第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

以下の記述のうち、将来に関する事項は、当連結会計年度末(2024年3月31日)現在における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用関連会社)の判断に基づくものであります。実際の業績は、今後様々な要因によって大きく異なる結果となる可能性があります。

 

(1) 経営方針

当社グループは、“社会からの信頼”、“お客様からの信頼”、“人と人の信頼”を確立することを目指す「信頼の経営」を経営理念としております。

この経営理念のもと、当社グループは、特殊鋼製品の製造・販売を通じた「高信頼性鋼の山陽」のブランド力の更なる強化とともに、地球環境対策の確実な実行や企業倫理の徹底など、社会を構成する一員として求められる責任を果たすことにより経済性と社会性の両立を図ります。これらの取組みを通じて企業価値を高め、株主の皆様、需要家、従業員、社会など、全てのステークホルダーからの一層の信頼を得られる企業を目指してまいります。

 

(2) 経営環境及び対処すべき課題

特殊鋼は、鋼にクロムやニッケルなどの元素を添加することで、硬度、強度、粘り強さ、耐磨耗性、耐熱性、耐食性等、用途に応じた特殊な性能を持たせた鋼であり、自動車、鉄道、建設機械、エレクトロニクス製品や情報通信機器など、様々な工業製品の重要部品・基幹部品として使用されるため、高い品質と信頼性が求められる素材であります。

特殊鋼に対するニーズは、最終製品の機能向上や環境負荷の低減などを背景に多様化・高度化の一途をたどっております。当社グループは、長年にわたって培ってきた「高清浄度鋼製造技術」をベースに、それらのニーズに的確に応える高品質の特殊鋼製品を提供してまいりました。

当社グループは、電気炉による製鋼から最終製品までの一貫生産を行う事業拠点を日本、欧州、インドに有しております。当社の直接輸出比率は約2割ですが、当社製品の間接輸出等や海外事業拠点における製造・販売分を含めますと、当社グループ製品の多くは海外で使用されております。

当社グループの主力製品は、ベアリングの素材となる軸受用鋼であります。軸受用鋼は機械の回転運動を支えるため、特に厳しい品質が求められます。ベアリングの寿命を左右するのは鋼の清浄度の高さとされており、ここに当社が強みとする「高清浄度鋼製造技術」が生かされております。

当社グループの主要な最終需要先は、自動車、産業機械、建設機械業界等であり、当社グループの製品には、自動車メーカー等に直接販売されるものとベアリングメーカーや部品メーカー等へ販売され、各サプライチェーンにおいて各種の部品に加工された後、最終的に自動車メーカー等へ納入されるものがあります。

近年、競合他社の生産能力の増強や品質・技術力の向上等により、特殊鋼業界における国際競争は激しさを増しております。今後の特殊鋼需要に関しましては、2024年度後半からの回復が期待されるものの、通期の売上数量は当連結会計年度並みの水準にとどまると予想されます。また、原燃料価格は当連結会計年度比では低下するものの依然として高位で推移し、物流費等へのインフレの影響も見込まれます。

このような中、当社グループといたしましては、外注・物流面を含む労務費の上昇も踏まえた販売価格の改定を進めるとともに、コストダウンにも取り組むことによりマージンを維持・拡大してまいります。また、引き続き経営理念「信頼の経営」の実践を通じて、大きく変化する経営環境下においても、人・技術・利益の持続的成長を図るとともに、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

なお、当社グループは、グローバルな特殊鋼マーケットでの企業価値の更なる向上を目指し、2021年度~2025年度を実行期間とする、2025年中期経営計画を策定し実行してまいりましたが、当初の2025年中期経営計画策定後、資源価格のインフレ(鉄鋼需給とのデカップリング)、人的資源の制約拡大、EV化・カーボンニュートラルの加速化など、大きな環境変化が起こっていることなどを踏まえ、2023年7月に2025年中期経営計画の見直しを行いました。

 

その内容は以下のとおりであります。

 

①2025年中期経営計画の基本方針

(ⅰ)グローバルな特殊鋼市場での企業価値・プレゼンスの更なる向上

・人的資本の確保や設備投資等により企業基盤を強化する。

・需要動向の不透明さや原燃料等のコストプッシュが持続することが想定される中、マージン・販売構成改善を継続的に実施する。

・グローバルに、事業基盤を強化するとともに、企業価値・プレゼンスの更なる向上に資する機会を探索する。

・資本コストや株価を意識した経営を実施し、PBR1倍を目指す。

(ⅱ)国内・海外事業の収益力強化

・単独鋼材事業は、市場および顧客が異なる軸受・機械構造用鋼分野(軸受営業部、自動車・産機営業部、海外営業部)と、高合金鋼分野(特品営業部)各々の営業基盤強化により、適正マージンを確保する。

・OVAKOは、カーボンニュートラルにおける優位性の更なる活用や固定費の持続的なコントロール等により、安定的な収益構造の維持・強化を目指す。

・Sanyo Special Steel Manufacturing India Pvt. Ltd.(以下、「SSMI」)は、コスト競争力や営業力の強化を通じ、インド市場でのプレゼンスを更に高める。

・素形材事業は、グローバルなサプライチェーン一貫での競争力を活かし、収益基盤を一層強化する。

・粉末事業は、今後需要増が見込まれる高収益アイテム(3Dプリンター、半導体、DⅩ・カーボンニュートラル対応)の販売拡大、新規アイテムの発掘などを通じ、更なる利益成長を目指す。

(ⅲ)ESGの取組み強化

・ガバナンス体制やESGの取組みを強化し、適切な開示を積極的に行う。

・ダイバーシティや健康経営に加え、グローバルも含めた人材の確保・育成および社員のエンゲージメント向上に資する取組みに注力する。

・従来の数値指標に加え、5つのESG指標(CDP気候変動スコア、健康経営度評価、安全指標、女性管理職比率、社外取締役による取締役会実効性評価)を役員報酬へ反映する。

(ⅳ)2050年カーボンニュートラルの実現

・グループ全体で、「エコプロセス(省エネ・高効率)」「グリーンエネルギー活用」「エコプロダクト(長寿命軸受鋼:自動車・風力発電・鉄道、3D粉末)」「エコソリューション(OVAKO・SSMI:省エネ技術・生産性向上の展開)」を推進する。

・エネルギーインフラに恵まれ、顧客からの認知度も高いOVAKOは、グリーン水素の製造・活用開始を含め、カーボンニュートラル分野でのリーダーシップを加速させる。

・グローバルな成長が見込まれる「EV(駆動系新機構等)」「風力発電(大型向け高品質材等)」「鉄道(グローバル高速鉄道軸受等)」「水素社会(水素関連設備等)」等の分野での更なる高信頼性ニーズに応える新商品(ECOMAXシリーズ、TOUGHFIT等)を拡大し、技術を深化させる。

・代表取締役社長を委員長とした「カーボンニュートラル推進委員会」を中心に多岐にわたる重点課題に対して、グループ横断的な取組みを強化する。

(ⅴ)DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進

・代表取締役社長をリーダーとするDX推進プロジェクトチームを設置し、「業務改革」と「工場改革」の取組みの2本柱として業務・操業効率化とプロセス改革を図る。

・業務・操業の棚卸しを実施し、社員のお困り事を解決するためにDXを活用する。

・統合データベースを構築し、業務システム間で必要なデータの共有化を図る。

・最新のデジタル技術を活用し、情報の見える化・リアルタイム化、業務の自動化、省力等を図る。

・業務変革に繋がるDXを実施する事で、事業構造を高度化し、企業価値を向上させていく。

 

 

②財務目標・経営資源投入(連結)

(ⅰ)2025年度財務目標

・売上高          :4,200億円程度(当初計画:2,800億円程度)

・経常利益         :220億円程度(当初計画:140億円程度)

・ROE          :7%程度(当初計画:5%程度)

・ROE(のれん償却除き) :8%程度(当初計画:6%程度)

(ⅱ)経営資源投入

・設備投資(2023~2025年度):160億円程度/年(当初計画:120億円程度/年)

カーボンニュートラル(省エネ)・DⅩ中心に積極的な設備投資を実施する。

・従業員数(2025年度末)  :6,500人程度(当初計画:6,400人程度)

グローバルも含めた人材を確保する。

③PBR1倍に向けた取組み

(ⅰ)改善計画

・中期経営計画の諸施策の実施により、収益・ROEを改善。

・政策保有株式の相互売却を通じた流通株式比率の向上により、資本コストを低減。

・投資家との継続的な対話を通じ、カーボンニュートラル・ESG取組みへの適正な評価を獲得。(株価への反映)

・配当方針を改定。(配当性向、1株当たり配当額水準および成長投資等の所要資金などを総合的に勘案。通常の連結配当性向35%程度、のれん償却除き30%程度)

 

 

(参考)株主・投資家との対話の実施状況等

(ⅰ)対話方針等

・持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図る観点から、株主・投資家との建設的な対話を促進するための諸施策に取り組む。

・株主・投資家との対話全般については、役員および財務部・総務部をはじめとする社内各部門が連携して施策の充実に努める。

(ⅱ)2023年度の対話実績

・対話実績

四半期または期末決算発表当日の説明会(※1)   4回

個別面談(※2)                103回

機関投資家向けESG説明会(※3)        1回

(※1)第2四半期および期末決算時は代表取締役社長が参加。説明用資料は日本語、英語版を同時開示。説明会議事録を当社ウェブサイトに掲載。

(※2)個別面談による対話を行った株主・投資家は延べ184名、うち海外の株主・投資家が延べ50名。

(※3)機関投資家向けにESGについての取組みを説明。代表取締役社長、取締役常務執行役員、常務執行役員が説明者として登壇。説明会の動画、資料および議事録は当社ウェブサイトに掲載。

・対話の主なテーマ

当社および連結子会社の業績

主要需要業界の動向

原燃料価格・固定費コスト上昇への対応

カーボンニュートラルへの取組み など

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方および取組みは、次のとおりであります。なお、以下の記述のうち、将来に関する事項は、当連結会計年度末(2024年3月31日)現在における当社グループの判断に基づくものであります。

 

当社グループは、再生資源である鉄スクラップを原料とした特殊鋼製造で資源循環型社会の一翼を担うとともに、信頼性の高い特殊鋼製品を社会の様々な分野に提供することで産業・経済の発展に貢献しております。また、特殊鋼マーケットのグローバル化に先駆けて対応し、現在では、日本、欧州、インドに特殊鋼の一貫製造拠点を構え、グローバルな特殊鋼需要を捕捉できる体制を整えております。

カーボンニュートラル(以下、CN)をはじめとする大きな社会・産業の変化においても、信頼性の高い当社の特殊鋼製品は社会の発展を支える重要な素材として、世界中でそのニーズはさらに高まっております。こうしたなか、当社グループは、事業基盤の強化と時代の先を見据えた技術の革新に挑み、需要家のニーズに応えることで「高信頼性鋼の山陽」ブランドの信頼をさらに積み上げていくとともに、“社会からの信頼”、“お客様からの信頼”、“人と人との信頼”の確立を目指す経営理念「信頼の経営」の実践を通じて、経済的価値と社会的価値の創出を図り、持続可能な社会の実現に貢献し続けてまいります。

サステナビリティ関連のリスクおよび機会の識別および評価については、当社のCN推進委員会および安全衛生管理委員会等の各委員会などにおいて検討され、各分野のリスク管理を担当する機能部署が中心となって対応を行っております。また、独立社外取締役を含む全取締役および機能部署担当役員で構成されたリスクマネジメント委員会において、サステナビリティリスクも含むリスク管理について、総括的に議論・意見交換を行っております。リスクマネジメント委員会で議論、意見交換された内容については取締役会にて報告されております。

 

(1) 気候変動

当社グループは、気候変動が人類の存続に影響を与える重要な課題であるとの認識のもと、2021年4月に「2050年CNの実現を目指す」方針を取締役会で決議し、同年7月に、その実現に向けたロードマップを策定・公表いたしました。また、同年10月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(以下、TCFD)」提言への賛同を表明し、それ以降、株主・投資家をはじめとする幅広いステークホルダーとの良好なコミュニケーションがとれるように、TCFDのフレームワークに基づき、情報開示(ガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標)を進めております。

 

①ガバナンス

2050年CNの実現に向けた基本戦略やその推進に係る短期・長期テーマの審議等を行うため、代表取締役社長を委員長とする「CN推進委員会」を年4回開催しております。そこでは、これまで2050年CNの実現に向けたロードマップやTCFD提言に基づく気候変動情報開示の対応等を審議し、議論の主要な内容について取締役会で審議・報告いたしております。

 

気候変動防止への取組み

CO2排出削減への取組みとして、製造工程における省エネとグリーンエネルギーの活用およびエコプロダクト・エコソリューションによる貢献で、自社の製造工程だけでなく、社会のあらゆる段階でのCO2排出削減を目指しております。

・エコプロセス(製造工程でのCO2排出削減)の推進

当社は、気候変動防止への取組みとして、温室効果ガス(GHG)の一つであるCO2排出量削減に取り組んでおります。2022年度のエネルギー起源CO2排出量は2013年度比30万t減の54万tとなりました。加熱炉のリジェネバーナー化や大型モーターのインバーター化、工場照明のLED化等のエコプロセスを推進しており、今後も更なるエコプロセスの推進、グリーンエネルギーの活用等、2050年CNの実現に向けた取組みを継続してまいります。

 

・エコプロダクトによるCO2排出削減貢献

当社は、自社の製造工程におけるCO2排出削減だけでなく、需要家での部品製造や最終製品としての使用段階におけるCO2排出削減に貢献するエコプロダクトの開発に注力しております。CN社会の実現に向けて、風力発電などの再生可能エネルギーの導入拡大や、自動車のEV化進展等に伴う部品の小型・軽量化など、環境負荷低減につながる製品・技術へのニーズがさらに高まってくることが想定されます。当社は、強みである高清浄度鋼の製造技術を軸に、部品の長寿命化や部品製造工程の省略・簡略化等の材料特性をさらに強化したエコプロダクトの実装と一層の普及を図ることで、社会のあらゆる段階でのCO2排出削減とCN社会の実現に貢献してまいります。

・エコソリューションによるCO2排出削減貢献

当社は、OVAKOやSSMIなど海外で特殊鋼製品を製造するグループ会社に、電気炉での迅速溶解技術や、圧延工程における歩留り・生産性向上等、省エネやエネルギー原単位低減に資する当社技術を展開し、日本国内だけでなく、グローバルな製造拠点でのCO2排出削減を推進しております。

 

③想定されるリスクおよび当社の対応・戦略

当社は、気候変動に関するリスクといたしまして、EV化進展に伴う自動車1台当たりの特殊鋼使用原単位の減少を想定しておりますが、その一方で、EV化進展による自動車部品等の小型化・軽量化ニーズに貢献する特性を持つ当社特殊鋼製品の需要増につながる機会とも考えております。当社といたしましては、強みである高清浄度鋼を軸に、社会・産業構造の変化に伴う新たな顧客要求や環境問題への的確な対応を行うとともに、需要家との連携強化によるサプライチェーン競争力の強化を図ってまいります。電力・蓄電池需要の増加等に伴う鉱物資源(合金鉄)の獲得競争激化というリスクに対しましては、合金鉄調達ソースの確保・拡大、調達サプライチェーン管理の更なる充実を図るとともに省希少資源高機能商品の開発・提供を推進してまいります。炭素税等のカーボンプライシングの導入に伴う電力や燃料等に対するコスト負担増懸念に対しましては、上述、エコプロセス(グリーンエネルギーの活用含む)、エコソリューションにより当社グループのCO2排出量削減を推進するほか、安価なカーボンフリー電力等の調達推進および鋼材の低(脱)炭素化価値やそのために必要なコストについて需要家の理解を得て販売価格に反映し適正マージンを確保するなどの取組みを進めてまいります。鉄鋼生産が電炉法へシフトすることによるグローバルでの上級スクラップ獲得競争激化懸念に対しましては、鉄スクラップ調達ソースの確保・拡大および原料配合最適化等の施策を実施してまいります。

また、気象災害の多発、激甚化による生産設備への影響懸念等に対しましては、損害保険の加入やグループCMS活用による復旧資金調達策を講じるとともに防災管理の充実や自然災害対策を含むBCM(事業継続マネジメント)の継続的な改善を進めてまいります。

 

④指標及び目標

当社は、気候変動に関する取組みを管理するための指標として、CO2排出量(Scope1、2、3)を指標と定め、中長期的なCO2排出量削減目標を設定し、目標達成に向けて取り組んでおります。

項目

基準年

基準年実績

目標年

目標値

CO2排出量

(Scope1、2)

2013年度

84万t

2030年度

2013年度比50%以上削減(42万t未満)

2050年度

CN(実質ゼロ)

CO2排出量

(Scope3)

2021年度

140万t

2030年度

2021年度比25%削減(105万t)

 

また、上記の外数として、エコプロダクトおよびエコソリューションの取組みによって、2030年度において2013年度のCO2排出量の約4割の削減貢献を目指してまいります。

 

(2) 人的資本(人材の多様性の確保を含む)

①戦略(人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針および社内環境整備に関する方針)

当社グループにおける、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針および社内環境整備に関する方針は、以下のとおりであります。

 

(イ)人材育成方針

当社グループでは、「人を育て、人を活かす」を基本方針に、きめ細やかな教育・研修制度を整備しております。解決すべき課題を自ら設定し解決する能力といった主体性とチャレンジ精神を持つ「自律考動型」の人材の育成に向け、日常業務を通じた教育に加え勤続年数・役職に応じた階層別研修や、女性活躍推進に向けた教育ならびに社内の意識改革を実施しております。また、社員の視野拡大や結束力強化を図るべく、顧客工場の見学や各種外部研修への派遣等を通じて外部と交流する機会を提供するとともに、他職場との意見交換会や社員同士による職場見学会、中堅社員と経営者との交流会などを通じて相互コミュニケーションの活性化に取り組んでおります。そのほか、資格・免許を取得した場合の報奨金制度や多岐にわたる通信教育など、自己啓発のための支援制度や各種研修も実施しております。加えて、事業環境のグローバル化に伴い、国際舞台で活躍できる人材の育成を加速しており、総合職新入社員を対象とした海外語学研修や、選抜型の短期語学留学等によりグローバル志向の醸成を図るとともに、海外グループ会社との技術連携や人材の相互派遣等を通じた国際交流やイノベーションの促進、育成モデルに基づいた海外グループ会社への赴任や海外留学を実施しております。

人事考課制度においては、社員一人ひとりが能力を積み上げ、入社から定年を迎えるまで能力をフルに発揮し、「誇り」と「やりがい」をもって活躍することを下支えしながら、課題に果敢にチャレンジし成果を出した人材に報いるものとし、人材面の総合力を高めております。結果としての成果はもちろんのこと、それ以上に「高い目標を掲げ、その達成に向けて果敢に挑戦したか」あるいは「目標達成のためのプロセスを確実に実行したか」に重点を置いて評価し、社員の主体性とチャレンジ精神を育んでおります。加えて、「部下・後輩の育成・マネジメント」や「働きやすい職場づくり」を評価項目とし、人材育成の重要性を社内に示すとともに社員のエンゲージメント向上にも努めております。さらに、スキルアップのテーマや課題を明確にするための上司との対話や、人事担当者による長期的な視点でのキャリア面談等を通じて、社員一人ひとりの自己実現を支援しております。

 

(ロ)社内環境整備方針

中長期的な企業価値向上のためには、イノベーションを生み出すことが重要であり、その原動力となるのは、多様な個人による共創であります。当社グループでは専門性や経験、感性、価値観といった知と経験のダイバーシティに積極的に取り組むことが必要となると考えております。また、社員がワーク・ライフ・バランスを実現し、一人ひとりが働きがいを持って能力を十分に発揮できる仕組みづくりや、安心して働き続けることができる働きやすい職場環境、時間や場所にとらわれない働き方ができる環境の整備に努めております。具体的には以下の環境を整備しております。

 

(女性活躍の推進)

当社は、女性社員比率を25%に引き上げることを目標に掲げ、女性社員の計画的な採用や職域の拡大により活躍できる職場を増やすとともに、育児休業、短時間勤務など、ライフイベント期の負担を軽減し、女性が継続して働くことができる支援制度を導入しております。また、社内外での研修等を通じて女性社員のみならず全社員への意識づけや、活躍しやすい組織風土作りを推進しております。

 

(シニア世代の活躍推進)

当社は、2021年4月から定年年齢を満60歳から満65歳に引き上げました。あわせて、65歳到達者の雇用延長制度として「シニアパートナー制度」を設けております。65歳到達時に業務遂行や技術・技能伝承の観点から必要とされた社員を「シニアパートナー」として雇用延長しております。

当社グループでは、技術・技能伝承や後進育成を推進する環境を一層充実し、モノづくり力の維持向上による競争力強化を図っております。

 

 

(障害者の安定雇用)

誰もがいきいきと働ける社会の実現に向け、当社および国内グループ会社では障害者雇用を推進しております。ハローワークや特別支援学校などと連携した採用活動を進めるとともに、障害者の就労を支援するため、障害者職業生活相談員が中心となってハード・ソフト両面の環境改善にも継続的に取り組んでおります。

また、入社後に障害者認定を受けた社員についても、業務内容・時間の配慮を行い、働き続けるための支援を行っております。

 

(ワーク・ライフ・バランスの推進)

フレックスタイム制や短時間勤務制度、在宅勤務制度の導入による働き方の多様化への柔軟な対応をはじめ、毎週水曜日の「ノー残業デー」、残業時間削減に向けた生産性向上のほか、有給休暇取得率向上にも取り組んでおります。また、連続有給休暇やリフレッシュ休暇の取得を促進し、産休・育休・介護休業など法定水準を上回る制度を設けるとともに、これらの休暇が取得しやすい職場環境・風土を作ることで、社員一人ひとりのワーク・ライフ・バランスの実現を支援しております。

 

(健康経営の推進)

社員の安全と健康が事業活動の大前提であり、経営上の重要課題であるとの認識のもと、2021年8月に「山陽特殊製鋼 健康経営宣言」を策定し、代表取締役社長を最高健康責任者とする健康経営体制を整備いたしました。運動習慣の定着を支援するウォーキングイベントなど社員の生活習慣改善やメンタルヘルス不調の未然防止に向けた取組みを推進し、社員一人ひとりが毎日充実して働くことのできる職場環境づくりに取り組んでおります。

 

②指標及び目標

当社グループでは、上記「①戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針および社内環境整備に関する方針に係る指標については、当社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取組みが行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われてはいないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の指標に関する目標および実績は、提出会社のものを記載しております。

指標

目標

実績
(2023年4月1日から
 2024年3月31日まで)

管理職に占める女性社員の割合

2026年3月までに1ポイント増加
(2023年3月比)

6.0(0.7ポイント増加)
(2023年3月比)

配偶者が出産した男性社員の
育児休業取得率

2026年3月まで50以上

88

女性社員の育児休業取得率

(注)

2026年3月まで80以上

128

年次有給休暇取得率

2026年3月まで80以上

83.3

 

(注) 女性社員の育児休業取得率は、「前事業年度中に出産し、産後休業取得後、当事業年度中に育児休業の取得を開始した労働者」を含むため、100%を超えております。

 

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」)の状況に影響を及ぼす可能性のあるリスクは、次のとおりであります。ただし、これらは当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、記載された事項以外の予見しがたいリスクも存在します。また、以下の記述のうち、将来に関する事項は、当連結会計年度末(2024年3月31日)現在における当社グループの判断に基づくものであります。

 

(1) 景気や主要需要業界の動向

当社グループが製造する特殊鋼製品の多くは、直接的あるいは間接的に自動車・産業機械・建設機械業界に納入されております。世界経済の動向等により、これら主要需要業界の生産水準が低下した場合、当社グループの受注量が減少することなどにより、経営成績等に影響が生じる可能性があります。

 

(2) 事業拠点およびその周辺地域における災害・事故・紛争・テロ・感染症などの発生

当社グループの事業拠点ならびにその周辺地域において、地震・火災などの大規模な災害や設備事故、紛争、テロ行為、感染症の流行などに伴う社会・経済的混乱などにより、当該拠点の事業活動を制限もしくは停止せざるを得ない事態が起きた場合、その復旧費用も含め、当社グループの経営成績等に影響が生じる可能性があります。

 

(3) 原燃料・諸資材などの仕入価格上昇

当社グループでは、鉄スクラップ、ニッケル・クロム・モリブデン等の合金鉄、電力・LNGのエネルギー、電極・レンガ等の諸資材を購入しております。鉄スクラップ、合金鉄および電力等につきましては、多くの需要家との間で、仕入価格の変動にあわせて製品の販売価格を算出するサーチャージ制を導入しておりますが、それ以外の原燃料・諸資材につきましては、それらの仕入価格が上昇した場合、当社グループの経営成績等に影響が生じる可能性があります。

 

(4) 特定供給業者等への依存

当社グループは、電力、LNGなどを特定の供給業者から調達しておりますが、災害・事故または感染症の流行などにより、当該供給業者からの供給が部分的あるいは全面的に停止した場合、当社グループの生産活動に影響が生じる可能性があります。

また、合金鉄につきましては、調達先が一部の地域に偏在しており、災害・事故・テロまたは感染症の流行などに伴う社会・経済的混乱などにより、当該調達先からの供給が部分的あるいは全面的に停止した場合、当社グループの生産活動に影響が生じる可能性があります。

 

(5) 外注加工受託業者の生産活動の停止

当社グループは、一部の生産工程を外注加工受託業者に委託しておりますが、災害・事故または感染症の流行などにより、当該外注加工受託業者の生産活動が部分的あるいは全面的に停止した場合、当社グループの生産活動に影響が生じる可能性があります。

 

(6) 為替相場の変動

当社グループは、製品の輸出や原料の輸入等において外貨建取引を行っており、また、外貨建の資産・負債を保有していることから、為替相場の変動により、経営成績等に影響が生じる可能性があります。

また、自動車業界など当社グループの主要需要業界が、為替相場の変動により、国際競争力や事業展開力に影響を受けた場合には、当社グループの経営成績等に影響が生じる可能性があります。

 

 

(7) 保有株式等の時価の下落

当社グループが保有する株式の時価が下落した場合、当該株式の減損処理が必要となる可能性があります。

また、従業員の退職給付に関して拠出している株式の時価が下落した場合、退職給付費用が増加する可能性があります。

 

(8) 有形固定資産、無形固定資産の減損損失のリスク

当連結会計年度末における当社グループの連結貸借対照表には、有形固定資産(123,487百万円)、無形固定資産(36,984百万円)が計上されております。当該固定資産について、減損処理が必要となった場合、当社グループの経営成績等に影響が生じる可能性があります。

 

(9) 気候変動に関するリスク

当社は、2021年10月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明し、気候変動に関するリスクと機会を分析・開示するとともに、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、気候変動への対応を図っておりますが、気温の上昇や異常気象、自然災害等による原材料の調達不全やコスト増、生産停止など事業活動に影響が生じる可能性があります。また、脱炭素への対応が不足または遅延することにより、生産コストの上昇や新たな税負担、事業活動の制限等の影響が生じる可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループの経営成績等の状況の概要ならびに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、以下の記述のうち、将来に関する事項は、当連結会計年度末(2024年3月31日)現在における当社グループの判断に基づくものであります。

 

(1) 重要な会計方針および見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況」に記載しております。連結財務諸表の作成に際し、固定資産の評価、繰延税金資産の回収可能性などにつきまして、過去の実績や他の合理的な方法による、会計上の見積りを行っております。当社グループは、これらの見積りの妥当性に対し継続して評価を行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果と異なる場合があります。

 

(2) 経営成績

当連結会計年度におけるわが国経済は、物価上昇が続く中、新型コロナウイルス感染症の5類移行や雇用・所得環境の改善を受けて、緩やかな回復が続きましたが、後半にかけて生産活動等に弱さがみられました。各種政策の効果もあり、今後も緩やかな回復が続くことが期待されるものの、世界的な金融引締めの継続等による海外景気の下振れの影響が懸念されます。

半導体不足の緩和により自動車生産は緩やかに回復しているもののメーカー間の跛行性や生産・出荷停止影響などがあることに加えて、中国経済の回復の遅れや設備投資マインドの低下等から建設・産業機械向けにおいて需要が減少するとともに在庫調整が拡大したことなどにより、特殊鋼熱間圧延鋼材の生産量は、前連結会計年度を下回りました。

当社グループの売上高は、エネルギーサーチャージ等の適用に伴う販売価格の上昇はありましたが、需要家の在庫調整の拡大を受けた売上数量の減少などにより、前連結会計年度比400億33百万円減の3,538億10百万円となりました。利益面では、エネルギーサーチャージ等の適用に伴う販売価格の上昇はありましたが、売上数量の減少や販売構成の悪化、原燃料価格の上昇や諸資材等へのインフレ影響に加えて、スウェーデンの連結子会社OVAKOの売上数量の減少や前期に発生した一過性増益影響の縮小などにより、経常利益は、前連結会計年度比167億36百万円減の121億19百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度比116億87百万円減の90億56百万円となりました。

 

セグメントごとの経営成績の状況に関する認識および分析・検討内容は、次のとおりであります。各セグメントの売上高につきましては、セグメント間の内部売上高又は振替高が含まれております。

 

(鋼材事業)

当連結会計年度の売上高は、エネルギーサーチャージ等の適用に伴う販売価格の上昇はありましたが、需要家の在庫調整の拡大を受けた売上数量の減少などにより、前連結会計年度比384億8百万円減の3,386億46百万円となりました。営業利益は、エネルギーサーチャージ等の適用に伴う販売価格の上昇はありましたが、売上数量の減少や販売構成の悪化、原燃料価格の上昇や諸資材等へのインフレ影響に加えて、OVAKOの売上数量の減少や一過性影響の縮小などにより、前連結会計年度比161億51百万円減の108億31百万円となりました。

 

(粉末事業)

当連結会計年度の売上高は、電子材分野向けの需要減の影響はありましたが、自動車生産の回復などにより、前連結会計年度比25百万円増の53億37百万円となりました。営業利益は、売上数量は増加しましたが、販売構成の悪化などにより、前連結会計年度比72百万円減の9億31百万円となりました。 

 

 

(素形材事業)

当連結会計年度の売上高は、売上数量の減少や販売構成の悪化などにより、前連結会計年度比14億71百万円減の183億88百万円となりました。営業損益は、売上数量の減少や販売構成の悪化、原燃料価格の上昇や諸資材等へのインフレ影響などにより、4億91百万円の赤字(前連結会計年度は3億66百万円の黒字)となりました。

 

(その他)

子会社を通じて情報処理サービスを行っており、当連結会計年度の売上高は前連結会計年度比73百万円増の15億6百万円、営業利益は前連結会計年度比7百万円増の37百万円となりました。

 

(3) 生産、受注および販売の実績

① 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

鋼材事業

325,240

△13.8

粉末事業

5,259

△0.9

素形材事業

18,251

△7.9

合計

348,751

△13.3

 

(注) 1 セグメント間の取引については、相殺消去しております。

2 金額は販売価格によっております。

3 「その他」については、その事業内容がサービスの提供であるため、記載しておりません。

 

② 受注実績

当社グループでは、国内外の需要家への最近の納入実績、各需要家の予測情報などに基づいた生産を行っており、該当事項はありません。

 

③ 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

鋼材事業

329,985

△10.5

粉末事業

5,337

0.5

素形材事業

18,388

△7.4

その他

98

△39.5

合計

353,810

△10.2

 

(注) セグメント間の取引については、相殺消去しております。

 

 

(4) 財政状態

当社グループの当連結会計年度末の総資産残高は、円安による海外連結子会社資産等の円換算額の増加や棚卸資産の減少などにより、前連結会計年度末比25億11百万円減の3,987億6百万円となりました。

負債残高は、コマーシャル・ペーパーの減少などにより、前連結会計年度末比150億84百万円減の1,701億9百万円となりました。

純資産残高は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上や円安等に伴うその他の包括利益累計額の増加などにより、前連結会計年度末比125億72百万円増の2,285億97百万円となりました。

この結果、当連結会計年度末におけるD/Eレシオ(純資産残高に対する有利子負債残高(現預金および関係会社預け金残高控除後)の割合)は0.23(前連結会計年度末は0.31)となりました。

 

(5) キャッシュ・フロー

当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、営業活動で406億44百万円の収入、投資活動で159億24百万円の支出、財務活動で274億46百万円の支出となりました。

これらにより、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、306億57百万円(前連結会計年度末比3億29百万円減)となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

税金等調整前当期純利益(130億24百万円)、減価償却費(137億44百万円)、のれん償却費(32億46百万円)などに対し、棚卸資産の減少(152億75百万円)、法人税等の支払(△75億83百万円)などにより、406億44百万円の収入(前連結会計年度比284億89百万円の収入増)となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

有形固定資産の取得による支出(△172億94百万円)、投資有価証券の売却による収入(19億21百万円)などにより、159億24百万円の支出(前連結会計年度比31億58百万円の支出増)となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

コマーシャル・ペーパーの減少(△309億99百万円)、短期借入金の増加(150億54百万円)、長期借入金の返済(△86億10百万円)、配当金の支払(△43億52百万円)などにより、274億46百万円の支出(前連結会計年度は85億25百万円の収入)となりました。

 

(6) 資本の財源および資金の流動性に係る情報

当社グループの資本政策は、企業価値の持続的な向上を目的として、「財務健全性の確保」「戦略的投資」「株主還元」の3つのバランスを取りながら行うことを基本方針としております。

運転資金などの短期資金は、主に自己資金、コマーシャル・ペーパー、金融機関等からの借入金を財源とし、設備投資や事業投資などの長期資金は、主に自己資金、社債、金融機関からの借入金を財源としております。また、金融市場の混乱等により必要な資金の確保が困難になる場合に備え、金融機関5社と総額136億32百万円の特定融資枠契約を締結しております。

戦略的投資につきましては、当連結会計年度において、原価低減、省エネや省力、生産設備の健全化のための老朽更新など177億3百万円の設備投資を実施し、また、研究開発費は総額22億28百万円を計上いたしました。2024年3月期以降の重要な設備の新設等の計画については、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」をご参照ください。

株主還元につきましては、経営における重要課題の一つと考えており、連結配当性向35%程度(のれん償却費を除く連結配当性向30%程度)を目安として、剰余金の配当を実施することとしております。当社の配当政策については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」をご参照ください。

 

5 【経営上の重要な契約等】

(1) 合弁事業等

契約会社名

相手方当事者

国名

契約内容

契約日

契約期限

山陽特殊製鋼㈱
(当社)

三井物産㈱

日本

中国における特殊鋼素形材部品の製造・販売を行う合弁事業

(事業主体 寧波山陽特殊鋼製品有限公司)

2001年8月24日

山陽特殊製鋼㈱
(当社)

三井物産㈱

(注)1,2

日本

インドにおける特殊鋼の製造・販売を行う合弁事業

(事業主体 Sanyo Special Steel Manufacturing India Pvt. Ltd.)

2011年11月11日

山陽特殊製鋼㈱
(当社)

伊藤忠丸紅鉄鋼㈱
㈱メタルワン

日本
日本

メキシコにおける特殊鋼素形材部品の製造・販売を行う合弁事業

(事業主体 Sanyo Special Steel Manufacturing de México, S.A. de C.V.)

2016年6月24日

2026年6月24日

山陽特殊製鋼㈱
(当社)

新日鐵住金㈱
(現 日本製鉄㈱)
㈱神戸製鋼所

日本

日本

国内向け軸受用小径シームレス鋼管に関して当社が所有する圧延設備に係る持分および新日鐵住金㈱および当社の商権の㈱神戸製鋼所への一部譲渡および操業生産受託

2018年12月12日

 

(注) 1 2022年4月20日、当社はインドの連結子会社Sanyo Special Steel Manufacturing India Pvt. Ltd.(以下、「SSMI」)の少数株主であるMahindra and Mahindra Limited(以下、「M&M」)から、株主間協定に基づくプットオプションを行使するとの通知を受けました。M&Mと交渉・協議を重ねた結果、2023年4月27日、当社は同社が保有するSSMIの全株式(3,475,264株)を追加取得いたしました。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項」の(企業結合等関係)をご参照ください。

 

 2 2023年3月9日、当社はインドの連結子会社SSMIの少数株主である三井物産㈱から、株主間協定に基づくプットオプションを行使するとの通知を受けました。三井物産㈱と交渉・協議を重ねた結果、2024年5月24日、当社は同社が保有するSSMIの全株式(3,046,821株)を追加取得いたしました。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項」の(重要な後発事象)をご参照ください。

 

(2) 特定融資枠契約

当社グループは資金の機動的な調達を行うため、金融機関5社と特定融資枠契約を締結しております。

特定融資枠契約の総額

13,632百万円

借入実行残高

差引額

13,632

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループでは、カーボンニュートラル(以下、CN)やグローバルな特殊鋼マーケットでの企業価値の更なる向上に向け、研究開発・品質競争力の強化による技術先進性の更なる拡大を推進しております。このため、商品開発、プロセス開発および基盤研究の機能を明確化するとともに、研究開発の企画機能を強化することで、市場構造の変化や将来的なニーズに応える新商品・技術開発を推進してまいります。また、2050年CNに向けたエコプロダクトの創出を念頭に、更なる市場の拡大が見込まれる「EV」「風力発電」「鉄道」等の分野での多様なニーズに応える技術開発の深化を追求しております。さらに、グループ会社間の連携による相乗効果の発現への取組みを加速させております。

当社グループの研究開発は、当社「研究・開発センター」を中心に推進しており、当連結会計年度の研究開発費の総額は2,228百万円であります。

セグメントごとの主要な研究課題、研究成果および研究開発費は次のとおりであります。

 

(鋼材事業)

当事業に係る研究開発費は1,780百万円であります。

当事業では、風力発電、自動車、鉄道、環境・エネルギーを中心に、成長が期待される分野に投入する軸受用鋼、構造用鋼、ステンレス鋼および工具鋼等、主力製品の製造プロセス、熱処理プロセスにDⅩを活用することによる品質・コスト競争力の強化、顧客プロセスでCNに貢献するエコプロダクトの開発を推進しております。当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。

当社はCN社会に貢献できる高炭素鋼「TOUGHFIT」(タフィット)を商品化し、自動車、建設機械、産業機械メーカー等のお客様に対してPR活動を進めております。「TOUGHFIT」は、合金成分と熱処理条件の最適化によって高炭素鋼の弱点とされていた“硬い一方で脆くなる”というトレードオフを克服し、高硬度と高靭性を併せ持つことに成功した革新的な高炭素鋼であります。高強度や長寿命が要求される動力伝達部品や耐摩耗部品の素材として「TOUGHFIT」を適用することで、硬化熱処理の省略や簡素化、部品の小型軽量化を通じたCO2排出の削減に寄与します。当社は今後、「TOUGHFIT」等の開発鋼の多様な分野への展開を図り、CNを目指す需要家の皆様からのニーズにお応えしてまいります。

 

(粉末事業)

当事業に係る研究開発費は412百万円であります。

当事業では、今後成長が期待できる分野として、情報記録・処理関連製品、3Dプリンター(以下、AM)用粉末等を中心に新規製品開発を推進しております。当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。

当社は、AMに適する合金粉末の製品群として「NOVASHAPE」の登録商標を取得し、PR活動を行っております。2023年9月には優れた造形性と高い熱伝導性を兼ね備えた金型用AM粉末「S-MEC」シリーズ3品番についてプレスリリースいたしました。S-MECシリーズは成分改良により、金型を3D造形する際の課題のひとつであった割れの発生を抑制。従来は困難であった大型金型への3D造形適用も可能にしております。さらにS-MECシリーズは高い熱伝導性により、金型使用時の冷却サイクル改善による生産性向上や金型の長寿命化にも寄与できる材料となっております。AMは従来の鋳造法による部品作製と比較し、ニアネット成形、複雑形状の作製、納期短縮が可能であることから様々な分野での利用が拡大しており、CNにも貢献できる技術として注目されております。当社は今後も、NOVASHAPEシリーズのブランド化とともに、AMに適した粉末の供給および開発を推進し、各種業界のニーズにお応えしてまいります。

 

(素形材事業)

当事業に係る研究開発費は35百万円であります。

当事業では、素形材における新規受注品に関する製造技術の開発およびコスト競争力の強化を目的とし、最適金型の迅速設計技術やリングローリングの解析技術の確立、省人化に向けた製造技術の開発等を行っております。また、これらを通じ導き出した最適な製造工法は、製品のニアネットシェイプ化につながり、投入エネルギーのミニマム化によるCO2削減効果も期待できるものとなります。当連結会計年度の主な成果は、鉄道用ベアリングの優位性維持へ向けたCAE解析技術を駆使した鍛造技術の改善、大型HUBベアリングの鍛造方案の改善等であります。当社は今後も、需要家の皆様からのニーズにお応えしてまいります。