当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社グループは、ものづくり企業として創業者から受け継ぐ”大同致遠”の精神をコアに、ミッション、ビジョン、バリューを体現し笑顔と笑顔がつながる社会の実現に向けて、取り組んでまいります。
SPIRIT |
: |
“大同致遠” 「大いなる目的のため、一致団結して高遠なる理想実現に努力すべし」 |
VISION |
: |
地球のすみずみまで、笑顔と笑顔がつながる社会へ |
MISSION |
: |
「技術」に尽くし、 「つくる」に尽くし、 「社会」に尽くす |
VALUE |
: |
①私たちは「笑顔」を大切にします ②私たちは「相互で信頼」しあいます ③私たちは「実直」であり続けます ④私たちは「真剣」であり続けます ⑤私たちは「チャレンジ」していきます |
(2) 目標とする経営指標
当社グループは、第13次中期経営計画(2025年3月期~2027年3月期)において、売上拡大を継続しつつ、2025年度までに2021年度と同等の営業利益率の達成及び当社資本コストを上回るROEを目標に設定いたします。利益面を重視した計数目標とし、実行・達成することで企業価値向上に努めてまいります。
(3) 中長期的な会社の経営戦略及び対処すべき課題
2035年ビジョンにおける第13次中期経営計画(2025年3月期~2027年3月期)では、今後の事業拡大の土台として稼ぐノウハウづくり(利益創出)に注力いたします。
国内を含むグローバル事業は、二輪ドライブチェーンで実現したグローバルニッチトップのノウハウを他製品にも展開し、グローバルニッチトップの製品群を実現して収益性の高い事業ポートフォリオを実現いたします。
また、売上拡大を継続しつつ、2025年度までに2021年度と同等の営業利益率を達成し、更なる改善を進めてまいります。
本年は、当社の長期ビジョンである「DID MUGENDAI SMILE VISION 2035」の最初の中期経営計画がスタートします。『「伝える」「運ぶ」を究める実行力で世界に大同ならではの笑顔を広げます』をスローガンとし、長年培ってきた自動車・二輪車・産業用など既存事業への技術力を強みに更なる拡販を進めると同時に採算改善を進め、高度塑性加工技術、表面処理技術など、磨き上げた技術で新たな市場に果敢に挑戦し、事業課題をやりきることで、創立100周年に向けた更なる成長の土台を構築すると共に、社会の持続的な発展に貢献してまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
近年、従来にない発生頻度と被害規模を伴う風水害等、気候変動が社会に及ぼす影響が急速に甚大となる中で、気象変動の抑制に向けて脱炭素社会の実現のための努力は、社会を構成する企業にとって避けては通れない課題の一つとなってきています。当社は脱炭素社会の実現を含むサステナブルな社会実現に向けた様々な努力の実現が重要経営課題の一つと捉えています。
地球規模の課題でもあり、日本でも国家を上げて脱炭素実現に向けた定量的なビジョン・目標が示される中、当社はGHG(温室効果ガス)排出量のうち、Scope1(自社の直接排出)及びScope2(自社の間接排出)について2030年度末までに2013年度比46%の削減を目標として定めました。
当社は創立90周年を機に、私たちが目指す社会の実現のため、2024年2月1日より、「経営理念(MVV:ミッション、ビジョン、バリュー)」を刷新しました。その中で、「地球のすみずみまで、笑顔と笑顔がつながる社会へ」をビジョンと定めています。これは、当社のグローバルに広がるフットプリントを活用し、サステナブルな事業を創出、展開することで、世界中に貢献することを宣言したものです。
上記のMVVに基づき、従前より定めていた「サステナビリティ基本方針」に加え、より詳細な行動指針を「サステナビリティ経営行動指針」として新たに定めました。この行動指針に基づき、サステナビリティ経営を強化することとしました。
また、大同グループの事業活動における社会課題への影響を改めて分析・整理し、特に重要と考える項目を重要課題(マテリアリティ)として特定しています。
マテリアリティ |
内容 |
イノベーションによる持続可能な社会への貢献 |
イノベーションによるSDGs等の社会課題の解決を、大同グループの最重要課題と位置づけ、具体的な取り組みを推進します。 |
持続可能なものづくり体制の構築 |
ものづくりにおける環境負荷の低減を、ものづくり企業としての存続に必須の事項と位置づけ、これを達成するための体制を構築します。 |
多様な人財の育成と働きがいの向上 |
人財を会社の存続・成長の源泉と位置づけ、多様な人財が生き生きと働ける環境を整備し、働きがいの向上を図ります。 |
公正・健全・透明な企業運営の基盤整備 |
企業運営の公正性・健全性・透明性を、会社が当然備えるべき事項と位置づけ、これらを維持・向上させるための基盤を適切に整備します。 |
(1)ガバナンス
当社は、社会発展への貢献に向けた会社としての取り組みを更に強化していくため、2022年に「サステナビリティ推進チーム」を設置しました。2024年には、サステナビリティ経営を果たす上での重要な活動を統括・推進するため、「サステナビリティ経営行動指針」に基づき、代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置し、サステナビリティ経営に係る方針の決定、リスク管理、活動進捗の確認と施策の決定等を行うこととしました。「サステナビリティ委員会」で審議決定された内容は取締役会に報告され、監督されます。
また、「サステナビリティ委員会」は、他の社内設置委員会と連携してサステナビリティ経営に係る諸所の施策の徹底と進捗の管理を行います。
(2)戦略
当社は、IEAやIPCCなどの気象変動シナリオを参考として、国が定めた脱炭素目標に準拠して脱炭素に取り組む方針です。その中で、イノベーションによる持続可能な社会への貢献と持続可能なものづくり体制の構築に向け、当社グループの事業における気候変動関連のリスクと機会を抽出し、それらの性質を分析しました。
区分 |
詳細区分 |
時間軸 |
リスク及び機会の内容 |
当社の対応方針 |
|
エネルギーコストの上昇 |
短期 |
エネルギーコストの上昇に伴う費用増大 |
消費エネルギー量削減の強化 再生可能エネルギー(太陽光発電システム)の導入 |
移行 リスク |
法・規制の強化に関連するリスク |
中長期 |
エネルギー効率や非化石電力導入の達成目標が強化されることに伴う対策費用の増加 |
取り組み中のCO2排出量削減、廃棄物削減の強化 非化石電力導入比率の段階的引き上げ |
|
テクノロジー及び市場変化に関連するリスク |
中長期 |
電動化の加速に伴う既存商品に関わる市場変化 |
サステナビリティに貢献出来る技術・製品の開発加速 |
物理的リスク |
風水害や山火事等の災害激甚化に関連するリスク |
短期 |
事業拠点の被災 |
BCPの検討を強化 耐災害性の強い建屋の建設 |
機会 |
テクノロジー及び市場変化に関連する機会 |
中長期 |
電動化の加速に伴う新商品に関わる市場開拓 |
サステナビリティに貢献出来る技術・製品の開発加速 |
サステナビリティに貢献出来る技術・製品の開発加速については、当社の長期経営ビジョン「DID MUGENDAI SMILE VISION 2035」においても重要施策として掲げられています。
長期経営ビジョン「DID MUGENDAI SMILE VISION 2035」の詳細は、
当社では、多様な人財の育成と働き甲斐の向上のために、「能力の開発を通じて、自己充足、働きがい及び組織の活性化を実現する」という理念のもと、社会発展へ貢献できる「ものづくり」を行うために必要な資質や能力を保有する人財の育成に向けて、能力開発体系を整え、日々、人財育成を行っています。
「能力を発揮したい」、「キャリアを伸ばしたい」と考える全ての従業員に等しく機会を提供し、会社が各従業員の能力開発を支援することで、多様な人財がそれぞれの能力と個性を最大限発揮できるよう、取り組んでいます。
能力開発体系をもとに、年間の全社教育計画を作成し、階層別・職能別教育を実施しています。その中でも、階層別教育には力を入れており、若手の育成、OJTとの相乗効果を生み出す階層別教育に注力しています。
(3)リスク管理
当社は、「サステナビリティ経営行動指針」に基づき、サステナビリティ経営に係るリスクアセスメントを実施して潜在リスクを発生頻度と影響度合いから5段階に分類しています。このうち、上位から2つの最重要リスクと重要リスクに対するリスク顕在化抑止策について、「サステナビリティ委員会」において審議し、抑止策の徹底を図り、リスクの顕在化低減を図っています。
(4)指標及び目標
当社は、気候変動に関連する対策として、Scope1、Scope2のGHG排出量を2030年度末までに2013年度比46%削減することを目標としています。2023年度には2013年度比12.3%のGHG排出量の削減を達成しています。2024年度には更に5%の削減を目標としています。
当社グループの各社についても、今後同様の取り組みを加速する方針です。
当社は、人財育成に関する指標として各種育成制度の利用人数を用いております。
海外人材の育成においては、新型コロナウイルスの影響で一時中断していましたが、海外トレーニー制度と短期語学留学制度を展開しております。2023年度までの累計で、海外トレーニー制度では29名、短期語学留学制度では24名の実績があり、現時点においては3名の従業員がトレーニーとして海外拠点で研修に取り組んでいます。今後もこれら制度を通じて海外人材を育成することで、海外拠点における赴任者や経営幹部候補の育成に注力してまいります。
また、自身が携わっている業務に限らず、様々なことを学びたいと思っている成長意欲と向上心の高い従業員に対し、自由に学べる環境を整えるため、2022年度からeラーニングを導入しており、利用者は1か月あたり20名程度で推移しています。引き続き、利用者増加に向けた周知・浸透活動に取り組んでまいります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは以下の通りであります。
なお、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に当社グループの経営成績等の状況に与える影響につきましては、合理的に予見することが困難であるため記載しておりません。当社では様々な危機事態に備えるため、各種委員会等を設置しており、危機発生時には随時、各種の委員会等を召集、開催し対応することでリスク発生時の影響の極小化に努めております。
文中の将来に関する事項の記載については、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)景気変動について
当社グループは、国内のほか海外市場にも製品を販売しており、各国の市場における急激な景気変動や需要変動が、業績に影響を与える可能性があります。
(2)有利子負債依存度について
当社グループは設備投資に要する資金を主に金融機関からの借入金等により調達しており、総資産に対する有利子負債が高い割合で推移しております。近年は低金利の状況が続いておりますが、今後の金利変動によって業績に影響を与える可能性があります。
|
2022年3月期 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
(百万円) |
(百万円) |
(百万円) |
|
総資産(A) |
71,490 |
73,029 |
79,121 |
有利子負債額(B) |
25,065 |
24,883 |
25,579 |
(B)/(A) % |
35.1 |
34.1 |
32.3 |
売上高(C) |
49,847 |
55,054 |
56,041 |
支払利息(D) |
167 |
242 |
330 |
(D)/(C) % |
0.3 |
0.4 |
0.6 |
(3)原材料の市況変動の影響について
当社グループが製造販売しているチェーン、コンベヤ、リム、ホイール、スポーク・ボルト等は主に鋼材、アルミ材を原材料としております。従って、鋼材、アルミ材の市況が変動する局面では、取引先より価格変更の要請の可能性があります。随時市況価格を注視し取引先との価格交渉にあたっておりますが、今後、原材料価格が急激に変動した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(4)為替相場の影響について
当社グループの海外売上高比率は、2022年3月期56.0%、2023年3月期59.0%、2024年3月期58.1%とおおむね半分を占めております。当社グループが行う輸出取引は、商社等を通じて行う円建取引と直接行う外貨建取引がありますが、外貨建取引が増加しており、為替変動の影響が大きくなってきております。このため、為替予約等によるリスクヘッジを行っておりますが、そのリスクを全て排除することは不可能であり、業績に影響を与える可能性があります。
(5)品質不良の影響について
当社グループの製品に対する欠陥や品質不良によりクレーム又はリコールが発生した場合には、当社グループ製品に対する顧客の信頼が低下し、業績に影響を与える可能性があります。また、欠陥や品質不良により多額の損害賠償が発生し、製造物責任保険等で賠償額を十分に補填できない場合には、業績に影響を与える可能性があります。
(6)競争激化について
現状、複数の企業による激しい価格競争が生じておりますが、より品質の高い低コストの商品を供給できる競合先が台頭し、市場でのシェアを急速に獲得した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
また、当社グループは付加価値の高い商品を開発するために、投資を積極的に行っているものの、競合他社との激しい競争において、十分な効果が反映されない場合には、業績に影響を与える可能性があります。
(7)有価証券投資の影響について
当社グループは、取引金融機関、取引先の銘柄を中心に株式を保有しております。保有株式の個々の銘柄の価格変動が業績に影響を与える可能性があります。
(8)各国の社会的・政治的影響について
当社グループの生産拠点において、法律、規制の変更及び政治、経済要因の変動等により生産活動に支障が生じた場合には、業績に影響を与える可能性があります。
(9)固定資産の減損について
当社グループは、固定資産の減損に係る会計処理を適用しており、保有する固定資産は減損リスクにさらされております。経営環境の著しい悪化等により固定資産の回収可能価額が低下した場合には、減損損失の計上により業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(10)繰延税金資産の回収可能性の評価について
当社グループは、将来減算一時差異及び税務上の繰越欠損金に対して、将来の課税所得を合理的に見積もった上で回収可能性を判断し、繰延税金資産を計上しておりますが、実際の課税所得が予測と異なり回収可能性に疑義が生じた場合、もしくは税率の変更等を含む各国の税制の変更があった場合には、繰延税金資産の計算の見直しが必要となります。
その結果として、繰延税金資産の取崩が必要となった場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(11)自然災害や感染症等について
当社グループでは、不測の自然災害等に備え、損害の発生を最小限に抑えるべく点検・訓練の実施、連絡体制の整備、損害保険の付保等リスク管理に努めるとともに、新型コロナウイルスの感染拡大に対しては、移動制限や在宅勤務、時差出勤、衛生管理の徹底等を実施し感染予防に努めております。ただし、当社グループの生産拠点の被災等により、生産活動が停滞し、製品の供給が滞ることにより、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、同様に主要顧客においても自然災害による被災等により、生産停止や生産減少が余儀なくされることで、当社グループもその影響を受け、業績に重大な影響を与える可能性があります。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当期における我が国経済は、コロナ禍からの経済活動正常化が進み、緩やかな景気回復基調となりました。しかしながら、世界情勢の緊迫化、原材料価格やエネルギー価格の高騰、長期金利の上昇等により、依然として先行き不透明な状況が続いております。
この様な状況のもと、当社グループにおきましては、原材料価格やエネルギー価格の高騰に伴う価格転嫁による採算改善に努めてまいりました。また、本社生産拠点の再編・拡張工事や基幹システムの刷新に向けた取り組みを行うなど、積極果敢に将来を見据えた抜本的な構造改革を推進すると共に、事業領域の拡大と新規事業の創出に向けた活動を推進してまいりました。
この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a.財政状態
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ6,092百万円増加し、79,121百万円となりました。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ1,682百万円増加し、42,436百万円となりました。
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ4,409百万円増加し、36,685百万円となりました。
b.経営成績
当連結会計年度の経営成績は、売上高56,041百万円(前期比1.8%増)、営業利益227百万円(前期比83.5%減)、経常利益778百万円(前期比52.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益342百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失257百万円)となりました。
セグメント別の概況は次のとおりであります。
(日本)
完成車メーカー向け二輪車用チェーン及び自動車用チェーンの受注が好調に推移したものの、利益面では、原材料価格等の高騰に対し、販売価格の改定によるコスト上昇分の価格転嫁など採算面の改善が遅れました。その結果、外部顧客への売上高は26,337百万円(前期比3.3%増)、営業損失は602百万円(前期は49百万円の営業利益)となりました。
(アジア)
円安による為替換算の影響を受けたものの、タイにおいて搬送関連設備の納期順延等が発生したことにより、売上高は前期比微減となりました。利益面では、原材料価格等の高騰に対し、販売価格の改定によるコスト上昇分の価格転嫁など採算面の改善が遅れました。その結果、外部顧客への売上高は16,994百万円(前期比0.9%減)、営業利益は395百万円(前期比42.4%減)となりました。
(北米)
コロナ特需が継続していた前年からの反動減に加え、完成車メーカー向け二輪車用アルミリムの受注が減少したことや、補修市場向けにおいて、二輪車用チェーンの受注が減少したことにより、外部顧客への売上高は2,929百万円(前期比18.3%減)、営業利益は45百万円(前期比68.5%減)となりました。
(南米)
円安による為替換算の影響に加え、二輪車用チェーン及び産業機械用チェーンの受注が好調に推移したものの、利益面では、原材料、物流コストの上昇等の影響を受けました。その結果、外部顧客への売上高は4,997百万円(前期比14.6%増)、営業利益は99百万円(前期比43.3%減)となりました。
(欧州)
円安による為替換算の影響に加え、補修市場向けにおいて、二輪車用チェーンの受注が好調に推移したことから、外部顧客への売上高は4,782百万円(前期比7.2%増)、営業利益は420百万円(前期比22.1%増)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ25百万円増加し、8,270百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は2,782百万円(前期は2,230百万円の獲得)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益707百万円(前期は885百万円)、減価償却費3,053百万円(前期は2,903百万円)を計上し、法人税等の支払額916百万円(前期は1,028百万円)等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は2,838百万円(前期は4,477百万円の使用)となりました。これは主に投資有価証券の売却による収入1,410百万円(前期は42百万円の収入)、有形固定資産の取得による支出4,115百万円(前期は3,980百万円の支出)等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は241百万円(前期は1,377百万円の使用)となりました。これは主に、借入金の増加額が519百万円(前期は457百万円の減少)、自己株式の取得による支出187百万円(前期は227百万円の支出)、配当金の支払額159百万円(前期は381百万円)、非支配株主への配当金の支払額191百万円(前期は115百万円)等によるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
生産高(百万円) |
前年同期比(%) |
日本 |
24,682 |
8.0 |
アジア |
16,408 |
△0.4 |
南米 |
5,515 |
18.4 |
合 計 |
46,606 |
6.0 |
(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 金額は、販売価格によっております。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前年同期比(%) |
受注残高(百万円) |
前年同期比(%) |
日本 |
25,437 |
△4.4 |
4,915 |
△15.5 |
アジア |
16,829 |
△5.8 |
4,646 |
△3.4 |
北米 |
2,941 |
△17.0 |
916 |
1.4 |
南米 |
5,152 |
9.9 |
1,397 |
12.5 |
欧州 |
4,850 |
6.8 |
1,487 |
4.8 |
合 計 |
55,212 |
△3.6 |
13,365 |
△5.8 |
(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 金額は、販売価格によっております。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
販売高(百万円) |
前年同期比(%) |
日本 |
26,337 |
3.3 |
アジア |
16,994 |
△0.9 |
北米 |
2,929 |
△18.3 |
南米 |
4,997 |
14.6 |
欧州 |
4,782 |
7.2 |
合 計 |
56,041 |
1.8 |
(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 当期における主な相手先別の販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため、記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等
1)財政状態
(資産)
当連結会計年度末の総資産は、受取手形が1,132百万円、機械装置及び運搬具が965百万円、投資有価証券が4,392百万円増加したことなどにより6,092百万円増加し、79,121百万円となりました。
(負債)
当連結会計年度末の負債合計は、借入金が761百万円、繰延税金負債が1,308百万円増加したことなどにより1,682百万円増加し、42,436百万円となりました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は、その他有価証券評価差額金が3,238百万円、為替換算調整勘定が869百万円増加したことなどにより4,409百万円増加し、36,685百万円となりました。
2)経営成績
(売上高)
当連結会計年度における売上高は、56,041百万円(前期比1.8%増)となりました。セグメント別の売上高につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
(売上総利益)
当連結会計年度における売上総利益は、9,732百万円(前期比2.1%減)となりました。また、売上総利益率は17.4%(前期比0.7ポイント減)となりました。
(営業利益)
当連結会計年度における販売費及び一般管理費は9,505百万円(前期比11.0%増)となりました。これは主に、原材料価格やエネルギー価格の高騰等の影響を受けたためであります。
以上の結果、当連結会計年度の営業利益は227百万円(前期比83.5%減)、営業利益率は0.4%(前期比2.1ポイント減)となりました。
(経常利益)
当連結会計年度における営業外収益は1,316百万円(前期比63.0%増)、営業外費用は765百万円(前期比43.0%増)となりました。
以上の結果、当連結会計年度の経常利益は778百万円(前期比52.9%減)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益又は親会社株主に帰属する当期純損失)
当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は、当社の不採算事業の固定資産について「固定資産の減損に係る会計基準」に従い、将来の回収可能性を検討した結果、減損損失を計上したこと等により、342百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失257百万円)となりました。
3)経営成績に重要な影響を与える要因
当社グループの経営成績、株価及び財政状況に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクは市場動向、為替動向、資材費動向、金利動向等があります。詳細は「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載の通りであります。
今後の見通しにつきましては、ウクライナや中東の情勢など極めて不透明な状況や、2024年問題から発した働き方改革や物流の問題、長期金利の上昇など、非常に厳しい状況が続くと予想されます。
本年は、当社の長期ビジョンである「DID MUGENDAI SMILE VISION 2035」の最初の中期経営計画がスタートします。『「伝える」「運ぶ」を究める実行力で世界に大同ならではの笑顔を広げます』をスローガンとし、長年培ってきた自動車・二輪車・産業用など既存事業への技術力を強みに更なる拡販を進めると同時に採算改善を進め、高度塑性加工技術、表面処理技術など、磨き上げた技術で新たな市場に果敢に挑戦し、事業課題をやりきることで、創立100周年に向けた更なる成長の土台を構築すると共に、社会の持続的な発展に貢献してまいります。
4)経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
第12次中期経営計画(2022年3月期~2024年3月期)の最終年度である当連結会計年度の達成、進捗状況は以下のとおりであります。
指標 |
計画 |
実績 |
計画比 |
売上高 |
550億円 |
560億円 |
+1.9% |
営業利益 |
50億円 |
2億円 |
△95.5% |
営業利益率 |
9.0% |
0.4% |
△8.6ポイント |
自己資本利益率(ROE) |
10.0% |
1.2% |
△8.8ポイント |
円安による為替換算の影響に加え、二輪車用チェーン及び産業機械用チェーンの受注が好調に推移したことから、当連結会計年度における売上高は計画比微増となりました。利益面では、原材料価格等の高騰に対し、販売価格の改定によるコスト上昇分の価格転嫁など採算面の改善が遅れた結果、計画未達となりました。
当社グループは、第13次中期経営計画(2025年3月期~2027年3月期)において、最終年度の2027年3月期に売上高680億円、営業利益率6.5%、自己資本利益率(ROE)8%以上の達成を目標としております。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性について、当社グループの事業活動における運転資金需要の主なものは、当社グループの動力伝動搬送関連製品等の製造費用、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。また、設備資金需要としては、製造設備投資に加え、情報処理のための無形固定資産投資等があります。
財政政策
当社は、設備投資資金として11億円の借入を新たに実行しております。その他、当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金の活用及び金融機関からの借入と社債の発行により資金調達を行っております。
なお、当連結会計年度末における有利子負債残高は25,579百万円であります。また、当連結会計年度における現金及び現金同等物は8,270百万円であります。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっての重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項」に記載しております。
また、連結財務諸表の作成にあたっての会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
a. 固定資産の減損損失
当社グループは、固定資産について、独立したキャッシュ・フローを生み出す管理会計上の最小単位でグルーピングを実施しており、減損損失の測定のステップに至り、当該グルーピングの単位から得られる回収可能価額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。
回収可能価額の見積りは事業計画や経営環境等により変動するため、当該見積りに影響を与える要因が発生した場合は、固定資産の評価に影響を与える可能性があります。
b. 繰延税金資産
当社グループは、将来の課税所得を見積り、繰延税金資産の回収可能性を検討し、回収が不確実であると考えられる繰延税金資産について評価性引当額を計上しております。
将来の課税所得の見積りは事業計画や経営環境等により変動するため、当該見積りに影響を与える要因が発生した場合は、繰延税金資産の回収可能性に影響を与える可能性があります。
相 手 方 の 名 称 |
国 名 |
契約品目 |
契 約 内 容 |
契 約 期 間 |
D.I.D ASIA CO.,LTD. |
タイ |
スプロケットキット・スポークニップル |
スプロケットキット・スポークニップルに関する商標の使用許諾 |
自 2016年8月8日 至 2026年8月7日 (以後、5年毎に自動更新) |
大同鏈条(常熟)有限公司 |
中国 |
チェーン・コンベヤ |
チェーン及びコンベヤに関する技術・製造のノウハウの供与 |
自 2020年1月1日 至 2029年12月31日 (以後、5年毎に自動更新) |
相 手 方 の 名 称 |
国 名 |
契約品目 |
契 約 内 容 |
契 約 期 間 |
DAIDO INDUSTRIAL E |
ブラジル |
チェーン |
商標の使用許諾 |
自 2024年1月1日 至 2024年12月31日 (以後、1年毎に自動更新) |
DAIDO INDUSTRIA DE CORRENTES DA AMAZONIA LTDA. |
ブラジル |
チェーン |
チェーンに関する技術・製造ノウハウの供与、商標の使用許諾 |
自 2021年12月12日 至 2026年12月11日 (以後、5年毎に自動更新) |
P.T.DAIDO INDONESIA |
インドネシア |
チェーン・リム |
チェーン及びリムに関する技術・製造ノウハウの供与、商標の使用許諾 |
自 2020年9月13日 至 2025年9月12日 (以後、5年毎に自動更新) |
DAIDO SITTIPOL |
タイ |
チェーン |
チェーンに関する技術・製造ノウハウの供与、商標の使用許諾 |
自 2021年3月4日 至 2026年3月3日 (以後、5年毎に自動更新) |
P.T.FSCM MANUFACTURING INDONESIA |
インドネシア |
チェーン |
チェーンに関する技術・製造ノウハウの供与 |
自 2023年5月1日 至 2026年4月30日 |
INTERFACE SOLUTIONS CO.,LTD. |
タイ |
コンベヤ |
コンベヤに関する技術・製造ノウハウの供与 |
自 2022年11月13日 至 2027年11月12日 (以後、5年毎に自動更新) |
DAIDO INDIA PVT.LTD. |
インド |
チェーン |
チェーンに関する技術・製造ノウハウの供与、商標の使用許諾 |
自 2022年11月7日 至 2027年11月6日 (以後、5年毎に自動更新) |
DAIDO CORPORATION OF AMERICA |
米国 |
チェーン |
チェーンに関する技術・製造ノウハウの供与、商標の使用許諾 |
自 2015年2月19日 至 2025年2月18日 (以後、5年毎に自動更新) |
D.I.D VIETNAM CO.,LTD. |
ベトナム |
チェーン |
チェーンに関する技術・製造ノウハウの供与、商標の使用許諾 |
自 2017年9月26日 至 2027年9月25日 (以後、5年毎に自動更新) |
Atlas Autos (Private) Limited |
パキスタン |
チェーン |
チェーンに関する技術・製造ノウハウの供与、商標の使用許諾 |
自 2023年11月13日 至 2026年11月12日 (以後、3年毎に自動更新) |
D.I.D PHILLIPINES INC. |
フィリピン |
チェーン |
チェーンに関する技術・製造ノウハウの供与、商標の使用許諾 |
自 2019年1月9日 至 2029年1月8日 (以後、5年毎に自動更新) |
ATLAS DID (PRIVATE) LTD. |
パキスタン |
チェーン |
チェーンに関する技術・製造ノウハウの供与、商標の使用許諾 |
自 2022年10月1日 至 2025年9月30日 (以後、3年毎に自動更新) |
IWIS-DAIDO LLC |
米国 |
- |
合弁会社の事業運営に必要な知的財産の使用許諾 |
2021年1月1日~ (重大な契約違反、解消等がない限り存続) |
DID EUROPE S.R.L. |
イタリア |
チェーンルーブ・チェーンクリーナー |
チェーンルーブ・チェーンクリーナーに関する商標の使用許諾 |
自 2021年3月22日 至 2031年3月21日 (以後、5年毎に自動更新) |
オリエンタルチエン工業㈱ |
日本 |
チェーン |
チェーンの相互製品供給・生産委託業務提携 |
自 2021年11月30日 至 2026年11月29日 (以後、3年毎に自動更新) |
(注)1 オリエンタルチエン工業㈱との契約以外については、ロイヤリティとして売上高の一定率を受け取っております。
2 上記の技術援助契約及び商標の使用許諾契約は提出会社が締結しているものであります。
当社グループの研究開発活動は、新製品の研究開発及び既存商品の基礎研究、用途開発であります。グループ全体の研究開発活動を日本において当社が一括して担っており、当連結会計年度の研究開発費の総額は
(1)動力伝動搬送関連製品
①カーボンニュートラルに向けた社会情勢の変化を注視し、市場ニーズにマッチした既存商品の用途開発を継続する一方で、EV化に対応した技術、高度塑性加工技術、表面処理加工技術、新たな要素技術を強みとして磨き上げることにより、新たな市場に果敢に挑戦し、社会の発展に貢献していくことを研究開発の基本方針として推進しております。プレスによる高度塑性加工技術では3D形状を効率的に生産できることより、DIDブランドを支えているドライブチェーンをターゲットとし、軽量化と剛性の相反特性を追求したデザイン性にも優れたMotoGP向けドライブチェーン等の開発に活かすだけでなく、新たな顧客を開拓していくための要素技術開発に継続して取り組んでおります。また、従来ながらの金属塑性加工だけでなく、プレス技術の応用として非金属材料の圧縮粉砕に挑戦し、リサイクルにも繋がる研究開発として活動の幅を広げています。表面処理技術では、特にセラミックコーティングを重視し、既存技術の多様化に繋げる研究開発を継続する一方で、物理蒸着法PVDに分類される技術の自前化を目指し、その先行として既存商品の高付加価値化につながるモーターサイクル用チェーンを開発し、上市に向けた準備を進めております。
②新たな事業戦略に繋げるための要素技術として、ゴム技術を自前化していくため研究開発の幅を広げております。第1ステップとして、当社の主力製品であるシールチェーン用のシール開発と評価を終え、海外拠点で生産を始めております。引き続き、差別化できる要素技術の研究開発を継続し、新商品への適用を進めてまいります。
③再生可能エネルギー市場でも果敢に挑戦するため、協業先を開拓しマイクロ水力発電装置開発プロジェクトに参画し、装置全体の製作や高効率化のためのスパコンによる大学との共同研究にも取り組んでおります。
④「伝える」「はこぶ」未来をカタチに!の経営スローガンのもと、それに係る新製品として開発した吸引式搬送ユニットを提案し新分野での採用が始まっております。並行して、顧客における革新的なものづくり技術としてのニーズに即した次世代型としての研究開発を検討しております。その他では、海外グループ会社と共同で、自社設計の自立走行搬送ロボットAMRの新たな用途開発にも取り組んでおります。
引き続き、駆動・搬送システムを強みとして磨き上げ、メカトロニクスを新たな軸に加え、「伝える」「はこぶ」社会の期待を超えるための技術開発を推進してまいります。
(2)その他
福祉分野の商品として階段昇降装置の製造販売を行っており、インクルーシブデザインを意識した車いす利用者が介助なしでも使用できるモデルを東京大学等と共同開発し実装評価を進めてきた一方で、同モデルの引き合いが増えており、新たなニーズに対する開発を継続しております。
その他、アルミ加工品として、アルミリム単品だけでなくホイール、ハンドルパイプの開発に取り組んでおり設計・評価技術の幅を広げています。