当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下の通りであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1) 経営方針
当社は、健康、医療の分野でオリジナリティあふれるオンリーワンの製品・サービスを提供し、社会に貢献します。
(2) 経営戦略等
国内市場においては、信頼性および品質の向上と、開発技術の創造により売上増収を目指します。海外市場においても、当社の技術力を活かした製品の拡販を目指します。
また、新製品の開発により新たな事業の創造を目指します。
(3) 経営環境
新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)による影響は縮小傾向にあるものの、医療機器業界においては、新型コロナにより露呈した医療現場の課題を踏まえて、医療従事者を支える産業としての社会的責務を果たし続けることが求められております。
当社としても、引き続き医療機関におけるオペレーションの効率化に寄与する採血管準備装置・システムを主軸に製品ラインナップの拡充を図り、より円滑な医療機関の運営に貢献してまいります。併せて、原材料費の高騰が続く中でも、安定した製品・消耗品等の供給を維持できるよう尽力しております。
(4) 目標とする経営指標
① 2023中期経営計画
当社は、2023年度(2024年3月期)からの新3ヶ年中期経営計画を策定しております。当社の持続的な成長に向け、事業基盤の強化、積極的な研究開発投資を推進し、さらなる安定成長を目指して参ります。
② 基本方針
・採血管準備装置・システムおよび検体検査装置は、信頼性、品質の向上を図り、価値あるサービスを提供することにより、お客様の期待に応えます。
・新製品の開発により、新たな事業の想像を目指します。
(製品開発のキーワードは「在宅医療」「予防医学」「先制医療」「POCT(臨床現場の即時検査)」など)
・これからも日本国内にとどまらず、当社の技術力を活かし、世界に貢献する企業を目指します。
③ 経営指標
当社は、2023中期経営計画において、下記の指標を重要な経営指標としております。
|
経営指標 |
2024年3月期 |
2025年3月期 |
2026年3月期 |
3ヶ年合計 |
|
売上高(億円) |
98 |
100 |
110 |
308 |
|
営業利益(億円) |
13 |
14 |
18 |
45 |
|
売上高営業利益率(%) |
13.3 |
14.0 |
16.4 |
14.6 |
(5) 優先的に対処すべき事業上および財務上の課題
世界においては新型コロナに関して、行動制限が緩和されたことによる正常化が進んでいます。一方、世界的なインフレ進行やウクライナ情勢によるエネルギーコストおよび原料コストの高騰が続いています。また、人口増加、異常気象による天然資源、食料、水不足、更には地政学リスクの高まりによる影響も深刻化しています。国内においても、人口減少や超高齢化の進行、それに伴う労働力不足や、医療介護等への早急な対応が要請されています。
当社は以上の社会環境の変化に対処し、時代要請を戦略に組み込みながら、健康、医療分野での社会課題の解決に貢献することが、当社の企業価値を高めることに繋がると考えています。
持続可能な社会の実現のために、当社の三つの事業分野でソリューション提供を通し、継続的に企業価値を創造していきたいと考えています。
①採血管準備装置・システム事業
当社は採血採尿業務に特化した分野において、世界に先駆けて採血管準備装置を開発しました。日本全国で2,000ヶ所以上、海外で500ヶ所以上の施設へ導入実績があります。これまで、大型採血管準備装置「BC・ROBO-8001RFID(無線自動識別機能)」の開発を筆頭に、中型採血管準備装置「BC・ROBO-900」、小型採血管準備装置「BC・ROBO7」等のラインアップをそろえてきており、更なる販路拡大を図っていきます。また、医療従事者の人手不足により今後需要が期待される、検体の非接触認識と自動搬送の実現、クラウド活用で最適化された患者誘導による待ち時間短縮をはじめとする、効率的で快適なサービスを提供するための装置・システム開発を通じて、医療機関様や患者様への利便性向上策に貢献していきます。
②検体検査装置事業
当社の検体検査装置は、血液ガス分析、電解質分析を行い、状況把握、診断、治療に欠かせない緊急検査装置で、国内及び海外で販売して参りました。デスクトップ型とハンディ型を取りそろえ、検査室や集中治療室、動物病院等多様なニーズにも対応させていただきました。新型コロナ禍で海外市場での販路拡大し、緊急検査用途の血液ガス分析装置の需要が引き続き高まっています。
2022年度(2023年3月期)より新型血液ガス分析器GASTAT-proを上市しました。今後も更なる販路拡大を図って参ります。また、デスクトップ型の高機能装置の開発、消耗品の量産安定化にも努めて参ります。
③消耗品等事業
採血管準備装置・システム及び検体検査装置の消耗品は、医療機関内の日常的な検査で使用されており、装置の設置増加に伴い売上は増加してきました。
これまで年率4~5%の割合で売上が増加してきましたが、原料、部材価格が上昇しています。消耗品価格の改定も進めると共に、引き続き安心安全な消耗品を提供して参ります。
④SDGsの推進
SDGs(国連の持続可能な開発目標)をはじめとした社会課題解決への取組の要請が高まっています。当社は社会の基盤と革新を担う存在であり、社会課題の解決に向けて大きな責任を持っています。
当社としての「2030長期ビジョン」を策定しています。ESG(環境・社会・企業統治)の視点で機会とリスクを的確に捉え、経営に反映させて参ります(具体的な取り組み内容については、「第2 事業の状況 2.サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載しております)。
当社は革新的な新製品や技術開発を通して、このような社会課題の解決に向けて果たすべき役割は大きいと考えています。社会変化に迅速に対応し、持続可能な成長・発展を目指します。
当社のサステナビリティに関する考え方および取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(2030長期ビジョンにおいて設定した目標)
・使用する原材料の削減
・ロボットシステム普及に貢献する技術や製品の開発、ソリューションの提供
・消耗品等事業のプラスチックから紙製品への転換
・感染予防対策に資する製品の開発、提供
・自社ビル内節電策、太陽光発電の活用
・産業廃棄物のミニマム化
・安定調達、供給のための構造改革
・「現場力」に基づいた最適生産体制の確立
・人的資本を重視する経営施策
・女性人材の活躍の場の提供
・働きやすい職場環境づくり
(行動計画として設定した目標)
・管理職に占める女性の割合を10%以上とする(当事業年度末時点では3.3%)。
・男女の平均勤続年数の差異を5年以内に維持する(当事業年度末時点では4.3年)。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末日現在において当社が判断したものであります。
(1)わが国の医療保険財政が業界に及ぼしている影響について
わが国の国民医療費は、2021年度には45兆359億円で、前年度に比べ2兆694億円(4.8%)の増加となっており、今後における医療費の増大傾向が国家財政上の大きな問題となっております。一方で、人口の減少傾向が続く現状にあって経済成長は限定的(国内総生産は前年度比2.4%増加)であり、医療保険財政の悪化に歯止めをかけることが大きな課題となっております。
2022年4月1日の診療報酬改定では、本体部分のプラスが0.43%にとどまり、薬価の改定を含めた診療報酬全体としては、前回に続いてマイナス改定となるなど、医療機関の経営環境は引き続き厳しい状況にあります。
(2)当社の事業戦略及び事業展開上内包するリスクについて
① 採血管準備装置・システムの市場規模、市場シェア及び同事業の新市場開拓について
採血管準備装置・システム事業は、当社が市場ニーズを掘り起こし、製品化をおこなった事業であります。当社の総売上高のうち、採血管準備装置・システム事業と関連消耗品の売上高合計が占める割合は、70%前後に達しております。その依存の大きさからも医療財政の緊縮化などの外的要因による市場規模の収縮、及び次世代機において市場動向やニーズを的確に捉えることができず収益性が低下した場合、当社の業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
また、新製品の研究開発と製品化及び販売計画は、当社の想定どおりに拡大するかは不透明であり、将来においても当社売上高における採血管準備装置・システム事業への依存が大きい可能性があります。
また、採血管準備装置・システムの当社製品の累計設置施設は2,000施設を超えており、市場シェアも当社調べでは累計設置施設数ベース90%前後で推移しております。当社が主な導入のターゲットとしている病床数200床以上の大規模一般病院数を踏まえると、今後、新規の設置台数は伸び悩み若しくは減少に転ずる可能性があります。
このため、これまでターゲットとしてきた大規模一般病院に限らず、大規模病院の入院病棟や小規模病院をターゲットとした小型の装置開発・販売強化を図ってきております。さらに、治験業務等を受注する検査機関向けに直接販売の拡大を図っておりますが、小型製品については販売単価が低い一方、大型装置販売と同様の営業コストを要することから、潜在需要にもかかわらず、十分な採算を確保できない可能性があります。
② 採血管準備装置・システムに関する顧客との継続的関係強化について
当社は、主力製品である採血管準備装置・システムを取巻く環境を踏まえ、累計設置台数の伸びに応じて、経常的に売上を見込める関連消耗品の売上や保守管理サービス収入により、既納入先との継続的取引の拡大を図っております。一方、これらの消耗品に対し、他メーカーが当社ハード製品に対応しうる非純正品を当社純正品に比し、廉価で販売する動きがあるため、当社は保守管理サービス業務の強化やハード新製品開発時における仕様変更等により、純正品の使用徹底を図っております。
また、採血管準備装置の法定耐用年数は5年でありますが、第三・第四世代機が設置後10年以上経過し、その間の物理的陳腐化に加え、製品仕様の向上による旧世代機の技術的陳腐化により、当社ハード製品の更新需要の取込みをはかり、予想される純新規需要の減少を補完する計画であります。しかしながら、更新はユーザー側が決定しており、当該ユーザー側の事情により更新が後ろ倒しになる傾向があります。
③ 採血管準備装置・システムに関する競合等の影響及び対応策について
採血管準備装置・システムについては、当社製品の国内市場におけるシェアは90%前後を占めておりますが、競合他社の新製品の仕様、販売価格等により、販売上の影響を被る可能性があります。
当社製品の販売単価は、競合他社に比して高めに設定されておりますが、新型コロナの影響を緩和する方策として、非接触、密集の回避、待ち時間の短縮等の新機能・システムを付加するなど、提案内容の高付加価値化を目指してまいります。機能や処理能力における相違、操作の簡素化、省スペース化、デザイン等のきめ細やかなユーザーニーズが製品へ反映されていることの認知の向上とともに、継続的な製品開発・改良努力による製品差別化、ブランド構築・維持が販売価格維持の上で不可欠であると考えております。
また、医療施設全体の経営環境の悪化により、装置の新設の中止・延期やスペック・ダウン等の影響があり、当社は採血管準備装置単体に対し、自動搬送採血台、検体搬送システム、RFID機能等のオプション製品を付加し、パッケージとして販売することにより、ユーザーの多様なニーズの吸収による販売単価の拡大を図っておりますが、これらの成否によっては当社の業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
さらに、電子カルテやオーダリングシステム導入等、医療施設業務全体のIT化の一環で採血管準備装置・システムが導入されるケースも多くなってきておりますが、医療施設側による採血管準備装置を制御する上位システムの導入遅延が散見されております。また、臨床検査業務の一層の外注・委託化が進展する中、医療施設側における同業務の委託先の決定遅延が生じる場合があります。これらの要因によっては、当社の採血管準備装置・システムの年間販売計画にも影響を及ぼす可能性があります。
④ 採血管準備装置・システムの売上に至るまでに通常長期に亘る営業期間を要することについて
主力製品である採血管準備装置・システムの導入は、医療機関にとって大規模投資となるため、最終的な決定に至るまでは、2~3年程度の間の情報収集、内部での検討を要するケースが一般的であります。
このため、当社は可能な限り初期段階から医療機関とのコンタクトを持ち、当社製品の導入をおこなうことのメリットを理解して頂くことが、販売戦略上不可欠であります。
医療施設における外注委託を含めた臨床検査形態により、装置導入の意思決定プロセスが異なる場合があります。これらの形態変更は装置販売上のキーパーソンの変化に繋がるため、留意が必要であります。また、装置販売候補先における医療施設の人事異動等によるキーパーソンの交代は、有力販売見込先である当該医療施設への販売計画に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(3)研究開発型企業として、研究開発期間と製品化に時間を要することについて
当社は、研究開発を重要な事業戦略としております。研究開発テーマの策定は市場ニーズの緊急度、技術的ハードル、他社の研究開発動向も踏まえ策定し、案件の開発期間は、基本的に2年として設定しております。しかしながら、技術的なハードルや市場に受入れられる明確な商品コンセプトが設定できない等のケースが生じた場合には、開発の中断を余儀なくされ、現在実施中の研究開発及び今後の研究開発計画に影響を及ぼす可能性があります。
(4)製造委託を中心とする当社の生産体制について
採血管準備装置及び検体検査装置の生産については、製造工程の大半を協力会社に委託しております。採血管準備装置BC・ROBO-8001RFIDについては、東芝産業機器システム株式会社と基本契約を締結の上、製造委託をおこない、ロット生産をおこなっております。
当社は、同社との長期に亘る取引関係及び同社には複数の協力会社があることから、同社を通じた安定的な製品供給が確保されると判断しておりますが、仮に製造委託先に重大な問題が発生した場合には、当社が製品の供給を受けられなくなる可能性があります。
当社は、製造委託先との連携及び受入検査の強化を通じて、製品の品質確保を図っておりますが、採血管準備装置は、法制度上医療機器ではないものの医療関連機器であり、万が一製品の不具合が生じた場合、当社製品に対する信用失墜等に直面する可能性があります。
(5)検体検査装置事業及び新規事業分野における長期的事業戦略について
長期的視点を見据え、採血管準備装置・システム事業及びその関連事業以外の事業育成の視点も重要になってきております。現在、売上に占める比率では大きくはないものの検体検査装置事業における研究開発に注力しておりますが、検体検査装置事業においては採血管準備装置・システム事業に比し、海外メーカーを含め競争力のある既存の競合先も多く、また非医療分野への参入についても当社ブランドの構築、販路の開拓等の課題も多く、これらの分野が当社事業の主力事業もしくは重要な柱になるかどうかは現段階では不透明であります。
(6)海外への輸出について
海外への輸出については、展示会等でコンタクトのあった販売先と販売独占契約を締結の上、L/C発行等による直接取引、若しくは国内商社経由による販売をおこなっております。
採血管準備装置・システムについては、代理店を通じて輸出もおこなっており、輸出先としては、日本と同様の採血システムを採っているアジア、欧州、中南米地域等であります。2024年3月期における海外売上高は955,253千円(前期比13.1%減少)、総売上高に占める海外売上高の割合は約9.3%となっており、今後の海外展開によっては、為替リスク、海外代理店との契約、保守管理上のリスク等に直面する可能性があります。
(7)主な特許権等について
当社は、採血管準備装置に関連するバーコードラベル自動貼付・移送等にかかる特許権、及び検体検査装置事業に関連する特許権を登録済みであります。これらの登録済特許権は、事業実施にあたり、競合他社等から当社の知的財産権を保護するために必要不可欠なものであります。当社が登録済の特許権と類似の特許権を競合他社
が保有しているケースもあるため、製品開発にあたっては、訴訟対策もあり、今後新たに研究開発をおこなったものについての知的財産権保護と併せ、これらの動向にも十分留意していくことが不可欠となっております。
(8)下期への業績偏重について
当社の主力事業である採血管準備装置・システム事業の売上は、その主要納入先である医療施設からの受注及び納入要請タイミングとの関係上、下期、第4四半期に集中する傾向があります。また、医療施設側の設置する採血管準備装置を制御する上位システムの導入が当初想定した時期よりも遅延した場合には、翌期に売上が計上されることになり、一定期間毎に区切った場合の当社の経営成績に、期間毎の変動が生じる可能性があります。一方、これらの装置を稼動するための試薬、ラベル等の消耗品については恒常的に需要が発生いたします。
(9)法的規制について
当社は、各種の医療機器及び体外診断用医薬品の関連製品の製造、販売を行っております。医療機器及び体外診断用医薬品の製造販売業と製造業は、薬事法(1960年8月10日 法律第145号)をはじめとして、医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令(QMS省令:Quality Management System:2004年12月17日 厚生労働省令第169号)及びそれに関連する各種法令により規制を受けております。
薬事法は、医療機器を含め、それらの品質、有効性及び安全性の確保のために必要な規制を行っており、また許可は“5年をくだらない政令で定める期間ごとに、その更新を受けること”とされております。QMS省令は、品質の良い医療機器等を供給するために、製造時の管理、遵守事項を定めております。
当社は、薬事法やQMS省令に基づく許可を受け、(第2種医療機器製造販売業許可番号 14B2X00034、有効期間2023年9月11日から2028年9月10日まで;医療機器製造業登録番号 14BZ005014、有効期間2023年9月11日から2028年9月10日まで;14BZ200319、有効期間2019年8月5日から2024年8月4日まで;体外診断用医薬品製造業許可番号 14E1X80023、有効期間2021年7月18日から2026年7月17日まで;14EZ286017、有効期間2021年7月18日から2026年7月17日まで)厚生労働省及び神奈川県の監督を受けております。
これらの法的規制について、法律改正等により規制の内容に変更があった場合や、万一これらの規制に抵触した場合には当社の事業活動に影響が及ぶ可能性があることから、当社は引き続き、法律改正等の動向を注視しつつ、各種の法的規制に則って事業活動を展開する必要があります。
(10)採血管準備装置・システム及び検体検査装置等の当社製品の販売経路及び最終販売先について
当社製品の販売において、最大の最終販売先は医療施設でありますが、主に医療品・医療機器卸会社経由で販売をおこなっております。これは、最終販売先である医療施設が機材調達先の絞込みをおこなっており、既存取引先である医療卸会社経由での取引を望んでいるケースが多いこと、また卸会社経由での顧客ニーズ情報の提供を受け、当該卸会社を活用すること等の当社側の販売戦略上の要因によるものであります。この他、医療メーカーの製品と当社製品をセットで販売する際には、当該医療メーカー経由での取引も最近は増加傾向にあります。
主要最終販売先として医療施設の他、検査機関が挙げられます。医療施設による臨床検査業務の外注・委託化の進展に伴い、医療施設に設置する当社装置製品の直接かつ最終販売先として検査機関が一定割合を占めるようになったためであります。検査機関は様々な医療機器等に対するノウハウを背景に、医療施設の機器選定に対して一定の影響力を有していることから、最終販売先如何にかかわらず検査機関に対しても販売戦略上、十分なフォローアップが必要となっております。
海外については、展示会等でコンタクトのあった販売先と販売独占契約を締結の上、L/C発行等による直接取引、若しくは国内商社経由による販売をおこなっております。
上述の通り、販売経路や最終販売先は、事業活動の拡大とともに国内外にわたり増加しており、医療財政の悪化や医療機器の価格競争の激化によりこれらの経営状態が悪化した場合、当社の事業活動にも影響が及ぶ可能性があるため、特定の取引業者や顧客に偏ることの無いバランスの取れた営業展開が求められております。
(11)気候変動による影響について
気候変動に伴い、世界各地で異常気象等による影響が増加する中、これに対する取り組みは喫緊の課題として、各企業にも早急な対応が求められております。
SDGsへの取り組み等により、企業としての行動も大きな変容が求められており、これに伴うリスクが、当社の経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
①経営成績
当事業年度におけるわが国経済は、新型コロナの分類変更と行動制限の緩和により、インバウンド消費の回復や経済活動の正常化が進展しました。これに伴って企業業績や株価も堅調を維持する中で、景気は全体として緩やかな回復基調を維持しました。
一方、円安の進行や物価上昇による消費マインドの変化や、国際情勢の不安定さが経済の先行きに不透明感をもたらしており、原材料価格等の高止まり、国内外の金融政策の影響等についても、引き続き注視が必要な状況となっております。
医療機器業界におきましては、2024年4月より開始する医師の時間外・休日労働の上限規制をはじめとして、公立病院の統廃合、医療機関におけるICT化の推進など、より効率的な医療機関の運営に向けた取り組みが推し進められる中で、業界各社においても、これらの施策を後押しするサービスや製品を提供し続けることが求められております。
このような経営環境の中で当社は、主力製品である採血管準備装置および関連システムにおいては、新たに効率的なソリューションを提供する等、ラインアップの拡充を図ってまいりました。また、検体検査装置においては、コンパクトで高性能の新型装置の販売拡大を図り、消耗品等については、原材料費の高騰による影響が続く中で、引き続き安定供給に取り組んでまいりました。
この結果、当事業年度の売上高は10,283,851千円(前期比9.8%増加)となりました。主に国内市場における採血管準備装置・システムの販売案件が引き続き順調に推移したことに加えて、検体検査装置や消耗品の販売も伸長しました。なお、総売上高に対する海外売上高の占める割合は、前期比2.4ポイント減少し9.3%となりました。
利益面に関しては、売上高の増加に伴い、売上総利益が5,152,371千円(前期比11.3%増加)となりました。販売費及び一般管理費は、採血管準備装置・システムに係る研究開発費の増加や、賃上げ対応等による人件費の増加などにより3,312,135千円(前期比11.1%増加)となり、営業利益は1,840,235千円(前期比11.6%増加)、経常利益は1,870,610千円(前期比12.1%増加)、当期純利益は1,348,130千円(前期比17.2%増加)となりました。
<採血管準備装置・システム>
当事業年度における採血管準備装置・システムの売上高は4,299,244千円(前期比20.3%増加)となりました。
特に大型機や、大規模施設向けシステムなどの販売案件が、採血支援システムのオプション機能の強化・クラウドの活用による利便性の向上等により大幅な伸びとなり、国内市場における売上高は4,143,454千円(前期比25.9%増加)となりました。海外市場においては、中国・韓国向け案件の延期や、各国での競合他社との競争激化などにより前年度の売上を大幅に下回り、売上高は155,790千円(前期比44.6%減少)となりました。
<検体検査装置>
当事業年度における検体検査装置の売上高は598,996千円(前期比1.4%増加)となりました。
国内市場では、主力の血液ガス分析装置についてデスクトップ型、ハンディ型のいずれも売上が伸長し、404,333千円(前期比16.6%増加)となりました。海外市場における売上高は、新型コロナ対応による需要増も収束しつつある中で、前年度に比べて販売が伸びず、194,663千円(前期比20.3%減少)となりました。
<消耗品等>
当事業年度における消耗品等の売上高は5,385,610千円(前期比3.5%増加)となりました。
国内・海外市場ともに安定した需要が続き、国内市場での売上高は4,780,810千円(前期比3.3%増加)、海外市場での売上高は604,800千円(前期比5.4%増加)となりました。
②キャッシュ・フロー
当事業年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)の期末残高は、8,586,360千円(前期比3,163,929千円減少)となりました。なお、当事業年度における各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において、営業活動により得られた資金は1,142,703千円(前期比255,462千円増加)となりました。これは主に、税引前当期純利益が1,860,619千円、その他の負債の増加額が563,080千円であった一方、売上債権の増加額が723,335千円、法人税等の支払額が495,385千円であったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において、投資活動により支出した資金は100,716千円(前期比54,653千円減少)となりました。これは主に、無形固定資産の取得による支出が64,041千円、有形固定資産の取得による支出が38,184千円であったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において、財務活動により支出した資金は4,205,916千円(前期比3,700,828千円増加)となりました。これは、自己株式の取得による支出3,697,501千円、配当金の支払額508,414千円があったことによるものであります。
③生産実績
当事業年度の生産実績を単一セグメント内の品目別に示すと、次のとおりであります。
|
単一セグメント内品目別 |
当事業年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前期比増減率(%) |
|
採血管準備装置・システム(千円) |
4,983,007 |
6.2 |
|
検体検査装置(千円) |
399,027 |
△41.8 |
|
消耗品等(千円) |
5,520,366 |
6.6 |
|
合計(千円) |
10,902,402 |
3.3 |
(注)金額は販売価格によっております。
④受注実績
見込生産をおこなっておりますので、該当事項はありません。
⑤販売実績
当事業年度の販売実績を単一セグメント内の品目別に示すと、次のとおりであります。
|
単一セグメント内品目別 |
当事業年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前期比増減率(%) |
|
採血管準備装置・システム(千円) |
4,299,244 |
20.3 |
|
検体検査装置(千円) |
598,996 |
1.4 |
|
消耗品等(千円) |
5,385,610 |
3.5 |
|
合計(千円) |
10,283,851 |
9.8 |
⑥財政状態
(資産の部)
当事業年度末の総資産の残高は17,433,874千円となり、前事業年度末比2,009,297千円減少しました。これは主に、現金及び預金が3,163,929千円減少した一方、商品及び製品が400,874千円増加、売掛金が383,697千円増加、電子記録債権が324,239千円増加したことによるものであります。
(負債の部)
当事業年度末の負債の残高は3,615,285千円となり、前事業年度末比558,969千円増加しました。これは主に、買掛金が84,059千円減少した一方、前受金が248,759千円増加、未払金が166,705千円増加、未払消費税等が128,576千円増加したことによるものであります。
(純資産の部)
当事業年度末の純資産の残高は13,818,588千円となり、前事業年度末比2,568,266千円減少しました。これは、配当金の支払いが508,409千円、自己株式の増加3,442,884千円があったほか、当期純利益が1,348,130千円であったこと等によるものであります。なお、自己資本比率は79.3%となり、前事業年度末比5.0ポイント減少しました。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末日現在において判断したものであります。
①経営成績等
当事業年度の経営成績は、売上高10,283,851千円(前期比9.8%増加)、営業利益1,840,235千円(前期比11.6%増加)、経常利益1,870,610千円(前期比12.1%増加)、当期純利益1,348,130千円(前期比17.2%増加)となりました。主に国内市場における採血管準備装置・システムの販売案件が引き続き順調に推移したことに加えて、検体検査装置や消耗品の販売も伸長しました。
売上高に関しては、採血管準備装置・システム関連では、国内市場における販売が好調であったことにより、前期比20.3%の増加となりました。検体検査装置関連では、国内市場での血液ガス分析装置の売上が伸長し、前期比1.4%の増加となりました。消耗品等では、国内外ともに安定的な需要が続き、前期比3.5%の増加となりました。
売上総利益及び営業利益につきましては、売上高の増加に伴い、売上総利益は5,152,371千円(前期比11.3%増加)となり、販売費及び一般管理費は3,312,135千円(前期比11.1%増加)となった結果、営業利益は1,840,235千円(前期比11.6%増加)となりました。
②財政状態および経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当事業年度における我が国経済は、社会経済活動の正常化が進展したものの、景気の先行きは依然として予断を許さない状況が続きました。医療機器業界においても、徐々に従来の診療体制を取り戻しつつあるものの、新型コロナにより浮き彫りとなった医療現場の各種課題への対処が求められております。
このような経営環境の中で当社は引き続き、医療機器メーカーとして医療現場に価値を提供し続けるための製品開発、販売、製造活動に取り組んで参りました。
また当社は、2023年度(2024年3月期)からの新3ヶ年中期経営計画を新たに策定いたしました。本中期経営計画は、①財務戦略・投資計画・資本政策 ②人材戦略 ③営業戦略 ④生産技術戦略 ⑤研究開発戦略 の各戦略を着実に実行することにより、当社の事業構造の転換を図ると共に、持続的成長を目指し「2030長期ビジョン」へとつなげていくことを目指しています。2024年3月期は、2023中期経営計画の経営目標を達成しました。引き続き各戦略を遂行して参ります。
|
経営指標 |
2024年3月期 計画 |
2024年3月期 実績 |
2024年3月期 計画比 |
|
売上高 |
98.0億円 |
102.8億円 |
104.9% |
|
営業利益 |
13.0億円 |
18.4億円 |
141.6% |
|
売上高営業利益率 |
13.3% |
17.9% |
134.9% |
③キャッシュ・フローの状況の分析・検討ならびに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
キャッシュ・フローにつきましては、(1)経営成績等の状況の概要②キャッシュ・フローに記載のとおりであります。なお、当社のキャッシュ・フロー関連指標の推移は以下のとおりであります。
|
|
2022年3月期 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
|
自己資本比率(%) |
84.56 |
84.28 |
79.26 |
|
時価ベースの自己資本比率(%) |
71.02 |
82.59 |
70.19 |
|
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年) |
- |
- |
- |
|
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍) |
- |
- |
- |
(注)1. 各指標の算式は以下の算式を使用しております。
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
2. 株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
3. キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しております。
4. 有利子負債は、貸借対照表に計上されている負債のうち、利子を支払っている全ての負債を対象としています。
当社の主な資金需要は、研究開発型企業として発展し続けるための研究開発資金や、生産活動に必要な運転資金、生産設備や研究設備を増設するための設備投資資金等であり、これらは主に自己資金によって賄っております。
④重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表においては、経営者による会計上の見積りを行っております。経営者は、これらの見積りについて過去の実績や現状等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社の財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。
該当事項はありません。
当社は、新しい価値をもった独創的新製品を開発し、新たな市場を開拓することを目的とし、積極的な経営資源の投資をおこなうことにより、今後とも新製品の継続的な上市をおこない、収益基盤の更なる強化をおこなってまいります。
当社の研究開発活動は、1)最先端技術の研究開発及び新製品開発、2)新製品の設計及び商品改良開発、ソフトウェア開発があります。研究開発案件の平均的な開発期間は、市場ニーズの緊急度、技術的ハードル、他社の研究開発動向も踏まえ基本的に2年間と設定しております。
検体検査装置を中心とした最先端技術の研究開発については、研究開発型企業として人員的にも多くの経営資源を投入しており、今後も大学との共同研究及び、外部有識者との研究会等を通じ収集・議論して生み出されたアイデアを製品開発に反映し、新たな収益の柱となる新製品の上市を目指してまいります。
また製品開発のコンセプトに応じプロジェクトチームを編成し、急速な進歩を遂げる先端技術と多様化するユーザーニーズに対応した新製品を市場へ送り出せるよう、研究開発活動をおこなっております。
当事業年度の研究開発活動におきましては、採血管準備装置および関連システムの研究開発費404,027千円、検体検査装置分野の研究開発費112,223千円、合計
今後においても、バイオ分野からのセンシング技術への応用や先端センシング技術の研究をおこなっていき、新しい技術を医療機器に応用して変化の激しい市場のニーズに対応した製品の開発に努めてまいります。
なお、当社は医療機器及び、これら装置で使用する消耗品の製造、販売を主たる事業とする単一セグメントでありますが、事業の傾向を示すため当事業年度における品目別に主な研究開発活動を記載すると、以下のとおりです。
[採血管準備装置・システム]
当社の主力製品である採血管準備装置および関連システムにおいては、ユーザーニーズに対応した各種周辺機器の開発及び製品改良に引続き取組んでおります。
[検体検査装置]
当社の検体検査装置の主力製品である血液ガス分析装置及び当社独自のセンサー技術を利用したハンディタイプ機器を中心として、ユーザーニーズに対応した製品の改良と新しいコンセプトに基づく製品の開発に引続き取組んでおります。