(1)経営方針・理念
当社グループは、『眼』の専門総合メーカーとして、“お客様の『見える』をサポートする“を使命とし、コンタクトレンズ事業を中心に、コンタクトレンズケア用品、眼鏡等、幅広く事業を展開しています。経営理念は以下のとおりであります。
(経営理念)
・専門特化した研究開発力を基盤に安全かつ高品質な製品を提供し、多くの人々の健康と幸せに貢献する
・スピードを重視した経営により、環境変化に先駆けて対応するとともに、お客様のニーズに的確に応える
・社員ひとり一人が自発性と創意工夫を発揮できる場を作り、社員の努力に対してしっかりと報いる
・良き企業市民として、法令を遵守し、環境・社会・地域との調和をはかり、その発展に貢献する
(2)経営環境
当連結会計年度における日本経済につきましては、為替相場の急激な変動や物価上昇の影響による景気への下振れ懸念が継続しているものの、新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行に伴う行動制限解除による個人消費回復やインバウンド需要等が下支えすることで、緩やかながらも着実に正常化が進みました。
国内のコンタクトレンズ市場におきましては、ライフスタイルの変化に伴う近視人口の増加と社会経済活動の正常化による装用機会の増加により需要が増大しております。さらに、1日使い捨てタイプへのシフトが継続していることやミドルエイジ以降の遠近両用コンタクトレンズが伸長していること、また、就寝時に装用し日中裸眼で視力矯正効果が得られるオルソケラトロジーレンズの普及を背景として、市場は拡大しております。
当社が展開をしております、アジアから欧州に至る海外コンタクトレンズ市場におきましては、国や地域により強弱がある中、需要拡大と近視の低年齢化による近視人口の増加により、市場全体は拡大しております。
(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
今後の景気見通しにつきましては、賃金上昇等の雇用環境の改善を受けて、日本銀行が2024年3月の金融政策決定会合においてマイナス金利政策の解除を決定しましたが、今後も物価高を上回る所得の増加が個人消費の拡大へと繋がる好循環が続くことにより、緩やかながらも成長が期待できると考えております。その一方で、為替相場の急激な変動や海外動向の影響を受けた物価上昇、人手不足の深刻化等、景気の下振れ要因が多く経済成長に不確実性をもたらしております。
世界の景気見通しにつきましては、米国や一部の国や地域において景気回復の底堅さが確認されているものの、欧州を中心としてインフレ抑制への対応を目的とした金融引き締めにより景気回復の遅れが懸念されております。
また、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化や中東情勢の緊迫化を始めとする地政学的リスクも景気の回復に大きな影響を及ぼしかねない状況が続いております。中国においても景気の急速な悪化が続いており、回復までの道のりが予測できない状況にあります。
コンタクトレンズの国内市場につきましては、近視人口の増加をはじめとして、1日使い捨てタイプへのシフトやミドルエイジ以降の遠近両用商品等の伸長、オルソケラトロジーレンズの普及が進むことにより、持続的な成長が見込まれると認識しております。世界市場におきましても、近視人口の増加が世界的な社会問題として注目される中、継続して成長していくものと考えられます。
そのような状況が想定される中、当社グループは、2024年4月を起点として策定した新中期経営計画(2024年4月~2027年3月)に基づき、連結売上高500億円を達成し、世界のコンタクトレンズ市場でプレゼンスを発揮するための生産基盤を確保するため、「生産力の抜本的引き上げによる収益力の強化」「国内外のマーケットに対応するサービスの強化と提供」「市場のニーズに合わせたモノづくり」「内部基盤の強化・人材確保と育成」「SDGsの推進」「安定した株主還元」を企業目標達成にむけた成長戦略として取り組んでまいります。
当社は、引き続き主力商品である国産の「シード1dayPureシリーズ」を中心とし、2つの異なるベクトルを持つシリコーンハイドロゲルレンズや特に市場での伸長が最も見込まれる遠近両用コンタクトレンズ等の高付加価値商品の拡販に注力してまいります。生産につきましては、2024年3月期に行った生産設備の更新及びライン新規増設と2025年3月期に稼働する2号棟別館により生産枚数を大きく増加することで、逼迫した在庫状況を改善し、さらなる原価率の低減に取り組んでまいります。また、将来の企業成長を実現するため、近視進行抑制効果のあるコンタクトレンズやDDS(薬物送達システム)コンタクトレンズ、次世代の高酸素透過シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ、スマートコンタクトレンズの第二世代といった商品・分野の開発や治験への投資を積極的に行ってまいります。海外戦略につきましては、管理業務の効率化と経費削減を進めながら、それぞれの地域の特性に合わせた商品投入と、現在の為替水準を生かした積極的な販売活動を行うことで収益力の改善を目指してまいります。
(4)TCFD提言に対する当社の対応
(ガバナンス)
① 気候変動関連のリスク及び機会についての取締役会による監督体制
気候変動関連のリスク及び機会を含む経営上の最重要事項に関する意思決定機能は取締役会が担っており、業務執行状況に関する定期報告やリスク・セキュリティ管理委員会における重要決定事項の報告を受け、業務執行の監督を行っています。
EMS(環境マネジメントシステム)における各実施責任者が環境法規におけるリスクや気候変動関連リスクに関して十分な審議を行った上で、環境管理責任者に報告し、リスク・セキュリティ管理委員会に付議されます。リスク・セキュリティ管理委員会はリスク管理プロセスにおいて中心的な役割を果たしており、全社に影響を及ぼすリスクの特定及び対策を策定し、適宜取締役会に付議しています。また、年度毎に各実施責任者が現状のリスク及び機会についての評価案をまとめ、環境管理責任者に報告し、環境管理責任者がリスク・セキュリティ管理委員会に付議し、委員会における討議を経て、リスク・セキュリティ管理委員会の委員長でもある代表取締役が取締役会に報告を行います。
② 気候変動関連のリスク及び機会を評価・管理する上での経営者の役割
当社のEMSにおけるトップマネジメントは代表取締役が担っております。代表取締役は、取締役会のメンバーであり、リスク・セキュリティ管理委員会の委員長です。EMSのポリシー、リスクと機会、ビジネス戦略、目的、行動計画、及び進捗状況について、リスク・セキュリティ管理委員会で意思決定された事項の報告を受け、EMS推進業務執行及びリスク管理システムの監督を行います。
(戦略)
① 短期・中期・長期のリスクと機会
リスク:TCFDが定義するハイリスクセクターのように、長期的に大規模な事業転換や投資を必要とするような重大な気候関連リスクは認識されていませんが以下のリスクについて今後対応策を検討してまいります。
・物理的リスク
気候変動に伴う製造設備地域での災害リスク、サプライチェーンの寸断リスク等
・移行リスク
カーボンプライシングによるコスト増(炭素税によるコスト増加。排出権取引)
・法令リスク
環境関連法令の厳格化に伴う遵守に向けての体制整備、設備対応等によるコストアップ等
機会:気温上昇に起因する生活環境の変化による、アレルギー罹患率の増加等の事業機会が考えられます。眼におけるアレルギー罹患率も同様に増加すると考えられ、1日使い捨てコンタクトレンズユーザーの増加や、抗アレルギー薬を持続的に投与できる機能性コンタクトレンズへのニーズの増加が予測されます。また、環境意識の高まりによる環境配慮商品への期待等、新たな商品開発や研究開発の機会が増加すると考えております。
② 事業・戦略・財務計画に及ぼす影響
製造業一般に対する新たな規制強化が実施される可能性も念頭に規制動向は注視することが必要であると認識しております。一方で、環境負荷を低減する製造プロセスの構築や、サプライチェーン全体の気候レジリエンス強化への対応による、機会のポテンシャルもあると考えています。
③ 1.5℃目標等の気候シナリオを考慮した組織戦略の強靭性
環境関連法令等を管理する部署を一元管理および監督するプロジェクト発足等、EMS(環境マネジメントシステム)にて情報収集、審議を行っております。
(リスク管理)
① リスク識別・評価のプロセス
リスク・セキュリティ管理委員会は、EMS(環境マネジメントシステム)における各実施責任者が特定し、環境管理責任者より報告された環境法規におけるリスクや気候変動関連リスクのうち、特に経営に大きな影響を与えるものを全社リスクとして特定します。さらに、リスクの影響度(財務的影響)及び発生可能性(発生頻度)を討議し、高・中・低の3段階で優先順位を決定するとともに、対応する部署を選定し、取締役会へ報告します。
② リスク管理のプロセス
実施責任者は、抽出したリスクの評価と改善を行い、適切なタイミングで環境管理責任者に報告を行います。環境管理責任者は、報告内容を評価し、代表取締役がトップマネジメントを行うリスク・セキュリティ管理委員会に報告します。
③ 組織全体のリスク管理への統合状況
リスク・セキュリティ管理委員会規程に基づく全社的なリスクマネジメント体制を構築しております。気候変動を含む外部環境変化についても、全社的「リスク」、業務別「リスク」の大きさ・発生可能性・発生頻度の評価を行い、重要なリスクの対策及び対応に関しては、取締役会に上程し、取締役会で検討及び関係各署への改善指示を行います。
(指標と目標)
① 組織が戦略・リスク管理に即して用いる指標
当社は中長期的な視点をもって環境保全活動を推進しており、2021年11月に発表した中期経営計画の一つの柱としてSDGsの推進を掲げております。今後、社会からの期待・要望の変化を踏まえ、中長期視点でマテリアリティを設定し対応してまいります。最終的には、2050年カーボンニュートラルの実現を目指して、2030年を中間目標として設定し、2030年において鴻巣研究所におけるScope1、2を対象としてCO2排出量原単位を2022年度比で50%改善することを削減目標としております。
② 温室効果ガス排出量(Scope1、2、3)
Scope1、2、3について算出を終了し、削減計画の策定を行っております。
③ リスクと機会の管理上の目標と実績
リスク、機会の抽出については取締役会に提案し、議論を実施し、共有を図っています。
[削減目標(KPI)]
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年 |
項目 |
削減量 |
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2030 |
原単位排出量 |
23.15g/枚 |
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CO2排出量 |
24,307t |
当社グループのサスティナビリティに関する考え方及び取組につきましては、経営理念に基づいた事業を継続
し、ステークホルダーとの信頼を築くことで社会に必要とされる企業であり続けることを理念として次のとおりサス
ティナビリティ基本方針を設定しております。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
|
<サステナビリティ基本方針>
これからも、「見える」をサポートし続けるために。 シードの経営理念に基づいた事業を継続し、ステークホルダーとの信頼を築くことで 社会に必要とされる企業であり続けることがシードのサステナビリティ理念です。
・循環型事業経営の実現を目指し、環境負荷やリスクの低減・地球保全に積極的に取り組みます。
・お客様・従業員をはじめ、様々なステークホルダーと共生し、社会の発展に貢献します。
・当社使命の達成及び中長期的な企業価値の向上を実現するため、コーポレート・ガバナンスを充実さ せ、様々なステークホルダーとの良好な関係を構築し、透明、健全かつ迅速、果断な企業経営を行うこ とに努めます。
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(1)ガバナンス
経営上の最重要事項に関する意思決定機能は取締役会が担っており、業務執行状況に関する定期報告やリス
ク・セキュリティ管理委員会における重要決定事項の報告を受け、業務執行の監督を行っています。
取締役会にて承認を得た方針に基づき、トップマネジメントから指名を受けた専門部署、プロジェクトの管
理責任者が具体的実施手法に細分化し、各部署、プロジェクトへ実施を指示いたしております。実施状況につ
いては、チェックを行い、トップマネジメントに報告するサイクルを通じて持続的な改善を図っております。
(2)戦略
気候変動に関する取り組みとしましては、
地球全体の持続可能性を考えた場合、人権は全てのステークホルダーの共通価値であることから、当社もステークホルダーと協働しながら、人権デューデリジェンスの取り組みを促進していかなければならないと鑑み、「シードグループ人権方針」の策定をいたしました。今後は、策定いたしました人権方針に基づき、人権尊重の取り組みを推進してまいります。
そして、企業経営において、株主にとどまらず、お客様、従業員、取引先、地域社会をはじめとする多様なステークホルダーとの価値協創が重要となっていることを踏まえ、マルチステークホルダーとの適切な協働に取り組んでまいります。その上で生み出された収益・成果について、マルチステークホルダーへの適切な分配を行うことが経済の持続的発展につながるという観点から、従業員への還元や取引先への配慮が重要であることを踏まえ「マルチステークホルダー方針」の策定をおこないました。
また、人的資本への取り組みとして、次のとおり「人材育成方針」と「社内環境整備方針」を策定しておりま
す。
[人材育成方針]
当社は、人員を新卒採用および中途採用の両方で確保しております。今後ますます将来予測が困難な社会となっ
ていくことが想定される中、当社の業績伸長や新領域の開拓を支えるためには、“広い視野”を持つ人材を確保す
ることが重要であると考え、採用及び人材育成に力を入れております。
具体的には、①幅広い視点を持ち、自らの専門領域を築きながらも、その領域に限定されずに柔軟に活躍できる
人材、②好奇心が旺盛で、過去の成功体験等の固定観念に囚われず、常に新しい視点から物事を考え、創意工夫が
できる人材、③各ステークホルダーの立場も含め、多面的かつ公正な視点で当事者意識を持つことのできる人材で
す。
このような人材を育成するため、人事ローテーションの周知・定着に加えてポストチャレンジ制度、公募制プロ
ジェクト等を採用することで、様々な業務を経験し、多種多様なステークホルダーと向き合い、常に新しいものに
触れる経験ができるような組織の構築を進めております。さらに、業務に関連しない知識を自発的に身に着ける機
会も必要であると考え、多様な学習プログラムの提供や学習支援など、教育制度を充実させてまいります。
(人材育成に向けた取り組み)※一部抜粋
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階層別研修 |
業務で必要な専門知識・スキル・ビジネスマンとして必要な知識の取得。 |
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職別研修 |
コンピテンシー(行動特性)を細分化し、能力開発に努めていきます。 |
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自己啓発支援 |
主体的な学びを支援する多彩な自己啓発支援。 |
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選抜研修 |
世代リーダー創出に向けた選抜研修を行っています。 |
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語学研修 |
海外戦略に対応した人材を育成するための語学研修に力を入れています。 |
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ポストチャレンジ制度 |
希望するポストや、自身の能力を発揮できる職務に就き、キャリアアップを目指すことができます。 |
[社内環境整備方針]
当社は、従業員が健全な状態で、多様な働き方の実現と多様な人材が活躍できる風土を醸成するために、多様で
柔軟な働き方を進めております。
具体的にはフレックスタイムや在宅勤務の導入、子育て手当て等、各種手当てが充実しているため個々人の環境
に合わせて働くことができます。
また、2018年4月、鴻巣研究所の隣接地に複合型の保育・児童施設「ふくろうの森」を開園しました。時短制度
や育児休業制度とあわせて、男女の区別なく自分らしい関わり方で仕事と育児を両立することが可能です。さらな
る組織活性、業務改善を目的とした自己申告書を設けており、社員の声を詳細に吸い上げる体制を整えています。
(制度)※一部抜粋
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産前産後休暇制度、育児休暇制度、介護支援制度、在宅勤務制度 短時間勤務制度、フレックスタイム制度、資格取得奨励金制度、各種手当の充実(子育て手当て等) 自己申告書、シード保育園(企業主導型)、新社屋の建設 |
(3)リスク管理
気候変動に関しましては、
当社は、増大するリスク管理に対応するため、リスク全般について監視・管理する委員会としてリスク・セキュリティ管理委員会を設置し、代表取締役社長を議長として、経営方針・経営戦略等との関連性の程度を考慮して、必要に応じてリスク案件の洗い出し、改善・回避する施策立案の議論を行っております。
(4)指標及び目標
気候変動に関しましては、
また、当社グループでは、上記「(2)戦略」において、記載した人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。
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[ |
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年度 |
役職 |
女性管理職比率 |
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2022年度 (4/1時点) |
課長級以上 |
13.8% |
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2023年度 (4/1時点) |
課長級以上 |
14.9% |
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2024年度 (4/1時点) |
課長級以上 |
|
|
(4/1時点) |
課長級以上 |
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(注)女性管理職比率につきましては、管理職層の年代に占める女性の割合が低いことに起因しており、年代ごと
の男女の人数構成における割合でみれば、男女の管理職比率がほぼ同水準になっております。
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[ |
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|
年度 |
取得率 |
|
2021年度 |
25.0% |
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2022年度 |
66.7% |
|
2023年度 |
|
|
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(注)分母が少ない中での算定のため、年度による変動が大きくなっています。今後も取得を希望する人員が取得
可能な環境を安定して継続して提供することを使命として取り組んでまいります。
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[ |
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|
雇用形態 |
男性の賃金に対する 女性の賃金の割合 |
2030年度目標 |
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正規雇用労働者 |
76.0% |
80.0% |
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パート・有期労働者 |
77.4% |
- |
|
全労働者 |
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- |
(注)1.正規雇用労働者における差異は、男性の管理職比率が高いことによります。
2.全労働者およびパート・有期労働者における差異は、準社員の女性比率が高いことによります。
3.パート・有期労働者における男女差についてですが、現状においても時給換算で比較した場合男女賃金格差
はなく、単純な労働時間の差が賃金の差となっています。
当社グループは、増大するリスク管理に対応するため、リスク全般について監視・管理する委員会としてリスク・セキュリティ管理委員会を設置し、代表取締役社長を議長として、経営方針・経営戦略等との関連性の程度を考慮して、必要に応じてリスク案件の洗い出し、ヘッジ、対応する施策立案の議論を行っております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において当社グループが判断したものです。
(1)戦略リスク
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項目 |
リスク内容 |
当社の対策 |
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需要動向
※特に重要なリスク |
・日本において、近視率の増加や低年齢化等の需要増加要因を上回る人口減少による市場縮小 ・高齢化の進行によるコンタクトレンズ装用人口の減少 ・生活様式、勤務形態の変化によるコンタクトレンズ需要減 ・特定の取引先に取引が集中 ・大口取引先の急激な方針転換 |
・海外展開の強化により日本の市場縮小リスクをカバー ・高齢化に対応した遠近両用コンタクトレンズの強化 ・オルソケラトロジー・スマートコンタクトレンズ・近視進行抑制関連等の非コモディティ分野の取り組み強化 ・取引先の分散、他社との取引拡大により、特定先との取引集中を回避 ・PB製品の導入に限らず、取引先と長期のコミットメントを得る |
|
ガバナンス
※特に重要なリスク |
・誤った投資判断に基づく損失の発生 ・子会社経営に問題が発生した場合にグループ力が低下 ・海外の子会社のコントロールが不十分なため海外子会社売上・利益の大幅な減少、減損が発生 |
・投資基準の制定による判断の明確化 ・国内外子会社の競争力強化、海外子会社のマネジメント力強化 ・専門部署による国内外子会社の統制強化、きめ細やかな報告・指導実施 ・グループ内での役割の明確化(コストセンター・プロフィットセンター等) |
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新商品開発力 |
・市場ニーズとの不一致・開発スピードの劣後による販売機会の喪失 ・研究期間の長期化による開発費の増加 |
・市場ニーズに基づいた研究開発テーマの選定強化 ・PDCAサイクルによる進捗確認 ・外部機関との連携やその他オープンイノベーションによる開発スピードのアップ ・戦略的M&Aの推進 |
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後継者問題 |
・後継者の育成プログラムが必ずしも整備されていないため、現経営者の退任の際に対応する人材育成が未整備 |
・幹部人材養成プログラムの整備・拡充により、有能な人材の早期育成を行うことで、候補となる母集団を形成 |
(2)ファイナンスリスク
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項目 |
リスク内容 |
当社の対策 |
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為替変動 |
・急激な為替変動が発生した場合、海外からの輸入や販売活動等における外貨建て決済に影響 |
・輸出入バランスの均衡化による為替変動リスクの軽減 ・為替予約の実行 |
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金利変動 |
・金融情勢の変化により金利が大きく上昇した場合に、資金調達に伴うコストが増大 |
・固定金利・変動金利のミックスによる金利変動リスク軽減 |
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資金調達 |
・金融機関による支援方針の急激な変更 |
・調達先の多様化 |
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減損損失 |
・有形固定資産、のれん及び無形資産について、事業環境の変化等により当該資産の収益性が低下した場合に減損損失を計上する可能性 |
・投資基準規程の策定・運用 ・収益性向上による減損リスク低減 |
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債権回収 |
・得意先の財務環境悪化による不良債権の増加リスク |
・取引先の状況の早期見極め ・与信状況の定期的な見直し |
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税務 |
・税制度に関し、国内、海外当局との見解の相違により、想定外の税務負担を強いられる可能性 |
・各国の税法を順守し、適切な納税を行うため、制度理解を深める勉強会の実施 ・見解の相違が可能性として想定される場合、当局との対話を行う |
(3)環境・災害リスク
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項目 |
リスク内容 |
当社の対策 |
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感染症発生(パンデミック) |
・外出自粛・販売店舗の休業要請等の影響によるコンタクトレンズの需要減 ・感染者が発生した場合、製造・受発注・発送業務・営業活動等の停止 ・海外拠点への出荷停止 |
・各販売施設に応じた顧客獲得施策の提案 ・変化する購入チャネルへの対応強化 ・各種感染防止策の推進(体調管理の徹底・在宅勤務の推進等) ・海外進出国の増加によるリスク分散 ・社内外への感染防止と従業員の安全確保、製品供給責任の遂行に向けた対応 ・予防接種の実施 |
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生産拠点における自然災害、及び非自然災害 ※特に重要なリスク |
・鴻巣研究所において大規模な地震・台風・水害・火災等が発生した場合にコンタクトレンズの生産能力・物流能力が低下 ・富士山噴火 ・南海トラフ地震 ・事故等による交通機関の混乱 |
・BCP対応の強化 ・災害防止点検や設備点検等の定期的な実施 ・非常用自家発電装置の導入 ・製造棟の分散 |
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気候変動・環境問題 |
・地球規模での気候変動、環境問題、海洋プラスチック問題等に伴う経済状況の変化 ・サステナビリティに対する取り組みが不十分だと見なされた場合の企業価値低下 ・環境関係の規制強化に伴う負荷増大 ・環境問題への対応が遅延した場合、他社から取引先として不適格の選別を受ける ・有害物質の不法廃棄・漏洩等 |
・CO2排出削減・水使用量削減等、環境に配慮した製造工場、太陽光パネルの設置 ・使用済みブリスターを回収する「BLUE SEED PROJECT」等の環境問題への取り組み強化・発信 ・廃棄資材の有償化 ・老朽化した本社の建替え及び省エネ化推進 ・EMSの運営により適切な対応を促進 ・情報収集を広くし、ESG調達を活発化する |
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海外情勢
※特に重要なリスク |
・海外進出国における予期せぬ政治的・経済的な社会情勢の変化や各政府当局が課す法的規制 ・欧州やアジアでの地政学的リスク ・欧州やアジアでの地政学的リスクにより、当社のサプライチェーンへ影響が発生する可能性 ・海外の法規制の改訂による要求事項の大幅な変更への対応ができず、営業活動が維持できなくなる可能性 ・海外との法制度の差異により戦略通りのオペレーションが困難となるリスク |
・海外管理部・海外薬事部等の専門部署による情報収集 ・現地パートナー・アドバイザーを活用した情報収集 ・現地での合弁生産等でのローカライゼーション ・グループ間の連携強化 ・中長期的な国内製造への移管検討 ・有事の際の代替調達先の確保、又は、海外での直接生産の開始 ・リスクの高まりに応じた原材料の調達先の変更や保有在庫の管理 |
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エネルギーの供給 |
・エネルギーの供給キャパシティーに起因した停電等による工場操業継続リスク ・突発的な大規模停電やガスの供給停止による工場操業リスク |
・緊急時に備えた在庫の確保 ・太陽光発電等の再生可能エネルギーの活用 ・緊急時の自家発電装置の設置 |
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事業活動に係る人権問題 |
・サプライチェーン等に内包した人権問題によるレピュテーションリスク |
・リスクを踏まえた取引先の選定 ・人権リスクの見極め ・人権方針の策定を行い、取り組みを推進 |
(4)オペレーションリスク
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項目 |
リスク内容 |
当社の対策 |
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製品の欠陥
※特に重要なリスク |
・製品の欠陥による様々な有害事象や不具合の発生 ・大規模な製造物賠償責任の発生による費用発生・企業イメージ低下 |
・各種省令(QMS省令等)の遵守 ・国内外の各種認証・許認可の維持・遵守 ・トレーサビリティ体制強化 ・PL保険への加入 |
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欠品、過大在庫
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・販売環境等の変化により棚卸資産が長期滞留した場合、有効期限が到来する棚卸資産について棚卸資産評価損を計上する可能性 ・適正在庫・需要動向の見誤りによる過剰仕入・生産により、廃棄となる可能性(終売、出荷期限期切れ等) ・生産量不足による欠品によりブランドチェンジされる可能性 |
・パラメータごとの有効期限管理 ・出荷数に応じた適正発注・製造 ・在庫・需要動向の適切な見極めとコントロール ・生産設備の増設や人員増による生産力の強化 |
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法規制・法令遵守
※特に重要なリスク |
・薬機法に基づく各業許可、及び海外進出国における同種の法令に抵触し、許認可が取消しとなった場合、当該製品の回収、販売中止、対象事業の活動中止となる可能性 ・故意による品質偽装、不正検査等による当社信用の失墜 ・独占禁止法及び関係法令への抵触 ・各種ハラスメントリスク ・内部情報の漏洩リスク ・国内の法令への抵触リスク |
・当該許可を受け、更新するための諸条件及び関連法令の遵守(各種許可一覧は「コンタクトレンズ・ケア用品事業に係る主要な許認可、免許及び登録等」参照) ・薬事部・海外薬事部・品質保証部等によるチェック体制強化 ・コンプライアンス研修の実施 ・独占禁止法及び関係法令遵守の社内徹底 ・責任役員の選任 ・内部通報制度の適切な運営 ・作業標準の順守及びその教育 |
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知的財産 |
・第三者による当社製品・技術に類似もしくは優れた製品の製造 ・第三者の知的財産権侵害による損害賠償請求権を行使される |
・特許権・意匠権・商標権を専門部署にて一元管理することによる知的財産保護 ・第三者侵害、被侵害に対して、所管部が法務部と連携して対応 |
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情報セキュリティ ※特に重要なリスク |
・サイバー攻撃・内部不正アクセス・情報の滅失・毀損等による個人情報や研究開発情報等の機密情報の漏洩 ・漏洩が発生した場合の対応負担
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・ISMS認証、プライバシーマークの取得・維持 ・個人情報保護規程、営業秘密管理規程、アクセス管理規程等の制定・運用による管理 ・アクセス制限、認証、暗号化等の機能によるセキュリティ対策 ・エンドポイントセキュリティ対策(マルウェア・ウイルス対策) ・内部監査の実施による厳重な管理体制構築 ・データのクラウド保存によるセキュリティ強化 ・情報セキュリティに対する社員教育の徹底 |
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商品・資材・原材料調達 |
・外的要因により不測の事態が発生した場合、製造に必要な資材、原材料の調達が困難になる可能性 ・資源価格の上昇によるエネルギー価格及び資材・原材料等の高騰リスク |
・供給先との間で、生産数の変動や供給体制等の情報を共有 ・資材・原材料は約3~6ヶ月分を保有 ・複数購買の推進 ・海外子会社・協力企業と連携して、原料の供給ソースを確保 ・薬事部・海外薬事部・品質保証部等によるチェック体制の強化 |
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SCM |
・非公正な利益配分によるSCMの維持継続の難航 |
・「マルチステークホルダー方針」「パートナーシップ構築宣言」に則った運営 |
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重要な訴訟 |
・重要な訴訟等が発生し、当社グループに不利な判断がなされる可能性 |
・社内・契約弁護士による法務リスク管理 |
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海外認証制度の変更 |
・ISO(13485)の維持ができなくなる可能性 ・欧州基準で流通する医療機器に関する規則となる医療機器指令(MDD)から医療機器規則(MDR)への移行が期限内に完了しなかった商品の販売継続ができなくなる可能性 ・新規商品にMDR認証が取得できない場合 ・認証機関の基準の強化による既存の認証取り消しのリスク |
・ISO(13485)維持に向けた教育訓練・外部コンサルタントの活用 ・MDRに準拠した社内ライセンス管理体制の整備・実施 ・海外薬事部・海外子会社による情報収集・対応 |
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人的資本 人材確保
※特に重要なリスク |
・必要な採用数が確保できなかった場合及び休退職者の増加により人員が確保できなかった場合に、事業活動に影響が出る可能性 ・社員の高齢化を伏線とした再雇用者の増大による余剰人員及び要求スペックと能力の質的ミスマッチの発生(雇用の長期化・部署再編等に起因) ・従業員のモチベーション低下による労働生産性の悪化 |
・省人化投資の推進 ・多様な人材の確保 ・ライフワークバランスを考えた働き方の導入 ・企業主導型保育所の設置による育児と仕事の両立を支援 ・長期的、短期的(緊急時)の人員確保体制の構築 ・エンゲージメント向上施策の実施 |
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レピュテーション |
・外部からのSNSによる攻撃、風評被害 ・SNSを活用した企業による情報発信時の炎上リスク ・各種の事故等発生時の初動動作に誤りがあることによるレピュテーション低下 |
・SNSによる情報発信時のチェック機能強化 ・コンプライアンス研修の継続 ・当社を理解してもらうための情報発信許可 ・トラブル発生時の基本動作の習得と訓練 |
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労務 |
・メンタルヘルスに起因する労務リスク ・従業員の健康リスク ・従業員の人権、待遇に関するリスク ・外国人実習生の増加による、労使トラブル発生のリスク ・製造環境の規制改正への対応リスク ・退職リスク |
・産業医の活用 ・就業規則等の遵守 ・全社員へのストレスチェックを継続実施 ・専門部署による人事管理フォロー |
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行政 |
・監督官庁により行政方針の変更や制度改革がある場合、または、法や制度の解釈に関して相違がある場合において、当社に対する信頼性や事業の継続性に影響を与える可能性 |
・リスク・セキュリティ会議の運営、実施 ・監督官庁との対話や各接点の拡大 |
(コンタクトレンズ・ケア用品事業に係る主要な許認可、免許及び登録等)
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取得年月 |
(初回)2005年4月 (直近)2023年1月 |
(初回)2011年11月 (直近)2021年11月 |
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許認可等の名称 |
医療機器製造販売業 |
医薬部外品製造販売業 |
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製造販売業の名称 |
株式会社シード |
株式会社シード |
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所管官庁等 |
東京都 |
東京都 |
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許認可等の内容 |
医療機器の製造品質確保及び市販後安全性情報収集 |
医薬部外品の製造品質確保及び市販後安全性情報収集 |
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有効期限 |
2028年1月 |
2026年11月 |
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法令違反の要件 及び主な許認可取消事由 |
申請内容と異なる製品に対して、出荷可否判定を偽り、出荷を認めてしまう、また、重大な障害に対し虚偽の報告や隠ぺいする等 |
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取得年月 |
(初回)2007年10月 (直近)2022年10月 |
(初回)2005年4月 (直近)2023年4月 |
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許認可等の名称 |
医療機器製造業 |
高度管理医療機器販売業 |
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製造所の名称 |
株式会社シード鴻巣研究所 |
株式会社シード |
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所管官庁等 |
埼玉県 |
東京都 |
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許認可等の内容 |
医療機器の製造(コンタクトレンズ) |
医療機器の販売 |
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有効期限 |
2027年10月 |
2029年3月 |
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法令違反の要件 及び主な許認可取消事由 |
申請内容と異なる製品を製造すること等 |
医療機器の品質確保、トレーサビリティを怠る等 |
(注)高度管理医療機器販売業については、各営業所において許認可を取得しております。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度末における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当社グループでは、3ヶ年中期経営計画(2021年4月~2024年3月)の最終年度である2024年3月期につきましても、『「見える」に新たな価値を』を実現していくために、「市場競争力の強化・収益力の強化」、「信頼されるモノづくり」、「SDGsの推進」、「安定した株主還元」を最重要施策として、日本国内での安定した成長を軸に、海外各国での需要回復を積極的に取り込むことにより海外事業規模の拡大と収益基盤の強化を進めてまいりましたが、現在、当社では、乱視と遠近両用に特にアクセントを置いたレンズ需要の想定を上回る回復と他社製品供給の不安定等に起因して、「Pureシリーズ」の国内外向け一部商品において、生産量を上回る需要が発生しております。それに伴う在庫の逼迫により、納期の遅延が、昨年夏期から継続的に発生しております。成長する需要の取り込みについては、当社の2024年4月を起点とする中期経営計画(2024年4月~2027年3月)におきましても成長戦略の柱として掲げておりますが、安定した商品供給と市場競争力を高める新商品の量産体制を整備するため、売上拡大の足枷となりうる生産力の抜本的引上げを行う事が不可欠であると考えております。
2024年3月期におきましては、当社の生産拠点である鴻巣研究所では、経年した1号棟の生産設備の更新及び3号棟のライン新規増設により月間最大生産枚数を5,300万枚から5,800万枚へと引き上げました。2025年3月期におきましても、2024年4月に竣工した2号棟別館に製造設備が導入され本格稼働することで、月間最大生産枚数が5,800万枚から6,500万枚へと引き上げられ、さらに既存ラインの効率的な運営で、能力を拡大する計画を進めております。加えて、2025年3月期に着工し、2027年3月期に稼働予定である4号棟では第一期計画が完了することにより月間最大生産枚数は7,500万枚まで引き上げられる予定です。今般の公募及び第三者割当による新株発行により調達いたしました資金、約34億円につきましては、2号棟別館の建築資金、及び4号棟の建築資金等の一部に充当し、当社が世界のコンタクトレンズ市場でプレゼンスを発揮することを目標として、商品供給力の強化と開発製造体制を整備することにより、市場競争力と企業価値の向上に努めてまいります。
商品戦略としましては、主力商品である国産の「シード1dayPureシリーズ」に対する需要の高まりを背景に、乱視、遠近両用コンタクトレンズといったスペシャリティレンズの販売に注力してまいりました。また、2023年3月期に市場に投入したシリコーンハイドロゲルレンズの2商品「シード1daySilfa(シルファ)」、「シードAirGrade 1day UV W Moisture(エアグレード ワンデー UV ダブルモイスチャー)」、近年、2週間交換ソフトコンタクトレンズ市場においてシリコーンハイドロゲル素材の需要が年々高まっていることから2024年3月に新発売した「シードAirGrade 2week UV W-Moisture(エアグレード ツーウィーク UV ダブルモイスチャー)」並びにサークルレンズ「シード Eye coffret 1day UV M」、カラーコンタクトレンズ「ベルミー」、オルソケラトロジーレンズ「ブレスオーコレクト®」の普及拡大により更なる売上創出を目指して販売を行ってまいりました。海外市場では、「シード1dayPureシリーズ」を中心に、それぞれの市場特性に合わせて、サークルレンズ、カラーレンズ、「シード1daySilfa(シルファ)」、オルソケラトロジーレンズ、RGPレンズ、ケア用品等、プロダクトミックスを多様化しております。
これらの事業活動の結果、当連結会計年度において、主に国内のコンタクトレンズ販売が伸長したため、売上高は32,396百万円(前期比5.9%増)となりました。利益につきましては、売上高増加及び生産数量の増加に伴う量産効果による原価率低減が実現されました。また、2023年3月期第2四半期以降からの価格改定により、売上総利益が増加した結果、営業利益2,050百万円(前期比225.5%増)、経常利益2,059百万円(前期比271.5%増)となりました。ドイツ子会社の合理化に伴い繰延税金資産を計上したことや留保金課税対象企業から2024年3月期末時点において外れたこと、また、各種の税制優遇制度が適用となったことから、課税金額が押し下げられたことにより、親会社株主に帰属する当期純利益は1,964百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失316百万円)となりました。
セグメントの経営成績は次のとおりであります。
(コンタクトレンズ・ケア用品)
国内のコンタクトレンズ販売につきましては、引き続き主力商品である国産の「シード1dayPureシリーズ」を中心とし、2つの異なるベクトルを持つシリコーンハイドロゲルレンズや特に市場での伸長が最も見込まれる遠近両用コンタクトレンズ等の高付加価値商品の拡販に注力してまいりました。「シード1dayPureシリーズ」は需要増により、前期比5.8%増加いたしました。オルソケラトロジーレンズにつきましては、前期比14.6%増と大きく伸長いたしました。サークル・カラーコンタクトレンズにおきましては、販売チャネルの多様化や競合商品の増加の影響もあり、前期比0.5%増と概ね横ばいでの推移となりました。
ケア用品につきましては、オルソケラトロジーレンズ関連のケア用品は増加しましたが、コンタクレンズの使い捨てタイプへのシフトの影響で前期比1.6%増に留まりました。
海外へのコンタクトレンズ輸出等につきましては、国や地域により差はあるものの、欧州向けや東南アジア向けが堅調に推移しました。これらの増加が、中国向けの製品輸出の停滞をカバーし、前期比22.3%増となりました。
その結果、セグメント全体の売上高は32,280百万円(前期比5.9%増)、営業利益3,275百万円(前期比99.8%増)となりました。
(その他)
その他につきましては、眼内レンズの売上が減少した結果、売上高は115百万円(前期比4.1%減)、営業損失
は9百万円(前期営業利益0百万円)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、9,852百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果増加した資金は、6,023百万円(前年同期3,346百万円の増加)となりました。これは主に、税金 等調整前当期純利益の計上2,081百万円や減価償却費の計上2,766百万円、棚卸資産の減少664百万円により資金が増加しております。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果減少した資金は、3,763百万円(前年同期440百万円の減少)となりました。これは主に、鴻巣研究所の設備導入等に伴う有形固定資産の取得による支出3,806百万円が要因となっております。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果増加した資金は、2,644百万円(前年同期1,818百万円の減少)となりました。資金増加の主な要因は株式の発行による収入3,360百万円となっております。
(2)生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
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コンタクトレンズ・ケア用品(千円) |
11,042,115 |
104.1 |
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合計(千円) |
11,042,115 |
104.1 |
(注)金額は製造原価によっております。
② 商品仕入実績
当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
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コンタクトレンズ・ケア用品(千円) |
6,700,818 |
82.9 |
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その他(千円) |
55,604 |
102.7 |
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合計(千円) |
6,756,423 |
83.0 |
(注)金額は仕入価額によっております。
③ 受注実績
当社グループは見込生産を行っているため、該当事項はありません。
④ 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
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コンタクトレンズ・ケア用品(千円) |
32,280,835 |
105.9 |
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その他(千円) |
115,917 |
95.9 |
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合計(千円) |
32,396,752 |
105.9 |
(注)最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合につきましては、次のとおりであります。
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相手先 |
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
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金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
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HOYA株式会社 |
3,776,403 |
12.3 |
4,972,850 |
15.4 |
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株式会社パレンテ |
4,345,793 |
14.2 |
3,804,097 |
11.7 |
(3)経営者の視点による財政状態、経営成績、キャッシュ・フローの状況の分析
当連結会計年度の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は、以下のとおりであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 ⑴ 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。連結財務諸表の作成にあたっては、会計上の見積りを行っており、そのうち主なものは以下のとおりであります。
なお、不確実性が大きく将来事業計画等の見込数値に反映させることが難しい要素もありますが、期末時点で入手可能な情報を基に検証等を行っております。
(棚卸資産の評価)
当社グループの保有する棚卸資産については、「棚卸資産の評価に関する会計基準」に基づき、厳格な処理を実施しております。棚卸資産は、収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により評価しております。収益性の低下が認められた棚卸資産については、取得原価と当連結会計年度末における正味売却価額のいずれか低い方の金額で評価しております。また、収益性の低下に基づき簿価を切り下げた金額は原則として売上原価に含めております。長期滞留の棚卸資産に対しては、売上実績及び将来の売上予算を基礎に出荷期限内で出荷する可能性を検討したうえで、当連結会計年度末において出荷期限内に出荷が見込まれない棚卸資産の取得原価を切り下げております。
当連結会計年度末において収益性の低下が認められた棚卸資産について、上記方法に基づく簿価切下げによる評価損を売上原価に計上しております。
棚卸資産の評価の見積りは、景気動向や顧客ニーズの変化等の将来の経済環境の変動によって影響を受ける可能性があり、売上実績が見積りと異なった場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において売上原価の金額に重要な影響を与える可能性があります。
(債権の評価)
当社グループの保有する債権(売上債権、貸付金等)については、回収可能性を検討の上、貸倒引当金を計上しております。なお今後、債務者の財務内容、将来業績が低下する場合においては、貸倒引当金の追加計上が必要となる可能性があります。
(固定資産の減損処理)
当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産または資産グループについては、当該資産または資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定にあたっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、減損処理が必要となる可能性があります。
(繰延税金資産)
当社グループは、繰延税金資産については、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保できることや、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は、将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。
② 財政状態の分析
当連結会計年度末における資産の残高は、49,574百万円となり、前連結会計年度末から9,563百万円増加いたしました。主な要因としましては、公募及び第三者割当による新株発行により資金を調達したことや鴻巣研究所での新規設備の導入、3号棟底地購入、新社屋関係の投資により有形固定資産が増加したこと、売上増加に伴い現金及び預金が増加したことが挙げられます。
負債につきましては、31,923百万円となり、前連結会計年度末から4,058百万円増加しております。主な要因としましては、基幹システム更新・商品仕入に係る未払金を計上したことや新規設備導入によるリース債務の増加が挙げられます。
当期の損益及び公募及び第三者割当による新株発行の結果を受け、純資産につきましては、17,650百万円となり、前連結会計年度末から5,505百万円増加しております。
③ キャッシュ・フローの分析
キャッシュ・フローの分析に関しては、第2[事業の状況]4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)[経営成績等の状況の概要]の②を参照ください。
指標
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2022年3月期 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
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自己資本比率(%) |
29.3 |
29.6 |
35.0 |
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時価ベースの自己資本比率(%) |
31.2 |
34.2 |
40.5 |
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インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍) |
19.0 |
18.6 |
28.2 |
※時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数により算出
※インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
④ 資本の財源及び資金の流動性の分析
当社グループの資金需要のうち主なものは、製品製造のための費用や商品仕入代金等の運転資金、中長期的に安定した成長を遂げるためのコンタクトレンズ事業における製造設備投資及び研究開発への継続的な投資であります。設備投資につきましては、「第3 設備の状況」、研究開発投資につきましては、「6 研究開発活動」に記載のとおりであります。必要資金につきましては、主に手元資金及び金融機関からの借入金にて賄っており、当連結会計年度末の当社グループの短期及び長期借入金の残高は18,392百万円であります。当社グループは、営業活動によるキャッシュ・フローを中心に財務の健全性に取り組みながら、外部からの借入金も活用し資金需要を賄ってまいります。
⑤ 経営成績の分析
売上高・売上総利益
当連結会計年度における売上高は32,396百万円となり、前連結会計年度に比べ1,802百万円増加いたしました。これは、国産の「ワンデーピュアシリーズ」を中心とし、特に市場の伸長が最も見込まれる遠近両用コンタクトレンズ及びオルソケラトロジーレンズ等の高付加価値商品の拡販に注力した結果、主に国内のコンタクトレンズ販売が前年対比で回復したためであります。
売上総利益は14,183百万円(売上総利益率43.8%)となり、前連結会計年度に比べ2,560百万円増加(売上総
利益率5.8ポイントアップ)いたしました。主に売上高増加及び生産数量の増加に伴う量産効果による原価率低
減が実現されました。また、2023年3月期第2四半期以降からの価格改定により、売上総利益が増加したことも
背景としております。
販売費及び一般管理費
当連結会計年度における販売費及び一般管理費は12,133百万円となり、前連結会計年度に比べ1,139百万円増加いたしました。これは、人件費(前期対比439百万円増)や研究開発費(前期対比141百万円増)が増加したためであります。
該当事項はありません。
当社グループは、皆様の「見える」をサポートするため、コンタクトレンズを核とし、ケア用品・医薬品・医療機器等、技術に裏打ちされた高品質で安全な「眼」に関する製品開発を進めております。
現在の研究開発は、おもに埼玉県の鴻巣研究所、イギリスのContact Lens Precision Laboratories Ltd.(以下CLPL社)、ドイツのWoehlk Contactlinsen GmbH(以下Woehlk社)及び、スイスのSensimed SA(以下Sensimed社)で進められており、研究開発スタッフは、鴻巣研究所及び本社に77名、CLPL社に4名、Woehlk社に5名、Sensimed社に
5名が在籍しております。それぞれの事業所が持つ得意とする技術を最大限に生かすため、グループ内での連携を推進しております。
なお、当連結会計年度の研究開発費は
コンタクトレンズ・ケア用品
①高酸素透過性などの付加価値の高い新素材の開発を進めており、治験を開始いたしました。また、新しい素材の基礎研究を国内外の大学、公的研究機関と共同で実施しております。
②乱視、遠近両用などの特殊コンタクトレンズにおける革新的な光学設計に関する商品の商業化を進めております。
③持続的に薬剤を放出するソフトコンタクトレンズにつきましては、治験を進めております。また、難治性疾患を対象とした次世代の医薬品・医療機器の複合型デバイスについても、大学、製薬メーカーと共同で研究開発を進めております。
④生体情報のモニタリングを可能とする新たなスマートコンタクトレンズの研究開発を、電子デバイスおよび基盤となる汎用エレクトロニクスの開発を中心に検討を進めております。
⑤製造工程において、AIを用いた自動外観検査システムの実用化を開始しております。
⑥世界的な近視進行抑制医療への関心の高まりを受け、関連する製品の実用化を目指し、治験を進めております。
⑦ケア用品は、国外市場への展開を目指した検討を進めております。