第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 経営の基本方針

当社グループは、「Tech Tomorrow ~テクノロジーを活用して、わたしたちがつくった新しいサービスで、昨日よりも便利な生活を創る~」をミッションとして掲げ、「OMO事業」、「フィンテック事業」をはじめとする、テクノロジーを活用した新しいサービスの提供に取り組んでいます。これら事業活動の推進を通じ、社会課題の解決に寄与するとともに、当社グループの継続的な企業価値向上に向け取り組んでいきます。

 

(2) 重視する経営指標

当社グループは、安定的かつ継続的な成長を図るため、中期的な目標として売上高成長と利益成長の両立を目指します。このため、当社グループでは、売上高に加え、株式報酬関連費用や企業結合に伴い発生する費用を控除した調整後営業利益を重要な指標としています。

 

(注) 調整後営業利益:営業利益+株式報酬費用+M&Aにより生じた無形資産の償却費用+その他一時費用

 

(3) 中期的な会社の経営戦略(経営環境、対処すべき課題と経営戦略)

当社グループでは、今後の更なる成長とミッションの実現に向け、2027年3月期を最終年度とする3カ年の中期経営計画を2024年5月に策定し、新たな成長戦略に基づく業績目標を定めています。本中期経営計画においては「当社グループの強みである開発力とビジネス創出力を活かした顧客企業のTech & Innovation Partnerへの成長」というテーマを掲げ、以下の5つの成長戦略に取り組むことで、中期経営計画の最終年度である2027年3月期において売上高82億円・調整後営業利益5億円以上をオーガニック成長のみで達成するとともに、新規事業の成長及びM&Aにより売上高・利益の更なる拡大を目指します。

本中期経営計画期間において、これらの成長戦略の実行を通じて、当社グループの開発力やビジネス創出力の活用と顧客企業のパートナーシップの強化による顧客提供価値の向上を図り、事業領域を拡張していくことで、2027年以降の次期中期経営計画においては更なる成長率の加速化を実現します。

 

① アプリ関連領域を中心としたOMO事業の継続成長

当社グループでは、スマートフォンアプリ開発やアプリマーケティングなどアプリ関連領域を中心としたOMO事業は中核事業であり、引き続き中長期の成長の柱と捉えており、アプリビジネスプラットフォーム「APPBOX(アップボックス)」の機能拡張を行うことに加え、顧客企業のアプリ事業プロデュース支援を強化することで、OMO事業の更なる成長を実現します。2024年3月期第1四半期からサービス提供を開始した、当社の新たなプロダクトであるアプリビジネスプラットフォーム「APPBOX(アップボックス)」の機能拡張を図るとともに、アプリ受託開発案件について全社横断的な標準化と効率化を促進しサービス品質向上に努めます。また、「APPBOX(アップボックス)」を活用したスマートフォンアプリ開発を推進する開発パートナー企業を開拓し、地域特化型の開発パートナー企業との連携も強化します。さらに、パートナー企業との連携を通じてパートナー企業と当社グループ双方のアプリビジネスを加速・拡大する取り組みである「APPBOX(アップボックス)パートナープログラム」を促進することで、アプリ受託開発領域から顧客企業のアプリ事業プロデュース支援領域に事業領域を拡張します。

 

② 既存の顧客基盤を活かした、アプリ関連領域以外のデジタル領域や生成AIを活用した新たなDXサービスの提供

当社グループの強固な顧客基盤を活かし、顧客企業の各業界に対応したアプリ関連領域以外のデジタル領域へ進出することに加え、生成AI等の新たな技術を活用したDXサービスの創出を図ります。当社グループでは、小売・流通、鉄道、金融業界等の大企業を中心とした顧客企業に対し、スマートフォンアプリの受託開発サービスとアプリ関連ソリューションをこれまで提供しており、当社ソリューションの導入アプリは累計300アプリを超え、当社ソリューションの導入アプリのMAU(Monthly Active Users)数は8,000万ユーザーを超えています。これらの顧客基盤を活用し、業務システムをはじめとする、各業界に対応したアプリ関連領域以外のデジタル領域へ進出するとともに、生成AI等の新たな技術を活用したサービスの拡張や展開、業務効率化による付加価値向上、新規サービスの創出を図り、今後の事業成長を促進します。

 

③ ビジネスプロデュース事業領域への進出

ビジネスプロデュース事業領域(統合マーケティング支援やビジネスコンサルティング・実行支援などを行う領域)の社内体制を強化し、顧客企業に対する戦略から実行支援までの一気通貫の支援を実現します。これまで当社グループのOMO事業オフラインマーケティング領域については、当社の連結子会社である株式会社Qoilを中心にイベントや店舗集客促進等の支援を行うリアルマーケティングの支援を中心に事業を行っていました。当社グループにおいては、当社と株式会社Qoilを中心にグループ内での連携を促進することでグループ全体での案件創出を図っており、2024年3月期においては組織面での取り組みも加速させ、連携を更に強化しています。当社と株式会社Qoilを中心とした当社グループの事業運営体制について、オフラインマーケティング領域のみならず、バリューチェーンのより上流であるビジネスプロデュース事業領域において、統合マーケティング支援やビジネスコンサルティング・実行支援などを担える体制へ転換を図り、顧客提供価値をより一層拡大させます。

 

④ 新規事業の創出・成長加速

新規事業であるフィンテック事業について、デジタル地域通貨の導入地域の拡大に加え、福祉・地域活性ポイント機能やふるさと納税ポイント機能など行政DXのインフラとしての機能を拡張することで成長を加速させます。また、その他の新規事業領域として、足下ではDX人材の最適活用ソリューションやリテールメディアへの取り組みを推進しており、当社グループの技術力やノウハウを活かせる時代のニーズに合わせた新規事業の創出も継続し、更なる成長を実現します。

 

⑤ 顧客企業とのパートナーシップの強化

上記の成長戦略を支える基盤戦略として、顧客企業との戦略的パートナーシップを通じた収益機会の創出や成長加速への取り組みを強化します。当社グループは、これまで鉄道会社や人材サービス会社とのアライアンスによるDXサービスの共同提供や、「APPBOX(アップボックス)パートナープログラム」での連携ソリューションの提供などを実施しており、今後も顧客企業と同様の提携を拡大することでパートナーシップの強化を図るとともに、資本面での提携を含めた、より強いパートナーシップの実現も目指します。

 

中期経営計画で定める上記5つの成長戦略を着実に実行し、2027年3月期の業績目標を達成するとともに、長期的かつ安定的な事業基盤の強化及び更なる成長の実現と企業価値の向上に向けて以下の事項にも取り組みます。

 

⑥ 優秀な人材の採用と育成

当社グループの持続的な成長のためには、多岐にわたる経歴を持つ優秀な人材を採用し、営業体制、開発体制、管理体制等を整備していくことが重要であると捉えています。当社グループのミッションや事業内容に共感し、高い意欲を持った優秀な人材を採用していくために、積極的な採用活動を進めるとともに、働きやすい職場環境の構築、モチベーション向上に繋がる人事制度の構築に取り組んでいきます。

 

 

⑦ システムの安定的稼働

当社グループは、インターネット上でのサービス提供を中心としており、システムの安定的な稼働が重要であると考えています。そのため、当社グループでは、サービス提供に係るシステムの保守・運用面の継続的な改善の他、長期的な視点に立ったシステム投資を行います。

 

⑧ M&Aによる事業成長の加速

当社グループの事業成長の加速のためには、オーガニック成長に加え、M&Aによる事業基盤の更なる拡大が重要であると考えています。M&Aを実施するにあたっては、既に有するサービス、技術、人材等とのシナジーを慎重に検討した上で取り組んでいきます。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループは「Tech Tomorrow ~テクノロジーを活用して、わたしたちがつくった新しいサービスで、昨日よりも便利な生活を創る~」をミッションとして掲げ、「OMO事業」、「フィンテック事業」をはじめとする、テクノロジーを活用した新しいサービスの提供や事業の創出に取組んでいます。当社グループでは、サステナビリティへの取組みは経営戦略そのものであるとの考えの下、社会課題をビジネス機会と捉え、当社グループの持続可能な成長と新たな事業創出につなげることを目指しています。当社グループを取り巻く事業環境や経営状況、事業ステージといったさまざまな要素を考慮した上で、全てのステークホルダーとの協働・連携を通じ、サステナビリティの実現に向けた活動を推進します。

 

(1)ガバナンス及びリスク管理

当社は、サステナビリティに関する実効性のある施策を横断的に立案・推進していくことを目的として、代表取締役社長を議長とし、委員長が指名する当社の役員・従業員(社外取締役及び監査等委員である取締役を除く)を委員として構成する「サステナビリティ委員会」を設置しています。サステナビリティ委員会では、サステナビリティに関する基本方針並びに重要課題及びリスクと収益機会の特定、重要課題に基づく目標設定、サステナビリティ関連の情報開示に関する事項等の審議を行い、進捗管理及びモニタリングを実施するとともに、定期的に取締役会への報告・提言を行っています。

 

(2)戦略

当社は、当社グループの持続的な成長と企業価値の向上のためには人的資本への投資が重要課題であるとの認識の下、当社のミッションや人材マネジメントポリシーに基づき、人的資本の強化に向けた取組みを推進しています。

① 人材の定着・育成に向けた取組

当社グループは、重要なステークホルダーの一つである従業員が組織に定着し、継続的に成長していくことが当社の企業価値向上につながるものと捉えており、これらを実現していくための人材の定着・育成に向けた取組みを強化しています。主な取組みとして、「iRidge Talk」(当社独自の1on1面談プログラム)の展開、オンボーディングプログラムや研修プログラムの強化、キャリアデザインの促進などを行っています。

② 働き方の多様化に向けた取組

当社グループは、従業員が属性やライフステージの変化に左右されず、事業成長に継続的かつ安定的にコミットできる魅力的な職場環境を整備することが人材採用力の強化や定着に寄与し、ひいては企業価値の成長につながるものと捉えており、当社では「Work Style for Next iRidge」という取組みを通じ、居住地に応じた柔軟な勤務体系の整備や副業など働き方の多様化を継続的に支援しています。

「Work Style for Next iRidge」の概要

・副業ルールの整備

より多くの人材が集まる魅力的な会社にすること、また、副業を通じて従業員のスキル・意識を高め、本業でのパフォーマンスを向上させることを目的とした副業ルールを整備しています。

・居住地に応じた勤務体系の整備

従業員各自がパフォーマンスを最大限発揮し成長しやすい環境を選択できることを可能とする、居住地に応じた勤務体系を整備しています。また、居住地を問わず採用を可能にすることによる採用力の強化を企図しています。

 

(3)指標及び目標

当社グループでは、年齢や性別に関係なく、能力を持った社員があるべき役職に任用されるべきと考えており、人材の多様性の実現に取組む上で、女性管理職(2024年3月末の当社管理職に占める女性労働者の割合:26.7%)のより一層の輩出と定着を推進していきます。また、当社グループでは、性別問わず、育児休業取得希望者が希望通りに取得できるようサポートしており、男性労働者の育児休業取得率100%を目指しています(2024年3月期の当社男性労働者の育児休業取得率:40.0%)。各従業員が属性やライフステージの変化に左右されず、働きやすい環境の整備、キャリア実現のための支援制度の充実化を推進することで、優秀な人材の獲得・育成を促進し、多様な人材が能力や強みを発揮し活躍できる企業を目指します。

 

3 【事業等のリスク】

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生する可能性のあるすべてのリスクを網羅するものではありません。

 

(1) 事業環境及び事業活動等に関するリスクについて

① 技術革新について

当社グループが事業展開しているインターネット関連市場では、新技術の開発やそれを利用した新サービスの導入が相次いで行われ、変化の激しい業界となっています。このため、当社グループは、新技術及び新サービスの開発を継続的に行うとともに、優秀な人材の確保に取組んでいますが、環境変化への対応が遅れた場合には、当社グループの競争力が低下する可能性があります。また、新技術及び新サービスの開発に対応するために多大な支出が必要となった場合には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

② 市場動向等について

今後とも、オンラインマーケティング(デジタルマーケティング)関連市場は拡大することが見込まれます。このような環境の中で、当社グループは、オンラインマーケティング(デジタルマーケティング)とイベントや店舗集客促進等のオフラインマーケティング(リアルプロモーション)の融合を進め、競争力の向上を図り、さらなる成長を図ってまいります。しかしながら、他社との競争の激化、新たなビジネスモデルの登場、予期せぬ要因によって市場構造が変化するような状況が生じた場合や市場競争力が低下する場合等には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

当社グループのマーケティング支援先は、小売、運輸、メーカー、通信事業者、金融等、多岐にわたりますが、景気後退や消費低迷等により顧客企業のマーケティング予算が削減された場合には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

③ 開発案件について

当社グループは、案件の採算性等に留意しプロジェクト管理を行っていますが、当初適正な採算が見込まれると判断した案件であっても、プロジェクト管理の問題及び仕様変更に伴う作業工数の増加等の理由により、想定以上のコストが発生する場合やそれに伴い仕掛品の評価減、引当の計上が必要となる場合、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。また、開発業務における収益の認識は、連結財務諸表「注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)(4)重要な収益及び費用の計上基準」に記載する方法によっており、見積総原価を用いたインプット法を適用しています。当社グループは、見積総原価の見積精度を高めるよう取組んでいますが、契約ごとに個別性が高く、顧客と合意した要求仕様に対応する工数・外注費等に基づき算定しているため、顧客要望の追加または変更により当初の見積以上の費用が発生する場合、また、仕様変更の追加または変更等により、見積総原価の見直しが必要となった場合には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

④ 業績の季節偏重について

当社グループでは、安定的な収益成長のため、ストック収益の割合向上を目指していますが、顧客企業の予算執行のタイミングから売上計上時期が3月に偏重する傾向があります。このため、プロジェクトの進捗遅延や検収時期の変動により売上計上時期が翌期となる場合には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

⑤ 新サービスのためのソフトウエア開発について

当社グループでは、市場競争力を強化・維持するためソフトウエアへの投資を進めており、将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められた開発費用をソフトウエア(ソフトウエア仮勘定含む)として資産計上しています。このソフトウエアについて、重大な将来計画、使用状況等の変更やサービスの陳腐化等により、収益獲得又は費用削減効果が大幅に損なわれ、ソフトウエアの減損が必要となる場合、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

⑥ 外部委託について

当社グループでは、一部のシステム開発、コンテンツ制作、印刷等の業務において外部委託を利用しています。必要に応じた外部委託先の確保が十分にできない場合や、当社グループの外部委託先管理の不備又は外部委託先における何らかの問題等に起因して、納期遅延又は不具合等が発生した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

⑦ 新規事業について

当社グループでは、デジタル地域通貨プラットフォーム「MoneyEasy」やクラウド型工数管理サービス「Co-Assign」等の新規事業もしくは新サービスを展開しており、今後も事業規模の拡大及び収益基盤の強化のため、新サービスもしくは新規事業の展開に積極的に取組んでいきますが、これにより、人材の採用やシステム開発等の追加的な投資が発生し、安定的な収益を生み出すには時間を要することがあります。また、新サービス、新規事業の展開が当初の計画どおりに進まない場合には、投資を回収できなくなる可能性があること、新サービス、新規事業の内容によっては固有のリスク要因が加わる可能性や、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

⑧ 法的規制について

当社グループにおいて、事業の継続に重要な影響を及ぼす固有の法規制はなく、一般的に適用される法規制に従って業務を行っています。しかしながら、今後法令等の制定や改正等により、当社グループにおいて対応が必要となる場合、業務の一部に制約を受ける場合等には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

⑨ M&Aや資本業務提携について

当社グループは、M&Aや資本業務提携は、自社の成長を加速させるため、必要な要素であると認識しています。M&Aや資本業務提携の実施にあたっては、対象企業の財務内容や契約関係等について事前調査を行い、リスクを検討した上で進めていますが、対象企業における偶発債務の発生や未認識債務の判明など事前の調査によって把握できなかった問題が生じた場合や、事業計画が予定どおり進捗しない場合には、関係会社株式、投資有価証券、のれんの減損処理を行う必要が生じる等、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。また、M&A等の結果、事業領域が変化することによって、当社グループの収益構造が変化する可能性があります。

 

⑩ 繰延税金資産について

当社グループでは、将来の課税所得に関する予測等に基づき回収可能性を検討し、繰延税金資産を計上しています。しかしながら、将来の課税所得が予測と異なり回収可能性の見直しが必要となった場合、また、税率変更を含む税制の改正等があった場合には、繰延税金資産の取崩しが必要となり、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

⑪ 新型コロナウイルスを含む大規模感染症拡大の影響について

当社グループでは、2020年以降、新型コロナウイルス感染症の拡大による外出自粛等により、オフラインマーケティング関連を中心に顧客企業の予算縮小やリアルプロモーションの延期・中止といった影響がありました。今後、新たな感染症拡大等が生じた際に、その収束時期やその他の状況の変化により、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

(2) 事業の運営体制に関するリスクについて

① 小規模組織であることについて

当社グループは、当連結会計年度末現在、従業員256名の小規模組織であり、内部管理体制もこのような組織規模に応じたものとなっています。また、小規模組織であるため、業務執行が特定の人物に依存している場合があります。今後も引き続き、事業規模に応じて内部管理体制の強化を進めるとともに、役職員への情報共有や権限移譲により業務執行体制の充実を図っていく方針でありますが、これらの施策が企図したとおりに進まない場合には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

② 人材の確保・定着及び育成について

当社グループは、競争力の向上及び今後の事業展開のため、優秀な人材の確保・定着及び育成が重要であると考えています。しかしながら、優秀な人材の確保・定着及び育成が計画どおりに進まない場合や優秀な人材の社外流出が生じた場合には、競争力の低下や事業規模拡大の制約要因になる可能性があり、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

③ 個人情報保護について

当社グループは、当社が開発、提供するアプリや企業のマーケティング支援を通じて個人情報を取得する場合があります。当社グループでは、個人情報の保護に関する法律に従い、個人情報の管理を行うとともに、情報セキュリティ及び個人情報について適切な保護体制を構築するため、プライバシーマークを取得しています。このような対策にも関わらず、個人情報の漏洩や不正使用等の事態が生じた場合、損害賠償請求や当社グループの社会的信用の低下等により、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

④ 知的財産権について

当社グループは第三者の知的財産権を侵害しないよう可能な範囲で対応を行っており、本書提出日現在、第三者より知的財産権の侵害に関する指摘等を受けた事実はありません。しかしながら、当社グループの事業分野で当社グループの認識していない知的財産権が既に成立している可能性又は新たに第三者の知的財産権が成立する可能性もあり、当該侵害のリスクを完全に排除することは極めて困難であります。万が一、当社グループが第三者の知的財産権等を侵害した場合には、損害賠償請求、差止請求や知的財産権の使用に関する対価等の支払い等により、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。また、当社グループは必要に応じて商標権等の知的財産権の申請を行っていますが、当社グループの知的財産権が第三者に侵害された場合には、解決までに多くの時間や費用を要する等により、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

⑤ システム障害について

当社グループは、主にインターネットを利用してサービスを提供していますが、人為的ミス、通信ネットワーク機器の故障、アクセス数の急激な増大、ソフトウエアの不具合、コンピュータウィルス、不正アクセス、停電、自然災害、事故等により、システム障害が発生する可能性があります。当社グループでは、定期的なバックアップや稼働状況の監視により事前防止又は回避に努めていますが、こうした対応にも関わらず、システム障害が発生し、サービス提供に障害が生じた場合、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

⑥ 訴訟について

当社グループは、本書提出日現在、損害賠償を請求されている事実や訴訟を提起されている事実はありません。また、当社グループは、法令違反となるような行為を防止するための内部管理体制を構築するとともに、取引先、従業員その他第三者との関係において、訴訟リスクを低減するよう努めています。しかしながら、システム障害によりサービスが停止した場合、当社の開発したソフトウエアに不具合が生じた場合、開発が予定どおり進捗しなかった場合、知的財産権の侵害等の予期せぬトラブルが発生した場合、取引先等との関係に何らかの問題が生じた場合、これらに起因する損害賠償を請求される、あるいは訴訟を提起されるリスクがあります。かかる損害賠償の金額、訴訟の内容及び結果によっては、当社グループの社会的信用、財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。

 

⑦ 配当政策について

株主に対する利益還元を重要な経営課題と認識していますが、当社は成長過程にあるため、人材確保・育成、サービス強化のための投資、営業強化のための広告宣伝や販売促進、その他成長投資に対して迅速に対応することが重要であると考えています。そのため、現在まで配当を実施しておらず、今後においても当面はこれら成長投資に備え、内部留保の充実を図る方針であります。

将来的には、財政状態及び経営成績、事業展開に備える内部留保とのバランスを勘案し、株主への利益還元を検討していきますが、配当実施の可能性及びその実施時期等については、現時点において未定であります。

 

(3) その他

① ストック・オプションとしての新株予約権の行使による株式価値の希薄化について

当社は、当社グループの役員及び従業員に対して、ストック・オプションとして新株予約権を付与しています。また、今後においてもストック・オプション制度を活用していくことを検討しており、これらの新株予約権が権利行使された場合、当社の株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 経営成績等の状況の概要

① 経営成績の分析

2024年3月期においては中長期的な成長実現に向けた戦略の実行と積極的な投資を進めました。「OMO事業」においては、当連結会計年度の第1四半期より、当社の新たなプロダクトであるアプリビジネスプラットフォーム「APPBOX(アップボックス)」のサービス提供を開始しました。当連結会計年度においては、アプリビジネスプラットフォーム「APPBOX(アップボックス)」への投資の継続に加え、今後の事業拡大を見据えた新規採用などの先行投資を行いました。また、「フィンテック事業」においては同事業の収益基盤を確立すべく、デジタル地域通貨プラットフォーム「MoneyEasy」への投資を継続しました。

以上の結果、売上高5,712,360千円(前連結会計年度比5.4%増)、営業損失91,538千円(前連結会計年度は営業利益378,919千円)、経常損失87,383千円(前連結会計年度は経常利益389,409千円)となりました。親会社株主に帰属する当期純損失は投資有価証券評価損514,167千円及びのれんの減損損失313,068千円を特別損失として計上したこと等により1,156,225千円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純利益175,283千円)となりました。

 

セグメント別の業績は次のとおりです。

以下のセグメント別売上高及びセグメント利益には、セグメント間の内部取引に係る金額を含んでいます。

 

(OMO事業)

「OMO事業」においては、オンラインマーケティング関連ではスマートフォンアプリ開発やアプリマーケティングを中心としたデジタルマーケティング関連の需要は堅調に推移しました。費用面では、一部アプリ開発案件の進捗遅延に伴う原価の増加が発生したことに加え、当社の新たなプロダクトであるアプリビジネスプラットフォーム「APPBOX(アップボックス)」のサービス提供開始に伴う費用の増加が発生したほか、今後の事業拡大を見据えた新規採用などの先行投資を行いました。オフラインマーケティング関連では、当連結会計年度の下期にかけて新規顧客の獲得は進んでいるものの、案件単価が想定を下回りました。この結果、当セグメントの売上高は5,114,602千円(前連結会計年度比8.2%増)となり、セグメント損失は265,538千円(前連結会計年度はセグメント利益138,494千円)となりました。

 

(フィンテック事業)

「フィンテック事業」においては、当連結会計年度において「ゆでぴ」(長崎県大村市)、「ジモッペイ」(高知県)、「東村山アインPay」(東京都東村山市)、「Sento」(大分県別府市)の4件のデジタル地域通貨に当社グループのデジタル地域通貨プラットフォーム「MoneyEasy」が採用されましたが、前連結会計年度に規模の大きな案件が複数実施された影響から前連結会計年度比では減収となりました。この結果、当セグメントの売上高は601,762千円(前連結会計年度比14.3%減)となり、セグメント利益は155,374千円(前連結会計年度比33.2%減)となりました。

 

 

② 財政状態の分析

(資産)

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末と比べて137,128千円減少の5,501,757千円となりました。これは主に現金及び預金が1,017,894千円増加、ソフトウエアが322,550千円増加した一方、受取手形及び売掛金が239,494千円減少、のれんが381,539千円減少、投資有価証券が512,547千円減少したこと等によるものです。

 

(負債)

当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末と比べて966,535千円増加の3,277,222千円となりました。これは主に預り金が876,310千円増加した一方、買掛金が54,910千円減少、未払法人税等が67,512千円減少したこと等によるものです。

 

(純資産)

当連結会計年度末の純資産の合計は、前連結会計年度末と比べて1,103,663千円減少の2,224,534千円となりました。これは主に資本金が18,694千円増加、資本剰余金が18,694千円増加した一方、利益剰余金が1,156,225千円減少したこと等によるものです。

 

③ キャッシュ・フローの分析

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、2,871,732千円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは1,301,284千円の資金の増加(前連結会計年度は364,312千円の資金の増加)となりました。資金の増加の主な要因は、減価償却費266,197千円の計上、のれん償却額68,471千円の計上、減損損失313,068千円の計上、売上債権の減少243,210千円、投資有価証券評価損514,167千円の計上、預り金876,310千円の増加となっています。資金の減少の主な要因は、税金等調整前当期純損失965,619千円の計上となっています。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは489,241千円の資金の減少(前連結会計年度は、660,903千円の資金の減少)となりました。資金の減少の主な要因は「APPBOX(アップボックス)」等の自社利用ソフトウエア開発等に伴う無形固定資産の取得による支出384,686千円となっています。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは205,852千円の資金の増加(前連結会計年度は、716,736千円の資金の増加)となりました。資金の増加の主な要因は長期借入れによる収入400,000千円となっています。資金の減少の主な要因は長期借入金の返済による支出210,000千円となっています。

 

④ 生産、受注及び販売の実績
イ 生産実績

当社グループの提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、記載を省略しています。

 

ロ 受注実績

当社グループの提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、記載を省略しています。

 

ハ 販売実績

当連結会計年度における販売実績は、次のとおりです。

サービスの名称

当連結会計年度
(自 2023年4月1日
 至 2024年3月31日)

販売高(千円)

前年同期比(%)

OMO事業

5,114,602

8.2

フィンテック事業

601,762

△14.3

調整額(注)

△4,005

合計

5,712,360

5.4

 

(注)調整額は、セグメント間取引消去によるものです。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものです。

 

① 重要な会計方針及び見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。連結財務諸表の作成に当たり、資産及び負債又は損益の状況に影響を与える会計上の見積りは、過去の実績等の連結財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき合理的に判断していますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

重要な会計上の見積りの内容は、連結財務諸表の「注記事項(重要な会計上の見積り)」及び財務諸表の「注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しています。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容については、「(1) 経営成績等の状況の概要」に含めて記載しています。

 

③ 当社グループの資本の財源及び資金の流動性

当社グループにおける主な資金需要は、顧客拡大及び受注拡大のための人件費及び広告宣伝費、開発案件等にかかる人件費及び外注費、人員獲得のための採用費です。必要な資金については、自己資金、金融機関からの借入及びエクイティファイナンス等で資金調達していくことを基本方針としています。なお、これらの資金調達方法の優先順位等に特段方針はなく、資金需要の額や使途に合わせて柔軟に検討を行う予定です。

 

④ 経営成績に重要な影響を与える要因について

経営成績に重要な影響を与える要因については、「3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

⑤ 経営者の問題意識と今後の方針に関して

経営者の問題意識と今後の方針については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。