(1)会社の経営の基本方針
当社グループが掲げる「NGKグループ理念」と「NGKグループビジョン Road to 2050」は以下の通りです。
<NGKグループ理念> https://www.ngk.co.jp/info/philosophy/
私たちの使命
「社会に新しい価値を そして、幸せを」
私たちが目指すもの
「人材 挑戦し高めあう」
「製品 期待を超えていく」
「経営 信頼こそが全ての礎」
<NGKグループビジョン Road to 2050> https://www.ngk.co.jp/info/vision/
2050年の未来社会を見据え、カーボンニュートラルの実現とデジタル社会への爆発的進化という大きな流れを新たな発展機会と捉え、①ESG経営の推進、②収益力向上、③研究開発への注力、④商品開花への注力、⑤DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進の5つの変革に取り組み“Surprising Ceramics.”をスローガンに当社独自のセラミック技術を活かし、「第三の創業」に向けて事業構成の転換を図ってまいります。
当社グループは、自己資本利益率(ROE)を主要な経営指標とし、資本効率を重視した経営を推進しております。関連性の高い投下資本利益率(NGK版ROIC)を管理指標に採用し、投下資本の代わりに事業資産(売掛債権、棚卸資産、固定資産)、税引後利益の代わりに事業部門の営業利益を用いることにより、事業部門が自ら目標管理できるようにしております。既存事業の収益力の向上と共に、2030年に新事業化品売上高を1,000億円以上とする「New Value 1000」を目標に掲げ、研究開発とマーケティングに注力することにより売上高成長率の維持・向上を実現し、利益成長を目指します。中長期の観点でROE10%以上の水準を意識し、持続的な企業価値の向上に資するよう事業リスクの変化に適合した資本政策を展開します。株主・投資家との透明で適切なコミュニケーションで資本コストの引き下げに努めると共に、これを上回る収益性確保に向けて事業計画の立案や設備投資の意思決定プロセスを回してまいります。また、配当性向及び純資産配当率等を参照して積極的な株主還元に努めます。これらにより財務健全性との両立を図りつつ、ROEを構成する利益率、資本回転率、財務レバレッジを事業戦略と整合した健全な水準に維持することを目指します。
更に、当社の企業価値向上に資する管理指標として、営業利益にCO2排出コストや労務費、研究開発費、ESG目標達成率を加味したNGK版付加価値(NGK Value-added)を使用しております。環境負荷の低減や人権尊重への取組みなど多岐にわたる社会的責任を果たすとともに、将来の競争力の源泉である人的資本や研究開発への投資を積極的に行いつつ、着実に利益成長を実現できるよう付加価値の拡大に努めてまいります。
当社グループを取り巻く環境は、不動産市場が低迷する中国経済の鈍化、ロシアによるウクライナ侵攻や中東の紛争が長期化する状況下、2024年は世界的な選挙イヤーでもあり、不透明な状況が続くことが予想されます。一方、中長期の観点では、「地球沸騰化」と表現されるように地球温暖化の進行による影響が危機的な状況にある中、脱炭素社会実現に向けたカーボンニュートラルへの取組みは拡大していきます。また生成AI(人工知能)時代の到来を迎え、情報通信が高度化しデジタル社会の発展は加速度的に進展すると想定しております。当社グループは社会に新しい価値を提供する企業を目指し、NGKグループビジョンにおいて「独自のセラミック技術でカーボンニュートラルとデジタル社会に貢献する」ことをありたい姿として定め、その実現に向けて「5つの変革」を推進しております。当社グループの基幹事業である自動車関連製品は電動化の進展により縮小していく懸念はありますが、2050年の未来社会に向けて、カーボンニュートラルやデジタルソサエティ関連の製品を拡大させ、事業構成の転換を着実に進めるべく、「ESG経営の推進」と「既存事業の収益力向上と新規事業の創出」を図ってまいります。
当社グループの重点課題に対する取組みは以下の通りです。
① ESG経営の推進
当社グループは、持続的な成長と将来のありたい姿への変容を推進すべく、ESGを経営の中心に位置づけております。NGKグループ理念「社会に新しい価値を そして、幸せを」に基づき、独自のセラミック技術で新しい価値を提供することで持続可能な社会の実現に貢献し、社会の皆さまからの期待に応え、信頼を得たいと考えています。これをNGKグループのサステナビリティに係わる基本的な考え方とし、NGKグループ理念の実現に向けて、ESG(環境・社会・企業統治)及びSDGs(持続可能な開発目標)を念頭に置きつつ、カーボンニュートラルとデジタル社会の実現に貢献し、持続的な企業価値の向上を目指します。
また、当社グループは海外19カ国で36のグループ会社(うち製造会社18社)がビジネスを展開しており、これらの目標達成と経営の透明性・自律性を高めるべく、グループで働く全員が公正な価値観や国際的な水準の判断基準に従って行動できるよう環境整備を進めております。その一環として、国の内外において、関係法令、国際ルール及びその精神を遵守しつつ、高い倫理観をもって社会的責任を果たすべく、会社の姿勢を示す「NGKグループ企業行動指針」、役員や従業員が従うべき道筋を示した「NGKグループ行動規範」を改定・制定し、運用を開始いたしました。
社長を委員長とする「ESG統括委員会」のもと、全てのステークホルダーに信頼されることを目指してESG要素を始めとする当社グループのサステナビリティ課題に取り組み、これを取締役会が適切に監督してまいります。
〔環境(E)〕
当社グループは、2050年までにCO2排出量ネットゼロとする目標を掲げ、カーボンニュートラル、循環型社会、自然との共生への寄与を骨子とした「NGKグループ環境ビジョン」を策定し、具体的な行動計画として「カーボンニュートラル戦略ロードマップ」と「第5期環境行動5カ年計画」を定め、その実現を目指しております。5カ年計画の最終年度となる2025年度には目標値であるScope1及びScope2におけるCO2排出量55万トン(2013年度比25%削減)を達成できる見通しであります。マイルストーン(中間目標)とする2030年度の同37万トンの排出量(同50%削減)についても、2025年度までに海外拠点で使用する電力全量の再生可能エネルギー由来への切り替え、国内外の製造拠点への合計32メガワットの太陽光発電設備の導入などにより達成を目指します。また、目標達成を前倒しで実現すべく、水素やアンモニアなどカーボンニュートラル燃料によるセラミック焼成技術や、CO2の回収・利用・貯蔵関連技術として、ガス分離膜や大気中のCO2を直接回収するDAC(Direct Air Capture)の開発、CO2を再利用するメタネーションの実証試験を推進しており、当社グループ内での実証・適用を進めるほか、カーボンニュートラル関連製品・サービスの開発にも取り組んでまいります。2023年11月には3年連続となるグリーンボンド(無担保社債)を発行しました。環境効果のある製品・サービスの提供、自社の事業活動・生産活動におけるカーボンニュートラルへの取組みなどを加速してまいります。
また、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に関する情報を当社ウェブサイト等に開示しているとともに、自然との共生への対応については、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)のアーリーアダプター(早期採用者)として賛同を表明しました。今後も社会的な要請に遅れることなく関連情報の開示を拡充してまいります。
〔社会(S)〕
当社グループは、自社及びサプライチェーンにおける人権を尊重する取組みを展開することで、事業活動が影響を及ぼす全ての人々の人権が侵害されることのない社会づくりに貢献します。国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、「NGKグループ人権方針」を定めたほか、英国現代奴隷法に関する声明を開示、また「子どもの権利とビジネス原則」を支持し事業活動において子どもの権利を尊重し、子どもの権利の推進に向けた社会貢献活動等に取り組むことを宣言しております。
当社グループは、NGKグループ理念の中で、「挑戦し高めあう人材」を私たちが目指すものの1つと位置づけ、「社会に新しい価値を そして、幸せを」という私たちの使命の実現と、NGKグループビジョンの実現に向けた「5つの変革」に取り組んでおります。これらを成し遂げるためには、人材一人ひとりの活躍が不可欠です。2023年6月に「NGKグループ人的資本経営方針」、「人材育成方針」ならびに「社内環境整備方針」を定め、採用や育成を通じて5つの変革に取り組む人材の充実を図ること、その人材が持てる力を十分に発揮できる環境を整えることを推進してまいります。当社では、自律的な成長に取り組むことが出来るような多様なキャリアパスの提供や、テレワーク活用といった柔軟な働き方、長時間労働の削減を中心とする社内環境整備などの施策にも取り組んでおります。女性活躍については、新卒採用に占める女性比率の数値目標を設定すると共に、配属先・異動先での職域拡大を図っています。また、育休・産休取得者のキャリア早期再開を促すための早期復職支援制度の導入、育休からの復職者研修の実施、男性育休制度の拡充などの制度面からのアプローチに加えて、仕事と家庭の両立への理解を深めることを目的とした社内講演会を開催するなど、女性が活躍しやすい環境づくりに取り組んでおります。海外人材については、当社グループは従業員約20,000人のうち、約6割が海外に所在しております。グループ運営において、それぞれの地域の事情、文化、習慣に基づく素早く適切な意思決定を行うためには現地人材の活躍が不可欠と考えており、海外拠点の幹部層も現地化するなど、現地人材の積極的な登用に努めております。
当社は、内閣府、中小企業庁が推進する「パートナーシップ構築宣言」を公表しております。当社グループのサプライチェーンにおいては、サプライチェーンを構成する調達パートナーと公正・公平な取引を行い、共に繁栄を図るため、「門戸開放」「共存共栄」「社会的協調」を調達の基本軸に掲げ、地球環境の保全、人権尊重、労働環境などに配慮した「NGKグループ調達方針」を定めております。また取引先企業への訪問や実態調査アンケート等を通して、サステナブル調達へのリスク・CSR詳細評価を行っております。
〔ガバナンス(G)〕
コーポレートガバナンスについては、取締役会の更なる機能発揮の観点から、会社の持続的成長と中長期的な企業価値の向上に資する独立社外取締役を選任し、その数を全取締役の3分の1以上としております。また、経営の透明性を確保し取締役会の監督・監視機能を強化するため、独立社外取締役を過半数として構成する指名・報酬諮問委員会で役員の人事及び報酬決定等に係る公正性の確保及び透明性の向上を図ると共に、社外役員を主要な構成員とし役員等が関与する不正及び法令違反等への対応を取り扱う経営倫理委員会を設置し、取締役会への答申又は報告、勧告等を行うこととしております。役員等が関与する不正・法令違反に歯止めをかける仕組みとして、従業員からの相談・報告を受けるヘルプライン制度とは別に、社外弁護士を通じて経営倫理委員会に直接報告するホットライン制度を設置し、経営陣から独立した通報体制を設けるなど、コンプライアンス体制の充実を図っております。
また、当社グループで働く全ての人が倫理観を持って正しい事業活動を行うための道しるべとして「NGKグループ企業行動指針」及び「NGKグループ行動規範」を策定しており、その周知徹底に取り組んでおります。さらに様々な領域で取り組むコンプライアンス活動を国際的な水準に照らして評価検証し、共通の理解と価値観に基づき継続的に改善する仕組み作りを行うため、「コンプライアンス活動基本要領」を制定しております。
競争法及び海外腐敗行為防止法などの法令遵守については、2024年4月に「NGKグループ腐敗防止方針」を新たに定めたと共に、継続的な経営トップのメッセージ発信、国内外グループ会社の役員・従業員向けのコンプライアンス教育の実施、国際的な水準に沿った競争法遵守プログラムの運用、「競争法遵守ハンドブック」の活用などにより徹底を図っております。
品質コンプライアンスについては、経営トップによる品質活動や品質委員会の直接指導の実施などの仕組みを強化すると共に、経営層及び従業員に対する品質教育の徹底など企業体質の改善に取り組んでおります。労働環境の安全面では、リスクアセスメントの推進による重大災害リスクの特定と未然防止対策の強化に加え、グループ全体の現場マネジメント力の強化を図り、業務災害リスクの低減に取り組んでまいります。
リスクマネジメントについては、経営レベルの視点から重要と考えるリスクを事業環境、戦略、内部要因に分類し継続的に見直しを行っております。当社グループのサステナビリティ課題を含む個別のリスク事項については、各種の委員会を設置してリスク管理を行っておりますが、国内外の環境変化が加速する中、部門を横断し全社視点で取締役会につながる統合的なリスク管理の仕組みを構築するため、2023年度より社長直轄の統括委員会として「リスク統括委員会」を設置し、重点フォローリスクについて取締役会の決議を経て対応策の検討を開始いたしました。
② 既存事業の収益力向上と新規事業の創出
当社グループは、全社の視点から企業価値を高めるために事業ポートフォリオ方針を定め、NGK版ROICを用いた収益性と、売上高成長率を用いた成長性の二軸で精査しております。コア事業や今後の成長が期待される事業群への経営資源の投入を検討するほか、低成長・低収益に区分される事業については、今後の事業継続の判断において単年度及び中期的な経営計画に基づく計数面での評価に加えて、長期的な視点での成長可能性、収益性等を個別に社内の戦略会議等で議論し、経営に関する重要な事項として取締役会が監督してまいります。また、設備投資の意思決定にあたっては、個別の投資の回収期間のほか、NGK版ROICやインターナルカーボンプライシング(ICP)を用いたESG視点での価値評価も考慮し判断してまいります。さらに持続的な利益成長と将来の企業価値の源泉となる人的資本や知的資本への投資を両立させ、同時に環境負荷の低減や人権尊重への取組みなどサステナビリティに関する取組みも総合的に評価するため、管理指標として営業利益にCO2排出コストや労務費、研究開発費、ESG目標達成率を加味したNGK版付加価値(NGK Value-added)を導入しております。これにより、短期の収益性や中長期の成長性といった財務価値に加えて財務諸表に表れない非財務価値を高めて、企業価値向上につなげてまいります。
各事業の収益性改善に向けて、世界的なインフレに伴う費用増を適切に価格に転嫁していくほか、収益力をさらに高めるべく「モノづくり∞(チェーン)革新」を進めております。モノづくりチェーンにおける理想と現状のギャップを埋める「生産革新活動」、工場単位のロス削減により製造原価を改善する「原価低減活動」を柱とし、デジタル技術の活用によりモノづくりシステムの高度化とグローバル連携を進め、原燃料費などの高騰や需要変動に対して、更なる原価低減とリードタイムの短縮、在庫の削減に取り組むことで、収益力強化につなげてまいります。
DX推進については、NGKグループデジタルビジョンのもと、グループ全体で加速させてまいります。モノづくり領域に加え、新規材料の開発や開発リードタイムを短縮するマテリアルズ・インフォマティクスや特許戦略にIPランドスケープを活用する等データを活用した価値創造や、本社・間接部門における徹底的な業務効率化とデータ連携を進め、固定費の削減やデータに基づく業務履行と意思決定へと変革を推進します。
事業構成の転換には新規事業の創出が不可欠であり、その重要施策として、2030年に新事業化品売上高を1,000億円以上とする「New Value 1000」を目標に掲げております。マーケティング機能を主体としたNV推進本部、セラミックス材料技術や要素技術など当社独自の差異化技術を有する研究開発本部、生産技術・エンジニアリングなどの製造技術本部の3本部が連携し「研究開発」から「商品開花」へのスピードを高めてまいります。2024年度の研究開発費は前年度同様過去最高水準の310億円を投じることを計画しており、2021年からの5年間で1,300億円を投じるとしたNGKグループビジョンを上回るペースで進めております。2021年から2030年までの10年間で3,000億円、うち8割をカーボンニュートラルとデジタル社会関連に配分し、社会課題の解決に資する将来の有望なテーマに対して重点的に経営資源を投じてまいります。また、開発スピードを上げつつこれまで以上の差異化技術を作るべく、早い段階から製造技術本部を巻き込んだコンカレント開発に取り組むほか、ベンチャーキャピタルやスタートアップ企業への出資など外部とのアライアンスを活用した新製品・新規事業の創出も積極的に推進し、事業構成の転換を図ってまいります。
セグメント別の重点課題は以下の通りです。各報告セグメントを構成する主要製品については、「第5 経理の状況 1[連結財務諸表等](1)[連結財務諸表][注記事項](追加情報)(セグメント区分の変更)」をご覧ください。
〔エンバイロメント事業〕
世界の自動車生産の回復や各国の排ガス規制強化等により、当面は高水準の需要に対応しつつ生産性の改善やグローバル生産体制の最適化と安定供給体制の構築により利益最大化を目指します。電気自動車の普及拡大により将来的には内燃機関ビジネスは漸減するものの、短期的には欧州をはじめとする更なる規制強化に対応すべく、新製品のガソリンセンサーの開発を加速させることに加え、CO2センサーの潜在的な需要に対する準備を開始するとともに、中長期の需要縮小局面において適正な収益を確保できる価格の見直しを進めてまいります。また、世界的に拡大が期待されるカーボンニュートラル関連市場に対して、大気中のCO2を直接回収するDAC(Direct Air Capture)や、CO2、窒素、水素など分子レベルで分離するサブナノセラミック膜など、社会の環境ニーズに貢献できる製品や設備の早期事業化に向けて、産業プロセス事業をエンバイロメント事業区分に組み込むとともに、CN事業推進部を新設し、本社工場の一部を新製品開発拠点に再編、開発体制を強化いたしました。広義に環境関連を包含する事業として、高付加価値品の投入、技術イノベーションで貢献してまいります。
〔デジタルソサエティ事業〕
NGKグループビジョンで掲げたデジタル社会関連の事業領域は、世界経済の回復鈍化に伴い短期的には需要が弱含むものの、中長期ではIoTや5Gの進展などにより半導体関連や電子部品関連の拡大が期待されております。半導体製造装置用製品や電子部品関連については、次世代製品の開発や顧客開拓を進めるほか、中長期を見据えた設備投資を進め、拡大する需要に対応してまいります。また、絶縁放熱回路基板の供給能力向上や通信分野の高度化及びパワーモジュールに資す複合ウエハーの開発を着実に進め、デジタル社会に貢献する製品群の拡大を目指します。
〔エネルギー&インダストリー事業〕
2050年のカーボンニュートラルを目指し、脱炭素の動きが世界中で活発化する中、蓄電池の重要性も一層高まっております。エナジーストレージ関連では、NAS®電池の本格的な需要拡大には暫く時間を要しますが、大容量、長寿命、長時間充放電等の特性を生かした商機の掘り起こしを図ってまいります。NAS®電池を活用し、エネルギーリソースをIoT技術で統合制御し電力需給バランスを調整するVPPサービスを開始するなど、従来の「モノ売り」に加え、サービスや価値を提供する「コト売り」を新事業領域として注力してまいります。がいしは、国内電力会社の設備投資抑制が続く中、中長期の市場変化を想定した事業の効率化を継続的に進めてまいります。
当社グループは、こうした取組みを通じて経営基盤の更なる強化に努め、資本効率重視、株主重視の経営を継続すると共に、持続的な成長と企業価値の向上を通して将来のありたい姿の実現を目指してまいります。
当社グループのサステナビリティに関する基本方針は以下の通りです。
なお、文中の将来に関する事項は、別途記載がある場合を除き当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(基本的な考え方)
日本ガイシ株式会社(NGK)及びそのグループ会社は、NGKグループ理念「社会に新しい価値を そして、幸せを」に基づき、独自のセラミック技術で新しい価値を提供することで持続可能な社会の実現に貢献し、社会の皆さまからの期待に応え、信頼を得たいと考えています。これをNGKグループのサステナビリティに係わる基本的な考え方とし、NGKグループ理念の実現に向けて、ESG(環境・社会・企業統治)及びSDGs(持続可能な開発目標・Sustainable Development Goals)を念頭に置きつつ、カーボンニュートラルとデジタル社会の実現に貢献し、持続的な企業価値の向上を目指します。
(重要な課題(マテリアリティ)の特定と取組みの推進)
NGKグループ理念の実現、また社会とNGKグループの持続的な発展のために、NGKグループ及びステークホルダーの双方にとって重要な課題をマテリアリティとして特定し、行動の道しるべとなるNGKグループ企業行動指針に従って取り組みます。
(取締役会の責任)
取締役会は、ESG要素を始めとするNGKグループのサステナビリティ課題を正しく認識し、サステナビリティ課題への取組みを適切に監督し対応を進めることで中長期的な企業価値の向上に結びつけることを目指します。また取締役会は、適切に情報を開示し、様々なステークホルダーとの対話を重視してその意見をもとに、経営の改善に努め、社会からの信頼と期待に応えます。
(1) ガバナンス及びリスク管理
① ガバナンス
当社グループの全社的なリスクについては、リスク統括委員会においてリスクマネジメントに係る方針策定、体制構築、執行状況のモニタリング等を行うとともに、個別のリスク事項については各種の委員会等においてリスク管理を行うものとしており、ESG要素を含むサステナビリティ課題に関するリスクと機会はESG統括委員会において集約、確認しています。ESG統括委員会の活動内容は年1回以上取締役会に報告されるとともに、必要な事項は経営会議及び取締役会で審議または報告された上で施策として執行されます。リスク統括委員会及びESG統括委員会の委員長は取締役社長が務め、本社部門、事業部門などを担当する執行役員及び部門長をその構成員としています。
リスクマネジメントに関わる体制については、
https://www.ngk.co.jp/sustainability/pdf/2023/ngk2023data.pdf
② リスク管理
当社グループのサステナビリティ課題に関するリスクと機会については、経営会議及び取締役会で重要な項目をマテリアリティとして特定した上で対応しています。
マテリアリティの特定に際しては、マテリアリティ候補となる環境・社会に関する各種の課題について、事業への影響度及びステークホルダーの要請・期待の2軸で評価してマテリアリティ・マップの作成を行いました。これを基にESG統括委員会においてマテリアリティ候補を抽出し、それらに対するリスクと機会、主な取組みの検討を行った上で、経営会議及び取締役会においてマテリアリティ項目として決定しました。
このマテリアリティ項目のうち、事業への影響度(財務マテリアリティ)及びステークホルダーの要請・期待(インパクトマテリアリティ)のいずれかにおいて最も高い影響を有するとされたESG課題に関わる項目を特に重要視し、以下の4項目を抽出しました。これらの項目は各々に関係する委員会で取り扱われ、ESG統括委員会に集約されるとともに、経営会議または取締役会への報告等を通じてリスクと機会の監視・管理(ガバナンス)、識別・評価(リスク管理)を行っています。
イ. 気候変動への対応
気候変動対応は、地球の持続可能性において最重要課題の1つであると認識し、NGKグループビジョンを踏まえ併せて策定した「NGKグループ環境ビジョン」及び「カーボンニュートラル戦略ロードマップ」に基づき、事業活動を通じての2050年までのCO2排出ネットゼロを目指しています。具体的な活動として「環境行動5カ年計画」によって管理指標と年度ごとの達成目標を定めています。これらは、社長を委員長とするESG統括委員会で審議され、年1回以上、取締役会に報告されます。
ロ. 品質と製品の安全性の追求
お客様視点に立った信頼される品質を追求し、期待を超えた安心・信頼のある製品・サービスを安定的に供給することで、より良い社会づくりに貢献します。
このために、品質委員会において品質方針及び品質目標の決定改廃、市場における重大な品質不良の発生防止と万が一発生した場合の技術的対応等を取り扱い、委員会の審議を経て決定した事項のうち重要と判断されるもの、また年度の品質実績については、年1回以上取締役会に報告されます。
ハ. 人権の尊重
自社及びバリューチェーンにおける人権を尊重する取組みを展開することで、事業活動が影響を及ぼす全ての人々の人権が侵害されることのない社会づくりに貢献します。
このために、HR委員会において人権に関する基本方針の決定改廃、グループ会社を含めた人権に対する啓発活動や人権デューディリジェンスの実施、苦情処理と救済対応等を取り扱い、委員会の審議を経て決定した事項のうち重要と判断されるもの、また年度の実績については、年1回以上取締役会に報告されます。
ニ. 人材価値の向上
多様な経験・価値観を持った人材が活躍する豊かで活気ある職場環境を整備し、従業員一人ひとりが自律的に挑戦し高めあうことで、社会に新しい価値を提供していきます。
このために、HR委員会においてNGKグループ人的資本経営方針を策定し、これに基づく各種の人事施策を展開するとともに、長時間労働等の労働に関わる問題の把握を行います。委員会の審議を経て決定した事項のうち重要と判断されるもの、また年度の実績については、年1回以上取締役会に報告されます。
その他の当社がリスクと認識する項目全般については、
マテリアリティについては、当社ウェブサイトをご覧ください。
https://www.ngk.co.jp/sustainability/pdf/materiality_r0.pdf
(2) 戦略並びに指標及び目標
マテリアリティのうち特に重要なものとして抽出された項目については、各々以下の取組みを行っています。
① 気候変動への対応
バリューチェーン全体にカーボンニュートラルを働きかけ、CO2排出ネットゼロの事業活動を目指します。
データとデジタル技術の活用を通じてカーボンニュートラル関連製品の開発スピードを加速し、独自のセラミック技術を中核とした製品・サービスの開発・提供により、2050年までのカーボンニュートラル社会の実現に貢献します。
NGKグループは「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明しており、その枠組みに基づく開示のうち、戦略、並びに指標及び目標に関する部分は以下の通りです。
〔戦略〕
イ. 気候変動のリスクと機会
NGKグループの事業に関連する気候変動のリスクと機会及びその影響の大きさについて、時間軸とシナリオを設定して分析をしています。シナリオ分析は、複数の将来シナリオを想定した上で、各シナリオ下で気候関連のリスクと機会がNGKグループに与えうる影響を把握し、今後の戦略や対応の検討に活かすことを目的とした手法です。
(イ) 前提条件
(a) 時間軸 リスクと機会を検討するための時間軸として、短期・中期・長期を設定しました。
(b) シナリオ
カーボンニュートラルへの移行によるリスクと機会、物理的なリスクと機会がそれぞれ最大化すると考えられるシナリオとして、1.5℃シナリオと4℃シナリオを設定しました。
(ロ) 特に重要度の高いリスクと機会
各時間軸とシナリオにおいて、TCFDの分類に沿ってリスクと機会を特定しました。リスクと機会各々の財務影響の大きさは、全社のリスク評価基準を参考に定性的に評価を行った上で、一定の影響があると考えられ、シナリオに基づく定量的な検討が可能な一部の項目については、財務影響の定量化を実施しました。
なお、本シナリオ分析はNGKグループの業績の将来見通しではなく、各シナリオ下で気候変動によるリスクと機会がNGKグループに将来与えうる影響を分析し、今後の戦略や対応の検討に活かすためのものです。また、財務影響の試算において使用している情報は検討時点のものであり、不確実な要素や仮定を含んでいます。
(a) カーボンニュートラル社会への移行リスクと機会(1.5℃シナリオ)(主な項目のみ)
※1:IEA(国際エネルギー機関)のNet Zero by 2050(2021年版)シナリオ等のパラメーター(炭素価格、エネルギー単価、電源構成など)に基づき、将来の事業拡大等について一定の前提や仮定を置いた上で、エネルギー転換や省エネにかかるコストと、温室効果ガスに対する炭素価格を合わせて利益に対する影響額を概算し、財務影響としています。
※2:IEAのNet Zero by 2050(2021年版)シナリオ等に基づく、自動車市場、CCU/CCS市場、電力向け蓄電池市場の変化に基づき、当社シェア等について一定の前提や仮定を置いた上で、一部の製品を対象に現在と比較した売上高への影響額を概算し、財務影響としています。
(b) 気候変動の顕在化に伴う物理的リスクと機会(主に4℃シナリオ)
※3:米国Jupiter Intelligence社が開発したClimate Score Global(CSG)モデルでのシミュレーションにより、工場及び主要サプライヤーの位置情報に基づき、90mの解像度で河川洪水・高潮による浸水深の評価を行いました。評価から当社工場における資産の損失額・操業停止による損失額と主要サプライヤーの操業停止による当社の損失額を集計し、利益に与える影響額の期待値を算出しました。期待値は、水災による損失額と年当たりの水災発生確率から算出した指標です。
なお、損失額は浸水深に応じた一律の被害率に基づき概算したものであり、各拠点がある地域の防災対策等の詳細状況は反映しておりません。
ロ. 気候変動のリスクと機会を踏まえた戦略
シナリオ分析を通じて特定したリスクと機会に対して各々の影響度を認識した上で、社会や市場の動向を注視しながら、各項目について設定した対応戦略に沿って行動していきます。
移行リスクのうち、CO2排出に伴うリスクについては、「カーボンニュートラル戦略ロードマップ」に基づきCO2排出量ネットゼロに向けた取組みを推進することでリスクを低減していきます。
水災害リスクについては、比較的発生頻度の高い降雨に対してBCP(事業継続計画)の観点から土地の嵩上げ等の対応策をすでに講じています。それ以上の災害についても、人命を守ることを第一優先として壊滅的な被害が発生しないように対応策を取っています。今後も気候変動によるリスク低減のために、4℃シナリオのような最悪の事態の可能性も認識した上でリスク評価を継続するとともに、BCP等の対応策の強化に取り組んでいきます。
NGKグループはNGKグループビジョンにおいて、「独自のセラミック技術でカーボンニュートラルとデジタル社会に貢献する」ことをありたい姿として定め、2050年にこれらの分野における関連製品が売上高の80%を占めることを目指しています。
カーボンニュートラル社会の実現による事業機会について、今回のシナリオ分析では現在想定しうる一部の事業に対する定量的な財務影響を算定しました。NGKグループビジョンの実現に向けて今後もカーボンニュートラル及びデジタル社会関連の新製品の開発に努め、新たな価値を社会に提供し持続的な成長を目指します。
シナリオ分析については、参照した外部シナリオや各種のパラメーター等の追加や更新、新製品の開発状況に応じて適宜充実、深化させ、気候変動のリスクと機会が経営にもたらす影響を継続的に分析し、対応を検討していきます。
〔指標及び目標〕
「NGKグループ環境ビジョン」の達成に向けて、目標実現のための「カーボンニュートラル戦略ロードマップ」を策定しました。2050年の目標をグループ全体のCO2排出量ネットゼロとし、そこに至るまでのマイルストーンとして、2025年度に排出量55万トン(基準年2013年度比25%削減)、2030年度に同37万トン(同50%削減)を設定しています。
また「NGKグループ環境ビジョン」の実現に向け、2021~2025年度における環境活動の目標として、「第5期環境行動5カ年計画」を策定しました。2050年ネットゼロ、及びマイルストーンである2030年度の2013年度比50%削減の達成への進捗をわかりやすくすることが狙いです。また、再生可能エネルギーの利用拡大への取組みとして、グループ全体の電力使用量に対し、再生可能エネルギー利用率の目標を新たに設定したほか、カーボンニュートラル関連製品での登録数を増やす目標も定めました。
GHG排出量及びCO2排出量(Scope1、Scope2及びScope3)については、当社ウェブサイトで開示しております。
https://www.ngk.co.jp/sustainability/pdf/2023/environment-date2023.pdf
なお、(2) 戦略並びに指標及び目標 ① 気候変動への対応に記載された将来情報は、気候変動によるリスク及び機会への当社グループの戦略のレジリエンスを担保するため、信頼できる外部機関が策定したシナリオ及び将来予測数値を用いて想定値として算出し、ESG統括委員会の審議を経て経営会議・取締役会で報告されたものです。あくまでもシナリオに基づく想定値であり、実際の企業業績とは一致しません。
② 品質と製品の安全性の追求
〔戦略〕
当社グループは、エネルギー・エコロジー・エレクトロニクスの分野でグローバルにセラミックス製品を生産・販売しており、リスクとして、品質と製品の安全性に関わる重大な市場クレームや契約違反等、業務の不備によるブランド・レピュテーションの毀損、訴訟の提起等、一方で機会として、品質と製品の安全性を追求することによるブランド・レピュテーションや競争力の向上、及びビジネス機会の拡大と認識しております。そのため、経営トップの直接指導の下、
品質方針「品質を大切にし、お客さまと世の中に信頼され役立つ製品とサービスを提供する」
品質目標「一人ひとりが自律して業務品質の改善に取り組む」
を掲げて、品質経営部が各事業本部の品質活動をモニタリングするとともに、重要課題については品質会議を開催して迅速な解決を図るなど、品質と製品の安全性に関わるリスク低減を図っております。
品質活動は「お客様の信頼を高める活動」を軸とし、業務品質(お客様との約束を遵守するための仕組み)の改善と品質リスクの低減に注力して取り組んでおります。
業務品質の改善については、全社品質コンプライアンスプログラムを設定し、経営層による決意表明、規程・ルールの整備、教育の実施、監査及びモニタリング、防止活動、の各項目について継続して取組みを進めております。特に業務の無理・曖昧の防止とコミュニケーションの徹底を図ってきた結果、業務負荷や作業ルールの見直しと、実務現場やグループ会社等のフロントラインへの品質コンプライアンスの理解と浸透が進み、問題をオープンにする組織風土の醸成につながっております。
品質リスクの低減では、4つの品質活動をルール化するとともに守るべき6つの品質を定め、その考え方・やり方をQRE-P(Quality Risk Elimination - Process、製品の企画から量産に至る商品化プロセスで、より効果的に品質リスクを排除するための手順)に示して全社展開する活動を継続しております。さらに製品・サービスの安全性に関する活動の全社的なガイドラインを設定し、事業部門や開発部門が製品・サービスの安全性に関する活動を推進するためのベースといたしました。また、品質不具合を分析して仕事の進め方を改善する試みにより再発防止や未然防止を進めるとともに事業化前の開発の早い段階から研究開発部門と実施する品質リスクの検討の強化を進めております。
なお、2024年度の品質目標としては「マネジメントからフロントラインまで業務のムリ・ムダ・ムラを徹底議論し改善する」ことを定めております。
〔指標及び目標〕
品質と製品の安全性の追求に関する実施目標は以下の通りです。
・製品・サービスの重大事故件数:0件
③ 人権の尊重
〔戦略〕
国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、グループの事業活動が影響を及ぼす全ての人々の人権が侵害されることのないように「NGKグループ人権方針」を定めたほか、「英国現代奴隷法に関する声明」を開示、また「子どもの権利とビジネス原則」を支持し事業活動において子どもの権利を尊重し、子どもの権利の推進に向けた社会貢献活動等に取り組むことを宣言しています。
この「NGKグループ人権方針」に基づき、人権デューディリジェンスの仕組みを構築し、事業活動が人権に対して及ぼす負の影響を特定し防止・軽減する取組みを進めること、また事業活動が人権に対して負の影響を及ぼしたことが明らかになった場合や、及ぼしたことが疑われる場合は、関係者と誠実に対話し、適切かつ効果的な救済に取り組むこととしております。また、事業活動における人権の尊重への理解向上を目的とした研修にも取り組んでいます。
〔指標及び目標〕
人権の尊重に向けた取組みについての指標及び目標は以下の通りです。
※1 Responsible Business Alliance:製造業のサプライチェーンにおいて、安全な労働環境、労働者の保護、環境負荷等に
対する責任を促進するための基準を示し、その監査を実施する枠組み
※2 2024年度発行予定
④ 人材価値の向上
人材価値の向上に関わる戦略並びに指標及び目標については、次項(3) 人的資本に関する戦略並びに指標及び目標をご覧ください。
(3) 人的資本に関する戦略並びに指標及び目標
① 人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針
(NGKグループ人的資本経営方針)
当社グループは、NGKグループ理念の中で、挑戦し高めあう人材を私たちが目指すものの1つと位置付け、「社会に新しい価値を そして、幸せを」という私たちの使命の実現に取り組んでいます。また当社グループは、NGKグループビジョンの実現に向けて、「5つの変革」に取り組んでいます。5つの変革を成し遂げるためには、人材一人ひとりの活躍が不可欠です。採用や育成を通じて5つの変革に取り組む人材の充実を図ること、その人材が持てる力を十分に発揮できる環境を整えることを、当社グループの人的資本経営の基本とし、次の通り「人材育成方針」ならびに「社内環境整備方針」を定めます。
(イ) 人材育成方針
NGKグループは、5つの変革を実現するため、以下のような能力、マインドを持つ人材を育成していきます。
(ロ) 社内環境整備方針
NGKグループは、人材が持てる力を十分に発揮できる舞台として、以下のような職場環境をつくり上げていきます。
② 方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績
当社では、当社グループが求める人材を育成し、その人材が持てる力を発揮できるように、人材育成及び社内環境整備の達成状況を把握するための指標及び目標を設定しております。
なお、連結グループに属する全ての会社では行われていないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の指標に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。
(注)1.当社は、組織や所属社員の活性度状態を「仕事」「職場」「上司」など様々な要素から可視化しているサーベイである組織活性度調査を現在は年次で実施しております。50問から成る設問ごとに、スコアが1点~5点で示され、5点に近づくほど、その設問に対する社員の満足度が高いことを意味しております。目標の3.5以上とは所属社員の過半数が満足度4点以上である状態であります。
2.管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金差異についての実績は、
当社グループは、NGKグループビジョンの実現に影響を与える不確実性をリスクと捉え、グループのリスク課題を包括的に取り扱うためリスク統括委員会を設置しております。当委員会は年3回開催されその活動内容を年1回以上取締役会に報告しており、取締役会はその活動を監督しております。
リスク統括委員会では、内外環境の変化を踏まえたリスク分析・評価、管理すべき重要なリスクを特定すると共に、これらリスクへの対策及び実施状況の把握等のリスク管理プロセスの向上を図り、経営全体の持続性を強化しております。
上記プロセスを通じ、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクを以下のように認識しております。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月26日現在)において当社グループが判断したものであります。
(1) 事業運営におけるリスク
当社グループは、海外19ヵ国に36のグループ会社を展開し、うち18社において製造を行っております。各国・地域の政治や対日感情の安定、法律、規制、税制、インフラの整備、関税を含むインセンティブ等が各事業の前提条件となっております。当社は様々な観点から拠点を分散し、グローバルに代替可能な体制構築に取り組んでおりますが、デモ、テロ、戦争、感染症、自然災害等による社会的混乱などを含め、これらの諸条件に予期せぬ事象が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。
当社グループの主要な製品の需要動向、競争や収益環境に関するリスク認識につきましては以下の通りです。
① エンバイロメント事業
当事業の主力製品である自動車排ガス浄化用セラミックス製品(ハニセラム®、センサ製品群)は、当社製品を搭載する内燃機関自動車がEV(電気自動車)やFCV(燃料電池車)等の非内燃機関車に置き換わることや、あるいは消費者の価値観やビジネスモデルが変化することによって、需要が変動する可能性があります。当社グループでは、2030年段階において内燃機関車の市場はピークアウトしているものの、各国の排ガス規制の強化もあり、当社製品需要は引き続き一定の規模で推移すると予想しており、新製品や高機能品の開発、市場投入が必要不可欠とみております。しかしながら、内燃機関車の減少につながる変化が当社の想定を超えて進捗した場合や、強化された排ガス規制などの環境規制に対する不十分な取組みや対応の遅延がある場合には、期待する業績を達成できないリスクがあります。
加えて、重要性が高い中国市場においては、競合が台頭するリスクがあります。当社グループでは、環境規制を先取りした技術対応力や安定した供給力により競争力を強化してまいりますが、競合が当社グループの想定を上回る競争力を得た場合には、市場シェアの一部を喪失するリスクがあります。
また、産業機器関連製品については、リチウムイオン電池正極材及び電子部品向け焼成炉の成長が見込まれますが、競合が当社グループの想定を上回る競争力を得た場合には、市場シェアを喪失するリスクがあります。
当事業においては、環境規制の内容と時期、需要動向、競合他社の状況等を十分にモニタリングしておりますが、景況の悪化や規制時期の遅れ等、短期間で需要見通しが下方修正される場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼすリスクがあります。
② デジタルソサエティ事業
当事業は、半導体製造装置メーカー向けの部材、スマートフォン向け高性能SAWフィルター用複合ウエハー、データセンターに用いられる大容量HDDヘッド用のアクチュエーター、モーターの駆動制御や発電機などの電力変換を行うパワー半導体モジュール向け絶縁放熱回路基板、基地局で使用される高周波デバイス用セラミックパッケージ、自動車部品・家電・情報通信機器等のスイッチやコネクターに用いられるベリリウム銅展伸材を供給しております。
主力の半導体製造装置用製品の需要は半導体の需給状況や各国の規制、技術革新により大きく左右されます。当社グループは、各国の輸出規制並びに直接の顧客である半導体製造装置メーカーからの需要情報や半導体市場及び大手半導体メーカーの設備投資動向を踏まえて、都度、設備能力や人員・生産体制等を見直しておりますが、想定を上回る規模で需要が減少した場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼすリスクがあります。また、当社独自の技術対応力や製品供給力を高めることで業界トップのポジションを維持しておりますが、顧客ニーズへの対応遅れなどにより市場シェアを喪失する可能性があります。社会のデジタルシフトと共に半導体の物量は増大し、当該事業も中長期に成長すると見込んでおりますが、革新的な発明により半導体製造プロセスが大幅に変更された場合などにおいて、期待する成長水準を達成できない可能性があります。半導体に関する各国の輸出規制はより複雑化しており、当局への確認、対応の遅延などによる業績へのリスクがあります。こうした法規制の動向については、各事業本部への情報共有、必要な規程・マニュアルの整備により対応しております。
その他の製品群においては、最終消費財の販売動向や基地局・データセンターへの投資の動向等に大きく左右されることから、客先動向を注視した上で需要の変動に素早く対応できるよう適宜人員体制、生産体制等を見直しております。しかしながら、当社グループの想定を超えて大きく需要が減少する場合や、需要低迷が長期化する場合には、販売の急激な減少や過剰在庫の発生により業績及び財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。
当事業が属する半導体・電子部品業界は、技術革新やモデルチェンジのペースが速く、主要顧客のニーズに応じてタイムリーに新技術開発、製品投入が出来ない、もしくは競合メーカーが当社グループの想定を上回って伸長した場合には受注を失い、収益が大幅に減少するリスクがあります。
③ エネルギー&インダストリー事業
当事業は、電力貯蔵用NAS®電池(ナトリウム/硫黄電池)、電力絶縁用がいし及び機器類を供給しております。NAS®電池については、脱炭素に向けた世界的な潮流を受けて、再生可能エネルギー普及に伴う大容量・長時間用途の蓄電池のニーズが主に海外では顕在化しつつあり、将来需要が拡大する可能性があります。当事業では引き続き、NAS®電池の持つ優位性(大容量・長時間)をアピールすると共に、欧州などの有力企業とのパートナーシップ強化や政府の支援策等も活用し、ニーズの取り込みを図ってまいります。しかしながら、リチウムイオン電池などの競合製品の技術革新によりNAS®電池の持つ優位性が失われた場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼすリスクがあります。
がいしや機器類については、各国のエネルギー政策や電力会社の設備投資の動向に大きく左右されます。国内では、磁器製に対して長期性能に懸念があるものの、比較的安価で軽量なポリマー製がいしが採用される動きが一部であり、想定を上回って普及した場合には業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。 海外では競合企業の動向や各国の電力政策が影響し、収益が減少するリスクがあります。
このような事業環境を踏まえ、NGKグループビジョンにおいてカーボンニュートラルとデジタル社会を当社グループが取り組むべき社会課題と設定し、事業構成の転換に向けた取組みを進めております。
(2) 研究開発に関するリスク
当社グループは、創業以来強みとして培ってきたセラミックスの材料及び加工プロセス技術を核として、既存製品の高性能化のみならず有望テーマの探索にもインプットを継続しております。全社売上高に占める新製品(5年以内に事業化した製品)比率は30%を目標に、研究開発費合計は連結売上高の5%程度を目安として事業規模の拡大に対応して増加させております。
また、NGKグループビジョンでは、2030年までの10年間で総額3,000億円の研究開発費を確保し、その80%を「カーボンニュートラル(CN)」、「デジタルソサエティ(DS)」分野に配分し、その通過点となる2030年の目標としては、新製品・新規事業の売上高1,000億円を実現する「New Value 1000」を掲げました。目標達成に向けて2022年4月にマーケティングを主体とした「NV推進本部」を新設し、研究開発本部、製造技術本部と連携して新製品創出や事業化を推進しております。しかしながら、技術開発、製品開発には不確実要素が多く、また技術間競争も複雑化していることから、インプットが十分な成果に結びつかず業績に影響を及ぼすリスクがあります。
(3)人材におけるリスク
①人材確保・人材管理
当社グループは、NGKグループ理念の中で、挑戦し高めあう人材を私たちが目指すものの一つと位置づけ、2023年6月にNGKグループ人的資本経営方針を策定しました。この方針の下で目指すべき人材の継続的な確保・育成に向けて様々な施策を講じております。
特に注力するのは「DX人材」と「グローバル人材」の確保・育成であり、デジタル技術を集中的に学ぶ社内DX留学制度や資格取得推奨といった取組みや語学研修をはじめ、異文化理解を基礎としたコミュニケーション・マネジメント研修や、各国エリアスタディなどのセミナーを実施しており、今後も人材育成の仕組みや制度の充実を図ってまいります。また、従業員の挑戦をサポートする社内環境整備の取組みも進めております。
一方で、人材の流動化や雇用環境の変化等の社会変動において、優秀人材の獲得競争は激化しております。上記の施策を講じたとしても、求める人材の確保・育成が計画通りに進まなかった場合は、事業の遂行能力が向上しないことで、NGKグループビジョンやNew Value 1000といった事業目標を達成できず、業績及び財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。
②ダイバーシティ&インクルージョンへの対応
当社グループは、NGKグループ人的資本経営方針に示した求める人材像に合わせ、多様性確保に向けた人材育成方針や社内環境整備方針を定め、ダイバーシティ&インクルージョンを積極的に推進し、多様な人材が各々の能力を発揮して活躍できるよう努めております。具体的には、階層別教育やキャリア自律サポート、部門を超えたジョブローテーション制度等の人事施策を進め、また、新卒・キャリア採用を問わず幅広い人材の採用を実施し、個の多様性を育む取組みに注力しております。
しかしながら、人材の多様化が進まない場合は、人材の同質性が継続し既存の価値観から脱却できず、イノベーションが生まれないリスクがあります。またダイバーシティ&インクルージョンに消極的な企業と認識されることで、採用競争力低下や業績及び財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。
(4) 法令遵守、人権・安全、品質に関するリスク
① 法令などの遵守に関するリスク
当社グループは、他社との技術差別化により高い市場シェアを占める製品をグローバルに供給しており、国内外で競争法、輸出入関連法規、労働関連法規等の各種法令や外国公務員贈賄規制などの規制を遵守して事業活動を行っております。これらの法令・規制への違反や、人権の尊重、契約遵守等の社会的規範に反した行動があった場合には、処罰や訴訟の提起、社会的な制裁を受け、レピュテーションが低下し、更に事業収益にまで影響が及ぶおそれがあります。
そのため、NGKグループ企業行動指針及びNGKグループ行動規範に基づいた誠実な事業活動を行うことを最重要課題の一つとして位置付け、従業員への各種教育の実施やハンドブック配布による関連法規制の周知徹底とコンプライアンス意識の一層の向上に取り組んでおります。コンプライアンス活動を国際的な水準に照らし評価検証し、共通の理解と価値観に基づき継続的に改善する仕組み作りを行うため、「コンプライアンス活動基本要領」を制定しております。重要な不正事案や法令違反については、社外役員とコンプライアンスを担当する社内取締役から構成される経営倫理委員会で予防と監視に当たっております。
また、国内外で内部通報制度に関する規程を整備し、従業員からの相談・報告を受けるヘルプライン制度や、経営倫理委員会に直結する内部通報制度「ホットライン」を設置することにより、当社役員や従業員が関与する法令違反や社会的規範に反する行為等の発生可能性の低減を図っております。
② 人権・安全に関するリスク
当社グループは、従業員の労働災害や疾病・身体・メンタルヘルス問題のリスクに対し、安全衛生基本方針に基づき重大災害リスクの特定とリスクアセスメントによる未然防止対策強化を図ると共に、長時間労働者へのフォローや階層別メンタルケア教育にも力を入れております。従業員の健康増進にも力を入れており、当社は2024年3月に経済産業省と日本健康会議が共同で進める「健康経営優良法人」の認定を6年連続で受けました。
また、グループの事業活動にともない、グループ従業員のみならず、サプライチェーンや当社製品を通じて、当社の事業活動に関わる全ての人々の人権を侵害するリスクがあることを認識しております。当社グループでは、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」をはじめとする人権に関する国際規範を遵守し、「NGKグループ人権方針」を定めているほか、英国現代奴隷法に関する声明を提出し、従業員の理解を向上させるために、e-ラーニングや講演会による各種研修を通じて、人権侵害リスクの防止、軽減に努めております。しかしながら、当社グループの予想し得ない問題が発生した場合には、業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。
③ 品質と製品の安全性に関するリスク
当社グループは、エネルギー・エコロジー・エレクトロニクスの分野でグローバルにセラミックス製品を生産・販売しており、重大な市場クレームや契約違反等、業務の不備によるブランド・レピュテーションの毀損、訴訟の提起等の品質と製品の安全性に関わるリスクを認識しております。
当社グループは、「NGKグループ企業行動指針」に基づく品質方針の下、お客様の信頼を高める活動を軸とし、業務品質の改善と品質リスクの低減に注力して取り組んでいます。品質経営部が各事業本部の品質活動をモニタリングすると共に、重要課題については品質会議を開催して迅速な解決を図るなど、品質と製品の安全性に関わるリスク低減を行っております。
業務品質(お客様との約束を遵守するための仕組み)の改善では、2018年度から全社品質コンプライアンスプログラムの中で、経営層による決意表明、規程・ルールの整備、教育の実施、監査及びモニタリング、防止活動の各項目について継続して取組みを進めております。特に業務の無理・曖昧の防止とコミュニケーションの徹底を図ってきた結果、業務負荷や作業ルールの見直しと、実務現場やグループ会社等のフロントラインへの品質コンプライアンスの理解と浸透が進み、問題をオープンにする組織風土の醸成につながっております。
また、品質リスクの低減では、4つの品質活動をルール化するとともに守るべき6つの品質を定め、その考え方・やり方をQRE-P(Quality Risk Elimination - Process:製品の企画から量産に至る商品化プロセスで、より効果的に品質リスクを排除するための手順)に示して全社展開する活動を継続しております。また、2023年に定めた製品・サービスの安全性に関する活動の全社的なガイドラインをベースに各事業部門に適切なリスク評価の方法を構築するとともに教育を拡充して理解と浸透を推進しております。
しかしながら、当社グループが製造・販売する製品とサービスにおいて、予想し得ない品質問題が生じた場合には、業績に重大な影響を及ぼすリスクがあります。
(5) 情報システムのリスク
当社グループは、受注・販売、生産管理、会計、研究開発等の業務に広くITシステムを活用しております。また、働き方改革の実現に向けてグループ共通の情報通信システム(ICT)やデータプラットフォームを構築し、活用を促進しております。当社グループでは、NGKグループ情報セキュリティ方針に基づきITセキュリティ体制の構築や全体のセキュリティ向上に取り組んでおり、従業員に対しては情報セキュリティ教育を実施し、内部の情報資産の適正な管理・運用の徹底に努めております。しかしながら、外部からのサイバー攻撃や不正アクセス、想定外のシステム不具合やセキュリティ上の問題によりデータ処理の停止、データの盗難・破壊・改ざん・喪失等が発生した場合には、当社グループの社会的信用や業務の継続、経営成績及び財務状況に悪影響を及ぼすリスクがあります。
(6) 為替、資金及び資材調達のリスク
当社グループは、グローバルに製品の生産・販売を行っており、海外売上高比率は7割を超える水準にあります。為替レートの変動に対しては、需要地生産、現地通貨での資金調達、為替状況に応じた最適購買等の対策を実施すると共に、短期的な変動に対しては、先物為替予約などによりリスクヘッジしておりますが、円高は売上高・利益の減少要因となって業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。また、設備投資などの資金調達を行う場合には、地域により大きな金融危機などで資金調達が困難となり、当社グループの事業運営や業績及び財政状態に悪影響を及ぼすリスクがあります。
資材調達については、各地域における素材価格やエネルギーコスト、物流費の上昇によって製造・販売コストが増加し業績に悪影響を及ぼすほか、サプライチェーンの混乱や、本国・調達元の法規制の変化への対応が遅れることによる資材調達の遅延や顧客への出荷滞留等、当社グループの事業運営に悪影響を及ぼす可能性があります。素材価格やエネルギーコスト等の上昇に対しては適正な売価への反映、競争購買、設計見直しによるコストダウンなどに取り組んでいるほか、サプライチェーンについては、海外拠点先からも情報を入手して状態監視を行い、在庫管理や調達先の多様化を図る等リスク低減に努めております。しかしながら、特定の素材・設備の流通が滞り、過度の価格の上昇やサプライチェーンの混乱が起こる場合や、法令・規制に違反しレピュテーションが低下した場合には、当社グループの事業運営や業績及び財政状態に悪影響を及ぼすリスクがあります。
(7) 気候変動と災害のリスク
①気候変動に関するリスク
当社グループは、金融安定理事会により設置された「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明し、気候変動に関するリスク認識について「ガバナンス」「戦略」「リスクマネジメント」「指標と目標」の4項目に沿った形で、財務影響も含めて公表しています。具体的には、2〔サステナビリティに関する考え方及び取組〕の該当箇所、及び当社ホームページをご覧ください 。
https://www.ngk.co.jp/sustainability/environment-tcfd.html
一方、TCFDで想定したシナリオ以外の事象が発生した場合には、追加的費用が生じて業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。また、気候変動対応目標の未達により、顧客などのステークホルダーの評価が下がり、更にはブランド価値の毀損やビジネス機会の損失が生じるリスクがあります。
②大規模災害及び感染症に関するリスク
当社グループは国内外に拠点を有しており、温暖化に伴う海水面の上昇や台風の大型化、局地的な暴雨の頻発等による水害、大規模な地震や火災等の災害により操業困難な拠点が発生する可能性があります。
そのため、当社グループは、関連規程類の策定や訓練等を通じ、BCP(事業継続計画)をグループ全体で推進し、災害発生時の事業継続や早期復旧のため、主力事業の製造拠点の分散化や購買先の複数化、建物・設備の減災、従業員の安全確保等の各種対策に取り組んでおります。しかしながら、想定を超える事象によって主要製造拠点の生産設備に深刻な被害が発生した場合、また、工場が立地する地域のインフラ側に長期の供給支障が生じた場合などには相当期間、生産活動が停止し、業績及び財政状態に悪影響を及ぼすリスクがあります。
また、重大な感染症が発生・蔓延し、社員、サプライヤーや顧客に罹患者が出た場合や、顧客の操業が著しく低下した場合には、当社グループの製品の生産・販売に悪影響を及ぼすリスクがあります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 経営成績
当連結会計年度における世界経済は、米国においては、個人消費や雇用・所得環境を中心に底堅く推移した一方、中国では不動産市場や外需関連に弱さがみられ緩やかに減速傾向が続いたほか、欧州も金融引き締めや中国経済減速の影響を受けたことから、海外経済の回復ペースは鈍化いたしました。日本については、海外経済の影響を受けながらも、高水準の企業収益に支えられ緩やかに回復し、雇用・所得環境にも改善が見られました。
このような状況のもと、当社グループにおきましては、エンバイロメント事業では、中国経済の減速に伴いトラック販売台数が弱含んだものの、世界全体の乗用車販売台数が堅調であったことから、自動車関連製品の出荷は増加しました。デジタルソサエティ事業では、半導体投資やデータセンター投資の減少により、半導体製造装置用製品やハードディスクドライブ(HDD)用圧電マイクロアクチュエーター等の出荷が減少しました。エネルギー&インダストリー事業では、米国、台湾、豪州等のインフラ投資が活況で、がいしの出荷が増加しました。
これらの結果、当連結会計年度における売上高は、半導体製造装置用製品などの物量が減少したものの、自動車関連製品などの物量増加や、為替円安によるプラス効果から前期比3.5%増の5,789億13百万円となりました。利益面では、営業利益は為替円安も、原燃料価格高騰や研究開発費の増加が影響し、同0.5%減の663億97百万円となりました。経常利益は営業利益の減少や為替差損などにより同4.3%減の630億42百万円、親会社株主に帰属する当期純利益については、需要の減少により業績の悪化したパッケージ事業用資産に対し減損損失を計上したことなどから同26.3%減の405億62百万円となりました。
当社グループは、自己資本利益率(ROE)を主要な経営指標とし、資本効率を重視した経営を推進しております。関連性の高い投下資本利益率(NGK版ROIC)を管理指標に採用し、投下資本の代わりに事業資産(売掛債権、棚卸資産、固定資産)、税引後利益の代わりに事業部門の営業利益を用いることにより、事業部門が自ら目標管理できるようにしております。中長期の観点でROE10%以上の水準を意識し、持続的な企業価値の向上に資するよう事業リスクの変化に適合した資本政策を展開します。
当連結会計年度におけるROEは、親会社株主に帰属する当期純利益が減少したこと等から6.1%(前年同期比2.9ポイント悪化)となり、目標である10%以上の水準を下回りました。今後は資本効率の向上等を通して、ROEの改善・向上に努めてまいります。
セグメントの業績は次の通りであります。
〔エンバイロメント事業〕
当事業の売上高は、3,619億44百万円と前期に比して12.8%増加いたしました。
半導体等の部品供給不足の状況改善に伴う自動車生産の回復や、排ガス規制の強化により自動車関連製品の出荷が増加したほか、為替円安のプラス効果により増収となりました。
営業利益は、需要の増加、為替円安のプラス効果に加え、コストダウンの効果も加わり前期比25.3%増の635億64百万円となりました。
〔デジタルソサエティ事業〕
当事業の売上高は、1,381億74百万円と前期に比して15.3%減少いたしました。
半導体投資やデータセンター投資の抑制等に伴い、半導体製造装置用製品やハードディスクドライブ(HDD)用圧電マイクロアクチュエーター等の出荷が減少し、為替円安のプラス影響はあったものの減収となりました。
営業利益は、為替円安のプラス効果があったものの、出荷物量の減少に加え、減価償却費の増加などにより前期比87.0%減の22億84百万円となりました。
〔エネルギー&インダストリー事業〕
当事業の売上高は、808億42百万円と前期に比して4.0%増加いたしました。
がいしは、送電網強化や再エネ投資により、米国、台湾、豪州等で需要が増加した一方で、電力貯蔵用NAS®電池(ナトリウム/硫黄電池)及び産業機器関連製品は、前期並みの出荷が継続しました。為替円安のプラス効果も加わり、全体で増収となりました。
損益面では、がいしの需要増、為替円安のプラス効果により前期15億36百万円の営業損失から5億32百万円の営業利益に転じました。
生産、受注及び販売の実績は、次の通りであります。
①生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。
(注)1.購入品仕入実績については区分して記載することが困難なため、生産実績に含めて記載しております。
2.上記は、販売価格をもって表示しております。
3.セグメント間取引については、相殺消去しております。
②受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。
(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。
③販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。
(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。
(2) 財政状態
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比し9.6%増加し1兆1,275億76百万円となりました。
流動資産は、現金及び預金や棚卸資産などが増加したことから、前期比11.9%増の6,421億51百万円となりました。固定資産は、前期比6.6%増の4,854億25百万円となりました。
流動負債は、1年以内返済予定の長期借入金や契約負債などが増加したことから、前期比17.6%増の1,758億3百万円となりました。固定負債は、長期借入金が減少した一方、社債や繰延税金負債などが増加したことにより、同4.8%増の2,485億47百万円となりました。
純資産は、利益剰余金やその他有価証券評価差額金、為替換算調整勘定などが増加したことなどから、前期比9.5%増の7,032億25百万円となりました。
これらの結果、当連結会計年度末における自己資本比率は61.7%(前連結会計年度末61.7%)となり、1株当たり純資産は2,334.21円と、前期を259.55円上回りました。
セグメントごとの資産は、次の通りであります。
〔エンバイロメント事業〕
当事業の総資産は、売上債権や資金が増加したことなどにより前期比4.0%増加の4,979億33百万円となりました。
〔デジタルソサエティ事業〕
当事業の総資産は、棚卸資産が増加したほか、増産投資により有形固定資産が増加したことなどにより前期比5.2%増加の2,094億11百万円となりました。
〔エネルギー&インダストリー事業〕
当事業の総資産は、資金が増加したことなどにより前期比19.2%増加の1,105億78百万円となりました。
(3) キャッシュ・フロー
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、営業活動による991億59百万円の収入、投資活動による685億93百万円の支出、及び財務活動による361億23百万円の支出などにより、前期末に比し25億68百万円増加し、当期末残高は1,714億32百万円となりました。
〔営業活動によるキャッシュ・フロー〕
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、棚卸資産が増加しましたが、税金等調整前当期純利益561億75百万円に減価償却費を加え、合計では991億59百万円の収入となりました。前期との比較では、12億9百万円の収入増となりました。
〔投資活動によるキャッシュ・フロー〕
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、自動車関連製品や半導体製造装置用製品を中心とした設備投資に加え、有価証券の取得や定期預金の増加による支出もあり、合計で685億93百万円の支出となりました。前期との比較では、165億86百万円の支出増となりました。
〔財務活動によるキャッシュ・フロー〕
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、将来の設備投資やカーボンニュートラルへの取組みなどへ充当するため長期借入れ及び社債の発行を実施した一方、長期借入金の返済や配当金の支払い、自己株式の取得などによる支出から、合計で361億23百万円の支出となりました。前期との比較では、15億54百万円の支出増となりました。
資本の財源及び資金の流動性について、当社グループの運転資金需要のうち主なものは原材料の購入費用、労務費等の製造費や販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資等によるものであります。当社グループは、事業運営上必要な資金の調達について、調達手段の多様化を図ることで、低コストかつ安定的に資金を確保するよう努めております。また、グループ各社における余剰資金の一元管理を図り、資金効率の向上と金融費用の削減を目的として、国内外でCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入しております。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成しております。連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 [連結財務諸表等](1)[連結財務諸表] [注記事項] (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
該当事項はありません。
当社グループは、研究開発を重要な経営課題のひとつとし、ファインセラミックスを中心とした材料技術とプロセス技術とをベースに、高付加価値、高機能な新製品の提供を目指し、研究開発に積極的に資源投入しております。
推進体制としては、本社部門では、マーケティングを主体とした「NV推進本部」、差異化技術を強みとする「研究開発本部」、モノづくりを強みとする「製造技術本部」の3本部が連携して、「研究開発」から「商品開花」へのスピードを高めていく体制を取っています。また、事業本部や子会社では、本社部門とも連携しながら、商品化・事業化に近い研究開発を中心に進めています。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は
〔エンバイロメント事業〕
エンバイロメント事業では、エンジン排ガス用NOxセンサーやガソリン・パティキュレート・フィルター(GPF)の商品開発、及び自動車排ガス浄化用触媒担体、ディーゼル・パティキュレート・フィルター(DPF)の生産技術改善等の研究開発に取り組んでおります。
なお、当事業に係る研究開発費は
〔デジタルソサエティ事業〕
デジタルソサエティ事業では、半導体製造装置の高機能化に対応するセラミック部品及びモジュール、圧電セラミックス技術をコアとした各種応用デバイス、SAWフィルタ用複合ウエハー、情報通信用各種セラミックパッケージ、EV他向けのパワーモジュール用絶縁放熱回路基板、自動車・産業機器・家電用コネクタ、リレー、摺動部品用などのベリリウム銅及び非ベリリウム銅製品等の研究に取り組んでおります。
なお、当事業に係る研究開発費は
〔エネルギー&インダストリー事業〕
エネルギー&インダストリー事業では、電力貯蔵用NAS®電池に加え、がいし製品及び配電用機器、一般産業用セラミックス製品及び機器装置の商品開発や性能向上に取り組んでおります。
なお、当事業に係る研究開発費は
〔本社部門〕
本社部門では、NV推進本部、研究開発本部、製造技術本部の3本部が連携して、商品化・事業化へのスピードを高めていく体制を取っています。
NV推進本部は、潜在顧客の開拓や市場や顧客のニーズを研究開発にフィードバックすること、研究開発本部は、中・長期にわたるセラミックス基礎技術の創出・育成と新商品の種を生み出すこと、製造技術本部は、試作・量産技術などを用いてモノづくりの面から研究開発を支援することを役割としています。
また、当連結会計年度における研究開発テーマとして、DAC(Direct Air Capture)用セラミック担体、CO2分離用DDR型ゼオライト膜、亜鉛二次電池「ZNB®」等があります。
なお、本社部門に係る研究開発費は19,100百万円であります。