第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループは、企業理念「香りを原点とする革新的な技術を通して、新しい価値を創造し続ける」を基に、全従業員が共感し目指すことのできる、2040年の当社グループの「ありたい姿」として「Vision 2040」を定めております。「Vision 2040」は「人にやさしく、環境にやさしく」をスローガンとしており、企業としての姿勢、社員としての姿勢を示す4つの理想像を挙げております。

 

「Vision 2040」

人にやさしく、環境にやさしく

1. 多様な価値観を尊重する

2. 自然と共生し、人々の生活に彩りを与える

3. 夢と誇りを持って未知の世界へ挑戦する

4. 常に高い技術を追求する、かけがえのない会社

 

この「Vision 2040」の下、社会的価値と経済的価値を創出し続ける企業グループとなるため、2024年度より中期経営計画「New Global Plan-2(NGP-2)」において3つの基本方針を定め、それに沿った経営を推進してまいります。

 

中期経営計画における骨子は次のとおりであります。

 

NGP-2 3つの基本方針

・ 海外の成長

・ 国内の収益性改善

・ サステナブルな経営

 

海外での売上高は年々増加傾向にあり、利益面においてもグループ業績全体を支えております。世界の人口や年齢構成など人口動態の変化を鑑みると、先進国では健康・ウェルネス志向の高まりが期待され、発展途上国では引き続き安定的な伸長が見込まれております。事業軸による成長戦略や競争力のある技術を通じて新規顧客やビジネスの拡大へとつなげ、事業成長の基盤として引き続き海外の成長を目指してまいります。

 

日本国内の売上高は地域別で最も大きな割合を占めておりますが、フレーバー・フレグランス事業の収益性において苦戦が続いております。この問題に対応すべく、製品ポートフォリオの適正化による売上総利益の最適化、新領域の開拓、費用構造改革などを通じ、日本国内の収益性改善を図ります。

 

当社グループの持続的な成長や中長期的な企業価値の向上を果たすためには、社会・環境への貢献とともに経営の持続性が重要であると考えております。前中期経営計画より推進しているSustainability2030の実行を通じて社会的課題の解決に貢献するとともに、Vision 2040 に沿った人的資本の価値最大化や業務遂行力の向上により経営基盤の更なる強化を図り、サステナブルな経営を推進してまいります。

 

 

NGP-2 3つの基本方針におけるKey Success Factors

 

各基本方針における重要成功要因として、Key Success Factorsを設定しています。基本方針のもとで、当社が取り組んでいる課題や方向性をステークホルダーに示すとともに、業務との関係性を当社グループの全社員で共有しております。各Key Success Factorsに関連する施策とKPIを設定し、進捗管理を着実に実施してまいります。

 

海外の成長

・ 事業軸の成長戦略

・ 新規顧客の開拓

・ 売上総利益の拡大

・ 海外サプライチェーンの最適化

・ 先端科学による競争力のある技術の創成

 

国内の収益性改善

・ 売上総利益の最適化

・ 費用の構造改革

・ 新領域の開拓

・ フレーバー・フレグランス製品生産効率性の追求

・ 合成事業生産体制の再構築

・ 国内サプライチェーンの最適化

・ 先端科学による競争力のある技術の創成

 

サステナブルな経営

・ Sustainability2030の実行

・ コーポレート基盤の強化

・ 人的資本の価値最大化

・ 業務遂行力の向上

・ SDGsへの貢献を意識した製品の開発

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) サステナビリティに関する考え方

当社グループは、Vision 2040「人にやさしく、環境にやさしく」に則り、多様な価値観を尊重し、自然との共生を目指しております。そのためにサステナビリティは重要な要素と考えており、グループ全体で戦略的にサステナビリティへの取組みを推進し、公正かつ透明な企業活動を通じて、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

 

(2)ガバナンス

取締役会は重要な経営課題や戦略について議論し意思決定を行っており、サステナビリティ課題についても取締役会で議論・承認のプロセスとなっています。コーポレートとして取り組むべき課題の速やかな解決を推進する部署として2018年にコーポレート本部を設置いたしました。サステナビリティ諸課題の対応も当該部署のミッションの一つとなっており、サステナビリティ推進会議を定期的に開催しております。同会議にはEHS、人事、品質保証、研究開発、生産・調達・物流の5つの機能を主としたチーム編成のサステナビリティ推進チームが参加しており、それぞれの機能が拠点横断的なグローバルな協力体制をとっております。同会議で行われた議論のうち重要項目については、取締役会および経営会議に報告することとなっております。

 

(3)戦略

当社グループは、サステナビリティにおける重要項目であるマテリアリティを取締役会にて定めています。こちらはマテリアリティとそれぞれの戦略になります。

重要項目

戦略

マテリアリティ

中項目

小項目

気候変動

TCFDに対応した戦略の推進

気候変動の適応

気候変動の緩和

GHG排出量削減

環境負荷低減

持続可能な資源の利用

再生可能エネルギーの調達

温室効果ガス排出量の削減

水使用量の削減

廃棄物の削減

汚染の防止

化学物質管理

大気汚染対策

排水管理/漏洩対策

土壌・地下水汚染対策

廃棄物管理

臭気管理

環境保護、生物多様性及び自然生息地の回復

労働安全衛生

労働安全の推進

コンプライアンス

リスクアセスメント

インシデント対応・原因究明及び対策

緊急時対応

化学物質管理

機械安全

火災対策

EHS教育・訓練

衛生の推進

作業環境管理

作業管理

暑熱作業対策

ワーク・ライフ・バランスの向上推進

地域コミュニティ

地域コミュニティへの参画

教育活動・文化活動

教育活動

香り文化の発展・継承

グリーンケミストリー

グリーンケミストリー12箇条を念頭においた環境に優しい研究開発の推進

環境負荷軽減を意識した技術・製品の開発

バイオエコノミーを意識した研究開発

責任ある調達

責任ある調達活動の推進

「責任ある調達ポリシー」の運用

原材料「調達情報」管理

環境に配慮した調達活動

ECM(Engineering Chain Management)強化(TACMI: Takasago global procurement Arts & Crafts Mutual Interaction)

TaSuKIの推進

(Takasago global procurement Sustainability Key Initiatives)

全社的な責任ある調達活動の推進

 

 

重要項目

戦略

マテリアリティ

中項目

小項目

人権

企業活動における人権方針の遵守

第三者機関の知見を活用した人権・労働環境の定期的見直し・改善スキームの構築

人権デューデリジェンスの継続的実施

透明性

非財務情報を中心とした情報開示

開示情報の充実

開示媒体の充実

製品の環境等へのインパクトに関する情報開示

LCA(AI製品)の検討・実施

Sustainability ID Score(FR製品)の検討・導入

 

 

① 気候変動

当社グループは、気候変動に伴うさまざまなリスク・機会を事業戦略上の重要な観点のひとつと認識しており、国際的な枠組みであるパリ協定に沿った事業活動を推進すべく、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に沿った気候変動戦略を策定いたしました。また、気候変動イニシアチブに賛同し、気候変動に取り組む企業ネットワークにも参加しております。

 

② 人的資本

当社グループは、世界各地に拠点を有し、多様な人材が活躍するグローバルな企業グループであり、人材の多様性は、事業を行う上で最も重要と考える価値の一つであります。人材の多様性の確保を含む人材育成に関する方針として、グループで共通のダイバーシティ・インクルージョンポリシーを策定し、社内への浸透を進めております。各国により事情も異なるため、拠点別での3カ年推進計画を作成し、採用時の取組みや研修実施などといった具体的な施策を進めております。

 

(4)リスク管理

当社グループは、環境や社会だけでなく、事業の持続可能性も大切にしております。取締役社長を委員長とし、各本部長によって構成されるリスク管理委員会では、事業継続を阻害する潜在的なリスクを特定し、その予防策を策定・検討しております。特定されたリスクは取締役会で報告され、損失/危険につながるリスクを総合的に評価・判断できるよう、マネジメント体系を強化し継続的な審議、影響の回避や軽減を図る対策を立案しております。

 

(5)指標及び目標

当社グループは、2030年までのサステナビリティの目標・中長期計画として、Sustainability2030を策定しています。こちらはマテリアリティとそれぞれの目標になります。

重要項目

目標

マテリアリティ

Phase1(2021~2023)

気候変動

SBTに合致した目標設定および排出量削減案の立案・推進

環境負荷低減

温室効果ガスの削減

GHG排出量総量で2030年までに対2019年度比で27.5%削減

水使用量の削減

水使用(取水)量について1%の削減(2030年度までに対2020年度比で10%の削減)

廃棄物の削減

廃棄物排出量について0.5%の削減(2030年度までに対2020年度比で5%の削減)

労働安全衛生

コンプライアンス

EHS関連法規管理システムの構築

定期的な法令順守点検の実施

化学物質管理

化学物質管理状況の調査

ワーク・ライフ・バランスの向上推進

セルフケア、ラインケアの推進のための教育研修の実施

地域コミュニティ

社会貢献活動に関する年間活動計画表の作成および実行

グリーンケミストリー

環境負荷軽減を意識した技術・製品の開発

 

 

重要項目

目標

マテリアリティ

Phase1(2021~2023)

責任ある調達

原材料調達

責任ある調達ポリシーの運用

人権

第三者機関の知見を活用した人権・労働環境の定期的見直し・ 改善スキームの構築

人権デューデリジェンスの継続的実施

透明性

非財務情報を中心とした情報開示

開示の充実

製品の環境等へのインパクトに関する情報開示

LCA・Sustainability ID Scoreの検討・導入

 

 

① 気候変動

当社グループは、気候変動に関する目標として、温室効果ガス(GHG)排出量削減目標を下記のとおり設定し、その削減に取り組んでいます。この目標は2021年5月にScience Based Targets initiative (SBTi)からの承認を得ているものです。GHG排出に関しては、2021年5月に取得したScience Based Targets initiative (SBTi)基準に則った目標を下記のとおり設定しております。

・2030年度までに2019年度比でグループ全体のScope1とScope2の合計を27.5%削減する。

・2030年度までに2019年度比でグループ全体のScope3を13.5%削減する。

Scope1とScope2については、エネルギーの効率的利用、再生可能エネルギーの導入、プロセスイノベーション等を通じて、GHG排出量削減を推進しております。Scope3については、バリューチェーン全体でグリーン化を達成するため、サプライヤーとのエンゲージメントや物流の効率化を推進しております。また、気候変動への適応によるビジネスの機会として、グリーンケミストリー、バイオケミストリーにも注力しつつ、イノベーションによる新製品を開発してまいります。

 

② 人的資本

当社グループは、グループで共通のダイバーシティ・インクルージョンポリシーに基づき、人材の多様性の確保を含む人材育成に取り組み、中核人材の登用においても、ジェンダー・国際性・職歴・年齢等の多様性が確保できるよう努めております。

当社は、女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、管理職に占める女性割合を2025年3月末までに16%以上とするという数値目標を設定、現在の女性管理職比率は17.7%であり、引き続き比率増加と活躍を推進してまいります。また、グローバルに活躍できる人材育成の一環として、外国籍人材の採用にも積極的に取り組んでおります。現在の外国人管理職は数名程度となっておりますが、今後増加を推進してまいります。その他にも多様な経験・技能等を有する人材の中途採用に取り組んでおります。過去5年間における中途採用者に占める管理職比率は25%程度となっておりますが、今後も積極的な登用を進めてまいります。

当社グループは、新入社員から経営層までの職位に応じた研修を実施、それぞれの階層に必要な教育制度を充実させることで、人的資源を最大限に活用できる人材の育成に取り組んでおります。また、従業員自らの積極的な自己啓発、能力開発への支援を目的として、英語を中心とした語学をはじめ、マネジメントやビジネススキル、資格取得や個人のライフスタイルに関わる内容など、それぞれの興味や必要に応じた通信教育講座を設けております。仕事と生活の調和を保ちながら充実して働けるように、ワーク・ライフ・バランスの実現に育児支援や介護支援など社内環境の整備についても積極的に取り組んでおります。

(注)管理職に占める女性割合については連結グループでの数値目標は設定していないため、提出会社のものであります。

 

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには、重要項目ごとに以下のようなものがあります。ただし、全てのリスクを網羅したものではなく、現時点では予見できない又は重要と見なされていないリスクの影響を将来的に受ける可能性があります。当社グループではこのような経営及び事業リスクを最小化するための様々な対応及び仕組み作りを行っております。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

リスク項目

関連するリスク

主要な取組み

気候変動に係るリスク

・当社グループが事業展開する各国において、気候変動に起因する環境規制、新たな環境税等の賦課や、得意先からの環境に関する要求に対応できない場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性

・温室効果ガスによる地球温暖化が引き起こす気候の変動ないし極端現象、あるいは不規則周期に訪れる天候不順が当社にとって重要な天然原料の供給に影響を及ぼし、原料価格の高騰を招く可能性

・当社グループは、Vision 2040「人にやさしく、環境にやさしく」を掲げ、気候変動をサステナビリティ経営上の最重要課題の一つと認識。TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同を表明し、提言に沿った行動計画を策定し公表

・外部機関との連携、情報収集を推進。温室効果ガスに関しては、Science Based Targets initiative (SBTi)基準に則った目標を設定し、達成に向け排出量削減の取組みを推進

・再生可能原料を活用したグリーンケミストリーを中心に、環境に適応した生産プロセス及び製品の開発を推進

・各事業所において、省エネ活動や再生可能エネルギー導入等を推進

 

 

リスク項目

関連するリスク

主要な取組み

原料調達に係るリスク

・世界景気、需給バランス、異常気象、為替変動、インフレーション等の影響により、天然原料をはじめとする原料価格が高騰した場合、計画した利益を得られない可能性

・地政学的リスクや購入先の事故等によりサプライチェーンが分断され供給責任を果たせず経営成績に影響を及ぼす可能性

・サプライヤーのコンプライアンス違反等サプライヤーリスクが顕在化した場合、当社グループの財務状況が悪影響を被る可能性

・グループ内のネットワークを活用し、原材料の互換性を高めると共に、複社購買等調達手段の多様化を推進

・サプライヤーとの契約内容の見直しや協働によるリスクの低減

・「高砂香料責任ある調達ポリシー」を制定し、ポリシーに基づいた調達活動を推進。さらに、持続可能で倫理的な調達を推進する外部イニシアチブに参加

・サプライチェーンにおける人権デューディリジェンスを実施し、人権、労働、環境、腐敗防止の分野における調達活動のリスクと潜在的な影響を調査。悪影響を及ぼす可能性が確認された場合は改善計画を立て、サプライヤー等のステークホルダーと連携することにより是正

グローバル事業展開に係るリスク

・当社グループが事業展開する各国において、法律・規制・税制の大きな変化、テロ・戦争等の政治的・経済的混乱、感染症の蔓延等の社会的混乱などによる、現地の生産活動や販売活動へ影響を及ぼす可能性

・当社グループの業務に関連する各国の政治・経済情勢や法規制の動向等に関する継続的な情報収集

経済情勢・為替レートの変動に係るリスク

・日本や海外の主要市場における景気の後退又は減速等の経済不振が当社グループの製品に対する購買力や消費者需要に悪影響を及ぼす可能性

・経済状況が低迷する場合、消費者が嗜好品等の買い控えを行う可能性

・外貨建てで運営を行う海外連結子会社の比重が高くなることにより、為替レートの変動による円換算後の連結財務諸表が影響を受ける可能性

・国や地域、事業ポートフォリオの拡充によるリスク分散

・主要ビジネスの基盤を強化し、経済不振等に対する耐性を強化

・為替変動を織り込んだ収益計画

 

 

リスク項目

関連するリスク

主要な取組み

新製品の研究開発に係るリスク

・新製品の開発が著しく遅延、あるいは研究テーマが実用化されない場合、競争力が低下し、当社グループの経営成績ならびに財政状態に悪影響を被る可能性

・技術及び知的財産の陳腐化に伴う競合他社の参入により、既存製品の市場におけるシェアが縮小するリスク

・外部研究機関、学術機関とのオープンイノベーション、AIの活用等を通じて多面的な研究開発を推進

・先端科学による競争力のある新たな技術の創成及び実用化

・海外研究開発拠点と国内の基礎研究部門の協働による効率的かつスピーディな研究開発の推進

・新規技術の特許対応など知的財産戦略の実行

・SDGsの課題解決に向け、グリーンケミストリーを念頭に置いた製品の開発、医薬品中間体の供給等持続可能な社会への貢献を通した企業価値の向上

販売に係るリスク

・競合他社の買収等による業界再編の影響により当社の相対的な優位性が低下する可能性

・グローバル展開する得意先からのコアサプライヤー認定獲得競争により、業績に影響を及ぼす可能性

・競合他社の参入により既存製品の市場シェアが低下する可能性

・独自性を活かした製品開発による付加価値の提供及び競合他社比優位となるような商品・差別化されたサービスの提供

・高い技術力を生かしたスペシャリティの開発による競争優位性の維持

製品品質に係るリスク

・重大な品質クレームやトラブル、製品に対する安全性や環境問題への懸念が生じた場合、リコールによる金銭的損失の他、得意先等ステークホルダーからの信用低下につながる可能性

・当社グループのビジネスへの信頼の原点となる品質管理に対しては、従業員への研修を継続、製造現場での作業ルールを徹底

・製品関連法規を遵守した製品設計及び製造

・悪意ある異物混入、物流上の破損、誤出荷、ヒューマンエラーによる工程内不適合など多様な事象を想定し対策を策定、管理体制強化に注力

災害・事故に係るリスク

・パンデミック、自然災害や火災・爆発等の災害・事故により事業活動に支障が生じる可能性

・当社グループだけでなく、原料サプライヤーにて発生した事故等により生産が減少し、原料価格の高騰を招く可能性

・災害や事故等への従業員の意識を向上させ、災害予防のための施策を実施。感染症等予防の施策及びリスク分散の徹底

・危機管理体制の整備及び適切な運営により事業の継続や早期復旧のためのグループ全体としての取組みを推進

・原料調達における複社購買の推進や各種施策の実施によるリスクの軽減

 

 

リスク項目

関連するリスク

主要な取組み

情報セキュリティ等システム運営に係るリスク

・不正アクセスやコンピュータウイルスへの感染等によるデータ改ざん・消失、高度化するサイバー攻撃によりシステムの利用妨害や一時的障害が発生した場合、業務の停滞により業績及び財務状況に影響を与える可能性

・当社グループの保有する企業情報及び個人情報の流出により問題が発生した場合は、社会的信頼の低下等により業績に影響を与える可能性

・新システム導入時にシステム上の特有の問題や習熟度不足により、生産・販売等に遅延が生じる可能性

・当社グループの情報システムに対する外部からの侵入を検知するシステムの導入など最先端技術によるITセキュリティの強化

・標的型メールに対する訓練、定期的な情報セキュリティ研修の実施等継続的に社員教育を実施

・新システム導入に際するトレーニングや習熟等の事前準備

法令の遵守に係るリスク

・現行法令の変更や新たな法令などが追加された場合、事業活動に制限、対応のための投資など、業績に影響を及ぼす可能性

・将来的に製品の品質、労働安全、環境保全、化学物質等事業活動に係る法的規制が強化され、新たな対策コストが発生する可能性

・当社グループが事業展開する各国において、環境、化学物質、会計基準や税法、労務、商取引など様々な関連法令に従った業務の実行

・国内外の法執行機関の運用状況に関する情報収集による法令遵守

・法令等の改編の分析を踏まえた機動的対応

・企業憲章及び行動規範の周知、及びコンプライアンスに関する定期的な社内研修の実施、各種ガイドライン・マニュアルの制定

人材に係るリスク

・グローバルに事業を展開する上で、様々な人種・国籍や文化を持つ従業員の多様性を尊重したダイバーシティ経営を行っているが、その人材の有機的な活用ができないリスク

・またそれぞれの地域の事業に必要な資質、能力をもった人材を確保できないリスク

・各国拠点間での人材の異動を積極的に推進することによるグローバル人材の育成

・グローバルレベルでの人事異動による適材適所の推進

・日本発、アジア発の唯一のグローバル香料会社という特徴を生かしたグローバル市場での人材確保

 

 

(ウクライナ及び中東情勢の影響)

ウクライナ情勢の長期化に伴う資源価格の更なる上昇や中東情勢の影響による輸送コストの増加など各国経済への影響等が懸念されます。当社グループは日常から調達先より情報収集に努め、原材料の安定確保やリスク回避に努めておりますが、サプライチェーンの分断等により当社取引先の事業環境に変化があった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 財政状態及び経営成績の状況

当社グループは「人にやさしく、環境にやさしく」をスローガンとする『Vision 2040』のもと、中期経営計画『New Global Plan-1(NGP-1)』(2021-2023年度)を推進してまいりました。

 

 (経営成績の状況)

当連結会計年度の売上高は、前期比4.9%増195,940百万円となりました。部門別売上高では、フレーバー部門は、当社及びシンガポール子会社において飲料向け等が堅調に推移した他、為替変動の影響を受け、前期比3.4%増109,162百万円、フレグランス部門は、シンガポール子会社及びインドネシア子会社において香粧品向け等が好調に推移した他、為替変動の影響を受け、前期比11.2%増62,690百万円、アロマイングリディエンツ部門は、当社のスペシャリティ品関連が好調に推移した他、為替変動の影響等を受け、前期比9.1%増12,989百万円、ファインケミカル部門は、医薬品中間体が前期を下回り、前期比15.8%減9,687百万円となりました。その他不動産部門は、前期比1.2%減1,409百万円となりました。

利益面では、海外売上高が現地通貨ベースで減収となったことや原料高騰の影響等を受け、営業利益は前期比61.1%減2,316百万円、経常利益は前期比40.9%減4,707百万円となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比63.5%減2,698百万円となりました。

セグメントにつきましては、日本は、当社のフレーバー部門及びフレグランス部門等が堅調に推移したことにより、売上高は72,338百万円前期比1.2%増)となったものの、原料高騰の影響等もあり、営業利益は1,359百万円前期比40.4%減)となりました。米州は、米国子会社及びメキシコ子会社においてフレグランス部門等が堅調に推移した他、為替変動の影響を受け、売上高は50,329百万円前期比7.2%増)となったものの、販管費増加の影響等もあり、営業利益は159百万円前期比76.3%減)となりました。欧州は、為替変動の影響を受け、売上高は33,263百万円前期比4.3%増)となったものの、原料高騰の影響等もあり、営業損失は1,247百万円(前期は営業利益821百万円)となりました。アジアは、シンガポール子会社等において、フレーバー部門及びフレグランス部門等が堅調に推移した他、為替変動の影響を受け、売上高は40,008百万円前期比9.8%増)となったものの、販管費増加の影響等もあり、営業利益は2,220百万円前期比1.9%減)となりました。

 

 (財政状態の状況)

総資産は、前連結会計年度末と比較して16,348百万円増加し、228,427百万円となりました。主なものは、売掛金の増加6,021百万円、建設仮勘定の増加4,019百万円であります。

負債は、前連結会計年度末と比較して7,421百万円増加し、97,547百万円となりました。主なものは、1年内返済予定の長期借入金の増加2,015百万円であります。

純資産は、前連結会計年度末と比較して8,926百万円増加し、130,880百万円となりました。主なものは、為替換算調整勘定の増加5,214百万円、利益剰余金の増加1,141百万円であります。

以上により、自己資本比率は56.7%から56.5%に減少いたしました。

 

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末より3,364百万円増加し(前期は1,392百万円の増加)、18,333百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動による資金の増加は、10,011百万円前期は5,821百万円の増加)となりました。主なものは、売上債権の増加3,931百万円であった一方、税金等調整前当期純利益4,911百万円、減価償却費7,860百万円であります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動による資金の流出は、6,818百万円前期は3,276百万円の流出)となりました。主なものは、有形固定資産の取得による支出6,041百万円であります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動による資金の流出は、453百万円前期は2,039百万円の流出)となりました。主なものは、長期借入金による収入7,900百万円、短期借入金の純増加額1,567百万円であった一方、長期借入金の返済による支出7,862百万円、配当金の支払額1,556百万円であります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a. 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

日本

59,253

3.9

米州

40,131

6.3

欧州

34,619

2.3

アジア

37,765

7.1

合計

171,770

4.8

 

(注)金額は、販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。

 

b. 受注実績

当社グループは、受注生産の規模は小さいため、受注実績は記載しておりません。

 

c. 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

日本

72,338

1.2

米州

50,329

7.2

欧州

33,263

4.3

アジア

40,008

9.8

合計

195,940

4.9

 

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、連結損益計算書の売上高の10%以上を占める相手先がないため、記載を省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 a.当社グループの当連結会計年度の経営成績等

当社グループは、2021年度より中期経営計画『New Global Plan-1(NGP-1)』(2021-2023年度)(以下『NGP-1』という。)に取り組んでまいりました。『NGP-1』においては、3つの基本方針、5つの柱、7つの重点課題を定め、連結売上高及び連結営業利益の数値目標を設定し、着実かつ確実な達成を目指してまいりました。
 『NGP-1』の最終年度である当連結会計年度の売上高は、為替影響を除くと横ばいであったものの、円安効果により、前期比4.9%増(為替の影響を除くと前期比0.0%増)の195,940百万円となりました。フレーバー部門では、日本及びシンガポール子会社において飲料向け等が堅調に推移いたしました。フレグランス部門では、シンガポール子会社及びインドネシア子会社において香粧品向け等が好調に推移いたしました。アロマイングリディエンツ部門では、当社のスペシャリティ品関連が好調に推移いたしました。

利益面では、営業利益は前期比61.1%減(為替の影響を除くと前期比59.8%減)の2,316百万円となりました。価格転嫁は進めているものの、それを上回る原料高騰の影響や人件費を中心とした販管費の上昇により、前期実績を下回りました。親会社株主に帰属する当期純利益は、営業利益の減少に伴い、前期比63.5%減2,698百万円となりました。

セグメントにつきましては、日本では、フレーバー部門において、飲料関連が堅調に推移したことに加え、フレグランス部門でもランドリーケア関連等が堅調に推移したこと等により、増収となりました。米州では、米国子会社及びメキシコ子会社においてフレグランス部門等が堅調に推移した他、為替変動の影響を受けて、増収となりました。為替影響を除くと、基幹システム本番稼働に伴う一時的な出荷調整等、一過性の要因等により、減収となりました。欧州では、為替変動の影響を受けて、増収となりました。為替影響を除くと、フレグランス部門において、顧客の在庫調整等によってファインフレグランス関連が停滞した他、アロマイングリディエンツ部門でもメントール関連が停滞した影響を受けて、減収となりました。アジアでは、フレーバー部門において、注力カテゴリーである飲料部門が堅調に推移した他、フレグランス部門でも新規製品獲得等により堅調に推移いたしました。なお、当連結会計年度の期中平均為替レートは、1ドルは141円と前期比で10円の円安、1ユーロは152円と前期比で14円の円安で推移したため、海外売上高の押し上げ要因となっております。国内売上高は72,338百万円、海外売上高は123,601百万円、海外売上比率は63%となっております。

 

 

 b.当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因

当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

(キャッシュ・フローの状況)

キャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。

 

(資金需要)

当社グループにおける主な資金需要は、設備投資資金、運転資金、借入の返済及び利息の支払、配当金の支払並びに法人税の支払であります。

 

(資金の源泉) 

当社グループは、主として営業活動によるキャッシュ・フロー、金融機関からの借入等を資金の源泉としております。なお、当連結会計年度末における長期借入金等の年度別返済予定額は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 ⑤連結附属明細表 借入金等明細表」に記載のとおりであります。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

5 【経営上の重要な契約等】

不動産の有効活用のため当社所有の東京都大田区蒲田の土地の再開発に関して、当社所有地を日本生命保険相互会社へ賃貸し、同社と協力して共同ビルを建設する旨の「基本協定書」を1990年12月26日に締結し、その後1993年7月30日に「土地賃貸借契約」を締結しております。

また、当社は、運転資金の効率的な調達を行うため、複数の取引銀行と特定融資枠契約を締結しております。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(連結貸借対照表関係)※5 特定融資枠契約」に記載しております。

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループは中期経営計画『New Global Plan (NGP-1)』(2021-2023年度)に則り、グローバルマーケットを視野において、食品用香料及び香粧品用香料の開発を進めるとともに医薬品中間体や工業薬品関連製品、機能性材料の開発研究を行ってまいりました。また、研究開発及び他部門間の共同作業によるプロジェクト化、集中化を推進し、研究開発活動の効率化と事業化、グローバル化のスピードアップも図ってまいりました。2016年10月の技術創成研究所設立、2017年6月のプロセス開発研究所設立、さらには2022年7月に既存の事業部と連動する研究所から有機合成、バイオの研究機能を分離、集約しそれぞれ分子変換研究所及びバイオデザイン研究所を設立し、8研究所体制の下、コンセプト/プロダクト/プロセスの3つのイノベーションのシナジーにより、ユニークで優位性のある技術や製品の開発を強化しております。また、グリーンサステナブルケミストリー推進に向け、2021年4月に磐田工場内に新たにプロセス開発研究所の研究開発設備を増設し、より安全でエネルギー効率の良い製造プロセスの開発基盤を整えました。

グローバルでは、各国の市場特性に合致したビジネス展開を図るためのGSPC(Global Strategy Planning Committee)やマーケティング・CIMR(Consumer Insights and Market Research)と連携しながら、市場ニーズに応える新商品の開発及び次世代新技術の開発に取り組んでおります。今後のグローバル戦略として、SDGs(持続可能な開発目標)に貢献できる研究開発を念頭に置き、環境に配慮した生分解性を有するアロマイングリディエンツの開発、フローや触媒を最大限利用した省エネルギーで洗練されたプロセス開発、食糧問題解決に向け植物蛋白を原料にしたプラントベース・フードへの取組み、Well-Being貢献を目指した香料の機能性探索等、着実に進めてまいります。また、欧米を中心とした天然嗜好への対応として、ナチュラルアロマイングリディエンツや天然香料素材の開発等にさらに注力してまいります。2016年1月に米国の発酵専門会社Centre Ingredient Technology, Inc.を傘下に収め、グローバルに対応可能なナチュラルアロマイングリディエンツの製造拠点を確保しましたが、これにより、ナチュラルフレーバー素材の開発やバイオによるものづくりを加速させ、バイオエコノミー実現に向けた歩みを確実なものにしてまいります。また、再生可能原料を利用したアロマイングリディエンツの開発強化を視野に、先端のバイオ技術を有するスタートアップベンチャーとのアライアンスも推進してまいりましたが、今後は生分解性を有しバイオベースドカーボン50%以上のアロマイングリディエンツ「Sustainable Scent®」のラインナップ拡充をさらに進めてまいります。

また、2013年5月にTakasago Madagascar S.A.を設立し、バニラのエキストラクトを安定供給できる体制を整え、このマダガスカル産バニラを使用した製品の新ブランド「LA VANILLE T」(ラ・バニーユ・ティ)を立ち上げ、グループ全体のバニラブランドとしてグローバル規模での拡販と市場開拓を着実に行っております。

国内では、技術の振興、発展を通して社会及び産業界への貢献にも努めております。当社社外取締役である野依良治氏が2001年ノーベル化学賞を受賞されたことを記念して、2003年より高砂香料国際賞「野依賞」を設けておりますが、2023年度受賞者は東京理科大学の硤合憲三名誉教授に決定し、2024年2月15日に開催された2023年度高砂香料国際賞「野依賞」表彰式において、有機合成化学協会の生頼一彦会長より賞状や楯、賞金が授与されました。

こうした研究開発活動は、4つの事業部門毎に独自のシナジー効果を発揮すべく、地域の枠組みを越え横断的に取り組んでおります。2020年には創業100年を迎え、改めて技術立脚の創業精神を振り返り、2024年度より開始した中期経営計画(NGP-2)を念頭に、さらなる飛躍に向け、グローバルのニーズやオープンイノベーションも取り入れた基盤研究の強化を着実に行ってまいります。

当社グループにおける事業部門別の研究開発活動は、以下のとおりであります。

 

① フレーバー部門

当部門は飲料用、製菓用、調理食品用、冷菓デザート用等のフレーバーや食品素材の開発を行っております。特にコーヒー、茶系飲料用のフレーバー及び食品素材開発、製菓用及び冷菓デザート用にマダガスカル産バニラを利用したフレーバー開発に力を入れており、調理食品用には加熱調理された食品の風味を追求した素材開発、粉末/乳化香料においては安定性、リリースコントロール等に注力して研究開発を進めております。一方、新規天然フレーバー素材の開発や食品より分離精製した素材の開発などを通じ、抽出、分離、精製、濃縮における基礎技術の拡充を図り、フレーバーの多様化を推進してまいりました。また、「フードデザインセンター」では、香料や果汁などの食品素材を使用したアプリケーション開発機能を強化し、顧客との共同開発を積極的に行い、食のトータルプランナーとしての提案力向上を目指しております。

海外での研究開発については、顧客の東南アジア、中国への進出にも即応するため、シンガポール、インド、インドネシア、上海の研究体制も継続して強化しております。アジアにおける市場の急速な動きに対応すべく、酵素反応を利用したフレーバーや風味増強素材において国内で培った開発技術の積極的な活用を通して、デイリー素材分野や果汁飲料分野での拡売を目指しております。また、食品への「ナチュラル素材」に対するニーズが高まっている欧州の研究所内にはVanilla Research Center、フロリダの果汁メーカー敷地内にはCitrus Research Centerを設置するなどして天然香料素材の開発を推進しております。顧客や消費者の食品や香料への安全性を求める動きに対応して、2012年1月に取得したISO22000を維持管理し、安全・安心な商品を提供すべく商品設計を行っております。

 

② フレグランス部門

当部門は商品設計をサポートする、得意先ニーズに合った創香とアイデア提案による販売支援活動の徹底に力を注ぎ、ファブリックケア用(洗剤、柔軟剤)、パーソナルケア用(シャンプー、ボディシャンプー、スキンケア)、室内芳香剤用調合香料の開発を行っております。香料を科学的側面から追求し、基材に対して安定な香料、高い残香性や拡散性を持つ香料や悪臭対策香料、さらには再生可能原料を用いたSustainable Scent®の活用や生分解性に優れた調合香料など、人に優しく環境に配慮した香料開発を積極的に進めております。また、パーソナルケア素材としてヒト型光学活性セラミド、冷温感剤、抗菌活性や消臭効果を持つ素材など、新規機能性素材の開発と拡販を推進しております。「においの生理、心理的効果」に関するエモーショナルな研究分野では、基盤研究部門と連携し、引き続き新商品開発への応用に取り組んでおります。

既に各国で導入されている自社開発の香料開発(依頼管理、処方エディター、ライブラリ管理、安全性と各種規制チェック)システムの刷新と改善を重ね、顧客対応のスピードアップ、データの拡充、共有化と標準化、法規対応及び安全性確保、グローバル対応等を推進してまいりました。グローバル化する得意先への対応としてミッションチームによる集中的アプローチや共同創香、共同評価方法の導入を行うなど、日米欧亜に拠点を持つフレグランス研究部門の協力により、多様化と効率化を図っております。同時に、消費者のニーズを的確に捉えるためのマーケティング・CIMR部門との連携強化を進めております。

 

 

③ アロマイングリディエンツ部門

 当部門は新規香料素材の開発を中心に研究を行っておりますが、中期経営計画『New Global Plan (NGP-1)』として引き続き「SDGsとグリーンサステナブルケミストリーを考慮した環境に優しい研究開発」ならびに「自然との共生」を掲げ、人にやさしく、環境にやさしいアロマ素材開発を積極的に行ってまいりました。有機合成およびバイオ技術の研究機能をそれぞれ集約することで再生可能原料を用いた香料素材やバイオ生産プロセスなどの研究開発を一層加速し、自社アロマイングリディエンツポートフォリオの更なる拡充、フレグランス及びフレーバー調合香料の差別化の推進に加え、アロマイングリディエンツ販売ラインナップの充実など、トップクラスのグローバル香料会社としての基盤強化をさらに進めております。香料の天然らしさを追求するために、当社のコア技術である触媒的不斉合成技術の応用や、微生物発酵や酵素反応などの生化学的手法を活用し、CHIRAL SWITCHとして光学活性香料を選択的に製造することによって、Chiraroma®のブランドで展開しております。

近年では、従来の化石原料を、植物由来や再生可能原料へと切り替えるBIOSWITCH®を新たに掲げた研究開発を推進してまいりました。また、生分解性に優れ、環境に負担をかけない香料素材や、再生可能原料を用いたSustainable Scent®の香料や新規温感剤、新規冷感剤の開発など新しい機能を持つ化合物の開発を行ってまいりました。さらに、触媒反応を有効に活用したメントールを始めとするテルペン化合物の新規製造法の確立を目指した研究も進めております。

 

④ ファインケミカル部門

当部門はBINAPに加えて独自に設計したSEGPHOS®やBRIDP®等の配位子を組み込んだ有機金属錯体触媒を駆使し、不斉還元による光学活性医薬品中間体のプロセス開発をはじめ、アリールアミノ化反応による電子写真感光体(OPC)の開発を行ってまいりました。さらに、連続フロー製造技術の導入を行い、光学活性医薬品中間体などの効率的製造法の開発に成功しております。連続反応装置は制御が難しい反応にも有効であり、2018年にはこれまで大量に扱うことが困難であったLithium Aluminum Hydride (LAH)を用いる還元反応を、Continuously Stirred Tank Reactor (CSTR)装置を活用することにより安全かつ効率的に行う技術を確立し、今日まで安定的にトンスケールでのGMP製造を行っております。

最近では、高速な水素化反応用触媒RUCY®、高活性な水素移動型還元反応用触媒DENEB®、エステル化合物の還元触媒Ru-MACHO®を開発し、その適用範囲の拡充を進めております。

Ru-MACHO®類、DENEB®、RUCY®、BINAP類、SEGPHOS®類、BRIDP®類等の有機金属錯体や配位子は自社内で使用するだけでなく顧客への販売も行っております。

 

研究開発活動は神奈川県平塚市を中心とする当社の研究開発全部門302名のスタッフと、米州、欧州、アジア各地の海外子会社の研究所657名及び国内子会社の研究所3名のスタッフとの連携で行ってまいりました。また、当社グループの研究開発費は、日本5,782百万円、海外9,867百万円の総額15,650百万円であります。