当社は、「TOPCON WAY」を施行し、全ての社員がこの理念を理解して具体的に行動できるようにしております。
[TOPCON WAY]
[経営理念]
トプコンは「医・食・住」に関する社会的課題を解決し、豊かな社会づくりに貢献します。
[経営方針]
トプコンは先端技術にこだわり、モノづくりを通じ、新たな価値を提供し続けます。
トプコンは多様性を尊重し、グローバルカンパニーとして行動します。
トプコンはコンプライアンスを最優先し、全てのステークホルダーから信頼される存在であり続けます。
当社は、下記に示す当年度(2023年度)を初年度とする3ヵ年の「中期経営計画2025」を開始し、当年度はその1年目として中期経営計画の各戦略施策を実行いたしました。
[中期経営計画の基本方針]
「中期経営計画2025」は、「持続成長する100年ベンチャーに挑む」を基本方針として、創立100周年を迎える2032年に向けた第1ステップとなる3年間の中期経営計画と位置づけ、下記の3本柱の基本戦略のもと、各事業での施策を展開しております。
[中期経営計画の基本戦略]

当社は、当社グループの中期経営計画において、自己資本利益率(ROE)を重要指標としております。
当社は、上記のとおり、「医・食・住の成長市場において、社会的課題を解決し事業を拡大する」を経営ビジョンに掲げ、「中期経営計画2025」では、これらの社会的課題を解決する「DXソリューション」の開発と展開を進めてまいります。(※ DX(デジタル・トランスフォーメーション): 進化したデジタル技術を活用し、人々の生活をより良いものへと変革させるビジネスモデルを実現して、企業の新たな成長・競争力強化につなげていくこと。)
具体的には、当社の各事業領域において、「医(Healthcare)」では、世界的な高齢化に伴う眼疾患の増加、眼科医の不足に対処すべく、当社の「フルオートスクリーニング機」を活用した、かかりつけ医・眼鏡店・ドラッグストア等の活用による「眼健診の仕組みづくり」というDXソリューションの推進により、疾患の早期発見・早期治療と、シェアードケアの推進による医療効率の向上を実現していきます。
「食(Agriculture)」においては、世界的な人口増加に伴う食糧不足、温暖化や異常気象に伴う農作物の生産減少や被害という社会的課題に対処すべく、当社のIT農業機器や光学センサー技術を活用した「農業の工場化」といえるDXソリューションの推進に努め、農業の生産性向上および品質の向上を実現していきます。
「住(Infrastructure)」では、世界的なインフラ需要増に伴う技能者の不足、気候変動に伴う災害の激甚化や頻発化という社会的課題に対処すべく、当社のICT自動化施工技術や3次元計測技術を活用した「建設工事の工場化」といえるDXソリューションの推進に努め、建設現場における生産性向上と技能者不足解消を実現していきます。
また、SDGsへの取り組みとしても、社会的課題を解決するDXソリューションを具現化するための当社の技術である、ICT自動化施工のための建機の自動化や、IT農業のための農機の自動操舵システムは、CO2排出量の削減にも貢献しております。また、ヘルスケアの領域においても、スクリーニング(健診)の拡大による眼疾患の早期発見・早期治療に貢献しております。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) サステナビリティ共通
①サステナビリティ方針
当社は、グローバル市場に商品を提供する企業グループとして、「『医・食・住』に関する社会的課題を解決し、豊かな社会づくりに貢献します。」という経営理念のもと、サステナブルな社会を実現し、持続的に成長できる企業を目指します。
②ESG経営ビジョン
サステナブルな社会を実現するため、事業活動を通じて「ESG経営」を実践し、企業としての責任を果たします。「ESG経営ビジョン」は、2030年までのSDGs達成に向けた、当社のありたい姿を示しています。

③マテリアリティ
持続可能な社会・環境への貢献と持続的な経済成長の両立を、事業活動を通じて実践するというコンセプトのもと、6つの「マテリアリティ(重要課題)」を特定しています。
マテリアリティの特定に際して、「ESG経営ビジョン」との整合性に加え、国連が提唱しているSDGsとの整合性についても検証を行い、17の目標の中から、関連性の高い8つの目標を選定しています。
④ガバナンス
当社は、取締役会の諮問機関として、代表取締役社長 CEO、サステナビリティ担当執行役員、及び社外取締役で構成されるサステナビリティ委員会を設置しています。
サステナビリティ委員会は、代表取締役社長 CEOを委員長として、年に2回以上の頻度で開催され、取締役会の指示に従い、TOPCON CSR Committee (THQ※ CSR Committee及びGlobal CSR Committee) と連携して、迅速かつ機動的にサステナビリティ及びESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みを審議しています。サステナビリティ委員会の結果は、原則として取締役会に報告・提言されます。
サステナビリティに係るガバナンス体制は下図に示す通りです。当社のコーポレート・ガバナンスの基本方針及び全社のコーポレート・ガバナンス体制の概要については、「
※Topcon Headquarters

⑤リスク管理
当社は、リスク・コンプライアンス基本規程を設け、サステナビリティに関するリスクを含むビジネスリスクを管理しています。規程に基づき、部門リスク管理者は、管理責任者及び所轄部門へリスクを報告し、経営レベルでの判断が必要であるリスクについては、全社レベルで管理しています。
(2) 気候変動
①気候変動に対する考え方
当社は、気候変動を最も深刻な地球環境問題であると捉えています。マテリアリティとして「地球環境への負荷低減」を特定し、ステークホルダーとともに、気候変動をはじめとする社会全体の環境負荷低減に貢献し、持続可能な社会の実現を目指します。
②ガバナンス
当社は、気候変動を含むサステナビリティに関する取り組みを経営の重要事項として捉え、ガバナンス体制を構築しています。詳細は「
③リスク管理
当社は、気候変動に関するリスクを、ビジネスリスクの一部として捉え、監視・管理しています。詳細は「
④戦略
当社事業において、2030年に影響が大きいと思われる、気候変動関連のリスク及び機会を特定するため、シナリオ分析を実施しました。シナリオ分析においては、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に基づき、2100年における世界の気温上昇が産業革命時期比で1.5℃上昇、4℃上昇のシナリオを想定しています。
1.5℃シナリオにおける気候関連リスク及び機会
気候関連リスク
気候関連機会
4℃シナリオにおける気候関連リスク及び機会
気候関連リスク
気候関連機会
※POB: Positioning Business (ポジショニング事業)、ECB : Eye care Business (アイケア事業)
抽出されたリスクの最小化と機会の最大化のため、5つの軸での対応策を実施しており、今後も2100年における世界の気温上昇を産業革命時期比で1.5℃上昇以内に抑え、持続可能な事業活動を継続させるために取り組みを続けてまいります。
⑤指標と目標
トプコングループは、気候変動を含むリスク及び機会への対応を進めるため、温室効果ガス排出量を気候関連リスク・機会を管理するための指標として定めています。国内において、2013年比で40%の削減を目標として設定し、脱炭素社会の実現に向け、取り組んでまいります。なお、2023年度の排出量は、Scope1:3,552t-CO2、Scope2:8,833t-CO2(いずれも国内・海外製造拠点)でした。
(3) 人的資本
①人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略
トプコングループは、社員等に主体的に学び、成長する機会を平等・公平に提供し、その資質を最大限に発揮することができるような職場風土の実現に努めています。社員等には、自らの職務領域と責任権限に基づき業務を遂行し、日常業務の内外で、能力向上のための自己研鑽に努める機会を提供しています。
トプコングループは、経営ビジョンの実現に向けた人材戦略として、トプコニアンの育成をテーマにしています。トプコニアンとは、(1)利益を創出する高度な専門性を持つ人材、(2)国境や文化の違いを超えて共通の価値観をもって行動する人材、(3)チームワークを大切にする人材という3つの条件をみたす人材であると定義しており、このような人材育成のために、定期的に講義・研修などを実施しています。
具体的には、新入社員から管理職までそれぞれの階層で求められる能力を育成するための階層別教育、将来の経営幹部に必要な知識・スキルの習得を目指した選抜教育、コンプライアンス教育、技術・技能の向上と伝承、自己啓発など組織の成長戦略に応じた人材育成を行っています。また、社員が主体的に学び成長する機会を提供するため、人事基幹システムにeラーニングの配信機能を追加し、グループ内に存在する教育コンテンツを一堂に集め、グループ全体に配信するプラットフォームを構築しました。次世代の人材発掘、育成においては360度評価など多面的に人材をとらえ、サクセッションマネジメントに活かしていく体制としています。
その他、社員の自律的なキャリア構築を支援する取り組みとして、「メンター制度」や一定の年齢でキャリアを振り返る「キャリア研修」を実施しています。「メンター制度」では、若手社員の「仕事やキャリア形成に関する不安の解消」、「いつでも気軽に相談できる存在がいることによる安心感の醸成」、「具体的な悩みの解決に向けたサポート」に加えて、「将来のキャリアイメージにつながる対話」を目的として運用しています。また、「キャリア研修」では、人生100年時代を見据え、これまで培ってきたキャリアの強みの自己理解促進やライフキャリアの充実に向けてマネープランも含めて総合的に考える機会を提供しています。
②人的資本や多様性の測定可能な指標と目標
多様性に富む人材がその資質を最大限に発揮するための職場風土実現を目指す上で、性別を問わず社員が個性と能力を十分に発揮し、一人ひとりが自分らしいキャリアの実現を行える環境づくりを重点項目として取り組んでいます。
具体的な取り組みとして、あらゆる職種において、女性が一層活躍できる環境を整えることにより、継続的、長期的なキャリアを築ける仕組みづくりを目指しています。
女性活躍推進への取り組みとして、「新規採用者に占める女性比率を30%以上とする」を目標として掲げており、これに対する直近1年間の実績は26.4%となっております。
事業の状況、経理の状況等に関する事項で、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項は、以下のとおりであります。
当社グループは、主たる事業として、ポジショニング事業、アイケア事業の2つの事業を展開しております。製品に対する需要においては、それぞれの事業セグメントの属する市場動向(土木建設市場、農業市場、眼科・眼鏡市場等)の影響を受けるため、その市場に大きな変動があるような場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは海外売上高比率が高く、日本国内のほか、北米、欧州、アジア等、世界に向けて販売していることから、各地域の経済状況は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、製品の輸出及び海外における現地生産等、広く海外活動を展開しております。このため、海外での政治や経済情勢の悪化や、貿易・外貨規制、法令・税制の改革、治安悪化、紛争テロ、戦争、災害等の発生は、海外での事業活動に支障をきたし、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、各事業において、同種の製品を供給する他社との競合が存在しております。競争優位に立てるよう、新製品の逸早い市場の投入や、新技術の開発、コスト削減等を推進しておりますが、新製品開発の遅延や新技術開発の長期化、原材料価格の高騰等が発生した場合には成長性や収益性を低下させ、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、連結売上高に占める海外売上高比が高く、為替相場変動リスクに晒されているため、実需の範囲内での先物為替予約により適切な為替ヘッジを行っておりますが、急激な為替相場の変動が生じた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、金融機関からの借入金については、金利変動のリスクに晒されており、金融市場の状況の変化により金利が著しく上昇した場合には、支払金利の増加により当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、必要な資金の調達は金融機関からの借入、社債の発行等により行っております。今後、金融市場の悪化や当社経営成績等により、借入の継続および新規借入を行うことができない可能性があります。また、格付機関による当社グループの信用格付の引下げ等の事態が生じた場合、資金調達が制約されるとともに調達コストが増加する可能性があります。これらの事態が生じた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、将来の成長のために新規事業への取り組みを随時検討しておりますが、新規事業は不確定要素が多く、計画通り達成できなかった場合は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(7) 企業買収等について
当社グループでは、事業の特性に応じて最適な事業形態を取れる体制の構築に努めており、事業拡大のため企業買収等を実施することがあります。しかしながら、市場環境や競争環境の著しい変化により、買収した事業が計画通りに進展しない場合や、効率的な経営資源の活用を行うことができなかった場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、有形固定資産や企業買収等によって取得したのれん等の無形固定資産を保有しております。これらの固定資産について、収益性の低下や時価の下落等に伴い資産価値が低下した場合は、減損損失の発生や売却時での売却損の発生により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループにおける生産活動について、一部特殊な材料で外注先が限られているものや外注先の切替が困難なものがあります。また、様々な要因により、世界的にサプライチェーンが混乱し部材等の供給不足状態に陥る可能性や、部材等の価格高騰が発生する可能性があります。当社グループでは調達・設計・製造面での各種施策を講じ影響の最小化を図りますが、収束まで長期化するなど影響が拡大した場合、部材等価格高騰の影響や生産遅延等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、製品の特性に応じて最適な品質が確保できるよう、全力をあげて品質管理に取り組んでいますが、予期せぬ事情によりリコール、訴訟等に発展する品質問題が発生する可能性が皆無とはいえず、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、研究開発活動上様々な知的所有権を使用しており、それらは当社所有のものであるかあるいは適法に使用許諾を受けたものであると認識しておりますが、当社の認識の範囲外で第三者から知的所有権に関する侵害訴訟を提訴される可能性があります。知的所有権を巡っての係争が発生した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは海外で事業展開を行っており、各国・各地域で様々な法的規制等を受けております。また、アイケア事業の一部製品は、各国の医療用具に関する規制等を受けております。逐一情報収集を行い適切に対応を行えるよう取り組んでおりますが、これらの規制の変更等により当社製品の輸入・販売が制限された場合や、事業活動に必要な各国の許認可を適時に取得することができない場合等には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(13) 気候変動問題に関するリスクについて
当社グループは、深刻化する地球温暖化の抑制のために、当社製品を活用することにより省エネ・省資源化を推進する「製品を通じた環境負荷低減」と、事業活動における省エネ・温室効果ガス排出削減のための「気候変動への対応」の二つを環境負荷低減のための取り組みとしております。持続可能な社会の実現に貢献するため、事業活動の経済的側面と同時に社会的・環境的側面でも、企業の社会的責任を果たす経営に取り組んでおります。しかしながら、環境関連の法規制・税制が大きく強化され適切な対応ができない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループが事業展開している地域において、予期せぬ火災、地震、テロ、戦争、感染症拡大や疫病等の災害が発生した場合、当社グループは、資金需要に対応するための資金調達力の確保や、感染症拡大の影響を最小化する施策等を行っておりますが、人的、物的損害や事業活動の停止等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは事業推進のインフラとして、製造・販売・研究開発等の各活動に情報システムを整備・構築しております。これら情報システムに対するシステム障害(機器故障や停電等)への備えや不正アクセス・情報漏洩防止のため、当社グループはセキュリティポリシーの適用徹底や全社員への教育、システムのバックアップ強化、また機密情報の漏洩防止等の策を講じております。しかしながら、予期しえぬ大規模なシステム障害やサイバー攻撃等があった場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの業績は、第4四半期に偏重する傾向があります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当期における経済環境は、欧米を中心とした各国の金融引締め長期化と金融緩和期待の後退、またロシア・ウクライナ情勢の長期化やイスラエルのガザ侵攻等の影響を受け、先行き不透明な状況が続きました。
このような経済環境にあって当社グループは、『「医・食・住」に関する社会的課題を解決し、豊かな社会づくりに貢献します。』を経営理念に掲げ、「尖ったDXで、世界を丸く。」をスローガンに、持続可能な社会の実現に向け、医・食・住の諸課題をDXソリューションで解決するグローバル企業として、企業価値の向上に取り組んでまいりました。
こうした中で、当期の当社グループの[連結]業績は、次のようになりました。
第1四半期より、後述の(セグメント情報等)に記載の通り、従来の「スマートインフラ事業」と「ポジショニング・カンパニー」の報告セグメントの区分を「ポジショニング事業」に変更しております。
売上高は、ポジショニング事業は減収となりましたが、アイケア事業では好調な販売を持続し、また円安による影響も追い風に作用したことで、216,497百万円(前年度と比べ0.4%の増加)となりました。利益面では、為替影響を除いた売上高が前年度を下回ったため、人件費や開発費等の増加を吸収できず、営業利益は11,204百万円(前年度と比べ△42.6%の減少)となり、経常利益は8,857百万円(前年度と比べ△50.3%の減少)となりました。また、第1四半期に計上した減損損失、第3四半期に計上した訴訟関連費用、第4四半期に計上した構造改革関連費用等の影響により、親会社株主に帰属する当期純利益は4,940百万円(前年度と比べ△58.2%の減少)となりました。
セグメント毎の業績は、次のとおりであります。
ポジショニング事業は、北米住宅建設市場の低迷や金融引き締めの長期化に伴う買い控えが継続し最大市場である米国で販売が伸び悩みました。また、円安の恩恵はあったものの、前年度に特需(大型案件)があったこともあり、売上高は140,386百万円(前年度と比べ△4.9%の減少)となりました。営業利益は、売上高の減少に対して、販管費抑制に向けた施策を行ったものの、効果が十分に顕在化するには至らず、9,106百万円(前年度と比べ△55.5%の減少)となりました。
アイケア事業では、大手眼鏡チェーン店向けを中心に成長事業に位置付けているスクリーニングビジネスが順調に進捗したことに加え、スクリーニングビジネスの持つ強みを生かした基盤事業の拡大も相俟って、好調な販売が持続し、売上高は75,172百万円(前年度と比べ12.4%の増加)となりました。営業利益は、売上高の増加に加え成長投資を維持しつつも販管費の増加を抑制したことから、6,715百万円(前年度と比べ69.2%の増加)となりました。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は販売価格によっております。
当社は見込生産を主体としているため、受注実績の記載を省略しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 各セグメントの販売高には、内部売上高を含めて表示しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
当社は当年度を初年度とする3ヵ年の「中期経営計画2025」のもと、重要指標であるROEの改善を目指し(中計期間最終年度のROE 13~15%を目標)、中期経営計画の各戦略施策に取り組んでまいりました。「中期経営計画2025」の初年度となる当年度においては、欧米を中心とした各国の金融引締め長期化と金融緩和期待の後退、またロシア・ウクライナ情勢の長期化やイスラエルのガザ侵攻等の影響を受け、先行き不透明な状況が続きました。このような状況下、当社においてもポジショニング事業での買い控え等による販売の伸び悩みなどが継続したことに加え、構造改革関連費用を含む一過性の損失を計上したことから、親会社株主に帰属する当期純利益が減少し、重要指標であるROEは4.9%となりました。
次年度以降につきましては、当年度の構造改革による効果の刈り取り及び、中期経営計画における諸施策を引き続き徹底して取り組んでいくことでROEの改善を目指してまいります。
「中期経営計画2025」は、創立100年となる2032年度に連結売上高4,000億円を目指し、3つの基本戦略である「顧客志向の深化」、「基盤改革」、「DX加速」のもと、持続的な成長、収益性の向上と維持を目指します。「尖ったDXで、世界を丸く。」のスローガンのもと、持続可能な社会の実現という社会的課題解決と成長シナリオを遂行し、企業価値向上に引き続き取り組んで参ります。
(3) 財政状態
資産
当年度末の資産は、前年度末に比べ39,138百万円増加し、247,029百万円となりました。
a.流動資産
主に、「棚卸資産」の増加等により、前年度末に比べ11,476百万円増加し、134,551百万円となりました。
b.固定資産
主に、「有形固定資産」や「のれん」の増加等により、前年度末に比べ27,662百万円増加し、112,478百万円となりました。
負債
当年度末の負債は、前年度末に比べ25,880百万円増加し、136,730百万円となりました。
a.流動負債
主に、「短期借入金」の増加等により、前年度末に比べ5,840百万円増加し、73,123百万円となりました。
b.固定負債
主に、「社債」の増加等により、前年度末に比べ20,039百万円増加し、63,606百万円となりました。
純資産
当年度末の純資産合計は、「為替換算調整勘定」の増加等により、前年度末に比べ13,258百万円増加し、110,298百万円となりました。これらの結果、自己資本比率は、前年度末から△2.0%の減少となりました。
当年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、子会社株式や固定資産の取得等による「資金」の減少があったものの、税金等調整前当期純利益の計上や売上債権の減少、また社債の発行等による「資金」の増加があったことにより、前年度末に比べ、1,721百万円増加し、16,672百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当年度における営業活動による「資金」の増加は、8,850百万円(前年度は9,828百万円の増加)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益の計上や売上債権の減少等による「資金」の増加によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当年度における投資活動による「資金」の減少は、26,622百万円(前年度は12,759百万円の減少)となりました。これは主に、子会社株式や固定資産の取得等による「資金」の減少によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当年度における財務活動による「資金」の増加は、17,989百万円(前年度は1,937百万円の減少)となりました。これは主に、配当金の支払等による「資金」の減少はあったものの、社債の発行等による「資金」の増加があったことによるものであります。
当社は、営業活動によるキャッシュ・フロー及び自己資金を財源に、M&A投資、設備投資、開発投資等をしていくことを基本方針としております。また、(株)格付投資情報センターによる発行体格付「A-」を取得しており、資金調達が必要な場合は、社債や銀行借入等の最適な資金調達手段を選択して対応してまいります。当連結会計年度におきましては、M&A投資については、ポジショニング事業においてフィンランドの無線メーカー「Satel Oy」を買収するなど、技術獲得のための戦略的投資を行いました。設備投資については、生産体制の整備、成長戦略推進、経営効率改善等に必要な投資を行いました。開発投資については、DXソリューションの拡大、新製品開発や次世代技術開発等の新規事業領域に参入するための開発投資を引き続き積極的に行いました。これらの投資活動の財源としては、営業活動によるキャッシュ・フローで生成された資金を主とし、社債、銀行借入等の資金調達で補うことにより賄いました。今後も成長分野におけるシェア拡大のために、新技術・新事業領域等への投資を継続してまいります。
資金の流動性につきましては、当社及び一部の連結子会社においてCMS(キャッシュマネジメント・サービス)を活用することにより、資金効率の向上を図っております。また、資金調達の機動性及び安定性の確保を目的として、取引金融機関とコミットメントライン契約を締結しているほか、コマーシャルペーパー発行に備えて(株)格付投資情報センターの格付「a-1」を取得しており、流動性リスクに備えております。
当連結会計年度のキャッシュ・フローの概要につきましては、前項「(4)キャッシュ・フロー」を参照ください。また、当社の配当政策につきましては、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載しております。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等」の「注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。なお、連結財務諸表の作成にあたっては、一部の資産の評価等に会計上の見積りを用いて算定しているものがあり、特に下記に掲げる資産については、今後の前提条件の変化によっては当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると認められる将来減算一時差異について回収可能性があると判断し計上を行っております。その前提条件に、当社グループの納税主体毎の将来の課税所得の見積り等を用いていますが、経済条件の変動等により当該課税所得の見積り等に用いた仮定に見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において繰延税金資産及び税金費用の金額に影響を与える可能性があります。
固定資産
当社グループは、固定資産については資産グループ毎に減損の兆候の有無を判定し、兆候がある場合は事業計画に基づく割引前将来キャッシュ・フローを見積もったうえで、減損損失の認識の要否を判断しております。減損損失の認識が必要と判断した場合は、帳簿価額を回収可能価額まで減額しております。回収可能価額の測定に際しては、資産グループ毎の将来の事業計画を用いて検討しておりますが、事業計画や市場環境の変動、また投資計画の変更等の要因により、当該見積もりに見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において追加の減損損失が生じ、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
該当事項はありません。
当社グループは、世界市場におけるVOC(Voice Of Customer、顧客の声)を捉え、本社、並びに米国・欧州・豪州等における子会社の各技術部門等で、積極的にグローバルな研究開発活動を行っております。これに加え、新技術の早期確立のために、国内外の外部研究機関との交流を活発に行っております。特に広帯域波長に対応できる光学応用技術、GNSS(Global Navigation Satellite System)コア技術、マシンコントロール(MC)技術、精密農業技術、測距・測角技術やOCT(Optical Coherence Tomography)を含む干渉計測・センシング技術、点群処理などの画像応用技術等の研究開発に注力致します。更には、事業拡大に向けて最新の機械学習技術を活用した新機能の開発や自動化技術、遠隔・監視技術、クラウドコンピューティング技術による独創的なソリューション開発に対しての投資を進め、各事業分野における技術アドバンテージの強化を目指しております。
当年度におけるグループ全体の研究開発費は、
ポジショニング事業は、自社保有技術の高度化・高機能化への研究開発を鋭意継続すると共に、他に類を見ない高付加価値差異化商品を他社に先駆け市場に投入すべく、最先端のGNSSコア技術、マシンコントロール(MC)技術、IMU応用技術、精密農業(AG)技術、測距・測角技術を含む干渉計測・センシング技術、点群処理などの画像応用技術、土地測量応用技術、ウェブ・クラウドコンピューティング技術を基幹として、各事業分野に幅広い製品とサービスを提供するためにワールドワイドに新たな技術の研究開発と、そのIT応用に関する研究開発活動を展開しております。
当年度における研究成果は次のとおりであり、当セグメントに係わる研究開発費は、
・2019年に発売しましたMC-X油圧ショベルに続いて、ブルドーザー、モーターグレーダーに装着可能なMC-Maxブルドーザー、モーターグレーダーシステムを全世界で発売しました。MC-Xシリーズは、最新の測位センサーにも対応したことで、GPS、GLONASS、Galileo、BeiDou、QZSSといった衛星のマルチ受信が可能となり、当社が提供するIoTサービス“Sitelink3D”(*有料オプションサービス)にも対応しているため、遠隔地からのサポート並びに現場管理が実現でき、建設現場の生産性向上に大きく貢献します。
・手軽に3次元データを活用でき、建設現場におけるi-Constructionの導入機としての『杭ナビ』LN-150のラインアップを建機まで拡充し、新たに油圧ショベル、ドーザー、グレーダーが自動アシスト対象に加わりました。LN-150がマシンコントロールシステムのセンサーとして対応することで、建機の操作を自動アシストします。さらに、建設現場で『杭ナビ』を活用することで、導入障壁を大幅に低減し、マシンコントロールシステムによる施工を、より身近に、そして簡単に始めることが可能となります。
・超小型GNSS受信機Hiper CRを全世界で発売しました。最新のマルチGNSSボードを搭載し約440gという軽量ながらも10時間駆動を実現します。GPS、GLONASS、Galileo、BeiDou、QZSSの衛星が受信可能となり衛星信号数が大幅に増加したことでRTK初期化時間の短縮や精度の安定化など測位性能、作業効率が大幅に向上しました。インターフェースもシンプルであらゆる現場でも使いやすい受信機です。
・1人で素早く簡単に建方作業が行えるスマートフォン用鉄骨建方アプリケーションソフトウェア 『楽直』(らくちょく)を発売しました。本商品は高精度位置出し機『楽位置』(らくいち)を操作するアプリであり、専用プリズムを鉄骨に取り付け、鉄骨の前後左右両方向の倒れを計測します。測量機の設置、操作方法に習熟していなくても、誰でも簡単に計測作業が可能です。また、計測結果をワンタッチでデジタルデータとして『楽直』に保存でき、作業結果の“デジタルエビデンス化”にも最適です。
・精密農業分野では、作物の収量モニタリングソリューションコントローラYM-1に対応可能な作業機を拡充した改良版YM-3を発売しました。トプコンのGNSS受信機とXコンソール、またはサードパーティーISOBUS互換GNSS受信機とコンソールを組み合わせ、収量マッピングデーターをリアルタイムで取得することにより、作物の育成状況をより高い精度と粒度で測定可能となります。本商品は作物サイクル全体に適用できる情報を得ることで、肥料投入量の削減と作物生産量の増加を実現します。
世界では人口増加と共に高齢化が急速に進展し、高齢化に伴う眼疾患の増加、医療コストの高騰、医師不足など様々な問題が発生しています。アイケア事業では、これらの課題を解決すべく、主に「検査」「診断」「治療」領域で、“人の目の健康への貢献”、特にQuality of Vision(見え方の質)の向上を目指し、眼科医向け及び眼鏡店向けの検査・診断用機器、治療機器、そのIT応用に関する研究開発を行っております。
当年度における研究成果は次のとおりであり、当セグメントに係わる研究開発費は、
・広角OCT撮影機能とSmart Denoise(ノイズ除去機能)を搭載した、DRI OCT Triton Pro/DRI OCT Triton Plus Proをリリースしました。広角OCT撮影機能は、簡単に装着できる「広角OCT撮影用アタッチメントWA-1」を使用することにより、最大21mmのラインスキャン、ラジアルスキャン、OCT-Aデータが取得可能です。従来の操作感のまま短時間で広角撮影が可能になり、より多彩な検査ルーチンに対応可能となりました。Smart Denoiseは、ワンクリックで簡単にON/OFF動作が可能であり、AIを用いたトプコン独自のノイズ除去技術により最大9mm×9mmのエリアにおいてノイズの少ない高画質なOCT-A画像を生成します。また3DスキャンデータでもシングルB-scanが高画質で観察可能になりました。
・遠隔診察ソリューションを開発している欧州パートナー企業とのコラボレーションのため、NW500,Chronos,CT-1Pのネットワーク接続機能を実装いたしました。各デバイスのリモート操作を有効にした場合に、ネットワーク接続した外部PCにて患者ID登録、撮影/測定動作、保存までの操作が可能となりました。