文中において将来に関する事項が含まれていますが、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。
(1)会社の経営の基本方針
当社は2005年9月の創立50周年を機に、経営に対する普遍的且つ基本的な方針・姿勢を経営理念として制定しました。これは、経営基本方針や事業方針、中期グループビジョン(中期経営方針)の最上位に位置づけられるものです。
当社は航空業界において、製造と整備をベースとした「技術立社」として、誠実・公正、責任感と義務感をあらわす「士魂」の精神の下に、全役職員が等しく以下の経営理念を強く意識し、その実現に向けて努力してまいります。
[経営理念]
技術のジャムコは、士魂の気概をもって
○ 夢の実現にむけて挑戦しつづけます。
○ お客様の喜びと社員の幸せを求めていきます。
○ 自然との共生をはかり、豊かな社会づくりに貢献します。
[経営基本方針]
○ 飛行安全の確保と品質の向上を図る。
○ 航空業界を基軸に、技術力を生かした付加価値の高い製品及びサービスを供給する。
○ 株主への還元、社員の幸せを目指し、社業を通じて社会に貢献する。
○ 変化に柔軟に対応した企業構造及び事業内容を追求し、顧客満足度と企業価値の向上を図る。
[中期グループビジョン]
当社は、10年後の社会環境を視野に入れた、当社の理想とするありたい姿、グループ全体のビジョンとして「JAMCO Vision 2030」を掲げ、具体的な4つの経営戦略を打ち出し活動しています。又、連結子会社につきましては、各事業の顧客、市場及び所在地域の優位性を考慮のうえ、子会社単独の利益追求にとらわれず、各事業の最適化と企業集団としての企業価値増大を志向した運営を行っています。
[JAMCO Vision 2030]
-技術と品質を翼に、快適で持続可能な未来へ-
航空業界を基軸に培ってきた技術と品質を、先端技術とイノベーションにより進化させながら更なる事業領域の拡大を目指し、航空宇宙産業を通じた価値創造企業グループとして、快適で持続可能な社会へ貢献し続ける。
○ 全社事業戦略
・ジャムコの柱である「技術力と品質」を更に磨き、各事業領域の「経験と知識」を融合し進化させ新たな付加価値を創造する。
・経営環境の変化に対し、事業リスクを予見し適切に対策を実行する。
・One JAMCO としてグループ全社の業務プロセス改革による経営効率化を追求し、事業環境の変化に耐え得る堅固な経営基盤を構築する。
○ 成長戦略
・ジャムコ技術を進化させ応用出来る事業領域の拡大、新たなモビリティ事業、持続可能な社会の実現に貢献できる事業へ積極的に参画する。
・中長期的な成長性に基づいたタイムリーで適切な事業ポートフォリオへの投資と改革を実行する。
○ 営業戦略
・One JAMCO の総合力を結集し、グローバルな展開を推進する。
・市場ニーズを先取りし、プロアクティブなマーケティングへ変革する。
・ESG/SDGs の実現に貢献する製品やサービスを提案する。
○ 技術戦略
・軽量化・新素材活用技術・認証取得能力・プロジェクトマネージメント能力を基礎に、ジャムコ独自技術を最新技術と共に進化させる。
・持続可能な社会への貢献、衛生環境改善、先端デジタル技術・システムを活用できる製品・サービスの開発を進める。
・次世代航空機及び次世代モビリティ関連に向けた、新たな技術革新を実現する。
[中期経営方針]
○ 2024年度中期経営計画の基本方針は「選択と集中」。
○ 2024年単年度は特にJAMCO Vision 2030を踏まえ、同グループビジョンで掲げる価値創造企業へのロードマップと長期経営戦略にかかるAction Plan 2030(AP2030)で計画した「基礎課題解決期」(2022年~2024年)を1年前倒しして2023年度に完了し、続けて2024年からの4か年を変革始動期として、競争優位の源泉の回復、収益力強化、成長基盤構築を核に更にプロジェクトを推進していく。
○ 新型コロナ感染症拡大により毀損した財務基盤及び応需能力の回復と強化、更に競争力の源泉である技術のジャムコ(品質)を取り戻すことを軸に、選択と集中を進め、業績回復基盤の再構築を行い、JAMCO Vision 2030達成に向けた成長のロードマップを明確化。
当社の事業は4つの事業分野で構成されています。製造事業として航空機の客室内を対象とした「航空機内装品等製造関連事業」と「航空機シート等製造関連事業」、客室外を対象とした「航空機器等製造関連事業」があり、整備事業として「航空機整備等関連事業」があります。
それぞれの事業ごとに、市場、顧客及び必要とされる技術等が異なることから、中期経営方針に基づき、具体的な重点施策を策定し、部門別重点施策として遂行し、進捗管理を行うとしています。
(2)目標とする経営指標
目標とする経営指標につきましては、中期経営計画に沿った目標値として次のとおり設定し、効率的経営に努めてまいります。
・収益性指標: 連結売上高経常利益率 7%以上
・効率性指標: 連結ROA 7%以上 (総資産経常利益率)
・安全性指標: 自己資本比率 30%以上
・配当方針 : 持続的な成長や事業リスクに備えた財務の健全性とのバランスにも配慮のうえ、
連結配当性向 20~30%を目安とする
(3)経営環境及び対処すべき課題
主な事業とその経営環境は次のとおりです。
航空機内装品等製造関連においては、ボーイング社と双通路型旅客機向けラバトリー及び787型機向けギャレー供給契約を結び、エアバス社とA350型機向けICE(Increased Cabin Efficiency)リヤギャレー供給契約を結んでいます。又、国内外の主要なエアラインへ新造機用ギャレーに加え、客室内改修用の各種内装品の供給とエンジニアリング・サービスを提供すると共に、航空機メーカーと主要なエアライン向けのサービス拠点(米国、欧州、アジア地域)を設置してサポートを充実させています。特に当社製品は国内外100社をこえるエアラインにご利用いただいていることから、内装品の補用部品(スペア・パーツ)販売は重要な収益基盤となっています。
航空機シート等製造関連においては、航空機メーカーによる新造機の増産計画やエアラインが運航している既存機の機内改修需要が急拡大していることから、「選択と集中」により、航空機シート事業の開発を伴う受注を一時的に凍結し、開発人財と生産キャパシティを当社の主力である航空機内装品事業に集約することで応需能力の回復と収益力の強化を進めます。
航空機器等製造関連においては、エアバス社と炭素繊維構造部材の供給契約を結んでいます。更に当社製品が他の機体部位に採用されるよう研究開発に取り組んでいます。
航空機整備等関連においては、防衛省、海上保安庁、他官公庁等の機体整備のみならず、機体改修等技術的な支援サービスを充実させています。又、国内エアライン向けのサービスの拡大に向けた事業展開を進めています。
2020年以降、新型コロナウイルス感染症の影響により世界の航空旅客数は大幅に減少しましたが、2023年には2019年の水準を超えるまでに回復し、2023年から2042年までの20年間における航空旅客需要は、年平均3.4%で成長し、同期間で約33,400機の新造機が製造(うち単通路25,000、ワイドボディ6,000)され、運行機数は2022年の25,075機から40,527機へと約60%増加し安定した成長が見込まれています。しかし、新型コロナウイルス感染症によって世界中のサプライチェーンも深刻な打撃を受け、航空需要は回復したものの現在も人員不足などの影響から供給力不足が続いています。又、環境問題をはじめとするサステナビリティ課題への世界的な意識の高まりを受け、企業が果たすべき社会的責任として、当該課題への取組みがより一層求められています。一方、為替変動に関しては、2024年以降140円台から円安方向で、足元150円台で推移していますが、日銀のマイナス金利政策解除による影響や、米国の大統領選の行方等見通しが不透明な要因も多く、引き続き急激な為替変動には注意が必要な状況にあります。
このような状況のなか当社グループでは、人的リソース不足への対応や在庫管理の最適化、部材のリードタイムの長期化による生産納期への影響やキャッシュ・フロー改善など、早急に対処しなければならない課題が存在しており、中でも財務体質の改善については喫緊の課題であると認識しています。
航空需要の変動に対し柔軟且つ強靭に対応していくため、より機動的に企業変革や意識改革を行い、引き続き業務プロセス改革、DX(デジタルトランスフォーメーション)等の施策を推進し、選択と集中により効率的且つ筋肉質な企業構造への変革、収益力の改善を図ってまいります。又、技術の取組みを強化し、新視点による事業領域の拡大を目指すと共に、安全・品質第一の企業文化の更なる醸成、マテリアリティ(重要課題)をはじめとしてサステナビリティ課題への取組みにも注力してまいります。
最後に、当社は、2019年11月12日付「当社航空機内装品製造事業における業務改善命令に対する改善措置の提出について」にて公表した再発防止策をはじめ、安全・品質を第一にコンプライアンス重視を徹底する企業風土への改善と信頼回復に向けた活動を推進しております。2021年1月には、「安全最優先の原則」「関係法令等の遵守の原則」「安全管理体制の継続的改善の原則」の3つの原則からなる全社の安全方針を新たに定め、安全管理体制を統括する組織として本社に安全品質統括部を設置し、グループ会社を含めた安全文化の醸成を目指しております。
事業別の主要な取組みは次のとおりです。
[航空機内装品等製造関連・航空機シート等製造関連]
① 「選択と集中」の戦略に基づき、航空機シート事業の開発を伴う受注を一時的に凍結し、開発人財と生産キャパシティを当社の主力である航空機内装品事業に集約することで、需要が逼迫している内装品事業における応需能力の回復と収益力の強化を図ります。
② 品質管理の徹底や製品開発の改善、生産プロセスの効率化などを通じて、優れた品質の確保、納期遵守、スピード感のある対応、適正な価格設定などを実現し、顧客満足度の更なる向上を目指します。
③ 生産拠点の再配置や製造プロセスの標準化、サプライチェーンの効率化などを行い、海外拠点の更なる有効活用を推進することで、応需能力の強化・拡大に向けた国内外拠点の最適化とグローバル量産体制の構築を目指します。
[航空機器等製造関連・航空機整備等関連]
「航空機器製造事業部」と「航空機整備事業部」の組織統合によるシナジー効果を強化し、収益力を強化する。
① 安全最優先の品質管理体制のもと、付加価値の高い製品やサービスを提供し、航空宇宙領域における『Jamco as a Service』を具現化します。
② スマートファクトリー、DXを推進し、生産性の向上に取り組みます。
③ 次世代機を見据えた、ADP、複合材の製品開発及び特殊工程技術を活用した製品の受注獲得・売上拡大を図ります。
④ 豊富な整備実績で培った事業の強みを最大限に発揮し、官需・民需の事業バランスを踏まえて、環境の変化に応じた事業拡大を目指します。
文中の将来に関する事項は、有価証券報告書の提出日現在において当社グループが合理的に判断したものであります。
当社は、2022年5月に次のサステナビリティについての基本方針を策定しました。
ジャムコグループは、自然との共生をはかり、企業活動を通じて人々の幸せと豊かな社会づくりを追求し、世界の持続的な発展に貢献していきます。
・ グローバル社会が直面する地球環境問題をはじめとした様々な課題に挑戦します。
・ 地球温暖化の問題を喫緊の課題と認識し、あらゆる環境負荷低減施策に取り組みます。
・ 事業環境の変化を新たな成長の機会と捉え、より安全で安心な製品・サービスの提供を通じて持続可能な社会づくりと企業価値の向上を目指します。
この基本方針に基づき、サステナビリティに関して当社グループでは次のような取組みを行っています。
当社の取締役会は、経営方針や経営計画等の経営の重要事項の審議・決定・監督を通じて、気候関連リスク・機会への対応など気候関連課題を含むサステナビリティ活動に係る重要な方針や課題対応、人員計画や設備投資等のリソース配分の決定等に関与しています。
サステナビリティに関する取組みの執行体制は以下のとおりです。
① サステナビリティ推進ボード(Sustainability Promotion Board:以下「SPB」という。)
SPBは、経営層によるサステナビリティに関する内部統制組織と位置付け、代表取締役社長を議長にサステナビリティ推進、業務統括、経理財務をそれぞれ担当する執行役員で構成しています。
SPBでは、当社のビジョンや経営戦略に影響を及ぼすようなサステナビリティに関する重要な方針の決定及び重要課題(マテリアリティ)の特定、並びにこれらに関する施策や重要事項を決定すると共に、サステナビリティ活動全体の実効性の監視、監督を行っています。又、その決定事項や活動状況については、適時、取締役会に報告しています。
SPBでは、2050 年に向けたカーボンニュートラルをはじめとした環境課題への対応はもとより、ESG、SDGs を踏まえた中長期的な視点でサステナビリティへの取組みを推進しています。
② サステナビリティ活動の推進体制
本社機構にサステナビリティ推進部を置き、同部はSPB事務局として、グループのサステナビリティ全体の取組みを統括すると共に、SPBの方針に沿ってマテリアリティ等の実務対応をするワーキング・グループの活動を主導して、気候変動課題への取組みを含めた活動を推進しています。サステナビリティ推進担当執行役員は、これらの活動状況を定期的に取締役会へ報告しています。
・EMS推進委員会
EMS推進委員会は、社内規程及びISO14001環境マネジメントシステムに則した環境保全活動を推進する組織です。サステナビリティ推進担当執行役員(環境統括責任者)を委員長にサステナビリティ推進部にEMS推進委員会事務局を置き、各事業部長及びサステナビリティ推進部長(以上、環境管理責任者)並びに各職場のエコリーダーを委員として構成しています。
・CSR推進委員会
CSR推進委員会は、ISO26000の中核主題等の社会的な課題全般に対応するためのCSR活動を推進する組織です。サステナビリティ推進担当執行役員を委員長にサステナビリティ推進部にCSR推進委員会事務局を置き、それぞれの社会課題を主管する事業部及び本社各部門を代表する委員で構成しています。
経営環境の変化に伴い、対処すべきリスクの種類や影響の度合いも常に変化しています。こうした変化に迅速且つ的確に対処できるリスクマネジメント能力とリスクへの対応の優劣は、企業の存続や企業価値の評価にも直結して来るものと認識しています。当社グループの総合的なリスク管理体制は以下のとおりです。
① リスクマネジメント体制
当社の「内部統制規程」において「内部統制体制の構築と維持に関する基本方針」を定めています。この方針に従い、内部統制を統括するCompliance Risk(CR)会議(議長:代表取締役社長)の下、代表取締役社長が取締役又は執行役員の中から指名したチーフ・リスクマネジメント・オフィサー(CRO)が責任者となり、リスクマネジメントを統括しています。
・リスクマネジメント委員会
リスクマネジメント委員会は、全社のリスクマネジメントを統括し、リスクマネジメントを推進する組織です。CROを委員長に業務統括部にリスクマネジメント委員会事務局を置き、事業部及び本社部門の委員により構成しています。同委員会では、全社リスクの識別、分類、分析及び評価を行い、主要なリスクへの対策を立案してCR会議へ提言しています。CR会議はリスクマネジメント委員会の提言を受けて、リスク対策を行う部門を定め、その実行を指示しています。
② リスクの評価・特定と管理
当社の「リスクマネジメント規程」において以下の事項を定めてリスクマネジメントを運用しています。
・リスクマネジメント方針
・リスクマネジメント体制
・リスクマネジメント取組内容
・リスクの評価、対策の立案と実施
・研修
・活動の監視
当社では、災害リスク、社会リスク、政治リスク、経済リスク、戦略リスク、オペレーションリスク、ガバナンス・企業文化リスクに対処するため、およそ160 項目のリスクを洗い出し、全社に影響を及ぼす主要リスクへの対応はリスクマネジメント委員会で、又、部門固有のリスクに対してはそれぞれの部門のリスクマネジメント責任者が評価、分析、対策立案、対策について継続的に管理しています。
又、事業上、グループ企業と直接的に関係する部門は、グループ企業においてもリスクが顕在化し得ることを認識し、グループ企業の日常のリスクマネジメントに協力する体制をとっています。
当社グループでは、JAMCO Vision 2030 で掲げる価値創造企業へのロードマップと長期経営戦略としてAction Plan 2030(以下「AP2030」)を策定し、その取組みの柱のひとつであるサステナビリティ・トランスフォーメーション推進プログラム(全社サステナビリティ課題対応プロジェクト)に取り組んでいます。サステナビリティについての基本方針に基づき、グローバル社会が直面する様々な課題の解決に挑むと共に、社会の変化(リスク)を事業の新たな成長機会と捉え、航空業界で培った技術力と確かな品質を進化させ、持続可能な社会づくりとその発展に貢献していきます。
SPBは、気候変動への対応を柱に、「2050年カーボンニュートラル」を念頭に置いたグループ全体のESG及びSDGsへの具体的な取組みを推進します。 又、SPB傘下のワーキング・グループは、新たなビジネスの創出に取り組み、JAMCO Vision 2030の実現(価値創造企業グループの実現)に貢献します。なお、サステナビリティ・トランスフォーメーション推進プログラムでは、CSR活動の取組みと併せてサステナビリティ全般に係る課題抽出と対応についても推進していきます。
当連結会計期間においては、2023年3月に特定したマテリアリティ(ESG重要課題)の取組み体制の構築を進めました。事業部及び本社部門において、マテリアリティに対する具体的な取組み事項の洗い出しを行うとともに、事業部において、事業部長及び事業部の執行役員を責任者としてマテリアリティへの取組み管理部門を選定し、事業部内のマテリアリティへの対応・施策関係部門が具体的なアクションを主体的に実行する体制の基盤をつくりました。
又、取組み体制の構築と並行して、マテリアリティのなかで優先課題として認識した、「カーボンニュートラルへの取組み」、「資源循環への取組み強化」の重点ワーキング・グループ会議を全社横断的に行い、GHG排出量削減と廃棄物の総排出量削減における課題とその取組みを阻害する真因の分析を進めました。
加えて、「生き生きとした職場づくり」の重点ワーキング・グループ会議では、人的資本経営の施策と人事部門のこれまでの施策を比較検討し、人財育成・教育、人事制度、社員とのエンゲージメント等に係る人的資本に関する課題とその取組みを阻害する真因の分析を進めました。
次期以降、全社横断的ワーキング・グループ会議で決定した優先的に取り組む施策について、社内の合意形成を進め、中長期的な取組み計画及び価値創造ストーリー策定に向けた取組みを継続してまいります。
■ ジャムコグループが取り組む重要課題(マテリアリティ)
国際ガイドライン(GRIスタンダード、SASB)やSDGs、ESG評価機関の評価項目などをベースに、自社の事業活動での課題やお客さま及びサプライチェーン・パートナーとの取組み課題を整理、抽出し、ステークホルダー及び自社の視点による評価を実施しました。その評価結果に基づき、SPB傘下のワーキング・グループや外部専門家を交えた検討を経て、SPBにおいて次の7項目のマテリアリティを特定しました。
<気候変動及び人的資本への取組みについて>
気候変動課題及び人的資本への取組みについては次のとおりです。
① 気候変動への対応
サステナビリティに関係する各種社会課題のうち、喫緊の対応が必要な事案として先進各国政府が協働して推進を強化している温室効果ガス(GHG)排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の実現に向けた取組みを進めています。
航空機内装品事業部の国内拠点における、自社施設内での再生可能エネルギーの生産の取組みを進め、オンサイトPPAによる電力供給契約締結等の活動を進めました。
今後、航空機整備・製造事業部の国内拠点においても同様の取組みを進めてまいります。
気候変動への対応(TCFD提言に基づく情報開示)については、
https://www.jamco.co.jp/ja/csr.html
② 人的資本への対応
当社グループは、「航空業界を基軸に、技術力を生かした付加価値の高い製品及びサービスを供給する。」を経営基本方針のひとつに掲げており、飛行安全の確保と品質の向上を最優先に、顧客のニーズに応える製品・サービスの供給に努めています。その実現には、専門的で高度な知識・技量・能力、経験を有する人財が必要であり、人財は最も重要な資産であると言えます。又、最近では、産業構造の恒久的変質やデジタル技術の進展などによって、新たな事業リスクへの対応や事業機会の創出がより一層求められており、このような対応に順応するための人財の確保や育成が急務となっています。こうした人財に必要な知識やスキルの継続的な習得機会を設けるために、長期経営戦略AP2030におけるアクションプランの柱のひとつにHRXプログラムの推進(戦略的DX人財育成)を掲げ、変革リーダーマインドセット向上に資する社外教育プラン等を活用した取組みを開始しています。
なお、人的資本についてのサステナビリティ課題に関しては、ガバナンスについては(1)項のガバナンスに記載の体制にて、又、リスク管理については(2)項のリスク管理に記載のリスクマネジメント活動において、それぞれ対応しています。
A. 人財育成について
A-1. 人財育成方針
人財育成において教育訓練は重要な施策であり、教育訓練方針を社内規程に定めています。
又、2024年度には、「持続可能な企業価値の向上」を実現するために必要な「あるべき人財像」を定め、人財育成方針を策定していきます。
A-2. 人財育成制度
次に示す研修制度等を通じて人財育成を推進しています。
a. 階層別研修
階層別研修は、新たな昇格者向けにエントリー研修とブラッシュアップ研修で構成し、当該役職に期待される役割の理解とそれに応じた能力の向上及び職場で直面する課題解決の思考や手法等の習得を目的としています。
b. 選抜式研修
将来の幹部候補者を選抜して早期に育成するための研修で、事業環境を認識させながら気付きを与えて自覚と行動変革を促すと共に、マネジメント能力の向上を図っています。
又、女性活躍推進も重要な経営課題としており、女性リーダー及びその候補者育成のためのトレーニングプログラムを通じて、リーダーとしての役割を理解して自覚を促すと共に、ビジネススキルを向上させる研修を実施しています。
c. 専門スキル研修
職務上必要となる社内資格や公的資格、専門的な知識・技術・技能等を習得するため、各事業部による専門教育を計画的に実施しています。
d. 語学研修
会社の国際競争力向上に向けて、グローバル人財育成のための海外語学研修制度の中で、海外派遣プログラム、語学学校の研修プログラム、E-ラーニングやオンライン英会話など種々のカリキュラムを実施しています。海外派遣プログラムでは、語学力の向上に加え、異文化や社会的構造の違いなどを理解しグローバル思考を醸成する目的で、北米の大学及びフィリピンの語学学校に8週間程度派遣しています。
e. テーマ別研修
各種法令、社会情勢や事業環境の変化等に応じて、コンプライアンスや情報セキュリティをはじめ、一般的、専門的知識の醸成を目的とした研修を随時実施しています。
f. 自己啓発研修
個人のキャリアアップ、スキルアップに資する各種通信教育、E-ラーニング等の自己啓発教育を自律的に受講する制度を設けています。
g. DX人財育成
デジタル・トランスフォーメーションを推進すべく、DX人財の育成を進めています。長期的且つ幅広い視野を備えた次代の変革リーダーを育成すると共に、役職員全体の変革意識の向上及びデジタルリテラシーの醸成を目的に、教育のコースを「マインドセット向上」、「ビジネススキル向上」、「デジタルリテラシー向上」に区分して教育を行っています。
h. キャリア・ディベロップメント・プログラム(CDP)
従業員一人ひとりが長期にわたって高いモチベーションを維持し、能力を発揮していけるようにCDPを人財育成施策として策定しています。
CDPにおいてキャリアローテーション制度は、従業員が自身の職務経験や適性を踏まえて主体的にキャリアの目標を定め、その実現に向けた行動を支援する制度で、キャリアに必要な複数の職種を異動希望にも配慮しながら経験させるよう運用しています。又、サクセッションプランを運用して次代を担う経営層・経営幹部候補者を計画的に育成しています。
A-3. 多様な人財の確保と育成について
当社グループにおける採用活動は、経営戦略及び経営計画に基づいて男女の隔たりなく人物本位で選考のうえ採用しています。又、キャリア採用にも注力し、必要とする即戦力人財を通年採用しています。キャリア人財は、貴重な戦力であるのみならず多様性のある組織づくりにも貢献しています。
一方、創業以来、航空機に係る製造・整備を生業としてきてたことから、従来、役職員に占める女性比率は常に低い水準で推移してきましたが、女性活躍推進に注力し、経営幹部や管理職に占める女性割合の引き上げに向けた取組みを推進しています。
B. 社内環境整備について
B-1. 社内環境整備に関する方針・体制・施策等
a. 安全衛生
当社は、労働安全の確保は経営の最も重要な基盤、且つ社会的責務であることに鑑み、役職員・組織が密接に協力、連携しながら安全で働きやすい職場環境の実現を目指しており、安全に関する基本方針を社内規程に定めています。又、安全衛生管理体制として人事総務担当執行役員を委員長に中央安全衛生委員会を本社に置き、各地区には地区安全衛生委員会を設置して組織的に活動しています。
b. 人権
人権尊重の責任を果たすべく、国際人権基準に準拠した人権方針を社内規程に定めています。又、コンプライアンス規範には、「個人の人格・個性を尊重すると共に、差別・ハラスメント等の行為のない、安全で働きやすい環境の確保に努めます。」を掲げ、職場環境の維持改善に努めています。
2023年度より、ジャムコグループにおける人権デューデリジェンスに着手しました。
c. ダイバーシティ(多様性)
さまざまな背景を持つ社員が活躍できる職場環境を整え、人財のダイバーシティの推進を図ることで、グループの持続的成長とより良い社会づくりに貢献していきます。女性活躍推進については、一般事業主行動計画において女性役職者(主任以上)の割合の引き上げ、女性・男性社員それぞれの育児休業取得率の向上を目標に掲げています。又、女性の管理職の育成にも近年注力してきましたが、2022年度には社外取締役に女性を初めて登用しました。
d. 障がい者雇用
当社グループでは、障がいを持つ人の雇用創出と活躍推進に継続的に取り組んでいます。グループ各社において、障がい者が共に働きやすい職場環境の整備に努めると共に、特例子会社である(株)オレンジ・ジャムコ(当社100%出資 1999年設立)における障がい者雇用も積極的に進めています。
e. ワークライフバランス
当社では育児や介護などにおけるワークライフバランスを支援する諸制度を整備しています。産前産後・出産時休暇、育児休業、育児時短制度、子の看護休暇、介護休暇・休業制度等の制度の利用促進に向けた周知や相談窓口の設置、各職場での協力体制をとっています。男性従業員の育児休業取得にも注力しています。又、入社年次が浅い社員のワークライフバランス向上のため、入社3年までの社員の年次有給休暇の付与日数を引き上げ、一律20日としました。
f. 健康への取組み
当社では社員の健康を守るため全従業員に対して、法定のストレスチェックに加えてメンタルヘルス教育を行っているほか、健康診断受診の義務化、一定年齢以上の人間ドック受診支援(全額補助)、24時間健康相談を受け付ける外部相談窓口を設置するなどの健康維持のための環境を整えています。又、従業員がけがや病気で働けなくなり収入が減少した場合に備えるため、GLTD(団体長期障害所得補償保険)制度を導入しております。
環境・社会課題を解決するための取組みとしてJAMCO Vision 2030、AP2030におけるサステナビリティ・トランスフォーメーション推進プログラムの中で指標や目標を設定し進捗管理を行っています。
①気候変動課題に関する指標及び目標
GHG排出量の推移と削減目標について、日本政府は、米国主催気候サミット(オンライン開催)において、2050年カーボンニュートラルと整合的で野心的な目標として、2030年度に温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指すこと、更に50%の高みに向け挑戦を続けることを表明しました。
これを受けて当社も2050年カーボンニュートラル、2030年については、Scope1とScope2の合計で、2019年度を基準として50%以上の削減目標を設定いたしました。
なお、GHG排出量データを、
②人的資本に関する指標及び目標
戦略において記載した人的資本への取組み等により、既存事業の更なる成長に加えて、航空宇宙産業を通じて社会に貢献できるイノベーティブな企業集団づくりに努めてまいります。職場環境については、2023年度中に厚生労働省「くるみん」認定を申請し、2024年5月に認定されました。2024年度は、従来実施していた従業員意識調査アンケートよりもエンゲージメント要素を充実させた、従業員エンゲージメントサーベイを実施することを通じて、安全に、心身共に健康で働ける職場づくりはもとより、ダイバーシティ及びワークライフバランスの推進にも継続的に取り組んでまいります。
又、2023年度から目標としている「一般事業主行動計画」については、下表のとおりです。
計画期間 2023年4月1日~2026年3月31日までの3年間
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。
当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に当社グループの経営成績等の状況に与える影響の程度においては、合理的に予見することが困難であるため記載しておりません。
当社では、「リスクマネジメント規程・規則」に基づき、リスクマネジメント体制を構築し、関連企業のリスク管理状況も確認して対策に協力することで、グループ全体の事業リスク低減に取組んでおります。具体的には事業レベルでのリスクをすべて洗い出し、それぞれの事業においてリスクの評価を行い、合理的な対策を立案・実行することでリスクの低減に努めております。
なお、文中において将来に関する事項が含まれていますが、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。
① エアラインの経営基盤の悪化について
当社グループは航空業界を事業領域としており、景気悪化や国際紛争・テロの発生、感染症の流行等による旅客・貨物の空輸量の落ち込みを始め、原油価格の高騰、その他エアライン間の競争激化などによるエアラインの業績や経営基盤の悪化は、受注高や売上高の減少など、当社グループの財政状態、経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
② 航空機メーカーの生産計画の大幅な変更について
航空機内装品等製造関連事業、航空機シート等製造関連事業及び航空機器等製造関連事業では、ボーイング社、エアバス社向けの製品を生産しています。特に航空機内装品等製造関連事業では、ボーイング社向けに777、777-9、767型機用ラバトリー、及び787型機用についてはラバトリーに加えてギャレーなどを独占的に供給しています。従いまして、これら航空機メーカーにおける新型機種の開発の遅れ、生産スケジュールの大幅な変動、労働争議による操業停止などが発生した場合、当社グループの財政状態、経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
③ 航空機事故等による航空機の長期にわたる運航停止について
航空機整備等関連事業では、官公庁、航空機使用事業者、国内エアラインなどが所有する、中型・小型航空機の機体及び装備品の整備、修理、改造などを手がけています。これらの航空機等に重大な不具合や事故が発生した場合、その原因究明及び安全性の確認のため同型式航空機の運航を見合わせることがあります。又、航空機等に安全性を著しく損なう問題が発生した場合は、法令に基づき国土交通大臣から耐空性改善通報が発出され、安全性が確認されるまで同型式航空機の運航が認められない場合があります。
このような事態が発生した場合は、当該型式航空機に関連する整備作業が減少するなど、当社グループの財政状態、経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
④ 資材調達の遅延、価格の変動について
当社グループの事業では、原材料、部品等を多くの外部供給者から調達しています。航空機に使用する素材、金属、複合材料等については、その特殊性から調達先が限定されるものや調達先の切り替えが困難なものがあり、供給者における事故や品質上の問題、或いは国際情勢の悪化等により供給不足及び納入の遅延等が発生した場合は、当社グループの生産スケジュールに悪影響を及ぼす可能性があります。又、原材料、部品等の需要の増加や原油価格の高騰などにより調達価格が高騰した場合には、製造原価が上昇し、当社グループの財政状態、経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 為替レートの変動について
航空機内装品等製造関連事業、航空機シート等製造関連事業及び航空機器等製造関連事業においては、海外エアライン及び海外航空機メーカーとの輸出取引のなかに主として米ドルによる外貨建取引を多く含んでいます。
又、原材料や部品等の多くは、輸入によって調達しています。この輸出入取引により、外貨による決済を相殺することで為替変動による影響の一部をヘッジしていますが、現在の取引状態においては輸出額が輸入額を上回るため、当社グループの経営成績は、為替相場の円高局面ではマイナスに、円安局面ではプラスにそれぞれ影響を受けています。なお、これらの為替変動リスクは、為替予約取引などによりヘッジしていますが、想定を超えた変動があった場合は、当社グループの財政状態、経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
又、海外の連結子会社の現地通貨建ての決算は、連結財務諸表作成において円換算されるため、換算時の為替レートが、円換算後の決算に影響を与えています。
⑥ 金利の上昇について
現在、当社グループにおける資金調達は、金融機関からの長期及び短期借入にその多くを依存しています。特に航空機内装品等製造関連事業では、製品等の受注から納入までの期間が長期間にわたるものが多くを占めており、棚卸資産の回転期間は長い傾向にあります。又、取引先からのスケジュール変更による出荷延期などもあり、現在も借入金残高は高水準で推移しており、今後、金融情勢の変化によって金利が上昇した場合には、資金調達コストが更に増大し、当社グループの財政状態、経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑦ 自然災害による事業活動の阻害について
当社グループは、開発・生産・販売等の拠点を国内外に分散して設けていますが、それらの拠点において、地震等の大規模災害の発生により短期間で復旧不可能な損害を被るなどした場合、原材料・部品の調達、生産活動、製品の販売・サービス活動が中断又は遅延するおそれがあります。又、地震、台風、積雪等により空港・港湾が長期間閉鎖された場合は、事業活動が制限されるおそれがあり、当社グループの財政状態、経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑧ 製品・サービスの品質保証について
当社グループは、品質や安全に関する法令・規則の遵守に努めると共に、製品・サービスの品質や信頼性の向上に努めています。しかしながら、万一、製品・サービスに起因する品質上・安全上の問題により大規模なリコールや賠償請求に発展する場合は、多額のコストの発生につながり、当社グループの信用低下や財政状態、経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。又、顧客との契約上の保証条項の内容においても、支払補償費な どの発生費用により当社グループの信用低下や財政状態、経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑨ 法的規制等について
当社グループは、国内及び諸外国の航空法をはじめとした関連法令等に基づき、航空機の修理、改造、及び航空機装備品の設計、製造、修理、並びに改造等の事業を行っており、又、その事業の一部については、各国関連当局の許認可を受けて実施していることなどから、様々な規制を受けています。各種法令に違反した事実が認められた場合は、許認可の取り消しなどの罰則を受ける場合があり、当社グループの信用低下や財政状態、経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑩ 情報セキュリティについて
当社グループは、製品の設計・開発、生産、販売など、事業活動において、情報技術やネットワーク、システム(ITシステム)を利用しています。これらITシステムの運用並びに導入・更新に際しては、システムトラブルや情報の外部漏洩が発生しないよう安全対策を講じていますが、予想をこえるサイバー攻撃、不正アクセス、コンピュータウイルス侵入等により、重要な業務の中断や、データの破損・喪失、機密情報の外部漏洩などが発生する可能性があります。この場合、当社グループの信用低下や財政状態、経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑪ 気候変動への対応について
航空産業にかかる環境問題は、従来、空港周辺の騒音問題と大気汚染問題に焦点があてられてきましたが、地球温暖化への関心の高まりと共に、航空機からの CO2 排出量にも注目が集まっています。
気候関連のリスクについては移行リスク(炭素税の導入と引き上げ、炭素排出や化石燃料の使用に関する規制、資源リサイクルへの対応、低炭素適合商品開発など)、物理的リスク(自然災害など)があります。
このような気候関連リスクへの対応が不十分とみなされた場合は、製品やサービスを顧客に受け入れていただけず、目標とする売上高、市場シェアが得られないなど、当社グループの財政状態、経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
気候関連リスクの詳細は、当社のウェブサイトのサステナビリティ情報「気候変動への対応(TCFD提言に基づく情報開示)」のページに掲載しています。
https://www.jamco.co.jp/ja/csr.html
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中において将来に関する事項が含まれていますが、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。
当連結会計年度の世界経済は、回復基調を維持していますが、中東における地政学上リスクや長期化するウクライナ情勢によるエネルギー価格の変動や原材料価格の上昇、世界的な金融引締めに伴う影響や中国の景気減速など、依然として不透明な状況が続きました。このようななかで、ドル円為替相場は対米ドル円レート131円台から151円台で推移しました。
航空輸送業界では、新型コロナウイルス感染症の鎮静化により旅客需要が回復し、エアラインでは大口の機体発注などの動きが見られ、これを受けて航空機メーカーは機体の増産に取り組んでいます。一方で、機材の運航や空港施設、加えて機体製造に係わるサプライチェーン全体においては人材不足となり、人材確保が急務となっています。
このようななかで当社グループでは、2030年におけるジャムコグループのあるべき姿、進むべき方向性を明文化したJAMCO Vision 2030を実現するための三本柱として、JX:ジャムコ・トランスフォーメーション(業務改革)、SX:サステナビリティ・トランスフォーメーション、HRX:ヒューマンリソース・トランスフォーメーションのタスクチームを設置して、当社業務の基礎課題を解決すべく推進体制の強化を行いました。
航空機内装品等製造関連においては、航空旅客需要の回復に伴い、航空機メーカーの増産やエアラインのスペアパーツ需要の増加に対応すべく、増産体制強化に取り組みました。又、製造工程においては、グループ全体の経営資源の有効活用、効率化・合理化による経営基盤の強化を図るため、国内子会社の統合を決定すると共に、ジャムコフィリピンの生産能力・機能拡張計画や国内外のサプライチェーンの強靭化に取り組みました。
航空機シート等製造関連においては、航空機メーカーによる新造機の増産計画やエアラインが運航している既存機の機内改修需要が急拡大していることから、「選択と集中」により、航空機シートセグメントに含まれる航空機シート事業の開発を伴う受注を一時的に凍結し、開発人員と生産キャパシティを当社の主力である航空機内装品事業に集約することとしました。
航空機器等製造関連においては、生産性改善の取組みを行うと共に、熱可塑性CFRPを活用した航空機用軽量機体部材の開発や熱硬化性CFRP部材の航空機分野以外への展開を進めました。
航空機整備等関連においては、飛行安全の確保と品質向上の取組みを継続すると共に、エアライン、官公庁向け整備の受注に努め、安定した収益を上げるため事業基盤の強化に取り組みました。更に、無人航空機(ドローン)に対する運用サポートなどの新規事業分野への取組みも開始しました。
この結果、当連結会計年度の経営成績は、売上高 63,999百万円(前期比 16,773百万円増)、営業利益 2,383百万円(前期比 649百万円増)と増収増益でしたが、経常利益においては、為替差益の減少や金利負担増加などにより 999百万円(前期比 127百万円減)、親会社株主に帰属する当期純利益 1,710百万円(前期比 463百万円減)となりました。
なお、当連結会計年度末に次期以降の完成工事に対する工事損失引当金を 5,209百万円計上しております。この工事損失引当金による期間損益への影響は、当第4四半期連結会計期間において売上原価 900百万円の増加(第3四半期連結会計期間末の工事損失引当金は 4,308百万円)、又、当連結会計年度においては売上原価 929百万円の増加(前連結会計年度末の工事損失引当金は 4,280百万円)となりました。
グループ全体の販売費及び一般管理費、営業外損益、特別損益、法人税等調整額の状況は次のとおりです。
販売費及び一般管理費は、人件費、保証工事費及び販売手数料の増加などにより 9,541百万円(前期比 1,202百万円増)となりました。
営業外損益は、為替差益が減少したことや米国ドル金利の上昇により支払利息が増加したことなどから 1,383百万円の損(前期は、606百万円の損)となりました。
特別損益は、連結子会社であるJAMCO SINGAPORE PTE LTD. の清算に伴い関係会社清算益として141百万円を特別利益として計上しましたが、航空機シート事業の開発を伴う受注の一時凍結に伴い固定資産の減損損失として317百万円、航空機内装品セグメントにおいて、顧客との補償条項に基づく損害補償費として303百万円を特別損失として計上したことなどにより412百万円の損(前期は467百万円の益)となりました。
法人税等調整額は、繰延税金資産の回収可能性について慎重に検討した結果、繰延税金資産の計上により△1,330百万円(前期は、△1,186百万円)となりました。
セグメント別の業績は次のとおりです。
[航空機内装品等製造関連]
当事業では、ボーイング787型機向け製品の出荷が再開したことや運航機数の増加によりエアライン向けスペアパーツ販売が増加したことなどから、前期に比べ売上高は増加しました。又 、経常利益については、原価高の影響などがあったものの、スペアパーツ販売の増加に加え、外貨建て売上高の円安による効果などから増加しました。
この結果、航空機内装品等製造関連は、売上高 40,986百万円(前期比 11,371百万円増)、経常利益 4,970百万円(前期比 1,383百万円増)となりました。
[航空機シート等製造関連]
当事業では、ボーイング777型機向けビジネスクラス・シート「Venture」の出荷が進んだことなどから、前期に比べ売上高は増加しました。一方、経常損益については、他機種展開に伴う初期費用の増加、米国におけるインフレーションや円安によるドル建てコストの上昇などにより経常損失となりました。
この結果、航空機シート等製造関連は、売上高 9,208百万円(前期比 5,338百万円増)、経常損失 4,015百万円(前期は、経常損失 2,708百万円)となりました。
[航空機器等製造関連]
当事業では、民間航空機向け炭素繊維構造部材の出荷が増加したことなどから前期に比べ売上高は増加しました。一方、経常損益については、原価増の影響などにより経常損失となりました。
この結果、航空機器等製造関連は、売上高 5,566百万円(前期比 490百万円増)、経常損失 159百万円(前期は、経常利益 85百万円)となりました。
[航空機整備等関連]
当事業では、部品整備において一部プログラムの出荷が翌期に繰り延べられたことなどから前期に比べ売上高は減少しました。一方、経常利益については、機体整備が堅調に進捗したことにより採算性が向上し増加しました。
この結果、航空機整備等関連は、売上高 8,235百万円(前期比 427百万円減)、経常利益 211百万円(前期比 40百万円増)となりました。
[その他]
その他の区分には、連結子会社の株式会社オレンジジャムコの事業を含んでおり、当社施設内の清掃及び補助的作業等セグメント間の内部取引が中心です。
この結果、その他の区分では、売上高 2百万円(前期比 0百万円増)、経常損失 6百万円(前期は、経常損失 6百万円)となりました。
航空輸送業界では、新型コロナウイルス感染症の鎮静化により旅客需要が回復し、エアラインでは大口の機体発注などの動きが見られ、これを受けて航空機メーカーは機体の増産に取り組んでいます。一方で、機材の運航や空港施設、加えて機体製造に係わるサプライチェーン全体においては人材不足となり、人材確保が急務となっています。
このような中で当社グループでは、航空機メーカーによる新造機の増産計画やエアラインが運航している既存機の機内改修需要が急拡大していることから、「選択と集中」により、航空機シートセグメントに含まれる航空機シート事業の開発を伴う受注を一時的に凍結し、開発人員と生産キャパシティを当社の主力である航空機内装品事業に集約することとしました。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 金額は、販売価格で記載しております。
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 金額は、販売価格で記載しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売高に対する割合
当連結会計年度末の資産合計は 108,216百万円となり、前連結会計年度末に比べ 7,422百万円増加しました。内、流動資産については、受取手形、売掛金及び契約資産の増加(前期末比 2,702百万円増)、仕掛品の増加(前期末比 2,244百万円増)等により流動資産合計で前連結会計年度末に比べ 5,563百万円増加しました。又、固定資産合計については、投資その他の資産の増加(前期末比 1,713百万円増)等により前連結会計年度末に比べ 1,859百万円増加しました。負債合計は 93,144百万円となり、前連結会計年度末に比べ 5,733百万円増加しました。主な要因は、支払手形及び買掛金の増加(前期末比 2,232百万円増)、電子記録債務の増加(前期末比 2,039百万円増)等によるものです。
純資産合計は 15,071百万円となり、前連結会計年度末に比べ 1,688百万円増加しました。主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益などによる利益剰余金の増加等によるものです。この結果、自己資本比率は13.9%となりました。
セグメントごとの資産は、次のとおりです。
[航空機内装品等製造関連]
当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末と比べて5,880百万円増加し、72,360百万円となりました。当事業では、運行機数の増加によりエアライン向けスペアパーツ販売が増加したことやボーイング787型機向け製品の出荷が再開したことなどにより売上高が増加し、売掛金が増加いたしました。又、一部製品の出荷が翌期以降に繰り延べられたことなどから棚卸資産が増加したことなどにより、前期比で増加いたしました。
[航空機シート等製造関連]
当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末と比べて1,170百万円減少し、11,522百万円となりました。当事業では、「選択と集中」により、航空機シート事業の開発を伴う受注の一時凍結に伴い、固定資産の減損を行ったことなどから固定資産が減少したことなどにより、前期比で減少いたしました。
[航空機器等製造関連]
当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末と比べて296百万円増加し、10,385百万円となりました。当事業では、航空機エンジン関連部品の納入遅れなどにより出荷が翌期以降に繰り延べられたことから棚卸資産が増加したことなどにより、前期比で増加いたしました。
[航空機整備等関連]
当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末と比べて2,416百万円増加し、13,916百万円となりました。当事業では、部品整備において一部プログラムの出荷が翌期に繰り延べられたことなどから棚卸資産が増加したことなどにより、前期比で増加いたしました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の増減は、以下に記載のキャッシュ・フローにより、192百万円キャッシュ・アウトフローとなりました。
[営業活動によるキャッシュ・フロー]
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、 1,403百万円のキャッシュ・インフローとなりました。これは、売上債権、棚卸資産の増加があったものの、仕入債務、減価償却費、税金等調整前当期純利益の増加等によるものです。
[投資活動によるキャッシュ・フロー]
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産の取得による支出等により、 1,688百万円のキャッシュ・アウトフローとなりました。
[財務活動によるキャッシュ・フロー]
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、 555百万円のキャッシュ・アウトフローとなりました。これは、金融機関からの長期借入金返済等によるものです。
(資本の財源及び資金の流動性)
当社グループの事業活動における運転資金需要の主なものは、各事業の受注工事における製品開発、部品材料調達、試験研究活動などがあります。設備投資資金については、航空機内装品関連の主力製品であるギャレー、ラバトリー製造に係る金型、各事業の生産工場の改修及び施設設備の更新、業務効率向上のためのIT関連のシステムの導入等があります。又、試験研究活動については、航空機内装品等製造関連において次世代軽量材料の研究、次世代キャビンの研究、先端技術を適用するための基礎研究などを進めると共に、航空機器等製造関連では、炭素繊維構造部材の新たな成形方法の研究等があります。
当社グループの事業活動に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金の活用、金融機関からの借入により資金調達を行っております。
なお、当連結会計年度末の借入金残高は、主に外貨建ての借入金に対して為替の円安の影響を受け、 1,614百万円増加し、 53,947百万円となりました。引続き、資金調達コストの低減や売掛債権の早期回収に努めます。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するに当たって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(5) 主な経営指標
当社グループは、技術と品質のジャムコとして顧客からの信頼を獲得し続けることを使命として、技術力の向上、品質への取り組み強化、企業文化の再構築、人財育成を始めとする経営課題に取り組み、環境の変化を上回るスピード感と積極的な行動力の発揮により、“選択と集中”による収益力向上と財務基盤強化を経営方針に掲げ、経営指標を売上高経常利益率 7%以上、総資産経常利益率 7%以上と設定し、毎期継続してこの目標を達成するために種々の施策に取組んでまいります。又、自己資本比率など安全性指標についても、中期的な視野に立ち、その改善に向けて取り組んでまいります。
当連結会計年度は、売上高経常利益率 1.6%、総資産経常利益率 1.0%、自己資本比率 13.9%、自己資本利益率 12.2%となりました。これらの経営指標の最近の推移は次のとおりです。
※売上高経常利益率:経常利益/売上高、総資産経常利益率(ROA):経常利益/総資産、自己資本比率:自己資本/総資本、自己資本利益率(ROE):親会社株主に帰属する当期純利益/自己資本
(注) 1.各指標はいずれも連結ベースの財務数値により計算しています。
2.総資産経常利益率の算定における総資産は(期首総資産+期末総資産)/2で計算しています。
3.自己資本利益率の算定における自己資本は(期首自己資本+期末自己資本)/2で計算しています。
(注1)ボーイング社との契約において、当初は2005年3月にラバトリー・モジュール、2005年11月にギャレー・モジュールの契約を個別に締結しておりましたが、2014年8月に一部内容を変更し、2018年3月に両契約を統合しております。
(注2)ボーイング社との契約において、当初は2004年10月に747・767・777用ラバトリ―・モジュール、2014年8月に777-9用ラバトリ―・モジュールの契約を個別に締結しておりましたが、2021年7月に両契約を統合しております。なお、747用ラバトリ―・モジュールの契約については、2022年12月31日に契約満了となっています。
当社グループの研究開発活動は、技術力を生かした付加価値の高い製品の開発を基本方針としています。当連結会計年度においては、航空機内装品等製造関連においては、SDGs対応による材料研究やクリーンラバトリーの研究開発を進めると共に、航空機器等製造関連においては、熱可塑性CFRPの成型技術開発、航空機整備関連においては、人工知能を活用した整備管理システムの開発、ドローンを活用したビジネスの事業化に向けた研究開発、技術開発イノベーション関連ではカーボンニュートラルへの取組みや次世代モビリティ関連に取り組みました。
この結果、当期の試験研究費は、航空機内装品等製造関連において