第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

 当社グループは、「安全の確保を最優先に、人々の想いを繋ぎ、より豊かな未来を築きます」という企業理念のもと、社業の基盤である安全の確保を最優先に、当社グループが持続的に成長するため、ステークホルダー・社会との対話を通じて、安全に加えて様々な価値を提供することを経営方針としております。

 なお、その実行にあたっては社会的要請へ適応し、環境に配慮した行動をとることとしております。

 

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(核となる事業)

 企業集団の人的・物的資源を生かしながら、当社グループは引き続き次の3つの事業を核として推進します。

・全世界にわたる水域で原油、石油化学製品、液化天然ガス(LNG)、液化石油ガス(LPG)、発電用石炭、肥料、木材チップなどの基礎原料の輸送を行う外航海運業

・国内、近海を中心とした水域で液化天然ガス(LNG)、液化石油ガス(LPG)、石油化学ガスなどの基礎原料の輸送を行う内航・近海海運業

・東京都心とロンドン中心部における賃貸オフィスビルの所有、運営、管理及びメンテナンス並びにフォトスタジオの運営を行う不動産業

 

(2)中長期的な会社の経営戦略と優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社グループは、2023年4月から開始する3年間の中期経営計画「The Adventure to Our Sustainable Future」(計画期間:2023年4月~2026年3月、以下「本計画」という)を策定しました。本計画では、ポートフォリオ経営とカーボンニュートラルへの挑戦をテーマに定め、長期目標としてのIINO VISION for 2030の実現に向けて、共通価値の創造をより力強く推進していきます。重点戦略として、事業ポートフォリオ経営による持続的な成長と、マテリアリティ(サステナビリティ重要課題)の克服を両立させる諸施策を推進していきます。

 

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<重点戦略への取り組み>

  各重点戦略の具体的な推進事項と2023年度における主な取り組みは以下の通りです。

 

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 当社のマテリアリティは事業への影響と社会への影響の2軸を基準として、ステークホルダーの意見を基に取締役会で議論を行い特定しています。マテリアリティと当社の経営戦略とを結合させ、マテリアリティを克服することで、社会的価値の創造を目指します。

また、サステナブルな社会の実現に貢献していく当社グループの姿勢を明確にするため、「飯野海運グループ サステナビリティ基本方針」を策定しました。サステナビリティを重視した経営を通じ、中長期的な企業価値向上に努めます。

マテリアリティの克服への取り組みの詳細については以下の通りです。

 

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 これらのマテリアリティは、各部・グループ各社の年度ごとの業務遂行計画で進捗管理をしていきます。また、外部環境の変化にも対応するため、PDCAサイクルに基づき、取締役会において議論・評価を行い、定期的に見直すことで取り組みを推進します。

 なお、当社のサステナビリティへの取り組みの詳細につきましては当社ホームページをご参照ください。

https://www.iino.co.jp/kaiun/csr/

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)基本的な考え方

 企業によるサステナビリティ(持続可能性)への取組が従来にも増して求められている中、飯野海運グループはサステナビリティに重点を置いた経営をより一層強化していますが、環境・社会問題の解決に向けたサステナブルな社会の実現に貢献していく当社グループの姿勢を改めて明確にするため、「安全の重視」「人権の尊重」「環境の保護」「社会への貢献」「コンプライアンスの徹底」「取引先の尊重」「ダイバーシティの推進」「情報開示とコミュニケーション」「教育・訓練」の9項目で構成されたサステナビリティ基本方針を2024年3月28日に策定しました。ステークホルダーの皆様の期待に応え続ける企業であるために、本方針に基づき、サステナビリティに関する取組を推進してまいります。

 

(2)ガバナンス

気候変動に対する取組の推進体制

 当社グループでは、気候変動や温室効果ガス(GHG)削減への対応として「脱炭素社会へ向けた取組み」を経営上の重要課題と位置づけ、グループ全体で取組の検討および進捗の管理を行っています。

 環境問題を議論する組織として、代表取締役社長を委員長とし、すべての業務執行取締役ならびに主要なグループ会社社長を含むメンバーを委員とする安全環境委員会を設置しています。また、代表取締役社長は当社グループにおける気候変動問題の責任者の役割も担っています。安全環境委員会は毎月開催され、GHGの削減/脱炭素社会の実現を含む環境や安全に関する各種活動状況の報告を受け、その内容について、審議・評価を行い改善活動につなげています。

 「脱炭素社会へ向けた取組み」に関しては、より積極的にグループ全体での対応を進めるため、2022年6月にサステナビリティ推進部を新たに設置し、さらに同部内に海運営業部・不動産営業部・船舶管理部門・ビル管理部門等のメンバーが構成員となる部門横断組織(環境推進ワーキングチーム)を設置しました。これら2つの組織が連携して気候変動対応の計画・立案を行い、サステナビリティ推進部が安全環境委員会に対し、その取組を定期的に報告しています。

 

人権、腐敗防止に対する取組の推進体制

 当社グループでは、「人権対応」、「腐敗防止含めたコンプライアンス」を経営上の重要課題と位置づけ、グループ全体で取組を推進しています。

 2022年6月にサステナビリティ推進部を新たに設置し、さらに同部内に経営企画部門、IR担当部門、人事部門、法務部門等のメンバーが構成員となる部門横断組織(CSRワーキングチーム)を設置しました。これら2つの組織が連携して人権対応と腐敗防止の対応に関する計画・立案を行い、取組を推進しています。

 

(3)戦略

シナリオ分析の実施

 当社グループは、気候関連リスク・機会がもたらす海運業と不動産業への影響を把握するため、TCFD提言に基づき、「脱炭素シナリオ」と「成り行きシナリオ」について、それぞれの将来の世界観を踏まえ、各事業の重要なリスクと機会を抽出し、項目を特定しました。

 

海運業

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 これからの脱炭素社会への移行に伴い、主要貨物の一つである化石燃料の海上輸送需要が低下していくことを見据えて、当社グループでは環境負荷低減に資するクリーンエネルギーの輸送や次世代燃料船への投資にも積極的に取り組むべく、戦略を策定していきます。

 

不動産業

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 不動産業については、所有するビルに対し、非化石証書付電力の購入、カーボンニュートラル都市ガスの導入、照明のLED化、太陽光パネルの設置など、温室効果ガス(GHG)排出量削減に向けた取組を既に進めています。これからの脱炭素社会への移行に伴い、オフィスビルの更なる省エネルギー化と再生可能エネルギー化を検討していきます。

 

中期経営計画における各事業の具体的な戦略

 2023年度~2025年度を対象期間とする当社グループの中期経営計画においては、上記の重要な気候関連リスク・機会の精査を踏まえて、2050年にカーボンニュートラル達成目標を掲げ、そのためのロードマップを以下のように取り纏めております。

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人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針

 当社は、「少数による運営」「モチベーション向上、活性化を促進」「一人ひとりを細かく見る」という人事基本方

針に則り、各社員個々人のニーズや適性に配慮しつつ、幅広い分野の知識と経験を身につけ、新しい時代へと果敢に挑

戦していくことができる人材の育成に力を入れています。

 当社の人事評価では、目標管理制度を導入しており、組織目標の達成に向けた行動を組織と社員が一体となって進め

ています。評価結果を伝えるフィードバック面談では、社員一人ひとりに気づきを与え、仕事を通じた目標達成や成長

感など、社員一人ひとりの活性化を図り成長を促す仕組みとなっています。また、キャリア自律を促す施策として、社

員全員に自己申告書の提出を毎年求めており、社員一人ひとりの将来のキャリアや能力発揮の方向性を会社として把握

し、本人が思い描くキャリアを実現できるよう可能な限り支援・指導を行っています。

 社内環境整備においては、多様な社員がいきいきと働ける職場を目指し、在宅勤務制度や時差出勤制度の拡充を進め

ています。また、男性も育休を取得できる環境を整えることをきっかけとして、業務の標準化、効率化を進めるととも

に、従業員が協力して助け合える体制を作ることで、育児だけに限らず、一人ひとりがワークライフバランスを充実さ

せることができる状態を目指します。

 

(4)リスク管理

気候変動に関するリスクおよび投資と機会

 財務的または戦略的な面から事業に重大な影響を及ぼす可能性がある気候変動に関する海運業と不動産業のリスクおよび投資と機会について説明します。

 

海運業における物理的リスク

 リスク: 台風などの異常気象の発生

 

 対応策および機会:

 短期*1

 ・気象・海象データを衛星通信で収集

 ・ウェザールーティングサービスにより提供される(気象・海象予測に基づく)最適な航路選定の支援サービスを利用

 中長期*2

 ・気候変動対策としてGHG排出量を削減可能な二元燃料主機関搭載船やゼロエミッション船への投資推進

 

 リスクに対応するためのコスト(ITシステムの使用):

船舶の運航管理システムや海陸(船舶と陸上)間と船同士のコミュニケーションに使用する通信機器などの利用により、年間約13百万円の費用が発生しました。

 

 財務上の潜在的影響額:

航路上に台風が発生した場合、船舶は台風を避けるために航路から離れて航行(離路)する必要があります。離路に伴い年間約1,100百万円の追加費用が発生する可能性があります。

 

不動産業における物理的リスク

 リスク:洪水などの水害の発生

 

 対応策および機会:

 短期*1

 ・自然災害発生時の迅速な対応を可能とするBCPの策定

 ・ハザードマップで浸水の可能性があるオフィスビルは、電気制御室などの重要機器を配置するスペースを上層階に設置

 ・すべての国内所有オフィスビルにおいて災害に備えるための保険に加入

 中長期*2

 ・対応策を通じた不動産価値の上昇

 

 リスクに対応するためのコスト(保険の加入):

すべての国内所有オフィスビルにおいて災害に備えるために保険の加入が必要となり、一部のオフィスビルでは約10百万円の費用が発生します。

 

 財務上の潜在的影響額:

当社所有の一部オフィスビルのリスク調査をリスクコンサルティング会社が行った結果、水害リスクとして約3,700百万円の損害が発生する可能性があることが判明しています。この損害額については、加入している上記保険によりカバーされる予定です。

 

 *1 短期とは2年程度の比較的短い期間のこと

 *2 中長期とは2年以上の期間のこと

 

(5)指標及び目標

 温室効果ガス(GHG)排出量削減に向けた指標及び目標

 2023年度~2025年度を対象とする当社グループの中期経営計画においては、2050年カーボンニュートラル達成に向けた対応方針・目標を設定しました。

 

 上記の重要な気候関連リスク・機会の精査を踏まえて、2023年5月に公表した2050年カーボンニュートラル達成に向けた2030年度のGHG削減目標は、以下のとおりとなります。

 

海運業 :20%削減(2020年度比、原単位(輸送トンマイル)ベース)

不動産業:75%削減(2013年度比、総量ベース)

 

 

   GHG排出量実績(Scope 1,2及び3)

 

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人的資本の強化に関する目標

 中期経営計画の重点戦略に沿った人的資本強化のKPIを設定し、2025年度における当社のKPIは以下のとおりとなります。

  育児休業取得率        100%(2023年度 83.3%)

  総合職に占める女性比率    20%(2023年度末 17.7%))

  海外短期研修・海外駐在経験者 累計75名(2023年度末累計 61名)

 

3【事業等のリスク】

 当社グループの経営成績、株価及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクは以下の通りであります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 当社グループの外航海運業と内航・近海海運業により構成される海運業及び不動産業の事業活動におきましては、船舶の就航水域・寄港地・入渠地、市場、契約先の属する国や地域、プロジェクト等の投資地域等全ての事業地域で、政治情勢、経済情勢、社会的な要因、自然災害や人災等により、当社グループの業績、株価及び財務状況等に悪影響を及ぼす可能性があります。具体的なリスクとしては以下のようなものがあります。

 

(1) 船舶・建物における重大な事故・事件等によるリスク

 当社グループは企業理念に「安全の確保を最優先に、人々の想いを繋ぎ、より豊かな未来を築きます」を掲げ、事業に使用する船舶や建物での安全優先を経営上の使命としています。各事業部門に共通する安全対策については毎月一回開催される「安全環境委員会」にてレビューされ、さらに海運業においては国際的な基準に基づいた品質管理マネジメントシステムを導入し、また「安全管理委員会」を定期的に開催して事故防止や安全対策の徹底に努め、緊急事態にも適応できる体制を構築しております。しかしながら、もし船舶や建物での不測の事故が起こり人命・財産に関わる重大な事故や事件が発生した場合、あるいは油濁等の環境汚染や所有不動産に土壌汚染が認められ搬出や浄化の必要が生じた場合には、当社グループの業績、株価及び財務状況等が影響を受ける可能性があります。

 

(2) 海運市況・不動産市況の変動によるリスク

 当社グループは海運市況や不動産市況の一時的な変動に左右されないよう、中長期契約を主体として安定的な営業収益の確保に努めておりますが、海運業においては中長期契約の更改時期やスポット運航を余儀なくされる場合に、海上輸送量の増減、競争の激化、船腹需給の変動等の影響により、運賃収入及び貸船料収入等が大きく変動する可能性があります。不動産業においては、当社グループは東京都心部のオフィスビルを中心に不動産資産を保有しており、不動産市況の動向、特に東京都心のオフィス市場の空室率が変動する等の場合、賃貸料収入等が大きく変動する可能性があります。以上の結果、当社グループの業績、株価及び財務状況等が影響を受ける可能性があります。また、前述の営業収益の安定策には、市況変動によるリスクをある程度軽減する一方、市況が逆方向へ変動することから生じたかもしれない利益を逸失している可能性があります。

 

(3) 資産価格の変動に関するリスク

 当社グループの保有する資産(船舶、土地、建物、投資有価証券等)には、経済状況、市況の変動等の要因で資産価格に変動がある可能性があります。特に、外航海運業においては、海上輸送量の増減、競争の激化、船腹需給の変動等により運賃が大きく変動することから、減損損失の認識要否の判定及び回収可能価額の算定に重要な影響を及ぼす将来の運賃予測には高い不確実性を伴います。当社グループは四半期に一度、減損の兆候がある資産の把握をする等、資産価格や市況の大きな変動を注視しております。しかしながら、想定外の当該資産の売却等に伴う損益の実現や、減損損失の認識等により、当社グループの業績、株価及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 他社との競合によるリスク

 当社グループは海運業及び不動産業において、国内外で多くの企業と競合関係にあります。国内及び海外で幅広い顧客に営業展開をする等、本リスクの軽減に努めておりますが、他企業とのサービス・価格競争が激化した場合、当社グループの業績、株価及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 

(5) 燃料油価格の変動によるリスク

 海運業においては、当社グループが購入する舶用燃料油の価格は原油の需給バランスや産油国・地域の情勢等により変動しますが、補油地域・時期の分散や減速航海の実施等による燃料油の消費量節減、荷主との燃料油価格変動調整条項の合意等の対策を講じ、業績に与える影響を軽減するよう努めております。しかしながら、燃料油価格の著しい変動等により、当社グループの業績、株価及び財務状況等が影響を受ける可能性があります。

 

(6) 船舶・不動産の稼働状況に関するリスク

 当社グループが使用する船舶や建物等においては天災、人災による事故、粗悪油やその他の不測の事態により、想定外の不稼働が発生する可能性があります。その他、不動産業においてはオフィス賃貸借契約の未更新や中途解約その他の事由等により不稼働が発生する場合があります。不稼働損失保険への加入や解約予告期間を長期に設定すること等で本リスクを軽減するよう努めておりますが、想定外の不稼働が発生した場合に当社グループの業績、株価及び財務状況等が影響を受ける可能性があります。

 

(7) 船舶の売却や中途解約等におけるリスク

 海運業においては、海運市況の動向や船舶の新技術開発・導入による既存船舶の陳腐化、安全・環境規制その他の諸規則の変更等による船舶の使用制限等により、当社グループが保有する船舶を売却する場合や、当社グループが用船する船舶の用船契約を中途解約する場合があります。市場の動向を見極めた売船、自社保有や用船といった船舶の保有形態のバランスを適切に保つこと等により本リスクの低減に努めておりますが、想定外の売船や用船契約の途中解約が発生した場合、当社グループの業績、株価及び財務状況等が影響を受ける可能性があります。

 

(8) 為替の変動によるリスク

 当社グループの事業のうち海運業においては外貨建費用に比べ外貨建収入が多く、為替レートの変動が損益に影響を与える状況にあります。また設備投資においては、外貨建の投資も多くあります。そのため、費用のドル化を進めるとともに、為替予約や通貨スワップ等のヘッジ取引により、為替レート変動の影響を軽減するよう努めております。しかしながら、為替レートが大きく変動した場合、当社グループの業績、株価及び財務状況等が影響を受ける可能性があります。なお、前述のヘッジ取引には、為替レートの変動によるリスクをある程度軽減する一方、為替レートが逆方向へ変動することから生じたかもしれない利益を逸失している可能性があります。

 

(9) 金利変動によるリスク

 当社グループは、船舶や不動産等の取得に要する設備投資及び事業活動に要する運転資金に内部資金を充当する他、外部からも資金を調達しております。この外部資金には変動金利で調達している部分があり、金利情勢を勘案の上、金利の固定化等により、金利変動による影響を軽減するよう努めておりますが、将来の金利変動によって資金調達コストが変動し、当社グループの業績、株価及び財務状況等が影響を受ける可能性があります。また、このような金利固定化等の取引には、金利レートの変動によるリスクをある程度軽減する一方、金利レートが逆方向へ変動することから生じたかもしれない利益を逸失している可能性と、固定化した期間中に条件の変更を余儀なくされた場合、解約料を負担することがあります。

 

(10) 規制の実施・改廃等によるリスク

 当社グループが使用する船舶の建造・登録・運航は、各種の国際条約による法的規制や、近年の環境保護や安全重視の高まりに起因する特定顧客及び船級協会等の規則や規制等の影響を受けます。その他の事業分野を含め、今後の事業活動の展開にあたって法的規制、特定顧客及び船級協会等の規則や規制等が新たに実施又は改廃された場合、それらに対応するためのコストの増加、当事業からの撤退や遵守できなかった場合の事業活動の制限等により、当社グループの業績、株価及び財務状況等が影響を受ける可能性があります。

 

(11) 世界各地域の政治情勢、経済情勢、社会的な要因等によるリスク

 当社グループの事業活動は、日本を含むアジア、中東、欧米、その他の地域に及んでおり、各地域における政治情勢、経済情勢、社会的な要因等により影響を受ける可能性があり、具体的には以下のようなリスクがあります。これらリスクに対しては当社グループ内外からの情報収集活動等を通じ、その予防と回避に努めておりますが、これらの事象が発生した場合には、当社グループの業績、株価及び財務状況等が影響を受ける可能性があります。

(ア) 政治的又はインフレ等の経済的要因

(イ) 事業・投資許可、税制、会計基準、為替管理、安全、環境、通商制限、私的独占の禁止等に関する公的規制とその改廃、商慣習、実務慣行、解釈

(ウ) 他社との合弁事業・提携事業の動向

(エ) 事故、火災、戦争、暴動、テロ、海賊、伝染性疾患の流行、ストライキその他の要因による社会的混乱

 なお、イスラエル紛争に起因する紅海情勢の悪化を含めた中東各国の政治情勢不安及びロシア・ウクライナ情勢は、物品の供給制約やエネルギー価格の高騰からインフレを引き起こし、結果として世界経済減速による海上輸送需要の停滞・減少や、不動産市況の悪化等の影響を当社グループに及ぼす可能性があります。当社グループは国際社会が実施する制裁措置を遵守して事業活動に取り組み、情報収集活動等を通して、日々変化する状況に迅速に対応できるよう努めております。

 

(12) 世界各地域の自然災害及び二次災害並びにそれらに付随する風評被害によるリスク

 当社グループの事業活動は、日本を含むアジア、中東、欧米、その他の地域に及んでおり、各地域における感染症の流行を含む自然災害及びその二次災害により影響を受ける可能性があります。特に、当社グループ本社所在地であり保有する不動産資産が集中している首都圏や東日本において自然災害及びその二次災害が生じた場合は、当社グループの事業活動全般に大きな影響を及ぼすことが考えられます。また、自然災害及び二次災害に付随する風評被害が当社グループの事業活動全般に影響を及ぼす可能性もあります。当社グループでは、感染症の流行を含む自然災害及びその二次災害発生時にも、可能な限りの事業継続を図るため、これらの事態を想定したBCP(事業継続計画)を策定しておりますが、これらの事象が発生した場合には、当社グループの業績、株価及び財務状況等が影響を受ける可能性があります。

 

(13) 取引先の倒産等に関するリスク

 当社グループは、取引先と締結した用船契約・不動産賃貸借契約に基づき営業収益を確保しております。取引先の与信状態は契約締結時及び履行途中に調査しておりますが、輸送契約先、貸船契約先、借船契約先、テナント契約先等の取引先が抱えるリスクにより倒産等の不測の事態があった場合、当社グループにおいて不良債権の発生や、契約の中途解約、借船元の船舶差し押え・競売等が発生することが予想され、これら損失の額によっては、当社グループの業績、株価及び財務状況等が影響を受ける可能性があります。

 

(14) 投資計画の進捗に関するリスク

 当社グループは、海運業においては船隊整備、不動産業においてはビル建設等に関する投資を計画しておりますが、今後の海運市況や不動産市況、金融情勢、造船会社や建設会社の動向等によって、これらが計画通りに進捗しない場合、当社グループの業績、株価及び財務状況等が影響を受ける可能性があります。

 

(15) 情報・会計システムに関するリスク

 地震等の自然災害、外部からの予期せぬ不正アクセスやコンピューターウィルス侵入等、また新システムの導入・新規機能の追加時に情報・会計システムに障害が発生した場合、業務が遅延・停止する可能性があります。日々高度化する本リスクへの対応として、適切な情報セキュリティ対策等を行っておりますが、顧客への情報提供及び業務処理が滞ることとなった場合、当社グループの業績、株価及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 

(16) 中期経営計画に基づく経営目標が達成できないリスク

 当社グループは2023年4月に3ヵ年の中期経営計画「The Adventure to Our Sustainable Future」を策定し、達成に向けて取り組んでおります。しかし、本中期経営計画は、様々な外的要因により影響を受ける可能性があり、当初の目標を達成できない可能性があります。

 

(17) 気候変動に関するリスク

 当社グループでは、経営方針にて各種社会課題の解決に貢献することを掲げており、サステナビリティ基本方針にて「内外の関連法規および国際ルールを遵守し、事業から生ずる環境への負荷の低減・環境の保全に努めるとともに、気候変動への対応・自然環境の保護に積極的に取り組む。」と定めています。経営方針・サステナビリティ基本方針の実践のために、2023年度4月に策定した中期経営計画「The Adventure to Our Sustainable Future」において、カーボンニュートラルへの挑戦をテーマに定め、「脱炭素社会の実現に向けた計画策定と実行」に向けた取り組みを行っています。

 当社グループは、気候変動がもたらす事業へのリスクと機会について、その分析と対応を強化し、関連情報の開示拡充を進めるため、2021年7月に気候関連財務情報開示タスクフォースの提言(以下、「TCFD提言」という。)に賛同を表明しました。TCFD提言に沿って当社が抽出した主なリスクは以下の通りです。これらのリスクが顕在化した場合には、当社グループの業績、株価及び財務状況等が影響を受ける可能性があります。

 

■海運業

・化石燃料の需要減少による売上の減少

・カーボンプライシングによる費用の増加

・燃費規制対応による船舶建造費の増加

・燃費規制対応(次世代燃料使用)による燃料費の増加

■不動産業

・建物の省エネ化に関する建設・改修費の増加

・立地エリアにおいて保有ビルの環境性能等が劣後した場合、賃料、入居率、資産価値の下落

 

 なお、気候変動の問題は、新たな輸送需要の創出や、保有資産の環境性能向上による差別化を促す可能性もあり、当社グループにとって新規ビジネス機会の増加につながる側面があります。

 

(18) 人権に関するリスク

 当社グループは、グローバル企業として、全ての人々の人権を尊重することが企業として果たすべき社会的責任であることを認識し、2022年9月に国連グローバル・コンパクトに賛同しました。また、当社の企業理念に基づいた人権に関する最上位の方針として、「飯野海運グループ人権方針」を定めた他、「飯野海運グループ調達方針」、「飯野海運グループサプライヤー行動規範」を制定し、サプライチェーン全体での人権尊重の取り組みを実施しています。しかしながら、予期せぬ事態により、当社グループの事業活動を通して人権問題が発生した場合、社会的信用の失墜や賠償責任により、当社グループの業績、株価及び財務状況等が影響を受ける可能性があります。

(19) コンプライアンスに関するリスク

 当社グループでは、サステナビリティ基本方針において「コンプライアンスの徹底」を定め、法令遵守や社会の規範及び道徳律の趣旨を体現した行動を当社グループ全ての役員・従業員に求めることを明記しています。「コンプライアンス規程」にて遵守すべきコンプライアンスに関する基本事項を定め、年に四回以上開催される「コンプライアンス委員会」がコンプライアンスに関する政策立案とその推進を図っています。また、内部通報制度により寄せられた情報について「コンプライアンス委員会」にて調査、問題解決を行うことでコンプライアンス違反に対処しています。加えて、2022年9月に国連グローバル・コンパクトに賛同し、「飯野海運グループ腐敗防止方針」を策定しました。しかしながら、このような施策を講じてもコンプライアンス上のリスクは完全に回避できない可能性があり、重大なコンプライアンス違反があった場合には、当社グループの社会的信用の失墜や賠償責任により、当社グループの業績、株価及び財務状況等が影響を受ける可能性があります。

 

 上記は当社グループが事業を継続する上で、予想される主なリスクを具体的に例示したものであり、これらに限定されるものではありません。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

業績等の概要

(1) 業績

当連結会計年度(以下、「当期」という。)の世界経済は、高インフレや利上げによる財需要の押下げ、消費者マインドの悪化等により、全体として緩やかに減速しました。

米国では、インフレや金融引締めを背景に景気後退が懸念されていましたが、雇用、所得環境の改善により個人消費が堅調に推移し、景気は予想を上回る水準で回復しました。欧州では、物価上昇は一服したものの、内需の弱さから景気の停滞が続きました。中国では、政府による景気刺激策が講じられたものの、不動産市況の低迷が続く等、力強さを欠く展開となりました。我が国の経済は、好調な企業収益による設備投資の増加から緩やかに回復し、大幅な賃上げ等を受け、日本銀行が3月の金融政策決定会合において17年ぶりにマイナス金利解除を決定しましたが、物価高による節約志向の高まりから個人消費が減少しており、期末にかけて足踏み状態が続きました。

 

当社グループの海運業を取り巻く市況は、世界経済の減速を背景に一部の船種では弱含む場面もありましたが、当社が主力とするケミカルタンカーや、大型LPG船においては高い水準で推移しました。一方、紅海情勢の悪化に伴い、当社グループが運航する一部の船舶が同海域を迂回する等配船に影響が出ました。このような状況の下、当社グループでは、安全管理体制に万全を期した上で、既存契約の有利更改や効率配船への取り組みにより、運航採算の向上を図りました。不動産業においては、当社所有ビルが順調な稼働を継続したことから、安定した収益を確保しました。

 

以上の結果、為替が前年度と比較し円安(対US$)で推移したこともあり、売上高は1,379億50百万円(前期比2.4%減)、営業利益は190億63百万円(前期比4.8%減)、経常利益は218億円(前期比4.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は197億45百万円(前期比15.5%減)となりました。

 

各セグメント別の状況は次の通りです。

 

①外航海運業

当期の外航海運市況は以下の通りです。

 大型原油タンカー市況は、OPECプラスの協調減産延長の影響で低迷していましたが、秋口からは冬季需要や米国及び南米等からの輸送需要増加の影響により回復しました。年明け以降は中東の地政学リスクが一層高まる中、荷動きに応じて変動の大きい市況ではあったものの、総じて底堅く推移しました。

 ケミカルタンカー市況は、世界的な景気後退懸念や中国経済回復の遅れを背景に夏場まで軟化傾向で推移しましたが、秋以降はパナマ運河での通航制限の強化に加え、年明け以降は紅海周辺の緊張の高まりを受け、同海域を回避した長距離航海が増加したことが影響し、高い水準で推移しました。

 大型ガス船のうち、LPG船市況は春先の不需要期や年初で一時期弱含んだものの、北米・中東の堅調な輸出、旺盛なアジア向け需要、パナマ運河の通航制限による船腹需給の引き締まりを背景に高水準で推移し、前期に続き記録的な好況となりました。LNG船市況は、欧州・アジアにおける天然ガスの十分な在庫や、温暖な気候及び需要低迷により昨年度と比較し変動幅が限定的でした。例年通り、冬場に向けた船腹調達の活発化により秋口にかけては高水準で推移したものの、その後は下落基調となりました。

 ドライバルク船市況は、中国経済の回復遅れ等により、当初は軟調でしたが、後半には石炭や穀物、鉄鉱石の需要増加やパナマ運河での通航制限の強化により大西洋域から上昇しました。船型や水域による差、また、一時的な軟化局面はありましたが、回復基調をたどる中で年度末を迎えました。

 

なお、当期における当社グループの平均為替レートは¥143.82/US$(前期は¥135.07/US$)、平均船舶燃料油価格(適合燃料油)$620/MT(前期はUS$802/MT)となりました。

 

このような事業環境の下、当社グループの外航海運業の概況は以下の通りとなりました。

大型原油タンカーにおいては、一部の船舶で入渠工事を実施し稼働が減少しましたが、支配船腹を長期契約に継続投入し、業績の下支えに貢献しました。

ケミカルタンカーにおいては、当社の基幹航路である中東域から欧州及びアジア向けをはじめとする安定的な数量輸送契約に加え、スポット貨物を積極的に取り込んだことで、当初の予想を上回る運航採算を確保しました。

大型ガス船においては、既存の中長期契約を中心に安定収益を確保したことに加え、一部船舶が好市況を享受しました。また2月にはクリーンエネルギーとして注目されるアンモニアを輸送し、さらに燃料として使用する二元燃料主機関へ換装可能な仕様である当社初のアンモニア運搬船が竣工しました。

ドライバルク船においては、専用船が順調に稼働し安定収益確保に貢献しました。ポストパナマックス型及びハンディ型を中心とする不定期船では、ハンディ型を中心に市況の影響を受けたものの、契約貨物への投入を中心に効率的な配船と運航に努め、ドライバルク船全体で当初の予想を若干上回る運航採算を確保しました。

 

以上の結果、外航海運業の売上高は1,149億44百万円(前期比2.6%減)、営業利益は151億39百万円(前期比3.1%減)となりました。

 

②内航・近海海運業

 当期の内航・近海海運市況は以下の通りです。

内航ガス輸送の市況においては、プラントの定期修繕実施や、気温上昇に伴う早期の不需要期入り、9月以降は気温の高止まりによる需要期入りの遅れ等により荷動きが低調でしたが、2月頃から気温の下降に伴い民生用LPGの需要が回復し、さらに内航海運業法等の改正に伴う船員労働時間の規制により、船腹需給は引き締められ、堅調に推移しました。

近海ガス輸送の市況においては、中国経済の回復鈍化により、プロピレンや塩化ビニルモノマーの輸送需要は当期を通して低調であったものの、新造船の竣工は限定的であることから、当社の主力とするアジア域市況では引き続き堅調に推移しました。

 

このような事業環境の下、内航ガス輸送においては、市況の影響や運航船の入渠による修繕工事の重なり等の影響を受けましたが、既存の中長期契約に加え、船員労働時間の規制を考慮した効率配船により、安定的な売上を確保しました。近海ガス輸送においては、既存の中長期契約に基づき、安定的な収入を確保しました。また1月には、アジア域内のLPG輸送に従事する新造高圧LPG船の用船を開始しました。

 

以上の結果、内航・近海海運業の売上高は101億17百万円(前期比3.7%減)、営業利益は4億7百万円(前期比31.4%減)となりました。

 

③不動産業

 当期の不動産市況は以下の通りです。

 都心のオフィスビル賃貸市況は、大企業を中心とするリモートワークの浸透によるオフィス需要減少に伴う賃料の下落が続き、空室率も依然として5%台後半から6%台と高い水準で推移しましたが、新築大型ビルへの拡張や集約移転を要因とする市況回復の兆しも見え始めました。

 貸ホール・貸会議室においては、先行して需要の回復が見られていた文化系催事に続き、ビジネス系催事においても需要の持ち直しの動きが顕著となりました。

 不動産関連事業のスタジオ事業においては、企業の広告宣伝活動を中心に堅調に推移しました。

 英国ロンドンのオフィスビル賃貸市場においては、従業員のオフィス回帰を促進するための高グレードなビルの需要が強く、高稼働となっているものの、市場の大半を占めるそれ以外のビルを含めた全体的な空室率は高い水準で推移しました。

 

 このような事業環境の下、当社グループの不動産業の概況は以下の通りとなりました。

 当社所有ビルにおいては、オフィスフロアが順調な稼働を継続し、安定した収益を維持しました。

 商業フロアにおいては、一部空室を残しているものの、飲食テナントを中心に売上の回復傾向が見られました。

 当社グループのイイノホール&カンファレンスセンターにおいては、需要の回復に伴い稼働は改善に向かいました。

 スタジオ事業を運営する㈱イイノ・メディアプロにおいては、主力のスタジオ部門で稼働が引き続き堅調に推移しました。

 英国ロンドンのオフィスビル賃貸事業においては、オフィスフロア・商業フロア共に順調に稼働し、収益を維持しました。また、当期末にロンドンで二棟目となる高グレードのオフィスビルを取得しました。

 

以上の結果、不動産業の売上高は129億73百万円(前期比0.3%増)、営業利益は35億16百万円(前期比7.5%減)となりました。

 

(2)キャッシュ・フローの状況

当期の「営業活動によるキャッシュ・フロー」は、294億48百万円のプラス(前期は352億68百万円のプラス)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益211億26百万円と減価償却費133億70百万円によるものです。

「投資活動によるキャッシュ・フロー」は220億7百万円のマイナス(前期は184億88百万円のマイナス)となりました。これは主に船舶及び不動産への設備投資を中心とした固定資産の取得による支出120億20百万円や、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出90億54百万円によるものです。

「財務活動によるキャッシュ・フロー」は38億71百万円のマイナス(前期は132億46百万円のマイナス)となりました。これは長期借入れによる収入320億15百万円が長期借入金の返済による支出261億99百万円及び社債の償還による支出50億円を上回ったものの、親会社による配当金の支払いによる支出66億56百万円があったことによるものです。

以上の結果、「現金及び現金同等物の当期末残高」は198億53百万円(前期末は155億21百万円)となりました。

 

生産、受注及び販売の実績

この項目は「業績等の概要(1)業績」の記載に含めて記載しております。

財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たりまして、期末日における資産・負債の報告金額及び報告期間における収益・費用の報告金額に影響を与える見積り及び仮定設定を行わなければなりません。当社グループ経営陣は、債権の貸倒、棚卸資産、投資、法人税等、財務活動、退職金、偶発事象や訴訟等に関する見積り及び判断に対して、継続して評価を行っております。過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行い、その結果は、他の方法では判定しにくい資産・負債の簿価及び収益・費用の報告金額についての判断の基礎となります。実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

 当社グループにおける重要な会計上の見積りに関する情報は、「第5 経理の状況 注記事項(重要な会計上の見積り)」をご参照下さい。

 

(2) 経営成績の分析

① 損益の分析

 当期における売上高は、前期比2.4%減の1,379億50百万円となりました。なお、各セグメントの売上高の概要は、「業績等の概要(1)業績」に記載の通りであります。

 営業利益は前期比4.8%減の190億63百万円となりました。なお、各セグメントの営業利益の概要は、「業績等の概要(1)業績」に記載の通りであります。

 経常利益は、前期比4.5%増の218億円となりました。これは営業利益の減少もありましたが、主に為替差益の増加によるものです。

 親会社株主に帰属する当期純利益は、前期比15.5%減の197億45百万円となりました。これは経常利益の増加もありましたが、主に固定資産売却益の減少によるものです。

 

② 財政状態の分析

 当期末の総資産残高は前期末に比べ277億75百万円増加し、2,932億28百万円となりました。これは主に船舶の竣工による増加や不動産の取得に伴う建物等の増加によるものです。

 負債残高は前期末に比べ62億36百万円増加し、1,611億2百万円となりました。これは主に船舶の竣工に伴う設備資金の借入によるものです。

 純資産残高は前期末に比べ215億39百万円増加し、1,321億26百万円となりました。これは主に親会社株主に帰属する当期純利益計上に伴う利益剰余金の増加によるものです。

以上の結果、当期末の連結自己資本比率は45.0%(前期末は41.6%)となりました。

 

(3) 流動性及び資金の源泉

① 資金需要

 当社グループの事業活動における運転資金需要の主なものは当社グループの外航海運業と内航・近海海運業により構成される海運業に関わる運航費、船費、借船料と不動産業に関わる管理費、営繕費等の不動産業費用、各事業についての一般管理費等があります。また、設備資金需要としては船舶投資と不動産投資に加え、情報処理の為の無形固定資産投資等があります。

② 財務政策

 当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金の活用や金融機関からの借入により資金調達を行っており、運転資金及び設備資金につきましては、国内、海外子会社のものを含め当社において一元管理しております。

 当社グループの主要な事業資産である船舶の調達に当たっては、船主からの中長期用船や裸用船のバランスも考慮に入れ、当社グループ全体の有利子負債の削減を図っております。円建て、米ドル建ての借入金を含む当期末の有利子負債残高(リース債務を除く)は1,187億64百万円となりました。

 また、資金調達コストの低減に努める一方、過度に金利変動リスクに晒されないよう、設備資金の借入の大部分について金利スワップなどの手段を活用しております。

 当社グループは国内2社の格付機関から格付を取得しており、本報告書提出時点において、日本格付研究所:

「A-」、格付投資情報センター:「BBB+」となっております。また、金融機関には充分な借入枠を有しており、当社グループの事業の維持拡大、運営に必要な運転、設備資金の調達は今後も可能であると考えております。また、国内金融機関において複数年を含む合計180億円並びにUS$6千万のコミットメントラインを設定しており、流動性の補完にも対応が可能となっております。

③ キャッシュ・フロー

 「業績等の概要(2)キャッシュ・フローの状況」をご覧下さい。

 

5【経営上の重要な契約等】

 記載すべき事項はありません。

6【研究開発活動】

 記載すべき事項はありません。