第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)会社の経営の基本方針

 当社グループは、「新しい価値創造・融合と調和・個の自主自立」という企業理念のもと、自主自立した個・組織が、有機的に融合し調和する社会を実現するため、次代に必要な新しい価値を創造することを経営理念としております。

 このような経営理念のもと、当社は主たる事業として人材紹介事業を展開しており、主に弁護士、公認会計士、税理士等の士業に加え、経理、財務、人事、総務、法務、経営企画等の管理部門領域の人材に専門特化しております。これらの専門的な求職者を会計事務所、法律事務所等の専門的な組織に加え一般事業会社に対して上場・非上場問わず広く紹介しております。また、人材紹介事業に限らず、「Manegy(マネジー)」をはじめ、士業及び管理部門職種の方々に向けたメディア事業を運営しております。

 また、連結子会社のFourQuarters Recruitment Pty.Ltd.は、オーストラリアにおいて財務・会計、銀行・金融サービス、テクノロジー及び人事・ビジネスサポートに特化した人材紹介事業・派遣事業を展開しております。

 このように、当社グループは設立より関わってきた、士業と企業の管理部門領域において蓄積したデータベース及びネットワークを幅広く活用し、人材関連事業にこだわらず、同領域の人々の課題解決となるようなサービスを提供していくことを基本的な方針としております。

 

(2)中長期的な会社の経営戦略

① 人材サービスの成長

 2022年4月より、人材紹介事業である「MS Agent」とDRM事業「MS Jobs」との間でのさらなるサービスの連携及びユーザーの利便性向上を図るために統合を行い、新たに「MS Career」をローンチいたしました。これにより、ユーザーはこれまでそれぞれ独立して利用していた両サービスを、今後は「MS Career」内で、一つのIDで希望に応じてエージェントサービス「MS Agent」とダイレクトリクルーティングサービス「MS Jobs」を利用することが可能となり、転職活動の状況や手段を一元的に管理することが可能となり、利便性が向上いたしました。今後も引き続き、人と企業がより効率かつ効果的にマッチングされる世界の実現に向けてサービスの品質向上のための開発を継続的に行い、日本全国の管理部門及び経営管理領域の士業の様々な人材ニーズに対応したサービスを追求して参ります。

 

② メディアの充実と相互連携

 メディア「Manegy(マネジー)」については、2022年11月にManegyのフルリニューアルを実施いたしました。UI/UXを大幅に改善し、オンラインイベント「ManegyランスタWEEK」の規模拡大を中心に、「Manegy toB」における資料ダウンロードを促進すべく、ユーザビリティの向上によるユーザー数の拡大とCV数の増加を目指して参ります。また当社が対象とする管理部門や士業の方々の日々の業務から日常的にアプローチすることが可能な仕組みを構築しており、人材サービスとのシナジーを通じた相互連携を実現して参ります。

 

③ 新規事業の創出

 当社は企業の管理部門及び経営管理領域の士業の方々に向けて、転職・採用であれば「MS Career」、「MS Agent」、情報収集であれば「Manegy(マネジー)」、また管理部門領域の関連サービスのマーケティング支援として「Manegy toB」及びオンラインイベント「ManegyランスタWEEK」を展開して参りました。今後は各種サービスのさらなる成長はもちろんのこと管理部門及び士業領域において蓄積したデータのさらなる有効活用を通じ、新たな収益の柱となり得る事業を継続的に創出して参ります。

 

④ 海外における事業展開

 連結子会社であるFourQuarter Recruitment Pty.Ltd.においては、オーストラリアにおける規模・実績ともに強固な事業基盤を活かし、日本国内で培ったデータ活用のノウハウや経営管理領域のデータベースを活用した事業をグローバルに展開し、さらなる事業の拡大を進めて参ります。

 

(3)目標とする経営指標

 当社グループは、当社グループ特有の専門性の高いノウハウを活かした質の高いマッチングの機会を採用企業及び求職者に数多く提供し、社会に新たな価値を創造することが責務であると考えております。そのためには、既存事業である国内の人材紹介事業をさらに成長させるとともに、海外における事業展開や新たな事業の創出に伴う投資を回収し、持続的な成長を維持することが重要であると考えております。

 以上の理由から、当社はこれらを総合的に反映する売上高及び営業利益、EBITA、経常利益、当期純利益並びに各種利益率を重要な経営指標とし、その継続的な成長を重視しております。

 

(4)経営環境

 当社グループに影響のある世界的な経済の見通しにつきましては、雇用・所得環境の改善やインバウンド需要の回復により経済活動が正常化する一方で、物価上昇や金融資本市場の変動、ウクライナ・中東情勢の問題や中国経済の減速等により、依然として先行き不透明な状況が続くと想定されます。

 国内の雇用情勢については、厚生労働省が公表した2024年3月の有効求人倍率は1.28倍となりました。(「一般

職業紹介状況(令和6年3月分及び令和5年度分)について」厚生労働省調べ)

 このような経済環境の中、当社の人材紹介事業「MS Agent」については、構造的な人手不足により、雇用の流動性が高まりを受け、事業拡大の機会になると考えております。

 また、2022年4月より人材紹介サービス「MS Agent」と、これまで単独で運営を行っていたダイレクトリクルーティングメディア「MS Jobs」を統合し、新たに「MS Career」をローンチし、これによりユーザーは一つのIDで両サービスを活用・一元管理することが可能となりました。今後はさらにユーザビリティの向上にかかる開発を進めることを通じて登録者のアクティブ率を高めていくことに加え、都市圏以外の地方求人のさらなる掲載の充実や人材データベースサービスとして他社エージェントへのデータ開放、そして自社エージェント「MS Agent」のサービスの効率性と品質の向上を通じて成長を遂げて参ります。さらにメディア「Manegy(マネジー)」については、2022年11月にフルリニューアルを実施いたしました。今後は各種サービスのさらなる成長はもちろんのこと、管理部門と士業のためのBtoBのプラットフォーマーとして新たなビジネスも積極的に展開して参ります。

 連結子会社であるFourQuarter Recruitment Pty.Ltd.においては、オーストラリアにおける規模・実績ともに強固な事業基盤を活かし、日本国内で培ったデータ活用のノウハウや経営管理領域のデータベースを活用した事業をグローバルに展開し、さらなる事業の拡大を進めて参ります。

 厳しい環境下においても着実に事業として貢献するとともに、成長軌道に乗せ、持続的な成長を実現したいと考えております。

 

(5)事業上及び財務上の対処すべき課題

 当社は、企業理念及び中期的な経営戦略を基に、持続的な成長を実現すべく、主に以下に示す課題があることを認識しております。

① 社会及び経済の環境変化への対応

 当社グループに影響のある世界的な経済の見通しにつきましては、物価上昇や金融資本市場の変動、ウクライナ・中東情勢の問題や中国経済の減速等により、依然として先行き不透明な状況にあります。このように将来の不確実性が高く、変化のスピードが速い環境の中で、社会の価値観や顧客のニーズ、我々が属する市場やサービス、働き方等、日本国内に限らず海外市場も含んだあらゆる変化を捉え、それらに対して迅速かつ柔軟に対応していくことは、持続的な成長の実現のために極めて重要な時代であると認識しております。会社全体として既存の方法や常識に固執せず、価値観や常識の変化を積極的に受け入れ、この環境の変化をチャンスと捉え、継続的な成長を実現いたします。

 

② 収益源の多様化

 当社は、設立時より運営している人材紹介事業である「MS Agent」に加え、ダイレクトリクルーティング事業である「MS Jobs」、メディア事業である「Manegy」を運営しており、各事業は順調に成長を遂げ、また新たに海外での人材関連事業へ拡大をしているものの、当社の収益源は依然として人材関連事業に集中している状況です。会社が持続的な成長を遂げていくためには、既存事業のさらなる成長に加え、管理部門及び士業領域において蓄積したデータのさらなる有効活用を通じ、新たな収益の柱となり得る事業を継続的に創出し、会社の収益性を安定させる事が重要であると認識しております。

 

③ 情報管理の徹底

 当社は事業運営上、多数の個人情報を有しているため、それらの情報の管理が事業の持続可能性を担保するために最も重要な要素であると認識しております。当社においては2002年よりプライバシーマーク(※)の資格を取得し、継続してプライバシーマーク使用許諾事業者として個人情報の機密性を高める施策を講じております。今後事業が拡大し、規模が拡大するに当たってその管理の質が低下しないよう、規程の厳格な運用を徹底することのみならず、定期的なモニタリングの実施、並びに社員一人ひとりの個人情報の取り扱いに対する意識を高めるための研修の実施等、情報管理体制の強化を今後も継続して参ります。

※ 日本産業規格「JISQ15001個人情報保護マネジメントシステム-要求事項」に適合して、個人情報について適切な保護措置を講ずる体制を整備している事業者等を認定して、その旨を示すプライバシーマークを付与し、事業活動に関してプライバシーマークの使用を認める制度。

 

④ 内部管理体制の強化

 当社が設立より運営しております人材紹介事業に加え、メディア事業及びダイレクトリクルーティング事業の成長、さらには海外人材事業への進出により、各事業の役割や必要となる内部統制、事業に関連する法規制等の範囲はこれまでより広がっております。当社が持続的な成長を遂げるためには、これらの事業上のリスクを適切に把握し、当該リスクをコントロールするための内部管理体制を継続的に見直し、その有効性と効率性を高め、強化していくことを重要な課題として認識しております。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

 当社グループは、「世界中の企業経営が、より効率的、より効果的になる世界を実現する。」をミッションとして掲げ、経営管理領域に係る全ての関係者はもちろん、全てのステークホルダーと連携・協働し、事業を通じて社会課題の解決を推進することで、持続可能な社会の実現と企業価値を中長期的に向上させることを目指しております。

 

(1)ガバナンス

 代表取締役として、業務執行取締役、執行役員を構成員とするサステナビリティ委員会を設置しております。同委員会は3か月に1回の定期開催のほか、必要に応じて開催することとしており、気候関連課題をはじめとしたESG・SDGs関連の重要課題の検討やリスクの評価、モニタリングを通じて、ESG・SDGsへの取り組みを強化、並びにそれらの取締役会への上程や方針・対策等の推進を主な役割としております。

 

(2)戦略

①サステナビリティに関する戦略

 当社は、国際エネルギー機関(IEA)、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)などの外部機関が公表している4℃シナリオ、1.5℃シナリオを参考として、気候変動に関するリスクと機会の特定と評価を下表のとおり実施した上で、これに対応するための戦略を以下のとおり立案しています。

種別

分類

主なリスク・機会

時間軸

想定される

財務的影響

対応策

1.5

4

移行リスク

政策・

法規制

炭素税、排出量取引や排出規制強化によるコストが増加

短期~中期

CO2排出抑制や各種エネルギーを再生可能エネルギーへ切替

市場

顧客の環境配慮の意識が高まり、環境対応が充実している企業へシフトすることで、売上が減少

短期~中期

気候変動に対する取り組み及びその情報開示の充実

評判

気候変動に対する取り組みやその情報開示対応が不十分であると判断されることや情報開示が遅れることによる投資家からの評価が低下

短期~中期

社内体制の強化

気候変動に対する取り組み及びその情報開示の充実

物理リスク

急性

自然災害の深刻化・増加等による物理的被害による間接的な売上高減少、BCP費用等の損失の発生

長期

BCPの策定と見直しの実施

慢性

平均気温上昇に伴うオフィスの空調コストの増加

長期

省エネ活動の強化

機会

製品・

サービス

環境関連企業への採用支援及びCVCによる投資

短期~中期

環境関連企業の求人獲得

環境関連企業への投資案件の創出

 

・GHG排出量の抑制

 当社グループが運営する事業である人材関連事業及びメディア事業については、いずれも情報産業であり製品等の製造に伴う環境負荷はなく、また事業上発生する書類等についてはペーパーレス化への取り組みにより、書類の郵送等に伴い発生する環境負荷も逓減しております。また当社グループは、従業員それぞれが最もパフォーマンスを発揮しやすい環境や個々人の体調、社会における感染症の状況等に応じて柔軟かつ機動的に勤務形態を選択できるよう、全社ないし職種や部署において一律に出社比率等を定めておらず、業務内容と個々人の希望を考慮して柔軟に設計しております。その結果として、必要のない無駄な移動を削減し、交通機関等の利用に伴うエネルギ―消費を抑制しております。

・投資を通じた環境負荷軽減への取り組み

 当社は、2021年1月よりMS・HAYATE1号投資事業有限責任組合を組成し、経営管理領域における新たなテクノロジーを有するサービスを開発する企業に加え将来的に応用可能な技術を有する企業まで幅広く成長支援投資を行っておりますが、投資先の選定基準に当たっては環境に対する負荷についても選定基準の一つとしております。

 なお、持続可能な社会を実現するための活動の一環として、テクノロジーを活用したアーバンファーミング事業を展開する企業に対して出資を行うなど、投資を通じて環境負荷の軽減に取り組んでおります。

 

②人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備

・多様性のある職場環境

 当社グループは、新卒や中途、国籍、障害、性別等の個々人の属性に依ることなく積極的に採用及び管理職への登用を行う方針のもと、全ての社員に平等な機会を設けております。

 

・人材の採用及び育成方針

 当社グループは、ミッション・ビジョン・バリューを体現できる人材の育成に取り組んでいます。

 変化を柔軟に捉えて行動し、それぞれが挑戦し続けられるように、個々の適性やキャリア志向を踏まえた成長機会を提供します。

 

・フレックスタイム制度/時短勤務

 当社グループは、従業員それぞれが各々の生活様式に合わせて、最大限パフォーマンスを発揮できるよう全ての職種に対してフレックスタイム制度を導入しております。

 また、ライフイベントを始めとした個々人の事情に応じてフルタイム/時短勤務への切り替えも柔軟に認めております。

 

・柔軟なリモートワーク制度

 当社グループは、従業員それぞれが最もパフォーマンスを発揮しやすい環境や個々人の体調、事情に応じて柔軟かつ機動的に勤務形態を選択できるよう、一律に出社比率等を定めておらず、業務内容と個々人の希望を考慮して自主的にリモートワーク/出社を選択できるような制度を設けております。

 

(3)リスク管理

 サステナビリティ委員会で、サステナビリティに関するリスク・機会の再検討、並びに評価・分析を行っています。また、サステナビリティ委員会の議事録は開催ごとに常勤監査等委員及び内部監査部門に共有しており、サステナビリティ委員会は、特定されたリスクについて、対応策を検討し、取締役会への報告を行う体制を構築しております。

 

(4)指標及び目標

 ①サステナビリティに関する指標及び目標

 当社は、「2050年カーボンニュートラル」の実現に向け、当社の活動におけるGHG(CO2・温室効果ガス)排出量(以下、「GHG排出量」といいます。)を2030年までに75.0%(2022年度比)削減することを目標として策定しました。

 当社のサステナビリティに関する指標及び目標は下表のとおりです。

指標

実績

2030年目標

2050年目標

GHG排出量(Scope1,2)

13.8t-CO2(2024年3月期)

11.0t-CO2

実質ゼロ

GHG排出量(Scope3)

2,294.1t-CO2(2023年3月期)

実質ゼロ

(注)1.GHG排出量の集計範囲は、国内の事業会社となっております。

2.当社は、テナントとして入居する東京本社、大阪支社、名古屋支社、横浜支社の各拠点において、非化石証書の活用により実質再生可能エネルギー由来の電力に切り替えております。

 

 ②人的資本に関する指標及び目標

 当社の指標に関する目標及び実績は、次のとおりです。

指標

実績(2024年3月期)

2030年目標

管理職に占める女性労働者の割合(注)1.

15.8

30.0%

男性労働者の育児休業取得率(注)2.

37.5

100.0

正規雇用労働者の男女の賃金の差異(注)3.

69.3

75.0

 

(注)1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものです。

2.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出したものです。

3.正規雇用労働者の男女の賃金の差異において、当社グループは、賃金制度・体系において性別による差異はありません。

 

3【事業等のリスク】

 本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。なお、以下の項目については、当社が営む事業の性質上、本質的には発生可能性が高く、発生した場合には影響が重大となる可能性のある項目ですが、これらのリスクに対してはリスクマネジメントシステムを構築し、リスクの性質を評価し、各リスクに対して各種対策が整備され有効に機能し、運用されていることを確認し、その発生可能性を一定程度低い水準まで抑えられていると考えております。なお、発生の時期及び当該リスクが顕在化した場合に当社の経営成績等に与える定量的な影響の程度につきましては、合理的に見積ることが困難であるため具体的には記載しておりません。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

(1)経済状況の変動に関するリスク

 当社の事業及び業績は、一般的に国内の経済情勢に影響されます。パンデミックや、ウクライナ情勢による食料価格・エネルギー価格の高騰や経済のリセッションの懸念等、先行きは引き続き非常に不透明感な状況にあり、 将来的に景気が停滞し、企業が人材の採用を抑制する場合には、求人の減少に伴い有効求人倍率が低下する可能性が考えられます。当社は、管理部門に特化した専門性の高い求職者を多く抱えることから、他の人材紹介会社と比較すると、その影響は緩やかではありますが、当社の想定を超えた経済状況の変化が生じた場合には、経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。同リスクの対策として、既存の事業の枠に捉われず、新たなビジネスを創出・推進することで経済状況が変動した場合であっても新たなビジネスチャンスを捉えることができるよう、努めて参ります。

 

(2)情報セキュリティに関するリスク

 当社では、求職者、取引先、従業員等に関する多くの個人情報を保有しており、当社が管理する個人情報等の漏洩や改ざん、不正使用等の事態が生じた場合には、顧客及び利用者からの損害賠償請求や信用の失墜、ブランドの毀損等により、当社の事業に影響を及ぼす可能性があります。そのため、当社は2002年7月に初めてプライバシーマークを取得し、現在まで継続してプライバシーマーク使用許諾事業者として、日本産業規格(JISQ15001)(※)に合致した個人情報保護規程を策定の上、個人情報の機密性を高める施策を講じております。プライバシーマークの継続的な更新に加えて、リスクマネジメントシステムの中で把握されたリスクに対してリスク・コンプライアンス委員会において、そのリスクの性質と、対応策の実行を策定し、運用を徹底することでリスクが低減されるよう、引き続き努めて参ります。

※ 事業者が業務上取り扱う個人情報を安全で適切に管理するための標準となるべく、財団法人日本規格協会の原案によって策定された日本工業規格の一つです。

 

(3)コンプライアンスに関するリスク

 当社の主たる事業であります人材紹介事業は、職業安定法に基づき、有料職業紹介事業として厚生労働大臣の許可を必要とします。当社は、継続して2021年6月1日から2026年5月31日の間での許可を受けており、適宜更新をしております。従いまして、当該事業の運営に関して、現在は同許可の継続に支障をきたす要因は発生しておりませんが、万が一、将来的に当社の業態に著しく不利な法改正が実施された場合には、許可の取り消し、業務停止命令または業務改善命令の対象となるおそれがあります。また、職業安定法に限らず、当社の取締役及び従業員が関連法規に関する重大な違反に該当する行為を行った場合には、それが当社の事業運営に大きな支障をきたす結果、経営成績及び財政状態に大きな影響を与える可能性があります。同リスクの対策としては、リスクマネジメントシステムを構築し、関連法規に対するリスクを網羅的に可視化し、各リスクを適切に評価した上でリスク・コンプライアンス委員会にて各リスクへの対策を検討し、モニタリングする体制を整備・運用いたします。

 

(4)サステナビリティに関するリスク

 持続可能な社会の実現に向け、地球温暖化等の環境問題や、安全衛生が不十分な労働環境、長時間労働等の人権問題に対して、国際的にサステナビリティの意識が急速に高まっており、企業が社会的責任を果たすことが求められております。また、ESG投資のメインストリーム化が進んでおり、企業によるサステナビリティへの対応が不十分であれば、社会的信用の失墜、企業価値、資金調達力の低下のリスクがあります。当社は同リスクに対し、持続的な成長及び気候変動に係るリスク等、社会課題の解決に向けた取り組みを推進するための機関として、サステナビリティ委員会を設置しております。代表取締役を委員長として、業務執行取締役、執行役員を構成員とする同委員会は3か月に1回の定期開催のほか、必要に応じて開催する事としており、気候関連課題をはじめとしたESG・SDGs関連の重要課題の検討やリスクの評価、モニタリングを通じて、ESG・SDGsへの取り組みを強化、並びにそれらの取締役会への上程や方針・対策等の推進を行なって参ります。

(5)自然災害に関するリスク

 当社の事業活動においては、求職者情報及び取引先企業情報の管理・利用についてコンピュータシステム及びネットワークシステムを活用しており、想定を超えた地震等の自然災害によりシステムトラブルが発生した場合には、正常な事業活動が阻害され、当社の経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。事業の継続を脅かす自然災害のリスクに対し、当社は事業継続計画(BCP)を策定し、緊急時の危機管理体制やデータのバックアップ体制の構築、復旧手順の整備等のシステムトラブル対策を講じておりますが、事業の安定確保のため引き続き同リスクの対策が有効に機能するよう、モニタリングする体制を整備・運用して参ります。

 

(6)カントリーリスク、地政学リスク

 海外子会社の統制不全によるリスクとして上述のとおり、情報セキュリティに関するリスクやコンプライアンスに関するリスク、サステナビリティに関するリスク、自然災害に関するリスクがあることに加え、当該国における政治や経済等の変化によって資産の価値が変動する等のカントリーリスクや、紛争やテロによる政治的、軍事的、社会的な緊張により社員の人命や資産が脅かされる地政学リスクがあります。このようなグローバルリスクに対し、政府関係機関等により情報収集を行なうとともに、事業継続や情報管理の観点を考慮した危機管理体制を整備し、当社のリスク・コンプライアンス委員会にて各リスクを適切に評価した上で、各リスクへの対策を行なって参ります。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

①財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度における我が国経済は、雇用・所得環境の改善やインバウンド需要の回復により経済活動が正常化する一方で、物価上昇や金融資本市場の変動、ウクライナ・中東情勢の問題や中国経済の減速等により、依然として先行き不透明な状況が続いております。

 国内の雇用情勢については、厚生労働省が公表した2024年3月の有効求人倍率は1.28倍となりました。(「一般職業紹介状況(令和6年3月分及び令和5年度分)について」厚生労働省調べ)

 このような経済環境の中、人材紹介売上高については、新規登録者数及び新規求人数の増加に加え、社内体制の強化並びにRPAを用いた自動化により登録者決定数が増加した結果、当第4四半期において1,108,956千円と過去最高の四半期売上高を更新し、当連結会計年度は4,146,869千円(前年同期比6.5%増)となりました。また、人材紹介事業の先行指標である新規登録者数は18,706人(前年同期比15.1%増)、新規求人数は18,550件(前年同期比24.0%増)となりました。

 メディア売上高については、2023年3月期下期より管理部門系のSaaS領域の導入需要が低減していることを受け、オンラインイベントである「ManegyランスタWEEK」のスポンサー規模を絞って開催した影響により、329,703千円(前年同期比2.7%減)となりました。なお、コロナ禍におけるDX需要が一巡しましたが、管理部門系ビジネスメディアとしての強みを活かし、非テック領域の管理部門向けサービスの取扱数増加、WEB広告代理事業への新規参入により再び成長路線へと回帰を図って参ります。

 DRM売上高については、求人数及び提携エージェント数が前年同期比で増加及びスカウトサービス新規登録者数が高水準を維持したことにより、98,126千円(前年同期比59.4%増)となりました。

 販売費及び一般管理費については、主に子会社株式の取得関連費用180,992千円及び事業拡大に向けた人員数増加による人件費並びに求職者の登録獲得に係る広告宣伝費の増加等の影響により、2,950,156千円(前年同期比17.9%増)となりました。

 この結果、当連結会計年度における売上高は4,574,698千円(前年同期比6.6%増)、営業利益は1,623,619千円(前年同期比9.3%減)、経常利益は1,664,919千円(前年同期比6.7%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,134,814千円(前年同期比7.2%減)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、投資活動による支出及び財務活動による支出が営業活動による収入を上回った結果、前連結会計年度末に比べ4,057,771千円減少し、4,670,468千円となりました。

 当連結会計年度末における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

 (営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度末における営業活動によるキャッシュ・フローは、主に売上高の増加、利息及び配当金等の受取により税金等調整前当期純利益を1,662,537千円計上した一方で、法人税等の支払いを645,433千円行ったことにより、1,108,994千円の収入となりました。

 (投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度末における投資活動によるキャッシュ・フローは、主に投資有価証券の取得及び子会社株式の取得により3,941,928千円の支出となりました。

 (財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度末における財務活動によるキャッシュ・フローは、主に前期末を基準日とした配当金の支払い

を行ったこと等により、1,224,837千円の支出となりました。

 

③生産、受注及び販売の実績

(1)生産実績及び受注実績

 当社グループが提供するサービスの性質上、生産実績及び受注実績の記載に馴染まないため、省略しています。

 

(2)販売実績

 当社は人材紹介事業の単一セグメントであるため、詳細な売上高の構成は以下のとおりであります。

(単位:千円)

売上高構成

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

  至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

前年同期

増減率

(%)

人材紹介売上高(注)1.

3,893,057

4,146,869

6.5

メディア売上高(注)2.

338,780

329,703

△2.7

DRM売上高(注)3.

61,576

98,126

59.4

合計

4,293,413

4,574,698

6.6

(注)1.人材紹介売上高は、「MS Agent」における収益を対象としております。また返金負債として収益を認識していない金額を控除しています。

2.メディア売上高は、「Manegy(マネジー)」におけるリード提供による収益等を対象としております。

3.DRM売上高は、ダイレクトリクルーティングサービスにおける収益を対象としております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

①財政状態の分析

 当連結会計年度末における資産につきましては、債券の取得により有価証券が1,000,000千円及び新規連結子会社の取得等によりのれんが3,062,896千円、売掛金が300,902千円、リース資産が94,223千円増加した一方で、現金及び預金が4,057,771千円減少した結果、前連結会計年度末に比べ228,737千円増加し、11,503,583千円となりました。

 負債につきましては、新規連結子会社の取得等によりその他の流動負債が198,058千円、リース債務が98,602千円、賞与引当金が65,363千円、未払消費税等が62,657千円増加した一方で、主に未払法人税等が60,359千円減少した結果、前連結会計年度末に比べ402,813千円増加し、1,170,143千円となりました。

 純資産につきましては、親会社株主に帰属する当期純利益を1,134,814千円計上した一方で、配当金の支払いを実施したことにより利益剰余金が1,224,809千円減少した結果、前連結会計年度末に比べ174,075千円減少し、10,333,440千円となりました。

 

②経営成績の分析

 当連結会計年度の売上高は、4,574,698千円となりました。雇用・所得環境の改善やインバウンド需要の回復により経済活動が正常化する一方で、物価上昇や金融資本市場の変動、ウクライナ・中東情勢の問題や中国経済の減速等により、依然として先行き不透明な状況が続いております。

 国内の雇用情勢については、厚生労働省が公表した2024年3月の有効求人倍率は1.28倍となりました。(「一般職業紹介状況(令和6年3月分及び令和5年度分)について」厚生労働省調べ)

 このような経済環境の中、人材紹介事業「MS Agent」につきましては、当第4四半期において1,108,956千円と過去最高の四半期売上高を更新し、当連結会計年度は4,146,869千円(前年同期比6.5%増)となりました。新規登録者数が前年同期比15.1%、新規求人数が前年同期比24.0%増加と先行指標の好調や、2023年3月期の下半期から2024年3月期の上半期にかけて先行投資としてRA・CA領域においてコンサルタント及び準コンサルンタント職種の増員を実行により工数不足の解消と生産性の維持向上の取り組んだ結果、登録者決定数が増加しました。

 メディア事業については、2023年3月期下期より管理部門系のSaaS領域の導入需要が低減していることを受け、オンラインイベントである「ManegyランスタWEEK」のスポンサー規模を絞って開催した影響により、329,703千円(前年同期比2.7%減)となりました。

 DRM売上高については、求人数及び提携エージェント数が前年同期比で増加及びスカウトサービス新規登録者数が高水準を維持したことにより、98,126千円(前年同期比59.4%増)となりました。

 販売費及び一般管理費については、主に子会社株式の取得関連費用180,992千円及び事業拡大に向けた人員数増加による人件費及び求職者の登録獲得に係る広告宣伝費の増加等の影響により、2,950,156千円(前年同期比17.9%増)となりました。増加の主要因であります人件費については、今後の事業拡大を見据え先行して人員を採用しており、給与手当が前年同期比で135,835千円増加となりました。また、広告宣伝費については、各人材サービス会社との求職者獲得競争が激化する中、獲得単価を意識したマーケティング施策の徹底と、求人の獲得状況を加味した効率的な求職者の獲得施策により、前年同期比で61,754千円の増加となりました。オフィスに係る地代家賃については移転等を行っておりませんので、同水準を維持しております。

 

 営業外収益及び費用については、主に有価証券利息、有価証券売却益、投資有価証券評価損を計上しております。

 この結果、営業利益は1,623,619千円、経常利益は1,664,919千円、親会社株主に帰属する当期純利益は1,134,814千円となり、営業利益率は35.5%と、経常利益率については36.4%と、いずれも30%を超える高い水準となりました。

 

③キャッシュ・フローの状況に関する認識及び分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

(1)キャッシュ・フローの状況の分析・内容検討

「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」(1)経営成績等の概要 ②キャッシュ・フロー」をご参照ください。

 

(2)資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社の資本の財源及び資金の流動性について、当社の事業活動における運転資金需要の主なものは、当社の主たる事業である人材紹介事業に係る人件費、広告宣伝費、地代家賃等の販売費及び一般管理費に加え、「MS Career」「Manegy(マネジー)」をはじめとした各種サイトの開発等に関する無形固定資産への投資等があります。これらの資金需要に対して安定的な資金供給を行うための財源については主に内部資金を活用することにより確保しております。

 

④重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たり、当社グループが採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載のとおりでありますが、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 なお、見積りについては、過去の実績や適切な仮定に基づいて合理的な判断を行っていますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果と異なる可能性があります。

 

(3)経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、売上高及び営業利益、EBITDA、経常利益、当期純利益並びに各種利益率を重要な経営指標として位置付けております。なお、各種利益率については以下のとおりです。

指標

2023年3月期

2024年3月期

営業利益率(%)

41.7

35.5

EBITDA率(%)

43.4

37.3

経常利益率(%)

41.6

36.4

当期純利益率(%)

28.5

24.8

 当連結会計年度においては、主に子会社株式の取得関連費用180,992千円の費用計上等により販売費及び一般管理費が前年同期比17.9%増となった結果、営業利益率が6.2ポイント減少し、35.5%となりました。EBITDA率については、6.1ポイント減少し37.3%、経常利益率については、5.2ポイント減少し36.4%、当期純利益率は3.7ポイント減少し24.8%となりました。前期連結経営成績と比較においては、子会社株式の取得関連費用の影響でポイントの減少があったものの、それぞれ高い水準となりました。引き続きこれらの指標について高い水準を維持できるよう、取り組んで参ります。

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 該当事項はありません。