第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 企業・経営理念体系について

当社グループは、2022年2月21日に発表しましたパーパスを企業理念と共に上位概念とし、ビジョン、バリューとあわせて企業・経営理念体系を改定し、今後も、社会の経済価値・生活価値を高めることに貢献する企業グループとして、さらなる業績の拡大と企業価値向上を目指してまいります。

 

① 企業理念

 

足下に種を蒔き続ける

 

「足下に種を蒔き続ける」は、当社グループが創業時から掲げている企業理念です。全社員が企業理念、経営方針、行動指針を理解し、日々の事業活動のベクトルを合わせるために、社員全員に経営方針書、行動指針書を配布し、社員全員が幾度となく繰り返し読み込んでおります。本企業理念は経営方針書の冒頭に記載があり、社員のDNAとなっています。

 

② パーパス

 

変化の先頭に立ち、

最先端のその先にある技と知を探索し、

未来を描き“今”を創る。

 

私たち、マクニカは、未来予測が困難な時代において、

地球環境・社会の変化を先読みし、その変化の先頭に立ち、失敗を恐れず、

ワクワク楽しみながら、挑戦心を持った開拓者「ファーストペンギン」であり続ける。

 

最先端のその先にあるまだ誰も知らない、

指数関数的に進化していく世界中の技:先端テクノロジーと、

知:インテリジェンスを探索し、その種を足下に蒔き続け、育て、つなぎ、つむぐ。

 

快適で信頼できる持続可能な未来ビジョンを構想し、

あらゆる業種・業界のプロフェッショナルと私たちの技と知を新結合する事で、

解像度の高いソリューションを“今”に、きちんと実装し、

その実現にとことんこだわり、情熱をもって新たな価値を創りあげる。

 

明るく・楽しく・元気よく!!

 

私たちは、皆さまと共に、笑顔あふれる、豊かな未来に向けて、終わりなき成功へと寄り添い、伴走します。

 

「パーパス」は、過去、現在、未来の事業を通じ、普遍的に共通する当社グループの「志」を表すものです。当社グループは、新しい技術をどこよりも早く探し出し、磨きこむ目利き力を駆使して、最先端の半導体、電子デバイス、ネットワーク、サイバーセキュリティ商品を提供してまいりました。近年は、これらの経験と知見を活かし、新しい領域へ活動の幅を広げ、事業活動を行っております。当社グループは、今後も最先端の技(テクノロジー)と知(インテリジェンス)をつなぎ、未来構想力と解像度の高い実装力を併せ持った共創パートナーとして、未来社会の発展に貢献する企業を目指していく所存です。


③ ビジョン:Vision2030

 

サービス・ソリューションカンパニーは、これまで50年以上にわたるグループの成長を支えてきた高付加価値ディストリビューションのビジネスモデルを拡大しながら、その強みを生かした新しいビジネスモデルであるサービス・ソリューションモデルへと変革していくことで目指す絵姿です。

サービス・ソリューションモデルは、半導体、ネットワーク事業で培ってきたCyberとPhysicalの強みの融合、創業時から最先端の技と知を追い求め種を蒔き続けてきた先進性、昨今急拡大している共創パートナー、研究機関をはじめ、従来のサプライヤ、お客様、官公庁やM&A等によるグループ会社などによって大きく広がるエコパートナーを組み合わせることで、当社グループと当社グループのエコパートナーにしか出来ない、高付加価値のサービス・ソリューションを提供していくものです。

従来の当社グループのビジネスはその大部分がBtoBで完結するものでしたが、今後はソリューションのカバレージをコンシューマにまで広げ、社会価値と経済価値を両立させるサービス・ソリューションを提供してまいります。

 


 

④ バリュー

 

Trust Excitement Aggressiveness Move Stretch

 

当社グループのバリュー「T.E.A.M.S」は、社員が日々判断や行動に迷った際に立ち返る価値観をまとめたものです。社員全員がバリューに基づきベクトルを一つにすることで、質の高いチームワークが実現し、未来を切り開くエネルギーと勢いを生み出します。

 

⑤ ブランドスローガン

「Co.Tomorrowing」は、「ともに未来を創っていく」ことを意味しています。

 

(2) サスティナビリティ基本方針の策定について

当社グループは以下のとおりサスティナビリティ基本方針を策定し、社会の課題解決と持続的成長に取り組んでまいります。

 

① サスティナビリティ基本方針

当社グループは地球環境や社会課題への対応を経営方針の最重要事項のひとつとして捉え、当社グループのパーパスである「変化の先頭に立ち、最先端のその先にある技と知を探索し、未来を描き“今”を創る。」ための活動に邁進します。

 

a. 重要課題を特定し、社会課題の解決と持続可能な社会に貢献するビジネス推進と事業投資マネジメント

事業活動を通じての社会、環境への貢献と企業価値の向上に努めます。

 

b. 環境・人権に配慮したグローバル経営の推進とサプライチェーンの強化

環境保全、人権と労働の基本的権利に配慮した経営を行います。仕入先、得意先に当社グループのサスティナビリティの考え方を理解してもらったバリューチェーンの構築を目指し、また、世界各国の文化、慣習などの理解と公正且つ誠実な事業活動を行います。

 

c. 社会からの信頼づくりとガバナンス・リスクマネジメント体制の強化

正確、明瞭、タイムリーな情報開示とステークホルダーとの対話をいたします。不正などが発生せず、持続可能な経営が実現できるガバナンス体制の構築と強化を行います。

 

d. サスティナビリティ推進に向けた社員の教育・啓発

全ての社員がサスティナビリティを推進する責務を負っていることから、社員に対してサスティナビリティ推進に関する教育、啓発活動を行います。

 

② マテリアリティ(重要課題)と経営・事業活動の関係性

 

当社グループは社会、ステークホルダーにとって重要度が高く、かつ当社グループの経営インパクトも大きいと考える以下のマテリアリティを特定いたしました。

 

a. 顧客課題の解決を通じ経済の発展に寄与する

Cyber Physical System(CPS)セキュリティ事業を通じ、情報化社会における情報セキュリティの強化に貢献します。また、スマートマニュファクチャリング事業を通じ、代替えリソースによる労働力確保などの顧客課題の解決に注力してまいります。

 

b. 安全安心で快適な暮らしを創る

ヘルスケア事業を通じ、個人に最適化された個別化医療、予防医療の発展に貢献してまいります。また、スマートシティ/モビリティ事業を通じ、安全で安心できる生活環境の整備や地域社会の活性化にも寄与してまいります。

 

c. 持続可能な地球環境を創る

サーキュラーエコノミー事業を通じ、カーボンニュートラルの実現、再生可能な資源を活用した循環型社会の実現に貢献いたします。また、フード・アグリテック事業を通じ、生活基盤の強化による食料の安定供給を実現してまいります。

 

そして、これら3つのマテリアリティに共通して、最先端半導体の提供やIT商材の提供を通じて、産業と技術革新の基盤の創造に取り組んでまいります。

 

(注) スマートマニュファクチャリング事業、CPSセキュリティ事業、スマートシティ/モビリティ事業、ヘルスケア事業、サーキュラーエコノミー事業、フード・アグリテック事業とは、サービス・ソリューションモデルにおける事業テーマであります。

 


 

d. 経営・事業のレジリエンスを強化する

以下の3つのテーマのもとに経営のレジリエンスを強化してまいります。

 

・ガバナンスとリスクマネジメント強化

・ダイバーシティ&インクルージョン(人的資本の最大化)

・ステークホルダーとの対話の強化

 

(3) 長期経営目標について

 

2030年度の長期経営目標として、社会的価値と経済的価値(企業価値)の両立を目指してまいります。社会的価値としては①顧客課題の解決を通じ経済発展に寄与する、②安全安心で快適な暮らしを創る、③持続可能な地球環境を創る、の3つのマテリアリティ、経済的価値として、現在の高付加価値ディストリビューションモデルに加え、サービス・ソリューションモデルを強化し、高収益・リカーリング型の収益構造への変革を図り、連結売上高2兆円以上、連結営業利益1,500億円以上、連結営業利益率7.5%以上、連結ROE15.0%以上を実現し、事業の持続的な成長を目指します。

 

 

 

2030年度

経営目標

連結売上高

2兆円以上

連結営業利益

1,500億円以上

連結営業利益率

7.5%以上

連結ROE

15.0%以上

 

 

(注) 1 連結営業利益は半導体事業、ネットワーク事業、CPSソリューションモデルの3つの柱で1,500億円以上の目標であります。

   2 2023年9月25日に長期経営目標を上方修正しております。

     3 連結ROE = 連結親会社株主に帰属する当期純利益÷ 連結自己資本(純資産から非支配株主持分を除いたもの、期末時点)

 

Vision2030、長期経営目標の達成からバックキャストし、2022~2024年度、2025~2027年度、2028~2030年度の3つの中期経営計画を、それぞれ経営資源融合フェーズ、専門性強化フェーズ、経営資源統合フェーズと位置付けて取り組んでまいります。

 

前段階として、前期経営計画(2019~2021年度)におきまして、富士エレクトロニクス株式会社、マクニカネットワークス株式会社を株式会社マクニカに吸収合併し、経営資源を株式会社マクニカに集めてまいりました。

 

経営資源融合フェーズ(2022~2024年度)においては、半導体事業部門とネットワーク事業部門の組織間連携を強化するとともに、得意先、仕入先、様々なパートナーを当社グループ全体で共有します。当社グループのCyberとPhysicalの強みをはじめ、あらゆる経営資源の融合を図ることで、サービス・ソリューションモデルの基礎となるサービス及びCPSプラットフォームの開発を進めます。

 

専門性強化フェーズ(2025~2027年度)においては、それぞれの領域(例えばモビリティ、スマートマニュファクチャリング、ヘルスケア)において専門性を高め、サービスの強化及びサービス間の連携を図ります。

 

経営資源統合フェーズ(2028~2030年度)においては、領域をまたがるサービス、データの連携を強化し、サービスの統合を図り、業界、業際の標準プラットフォームとして事業の安定化を図ります。

 

 


 

 

(4) 中期経営計画について

 

① 当社グループを取り巻く環境

 

当社グループは、独立系エレクトロニクス専門商社として、エレクトロニクス市場の黎明期からスマートフォンなどの高度な情報端末が日常の生活空間の隅々に行きわたり、社会に欠かせない存在となった現在まで世界の最先端の商品・技術を提供することを自らの使命としてきました。また、変化の激しいエレクトロニクス・情報通信業界にあって、当社グループは単なる商品の物流を担当する専門商社ではなく、顧客課題に対しての的確な提案、お客様が使いこなして頂くためのテクニカルサポートを行う技術サービス提供会社として、競合他社との差別化、位置づけの明確化を図ってまいりました。

昨今の当社グループを取り巻く環境並びに今後の見通しにつきましては、国内外における通信インフラ設備を始めとした設備投資の動向、スマートフォン、サーバー、民生機器、自動車、産業機器などを中心として、中期的には需給バランスの変動による好不況は避けられません。また、米中貿易摩擦の影響、国際情勢の変動、仕入先の合従連衝を背景とした半導体商社間の競争激化、さらに国内においては商社間で買収、統合などの再編が発生しており、大きな環境変化を迎えております。IT産業におきましては、不正アクセスによる個人情報の大量流出や身代金を要求するランサムウェアの大量拡散など、世界的に高度化したサイバー攻撃の被害が拡大する等、セキュリティリスクが高まっております。一方、労働人口の減少や生産性向上に伴う労働の自動化等の社会課題により、ロボットやAI等の活用が大きく期待されております。また、新型コロナウイルス感染症を契機として、さまざまな企業の活動や人々の生活に大きな影響を及ぼしております。今後は自動化や無人化、働き方改革などの加速が本格化するものと思われます。

このような環境の中、今後、当社グループが成長と同時に、より収益性を高めるためにグループ経営の変革を図っております。「変化の先頭に立ち、最先端のその先にある技と知を探索し、未来を描き“今”を創る。」というパーパスのもと、当社グループの目利き力、未来構想力、実装力という強みを活かして、サイバーとフィジカルをつなげ、価値そのものを創造するサービス・ソリューションカンパニーとして、様々な社会課題の解決に貢献してまいります。そして、社会的価値と経済的価値を両立し、高い付加価値を創造する経営を目指してまいります。以上を踏まえ、2022~2024年度中期経営計画及び経営目標を策定し、推進しております。

 

なお、2023年3月期は、旺盛な半導体需要と為替が円安水準で推移したことなどから、集積回路及び電子デバイスその他事業において想定を上回る成長を実現し、当初の中期経営計画(2022~2024年度)の経営数値目標を2年前倒しで達成いたしました。しかしながら、2025年3月期の見通しにつきましては、不安定な国際情勢や中国経済の低迷、米中貿易摩擦等により不透明な状況となっております。このような環境の中、集積回路及び電子デバイスその他事業におきまして、シェアの拡大を見込んでいるものの、2024年3月期から引き続き市場の調整局面が継続する見込みです。このような事業環境を勘案し、中期経営計画(2022~2024年度)を下記のとおり修正いたしました。

 

 

② 中期経営計画

 

a. 経営目標

当社グループは、2023年5月8日発表の「中期経営計画(2022~2024年度)」の経営目標を、2024年5月7日に修正しました。

 

 

2023年5月8日発表

2024年5月7日発表

連結売上高

1.2兆円以上

1.1兆円

連結営業利益

670億円以上

640億円

連結営業利益率

5.6%以上

5.8%

連結当期純利益

500億円以上

420億円

連結ROE

15.0%以上

15.0%以上

運転資本回転率

3.8回以上

3.8回以上

 

 

(注)1 連結ROE = 連結親会社株主に帰属する当期純利益 ÷ 連結自己資本(純資産から非支配株主持分を除いたもの、期末時点)

  2 運転資本回転率 = 年間売上高 ÷ 運転資本(売上債権 + 棚卸資産 - 仕入債務、期末時点)

 

b. 事業戦略

 

・半導体事業の成長戦略

半導体事業においては①成長ドメインにおけるシェアの拡大、②半導体の技と知を活かした付加価値ソリューションのディストリビューションの拡大、③長期的な成長に向けたIoT関連、エナジーハーベスト関連、環境関連などを中心とした新規商材の開拓、④グローバルでの事業拡大を行います。

 

・ネットワーク事業の成長戦略

ネットワーク事業においては①セキュリティビジネスにおいて既存ターゲットセグメントでのシェア拡大と、ターゲットセグメントの拡大、②BigDataビジネスにおいてAI関連を中心としたソリューションの拡大、③DXを含むアプリケーションビジネスの拡大、④グローバルでの事業拡大を行います。

 

・サービス・ソリューションモデルのビジネス開発

従来新事業として取り組んでいた事業について、サービス・ソリューションモデルとして更なる強化を図ります。サービス・ソリューションモデルにおいては、①「マテリアリティと事業テーマの関係性」に記載のとおり、スマートマニュファクチャリング、CPSセキュリティ、スマートシティ/モビリティ、ヘルスケア、サーキュラーエコノミー、フード・アグリテックの6つの事業テーマにおいて、社会課題を解決するソリューションの開発、社会実装を推進、②サービス・ソリューションの事業基盤となるCPS(Cyber Physical System)プラットフォームの拡大、③社内の人材開発およびパートナーの開拓により長期的な成長に必要なケイパビリティの獲得を行います。

 

c. 経営基盤強化

Vision2030の実現に向けて経営のレジリエンスを強化します。

 

・リスクマネジメントの強化

グループ全体のリスクマネジメント体制及び活動を強化していくことと同時に、適切にリスクテイクができる仕組みを構築していきます。また、気候変動問題に関してTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に基づいた開示を行います。

 

 

・IT/DX戦略

前中期経営計画期間に導入した次世代システムの活用を進めることで業務効率の向上を図ってまいります。また、次世代システムでカバーできない領域においても更なる効率化のためのDXを推進してまいります。

 

・人的資本の最大化

人的資本を最大化するために、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DEI)の推進、働き方改革、人材育成を重点的に強化・推進してまいります。

 

・財務戦略

当社グループは、地球環境問題や様々な社会課題に対応しながら持続的成長と中長期の企業価値の向上を実現することを目指し、将来の成長に必要なCPS(Cyber Physical System)、AI、また自社オリジナルサービス等の無形資産投資およびM&Aなどの投資を優先いたします。そのために必要な資金は、事業活動による利益と運転資本回転率の改善から生まれるキャッシュ及び有利子負債を主体とした資金調達から創出します。

 

・株主還元方針

当社グループは、経営環境や各事業年度の連結業績および目標とするROE(15.0%)などを勘案しながら、連結自己資本配当率(DOE)4.0%を目安として安定的かつ継続的な配当を実施するとともに、機動的な株主還元の手段として資本効率や市場環境などを考慮のうえ自己株式の取得を実施し、総還元性向30~50%を目指します。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサスティナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。本項では気候変動による環境課題と人材の育成及び社内環境整備に関して記載しております。その他の項目に関しては、第2 事業の状況「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) ガバナンス

当社は、サスティナビリティ経営を当社グループで横断的に推進するため、サスティナビリティ推進委員会を設置しています。代表取締役社長は、サスティナビリティ推進委員会の委員長と、業務執行の最高意思決定機関であるグループ経営会議の議長を担い、環境課題に係る経営判断の最終責任を負っています。
 サスティナビリティ推進委員会では、当社グループの環境課題に関する実行計画を立案し、進捗モニタリングを行っています。実行計画はグループ経営会議で協議・決議の上、最終的に取締役会へ報告を行っています。取締役会は、報告内容を受けて議論・監督を行います。
 

(2) 戦略

① 環境課題に関する方針、戦略

当社では、TCFDの提言に基づき、リスク及び機会を特定・評価し、気候関連問題が事業に与える中長期的なインパクトを把握するため、2030年における国内の主要3事業(注1)を想定し、シナリオ分析を実施しました。
 分析においては、産業革命前と比べ2100年までに世界の平均気温が4℃前後上昇することを想定した4℃シナリオと、1.5℃上昇する1.5℃シナリオを採用し、各シナリオにおいて政策や市場動向の移行(移行リスク・機会)に関する分析と災害などによる物理的変化(物理リスク・機会)に関する分析を実施しました。使用したシナリオのうち代表的なものは以下です。

 

a. 移行リスク・機会の分析に使用した主要シナリオ

 ・4℃シナリオ:IEAによるStated Policy Scenario (STEPS)

 ・1.5℃シナリオ:IEAによるThe Net Zero Emissions by 2050 Scenario (NZE)

b. 物理リスク・機会の分析に使用した主要シナリオ

 ・4℃シナリオ:IPCCによるRCP8.5

 ・2℃シナリオ:IPCCによるRCP2.6

 

分析の過程では各シナリオに対して、気候変動に関するインパクト要因を洗出し、約400の項目について事業への影響度を検証し、その中でも重要と思われるシナリオを特定いたしました。それらの特定したシナリオに関しては以下の通り、影響度を定量的、定性的に検証し、大・中・小の3段階で評価をいたしました。

 

 

 

リスク・機会種類

リスク・機会要因項目

事業インパクト

評価

対応方針

リスク

移行

政策・法規制

炭素税導入

炭素税が製造・物流コストへ転嫁されることにより仕入れ価格が上昇する

DXによる収益力の確保

(中期経営計画)

EV車への移行に伴う内燃機関自動車への規制強化

EV市場の拡大に伴い、既存の内燃機関自動車部品の売上が減少する

EV市場への注力

(中期経営計画)

エネルギー・電力調達コストの増加

再生可能エネルギーの調達による追加的コストの発生

省エネ効果の高い設備の導入、切替え

技術

設備投資及び燃料コストの増加

オフィスへの低炭素技術導入により設備投資コストが増加する

中長期的な損益中立でのGHG排出量削減

低GHG半導体製品の普及拡大

半導体製造過程における低GHG化に伴い、大量のEOL/PCN(注2)が発生し、対応コストが増加する

DXによる自動化を推進(中期経営計画)

市場

メーカー・顧客間での直販化が加速

物流におけるGHG削減のため、メーカーと顧客の直販化が進む

DXによる顧客接点強化と顧客への直接輸送の拡大

低炭素技術への移行

顧客の需要変化や市場変化への適応の遅れによるビジネス停滞や売上の減少

高効率なパワー半導体等環境性能に優れた取扱製品群へのシフト

評判

投資家、顧客、当社応募者等ステークホルダーの行動変化

環境配慮への対応の遅れやレベルの低さによりビジネス機会の損失、企業価値・ブランド価値の毀損を招く

気候変動対応への積極的且つ継続的な取り組み

物理的

急性物理的

リスク

洪水・高潮によるオフィス・物流拠点への影響

異常気象の増加、深刻化に伴い、従業員が就労できず、事業活動が低下する/沿岸部に位置するオフィス・新子安ロジが被災することによる損失

BCP対策マニュアルの整備

機会

市場

EV市場の拡大に伴う売上拡大

EV市場の拡大に伴い、EV向け半導体売上の増加

EV市場への注力
(中期経営計画)

社会課題解決型ビジネスの伸長

再生可能エネルギー、Foodtech、エネルギーマネジメントなどの循環経済型新規ソリューションビジネスが増大

 関連市場への積極展開
(中期経営計画)

環境貢献を実現するソリューションに向けた半導体の売上拡大

排出ガス削減、省電力、クリーンエネルギー、スマートグリッド等に貢献する各種ITシステムへの半導体採用が増大

関連市場への積極展開
(中期経営計画)
 

 

(注) 1 対象とした国内の主要事業は「半導体事業」「ネットワーク事業」「CPSソリューション事業」の3事業

2 EOL/PCN(End Of Life/Product Change Notice):製品の生産終了や販売終了、あるいは製造プロセスや生産工場変更・追加、製品仕様の変更等により、メーカーから顧客向けに発行される通知書のこと

 

② 人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略

当社グループは、人は財産(人財)という考えの下、人財を「Vision実現に向け、競争力を高め、サスティナブルに成長を続けていく原動力、価値を創造する重要な資本」と位置づけ、人財価値の最大化への投資を続けております。人材の育成に関する取り組みとして「多様な人財の確保・活用=ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DEI)」を掲げており、多様な人財が活躍でき、人財価値の最大化を図るために、人財育成方針を定めています。

 

a. 多様性確保についての考え方(ダイバーシティ推進基本方針)
◎ DEI推進の目的:企業の競争力を高め経済的価値と社会的価値の最大化

・ 多様な経験を受け入れることによるイノベーションの創出と既存人財の成長

・ 異文化を取り入れることによる企業文化を進化

・ 将来の深刻な労働力不足(国内)などの課題の解決

◎ 人材活用:

・ 創業時より「フェア」「実力重視主義」「抜擢人事」「エンパワーメント」をポリシーとした人財の登用を重視

・ 性別、国籍、人種、宗教、年齢、障がい、性的指向に関係なく実力のある人を登用する文化・土壌

◎ 方針:

・ 多様性に対応した職場環境(ハード面・ソフト面)の改善を継続

・ 様々な社員が主体的・自律的に考え選択・判断でき、個々の能力を最大限発揮できる環境を構築

 

b. 人材育成方針
◎ 各個人のキャリアデザインをサポートし、キャリアオーナーシップを高める教育機会を提供
◎ 各個人を信頼し、任せる事で、個人の活躍と成長の加速を促す
◎ 年齢や経験に関係ない、実力重視の抜擢人事を実施

 

c. 社内環境整備への取り組み
◎ DEI推進

・ 性別、国籍、人種、宗教、年齢、障がい、性的指向、地位、立場にかかわらず活躍できる環境の整備

・ E-Learning等を活用した社員への継続啓蒙と経営陣による率先垂範

◎ 健康経営・Well-Being経営の促進

・ 健保組合と連携した健康促進施策の充実

・ 労務管理・残業対策の強化

・ 健康経営を推進し、「健康経営優良法人2024(大規模法人部門)」認定を取得

◎ 働き方改革推進

・ 生産性が最も上がる方法や場所を、各組織・チームが主体的・自律的に判断する働き方の継続運用

◎ 従業員エンゲージメントの向上

・ 「経営計画発表会」の開催(年に1回、国内外のグループ社員が一堂に集まっての方針・戦略の共有、表彰の場)

・ 「行動テーマ」の設定(年度において社員が意識すべきスローガンを設定しベクトルを合わせる

・ 「強い組織づくりアンケート」の実施(従業員サーベイの結果をもとに、全部署が課題と対策を設定し、組織の改善を図る取り組みを10年以上継続)

◎ 人事制度・報酬体系の整備

・ 多様な人財が働きやすい制度への見直し

・ 安心して働くための報酬水準の見直し

・ 2024年4月からパーパスの実現を目指して、ケイパビリティを強化し変革を加速させる新人事制度

  を運用開始

 

 

(3) リスク管理

    当社は、代表取締役社長を委員長とするコンプライアンス・リスクマネジメント委員会にて、当社グルー

 プの業務運営におけるリスクマネジメント、コンプライアンス状況を把握・分析し、取締役会・グループ経  

 営会議への報告及び必要な施策の企画・立案を行っています。
  サスティナビリティ推進委員会はシナリオ分析を行い、当社の気候変動リスク・機会を特定・評価し、コ

 ンプライアンス・リスクマネジメント委員会とともに管理しています。
 

(4) 指標及び目標

① 環境課題に対する方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績、指標及び目標

当社は、2024年5月8日、株式会社グローセルを含むマクニカグループ全体としてSBT(注1)「Science Based Targetsイニシアチブ」認定を取得しており、この認定に基づき温室効果ガス排出削減目標を設定、事業活動におけるCO2排出削減の取り組みを推進しています。当社では、パリ協定の「1.5℃目標」を達成するため、引き続き、環境負荷低減に積極的に取り組んでまいります。

 

マクニカグループ(グローセルグループ除く。)

項目

対象範囲

排出量実績(t-CO2)

2022年度(注4)

2023年度

前年比

Scope1

海外連結子会社(注2)まで含む

719.88

846.08

+17.5%

Scope2

同上

1,267.48

1,022.35

△19.3%    

Scope3

海外連結子会社のScope3下流まで含む(従来の産業連関表を用いたもの)

4,753,484.44

4,052,011.16

△14.8%    

対象範囲は上記同様(Category1の製品について、CDPサプライチェーン・プログラムを活用したデータ(注3))

-

1,539,998.75

(参考)2023年度分より初算定

排出量合計

上記Scope3の分類に基づく、Scope1~3までの排出量合計

4,755,471.81

4,053,879.59

△14.8%    

-

1,541,867.18

(参考)2023年度分より初算定

 

(注) 1 Science Based Targetsの略称で、気候変動などによる気温上昇を2℃未満に抑えるというCOP21パリ協定の長期目標達成に向けて、企業が科学的根拠に基づいて設定する温室効果ガス排出削減目標のこと。

2 それぞれの事業年度末における連結子会社を算定対象としております。なお、2024年3月6日付で、当社連結子会社となりました株式会社グローセル分は、23年度連結決算の方針に基づき、資産のみを対象として上記を算定しております。(PL部分は対象外)

3 当社は、当社仕入先の排出量削減の努力を反映すべく、CDPサプライチェーン・プログラムを活用して、仕入先の一次データ(サプライヤーごとの売上高に基づく排出原単位)や二次データ(CDP提供のセクター平均)を入手、この内容を検証の上、Scope3 Category1の製品排出量に置き換える取り組みを行っております。

4 SBT認定取得の申請にあたり、2022年度分Scope3の算定見直しを図ったため、昨年のTCFD開示情報の数値と若干異なっております。

 

 

 

グローセルグループ

 前述の通り、当社は、2024年3月6日付で、株式会社グローセルを連結子会社としております。SBT認定においても、株式会社グローセルの温室効果ガス排出量を当社2022年度実績に含めて取得しておりますので、ここに参考情報としてお知らせいたします。

項目

対象範囲

排出量実績(t-CO2)

2022年度(注1)

2023年度

前年比

Scope1

海外連結子会社まで含む

32.32

30.15

△6.7%

Scope2

同上

277.08

166.47

△39.9%    

Scope3

海外連結子会社のScope3下流まで含む

280,479.15

364,782.78

+30.1%   

排出量合計

Scope1~3までの排出量合計

280,788.54

364,979.40

+30.0%   

 

(注) 1 SBT認定取得の申請にあたり、2022年度分から当社グループと算定方法の合わせ込みを行ったため、株式会社グローセルが自社のHP上で発表してきた数値と若干異なります。(今回の発表を機に、そちらも修正いたします。)

 

マクニカグループ(グローセルグループ含む。)

 上記の当社マクニカグループと株式会社グローセルを合算したものになります。当社では今後CDPへの回答等外部への公表につきましては、こちらの合算した数値を当社グループの正式な数値として採用させていただきます。また、Scope1~3の排出量の正確性、信頼性を確保するため、第三者検証を受審する予定です。

項目

対象範囲

排出量実績(t-CO2)

2022年度

2023年度

前年比

Scope1

海外連結子会社まで含む

752.20

876.23

+16.5%

Scope2

同上

1,544.56

1,188.82

△23.0%    

Scope3

(注1)

海外連結子会社のScope3下流まで含む(従来の産業連関表を用いたもの)

5,033,963.58

4,416,492.27

△12.3%    

対象範囲は上記同様(Category1の製品について、CDPサプライチェーン・プログラムを活用したデータ)

-

1,904,479.86

(参考)2023年度分より初算定

排出量合計

上記Scope3の分類に基づく、Scope1~3までの排出量合計

5,036,260.34

4,418,557.32

△12.3%  

-

1,906,544.91

(参考)2023年度分より初算定

 

(注) 1 Scope3において、マクニカグループとグローセルグループで重複して算定している分については、差し引いております。

 

当社では、Scope3 Category1(製品)の排出量について、昨年まで「仕入金額×排出係数」のみで算定していたため、売上高(仕入金額)の増加に伴い、排出量も比例して増加する仕組みとなっておりました。本年よりCDPサプライチェーン・プログラムを活用することにより、排出量の多いサプライヤーを特定のうえ、排出量の一次データを入手、サプライヤーの削減努力を反映できる算定ロジックによる排出量も参考情報として公開することといたしました。なお、データの置き換えにあたっては、サプライヤー毎に提供された情報の正確性・信憑性を検証し、一定の基準を設けて実施しており、この基準を満たせなかった場合には、CDPの提供するセクター平均(二次データ)を活用するようにしております。それ以外のサプライヤーについては、引き続き、産業連関表を使用して算定しております。
 また、自社オフィス(自社ビル・テナントビル)への再生可能エネルギーの導入・切替えを進めるとともに、リモートワークの進展やレンタカーやカーシェアの活用に伴う社有車の減車、ガソリン車からEV車・HV車への切替え、その他の省エネ削減施策によって、自社からの温室効果ガス排出量(Scope1、2)の削減を図っております。Scope3 Category4(物流)についても、従来からフォワーダー各社との情報交換を定期的に実施するとともに、実態に即したデータの抽出、算定精度の向上を図り、より適正な数値の算出に努めております。
 

指標

基準年

目標年

目標

Scope1,2削減率

2022年度

2030年

△42.0%

2050年

△100%

Scope3削減率

2022年度

2030年

△25.0%

 

 

  当社では今後の削減に向け、Scope1~3まで全ての基準年を昨年、2021年度から2022年度に変更いたしま

 した。またSBT認定につきましても、グローセルグループを含む当社グループ全体として、2022年

 度を基準年として取得しておりますので、本年も基準年、目標年、目標に変更はありません。

 

 

② 人材の育成及び社内環境整備に関する方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績、指標及び目標

当社グループでは、上記「(2)戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に係る指標については、当社においては、関連する指標データ管理とともに、具体的な取り組みが行われているものの、連結グループに属するすべての会社では行なわれていないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の指標に関連する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社の子会社である㈱マクニカのものを記載しております。

 

指標

目標

実績(当連結会計年度)

管理職に占める女性労働者の割合

2030年度(2031年3月)
まで
910

6.2

 

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

 (1) 外部・内部経営環境に関するリスク

① シリコンサイクル・需給バランス・景気変動の影響について

当社グループの属する半導体業界はシリコンサイクルと呼ばれる好不況のサイクルが存在し、浮き沈みを繰り返していると言われています。これは、半導体市況の上昇局面では、多くの企業が一斉に生産設備の増強を計画し、その後、生産も同時に行われるため、供給過剰が発生して製品価格が下落し、売上高の減少・停滞が発生するものです。一方、不況となれば一斉に投資に抑制がかかり、その後には供給不足となって価格下落がとまるとともに稼働率が上がって再び好況となります。当社グループは、このような半導体業界特有のサイクルによる好不況の影響を受ける可能性があります。また、当社は顧客、仕入先と常に最新情報の共有などを行っておりますが、昨今のように、このようなサイクルとは別に当社グループが取り扱う半導体の需要の変化や半導体の供給力の変化、または、半導体が搭載される製品の価格やライフサイクルの変化などによって当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 ② サプライチェーン全般について

当社グループは、主力の半導体事業において、米国企業を中心とする半導体メーカーの製品を仕入れて、世界各地の顧客(各種製造事業者)に販売しております。半導体メーカーの製造工程には前工程、後工程、出荷テスト工程があり、製品ごとにそれぞれの工程がアジアを中心に世界各地に所在しており、納入先である顧客の生産拠点もその多くがアジア各地に所在しています。当社グループもアジアをはじめ世界26の国と地域に事業拠点を設置しております。当社グループでは事業継続のための各種取組みを行っておりますが、感染症パンデミックによる都市封鎖、自然災害等により、現状のサプライチェーンモデルが機能不全に陥り、事業継続が困難になった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 仕入先との関係について

当社グループは、最先端の技術・商品などを有する国内外の様々な企業を仕入先としております。それら仕入先とは、代理店契約などを締結し、緊密な関係を維持しておりますが、仕入先がM&Aに遭遇したり、仕入先自体の代理店政策の見直しにより代理店再編成が生じた場合は、商権に変更が生じるなど業績に影響を与える可能性があります。また、半導体及びIT・セキュリティ業界は、技術革新の激しい業界でありますが、仕入先の商品開発力が著しく低下し、商品の競争力に優位性が保てない場合は、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

④ 新規仕入先の継続的な発掘について

当社グループは国内外の最先端の技術力を持ち、競争力の高い商品・サービスを有した企業をいち早く発掘し、代理店契約を締結することで商品ラインナップを拡大・強化してまいりました。これらの企業の獲得競争は激しいものとなっており、仮にこのような新規仕入先の継続的な発掘が困難になった場合は、当社グループの事業計画の遂行に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ サービス・ソリューションモデルの構築について

半導体やネットワーク事業で培ってきた高付加価値ディストリビューションのビジネスモデルを拡大し、従来の仕入先、顧客に加え、研究機関、官公庁、M&Aにより拡大したグループ会社等と協働しながら、技術商社の枠を超えた価値を創造する高付加価値サービス・ソリューションモデルへの変革をめざしております。既に各市場で必要な専門技術やパートナーを獲得し、例えば、自動運転ソリューションやスマートマニュファクチャリング等の分野において着実に一定の取引実績を上げておりますが、今後、これら新規事業の進捗に遅延等が生じた場合、将来の当社グループの収益拡大に向けた事業計画の遂行に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 高度な技術力の維持と人材確保について

当社グループの属する半導体及びIT・セキュリティ業界は、技術革新の激しい業界にあり、今後の成長及び収益性の向上は半導体、セキュリティ、AI、デジタル技術などの高度な専門性に基づくソリューションを顧客の課題に応じて提供することが重要となります。このような価値を顧客に提供するには、社内の技術力を高め、優秀な人材を採用、育成することが必要になります。近年特に優秀な技術者の獲得競争は激しいものとなっており、高度専門人材の活躍を後押しし、人的資本を最大化する各種取組みを推進する等、当社グループは優秀な技術者の確保に注力しておりますが、仮に十分な技術者を採用できない場合や優秀な技術者が流出した場合には、事業計画の遂行に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦ カントリーリスク

当社グループはアジアを中心として世界26の国と地域に拠点を設置しております。事業展開する海外各国において、法律・規制の大きな変化、テロや戦争、米中対立の激化による半導体製品の中国への輸出規制や中国での不買運動、その他政治・経済状況の急激な変化、疾病といった予測し難い事態が生じ、事業活動に大きな影響を受け、事業継続が困難になった場合、海外での事業活動の停滞や不測の事態による損害の発生等、当社グループの経営成績及び財政状態に大きな影響を与える可能性があります。

 

(2) 財務リスク

① 為替相場変動の影響について

当社グループのビジネスにおきましては、2024年3月期の国内仕入額に占めるドル建比率は81.3%、海外も含めた販売額に占めるドル建比率が44.3%と外貨建比率が高いことから、為替相場変動が当社グループの経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。すなわち、ドル建の販売に対しては売上高の変動、ドル建の仕入に対しては売上原価の変動、さらにこれらに係る債権債務の発生時から決済時迄の為替相場変動による営業外損益発生の可能性があります。また、米国主要仕入先との取引では、仕入値引を仕入の実施から数か月後の販売時に決済する取引条件としており、この間仕入値引に相当する債権額が変動する可能性があります。加えて、当社グループは、連結財務諸表を海外子会社の現地通貨ベースの資産及び負債を円換算して作成しているため、為替相場変動による換算リスクを負っています。当社グループは、輸出入取引で生じる外貨建債権債務をヘッジしておりますが、かかる為替リスクを完全に払拭することはできず、為替相場変動が当社グループの当期純利益に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 棚卸資産廃棄及び棚卸資産評価の影響について

当社グループのビジネスにおきましては、顧客からの所要数、納期などの要求に迅速に対応するため数ヶ月分の棚卸資産を確保しております。当社グループでは、棚卸資産額を適正に保つため商品が搭載される最終製品の需要予測、顧客の所要数量及び受注状況を考慮しながら、仕入先への発注を調整するなどして棚卸資産を管理しております。しかしながら急激な顧客の所要数量の変動、また、生産中止品や保守用在庫として確保していた商品が、当初見込んでいた顧客所要数量より差異が生じる際は、廃棄、又は資産価値評価の見直しを必要とする可能性があります。このような場合は業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 事業投資リスクについて

当社グループは、既存事業における確固たるポジションの確立やグローバルに拡大していくためにM&Aを行い、子会社化を進めてきました。また、継続的な成長を目指し、既存事業だけでなく、AI、ヘルスケアといった新規事業分野の企業への出資も行っております。これらの出資に関しては、出資の妥当性・適正性について事業開発委員会の審議・検討を経て経営会議または取締役会で決定し、継続的にそれら企業の業績モニタリングを行っております。しかしながら、出資先企業の価値または株式の市場価値が低迷した場合には、当社グループが投資金額の全部もしくは相当部分を失うことがあります。このような場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 法的及びその他リスク

① 当社が影響下にある法規制について

当社グループは、半導体・集積回路などの最先端の電子部品およびネットワーク関連商品・セキュリティ関連製品などの情報通信機器の輸出入を行っているため、輸出関連法規や関連諸規定の影響下にあります。当社グループでは、安全保障貿易管理を適切に実施するため、わが国の「外国為替及び外国貿易法(外為法)」に基づく輸出関連法規や関連諸規定を遵守しております。取扱商品の輸出に際しては、仕入先メーカーと協力のうえ「該否判定」を実施するほか、「仕向地、需要者、用途、取引経路等」の把握にも努めておりますが、需要者を通じて懸念国に迂回輸出され、軍事用途製品の一部に転用される可能性もあります。
当社グループとしましては、海外の需要者に対しても、軍事的用途に使用しないこと、安全保障貿易に関する法令・関連諸規定、国際条約等を遵守することを規定した確認証を提出して頂くよう求め、リスクの軽減に最大限努めておりますが、万一、当社グループの取引商品が予期せぬ需要者、用途で使用された場合、結果として当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 情報セキュリティについて

当社グループは、当社が提供する商品・サービスの販売活動を通じて、顧客企業が保有する個人情報などの各種機密情報を知り得る場合があります。このような状況において、サイバー攻撃、もしくは人為的な過失等により、サービス停止、個人情報や機密情報の漏洩・改ざん・紛失等が発生する可能性があります。当社では最先端のサイバーセキュリティ対策製品を導入し、システムがサイバー攻撃を検知した際には、即座に分析・対応できる組織を構成しております。また、世界各地の関連法規制を含み、社員への教育や啓蒙を継続的に実施することで、リスクの軽減に最大限努めております。しかし、このような取組みにもかかわらず、情報漏洩等が発生した場合に、顧客企業などからの損害賠償請求や、当社グループへの信頼喪失を招くことで、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 求償リスクについて

当社グループの取扱商品及びサービスは、業務の性格上、顧客企業の様々な製品・サービスに使用されておりますので、製品不良等の問題により、当社グループが損害賠償を負う可能性があります。当社グループでは、契約書、取扱商品のクレームに対する仕入先メーカーとの連携及び協力等により、リスクの予防・軽減に最大限努めておりますが、このような対策にもかかわらず、重大な問題が発生した場合には、結果として当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症による活動制限が解消され、経済活動は正常化に向かう流れとなりました。世界経済におきましては、国際情勢が一段と不安定になるなか、中国経済の停滞、為替レートの変動、米中貿易摩擦など、先行き不透明な状況が続いております。
 当社の属するエレクトロニクス産業におきましては、スマートフォンやパソコンなどの需要が減少、中国経済の停滞も影響し、年度の後半から調整局面となり、産業機器市場におきましても、省人化や効率化のための製造業DX(デジタルトランスフォーメーション)向けのFA・工作機械などへの設備投資が第4四半期から軟調となりました。また一方で、戦略的に自国で半導体を確保するため、各国政府主導により半導体工場への設備投資の支援策が行われ、半導体製造装置などに長期的な需要が期待されています。車載市場では、半導体など電子部品の供給不足が解消され、安全性の向上・自動化に向けた高度な制御システム、脱炭素化に向けたEV(電気自動車)化の動きが加速し、車1台当たりの半導体搭載量が増加しています。

IT産業におきましては、企業のIT投資環境は引き続き良好となっており、DXなどをテーマとする投資に加えて、国内外の経済活動の正常化によるビジネス規模の拡大に伴ってIT投資が拡大しています。セキュリティに関しては、短中期的に経営課題ととらえる企業が増加しています。特に、比較的セキュリティレベルが低い自社の子会社や取引先などのサプライチェーンの弱点を悪用した攻撃により、個人情報の漏えいや業務停止するなど、甚大な被害を及ぼしていることから、情報資産のリスクを発見・管理するアタック・サーフェイス・マネジメント(ASM)サービスへの注目が高まっています。

また、当社グループが今後もさらなる事業拡大及び企業価値の向上を目指していくためには、半導体及び電子機器に対する技術的な知見・知識や集積回路、電子デバイスなどの販売スキルを有する人材やエンジニアといった人的資本を獲得することが必要不可欠であるため、2024年1月に当社の完全子会社(株式会社マクニカ)による株式会社グローセルの株式の公開買付を実施し、2024年3月より特定子会社としました。当社との人的資本を組み合わせることにより、半導体事業や新規事業の拡大、事業上のシナジーを生み出してまいります。

以上の結果、当連結会計年度における売上高は、年度を通じて為替が円安傾向だったこともあり1,028,718百万円(前期比0.1%減)、営業利益は63,733百万円(前期比3.4%増)、経常利益は61,966百万円(前期比9.0%増)、企業買収に伴い「負ののれん発生益」を特別利益として計上したことにより親会社株主に帰属する当期純利益につきましては48,069百万円(前期比17.2%増)となりました。

 

セグメント別の経営成績を示すと、次のとおりであります。

集積回路及び電子デバイスその他事業

当事業におきましては、車載市場では、半導体など電子部品の供給が改善されたことやADAS(先進運転支援システム)をはじめとした安全性の向上・自動化に向けた高度な制御システム、脱炭素化に向けたEV(電気自動車)化の流れにより半導体搭載量も増加していることから、その他標準ICを中心に伸長しました。また、産業機器市場においては、企業の設備投資意欲はあるものの部品供給の改善や中国市場の停滞による需要減少などもあり、各種半導体製造装置やFA機器や工業用ロボット、医療機器など幅広い市場で調整局面となりました。また、中国でのサーバー需要が落ち込んだ影響を受け通信インフラ・コンピュータ市場向けメモリーの需要が大きく減少しましたが、コンピュータ市場では、生成AI向け製品の特需がありました。また、当社の半導体商社市場におけるマーケットシェアの拡大が進んでいることも寄与しました。

これらの結果、同事業の当連結会計年度の売上高は907,803百万円(前期比2.3%減)、営業利益は56,655百万円(前期比2.4%増)となりました。

 

ネットワーク事業

当事業におきましては、クライアント端末へのセキュリティ対策の重要性認識が浸透してきたことにより、エンドポイントセキュリティ関連商品が大幅に伸長しました。クラウド技術やデータ活用の広がりを背景に、クラウドアプリケーションとデータ分析基盤関連商品が伸長しました。加えて、東南アジア地域を中心とした海外ネットワーク事業も大幅に伸長しました。また、特定の仕入先との販売契約で、ソフトウェアライセンスの原価を追加計上する必要が生じたため、一時的に売上原価率が上昇しました。なお、今後の影響は限定的です。加えて、期中の急激な円安傾向により、新規案件を中心に売上原価率が上昇しました。

これらの結果、同事業の当連結会計年度の売上高は120,933百万円(前期比20.6%増)、営業利益は7,077百万円(前期比12.0%増)となりました。

 

(資産)

流動資産は、前連結会計年度末に比べ27,669百万円増加となりました。これは主に電子記録債権が3,598百万円、商品が15,096百万円、その他の流動資産が7,463百万円それぞれ増加したことによるものです。

固定資産は、前連結会計年度末に比べ6,954百万円増加となりました。これは主に投資有価証券が4,314百万円、長期貸付金が1,085百万円、投資その他の資産のその他が916百万円それぞれ増加したことによるものです。

(負債)

流動負債は、前連結会計年度末に比べ7,705百万円減少となりました。これは主に短期借入金が14,547百万円、その他の流動負債が18,813百万円それぞれ増加したものの、支払手形及び買掛金が35,711百万円、未払法人税等が3,882百万円、賞与引当金が1,534百万円それぞれ減少したことによるものです。

固定負債は、前連結会計年度末に比べ6,329百万円減少となりました。これは主に長期借入金が5,000百万円、退職給付に係る負債が1,023百万円それぞれ減少したことによるものです。

(純資産)

純資産は、前連結会計年度末に比べ48,658百万円増加となりました。これは主に利益剰余金が38,679百万円、為替換算調整勘定が10,949百万円それぞれ増加したことによるものです。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末の37,492百万円に比べ1,131百万円増加し、38,623百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは39,949百万円増加 (前連結会計年度は、38,896百万円増加)となりました。これは主に仕入債務の減少及び法人税等の支払いがあったものの、税金等調整前当期純利益66,263百万円の計上、売上債権の減少及び棚卸資産の減少があったことによるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは18,457百万円減少 (前連結会計年度は、869百万円減少)となりました。これは主に連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出、貸付けによる支出、有形固定資産の取得による支出及び関係会社株式の取得による支出があったことによるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは23,014百万円減少 (前連結会計年度は、27,100百万円減少)となりました。これは主に長期借入金の返済による支出、自己株式の取得による支出及び配当金の支払いがあったことによるものです。

 

 

③ 仕入、受注及び販売の実績

a. 仕入実績

当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

仕入高(百万円)

前年同期比(%)

集積回路及び電子デバイスその他事業

779,014

△12.6

ネットワーク事業

113,850

+23.1

合計

892,864

△9.3

 

(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

b. 受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

集積回路及び電子デバイスその他事業

590,445

△39.3

583,030

△32.3

ネットワーク事業

128,253

+24.0

44,628

+19.7

合計

718,699

△33.2

627,658

△30.1

 

(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

c. 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

集積回路及び電子デバイスその他事業

907,803

△2.3

ネットワーク事業

120,914

+20.6

合計

1,028,718

△0.1

 

(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当連結会計年度の当社の属するエレクトロニクス産業におきましては、スマートフォンやパソコンなどの需要が減少、中国経済の停滞も影響し、年度の後半から調整局面となり、産業機器市場におきましても、省人化や効率化のための製造業DX(デジタルトランスフォーメーション)向けのFA・工作機械などへの設備投資が第4四半期から軟調となりました。また一方で、戦略的に自国で半導体を確保するため、各国政府主導により半導体工場への設備投資の支援策が行われ、半導体製造装置などに長期的な需要が期待されています。車載市場では、半導体など電子部品の供給不足が解消され、安全性の向上・自動化に向けた高度な制御システム、脱炭素化に向けたEV(電気自動車)化の動きが加速し、車1台当たりの半導体搭載量が増加しています。IT産業におきましては、企業のIT投資環境は引き続き良好となっており、DXなどをテーマとする投資に加えて、国内外の経済活動の正常化によるビジネス規模の拡大に伴ってIT投資が拡大しています。セキュリティに関しては、短中期的に経営課題ととらえる企業が増加しています。特に、比較的セキュリティレベルが低い自社の子会社や取引先などのサプライチェーンの弱点を悪用した攻撃により、個人情報の漏えいや業務停止するなど、甚大な被害を及ぼしていることから、情報資産のリスクを発見・管理するアタック・サーフェイス・マネジメント(ASM)サービスへの注目が高まっています。このような経済環境下、当連結会計年度の売上高は前連結会計年度に比べ0.1%減少1,028,718百万円、営業利益は前連結会計年度に比べ3.4%増加63,733百万円、経常利益は、9.0%増加61,966百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べ17.2%増加48,069百万円となりました。

 

a. 売上高

当連結会計年度の売上高は前連結会計年度に比べ0.1%減少1,028,718百万円となりました。

集積回路及び電子デバイスその他事業におきましては、当社グループが主に取扱いをしているアナログIC、PLD、その他標準ICなど全般的に半導体の供給不足は続いていますが、一部メモリーなどの製品については改善しています。そのような中、当社グループの注力市場である産業機器市場においては、生産の高度化・自動化を目的としたFA機器や工業用ロボット、半導体需要の高まりに応じた各種半導体製造装置への設備投資も継続しており、幅広い分野へアナログICやその他標準ICの需要が大幅に増加しました。車載市場では、世界的な脱炭素化の流れによるEV化やより高度な自動化・電動化が進み、半導体搭載量も増加していることから、アナログICやその他標準ICを中心に伸長しました。コンピュータ市場では、中国向けサーバー需要が落ち込んだ影響を受けメモリーの需要が減少しました。その結果、前連結会計年度に比べて2.3%減少907,803百万円となりました。

ネットワーク事業におきましては、働き方改革やリモートワークの普及によりクライアント端末へのセキュリティ対策の重要性認識が浸透してきたことから、エンドポイントセキュリティ関連商品が大幅に伸長しました。また、大型案件の獲得等によりアプリケーションやデータ分析関連商品も拡大しました。加えて、東南アジア地域を中心とした海外ネットワーク事業も大幅に伸長しました。その結果、前連結会計年度に比べて20.6%増加120,933百万円となりました。

 

b. 売上原価、販売費及び一般管理費

売上原価は、前連結会計年度の903,359百万円から0.5%減少し、899,101百万円となりました。売上高に対する売上原価の比率は87.4%となりました。販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ2.5%増加し、65,884百万円となりました。なお、販売費及び一般管理費の売上高に対する比率は6.4%であります。

 

c. 営業利益

営業利益は、売上総利益の増加により、前連結会計年度の61,646百万円から3.4%増加し、63,733百万円となりました。

 

d. 営業外収益

営業外収益は、受取利息203百万円及び持分法による投資利益351百万円の増加等により、前連結会計年度の1,119百万円から40.5%増加し、1,573百万円となりました。

 

e. 営業外費用

営業外費用は、債権譲渡損1,004百万円及び為替差損1,771百万円の減少等により、前連結会計年度の5,933百万円から43.7%減少し、3,340百万円となりました。

 

f. 経常利益

経常利益は、前連結会計年度の56,832百万円から9.0%増加し、61,966百万円となりました。

 

g. 特別利益

特別利益は、負ののれん発生益3,703百万円の増加等により、前連結会計年度の2,170百万円から158.9%増加し、5,621百万円となりました。

 

h. 特別損失

特別損失は、投資有価証券評価損470百万円の増加等により、前連結会計年度の853百万円から55.1%増加し、1,324百万円となりました。

 

i. 税金等調整前当期純利益

税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度の58,149百万円から14.0%増加し、66,263百万円となりました。

 

j. 法人税、住民税及び事業税並びに法人税等調整額

税金等調整前当期純利益に対する法人税等の比率は、前連結会計年度の26.4%から0.1%増加し、26.5%となりました。

 

k. 親会社株主に帰属する当期純利益

親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度の41,030百万円から17.2%増加し、48,069百万円となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a. 財政状態

「第2 事業の状況 4  経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概況 ① 財政状態及び経営成績の状況」をご参照ください。

 

b. キャッシュ・フロー

「第2 事業の状況 4  経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概況 ② キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。 

 

c. 資金需要

当社グループの運転資金需要の主要なものは、売上の増加に伴う支払と回収のサイト差及び商品在庫の保有によるものです。サイト差については、主に海外の仕入先に支払う仕入代金のサイトが国内外の得意先からの回収サイトよりも短くなっていることが主な要因であります。また商品在庫に関しては、得意先への納入期限に対応するために適正水準を保持しております。

 

d. 財務政策

当社グループにおける増加運転資金につきましては、内部資金、売上債権の流動化、金融機関からの借入及び増資等によって調達しております。グループ各社の必要資金は、主に子会社である㈱マクニカが資金調達を行い、他のグループ企業に融資していく方針であります。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。

この連結財務諸表の作成にあたって、資産・負債の帳簿価額及び収益・費用の報告数字に影響を与える見積りは、主として棚卸資産、貸倒引当金、投資の減損、繰延税金資産、賞与引当金、退職給付費用等であり、継続して評価を行っております。見積り及び判断については、過去の実績や状況に応じて合理的と考えられる様々な要因に基づいて行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる場合があります。

当社は、特に以下の重要な会計方針が、当社グループの連結財務諸表の作成において使用される当社の重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。

 

a. 棚卸資産

当社グループは、将来における需要や市場状況等に基づき、正味売却価額が帳簿価額を下回る場合には収益性の低下があるものとし売価評価減を、棚卸資産の保有日数に応じて一定金額まで帳簿価を切り下げる滞留評価減や将来の販売可能性の見積りに基づく個別評価減を計上しております。

 

b. 貸倒引当金

当社グループは、顧客の支払不能時に発生する損失の見積額について、貸倒引当金を計上しております。顧客の財務状態が悪化し、その支払能力が低下した場合、追加引当が必要となる可能性があります。

 

c. 投資の減損

当社グループは長期的な取引関係維持のために、特定の顧客、仕入先及び金融機関等に対する少数持分を保有しています。また新規仕入先の開拓を目的とした情報収集のために、投資事業有限責任組合及びそれに類する組合(金融商品取引法第2条第2項により有価証券とみなされるもの)等への出資をしています。これらには市場価格のある公開企業等への投資と市場価格のない未公開企業等への投資があります。市場価格のある投資につきましては、市場価格が取得原価に比べ50%以上下落した場合には無条件で減損処理を行い、30%以上50%未満下落した場合には個別に下落率の推移、発行体の財政状態等を勘案し、減損処理を行っております。

一方、市場価格のない投資の減損につきましては、実質価額が著しく低下した場合、合理的な事業計画等に基づき、回復可能性が認められない場合には実質価額まで減損処理を行っております。

また非連結の子会社及び関連会社の株式等についても、有価証券の評価方法に準じて処理を行っております。

当連結会計年度において減損処理を行い、投資有価証券評価損1,270百万円を計上しております。今後も株式市場の悪化や投資先の業績不振などにより、評価損を計上する可能性があります。

 

d. 繰延税金資産

当社グループは、将来の課税所得と慎重かつ実現可能性の高い継続的な経営計画を検討したうえで繰延税金資産を計上しておりますが、繰延税金資産の全部又は一部を回収又は解消できないと判断した場合、当該判断を行った期間に繰延税金資産の調整額を費用として計上する可能性があります。

 

e. 賞与引当金

賞与引当金は、支給対象期間の業績に応じて支給見込額のうち当期に帰属する額を計上しておりますが、実際の支給額は支給時点における外部環境及び当社グループの状況を勘案のうえ決定されるため、実際の支給額が見積りと異なる場合には追加の費用計上が必要となる可能性があります。

 

f. 退職給付費用

従業員退職給付費用及び債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されております。前提条件には、割引率、将来の報酬水準、退職率及び直近の統計数値に基づいて算出される死亡率が含まれており、実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来にわたって規則的に認識されるため、一般的には将来期間において認識される費用及び計上される債務に影響を及ぼします。近年の割引率の低下及び年金資産運用での損失は当社グループの年金費用に対して悪影響を及ぼします。

 

5 【経営上の重要な契約等】

当社は、2015年4月1日付で、連結子会社である㈱マクニカとの間で経営管理・指導に関する経営指導契約、業務委託に関する契約を締結しております。

当社グループが締結している仕入先との主要な契約は、次のとおりであります。

 

契約会社の
名称

相手先の名称

契約品目

契約の内容

契約期間

㈱マクニカ

Analog Devices, Inc.

アナログIC、

DSP、センサ等

代理店契約

2018年8月13日から2019年12月31日までで、さらに2020年1月1日から1年間契約。以降も1年間ごと自動更新となり、90日前までに相手方に書面による通知をすることで終了することができる

Infineon Technologies Japan K.K.

MCU、センサ、Power RF

代理店契約

2020年11月1日から有効。3か月前までに相手方に書面による通知をすることで終了することができる

Intel K.K.

FPGA、ASIC

代理店契約

2018年8月1日から2018年12月31日までで、さらに2019年1月1日から1年間契約。以降も1年間ごと自動更新となり、満了日の30日前までに事前に文書による申し入れがない限り継続

Micron Semiconductor
Asia Pte.,Ltd.

メモリー製品

代理店契約

2011年1月1日から契約解除の30日前の事前の文書による申し入れがない限り契約継続

Renesas Electronics  Corporation

半導体集積回路、

その他関連製品

理店契

2019年11月20日から解約事由がない限り有効

Texas Instruments

Incorporated

半導体集積回路、
その他関連製品

代理店契約

2019年12月18日から2024年12月31日まで

MACNICA CYTECH LIMITED

Intel Semiconductor

(US) LLC 

FPGA

代理店契約

2018年8月1日から2018年12月31日までで、さらに2019年1月1日から1年間契約。以降も1年間ごと自動更新となり、満了日の30日前までに事前に文書による申し入れがない限り継続

Micron Semiconductor
Asia Pte.,Ltd.

メモリー製品

代理店契約

2012年1月1日から契約解除の30日前の事前の文書による申し入れがない限り契約継続

MACNICA GALAXY INC.

Intel Semiconductor
(US) LLC

FPGA

代理店契約

2018年8月1日から2018年12月31日までで、さらに2019年1月1日から1年間契約。以降も1年間ごと自動更新となり、満了日の30日前までに事前に文書による申し入れがない限り継続

 

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループの研究活動は、サービス・ソリューションカンパニー(技術サービス提供会社)として、顧客の課題解決に対応するためのテクニカルサポート(技術支援)を中心としております。基礎技術(要素技術)に関する研究開発活動は行っておりませんが、最先端の規格に対応したソフトウェアの開発やボード、モジュールなどの企画・開発を行っております。また、サービス・ソリューションモデルの基礎となるサービス及びCPSプラットフォームの開発を進めております。

なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は317百万円であります。

 

セグメントごとの研究開発活動を示すと次のとおりであります。

 

(1) 集積回路及び電子デバイスその他事業

集積回路及び電子デバイスその他事業では、リファレンスボードや組込みソフトウェアなどの開発を行ってまいりましたが、その実績をもとに当社グループ取扱商品に付加価値を提供するオリジナル・ボードや、IP、ソフトウェア、IoT関連等の開発及び販売を行い、当社グループの差別化に貢献しております。当該事業における当連結会計年度の研究開発費は317百万円であります。

 

(2) ネットワーク事業

該当事項はありません。