第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営の基本方針について

当社グループは紙流通のリーディングカンパニーとして、社会・産業・文化の発展を支え、人々の営みにおいて欠くことの出来ない紙・板紙の安定供給を通じ、循環型社会の構築に貢献していくことを基本方針としております。

また、社会と地球環境のより良い未来を拓くことをグループの使命として、グループ役職員が、誠実、公正、調和を大切にすべき価値観とし、変革、挑戦、創造を積極的に実践することにより、全てのステークホルダーの皆様から信頼される企業を目指しております。

なお、当社グループが目指すグループ企業理念等につきましては、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ①コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方」に記載しております。

 

(2) 当社を取り巻く経営環境と事業環境

当期における我が国経済は、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけの見直しに伴い社会経済活動の正常化が進み、雇用・所得環境や企業の業況判断に改善がみられる等、景気の持ち直しの動きが続きました。一方、世界経済におきましても、持ち直しの動きがみられましたが、東欧・中東における地政学的リスク、中国における景気の足踏み、世界的な金融引き締め、物価上昇等による景気の下振れ懸念が高まりました。

このような情勢のもと、当社グループは「中期経営計画2023」の最終年度における目標達成及び長期ビジョン実現に向け、各セグメントにおいて確固たる収益力、資金力、及び地理的なプラットフォームの構築を目指し、各種施策に取り組んでまいりました。その結果、以下のとおり、当連結会計年度において最終年度目標に掲げた連結財務指標目標を全て達成いたしました。

 

 

中期経営計画2023

最終年度目標

2023年度実績

連結経常利益

150億円

168億円

ROE(自己資本利益率)

8.0%以上

8.4%

ROA(総資産利益率)

4.0%以上

4.4%

ROIC(投下資本利益率)(注)

5.0%以上

6.2%

ネットD/Eレシオ

1.4倍以下

0.59倍

 

(注)投下資本利益率(ROIC)の算出式の分子であるNOPATについて、連結財務指標目標である経常利益をベースとした算出に変更しております。

変更後:NOPAT(税引後経常利益[利払前])÷投下資本(有利子負債+自己資本[期首・期末平均])

 

(3) 中長期的な経営戦略、目標とする経営指標及び事業上の対処すべき課題

当社グループは、長期ビジョン『OVOL長期ビジョン2030 “Paper, and beyond”』(以下、「長期ビジョン2030」)を策定し、2030年のあるべき姿を掲げ、その実現を目指しております。

 

(当社グループのあるべき姿)

「世界最強の紙流通企業グループ」

「持続可能な社会と地球環境に一層貢献する企業グループ」

「紙業界の枠を超えたエクセレントカンパニー」

 

長期ビジョン2030の実現に向け、2024年度からの3ヵ年(2025年3月期~2027年3月期)を対象とした中期経営計画『OVOL中期経営計画2026』を策定いたしました。当中期経営計画は、2030年に当社グループがあるべき姿を実現するための経済価値と社会価値を創造する「具体的な仕組みづくり・仕掛けづくりの3年間」と位置づけ、以下の3つの基本方針に基づく施策を実行することにより、長期ビジョン2030の実現を目指します。

「グループ内外のコミュニケーションを拡充し、機能やサービスなどの提供価値を圧倒的に高める」

「人材力を引き上げるとともにワークエンゲージメントを飛躍的に高める」

「M&Aを駆使して既存領域および新規領域での事業を躍進的に拡大する」

 

OVOL中期経営計画2026の最終年度における連結財務目標は以下のとおりです。

連結経常利益

220億円

ROE(自己資本利益率)

8.0%以上

ROA(総資産利益率)

5.0%以上

ROIC(投下資本利益率)

7.0%以上

ネットD/Eレシオ

1.0倍以下

 

 

セグメント別には次の方針を掲げております。

 

(セグメント別方針)

「国内卸売セグメント」

グループの総合力を駆使し収益の最大化を実現

 

「海外卸売セグメント」

安定的な収益構造の構築と収益源のさらなる多様化

 

「製紙加工セグメント」

地球環境保全への積極的な取り組みと安定収益の基盤構築

 

「環境原材料セグメント」

循環型ビジネスを通じた持続可能な社会と地球の未来への貢献

 

「不動産賃貸セグメント」

保有不動産からの安定収益の継続と不動産ポートフォリオの最適化

 

(4) 財務上の対処すべき課題

当社グループの資本政策は、成長投資に必要な資金を確保し、安定的な株主還元に継続的に取り組み、中長期的成長の視点をもって、適切なバランスシート・マネジメントに努めることを基本としております。また、経常利益率、資本効率を高め、キャッシュ・フローの拡大に努めることで、ROA、ROE、ROICの向上など、持続的な成長を目指してまいります。

当社の配当政策につきましては、安定的かつ継続的な株主還元を基本として、連結業績の動向を勘案して決定しており、当期の年間配当を、前期の1株当たり120円(中間配当60円)から10円増配となる130円(同65円)といたしました。また、株主還元策として2023年11月には自己株式の取得を実施しております。

また、OVOL中期経営計画2026の期間においては、市場の期待に応える積極的な株主還元方針として「連結配当性向を30%以上とする累進配当」を掲げ、初年度となる2024年度においては、これまでを大幅に更新する1株当たり250円(中間配当125円)を予定しており、自己株式の取得についても機動的かつ柔軟に実施を検討してまいります。

なお、配当金の支払いについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (連結株主資本等変動計算書関係) 3 配当に関する事項」に、自己株式の取得については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 ③連結株主資本等変動計算書」に記載しております。

 

(5) セグメントごとの経営環境と対処すべき課題

① 国内卸売セグメント

紙の需要は国内における人口の減少や世界的なデジタル化など構造的要因を背景に縮小しており、この流れは今しばらく継続するものと想定しております。板紙に関しては、賃上げによる個人消費マインドの改善や、自動車及び機械関連向けの需要回復が期待されております。

本セグメントにおいては、紙業界のDX推進及び物流改革への投資など、サプライチェーンにおける当社グループの機能や価値の提供により、勝ち残りのための競合他社との差別化に取り組むこととしております。また、紙の価値普及に向けた取り組みを実施し、紙の特性、魅力、環境優位性等を改めて社会にお伝えすることで、紙需要のすそ野拡大に取り組む予定としております。

紙の専門商社である当社の機能と付加価値を提供し、グループの総合力を駆使して収益の最大化を実現するとともに、紙・パルプ業界並びに広く社会に貢献してまいります。

 

② 海外卸売セグメント

海外卸売セグメントにおいては、グローバルネットワークと地場に根差した流通体制の構築に取り組み、現在では、アメリカ、イギリス、アイルランド、オーストラリア、ニュージーランド、インド、中国、シンガポール、マレーシアで自前の在庫・物流機能を有する各国屈指の紙商を経営し、世界最強の紙流通企業グループの実現に必要なプラットフォームを構築しており、各拠点においてM&Aも実施することで、事業領域の拡大とリソース力の強化を進めております。

各市場においてもデジタル化の進展により、グラフィック用紙の需要減少は継続しておりますが、当社グループはグローバルなサプライソースを活用し、各拠点の在庫・物流機能を活かし取引先の需要を確実に取り込むとともに、サイン&ディスプレイ、パッケージ、軟包装、環境配慮型製品などの高付加価値製品の取り扱いをより一層拡大してまいります。また、補完的M&Aの継続的な実施により、各市場におけるシェアと事業領域を拡大し、安定的な収益構造の拡大と収益源のさらなる多様化を追求してまいります。

 

③ 製紙加工セグメント

当社グループは、再生原料である古紙の回収から製紙、加工、流通に至るまで、紙のサプライチェーンの川上から川下までをグループ内でカバーする事業体制を構築しております。この事業体制を活かして、古紙を原料とした段ボール原紙、印刷用紙及び家庭紙の製紙事業を展開し、安全操業と環境対応の管理を徹底しつつ、環境に配慮した商品を効率的に生産し、安定的にお客様へ供給する事業を展開しております。

段ボール製造事業では、段ボール原紙製造会社と多様なニーズに対応する段ボール製品の製造加工会社による総合パッケージサプライヤーとしての体制構築を国内及びインドネシアにおいて推進しており、国内の原紙製造においては木質バイオマス発電等の再生可能エネルギーも活用しCO2の削減に取り組んでおります。

再生家庭紙製造事業においては、同分野のリーディングカンパニーであるコアレックスグループによる安定供給体制を構築しており、災害発生時のトイレットペーパーの供給支援や災害に備えた備蓄推進活動も行っております。また高度なリサイクル技術により難再生古紙の再資源化を実現し、限られた資源の有効活用と紙ごみの削減にも貢献し、積極的な省エネの推進によりCO2削減にも取り組んでおります。

段ボール製造事業、再生家庭紙製造事業ともに原燃料価格や副資材、物流費等のコストの更なる上昇が想定されるものの、効率的生産や徹底したコスト削減を継続するとともに、CO2排出量削減や省力化のための投資も積極的に行うことで、地球環境保全への積極的な取り組みと安定収益の基盤構築を進めてまいります。

 

④ 環境原材料セグメント

イ 古紙再資源化事業:

国内において古紙の発生数量が減少している一方、中国の段ボール製品需要やアジア諸国の古紙需要の急激な変動により輸出価格は乱高下していることから、今後の国内市況と需給状況は引き続き不透明なものとなっております。

当社グループは、福田三商㈱を中心に日本全国をカバーする古紙事業のネットワークを構築しており、国内製紙メーカーへの原料古紙の安定供給を最優先し、国内の古紙リサイクルシステムの維持と古紙利用率の向上に貢献しつつ、採算とのバランスを勘案しながらアジア諸国への輸出も行っております。また、米国及びインドにおいても拠点を有し、事業を展開しております。

 

ロ 総合リサイクル事業:

㈱エコポート九州は熊本県にてプラスチックや木質系廃棄物の総合リサイクル事業を行っております。2022年4月に「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラ新法)」が施行され、増量が予想されるプラスチック廃棄物のリサイクルに対応するため、同県にて第二工場の建設計画を進めております。

 

ハ 再生可能エネルギー事業:

現在、当社グループが参画している発電事業会社は岩手県、島根県での木質バイオマス発電事業会社2社、北海道、岩手県、宮城県での太陽光発電事業会社3社の計5社になっており、各事業会社で発電した電力はすべて再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)を活用し社会に供給しております。

また、マレーシアにてPKSの集荷と日本などへの輸出を行うOVOL New Energy Sdn. Bhd.では、2023年7月に第2ヤードの運営を開始し、増加する需要に対応する供給体制の構築に取り組んでおります。

これらによって、循環型ビジネスを通じた持続可能な社会と地球の未来への貢献を進めてまいります。

 

⑤ 不動産賃貸セグメント

当社が東京・大阪・京都等に所有する不動産は立地条件に恵まれており、オフィス・集合住宅等での活用及びホテル事業者への賃貸により得られる賃貸料収入は、当社グループ業績に対して継続して安定的に寄与するものと見込んでおります。

引き続き主要物件における適正な管理と価値最大化を進め、また築年数が経過した物件の再開発や売却計画を策定・実行することにより、保有不動産からの安定収益の継続と不動産ポートフォリオの最適化を推進してまいります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) サステナビリティに関する基本的な考え方

当社は、サステナビリティをめぐる社会的要請への対応は、リスクの減少のみならず収益機会にもつながる当社グループの重要な経営課題であると認識しております。当社グループはサステナビリティを「経済価値と社会価値をともに実現する持続可能な事業活動」と定義し、「環境」「社会」「人材」「ガバナンス」の4つのテーマ、12項目のマテリアリティ(※)を特定することで、社会課題に対する当社グループの考え方を明確化しており、当年度においては各マテリアリティにおける「目指す姿」を策定いたしました。また、2025年3月期上半期中に、各マテリアリティの「目指す姿」の実現に向けた目標・KPI(重要業績評価指標)を策定する予定です。策定後は各指標の達成に向けた取り組みによりサステナブル経営をより積極的に進め、社会課題の解決、グループの持続的成長及び中長期的な企業価値の向上を図るとともに、グループ企業理念に掲げるグループの使命(「社会と地球環境のよりよい未来を拓くこと」)を果たしてまいります。

なお、本有価証券報告書においては、「気候変動」及び「人材(労働環境・ダイバーシティ&インクルージョン)」の2点をサステナビリティに関する重要な情報として、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の枠組みである「ガバナンス」「リスク管理」「戦略」「指標及び目標」に基づき記載いたします。

※12項目のマテリアリティの詳細については「日本紙パルプ商事グループ 統合報告書 2023」をご参照ください。

 

(2) ガバナンス

 サステナビリティ推進体制

当社グループ全体のサステナビリティへの取り組みの司令塔として、持続可能性に関する方針策定や戦略立案、ESG課題(※)の解決、目標達成に向けた全体マネジメントを所管する「サステナビリティ戦略会議」を設置しております。同会議は、社長を議長とし、常勤取締役、統括で構成され、常勤監査役がオブザーバーとして出席しております。あわせて、グループ全体のサステナビリティ推進の実務遂行組織である「サステナビリティ推進本部」が、グループ全体の環境・労働安全の強化及び脱炭素に向けた取り組み、取引先などからのESG・CSR対応の窓口、社会貢献への取り組みなど、サステナビリティ推進に向けた全般的な対応に加え、IR・広報業務を担っております。さらにグループ内横断組織として、「OVOL環境・安全委員会」及び「OVOLサステナビリティ推進委員会」を設置し、グループ全体にて、環境・安全コンプライアンスの向上及びサステナビリティ推進に取り組んでおります。

※ESG課題とは、環境・社会・ガバナンスに関する幅広い課題を意味し、以下のような課題が含まれております。

 環境(E) :   気候変動、資源枯渇、廃棄、汚染、森林破壊、等

 社会(S) :   人権、強制労働・児童労働、労働条件、雇用関係、等

 ガバナンス(G) :贈収賄・汚職、役員報酬、役員構成・多様性、ロビー活動・政治献金、税務戦略、等

 

 

<推進体制図>

 


 

<サステナビリティ戦略会議及び各委員会の詳細>

会議体名

委員長/議長

構成メンバー

目的/役割

サステナビリティ戦略会議

代表取締役社長

常勤取締役及び全統括

(オブザーバー:常勤監査役)

グループ全体のCSR、及びサステナビリティへの取り組みの司令塔として、持続可能性に関する方針策定や戦略立案、ESG課題の解決、目標達成に向けた全体マネジメントを所管

リスク管理委員会

管理本部本部長

副委員長:企画本部本部長

委員:内部監査室、サステナビリティ推進本部、管理本部、企画本部及び関連部門から選任

(オブザーバー:管理全般管掌、常勤監査役、管理企画・サステナビリティ統括及び情報技術統括)

「リスク管理基本規程」に基づき、リスクの洗い出し、分析、評価、対応の優先順位付け、個別リスクの取り組み施策の策定を行い、当社グループにおけるリスクを低減

OVOL

サステナビリティ

推進委員会

サステナビリティ

推進本部本部長

副委員長:管理本部本部長及び企画本部本部長

委員:各本部、支社、国内外グループ会社から選任

(オブザーバー:管理企画・サステナビリティ統括)

グループ全体でのサステナビリティへの取り組み強化と推進

委員は各組織におけるサステナビリティ、コンプライアンス推進の役割を果たすとともに、災害等緊急事態発生時には全社部門との連絡役を担う

OVOL

環境・安全委員会

サステナビリティ

推進本部本部長

副委員長:管理本部本部長及び企画本部本部長

委員:各本部、支社、国内外グループ会社から選任

(オブザーバー:管理企画・サステナビリティ統括)

グループ全体における環境・労働安全への取り組み強化と推進

委員は各組織において環境・労働安全コンプライアンス及び、温室効果ガス(GHG)排出量削減を中心とした環境対策の推進役を担う

 

 

 

 

(3) リスク管理

「サステナビリティ戦略会議」は、グループ全体でのサステナビリティに関するリスクと機会の特定、対応組織への指示、対応計画の策定、進捗の管理を行い、取締役会に報告します。取締役会は報告内容について承認もしくは改善指示を出し、適切なリスク管理が行われていることを監督します。また、サステナビリティ戦略会議にて審議されたサステナビリティ関連のリスク事項については、その下部組織である「リスク管理委員会」「OVOLサステナビリティ推進委員会」「OVOL環境・安全委員会」に指示され、グループ全体におけるリスク管理に反映されます。

 

(4) 戦略

① 気候変動への取り組み

 当社グループは、気候変動が紙の主要な原料である森林資源の減少や、地球温暖化による物理的リスク等の様々なリスクを引き起こす可能性があると認識しております。当社グループを含めたサプライチェーン全体で排出する温室効果ガス(GHG)排出量の削減により、気候変動への影響を最小化していくことが企業としての責務であると捉え、グループ全体での温室効果ガス(GHG)排出量削減に関する中長期目標を策定し、目標達成に向けた取り組みを推進しております。

 

<TCFD提言に基づく情報開示>
 当社グループは、OVOL長期ビジョン2030で掲げた企業像の確立を目指す取り組みの一環として、2021年6月にTCFD提言への賛同を表明し、「TCFDコンソーシアム」に参加しております。TCFD提言に基づく情報開示においては、各セグメントに及ぼす影響を明確にするため、紙・板紙卸売、製紙加工、環境原材料、不動産賃貸、各々の事業分野(※1)を分析の対象とし、気候変動が当社グループ事業に及ぼすリスク・機会についてシナリオ分析を行い、TCFDが推奨する「ガバナンス」「リスク管理」「戦略」「指標と目標」の4つの項目で開示しております。(※2)

 当社グループは、気候変動への対応、温室効果ガス(GHG)の排出量削減への取り組みをより一層推進するとともに、TCFD提言に基づく情報開示を今後も積極的に進めてまいります。

(※1) 当社グループ事業は、国内卸売、海外卸売、製紙加工、環境原材料、不動産賃貸の5つのセグメントにより構成されておりますが、分析にあたっては業態の観点から、国内卸売及び海外卸売を一つとし、紙・板紙卸売として表示しております。

(※2) 気候変動に関する「ガバナンス」及び「リスク管理」についてはサステナビリティ推進体制に組み込まれております。詳細については(2)ガバナンス及び(3)リスク管理をご参照ください。

 

 

当社グループは、IEA(国際エネルギー機関)やIPCC(気候変動に関する政府間パネル)などの専門機関が作成した2つのシナリオ(気温上昇が1.5℃(2.0℃)未満に抑制されるケースと4℃以上になるケース)を用いて、紙・板紙卸売、製紙加工、環境原材料、不動産賃貸の4つの事業分野について、気候変動に伴うリスクと機会の抽出を行いました。気候変動がもたらすリスクと機会は、低炭素社会への移行に伴うリスク(移行リスク)と物理的な影響(物理的リスク)に分類され、これらのリスクと機会を事業戦略に織り込むため、財務影響を短期・中期・長期の観点で定性的に評価いたしました。各事業分野に影響が及ぶ事象を集約したのち、短期・中期・長期にわたり中程度以上の影響を受ける項目を一覧として下記に示します。また、当社グループが晒されるリスクに関して財務インパクトとして定量的な分析を行いました。

 

 

 

分類

当社グループへの影響

対応策

影響度

リスク

移行

政策・法規制

製紙事業における、炭素税の導入・引き上げに伴う操業コストの著しい増加

• 温室効果ガス(GHG)排出量の中長期削減目標設定

• 省エネルギーのさらなる推進

• 再生可能エネルギーへの切り替え及びグリーン証書(※1)購入、コーポレートPPA(※2)、インターナルカーボンプライシング(※3)の導入などの検討

• 荷役車両などの電化の推進

評判

気候変動対策の遅れに伴う企業価値の下落やステークホルダーからの信頼失墜などによる、売上収益の減少、資金調達への影響、ブランド力の低下

• 温室効果ガス(GHG)排出量の中長期削減目標設定

• 省エネルギーのさらなる推進

• 適切な情報開示の推進

物理的

急性※4

風水害による拠点・設備・在庫・不動産物件等の甚大な被害

• ハザード調査の実施、浸水防止対策への取り組み

• 災害発生に備えた防災訓練の実施、BCM(事業継続マネジメント)の構築

風水害によるサプライチェーンの途絶に伴う事業停止、及び売上収益の減少

• サプライヤーに対する風水害発生時のBCMの構築とBCP(事業継続計画)整備の依頼

• 原料や製品のサプライヤー及び輸送手段の多様化による調達の安定化

慢性※5

海面上昇による臨海拠点の高潮等浸水被害の影響

• ハザード調査の実施、浸水防止対策への取り組み

• 災害発生に備えた防災訓練の実施、BCMの構築

 

機会

電化の進展に伴う電子部品関連機能材の需要増による業績への寄与

• 電子部品関連機能材の需要動向のモニタリング、及び商品の開発、状況に応じた供給量の確保

森林認証紙・再生紙など環境配慮型商品の需要増による業績への寄与

• 環境配慮型商品の需要動向のモニタリング、及び商品の開発、状況に応じた供給量の確保

脱プラスチック化の進展に伴う紙製品の需要増による業績への寄与

• 法規制及び需要動向のモニタリング、及び商品の開発、状況に応じた供給量の確保

 

 

 

・移行リスクと機会は、IEA(国際エネルギー機関)が発行するWorld Energy Outlookに記載のSTEPS,APS,SDS,NZE等、物理的リスクはIPCC(気候変動に関する政府間パネル)にて採用されているRCP2.6,RCP8.5等をベースに分析しております。

・影響度は、事業の存続に大きな影響があるレベルを“大”、事業の戦略を大きく変更する必要があるレベルを“中”と表示しております。

・影響度(大・中)の定義は、Applying Enterprise Risk Management to Environmental, Social and 

  Governance-related Risks,COSO & WBCSD をもとに作成しております。

(※1)グリーン証書:再生可能エネルギーにより発電された電気の環境価値を取引可能な証書にしたもの

(※2)コーポレートPPA:企業が発電事業者や、電力小売業者と直接契約し、再生可能エネルギーの電力を調達する仕組み

(※3)インターナルカーボンプライシング:低炭素への取り組みを進めるために企業内部で設定する炭素価格

(※4)急性:異常気象による気象災害などの事象(突発的な急性リスク)

(※5)慢性:長期的な気候パターンや降雨パターンの変化による事象(緩行的な慢性リスク)

 

財務インパクトの分析結果

 財務インパクトに関するシナリオ分析の結果、移行リスクにおける炭素税の導入が当社グループの製紙事業を中心に大きな影響を与えると想定しております。一方、温室効果ガス(GHG)排出量の削減を推進することにより、その影響を軽減できると考えております。物理的リスクでは、洪水・台風といった異常気象による国内グループ主要拠点の被害想定額は、1.5℃(2.0℃)及び4℃シナリオで1.7~5.1億円程度と試算しております。また、当社グループの取引先が甚大な被害を受けた場合、サプライチェーンにおける工場の操業停止や製品及び原燃料などの輸送が寸断される可能性があり、試算額以上の被害が想定されます。

項目

リスク

分析内容

財務インパクト(2050年)

4℃シナリオ

1.5℃(2.0℃)シナリオ

炭素税

移行リスク

炭素税導入による影響

△66.3億円

電力価格

移行リスク

電力価格変化による影響(※)

+2.3億円

△2.9億円

洪水被害

物理的リスク

年平均の洪水被害額(※)

△5.1億円

△1.7億円

高潮被害

物理的リスク

年平均の高潮被害額

△0.3億円

△0.1億円

営業停止損害(洪水)

物理的リスク

年平均の営業停止損害額(洪水)

△0.8億円

△0.3億円

 

・対象範囲は、当社及び国内連結子会社です。

・財務インパクトの試算額については、炭素税は「IEA WEO2022」、電力価格は「IEA WEO2019」、洪水被害は国土交通省「気候変動を踏まえた治水計画のあり方提言」、高潮被害は環境省「TCFDを活用した経営戦略立案のススメ」及び「気候変動影響評価報告書」等で公表されているパラメーターを使用し算出しております。

(※)2050年のパラメーターが無いため、2040年の数値で分析しております。

 

 

 

② 人的資本・多様性に対する取組み

イ 当社グループにおける人材戦略

当社グループは、人材こそがグループの経済価値の創造を左右すると認識しております。今後さらなる持続的成長を遂げるため、「労働環境」と「ダイバーシティ&インクルージョン」を人材面のマテリアリティとして特定し、取り組みを進めております。

ロ 当社における人材育成方針

当社は人材育成を「持続的な成長のための投資」と考え、積極的に投資するとともに、人事データを元に戦略的な採用、教育などを実行する透明度の高いプロセスの確立を重要視して取り組みを進めております。

人材の採用については、質的にも量的にも高水準の人材を確保することを目指し、新卒採用に加え、キャリア採用にも力を入れております。人材育成については、「役割と責任を果たす人材の育成」「変革期に対応する自立型人材の育成」をコンセプトにプログラムを推進しており、各世代に応じた様々な研修を実施するとともに、社員の成長を促し、能力開発を目的とした育成型異動や、経営人材育成に向けたグループ会社への出向などを推進しております。これらの取組みを反映した人事データを、タレントマネジメントシステムを通じて人材ポートフォリオとして活用し、人材の戦略的配置を実施しております。

ハ 当社における社内環境整備方針

当社は魅力ある人材の採用・維持に注力するとともに、能力開発機会の提供、公正な評価・処遇や働きやすい労働環境の整備など、すべての従業員の活躍を促す仕組みを拡充していくことで、個々の従業員の能力向上と組織力の強化に取り組んでおります。その中で、役職員一人ひとりが自らの健康に責任を持ち、心身の健康維持・増進に主体的に取り組み、意欲をもって働くことが、個々の生活の質や仕事の質を高め、当社の生産性や企業価値向上につながると考え、健康経営への取り組みを強化しております。また今後、人的資本を強化していくために従業員エンゲージメントの向上が必要不可欠と考えており、2023年度からエンゲージメントサーベイを実施し、エンゲージメント向上に向けた取り組みを進めております。この他、多様な人材が活躍する基盤を整備するため、子育てサポートの環境整備や定年延長の実施など性別・年齢などに関係なく多様性が受け入れられる職場風土の醸成と制度の構築にも注力しております。

 


 

 

 

(5) 指標及び目標

① 気候変動への取り組み

当社グループでは、製紙事業子会社を中心に以前から温室効果ガス(GHG)排出量削減に取り組んでおりますが、パリ協定で掲げられた「気温上昇を1.5℃未満に抑える」という世界共通の目標達成に向け、グループとしての削減目標を明確にするために、「日本紙パルプ商事グループ温室効果ガス排出量に関する中長期削減目標」を2024年5月に公表いたしました。現在、この目標の達成に向けて、製紙事業子会社を中心に生産効率向上などによる省エネルギー化の推進や再生可能エネルギーの導入など、温室効果ガス(GHG)排出量の削減に取り組んでおります。

また、2024年2月にはGXリーグへ参画し、持続可能なビジネスモデルの構築や環境に配慮した取り組みを推進しております。

 

「日本紙パルプ商事グループ 温室効果ガス排出量削減に関する削減目標」

 中期目標:2030年度までに2019年比で50%削減

 長期目標:2050年カーボンニュートラルの実現を目指す

※対象範囲:日本紙パルプ商事および連結子会社におけるSCOPE1・2

 

■温室効果ガス(GHG)排出量推移

単位:万t-CO2

 

 

2019年度

2020年度

2021年度

2022年度

当社及び

国内連結子会社

SCOPE1

7.2

6.8

6.5

6.5

SCOPE2

15.6

13.9

13.0

12.5

海外連結子会社

SCOPE1・2

1.6

1.3

1.6

2.0

SCOPE1・2 合計

24.4

21.9

21.1

20.9

 

 

SCOPE3全カテゴリ 合計

366.2

779.0

 

※海外連結子会社の2019年度から2021年度の算定値は、2022年度の算定値を基準に推計しております。

※SCOPE2は、マーケット基準で算定しております。

※SCOPE3の算定値については、2021年度は当社単体、2022年度は当社及び国内外連結子会社を対象範囲としております。

※数値は小数点第2位以下を四捨五入しているため、合計が一致しない場合があります。

 

 

 

② 人的資本・多様性に対する取り組み

イ 人材育成・社内環境整備に関する指標

当社では、上記「(4)戦略」において記載した人材の多様性の確保を含む人材育成方針及び社内環境整備方針について次の指標を用いており、当該指標に関する目標及び実績は次のとおりです。これらの指標項目については、今後も人的資本・多様性に対する取り組みを深化させる中で必要に応じて見直しを行ってまいります。

なお、連結グループにおいて主要な事業を営む当社においては指標のデータ管理とともに具体的な取組みを進めている一方、現在のところ全ての連結子会社で同様に行われていないため、連結グループとしての記載が困難であることから、提出会社である当社単体の目標及び実績を記載しております。

 

人材育成 テーマ①人材の採用

指標

2023年度

目標(年度)

新卒採用者数

男性:10名、女性:6名

15以上

2024年度

 

人材育成 テーマ②人材の戦略的配置

指標

2023年度

目標(年度)

海外派遣研修への派遣人数

1

2名以上

2024年度

内部監査室キャリアパス人数

4

4名以上

2024年度

 

人材育成 テーマ③多様な人材を活かす企業風土の醸成

指標

2023年度

目標(年度)

女性管理職比率(3月末)

0.4

10%以上

2030年度

総合職採用における女性比率

36.4

30%以上

2026年度

 

社内環境整備 テーマ①健康経営

指標

2023年度

目標(年度)

有給休暇取得率

79.0

80%以上

2024年度

 

社内環境整備 テーマ②エンゲージメント

指標

2023年度

目標(年度)

離職率(自己退職)

1.8

1.0%以下

2024年度

 

社内環境整備 テーマ③多様な人材の活躍基盤構築

指標

2023年度

目標(年度)

男性育休取得率

38.5

50%以上

2024年度

 

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりであります。

リスク項目は、「特に重要なリスク」、「その他のリスク」に区分しております。

また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末(2024年3月31日)現在において当社グループが判断したものであり、現時点では予見できないまたは重要と見なされていないリスクや、国内外の経済情勢等により影響を受ける可能性があります。

 

(1)特に重要なリスク

①市況・市場リスク

イ 主な取扱商品の需要減少、市況及びマクロ経済変動リスク

・リスクの概要と発生可能性、当社グループが受ける影響

当社グループが取り扱う主な製品及び商品である紙、板紙は、情報媒体の電子化、省包装やパッケージ素材の切り替え等の要因によって構造的に需要が減少するリスクがあります。また、製紙原料である古紙は紙・板紙の生産量及び消費量の減少によって需要、発生ともにより一層減少するリスクがあります。

現に、日本をはじめとする先進国においては、印刷・情報用紙の需要減少傾向は顕在化しており、製紙原料である古紙の需要、発生ともに減少する可能性があります。しかしながら、新興国では経済成長に伴って今後も紙・板紙ともに需要の増加が見込まれるなど、現在のところ当社グループの経営成績に影響を与える可能性は僅少であると認識しております。

また、事業を展開している地域における経済環境の悪化及びそれに伴う需要の減少、または消費動向に影響を及ぼすような不測の事態の発生や他社との厳しい競争による影響を受ける可能性があります。

マクロ経済環境の悪化については、顕在化の時期・影響度について確定的な見積りを行うことは困難と認識しておりますが、当社グループが顧客の求める商品・製品を競争力ある価格により提供できない場合は、市場におけるシェアや顧客との取引関係を喪失する可能性があります。

なお、商品仕入実績及び販売実績については「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (3) 経営成績の状況 ⑤ 生産、受注及び販売の実績」に記載しております。

 影響を受けるセグメントと対応

国内卸売

主力の印刷情報及び包装用途に加え、環境配慮型・高機能素材等の高付加価値品の販売拡大を進めると同時に、紙の価値普及に向けた取り組みを実施し、紙の持つ特性、魅力や環境優位性等を発信していく予定です。

海外卸売

製紙加工

・製紙加工

段ボール事業、再生家庭紙事業においては、インバウンド需要も含め、今後も比較的安定した需要を見込んでおりますとともに、段ボール事業においては通販用緩衝材、再生家庭紙事業においては高付加価値製品などの開発・生産により、新たな需要の確保にも注力しております。さらに、再生家庭紙事業では、原料古紙の確保と取引先との関係強化に向け、難再生古紙の使用やクローズドループによる資源循環型リサイクル体制の構築に取り組んでおります。

・環境原材料

古紙調達網の整備等により、古紙調達量を確保し、国内製紙メーカーへの安定供給の維持に取り組んでおります。

・製紙加工と環境原材料の相互補完

当社グループは、川上である環境原材料セグメントから、川中である製紙加工セグメント、川下である国内卸売及び海外卸売の両セグメントまでの事業ポートフォリオを構築しております。そのため、原材料価格の下落時には、環境原材料セグメントの利益低下を製紙加工セグメントが製造コストの低下として吸収し、原材料価格の高騰時には、製紙加工セグメントの製造コストの増加を、環境原材料セグメントの利益増加として吸収する事業構造を構築しております。

環境原材料

 

 

 

ロ 不動産市況の影響

・リスクの概要と発生可能性、当社グループが受ける影響

当社は、国内所有不動産の活用による収益基盤の安定化を目的として不動産賃貸事業を行っております。

賃貸用不動産が人口減少等によって供給過剰になるリスクや、所有不動産のうち築年数が進んでいる建物について、大規模な修繕等が必要になるリスクがあります。

しかしながら、当社が保有する賃貸用不動産は東京・大阪・京都等、今後の人口減少社会においても急激な人口の変動が起きにくい地域にあるため、供給過剰による空室率の上昇や賃貸条件の悪化等の影響を受ける可能性は現在のところ僅少であると考えております。ただし、今後New Normal(新しい働き方等)が定着した場合、オフィス需要の減少、賃料水準の低下が顕在化する可能性があります。

なお、賃貸用不動産については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (賃貸等不動産関係)」に記載しております。

 影響を受けるセグメントと対応

不動産賃貸

人口減少社会においても一定の需要が見込める地域で事業を行っております。

また、当社は短期、中期、長期の所有不動産修繕計画を策定し、当該不動産の状態及び賃貸不動産市場の動向を勘案して必要な修繕を実施する一方、築年数が経過した物件に対しては再開発計画の策定や不動産ポートフォリオの最適化を進めてまいります。

 

 

②取引関係に係るリスク

イ 取引先の信用リスク

・リスクの概要と発生可能性、当社グループが受ける影響

当社グループは、取引先に対して掛売りを行っているほか、前渡しや貸付を行う場合があります。

このため、取引先の信用状況が悪化した場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

ただし、当該リスクの顕在化の時期・影響度については確定的な見積りを行うことは困難と認識しております。

なお、連結会社以外の会社等の銀行借入等に対する債務保証の額については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (連結貸借対照表関係) ※保証債務等」に記載しております。

 当社グループの対応

当社グループでは取引先ごとの信用限度額設定とその定期的な見直しや、与信先の信用状態に応じた担保・保証の設定、信用保険の付保等の債権保全策を講じております。

 

 

ロ 仕入先メーカーの方針変更リスク

・リスクの概要と発生可能性、当社グループが受ける影響

当社グループが商品を仕入れている製紙メーカー各社は、生産効率、輸送コスト等を勘案して紙及び板紙を製造しており、需要動向や製造コスト等を理由に既存商品の生産を中止する決断を下すことがあり、その場合は当社グループが失注する可能性があります。

また、需要の減少に対応するため製紙メーカーの寡占化が進んだ場合、仕入先である製紙メーカーの市場に対する影響力が高まり、相対的に当社グループの影響力が低下する可能性があります。

ただし、当該リスクの顕在化の時期・影響度については確定的な見積りを行うことは困難と認識しております。

なお、当社は商品仕入総額に対して、王子ホールディングス㈱傘下の王子製紙㈱、王子エフテックス㈱及び王子マテリア㈱からの仕入比率は45.3%、日本製紙㈱からの比率は15.2%と高い比率となっております。

 影響を受けるセグメントと対応

国内卸売

調達先のグローバル化など多様化を進め、商品の安定供給ができる体制を構築しております。

また、サプライチェーンの中で主導的な立場に立てるよう、川上、川下双方から評価される機能や付加価値の創造を図ってまいります。

海外卸売

 

 

 

③その他の重要なリスク

イ 紙販売代理店機能の低下に係るリスク

・リスクの概要と発生可能性、当社グループが受ける影響

紙の需要構造の変化や、デジタルトランスフォーメーション等の影響により、当社グループが果たしてきた機能役割を製紙メーカーもしくは顧客が担う可能性があります。その場合、当社グループの主力事業である卸売事業に大きな影響を与える可能性があります。

ただし、当該リスクの顕在化の時期・影響度については確定的な見積りを行うことは困難と認識しております。

 影響を受けるセグメントと対応

国内卸売

・国内卸売及び海外卸売

以前から主力の印刷情報及び包装用途に加え、環境配慮型・高機能素材等の高付加価値品の販売拡大を進めると同時に、紙の価値普及に向けた取り組みを実施し、紙の持つ特性、魅力や環境優位性等を発信していく予定です。

・当社グループ全体

製紙加工や環境原材料等の事業を拡大し、事業ポートフォリオの多角化を通じて当該リスクの影響を低下させることを目指しております。

また、人権侵害や環境負荷のリスクに配慮しながらサプライチェーンの中で主導的な立場に立てるよう、川上、川下双方から評価される機能や付加価値の創造を図ってまいります。

海外卸売

 

 

ロ 物流機能に係るリスク

・リスクの概要と発生可能性、当社グループが受ける影響

人口減少及び高齢化社会の進展にともない、トラック配送のドライバー等、物流機能を担う人手が不足する状態が徐々に顕在化しており、配送・保管コストの上昇や、人手の確保が困難になることで商品を適時適切に運べない等の機会損失が発生するリスクが高まっております。

 影響を受けるセグメントと対応

国内卸売

IT等を活用した合理化を徹底し、国内では、同業他社との物流共同化、週間配送量の平準化や委託倉庫における待機時間の削減を推進しております。

家庭紙においては、配送効率の向上とドライバーの作業負担軽減を両立させたノーパレット輸送を推進しております。

海外卸売

製紙加工

環境原材料

 

 

ハ 新たな事業投資に関するリスク

・リスクの概要と発生可能性、当社グループが受ける影響

当社グループは、新たな事業展開及び既存事業の拡充・強化等を図り、事業ポートフォリオの最適化を目的として、新会社の設立やM&Aを含めた既存の会社への投資等を経営戦略のひとつとしております。

当社グループが実行した事業投資について、当社グループ及び投資先企業を取り巻く事業環境の変化等により、当初期待していた収益やシナジー効果を得られない可能性があります。

ただし、当該リスクの顕在化の時期・影響度については確定的な見積りを行うことは困難と認識しております。

 影響を受けるセグメントと対応

国内卸売

新たな投資を行う際は事前にリスクについて十分な検討を行い、経営会議にて審議を重ねるほか、社内規程に基づく審査や、対象企業の財務内容、契約関係等について詳細なデューデリジェンスを実施するなど極力諸リスクを回避するように努めております。

海外卸売

製紙加工

環境原材料

 

 

 

ニ 関係会社株式及びのれんの減損リスク 

・リスクの概要と発生可能性、当社グループが受ける影響

当社グループは、保有する関係会社の株式を貸借対照表に関係会社株式として計上しております。

株式の実質価額が取得原価よりも著しく下落し、かつ、実質価額が取得原価まで回復する見込みがない場合、減損損失を計上することで、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

また当社グループは、企業買収に伴って取得した子会社の将来の超過収益力として連結財務諸表にのれんを計上し、その効果の及ぶ期間にわたり償却を行っております。

のれんの回収可能性については、子会社の業績や事業計画等を基に判断を行っておりますが、将来において当初想定した超過収益力が見込めなくなった場合には、のれんの減損損失が計上され、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

なお、のれんの償却方法及び償却期間については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項) 4 会計方針に関する事項 (8) のれんの償却方法及び償却期間」に記載しております。

 影響を受けるセグメントと対応

国内卸売

関係会社の財政状態、経営成績、事業計画等について定期的に収集し、減損の兆候が認められるかの判断を定期的に行っております。

海外卸売

製紙加工

環境原材料

 

 

ホ 有形固定資産の減損リスク

・リスクの概要と発生可能性、当社グループが受ける影響

当社グループは、国内卸売事業や海外卸売事業における事務所や倉庫、製紙加工事業や環境原材料事業における生産設備並びに、不動産賃貸事業における賃貸用不動産等の固定資産を保有しておりますが、将来の経済状況が悪化し、収益性が有形固定資産の回収可能価額を下回った場合、有形固定資産の減損が発生する可能性があります。

有形固定資産の減損については、兆候の有無を判定し、兆候が認められるかの判断を定期的に行っております。

 影響を受けるセグメントと対応

国内卸売

連結子会社の財政状態、経営成績について定期的に収集し、有形固定資産の減損の兆候がないか確認しております。

海外卸売

製紙加工

環境原材料

不動産賃貸

 定期的に物件ごとの回収可能価額を調査し、有形固定資産の減損の兆候がないか確認しております。

 

 

 

 

(2)その他のリスク

①経営環境に係るリスク

イ 法的規制

・リスクの概要と発生可能性、当社グループが受ける影響

当社グループは国内外において、紙、板紙、パルプ、古紙等の卸売や、製紙加工、環境原材料、不動産賃貸等に関する事業を展開し、それぞれの事業分野において、日本及び各国の広範な各種法令・諸規則等の適用を受けていることから、これら法令・諸規則の改正もしくは解釈の変更、法的規制の新設によっては、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

このうち、製紙加工事業や環境原材料事業は、大気や土壌及び水質、また、廃棄物処理やリサイクル等さまざまな環境関連の法規制の適用を受け事業活動を行っており、これらの法規制がより厳格化された場合は、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

ただし、当該リスクの顕在化の時期・影響度については確定的な見積りを行うことは困難と認識しております。

なお、東京証券取引所に開示いたしましたとおり、当社は、2023年4月に、独立行政法人国立印刷局を発注者とする再生巻取用紙の入札に関して独占禁止法違反の疑いがあるとして公正取引委員会による立入検査を受け、2024年3月に、独占禁止法第3条(不当な取引制限)の規定に違反する行為を行っていたと認定されました。当社は、本件に関し、公正取引委員会に対して課徴金減免制度の適用申請を行い、過去の違反行為を自主的に申告するとともに、同委員会による調査に全面的に協力してまいりました結果、排除措置命令及び課徴金納付命令のいずれも受けないこととなりました。

 当社グループの対応

当社グループでは、コンプライアンス経営の確立を目指し、全従業員へのeラーニング、セミナー等の研修をはじめ、子会社で取締役等、重要な役職に就く出向者に向けた研修、ガイダンスを行うなど法令遵守に向けた取り組みを強化しております。

2021年4月に「環境・安全推進室」を設置し、グループ各社における環境関連法令・労働安全法令等へのコンプライアンス体制及び安全操業体制の強化に取り組んでおります。また、グループ横断組織である「OVOL環境・安全委員会」を通じ定期的な環境法令の改正情報の発信、及び、各種情報交換を行っております。

なお、公正取引委員会による立入検査に関し、上記命令のいずれも受けておりませんが、本件に関与していた事態を厳粛かつ真摯に受け止め、独占禁止法の遵守を徹底するために策定した再発防止策を着実に実施するとともに、コンプライアンスの一層の徹底を図ってまいります。

 

 

ロ カントリーリスク

・リスクの概要と発生可能性、当社グループが受ける影響

当社グループは、海外の会社との取引や出資において、当該国の政治・経済・社会情勢に起因した、代金回収や事業遂行の遅延、不能等が発生するカントリーリスクを負っております。

ただし、当該リスクの顕在化の時期・影響度については確定的な見積りを行うことは困難と認識しております。

 影響を受けるセグメントと対応

海外卸売

当社子会社所在国の政治、経済、社会情勢の変化については、現地勤務者や専門機関、取引先金融機関からの情報を適宜入手し、適切な経営判断や営業取引条件の設定・見直しに努めております。

製紙加工

環境原材料

 

 

 

 

②金融市場に係るリスク

イ 資金調達に関するリスク

・リスクの概要と発生可能性、当社グループが受ける影響

当社グループは、事業活動及び事業投資等で必要となる資金について、財務の健全性維持を勘案し、国内外の金融機関等からの借入金及びコマーシャル・ペーパー、社債の発行による金融市場からの調達を行っております。

金融市場の混乱や当社格付の引き下げ、或いは金融機関、機関投資家の融資及び投資方針の変更は、当社グループの資金調達に制約を課すとともに、調達コストを増大させ、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

また、需給ギャップや原燃料価格・物流費の高騰などによるインフレ懸念に対し、一部の国々・地域をはじめ国内においても、利上げや金融引き締めといった政策転換が発表・実施されており、今後の国内外における動向によっては金融市場が大きく変動する余地があり、中期的に当該リスクが顕在化する可能性があります。

 当社グループの対応

当社グループは、連結会計年度ごとに資金調達方針を定めております。

なお、当社グループの資金調達の方針及び状況については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (4) キャッシュ・フローの状況 ② 資本の財源及び資金の流動性」及び「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (金融商品関係)」に記載しております。

 

 

ロ 為替変動リスク

・リスクの概要と発生可能性、当社グループが受ける影響

当社グループは輸出入及び外国間等の貿易取引において外貨建ての決済を行うことに伴い、日本円に対する外国通貨レートの変動リスクを負っております。なお、当社グループの地域別売上収益の構成比については「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (3) 経営成績の状況 ③ 地域別・製品別の売上収益 イ地域別売上収益」に記載しております。

また、当社グループの連結財務諸表には、海外の連結子会社の資産・負債及び損益も組み込まれております。これらの企業はそれぞれ日本円以外の通貨にて財務諸表等を作成しており、各報告通貨を日本円に換算する時点の為替変動は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

ただし、当該リスクの顕在化の時期・影響度については確定的な見積りを行うことは困難と認識しております。

 影響を受けるセグメントと対応

国内卸売

当社グループは、貿易取引では原則として先物為替予約等によるヘッジ策を講じております。ただし、それによって完全に為替リスクが回避される保証はありません。

海外卸売

製紙加工

環境原材料

 

 

③気候変動・自然災害等に係るリスク

イ 気候変動及び自然災害等に係るリスク

・リスクの概要と発生可能性、当社グループが受ける影響

脱炭素社会への移行に伴い、当社グループは、カーボンプライシングの導入、市場ニーズの急速な変化、環境規制等の強化、また、金融市場の投融資基準の見直し等の影響を受ける可能性があります。なお、これらへの対応が不十分あるいは遅れた場合は、温室効果ガス(GHG)排出量が多い製紙加工事業等において、炭素税の引き上げに伴う操業コストの著しい増加により、財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があります。(移行リスク)

また、国内において将来発生が懸念されている首都直下型地震や南海トラフ地震、大型台風や洪水等の自然災害により、当社グループの設備が被害を受けた場合、もしくは取引先や物流機能等が被害を受けサプライチェーンの分断など間接的な影響が生じた場合、事業活動が長期間にわたり中断し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。(物理的リスク)

 当社グループの対応

当社では、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同のもと、気候変動に関するリスクが事業や業績に与える影響・対応策について、TCFD提言に基づく定性的なシナリオ分析を実施し、2022年度に開示いたしました。2023年度においては、移行リスク及び物理的リスクの財務インパクトを当社及び国内連結子会社を対象に試算し、開示しております。

また、大型地震や台風、洪水等の大規模災害が発生した際には、いち早く従業員及びその家族の安否を確認する仕組みとして、安否確認システムを導入するとともに、被災地の被害状況を早急に把握するため、緊急時通信体制の強化を進めております。そのうえで、定期的な訓練を実施することにより、有事の対応力を強化するとともに、災害対応意識の定着に努めております。また、システム障害に対する耐性の強化やテレワーク環境の整備等を行い、災害等が発生した場合でも事業活動への影響を最小限にする体制の構築に努めております。

 

 

④その他のリスク

イ 保有する投資有価証券の時価変動リスク

・リスクの概要と発生可能性、当社グループが受ける影響

当社グループは、仕入先企業、販売先企業、取引金融機関等、業務上密接な関係にある企業の株式を保有しております。

当社グループが保有する有価証券のうち、時価を有するものについては、金融商品市場の動向等による価格変動により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

なお、主な株式の保有状況については「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (5) 株式の保有状況」に記載しております。

 当社グループの対応

当社グループは、これらのリスクを回避するため、定期的に把握された時価が取締役会に報告されており、取引先企業との定量・定性面での関係性を勘案して保有状況を継続的に見直しております。

 

 

ロ IT・セキュリティに係るリスク

・リスクの概要と発生可能性、当社グループが受ける影響

外部からの予期せぬ不正アクセスやコンピュータウイルスによる攻撃、災害等の不測の事態によって機密情報の漏洩、システムの障害及び通信回線のトラブル等が発生した場合、被害の規模によっては当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

ただし、当該リスクの顕在化の時期・影響度については確定的な見積りを行うことは困難と認識しております。

 当社グループの対応

当社グループは、ITインフラ整備と情報セキュリティに関する各種規程を整備し、当社グループが保有するシステムやデータ等の情報資産の適切な管理・保護に努め、ファイアウォールによる外部不正アクセスの防止、ウィルス防御システムの定期更新、システム及び通信回線の二重化等にも努めております。

 

 

ハ 訴訟に係るリスク

・リスクの概要と発生可能性、当社グループが受ける影響

当社グループは、国内及び海外事業に関連して、訴訟・係争・その他の法律的手続きの対象となるリスクがあります。

当連結会計年度において当社グループに重大な影響を及ぼす訴訟等は提起されておらず、顕在化の時期・影響度については確定的な見積りを行うことは困難と認識しております。しかし、今後何らかの訴訟が提起された場合、当社グループの社会的な評判や財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループの対応

リスク管理委員会を当社内に設置し、法律事務所等の専門家の助言を得ながらリーガルリスクの最小化、コンプライアンス違反の未然防止等に努めております。

 

 

ニ 人材確保及び労務関連リスク

・リスクの概要と発生可能性、当社グループが受ける影響

当社グループは、人材を最大の経営資本と位置付けており、人材こそが企業競争力の源泉であり、当社グループが将来にわたって持続的な成長を遂げていくための原動力であるという考えのもと、従業員一人ひとりが活躍しやすい環境・仕組みづくりを推進しております。

また、当社グループが推進する新たな事業展開及び既存事業の拡充・強化等を図るため、新会社の設立や既存設備への追加投資等を行っており、事業運営には多様な人材が必要となっております。

紙専門商社を起源とし主に国内卸売事業を営む当社と異なり、製紙加工事業や環境原材料事業等を営むグループ各社は工場や作業所等を有しているため、関連法令、設備、操業に精通した経営人材の育成に取り組んでいく必要があります。また、長期ビジョン2030にて当社グループのあるべき姿のひとつとして「世界最強の紙流通企業グループ」を掲げる中、海外卸売事業における在外子会社の経営管理に長けた人材の育成にも取り組んでいく必要があります。

しかしながら、日本における少子高齢化による新卒学生数の減少や、日本を含む一部先進国における労働人口の減少等により、適切で十分な人材の確保が困難となった場合及び従業員の退職により人材が流出した場合には、当社グループの事業継続及び財政状態、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

なお、世界的なコロナ禍を契機とした働き方の変容や、女性の活躍促進、高齢者・外国人労働者の雇用促進、企業の生産性向上といった社会の動きによって就業構造や企業の採用環境が変化することも考えられるため、当該リスクの顕在化の時期・影響度については確定的な見積りを行うことは困難と認識しております。

 当社グループの対応

当社グループは、事業を展開する各国において法令に基づく適正な労務管理等により、労務関連のリスクの低減に継続的に取り組むとともに、OVOL長期ビジョン2030で掲げる「紙業界の枠を超えたエクセレントカンパニー」を目指し、従業員の満足度をより高めつつ、多様な人材の確保を強化してまいります。

また当社は、従業員が働きやすい環境や制度の拡充に積極的に取り組んでおります。

・働き方改革(時間外勤務削減、有給休暇取得促進、時間単位の年次有給休暇制度、シフト勤務・育児短時間勤務拡張(法定以上)・勤務地限定制度等の柔軟な働き方拡張、在宅勤務制度、EAP相談室、育児介護休業法改正への対応推進等)

・採用の多様化・強化(キャリア採用の推進、退職者の再雇用、新卒採用強化(オンライン説明会、1Day仕事体験等)、障がい者雇用の推進等

・定年延長の実施(65歳定年とする。60歳以降も処遇は59歳以前と変わらず一律の役職定年も設けない制度とし、60歳選択定年も可能(5年間の経過措置)等)

・人材育成(各種研修(階層別、選択型)、海外派遣研修制度、自己啓発支援制度、新入社員指導員制度等)

 

 

ホ 人権問題に関するリスク

・リスクの概要と発生可能性、当社グループが受ける影響

当社グループは、人権尊重は事業活動の基盤であると認識し、当社グループ事業に関わるすべての人々の人権を尊重するとの考え方のもと、私たちのビジネスに関わるすべての人々の人権を尊重する責任を果たすべく「日本紙パルプ商事グループ人権方針」を策定しております。また、人権問題が与える事業リスクへの認識を深めるため、外部有識者による「ビジネスと人権」研修会を当社経営層向けに実施し、2024年5月には「日本紙パルプ商事グループ 持続可能な調達に対する考え方」を策定、公表いたしました。今後はグループ従業員への「ビジネスと人権」教育を実施し、当社グループならびにサプライヤーも含めたサプライチェーン全体での人権尊重への取組みを強化してまいります。

その一方で、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」や日本政府「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」で示されている企業の人権尊重責任への要請・関心が高まるなか、当社グループによる人権への取組みが奏功しない、もしくは不十分である場合、顧客や金融機関、株主をはじめとするステークホルダーからの信用失墜等により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。さらに、当社グループ内で人権問題が発生しその対応が不十分とされた場合は、顧客や金融機関等から監査要求や、取引・融資等の見直し要請を受ける可能性があります。加えて、当社グループのサプライヤーや業務委託先で人権問題が発生した場合は、当社グループとして改善・救済措置の対応が顧客や金融機関など市場から要請され、対応が不十分とされた場合は取引中止や信用失墜による業績への影響が想定されます。

 当社グループの対応

当社グループ役職員への「ビジネスと人権」教育を2024年度に実施すべく準備を進めております。また、グループ人権リスク及びサプライチェーンにおける人権リスクの特定等を検討しております。

 

 

ヘ 繰延税金資産の回収可能性リスク

・リスクの概要と発生可能性、当社グループが受ける影響

当社及び連結子会社は、日本及び様々な税務管轄において法人税を課されており、通常の営業活動において連結会社間の移転価格取引により最終的な税額の決定に不確実な状況が多く生じております。
 また、当社グループは多くの税務管轄において税務当局から継続的な調査も受けております。
 当社グループが計上している税金引当額、及び繰越欠損金や繰越税額控除を含む繰延税金資産の帳簿価額の計算には高度な判断と見積り(将来の課税所得の見積りを含む)が必要となっており、それらの変動によって繰延税金資産の回収可能性は影響を受け、将来の税金費用の計上額に影響を及ぼす可能性があります。
 一部の税務管轄において、繰越欠損金又は繰越税額控除の使用が、翌期以降の課税所得に対する一定の水準に制限されており、ある特定の要因の所得との相殺にしか使用できない場合があります。その場合、課税所得が発生した税務管轄において、多額の繰越欠損金又は繰越税額控除があるにもかかわらず、税金の支払いが発生するため税金費用を計上する可能性があります。

なお、繰延税金資産の金額については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (税効果会計関係)」に記載しております。

 当社グループの対応

当社グループでは当社及び連結子会社が計上する繰延税金資産について、回収可能性を定期的に見直し、必要に応じて増額・減額を行っております。

 

 

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末(2024年3月31日)現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、特に重要なもの

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。連結財務諸表の作成にあたって、決算日における資産・負債及び報告期間における収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要とします。これらの見積りについては、過去の実績、現在の状況に応じ合理的な判断を行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しておりますが、特に以下の重要な会計方針が、当社グループの連結財務諸表の作成において使用される当社の重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。

 

① 貸倒引当金

債権の貸倒れによる損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率等により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を勘案し、回収不能見込額を見積り計上しておりますが、将来において、取引先の財務状況等が悪化し、支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上又は貸倒損失が発生する可能性があります。

経営者は、貸倒引当金は十分に計上され、債権が回収可能な額として計上されていると判断しております。ただし、これらの評価には経営者としても管理不能な不確実性が含まれているため、予測不能な前提条件の変化等により債権の評価に関する見積りが変化した場合には、将来当社グループにおいて貸倒引当金を増額又は減額する可能性もあります。

 

② のれんの減損

当社グループにおけるのれんの残高は多額であるため、会計上の見積りにおいて重要なものとなっております。

当社グループは、企業買収により取得した子会社の将来の超過収益力として連結貸借対照表にのれんを計上し、その効果の発現する期間(5~20年)を個別に見積り、当該期間にわたり均等償却を行っております。ただし、金額が僅少なものについては、発生年度に全額償却しております。

経営者は当連結会計年度末におけるのれんの資産性について、償却期間及び金額は適切であると判断しております。ただし、これらの前提条件には子会社の業績や事業計画等を基にした判断が含まれており、経営者としても管理不能な不確実性が含まれているため、将来において当初想定した子会社の収益力等が見込めなくなった場合にはのれんの減損損失が計上される可能性があります。

 

③ 投資有価証券の減損

当社グループは、仕入先企業、販売先企業、取引金融機関、関係会社等、業務上密接な関係にある企業の株式等を保有しており、これらの有価証券の残高は多額であるため、会計上の見積りにおいて重要なものとなっております。

なお、当該株式の減損にあたり市場価格又は合理的に算定された価額のある有価証券については、個々の銘柄の時価が取得原価に比べ50%以上下落した場合には、「著しく下落し、回復可能性がないもの」と判定し処理しております。個々の銘柄の時価が取得原価に比べ30%以上50%未満下落した場合も「著しく下落した」とする判定基準を設け、この場合の時価の回復可能性について過去の時価の推移に基づく一定の形式基準により判定し処理しております。また、市場価格のない株式については、個々の銘柄の1株当たり簿価純資産額が帳簿価額を50%以上下回っている場合及び保有資産に大幅な含み損がある可能性のある場合について、当該会社の資産の時価額を加味及び業績見通し等を勘案したうえで減損処理の要否を四半期ごとに判断し、決定しております。

将来において、株式市場の悪化又は投資先の業績不振により、さらなる評価損の計上が必要となる可能性があります。

経営者は、所有する有価証券の公正価値の評価は合理的であると判断しております。ただし、これらの評価には経営者としても管理不能な不確実性が含まれているため、予測不能な前提条件の変化等により有価証券の評価に関する見積りが変化した場合には、結果として将来当社グループにおける公正価値評価額が変動する可能性もあります。

 

④ 固定資産の減損

当社グループは、多くの有形固定資産及び無形固定資産を保有しており、これらの固定資産の残高は多額であるため、会計上の見積りにおいて重要なものとなっております。

当社グループは固定資産の減損会計を適用しており、減損会計では、資産のグルーピング、減損の兆候の識別、減損損失の認識、減損損失の測定の各過程で、将来キャッシュ・フロー等の見積りを要します。

経営者は、減損の兆候及び減損損失の認識に関する判断に関する評価は合理的であると判断しております。ただし、これらの見積りには経営者としても管理不能な不確実性が含まれているため、予測不能な前提条件の変化等により固定資産の評価に関する見積りが変化した場合には、結果として将来当社グループが追加で減損損失を認識する可能性もあります。

 

⑤ 繰延税金資産の回収可能性

当社グループにおける繰延税金資産の残高は多額であるため、繰延税金資産の回収可能性に関する評価は会計上の見積りにおいて重要なものとなっております。

当社グループは、繰延税金資産の回収可能性の評価に際し、課税主体ごとに将来の課税所得を合理的に見積り、将来課税所得を減算できる可能性が高いものに限って繰延税金資産を認識しております。繰延税金資産の回収可能性は毎連結会計年度末日に見直し、課税所得の実現が見込めないと判断される部分について減額しております。

経営者は、繰延税金資産の回収可能性の評価にあたり行っている見積りは合理的であり、繰延税金資産が回収可能な額として計上されていると判断しております。ただし、これらの見積りによる繰延税金資産の回収可能性は、将来の課税所得の見積りに依存し、経営者としても管理不能な不確実性が含まれているため、予測不能な前提条件や仮定の変化等により回収可能性の評価に関する見積りが変化した場合には繰延税金資産が減額され、税金費用が計上される可能性があります。

 

(2) 財政状態の状況

① 当期の財政状態の概況

イ 資産の部                                                          (単位:百万円、%)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

前連結会計年度比

総資産

385,129

372,645

△12,485

96.8

 

流動資産

240,028

222,963

△17,065

92.9

 

固定資産

145,041

149,641

4,600

103.2

 

 

有形固定資産

99,222

96,842

△2,380

97.6

 

 

無形固定資産

5,586

6,598

1,012

118.1

 

 

投資その他の資産

40,233

46,201

5,969

114.8

 

繰延資産

61

41

△20

67.4

 

 

ロ 負債の部                                                             (単位:百万円、%)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

前連結会計年度比

総負債

256,834

234,297

△22,537

91.2

 

流動負債

192,456

189,337

△3,119

98.4

 

固定負債

64,378

44,960

△19,418

69.8

 

 

 

ハ 純資産の部                                                         (単位:百万円、%)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

前連結会計年度比

純資産

128,295

138,347

10,052

107.8

 

株主資本

108,410

110,558

2,148

102.0

 

その他の包括利益累計額

9,946

16,968

7,022

170.6

 

新株予約権

76

76

100.0

 

非支配株主持分

9,864

10,746

882

108.9

 

 

ニ セグメントごとの資産の概況                                          (単位:百万円、%)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

前連結会計年度比

国内卸売

116,679

122,425

5,746

104.9

海外卸売

107,308

103,502

△3,806

96.5

製紙加工

66,297

65,318

△978

98.5

環境原材料

36,302

35,951

△351

99.0

不動産賃貸

22,976

22,540

△436

98.1

調整額

35,568

22,908

△12,660

64.4

 うち、全社セグメント

67,166

53,882

△13,284

80.2

 

 

② 当期の財政状態の分析

当連結会計年度末の総資産は、時価上昇により投資有価証券が増加したものの、預金や棚卸資産の減少等により、前連結会計年度末に比べて12,485百万円減372,645百万円となりました。

総負債は、有利子負債や未払法人税等の減少等により、前連結会計年度末に比べて22,537百万円減の234,297百万円となりました。

純資産は、自己株式の取得等により自己株式が増加したものの、親会社株主に帰属する当期純利益の計上やその他有価証券評価差額金及び為替換算調整勘定の増加等により、前連結会計年度末に比べて10,052百万円増の138,347百万円となりました。

 

(3) 経営成績の状況

① 経営成績の状況の概要

イ 経営成績の状況の概要                                               (単位:百万円、%)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

前連結会計年度比

売上収益

545,279

534,230

△11,048

98.0

売上総利益

86,324

87,406

1,082

101.3

営業利益

20,264

17,403

△2,860

85.9

経常利益

21,233

16,753

△4,480

78.9

税金等調整前当期純利益

39,563

17,714

△21,849

44.8

当期純利益

26,824

11,746

△15,077

43.8

非支配株主に帰属する当期純利益

1,432

1,389

△42

97.0

親会社株主に帰属する当期純利益

25,392

10,357

△15,035

40.8

 

 

ロ 当期の経営成績の分析

当連結会計年度における当社グループの業績は、売上収益534,230百万円前期比2.0%減)、営業利益17,403百万円同14.1%減)、経常利益16,753百万円同21.1%減)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は、前期は当社が東京都中央区に所有する固定資産の一部譲渡に伴う固定資産売却益の計上があったこと等から、前期比59.2%減10,357百万円となりました。

 

 

② セグメントごとの経営成績

イ 当期の経営成績のセグメント別の概況

当連結会計年度のセグメントごとの経営成績は次のとおりであります。

 

外部売上収益                              (単位:百万円、%)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

前連結会計年度比

国内卸売

183,516

196,359

12,843

107.0

(構成比)

33.7

36.8

 

 

海外卸売

281,858

260,104

△21,754

92.3

(構成比)

51.7

48.7

 

 

製紙加工

48,945

50,051

1,106

102.3

(構成比)

9.0

9.4

 

 

環境原材料

26,776

23,641

△3,134

88.3

(構成比)

4.9

4.4

 

 

不動産賃貸

4,184

4,075

△109

97.4

(構成比)

0.8

0.8

 

 

 

(注) 上記の金額は、セグメント間取引の相殺消去後の数値であります。

 

セグメント利益(経常利益)                     (単位:百万円、%)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

前連結会計年度比

国内卸売

5,359

6,673

1,314

124.5

(構成比)

21.6

32.7

 

 

海外卸売

12,579

3,481

△9,099

27.7

(構成比)

50.6

17.1

 

 

製紙加工

3,614

7,044

3,430

194.9

(構成比)

14.5

34.6

 

 

環境原材料

1,906

1,645

△261

86.3

(構成比)

7.7

8.1

 

 

不動産賃貸

1,406

1,540

133

109.5

(構成比)

5.7

7.6

 

 

 

 

ロ 当期の経営成績のセグメント別の分析

当連結会計年度のセグメントごとの経営成績は次のとおりであります。

「国内卸売」

紙は、デジタル化の進展など構造的要因による需要減少に加え、定期雑誌の休刊や発行部数の減少、またチラシやカタログ等の発行回数や部数の減少、判型縮小等により、販売数量は前期に比べ減少しました。

板紙は、インバウンドの回復等による人流の増加に伴い医薬品・化粧品向け等が堅調であったものの、物価上昇に伴う消費者の買い控え等により通販・加工食品向け需要が減少したことに加え、自動車及び機械関連向けの需要回復の遅れにより段ボール原紙の販売数量が減少したことから、販売数量は前期に比べ減少しました。

エレクトロニクス関連を中心とする機能材料製品については、需要の回復が見られました。

これらの結果、販売数量は減少したものの、前年度に実施した紙、板紙の価格修正により販売価格が上昇したことから、売上収益は前期比7.0%増196,359百万円となりました。

経常利益は、運賃や倉庫料等の物流費や人件費の増加があったものの、売上収益の増加が上回り、前期比24.5%増6,673百万円となりました。

 

「海外卸売」

主要拠点である米国、英国、豪州では、デジタル化の進行などによる需要の減少及び得意先の在庫調整が長引いたことにより、紙・板紙の販売数量・販売金額が減少しました。本邦からの輸出においては、紙は前年並みに推移し、板紙は当連結会計年度末に向けて回復の傾向はみられたものの、中国や東南アジアにおける景気停滞に伴う需要の減少や価格競争により、販売数量・販売金額ともに減少しました。

これらの結果、売上収益は前期比7.7%減260,104百万円となりました。

経常利益は、売上収益の減少に加えて、人件費や金利上昇に伴う支払利息の増加等により、前期比72.3%減3,481百万円となりました。

 

「製紙加工」

段ボール事業及び再生家庭紙事業ともに販売数量は減少したものの、前年度に段階的に実施した価格修正の浸透により販売価格が上昇したことから、売上収益は前期比2.3%増50,051百万円となりました。

経常利益は、原燃料及び電力価格、副資材コストの高止まり等があったものの、売上収益の増加と生産効率向上への取り組みなどの結果により、前期比94.9%増7,044百万円となりました。

 

「環境原材料」

古紙事業は、紙・板紙需要の減少に伴う古紙の発生数量減少が継続しており、国内、米国ともに販売数量は減少し、米国においては販売価格も下落したことから、売上収益は減少しました。一方、パルプの販売は、中国・韓国を中心に海外製紙メーカー向けの販売数量が増加し、また木質バイオマス発電所向け燃料の販売数量も増加しました。

これらの結果、売上収益は前期比11.7%減23,641百万円となりました。

経常利益は、木質バイオマス発電所向け燃料販売事業及び総合リサイクル事業において増益となったものの、国内、米国の古紙事業における売上収益の減少等により、前期比13.7%減1,645百万円となりました。

 

「不動産賃貸」

前期において当社が東京都中央区に所有する固定資産の一部譲渡を行ったことにより賃貸料収入が減少し、売上収益は前期比2.6%減4,075百万円となりました。

経常利益は、売上収益が減少したものの、前期において固定資産の一部譲渡に伴う一時費用の発生があったことや不動産管理費等の減少により、前期比9.5%増1,540百万円となりました。

 

③ 地域別・製品別の売上収益

イ 地域別売上収益                            (単位:百万円、%)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

前連結会計年度比

日本

239,774

254,439

14,665

106.1

(構成比)

44.0

47.6

 

 

アジア

82,569

70,335

△12,234

85.2

(構成比)

15.1

13.2

 

 

北米

99,475

74,992

△24,483

75.4

(構成比)

18.2

14.0

 

 

オセアニア

44,496

48,239

3,743

108.4

(構成比)

8.2

9.0

 

 

欧州

71,881

81,027

9,146

112.7

(構成比)

13.2

15.2

 

 

その他地域

7,084

5,199

△1,885

73.4

(構成比)

1.3

1.0

 

 

海外売上収益計

305,505

279,791

△25,713

91.6

(構成比)

56.0

52.4

 

 

 


 

 

ロ 製品及びサービス別売上収益                      (単位:百万円、%)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

前連結会計年度比

340,824

342,372

1,548

100.5

(構成比)

62.5

64.1

 

 

板紙

100,420

88,870

△11,550

88.5

(構成比)

18.4

16.6

 

 

パルプ

14,101

11,922

△2,180

84.5

(構成比)

2.6

2.2

 

 

古紙

17,214

12,711

△4,503

73.8

(構成比)

3.2

2.4

 

 

その他

72,719

78,355

5,636

107.8

(構成比)

13.3

14.7

 

 

 

 

④ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは2024年度を初年度とした3年間の中期経営計画『OVOL中期経営計画2026』を策定しております。当中期経営計画の最終年度である2026年度の目標といたしました連結財務指標目標と当連結会計年度実績は以下のとおりです。

連結財務指標目標

当連結会計年度(実績)

2026年度目標

経常利益

16,753百万円

22,000百万円

(セグメント別経常利益)

 

 

国内卸売

6,673百万円

7,000百万円

海外卸売

3,481百万円

8,000百万円

製紙加工

7,044百万円

7,500百万円

環境原材料

1,645百万円

2,000百万円

不動産賃貸

1,540百万円

1,500百万円

調整額

△3,630百万円

△4,000百万円

自己資本利益率(ROE)

8.4%

8.0%以上

総資産経常利益率(ROA)

4.4%

5.0%以上

投下資本利益率(ROIC)(注)

6.2%

7.0%以上

ネットD/Eレシオ

0.59倍

1.0倍以下

 

(注)投下資本利益率(ROIC)の算出式の分子であるNOPATについて、連結財務指標目標である経常利益をベースとした算出に変更しております。

変更後:NOPAT(税引後経常利益[利払前])÷投下資本(有利子負債+自己資本[期首・期末平均])

 

OVOL中期経営計画2026につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 中長期的な経営戦略、目標とする経営指標及び事業上の対処すべき課題」、2025年3月期の連結業績予想につきましては、「(6) 今後の見通し」をご参照ください。

 

 

⑤ 生産、受注及び販売の実績

イ 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前連結会計年度比(%)

製紙加工    

39,008

98.0

環境原材料

4,236

100.2

 

 

(注) 金額は製造原価によっております。

 

 

ロ 商品仕入実績

当連結会計年度における商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前連結会計年度比(%)

国内卸売      

154,881

105.8

海外卸売      

220,280

92.7

環境原材料

18,333

86.7

 

 

(注) 1 金額は仕入価格によっております。

2 上記の金額は、セグメント間取引の相殺消去後の数値であります。

 

 

ハ 受注実績

当社グループは、主として需要等を勘案した見込生産を行っているため、記載を省略しております。

 

ニ 販売実績

当連結会計年度における販売実績は、「(3) 経営成績の状況 ② セグメントごとの経営成績 イ 当期の経営成績のセグメント別の概況」に記載しております。

 

 

(4) キャッシュ・フローの状況

① キャッシュ・フローの分析

当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べて13,164百万円減少し、17,387百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、法人税等の納付による支出等があったものの、税金等調整前当期純利益の計上や棚卸資産の減少等により、20,891百万円の収入となりました(前期は304百万円の収入)。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得等により2,917百万円の支出となりました(前期は23,673百万円の収入)。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、有利子負債の返済や自己株式の取得等により31,678百万円の支出となりました(前期は10,086百万円の支出)。

 

 

② 資本の財源及び資金の流動性

当社グループは、OVOL中期経営計画2026に掲げましたように、各事業活動に必要とされる運転資金及び投融資資金の確保について、直接金融または間接金融における多様な手段の中から調達時点の市場環境等を考慮して資金調達を実施しております。また、当社グループのさらなる成長に必要な事業投資の継続と財務の健全性維持との両立を基本方針としております。

 

イ 資金調達手段

当社グループは、上記の資金調達の基本方針に則り、M&Aや設備投資資金ならびに運転資金といった資金使途を踏まえ、営業活動によって獲得されたキャッシュ・フローをベースに、直接金融市場においては社債及びコマーシャル・ペーパーを発行し、間接金融市場では銀行借入による長期借入金や短期借入金に加えて十分な当座貸越枠を確保しております。また、資金調達手段の多様化を図ることで、資金使途及び調達環境の情勢に応じた有利な手段を選択し、機動的な資金調達を実施しております。

当連結会計年度末時点における当社の長期及び短期の信用格付けは以下のとおりとなっており、今後も一層の格付向上を目指し、収益性の向上、財務の健全性維持に努めてまいります。

 

 

長期

短期

㈱日本格付研究所(JCR)

A/安定的

J-1

㈱格付投資情報センター(R&I)

A/安定的

a-1

 

 

「フリー・キャッシュ・フロー」                      (単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

営業活動によるキャッシュ・フロー

304

20,891

20,586

投資活動によるキャッシュ・フロー

23,673

△2,917

△26,590

フリー・キャッシュ・フロー

23,977

17,973

△6,004

 

 

「有利子負債明細」                            (単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

コマーシャル・ペーパー

8,000

8,000

社債         (※1)

30,000

30,000

直接調達

30,000

38,000

8,000

短期借入金

48,400

36,395

△12,005

長期借入金      (※2)

30,487

18,563

△11,924

間接調達

78,887

54,957

△23,929

有利子負債合計

108,887

92,957

△15,929

 

     (※1)一年内償還予定分の残高を含みます。

     (※2)一年内返済予定分の残高を含みます。

 

ロ 資金の効率化

当社グループは、グループ内の資金効率向上を目的として、グループ各社における余剰資金の集中と配分を行うべく、グループファイナンス制度を国内及び海外の各地域にて導入しております

 

ハ 財務指標目標

当社グループは、OVOL中期経営計画2026にて策定した財務指標目標に対して、基幹事業である紙・板紙の卸売事業で必要な運転資金の安定的な調達と、事業の多角化及びグループ経営の強化につなげる成長投資資金の調達余力を確保するため、営業活動の収益性向上、保有資産の効率的活用、ネットD/Eレシオや自己資本比率といった財務の健全性を示す経営指標の向上に取り組んでまいります

 

 「財務指標」

 

OVOL中期経営計画2026目標

前連結会計年度

当連結会計年度

自己資本利益率(ROE)

8.0%以上

24.0%

8.4%

総資産経常利益率(ROA)

5.0%以上

5.9%

4.4%

投下資本利益率(ROIC)(注)

7.0%以上

7.5%

6.2%

ネットD/Eレシオ

1.0倍以下

0.66倍

0.59倍

 

(注)投下資本利益率(ROIC)の算出式の分子であるNOPATについて、連結財務指標目標である経常利益をベースとした算出に変更しております。

変更後:NOPAT(税引後経常利益[利払前])÷投下資本(有利子負債+自己資本[期首・期末平均])

 

ニ 株主還元

当社グループは、株主の皆様に対する利益還元を経営上の重要施策のひとつとして位置づけ、長期にわたる経営基盤の安定と強化に努め、企業価値の向上を目指しております。配当の方針につきましては、安定的な配当を継続して行うことを基本方針とし、連結業績の動向も勘案することとしております。

2024年度よりスタートしたOVOL中期経営計画2026の期間におきましては、市場の期待に応える積極的な株主還元として「連結配当性向30%以上とする累進配当」を掲げて実施してまいります。

なお、当社は、「剰余金の配当等会社法第459条第1項各号に定める事項については、法令に別段の定めのある場合を除き、取締役会の決議により定めることができる。」旨を定款に定めております。

(配当基準日 期末配当:毎年3月31日、中間配当:毎年9月30日)

 

(5) 連結の範囲

連結の範囲につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項」の(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)「1.連結の範囲に関する事項」及び「2.持分法の適用に関する事項」に記載しております。

 

(6) 今後の見通し

「国内卸売」

国内の景気は緩やかに回復基調であるものの、人口の減少や少子高齢化の進行、またデジタル化の加速といった要因により、紙の需要は今後も縮小していくものと想定しております。板紙に関しては、賃上げによる個人消費マインドの改善や、自動車及び機械関連向けの需要回復が期待されております。経費面においては、物流費や人件費等の増加を見込んでおります。

「海外卸売」

海外市場においては、需要は縮小傾向ではあるものの、主要拠点における得意先の在庫調整も一巡し、また補完的なM&Aを通じたシェア拡大や高付加価値製品の販売増加を見込んでおります。

「製紙加工」

製紙加工事業においては、原燃料費をはじめとする製造関連コストは依然として高止まりする想定ではあるものの、販売単価の上昇を見込んでおります。

「環境原材料」

古紙事業においては、紙・板紙の需要減に伴う古紙発生量の減少が見込まれております。太陽光発電事業及び総合リサイクル事業は安定した収益を見込んでおります。

「不動産賃貸」

引き続きテナントビルの高水準の稼働率を維持する見通しであり、今後も安定した収益を見込んでおります。

 

2025年3月期の連結業績予想については、営業利益18,000百万円(前期比3.4%増)、経常利益18,000百万円(同7.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益10,000百万円(同3.4%減)としております。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。 

 

6 【研究開発活動】

特記事項はありません。