生可能性:中、影響度:大)
異常気象や自然災害などのリスクは年々増加しており、国内外において多数の事業拠点を有している当社グループは、最新のハザード情報等を元に各種防災対策等に取り組んでいます。しかし、地震、台風、洪水、ゲリラ豪雨等の、想定した水準をはるかに超えた大規模自然災害によって生産設備等が甚大な被害を受ける可能性があり、生産設備の損壊、工場における操業・製品の出荷への影響等から、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
近年頻発する自然災害・異常気象に対応するため、当社グループ内の体制の拡充を推進するほか、BCP(事業継続計画)の整備・見直し、複数拠点による製造可能品目の増強、洪水、高潮、高波対応工事等の各種施策を計画的に実施しています。
なお、今後発生が想定される首都直下地震等を含め、自然災害等による危機事態が発生した際に、速やかに従業員の安否や事業拠点の被災状況を把握するために、2019年1月、国内外の全拠点に危機管理システムを導入しました。グループ内で被害情報をリアルタイムに共有することにより、各事業拠点や本社部門が各々の立場での適切かつ迅速な対応を可能にするとともに、本社部門や近隣拠点からも速やかに救援し易い体制を構築しています。
(7)公害及び環境法令違反の発生 (発生可能性:中、影響度:中)
世界的なサステナブルディベロップメント(持続可能な発展)の実現に向けた動きを背景に、事業活動において環境法令違反を発生させた場合の企業に対する法的及び社会的な制裁等はかつてなく重くなっています。
当社グループの事業は、国内外の各拠点において、環境関連法令に基づき、大気、水質、土壌等の汚染防止に努め、また、気候変動、大気汚染、水質汚染、有害物質、廃棄物リサイクル及び土壌・地下水の汚染などに関する種々の環境関連法令及び規制等を遵守し活動しています。しかし、国内外での環境法令の厳格化が進む中、法令改正・環境基準の変更への対応の遅れ、有害物質含有量の基準厳格化、行政指導の変化、選任・届出・報告等への対応の遅れが生じた場合、当社グループの事業活動に支障が生じ、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。発生時期は明確ではありませんが、常に潜在的に存在するリスクと判断しています。
このため、適用される法令の改正情報の共有、研修・教育等の徹底のほか、設備強化も含めリスクの回避・低減・移転を全社グループで進める等の施策を推進しています。
(8)感染症 (発生可能性:中、影響度:中)
当社グループは、新型コロナウイルス感染症の拡大が認められた2020年1月下旬の段階で本社に対策本部を設置し、統一的な対応を実施してきました。具体的には感染症の流行状況に応じたグループ対応方針と予防対策のガイドライン等の策定、従業員の健康状態、国・地域の方針等、事業拠点やサプライチェーンへの影響等に関する情報の収集と経営層との共有、モニタリング等を行ってきました。
国内では、感染症法上の取り扱いは第5類に移行しましたが、今後、新たな変異株やウイルスの出現による感染の拡大により市場環境の回復の遅れや当社グループの生産、物流、営業活動等への支障が生じた場合は、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、職場における感染予防・拡大防止策の徹底を継続し当社グループの製品・サービス等の提供を途切れさせることがないよう事業運営するとともに、感染症による事業環境の変化を注視し、適切な対応を継続的に実施することとしております。
(9)情報セキュリティ (発生可能性:高、影響度:中)
当社グループは、情報セキュリティをリスクマネジメント上の重要課題の一つに位置付けており、特に顧客及び取引先の個人情報については最重要情報資産の一つと認識して、漏えいや滅失、破損のリスク低減に取り組んでいます。重要な情報インフラとネットワークの故障、サイバー攻撃(サイバーテロ)等の不測の事態、また、不正持ち出し、コンピュータシステムの不備や管理不十分、コンピュータウイルスや不正ソフトの関与による個人情報等の漏えいが発生した場合は、社会的信用の失墜等により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があり、常に潜在的に存在するリスクと判断しています。
このため、重要な情報インフラとネットワークに関しては、適切な設備投資等を行い、機器の更新や冗長化等を適宜実施しています。更に、セキュリティ対策を効果的に実施していくために、ガバナンス、セキュリティ向上、予兆検知・早期発見、迅速な対処の4領域毎に対策・強化を進めることでリスク低減を図っています。
(10)人権 (発生可能性:中、影響度:中)
当社グループは、国内外に事業拠点を持ち、原材料や資材を調達するサプライヤーも多数の国や地域に及びます。自らの事業またはサプライチェーンにおいて、人権侵害(強制労働や児童労働、ハラスメント、差別的行為等)が発生した場合、生産や調達への影響に加え、当社グループの社会的信用・レピュテーションの棄損につながり、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。発生時期は明確ではありませんが、常に潜在的に存在し備えるべきリスクと判断しています。
このため、当社グループでは、2021年12月1日「サステナビリティ基本方針」を制定し、人権尊重は事業活動の基盤となるという考えのもと、国際的に宣言されている人権の原則を尊重することを明確にしました。同時に「人権方針」を制定しリスク低減に向けて取り組みを推進しています。また、「三菱マテリアルグループ調達方針」、「三菱マテリアルCSR調達ガイドライン」に基づき、人権に配慮した調達に努めています。
(11)財務 (発生可能性:中、影響度:大)
1)有利子負債
2023年3月期において、当社グループの有利子負債は5,335億円(短期借入金、コマーシャル・ペーパー、社債、長期借入金の合計額。注記なき場合は以下同様)、総資産に対する割合は28.2%となっています。棚卸資産圧縮、資産売却等により財務体質改善に努めていますが、今後の金融情勢の変化により資金調達コストが上昇した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
このため、有利子負債残高及びネットD/Eレシオを適切な水準に維持し、多様な資金調達方法の確保、適時適切な資金調達を実施し、調達コストの低減に努めています。また、グループ各社における余剰資金の一元管理を図るためのキャッシュマネジメントシステムの導入等により、資金効率の向上に努めています。
2)保有資産の時価の変動
当社グループが保有する有価証券、土地、その他資産の時価の変動等が、その業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
このため、有価証券に関しては、定期的に時価や発行体の財務状況等を把握し、発行体との関係を勘案して保有状況を継続的に見直しています。また、固定資産の減損に関しては、遊休地の売却を進めるとともに、事業用資産については、適宜不動産鑑定を取得するなどし、減損の兆候の有無について確認しています。
3)債務保証
当社グループは、連結会社以外の関連会社等の金銭債務に対して、2023年3月期において38億円の債務保証を引き受けています。将来、これら債務保証の履行を求められる状況が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
このため、関連会社等の経営状態、財政状態を適宜モニタリングし、影響を低減する取り組みを行っています。
4)退職給付費用及び債務
従業員の退職給付費用及び債務は主に数理計算上で設定される前提条件に基づき算出しています。これらの前提条件は、従業員の平均残存勤務期間や日本国債の長期利回り、更に信託拠出株式を含む年金資産運用状況を勘案したものですが、割引率の低下や年金資産運用によって発生した損失が、将来の当社グループの費用及び計上される債務に影響を及ぼす可能性があります。
このため、確定給付型と確定拠出型を組み合わせた退職給付制度の導入や、年金資産の運用において安全性と収益性を考慮した適切な投資配分などを行っています。
1.経営成績等の状況の概要
(1) 経営成績
当連結会計年度における世界経済は、ウクライナ情勢によるエネルギー価格の高騰や物価高、金属価格の不安定化、先進国を中心とした金利上昇による円安の進展等がみられました。そうしたなかで、中国においては、新型コロナウイルス感染症対策としての都市封鎖等により経済活動が抑制された影響があったものの、その他の地域においては、景気は緩やかな回復基調で推移しました。
わが国経済は、社会経済活動の正常化が進みつつあるなか、緩やかな回復基調で推移したものの、回復には弱さもみられました。
当社グループを取り巻く事業環境につきましては、為替水準が円安基調で推移した影響があったものの、自動車関連及び半導体関連の需要に減速がみられたほか、パラジウム価格の下落やエネルギー価格の上昇等の影響がありました。
このような状況のもと、当社グループは、2030年から2050年にかけての中長期的な当社グループの目標である「会社の目指す姿」及び2020年度から2022年度までを対象とした中期経営戦略に基づき、企業価値の向上に向けた諸施策を実施してまいりました。
この結果、当連結会計年度は、連結売上高は1兆6,259億33百万円(前年度比10.3%減)、連結営業利益は500億76百万円(同5.0%減)となりました。連結経常利益は、持分法による投資損失として219億24百万円の営業外費用を計上したほか、受取配当金が減少したことなどから、253億6百万円(同66.7%減)となりました。また、投資有価証券売却益として115億42百万円、持分変動利益として110億7百万円、固定資産売却益として103億40百万円の特別利益を計上したものの、事業再編損失として311億3百万円の特別損失を計上しました。これに加えて、当社及び一部の国内連結子会社が単体納税制度からグループ通算制度へ移行した影響により税金費用が減少したことなどから、親会社株主に帰属する当期純利益は、203億30百万円(同54.8%減)となりました。
セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。
当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、以下の前年度比較については、前年度の数値を変更後の区分に組み替えております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」に記載のとおりです。
なお、前連結会計年度及び当連結会計年度の報告セグメントごとの営業利益は、有限責任 あずさ監査法人の監査を受けておりません。
(高機能製品)
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(単位:億円) |
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前期 |
当期 |
増減(増減率) |
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売上高 |
4,859 |
5,263 |
404 |
(8.3%) |
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営業利益 |
147 |
81 |
△65 |
(△44.6%) |
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経常利益 |
169 |
71 |
△97 |
(△57.6%) |
銅加工品は、為替水準が円安で推移した影響があったことに加えて、欧米地域を中心に売上高が増加したものの、エネルギーコストの増加等により、売上高は前年度を上回り、営業利益は前年度を下回りました。
電子材料は、多結晶シリコン製品において為替水準が円安で推移した影響等により売上高が増加したものの、半導体関連製品の販売減少やエネルギーコストの増加等により、売上高は前年度を上回り、営業利益は前年度を下回りました。
以上により、前年度に比べて事業全体の売上高は増加したものの、営業利益は減少しました。経常利益は、営業利益が減少したことに加えて、デリバティブ評価益等が減少したことから、減少しました。
(加工事業)
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(単位:億円) |
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前期 |
当期 |
増減(増減率) |
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売上高 |
1,326 |
1,416 |
90 |
(6.8%) |
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営業利益 |
141 |
141 |
△0 |
(△0.1%) |
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経常利益 |
145 |
145 |
△0 |
(△0.0%) |
主要製品である超硬製品は、北米地域を中心に販売が増加したものの、原材料費やエネルギーコストが増加したことなどにより、売上高は前年度を上回り、営業利益は前年度並みとなりました。
以上により、前年度に比べて事業全体の売上高は増加したものの、営業利益及び経常利益は前年度並みとなりました。
(金属事業)
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(単位:億円) |
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前期 |
当期 |
増減(増減率) |
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売上高 |
9,971 |
10,857 |
885 |
(8.9%) |
|
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営業利益 |
252 |
275 |
22 |
(8.9%) |
|
|
経常利益 |
502 |
280 |
△222 |
(△44.2%) |
銅地金は、為替水準が円安に推移した影響があったものの、インドネシア・カパー・スメルティング社や直島製錬所において定期炉修を実施したことなどにより生産量が減少したほか、エネルギーコストの増加等により、売上高は前年度を上回ったものの、営業利益は前年度を下回りました。
金及びその他の金属は、為替水準が円安に推移した影響に加えて、金及びパラジウムの販売量が前年度に比べて増加したことなどから、売上高及び営業利益は前年度を上回りました。
以上により、前年度に比べて事業全体の売上高及び営業利益は増加しました。経常利益は、受取配当金が前年度に比べて減少したことなどから、減少しました。
(環境・エネルギー事業)
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(単位:億円) |
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前期 |
当期 |
増減(増減率) |
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売上高 |
178 |
173 |
△5 |
(△3.0%) |
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営業利益 |
22 |
26 |
3 |
(17.2%) |
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経常利益 |
38 |
45 |
7 |
(18.0%) |
エネルギー関連は、原子力関連の販売が増加したことなどにより、売上高及び営業利益は前年度を上回りました。
環境リサイクルは、有価物の売却単価が上昇したものの、家電リサイクル等の処理量の減少や販管費の増加等により、売上高は前年度を上回り、営業利益は前年度を下回りました。
以上に加えて、株式会社ダイヤコンサルタントが2021年7月に連結範囲から外れた影響等により、前年度に比べて事業全体の売上高は減少したものの、営業利益は増加しました。経常利益は、営業利益が増加したことに加えて、持分法による投資利益が増加したことから、増加しました。
(その他の事業)
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(単位:億円) |
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前期 |
当期 |
増減(増減率) |
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売上高 |
4,595 |
1,642 |
△2,953 |
(△64.3%) |
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営業利益 |
105 |
73 |
△32 |
(△30.4%) |
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経常利益又は経常損失(△) |
66 |
△176 |
△243 |
(-%) |
その他の事業は、セメント事業及びアルミ事業が連結範囲から外れた影響等により、売上高及び営業利益は前年度を下回りました。
以上により、前年度に比べてその他の事業全体の売上高及び営業利益は減少しました。経常利益は、営業利益が減少したことに加えて、UBE三菱セメント株式会社に関する持分法による投資損失を計上したことなどから、減少しました。
なお、UBE三菱セメント株式会社においては、エネルギーコスト増加の影響や国内の生産体制見直しに伴う特別損失の計上がありました。
当連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
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相手先 |
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
||
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売上高(百万円) |
割合(%) |
売上高(百万円) |
割合(%) |
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住友商事株式会社 |
- |
- |
291,264 |
17.9 |
(注)前連結会計年度の主な相手先別の販売実績については、当該割合が100分の10未満のため、記載を省略しております。
(2) キャッシュ・フローの状況
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益の計上に加え、棚卸資産の減少等により、451億円の収入(前期比382億円の収入増加)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資、投資有価証券の売却等により、439億円の支出(前期比407億円の支出増加)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入による収入等により34億円の収入(前期は50億円の支出)となりました。
以上により、換算差額等による増減を加えた結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、1,410億円(前期末比125億円の減少)となりました。
(3) 生産、受注及び販売の実績
「(1) 経営成績」において、各事業のセグメント情報に関連付けて記載しております。
2.経営者の視点による財政状態、経営成績等の状況に関する分析・検討内容
当社グループに関する財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容は、原則として連結財務諸表に基づいて分析した内容であります。
本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は有価証券報告書提出日(2023年6月23日)現在において判断したものであります。
(1) 当連結会計年度の経営成績及び財政状態の分析
① 経営成績
当連結会計年度における経営成績の概況については、「1.経営成績等の状況の概要」に記載しております。
② 財政状態
当連結会計年度末の総資産残高は、前期末比 2,332億円(11.0%)減少し、1兆8,917億円となりました。これは、第1四半期連結会計期間にセメント事業及びその関連事業等を連結の範囲から除外した影響等により、有形固定資産が減少したことなどによるものであります。流動資産は、前期末比 1,228億円(9.9%)減少の 1兆1,160億円となりました。固定資産は、前期末比 1,103億円(12.5%)減少の 7,757億円となりました。
負債残高は、前期末比 2,063億円(14.0%)減少し、1兆2,629億円となりました。これは、第1四半期連結会計期間にセメント事業及びその関連事業等を連結の範囲から除外した影響等により、借入金、支払手形及び買掛金、繰延税金負債が減少したことなどによるものであります。流動負債は、前期末比 1,083億円(11.7%)減少の 8,183億円となりました。固定負債は、前期末比 980億円(18.1%)減少の 4,445億円となりました。なお、借入金に社債、コマーシャル・ペーパーを加えた有利子負債残高については、前期末比 751億円(12.3%)減少の 5,335億円となりました。
純資産残高は、前期末比 268億円(4.1%)減少の 6,288億円となりました。これは、第1四半期連結会計期間にセメント事業及びその関連事業等を連結の範囲から除外した影響等により、非支配株主持分が減少したことなどによるものであります。
この結果、連結ベースの自己資本比率は、前期末の27.5%から31.4%となり、期末発行済株式総数に基づく1株当たり純資産額は 4,476.52円から 4,541.96円に増加しました。
(2) 経営成績に重要な影響を与える要因について
「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
(3) 事業戦略と見通し
「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
(4) 資本の財源及び流動性の管理方針
当社グループは、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針とし、内部資金、銀行借入、社債発行等により資金調達を行っております。また、キャッシュマネジメントシステムの導入等によるグループ各社における余剰資金の一元管理を図り、資金効率の向上に努めております。
当社グループの資金の状況については、「1.経営成績等の状況の概要 (2) キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
(5) 経営者の問題意識と今後の方針について
当社グループの経営陣は、収益力、有利子負債等グループの財政状況を認識し、現在の事業規模及び入手可能な情報に基づき経営資源の最も効率的な運用を行い、企業価値を最大限に高めるべく努めております。
(6) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成しておりますが、その作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用等、開示に影響を与える判断と見積りが必要となります。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案し、合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りとは異なる場合があります。
特に次の会計方針が連結財務諸表作成における見積りの判断に大きな影響を及ぼす事項であると考えております。
① 貸倒引当金、関係会社事業損失引当金の計上
当社グループの保有する債権または関係会社への投資に係る損失が見込まれる場合、その損失に充てる必要額を見積もり、引当金を計上しておりますが、将来、債務者や被出資者の財務状況が悪化した場合、引当金の追加計上等による損失が発生する可能性があります。
② 有価証券の減損処理
当社グループの保有する株式については、市場価格のない株式等以外のもの、市場価格のない株式等ともに、合理的な判断基準を設定の上、減損処理の要否を検討しております。従って、将来、保有する株式の時価や投資先の財務状況が悪化した場合には、有価証券評価損を計上する可能性があります。なお、翌事業年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある項目につきましては、「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
③ のれんを含む固定資産の減損処理
当社グループは、「固定資産の減損に係る会計基準」(「固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書」(企業会計審議会 2002年8月9日))及び「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第6号 2003年10月31日)を適用しております。将来、経済環境の著しい悪化や市場価格の著しい下落等の発生如何によっては、減損損失を計上する可能性があります。なお、翌事業年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある項目につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
④ 繰延税金資産の回収可能性
当社グループは、繰延税金資産の回収可能性を評価するに際して将来の課税所得を合理的に見積もっております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、課税所得がその見積り額を下回る場合、繰延税金資産が取崩され、税金費用が計上される可能性があります。なお、翌事業年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある項目につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
なお、当社グループが採用している重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
当社は、2022年9月28日開催の取締役会において、2023年1月1日を効力発生日として、当社の連結子会社である株式会社マテリアルファイナンスを吸収合併すること(以下、本吸収合併という。)を決議し、同日付で合併契約を締結しました。
上記に基づき、当社は、2023年1月1日に本吸収合併を実施いたしました。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」に記載のとおりであります。
当社は、2022年10月28日開催の取締役会において、当社の多結晶シリコン事業(当社の連結子会社である米国三菱ポリシリコン社及び当社の持分法適用関連会社である日本アエロジル株式会社の株式を含む。)を、当社が新たに設立する会社(以下、「新設会社」という。)に吸収分割(以下、「本吸収分割」という。)で承継させたうえ、新設会社の全株式を株式会社SUMCOに譲渡すること(以下、「本株式譲渡」という。)を決議し、同日付で株式譲渡契約を締結いたしました。
また、当社は、2022年12月5日に新設会社として高純度シリコン株式会社(以下、「高純度シリコン社」という。)を設立のうえ、2022年12月27日開催の取締役会において、吸収分割契約を締結することを決議し、同日付で高純度シリコン社との間で同契約を締結いたしました。
上記に基づき、当社は、2023年3月31日に、本吸収分割を行ったうえ、本株式譲渡を実施いたしました。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」に記載のとおりであります。
当連結会計年度の研究開発活動は、基本的には各事業の基幹となる分野の研究開発を当社単独あるいはグループ会社と連携をとりながら行い、各社固有の事業及びユーザーニーズに応える研究開発についてはそれぞれが単独で行っております。研究開発戦略としては、各セグメントと戦略本社ものづくり・R&D戦略部が協力して、新製品・新技術・新事業創出を通じて、持続的な企業価値向上を実現してまいります。その中で、中期経営戦略2030では、未来を見据えた素材・材料開発、事業競争力強化に向けた新製品・新技術の創出、産官学連携による研究開発成果の早期実現を基本方針として、資源循環、脱炭素、半導体関連、モビリティの4つの注力分野を中心に、循環をデザインするサステナブルなマテリアルを提供して行きます。
なお、研究開発費の総額は、
セグメントごとの研究開発活動は、次のとおりであります。
(1)高機能製品
銅加工事業の研究開発は、当社のイノベーションセンター及び銅加工事業本部技術部銅加工開発センターを中心として、堺工場や若松製作所、三宝製作所と連携のもと、基盤技術の強化や製造プロセスの改善、新規銅合金の開発等をテーマに研究開発を行っており、主な内容は次のとおりであります。
・端子コネクター用銅合金及び高性能無酸素銅の開発と量産化
・各種シミュレーション技術の開発と応用(鋳造/加工/組織制御)
・環境調和型新合金の開発と量産化
・ROX素材を生かしたプロセスと商品開発
(※ROX:SCR法により製造される無酸素銅荒引銅線)
電子材料事業の研究開発は、当社のイノベーションセンター、三田工場、セラミックス工場、四日市工場、及びグループ会社である三菱電線工業株式会社、三菱マテリアル電子化成株式会社において機能材料、電子デバイス、多結晶シリコン、シール、化成品各分野の開発を行っており、主な内容は次のとおりであります。
・自動車及び次世代自動車向け電子材料部材・部品の開発
・エレクトロニクス向け電子材料部材・部品の開発
・半導体向け電子材料部材・部品の開発
研究開発費の金額は、
(2)加工事業
当社のイノベーションセンター、筑波製作所、岐阜製作所、明石製作所、及びグループ会社である日本新金属株式会社、MMCリョウテック株式会社、株式会社MOLDINOを中心に研究開発を行っており、主な内容は次のとおりであります。
・工具材料である超硬合金・サーメット・CBN焼結体の材料開発、工具用硬質皮膜の技術開発
・刃先交換式切削工具、超硬ドリル・エンドミルの設計及び開発
・精密工具、微細加工用工具の開発、IT市場向け超精密耐摩耗工具、鉱山・都市開発工具の開発
・超硬工具の主原料であるタングステンカーバイド粉の開発
・廃超硬工具スクラップからタングステンを回収・分離するリサイクル技術の研究開発
研究開発費の金額は、
(3)金属事業
金属事業の研究開発は、ディビジョンラボである鉱業技術研究所とグループ会社を含む各拠点との緊密な連携が主体となって、イノベーションセンターから分析技術の支援を受けつつ、時間価値を重視して取り組んでおります。クリーンな銅精鉱の安定調達とリサイクルの高収益化とを目指して、資源技術と製錬技術の融合によって環境にやさしいプロセスの研究開発を行っており、主な内容は次のとおりであります。
・鉱山投資案件参画機会拡大のための各種技術開発
・製錬・リサイクル事業におけるマテリアルフロー最適化のための各種技術開発
・資源・製錬プロセスの基盤強化のための各種技術開発
研究開発費の金額は、
(4)環境・エネルギー事業
当社の環境・エネルギー事業(那珂エネルギー開発研究所等を含む)においては、環境・エネルギー関連(地熱等)に関する技術開発を行っており、主な内容は次のとおりであります。
・澄川地熱地域における地熱貯留層モデルの精緻化
・LIBからのCo、Niの湿式回収技術
研究開発費の金額は、
(5)その他の事業
各セグメントにおける研究開発以外に、戦略本社ものづくり・R&D戦略部は、当社グループの事業競争力強化・新事業創出のため、世界基準の、顧客から信頼される強固な研究開発基盤を構築し、研究開発から量産化(事業化)まで、完結できる組織を目指しています。その研究開発に取り組むイノベーションセンターでは、金属、粉体、薄膜、ナノ、樹脂複合などの部材から、加工、接合、成膜、めっき、分離精製のプロセス、当社グループに共通するコンピュータ解析、分析評価、生産技術、ものづくり、システムまで、これら基盤技術の強化・革新を図り、4つの注力分野を中心にテーマを推進しています。主なテーマは以下のとおりであります。
・工場から排出される二酸化炭素の回収・利用
・半導体関連用途の柔らかい伝熱パテ製品
・耐熱性と柔軟性を併せ持つ金属ゴム材料
・耐火プラスチック製品
・世界最高水準の高強度高耐熱性無酸素銅MOFC-HR
・インクジェット印刷用銅ナノ粒子含有インク
研究開発費の金額は、