文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営の基本方針について
当社グループは紙流通のリーディングカンパニーとして、社会・産業・文化の発展を支え、人々の営みにおいて欠くことの出来ない紙・板紙の安定供給を通じ、循環型社会の構築に貢献していくことを基本方針としております。
また、社会と地球環境のより良い未来を拓くことをグループの使命として、グループ役職員が、誠実、公正、調和を大切にすべき価値観とし、変革、挑戦、創造を積極的に実践することにより、全てのステークホルダーの皆様から信頼される企業を目指しております。
なお、当社グループが目指すグループ企業理念等につきましては、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ①コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方」に記載しております。
(2) 当社を取り巻く経営環境と事業環境
当期における我が国経済は、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけの見直しに伴い社会経済活動の正常化が進み、雇用・所得環境や企業の業況判断に改善がみられる等、景気の持ち直しの動きが続きました。一方、世界経済におきましても、持ち直しの動きがみられましたが、東欧・中東における地政学的リスク、中国における景気の足踏み、世界的な金融引き締め、物価上昇等による景気の下振れ懸念が高まりました。
このような情勢のもと、当社グループは「中期経営計画2023」の最終年度における目標達成及び長期ビジョン実現に向け、各セグメントにおいて確固たる収益力、資金力、及び地理的なプラットフォームの構築を目指し、各種施策に取り組んでまいりました。その結果、以下のとおり、当連結会計年度において最終年度目標に掲げた連結財務指標目標を全て達成いたしました。
(注)投下資本利益率(ROIC)の算出式の分子であるNOPATについて、連結財務指標目標である経常利益をベースとした算出に変更しております。
変更後:NOPAT(税引後経常利益[利払前])÷投下資本(有利子負債+自己資本[期首・期末平均])
(3) 中長期的な経営戦略、目標とする経営指標及び事業上の対処すべき課題
当社グループは、長期ビジョン『OVOL長期ビジョン2030 “Paper, and beyond”』(以下、「長期ビジョン2030」)を策定し、2030年のあるべき姿を掲げ、その実現を目指しております。
(当社グループのあるべき姿)
「世界最強の紙流通企業グループ」
「持続可能な社会と地球環境に一層貢献する企業グループ」
「紙業界の枠を超えたエクセレントカンパニー」
長期ビジョン2030の実現に向け、2024年度からの3ヵ年(2025年3月期~2027年3月期)を対象とした中期経営計画『OVOL中期経営計画2026』を策定いたしました。当中期経営計画は、2030年に当社グループがあるべき姿を実現するための経済価値と社会価値を創造する「具体的な仕組みづくり・仕掛けづくりの3年間」と位置づけ、以下の3つの基本方針に基づく施策を実行することにより、長期ビジョン2030の実現を目指します。
「グループ内外のコミュニケーションを拡充し、機能やサービスなどの提供価値を圧倒的に高める」
「人材力を引き上げるとともにワークエンゲージメントを飛躍的に高める」
「M&Aを駆使して既存領域および新規領域での事業を躍進的に拡大する」
OVOL中期経営計画2026の最終年度における連結財務目標は以下のとおりです。
セグメント別には次の方針を掲げております。
(セグメント別方針)
「国内卸売セグメント」
グループの総合力を駆使し収益の最大化を実現
「海外卸売セグメント」
安定的な収益構造の構築と収益源のさらなる多様化
「製紙加工セグメント」
地球環境保全への積極的な取り組みと安定収益の基盤構築
「環境原材料セグメント」
循環型ビジネスを通じた持続可能な社会と地球の未来への貢献
「不動産賃貸セグメント」
保有不動産からの安定収益の継続と不動産ポートフォリオの最適化
(4) 財務上の対処すべき課題
当社グループの資本政策は、成長投資に必要な資金を確保し、安定的な株主還元に継続的に取り組み、中長期的成長の視点をもって、適切なバランスシート・マネジメントに努めることを基本としております。また、経常利益率、資本効率を高め、キャッシュ・フローの拡大に努めることで、ROA、ROE、ROICの向上など、持続的な成長を目指してまいります。
当社の配当政策につきましては、安定的かつ継続的な株主還元を基本として、連結業績の動向を勘案して決定しており、当期の年間配当を、前期の1株当たり120円(中間配当60円)から10円増配となる130円(同65円)といたしました。また、株主還元策として2023年11月には自己株式の取得を実施しております。
また、OVOL中期経営計画2026の期間においては、市場の期待に応える積極的な株主還元方針として「連結配当性向を30%以上とする累進配当」を掲げ、初年度となる2024年度においては、これまでを大幅に更新する1株当たり250円(中間配当125円)を予定しており、自己株式の取得についても機動的かつ柔軟に実施を検討してまいります。
なお、配当金の支払いについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (連結株主資本等変動計算書関係) 3 配当に関する事項」に、自己株式の取得については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 ③連結株主資本等変動計算書」に記載しております。
(5) セグメントごとの経営環境と対処すべき課題
① 国内卸売セグメント
紙の需要は国内における人口の減少や世界的なデジタル化など構造的要因を背景に縮小しており、この流れは今しばらく継続するものと想定しております。板紙に関しては、賃上げによる個人消費マインドの改善や、自動車及び機械関連向けの需要回復が期待されております。
本セグメントにおいては、紙業界のDX推進及び物流改革への投資など、サプライチェーンにおける当社グループの機能や価値の提供により、勝ち残りのための競合他社との差別化に取り組むこととしております。また、紙の価値普及に向けた取り組みを実施し、紙の特性、魅力、環境優位性等を改めて社会にお伝えすることで、紙需要のすそ野拡大に取り組む予定としております。
紙の専門商社である当社の機能と付加価値を提供し、グループの総合力を駆使して収益の最大化を実現するとともに、紙・パルプ業界並びに広く社会に貢献してまいります。
② 海外卸売セグメント
海外卸売セグメントにおいては、グローバルネットワークと地場に根差した流通体制の構築に取り組み、現在では、アメリカ、イギリス、アイルランド、オーストラリア、ニュージーランド、インド、中国、シンガポール、マレーシアで自前の在庫・物流機能を有する各国屈指の紙商を経営し、世界最強の紙流通企業グループの実現に必要なプラットフォームを構築しており、各拠点においてM&Aも実施することで、事業領域の拡大とリソース力の強化を進めております。
各市場においてもデジタル化の進展により、グラフィック用紙の需要減少は継続しておりますが、当社グループはグローバルなサプライソースを活用し、各拠点の在庫・物流機能を活かし取引先の需要を確実に取り込むとともに、サイン&ディスプレイ、パッケージ、軟包装、環境配慮型製品などの高付加価値製品の取り扱いをより一層拡大してまいります。また、補完的M&Aの継続的な実施により、各市場におけるシェアと事業領域を拡大し、安定的な収益構造の拡大と収益源のさらなる多様化を追求してまいります。
③ 製紙加工セグメント
当社グループは、再生原料である古紙の回収から製紙、加工、流通に至るまで、紙のサプライチェーンの川上から川下までをグループ内でカバーする事業体制を構築しております。この事業体制を活かして、古紙を原料とした段ボール原紙、印刷用紙及び家庭紙の製紙事業を展開し、安全操業と環境対応の管理を徹底しつつ、環境に配慮した商品を効率的に生産し、安定的にお客様へ供給する事業を展開しております。
段ボール製造事業では、段ボール原紙製造会社と多様なニーズに対応する段ボール製品の製造加工会社による総合パッケージサプライヤーとしての体制構築を国内及びインドネシアにおいて推進しており、国内の原紙製造においては木質バイオマス発電等の再生可能エネルギーも活用しCO2の削減に取り組んでおります。
再生家庭紙製造事業においては、同分野のリーディングカンパニーであるコアレックスグループによる安定供給体制を構築しており、災害発生時のトイレットペーパーの供給支援や災害に備えた備蓄推進活動も行っております。また高度なリサイクル技術により難再生古紙の再資源化を実現し、限られた資源の有効活用と紙ごみの削減にも貢献し、積極的な省エネの推進によりCO2削減にも取り組んでおります。
段ボール製造事業、再生家庭紙製造事業ともに原燃料価格や副資材、物流費等のコストの更なる上昇が想定されるものの、効率的生産や徹底したコスト削減を継続するとともに、CO2排出量削減や省力化のための投資も積極的に行うことで、地球環境保全への積極的な取り組みと安定収益の基盤構築を進めてまいります。
④ 環境原材料セグメント
イ 古紙再資源化事業:
国内において古紙の発生数量が減少している一方、中国の段ボール製品需要やアジア諸国の古紙需要の急激な変動により輸出価格は乱高下していることから、今後の国内市況と需給状況は引き続き不透明なものとなっております。
当社グループは、福田三商㈱を中心に日本全国をカバーする古紙事業のネットワークを構築しており、国内製紙メーカーへの原料古紙の安定供給を最優先し、国内の古紙リサイクルシステムの維持と古紙利用率の向上に貢献しつつ、採算とのバランスを勘案しながらアジア諸国への輸出も行っております。また、米国及びインドにおいても拠点を有し、事業を展開しております。
ロ 総合リサイクル事業:
㈱エコポート九州は熊本県にてプラスチックや木質系廃棄物の総合リサイクル事業を行っております。2022年4月に「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラ新法)」が施行され、増量が予想されるプラスチック廃棄物のリサイクルに対応するため、同県にて第二工場の建設計画を進めております。
ハ 再生可能エネルギー事業:
現在、当社グループが参画している発電事業会社は岩手県、島根県での木質バイオマス発電事業会社2社、北海道、岩手県、宮城県での太陽光発電事業会社3社の計5社になっており、各事業会社で発電した電力はすべて再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)を活用し社会に供給しております。
また、マレーシアにてPKSの集荷と日本などへの輸出を行うOVOL New Energy Sdn. Bhd.では、2023年7月に第2ヤードの運営を開始し、増加する需要に対応する供給体制の構築に取り組んでおります。
これらによって、循環型ビジネスを通じた持続可能な社会と地球の未来への貢献を進めてまいります。
⑤ 不動産賃貸セグメント
当社が東京・大阪・京都等に所有する不動産は立地条件に恵まれており、オフィス・集合住宅等での活用及びホテル事業者への賃貸により得られる賃貸料収入は、当社グループ業績に対して継続して安定的に寄与するものと見込んでおります。
引き続き主要物件における適正な管理と価値最大化を進め、また築年数が経過した物件の再開発や売却計画を策定・実行することにより、保有不動産からの安定収益の継続と不動産ポートフォリオの最適化を推進してまいります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社は、サステナビリティをめぐる社会的要請への対応は、リスクの減少のみならず収益機会にもつながる当社グループの重要な経営課題であると認識しております。当社グループはサステナビリティを「経済価値と社会価値をともに実現する持続可能な事業活動」と定義し、「環境」「社会」「人材」「ガバナンス」の4つのテーマ、12項目のマテリアリティ(※)を特定することで、社会課題に対する当社グループの考え方を明確化しており、当年度においては各マテリアリティにおける「目指す姿」を策定いたしました。また、2025年3月期上半期中に、各マテリアリティの「目指す姿」の実現に向けた目標・KPI(重要業績評価指標)を策定する予定です。策定後は各指標の達成に向けた取り組みによりサステナブル経営をより積極的に進め、社会課題の解決、グループの持続的成長及び中長期的な企業価値の向上を図るとともに、グループ企業理念に掲げるグループの使命(「社会と地球環境のよりよい未来を拓くこと」)を果たしてまいります。
なお、本有価証券報告書においては、「気候変動」及び「人材(労働環境・ダイバーシティ&インクルージョン)」の2点をサステナビリティに関する重要な情報として、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の枠組みである「ガバナンス」「リスク管理」「戦略」「指標及び目標」に基づき記載いたします。
※12項目のマテリアリティの詳細については
サステナビリティ推進体制
当社グループ全体のサステナビリティへの取り組みの司令塔として、持続可能性に関する方針策定や戦略立案、ESG課題(※)の解決、目標達成に向けた全体マネジメントを所管する「サステナビリティ戦略会議」を設置しております。同会議は、社長を議長とし、常勤取締役、統括で構成され、常勤監査役がオブザーバーとして出席しております。あわせて、グループ全体のサステナビリティ推進の実務遂行組織である「サステナビリティ推進本部」が、グループ全体の環境・労働安全の強化及び脱炭素に向けた取り組み、取引先などからのESG・CSR対応の窓口、社会貢献への取り組みなど、サステナビリティ推進に向けた全般的な対応に加え、IR・広報業務を担っております。さらにグループ内横断組織として、「OVOL環境・安全委員会」及び「OVOLサステナビリティ推進委員会」を設置し、グループ全体にて、環境・安全コンプライアンスの向上及びサステナビリティ推進に取り組んでおります。
※ESG課題とは、環境・社会・ガバナンスに関する幅広い課題を意味し、以下のような課題が含まれております。
環境(E) : 気候変動、資源枯渇、廃棄、汚染、森林破壊、等
社会(S) : 人権、強制労働・児童労働、労働条件、雇用関係、等
ガバナンス(G) :贈収賄・汚職、役員報酬、役員構成・多様性、ロビー活動・政治献金、税務戦略、等
<推進体制図>

<サステナビリティ戦略会議及び各委員会の詳細>
(3) リスク管理
「サステナビリティ戦略会議」は、グループ全体でのサステナビリティに関するリスクと機会の特定、対応組織への指示、対応計画の策定、進捗の管理を行い、取締役会に報告します。取締役会は報告内容について承認もしくは改善指示を出し、適切なリスク管理が行われていることを監督します。また、サステナビリティ戦略会議にて審議されたサステナビリティ関連のリスク事項については、その下部組織である「リスク管理委員会」「OVOLサステナビリティ推進委員会」「OVOL環境・安全委員会」に指示され、グループ全体におけるリスク管理に反映されます。
(4) 戦略
① 気候変動への取り組み
当社グループは、気候変動が紙の主要な原料である森林資源の減少や、地球温暖化による物理的リスク等の様々なリスクを引き起こす可能性があると認識しております。当社グループを含めたサプライチェーン全体で排出する温室効果ガス(GHG)排出量の削減により、気候変動への影響を最小化していくことが企業としての責務であると捉え、グループ全体での温室効果ガス(GHG)排出量削減に関する中長期目標を策定し、目標達成に向けた取り組みを推進しております。
当社グループは、IEA(国際エネルギー機関)やIPCC(気候変動に関する政府間パネル)などの専門機関が作成した2つのシナリオ(気温上昇が1.5℃(2.0℃)未満に抑制されるケースと4℃以上になるケース)を用いて、紙・板紙卸売、製紙加工、環境原材料、不動産賃貸の4つの事業分野について、気候変動に伴うリスクと機会の抽出を行いました。気候変動がもたらすリスクと機会は、低炭素社会への移行に伴うリスク(移行リスク)と物理的な影響(物理的リスク)に分類され、これらのリスクと機会を事業戦略に織り込むため、財務影響を短期・中期・長期の観点で定性的に評価いたしました。各事業分野に影響が及ぶ事象を集約したのち、短期・中期・長期にわたり中程度以上の影響を受ける項目を一覧として下記に示します。また、当社グループが晒されるリスクに関して財務インパクトとして定量的な分析を行いました。
・移行リスクと機会は、IEA(国際エネルギー機関)が発行するWorld Energy Outlookに記載のSTEPS,APS,SDS,NZE等、物理的リスクはIPCC(気候変動に関する政府間パネル)にて採用されているRCP2.6,RCP8.5等をベースに分析しております。
・影響度は、事業の存続に大きな影響があるレベルを“大”、事業の戦略を大きく変更する必要があるレベルを“中”と表示しております。
・影響度(大・中)の定義は、Applying Enterprise Risk Management to Environmental, Social and
Governance-related Risks,COSO & WBCSD をもとに作成しております。
(※1)グリーン証書:再生可能エネルギーにより発電された電気の環境価値を取引可能な証書にしたもの
(※2)コーポレートPPA:企業が発電事業者や、電力小売業者と直接契約し、再生可能エネルギーの電力を調達する仕組み
(※3)インターナルカーボンプライシング:低炭素への取り組みを進めるために企業内部で設定する炭素価格
(※4)急性:異常気象による気象災害などの事象(突発的な急性リスク)
(※5)慢性:長期的な気候パターンや降雨パターンの変化による事象(緩行的な慢性リスク)
■財務インパクトの分析結果
財務インパクトに関するシナリオ分析の結果、移行リスクにおける炭素税の導入が当社グループの製紙事業を中心に大きな影響を与えると想定しております。一方、温室効果ガス(GHG)排出量の削減を推進することにより、その影響を軽減できると考えております。物理的リスクでは、洪水・台風といった異常気象による国内グループ主要拠点の被害想定額は、1.5℃(2.0℃)及び4℃シナリオで1.7~5.1億円程度と試算しております。また、当社グループの取引先が甚大な被害を受けた場合、サプライチェーンにおける工場の操業停止や製品及び原燃料などの輸送が寸断される可能性があり、試算額以上の被害が想定されます。
・対象範囲は、当社及び国内連結子会社です。
・財務インパクトの試算額については、炭素税は「IEA WEO2022」、電力価格は「IEA WEO2019」、洪水被害は国土交通省「気候変動を踏まえた治水計画のあり方提言」、高潮被害は環境省「TCFDを活用した経営戦略立案のススメ」及び「気候変動影響評価報告書」等で公表されているパラメーターを使用し算出しております。
(※)2050年のパラメーターが無いため、2040年の数値で分析しております。
② 人的資本・多様性に対する取組み
イ 当社グループにおける人材戦略
当社グループは、人材こそがグループの経済価値の創造を左右すると認識しております。今後さらなる持続的成長を遂げるため、「労働環境」と「ダイバーシティ&インクルージョン」を人材面のマテリアリティとして特定し、取り組みを進めております。
ロ 当社における人材育成方針
当社は人材育成を「持続的な成長のための投資」と考え、積極的に投資するとともに、人事データを元に戦略的な採用、教育などを実行する透明度の高いプロセスの確立を重要視して取り組みを進めております。
人材の採用については、質的にも量的にも高水準の人材を確保することを目指し、新卒採用に加え、キャリア採用にも力を入れております。人材育成については、「役割と責任を果たす人材の育成」「変革期に対応する自立型人材の育成」をコンセプトにプログラムを推進しており、各世代に応じた様々な研修を実施するとともに、社員の成長を促し、能力開発を目的とした育成型異動や、経営人材育成に向けたグループ会社への出向などを推進しております。これらの取組みを反映した人事データを、タレントマネジメントシステムを通じて人材ポートフォリオとして活用し、人材の戦略的配置を実施しております。
ハ 当社における社内環境整備方針
当社は魅力ある人材の採用・維持に注力するとともに、能力開発機会の提供、公正な評価・処遇や働きやすい労働環境の整備など、すべての従業員の活躍を促す仕組みを拡充していくことで、個々の従業員の能力向上と組織力の強化に取り組んでおります。その中で、役職員一人ひとりが自らの健康に責任を持ち、心身の健康維持・増進に主体的に取り組み、意欲をもって働くことが、個々の生活の質や仕事の質を高め、当社の生産性や企業価値向上につながると考え、健康経営への取り組みを強化しております。また今後、人的資本を強化していくために従業員エンゲージメントの向上が必要不可欠と考えており、2023年度からエンゲージメントサーベイを実施し、エンゲージメント向上に向けた取り組みを進めております。この他、多様な人材が活躍する基盤を整備するため、子育てサポートの環境整備や定年延長の実施など性別・年齢などに関係なく多様性が受け入れられる職場風土の醸成と制度の構築にも注力しております。

① 気候変動への取り組み
当社グループでは、製紙事業子会社を中心に以前から温室効果ガス(GHG)排出量削減に取り組んでおりますが、パリ協定で掲げられた「気温上昇を1.5℃未満に抑える」という世界共通の目標達成に向け、グループとしての削減目標を明確にするために、「日本紙パルプ商事グループ温室効果ガス排出量に関する中長期削減目標」を2024年5月に公表いたしました。現在、この目標の達成に向けて、製紙事業子会社を中心に生産効率向上などによる省エネルギー化の推進や再生可能エネルギーの導入など、温室効果ガス(GHG)排出量の削減に取り組んでおります。
また、2024年2月にはGXリーグへ参画し、持続可能なビジネスモデルの構築や環境に配慮した取り組みを推進しております。
「日本紙パルプ商事グループ 温室効果ガス排出量削減に関する削減目標」
中期目標:2030年度までに2019年比で50%削減
長期目標:2050年カーボンニュートラルの実現を目指す
※対象範囲:日本紙パルプ商事および連結子会社におけるSCOPE1・2
■温室効果ガス(GHG)排出量推移
単位:万t-CO2
※海外連結子会社の2019年度から2021年度の算定値は、2022年度の算定値を基準に推計しております。
※SCOPE2は、マーケット基準で算定しております。
※SCOPE3の算定値については、2021年度は当社単体、2022年度は当社及び国内外連結子会社を対象範囲としております。
※数値は小数点第2位以下を四捨五入しているため、合計が一致しない場合があります。
② 人的資本・多様性に対する取り組み
イ 人材育成・社内環境整備に関する指標
当社では、上記「(4)戦略」において記載した人材の多様性の確保を含む人材育成方針及び社内環境整備方針について次の指標を用いており、当該指標に関する目標及び実績は次のとおりです。これらの指標項目については、今後も人的資本・多様性に対する取り組みを深化させる中で必要に応じて見直しを行ってまいります。
なお、連結グループにおいて主要な事業を営む当社においては指標のデータ管理とともに具体的な取組みを進めている一方、現在のところ全ての連結子会社で同様に行われていないため、連結グループとしての記載が困難であることから、提出会社である当社単体の目標及び実績を記載しております。
人材育成 テーマ①人材の採用
人材育成 テーマ②人材の戦略的配置
人材育成 テーマ③多様な人材を活かす企業風土の醸成
社内環境整備 テーマ①健康経営
社内環境整備 テーマ②エンゲージメント
社内環境整備 テーマ③多様な人材の活躍基盤構築
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりであります。
リスク項目は、「特に重要なリスク」、「その他のリスク」に区分しております。
また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末(2024年3月31日)現在において当社グループが判断したものであり、現時点では予見できないまたは重要と見なされていないリスクや、国内外の経済情勢等により影響を受ける可能性があります。
(1)特に重要なリスク
①市況・市場リスク
②取引関係に係るリスク
③その他の重要なリスク
(2)その他のリスク
①経営環境に係るリスク
②金融市場に係るリスク
③気候変動・自然災害等に係るリスク
④その他のリスク
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末(2024年3月31日)現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、特に重要なもの
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。連結財務諸表の作成にあたって、決算日における資産・負債及び報告期間における収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要とします。これらの見積りについては、過去の実績、現在の状況に応じ合理的な判断を行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しておりますが、特に以下の重要な会計方針が、当社グループの連結財務諸表の作成において使用される当社の重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。
① 貸倒引当金
債権の貸倒れによる損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率等により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を勘案し、回収不能見込額を見積り計上しておりますが、将来において、取引先の財務状況等が悪化し、支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上又は貸倒損失が発生する可能性があります。
経営者は、貸倒引当金は十分に計上され、債権が回収可能な額として計上されていると判断しております。ただし、これらの評価には経営者としても管理不能な不確実性が含まれているため、予測不能な前提条件の変化等により債権の評価に関する見積りが変化した場合には、将来当社グループにおいて貸倒引当金を増額又は減額する可能性もあります。
② のれんの減損
当社グループにおけるのれんの残高は多額であるため、会計上の見積りにおいて重要なものとなっております。
当社グループは、企業買収により取得した子会社の将来の超過収益力として連結貸借対照表にのれんを計上し、その効果の発現する期間(5~20年)を個別に見積り、当該期間にわたり均等償却を行っております。ただし、金額が僅少なものについては、発生年度に全額償却しております。
経営者は当連結会計年度末におけるのれんの資産性について、償却期間及び金額は適切であると判断しております。ただし、これらの前提条件には子会社の業績や事業計画等を基にした判断が含まれており、経営者としても管理不能な不確実性が含まれているため、将来において当初想定した子会社の収益力等が見込めなくなった場合にはのれんの減損損失が計上される可能性があります。
③ 投資有価証券の減損
当社グループは、仕入先企業、販売先企業、取引金融機関、関係会社等、業務上密接な関係にある企業の株式等を保有しており、これらの有価証券の残高は多額であるため、会計上の見積りにおいて重要なものとなっております。
なお、当該株式の減損にあたり市場価格又は合理的に算定された価額のある有価証券については、個々の銘柄の時価が取得原価に比べ50%以上下落した場合には、「著しく下落し、回復可能性がないもの」と判定し処理しております。個々の銘柄の時価が取得原価に比べ30%以上50%未満下落した場合も「著しく下落した」とする判定基準を設け、この場合の時価の回復可能性について過去の時価の推移に基づく一定の形式基準により判定し処理しております。また、市場価格のない株式については、個々の銘柄の1株当たり簿価純資産額が帳簿価額を50%以上下回っている場合及び保有資産に大幅な含み損がある可能性のある場合について、当該会社の資産の時価額を加味及び業績見通し等を勘案したうえで減損処理の要否を四半期ごとに判断し、決定しております。
将来において、株式市場の悪化又は投資先の業績不振により、さらなる評価損の計上が必要となる可能性があります。
経営者は、所有する有価証券の公正価値の評価は合理的であると判断しております。ただし、これらの評価には経営者としても管理不能な不確実性が含まれているため、予測不能な前提条件の変化等により有価証券の評価に関する見積りが変化した場合には、結果として将来当社グループにおける公正価値評価額が変動する可能性もあります。
④ 固定資産の減損
当社グループは、多くの有形固定資産及び無形固定資産を保有しており、これらの固定資産の残高は多額であるため、会計上の見積りにおいて重要なものとなっております。
当社グループは固定資産の減損会計を適用しており、減損会計では、資産のグルーピング、減損の兆候の識別、減損損失の認識、減損損失の測定の各過程で、将来キャッシュ・フロー等の見積りを要します。
経営者は、減損の兆候及び減損損失の認識に関する判断に関する評価は合理的であると判断しております。ただし、これらの見積りには経営者としても管理不能な不確実性が含まれているため、予測不能な前提条件の変化等により固定資産の評価に関する見積りが変化した場合には、結果として将来当社グループが追加で減損損失を認識する可能性もあります。
⑤ 繰延税金資産の回収可能性
当社グループにおける繰延税金資産の残高は多額であるため、繰延税金資産の回収可能性に関する評価は会計上の見積りにおいて重要なものとなっております。
当社グループは、繰延税金資産の回収可能性の評価に際し、課税主体ごとに将来の課税所得を合理的に見積り、将来課税所得を減算できる可能性が高いものに限って繰延税金資産を認識しております。繰延税金資産の回収可能性は毎連結会計年度末日に見直し、課税所得の実現が見込めないと判断される部分について減額しております。
経営者は、繰延税金資産の回収可能性の評価にあたり行っている見積りは合理的であり、繰延税金資産が回収可能な額として計上されていると判断しております。ただし、これらの見積りによる繰延税金資産の回収可能性は、将来の課税所得の見積りに依存し、経営者としても管理不能な不確実性が含まれているため、予測不能な前提条件や仮定の変化等により回収可能性の評価に関する見積りが変化した場合には繰延税金資産が減額され、税金費用が計上される可能性があります。
① 当期の財政状態の概況
イ 資産の部 (単位:百万円、%)
ロ 負債の部 (単位:百万円、%)
ハ 純資産の部 (単位:百万円、%)
ニ セグメントごとの資産の概況 (単位:百万円、%)
② 当期の財政状態の分析
当連結会計年度末の総資産は、時価上昇により投資有価証券が増加したものの、預金や棚卸資産の減少等により、前連結会計年度末に比べて12,485百万円減の372,645百万円となりました。
総負債は、有利子負債や未払法人税等の減少等により、前連結会計年度末に比べて22,537百万円減の234,297百万円となりました。
純資産は、自己株式の取得等により自己株式が増加したものの、親会社株主に帰属する当期純利益の計上やその他有価証券評価差額金及び為替換算調整勘定の増加等により、前連結会計年度末に比べて10,052百万円増の138,347百万円となりました。
(3) 経営成績の状況
① 経営成績の状況の概要
イ 経営成績の状況の概要 (単位:百万円、%)
ロ 当期の経営成績の分析
当連結会計年度における当社グループの業績は、売上収益534,230百万円(前期比2.0%減)、営業利益17,403百万円(同14.1%減)、経常利益16,753百万円(同21.1%減)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は、前期は当社が東京都中央区に所有する固定資産の一部譲渡に伴う固定資産売却益の計上があったこと等から、前期比59.2%減の10,357百万円となりました。
② セグメントごとの経営成績
イ 当期の経営成績のセグメント別の概況
当連結会計年度のセグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
外部売上収益 (単位:百万円、%)
(注) 上記の金額は、セグメント間取引の相殺消去後の数値であります。
セグメント利益(経常利益) (単位:百万円、%)
ロ 当期の経営成績のセグメント別の分析
当連結会計年度のセグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
「国内卸売」
紙は、デジタル化の進展など構造的要因による需要減少に加え、定期雑誌の休刊や発行部数の減少、またチラシやカタログ等の発行回数や部数の減少、判型縮小等により、販売数量は前期に比べ減少しました。
板紙は、インバウンドの回復等による人流の増加に伴い医薬品・化粧品向け等が堅調であったものの、物価上昇に伴う消費者の買い控え等により通販・加工食品向け需要が減少したことに加え、自動車及び機械関連向けの需要回復の遅れにより段ボール原紙の販売数量が減少したことから、販売数量は前期に比べ減少しました。
エレクトロニクス関連を中心とする機能材料製品については、需要の回復が見られました。
これらの結果、販売数量は減少したものの、前年度に実施した紙、板紙の価格修正により販売価格が上昇したことから、売上収益は前期比7.0%増の196,359百万円となりました。
経常利益は、運賃や倉庫料等の物流費や人件費の増加があったものの、売上収益の増加が上回り、前期比24.5%増の6,673百万円となりました。
「海外卸売」
主要拠点である米国、英国、豪州では、デジタル化の進行などによる需要の減少及び得意先の在庫調整が長引いたことにより、紙・板紙の販売数量・販売金額が減少しました。本邦からの輸出においては、紙は前年並みに推移し、板紙は当連結会計年度末に向けて回復の傾向はみられたものの、中国や東南アジアにおける景気停滞に伴う需要の減少や価格競争により、販売数量・販売金額ともに減少しました。
これらの結果、売上収益は前期比7.7%減の260,104百万円となりました。
経常利益は、売上収益の減少に加えて、人件費や金利上昇に伴う支払利息の増加等により、前期比72.3%減の3,481百万円となりました。
「製紙加工」
段ボール事業及び再生家庭紙事業ともに販売数量は減少したものの、前年度に段階的に実施した価格修正の浸透により販売価格が上昇したことから、売上収益は前期比2.3%増の50,051百万円となりました。
経常利益は、原燃料及び電力価格、副資材コストの高止まり等があったものの、売上収益の増加と生産効率向上への取り組みなどの結果により、前期比94.9%増の7,044百万円となりました。
「環境原材料」
古紙事業は、紙・板紙需要の減少に伴う古紙の発生数量減少が継続しており、国内、米国ともに販売数量は減少し、米国においては販売価格も下落したことから、売上収益は減少しました。一方、パルプの販売は、中国・韓国を中心に海外製紙メーカー向けの販売数量が増加し、また木質バイオマス発電所向け燃料の販売数量も増加しました。
これらの結果、売上収益は前期比11.7%減の23,641百万円となりました。
経常利益は、木質バイオマス発電所向け燃料販売事業及び総合リサイクル事業において増益となったものの、国内、米国の古紙事業における売上収益の減少等により、前期比13.7%減の1,645百万円となりました。
「不動産賃貸」
前期において当社が東京都中央区に所有する固定資産の一部譲渡を行ったことにより賃貸料収入が減少し、売上収益は前期比2.6%減の4,075百万円となりました。
経常利益は、売上収益が減少したものの、前期において固定資産の一部譲渡に伴う一時費用の発生があったことや不動産管理費等の減少により、前期比9.5%増の1,540百万円となりました。
③ 地域別・製品別の売上収益
イ 地域別売上収益 (単位:百万円、%)
ロ 製品及びサービス別売上収益 (単位:百万円、%)
④ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは2024年度を初年度とした3年間の中期経営計画『OVOL中期経営計画2026』を策定しております。当中期経営計画の最終年度である2026年度の目標といたしました連結財務指標目標と当連結会計年度実績は以下のとおりです。
(注)投下資本利益率(ROIC)の算出式の分子であるNOPATについて、連結財務指標目標である経常利益をベースとした算出に変更しております。
変更後:NOPAT(税引後経常利益[利払前])÷投下資本(有利子負債+自己資本[期首・期末平均])
OVOL中期経営計画2026につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 中長期的な経営戦略、目標とする経営指標及び事業上の対処すべき課題」、2025年3月期の連結業績予想につきましては、「(6) 今後の見通し」をご参照ください。
⑤ 生産、受注及び販売の実績
イ 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
ロ 商品仕入実績
当連結会計年度における商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
ハ 受注実績
当社グループは、主として需要等を勘案した見込生産を行っているため、記載を省略しております。
ニ 販売実績
当連結会計年度における販売実績は、「(3) 経営成績の状況 ② セグメントごとの経営成績 イ 当期の経営成績のセグメント別の概況」に記載しております。
① キャッシュ・フローの分析
当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べて13,164百万円減少し、17,387百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、法人税等の納付による支出等があったものの、税金等調整前当期純利益の計上や棚卸資産の減少等により、20,891百万円の収入となりました(前期は304百万円の収入)。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得等により2,917百万円の支出となりました(前期は23,673百万円の収入)。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、有利子負債の返済や自己株式の取得等により31,678百万円の支出となりました(前期は10,086百万円の支出)。
② 資本の財源及び資金の流動性
当社グループは、OVOL中期経営計画2026に掲げましたように、各事業活動に必要とされる運転資金及び投融資資金の確保について、直接金融または間接金融における多様な手段の中から調達時点の市場環境等を考慮して資金調達を実施しております。また、当社グループのさらなる成長に必要な事業投資の継続と財務の健全性維持との両立を基本方針としております。
イ 資金調達手段
当社グループは、上記の資金調達の基本方針に則り、M&Aや設備投資資金ならびに運転資金といった資金使途を踏まえ、営業活動によって獲得されたキャッシュ・フローをベースに、直接金融市場においては社債及びコマーシャル・ペーパーを発行し、間接金融市場では銀行借入による長期借入金や短期借入金に加えて十分な当座貸越枠を確保しております。また、資金調達手段の多様化を図ることで、資金使途及び調達環境の情勢に応じた有利な手段を選択し、機動的な資金調達を実施しております。
当連結会計年度末時点における当社の長期及び短期の信用格付けは以下のとおりとなっており、今後も一層の格付向上を目指し、収益性の向上、財務の健全性維持に努めてまいります。
「フリー・キャッシュ・フロー」 (単位:百万円)
「有利子負債明細」 (単位:百万円)
(※1)一年内償還予定分の残高を含みます。
(※2)一年内返済予定分の残高を含みます。
ロ 資金の効率化
当社グループは、グループ内の資金効率向上を目的として、グループ各社における余剰資金の集中と配分を行うべく、グループファイナンス制度を国内及び海外の各地域にて導入しております。
ハ 財務指標目標
当社グループは、OVOL中期経営計画2026にて策定した財務指標目標に対して、基幹事業である紙・板紙の卸売事業で必要な運転資金の安定的な調達と、事業の多角化及びグループ経営の強化につなげる成長投資資金の調達余力を確保するため、営業活動の収益性向上、保有資産の効率的活用、ネットD/Eレシオや自己資本比率といった財務の健全性を示す経営指標の向上に取り組んでまいります。
「財務指標」
(注)投下資本利益率(ROIC)の算出式の分子であるNOPATについて、連結財務指標目標である経常利益をベースとした算出に変更しております。
変更後:NOPAT(税引後経常利益[利払前])÷投下資本(有利子負債+自己資本[期首・期末平均])
ニ 株主還元
当社グループは、株主の皆様に対する利益還元を経営上の重要施策のひとつとして位置づけ、長期にわたる経営基盤の安定と強化に努め、企業価値の向上を目指しております。配当の方針につきましては、安定的な配当を継続して行うことを基本方針とし、連結業績の動向も勘案することとしております。
2024年度よりスタートしたOVOL中期経営計画2026の期間におきましては、市場の期待に応える積極的な株主還元として「連結配当性向30%以上とする累進配当」を掲げて実施してまいります。
なお、当社は、「剰余金の配当等会社法第459条第1項各号に定める事項については、法令に別段の定めのある場合を除き、取締役会の決議により定めることができる。」旨を定款に定めております。
(配当基準日 期末配当:毎年3月31日、中間配当:毎年9月30日)
連結の範囲につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項」の(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)「1.連結の範囲に関する事項」及び「2.持分法の適用に関する事項」に記載しております。
「国内卸売」
国内の景気は緩やかに回復基調であるものの、人口の減少や少子高齢化の進行、またデジタル化の加速といった要因により、紙の需要は今後も縮小していくものと想定しております。板紙に関しては、賃上げによる個人消費マインドの改善や、自動車及び機械関連向けの需要回復が期待されております。経費面においては、物流費や人件費等の増加を見込んでおります。
「海外卸売」
海外市場においては、需要は縮小傾向ではあるものの、主要拠点における得意先の在庫調整も一巡し、また補完的なM&Aを通じたシェア拡大や高付加価値製品の販売増加を見込んでおります。
「製紙加工」
製紙加工事業においては、原燃料費をはじめとする製造関連コストは依然として高止まりする想定ではあるものの、販売単価の上昇を見込んでおります。
「環境原材料」
古紙事業においては、紙・板紙の需要減に伴う古紙発生量の減少が見込まれております。太陽光発電事業及び総合リサイクル事業は安定した収益を見込んでおります。
「不動産賃貸」
引き続きテナントビルの高水準の稼働率を維持する見通しであり、今後も安定した収益を見込んでおります。
2025年3月期の連結業績予想については、営業利益18,000百万円(前期比3.4%増)、経常利益18,000百万円(同7.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益10,000百万円(同3.4%減)としております。
該当事項はありません。
特記事項はありません。