文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
当社グループは、企業理念「アルプスアルパインは人と地球に喜ばれる新たな価値を創造します」、及び現在のESG、SDGsにも通ずる創業期制定の社訓をベースとした「価値の追究」「地球との調和」「社会への貢献」「個の尊重」「公正な経営」の5つの経営姿勢をグループ共通の価値観として、各社が連携して経営計画を推進し、業容の拡大と企業価値の最大化を図っていきます。
当社では、事業ビジョンに「Perfecting the Art of Electronics」を掲げ、「Right(正しい、最適、適切)、Unique(独自性、差異化)、Green(環境にやさしい)」の実現により、全ての人々、社会に対して当社が約束する独自の価値を追究していきます。
これらの実現に向けて、既存事業の良質化と新事業へのリソースシフト、マーケティング力の強化、当社製品の独自性や強みを融合させて更に付加価値を高める「T型」戦略と、コア技術の深耕によって新たな技術や製品を生み出す「しみだし」による製品開発の追求、DXを用いた業務・原価改革等コスト改革の推進、ものづくり品質を更に極めることによる顧客満足の向上等に取り組んでいきます。
当社は現在、2022年4月から2025年3月末までの3年にわたる第2次中期経営計画期間の最終年度になりますが、現状では第2次中期経営計画目標の達成が困難であるのみならず、第3次中期経営計画期間となる2027年度において営業利益率10%、ROE(自己資本利益率)10%の達成も困難であるとの見通しから、第2次中期経営計画を中止し、2025年3月期を抜本的な経営構造改革を行う期間として位置付けしました。この経営構造改革期間において、事業ポートフォリオ改革による注力事業の選定、ノンコア事業の整理を行うとともに、生産拠点の集約及びグローバルでの人員適正化を図り固定費を圧縮する等のコスト構造改革を同時に進めます。これらにより早期にV字回復する収益体質に変換することで、第3次中期経営計画の2027年度における経営目標のROE10%を達成し、更に同期間の早い段階でPBR1倍の実現を目指します。
加えて、サステナビリティーも重要な経営課題と捉え、脱炭素社会・循環型社会の実現、人権の尊重、ダイバーシティー&インクルージョン、持続可能なサプライチェーンマネジメントをサステナビリティー重要課題に設定しています。また、情報セキュリティーにおいても事業経営の多くの領域に影響を及ぼす重要なテーマとして位置付けており、各部門に配置した情報管理責任者と連携しながら、グローバル全体で安全な情報管理に取り組んでいます。これらをはじめとする様々な課題に対し各機能本部の計画の中で、具体的な目標を設定し、四半期ごとに進捗状況を取締役会に報告しています。更に、経営判断が必要な課題については随時経営会議において議論をしています。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、実際の結果とは様々な要因により異なる可能性があります。
(1)ESG経営の実践
為替影響に伴う原材料価格の高騰やエネルギー価格の上昇に加え、サプライチェーン全体での環境対応への要求が高まるなど、当社事業を取り巻く環境は大きく変貌しています。このような中において、当社グループでは、社会や顧客からの要求、法規制への対応に留まらず、将来にわたり持続的に成長し、社会的価値と経済的価値を創出するためESGは重要な経営課題であると捉え、サステナビリティー課題を含むマテリアリティーを設定するとともに、全社及び各本部の中期経営計画へ落とし込み、活動を推進することで、企業理念である「人と地球に喜ばれる新たな価値の創造」の実現を目指しています。
① ガバナンス
当社グループは、サステナビリティー対応は経営における重要課題であると認識し、従来のサステナビリティ推進委員会を役員を中心として構成するサステナビリティ委員会に2024年度より格上げし、サステナビリティー課題の監視・監督は取締役会が行い、執行管理と取締役会への報告はサステナビリティ委員会が実施することで、経営会議レベルでのサステナビリティー課題の検討と意思決定スピードの向上に取り組んでいます。
また、サステナビリティ委員会では、本部ごとに活動の推進及び進捗管理を実施するとともに、複数本部にまたがる課題はタスクフォースを設置し活動を進め、必要に応じて課題解決の方向性を検討するなどサステナビリティー活動とガバナンス体制の強化を図っています。なお、取締役会へは年4回定期報告を行い、経営判断が必要な課題については随時経営諸会議で審議しています。

<2023年度 経営会議における主なサステナビリティー議題>
②リスク管理
当社グループでは、企業ビジョンの実現及び中期経営目標の達成に向け、サステナビリティー課題を含めたマテリアリティー設定プロセスにおいて、社内外の環境認識を定期的に見直しつつ、「政治・経済及び市場の変化」「価値観・技術の変化」「社会・環境の変化」の3つの視点により機会とリスクを識別するとともに、経営諸会議で検証・評価し、機会への戦略とリスクへの対応策を検討しています。
<マテリアリティー設定プロセス>
なお当社グループでは、ESG担当役員をリスク管理責任者とし、リスクを網羅的に整理し優先順位付けを行ったリスクマップ並びにリスク管理規定を整備しています。この規定に基づく危機管理マニュアルに明示したリスク情報一覧表により、想定されるリスク及び影響と対応策を展開し、各責任部門にてリスクへの対応を行っています。また、サステナビリティー関連リスクの詳細は
③ 戦略
当社グループは、「ステークホルダー価値の最大化とCSR、ESGの両立」を目指しており、ESG経営の推進による社会的責任の遂行は、企業の持続的成長及び価値の最大化に欠かせない重要な経営課題であると捉え取り組みを進めています。また、設定したマテリアリティーは「事業への影響度」と「ステークホルダーの関心度」を軸とするマテリアリティーマップへ落とし込み整理するとともに、それぞれに対応するテーマ/施策及びKPI(中期)を設定し、具体的な活動とその進捗管理を行っています。
<マテリアリティーマップ>

特に、ESG視点で重点的に取り組むマテリアリティーを「脱炭素社会の実現」「循環型社会の実現」「人権の尊重」「ダイバーシティー&インクルージョン」「持続可能なサプライチェーンマネジメント」の5つに定め、各部門が中期計画へ落とし込み主体的に活動を推進するとともに、サステナビリティ委員会による進捗確認などを行うことで、サステナビリティー活動におけるPDCAサイクルを実行しています。
<ESG視点での重要課題>

④ 指標及び目標
当社グループでは、マテリアリティーごとにテーマ/施策、KPIをそれぞれ設定し、ESG視点による進捗管理と評価を行っています。また、2023年度の活動実績は2024年9月に発行予定の当社
※1 第2次中期経営計画中止に伴い取り下げ
※2 CS(Cyber Security):サイバーセキュリティー
※3 CSMS(Cyber Security Management System):サイバーセキュリティーマネジメントシステム
※4 CMRT(Confict Minerals Reporting Template):紛争鉱物報告テンプレート
※5 RMI(Responsible Minerals Initiative):世界で300以上の企業や団体が加盟する紛争鉱物に関する取り組みを主導している団体
(2)気候変動への取り組みとTCFDへの対応
当社は、2020年9月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同を表明しました。気候変動関連リスクと機会の分析を行い、その結果を事業戦略に繋げることで持続可能な成長及びリスクへの適切な対応を目指していきます。
① ガバナンス
「脱炭素社会の実現」「循環型社会の実現」といった気候変動への対応をマテリアリティーの項目として設定し、気候変動課題に対する基本方針や対応策等の重要事項を取締役会で審議・決議しています。代表取締役社長は気候変動課題を含むサステナビリティー課題に対する最高責任者であり、代表取締役社長から任命された取締役が、サステナビリティ委員会の委員長として、全てのサステナビリティー施策を監督しています。2024年度より、執行役員を構成メンバーとする委員会体制に変更し、役員報酬制度との連動や執行責任者の協議による意思決定の迅速化を図ります。更に、サステナビリティ委員会傘下に5つの環境関連タスクフォースを設置し、環境方針に沿った中長期環境戦略の立案や施策の実行を担います。サステナビリティ委員会は四半期ごとに開催され、意思決定が必要な案件は取締役会に上程されます。2023年度は、取締役会において、SBT認定取得に向けたGHG排出削減目標が承認され削減推進組織が設置されました。更に、欧州バッテリー規則をはじめとした製品カーボンフットプリント開示義務化の流れを受け、製品カーボンフットプリント算定に向けた組織の設置も承認され、これらはタスクフォースの一部として活動していくことが決まりました。
サステナビリティ委員会にて、各タスクフォースをはじめとした活動の進捗状況は定期的に評価され、これにより、当社事業活動に伴う環境負荷を最小限に抑えつつ、持続可能な社会の実現に向けて着実に進んでいます。
② 戦略
当社は、気候変動に関するシナリオ分析を実施し、その結果を基にリスクと機会を特定しました。これにより、当社の事業に与えるインパクトを内部的な基準に基づいて定量的に評価しました。
1)シナリオ分析
IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)及びIEA(International Energy Agency)の情報を基に、1.5℃及び4℃シナリオを用いて、2030年度時点の当社事業活動に影響するリスクと機会を特定し、事業インパクトの大きさから重要度を評価しました。リスクは移行リスクと物理リスクの側面から評価し、機会は製品、資源の効率性、市場、レジリエンスの側面から評価しています。
シナリオ分析は、以下の4つのステップに分けて実施しています。
・リスク重要度の評価
・シナリオ群の定義
・事業インパクト評価
・対応策の定義
2)シナリオ分析結果
シナリオ分析の結果、1.5℃シナリオの場合、2050年カーボンニュートラルに向けた施策が各国で推進されるとともに、サーキュラーエコノミー関連の規制が強まっていくことが想定されます。特に、当社の事業活動に影響が大きい自動車業界では、EVやFCV(燃料電池自動車)といった低CO2排出製品の需要が増加し、環境負荷低減に向けた要求がより一層強まると想定されます。一方で、4℃シナリオの場合、慢性的な気温上昇により自然災害の頻発化・激甚化が世界的に広がり、自社工場のインフラ強靭化を目的とした投資や、サプライチェーン強靭化に向けた動きが業界を問わず加速していくと想定しています。
3)リスクと機会の評価
リスクは、移行リスク(政策と法規制、技術、市場、評判)と物理リスク(急性、慢性)の側面から評価しました。
(※)短期:1年以内、中期:3年以内、長期:3年超(現在は2030年まで)
機会は、製品/サービス、資源の効率性、エネルギー源、市場、レジリエンスの側面から評価を実施し、製品/サービス、資源の効率性を機会として特定しました。
(※)短期:1年以内、中期:3年以内、長期:3年超(現在は2030年まで)
4)リスクマネジメント
企業の持続的成長と企業価値向上を実現するためには、事業を取り巻く様々なリスクの影響度と重要度を見極め、中長期で施策を立案し、対応していくことが重要です。当社は、リスクに対する備えとしてリスクマップを作成し、気候変動関連リスクを経営上の重要なリスクとして設定しています。具体的には、年に1回、サステナビリティ推進室がリスク調査を行い、洗い出されたリスクはサステナビリティ委員会で評価・管理されます。財務影響度の大きいリスクは取締役会に報告・審議されます。国内外の事業所では、ISO14001認証を取得し、環境側面評価に基づき継続的に環境負荷低減に取り組んでいます。
③ 指標及び目標
当社は、2050年度までにバリューチェーン全体のGHG排出量実質ゼロを目指しています。2030年度のGHG排出量削減目標(スコープ1、2、3)はSBT認定を取得し、「RE100」に加盟して2030年度に再生可能エネルギー導入率100%達成を宣言しています。
なお、2023年度の活動実績は2024年9月に発行予定の当社
(3)人的資本
近年、企業の人的資本経営の重要性は更なる高まりを見せています。当社グループにおいても、創業以来「人に賭ける」の考え方を継承し、個人の自己実現に対する意欲や行動を基盤に、会社が個人の能力を信じて能力開発の機会を提供し支援することで、会社と個人のニーズの調和を図り、個々人がより高いレベルの仕事に挑戦していくことを目指しています。また、マテリアリティーとして「人財育成と働きがいの醸成」「ダイバーシティー&インクルージョン」「人権の尊重」「労働環境、安全衛生」を定め各種活動を進めることで、経営戦略や事業戦略と連動した人財戦略の実現・実行に取り組んでいます。
① ガバナンス
従来実施していた人財育成及び後継者育成計画の議論を主とする人財開発会議の検討範囲を拡大させ、2023年度より取締役及び執行役員による人的資本会議を新たに設置しました。具体的には全社的な人財戦略及び人的資本経営の実践に向けた課題に関する議論や解決の方向付けなどを行い取締役会へ報告しています。
※2023年度開催実績
② 戦略
市場や事業環境が大きく変容する中、人と地球に喜ばれる新たな価値を創出し続けるためには、変化・変革に対応できる組織能力の向上と活性化及び人財育成は欠かせないと考えています。その実現に向け、「持続的な価値創造と変化対応力(レジリエンス)で成長・進化している」をありたい組織の姿と定め、「人財の確保・育成と最適配置」「個人の働きがい追求」「D&I/組織の活性化」の取り組みを推進しています。

1)人財の確保・育成と最適配置
事業戦略に基づいた必要な人財の確保においては、従来の採用活動に加え、従業員一人ひとりの能力の拡大と発揮が必要となります。ものづくりをベースに培った人財の新たな活躍機会の創出や、各種ネットワークの更なる拡充などを通じ、これまでとは異なる価値の創出ができる人財の確保と育成に取り組んでいます。特に、コト事業の推進においては、新規事業を構想する思考スキルや高い専門性を有する人財の確保に加えて、多様なパートナーとのアライアンスを通して人的ニーズの充足を図るとともに、自発的・自律的に変化・成長し続ける人財の開発を進めています。
また、従業員各々のキャリアビジョンの実現に向け、スキルを高め、知識を深められるように、ビジネススキルやマネジメントスキルなど、個々のキャリアステージに合わせた階層別の必須研修に加え、自ら関心のあるものを選び手挙げで受講できる選択型研修、エンジニアの基礎力向上を狙いとした技術者研修など、学びを通じて成長し続ける組織文化の醸成に努めています。

2)個人の働きがい追求
会社が持続的な成長を続けていくためには、従業員の働きがいは不可欠な要素です。当社では従業員一人ひとりが仕事を通じて成長し目標を達成したことによる充足感や、ありたい姿の実現、社会への貢献などを実感することで、働きがいや仕事の満足度を高めていくことを目指し、社員と仕事の関係性に焦点を当てた取り組みを進めています。
また、当社はこれまで従業員代表組織である労働委員会が総合意識調査を実施してきましたが、従業員の働きがい醸成への重要度が増加していることから、当社における従業員エンゲージメントを改めて定義し、エンゲージメント測定ツールの検討を行いました。2024年度より、新たに国内全従業員を対象としたエンゲージメントサーベイを実施・分析し、会社と社員、社員と仕事の関係性を測定することで、会社の各施策の効果度合いや企業価値の向上への結びつきなどを客観的指標により評価し、その結果に基づいた施策の見直しや風土醸成を行うなど、エンゲージメント向上に向けたPDCAサイクルを推進していきます。

3)D&I/組織の活性化
ダイバーシティー&インクルージョン(D&I)は、企業理念である「人と地球に喜ばれる新たな価値の創造」におけるイノベーション活動にとって不可欠なテーマであり、当社が持続的に成長し続けるための重要な基盤であると位置付けています。多様な価値観を持った人々が人種・宗教・国籍・性別・年齢・性的指向又は、性自認・障がいの有無に関わらず、「自分らしさ(個性)」を認め合い、安心してお互いの意見を交わし合える環境づくりを進め、従来の習慣や考え方から見直すべきところは見直すことで、多様性を通じた組織の活性化を目指しています。
2022~2024年度は、D&Iに関する知識を得る機会を増やすとともに、社内の人と人がお互いの多様性を知ることができる「つながる」場を増やし、多様な価値観を知ることで自身を見つめ直し、その上でお互いを尊重しながら共に挑戦し続ける風土の醸成を目指しています。

また、女性の活躍推進に関しては、新卒総合職や経験者採用における女性の割合を高めるための施策を実施するとともに、属性を問わず管理職を計画的に育成・登用するため、各部門において管理職候補者を明確にした上で、具体的なキャリアビジョンを描くための研修やリーダー育成、社外との交流機会の創出など成長の機会を提供しています。
加えて、従業員が能力を最大限に発揮できる機会の提供や出産又は育児、家族の看護・介護など個人の事情に応じて柔軟に働けるように、休暇・休業や勤務形態などを拡充したり、自己啓発やボランティア参加等に取得できる多目的特別休暇など、従業員のライフスタイルに合わせた働き方ができる各種制度の充実にも取り組んでいます。
なお、当社グループでは、女性活躍推進法に基づく行動計画を策定しており、女性が活躍できる社内環境の整備を計画的に実施しています。

4)労働環境・安全衛生
当社グループでは、「安全衛生方針」を策定し、従業員一人ひとりが安全に、そして心身ともに健康に働ける職場環境づくりに努めています。

また、2021年4月に「健康経営宣言」を制定しており、従業員の健康管理を重要な経営課題と捉え、健康診断やストレスチェックの定期的な実施、特定保健指導の実施率向上をはじめとする様々な「健康経営」の実践に積極的に取り組むとともに、2022年度には健康経営ワーキンググループを発足させ、取り組みを加速させています。

③ 指標及び目標
事業マテリアリティーで設定した指標及び目標に加え女性管理職比率や障がい者雇用率、従業員の健康と安全確保に関する定量的な指標を設定し、人的資本の可視化と強化への取り組みを進めています。なお、2023年度の活動実績は2024年9月に発行予定の当社
(1)リスクマネジメントの考え方
当社グループは、リスクマネジメントを事業の持続的成長と中長期的な企業価値の向上を実現するための「経営・事業運営の基盤=攻めの経営を支える基盤」と位置付け、事業のグローバル化、サプライチェーンの複雑化などにより多様化するリスクに対して、今後起こり得るリスクやそれらによる事業への影響度に応じて被害を回避又は最小化するための取り組みを進めています。
(2)当社グループにおける主要リスクについて
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識しているリスクを可視化し、それらの発生可能性、事業への影響度、リスク対策の実施状況等の観点から評価したリスクマップを整備し、その中から優先順位付けした当社グループの主要リスクを示しています。
<リスクマップ(当社グループの主要リスク)>

当社グループにおける主要リスクの内容と対応については次のとおりです。なお、文中においては将来に関する事項が含まれていますが、当該事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
①経営・事業戦略リスク
1)経営構造改革に係るリスク
<リスクの内容>
当社グループは、注力事業の成長と収益体質への変換を図るため、事業ポートフォリオ改革、コスト構造改革、経営体制・経営管理の強化を含む経営構造改革に取り組みます。この経営構造改革には一定の費用が伴う一方で、経済・事業環境の変化、将来の不確実な要因等により、その遂行が困難になる可能性や当初計画していた効果が得られない可能性がある他、当初の見込みを上回る費用が発生する可能性が考えられます。その結果、当社グループの業績及び財務状態に影響を及ぼす可能性があります。
<主な取り組み>
経営構造改革の各種施策全てについて主管・担当役員を充て、施策内容と実行時期を明確にしたうえで、取締役会において進捗状況をモニタリングしながら、進めていきます。
2)顧客ニーズ及び新技術の導入に係るリスク
<リスクの内容>
当社グループの事業は、自動車やスマートフォンをはじめとして技術革新のスピードが非常に早く、顧客要求の変化や新製品・サービスの導入が頻繁な市場であり、新たな技術・製品・サービスの開発により短期間に既存の製品・サービスが陳腐化して市場競争力を失い、販売価格が大幅に下落することがあります。また、コンポーネント事業においては、スマートフォン向けカメラ用アクチュエーターの映像の高精細化、高画質化の動きが進み、センサー・コミュニケーション事業やモジュール・システム事業の車載ビジネスにおいては、システム及びソフトウェアの高度化やセキュリティー対策など、急速に技術革新が進んでいます。そのため、それらの市場の変化に迅速な対応ができない場合や、製品の販売が想定した台数に達しない場合、又は顧客ニーズに合わせた新製品の導入ができない場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
<主な取り組み>
新技術の導入に当たっては、これらの変化に対応すべく、個々の開発テーマに対し、開発・設備や人的資本に関する投資を計画的かつ適切に投資を行っていくことで、技術力強化と人財育成を図っていきます。
また、営業・マーケティング部門が市場動向・顧客動向を把握し、技術部門等にフィードバックを図ることにより、市場変化に対応した新技術開発を進めています。
3)M&A及び業務提携・戦略的投資、並びに事業再構築に係るリスク
<リスクの内容>
当社グループは、持続的な成長と中長期的な企業価値向上、また、グローバル競争力及び顧客価値の向上、更に、よりスピーディーな事業立ち上げと成果に結びつけるため、新規事業領域への参入、新技術の獲得、現行事業の競争力強化を目的として、M&A及び業務提携・戦略的投資を実施しています。しかし、市場環境の著しい変化や、買収した事業を計画通りに進めることが出来ず、投下資本の回収に計画以上の期間を要する又はその回収ができないことにより、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは、成長性が高く、安定的な収益の得られる事業構造の確立のため、事業ポートフォリオ改革における非注力・ノンコア事業/不採算事業の整理、終息の取り組み(カーブアウト)を進めています。しかし、各国の規制、雇用問題、当社グループが売却を検討している事業に対する市場における需要不足等により、これが実行されない可能性があります。これらが実行された場合においても、顧客又は従業員からの評価の低下等、予期せぬ結果をもたらす可能性もあります。
<主な取り組み>
M&A及び業務提携・戦略的投資の実施に当たっては、当社事業計画に照らし合わせ、市場・技術動向や顧客ニーズ、相手先企業のポテンシャル等のリスクを十分に分析した上で、慎重に進めています。
また、事業再構築に当たっては、市場・業界動向、戦略、売却価格、プロセス及び潜在リスクなど様々な視点からの分析した上で、慎重に進めています。
4)製品品質に係るリスク
<リスクの内容>
当社グループの製品の品質に起因して顧客の損失が発生した場合、生産物賠償責任保険の適用を超える賠償責任を問われる可能性があります。その結果として、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
<主な取り組み>
当社グループでは、品質保証体制を構築し、品質改善活動を通じ品質の維持・向上に努め、また問題発生の未然防止に取り組んでいます。
5)固定資産の評価及び減損損失に係るリスク
<リスクの内容>
当社グループの当連結会計年度末における有形固定資産及び無形固定資産の帳簿価額は1,607億円です。当社グループは顧客の需要予測による将来の販売計画に基づいて設備投資を行っていますが、固定資産の回収可能性は、個人消費の動向、新製品の導入タイミング、新仕様や規格変更への対応及び技術革新のスピード等に影響を受けます。
また、特に自動車市場においては、エレクトロニクスの重要性が高まり市場拡大が見込まれますが、自動車販売台数に基づく顧客の需要変動や顧客ニーズの変化、技術革新への対応等が遅延した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、投資判断を行う際、その収益性・投資回収予定時期を社内で厳格に精査することで減損損失の計上リスクの軽減に努めています。しかし、急激な経営環境の悪化により収益性が低下し、帳簿価額の全部又は一部を回収できないと判断した場合、減損損失を計上する可能性があります。実際に、2023年度にはモジュール・システム事業を構成するモジュール製品及びセンサー・コミュニケーション事業に含まれる一部車載市場向け製品に係る事業用固定資産372億円の減損損失を特別損失に計上しました。
<主な取り組み>
当社グループは、各市場における製品ライフサイクルを分析し生産設備等の経済的耐用年数を設定しています。また、投資判断を行う際、その収益性・投資回収予定時期を社内で厳格に精査することで、減損損失の計上リスクの軽減に努めています。
②地政学・経済安全保障リスク
<リスクの内容>
ロシア・ウクライナ情勢、米中デカップリング及び台湾情勢等の影響により、原油及び天然ガス等の価格高騰、サプライチェーンの混乱、インフレ対策を主眼とした各国中央銀行の利上げ等による為替相場の急変が続くこともあり、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、特に下記③ 4)顧客の生産計画に係るリスク及び5)特定の部品の供給体制に係るリスクに記載の影響を及ぼす可能性があります。
また、各国における経済安全保障の強化の動きは、自国の技術力強化と対外的な先端技術流出阻止の動きに拍車をかけ、法規制や制裁の強化によりサプライチェーンに大きな影響を及ぼす可能性があります。
<主な取り組み>
当社グループ内で適時情報収集する体制を整え、上記リスクにつながる状況が発生した場合には、タスクフォース等を立ち上げ、即時の対応をとれるようにしています。
③市場環境リスク
1)経済状況の変動に係るリスク
<リスクの内容>
当社グループは、コンポーネント事業、センサー・コミュニケーション事業、モジュール・システム事業を中心としてグローバルに事業を展開しており、当連結会計年度の海外売上高は89.2%を占めています。従って、当社グループは直接あるいは間接的に、自動車やスマートフォンなどをはじめとし、IoT、AIの活用により新たなビジネスも生まれているEI市場など、グローバルの各市場における経済状況の影響を受ける環境にあり、各市場における景気の変動等によって、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、物流コスト・各種原材料・エネルギーコストの高騰、貿易摩擦、テロ・戦争・感染症拡大・その他の社会的混乱、不利な政治又は経済要因、予期しない法律又は税制の変更等のリスクが常に内在しています。従って、これらの事象が起きた場合には、当社グループ事業の遂行が妨げられ当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
<主な取り組み>
当社グループでは、生産拠点と販売拠点が綿密に連携し、迅速に顧客に販売動向や市場の動向を共有することで、生産規模の最適化を図っています。
2)外国為替に係るリスク
<リスクの内容>
当社グループは、グローバルに事業展開しており、結果として為替レートの変動による影響を受けます。一例として、外国通貨に対する円高、特に米ドル、ユーロ及び人民元に対して円高に変動した場合には、当社グループの業績にマイナスの影響を及ぼす可能性があります。為替レートの変動が想定から大きく乖離した場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
<主な取り組み>
当社グループでは、先物為替予約、通貨オプション及び外貨建て債権債務の相殺等、為替変動による影響額の極小化を図っています。
3)有価証券の時価変動に係るリスク
<リスクの内容>
当社グループは、売買を目的とした有価証券は保有していませんが、当連結会計年度末において、718億円の有価証券を保有しています。時価を有するものについては全て時価評価を行っており、株式市場における時価の変動が当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
<主な取り組み>
当社グループでは、事業上必要である場合を除き、投資株式を取得・保有しないこととし、現在保有している株式については、合理性を確認しながら保有の是非を判断しています。
4)顧客の生産計画に係るリスク
<リスクの内容>
当社グループは国内外のメーカーからの受注生産が大部分を占めるため、顧客の生産計画の影響を直接受けます。地政学上の各種影響による高まりを受けたエネルギー問題、物流費や部材の高騰など不確実な政治経済状況によるサプライチェーン全体への混乱で見通しが立てづらい状況が加速しています。当社グループは、顧客の生産計画に基づき、市場動向、部材の調達リードタイム、安定供給を勘案して取引先に部材手配を行っていますが、市場環境や上記地政学上の各種影響等に伴う顧客の生産計画の変動影響を受け、生産調整、過剰在庫が発生するリスクがあり、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
<主な取り組み>
当社グループでは、販売部門、生産部門及び購買部門が綿密に連携し、顧客や市場の動向を迅速に共有化し、生産規模及び在庫の適正化を図る取り組みを進めています。
5)特定の部品の供給体制に係るリスク
<リスクの内容>
ロシア・ウクライナ情勢、米中デカップリング及び台湾情勢等に基づく地政学上の各種影響による生産調整のため、売上減少や、電子部品の需給逼迫による材料費上昇、サプライチェーンの混乱による物流費の高騰や生産ロスが発生しています。当社グループでは、重要部品を当社グループ内で製造するよう努めていますが、一部の重要部品については、当社グループ外の企業から供給を受けています。従って、これらの供給元企業が災害・事故等の事由により当社グループの必要とする数量の部品を予定どおり供給できない場合、生産遅延や販売機会の損失等が発生し、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
<主な取り組み>
供給問題を未然に防ぐ対策として、サプライチェーンマネジメントの強靭化に取り組み、代替調達先の確保や、災害・事故等の発生時は調達部品の生産地を特定できるシステム等により、迅速な対応が取れるよう取り組んでいます。また、喫緊の電子部品逼迫への対応策として、各取引先との契約及び発注単位や条件の見直しにより必要な部材の安定的な確保を図ることで、生産遅延や販売機会の損失等を最小限に留める取り組みを進めています。
6)競合に係るリスク
<リスクの内容>
当社グループは、コンポーネント事業におけるスマートフォン向けカメラ用アクチュエーターをはじめとしたデジタル機器向けコンポーネント製品、センサー・コミュニケーション事業やモジュール・システム事業におけるCASEに対応した各種センサー、デバイス製品、インフォテインメント機器など全ての事業分野において、他社との激しい競争に晒されています。特に車載ビジネス分野においては、CASEやADAS(先進運転支援システム)の進展により、IT・通信分野など業種・業態の垣根を越えた企業間の開発競争が激化しています。また、従来製品・技術においては市場成熟化の中でコスト競争が激化し、新興国競合が低コストを武器に当社グループと競合しています。それらに起因する失注などの不測事態の発生によって、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
<主な取り組み>
当社グループは、新製品の導入や高品質の製品供給、グローバルネットワークの整備・拡充、M&Aや業務提携の推進等により、顧客満足を得るべく努め、同時にコスト構造改革を進めています。
7)顧客の財務状況に係るリスク
<リスクの内容>
当社グループの実質的な売掛金を保有している顧客が、景気低迷等のために支払いが困難になり、その売掛金を償却しなければならない場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
<主な取り組み>
当社グループの顧客が適時に支払うことができないことから生じる見積損失について、売掛金に関連する貸倒引当金を維持しています。貸倒引当金は当連結会計年度末において3億円計上しています。なお、通常の業務の過程に関連する売掛金は、担保又は信用保険の対象にはなりません。
④サステナビリティー関連リスク
1)気候変動に係るリスク
<リスクの内容>
当社グループは、気候変動に伴うリスクが事業活動に大きく影響すると認識しています。低炭素経済への移行に伴い、広範囲に及ぶ政策・法規制・技術・市場の変化が生じることに起因する移行リスクとして、炭素税導入によるエネルギー調達コスト増加、排出量取引の導入によるCO2排出量削減対策や排出権導入に伴うコスト増加などを想定しています。異常気象に伴う災害の激甚化に伴うサプライチェーンの寸断や自社操業の停止による売上減少、生産継続・復旧対応コストの増加などの物理リスクを想定しています。それらが当社の想定した範囲を超えて発生した場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
<主な取り組み>
当社グループは、2020年9月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同を表明し、その開示項目に沿ったシナリオ分析を実施し、事業戦略につなげることで、持続可能な成長及びリスクへの適正な対応を目指していきます。
上記移行リスクに対応する取り組みとして、2030年までに使用する電力の100%再生可能エネルギー化を目指し、省エネ推進、太陽光発電設備導入、再エネ由来電力への切り替え、再エネ電力証書の購入などの施策をグローバルで推進しています。また、物理リスクに対応する取り組みとして、生産拠点の自然災害リスクに鑑み、生産移管や複数社購買の検討など、BCP対応の強化を行っています。
2)環境汚染及び環境負荷物質に係るリスク
<リスクの内容>
当社グループの事業活動を通じて環境汚染が発生した場合、汚染除去費用や損害賠償費用等の対応費用が発生し、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
また、欧州や中国を中心に環境負荷物質に対する規制が強化される方向にあり、必要な要件を満たせない場合、販売機会の損失や市場における回収に繋がるリスクがあります。
<主な取り組み>
当社グループは、企業ビジョンにおいてグループ経営、コンプライアンス及び環境保全についての基本理念と行動指針を定めて当社及び当社子会社に展開しています。その中で、経営姿勢の一つとして、地球との調和を掲げ、環境リスク対策への取り組みを行っています。具体的には、化学物質を含む環境汚染物質の管理及び排出削減、大気汚染物質の排出モニタリングと排ガス処理装置の定期点検、国内事業所における土壌・地下水の浄化等を実施しています。
なお、サステナビリティー関連リスクに関する施策について、執行役員で構成される「サステナビリティ委員会」で進捗管理、評価、個別施策の審議を行い、取締役会が監督及びモニタリング機能を果たすことにより、サステナビリティーの重点課題目標達成と企業価値向上を目指しています。
⑤法務・コンプライアンスリスク
<リスクの内容>
当社グループは、事業を展開する各国において法令などの遵守を求められています。そのため、例えば、高いシェアを有する製品については、独占禁止法に関する調査手続きを受ける可能性、当社グループの製造する自動車向け製品については、その不具合に伴って顧客・消費者から訴訟提起を受ける可能性を否定できません。これらの事象が発生した場合には、当該対応に要する費用が生じることで、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
また、法令、社内規程や社会規範等のコンプライアンス違反や人権侵害、ハラスメントによる問題、製品品質に関する不正等が生じることにより、当社グループの企業イメージ毀損、当社製品の生産及び出荷の停止、顧客からの損害賠償請求等、当社グループの事業、業績及び財務状況に影響する可能性があります。
<主な取り組み>
当社グループにおいては、定期的に役員・従業員向けの社内研修を実施するなど、法令遵守・品質維持などを謳う「アルプスアルパイングループ行動規範」の遵守体制を確保しているほか、有事の際には法務部門と社外弁護士などが連携し適切な措置を講じる体制を確保しています。
⑥自然災害・感染症リスク
1)自然災害に係るリスク
<リスクの内容>
当社グループが事業を展開する地域において、地震、津波、風水害などの自然災害が発生し、当社の想定範囲を超えた場合、設備等への被害、重要な業務の中断、顧客への納期問題等の発生により収益性が悪化し、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
<主な取り組み>
当社グループは、自然災害の発生に備え、防災対策や重要な情報インフラのバックアップ体制の整備を行っています。また、事業に重大な影響を及ぼしうる自然災害が発生した際は、危機対策本部を設置するなど、迅速に対応に当たる体制を構築しています。各拠点において、事業活動が停止又は停止に至る可能性のある事象が発生した際は、拠点責任者が予め定められたルールに基づき報告し、全社で収集した情報を共有する体制を整えています。また、顧客に当社グループの被害状況や納入への影響を報告する体制を整備しています。
2)新型コロナウイルスなどの感染症の感染拡大に係るリスク
<リスクの内容>
2023年5月に新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが「5類」に移行され、日本を始め、世界的に経済活動の制限が緩和されています。
一方で、新たな感染症が拡大するリスクは常にあり、当社グループ内に拡散した場合、又は、経済活動の停滞が生じた場合、操業停止やサプライチェーンの停止等により、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
<主な取り組み>
当社グループ従業員への感染を未然に防止するため、テレワーク、フレックスタイム勤務を活用した時差出勤、衛生管理の徹底を継続することにより、感染予防と拡散防止に努めます。
⑦財務リスク
1)資金繰りに係るリスク
<リスクの内容>
当社グループは、取引先銀行とシンジケートローン契約及びシンジケート方式のコミットメントライン契約を締結していますが、これら契約の財務制限条項に抵触した場合には、借入金の繰上げ返済請求を受けることがあり、当社グループの財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
<主な取り組み>
当社グループでは、財務制限条項に抵触しないよう、財務部門において各事業の事業計画を横断的にモニタリングし、資金調達リスクの低減を図っています。
2)繰延税金資産に係るリスク
<リスクの内容>
当連結会計年度末において、繰延税金資産を169億円計上しています。当社グループは将来の収益力に基づく課税所得を見積り、繰延税金資産の回収可能性を判断しています。将来課税所得の見積りは、事業計画及びグループ会社間の取引価格を基礎としています。事業計画は、主に、各事業の主要顧客への販売数量及び販売価格、予測されている営業利益率、売上規模に応じた固定費の見積り及び想定為替レートを前提に策定しています。当社グループは、経営環境の変化に応じて事業計画を見直し経営成績の維持を図るとともに必要な税務戦略を考慮しています。しかし、将来において事業計画の主要な仮定が変化した場合、繰延税金資産の取崩しが発生する可能性があります。
<主な取り組み>
当社は、繰延税金資産に影響を与えるような事業計画の変動要因や、各国・地域の税制変更を定期的に確認しており、将来の見通しの変化等により事業計画の変動が判明した場合には、繰延税金資産の回収可能性に関しての見直しの要否を適時に判断しています。
⑧人財・労務リスク
<リスクの内容>
当社グループの事業の中核の一つである自動車市場では、CASEをはじめとする技術革新が加速しています。これらの環境下、ビジネスを確立・拡大していくためには、デジタル分野など多様な分野において優れた専門性を有した人財の必要性がますます高まっています。一方、同業他社を含む各社の採用意欲の高まりや、少子高齢化に伴う労働人口の減少、デジタルトランスフォーメーションの進展などにより、年々、人財の確保に関する難易度が高まっています。雇用環境の変化などにより、当社が求める人財の確保やその定着・育成が計画通りに進まなかった場合には、当社グループの将来の成長に影響を及ぼす可能性があります。
<主な取り組み>
当社は、継続的な年間約200名の新卒採用に加え、中途採用においても次世代自動車向けソフトウェアの開発力強化に向けたデジタル人財をはじめ、必要な人財の積極採用を進めるとともに、新卒・中途採用に関わらず入社時からの体系的な人財育成や、人事理念に基づく評価、昇進・昇格、賃金制度等により、社員の能力・意欲を高める取り組みを行っています。また、ビジネスのグローバル化に対応し、日本においても継続して、外国籍社員の採用にも積極的に取り組んでおり、新卒の約1割を目指しています。更に、社員の高齢化や、定年再雇用者が増加する中、各人の適性に応じた職務の割当てにより、社員一人ひとりの豊富な経験や能力を十分に発揮できる環境の整備に努めています。
風通しのよい組織風土を醸成するため、経営陣と従業員が対話を行うタウンホールミーティングを開催し、従業員のエンゲージメントの向上に努めます。
⑨IT・情報セキュリティーリスク
<リスクの内容>
昨今のサイバー攻撃の高度化や、ITを活用したビジネス詐欺の巧妙化に伴い、当社が事業活動を通じて創出した情報、顧客・サプライヤー又はその他団体及び個人(従業員含む)からお預かりした情報の漏洩、改ざん、破壊等の被害が発生するリスクがあります。
また、新型コロナウイルス等による従業員の働き方の多様化に伴う情報の持ち出しや不適切な取扱いにより秘密情報の外部漏洩が発生するリスクがあります。更に、クラウドシステムの活用推進は、事業活動のDX化を促し、大きな利便性が得られる反面、当社グループが直接管理できないリスクの増大にも繋がっています。
このようなリスクが具現化した場合、当社製品の生産及び出荷の停止、顧客やその関係者の機密情報漏洩に起因する損害賠償請求、企業戦略や新技術の漏洩による競争力低下、並びに当社グループの企業イメージ毀損による販売機会の損失等、当社グループの事業、業績及び財務状況に影響する可能性があります。
また、通信機能を有する車載製品の需要が増加してきており、サイバーセキュリティー体制整備が顧客の採用条件として明示されるようになり、対策の遅れが販売機会の損失に繋がる可能性もあります。
<主な取り組み>
2023年7月及び9月に第三者による当社グループのサーバーへの不正アクセス、同年12月に当社を退職した元従業員が当社秘密情報の不正取得により逮捕される事件が発生しました。
当該事件を踏まえ、当社では、ISMS(情報セキュリティーマネジメントシステム)体制を構築し、サーバーアクセスの認証強化、社内ネットワーク脆弱性診断の定期実施、危機管理規定の見直しを含む、当社及び当社サプライチェーン全体での情報管理強化対策に取り組んでいます。また、社内研修による従業員の知識習得とコンプライアンス意識向上を継続実施します。これらを通じて、再発防止に努め、信頼回復を図っていきます。
⑩知的財産リスク
<リスクの内容>
特許、その他の知的財産は、当社グループ製品の市場の多くが技術革新に重点を置いていることなどから、重要な競争力の要因となっています。当社グループは、自社開発技術、製品、サービスにおいて、特許、商標及びその他の知的財産権を取得し、場合によっては特許、その他の知的財産権を行使することなどにより、当該技術、製品、サービスの保護を図っています。一方、製品開発に当たっては第三者の知的財産権を尊重した開発を行っていますが、実際に侵害しているか否かを問わず第三者による知的財産権侵害の申し立てを受ける可能性があります。
また、当社グループが知的財産権を侵害しているとして提訴されている訴訟案件については、裁判の経過により将来において損害賠償等が確定した場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。更に当社グループの製品には、他社の知的財産権のライセンスを受けているものもありますが、当該知的財産権の保有者が将来において、ライセンスを当社グループに引き続き与えるという保証はありません。当社グループにとって好ましくない事態が生じた場合には、当社グループの事業はその影響を受ける可能性があります。
<主な取り組み>
当社グループでは、従業員向けに知的財産権に関する定期的な教育・研修を実施するとともに、当社グループ従業員による知財侵害者発掘奨励制度を導入し、知的財産権保護に努めています。また、他社の知的財産権の侵害を未然に防止するために、先行する知的財産権の調査を徹底するとともに、外部の特許事務所を活用するなどの対策を講じています。
⑪公的規制リスク
<リスクの内容>
当社グループは、事業展開する各国・各地域において事業・投資の許可、関税をはじめとする輸出入規制等、様々な政府規制・法規制の適用を受けています。更に、昨今の国際情勢は、各国・各地域の各種規制に影響を及ぼしており、特に、経済安全保障に基づく企業活動への規制が強化される傾向にあります。これらの規制が、当社グループが対象としている市場やサプライチェーン等に影響を及ぼし、売上の減少及び対応コストの増加につながる可能性があります。また、仮に強化された規制等の違反が認定された場合には制裁金等の負担が発生する可能性があります。
<主な取り組み>
当社グループでは、各省庁や業界団体等から情報収集し分析を行うことで、各国・各地域における規制や政策の動向を注視しています。また、経済安全保障分野においては、規制が厳しくなる方向であると捉えており、国内外の規制動向、更には政府・企業の動向も注視し対策を実施しています。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末と比べ169億円増加の7,539億円、自己資本は、利益剰余金の減少と、為替換算調整勘定の増加等により、70億円減少の3,911億円となり、自己資本比率は51.9%となりました。
流動資産は、現金及び預金の増加と、受取手形及び売掛金の減少等により、前連結会計年度末と比べ249億円増加の4,914億円となりました。
固定資産は、建設仮勘定、機械装置及び運搬具の減少と、繰延税金資産の増加等により、前連結会計年度末と比べ79億円減少の2,625億円となりました。
流動負債は、短期借入金の減少と、その他流動負債の増加等により、前連結会計年度末と比べ168億円減少の2,477億円となりました。
固定負債は、長期借入金の増加等により、前連結会計年度末と比べ408億円増加の1,134億円となりました。
② 経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済は、北米では良好な雇用情勢や実質賃金の増加を背景に個人消費が比較的堅調に推移しました。欧州ではインフレ率はピーク時から大幅に鈍化しているものの、金融引き締めの継続により景気は足踏み状態が続いています。中国では多くの景気刺激策が打ち出されているものの、不動産市場の低迷などを背景に個人消費も低調で景気減速が続いています。日本では物価上昇が続き個人消費は停滞しているものの、インバウンド需要の回復が牽引し景気は緩やかな回復基調にあります。
当社を取り巻く事業環境は、円安による売上高及び利益への押し上げ効果に加え、グローバル自動車生産は回復基調にあり、自動車業界におけるパワートレイン構成や自動車OEMメーカーのシェア変化に対するビジネスチャンスもある一方で、賃金の上昇、部材やエネルギー価格の高止まり、スマートフォン部品においては他社の参入や価格競争の激化等もあり、従来の当社の施策である価格適正化やコスト抑制等に留まらず、変化への柔軟な対応が求められる状況が続いています。
当連結会計年度における経営成績の概況については以下のとおりです。なお、下記に示す売上高は外部顧客に対する売上高であり、報告セグメント間売上高は内部取引売上高として消去しています。
セグメントの状況
<コンポーネント事業>
売上高は、車載市場向け製品は堅調な自動車生産の回復により増加しましたが、モバイル市場向け製品は製品構成の変化や価格競争の激化など、また民生市場向け製品は継続する市況の低迷が影響し前期比で減少しました。営業利益は、売上高の減少やスマートフォン向け製品の構成変化により、前期を下回りました。
以上の結果、当連結会計年度におけるコンポーネント事業の売上高は3,052億円(前期比7.2%減)、営業利益は204億円(前期比46.6%減)となりました。
<センサー・コミュニケーション事業>
売上高は、車載市場向け製品がコンポーネント事業同様に自動車生産の回復により増加しましたが、民生市場向け製品やモバイル市場向け製品の市況の低迷などにより、事業全体で減少しました。営業利益は、売上高の減少や受注獲得に伴う開発費の増加により、前期とほぼ同額となりました。
以上の結果、当連結会計年度におけるセンサー・コミュニケーション事業の売上高は840億円(前期比1.7%減)、営業損失は14億円(前期における営業損失は15億円)となりました。
<モジュール・システム事業>
売上高は、中国における外資系自動車企業の低迷による影響があったものの、全体としてはグローバル自動車生産の回復に伴う自動車部品の需要増加や、前第4四半期連結会計期間から販売を開始したシステム製品の新製品などの寄与により増加しました。営業利益は、欧州向けモジュール新製品の生産立ち上げによるコスト増加があったものの、売上高の増加や価格適正化の進展により、前期比で改善しました。
以上の結果、当連結会計年度におけるモジュール・システム事業の売上高は5,543億円(前期比15.2%増)、営業損失は11億円(前期における営業損失は66億円)となりました。
特別損失(減損損失)の計上について
当社は、2024年3月期で392億円の減損損失を特別損失に計上しました。これは、主にモジュール・システム事業を構成するモジュール製品及びセンサー・コミュニケーション事業に含まれる一部車載市場向け製品に係る事業用固定資産について、新製品の生産立ち上げに伴うコストの増加が想定以上に継続することに加え、これら製品に係る収益構造良化に時間を要する見込みとなり、その最新状況を将来キャッシュ・フローの見積りに反映した結果、将来キャッシュ・フローの現在価値が当社の保有する事業用固定資産の帳簿価額を下回ることとなったことによるものです。
以上により、上記の3事業セグメントにその他を加えた当連結会計年度における当社グループの連結業績は、売上高9,640億円(前期比3.3%増)、営業利益197億円(前期比41.3%減)、経常利益248億円(前期比29.0%減)、親会社株主に帰属する当期純損失298億円(前期における親会社株主に帰属する当期純利益は114億円)となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末と比べ394億円増加し、当連結会計年度末の残高は、1,222億円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度末における営業活動による資金の増加は、891億円(前期は154億円の増加)となりました。
この増加は、主に減価償却費414億円、減損損失392億円、売上債権の減少額332億円及び棚卸資産の減少額141億円による資金の増加と、税金等調整前当期純損失144億円、法人税等の支払額140億円及び仕入債務の減少額107億円による資金の減少によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度末における投資活動による資金の減少は、550億円(前期は542億円の減少)となりました。
この減少は、主に有形及び無形固定資産の取得による支出560億円による資金の減少によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度末における財務活動による資金の減少は、18億円(前期は7億円の減少)となりました。
この減少は、主に長期借入金の返済による支出332億円、配当金の支払額82億円及び短期借入金減少額37億円による資金の減少と、長期借入れによる収入438億円による資金の増加によるものです。
④ 生産、受注及び販売の実績
1)生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しています。
2.金額は、販売価格によっています。
2)受注実績
当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注)セグメント間取引については、相殺消去しています。
3)販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しています。
2.主な相手先の販売実績及び総販売実績に対する割合は、下記のとおりです。
当連結会計年度において、LG Innotek Co., Ltd.は販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満のため、記載を省略しています。
前連結会計年度において、Apple Inc.は販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満のため、記載を省略しています。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成されています。
この連結財務諸表の作成に際し、連結決算日における資産・負債の数値及び連結会計年度の収益・費用の数値に影響を与える会計上の見積りを用いています。
当社は、特に以下の会計上の見積りが、当社グループの連結財務諸表に重要な影響を与えるものと考えています。
1)棚卸資産の評価
棚卸資産は取得原価又は正味売却価額のいずれか低い金額で評価しています。正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、取得原価と正味売却価額との差額について評価損を計上しています。正味売却価額は、主に顧客との販売契約に基づく予定売価を基に見積もっています。また、一定の保有期間を超えた場合、滞留又は陳腐化しているとみなし、評価損を計上しています。更に、保有期間にかかわらず将来廃却が見込まれる棚卸資産についても評価損を計上しています。
市場環境の悪化による顧客の需要減少や製品ライフサイクルの変化等に伴い、棚卸資産の収益性の低下、滞留、陳腐化が生じた場合、将来において追加の評価損の計上が必要となる可能性があります。
2)繰延税金資産
繰延税金資産については、回収可能性があると判断できる金額のみ計上しています。将来の収益力に基づく課税所得を見積り、繰延税金資産の回収可能性を判断しています。将来課税所得の見積りは、事業計画並びにグループ会社間の取引価格を基礎としています。事業計画は、主に、各事業の主要顧客への販売数量及び販売価格、予測されている営業利益率、売上規模に応じた固定費の見積り及び想定為替レートを前提に策定しています。また、各市場における部材高騰の長期化やインフレの継続といった事業環境下で、これらに対する顧客への価格転嫁の遅れや不足、目標とする原価改善の未達等の要因を考慮しています。グループ会社間の取引価格は、各国の移転価格税制を考慮し、連結子会社ごとに設定しています。
将来において、事業環境の変化による顧客の需要減少や、移転価格を含む税務関連の動向の変化等により課税所得が予想を下回り、すでに計上されている繰延税金資産の全部又は一部を回収できないと判断した場合、当該判断を行った期間に繰延税金資産を取崩し、税金費用が計上される可能性があります。
当連結会計年度の繰延税金資産の回収可能性を判断するに当たり、将来課税所得の見積りに用いた重要な仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
3)退職給付に係る負債
退職給付費用及び退職給付に係る負債は、数理計算上の前提条件に基づいて算出されています。前提条件には、割引率、長期期待運用収益率、退職率及び死亡率等の仮定が含まれています。このうち、退職給付費用及び退職給付に係る負債の計算に影響を与える最も重要な仮定は、割引率及び年金資産に係る長期期待運用収益率です。
割引率は優良債券の利回りを参考に決定しており、連結会計年度末において割引率を再検討した結果、割引率の変動が退職給付債務に重要な影響を及ぼすと判断した場合にはこれを見直した上で、退職給付債務を算定しています。長期期待運用収益率は、保有している年金資産のポートフォリオに基づく一定期間における運用実績を基に、今後の運用方針及び市場動向を考慮して設定しています。
これらの仮定が実際の結果と異なる場合、又は仮定を変更した場合、将来期間における退職給付費用及び退職給付に係る負債に影響を及ぼすことがあります。
当連結会計年度の退職給付費用の計算に使用した割引率及び長期期待運用収益率は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(退職給付関係)」に記載のとおりです。
4)固定資産の減損
当社グループの資産又は資産グループに減損が生じている可能性を示す事象があり、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額がこれらの帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しています。減損損失の測定に当たって見積られる回収可能価額は、資産又は資産グループの正味売却価額と使用価値のいずれか高い方の金額を使用しています。
減損損失を認識するかどうかの判定及び使用価値の算定において見積られる将来キャッシュ・フローは、事業計画を基礎として算定しています。当該事業計画は、主に顧客・製品別にまとめた受注予測、予測されている限界利益率及び固定費を前提として策定しています。なお、部材高騰の長期化やインフレの継続といった事業環境下で、これらに対する顧客への価格転嫁の遅れや不足、目標とする原価改善の未達等の要因を考慮しています。また、使用価値の算定に使用する割引率は、当社に要求される加重平均資本コストを採用しています。将来、事業環境の変化等により固定資産の収益性が低下した場合、減損損失の計上が必要となる可能性があります。
また、固定資産の耐用年数については、各市場における製品ライフサイクルを基礎として、生産設備等の経済的耐用年数を設定しています。製品ライフサイクルについては、事業・市場・顧客単位などの性質を勘案して決定しています。
当連結会計年度において減損会計を適用するに当たり、将来キャッシュ・フローの見積りに用いた重要な仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
② 当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度の当社グループにおける連結業績は、売上高9,640億円(前期比3.3%増)、営業利益197億円(前期比41.3%減)、経常利益248億円(前期比29.0%減)、親会社株主に帰属する当期純損失298億円(前期における親会社株主に帰属する当期純利益は114億円)となりました。
セグメント別の売上高及び営業利益については、「(1)経営成績等の状況の概要 ② 経営成績の状況」をご参照ください。
③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループの運転資金需要の主なものは、製造費用、販売費及び一般管理費等の営業費用であり、投資を目的とした資金需要は設備投資、業務提携等によるものです。
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本としています。日本、欧州、中国、米国及びアセアンの各地域においてキャッシュ・マネジメント・システムを導入しグループ資金の効率化を図るとともに、金融機関とのコミットメントライン契約により流動性を担保しています。
運転資金及び設備投資資金については、主に営業活動によるキャッシュ・フロー及び金融機関からの借入金にて調達しています。資金の源泉を安定的に確保するため、CCC改善による流動性資金の拡充、金融機関からの借入金の長期化、コマーシャル・ペーパー発行による調達等、資金調達の多様化を図っています。なお、当連結会計年度における資金調達については、サステナブルファイナンスによる調達185億円を含め、長期借入金として総額438億円を調達しました。
該当事項はありません。
当社グループ(当社及び連結子会社)は、「アルプスアルパインは人と地球に喜ばれる新たな価値を創造します」を全ての礎に、事業活動を通じて持続可能な社会の発展に貢献することを目指しています。
「Right(最適な)、Unique(独自性)、Green(環境にやさしい)」を兼ね備えた、「美しい電子部品を究める」ことを事業の根幹とし、70年の歴史の中で育んだ当社グループ独自のコア技術を最大限に活かし、「感動・安全・環境」の事業領域にて新しい価値を創造しています。
当社グループの研究開発費の総額は
「Perfecting the Art of Electronics」を事業の根幹とし、基盤事業として育んできた当社独自のコア技術と、実績に裏付けされた高い生産技術力と品質を強みに新しい製品と価値を創出し、継続的な事業拡大を目指します。
コンシューマーや車載市場の既存事業に対しては、業界トップの品揃えと高い品質・生産力による優位性を活かし高シェアを維持するとともに、開発・生産体制の最適化に取り組み市場における競争力確保と収益性の向上を図ります。
また車載市場においては、電気自動車の拡大や自動運転技術等の進化により新たに期待される地域ごとのニーズにタイムリーに応えるために、グローバルでの開発体制を強化していきます。アミューズメント市場においてはジョイスティックなどの入力デバイスやハプティック®でのシェア拡大を図りながら、次世代デバイスに求められる製品の研究・開発に積極的に投資をしていきます。アクチュエーターについては従来のスマートフォン向けビジネスの拡充と収益性改善の取り組みを強化しながら、SMA(Shape Memory Alloy)技術を用いた新しい製品・用途向けのアクチュエーター開発に積極的に取り組み、長期的な技術優位性並びに市場競争力の確保を目指します。
コンポーネント事業に係わる研究開発費は
センシング・高周波技術による「安心空間・見守り」の実現、カーボンニュートラル社会に貢献するデバイスの創出、高位置精度技術磨き上げと通信の融合などによる新価値提供を目指してきました。高度化が進む自動車産業や産業機器市場において、安全・安心・快適を実現するために必要となる各種センシングは予防安全の領域でそのニーズが高まっています。
当社は強みである無線規格のオーソリティー、高周波とシステム融合提案、システムレベルの知識と経験を活かし、ミリ波とカメラを組み合わせたデジタルキャビンシステム構築による価値提案や、ミリ波センサーシステムの各市場への価値提案を行っています。
環境問題への世界各国の取り組みや支援策の拡大に伴い、脱炭素社会の実現に向けて、ガソリン車・ディーゼル車から電気自動車にシフトする動きが加速しており、将来的には電気自動車が主力となることが見込まれています。電気自動車のモーター駆動制御や回生電流の直流変換制御、バッテリーの充放電電流検出などに使用される電流センサーは、制御用部品として重要な役割を担っています。当社の電流センサーは、当社コア技術である磁気センシング技術を応用した独自のGMR(Giant Magneto Resistance)方式を採用しており、コアレス構造による大電流対応と小型軽量化を同時に実現しています。今後も、更なる低背化、高精度化の追求をしていきます。
予防安全とセーフティー事業への転換に向けて、車両安全運転支援技術の一つ、C-V2X(Cellular based Vehicle to X)の市場投入、ミリ波センサーを用いた子供置き去り検知システムの市場展開、高周波センシング技術とソフトウェアを融合させたセキュアで便利なスマートフォンによるエントリーシステムやリモートパーキングシステムの開発も進めてきました。また、IoT分野では物流資材遠隔監視システムによる輸送エネルギーの削減やモビリティーデータを活用したオンデマンド型ドライブレコーダーによる地域・社会課題の解決に向けた幅広い分野における新たなサービスの創出に取り組んでいます。
当事業は、保有するセンシング・高周波・静電・ソフトウェアの技術融合による製品や、低燃費・小型・軽量化に貢献する製品、更にデバイス+ソフトウェア+クラウドによるIoTソリューションの提供を通じて顧客の期待に応えていきます。事業面においてはリカーリングビジネスの早期拡大のため、社内にデータソリューションカンパニーを設立し、顧客ニーズの早期入手・提案を行い、将来に向けた事業領域の拡大を目指しています。
センサー・コミュニケーション事業に係わる研究開発費は
従来は、モジュール製品、ディスプレイ製品、サウンド製品、インフォテインメント製品など一つ一つの製品・分野について完成度を高めることに注力をしてきました。現在は、市場の動向や、アルプスアルパインの総合力を生かし、デジタルキャビンソリューションによる空間価値創出に向けて製品開発を進めています。具体的には2026年納入開始で受注している統合ディスプレイオーディオ(IVI+METER)、プレミアムサウンド製品、そして2030年には更なる製品の統合を行い、キャビンコントローラー(IVI+METER+BODY+ADAS)、ドアコントロールモジュールなどを開発していきます。開発に当たっては、当社グループだけでなく、大学や研究機関、他社と協業することで、それぞれが持つ技術・製品力を持ち寄り、シナジー効果を目指します。
このような複合化された高付加価値の製品を生み出し、今までの製品群から移行していくことで、収益性の強化につなげ、事業の良質化を図っていきます。
モジュール・システム事業に係わる研究開発費は