当社グループの経営理念は、「粘着の分野を原点として新たな価値を創造する技術で快適な生活に貢献し続ける」ことで「当社グループにかかわるすべての人々の幸せを実現する」ことであります。この理念のもと、事業活動を通じて社会、自然との共生を目指し、ステークホルダーとともに持続可能な社会の実現に貢献する取り組みを進めてまいります。
当社グループは、創業以来、粘着技術をベースに絆創膏や「セロテープ®」をはじめ人々の健康や快適な暮らし、産業の合理化・省人化に貢献する価値ある製品を幅広く供給してまいりました。
今後も、高い技術力と確かな品質を軸に地球環境に配慮した独創的な製品の提供を通じて、お客様にご満足いただき、信頼される企業を目指してまいります。
当社グループの経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標は、今後の企業価値及び株主価値を高めるため、収益性重視の観点から営業利益とし、また経営に託された資本の将来における成果の観点からROE(自己資本当期純利益率)としております。
新中期経営計画「CREATION 2026」の最終年度である2026年度の目標値は、営業利益45億円、ROE(自己資本当期純利益率)8%であります。
今後の日本経済の見通しは、インバウンド需要の回復が進む一方、ウクライナ危機をはじめとする地政学リスクやエネルギー・原材料価格の高止まりによる物価上昇など、当社グループを取り巻く事業環境は予断を許さない状況であります。このような状況のなか、快適な生活を支える価値を創出し続ける企業を目指し、イノベーション創出とグローバル貢献を果たすための事業構造の創造を進めてまいります。2024年度よりスタートする新中期経営計画「CREATION 2026」を推進し、重点テーマである「事業ポートフォリオの再構築」「グローバル企業化」「人的資本経営」を実行し、「NICHIBAN GROUP 2030 VISION」実現に向けて取り組んでまいります。
(新中期経営計画の概要)
「NICHIBAN GROUP 2030 VISION」に向けた 新中期経営計画「CREATION 2026」
イノベーション創出とグローバル貢献を果たすための事業構造
・企業価値拡大に向けた新しい事業ポートフォリオ
・グローバル企業化に向けたマネジメント・生産・SCM※機能
・人的資本経営に基づく人財基盤
を創造する3ヵ年とする
※SCM:サプライチェーンマネジメント
①事業ポートフォリオの再構築
ニチバングループの持続的成長に向けた事業ポートフォリオマネジメントとして、テープ事業セグメントの抜本的収益改善を実行し成長事業と新領域へ経営資源を重点配分します。
[テーマ1]テープ事業セグメントの抜本的収益改善
・不採算品の販売価格改定の徹底
・ローコストオペレーションの徹底
・新領域での製品開発
[テーマ2]成長事業と新領域へ経営資源を重点配分
・ヘルスケア、グローバル事業の拡大成長
・医療、コンストラクション/モビリティ分野における新規創出
外部環境の変化による原材料、エネルギー価格の高騰や円安傾向が利益構造に大きな変化をもたらし、テープ事業セグメントでの収益改善が急務となっております。それらに対処するために、不採算製品の黒字化を最優先し、価格改定を行なうとともにローコストオペレーションを実現するための施策を展開します。
さらに成長領域であるヘルスケアとグローバル市場へ経営資源を重点的に配分し、医療材フィールドと工業品フィールドではオープンイノベーションや産官学連携強化によるアライアンス等の活用により新領域での高付加価値製品の開発と競争優位性の確立を目指してまいります。
②グローバル企業化
現行の販売3拠点(日本・タイ・ドイツ)による成長を追求しながら、中長期ビジョン「NICHIBAN GROUP 2030 VISION」の「2030年度グローバル比率30%」に向けた新たな施策を確実に実施し、あわせてグループ全体でのグローバル企業化を図ります。
[テーマ1]販売3拠点の成長追求
・販売3拠点の現地シェア拡大・新規開拓の推進
・現地販売パートナーとの提携強化
[テーマ2]2030年度グローバル比率30%実現に向けた機能拡充
・グローバルSCM※体制の構築
・グローバル販売・マーケティング管理体制の確立
・中国拠点(駐在員事務所)整備、販売拡大体制の強化
[テーマ3]グループ全体のグローバル企業化の推進
・全部門におけるグローバル業務遂行力の向上
・グローバル人財の育成
グローバル市場では、販売3拠点を中心にヘルスケア、工業品、医療材分野での成長を目指します。また、中国拠点(駐在員事務所)の整備、グローバルSCM※体制構築や現地での販売・マーケティング力の強化、ローカライズ製品開発を重視し、本社機能・品質管理、開発機能業務のグローバル化推進を通じて持続可能な成長と競争力強化を目指します。
③人的資本経営
事業ポートフォリオの再構築とグローバル企業化への取り組みによる企業価値向上、ステークホルダー価値の創出の基盤となる「人的資本経営」を実践します。
[テーマ1]ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの推進
・多様な人財が活躍する体制の整備、風土の醸成
・従業員の多様な働き方の実現
[テーマ2]自己変革し成長する自律的人財の育成
・次なる時代を牽引するリーダーの育成
・多彩な能力を最大限に発揮する人財活用
・組織・業界等の様々な壁を「越境」し、変革を担う人財の育成
・DX人財の育成
[テーマ3]従業員の健康とエンゲージメントの向上
・健康経営の推進
・エンゲージメント経営の推進
[テーマ4]新人事制度の導入
・多様な働き方・キャリア形成のための複線型人事制度の導入
「NICHIBAN GROUP 2030 VISION」実現に向けて、その基盤となる従業員の健康とエンゲージメントの向上、多様な人財の活躍の促進、女性活躍やシニア・障がい者の雇用支援、LGBTQ理解増進などでダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンを重視した取り組みを実施してまいります。
組織や業界などの様々な壁を「越境」して牽引する次世代リーダーの育成や新人事制度の導入による多様な働き方を実現できる環境の整備などを通じて、社会への貢献と持続的成長を目指してまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
また、文中の記載及び図表については当社のホームページより引用したものであります。
(1) サステナビリティの考え方
ニチバングループは、「ニチバングループにかかわるすべての人々の幸せを実現します」という基本理念のもと、事業活動を通じて社会、自然との共生を目指し、ステークホルダーとともに持続可能な発展に貢献する取り組みを進めてまいります。
①ニチバンの価値創造プロセス
ニチバングループは「基本理念」を軸に、価値創造のプロセスを示す図を通じて、6つの資本を結集し、「粘着技術」を活かしてステークホルダーと共に新たな価値を創造しています。この価値創造プロセスを経て、サステナブルな社会への貢献や、グローバルな環境変化に対応するレジリエンスを高め、中長期的な企業価値の向上を目指しています。
ニチバンの価値創造プロセス図

(注)上掲の画像は2024年3月31日時点のものです。
2024年度の価値創造プロセスについては、当社WEBサイトでの公開を予定しております。
公開時期:2024年8月
公開場所:当社WEBサイト 2024年度版統合報告書
(https://www.nichiban.co.jp/corp/sustainability/report/)
②ガバナンス・リスク管理
ニチバンは、ステークホルダーの皆さまからの期待や社会の要請に応えていくために、サステナビリティ全般に関わる基本方針や重要事項、リスクや機会などを検討・審議する組織として、CSR担当取締役を委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置しています。
サステナビリティ委員会での議論内容は取締役会に年1回上程・報告され、取締役会が監督・指示を行い、この委員会で抽出された気候変動による事業継続リスクは、BCP委員会にて具体的な対策を検討しています。
③戦略・指標及び目標
ニチバンの事業活動によって影響を与える重要課題を再整理し、ステークホルダーにとっての重要課題とあわせてマッピングを行いました。その結果、「気候変動・地球温暖化対策」「環境・社会課題の解決に貢献する製品開発」「感染予防対策への貢献」「製品の品質向上と安全の確保」を、ステークホルダーとニチバンともに極めて重要度が高いと位置づけました。同じく新たに追加した「イノベーション創出」と「グローバル市場へのスピーディな展開・拡大」については、中長期的な重要テーマとして継続的に取り組んでいきます。
マテリアリティ

また、マテリアリティとして抽出した「サプライチェーンマネジメントの強化」では、社会的な影響度が高い人権問題に対応するために「ニチバングループ 人権方針」を策定し、その人権方針をもとにした「ニチバングループ 購買方針」を策定致しました。購買方針には、公正、公平で透明性を持った取引を行うだけでなく、環境や安全、法令遵守や人権の尊重など、持続可能性に対する考え方も含んでいます。サプライチェーン全体をニチバングループに関わるすべての人々と考え、皆さまの幸せを実現するための責任ある購買活動を推進していきます。

④目標KPIと実績



研究開発フロー

(2) 気候変動への対応(TCFD提言への取り組み)
当社グループは、「私たちは絆を大切にニチバングループにかかわるすべての人々の幸せを実現します」という基本理念を掲げています。この基本理念のもと、ステークホルダーの皆様からの期待や社会の要請に応えていくために、「サステナビリティの考え方」においてマテリアリティ(重要課題)を定め、「気候変動・温暖化対策」を最も優先度の高い項目として掲げております。
この度、当社グループでは「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言において開示が推奨されている、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4つの内容について開示を行い、今後継続的に開示内容の充実を図ります。
①ガバナンス
気候変動に関わる基本方針や重要事項、リスクや機会などを検討・審議する組織として、CSR担当取締役を委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置しています。
気候変動に関する検討は「サステナビリティ委員会」のもと実施し、その内容は取締役会に年1回上程・報告され、取締役会が監督・指示を行います。
取締役会で審議・決定された議案は、各部門に展開され、それぞれの経営計画・事業運営に反映します。

②戦略
中長期的なリスクの一つとして「気候変動」を捉え、関連リスク及び機会を踏まえた戦略と組織のレジリエンスについて検討するため、当社グループは
※2℃未満シナリオ:気温上昇を最低限に抑えるための規制の強化や市場の変化などの対策が取られるシナリオ
4℃シナリオ :気温上昇の結果、異常気象などの物理的影響が生じるシナリオ
③リスク管理
気候変動リスクに関するワーキンググループを設置してシナリオ分析を実施しました。気候関連リスクの優先順位付けとして、リスク・機会の自社への発生可能性と影響度の大きさを勘案しながら、重点リスク要因に注力して取り組みます。今後は、「サステナビリティ委員会」で継続的に確認していきます。
気候関連リスクの管理プロセスとして、コーポレートコミュニケーション部がサステナビリティ委員会の事務局機能を担い、「サステナビリティ委員会」を通じて、気候関連リスクに関する分析、対策の立案と推進、進捗管理等を実践していきます。「サステナビリティ委員会」で分析・検討された内容は、取締役会に報告し、全社で統合したリスク管理を行います。
≪気候変動に関する主なリスクと機会及び対応(メディカル事業(国内)、テープ事業(国内)を対象に検討)≫

④指標及び目標
気候関連問題が経営に及ぼす影響を評価・管理するため、Scope1、Scope2及びScope3に該当する温室効果ガス(CO2)の総排出量(GHG)を指標とします。
Scope1とScope2の目標と実績、及びScope3実績は「ニチバン株式会社及び国内子会社」を対象として開示します。
主な削減への取り組みは、従来からの取り組みに加えて、コストや効果を踏まえて、CO2排出量削減策を検討、順次開示し、脱炭素社会への貢献に向けて取り組んでいきます。





(3) 人的資本経営
①戦略
(ⅰ)人的資本経営の基本的な考え方
ニチバングループでは、多様な人財が結集し、グループ理念に定めた「基本理念」「企業姿勢」の実現に向けた5つの「行動指針(社会・お客様・チャレンジ・スピード・チームワーク)」を実践し続けることが「NICHIBAN GROUP 2030 VISION」に掲げるグローバル貢献・イノベーション創出と企業の持続的成長につながると考えています。
そのため全従業員が視野を拡げ、創造意欲を持って積極的に行動し、成長するための企業風土の醸成を目指して、人財育成投資を行うとともに、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンを積極的に推進しています。
また従業員の心身の健康の増進、安全な職場環境の整備とともに、人権を尊重した公平な雇用や評価などに努めています。
(ⅱ)ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン
ニチバングループは、国籍、人種、民族、宗教、性別、年齢、障がい、性的指向などの違いを受入れ、多種多様なライフスタイルや価値観を尊重するダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンを積極的に推進します。
新たな価値を創出し、従業員自身の成長と持続的な企業価値の向上に繋げるために、一人ひとりが多種多様な個性を発揮し、協力し高め合うことが重要と考えます。
今後もニチバングループの理念を軸に、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンを推進し、「多様性が生み出すイノベーション」と「グローバルに躍動するグループ」の実現を目指してまいります。
(ⅲ)人財育成
ニチバングループでは「人」こそが企業活動の最大の原動力であり、重要な人的資本かつステークホルダーであると認識しています。
事業環境が急激に変化していくなか、企業の成長と持続可能な社会への貢献を続けていくためには、次なる時代を牽引するリーダーと、多彩な能力を最大限に発揮する人財が必要であると考え、働くすべての人財に対して育成・キャリア形成の充実化を図っています。
人財に求めるのはニチバングループの理念に掲げる5つの「行動指針(社会・お客様・チャレンジ・スピード・チームワーク)」の体現であり、志をもって新たな領域を切り拓き、様々な課題の解決に向けて自己変革し成長する自律的人財となることです。
行動指針を体現する自律的人財を育成し、「人」とニチバングループが共に成長していくことを目指します。
(ⅳ)健康とエンゲージメント
ニチバングループは、基本理念である(絆を大切に、ニチバングループにかかわるすべての人々の幸せ)を実現するためには、従業員のワークライフバランスを向上させ、健康増進とエンゲージメント向上及び安全確保などが当社グループにとって最も重要な基盤であると考えています。グループ全体で従業員が安心して、いきいきと働ける職場環境を整えていくことを推進していきます。
ニチバンの人的資本経営の全体像

②指標及び目標
当社では、働き続ける施策は整備されているため「勤続年数に男女の差はない」が、「管理職比率に男女の差がある」という課題解決に向け、行動計画(計画期間:2019年4月1日〜2024年4月1日 目標:女性管理職比率10%以上)を策定、取り組みを進め、目標を達成いたしました。目標の策定については、連結グループに属するすべての会社では行われていないため、連結ベースの実績及び目標は記載しておりません。
管理職に占める女性労働者の割合
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。また、当社グループの事業上のリスク全てを網羅するものではありません。
(1) リスクマネジメント体制
当社グループでは、「危機管理方針」を制定し、事業の継続を危うくする重大な危機に対して、事前に予測・予防措置を実行し、万一発生した場合には被害を最小限に抑え、再発防止措置をとることで、危機を適切に管理し、事業の継続・安定的発展を確保できるよう努めております。
損失の危険の全社的な管理や対応については内部統制委員会が管轄し、「リスク管理規則」に基づき、総務担当部署が全社的なリスク管理体制の構築、規則類の整備、運用状況の確認、情報の適切な伝達など必要な措置を講じております。
個々の損失(品質、財務等)の危険については「リスク管理規則」に基づき、当該危険の存在する各担当部署が、リスク管理体制整備、運用状況の確認等、必要な措置を講じております。
また、大規模災害等、当社グループに対する危機が生じた場合には、「緊急時対応規則」に基づき、速やかに緊急対策本部を設置し、「事業継続計画(BCP)」に沿って損失の極小化及び復旧に向けた対応を行うこととしております。
(2) 認識している重要なリスク
当社グループでは、(1) リスクマネジメント体制のもと、全社的なリスクのアセスメントを実施し、事業や社会環境の変化に合わせて定期的にリスクの確認や見直しを行っております。その結果、以下の重要なリスクを認識しており、リスク低減のための取り組みを実施しております。
また、リスクの洗い出しに際して、リスクを戦略リスクとオペレーショナルリスクに分類しており、それぞれ以下のように定義しております。
(リスクマップ及び凡例)


(3) 気候変動に関するリスク
当社グループは、「サステナビリティの考え方」においてマテリアリティ(重要課題)を定め、「気候変動・温暖化対策」を最も優先度の高い項目として掲げております。(2) 認識している重要なリスクとは別に、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言において開示が推奨されている、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4つの内容について検討を行い、以下の通りリスクの認識をしております。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①中長期成長エンジンの確立、イノベーション創出
・BtoC開発マーケティング・BtoB現場提案による新製品上市実現、新領域・新製品カテゴリーでの成果の創出
・コア技術の深化・進化の成果創出と共有、オープンイノベーション・協業によるターゲット領域での新規事業の創出
②グローバル市場へのスピーディな展開・拡大
・販売3拠点体制による事業拡大と支援強化、生産・物流を含めた体制拡充の推進
・海外事業拡大に向けた戦略的パートナー探索と協業の実現(業務提携・M&A活用)
③事業推進体制の見直しと収益改革
・顧客を機軸とした事業推進体制での戦略遂行、業務プロセス・業務活動における選択と集中の徹底と効率化の推進
・適切な需要予測管理と原価管理によるサプライチェーンマネジメントの最適化、業務プロセス改善と品質管理強化
・サステナブル経営視点の事業戦略・開発の推進、CO2排出削減等の取り組み強化
④事業戦略推進に向けたAI・IoTの積極活用
・事業戦略を実現するためのIT基幹システム活用の実践
・社内外データの活用とシステム化によるマーケティング施策と業務プロセス改善・効率化施策の推進
⑤将来の持続的成長を担う人財育成
・多様な人財の活用による組織運営の活性化と行動指針を実践する人財育成、社員の健康とエンゲージメント向上策の強化
・リーダーシップ・組織マネジメント力及び専門スキルの強化(スキルマップの活用)
・次世代経営層の育成
以上の取り組みを実施いたしました結果、
売上高は、インバウンド需要回復によるヘルスケアフィールドの売上拡大等により、前期比2.9%増の468億5千9百万円となりました。
営業利益は、メディカル事業における売上高の増加等により、前期比28.8%増の20億7千3百万円となりました。
経常利益は、営業利益の増加及び持分法による投資利益の増加により、前期比26.0%増の22億1百万円となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益は、これらの影響に加えて、当社が保有していた保養施設(土地・建物)の売却益7千1百万円の計上があったものの、前連結会計年度において当社が保有していた旧大阪工場跡地の売却益16億2千9百万円が剥落した影響等により、前期比22.9%減の18億2千7百万円となりました。
なお、ROE(自己資本当期純利益率)は前期比1.5ポイント低下の4.4%となりました。
(連結業績の概要)

(営業利益の前期比増減)

(フィールド別売上高、前期比増減)

当社グループのセグメントの概要は次のとおりです。
当社グループの報告セグメントは、当社グループの構成単位のうち分離された財務諸表が入手可能であり、取締役会が、経営資源の配分の決定及び業績を評価するために、定期的に検討を行う対象となっているものであります。
当社は、顧客機軸をベースとした事業活動を強化するために、営業担当管掌を「国内事業本部」、「海外事業本部」とし、国内事業本部の傘下に、販路別に以下の営業統括部を設置しております。
・顧客を機軸とした新たな営業推進体制の強化とブランド戦略の再構築のために、「コンシューマー営業本部」を設置し、傘下に「ヘルスケア営業統括部」、「オフィスホーム営業統括部」を置くとともに、越境EC含め積極的にEC営業の拡大を図るため、「EC営業統括部」を置いております。
・より顧客に密着した営業活動を推進し、新規開発案件探索、顧客拡大のために、「医療材営業統括部」、「工業品営業統括部」を置いております。
また、当社グループは、以上の営業担当管掌に、各子会社を加えた事業フィールドとして、「ヘルスケアフィールド」、「ECフィールド」、「オフィスホームフィールド」、「医療材フィールド」、「工業品フィールド」及び「海外フィールド」を設定しております。
経営資源の配分の決定及び業績の評価については、取り扱う製品、商品の性質や、市場、製造方法の類似性に基づき、「メディカル事業」、「テープ事業」の単位で行っていることから、当社グループの事業セグメントとしては、「メディカル事業」、「テープ事業」と認識し、これを報告セグメントとしております。
「メディカル事業」、「テープ事業」セグメントと各事業フィールドとの関係は以下のとおりです。
事業の種類別セグメントの業績は次のとおりであります。
メディカル事業
(ヘルスケアフィールド)
ドラッグストアを中心とした大衆薬市場におきましては、新型コロナウイルス感染症による行動制限の緩和と訪日外国人の増加に伴うインバウンド需要の回復が継続し、市況に改善の傾向が見られました。
このような状況のなか、高機能救急絆創膏“ケアリーヴTM”シリーズについては、国内需要拡大に向けて、認知度向上のためにテレビCMやキャンペーン等のPR活動を実施し、売上高は前年を上回りました。あわせて、鎮痛消炎剤“ロイヒ”シリーズについては、訪日外国人の増加に伴うインバウンド需要拡大に向けての売り場作りを行うとともに、国内需要拡大に向けてのテレビCMやPR活動を行い、売上高は前年を大きく上回りました。その結果、フィールド全体としての売上高は144億3百万円(前期比15.5%増)となりました。
(医療材フィールド)
医療機関向け医療材料市場におきましては、新型コロナウイルス感染症の5類移行を契機として、診療や受診の状況は改善されつつあり、市況も回復の兆しを見せ始めております。
このような状況のなか、院内需要の回復によって圧迫止血用パッド付絆創膏「ステプティTM」の販売数は好調に推移いたしましたが、止血製品シリーズ“セサブリックTM”全体としては、新型コロナウイルスワクチン需要減少の影響を一部で受けました。その結果、フィールド全体としての売上高は57億5千4百万円(前期比4.2%減)となりました。
((メディカル事業に係る)ECフィールド)
EC市場におきましては、オンライン購買に対するWEBマーケティングの取り組みを強化してきたことに加え、高機能救急絆創膏“ケアリーヴTM”シリーズについては価格改定の効果もあり、売上高は前年を上回りました。その結果、フィールド全体としての売上高は7億9千4百万円(前期比21.6%増)となりました。
((メディカル事業に係る)海外フィールド))
海外市場におきましては、アフターコロナへの移行が進み、学会や展示会への参加をはじめ取引先と対面での商談が増加したものの、世界的な物価高など、依然として先行き不透明な状況が続きました。
このような状況のなか、重点地域であるアジア及び欧州にて、止血製品シリーズ“セサブリックTM”や高機能救急絆創膏“ケアリーヴTM”シリーズを中心に、販売代理店とともに現地に密着した営業活動を展開してまいりました。止血製品シリーズ“セサブリックTM”は、医療施設での採用が増えて伸長いたしましたが、“ケアリーヴTM”シリーズについては、改善の兆しが見えるものの販売代理店の上期の在庫調整の影響が残り、売上高は前年を大きく下回りました。その結果、フィールド全体としての売上高は17億4千1百万円(前期比6.5%減)となりました。
以上の結果、メディカル事業全体の売上高は226億9千3百万円(前期比8.1%増)となりました。また、原材料単価の上昇があったものの、生産の大幅な増加及びヘルスケアフィールドを中心とした売上高の増加により、セグメント利益は62億7百万円(前期比29.5%増)となりました。
テープ事業
(オフィスホームフィールド)
文具事務用品市場におきましては、物価上昇を起因とした消費者心理の冷え込み等により需要の低迷が続くとともに、買い場の変化もあり厳しい販売環境となりました。
このような状況のなか、主要製品である「セロテープ®」や両面テープ「ナイスタックTM」については、価格改定やPR活動を進めましたが、ともに売上高は前年を下回りました。その結果、フィールド全体としての売上高は50億6千8百万円(前期比2.8%減)となりました。
(工業品フィールド)
産業用テープ市場におきましては、自動車メーカー向けにおいて市況の改善が見られたものの、依然として先行き不透明な販売環境が続きました。
このような状況のなか、主要製品の「セロテープ®」については、多くの企業や自治体に向けて天然素材を使用した環境配慮製品であることを新聞広告や特設ホームページ等を通じて周知し、SDGsへの取り組みとしてご賛同をいただき、売上高は前年を上回りました。その一方、クラフトテープの売上高については、一部製品の廃番に伴い、前年を下回りました。その結果、フィールド全体としての売上高は130億9千1百万円(前期比0.6%減)となりました。
((テープ事業に係る)ECフィールド)
EC市場におきましては、買い場の変化による需要回復の傾向が見られるなか、価格改定を進めるとともに、オンライン購買に対するWEBマーケティングを強化してきたことにより、「セロテープ®」や両面テープ「ナイスタックTM」などの需要が好調に推移いたしました。その結果、フィールド全体としての売上高は37億4千9百万円(前期比9.1%増)となりました。
((テープ事業に係る)海外フィールド)
海外市場におきましては、アフターコロナへの移行が進み、取引先と対面での商談が増加したものの、中国経済の減速など、依然として先行き不透明な状況が続きました。
このような状況のなか、重点地域であるアジア及び欧州にて、「PanfixTMセルローステープ」については香港やインドネシア市場へ向けて、塗装用和紙マスキングテープについては欧州や中国市場へ向けて、販売チャネルの構築と製品育成に注力してまいりましたが、「PanfixTMセルローステープ」については、改善の兆しが見えるものの販売代理店の価格改定による駆け込み需要の反動等の影響が残り、売上高は前年を下回りました。その結果、フィールド全体としての売上高は22億5千7百万円(前期比18.1%減)となりました。
以上の結果、テープ事業全体の売上高は241億6千6百万円(前期比1.6%減)となりました。また、セロハン等の原材料単価やエネルギー価格の上昇等により、セグメント利益は1億7千9百万円(前期比81.3%減)となりました。
調整額
報告セグメントに帰属しない一般管理費の計上等により、営業利益と報告セグメントの利益の合計額との調整額が43億1千3百万円(前期比4.1%増)となりました。
(トピックス コンシューマー営業本部)


(トピックス 医療材フィールド)

(トピックス 工業品フィールド)

(トピックス 海外フィールド)


生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
①生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
2.テープ事業における主要な原材料であるセロハン価格が円安による影響を受け、前期と比較して高騰しております。
②受注実績
当社グループは需要見込による生産方式をとっております。
③販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
(2) 財政状態
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末と比べ10億8千3百万円減少し、680億3千9百万円となりました。流動資産は6億3千3百万円の減少、固定資産は4億4千9百万円の減少となりました。
流動資産の減少は、当第4四半期連結会計期間の売上高及び生産高が前年と比べ増加したことにより売上債権が5億1千万円増加、棚卸資産が5億4千6百万円増加したものの、設備投資代金、自己株式の取得代金、配当及び法人税等の支払い等により現金及び預金が17億2百万円減少したこと等によるものです。
固定資産の減少は、減価償却費が投資額を上回った結果、有形固定資産が6億2千9百万円、無形固定資産が2億4千7百万円減少したこと等によるものです。なお、前連結会計年度末に建設仮勘定に計上しておりました当社の埼玉工場における粘着液製造設備及び建屋は、当連結会計年度において、すべて本勘定に振り替えられております。
セグメントごとの資産は、次のとおりであります。
メディカル事業
当連結会計年度末のメディカル事業の資産は、前期と比べ10億3千3百万円減少し、264億5百万円となりました。
テープ事業
当連結会計年度末のテープ事業の資産は、前期と比べ3億2千7百万円増加し、227億1千5百万円となりました。
負債は、前連結会計年度末と比べ21億8千2百万円減少し、263億3千6百万円となりました。流動負債は、22億9千7百万円の減少、固定負債は、1億1千4百万円の増加となりました。
流動負債の減少は、未払法人税等が4億4千9百万円減少したこと並びに設備投資代金の支払いにより営業外電子記録債務が13億1千4百万円減少したこと等によるものです。
固定負債の増加は、原状回復費用に関して見積りの変更を行ったこと等により資産除去債務が1億3百万円増加したこと等によるものです。
純資産は前連結会計年度末と比べ10億9千9百万円増加し、417億3百万円となりました。これは親会社株主に帰属する当期純利益の計上に伴う利益剰余金の増加等によるものです。
以上の結果、自己資本比率は前連結会計年度末より2.6ポイント上昇し、61.3%となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)の残高は、前連結会計年度末に比べ17億2百万円(11.5%)減少し、130億4千9百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、前連結会計年度に比べ2億6千9百万円(9.2%)増加し、31億8千7百万円となりました。当連結会計年度の主な内容は税金等調整前当期純利益22億7千3百万円の計上、減価償却費27億9千5百万円の計上、売上債権の増加額5億1千万円、棚卸資産の増加額5億4千6百万円、法人税等の支払額8億9千8百万円等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、前連結会計年度に比べ25億3千8百万円(220.1%)増加し、36億9千2百万円となりました。これは主に、前連結会計年度に当社が保有していた旧大阪工場跡地の売却を実施したこと等により、有形固定資産の売却による収入が16億4百万円減少したこと等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、前連結会計年度に比べ3億5千8百万円(41.3%)増加し、12億2千5百万円となりました。これは主に自己株式の取得による支出4億4千8百万円等によるものです。
(4) キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループは、株主の皆様への利益還元とのバランスを考えながら、企業体質の強化及び設備投資、コスト競争力向上のための技術開発等の資金需要に備えるために内部留保の充実を図っております。
資金調達は、自己資金を基本とし、自己資金で賄えない場合は金融機関から借入れることとしております。
なお、資金調達の柔軟性及び機動性を確保するため、取引銀行と40億円の貸出コミットメント契約(借入未実行残高40億円)を締結しております。
当社グループの運転資金の需要のうち主なものは、原材料・商品の仕入の他製造経費・販売経費等の営業費用によるものです。また設備資金の需要のうち主なものは、埼玉工場、テープ安城工場、メディカル安城工場及び製造子会社における絆創膏・粘着テープ等の製造設備の新設又は更新によるものです。
2024年3月31日現在、当社グループの借入金の残高は20億円で、その内の一部について金利スワップ取引を利用することで、その全額を円建ての固定金利にて国内銀行より調達しております。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、見積りが必要となる事項については、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果はこれらと異なる場合があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
該当事項はありません。
経営方針として定めた事業戦略に基づいた研究開発活動を行っております。
なお、当社の子会社及び関連会社は、主として当社販売品の製造を担当し、企業集団としての研究開発活動は主として当社にて行っており、当連結会計年度の研究開発費の金額は
セグメント毎の研究開発活動は次のとおりであります。
(メディカル事業関連)
当事業の研究開発の目的は、薬局・薬店向け及び医療機関向けの医薬品・医療機器及び衛生材料の製品開発、並びにその開発に必要な新機能、新技術の研究開発であり、当連結会計年度の主要な研究開発成果は次のとおりであります。
なお、当事業の研究開発は研究開発本部と国内事業本部製品開発部を中心に先端応用研究所、製品設計部及び工場との連携による新製品開発活動を展開しております。
当事業本部に関連する当連結会計年度の研究開発費の金額は
(テープ事業関連)
当事業の研究開発の目的は、オフィス・ホーム向け及び業務向けテープ関連製品の開発、並びにその開発に必要な新機能、環境対応技術の研究開発であり、当連結会計年度の主要な研究開発成果は次のとおりであります。
なお、当事業の研究開発は研究開発本部と国内事業本部製品開発部を中心に、先端応用研究所、製品設計部及び工場との連携による新製品開発活動を展開しております。
当事業本部に関連する当連結会計年度の研究開発費の金額は