当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針・経営戦略等
海運業は、さまざまな物資や人の輸送を通じて世界中の国々と地域を結び、人々の暮らしを豊かにするという使命を担っており、経済のグローバル化に伴い、その役割はますます重要なものとなりました。こうした認識のもと、当社グループは、以下のグループ企業理念を掲げ、誠実で良質な海上輸送サービスをお客様に提供できるよう、創意工夫を重ねています。
〔基本理念〕
NSユナイテッド海運グループは、誠実で良質な海上輸送サービスの提供を通じて社会の発展に貢献します。
〔経営理念〕
1(信用・信頼)
信用・信頼される堅実な経営を実践し、グループ全体の企業価値を高めます。
2(安全運航・環境保全)
常に船舶の安全運航に努めるとともに、船舶運航技術の向上に向け日々研鑽を積むことにより、海洋をはじめ
とする地球環境保全の一翼を担います。
3(お客様への即応・自己変革)
お客様の要請に即応しつつ自らも変革に努め、さらなる進歩を目指して挑戦します。
4(人を育て活かす)
人を育て活かし、働く喜びを実感できる活力溢れるグループを築きます。
当社はこの理念の具現化を目指し、鉄鋼原料をはじめとする資源・エネルギー・製品などの海上輸送分野における創立以来の長年の伝統と、2010年の合併後の構造改革や船隊整備による経営基盤の強化により、内外航に亘る専門性と総合力を兼ね備えた海運会社としてさらに大きな安心と信頼を獲得して参りました。
当社は本年3月29日に2024年度~2027年度を対象期間とする中期経営計画『FORWARD 2030 Ⅱ Challenge for innovation and further growth with U』を策定しました。『FORWARD 2030 Ⅱ』では、2030年に向けたビジョンを「クリーンでサステナブルな海上輸送における必要不可欠な存在を目指し、ステークホルダーと協働して変革を続け、企業価値の更なる向上を目指します」と定義し、前中期経営計画の重点戦略の実行により構築した堅固な財務基盤をベースに、カーボンニュートラルへの取り組みを通じた持続的な成長と企業価値最大化に向けた経営戦略を実行して参ります。
(2) 経営環境、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題、目標とする経営指標
次期の事業環境は、引き続き鉄鉱石・穀物の堅調な海上荷動きが期待されます。船腹供給面では、船主が主力となる次世代燃料を慎重に見極めていることや船価の高止まりを背景に、新造船発注は低水準で推移しています。また、EEXI(Energy Efficiency Existing Ship Index)やCII(Carbon Intensity Indicator)に加えて、2024年からEU-ETS(欧州域内排出量取引制度)が海運セクターに適用開始となるなど、環境規制が本格化し、船腹供給の引き締めに寄与すると予想されます。一方で、中東情勢の緊迫化や、各国の金融引き締めの継続による経済活動の停滞がドライバルク市況の下押し要因として想定されます。またパナマ運河・スエズ運河の通航制限等が海上荷動きに与える影響も懸念されます。当社ではかかる事業上のリスクに対し細心の注意を払い、事業運営を行って参ります。
また、2024年度~2027年度を対象期間とする中期経営計画『FORWARD 2030 Ⅱ Challenge for innovation and further growth with U』では、事業戦略として「新規成長事業領域の拡大」「既存中核事業領域の深化」を掲げ、これらの事業戦略を支える取り組みとして人的資本戦略やDX戦略などサステナビリティへの取り組みを一層強化して参ります。
《中期経営計画の取組状況》
1) 事業戦略・成長戦略
『FORWARD 2030 Ⅱ』では、2050年カーボンニュートラル実現に向けた環境ロードマップに沿った新たなGHG削減目標を設定しました。今後メタノール二元燃料船(メタノールと重油の両方を燃料として使用可能なエンジンを搭載した船舶。重油と比較してGHG排出量の大幅な削減が見込まれる。)やバイオ燃料、アンモニア燃料船の導入等により、2030年にGHG年間排出量を2019年比25%削減します。2030年以降はグリーン燃料によるゼロエミッション船の導入を進め、2050年までのカーボンニュートラルを目指します。
上記2030年GHG削減目標達成に向けた投資・取り組みを進めつつ企業価値の向上を実現するための事業戦略・成長戦略として、「新規成長事業領域の拡大」「既存中核事業領域の深化」を掲げました。
① 新規成長事業領域の拡大
カーボンニュートラル実現に向けて、製鉄会社の製鉄プロセス脱炭素化に伴う還元鉄、スクラップや液化CO2などの輸送需要の将来的な増大や、次世代エネルギーとして期待されるアンモニアや水素など新たなリキッドバルク輸送需要の拡大など、海上輸送需要の変化を内外航ともに的確に捉え、新規貨物輸送船隊の整備を進め事業領域を拡大していきます。また、ゼロエミッション船導入に向けた取り組みの一環として国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による「グリーンイノベーション基金事業」に採択されているアンモニア燃料船の共同プロジェクトにおけるアンモニア燃料船の保有・運航を予定しており、2024年4月には6社によるアンモニア燃料船の共同開発に関する覚書を締結しました。
② 既存中核事業領域の深化
メタノール二元燃料船をいち早く建造し環境対応で顧客と協働する中で、長期契約による安定収益を確保していきます。また、海外顧客に対してもメタノール二元燃料船隊で長期の契約獲得を目指します。加えて、経済成長が見込まれるインド、東南アジア方面への一層の展開を図るため、バンコク駐在員事務所を新設しました。インド展開を睨むシンガポール現地法人に加え、バンコク駐在員事務所は日本からの輸出鋼材のケアによる輸送品質の向上を図るとともに、東南アジア発着貨物の新たな拠点として整備していく方針です。
2) 事業戦略を支える取り組み
① 人的資本戦略
新たな市場への挑戦、脱炭素化に向けた技術革新など中長期的な事業戦略を担える人材の確保・育成のため、人事制度を刷新いたしました。挑戦・成果を評価する制度を定着させると共に、教育・研修制度をさらに拡充します。また、戦略業務に専心できる職場環境の整備・働きやすさの向上を推進することでエンゲージメントを高め、人的資本の価値最大化を目指します。また、人権デューデリジェンス(企業が人権侵害に関わるリスクを特定し、対処する適切で継続的な取り組みのこと。)の推進、Well-beingの実現により人権を尊重する意識の向上を図ります。
② サステナブルシッピング戦略
安全運航の徹底のため、船員のWell-beingの最大化・エンゲージメントの向上に取り組むことで国内外の優秀な船員と海技士の確保・育成に努め、重大事故・災害ゼロを目指します。
さらに、新燃料船への配乗・液体貨物輸送への展開など成長戦略を支える有資格船員の育成を進めてまいります。
③ ガバナンス強化
環境変化に対する迅速な意思決定の実現と全社的なモニタリングの強化を図り、ステークホルダーとの対話を通じて中長期的な企業価値の向上を目指します。中期経営計画の進捗状況を継続的にモニタリングし、環境変化への対応や成長戦略など長期的な課題に関する議論を充実させ取締役会の実効性向上を図ります。
④ DX戦略
事業戦略を支える前述3つの取り組みを強化すべくDX推進に取り組み、社員が高度な戦略業務に専心できる職場環境を整備します。また、船舶DXを推進し、事故・災害の予防保全、船舶管理の高度化、運航効率改善を目指します。
3) 財務目標
中期経営計画の財務目標として、以下を設定いたします。
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2027年度 |
2030年度 |
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営業利益 |
200億円 |
ネットD/Eレシオ1.0倍以下と財務規律を維持しつつ、継続的な利益成長により株主資本コスト7%を十分に上回るROE10%以上を目指します。 |
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ROE |
10% |
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ネットD/Eレシオ |
1.0倍以下 |
4) 投資計画
安定収益事業に加え、成長戦略から着実に利益を上げて営業キャッシュ・フローを積み上げ、2030年までNet DERを1.0倍以下に抑えつつ、財務レバレッジを効かせて3,000億円に迫る規模の投資を実行し、収益の安定性強化と中長期的な利益の成長を目指します。既存船のリプレースなど中核事業への投資は2,150億円、メタノール二元燃料化やバイオ燃料の確保といった環境投資に450億円、船員訓練センター設立など人材育成とDX関連に100億円の投資を実行します。このうち、メタノール二元燃料船など新燃料船への投資は1,650億円を予定しています。
《株主還元策》
当社は、株主に対する利益の還元を経営上重要な施策の一つとして位置づけ、将来における安定的な企業成長と経営環境の変化に対応するために必要な内部留保資金を確保しつつ、経営成績に応じた利益還元として、連結業績に対する配当性向は30%を基準とし、更なる株主還元の強化を検討します。次世代燃料船の建造など将来の成長に必要な内部留保資金を確保しつつ、安定配当の継続的な実施により、株主をはじめステークホルダーの皆様にとって魅力的な事業会社になることを目指して参ります。当事業年度(2024年3月期)については「第4 提出会社の状況 3 配当政策」をご参照ください。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社のサステナビリティに関する基本的な考え方
当社は2021年10月に、当社と社会のあるべき関わり方を整理し、従業員による討議と取締役会における議論を踏まえ、当社グループのパーパスとして「海上物流で、共に世界の今をつくる責任、未来へとつなぐ責任を果たす」を制定いたしました。
また、サステナビリティ基本方針を制定するほか、自社にとり、またステークホルダーにとって優先的に取り組むべきサステナビリティに関する重要な経営課題として、以下の6つのマテリアリティを特定し、課題解決に継続的に取り組んでおります。
サステナビリティ重要課題(マテリアリティ)
・最優先である安全運航の徹底
・環境保全・気候変動への取り組み強化
・輸送品質向上による顧客満足の向上
・人材の育成・評価、D&I、人権
・技術、イノベーション、DX
・健全なガバナンス、BCP
加えて、2024年3月には、脱炭素社会への貢献のため、SDGs目標年度でもある2030年、その先の2050年にカーボンニュートラル達成に向け、中期経営計画「FORWARD 2030 Ⅱ Challenge for innovation and further growth with U」(2024~2027年)を策定いたしました。中期経営計画の中では「2050年GHGネットゼロに向けた環境ロードマップ」を定め、その実現に向け取り組んでおります。
各マテリアリティのリスクやマイナスの影響を抑止することにとどまらず、環境と社会にプラスの影響となるよう、リスクを機会に、当社独自の事業活動を通じて環境価値・社会価値との両立・統合を図ってまいります。
(1) ガバナンス
当社は以下の体制により、サステナビリティへの取り組みを通じて、クリーンでサステナブルな海上輸送における必要不可欠な存在を目指します。また従来のESG総合委員会を発展させる形でサステナビリティ委員会を設立し、開催回数を増やすとともに、サステナビリティに関する課題解決に向け具体的な議論に取り組みます。
a. サステナビリティ委員会
2024年6月に社長執行役員を委員長、全執行役員を委員とするサステナビリティ委員会を設立しました。本委員会は、人権、気候変動、生物多様性、非財務情報開示など、サステナビリティ全般の事項に特化し、取締役会に報告、提言を行ってまいります。
b. ESG経営推進チーム
2023年7月には、主に人権やガバナンスに関する取り組みや、社内教育、非財務情報開示、DX/ITを主管とするESG経営推進チームを設立しました。人的資本経営を推進する秘書・人事チームや、環境負荷低減に取り組む環境保全推進チーム等、関連部署と連携し、サステナビリティへの取り組みにおける実効性の向上に取り組みます。
サステナビリティ推進体制図

(2) リスク管理
当社は、サステナビリティ重要課題(マテリアリティ)について、外部環境の変化を考慮しつつ、課題ごとにリスクと機会を整理し取り組んでおります。各委員会での協議、また、協議結果の取締役会への報告を行い、当社グループ全体のリスク管理体制の中で、対策・改善を推進しております。
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執行役員会 |
中期経営計画内、サステナビリティの取り組みに関する進捗の モニタリング |
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サステナビリティ委員会 |
人権、気候変動、生物多様性、非財務情報開示など、サステナビリティ 全般についての協議 |
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内部統制・コンプライアンス委員会 |
全社リスクの評価・管理、ガバナンス、コンプライアンスについての協議 |
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安全運航・環境保全推進委員会 |
安全運航、海難事故、環境保全についての協議 |
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DX推進委員会 |
サイバーセキュリティについての協議 |
<サステナビリティ重要課題(マテリアリティ)毎のリスクと機会>
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マテリアリティ |
リスク |
機会 |
主要な取り組み |
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最優先である 安全運航の徹底 |
・事故発生による 顧客の信頼失墜 |
・事故発生リスクの 低減と競争力強化、顧客の信頼獲得 |
・安全運航の更なる徹底により、事故による停船時間を低減
・全船年1回の保守検船実施 |
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環境保全・ 気候変動への 取り組み強化 |
・次世代燃料船への投資が遅れ、環境保全に後ろ向きと評価
・次世代燃料の供給インフラの整備が進まない |
・サプライチェーンの環境負荷低減を重視する顧客と契約獲得
・次世代燃料の供給 インフラ整備など 新たな機会へ参画 |
・メタノール船DF船、アンモニア積載可能LPG DF船など新燃料船へ積極投資
・GHG年間排出量を2030年までに2019年比25%削減
・バイオ燃料の安定確保 |
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輸送品質 向上による 顧客満足の向上 |
・サービス品質の低下に伴う貨物輸送シェア縮小
・安定収益基盤が 損なわれるリスク |
・次世代燃料船を含めた環境対応船の 導入促進
・製鉄プロセス脱炭素化に伴う貨物の輸送機会増加 |
・環境対応船で顧客の脱炭素化に協働
・還元鉄、スクラップ、液化CO2など脱炭素化に伴う貨物の輸送 需要へ対応 |
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人材の育成・評価D&I 人権 |
・勤労意欲の低下、業務の非効率
・人権侵害などによる社会的信用や 信頼の失墜、 取引機会の喪失 |
・労働生産性の向上と競争力強化、エンゲージメント向上
・人権意識の向上により社会的評価が高まり、多様な人材を 確保 |
・キャリア形成のための教育・研修制度を拡充し戦略業務を担える人材を育成
・人権DDの対象範囲拡大
・女性・シニアの活躍を促進する職場環境の整備 |
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技術、イノベーション、DX |
・既存の仕組みに固執し、必要な変革の遅れ、競争力 低下 |
・船舶管理の高度化、事故・災害の予防保全
・時代の変化に進んで対処し、他社との差別化、商圏の維持 拡大 |
・船舶DXを推進し、事故予防保全装置、運航支援システムを整備
・デジタルコア人材の育成 |
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健全な ガバナンス、BCP |
・ガバナンス機能不全による企業価値毀損、株価下落
・本社機能喪失、 事業継続不能 |
・透明性確保により 信用が高まる
・輸送サービス提供の継続による社会貢献 |
・取締役会による中期経営計画などの長期的な課題の継続的なモニタリング
・ステークホルダーとの積極的な対話を通じ企業価値の向上を目指す
・BCP(事業継続計画)からBCM(事業継続 マネジメント)へ |
なお、当社グループにおけるリスクマネジメントの取り組みについては「
(3) 戦略
上記リスクと機会の認識のもと、当社は2024年3月に発表した中期経営計画「FORWARD 2030 Ⅱ Challenge for innovation and further growth with U」において、「人的資本戦略」「サステナブルシッピング戦略」「ガバナンス強化」「DX戦略」の4つの戦略を策定しました。クリーンでサステナブルな海上輸送における必要不可欠な存在を目指し、ステークホルダーと協働して変革を続け、企業価値の更なる向上を図ってまいります。
人的資本戦略
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事業環境の 変化 |
・新たな市場への挑戦、脱炭素化に向けた技術革新など、中長期的な事業戦略を担える人材の 確保・育成が必要 ・サプライチェーン全体での人権リスクの防止・軽減など「ビジネスと人権」への関心の高まり |
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計画 |
・グローバルな海運会社として、人権意識や環境問題への取り組みが企業価値を向上 ・戦略業務に専心できる職場環境の整備によるエンゲージメント向上 |
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戦略 |
人財を育て、活かす |
・人材育成・研修体系を整備し人的資本の価値最大化を目指す ・挑戦・成果を評価する人事制度の運用 ・キャリア形成のための教育・研修制度拡充 ・事業戦略実現のための要員・採用施策 ・女性・シニアの活躍推進 |
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社会的責任を果たす |
・人権DDの推進、Well-beingの実現により人権を尊重する意識の向上を図る ・サプライチェーン全体における人権尊重を徹底し、人権侵害の予防・軽減・救済に取り組む ・働きやすさの向上と健康経営の推進 |
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サステナブルシッピング戦略
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事業環境の 変化 |
・コロナ禍により船員の交代難が発生し、長期乗船など労働環境が悪化 ・「ビジネスと人権」意識の高まりとともに、船員のWell-being向上などが求められる ・陸から海へのモーダルシフトが進む内航海運業界でも船員不足は深刻 |
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計画 |
・「人権DDの対象範囲の拡大」「船員のWell-beingの最大化」「エンゲージメントの向上」に より、船員の判断力、創造力を最大限に発揮できる職場環境を実現 ・職場環境の整備により、優秀な船員を確保し、競争力の源泉とする |
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戦略 |
・安全運航の徹底のため、国内外の優秀な船員と海技士の確保・育成に努め重大事故・災害ゼロへ ・新燃料船への配乗・液体貨物輸送への展開など成長戦略を支える有資格船員の育成 |
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継続的な次世代船員の確保 |
新卒採用の継続、採用先の多様化 |
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船員の教育・訓練システム強化 |
育成プランの充実・明確化、システム連携の高度化 |
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船舶管理機能強化 |
監督育成の強化、IT/DXの積極的な導入 |
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2050年カーボンニュートラルの実現 |
2030年GHG総排出量削減目標達成に向けた環境ロードマップの実行・次世代燃料の導入検討 |
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運航効率追求 |
省エネ装置導入、超減速の深度化 |
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ガバナンス強化
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事業環境の 変化 |
・海運業界を取り巻く事業環境の変化による経営リスクの増大と、リスクマネジメント強化の 必要性が高まる ・多様なステークホルダーに対する社会的責任を果たすためコーポレート・ガバナンス強化が 求められる |
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計画 |
・環境変化に対する迅速な意思決定の実現と、全社的なモニタリング機能の強化を図る ・ステークホルダーとの対話を通じて中長期的な企業価値の向上を目指す |
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戦略 |
中期経営計画の進捗状況を継続的にモニタリングすることで、環境変化への対応や、成長戦略 など長期的な課題に関する議論を充実させることにより取締役会の実効性向上を図る |
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取締役会の実効性 |
取締役会の実効性評価アンケートを通じた運営の改善 |
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コンプライアンス 体制強化 |
社内教育の充実、取り組み強化 |
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リスク管理 |
各組織が自律的に対応できるリスクカルチャーの醸成 |
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情報管理 |
情報管理の徹底、情報セキュリティの強化による安全性向上 |
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情報開示 |
公平かつ迅速な情報開示の強化 |
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DX戦略
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事業環境の 変化 |
・環境対応による海運業界の構造変化を踏まえた価値創造モデルの構築 ・脱炭素化や「ビジネスと人権」を意識した顧客ニーズに応える船舶管理の高度化 ・多様なステークホルダーの立場を踏まえた公正かつ迅速な意思決定 |
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計画 |
人的資本戦略 |
DX推進により社員が高度な戦略業務に専心できる職場環境を整備する |
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サステナブル シッピング戦略 |
船舶DXを推進し事故・災害の予防保全、船舶管理の高度化、 運航効率改善 |
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ガバナンス強化 |
DX推進によりモニタリング効率化を含むガバナンスの強化を図る |
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戦略 |
サイバーセキュリティの強化 |
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船舶DX |
予防保全装置、作業支援ロボ、運航支援システム |
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IT人材育成 |
IT研修の拡充、デジタルコア人材の育成 |
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基幹システム投資 |
新基幹システム検討、営業支援システム、会計システム |
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業務高度化 |
業務高度化投資、人事DXの活用、DXによる業務の効率化 |
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デジタル教育の加速 |
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a. 気候変動による影響の分析
気候変動という長期的かつ不確実性の高い事象に関するリスク・機会を特定し、それらが当社グループにおよぼし得る影響について主観を排除した議論を行うために、TCFD提言に沿ったシナリオ分析を行いました。
シナリオ分析においては、不確実な将来に対してグループ全体のレジリエンスを確認するため、「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求する」というパリ協定目標の達成を見据えた「2℃未満シナリオ」と、長期目標でもある2050年CO2排出ネットゼロ/カーボンニュートラルの達成を想定した「1.5℃シナリオ」、および世界的に気候変動対策が十分に進展しない場合を想定した「3℃シナリオ」について検討しております。
各シナリオで想定したそれぞれの将来の事業環境の変化、および特定したリスクと機会は次のとおりです。
なお、上記シナリオ分析を踏まえ、新たに策定した中期経営計画では、新燃料船の整備へ1,650億円の投資を計画しています。この投資は、既存船のリプレースやメタノールDF船など新燃料船への投資、バイオ燃料の安定確保などを含みます。
また、詳細は当社ホームページにて開示しております。
b. 人材の多様性の確保を含む人材育成方針及び社内環境整備方針
当社では、持続可能な社会の実現に貢献するためには、多様な個性を活かすとともに、人材へ積極的に投資することにより、さまざまな事業環境の変化に対応し、誇りや意欲を持ちながら会社の成長を支える人材を育成することが重要であると考えております。なお、以下は当社単体の方針です。
人材の確保・育成方針
当社は、人材を最も貴重な資産であり、競争力の源泉との認識の下、新たな事業戦略の実行に必要な人材を育て活かすために、2024年度から新人事制度を導入しました。
新人事制度では人材確保の観点から、女性・シニアの活躍を実現すべく、職制統合および定年延長を実施しました。また、事業環境の変化に対応し、中長期的な事業戦略を担う人材への成長を促す評価制度とすべく、アサインアンドコミットメント制度や評価力育成会議を導入し、社員の挑戦や貢献に対する昇格やインセンティブの連動を強化しました。さらに職制の複線化を導入し、社員が自分の能力や適性に応じて、管理職や専門職として活躍できるキャリアパスを整備しました。
新人事制度に連動し、キャリア形成のための教育・研修制度拡充や、事業戦略実現のための要員・採用施策についても取り組んでいます。人材育成・研修体系を整備し、人的資本の価値最大化を目指します。
また、当社の重要経営課題の一つである安全運航の徹底のためには、安定的な船員を確保し、知識と経験に裏打ちされた実務能力と高い安全意識を持った船員への育成が不可欠と考えています。
急速に少子化が進む国内では、今後海技者人材の不足が進むと予測されるため、事前の備えとして外国人船員の活用、船員の確保強化(採用)に取り組んでいます。
外国人船員の活用については、東京本社での海技者としての勤務、インストラクター業務を含む各国研修部門への配置など陸上での海技者ニーズの増加を見込み進めています。また船員の確保強化は、船員供給ソースに応じて、他の海事関連校など複数校への採用拡大に加え、説明会実施による当社への理解促進、事前面接や試験を通じた人柄をみた選定など強化を継続しています。
船員の育成においては、船員の担う業務は多岐に渡り、かつ運航に関する経験が必要という観点から、知識については、職位別、技能別に必要な教育・訓練を実施すべくカリキュラムの整理・見直しを継続しています。
また経験については、危険を察知する気づきやその対処方法を習得することが必要なため、実際に現場で起きた事例を利用したインハウスセミナーの実施など乗船中の教育の実施、そして昇格時に必要なレベルに達しているかをアセスメントにより確認するといった方法を継続しています。
船員研修チームでは、毎年フィリピン・ベトナムの船員研修部門と連携し、研修・訓練内容のレビューや新規項目の検討を行いながら育成方法を改善するとともに、現場の安全意識を高いレベルで維持・向上させる対策実施を継続しています。
多様性の確保を含む社内環境整備方針
人材の多様性の確保及び社内環境の整備について、以下のような具体的な取り組みの継続・強化を図ります。
女性の活躍推進
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女性採用の拡大 |
・キャリア採用を含め女性の採用拡大に一層取り組む ・準総合職、一般職の総合職への統合実施 |
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離職防止対策 |
・ライフイベントによる離職を防止するための制度整備 ・育児介護休業制度やテレワーク(自宅以外も含む)の拡充 ・女性のキャリア形成を支援する研修、セミナーの実施 |
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管理職登用に資する配置、育成施策 |
・ライフイベントを見越した研修の早期実施(海外研修など) |
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管理職への教育、 職場理解の醸成 |
・管理職教育を通じ、職場全体に女性が活躍しやすい風土を醸成 |
働き方改革
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働き方 |
・会社において「長時間労働」することを前提とした働き方からの脱却 ・部下の長時間労働を前提としない組織マネジメントを管理職が追求 ・長時間労働を良しとする考課制度から成果重視の考課制度への改革 ・業務改革、DX推進の加速 |
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休み方 |
・年次有給休暇と季節休暇を合わせて社員の平均取得日数を月1日以上とすることを目標に休暇計画等の施策を強化・継続 ・男性社員の育児休業取得促進。配偶者が出産した男性社員全員に推奨する |
ハラスメント防止
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ハラスメント防止 |
・内部通報窓口の制度拡充、外部窓口の起用 ・内部統制・コンプライアンス周知月間を継続し、社員への教育・啓蒙を行う ・e-ラーニングの利用継続 ・LGBTQへの適切な理解と受容について、階層別研修で教育を行う |
健康の推進
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健康診断 |
・健康診断未受診者およびその上長に対し受診義務があることを通知し、受診率の引き上げを強化 |
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がん |
・がんの早期発見・早期治療を図るよう、会社が定める胃がん検診、大腸がん検診の受診を強化 |
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脳心疾患 |
・生活習慣の改善を図る特定保健指導を強化 |
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メンタル疾患
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・早期発見・早期対応の促進のため、本人・上司などから産業医および相談窓口へ相談する機会があることを全社員に周知・浸透を図る ・メンタルヘルスチェックの継続 |
(4) 指標及び目標
a. GHG排出削減に関する指標及び目標
中期目標
・2030年までにGHG年間排出量を2019年比25%削減する。
2050年カーボンニュートラルに向けた2030年の中間目標として、中期経営計画「FORWARD 2030 II」の中で新たに設定しました。
長期目標
・2050年までにカーボンニュートラル実現を目指す。
脱炭素社会に向けた日本政府および日本船主協会の目標を支持し、サプライチェーンを通じた社会全体のカーボンニュートラルの実現を目指し、2050年ネットゼロに挑戦します。
目標に対する進捗(単体)
GHG排出量実績
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b. D&I及び働き方についての指標及び目標
女性の活躍推進
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目標 |
・管理職の女性社員数を、現在のゼロから2025年度に最低でも1人登用、2人以上を目指す。2030年には最低でも3人とし、5人以上を目指す。 |
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取り組み進捗 |
・2023年度 女性採用人数 3人(2022年度 6人) ・2023年度 女性向けキャリアデザイン研修実施(参加率88%) ・2023年度 女性の実地研修*¹参加者 7人(2022年度比33%増) |
*¹ 訪船研修、代理店研修、GO TO 業務視察研修*²、乗船研修、海外研修、などの社外での実地参加の研修
*² 主任層以下の若手を対象とした2週間にわたる海外研修
高齢者・障がい者雇用
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目標 |
・2021年4月の高年齢者雇用安定法改正において、70歳までの就業機会確保が努力義務となったことから、今後の義務化や社会動向も睨みつつ、まずは65歳定年制への移行に取り組む。 ・障がい者雇用率を充足すべく、今後も法改正動向を注視し、法定雇用率を上回ることを目標として取り組む。 |
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取り組み進捗 |
・65歳までの定年延長の実施(2024年4月開始) |
働き方改革
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目標 |
・長時間労働の根絶*¹ (2020年度総労働時間:1,916時間→2025年度削減目標 1,850時間) ・多様な休み方の追求 |
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取り組み進捗 |
・パーパスや基本理念、経営理念の実現に向けて求められる役割や能力に基づいた新人事制度の導入(2024年4月から正式導入) ・2023年度 産後パパ育休取得率 71.4%(2022年度比28.5%増) ・2023年度 平均取得日数 年次有給休暇10.5日、季節休暇5.3日*² |
*¹ 2020年経団連労働時間等実態調査 2019年平均1,987時間(製造業)、2,014時間(非製造業)
*² 2020年厚労省就労条件総合調査 2019年平均9.2日(全産業従業員100-299人)、10.0日(運輸業、郵便業)
ハラスメント防止
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目標 |
・個人の意識・職場風土を改革し、ハラスメントに関する相談がしやすい環境をつくる |
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取り組み進捗 |
・公益通報者保護法への対応*¹(2024年1月開始) ・社外窓口を変更*²(2024年1月実施) |
*¹ 当該保護法では、常時使用する従業員数が300人を超える企業に対して義務を定めていますが、300人以下は努力義務に留まり、当社はこれに該当します。しかしながら、努力義務とはいえ、当該保護法に沿って内部公益通報体制を整備することは、通報者保護の仕組みや不正の防止と早期発見および是正の仕組みを向上させ、コンプライアンス遵守の強化につながるため、対応を実施
*² 従来顧問弁護士であった社外通報窓口を通報業務に精通した弁護士事務所に委託先を変更し、社外窓口の独立性と専門性を強化することで、通報に対する心理的安全性を確保
健康の推進
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目標 |
・健康診断受診率の引き上げを図る ・35歳以上の胃がん検診受診率の引き上げを図る ・対象者全員へ特定保健指導を実施する |
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取り組み進捗 |
・2023年度 健康診断受診率 83%(2022年度 87%) ・2023年度 特定保健指導受診率 83% ・健康経営企業宣言に向けた取り組みの開始(2024年2月開始) |
<リスク管理に関する基本的な考え方>
当社グループの主要な事業活動である外航事業は、グローバルに展開しており、本有価証券報告書「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の通り、世界各国の経済情勢、政治的または社会的な要因等の様々なリスクに晒されており、当社グループの事業や業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、「リスク管理規程」に基づき、各リスクについて、関連部門においてリスクの分析やその対応策を検討した上で、執行役員会、取締役会において協議・決定を行っております。年度末には、社長を委員長とする内部統制・コンプライアンス委員会において、「リスク項目表」に基づき、各リスク項目の見直しや管理執行状況の報告と評価を行い、その結果を、取締役会へ報告しております。
また、一定金額以上の大型投資や、不確実性の高い投資判断を行う場合に執行役員会・取締役会に上程する前に当社に及ぼす影響・リスク等を明らかにすることを目的として、投融資委員会において社内横断的に協議しております。
当社グループの事業継続に重大な影響を与えうる主要なリスクは以下の通りとなります。
<主要なリスクの概要と対応策>
① コンプライアンスリスク
ハラスメントや贈賄、不正、インサイダー取引等の法令違反のリスクは、発生した場合、損害賠償だけでなく企業の信用低下や事業活動に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは「企業行動規範」において、法令・規則を遵守し、高い倫理観をもって行動することを定めています。さらにコンプライアンス強化を図るため、社長を委員長とする内部統制・コンプライアンス委員会を定期的に開催し、取り組み状況を確認するほか、毎年10月を内部統制・コンプライアンス周知月間と定め、毎回異なったテーマにて啓蒙活動を行っており、全役員・社員、グループ一体でコンプライアンス意識のさらなる徹底とコンプライアンス実践に必要な知識・情報を周知し、コンプライアンスの重要性を再認識する機会としております。
② 人権に関するリスク
人権侵害により国内外の取引先から取引停止や企業の信用低下、賠償、訴訟等が起こるリスクがあり、当社グループの事業活動に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、グローバルに事業を展開する企業として、差別・ハラスメント・長時間労働・児童労働等の人権課題解決に取り組むことが、企業活動において一層重要であるとの認識の下、「NSユナイテッド海運グループ人権方針」を策定しております。 当社は、本方針を開示し、当社の取引先やその他のビジネスパートナーにおいて人権侵害が起きないよう当社の人権方針を理解いただくよう努めております。
当社では、関連する取締役および執行役員をメンバーとする人権デューデリジェンス推進チームを設置し、その指揮監督のもと、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に忠実に、人権尊重の取り組みを進めております。取り組みにあたっては専門的知見を有する外部コンサルタント会社からの助言を定期的に受け、人権デューデリジェンスの取り組みの各フェーズにおいての客観性と正当性の担保に努めています。
これらの取り組みは、適時開示を行うことにより、ステークホルダーの皆様にご理解・ご協力が得られるよう努めています。
③ サイバーリスク
当社グループは業務全般においてコンピュータシステム及びITネットワークを活用しております。サイバー攻撃、自然災害、オペレーションミス等に起因する重大なサイバーインシデント(情報システムやネットワーク障害、データ改ざんや情報漏洩等)が発生した場合には、当社の信用や営業活動、経営成績ならびに財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、情報セキュリティー管理の重要性を十分認識し、ハード面・ソフト面のサイバー攻撃への対応強化やバックアップ体制の構築、「情報セキュリティー基本方針」等社内規程の整備、従業員に向けた教育の実施等の対策を継続的に行っております。また当社はサイバーインシデントを想定した事業継続計画(BCP)を策定しております。
④ 海難事故リスク
当社グループの主要事業である海運業においては、海難事故が発生した場合、人命・貨物・船舶等の損失・損傷リスクや、燃料油・積荷等流失による海洋汚染のリスクがあります。当社グループは海難事故を防止するために「安全管理マニュアル」や「品質管理マニュアル」を、また環境を保全するために「環境マネジメントマニュアル」を策定するとともに、乗組員の教育・研修を実施し、安全運航に努めております。また「海難及びその他の緊急事態対応に関する規程」、「緊急事態対応マニュアル」を策定し、海難事故を想定した緊急対応演習を行うなど万全な体制をとっております。さらに、万一、海難事故が起きた場合でも保険による損失対策を図っていますが、当社負担となる損失が一部発生することがあります。
安全運航に向けた当社船舶管理の具体的な取り組みとして、以下の施策を実施しております。
a.ニアミスレポートの活用
b.安全キャンペーン
c.管理船への訪船・検船による確認
2023年度は自社による訪船検船に加え、第三者外部検査機関による検査を導入、管理船全船の迅速な状態確認につなげました。今後も同様の取り組みを継続し、良好な保守・整備につなげます。
d.安全運航管理体制
当社の船舶管理は、主として海務技術、船員配乗、教育・訓練等を担当する部門と、主として船体・機関その他の搭載機器の保守管理を担当する部門が協働して、各船の安全運航管理、危機管理を確実に実施しており、これらの取り組みの実施状況は、社長を委員長とする「安全運航・環境保全推進委員会」を定期的に開催してレビューされております。
また、船員研修チームを中心に、船舶の安全管理及び船員教育の強化のため、海外マンニング会社とも連携のうえ業務の効率性と専門性の更なる向上に取り組んでおります。
e.DX推進による事故予防
今後運航データの有効活用がますます重要度を増す中、高速データ通信が可能な低軌道衛星通信システム“Starlink”を管理船全船に導入。今後も航海・機関データの利用による運航状態のモニタリングなど不具合の兆候の早期察知など、運航トラブルの予防保全へ向けて取り組んでおります。
⑤ 公的規制及び環境保全に関するリスク
当社グループの主要事業である海運業では、設備の安全性や船舶の安全運航のために、国際機関及び各国政府の法令、船級協会の規則等の公的規制を受けております。当社グループでは、これらの規制が変更された場合に遵守するための費用が増加する可能性があり、遵守できなかった場合には事業活動が制限され、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。
当社グループはこれら安全運航に関する規制に適切に対処しております。
また、環境保全に関する規制の強化及び社会における重要性の高まりなどにより、その対策費用が増加した場合や当該法令または規制を遵守することが困難となった場合には、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。
当社グループは主に以下のような環境規制に対する対応を進めております。これらはいずれも国際連合の海事分野の専門機関である国際海事機関(IMO)が採択し国際条約として制定されているものです。
a.GHG(温室効果ガス:Greenhouse Gas)の排出削減戦略について
IMOは2023年にGHG削減戦略を改定し、2050年ごろまでのGHG排出ネットゼロ目標などを盛り込んだ戦略を策定しました。当社グループもIMOの改定戦略に沿う形で、中期、長期の目標を策定しGHGの排出削減を進めます。
2024年3月に公表した中期経営計画「FORWARD 2030 Ⅱ」において、2030年までにGHG年間排出量を2019年比マイナス25%の150万㌧に削減する中期目標を設定しました。目標の達成に向けて投資計画を進めます。
運航船舶の減速運転の徹底や配船の工夫等によるGHG排出削減努力を継続し、加えてバイオディーゼル燃料活用によるGHG削減を目的に、試験的な利用を2022年から開始しています。
また、メタノール、アンモニア等次世代燃料との二元燃料新造船の実現・建造に向けた検討を積極的に行っています。風力補助推進装置の研究および搭載の検討のほか、燃費改善機器等の搭載やプロペラの換装も運航船舶に順次実施しています。
b.船舶の排出ガスに含まれるNOx(窒素酸化物)の排出規制について
NOx排出規制は2000年以降に建造された船舶について、その建造年及び航行海域により規制が設定されており、当社グループでは規制対象となる船舶については全て認証された低NOx対応のディーゼルエンジンを搭載しております。
c.船舶の排出ガスに含まれるSOx(硫黄酸化物)の排出規制について
2020年以降は燃料中の硫黄分が0.5%以下の燃料を使用するよう規制されております。当社グループは、SOx排出を抑制するため、規制に適合した硫黄分0.5%以下の燃料油を船舶に使用するほか、当社グループが所有する大型船舶を中心として、エンジンの排気ガスに含まれるSOxを除去する装置(SOxスクラバー)を搭載しております。
d.バラスト水管理条約への対応について
国際航海をする船舶のバラスト水中の海洋生物が船舶の運航に乗じて異国に移動し生態系を乱すことが問題となり、バラスト水処理に関する管理方法が定められ、2017年に施行されております。当社グループは条約の要求に従い運航船へのバラスト水処理装置の搭載を進めております。
当社グループは、上記の対応による費用増に関しては顧客の理解を得ながら運賃等への反映に努めております。
⑥ 気候変動リスク
深刻化する気候変動回避のため、パリ協定やSDGs(持続可能な開発目標)をはじめとして、世界的にその原因物質とされるGHG排出量削減への取り組みが推進され、企業にも積極的な対応が求められております。当社グループも気候変動を含む環境保全をマテリアリティ(重要課題)に設定しています。
持続的な企業価値の向上を目的としてTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に賛同を表明、2022年からTCFD提言に基づく情報開示をHP上で行っています。気候変動に関する将来に向けたシナリオ分析を行う中で、GHG削減のために導入されるであろう政策や規制、燃料転換、新技術導入等による事業コストの増加、化石燃料輸送需要の減少、既存船舶の陳腐化、或いは対応の遅れによる事業機会の喪失といったリスクがあるものと認識しております。
2024年3月に公表した中期経営計画「FORWARD 2030 Ⅱ」において、2030年までの投資計画と共にGHG年間排出量を2019年比マイナス25%の150万㌧に削減する中期目標を設定、環境ロードマップを公表しました。当社グループは「2050年までにカーボンニュートラル実現を目指す」を目標に、今後もGHG排出削減をはじめとする気候変動リスクへの対応能力の向上に努めてまいります。
⑦ 海運市況変動リスク
当社グループの主要事業である海運業の運賃・用船料市況は、世界経済の動向、船腹の需給バランス等の影響を受け、常に変動しております。当社グループは、鉄鋼原料輸送を中心とした長期契約を志向して事業基盤の安定・強化を図っておりますが、市場ニーズに対応するため中短期契約で運航する船舶の比率が一定程度存在するため大幅な市況変動が大きな損失につながる恐れがあり、そのような状況の長期化は当社の事業基盤を損なう可能性があります。
当社グループは、今後も長期契約による事業基盤の安定・強化を図りつつ、適切な船隊ポートフォリオの構築、海外顧客向けビジネスの拡大、内航海運事業との総合力強化等により、市況変動に耐えられるよう不断の体質改善に努めます。
⑧ 為替変動リスク
当社グループの外航海運事業における商取引は、大部分が米ドルその他の外国通貨建てで行われております。
従って、当社グループの業績及び財務状況は外国為替の変動により影響を受けることがあります。当社グループは、為替予約等のヘッジ取引により常に変動する外国為替にかかるリスクの影響を一定程度まで低減する方針ですが、必ずしもこれを完全に回避できるものではなく、大幅な外国為替市場の変動により、影響を被ることがあります。
⑨ 金利変動リスク
当社グループは、船舶取得を中心とした設備投資のため、内部資金を充当する他、借入による資金調達を行っております。この借入による資金には変動金利で調達する部分もあり、当社グループでは金利情勢勘案の上、金利固定化等により、金利変動の影響を軽減するよう努めておりますが、将来の金利変動により資金調達コストが変動し、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。また、金利固定化により金利変動の影響を軽減することは、一方で市場金利下落の場合に、それにより生じ得た利益を逸失する可能性があります。また、金利固定化の期間中に条件の変更や対象設備の処分等により途中解約を余儀なくされた場合には、解約料を負担することがあります。
⑩ 燃料油価格変動リスク
当社グループで運航する船舶の燃料油価格は、原油市場の動向を反映して変動するため、当社グループの損益は燃料油価格の変動により影響を受けることがあります。当社グループでは燃料油価格調整条項がある輸送契約の締結や、購入価格が割安となる数量契約を推進することに加えて、購入燃料油の一部に対し、燃料油スワップ等による価格の固定化を行い、価格変動の影響を抑えるための対策をとっております。しかしながら、燃料油価格が急騰する局面では価格固定化を行わない部分につき、損失を被ることがあります。その一方、燃料油価格の下落局面においては、価格固定化を行った部分について、精算損が発生することがあります。
⑪ 資金調達に関するリスク
当社グループは、借入による資金調達を行っておりますが、金利等の市場環境や資金需給の影響を強く受けるため、これらの環境の変化及び当社グループの経営成績の悪化等により、資金調達に影響を受ける可能性があります。当社グループは事業活動継続のため、一定程度の資金を確保するとともに金融機関とのコミットメントライン契約により資金調達の柔軟性を確保しております。
⑫ 投資計画の進捗に関するリスク
当社グループは、船隊整備のための投資計画を有しておりますが、今後の海運市況や金融情勢等によって、これらが計画どおりに進捗しない場合、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。また、技術革新への対応が遅れることによる事業機会の喪失及び、新技術の台頭による既存船腹の陳腐化のリスクがあります。
当社グループは先進技術導入によりデータやデジタル技術を活用し、輸送の最適化と競争力強化並びに輸送サービスの環境性能を向上させるよう努めております。
⑬ 船舶の売却等にかかる損失に関するリスク
当社グループは、海運市況により、または船舶の技術革新による陳腐化や公的規制の変更等による使用制限等により、当社グループ保有の船舶を売却する場合があります。また、当社グループが用船する船舶の用船契約を中途解約する場合があります。その結果として、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。
⑭ 固定資産の減損損失計上に関するリスク
当社グループは、固定資産の減損に係る会計基準を適用しております。この基準の適用に伴い、事業環境や市場環境の変動によって保有する船舶等の固定資産について減損損失を計上する場合があり、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。
⑮ 繰延税金資産の回収可能性に関するリスク
当社グループは、将来の課税所得の見積りに基づいて繰延税金資産の回収可能性を評価しております。その見積額が減少し将来において繰延税金資産の一部または全部が実現できないと判断した場合、或いは税制の変更等に
よって実効税率が変動した場合、繰延税金資産の一部または全額を取崩し、税金費用を計上することとなり、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。
⑯ 世界各地の政治・経済情勢・自然災害等によるリスク
当社グループの事業活動は、日本を含むアジア、欧米その他の地域に及んでおり、各地域に於ける政治・経済状況や、各地で発生する自然災害等により影響を受ける可能性があります。具体的には以下のようなリスクがあります。これらの事象が発生した場合には、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。
a.不利な政治的または経済的要因
b.事業・投資許可、租税、為替管理、独占禁止、通商制限などの公的規制の影響
c.他社との合弁事業・提携事業の動向
d.戦争、暴動、テロ、海賊、ストライキ、その他の要因による社会的混乱
ロシア・ウクライナ情勢や、中東情勢の悪化に伴う紅海・スエズ運河の通航リスク等の今後の動向によって、サプライチェーンの変動や、景気後退により海上荷動きが鈍化し市況軟化等の影響を及ぼす可能性があり、当社としては今後の海上輸送需要の推移を注視し、支配船腹との需給バランスを適切に保つよう注力することで、市況の耐性を高めることに努めております。
e.地震、風水害及び感染症
大規模な災害や感染症の流行等は、当社グループの従業員の生活だけでなく、地域社会や取引先の活動を制限するため、当社グループの事業活動や業績に影響を及ぼす可能性があります。当社は、これら危機的事象に伴う事業中断による事業への影響の極小化ならびに迅速かつ効率的な事業復旧を図るためのオールハザード型事業継続計画(BCP)を策定しております。
当社グループはこれらのリスクに対して内外からの情報収集等を通じてその予防・回避に努めています。
上記のうち、将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、また、当社グループのリスク要因は記載事項に限定されるものではありません。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績、及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当期における世界経済は、資源高に伴うインフレに対する各国の金融引き締めや、中国経済の不透明感が下押し圧力となりました。また、中東情勢の悪化に代表される地政学リスクが高まった1年となりました。当社におきましては、長期契約による安定収益に加え、期中に進行した円安にも支えられ、中期経営計画「FORWARD 2030」で掲げた2023年度の財務目標である営業利益100億円以上、ROE10%以上、Net DER1.0倍以下を、3期連続で達成することができました。
外航海運市況につきましては、当期前半は中国経済の停滞や新型コロナウイルス感染症に対する港湾規制による滞船の解消等を受け、各船型において下落基調となりましたが、当期後半は南米積み鉄鉱石・穀物の好調な出荷に加え、パナマ運河・スエズ運河の通航に混乱が生じたこともあり、市況は上昇しました。
内航海運につきましては、建設業や製造業における鋼材需要低下や、火力発電所の稼働率低下が貨物輸送量の下押し要因となったものの、鉄鋼関連貨物の副原料輸送は堅調に推移しました。
燃料油価格につきましては、当連結会計年度の平均消費価格(全油種)は、トン当たり上期約541ドル、下期約569ドル、期中平均で約555ドルと、前連結会計年度比で約99ドル下落となりました。また対米ドル円相場は日米金利差を背景に円安が加速し、上期平均139円00銭、下期平均148円33銭、期中平均で143円67銭と前期比9円00銭の円安となりました。
このような事業環境の下で、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a.財政状態
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ105億59百万円増加し2,863億44百万円となりました。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ16億20百万円減少し1,367億59百万円となりました。
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ121億79百万円増加し1,495億84百万円となりました。
b.経営成績
当連結会計年度の経営成績は、売上高2,331億円(前年同期比7.1%減)、営業利益216億1百万円(前年同期比33.5%減)、経常利益221億85百万円(前年同期比33.7%減)、親会社株主に帰属する当期純利益179億86百万円(前年同期比34.8%減)となりました。なお、当社に対する東京国税局による税務調査の指摘にもとづき、2019年度から2022年度迄の法人税等について過年度法人税等9億89百万円を計上しております。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
<外航海運事業>
ケープ型撒積船(18万重量トン型)市況は、中国のゼロコロナ政策緩和による滞船の解消や、同国の不動産不況に端を発した世界経済の先行き不透明感などから、当期前半は低迷を続け、主要5航路平均用船料は一時日建て9千ドルを下回るほど軟化しました。10月以降は鉄鉱石の需給が回復し、ブラジルをはじめ主要積出港からの堅調な出荷が継続したことから、大西洋水域を中心に上昇に転じ、5航路平均用船料は12月には一時日建て5万ドルを超えるほど高騰しました。また、例年天候不順により出荷が減少する年明け以降も好調な出荷が続き、市況も堅調に推移しました。このような状況下、当社では主要荷主の日本製鉄株式会社をはじめとする国内外顧客向け中長期輸送契約の獲得により安定収益を確保するとともに、スポット市場での採算を確保し、当初の計画を大幅に上回る収益を達成することができました。
パナマックス型撒積船(7~8万重量トン型)市況は、中国経済の回復見通しが不透明な状況に加え、南米の天候不良に起因した穀物出荷の遅れにより、主要5航路平均用船料は7月に日建て8千ドル台まで下落しましたが、その後パナマ運河の渇水に起因した通航制限による輸送トンマイルの増加、石炭や穀物の荷動きが堅調に推移したことにより、12月に市況は日建て21千ドル台まで上昇しました。年明け以降も紅海情勢の緊迫化による喜望峰経由での航海の増加を背景に堅調に推移しました。このような状況下、当期前半は市況下落に対して効率運航に努めたものの、当期後半はスポット用船のコスト増加が影響し、当初の計画を達成することはできませんでした。
ハンディ型撒積船(2~6万重量トン型)市況は、当期前半は新型コロナウイルス感染症に伴う港湾規制による滞船の解消、中国経済の減速、コンテナ輸送の需給改善等による小型バルカーでの輸送需要減退などにより、市況は低調に推移しましたが、低市況下においても既存貨物を活用した配船、及び新規航路開拓により堅調な収益を上げることができました。一方で当期後半は、当社ハンディ型の主力航路であるパナマ運河経由での鋼材・穀物輸送が、運河の渇水による長期滞船や通航枠確保のための入札により大幅なコスト増に直面したことで、通年では当初の計画を達成することができませんでした。
近海水域における小型船(1.6万重量トン型以下の船型)市況は、不動産を中心とした中国国内の鉄鋼需要の回復遅れにより、主力の中国向け輸出鋼材輸送量が前期比で大幅に減少しました。中国における余剰鋼材のアジア域内への流入が続き、市況低迷の要因となったものの、輸送量が増えているバイオマス燃料輸送を含むバルク貨物の輸送拡大に取り組み、東南アジア向け鋼材輸送との往復航効率配船に努めたことで、ほぼ当初計画並みの収益を達成することができました。
VLGC(大型LPG運搬船)は、全ての船舶が定期貸船契約に従事することにより安定収益を確保しておりますが、市況連動契約となっている一部の船舶についても、総じて市況が高水準で推移したことから、当初の計画を大幅に上回る収益を達成することができました。
以上の結果、外航海運事業全体としては、売上高は2,043億36百万円(前年同期比8.8%減)、セグメント利益(営業利益)186億56百万円(前年同期比38.0%減)と、前連結会計年度に比べ減収減益となりました。
<内航海運事業>
ドライバルクにつきまして、鉄鋼関連貨物では、鉄鋼原料の輸送量は悪天候の影響を受けたものの、副原料輸送は船隊規模増強やスポット輸送需要の取り込みにより堅調に推移しました。一方で鋼材につきましては、建設業や生産用機械における鋼材需要の減少により、輸送量は当初の計画を下回りました。セメント関連貨物は内需の低迷及び大幅減産の影響を受け、また電力関連貨物は石炭火力発電所の稼働率低下等を背景に、共に輸送量は当初の計画を下回りました。
タンカーにつきましては、LNG輸送・LPG輸送ともに、国内需要の減退に伴い輸送量は減少しました。このような状況下、効率配船に努めたものの、収益は当初計画を下回りました。
以上の結果、内航海運事業全体としては、売上高は287億64百万円(前年同期比7.5%増)、セグメント利益(営業利益)は29億36百万円(前年同期比21.0%増)と、前連結会計年度に比べ増収増益となりました。
<その他>
特記すべき事項はありません。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、310億15百万円の収入(前年同期比119億15百万円の収入減)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益及び減価償却費の計上等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、130億59百万円の支出(前年同期は19億58百万円の支出)となりました。これは主に、船舶の取得による支出131億10百万円によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、120億67百万円の支出(前年同期は323億92百万円の支出)となりました。これは主に、長期借入れによる収入と長期借入金の返済による支出の差引55億28百万円の支出によるものです。
以上に現金及び現金同等物に係る換算差額を加味した現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末と比較して68億5百万円増加し、470億69百万円となりました。
(参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移
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2021年3月期 |
2022年3月期 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
|
自己資本比率(%) |
35.6 |
43.0 |
49.8 |
52.2 |
|
時価ベースの自己資本比率(%) |
16.4 |
36.1 |
35.2 |
37.9 |
|
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年) |
6.6 |
3.8 |
2.3 |
3.1 |
|
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍) |
15.7 |
24.4 |
36.7 |
19.6 |
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
(注1)いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
(注2)株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
(注3)キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しております。
(注4)有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。
③ 生産、受注及び販売の実績
当社グループ(当社及び連結子会社。以下同じ。)が営んでいる事業に「生産、受注」に該当する事項はありません。当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期増減率(%) |
|
外航海運事業(百万円) |
204,336 |
△8.8 |
|
内航海運事業(百万円) |
28,764 |
7.5 |
|
報告セグメント計(百万円) |
233,100 |
△7.1 |
|
その他(百万円) |
- |
- |
|
計 |
233,100 |
△7.1 |
(注)1.セグメント間の取引については、相殺消去しております。
2.前連結会計年度及び当連結会計年度における主な相手先の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対す
る割合は次のとおりです。
|
相手先 |
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
||
|
金額(百万円) |
比率(%) |
金額(百万円) |
比率(%) |
|
|
日本製鉄㈱ |
118,267 |
45.4 |
119,027 |
48.9 |
(注)上記の売上高には、商社等を経由したものが含まれております。
また、売上高には、賃積船の運賃が含まれております。
なお、上記以外に総売上高の10%以上を占める相手先はありません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 経営成績等
a. 財政状態
当連結会計年度末における総資産は2,863億44百万円となり、前連結会計年度末比105億59百万円増加しました。このうち流動資産は主として現金及び預金の増加により、122億11百万円増加しました。固定資産は主として建設仮勘定の減少により、16億52百万円減少しました。
負債合計は前連結会計年度末に比べ16億20百万円減少し、1,367億59百万円となりました。このうち流動負債は主として短期借入金の増加により、23億99百万円増加しました。固定負債は主として長期借入金の減少により、40億19百万円減少しました。
純資産合計は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上と配当金の支払の差引による利益剰余金の増加、その他有価証券評価差額金の増加によるその他の包括利益累計額の増加等により、前連結会計年度末に比べ121億79百万円増加し、1,495億84百万円となりました。
これらの結果、自己資本比率は前連結会計年度末の49.8%から当連結会計年度末は52.2%に増加しました。
b. 経営成績
当連結会計年度の経営成績は、売上高2,331億円(前年同期比7.1%減)、営業利益216億1百万円(前年同期比33.5%減)、経常利益221億85百万円(前年同期比33.7%減)、親会社株主に帰属する当期純利益179億86百万円(前年同期比34.8%減)と、前連結会計年度に比べ増収増益となりました。
なお、当社グループの事業構成は海上輸送業がほぼ全体を占めており、連結売上高に占める外航海運事業の割合は約9割、内航海運事業の割合は約1割となっております。
セグメント別の経営成績については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。
c. キャッシュ・フロー
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
d. 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しています。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要としています。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因として、為替・燃料油価格・海運市況などの外部要因が挙げられます。外航海運市況は、当期前半は中国経済の停滞や新型コロナウイルス感染症に対する港湾規制による滞船の解消等を受け、各船型において下落基調となりましたが、当期後半は南米積み鉄鉱石・穀物の好調な出荷に加え、パナマ運河・スエズ運河の通航に混乱が生じたこともあり、市況は上昇しました。当社におきましては、長期契約による安定収益に加え、期中に進行した円安に支えられたものの、最高益となった前連結会計年度比では減収減益となりました。
次期の事業環境につきましては、鉄鉱石・穀物を中心に比較的堅調な海上荷動きが見込まれる一方、今後の地政学上のリスクや金融情勢などによっては事業環境が変化し、海上荷動きへの影響が懸念されます。当社ではかかる事業上のリスクに対し細心の注意を払い、事業運営を行って参ります。
③ 資本の財源及び資金の流動性
a. 資金需要
当社グループの事業活動における運転資金需要の主なものは当社グループの外航海運事業と内航海運事業に関わる船費、借船料、運航費等と各事業についての一般管理費等があります。また、設備資金需要としては船舶投資に加え、情報処理システムのための無形固定資産投資等があります。
当連結会計年度に実施した設備投資の総額は133億11百万円で、その主なものは船舶であります。また当連結会計年度末における船舶の新設に対する投資予定額は54億10百万円(既支払額17億85百万円を含む)であります。
b. 財務政策
当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、事業計画に基づく資金需要、金利動向等の調達環境、既存借入金の償還時期等を考慮の上、内部資金の活用及び国内金融機関からの借入により安定性を重視した資金調達を行っております。
当社グループの主要な事業資産である船舶の調達に当たっては、財政状態のバランスを図る観点から、船主からの用船も考慮に入れ、当社グループ全体の有利子負債を過度に増加させることなく、低コストかつ安定的な船隊の整備を行っております。当連結会計年度末の有利子負債残高は970億95百万円となりました。
また突発的な資金需要に対しては迅速かつ確実に流動性資金を確保すべく、複数の国内金融機関と複数年にわたり総額90億円のコミットメントラインを設定しており、流動性を補完しております。
c. キャッシュ・フロー
「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
④ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
外航海運事業は、為替・燃料油価格・海運市況などの外部要因によって期間損益が左右されることに加え、他産業と比べて相対的に設備投資額が大きいという構造的な課題を抱えています。当社では、こうした業種特有の課題を強く意識した経営指標として、営業利益・ROE(株主資本利益率)・ネットD/Eレシオ(実質負債資本倍率)の3つに着目しています。営業利益は事業収益の規模感の、ROEは株主資本に対しての収益効率性の、ネットD/Eレシオは財務健全性の目安としています。2023年度は通期営業利益216億円、ROEは12.5%となりました。また2023年度末時点での
ネットD/Eレシオは0.33倍となり、2023年度の目標水準である営業利益100億円以上、ROE10%以上、ネットD/Eレシオ1.0倍以下を2021年度・2022年度に続き3期連続で達成することができました。2024年度から開始した中期経営計画の目標である、2027年度通期営業利益200億円、ROE10%以上、ネットD/Eレシオ1.0倍以下の達成に向けてグループ一丸で不断の取り組みを重ねて参ります。
該当事項はありません。
当社グループでは、サステナブルな社会の発展に貢献すべく、サプライチェーンにおける海上輸送の温室効果ガス排出削減を目指しており、その一環としてバイオディーゼル燃料による船舶の航行に関する研究を推進しております。
具体的には、バイオディーゼル燃料の原料の腐食環境調査、燃料分析、当社管理船での試験航行を行っております。バイオディーゼル燃料は既存の舶用エンジンで使用可能であり、補油のための既存のインフラを活用できる汎用性の高い低炭素燃料とされています。2024年1月には公海上で同燃料による試験航行を2航海にわたり実施しました。当社のこれまでの試験航行から供給量及び使用量を増やし、本船上で2ヵ月強の貯蔵後の使用における品質検証を行いました。使用されたバイオディーゼル燃料は廃食用油を原料に精製されており、従来の化石燃料と比べ燃料の生産から消費までのライフサイクルを通じ約84%のCO2排出削減効果が期待されます。
なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は