文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社は、傘下に鞄・袋物及び財布・雑貨類の小売販売の株式会社東京デリカ、帆布製バッグ・小物の企画・製造・販売の株式会社三香堂、メンズバッグ・財布・雑貨の小売販売の株式会社ギアーズジャム、メンズバッグ・トラベルバッグのメーカーのアイシン通商株式会社、メンズバッグ・トラベルバッグの卸売販売のロジェールジャパン株式会社を擁しており、各事業会社の独立性を高めて権限及び責任を明確にし、グループシナジーを追求することによりグループ企業価値の最大化を目指してまいります。また、各事業会社はそれぞれの責任を全うし、独自性を発揮しながら利益の拡大、資本効率の向上、ガバナンスの強化を図ってまいります。
当社グループは「感動クリエーションカンパニー」を標榜し、メーカーの分野においては「感動する商品」の企画・製造に取り組み、ファッショングッズリテール分野においては最高レベルの商品のセレクト及びディスプレイ、店舗内装、接客等を実現した店舗の中でお客様に感動体験をしていただくことを使命として企業活動を行なってまいります。
当社グループの主たる事業内容は、鞄・袋物及び財布の企画・製造・小売販売であり、鞄・袋物業界に属しております。鞄・袋物業界の小売市場規模は2022年度で13,255億円、そのうち、鞄専門店の売上は4,261億円であります。(株式会社矢野経済研究所「鞄・袋物産業年鑑2024年版」による)
株式会社東京デリカは鞄専門店の中で第1位のシェアを有しております。ナショナルブランド商品を主力とした品揃え型の専門店として全国規模に出店しているのは株式会社東京デリカのみであり、売上高、店舗数において第2位以下の同業他社には大きな差をつけております。全国の有力商業施設の大半に出店をしておりますが、新規の大型商業施設には積極的に出店してまいります。また、アクセサリー、時計、ソックス、軽衣料、傘等の雑貨類にも積極的に取り組み、大型店舗での併設、単独店舗の出店を行なってまいります。
さらに、PB商品、NPB商品の強化に注力し、商品の差別化、粗利益率の向上を図るとともに、新規業態開発にも積極的に取り組み、さまざまな業態で自社競合を避けながら出店を行なってまいります。また、既存店舗の大型化・活性化、近隣店舗の統合や不採算店舗の退店を推進し、店舗網の整備、充実を図ってまいります。EC事業については、新規カテゴリーの導入に努め、売上の拡大を図るとともに、OMO施策によりお客様を店舗に誘導し、リアル店舗の有効活用、活性化を図ってまいります。
株式会社三香堂は、国内で企画・製造した商品を主として「日乃本帆布」というショップブランドの店舗で小売販売しております。出店立地は、駅ビル、観光地、高速道路のサービスエリア等であります。商品開発、株式会社東京デリカへのコラボ商品の供給、新規出店等に注力し、「日乃本帆布」のブランドイメージの確立及び事業規模の拡大を図ってまいります。
株式会社ギアーズジャムは、「GEAR’sJAM」、「JAMHOUSE」のショップブランドを有し、メンズバッグ・財布・雑貨等の小売販売を行なっており、リーズナブルな価格帯を中心とした商品構成を行なっております。
アイシン通商株式会社は、機能性・デザイン性に優れた商品開発、有力ブランドとの提携等により、市場競争力の高い商品の開発に努めてまいります。
ロジェールジャパン株式会社は、営業力を強化し、業容の拡大に努めてまいります。
さらに、事業領域の拡大を目指し、メーカー部門への進出や周辺業界への取組みを行なってまいります。M&A等によりメーカー部門への進出を図り、当社グループの製造機能を拡充し、オリジナル商品開発力の強化や利益率の向上を図ってまいります。周辺業界への取組みについては、株式会社東京デリカにおいて既存の事業との相乗効果を見込める分野の商品群を導入して来店客数の増加、店舗効率の向上、売上の拡大、店舗の大型化をつなげるとともに、当社グループとして、新たな子会社の設立や有望な企業のM&A等により独立事業として新しい分野の事業展開を図り、業容の拡大を図ってまいります。
当社グループは、将来的には、海外市場への卸売販売や店舗展開を進め、鞄・袋物業界のグローバルプレーヤーを目指してまいります。
(2) 目標とする経営指標
当社グループは、経営指標として売上高、営業利益、売上高営業利益率、自己資本利益率(ROE)を重視しております。
当社グループは、2024年5月に「2025年3月期~2027年3月期 中期経営計画」を策定・公表しております。2025年3月期については、売上高53,654百万円、営業利益4,056百万円、売上高営業利益率7.6%、自己資本利益率(ROE)8.6%、2027年3月期については、売上高58,749百万円、営業利益4,888百万円、売上高営業利益率8.3%、自己資本利益率(ROE)9.4%を目標としております。
中長期的には営業利益率8%以上、ROE10%以上を安定的に達成することを目標としております。
(3) 経営環境と対処すべき課題
次期につきましては、社会活動の活発化、インバウンド需要のさらなる拡大等が期待されるものの、ウクライナや中東情勢の長期化、原材料及び資源価格の高騰や円安による諸物価の上昇等により、景気の先行きは不透明な状況が続くものと思われます。さらに、実質賃金の伸び悩みによる消費者の生活防衛意識の高まりも懸念されますが、当社グループでは、「メーク・シナジー」をテーマに「斬新なPBの開発」、「キャラクター商品の拡充」に取り組み、業績のさらなる向上を目指してまいります。
「メーク・シナジー」とは、当期に「ちいかわコンバース」が「ちいかわ」キャラクターと「CONVERSE」ブランド、そして当社グループの店舗及びECでの販売力とのシナジーにより大きな効果を生み出したように、さまざまな組み合わせにより大きなシナジーを生み出していくことです。
「斬新なPBの開発」として、当社グループが全国に586店舗(当期末時点)の店舗網及びEC事業を有することによる他社にないスケールメリットを生かし、圧倒的な価格競争力と優れた品質を兼ね備えた商品開発に取り組んでまいります。また、高価格帯において機能性の高い商品、話題性のある商品の開発にもチャレンジしてまいります。さらに、リサイクル素材、エコ素材の活用、社会貢献活動にも注力してまいります。
「キャラクター商品の拡充」として、当社グループでは従前からキャラクター商品に注力してきましたが、国内外での特に日本発のキャラクターの人気の高まりを受けて、インバウンド需要も視野に入れて、取り扱いの一段の拡充を図ってまいります。さらに、キャラクターとPBやインフルエンサーとの新たなコラボレーションを提案し、アプリで情報発信しながら当社グループの店舗やECで販売する取り組みを進めてまいります。
次期の見通しにつきましては、小売事業等につきましては商業施設の新設計画等をもとに、新規出店19店舗を見込み、期中退店16店舗を見込んでおります。既存店売上高当期比は4%程度の増加を見込んでおり、さらに個別の店舗の要因を加味して予測を行なっております。また、売上総利益率については0.4ポイントの改善を見込んでおります。製造・卸売事業につきましては、売上高は当期比2.4%増を見込み、売上総利益率については当期並みを見込んでおります。
これらにより、当社グループの連結業績につきましては、売上高53,654百万円(当期比3.0%増)、営業利益4,056百万円(当期比7.8%増)、経常利益4,128百万円(当期比7.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益2,455百万円(当期比1.3%減)を見込んでおります。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は次のとおりであります。
(1)サステナビリティ全般
当社は、サステナビリティ推進のため、担当取締役を委員長とするサステナビリティ委員会を設置し、サステナビリティ関連問題についての検討を年2回以上の頻度で行なっております。サステナビリティ委員会で検討された結果は、年2回以上、担当取締役を通じて、取締役会に報告されます。
取締役会は、サステナビリティ委員会の報告内容を検討し、サステナビリティ課題に対する対応方針等を決定します。
当期においては、サステナビリティ委員会はマテリアリティの検討を行なってその結果を取締役会に報告し、取締役会においてマテリアリティの審議・承認を行ないました。
サステナビリティ委員会は、サステナビリティに関連するリスクと機会を、それぞれ発生可能性、影響度、対応策の有無などで評価し、重要度を決定しています。評価にあたっては、必要に応じて関連する部署にヒアリングを行ない、毎年見直しを実施します。さらに、リスクと機会に対する対応策を立案し、設定した指標により対応策の進捗を管理します。
サステナビリティに関するリスクと機会のうち、重要度が高いものについては、サステナビリティ担当取締役を通して取締役会に報告され、取締役会は報告内容の審議、承認を行ないます。
当社グループでは、経営戦略の一環として、サステナビリティ活動の中で5つの重点分野(マテリアリティ)を定めております。
当社グループでは、マテリアリティの内、「気候変動への対応」、「人的資本への取り組み」については、指標及び目標を設定しております。なお、その他の項目に係る指標及び目標については、現在策定中であります。
(2)気候変動への対応(TCFDに基づく開示)
当社は、気候変動が事業の持続的成長に影響を及ぼすことを認識し、気候変動に関連するリスクと機会の特定や評価、対応についての検討を行なうため、サステナビリティ委員会の下に気候変動ワーキンググループを設置し、TCFD提言に基づいた対応を行なっております。気候変動ワーキンググループは、気候変動に関連するリスクと機会について毎年見直しを行ない、サステナビリティ委員会に報告します。リスクと機会のうち、重要度が高いものについては、サステナビリティ担当取締役を通して取締役会に報告され、取締役会は報告内容の審議、承認を行ないます。
気候変動ワーキンググループは、気候変動に関連するリスクと機会を、それぞれ発生可能性、影響度、対応策の有無などで評価し、重要度を決定しています。評価にあたっては、IEA、IPCC等の各種シナリオを参照し、必要に応じて関連する部署にヒアリングを行ない、毎年見直しを実施しています。さらに、リスクと機会に対する対応策を立案し、設定した指標により対応策の進捗を管理します。気候変動ワーキンググループの評価に基づき、サステナビリティ委員会は気候関連のリスクについて自社のその他のリスクと統合的な管理を行ないます。気候変動に関するリスクと機会のうち、重要度が高いものについては、サステナビリティ担当の取締役を通して取締役会に報告されます。
シナリオ分析においては主要な事業である鞄・雑貨類の小売販売事業を対象に、2030年度の影響を検討しました。シナリオは、脱炭素へ移行する2℃シナリオと、現状を上回る温暖化対策が取られず温暖化が進行する4℃シナリオの2つを検討しました。検討にあたっては、IEAが発行する「World Energy Outlook」の各シナリオ、IPCCが採用するSSP(共有社会経済経路)シナリオ、及びRCP(代表的濃度経路)シナリオ、政府等が発行した将来予測や計画を参照しました。
また、それぞれリスク・機会の項目において、影響が大きい方のシナリオを参照しました。シナリオに基づくリスクと機会の抽出を行ない、必要な対応を検討した結果、鞄・雑貨類の小売販売事業における、気候変動に伴う重大なリスクは確認されませんでした。
Scope1、Scope2のGHG(温室効果ガス)排出量実績の推移

GHG排出量の削減目標

(3)人的資本への取り組み
①人材育成方針
当社グループの人事政策は、企業の最大の資本は人であり、小売業、卸売業は人間産業の視点から、従業員をワーカーではなく「人財」として育成しております。
人的資本の投資については、中核事業として鞄、袋物ファッション雑貨の販売を中心とした小売業を行なっており、販売スタッフの接客技術など、現場においてOJTを重ねるなど、販売教育を重点的に取り組んでおります。
管理職には、顧客サービスやコーチング、店舗運営などの定期的な教育に注力しております。
当社グループの特色であるショップセレクトシステム(各店仕入れ)の採用により、座学では得られない、市場の変化に柔軟に対応できる人材が育成されております。
また、当社グループは従来から、相応な人材を中途採用で積極的に受け入れております。
②社内環境整備方針
当社グループでは、年齢、国籍、性別等で区別することなく、意欲と能力のある優秀な従業員が平等に管理職への登用機会が得られる人事制度を整備しております。
また、福利厚生の充実、柔軟な働き方ができる環境の構築、時間外労働の削減等の健康経営に取り組んでまいります。
今後も、各従業員が最大限の能力を発揮できる職場環境の整備に努め、従業員の育成、適性のある人材の管理職への登用を推進する方針です。
経営戦略の実現に向け、人材を計画的に確保、育成し、十分に能力を発揮できる環境を整備いたします。
a.採用
採用計画は、中期的な出店計画等に基づき、戦略課題の実現に必要な人員の確保をし、入社後のミスマッチを防ぐため、入社前の説明を丁寧に行なってまいります。
専門的なスキルが必要な部門では、中途採用で即戦力者を補完してまいります。
b.教育
階層別の集合教育を年間計画に沿って実施します。
一部の階層にターゲットを合わせたスポット的な研修を行なってまいります。
c.配置
部門間のコミュニケーションを保つため、ローテーションを実践することを基本といたします。
営業部門と事務系部門においても、個人の適正に応じて総合的な能力開発を行なっております。
d.評価・処遇
成果評価と能力評価を基本とした人事評価を、より一層構築してまいります。
目標管理制度を検討し、各階層または職種の実態に合わせた制度を設定します。
③指標及び目標
当社グループでは、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針に係る指標については、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績については、当社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取り組みが行なわれているものの、連結グループに属する全ての会社では行なわれてはいないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、提出会社及び主要な連結子会社である株式会社東京デリカを含めたものを記載しております。
(注) 1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。
2.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、 「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出しておりますが、当事業年度においては該当者がおりません。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 出店政策について
当社グループは、ショッピングセンター・駅ビル等にテナントとして出店を行なっております。新規出店にあたっては、商圏、競合状況、売上予測、賃料条件、出店コスト等を検討し、収益性を見込める店舗に出店しております。このため、当社グループの出店条件に合致する物件の数が当初の出店予定数と異なることがあります。
また、出店後は店舗別の損益管理を行ない、業績改善の見込みのない不採算店舗については退店を行なっていますが、退店店舗数についても当初の予定店舗数と異なることがあり、出退店の店舗数が当初の予定店舗数と異なった場合は、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 流行について
当社グループは、レディースバッグ類、鞄類、小物雑貨類等を販売しておりますが、商品の流行による影響を受けて、売上が低下したり滞留在庫の陳腐化に伴う損失が発生する可能性があります。
(3) 敷金及び保証金について
当社グループではテナント出店に際し、ショッピングセンターのデベロッパー等に対して敷金・保証金の差し入れをしている店舗がありますが、賃借先の倒産等の事由により敷金・保証金の全部又は一部が回収できなくなる可能性があります。
(4) 売上債権について
当社グループの販売はほとんど全てがいわゆるショッピングセンター内の賃借店舗で行なわれております。大半の店舗では毎日の売上金をそのショッピングセンターのデベロッパー等に預託しており、これをデベロッパー預け金と称しておりますが、これについては預託相手先のショッピングセンターのデベロッパー等が倒産した場合、全額回収できない可能性があります。
(5) 大規模感染症発生等に関するリスク
新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大したように、大規模感染症が発生した場合、世界各国で渡航制限や外出制限などの措置が行なわれ、経済活動に大きな影響が及ぶ可能性があります。
当社グループにおきましても、国内の感染拡大に伴う政府や自治体の外出自粛要請に基づく店舗の休業や営業時間の短縮、生活必需品以外のものに対する個人消費の大幅な縮小等による売上高の減少、国内外での商品調達不全等の懸念があり、このような事態が長期化した場合、業績及び財政状態にさらなる影響を及ぼす可能性があります。
(6) 法的規制について
当社グループは、消費者保護関連、個人情報保護、環境・リサイクル関連、独占禁止等の各種法律等の規制を受けており、それらの遵守に努めております。しかしながら、予期し得ない原因等によりこれらの法律に抵触した場合には、当社グループに対する活動の制限、費用の発生、当社グループの社会的信用の低下などにより、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(7) 自然災害・事故等について
当社グループ店舗の出店地域において、大地震や台風等の自然災害や予期せぬ事故が発生し、当社グループ店舗や当社グループが出店している商業施設において深刻な被害や影響を受けた場合は、当社グループの営業活動が大きく制約され、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
a.経営成績
当連結会計年度におけるわが国の経済は、5月に新型コロナウイルス感染症の感染法上の分類が5類に移行したことにより社会・経済活動の正常化が進み、景気は緩やかな回復基調となってまいりました。さらに、インバウンド需要の拡大も景気を押し上げる一因となりました。一方、原材料及び資源価格の高騰や円安の進行による諸物価の上昇、ウクライナや中東情勢の悪化等により、景気の先行きは不透明感がますます強まってまいりました。
流通業界におきましては、行動制限の解除等により人流が回復し、消費活動にも持ち直しの動きが見られ、一部高額品の売れ行きが好調に推移するなどしたものの、相次ぐ生活必需品の値上げを始めとする急速な物価上昇に賃金の伸びが追い付かず、先行きの不安等から消費者の生活防衛意識が高まり、節約志向、低価格志向が強まってまいりました。
このような状況下で、当期の連結業績につきましては、売上高は52,093百万円(前期比10.3%増)となりました。前第2四半期会計期間までは新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響による売上低下が見られましたが、前第3四半期会計期間以降は新型コロナウイルス感染症の影響が希薄化し、売上が回復局面に転じたことと、2022年10月3日付で100%子会社化した株式会社ギアーズジャムの売上貢献により、当第2四半期会計期間まで売上高の伸長が続きました。それらが一巡した当第3四半期会計期間以降は伸びが鈍化しました。利益面では、売上高の増加に加えて商品粗利益率の改善や諸経費の見直しによる削減、節減、さらに不採算店の退店効果等により、営業利益は3,764百万円(前期比51.5%増)、経常利益は3,848百万円(前期比44.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は2,487百万円(前期比92.6%増)を計上することができました。
なお、当社グループの報告セグメントは鞄・袋物を核とする商品販売の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。
事業部門ごとの状況は、以下のとおりであります。以下の数値につきましては、事業部門内の取引消去後かつ事業部間の取引消去前のものを記載しております。
小売事業につきましては、商売を通じてお客様を始め、関係する皆様に満足していただきたいという「商人魂(あきんどだましい)」をテーマに掲げて、さまざまな取組みを行なってまいりました。
「OMO(Online Merges with Offline)施策」として、既存のリアル店舗ECサービス(店舗でタブレット端末を利用して自社ECサイトの商品の購入手続きをし、商品は物流倉庫からお客様に直送する仕組み)に加え、前期末に導入した自社ECサイトで購入した商品のリアル店舗での受け取りや決済ができるサービスにより、お客様の利便性を向上させました。さらにMA(マーケティングオートメーション)ツールを導入し、自社ECサイトの売上を伸長するとともにアプリ会員の獲得にも注力し、当期末の会員数は82万人となりました。
「リアル店舗の施策」として、全国に多数存在するリアル店舗の有効活用、活性化のため、アプリ会員に向けて一年を通じてさまざまなプッシュ通知を発信しましたが、中でもアプリ及び店頭で発信する「鞄祭」の取り組みに注力しました。毎月、期間限定でPBの中からいくつかのブランドを対象とし、店舗及び自社ECサイトで10倍ポイント付与や10%割引を行なうことで、店舗への送客効果も大きく、アプリ会員の新規獲得、PBの認知度・売上の向上につながりました。また、大型店の出店、既存店の増床改装にも努め、店舗の大型化に努めました。
「商品の施策」として、品質、機能、価格、デザイン等にこだわったPB・NPB商品の開発に注力し、売上の拡大・粗利益率の向上に努めました。また、国内の人流の増加に対応し、キャリーケースの品揃えを充実させました。インバウンド需要の見込める店舗では、大型キャリーケースや「made in Japan」商品を充実させました。また、国内外で人気が高まっているさまざまなキャラクターについては、取り扱いを拡充し、PBとキャラクターとのコラボ商品にも積極的に取り組んでまいりました。さらに、独占販売をした「ちいかわコンバース」は「ちいかわ」と「CONVERSE」というキャラクターとブランドとのコラボ企画商品で、店舗、ECともに非常に好調な売れ行きとなりました。
「持続可能社会実現のための施策」としてはPB商品においてリサイクル資材の活用、環境負荷の少ない商品の開発、各種NPO法人や社会福祉法人への売上の一部の寄付やバッグの提供等を継続してまいりました。2024年1月の能登半島地震に対する支援活動にも取り組みました。仕入商品についても、取引先と協調してさまざまなサステナビリティに配慮した商品の取り扱いが増えてまいりました。また、日本皮革産業連合会の「革こそサステナブル」キャンペーンに賛同し、皮革製品のサステナブルな面を発信してまいりました。さらに、包装資材の見直しによるエコ化と簡素化にも取り組みました。気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への対応として、Scope1、Scope2のGHG(温室効果ガス)排出量の算定と削減目標の設定(2030年度目標 2019年度比47%減)を行ないました。
店舗につきましては、大型商業施設を中心に13店舗の新規出店を行ないました。新規出店店舗の地域別内訳は、関東地区4店舗、中部地区3店舗、近畿地区2店舗、九州地区4店舗であります。ショップブランドでは、株式会社東京デリカが「SAC’S BAR」、「SAC’S BAR mono+1」、「DOUX SAC’S」、「NAUGHTIAM」、「キャラトラステーション」を、株式会社ギアーズジャムが「GEAR’s JAM」を出店いたしました。一方、不採算店の退店や同一施設内での複数店舗の集約化を積極的に実施したため、退店は32店舗となり、当連結会計年度末の店舗数は586店舗となりました。
品種別の売上の状況は、トラベルバッグは国内外の旅行、出張の増加やインバウンド需要の拡大により、前期比34.1%増となりました。メンズバッグは、株式会社ギアーズジャムの売上貢献、インバウンド需要の拡大、ビジネス需要の回復等により前期比13.0%増となりました。PB(プライベートブランド)及びNPB(ナショナルプライベートブランド)は、トラベルケースの売上が大幅に伸長し、また、レディース、メンズのカテゴリーも商品の拡充、取り扱いの強化により売上が伸長し、前期比25.9%増となりました。カジュアルバッグは、PB商品の売上伸長の影響もあり前期比3.0%増に止まりました。ハンドバッグは低価格帯の商品の販売点数の低下が大きく、前期比12.5%減となりました。雑貨は、傘やキャラクターの取り組みを強化しましたが、アクセサリーや防寒具が低調に推移したため、前期比6.2%減となりました。財布は、単価は上昇したものの、販売点数が大幅に減少したため、前期比4.6%減となりました。インポートバッグは円安により取り扱いを縮小し、前期比24.4%減となりました。
これらの結果、当事業部門の売上高は48,197百万円(前期比7.8%増)となりました。
売上総利益率は、前期比0.6ポイント改善して50.1%となりました。これは、利益率の高いPB及びNPB商品、トラベルバッグの売上構成比が高まったことと、利益率の低いインポートバッグの売上構成比が低下したこと等によるものであります。
製造・卸売事業につきましては、旅行や出張、帰省等が復活し、さらにインバウンド需要の拡大が続き、主力のキャリーケースの売上が大きく伸長しました。
この結果、当事業部門の売上高は4,760百万円(前期比48.7%増)となりました。
b.財政状態
(資産)
流動資産は、前連結会計年度末に比べて1,019百万円増加し、21,094百万円となりました。これは主に、商品及び製品が1,045百万円減少した一方で、現金及び預金が1,724百万円増加、受取手形及び売掛金が465百万円増加したこと等によるものであります。
固定資産は、前連結会計年度末に比べて776百万円減少し、18,290百万円となりました。これは主に、有形固定資産が363百万円減少、繰延税金資産が253百万円減少、敷金及び保証金が162百万円減少したこと等によるものであります。
以上の結果、当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に比べて242百万円増加し、39,385百万円となりました。
(負債)
流動負債は、前連結会計年度末に比べて2,265百万円減少し、7,037百万円となりました。これは主に、契約負債が58百万円増加した一方で、短期借入金が1,000百万円減少、1年内償還予定の社債が1,500百万円減少したこと等によるものであります。
固定負債は、前連結会計年度末に比べて600百万円増加し、4,521百万円となりました。これは主に、リース債務が68百万円減少した一方で、長期借入金が720百万円増加したこと等によるものであります。
以上の結果、当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末に比べて1,664百万円減少し、11,558百万円となりました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は、前連結会計年度末に比べて1,907百万円増加し、27,826百万円となりました。これは主に、剰余金の配当653百万円による減少があった一方で、親会社株主に帰属する当期純利益2,487百万円の計上等によるものであります。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末に比べて1,732百万円増加し、4,139百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は、以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べて1,487百万円収入が増加し、4,949百万円のプラスとなりました。
主な収入要因は、税金等調整前当期純利益の計上額3,559百万円、棚卸資産の減少額1,029百万円であります。
一方、主な支出要因は、売上債権の増加額465百万円、法人税等の支払額902百万円であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べて4百万円支出が増加し、489百万円のマイナスとなりました。
主な収入要因は、定期預金の払戻による収入40百万円であります。
一方、主な支出要因は、新規出店及び改装等に伴う設備投資394百万円、有形固定資産の除却による支出106百万円であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べて258百万円支出が減少し、2,728百万円のマイナスとなりました。
主な収入要因は、長期借入れによる収入800百万円であります。
一方、主な支出要因は、短期借入金の純減額1,000百万円、社債の償還による支出1,500百万円、配当金の支払額653百万円であります。
③販売及び仕入の実績
当社グループは、鞄・袋物を核とする商品販売を単一の報告セグメントとしているため、セグメントごとの記載はしておりませんが、販売実績及び仕入実績については、鞄・袋物等の品種別に区分して記載しております。
連結子会社である株式会社東京デリカにおいては、直営店舗において一般消費者に直接販売しており、また、一部、インターネットによる小売販売等を行なっております。
連結子会社であるロジェールジャパン株式会社においては、主として、メンズバッグ・トラベルバッグ等を大型量販店等に卸売販売を行なっております。
連結子会社である株式会社三香堂においては、直営店舗において一般消費者に直接販売しております。
連結子会社である株式会社ギアーズジャムにおいては、直営店舗において一般消費者に直接販売しております。
(注) 連結子会社からの大型量販店への卸売販売等は、「PB+NPB」に計上しております。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.売上高の状況
当社グループの当連結会計年度における売上高は、前期比10.3%増の52,093百万円となりました。
小売事業等の売上高は、前期比7.8%増の48,197百万円となりました。前第3四半期会計期間以降は新型コロナウイルス感染症の影響が希薄化し、旅行、帰省、出張、外食、各種イベント等が徐々に復活し、また、水際対策の緩和により2022年11月以降の訪日外国人が急増するなど、人流が増加し、売上が回復局面に転じたことと、2022年10月3日付で100%子会社化した株式会社ギアーズジャムの売上貢献により、当第2四半期会計期間までは売上高の伸長が続きました。しかしながら、当第3四半期会計期間以降はそれらが一巡し、店舗数の減少もあり、売上高の伸びが鈍化しました。店舗につきましては、出店条件等を慎重に検討しつつ、13店舗の新規出店を行なうとともに、不採算店の積極的な退店等により32店舗の退店を行ない、期末店舗数は前期末より19店舗減少して586店舗となりました。
原材料や資源価格の高騰、円安等により商品価格が上昇し、単価は13.1%上昇しましたが、販売点数は4.6%減となりました。品種別に見ますと、メンズ・トラベルバッグは、売上高が19.1%増となりました。メンズバッグは、リモートワーク減少の影響や株式会社ギアーズジャムの売上貢献等により販売点数が17.2%増となり、単価は3.5%下落したものの、売上高は13.0%増となりました。キャリーケース類を中心としたトラベルバッグは、期前半には旅行や出張が大幅に増加し、訪日外国人の需要も急増し、売上が急伸し、期後半は伸びが鈍化しましたが、販売点数が17.5%増、単価は大型キャリーケースの売上比率が高まったともあり14.3%上昇し、売上高は34.1%増となりました。PB及びNPBは、商品の品質にこだわりつつ、取扱いアイテムや展開店舗を増やして売上を拡大するとともに、PB及びNPBのキャリーケース類の需要も大きく伸びたため、販売点数が14.2%増加し、単価も9.9%上昇したため、売上高は25.9%増となりました。財布・雑貨類は、売上高が5.0%減となりました。財布は、単価が8.6%上昇したものの、販売点数が12.0%減と大きく減少し、売上高が4.6%減となりました。雑貨はアクセサリー以外の傘やキャラクターの取り組みを強化しましたが、単価の低いアクセサリーの取扱い店舗が減少したため、単価が13.2%上昇しましたが、販売点数が17.1%減と大きく減少し、売上高は6.2%減となりました。インポートバッグは、円安の進行により取扱いを減らし、単価が4.9%上昇したものの、販売点数が27.8%減と大幅に減少し、売上高が24.4%減となりました。カジュアルバッグは、販売点数が7.9%減少しましたが、単価が11.9%上昇し、売上高が3.0%増となりました。ハンドバッグは、低価格帯の売上が大きく減少し、販売点数が17.7%減となり、単価は6.4%上昇したものの、売上高は12.5%減と大きく減少しました。
製造・卸売事業につきましては、社会活動の正常化に伴い旅行や帰省、出張が回復し、さらに訪日外国人が急増したため、主力となるキャリーケースを中心に売上高が大きく伸長しました。
この結果、当事業部門の売上高は4,760百万円(前期比48.7%増)となりました。
b.営業利益の状況
当社グループの連結会計年度における営業利益は3,764百万円(前期比51.5%増)となりました。
売上総利益率は、小売事業等では粗利益率の高いPB及びNPB、トラベルバッグの売上の大幅な伸長、利益率の低いインポートバッグの売上の低下、価格改定に伴う在庫品の値上げ、仕入条件交渉による値入率の改善等により、前期比0.6ポイント改善し、50.1%となりました。製造・卸売事業では、円安の影響を受けたものの、価格転嫁等により前期比0.9ポイント改善し、36.0%となり、当社グループとしては前期比0.4ポイント改善し、49.6%となりました。
一方、販売費及び一般管理費率は、売上高の増加と不採算店等32店舗の退店による諸経費の削減効果等により前期比1.5ポイント低下して42.4%となりました。
売上高の伸長、売上総利益率の改善、販売費及び一般管理費率の低下により、営業利益3,764百万円を計上することができました。
c.経常利益の状況
当社グループの連結会計年度における経常利益は、3,848百万円(前期比44.3%増)となりました。これは、営業利益3,764百万円の計上に伴うものであります。
d.親会社株主に帰属する当期純利益の状況
当社グループの連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は2,487百万円(前期比92.6%増)となりました。これは営業利益の計上に伴うものであります。
自己資本当期純利益率は9.3%となりました。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況については、「第2 事業の概況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの主要な運転資金需要は、商品仕入、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。また、主要な設備投資資金需要は、店舗の新規出店及び改装等であります。
これらの資金需要については、営業活動によるキャッシュ・フロー及び自己資金のほか、銀行借入による資金調達、設備資金は主としてリース及び割賦による資金調達にて対応していくこととしております。
なお、2024年3月31日現在、実施中又は計画中の重要な資本的支出及びその資金調達源は、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画 (1)重要な設備の新設等」に記載のとおりであります。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。
また、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
当社は、2023年5月10日開催の取締役会において、当社連結子会社である株式会社東京デリカを存続会社、同じく当社連結子会社である株式会社カーニバルカンパニーを消滅会社とする吸収合併を行なうことを決議し、同日付で両社は合併契約を締結し、2023年7月1日付で吸収合併いたしました。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (企業結合等関係)」をご参照ください。
当社が所有する本社社屋に係る土地建物については、新小岩駅南口地区第一種市街地再開発事業の対象地区であり、当社は、都市再開発法に基づき、他の地権者と共同で「新小岩駅南口地区市街地再開発組合」を設立し、認可されております。
また、新小岩駅南口地区市街地再開発組合施行で、店舗・事務所・住宅の複合用途を持つ施設建築物の建設にあたり、2024年4月9日を権利変換期日とする、都市再開発法に定める権利変換計画を申請し、認可されております。
当社の本社機能は、2027年2月に当該権利変換計画に係る施行地区内に新設される施設建築物に移転する予定であります。
なお、定款上の本店所在地につきましては、東京都葛飾区から変更はありません。
当該再開発事業による連結財務諸表に与える影響は軽微であります。
該当事項はありません。