文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、建設事業を主要な事業内容としており、東急グループの一員として同事業の分野を担っており、東急グループ各社と連携し、安心で快適な生活環境を提供する東急ブランドをより強固にしつつ、その価値を競争力の一つとしております。
2021年3月に、創業の精神を受け継いだ企業理念に基づき、社会課題の解決を強く意識した2030年の企業ビジョン「VISION2030」、同年5月には、その達成に向けた10か年の長期戦略「長期経営計画 “To zero, from zero.”」を策定しております。これらを実行することにより持続的な企業価値向上を実現してまいります。
①長期経営計画の概要
②長期経営計画のKPI
※1 当社は事業展開上必要な株式取得などへの投下資本に対するリターン(配当等)を適切に反映するため、ROICの算定式を以下の通りとしております。
(NOPAT+連結営業外損益)/(連結自己資本(期首・期末の平均値)+連結有利子負債(期首・期末の平均値))
※2 ROICについては、現状では収益力の回復に取組み、中長期的な目標水準として2030年度7.0%以上を目指すことを掲げております。
※3 ㈱リンクアンドモチベーション「モチベーションクラウド」によるエンゲージメントレーティングであります。対象は子会社を含めたグループ全体の従業員としており、2030年度目標指標の「AAA」は、全11段階中最上位のレーティングとなっております。
※4 2018年度基準としておりますが、2024年度以降のGHG排出量はSBT目標設定ガイダンス第2版1.5℃基準に基づき、目標数値を設定しております。
なお、各年度の目標指標は2024年5月9日に公表いたしました「「長期経営計画“To zero,from zero.”」のローリングに関するお知らせ」の数値を記載しております。
「(1) 経営方針」に記載の経営方針及び「長期経営計画 “To zero, from zero.”」を実行していくうえで、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は以下の通りであります。
今後の国内建設市場につきましては、建設投資は引き続き堅調に推移することが見込まれますが、技能労働者の減少、時間外労働に関する上限規制の適用による影響や原材料価格の高止まり等が懸念されるとともに、新設等を主体とした「フロー」型から維持・修繕等の「ストック」型への需要の質的変化や、デジタルによる技術革新など構造変革が迫られております。
このような情勢下におきまして当社グループでは、協力会社との関係強化や物価高騰への対応を図りつつ、「長期経営計画 “To zero, from zero.”」に基づき、国内土木・建築・建築リニューアル事業を「コア事業」、国際・不動産・新規事業を「戦略事業」と位置づけ、既存事業の深堀りと新規分野の模索など「知の深化」と「知の探索」を実践してまいります。また、人材とデジタル技術を競争優位の源泉として、3つの提供価値(「脱炭素」「廃棄物ゼロ」「防災・減災」)を軸とし、この3つの提供価値と人材・デジタル技術の競争優位構築による「東急建設ブランドの訴求・確立」をはじめとする5つの重点戦略を実行することで当社グループの持続的な企業価値向上を目指してまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、持続的な企業価値向上を目指すため、企業ビジョンおよび経営計画に則り、「脱炭素」「廃棄物ゼロ」「防災・減災」を軸に、ステークホルダー(お客様、協力会社、社員・家族、株主、そして社会)へ新たな豊かさを提供するサステナビリティ経営を実践しております。自社のサステナビリティを巡る課題をマテリアリティ(当社グループが優先的に取り組むべき経営の重要課題)として定め、その取り組みを推進しています。
マテリアリティは、経営会議等の会議体においてリスクと機会を認識し、ステークホルダーにおける重要度と企業価値向上への影響度を踏まえ取締役会で特定しています。これら取り組みの進捗について取締役会に報告するとともに、環境変化に柔軟に対応するため、毎年リスクを網羅的に洗い出し、見直しを行う仕組みとしております。
業務執行状況は、事業部門長会議や経営トップによる四半期ごとの事業モニタリングにおいて把握し、工事受注、不動産取引、ベンチャー投資やその他事業投資等の個別案件は、組織横断の「本社リスク管理協議会」、「受注協議会」、「海外受注協議会」、「不動産取引審査会」、「事業投資審査会」、「ベンチャー投資委員会」を設け、リスクの事前検証を実施しております。サステナビリティ課題を報告・協議する「サステナビリティ委員会」では、当連結会計年度において気候変動、GHG排出量削減目標の引き上げ、人権デュー・ディリジェンス、生物多様性、情報開示について議論・報告を行いました。
サステナビリティの取り組みに関する詳細な情報につきましては
上記、ガバナンス及びリスク管理を通して識別された当社グループにおける重要なサステナビリティ項目は以下のとおりであります。
① 気候変動
(ⅰ)戦略
気候変動がもたらす影響を幅広く検討し、特に重要であると考えられるリスクと機会を特定しております。それぞれのリスクと機会が当社グループに与える財務影響を、気候変動への対応や規制が進むことが想定される2℃未満シナリオと、災害の甚大化がより深刻となる4℃シナリオに分けてシナリオ分析を実施しました。
気候変動が東急建設グループの事業に及ぼす影響を鑑み、気候変動リスクの低減およびこれらの機会を生かすことを経営の最重要課題と認識しています。
東急建設グループは、経営の軸として3つの提供価値「脱炭素」「廃棄物ゼロ」「防災・減災」を定め、気候変動リスクの低減に向けた施策推進に取り組んでいます。
検討に必要な情報の取得にあたってはIEA(International Energy Agency)WEO 2022 Net Zero by 2050 やIEA WEO2021等を参照しました。
各シナリオ下における事業環境の認識と、それらが及ぼす事業影響の概要は以下の通りです。


リスクと機会およびその対応策(事業影響が大:10億円以上のもの)
※想定時期の定義 短期:0~2年 中期:3~9年 長期:10~30年
(ⅱ)指標及び目標
以下の指標を用いており、目標及び実績は次のとおりです。
※GHG排出量は、2018年度基準としておりますが、2024年度以降のGHG排出量はSBT目標設定ガイダンス第2版1.5℃基準に基づき、目標数値を設定しております。なお、2023年度の実績値は、第三者保証取得前の数値であるため変更の可能性があります。
気候変動、TCFD提言に基づく詳細な情報については
② 人的資本
(ⅰ)戦略
人材育成方針
建設産業の構造変化が著しい状況において、「技術力の継承と現場力の強化」と「多様な人材の活躍による変化対応」は、企業価値向上の鍵となるものです。
当社グループは、「人材」を競争優位の源泉と位置付け、従業員一人ひとりが能力を高め、個々の力を十分に発揮できるよう人材育成の強化に取り組んでおります。
コア事業である建設事業でこれまで培ってきた現場力をさらに深め、強みである都市機能を止めない技術やノウハウ、土木・建築・その他事業の枠を超えたチームワークを次世代へ確実に引き継ぐため、必修型「ビジネス基礎教育」、職種別に特化した必修型「専門教育」、キャリア自立に向けた自発的な行動を支援する「選択・選抜型教育」の3つの要素を軸に人材育成マスタープランとして教育体系を整備し、若手の早期育成を進めております。また、若手の成長を促進するため、年次に関わらない抜擢登用、能力絶対評価による優秀社員のスピード昇格が可能となる人事制度を整備し、ジョブローテーションによる成長機会の創出と合わせて現場力強化を進めております。
一方、戦略事業である国際事業・不動産事業においてはより高い専門性を持つ人材が不可欠であり、専門性を活かしたキャリア形成を実現する専門職制度を活用し、スペシャリストの育成を推進しています。新たな事業領域拡大・イノベーション推進に向けて、高い専門能力とプロ意識、誇り・情熱・向上心とやり抜く力を併せ持ち変革をリードできる「自律型人材」の育成・獲得を進めております。
また、当社グループは「デジタル技術」を「人材」と並ぶ競争優位の源泉と位置づけており、「デジタル技術」をより強固に推進するためのデジタル人材の獲得と育成を進めております。デジタル人材育成計画を策定し、全社員がそれぞれに求められるスキルの獲得を目指しております。
以前にも増して変化の激しい市場環境で「知の深化」と「知の探索」の実践を牽引し、複雑化する経営を担う人材の不足は大きなリスクとなります。これを回避すべく、次世代経営者・幹部候補者を対象とした次世代経営アカデミーを運営し、次世代人材プールを構築することで計画的な経営人材の輩出と主要ポストの後継者計画の実現に取り組んでおります。
社内環境整備方針
当社グループは、顧客ニーズの多様化への適合と、新たな事業領域拡大・イノベーション推進に向けて個性の違いが生み出すさまざまな視点や価値観を効果的に活用することができる企業風土の醸成を目指し、多様な人材が最大限の力を発揮できる職場づくりを推進しています。
多様性の確保として女性活躍推進、エリア総合職の採用・通年採用、外国籍社員への支援、LGBTQへの対応などを進めており、特に女性活躍推進では、経営幹部候補の育成におけるジェンダーバランスの考慮、女性を対象としたリーダーシップ研修など女性リーダーの拡充に向けた様々な取組みを実施しています。女性に対する直接的な働きかけに限らず、新入社員時研修におけるアンコンシャスバイアスに関する研修や心理的安全性を高める管理職向けの研修などを実施しています。その活躍の土台となる多様な働き方については、フレックス勤務制度・テレワーク勤務制度などを整備しております。更にデジタル化・IT活用での業務効率化、作業所における4週8休への取り組みなどの職場環境整備により長時間労働を要因とする健康被害を防止するとともに、健康経営を推進して従業員の健康づくりに積極的に取り組むことで、当社の持続的な成長とサステナブルな社会の実現を目指しております。
また、年2回実施するエンゲージメントサーベイにより組織の状況を把握して改善活動につなげるとともに、サーベイ結果のフィードバックを通じたチーム対話の推進等により組織内の心理的安全性の確保を進め、改善活動や新たなアイディアが生まれやすい環境づくりを目指しております。さらに、事業戦略への納得感を高めるため経営者と従業員とが直接意見を交わし合うビジョン対話や、感謝を伝えるサンクスカードの運用、新事業のアイディアコンテストの開催により、互いを認め合い、尊重し合い、挑戦を歓迎する組織風土の醸成に取り組んでおります。
(ⅱ)指標及び目標
当社グループでは、上記以下の指標を用いており、目標及び実績は次のとおりです。
※1当社単体での指標となります。
※2男性の育児休業若しくは育児を目的とした休暇の取得率
※3株式会社リンクアンドモチベーション「モチベーションクラウド」によるエンゲージメントレーティングであります。対象は子会社を含めたグループ全体の従業員としており、全11段階に分かれており、2023年度実績の「BB」は、「AAA」「AA」「A」「BBB」に次ぐ上位から5段階目のレーティングとなっております。
人的資本に関する詳細な情報については2024年10月に弊社ウェブサイト(URL:https://www.tokyu-cnst.co.jp/ir/library/annual/)において公表予定の
なお、当該将来に関する事項については、経営会議等および取締役会の会議体で合理的な根拠に基づく適切な検討を経たものであります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下の通りであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
温室効果ガスの大量排出による気候変動に伴い、建設事業や建物ライフサイクルへの政府の規制強化や、サステナブルな調達に対する要請の高まり等への対応が遅れた場合、売上高の減少、工事採算の悪化等、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当該リスクには、再生可能エネルギー電力の使用やZEB(Net Zero Energy Building)の推進をはじめ3つの提供価値(「脱炭素」「廃棄物ゼロ」「防災・減災」)を軸とした長期経営計画を推進することとしております。また、気候変動に伴い激甚化する風水害や、地震、津波等により当社グループの従業員や保有資産が被災するリスクに対して、BCP(事業継続計画)に基づいた訓練計画を行う等、BCM(事業継続マネジメント)にも取り組んでおります。
事業活動推進に必要となる金融機関からの資金調達において、金利上昇による資金調達コストの上昇が要因となり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当該リスクには、資金調達方法を多様化させ、短期社債の発行やグリーンローン借入など、低コストでの資金調達を実施することにより対応しております。
景気変動による国内建設市場の縮小、資材・労務価格等の急激な変動が発生した場合、売上高の減少、工事採算の悪化等、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当該リスクには、市場の縮小に対してはイノベーションによる新たな事業領域の拡大、資材・労務価格等の急激な変動に対しては先行調達や代替工法の提案等により対応しております。
技能労働者不足による供給力の低下等に伴う、建設産業の構造変化への対応が遅れた場合、売上高の減少等、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当該リスクには、協力会社との連携を強化しつつ、建設現場におけるICTの活用等DXによる建設生産システムの変革、生産性の向上により対応しております。
労働人口の減少や働き方の多様化、産業間の人材獲得競争が進む中、従業員への処遇改善や、ダイバーシティ&インクルージョンへの対応が遅れることにより、従業員の確保が困難となり人員不足に陥ることが想定されます。また、それに伴う売上高の減少等により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当該リスクには、人材育成の強化により従業員一人ひとりの能力をさらに高め、従業員エンゲージメントの向上によりその能力を最大限発揮するとともに、人事制度改革や働き方改革、さらにはダイバーシティ&インクルージョンを推進することで、当社の魅力を高めることにより対応しております。
設計、施工における不具合等によりその補修等に多大な費用を要するような重大な瑕疵、品質不良が発生した場合、補修費用の発生による工事採算の悪化や顧客からの信頼喪失による受注機会の減少等、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当該リスクには、土木・建築各事業本部との組織連携や、品質管理の活動強化を図り、PDCAサイクルを実践する等、当社が定める品質方針に基づき対応しております。
なお、品質問題の発生および重大化を防ぐため、経営者まで速やかに情報共有される体制の整備や内部通報制度の拡大、施工部門における品質管理の再構築、技量向上を目的とした作業所技術員への人材投資の強化、組織風土の改革といった事項にも取り組んでおります。
第三者や多数の死傷者を伴う重大な事故・災害の発生及び社会的に影響の大きい工事等における事故が発生した場合、社会からの信頼を喪失し受注機会の減少等、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当該リスクには、経営トップの関与をより高めた安全管理体制等、当社が定める安全方針に基づき対応しております。
(8) サイバーリスク
サイバー攻撃などによる機密情報の流出や社内システムの機能障害が発生した場合、顧客や社会からの信頼喪失、事業活動の停滞等、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当該リスクには、情報セキュリティ基本方針に基づき、情報漏洩等の問題に対する物理的・人的・ITなどの各側面からの情報セキュリティ対策、e-ラーニングを用いた従業員教育の推進等により対応しております。
国際事業を展開する上で、海外諸国の政治・経済情勢、為替や法的規制等、事業環境に著しい変化が生じた場合、売上高の減少等、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当該リスクには、本社機能を含むガバナンスを充実させリスクマネジメントを強化することにより対応しております。
当連結会計年度における我が国経済は、雇用・所得環境が改善し、景気に緩やかな回復の動きが見られました。しかしながら、ウクライナや中東地域をめぐる情勢に加え、円安等の影響による物価上昇のほか、金融資本市場の変動など先行きに対する不透明感が高まりました。
建設業界におきましては、政府建設投資が前年度を上回り、民間建設投資も企業の設備投資意欲が引き続き堅調であったことから、建設投資は総じて増加しました。
このような情勢下におきまして当社グループは、「長期経営計画 “To zero, from zero.”」に基づき、国内土木・建築・建築リニューアル事業を「コア事業」、国際・不動産・新規事業を「戦略事業」と位置づけ、人材とデジタル技術を競争優位の源泉として3つの提供価値(「脱炭素」「廃棄物ゼロ」「防災・減災」)を軸とした5つの重点戦略(「東急建設ブランドの訴求・確立」「コア事業の深化」「戦略事業の成長」「人材・組織戦略」「財務・資本戦略」)に取り組んでまいりました。
この結果、当連結会計年度の経営成績は、売上高は285,681百万円(前期比1.1%減)となりました。損益面では、営業利益は8,155百万円(前期比59.7%増)、経常利益は9,736百万円(前期比93.9%増)となりました。これに、税金費用等を加味した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は7,266百万円(前期比38.5%増)となりました。
完成工事高については、国内官公庁工事が増加したものの、国内民間工事及び海外工事の減少により、215,591百万円(前期比0.6%減)となりました。一方、セグメント利益については、9,785百万円(前期比23.3%増)となりました。
完成工事高については、国内官公庁工事が減少したものの、海外工事及び国内民間工事の増加により、66,897百万円(前期比8.2%増)となりました。一方、セグメント利益については、3,635百万円(前期比228.7%増)となりました。
不動産事業等売上高については、3,192百万円(前期比68.4%減)となりました。セグメント利益については、2,204百万円(前期比13.8%減)となりました。
当連結会計年度末の資産の部につきましては、現金預金が26,591百万円減少した一方、受取手形・完成工事未収入金等が40,258百万円、固定資産からの保有目的の変更や新規物件の取得等により販売用不動産が8,009百万円それぞれ増加したことなどにより、資産合計は前連結会計年度末と比較して15,360百万円増加(6.2%増)し、264,525百万円となりました。
負債の部につきましては、電子記録債務が4,806百万円減少した一方、長期借入金が19,633百万円、短期借入金が13,124百万円それぞれ増加したことなどにより、負債合計は前連結会計年度末と比較して10,591百万円増加(6.9%増)し、163,735百万円となりました。
純資産の部につきましては、配当を3,824百万円実施したものの、親会社株主に帰属する当期純利益を7,266百万円計上したことなどにより、利益剰余金が増加した結果、株主資本は3,131百万円増加しました。また、退職給付に係る調整累計額が1,478百万円増加したことなどにより、その他の包括利益累計額は1,586百万円増加しました。この結果、純資産合計は前連結会計年度末と比較して4,769百万円増加(5.0%増)し、100,789百万円となりました。
なお、自己資本は99,966百万円となり、自己資本比率は前連結会計年度末と比較して0.4ポイント減少し、37.8%となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローにつきましては、税金等調整前当期純利益9,958百万円の計上や未成工事支出金の減少等の資金増加があったものの、売上債権の増加や仕入債務の減少等の資金減少により、54,023百万円の資金減少(前連結会計年度は20,392百万円の資金増加)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローにつきましては、有形及び無形固定資産の取得による支出や投資有価証券の取得による支出等により、1,399百万円の資金減少(前連結会計年度は2,398百万円の資金増加)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローにつきましては、長期借入れによる収入や短期借入金の純増等により、28,523百万円の資金増加(前連結会計年度は2,762百万円の資金減少)となりました。
この結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末から26,771百万円減少し、31,942百万円(前連結会計年度末は58,714百万円)となりました。
(注) 当社グループでは「建設事業(建築)」及び「建設事業(土木)」以外では受注生産を行っておりません。
(注)1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため「生産の実績」は記載しておりません。
3 前連結会計年度及び当連結会計年度ともに売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はありません。
なお、参考のため提出会社個別の事業の実績は次のとおりであります。
(注) 1 前事業年度以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額を含みます。従って、当期完成工事高にもかかる増減額が含まれます。また、前事業年度以前に外貨建で受注したもので、当事業年度中の為替相場の変動により請負金額の増減がある場合についても同様の処理をしております。
2 次期繰越工事高は(前期繰越工事高+当期受注工事高-当期完成工事高)であります。
工事の受注方法は、特命と競争に大別されます。
(注) 百分比は請負金額比であります。
(注) 1 完成工事のうち主なものは、次のとおりであります。
前事業年度
当事業年度
2 完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の完成工事高及びその割合は、次のとおりであります。
前事業年度
タント特定目的会社 27,686百万円 11.0%
当事業年度
該当する相手先はありません。
d.次期繰越工事高(2024年3月31日現在)
(注) 次期繰越工事のうち主なものは、次のとおりであります。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等
当社グループの当連結会計年度の経営成績等について、売上高は285,681百万円(前期比1.1%減)となりました。損益面では、営業利益は8,155百万円(前期比59.7%増)、経常利益は9,736百万円(前期比93.9%増)となりました。これに、税金費用等を加味した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は7,266百万円(前期比38.5%増)となりました。
財政状態については、受取手形・完成工事未収入金等や販売用不動産が増加したことなどにより資産合計は264,525百万円(前連結会計年度末比6.2%増)となりました。また、長期借入金や短期借入金が増加したことなどにより、負債合計は163,735百万円(前連結会計年度末比6.9%増)、利益剰余金の積上げなどにより純資産は100,789百万円(前連結会計年度末比5.0%増)となりました。自己資本比率は37.8%(前連結会計年度から0.4ポイント減少)となりました。
b.経営成績に重要な影響を与える要因
国内建設市場につきましては、建設投資は引き続き堅調に推移することが見込まれますが、技能労働者の減少、時間外労働に関する上限規制の適用による影響や原材料価格の高止まり等が懸念されるとともに、新設等を主体とした「フロー」型から維持・修繕等の「ストック」型への需要の質的変化や、デジタルによる技術革新など構造変革が迫られております。
このような情勢下におきまして当社グループでは、協力会社との関係強化や物価高騰への対応を図りつつ、「長期経営計画 “To zero, from zero.”」に基づき、国内土木・建築・建築リニューアル事業を「コア事業」、国際・不動産・新規事業を「戦略事業」と位置づけ、「知の深化」と「知の探索」を実践し、人材とデジタル技術を競争優位の源泉として3つの提供価値を軸とした5つの重点戦略を実行することで当社グループの持続的な企業価値向上を目指してまいります。
c.目標とする経営指標の達成状況
当社グループが「長期経営計画“To zero, from zero.”」で掲げた目標及び、当連結会計年度の実績は以下のとおりです。
※1 ㈱リンクアンドモチベーション「モチベーションクラウド」によるエンゲージメントレーティングであります。対象は子会社を含めたグループ全体の従業員としており、全11段階に分かれており、2023年度実績の「BB」は、「AAA」「AA」「A」「BBB」に次ぐ上位から5段階目のレーティングとなっております。
※2 2018年度基準としておりますが、2024年度以降のGHG排出量はSBT目標設定ガイダンス第2版1.5℃基準に基づき、目標数値を設定しております。
なお、2023年度の実績値は、第三者保証取得前の数値であるため変更の可能性があります。
また、施工中工事の不具合や、過年度引渡し物件に係る施工瑕疵に対し、当社では、安全・品質・工程管理等のコア業務に関する技術員教育の強化、本社による作業所支援体制の強化、特定工事に対する専門委員会の設置等、品質管理体制の強化による再発防止策を徹底し、施工品質の向上に引き続き努めてまいります。
d.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、「第2 事業の状況 4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりでありますが、当社グループの運転資金需要のうち主なものは、工事の完成に要する外注費等の工事費の支払や人件費等の販売費及び一般管理費等の営業費用によるものであります。また、当社グループは提出日現在、事業運転資金の安定的且つ機動的な調達を目的として、取引金融機関5行及び19行との間でそれぞれ締結しております、シンジケーション方式によるコミットメントライン契約等からの借入により資金調達を行っております。
e.セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。
(建設事業(建築))
当連結会計年度における受注高は241,036百万円(前連結会計年度は209,721百万円)、完成工事高は215,591百万円(前連結会計年度は216,938百万円)、セグメント利益は9,785百万円(前連結会計年度は7,938百万円)となりました。
(ⅰ) 完成工事高(個別)
当事業年度における当社個別の完成工事高は、前事業年度比856百万円(0.4%)増加の192,909百万円となりました。
工事分類別では、前事業年度に比べ「住宅」、「宿泊施設」が増加し, 「倉庫流通施設」、「工場発電所」が減少しました。また、発注者別では、官公庁工事が増加、民間工事が減少となりました。
(単位:百万円)
(ⅱ) 完成工事総利益率(個別)
利益率は前事業年度と同様、7.2%となりました。
(ⅲ) 受注高(個別)
受注高は 218,765百万円で、前事業年度比35,215百万円(19.2%)の増加となりました。
(発注者別)
中央官庁からの受注は前事業年度比12.0%減少、地方自治体からの受注は同894.1%増加し、官公庁工事の受注額合計では同180.1%増加しました。東急グループを除く民間の受注は前事業年度比5.8%増加、東急グループからの受注は同68.6%増加となり、民間の受注額合計では同9.6%増加となりました。なお、受注高全体に占める東急グループ発注工事の割合は、当事業年度8.2%となりました。官公庁工事と民間工事では、官公庁工事12.8%、民間工事87.2%の構成比となりました。
(工事分類別)
「倉庫・流通施設」は前事業年度比56.2%増加し、構成比は24.2%となりました。「住宅」は前事業年度比15.3%減少し、構成比は23.0%となり、「教育・研究・文化施設」は前事業年度比113.6%増加し、構成比は14.1%となりました。
(エリア別)
国内において、首都圏と地方の比較でみると、首都圏の割合が前事業年度比12.5ポイント減少し、国内全体に占める割合は67.1%となりました。
(建設事業(土木))
当連結会計年度における受注高は60,037百万円(前連結会計年度は84,635百万円)、完成工事高は66,897百万円(前連結会計年度は61,838百万円)、セグメント利益は3,635百万円(前連結会計年度は1,106百万円)となりました。
(ⅰ) 完成工事高(個別)
当事業年度における当社個別の完成工事高は、前事業年度比5,974百万円(9.9%)増加の66,299百万円となりました。
工事分類別では、前事業年度に比べ「鉄道」、「道路」が増加しました。また、発注者別では、官公庁工事、民間工事ともに増加となりました。
(単位:百万円)
(ⅱ) 完成工事総利益率(個別)
利益率は、前事業年度比3.7ポイント増加し、9.4%となりました。
(ⅲ) 受注高(個別)
受注高は59,575百万円で、前事業年度比24,666百万円(29.3%)の減少となりました。
(発注者別)
中央官庁からの受注は前事業年度比48.5%減少、地方自治体からの受注は同13.5%増加し、官公庁工事の受注額合計では同38.7%減少しました。東急グループを除く民間の受注は前事業年度比21.7%減少、東急グループからの受注は同50.9%増加となり、民間の受注額合計では同8.4%と減少となりました。なお、受注高全体に占める東急グループ発注工事の割合は、当事業年度12.2%となりました。官公庁工事と民間工事では、官公庁工事59.6%、民間工事40.4%の構成比となりました。
(工事分類別)
「鉄道」は前事業年度比38.0%減少し、構成比は38.6%となりました。「道路」は前事業年度比36.9%減少し、構成比は25.0%となり、「上・下水道」は前事業年度比28.7%増加し、構成比は14.5%となりました。
(エリア別)
国内において、首都圏と地方の比較でみると、首都圏の割合が前事業年度比13.6ポイント増加し、国内全体に占める割合は72.6%となりました。
(不動産事業等(連結))
不動産事業等売上高は3,192百万円(前連結会計年度は10,091百万円)となりました。この主な内容は、賃貸収入等に係るものであります。また、損益面では、2,204百万円のセグメント利益(前連結会計年度は2,556百万円)となりました。
②重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
該当事項はありません。
セグメントごとの研究開発は次のとおりであります。なお、「建設事業(建築)」及び「建設事業(土木)」の研究開発費は、建設事業共通でかかる費用のため、「建設事業」として記載しております。
[建設事業]
研究開発活動については、「VISION2030」の達成に向け策定した「長期経営計画“To zero, from zero.”」の中で示した、3つの提供価値「①脱炭素、②廃棄物ゼロ、③防災・減災」に関連する技術ならびに、技術革新による「④まちづくり、⑤品質向上、⑥生産性向上、⑦安全性向上」につながる技術の開発と実用化を、技術戦略基本方針に基づき推進しております。当連結会計年度においては、以下の技術分野に関して、研究開発を進めました。
1.脱炭素 ・コンクリート材料・木造建築・IoTセンサ活用の空調制御・建築資材のCO2排出量算定
2.廃棄物ゼロ ・先送り材料・廃棄物選別ロボット・BIMを活用した部材制作
3.防災・減災 ・構造ヘルスモニタリング・耐震・グリーンインフラ・インフラ点検・維持管理
4.まちづくり ・Building OS・生物多様性評価
5.品質向上 ・検査支援システム・騒音対策・コンクリート材料・室内快適性
6.生産性向上 ・混合構造・トンネル施工省力化・PCa化・杭/基礎
7.安全性向上 ・トンネル安全管理・VOC汚染対策
更に、大学、公共研究機関及び関連企業との共同研究をはじめとする社外連携を進め、競争的資金の活用等により研究開発の効率を高めております。また、複数の大学と産学連携に関する包括契約を締結しております。
当連結会計年度における研究開発費は、
主な研究開発成果は次のとおりであります。
(1)建物デジタルプラットフォーム「Building OS」を大阪大学と共同開発し、技術研究所で実証
当社は、建物運用段階における環境価値や建物利用者の生産性向上に貢献する「Building OS(以下「当システム」)」を大阪大学大学院工学研究科と共同で開発し、当社技術研究所の管理研究棟でWebブラウザ上でのデジタルプラットフォーム構築を実証しました。
当システムは、照明や空調などといった建物全体の設備を統合的に一元管理する建物OS(Operat-ing System)と呼ばれる技術の一つです。
今回の実証により、BIMをプラットフォームとした環境負荷低減の取り組みを加速させるとともに、建物環境の改善を通じた建物利用者の快適な生活環境づくりに貢献してまいります。さらに、当システムを起点とした建物管理に係る新たなサービスの事業化を目指します。
(2)BIMモデルと熱流体解析シミュレーターの連携手法を共同開発
当社は、中立でオープンなBIMモデルの仕様であるIndustry Foundation Cla-sses(以下「IFC」)※1と熱流体解析などを行う数値流体力学(computational f-luid dynamics(以下「CFD」)※2)シミュレーターを連携させる手法を大阪大学大学院工学研究科と共同で開発しました。
今回開発したのは、IFCファイルからCFDに必要な情報を抽出する仕組みです。ISOで標準化されている国際規格のIFCを活用することで、特定のBIMモデル作成ソフトウエアに依存せずにCFDと連携することが可能となります。
今後、この手法を「Building OS※3」に組み込むことで、例えば30分後の室内環境の状態を予測して先読み的に空調を制御するなど、これまで困難であった室内環境制御と解決な生活環境づくりを目指してまいります。
※1 「IFC」は、BIMソフトウエア間における建物情報のデータ共有を容易にする中立でオープンなデータモデルのファイル形式です。
※2 「CFD」は、コンピューターを用いて流体の運動方程式を解き、熱流体解析などを行う数値流体力学です。
※3 「Building OS」は、当社と大阪大学大学院工学研究科が2023年4月に共同開発した建物OSです。
(3)ドローンの屋内飛行時における安定化技術を開発
当社と東京都市大学は、ドローンが上壁(橋桁や天井などの構造物)近傍での飛行時に制御不能となることを予防し飛行を安定化させる新技術を開発しました。
近年、ドローンの更なる普及を妨げる原因の一つとして、上壁近傍を飛行する際に、急激な推力上昇が生じドローンが上壁に衝突、損傷・墜落するという問題があります。今回、この問題を解消するため、新たに圧力回復孔を設けたプロペラを開発し、これにより上壁近傍の推力上昇を従来に比べ約20%抑制することを可能としました。また、プロペラは比較的単純な構造でできており、既存ドローンへの適用が容易なことから、小型のドローンだけでなく、さまざまな大きさのドローンへの応用も可能です。
今後は、屋内や構造物に近接する場所でのドローンによる点検・軽作業へのドローン活用促進に寄与してまいります。
(4)天井裏などの狭所空間で安定かつ長時間飛行が可能な「天井吸着移動型ドローン」を開発
当社は東京都市大学と共同で、天井効果を利用することで、建築物の天井裏やピットなどの狭所空間で従来型のドローンよりも安定かつ長時間飛行が可能な「天井吸着移動型ドローン」を開発しました。
これまで、建築物の天井裏やピットなどの狭所空間では、ドローン近傍の上下に存在する壁面とプロペラ気流の干渉によって安定した飛行が難しいことから、需要に反してドローンの利用が活発ではありませんでした。限定的ながら狭所空間向けに手のひらサイズの「マイクロドローン」が実用化されていますが、飛行時の最大積載量が小さくバッテリー容量が不足しているため、作業員の代替として十分な調査・検査時間を確保できない問題を抱えています。
今回この問題を解決するために、ドローンが天井に吸着して強く作用する天井効果による気流反転を利用することで、機体下部に壁面が存在する場合に吹き降ろし気流で上昇力が増大する効果(地面効果)をキャンセルし、これにより、上下壁に囲まれ狭所空間での安定飛行と気流乱れの抑制、および飛行時間の長時間化を実現しました。
今後、本研究成果を屋内外の構造物近傍で飛行するドローンに活用してまいります。
(5)スマートフォンで「配筋自動検査システム」を実現
当社は、建設会社3社(北野建設㈱、佐藤工業㈱、㈱ピーエス三菱)と共同で、スマートフォンまたはタブレット端末などの汎用品とマーカーのみで配筋検査が可能な、土木現場用の「配筋自動検査システム」を開発しました。
本システムは、検査箇所に設置した十字マーカーをスマートフォンやタブレット端末で撮影するだけで配筋検査が可能です。そのため、作業足場上等の狭隘な作業スペースで配筋写真を撮影することが多く、検査の資機材を必要最小限にとどめたいといった土木現場の要望に応えるものとなっています。
また本システムでは配筋写真がサーバに送信されるため、撮影後のデータ処理と同時に結果帳票を遠隔立ち合いしている監督職員とも事前準備せずに共有することが可能になり、業務効率の改善と品質確保の両立に貢献します。
今後、共同開発企業各社の現場で試行導入し、計測精度や業務効率の改善効果を確認しつつ、人とシステムの二重チェックによってヒューマンエラーの防止に貢献してまいります。
(6)コンクリートの締固めを補助する「締固め管理センサ」を開発
当社と㈱小川優機製作所は、コンクリート打設工事における締固め作業を補助する締固め管理センサを共同開発し、深礎杭コンクリート工事で初適用しました。
コンクリート打設工事では、バイブレータを挿入し、振動させることによりコンクリートの強度や耐久性を損ねる空洞を除去する締固めを行いますが、締固めの時間や加振位置などについて、個人差のある打設工の感覚や経験値に依るといった課題がありました。
本技術は、専用の距離計によってコンクリート表面から「締固め管理センサ」までの距離を測定し、目標とする挿入深さに到達した時点から締固めに必要な時間を正確にカウントすることで、コンクリートの締固めに必要な適正な深さと時間を"見える化"し、個人差のある感覚や経験値によらず、コンクリート打設工事の品質向上と生産性向上に貢献できます。
今後も独自技術である「締固め管理センサ」をコンクリート工事のDXにつなげ、さらなる品質確保および合理化・省力化に活用してまいります。
(7)雨庭・バイオスウェルによる雨水流出抑制量の設計手法の確立
当社は、国土交通省が推進する「グリーンインフラ創出促進事業」に2023年3月に採択された、「大型商業施設における雨庭・バイオスウェルの雨水流出抑制効果のモニタリング」技術について、雨庭・バイオスウェルによる雨水流出抑制技術の効果を検証しました。
雨庭・バイオスウェルは敷地内に降った雨を集め一時的に貯留し、地中にゆっくりと浸透させる機能を持つ施設の1つです。
本検証の結果、設計段階において雨水浸透量制御の精度が向上し、高品質なグリーンインフラ施設を提案することが可能となりました。
近年、地球温暖化の緩和、防災・減災、生物多様性の保全、SDGsに沿った環境と経済の好循環等に資するまちづくりにおいてもグリーンインフラの重要性が増しており、当社は2024年2月27日に生物多様性指針を策定・公開しています。また、グリーンインフラは当社が掲げる3つの提供価値「脱炭素」「廃棄物ゼロ」「防災・減災」のいずれにも寄与する技術であり、本技術を用いることで気候変動やそれらを含むSDGsなどの社会課題解決に取り組んでまいります。
(8)BIMプラットフォームの開発
当社は、長期経営計画の中で競争優位の源泉としてデジタル技術(DX戦略)を推進することを戦略の1つに掲げております。その取り組みの1つとしてBIMをデジタルデータベースと捉え積算システムに連携させることによる「BIM積算連携」、もう1つにCO2算出システムに連携させることによる「BIM-CO2連携」を推進してまいりました。
2022年にリリースした「建築BIM積算連携」に続き、「設備BIM積算連携」開発にも着手し、試行・改善を行っております。これにより積算業務の省力化はもちろん、設計変更時のコスト算出が容易になり、精度の高い建設コストの見積を圧倒的なスピードでお客様へご提案することができるようになります。2024年度内には試行~改善が終了し、2025年度からは実務での利用が可能となります。
東急建設が掲げる3つの提供価値に向けた取り組みの1つとして、設計BIMデータを活用したCO2排出量算定も行っています。設計BIMデータが持つ資材数量をBIMデジタルデータベースから算出し、2022年にリリースした『積み上げ式CO2排出量算定シート』に連携させることでCO2排出量の算定が可能となります。
今後も東急建設は設計BIMデータの利活用を限定された範囲に留めず、様々なデータ活用へ展開させていきます。
(9)TQ-ComeWall-東急建設式合成地下RC壁工法-を開発
当社は、山留め壁のH形鋼を鉄筋コンクリート造の地下外壁とシヤコネクタ(頭付きスタッド・鉄筋スタッド)で一体化して土圧・水圧といった側圧に抵抗する合成壁工法「TQ-ComeWall-東急建設式合成地下RC壁工法-」※4(以下、本工法)を開発し、2023年11月に(一財)日本建築総合試験所の建築技術性能証明(GBRC性能証明 第23-20号)を取得しました。
本工法は、従来は仮設構造物として使用されてきた山留め壁のH形鋼を本体構造物として有効活用することで、RC壁の壁厚や鉄筋量の削減による現場での省力化と生産性向上、建設時のCO2排出量の削減・コストの低減・さらに地下空間の有効面積の拡大などを意図して開発された工法です。合成壁の施工状況を考慮した頭付きスタッドの実験を独自に行い、そのデータをもとに設計時に使用する各種構造性能を評価し、より合理的・経済的な設計を可能としています。
本工法は、建物規模に関わらず地下外壁がRC造で、山留め壁がソイルセメント壁または親杭横矢板壁であれば採用することができます。都市部の掘削深度の深い建物の地下外壁や、ドライエリアや免震ピットの擁壁など、地下外壁の壁厚や鉄筋量が側圧によって決定する場合に採用すると効果的です。
今後、当社では省力化と生産性向上・CO2排出量の削減・コストの低減を達成するために、本工法を積極的に採用していきます。
※4 「TQ-ComeWall-」は東急建設㈱の登録商標です。(登録商標第6789667号)
(10)SB-Joint(鉄骨柱梁接合部省力化工法)の建築技術性能証明を取得
当社は、鉄骨造建築物の柱梁接合部の省力化技術「SB-Joint※5」を開発し、(一財)日本建築総合試験所の建築技術性能証明(GBRC性能証明 第23-07号)を取得しました(特許出願中)。
本技術は、鉄骨造建築物の柱梁接合部において通しダイアフラムとブラケットのフランジを1枚の鋼板で構成することで、在来工法で必要であった両者の完全溶込み溶接の撤廃を実現しました。SB-Jointでは、在来工法と比較して鉄骨加工・検査工程の低減によって製作工程の省力化が図れるとともに、ショートブラケット化によって製作工場から現場への輸送効率の向上も期待できます。また、柱と通しダイアフラムの完全溶込み溶接はロボットによる自動化が普及していることから、「SB-Joint」を採用することでさらなる省力化が期待できます。
今後当社は、「SB-Joint」を設計・施工案件を主とした物流施設・大型物販施設・生産施設などの鉄骨造建築物に適用を図り、建築工事における更なる生産性向上に取り組んでまいります。
※5「SB-Joint」は、東急建設㈱の登録商標です。(登録商標第6682912号)
なお、子会社においては、研究開発活動は特段行われておりません。
[不動産事業等]
研究開発活動は、特段行われておりません。