当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)長期ビジョン「GROUP VISION 2030」について
2021年5月に長期ビジョン「GROUP VISION 2030」を策定、公表しました。将来の長期的な経営環境について、新型コロナウイルスのパンデミックや急激なデジタル化の加速、脱炭素社会の進展、生活スタイルの多様化など、「VUCA※」といわれる不確実で先が読みにくい時代が続くものと認識しています。このような環境認識のもと、サステナブルな成長を実現するため、従来型の積み上げ型による計画ではなく、バックキャスト発想で10年後の当社グループのありたい姿を見定め、長期ビジョン「GROUP VISION 2030」の策定と理念体系の再整理を行いました。
※Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をつなげた言葉で、予測不可能な社会経済環境を指す。
① 長期ビジョンスローガン「WE ARE GREEN」について
コーポレートカラーであるグリーンを基調に、当社グループの事業や人財の多様性をグラデーションで表し、多様なグリーンの力で、2030年にありたい姿を実現していく姿勢を表現しています。グリーンは環境への取り組みやサステナビリティの象徴であるとともに、当社グループがめざす「誰もが自分らしく、いきいきと輝ける未来」の象徴でもあります。「WE ARE GREEN」を旗印に、多様なグリーンの力を融合させ、魅力あふれる多彩なライフスタイルを創造していきます。
② 理念体系
当社グループの成り立ちを踏まえて理念体系を再定義し、「ありたい姿」、「社会との約束」、「創業の精神」を規定しております。
ありたい姿は、「価値を創造し続ける企業グループへ」を継続して掲げます。そして、「魅力あふれる多彩なライフスタイルの創造を通じて、誰もが自分らしく、いきいきと輝ける未来を実現すること」が、社会的使命(ミッション)です。
社会との約束では、6つのステークホルダーへの約束を定義しました。当社グループは、あらゆるステークホルダーの満足度の総和が企業価値になると考えています。
③ マテリアリティ
ありたい姿で規定した「誰もが自分らしく、いきいきと輝ける未来の実現」に向け、「個人」「社会」「環境」それぞれの未来の理想像を描き、それらを実現するための4つの取り組みテーマ「多彩なライフスタイルをつくる」、「ウェルビーイングな街と暮らしをつくる」、「サステナブルな環境をつくる」、「デジタル時代の価値をつくる」をマテリアリティとして定めています。
上記の4つの事業基盤に関するマテリアリティに加え、「多様な人財が活きる組織風土をつくる」、「成長を加速するガバナンスをつくる」の経営基盤に関するマテリアリティの2つを設定し、当社グループがめざす未来を実現するために、6つのマテリアリティに取り組んでまいります。
④ 「GROUP VISION 2030」の位置づけ
「GROUP VISION 2030」策定時の課題として4点を認識しております。順調な投資によるBS拡充の一方、新型コロナウイルス感染拡大の影響により収益水準が低下した事業もあり、「BSマネジメントによる効率性向上」と、「強固な事業ポートフォリオ構築」が課題です。管理運営等の人手に頼った事業では、人手不足等の影響に左右されにくい体質へ転換するため、「労働集約型からの脱却」を進めることや、デジタル化など事業の高度化、複雑化への対応が急務であり、「自前主義の脱却、人財育成」に取り組むことも重要な課題です。
4つの課題認識を踏まえ、2030年までの10年間のうち、前半期を「再構築フェーズ」として、アフターコロナの再成長に向けた稼ぐ力と効率性向上への取り組み期間とします。後半期では「強靭化フェーズ」として、新領域での事業育成など強固な事業基盤の確立を目指し、その後のサステナブルな成長につなげてまいります。
(2)長期経営方針について
「GROUP VISION 2030」では、現状の課題認識を踏まえ、長期視点であらゆる事業を見直すとともに、経営の羅針盤となる考え方を明確化することで、サステナブルな成長を実現してまいります。
幅広いアセット、豊富なお客さま接点など、グループの特色を強みに変えるため、全社方針として、「環境経営」と「DX」に取り組み、また、関与アセット拡大モデルの進化のため、知的資産の活用とパートナー共創を進め、強固で独自性ある事業ポートフォリオを構築します。ROE向上、EPS成長、ひいては株主価値・企業価値の向上を実現します。
① 全社方針
イ.環境経営
環境ビジョンに基づき、脱炭素社会、循環型社会の実現に向けた「クリーンエネルギー普及など、すべての事業を通じた環境負荷低減」と、「環境に寄与する快適な街と暮らしの創造」に取り組みます。
気候変動に関する目標については、自社のCO2排出については2025年カーボンマイナスへの貢献を実現します。カーボンマイナスについては、当社グループの強みである再生可能エネルギー事業によるCO2削減量が自社のCO2排出量を上回ることでグループ全体の2025年度の実現をめざす、当社独自の目標となっております。また、サプライチェーンのスコープ3まで含めたCO2については、科学的根拠に基づく削減目標のSBT1.5℃の認定を取得し2030年に実現、2050年ネットゼロエミッション達成をめざします。2100年に気候変動を1.5℃に抑える「1.5℃目標」は、パリ協定において「努力目標」とされるハードルの高い目標設定ですが、強い決意を持って取り組み、環境の取組みについては業界をリードしていきたいと考えております。
ロ.DX
もう一つの全社方針の「DX」では、3つの施策を推進します。
業務フローの電子化・業務自動化など「省力化推進による創造的業務への転換」、オンラインとオフラインの融合(いわゆるOMO)の推進など「顧客接点の高度化による感動体験の創出」、自社開発ツールやサービスモデルの提供など「知的資産活用による新しい価値創造」を通じて、デジタル活用による事業の変革に取り組みます。
当社グループは多くのBtoC事業を手掛けていることから豊富なお客さま接点を有しており、DXに取り組むことで新たな付加価値を提供できるものと考えております。BtoC事業を強みに変革するためにDXを推進いたします。
② 目標指標
2030年度の目標指標は、マテリアリティごとにそれぞれのKPIを定めております。
また財務指標としては、2030年度のありたい姿として、ROE10%以上、ROA5%以上、D/Eレシオ2.0倍以下、営業利益1,500億円以上、当期純利益750億円以上を参考指標として掲げました。なお、2030年度のありたい姿の具現化に向けて、「GROUP VISION 2030」に沿った中期経営計画を策定しています。
(3)「中期経営計画2025」について
2022年5月に2025年度を目標年度とする「中期経営計画2025」を策定、公表いたしました。
本計画は、長期経営方針における「再構築フェーズ」と位置付け、長期経営方針で定めた全社方針および事業方針に従い、アフターコロナの再成長に向けた稼ぐ力と効率性の向上を推進し、強固で独自性ある事業ポートフォリオの構築、ありたい姿の実現をめざします。
①中期経営計画2025の概要
長期経営方針で定めた全社方針「環境経営」「DX」を通じた独自性のある価値創出を図ります。資産活用型ビジネス(都市開発事業/戦略投資事業)では、「資金の効率的投資や共創型開発等を通じた資産効率性の向上」、人財活用型ビジネス(管理運営事業/不動産流通事業)では、「労働集約型からの脱却と知的資産の有効活用による生産性の向上」をそれぞれ推進しつつ、DXを通じてグループのサービスをつなぐことで新たな収益モデルの確立、環境を起点とした事業機会の拡大を図り、グループの特色を強みに変えてまいります。
②経営基盤の強化
長期ビジョン「GROUP VISION 2030」の達成に向けた経営基盤の強化を着実に推進いたします。財務資本戦略では、最適な財務資本構成のもと効率性を意識した利益成長の実現に向けた施策を実施していきます。人財・組織風土では、多様な人財が活躍できる組織づくりや健康経営の促進などによる働きがい・働きやすさの向上に加え、サプライチェーンの人権配慮にも取り組みます。ガバナンスでは、公正かつ透明性の高いガバナンス体制の構築に向けて、役員報酬制度の見直しや指名・報酬委員会の独立性強化などを推進します。
③事業ポートフォリオマネジメント
強固で独自性のある事業ポートフォリオの構築に向け、定量評価と定性評価の2軸で主要事業を評価し、各事業の方向性を「推進」「修正して推進」「抜本的再構築」に整理いたしました。「抜本的な再構築」と位置付けたハンズ事業は新しいパートナーへ株式を譲渡、レジャー事業は、TCFDシナリオなども踏まえ、アセットライト化を推進いたします。「修正して推進」とのボーダーに配置しているヘルスケア事業のフィットネス事業は、コロナ後の会員数回復は限定的となる想定のもと、店舗事業を中心に抜本的な再構築を進めます。商業施設事業は、EC化の進展に伴い、都心施設を中心に体験型消費・共感型消費に対応する施設への転換や、資産ポートフォリオの入れ替えを推進していく方針です。
※上記は中期経営計画策定時のものです。2024年3月期末までの進捗状況については、P22をご参照下さい)
④2025年度の目標指標
マテリアリティに基づき、財務・非財務を統合した目標指標を定めております。2025年度の財務指標は、効率性指標としてROE9%、ROA4%、EPS90円以上、利益目標として営業利益1,200億円、当期純利益650億円、財務健全性としてD/Eレシオ2.2倍以下、EBITDA倍率10倍以下の達成をめざします。
※上記は中期経営計画策定時のものです。2024年3月期末までの進捗状況については、P21をご参照下さい)
⑤キャピタルアロケーション
2025年度末のD/Eレシオは2.2倍以下を前提として、ネット投資額は5,700億円の計画としています。グロス投資額は2兆2,000億円、そのうち2兆円を資産活用型の都市開発および戦略投資事業に投下する計画です。資産活用型事業の期待リターン目線として、保有型事業ではNOI利回り5.0%前後、回転型事業ではIRR6.5%前後を目指します。なお、記載の投資額は2021年度~2025年度の5年累計の数値です。
(4)経営環境及び対処すべき課題
資産活用型ビジネスの都市開発事業及び戦略投資事業では、効率的投資や共創型開発等により資産効率性の向上を図りつつ、当社グループの強みである幅広いアセットの活用、事業プロデュース力を活かした施策を展開いたします。人財活用型ビジネスの管理運営事業及び不動産流通事業では、労働集約型からの脱却、知的資産の有効活用による生産性向上を図りつつ、当社グループの強みである豊富なお客さまとの接点、人財と運営ノウハウを活用した事業拡大を推し進めてまいります。
また、事業環境認識について、長期経営方針で示した長期的な環境認識の視点に加え、コロナ禍での影響も加味した事業環境の変化として、「脱炭素化の加速/環境課題の多様化」、「デジタル化の加速」、「金融・経済の動向」、「ライフスタイルの多様化」の4点に着目しております。
① 都市開発事業セグメント
都市開発事業セグメントでは、独自性ある施設づくりと事業推進力、再開発・エリアマネジメントのノウハウ、総合デベロッパーの強みを活かし、まちのにぎわいを創出して、社会課題や地域課題の解決に貢献する「再開発事業や複合開発の強化」と、ライフスタイルの変化をとらえた「CX(カスタマー・エクスペリエンス)を高める都市ライフの提案」を推進します。
② 戦略投資事業セグメント
戦略投資事業セグメントでは、既に1GW超の発電能力を有する再生可能エネルギー事業、業界トップクラスのREIT・私募ファンド運用資産額、海外における自社開発の実績とノウハウを活かし、エネルギー政策、産業構造の変化なども踏まえ、「再生可能エネルギー事業の拡大」、「物流・産業施設の高度化」、「投資領域および規模の拡大」を推進します。
③ 管理運営事業セグメント
管理運営事業セグメントでは、業界トップクラスの管理戸数と幅広い管理領域、専門性の高い人財と運営ノウハウ、豊富なお客さま接点・地域接点を活かし、デジタル基盤整備による「管理業のソリューション提供型モデルへの進化」、顧客体験価値向上に取り組みながら「新たなウェルネス事業モデルの構築」を推進し、労働集約型から知的資産集約型への転換を図ります。
④ 不動産流通事業セグメント
不動産流通事業セグメントでは、高いブランド力と豊富なお客さま接点、豊富な不動産流通情報と情報加工力、多様なニーズに対するオーナー提案力を活かし、情報の最有効活用・提案力の強化やオペレーションの効率化などを進め「情報価値の変化を見据えた不動産仲介事業モデルの進化」、DXによる生産性向上と付加価値提案強化により「賃貸住宅サービス事業の規模拡大および効率性向上」を推進いたします。
(5)中期経営計画の進捗状況
①中期経営計画の進捗状況(財務目標)
2024年3月期は、アセット売却や売買仲介の好調、旺盛なインバウンド需要の取込みによるホテル事業の好調等により、中期経営計画の最終年度である2026年3月期の効率性・利益・財務健全性の財務目標を2年前倒しで達成することができました。
2025年3月期は、インフレ進行や国内金利上昇懸念等、不透明な事業環境下ではあるものの、引き続き不動産売買・分譲住宅マーケットの好調を見込み、売上・各利益共に過去最高を更新する計画です。
ROEは、2024年3月期は9.6%に改善し、2025年3月期についても9.0%となる計画です。
次期中期経営計画については、初年度を2026年3月期に1年前倒し、2025年5月に公表予定です。
②事業ポートフォリオマネジメントの進捗状況
2023年3月期までに抜本的な再構築が必要と位置付けた事業の構造改革が完了しておりますが、2024年3月期においては、「ホテル事業」「レジャー事業」は、旺盛な内外需要を取り込み、大幅に収益が改善しました。
今後は左上と右下に位置する「修正して推進」と位置付けた事業を中心として、引き続き「稼ぐ力と効率性の向上」を主眼に各事業の変革と成長を進めていきます。
③企業価値・市場評価向上に向けた取り組み
企業価値・市場評価の向上に向けて、ROEについては各事業において、下図記載の取組みを推進し、稼ぐ力と効率性の向上を図り、株主資本コストを上回る水準を継続的に達成してまいります。
また、PER向上に向けて、中長期にわたる成長を持続していくために、「長期経営方針」で掲げた「環境経営」「DX」などの取り組みを推進していくとともに、株主・投資家の皆さまに、当社グループの成長への期待を一層抱いて頂けるよう、成長への確かな道筋を、次期中期経営計画においてお示しすべく、計画の策定を進めてまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ戦略
当社グループは、サステナビリティビジョンおよびサステナビリティ方針を策定しています。事業活動を通じて社会課題を解決し、ステークホルダーとともに、サステナブルな社会と成長をめざします。2021年度に策定した長期ビジョン「GROUP VISION 2030」においては、グループの理念体系である“ありたい姿「価値を創造する企業グループへ」”の実現に向けて非財務の取り組みを重要な経営課題と位置づけ、継続的な強化を行いながら、持続的な企業価値向上を図り、次の世代、さらに次の世代を見据え、美しく豊かな環境の形成と、長く愛され続けるまちづくりを実現していきます。
また、当社は国連グローバル・コンパクトを支持し、「人権」「労働」「環境」「腐敗防止」からなる10原則に基づき責任ある経営を推進しており、「環境ビジョン」や「東急不動産ホールディングスグループ人権方針」(以下、人権方針)および「東急不動産ホールディングスグループサステナブル調達方針」(以下、サステナブル調達方針)を定めています。
<サステナビリティビジョン・サステナビリティ方針>
<環境ビジョン>
・人権方針
URL https://sustainability-cms-tokyu-s3.s3-ap-northeast-
1.amazonaws.com/uploads/response_file/file/102/human_rights_policy_J.pdf
・サステナブル調達方針
URL https://tokyu-fudosan-hd-
csr.disclosure.site/img/uploads/response_file/file/103/procurement_policy_J.pdf
①ガバナンス
環境・社会課題に対する迅速な意思決定に向け、健全で透明性のあるガバナンス体制の構築を進めています。全社横断的な対応を図るため、代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」および「リスクマネジメント委員会」を設置しており、年に2回定例会議を開催しています。各委員会では、自社のみならずサプライチェーンおよびバリューチェーン全体において、気候変動をはじめとした環境課題、人権・DE&Iを含めた社会課題、コンプライアンスなどの重要課題について、方針(※)・目標(KPI)・行動計画を策定し、機会とリスクの特定・評価・計画立案・実績確認を行ない、審議結果は取締役会に報告しています。
取締役会では、上記の重要課題について、各委員会の報告を受けて業務執行内容の監督を行っています。
取締役の選定に際しては「環境・サステナビリティ」を含む7つの専門性と経験が考慮されています。また、取締役の報酬にはESGへの取り組みが勘案されています。
(※)サプライヤーと協働し、環境課題への対応、地域住民・先住民族の権利や強制労働・児童労働などの人
権リスクの未然防止・軽減を企図する方針。「人権方針」、「サステナブル調達方針」、「生物多様性
方針」など。
<体制図>
②戦略
長期ビジョン「GROUP VISION 2030」の策定にあたり、重要な社会課題を抽出し、経営陣とステークホルダーの意向を踏まえ、6つのマテリアリティを特定しました。(詳細はP12を参照)各マテリアリティは機会とリスクを整理し、2030年に目指す姿を定め、事業活動を通じて対応を行っています。
また、自らの事業だけでなく、サプライチェーンおよびバリューチェーン全体における、テーマに沿った施策の実行によりお客さまや社会に多様な価値を創出することで、あらゆるステークホルダーの満足度向上を図り、サステナブルな社会や当社グループの価値向上をめざします。
<価値創造への取り組みテーマ(マテリアリティ)の機会とリスク>
<価値創造プロセス>
特に、マテリアリティのひとつである「サステナブルな環境をつくる」は、長期経営方針における全社方針「環境経営」において、「脱炭素社会」「循環型社会」「生物多様性」の3つを環境重点課題とし、注力して取り組んでいます。
<3つの環境重点課題>
さらに、「多様な人財が活きる組織風土をつくる」は、人的資本経営による人財戦略を推進することで、グループの価値の最大化をめざしています。また人権を尊重し、人権デュー・ディリジェンスを実施することで人権リスクの未然防止と軽減に努めています。
③リスク管理
気候変動リスクを含む8つの個別リスクを重要性の高いリスクとして認識し、リスクマネジメント委員会において、グループ各社が担うリスクマネジメントを統括的に管理し、取締役会が監督しています。また、長期ビジョン「GROUP VISION 2030」で定めた6つのマテリアリティに関連する重要リスクを特定し、「リスク管理基本規程」に基づき個別リスクごとの主管部署を定め、当該部署においてグループにおけるリスク管理体制および運用状況を統括しています。(詳細は
サステナビリティ委員会では、環境や社会課題などのサステナビリティに関する重要な課題について一体的に管理し、取締役会が監督しています。
(気候変動リスク)
サプライチェーン全体における現行および新規の法規制をはじめとする移行リスク、および気候変動の進行による物理リスクの影響把握、ならびに各事業における戦略への反映を行っています。
(人権および調達リスク)
人権方針およびサステナブル調達方針に基づき、自社およびサプライチェーンを含めたステークホルダーにおける人権リスク評価を行い、強制労働・児童労働などを重要な人権課題として特定しました。中でも、主に建設会社を重要なステークホルダーと捉え、サプライチェーンにおける優先すべき人権課題の解決に向け、人権デュー・ディリジェンスを実施しています。
<人権リスクマップ>
(※1)お客さまに対するリスク:接客サービス利用時における差別、広告宣伝等の表現による差別
(※2)従業員に対するリスク:国籍、人種、宗教、思想信条、性別、年齢、性的指向・性自認、障がいの有無などに基づく差別
(生物多様性・自然関連課題)
バリューチェーンにおける地域および関わっている自然の特性を踏まえ、物理・移行リスクと機会の影響把握、ならびに各事業における戦略への反映を行っています。
④指標と目標
長期ビジョン「GROUP VISION 2030」において、マテリアリティごとに2030年度のKPI目標を設定しています。財務および非財務KPI目標の双方達成に向け、進捗状況のモニタリングを行い、PDCAサイクルを回すとともにグループ横断で取り組みを進めています。
<マテリアリティと主なKPI目標>
※2023年度の実績は、第三者検証取得前の実績も含まれており、概算値になります。
(2)気候変動および生物多様性・自然関連課題への対応(TCFD提言およびTNFD提言への取組)
当社グループでは、環境への取り組みを企業価値向上につなげるため、長期経営方針において「環境経営」を全社方針に掲げ 、脱炭素社会の実現と環境に寄与するライフスタイル創造に取り組みます。気候変動や生物多様性をはじめとした自然関連課題は、当社グループの事業活動にとってリスクであると同時に、新たな事業機会であると考えています。
「気候変動」では、気候関連財務情報開示の重要性を鑑み、当社は2019年3月にTCFD提言に賛同し、TCFDの取り組みについて議論する国内組織である「TCFDコンソーシアム」にも参加しています。
また「生物多様性・自然関連課題」では、事業における自然資本に関わる依存・インパクト、リスクと機会について把握し開示を行うため、2023年6月から「TNFDフォーラム」に参加し、2023年8月に国内不動産業で初めて自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)の開示(フレームワークβ版に準拠)を行いました。2024年1月には、TNFDより2023年9月に発表された「TNFD最終提言 v1.0」を参照し第2版を開示しています 。
①ガバナンス
②戦略
1)気候変動
気候変動課題についてはTCFD提言に沿い、当社グループの幅広い事業領域において気候変動の重要課題を認識し、3つのシナリオ(1.5℃、3℃、4℃)による分析を通じて機会とリスクを特定しています。また、事業戦略および財務計画への影響を把握することで重要度の評価を行い、2023年度にはTCFDなどのガイダンスに沿った「脱炭素社会への移行計画」を策定。各事業における対応策への反映を図っています。
東急不動産㈱においては2019年に不動産業で初めて RE100(※1)に加盟し、2024年に国内事業会社(※2)で初めてRE100を達成(※3)しました。その他、ZEB(Net Zero Energy Building)やZEH(Net Zero Energy House)の推進、建物環境認証の取得、インターナル・カーボン・プライシング(社内炭素税)の導入、再生可能エネルギー事業の拡大、グリーン資金調達などを実施しています。
※TCFD提言に対応した情報開示 https://tokyu-fudosan-hd-csr.disclosure.site/ja/environment/tcfd
※脱炭素社会への移行計画
https://tokyu-fudosan-hd-csr.disclosure.site/ja/environment/transition-plan
(※1)世界で影響力のある企業や団体が、遅くとも2050年までに、自らの事業で使用する電力を再生可能エネルギー100%化することを目指す国際的イニシアチブ
(※2)金融機関を除きます。
(※3)RE100が認めるグリーンガスが国内市場に存在しないため、コジェネレーション自家発電による電力を除きます。
<脱炭素社会実現に向けたロードマップ>
※「脱炭素社会への移行計画」(2023年7月策定)より抜粋。
<気候変動の重要課題>
<気候変動のシナリオ分析>
気候変動シナリオ分析の対象事業:都市事業、レジャー事業、住宅事業、再生可能エネルギー事業
目標期間:中期(2030年)、長期(2050年)
※気候変動リスクと機会の財務影響の詳細はHPを確認ください。
URL
2)生物多様性・自然関連課題
当社グループは、地域特性を踏まえたネイチャーポジティブへの貢献を掲げ、都市においては、都市に点在する緑をつなぐ人と自然に配慮した緑化、地方においては、生態系サービスとの共存を取り組み目標として、不動産開発・運営管理を行っています。
2011年に策定した生物多様性方針を、これまでの当社グループの環境配慮と自然との共生の歩みを踏まえ2023年8月に改定し、また、生物多様性・自然関連課題についてはTNFD提言に沿い、LEAPアプローチを活用した分析により機会とリスクを特定しました。
(ⅰ)当社グループ全体の自然への依存とインパクトの概観
TNFDの分類を参照し、事業・バリューチェーン段階別に依存・インパクトの内容と定性的な重要性についてその概要を検討しました。UNEP(国連環境計画)が開発したツールであるENCOREやSBT for Natureのツールにおける、セクター別レーティングを参考にしています。
(インパクト)
・不動産開発・運営時の土地改変・占有などの面で「陸域生態系の利用」が特に高い。
・GHG排出や廃棄物排出、操業段階での水使用、外来種導入なども高い。
(依存)
・不動産開発・運営時の水資源、建材などの供給サービスのほか、景観の向上・癒し等の文化的サービスが高い。
・ホテルやレジャー施設では、バリューチェーン上流の食材等の生産段階で、水供給や花粉媒介、気候調整などが特に高い。
※検討内容の詳細はHPを確認ください。
URL
(ⅱ)当社グループの保有・運営物件における優先地域の検討
バリューチェーンの中でも、開発から運営段階における自然のかかわりの重要性が特に高いと考えられるため、当社グループが保有・運営する主要267拠点(オフィス・商業施設、ホテル、レジャー施設、再生可能エネルギー発電施設など)を対象に、生態系の十全性・生物多様性の重要性、水ストレスに関連する各指標を分析し、その結果、「広域渋谷圏(※)」と「リゾート施設等14地域」を優先地域としました。
<優先地域の検討>
(※)広域渋谷圏:東急グループの渋谷まちづくり戦略において定めた渋谷駅半径2.5kmのエリアを指しており、
当社グループとして広域渋谷圏を優先地域と定めています 。
(ⅲ)優先地域「広域渋谷圏」における自然関連の依存・インパクトおよびリスク・機会
(ⅲ-ア)バリューチェーンにおける自然への依存・インパクト
建設資材の調達段階では建材・木材等の資源に依存し、インパクトを与えています。不動産の開発・運営段階では、土地改変・占有をはじめとしたネガティブインパクトを与える可能性がある一方ヒートアイランド現象や災害緩和といった調整サービス(※1)、癒しやストレス緩和、レクリエーションなどの文化的サービス(※2)の観点で自然に依存しています。
(※1)調整サービス:気候調整や局所災害の緩和、土壌侵食の抑制、有害生物や病気を生態系内で抑制する効果など、生物多様性により環境を制御するサービス。
(※2)文化的サービス:人間が自然にふれることで得られる、審美的、精神的、心理的な面などで影響を受ける文化的なサービス。
<バリューチェーンにおける自然への依存・インパクト> 太字は特に重要と考えられる依存・インパクト
(*)建物緑化によるインパクトの定量評価
依存・インパクトのうち、土地利用・建物緑化による自然へのインパクトを、㈱シンク・ネイチャーの分析ツールを用いて定量分析した結果、広域渋谷圏における物件建設前後の生物多様性再生効果が、2012年度以降の物件からプラスとなっていることが分かりました。近年竣工物件における、都市開発諸制度等による緑地面積の確保や、植栽樹種での在来種選定など、緑化の量と質の確保に向けた取り組みの成果が表れ、当社グループのまちづくりがネイチャーポジティブに貢献していると評価されています。特に再開発事業の対象物件は、緑地の量や質がこれまでの施設と比べ高い傾向です。
(ⅲ-イ)重要なリスク・機会の評価
依存している生態系サービスの劣化による物理的リスクや、規制、市場環境の変化による移行リスクなどのリスクが想定される一方で、多くの自然関連機会も生じうることが分かりました。
<広域渋谷圏における重要なリスク・機会の評価>
③リスク管理
④指標と目標
1)気候変動
当社グループは、事業活動を通じて脱炭素社会の実現に貢献することをめざし、気候変動に関する中期・長期目標を掲げました。
[中期目標]2025年までに、自社(スコープ1・2)において、再生可能エネルギー事業などにおけるCO2削減量が、CO2排出量を上回る「カーボンマイナス」をめざす。
[長期目標]自社およびサプライチェーン(スコープ1・2・3)において、科学的根拠に基づく削減目標である「Science Based Targets(SBT)」の「1.5°C目標」を2030年までに実現し、2050年にはネットゼロエミッション達成をめざす。
中期目標に関しては、2021年度および2022年度において達成し、今後も継続を目指します。
また、東急不動産㈱では、自社で大規模展開する再生可能エネルギー事業の強みを活かし、2022年12月に自社事業所及び保有施設(※1)における使用電力(※2)を再生可能エネルギー電力へ切替え完了、その後RE100達成の要件を満たし、RE100事務局により2024年3月に発行されたRE100 2023年開示報告書にて同社実績が報告され、2024年4月に国内事業会社(※3)で初めてRE100事務局であるCDPからRE100の達成の承認連絡を受けました。この取り組みにより、一般家庭約7万世帯分にあたる年間約13万トンのCO2排出量を削減します。
(※1)RE100の対象範囲とならない、売却又は取壊し予定案件及び当社がエネルギー管理権限を有しない一部の共同事業案件を除きます。
(※2)RE100が認めるグリーンガスが国内市場に存在しないため、コジェネレーション自家発電による電力を除きます。
(※3)金融機関を除きます。
<気候変動に関する目標>
当社グループのGHG(Greenhouse Gas)排出量は以下のとおりです。
<GHG排出量の実績および目標と削減率>
|
|
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(単位:千t-CO2) |
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削減率(KPI、対2019年度) |
|||||
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2021年度 |
2022年度 |
|
実績 |
目標(※) |
||||
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排出量 |
構成比 |
排出量 |
構成比 |
|
2021年度 |
2022年度 |
2030年度 |
||
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スコープ1(フロン類含む) |
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3% |
|
3% |
|
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スコープ2 |
|
9% |
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4% |
|
|
|
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|
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計 |
257 |
12% |
140 |
7% |
|
△9% |
△51% |
△46.2% |
|
|
スコープ3 |
|
88% |
|
93% |
|
|
|
|
|
|
|
カテゴリー1・2・11 |
1,701 |
83% |
1,626 |
87% |
|
△5% |
△9% |
△46.2% |
|
|
カテゴリーその他 |
101 |
5% |
113 |
6% |
|
|
|
|
|
合計 |
|
100% |
|
100% |
|
(※)SBTに基づく目標設定 |
|||
<GHG排出量スコープ3 カテゴリ別内訳>
|
(単位:千t-CO2) |
||
|
カテゴリ |
排出量 |
|
|
2021年度 |
2022年度 |
|
|
1.購入した製品・サービス |
998 |
798 |
|
2.資本財 |
117 |
270 |
|
3.Scope1,2に含まれない燃料及びエネルギー関連活動 |
44 |
37 |
|
4.輸送、配送(上流) |
0 |
2 |
|
5.事業から出る廃棄物 |
19 |
16 |
|
6.出張 |
3 |
4 |
|
7.雇用者の通勤 |
10 |
9 |
|
8.リース資産(上流) |
— |
3 |
|
11.販売した製品の使用 |
586 |
559 |
|
12.販売した製品の廃棄 |
13 |
11 |
|
13.リース資産(下流) |
12 |
31 |
|
合計 |
1,802 |
1,739 |
※以下のカテゴリは該当する排出量無
9. 輸送、配送(下流)、10.販売した製品の加工、14.フランチャイズ、15.投資
2)生物多様性・自然関連課題
生物多様性・自然関連課題の目標および実績は、HPを確認ください。
URL https://tokyu-fudosan-hd-csr.disclosure.site/ja/environment/tnfd/detail#339
(3)人的資本経営
当社グループにおける「人的資本経営」とは、「GROUP VISION 2030」及び「中期経営計画2025」の実現に向け、経営戦略と連動した人財戦略を策定及び実行することで、持続的な価値向上に取り組むことを指します。当社グループは100社超・約3万人の従業員の知識・スキルや意欲を「人的資本」と捉えて積極的に投資することで、「価値を創造し続ける企業グループ」と「誰もが自分らしく、いきいきと輝ける未来」を目指します。
<人的資本経営の考え方>
①ガバナンス
人財戦略を経営戦略と連動させるために、サステナビリティ委員会・リスクマネジメント委員会にて人財戦略の課題及びKPIの進捗を報告のうえ方針を経営層間にて討議し、その結果を取締役会にて報告しております。
人財戦略の推進にあたっては、当社のグループ人事部が主要5社の人事部を統率して管理しています。具体的なモニタリングの機能としては、グループ人財会議を年2回開催し、グループ各社の課題及びKPIの進捗について報告・共有を行っております。さらに、ダイバーシティ・採用・労務マネジメントといったテーマごとに個別の分科会を行い、人財戦略を着実に実行できる体制を整えています。
<人財戦略の推進体制>
グループ全体でのグループ人財戦略の推進に加えて、各社においては、ビジネスモデルに最適な取り組みを推進しております。経営戦略、事業戦略と人財戦略がどれも一貫したものとなるよう、グループ人事部およびグループ経営企画部を中心としたコーポレート部門が連携しながら、各社の人事施策の推進を支援しております。
<グループ推進体制>
②戦略
ありたい姿の実現に向け、当社グループは“すべての従業員が「挑戦するDNA」と「社会に向き合う使命感」をもち、サステナブルな社会づくりと成長を目指します”というグループ人財理念を掲げました。そして、グループ人財戦略として、『価値を創造する人づくり』『多様性と一体感のある組織づくり』『働きがいと働きやすさの向上』の3つの戦略を進めております。
1つ目の『価値を創造する人づくり』は、グループ理念と経営戦略に基づいた、人財の育成に関する方針です。長期ビジョン「GROUP VISION 2030」の実現に向けてグループ理念の浸透を図るとともに、全社方針と連動するDX人財の育成と環境経営に基づく人財育成を掲げております。
2つ目の『多様性と一体感のある組織づくり』は、グループの価値創造を支える社内環境整備に関する方針です。女性管理職比率向上をはじめとする女性の活躍推進や、DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)の取組による多様な人財の活躍推進に加えて、イノベーティブな組織風土の醸成が、「挑戦するDNA」の体現やグループの価値創造には不可欠と考えております。
3つ目の『働きがいと働きやすさの向上』は、従業員一人ひとりを支える社内環境整備に関する方針です。健康経営の推進や、ライフステージに応じた多様な働き方の支援に加え、働きがいという観点でのワークエンゲージメントの向上も重要な施策として取り組みモニタリングをしております。
これら3つの人財戦略に取り組むことで、グループ従業員に対して、心も身体も健康にモチベーションと志をもって働ける環境を実現するとともに、生産性が高く広く社会に貢献する人財を輩出します。当社グループは人的資本経営に取り組むことで、2030年「価値を創造し続ける企業グループ」という未来へとつなげてまいります。
<人財理念と人財戦略>
イ.グループ全体での取り組み
・グループ理念の浸透
「WE ARE GREEN」は、多様なグリーンの力で、2030年にありたい姿を実現していく私たちの姿勢を表現したグループスローガンです。一貫したメッセージ発信と浸透のために、各社の広報室が集う「WE ARE GREEN」定例を月1回開催しております。2023年度にはグループ従業員の投票結果(計1,497名)を基に、従業員用グッズとして特注のエコバッグを製作し、約27,000個の配布を実施しました。
グループインナーサーベイ(Eラーニング形式)ではグループ従業員の意識向上を図るとともに、特にグループ各社執行役員については、どれだけ自身がグループ連携を実践できているかを示す「自分ゴト化」度を測定しております。2022年度は84%、2023年度は92%(計138名回答)の執行役員が実践していると回答し、中期経営計画最終年度の2025年90%という目標を前倒しで達成しました。
<グループ理念の浸透>
・DX人財の育成
全社方針である「DX」に基づき、DX事例の創出を目指して、グループ横断プロジェクトの実行と実践型学習・研修の両輪で人財基盤の構築を行っております。2022年2月にはTFHD digital株式会社を設立し、デジタル専門人財の採用を行い、グループ各社およびグループ全体のDX支援を行う体制を構築。そうしたDX推進に向けた組織・制度の整備や既存・新規ビジネスの双方での具体的なDX事例などが評価され、2023年5月に経済産業省・東京証券取引所及び情報処理推進機構による「DX銘柄2023」に選定されました。
特に、事業会社においてDX推進の中心的な役割を担う人財を「ブリッジパーソン」と定義し、2025年度までにDX推進人財6,000人育成という目標を掲げて取り組んでおります。ブリッジパーソン育成のために、データ・AI活用やデジタルマーケティングなど様々なデジタルスキル習得のためのプログラムを用意するほか、ビジネスモデル変革を担う人財を育成する実践型研修である未来洞察型プログラム「TLC-X」では未来のデジタル事業構想を不動産開発の現場社員が参加してアイデア創出を行っております。今後はグループ横断で実施予定です。
これらの人財育成の取り組みを基盤に、「デジタル活用によるビジネス件数」は2023年度実績で累計58件に至り、2030年度の計100件以上という目標にむけて着実に遂行しております。また、東急不動産㈱では全社員を対象にITパスポートの取得を促し、2023年度実績で84%が取得済み、2030年度取得率100%を目指しております。
<DX人財の人財体系・目標数値・プログラム>
・環境経営に基づく人財育成
全社方針である「環境経営」に基づき、Eラーニングや体感型サステナブル研修、サステナブル・アクション・アワードを通じて啓発を行っています。サステナブル・アクション・アワードでは、事業活動を通じた環境・社会課題解決の具体的な取り組みを表彰しています。2023年度は181案件(対前年+58件)という多くの応募が寄せられ、2025年度の累計応募300件という目標を前倒しで達成。これらの取り組みを基盤とした「事業を通じた環境への取り組み件数」は2023年度実績で34件、累計70件に達し、2030年度には計100件以上の成果創出を目指しています。環境先進企業として、社員一人ひとりが環境への理解を促進し、環境価値の機会創出につながる人財育成を図っています。
・女性の活躍推進(男女賃金格差是正の取り組みを含む)
女性の活躍推進については特に重要なテーマと捉え、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)の基本理念に則り、性別にかかわらず個性と能力を十分に発揮できる環境づくりに取り組んでいます。
各社の男女賃金格差(
女性の活躍を促進するために、当社グループは次の3つの方針で取り組んでおります。第一に、経営層のコミットメントです。女性の活躍推進を経営課題として捉えるために、「新卒女性採用比率」「女性管理職比率」「女性管理職候補比率」をKPIとして取り組んでおります。「新卒女性採用比率」は、2030年度目標は50%と掲げて採用活動に取り組んでおり、2023年4月実績は39%となりました。「女性管理職比率」は2030年度目標を20%以上と掲げており、2023年4月実績が8%、2024年4月実績が9%(対前年+1%)という進捗です。「女性管理職候補比率」は女性管理職の一つ手前の等級(係長層)を対象とした指標で、2030年度目標を20%以上と設定し、2024年4月実績18%です。「女性管理職比率」は実績から一定の乖離がある目標値ではありますが、「女性管理職候補比率」の底上げを図ることで進めてまいります。
第二に、制度の取り組みです。具体的には、産休・育休取得者に対応した昇格プログラム運用(東急不動産㈱)、育児サポート制度・パートナー制度による目標軽減・休日シフト・複数担当制(東急リバブル㈱)などを導入しております。制度については一定の整備が進んできております。
第三に、風土の取り組みです。制度があっても風土が伴わなければ、女性活躍は実現できないと考えております。会社を越えたネットワーキングに積極的に取り組んでおり、2023年度は元AERA編集長 浜田敬子氏を招いたイベント(計118名参加)やグループ5社での女性リーダー座談会を実施しました。
その他、男性育児休暇取得率について2030年100%を目標に掲げており、2023年度実績は89%となりました。男性も積極的に育児休暇を取得することで、男女間の職位の偏りがないよう、女性のキャリアパスや働き方を支援し、これまで以上の女性活躍を促進するとともに、男女賃金格差の改善に取り組んでまいります。
<女性の活躍推進>
・多様な人財の活躍推進
当社グループはDE&Iビジョンを策定しております。多様な属性の違いをお互いに認め、差別をなくすと共に公正な活躍機会を提供し、誰もが自分らしくいきいきと働ける環境作りを進めることで、イノベーションを生み出し、価値創造に取り組みます。従業員に対しては「DE&I」理解深化のEラーニングを実施し、受講率をKPIとして設定、2030年度は受講率100%を目指しております。また、多様性を担保するためのKPIとして「キャリア採用者管理職比率」を設定、2030年度50%を目標と定めました。現状キャリア採用者管理職比率は54%となっており、既に目標達成済ですが、引き続き登用を続ける方針です。
・イノベーティブな組織風土の醸成
「挑戦するDNA」を継承し、会社の枠を超えたイノベーションを創出するために、「STEP」というグループ共創型社内ベンチャー制度を設立しております。「STEP」は「S(Start/Sustainable/Shibuya)」+「TFHD(東急不動産ホールディングス)Entrepreneur Program」の略称です。2019年度にグループ従業員を対象として開始し、2024年度には第6期を迎えました。2023年度時点で応募累計302件、内4件が事業化決定しております。2024年1月には事業化4件目となる株式会社リープロを設立、技術者のキャリア・人材育成支援に向けた事業を企画中です。
「STEP」では、審査の結果、会社設立ではなく、グループ内での施策として採用されたプロジェクトもあります。2021年度応募の「メンタルヘルス不調者の職場復帰支援」の事業案は、東急不動産ホールディングスのグループ人事施策として姿を変えて始動。2024年度には対象者向けアプリのトライアル利用を開始するなど、グループ従業員の心身の健康を支える活動を行っております。このように、会社設立という手段だけに留めず、イノベーティブな組織風土が途切れぬようグループで多面的に取り組んでおります。
<社内ベンチャー制度「STEP」>
・健康経営の推進
従業員の幸福と健康維持・増進を重要な経営課題と捉えて、心身の健康に繋がる様々な施策に取り組んでいます。2030年度の目標として、健康診断受診率100%・ストレスチェック受検率100%・男性育児休暇取得率100%を目標に掲げ、セミナーや啓蒙活動などに取り組んでいます。男性育児休暇取得率は2022年度65%に対し、2023年度実績は89%(+24%)に向上しました。引き続き、従業員が健康で働きやすい職場づくりに取り組んでいきます。
・柔軟な働き方の支援
効率性・生産性の向上とワーク・ライフ・バランスの実現のため、柔軟な働き方を支援しています。主要5社(東急不動産㈱、東急リバブル㈱、㈱東急コミュニティー、東急住宅リース㈱、㈱学生情報センター)ではテレワーク制度およびフレックス勤務制度(またはスライド勤務制度)を導入し、ITを活用して場所や時間にとらわれないフレキシブルな働き方を実現しています。
・ワークエンゲージメントの向上
グループ各社では定期的なストレスチェックと合わせて、ワークエンゲージメントの調査を行っております。加えて、個社ごとの従業員エンゲージメント・サーベイを定期的に実施しています。東急不動産㈱では、サーベイ結果を組織単位(ユニット・本部・部・グループ)で各組織長にフィードバックすることで、エンゲージメントの維持・改善に取り組んでおります。2017年度より全社を対象に導入し、2022年度、2023年度ともにレーティングAA(全11段階の格付けランクの上から2番目)を維持、2030年度目標を前倒しで達成しております。
サーベイ結果からわかる同社の主な強みは、「理念の発信と伝達」「個性や能力の発揮」「部下への支援行動」です。トップメッセージが社内に浸透しているとともに、従業員ひとり一人の個性や能力が発揮しやすい職場を実現しております。一方、課題の「ナレッジの汎用化・標準化」については、DX推進によるナレッジシェアや業務効率化・高度化により改善活動を継続してまいります。レーティングだけでなく、各スコアからわかる強みをさらに強化し、働きがい・働きやすさの向上を目指します。
ロ.資産活用型ビジネスにおける取り組み(東急不動産㈱)
資産活用型ビジネスを担う東急不動産㈱では、長期ビジョン「GROUP VISION 2030」の実現に向けて、2022年度に人事制度を改定。目指すべき社員像を「事業プロデュース集団」と掲げ、その社員像を実現するために人事制度を体系化しております。
事業プロデューサーとは、高い視座と広い視野を持って自ら挑戦する人です。3つの行動指針(チャレンジシップ、オーナーシップ、パートナーシップ)と、5つの求める人財要件(企画力、実行力、影響力、人材開発・組織開発力、倫理観)を職種・等級のレベルに応じて設定し、期待する役割を明確化しています。
・採用・配置
採用は、新卒採用とキャリア採用を継続的に行っています。特にキャリア採用については、リファラル(社員紹介)採用やリターンエントリー(元社員の再入社)で幅を広げるほか、2023年7月には元社員が参加するアルムナイネットワークを設立。元社員との事業共創や再入社のきっかけづくりとなる活動をしております。また、専門性の高いDX・施工管理・経理・法務などの職務について、ジョブを特定した専任職としてジョブ型採用(職務限定採用)を積極的に行っております。
配置は、総合職については長期的な目線で事業プロデューサーとしての育成を行うため、ジョブ・ローテーション制度を2012年より継続しています。新卒入社後9年間において、2業(住宅事業、都市事業他)・2職務(開発、営業・運営、スタッフ)を原則経験するものとして配属・異動を行っています。また、本人が自律的なキャリアを選択できるよう、全社員との人事面談や、本人異動宣言制度(FA制度)を運用。毎年社員が手上げで別事業の部門へ異動し、新たな職務に挑戦しています。
・等級・評価・報酬
等級は、M職(マネジメント職)・L職(リーダー職)・S職(スタッフ職)の大きく3段階に分けており、それぞれの期待役割を明確に定義し、能力発揮・成長を促しています。評価は、部門内外への組織貢献を評価する「組織貢献度目標」や「チャレンジ宣言」を設定し、組織に対する貢献度を評価します。報酬は、全社の業績を社員の賞与に反映するほか、個人の評価符号に賞与のインセンティブを設けており、主体的なチャレンジに報いる制度設計となっています。これらの制度を通じて、事業プロデューサーとして期待する役割の理解浸透や意識共有を図りつつ、一人ひとりの活躍に報いる処遇を設けております。
・育成・昇格
育成は、全社員が自身の上長と1on1面談を実施するほか、求められる能力要件を基準とした360度フィードバックを実施しています。新卒入社1年目の社員についてはOJT制度を導入しており、OJTメンターが月1回の面談を行うことでサポート。その他の等級については事業プロデューサー育成および経営リーダー育成(サクセッション)の観点に基づいて研修を体系化し、定期的にプログラムの見直しを行っております。2023年度の一人あたり研修費用は114,252円、一人あたり研修時間は13.6時間という実績です。
昇格は、従来の年功序列から実力主義への転換を進めるべく、2022年4月の人事制度改定において、昇格に必要な滞留年数要件をほぼ撤廃しました。その上で、昇格プロセスを自薦でのエントリーを起点とすることで、年齢や性別にかかわらず能力と意欲の高い社員が活躍しやすい風土づくりを行っています。また昇格候補者は、年間を通じた育成プログラムに参加する仕組みとしております。プログラムでは、タレントレビュー会議(部下の育成会議)や外部機関によるアセスメントを実施し、参加者の強みや課題について多面的にフィードバックを行います。加えてナナメ1on1(他部門の上長との1on1)を実施することで、全社目線で育成に取り組んでいます。
ハ.人財活用型ビジネスにおける取り組み(東急リバブル㈱)
東急リバブル㈱の強みは、お客様から寄せられる年間約30万件もの不動産売買・賃貸ニーズに対して、広い事業領域と事業間連携で確実に収益機会に繋げることができる体制・人財です。理念や営業戦略においても、自部門に限らず全社の事業・リソースを活用してお客様に付加価値を提供できる人財をマルチバリュークリエイター(MVC)と定義し、そのような人財に成長するための育成・配置の仕組みづくりを行っています。
・理念浸透
東急リバブル㈱では、業界トップクラスのプレゼンスを実現すべく、会社が目指すビジョンや理念を社員に浸透する取り組みに注力しています。例として事業を牽引する管理職に対して、社長が自ら経営方針・事業戦略を対面で説明を行い、直接質疑を交わす説明会を毎年開催しており、同説明会の内容は管理職以外の全社員も閲覧できるよう動画配信しております。また理念や戦略を自分事化するために、課長・係長同士が意見交換やネットワーク構築を図る管理職勉強会・座談会を開催し、2023年度は計18回実施しました。
<理念浸透の取り組み>
・育成・配置の仕組み
人財活用型ビジネスでは、一人ひとりのスキル・知識が大きな資本となります。そのため、新しく入社した社員を早期に戦力化して全体を底上げできるか否かが、事業の成果に直結します。東急リバブル㈱では、優秀営業担当者の知見を集め体系化した「虎の巻」プログラムを活用し、新入社員にも早期から優秀者のノウハウを伝授しております。本プログラムでは集合研修・ロールプレイング研修を継続的に実施するほか、成果検証として営業レベル評価や知識テストを組み合わせて、社員本人や上長に対して成長段階を見える化することで確実な育成を推進しております。本プログラムの取組みは2018年に第7回「日本HRチャレンジ大賞」を受賞しました。
また、MVCとして事業領域の広さを活かした取り組みができるよう、社員が様々な業務経験を積むことができる制度を整えています。具体的には、現業務3年経過した社員を対象として、希望する部門に異動希望をエントリーできるキャリアチャレンジ制度や、他部門の業務が1~2日程度体験できる社内インターン制度などを運用しています。これらの制度を通じて、MVCとしての社員の成長や、事業間連携の促進を行っております。
<「虎の巻」プログラム>
ニ.人財活用型ビジネスにおける取り組み(㈱東急コミュニティー)
㈱東急コミュニティーでは、社員が提供する技術やサービスこそ最大の商品と考え、特色ある研修制度と施設を完備しております。自社技術研修センター「NOTIA(ノティア)」と「マンションライフ館」で、より高度な人財育成に取り組み、お客様への上質なサービス提供を目指します。
・技術研修センター「NOTIA(ノティア)」
2019年5月に開業したNOTIAは、1,900名を超える技術系社員を育成する自社の研修センターです。研修機能と環境性能を有することで、建物そのものが社員にとって「気づきの場」となるよう設計しております。センター内は、電気、空調、防火・防災や給排水・衛生など各設備機器の原理原則を体感し学べる設備実習のフロア、グループで課題を解決する協調学習の場となるアクティブラーニングスペース、共創の広場・ホールを有する多目的フロアから構成されます。
実践的な技術力と提案力を育成するNOTIAは建物としても評価されており、優れた省エネへの取り組みやビジネスモデルを表彰する「省エネ大賞(2021年)」や「学会賞技術賞(空気調和・衛生工学会(2021年)」のほか、「カーボンニュートラル賞 大賞(第10回)(2022年)」を受賞しております。また、先進的な環境技術を導入し、東京都内の事務所ビルとしては初めて「Nearly ZEB」(省エネルギー75%(正味)を達成したビル)を取得しました。
・技術研修センターNOTIA「マンションライフ館」
NOTIAの別館となるマンションライフ館は、2013年に開設したマンション管理業務の専門研修施設です。現実と変わらない環境を再現して訓練を行い、マンション運営のプロである営業担当(フロント担当)やアメニティーメイト(管理員)を育成しています。特に、現地に常駐する管理員が把握しておかなければならない知識や情報、そして居住者とのコミュニケーションについて実践を通して学ぶことで、マンションの管理維持および居住者との良い関係を築ける管理員を育てております。同社ではシニア人財の雇用を積極的に取り組んでおりますが、年齢に関わらず質の高いサービスを提供できるよう、研修に力を入れております。
③リスク管理
人財戦略の推進におけるリスクの1点目は、経営戦略と実際の人財施策に乖離が生じることです。それを防ぐため、各施策に対応する人財KPIを指標として設定し、サステナビリティ委員会にて進捗を報告しております。経営層が人財戦略の方針について議論することで、経営戦略と現場の施策が一貫したものとなるよう担保しております。
リスクの2点目は、採用です。当社グループは全国に拠点を持ち、100社超・約3万人の従業員から構成されます。国内の少子高齢化に伴う労働力人口の減少、それを背景とした人材不足が、当社グループの事業継続性に与える影響は少なくありません。人材不足に対する取り組み方針は、第一に、グループ全体での採用計画・活動のモニタリングや、合同採用イベント・活動の強化です。東急不動産ホールディングスのグループリソースおよびブランドを最大限に活用し、グループ全体の継続的な採用を支援します。第二に、外国人労働者の採用です。適切な採用ルートを通じた雇用を行うとともに、人権に配慮した労働環境の整備に取り組むことで、グループ内で必要な労働力を維持し、事業継続性を担保します。
④指標及び目標
<人財KPI表>
※2023年度及び2024年4月の実績は、第三者検証取得前の実績も含まれており、概算値になります。
当社グループの経営成績、財政状態等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には以下のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであり、実際の業績等はこれらの見通しとは異なることがあります。
(1)経営に重要な影響を及ぼすと想定されるリスク
当社グループでは、「リスク管理基本規程」において、グループ各社の経営目標の達成を阻害する事象として7つの個別リスク(投資リスク、財務資本リスク、人事労務リスク、法務コンプライアンスリスク、IT戦略リスク・デジタル戦略リスク、情報セキュリティリスク、危機管理対応)を定め、加えて、重要性の高いリスクとして気候変動リスクを重要リスクとして認識しております。
また「GROUP VISION 2030」において定めた6つのマテリアリティについて、機会及びリスクと、それに関連する重要リスクの特定を行いました。
|
マテリアリティ |
主な機会とリスク (○機会、●リスク) |
主な変動要因 |
重要リスク |
|
多彩なライフスタイルをつくる |
○あらゆる生活シーンの融合 |
・景気動向、不動産市況 ・競合企業動向 ・金融市場(金利、株価) ・消費者動向 |
投資リスク |
|
ウェルビーイングな街と暮らしをつくる |
○コミュニティ形成の重要性増大 |
||
|
サステナブルな環境をつくる |
○脱炭素・循環型社会への対応ニーズ 拡大 |
・移行リスク:炭素税など法 規制の厳格化等 ・物理リスク:建物被害や気 温上昇による施設運営影響等 |
気候変動リスク |
|
デジタル時代の価値をつくる |
○toC接点活用の重要性増大 |
・デジタル技術・企業等の動向 |
IT戦略リスク・ デジタル戦略リスク |
|
多様な人財が活きる組織風土をつくる |
○多様な人財によるイノベーション 創発 |
・人材の確保、育成 ・長時間労働 |
人事労務リスク |
|
成長を加速するガバナンスをつくる |
○透明性向上によるステークホルダー との関係強化 による損失、信用低下 |
・サイバー攻撃 ・安全対策、BCPの不備 ・役職員の不正、法令違反 ・取締役会の実効性 |
情報セキュリティリスク リスク |
なお、これらのリスクが顕在化する可能性の程度や時期、顕在化した場合に当社グループの経営成績及び財務状況等に与える影響の定量的な内容については、合理的な予見が困難であるため記載しておりません。
各リスクについての考え方は以下のとおりとなります。
① 投資リスク
当社グループの事業の中で投資を伴う資産活用型の事業である都市開発事業セグメント、戦略投資事業セグメント等においては、国内外の景気動向や企業業績、個人消費動向、不動産市況、競合環境、政府や日本銀行の政策変更、東京都心を中心とした事業エリアの状況等の影響を受けやすい傾向があり、これらにより各事業における利益率の低下や収益性の悪化、保有資産の価値が下落する可能性があります。
当該リスクについては当社のグループ経営企画部を主管部署とし、投資対象アセットごとのリスクファクターを定めた上でVaR値を算出、継続的なモニタリングを行うことでリスク量の管理を行っております。
② 財務資本リスク
当社グループでは不動産の開発資金等を自己資本及び、金融機関からの借入金や社債発行による資金調達等で対応しております。今後金利が上昇した場合や株価が著しく下落した場合には、経営成績及び財務状況等に対して大きな影響を与える可能性があります。
金融機関等からの資金調達については、金利変動による影響を軽減するため、有利子負債の大部分を長期による借入とし、さらに金融情勢を踏まえながら一部のプロジェクト融資以外については大部分の金利を固定化し、今後金利が上昇した場合の経営成績に与える影響を最小限に抑える取り組みを行っております。なお、当連結会計年度末の有利子負債における長期比率は95.8%、固定比率は95.5%(長期比率・固定比率ともにSPC借入を除く)です。また、当社のグループ財務部を主管部署とし、金融市場の動向分析及び金利上昇時の当社への影響の定量的なシミュレーションを行っております。
自己資本については、資本市場の動向分析を行うとともに、IR活動による株主・投資家との対話内容の取締役会等へのフィードバック等を実施しており、引き続き株価の適正化を図ってまいります。
③ 気候変動リスク
当社グループでは1998年に定めた環境ビジョンに基づき、事業活動を通じて、継続的に環境課題への取り組みを推進しており、中でも気候変動については重要な課題であると認識しています。気候変動における移行リスクと物理リスクは、当社グループの事業への影響を及ぼす可能性があります。移行リスクとしては、炭素税など法規制の厳格化といった政策動向の変化、低炭素社会に対応できない企業に対する需要低下やレピュテーション悪化、物理リスクとしては、地球温暖化による降雪量減少によるスキー場運営事業への影響や、異常気象の激甚化による建物被害や工事期間の延長によるコスト増などが想定され、事業へ悪影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクについては、当社のグループサステナビリティ推進部を主管部署とし、事業部門と協働してグループ横断的に取り組んでいます。取り組みの内容についてはサステナビリティ委員会で審議・協議し、取締役会に報告しています。
当社は「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言」に2019年より賛同し、その取り組みについて議論する「TCFDコンソーシアム」にも参加しております。気候変動の事業へのリスクと機会については、都市・レジャー・住宅・再生可能エネルギーの主要事業において、「1.5℃」「3℃」「4℃」の複数シナリオについて検証を実施し、経営戦略に反映しております。またTCFD提言に基づき、「ガバナンス」・「戦略」・「リスク管理」・「指標と目標」に分類した開示も実施いたしました。2023年度には「脱炭素社会への移行計画」を策定しています。
※TCFD提言に基づく開示:https://tokyu-fudosan-hd-csr.disclosure.site/ja/environment/tcfd/
※脱炭素社会への移行計画:
https://tokyu-fudosan-hd-csr.disclosure.site/ja/environment/transition-plan
④ IT戦略リスク・デジタル戦略リスク
当社グループ及び社会を取り巻くIT環境は目覚ましく進化しており、技術革新や顧客需要の変化に対して当社グループが適切かつ迅速に対応できなかった場合には、将来的に当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクについては当社のグループDX推進部を主管部署とし、新規技術の各事業への応用可能性等を検討しております。
⑤ 人事労務リスク
当社グループでは多様な人財を強みの1つと認識しております。しかし、国内の少子高齢化に伴う労働力人口の減少、それを背景とした人材不足が、当社グループの成長を阻害する大きな要因となる可能性があります。
当該リスクについては当社のグループ人事部を主管部署とし、長時間労働の削減や有給休暇の取得奨励はもちろん、テレワークや在宅勤務制度等、社員の多様な働き方に対応した施策で、従業員に選ばれる企業を目指しております。また、働き方や働く場所が多様化し、適正な労務マネジメントの重要性が高まっており、2023年度よりグループ重点対策として、「適正な労務マネジメント(労働時間の適正な把握・管理)」を実施しております。関係する各社の制度や運用、啓発活動の状況を網羅的に調査、把握し、リスクマネジメント委員会への報告を行う予定です。
⑥ 情報セキュリティリスク
当社グループでは、都市開発事業セグメントや管理運営事業セグメント、不動産流通事業セグメント等において多くのお客さまの個人情報を取り扱っております。サイバー攻撃や当社グループ従業員によって情報漏洩が発生した場合、当社グループの社会的信用やブランドイメージの低下、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクについては当社のグループ総務部及びグループDX推進部を主管部署とし、セキュリティ対策の強化や、標的型攻撃メール訓練等の研修実施による社員のリテラシー向上施策等を行っております。
⑦ 危機管理対応
国内外の地震、暴風雨、洪水その他の天災地変、テロ、事故、火災、疫病その他の人災等が発生した場合や、環境問題、不動産の瑕疵が判明した場合等には、保有資産の毀損や補償の義務履行等に関連して紛争が発生する等、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクについては当社のグループ総務部を主管部署とし、災害等発生時に必要となる安全対策やBCPの整備や、各種災害を想定した訓練の実施により、影響を最小限に抑えるべく取り組みを行っております。
⑧ 法務コンプライアンスリスク
当社グループの社員や事業活動において、法令等に抵触する事態が発生した場合や、発生した損害に対する賠償金の支払い等が必要となる場合には、当社グループの社会的信用やブランドイメージの低下、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクについては当社のグループ法務部を主管部署とし、コンプライアンスを実現するための活動計画(コンプライアンス・プログラム)の策定・推進など、グループ各社においてコンプライアンス体制を構築し、コンプライアンス経営の徹底に努めております。具体的には、東急不動産ホールディングスグループの全役員及び従業員の行動の規範となる「東急不動産ホールディングスグループ行動基準」を定めるとともに、その理解・実践のための具体的マニュアルとして、「東急不動産ホールディングスグループ コンプライアンスマニュアル」を策定し、定期的に研修などを行うことで、全役員及び従業員に対しコンプライアンスの周知・徹底を図っています。
(2)リスク管理体制
個別の重要リスクはリスクの種類に応じてリスクマネジメント委員会及びグループ経営会議が各々管理し、リスク全体の統括的な管理はリスクマネジメント委員会が行い取締役会へ報告いたします。
リスクマネジメント委員会では、グループ横断的に管理が必要と考えられるグループ重点対策リスクの管理と、グループ各社のリスク管理状況の把握、評価を行います。
グループ重点対策リスクには、主管部署を定めて、リスク管理のPDCAを徹底いたします。また、グループ各社のリスク管理状況をリスクマネジメント委員会において把握、評価することによりグループ全体のリスク管理体制を強化いたします。
また、内部監査を通じて管理体制および管理業務の十分性を確認するとともに、重大リスクに関する監査を優先度に応じて計画的に実施しています。緊急かつ重大な損失の危険に対しては、「緊急時対応基本規程」に基づいて情報伝達および意思決定を行い、被害を最小限にとどめる対応を行います。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
財政状態
当連結会計年度末の資産残高は3兆308億円となりました。資産の部では、販売用不動産への投資等の進捗により、前連結会計年度末から合計2,923億円増加しました。当連結会計年度末の負債残高については2兆2,589億円となり、有利子負債の増加等により、前連結会計年度末から合計2,211億円増加しております。当連結会計年度末の純資産残高については7,719億円となり、利益剰余金等の増加により、前連結会計年度末から合計712億円増加しております。
経営成績
当連結会計年度の業績は、堅調な不動産市場を背景としたアセット売却や売買仲介の好調、内外需要の取込みに伴うホテル事業の好調等により、売上高1兆1,030億円(対前期+9.7%)、営業利益1,202億円(同+8.9%)、経常利益1,104億円(同+10.9%)と増収増益となりました。
「中期経営計画2025」に基づく事業構造改革を進めたこと等により、前期は特別損失として313億円を計上しましたが、その反動で当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は685億円(同+42.1%)と大幅に増加しました。
当連結会計年度の売上高、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益は、ホールディングス体制への移行前も含めて過去最高となり、中期経営計画の最終年度である2026年3月期の営業利益目標1,200億円、当期純利益目標650億円を2年前倒しで達成することとなりました。
|
|
|
|
(単位:億円) |
|
|
前期 |
当期 |
比較 |
|
売上高 |
10,058 |
11,030 |
972 |
|
営業利益 |
1,104 |
1,202 |
98 |
|
経常利益 |
996 |
1,104 |
108 |
|
親会社株主に帰属する当期純利益 |
482 |
685 |
203 |
|
|
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|
|
|
有利子負債 |
14,829 |
15,901 |
1,072 |
<セグメント別業績>
|
売上高 |
|
(単位:億円) |
|
営業利益 |
|
(単位:億円) |
||
|
|
前期 |
当期 |
比較 |
|
|
前期 |
当期 |
比較 |
|
合計 |
10,058 |
11,030 |
972 |
|
合計 |
1,104 |
1,202 |
98 |
|
都市開発 |
3,461 |
3,654 |
193 |
|
都市開発 |
586 |
532 |
△55 |
|
戦略投資 |
788 |
1,080 |
292 |
|
戦略投資 |
152 |
151 |
△1 |
|
管理運営 |
3,371 |
3,715 |
343 |
|
管理運営 |
123 |
228 |
106 |
|
不動産流通 |
2,630 |
2,856 |
226 |
|
不動産流通 |
337 |
385 |
49 |
|
全社・消去 |
△191 |
△274 |
△83 |
|
全社・消去 |
△94 |
△95 |
△0 |
イ.都市開発事業
売上高は3,654億円(対前期+5.6%)、営業利益は532億円(同△9.3%)となりました。
下段売上高内訳の「都市(賃貸オフィス)」では「Shibuya Sakura Stage」(東京都渋谷区)の新規開業、「都市(賃貸商業施設)」では、東急プラザを始めとする商業施設の一定の回復、「住宅その他」ではアセット売却の増加等により増収となった一方、「都市その他」ではアセット売却の減少、「住宅分譲」は分譲マンションの計上戸数減少等により減収となり、セグメント全体では増収減益となりました。
オフィスマーケットは、当社が数多く保有する渋谷エリアを中心に堅調に推移しております。2024年3月期末の空室率(オフィスビル・商業施設)は、4.8%と一時的に高い水準となっていますが、2023年11月に新規竣工した「Shibuya Sakura Stage」において、今後、テナント入居が順次進むことにより低下していく見込みです。「Shibuya Sakura Stage」を除く空室率(オフィスビル・商業施設)は1.1%と低水準を維持しております。
分譲マンションの販売は、引き続き底堅い需要により堅調に推移しております。当期の分譲マンションは、「HARUMI FLAG」(東京都中央区)、「ブランズタワー大阪本町」(大阪府大阪市)を新規竣工引渡物件として計上した他、完成在庫の販売も進捗しております。なお、マンションの次期売上予想に対する契約済み割合は74%(同△8P)となっております。
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|
|
|
|
|
|
(億円) |
|
|
前期 |
当期 |
比較 |
|
通期予想 (11月7日公表) |
対予想 |
|
売上高 |
3,461 |
3,654 |
193 |
|
3,806 |
△152 |
|
営業利益 |
586 |
532 |
△55 |
|
528 |
4 |
|
売上高内訳 |
|
|
(億円) |
|
|
前期 |
当期 |
比較 |
|
都市 |
1,998 |
1,772 |
△225 |
|
都市(賃貸オフィス) |
547 |
563 |
16 |
|
都市(賃貸商業施設) |
403 |
421 |
18 |
|
都市その他 |
1,048 |
789 |
△259 |
|
住宅 |
1,463 |
1,882 |
419 |
|
住宅分譲 |
955 |
895 |
△60 |
|
住宅その他 |
508 |
987 |
479 |
賃貸オフィス・賃貸商業施設:空室率
|
2021年3月期末 |
2022年3月期末 |
2023年3月期末 |
2024年3月期末 |
|
1.3% |
1.3% |
1.1% |
4.8% |
※新規竣工した「Shibuya Sakura Stage」を除く2024年3月期末の空室率:1.1%
主な開業物件(2024年3月期開業物件)
|
物件名称 |
用途 |
竣工・開業時期 |
延床面積 |
|
Shibuya Sakura Stage (渋谷駅桜丘口地区再開発計画) |
オフィス・商業・住宅等 |
2023年11月30日竣工 |
255千㎡ |
|
COCONO SUSUKINO (札幌すすきの駅前複合開発計画) |
ホテル・商業・映画館等 |
2023年11月30日開業 |
53千㎡ |
|
Forestgate Daikanyama (代官山町プロジェクト) |
賃貸住宅・商業・オフィス等 |
2023年10月19日開業 |
21千㎡ |
|
住宅分譲:分譲マンション |
(戸) |
|||
|
|
前期 |
当期 |
比較 |
|
|
計上戸数 |
1,369 |
1,280 |
△90 |
|
|
新規供給戸数 |
1,310 |
931 |
△379 |
|
|
契約戸数 |
1,562 |
1,008 |
△554 |
|
|
期末完成在庫 |
200 |
127 |
△73 |
|
ロ.戦略投資事業
売上高は1,080億円(対前期+37.1%)、営業利益は151億円(同△0.8%)となりました。
下段売上高内訳の「インフラ・インダストリー」は、物流施設のアセット売却や再生可能エネルギー事業の稼働施設の増加等により、「海外事業」はインドネシアの分譲マンションの計上戸数増等により増収となりましたが、北米における費用増加等により、セグメント全体では増収減益となりました。
再生可能エネルギー事業は、稼働施設が計画通り増加する等、順調に拡大しております。また、全施設稼働後の総定格容量(持分換算前)は、1,751MW(対前期末+174MW)の規模となります。
|
|
|
|
|
|
|
(億円) |
|
|
前期 |
当期 |
比較 |
|
通期予想 (11月7日公表) |
対予想 |
|
売上高 |
788 |
1,080 |
292 |
|
1,044 |
36 |
|
営業利益 |
152 |
151 |
△1 |
|
139 |
12 |
|
売上高内訳 |
|
|
(億円) |
|
|
前期 |
当期 |
比較 |
|
インフラ・インダストリー |
633 |
885 |
252 |
|
投資運用 |
89 |
99 |
10 |
|
海外 |
65 |
95 |
30 |
※インフラ・インダストリー:再生可能エネルギー発電施設・物流施設等
※投資運用:REIT・ファンドの運用事業等
再生可能エネルギー発電施設
|
|
2021年3月期末 |
2022年3月期末 |
2023年3月期末 |
2024年3月期末 |
|
稼働施設数(件) |
38 |
66 |
65 |
74 |
|
稼働済定格容量(MW) |
730 |
882 |
1,034 |
1,342 |
※稼働済定格容量は、持分換算前の国内プロジェクトのみの容量を記載しております。
※2024年3月期末より、ルーフトップ(屋根上太陽光発電設備)を1事業として集計し、稼働済定格容量に含めております。
ハ.管理運営事業
売上高は3,715億円(対前期+10.2%)、営業利益は228億円(同+85.8%)となりました。
下段売上高内訳の「管理」は、「ビル管理」において工事や大規模物件の開業等により増収、「ウェルネス」は、東急ステイを中心に「ホテル」におけるインバウンド及び国内需要の取込みのほか、「ウェルネスその他」における東急ハーヴェストクラブの会員権販売等により増収となり、セグメント全体でも増収増益となりました。
|
|
|
|
|
|
|
(億円) |
|
|
前期 |
当期 |
比較 |
|
通期予想 (11月7日公表) |
対予想 |
|
売上高 |
3,371 |
3,715 |
343 |
|
3,692 |
23 |
|
営業利益 |
123 |
228 |
106 |
|
215 |
13 |
|
売上高内訳 |
|
(億円) |
|
|
|
前期 |
当期 |
比較 |
|
管理 |
2,131 |
2,260 |
129 |
|
マンション管理 |
1,312 |
1,277 |
△35 |
|
ビル管理 |
819 |
982 |
164 |
|
ウェルネス |
1,103 |
1,325 |
221 |
|
ホテル |
422 |
546 |
123 |
|
レジャー |
191 |
174 |
△17 |
|
ヘルスケア |
265 |
285 |
20 |
|
ウェルネスその他 |
225 |
320 |
94 |
|
環境緑化等 |
137 |
130 |
△7 |
※ホテル :ハーヴェストクラブ、東急ステイ、リゾートホテル等
※レジャー :ゴルフ場、スキー場等
※ヘルスケア:シニア住宅、フィットネス施設等
|
期末管理物件数 |
|
|
|
|
|
|
2021年3月期末 |
2022年3月期末 |
2023年3月期末 |
2024年3月期末 |
|
マンション(戸) |
839,891 |
831,603 |
867,891 |
845,241 |
|
ビル等 (件) |
1,532 |
1,626 |
1,656 |
1,644 |
ニ.不動産流通事業
売上高は2,856億円(対前期+8.6%)、営業利益は385億円(同+14.4%)となりました。
下段売上高内訳の「売買仲介」は、活況な不動産流通市場を捉え、取扱件数、取扱高の増加により、また、「不動産販売」は、開発案件の計上増等により増収となり、セグメント全体でも増収増益となりました。
|
|
|
|
|
|
|
(億円) |
|
|
前期 |
当期 |
比較 |
|
通期予想 (11月7日公表) |
対予想 |
|
売上高 |
2,630 |
2,856 |
226 |
|
2,840 |
16 |
|
営業利益 |
337 |
385 |
49 |
|
363 |
22 |
|
売上高内訳 |
|
|
(億円) |
|
|
前期 |
当期 |
比較 |
|
仲介 |
1,642 |
1,872 |
230 |
|
売買仲介 |
800 |
858 |
58 |
|
不動産販売 |
772 |
944 |
172 |
|
販売受託等 |
70 |
69 |
△1 |
|
賃貸住宅サービス |
987 |
984 |
△4 |
|
売買仲介 |
|
|
|
|
|
|
2021年3月期末 |
2022年3月期末 |
2023年3月期末 |
2024年3月期末 |
|
取扱件数(件) |
25,635 |
28,750 |
29,577 |
30,265 |
|
取扱高(億円) |
12,265 |
15,780 |
18,213 |
20,801 |
※リテール、ホールセールの合計値です。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は2,462億円となり、前期末と比較して756億円の増加となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、法人税等の支払△289億円等により資金減少の一方、税金等調整前当期純利益1,030億円、減価償却費446億円等により、1,565億円の資金増加となりました。
(投資活動におけるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券及び投資有価証券の売却及び償還による収入1,109億円等の資金増加の一方、固定資産の取得△2,453億円、有価証券及び投資有価証券の取得△404億円等により、1,782億円の資金減少となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済△1,154億円、配当金の支払△205億円等の一方で、長期借入金の調達1,985億円等により、978億円の資金増加となりました。
③ 生産、受注及び販売の実績
生産、受注及び販売の実績については、「① 財政状態及び経営成績の状況」における各セグメント業績に関連付けて示しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであり、実際の業績等はこれらの見通しとは異なることがあります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
イ.財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度における我が国経済は、世界的な金融引き締め、物価上昇などから不透明な状況で推移し
たものの、新型コロナウイルス感染症の収束により、社会経済活動への影響が和らぎ、インバウンド需要の寄与などもあって、緩やかな回復基調で推移いたしました。
このような状況のもと、当社グループは、長期経営方針における再構築フェーズと位置付ける「中期経営計画2025」に基づき、強固で独自性のある事業ポートフォリオの構築に引き続き取り組んでまいりました。堅調な不動産市場やホテル・リゾート事業における内外需要の回復など、事業環境にも恵まれたことから、各セグメントの業績は順調に推移し、本計画の最終年度である2026年3月期のすべての財務目標を2年前倒しで達成いたしました。
財政状態については、当期末の総資産は3兆308億円で、販売用不動産への投資等が進捗し対前期末2,923億円増加、当期末の総負債についても有利子負債の増加等により、2兆2,589億円と、対前期末2,211億円増加しております。当期末の純資産については利益剰余金等が増加し、7,719億円と、対前期末712億円増加しております。財務資本戦略として、「資産のコントロール」と「負債・自己資本のコントロール」を通じて、財務規律を維持しながら、効率性を意識した利益成長を実現し、ROE向上およびEPS成長、ひいては株主価値・企業価値向上を目指します。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
・都市開発事業セグメント
都市事業では、2023年11月に竣工した「Shibuya Sakura Stage」の新規開業、東急プラザを始めとする商業施設の一定の回復の一方、アセット売却の減少により減益となりました。住宅事業では、分譲マンションの計上戸数減少の一方、賃貸住宅等のアセット売却の増加により増益、セグメント全体では増収減益となりました。
オフィスマーケットは、当社が数多く保有する渋谷エリアを中心に堅調に推移しております。2024年3月期末の空室率(オフィスビル・商業施設)は、4.8%と一時的に高い水準となっていますが、「Shibuya Sakura Stage」において、今後、テナント入居が順次進むことにより低下していく見込みです。「Shibuya Sakura Stage」を除く空室率(オフィスビル・商業施設)は1.1%と低水準を維持しております。
大型開発プロジェクトについては、「Shibuya Sakura Stage」の他、2023年10月開業の「Forestgate Daikanyama」、2023年11月開業の「COCONO SUSUKINO」などが順次開業しております。引き続き「広域渋谷圏」の内外において、複数の開発案件を進めてまいります。
商業施設の売上は、郊外施設は定常レベルに戻り安定して推移しており、都心施設もインバウンド消費等で新型コロナウイルス感染拡大前の水準に回復をしております。広域渋谷圏における文化創造・発信拠点の核となる商業施設として、2024年4月には東急プラザ原宿「ハラカド」が開業したことに加え、新たな価値提供に向けたリニューアルの実施、EC市場拡大継続など消費行動の変化に対応したリーシング活動などを進めてまいります。
分譲マンションマーケットは、住宅ローン金利動向には注視が必要ですが、実需層を中心に、当社グループのマンション販売は堅調に推移しており、2025年3月期の期初時点での分譲マンションの通期売上予想に対する契約済割合は74%となっております。「BRANZ」のブランドで首都圏や関西圏を中心に分譲マンション事業を行っており、高付加価値の再開発物件に重点を置いた事業の強化や、持続可能で心地よい暮らしと環境貢献実現のために新たな発想や仕組みを取り入れた「環境先進マンション」の開発に注力しております。建築工事費については、資材価格の高騰や慢性的な人工不足により上昇傾向にありますが、引き続き状況を注視しながら、コストコントロールを図ってまいります。
・戦略投資事業セグメント
インフラ・インダストリー事業は、物流施設のアセット売却や再生可能エネルギー事業の稼働施設の増加等により、海外事業はインドネシアの分譲マンションの計上戸数増等により増収となりましたが、北米における費用増加等により、セグメント全体では増収減益となりました。
当社グループが、近年事業規模を拡大させてきた再生可能エネルギー事業は、FIT制度によって売電価格が固定されており、景気変動等に対する影響が少なく、安定的に収益に寄与する事業です。「ReENE」のブランド名で太陽光発電所、風力発電所などの開発に注力しており、稼働案件も着実に増加しております。外部環境としては、政府が2030年度の電源構成において、再生可能エネルギーの割合を36~38%に増加させる方針に加え、2050年までに温室効果ガスの排出を0にする2050年カーボンニュートラルを掲げており、2023年11月にはCOP28がUAE・ドバイで開催され、2030年までに世界全体の再生可能エネルギーの発電容量を3倍にすることが合意されるなど、今後も市場が拡大していくと見込まれます。
再生可能エネルギー事業の重要性の高まりにより、案件の取得環境は過熱しておりますが、さらなる規模拡大に向け、開発の中心を従来の太陽光発電から風力発電にシフトし新規施設の確保・開発をすすめるとともに、PPAモデルやソーラーシェア等の新たな事業モデルによる事業領域の拡大を図っていきます。2024年3月末時点での持分換算前の定格容量は約1.8GW(国内プロジェクトのみ、開発中プロジェクト含む)で、2026年3月期には原子力発電所2基分相当となる2.1GWへ拡大させていく計画です。
物流施設は、EC市場の成長により引き続き需要拡大が見込める環境であり、再生可能エネルギーの活用やCASBEE認証取得等の環境配慮型施設など、当社グループならではの付加価値を創出し、他社との差別化を図りながら、今後も事業の拡大を進めてまいります。
海外事業においては、米国投資事業のさらなる成長、アジアにおける事業領域の拡大など、対象国を厳選した上で、グループノウハウを活用した事業機会を創出し、中長期的な「営業利益100億円体制」の構築を図ります。また、昨今の米国の政策金利上昇による影響等を注視しつつ、事業リスク低減に向けた既存事業の見直し及び収益性向上に向けた取り組みを推進してまいります。
・管理運営事業セグメント
㈱東急コミュニティーにおける管理事業では、ビル管理において工事や大規模物件の開業等により増収、東急不動産㈱のウェルネス事業では、東急ステイを中心としたホテルにおけるインバウンド及び国内需要の取込みのほか、東急ハーヴェストクラブの会員権販売等により増収となり、セグメント全体でも増収増益となりました。
管理事業における事業環境は、インフレ下での資材・労務費の継続的な上昇、労働力確保難などを課題として認識しております。重点課題としては、ストック拡大に頼った利益成長ではなく、「量」から「質」への転換及び質の向上により、生産性・収益性の改善及び事業ドメインの拡大を図ってまいります。
ウェルネス事業については、2024年3月の東急ステイのRevPARが13,609円とコロナ前の2019年3月の10,404円を大きく上回り過去最高を更新し、大幅に収益が改善しました。また、ヘルスケア事業では、㈱東急不動産が保有する㈱東急スポーツオアシスの全株式を、業界大手の㈱ルネサンスに譲渡するなど、事業ポートフォリオの改善を継続して図っております。
・不動産流通事業セグメント
引き続き活況な不動産流通市場を捉えた、売買仲介における取扱件数及び平均取扱価格の上昇、不動産販売の開発案件の計上増等により、セグメント全体で増収増益となりました。
仲介事業における事業環境は、リテール部門においては、郊外エリアでは一部で価格の頭打ち傾向がみられる一方、都心エリアにおいては取引価格の上昇が継続し、ホール部門においては、一部海外投資家の投資スタンスは慎重ながら、国内投資家の旺盛な投資意欲は継続するなど、ポジティブとネガティブ両方の材料がみられました。重点課題としては、事業間・組織間での連携を強化し、情報の最有効活用を進めること、またDX活用によるお客様への最適なサービスの提供、営業活動の効率化等を図ってまいります。
DX活用によるお客様への最適なサービスの提供を企図し、東急リバブル㈱ではパートナー会社と共同で「新築マンションレコメンドAIシステム」を開発いたしました。
特定の新築マンションの資料を請求いただいたり、モデルルームにご来場いただいた場合においても、そのお客様の多くはご購入まで至らないことが一般的です。従来はご購入までいたらなかったお客様(以下、「非購入者」といいます。)には、他の新築マンション情報を均一に一斉配信していたため、お客様のニーズに合致しない物件紹介となることもありました。
AIが東急リバブル㈱における過去の新築マンション販売データを学習し、お客様ごとに異なる希望や条件に寄り添いながら、お客様の属性なども考慮したうえで、非購入者に対して概ね2週間程度の間隔で最新のレコメンド情報をメールにて配信します。これまで十分に対応することができなかった非購入者(直近3年で累計約5万組)に対して、AIが物件紹介業務を代替することによって、お客様との接点を維持し、新たな営業機会を創出することが可能となりました。なお、スマートフォンを意識したUI(ユーザーインターフェース)により、CX(顧客体験)の向上も図っております。
東急リバブル㈱では、今後も独自のAI開発なども含めたデジタル技術の活用に取組みながら、お客様の多様なニーズに沿った、質の高いサービスの提供を進めてまいります。
ロ.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
「GROUP VISION 2030」で掲げた財務資本戦略として、「資産のコントロール」と「負債・自己資本のコントロール」を通じて、財務規律を維持しながら、効率性を意識した利益成長を実現し、ROE向上およびEPS成長、ひいては株主価値・企業価値向上を目指します。
「資産のコントロール」では、既存事業の効率性向上と事業ポートフォリオの最適化を進めております。既存事業の効率性向上の具体的な施策として、資産活用型事業においては、回転型事業、高効率事業の拡大、大型開発プロジェクトの着実な稼働、他人資本活用やフィー収入の拡大、資産ポートフォリオ入替、低収益資産の売却などに取り組んでいます。人財活用型事業では、規模の成長と共に労働集約型からの脱却などにより効率性向上を図ります。
「負債・自己資本のコントロール」では、財務規律を維持しながら、市況悪化時にも耐えうる財務基盤を構築し、円滑な資金調達を目的とした格付維持向上を図ります。引き続き、期間利益の積上げによりD/Eレシオを改善してまいります。
なお、当連結会計年度におけるセグメントごとの資産、有形固定資産及び無形固定資産の増加額の内訳は以下のとおりです。
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(単位:百万円) |
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都市開発 |
戦略投資 |
管理運営 |
不動産流通 |
調整額 |
連結 財務諸表 計上額 |
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セグメント資産 |
1,707,893 |
646,344 |
420,203 |
289,238 |
△32,929 |
3,030,751 |
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有形固定資産及び無形固定資産の増加額 |
177,296 |
33,851 |
22,084 |
8,131 |
1,059 |
242,424 |
当社グループの主要な資金需要は、都市開発事業セグメントにおけるオフィスビルや商業施設、分譲マンションや賃貸住宅等の取得・開発資金、戦略投資事業セグメントにおける再生可能エネルギー発電施設、物流施設等の取得・開発資金、海外事業への出資、管理運営事業セグメントのウェルネス事業におけるリゾート施設等の取得・開発資金等であります。これらの資金需要につきましては、営業活動によるキャッシュ・フローのほか、金融機関からの借入や社債発行による資金調達等にて対応していくこととしております。また、手許の運転資金につきましては、当社及び一部の連結子会社においてCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入することにより、各社における余剰資金を当社へ集中し、一元管理を行うことで、資金効率の向上を図っております。
当連結会計年度においては、営業活動によるキャッシュ・フローは、法人税等の支払△289億円等により資金減少の一方、税金等調整前当期純利益1,030億円、減価償却費446億円等により、1,565億円の資金増加となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券及び投資有価証券の売却及び償還による収入1,109億円等の資金増加の一方、固定資産の取得△2,453億円、有価証券及び投資有価証券の取得△404億円等により、1,782億円の資金減少となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済△1,154億円、配当金の支払△205億円等の一方で、長期借入金の調達1,985億円等により、978億円の資金増加となり、現金及び現金同等物の残高は2,462億円となりました。翌連結会計年度においても、オフィスビルや賃貸住宅、物流施設や再生可能エネルギー発電施設等への投資が計画されておりますが、営業活動によるキャッシュ・フローのほか、借入金の調達等の財務活動によるキャッシュ・フローで対応していく予定です。
当社グループの当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの実績及び、翌連結会計年度における予想は以下のとおりです。
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(単位:億円) |
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2024年3月期 |
2025年3月期 (予想) |
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営業活動によるキャッシュ・フロー |
1,565 |
1,149 |
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投資活動によるキャッシュ・フロー |
△1,782 |
△2,144 |
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財務活動によるキャッシュ・フロー |
978 |
360 |
(注)2025年3月期(予想)の棚卸資産への投資は、投資活動によるキャッシュ・フローに含みます。
該当事項はありません。
該当事項はありません。