第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営の基本方針

当社グループは『ともに挑み ともに繋ぐ 常にお客様目線で上質な価値を創出する』を経営理念としております。当社グループの事業はエレクトロニクス、自動車、住宅等の分野に関連しておりますが、培ってきた技術力と規模を活かした機動力で時代の変化に即応し、より価値のある、そして地球環境に優しい製品・サービスを創出することで、お客様はじめ社会に貢献してまいります。

 

(2)中長期的な経営戦略

この経営理念のもと当社グループは、2023年度(2024年3月期)を初年度とする三か年の中期経営計画を策定しました。2030年のありたい姿『共創×進化×化学の力で新たな価値を提供する』を掲げ、本中期経営計画をその実現に向けた礎の期間と位置付けました。現在の5事業セグメントを「そだてる」「のばす」「ささえる」の領域に分け、それぞれの収益性の追求と経営資源の投下により、持続的な成長を目指します。

また、その達成に向け、以下に掲げる5つの戦略と株主還元、資本政策を実践することにより、2030年のありたい姿の実現に向けその取り組みを推進します。

 

■5つの戦略

・事業領域の3つの戦略

 「技術開発の拡充」

各セグメントにおける固有技術を核に研究開発を拡充する「そだてる」領域において、収益性を求め「のばす」領域への移行を目的に、高付加価値製品の開発や新事業領域の探索を進めます。

 「注力事業の強化」

各セグメントにおける当社の強みを極大化するための「のばす」領域において、経営資源の集中投資や営業と技術の組織一体となった取り組みを進めます。

 「基盤事業の収益性拡大」

各セグメントにおける会社の基盤となる利益を生み出す「ささえる」領域において、生産性の向上や資本効率性の追求を進めます。

 

・経営領域の2つの戦略

 「サステナビリティの取り組み」

サステナビリティ委員会を設置して、関連事項を経営課題として協議、検討、答申してまいります。

また、事業ポートフォリオ戦略推進のため、ガバナンスのもとで人的資本、知財・無形資産への投資、活用方針を明確化してまいります。

 「経営基盤の強靭化」

各部門の業務特性に応じたDXを推進し、変化と持続的な成長を支えてまいります。ステークホルダー向け情報の拡充に向けて、業績や事業戦略に加え、非財務情報の開示、決算説明会や個別ミーティングの充実化、ホームページ等による広報活動の強化を推し進めてまいります。

 

■株主還元、資本政策

・第11次中期経営計画期間中 総還元性向70%以上を目指す(配当は16円以上は維持)

・ROE8%以上を目指す

・機動的な自己株式取得

 

(3)経営環境及び優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① 経営環境

今後の経済見通しにつきましては、経済活動の正常化が進んでおりますが、原材料価格等の高騰、中東やウクライナ情勢等の影響もあり、引き続き予断を許さない状況が続くものと思われます。

当社グループにおきましては、主にコーティング事業におけるグローバルな事業展開を加速させており、米国、欧州、ASEAN諸国、中国及びインドにおいて現地法人を設立し、「藤倉化成グローバルネットワーク」として、製品の供給体制網の整備を更に進めております。

② 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

国内におきましては、当社のメイン工場である佐野事業所のリニューアルを進めており、現在新工場の建設計画を進めております。第11次中期経営計画期間での着工を目指し準備を進めてまいります。

また、世界的な気候変動問題への対応、脱炭素社会への移行等、当社を取り巻く環境が大きく変化している中で、各事業部の技術部門の協業による新商品開発と新マーケットの創出を今後の成長エンジンと位置付け、技術開発への注力による事業領域の拡大、継続的なコスト削減、新規設備投資による生産体制の強化や生産効率の向上を図り、安定的な収益基盤の確保に努めてまいります。

 

事業別の重点課題は次のとおりであります。

・コーティング事業

プラスチック用コーティング材

アジア市場での生産拠点の整備及び市場の拡大

グローバル市場の展開(日・米・欧・アジアネットワーク化)

環境対応型塗料の開発推進

・塗料事業

新築・リフォーム向けハウジング用超耐久性塗料の開発、環境配慮型塗装システムの推進、安心、安全施工の強化

・電子材料事業

新接合分野導電材料の開発及び用途の拡大

・化成品事業

トナー用バインダー樹脂等の開発及び販売の拡大、環境対応型電荷制御剤の開発、ファインポリマー及びエマルジョン系粘・接着剤ポリマー、体外診断薬の開発

・合成樹脂事業

アクリル樹脂原材料・加工品の仕入・販売及び高機能材料の提案による売上拡大

 

(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは経営の基本方針に基づき、「成長性」「効率性」「株主還元」の観点から自己資本当期純利益率(ROE)を重要な指標と位置づけ、8%以上を目標値としております。当該数値はあくまでも経営管理上目指す目標であり、将来の様々な要因に影響されるため、その達成を保証するものではありません。

ROE = 親会社株主に帰属する当期純利益 / ((期首自己資本+期末自己資本)/2

 

第11次中期経営計画の進捗状況は以下のとおりです。

 

経営成績

初年度・中計値

(2024年3月期)

初年度・実績値

(2024年3月期)

2年目・中計値

(2025年3月期)

最終年度・中計値

(2026年3月期)

売上高(百万円)

55,000

52,612

59,000

63,000

営業利益(百万円)

1,300

1,299

2,900

4,000

ROE(%)

3.0

2.8

6.0

8.0

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

1.気候変動への対応(TCFD提言に基づく情報開示)

 

 当社は気候変動問題を重要課題の一つとして挙げており、2023年5月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)へ賛同を表明しました。TCFD提言に沿って気候変動が事業活動に与える影響を分析・評価し、複数のシナリオに基づく対応策を策定し、事業のレジリエンス向上を図るとともに、これらの取り組みをステークホルダーの皆さまに開示してまいります。

 

(1)ガバナンス

 気候変動に関する重要決議事項は、代表取締役社長を委員長として設置したサステナビリティ委員会及び常務会で経営課題の審議、決議を行い、取締役会で監督、監視が適切に図られる体制を整えております。

 具体的な対応や取り組みはサステナビリティ委員会で協議し、委員会での議論の内容は少なくとも年1回の頻度で取締役会にて報告されております。サステナビリティ委員会は常勤取締役をメンバーとして年2回以上必要に応じて開催しております。

 

(2)戦略

 TCFD提言に基づいたシナリオ分析を行い、特定された「リスクと機会」について気温が1.5℃、4℃上昇した世界観に照らし合わせ事業影響評価を進めました。2023年度は評価対象を国内連結会社まで拡大しました。

大分類

中分類

事業インパクト

評価

移行

リスク

政策・規制

・政府によるカーボンプライシング制度、排出権取引制度の導入・強化により、当社の事業所から排出される温室効果ガスに比例して支出が増加

・省エネ、再エネ規制が強化された場合、より高効率な設備機器への切り替え、設備投資で支出が増加

技術と市場

・低炭素への対応遅れによるブランド力低下

・ナフサ、銀等の価格上昇により支出が増加

・環境配慮が不十分な場合、顧客取引の減少及び競合他社製品への乗換の可能性あり

・作業環境の悪化、作業員不足による賃金、生産コスト上昇

評判

・環境配慮、環境情報開示が不十分な場合、資金調達コストが増加

物理

リスク

急性

・サプライチェーン寸断や自社生産拠点の損壊による直接的な被害や対応費用の発生の他、売上機会損失等に影響が波及

・気象災害や熱中症の拡大により塗装現場の実施が困難になる

慢性

・工場、事業所での空調設備の使用量増加によりコストが増加

・気温の上昇により、危険物取り扱いの事故リスクの上昇

・作業員の健康リスクの上昇

機会

資源の効率性

・リサイクル対応製品の需要増加

・資源循環型原材料を使用しての製品開発

・中古住宅市場の活用拡大に伴う塗り替え需要の増加

エネルギー源

・再生可能エネルギー調達コスト低下

・廃熱の有効利用

・太陽光パネル設置住宅増加に伴うメンテナンス工事増加

製品/サービス

・省工程、省エネ、低エネルギー製品で、差別化しブランド力向上で売上拡大

・モビリティ、住宅、インフラ、IT分野等における低炭素技術製品の普及により当社製品の需要が増加

・防災製品の売上拡大

市場

・環境配慮、環境情報開示を進め企業価値が向上

・寒冷地での塗装施工機械の拡大

強靭性

(レジリエンス)

・原材料の多様化による製品の安定供給

・事業継続対策を充実させることで差別化

 

 

(3)リスク管理

 事業活動を阻害する恐れのあるリスクの把握と必要な対策について、サステナビリティ委員会で協議検討を行っており、気候変動に関するリスク及び機会はサステナビリティ委員会で課題化し、全社で取り組んでおります。

 

(4)指標及び目標

 2023年度藤倉化成(国内連結、単体)の温室効果ガス排出量は、Scope1:1,085t/年(国内連結)、1,071t/年(単体)、Scope2:1,927t/年(国内連結)、1,646t/年(単体)、Scope3:80,741t/年(国内連結)、50,452t/年(単体)となります。

 当社では藤倉化成(単体)の事業活動における環境負荷低減の目標として2030年度までに、Scope1、Scope2におけるCO2排出量41%削減(2013年度比)としております。

 

 

2.人的資本・多様性

 

 変わり続ける社会の中で、当社のさらなる成長を支える人材の育成は、最重要テーマと捉えています。

 2030年のありたい姿「共創×進化×化学の力で新たな価値を提供する」に向けて、自ら行動し、人との繋がりをもって真摯に取り組む能力の強化に努めております。

 従業員一人ひとりの個性の尊重と多様性の拡充を図るとともに、イノベーションを創出する組織作りに取り組んでまいります。

 

(1)ガバナンス

 人的資本に関する重要決議事項は、代表取締役社長を委員長として設置したサステナビリティ委員会及び常務会で経営課題の審議、決議を行い、取締役会で監督、監視が適切に図られる体制を整えております。

 具体的な対応や取り組みはサステナビリティ委員会で協議し、委員会での議論の内容は少なくとも年1回の頻度で取締役会にて報告されております。サステナビリティ委員会は常勤取締役をメンバーとして年2回以上必要に応じて開催しております。

 

(2)戦略

人材の適材適所配置

自己申告制度

人事部門との多様な面談制度

人材育成による能力の獲得・強化

多様な研修制度

キャリアカウンセリング

ワークエンゲージメント向上による能力の最大発揮

エンゲージメントサーベイ

育児や介護と仕事を両立できる各種施策

理念浸透活動

多様性の拡充

女性管理職の育成、積極的なキャリア採用、シニア社員の活躍推進

様々なライフイベントに対応する各種制度

ナショナルスタッフの経営層への登用

イノベーションを創出する組織

まずやってみる+加点主義

人とのつながりを重視する社風

 

(3)リスク管理

 事業活動を阻害する恐れのあるリスクの把握と必要な対策について、サステナビリティ委員会で協議検討を行っております。グローバル経営体制を支える人材や、多様な価値観に対応したイノベーションを生み出す人材が不足するリスクや、工場の稼働に必要な人材を確保できないリスク等、グループ全体への影響拡大が懸念されるリスクはサステナビリティ委員会で課題化し、全社で取り組んでおります。

 

(4)指標と目標

 「個性の尊重と多様性の拡充、イノベーションを創出する組織」を基本的な考え方として取り組みを進めております。

・人材の適材適所配置:自己申告、セカンドキャリア面談の実施率

⇒目標:100%、2023年度実績:100%(希望者に対して)

・人材育成による能力の獲得・強化:継続的な教育投資の実行

⇒人材育成に関する研修参加者数を指標とする。目標値は検討中。

・ワークエンゲージメント向上による能力の最大発揮:各種施策の検討と実施

⇒一般的なワークエンゲージメントサーベイを実施。当社の実情にあった内容を検討中。

・多様性の拡充:各種指標の把握と目標設定

⇒女性管理職比率、障がい者雇用率を指標とする。目標値は検討中。

・イノベーションを創出する組織:各種施策の検討と実施

⇒全社マテリアリティの検討に合わせて、サステナビリティ委員会にて検討中。

 

 

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。

 

(1)海外事業に関するリスク

① 為替変動リスク

当社グループの海外子会社の財務諸表は外貨建てで作成され連結財務諸表作成時に円換算されるため、為替変動の影響を受ける状況にあります。リスクをヘッジするため必要に応じて為替予約等の施策を講じておりますが、完全にリスクが回避できるわけではありません。

当社グループの海外売上高比率は2022年3月期42.6%、2023年3月期48.7%、2024年3月期51.3%と高い比率であり、為替の動向によっては、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

② カントリーリスク

当社グループは北米、欧州、東南アジア等に拠点を構え事業展開を進めております。このようなグローバル化の進展は、世界経済全体の動向に加え、事業展開する各国固有の政治経済、法規制、自然環境等の要素が影響を事業に与える可能性があります。これらのリスクに対しては、現地での情報収集や外部コンサルタントの利用等を通じて早期に認識、対処することでその予防に努めていますが、法規制の大きな変更、テロ、戦争、自然災害といった政治的・社会的混乱等の想定を超える事態が発生した場合は、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)原材料動向に関するリスク

① 原材料の価格変動リスク

当社グループが生産及び販売している製品の多くは、その主原料として石油化学製品を使用しております。原油価格の大幅な変動がナフサ価格等に連動し原材料価格の動向に影響を及ぼす傾向にあるため、国際石油市場の著しい変動によっては、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。このようなリスクに備え当社グループでは、集中購買や地域の選定による調達先の分散等により原材料価格変動を緩和する工夫を行い、安定した原材料の調達に努めております。

② 原材料の調達に関するリスク

当社グループの製品製造において用いるいくつかの原材料については、特定のメーカーに依存しているものがあります。原材料メーカーの生産活動・サプライチェーンが天災や事故等、コントロールできない要因により停止される場合、原材料の調達が困難となり顧客への供給責任を果たせず、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

このようなリスクに備え当社グループでは、複数購買やグローバル調達による購買ルートの検討、原材料の互換化等を進めることにより、安定した原材料調達に努めております。

 

(3)法規制に関するリスク

① 知的財産のリスク

当社グループでは、知的財産を重要な経営資源として認識し活用するとともに、他社の権利を尊重した製品・技術の開発を進めております。知的財産に該当する情報技術は情報資産に関する規定により管理し、その流出を防止する等の体制を整備しておりますが、技術革新のスピードが加速していること、また当社グループの事業活動がグローバルに展開していることから、不当に知的財産権が侵害され、第三者と知的財産に関する係争が発生した場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

② 環境、安全関連法規への対応リスク

当社グループの製品及び各事業所を規制する代表的な法令・規則・行政指導は以下の通りであります。それぞれについて法的適合、遵法を保証するようグループ各社の経営管理を最適状態におくべく、諸施策を講じております。しかしながら、新たな法規制、条例等の改正により、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。

・化学物質の審査及び製造の規制に関する法律

・水質汚濁防止法

・廃棄物の処理及び清掃に関する法律

・諸外国の化学物質の審査及び登録に関する法規制

 

(4)自然災害や感染症の蔓延等のリスク

当社グループは栃木県を主要な生産拠点としております。現在のところ生産拠点及び近隣地域には活断層は発見されておりませんが、建物・製造設備・製品等の資産が自然災害や火災等の事故等によって損失が発生しないよう、ISO45001の認証取得を行う等十分対策を講じております。製造設備等に重要な影響を及ぼす事象が発生した場合には、当社グループの操業が中断し、生産及び出荷が遅延することにより売上高は低下し、さらに生産拠点の修復または代替のため多額の費用を要する可能性があります。

また、2020年2月頃から世界中に拡散した新型コロナウイルス感染症は、人々の健康や基本的な生活基盤を脅かし、多くの産業の経済活動に大きな影響を与えました。当社グループは、このような感染症の感染拡大を防止するために、衛生管理の徹底や在宅勤務等の措置を講じておりますが、従業員の感染による操業停止やサプライチェーンの停滞、顧客の事業活動の停止や縮小等による売上の減少により、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)固定資産の減損に関するリスク

当社グループは、製造設備等の有形固定資産を保有しております。当該資産又は資産グループが属する事業の経営環境の著しい悪化や収益性の低下等によって、固定資産の減損損失を計上する必要が生じた場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。このようなリスクに備え当社グループでは、潜在的な減損リスクを定期的にモニタリングする等、事業の採算を的確に把握し対応することで、当該リスクの低減が図れるよう努めております。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度におけるわが国の経済は、新型コロナウイルス感染症による行動制限の緩和に伴い、社会経済活動が平常化し、緩やかな回復基調にありますが、原材料、エネルギー価格の高騰、円安による物価上昇は継続しており、先行き不透明な状況で推移いたしました。海外経済におきましても、ウクライナ情勢の長期化や中東地域をめぐる情勢の悪化、世界的な金融引き締め政策による景気への影響が懸念されており、今後も先行き不透明な状況で推移するものと思われます。各セグメントにおいて、原材料、エネルギー、物流費などの各種コストの高騰により収益が圧迫される形となりました。価格改定やコスト削減を進めてさらなる収益の改善を図ってまいります。

このような環境の下、当連結会計年度の売上高は526億12百万円(前年同期比3.5%増)となり、営業利益は12億99百万円(同270.5%増)、経常利益は18億46百万円(同246.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は10億75百万円(同10,754.1%増)となりました。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態に関する認識及び分析・検討内容

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末と比べ27億2百万円(前連結会計年度末比4.9%)増加し、576億9百万円となりました。

・流動資産

受取手形や売掛金の増加などの結果、前連結会計年度末と比べ16億98百万円(同5.4%)増加し、331億24百万円となりました。

・固定資産

有形固定資産の増加及び投資有価証券の増加などの結果、前連結会計年度末と比べ10億3百万円(同4.3%)増加し、244億85百万円となりました。

・流動負債

支払手形及び買掛金の増加などの結果、前連結会計年度末と比べ6億91百万円(同5.8%)増加し、126億5百万円となりました。

・固定負債

退職給付に係る負債の増加などの結果、前連結会計年度末と比べ29百万円(同0.8%)増加し、34億23百万円となりました。

・純資産

為替換算調整勘定の増加などの結果、前連結会計年度末と比べ19億83百万円(同5.0%)増加し、415億81百万円となりました。

この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の66.8%から68.1%へと1.3ポイント増加となり、1株当たり純資産額は、前連結会計年度末より84円29銭増加し、1,273円42銭となりました。

 

② 経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

・売上高

当連結会計年度における売上高は、合成樹脂セグメントにおける液晶テレビ用製品や樹脂原料の販売が、また、塗料セグメントにおける新築用塗料の販売が、それぞれ低調に推移しましたが、コーティングセグメントにおける米国やアセアン諸国での販売は好調に推移しました。

このような環境の下、売上高は前年同期比17億68百万円(前年同期比3.5%)増加し、526億12百万円となりました。

・営業利益

営業利益は前年同期比9億49百万円(同270.5%)増加し、12億99百万円となりました。主な増加要因は、各種製品の販売価格の改定が進んだことや全社的なコスト削減等の収益改善の取り組みが実施されたことに加え、為替の効果もあり、増益となりました。

 

・営業外損益

営業外収益は前年同期比3億18百万円(同70.1%)増加し、7億71百万円となりました。これは主に投資有価証券売却益が増加したことによるものです。

営業外費用は前年同期比46百万円(同17.1%)減少し、2億24百万円となりました。これは主に為替差損が減少したことによるものです。

・経常利益

上記の結果、経常利益は前年同期比13億13百万円(同246.1%)増加し、18億46百万円となりました。

・親会社株主に帰属する当期純利益

上記の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前年同期比10億65百万円(同10,754.1%)増加し、10億75百万円となりました。

 

セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。

 

・コーティング

 プラスチック用コーティング材(『レクラック』・『フジハード』など)を取扱うコーティングセグメントにおきましては、主力の自動車向け塗料の国内の販売につきましては、第4四半期に主要顧客の自動車生産台数が減少した影響などにより需要がやや低調に推移いたしました。海外におきましては、北米、アセアン諸国での販売が好調に推移いたしました。一方、中国では日系メーカーの販売不振により低調に推移いたしました。また、自動車向け以外の分野では、日系化粧品メーカーの販売が苦戦した影響などにより、化粧品容器用塗料の販売が低調に推移いたしました。

 この結果、売上高は294億4百万円(同8.5%増)となり、営業利益は13億15百万円(同477.8%増)となりました。

・塗料

 建築用塗料を取扱う塗料セグメントにおきましては、主要顧客の受注減少が続いており、新築用塗料の販売が低調に推移いたしました。リフォーム用塗料につきましては、下期に入り顧客の受注が回復傾向にあり、需要も戻りつつありますが、新築用塗料の不振を補うまでには至りませんでした。

 この結果、売上高は111億88百万円(同5.1%減)となり、営業利益は1億62百万円(同61.7%減)となりました。

・電子材料

 導電性樹脂材料(『ドータイト』)などを取扱う電子材料セグメントにおきましては、自動車の安全装置用の電子部品の販売が堅調に推移した一方で、PC、スマホ向け製品の販売が低調に推移いたしました。銀建値を中心とした原材料高騰と品種構成により、セグメントにおける収益が圧迫される結果となりました。

 この結果、売上高は32億39百万円(同1.8%増)となり、営業損失は1億43百万円(前連結会計年度は営業損失1億63百万円)となりました。

・化成品

 トナー関連材料、粘・接着剤ベース(『アクリベース』)やメディカル材料を取扱う化成品セグメントにおきましては、トナー関連材料の販売は、コピー機市場の低迷の影響を受けて低調に推移いたしました。粘着剤関連につきましては、壁紙用粘着剤の販売が好調に推移いたしました。メディカル材料分野では試薬原料の中国での販売が低調に推移した一方で、主力の糖尿病診断薬の原料販売がインド・ブラジルを中心に堅調に推移いたしました。

 この結果、売上高は41億57百万円(同1.9%増)となり、営業損失は49百万円(前連結会計年度は営業損失1百万円)となりました。

・合成樹脂

 子会社藤光樹脂株式会社などが取扱う、樹脂製品の仕入・販売を行う合成樹脂セグメントにおきましては、液晶テレビ用のレンズキャップや樹脂原料の販売が低調に推移した一方で、リチウムイオン電池向け製品の販売が好調に推移いたしました。

 この結果、売上高は46億23百万円(同1.5%減)となり、営業利益は15百万円(前連結会計年度は営業損失1億36百万円)となりました。

 

その他生産、受注及び販売の実績は次のとおりであります。

・生産実績

 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

コーティング(百万円)

29,970

118.4

塗料(百万円)

3,726

87.1

電子材料(百万円)

2,778

92.8

化成品(百万円)

3,660

107.6

合計(百万円)

40,134

111.5

 (注)金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。

 

・商品仕入実績

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

合成樹脂(百万円)

5,162

109.1

合計(百万円)

5,162

109.1

 

・受注実績

 当社グループは、主として見込生産によっていますので、受注ならびに受注残高について特に記載すべき事項はありません。

 

・販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

コーティング(百万円)

29,404

108.5

塗料(百万円)

11,188

94.9

電子材料(百万円)

3,239

101.8

化成品(百万円)

4,157

101.9

合成樹脂(百万円)

4,623

98.5

合計(百万円)

52,612

103.5

 (注)セグメント間の取引については、相殺消去しております。

 

③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ43百万円増加し、120億33百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

・営業活動によるキャッシュ・フロー

当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、法人税等の支払が5億37百万円であったものの、税金等調整前当期純利益20億3百万円や減価償却費15億75百万円などにより、32億75百万円の収入(前連結会計年度は9億52百万円の収入)となりました。

 

・投資活動によるキャッシュ・フロー

当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出14億81百万円、無形固定資産の取得による支出2億90百万円などにより、12億34百万円の支出(前連結会計年度は11億77百万円の支出)となりました。

・財務活動によるキャッシュ・フロー

当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出9億10百万円、配当金により4億93百万円の支出などがあったため、23億5百万円の支出(前連結会計年度は12億38百万円の支出)となりました。

 

当社グループの運転資金需要のうち主なものは石化原料及び鉱物資源材の購入の他、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費であり、投資を目的とした資金需要は設備投資と関連する設備維持費用等によるものであります。

当社グループは投機的な取引は行わず、事業運営上必要な流動性と資金の財源を安定的に確保することを基本方針としており、一時的な余資は安全性の高い金融資産で運用し、短期的な運転資金を銀行借入により調達しております。

なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は33億64百万円となっております。

 

④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められた会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、経営者は決算日に計上すべき資産・負債及び収益・費用の額に不確実性がある場合において、入手可能な情報に基づいて合理的な金額を見積る必要があります。見積りは過去の経験やその時点の状況として妥当と考えられる様々な要素に基づき行っており、前提条件や事業環境等に変化が見られた場合には見積りと将来の実績に乖離が生じることもあります。

当社グループの財政状態及び経営成績に対して、重要な影響を与え得る会計上の見積り及び判断が必要となる項目は以下のとおりです。

・固定資産の減損

当社グループでは、固定資産の減損に係る会計基準等に従って減損の兆候判定を行い、兆候があると判断した場合には、将来キャッシュ・フロー等を算定し減損損失の認識・測定を行っています。経営環境や事業の状況の著しい変化等により収益性が低下し、十分なキャッシュ・フローを創出できないと判断される場合は、対象資産に対する減損損失の計上により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

・繰延税金資産

当社グループは現在、一定期間における回収可能性に基づき相当額の繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の計上は、予測される将来における課税所得の達成の可否により影響を受けます。将来の課税所得の見積りにあたっては、過去の業績やタックス・プランニング等も考慮しており、将来の収益性に係る判断は市場の動向その他の要因により影響を受けます。これらの状況に変化があった場合、繰延税金資産計上額に対して金額的に重要な評価性引当額を計上する可能性があります。繰延税金資産の回収可能性を見込めない場合には、回収不能と見込まれる金額に対して評価性引当額が計上され、損益に悪影響を与える可能性があります。

・退職給付債務及び退職給付費用

当社グループ従業員の退職給付債務及び退職給付費用は割引率、退職率及び死亡率等、年金数理計算上の基礎率に基づいて算定しております。数理計算上の算定には、割引率や利息の純額等の変数についての一定の仮定に基づく判断が求められますが、その適切性については外部の年金数理人からの助言を得ております。

数理計算上の算定は経営者の最善の見積りと判断により決定しておりますが、将来の不確実な経済条件の変動の結果によって影響を受ける可能性があり、見直しが必要となった場合、連結財務諸表において認識する金額に重要な影響を与える可能性があります。

 

⑤ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標の達成・進捗状況について

「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおり、当社グループは、資産効率の向上及び株主資本の有効利用が全てのステークホルダーの利益に合致するものと考え、「自己資本当期純利益率(ROE)」を重要な指標として位置付けております。

当連結会計年度における「自己資本当期純利益率(ROE)」は2.8%でした。引き続き目標値を超えるよう取り組んでまいります。

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

当社グループは

<コーティング>

・自動車、化粧品容器及びホビー向け塗料

<塗料>

・新築・リフォーム向けハウジング用超耐久性塗料、新規デザイン及び環境配慮型塗装システムの開発

<電子材料>

・電子部品用導電性接着剤、回路形成用導電性ペースト及び機能性絶縁ペースト、電磁波シールド材料

<化成品>

・複写機・プリンター向けトナー関連材料、粘・接着剤用を中心とする高機能性樹脂及び体外診断薬を中心としたメディカル材料

<合成樹脂>

・車載用ナビパネル

・TV用導光板及び拡散板用原料

等を販売しております。

当社グループは高度情報化社会に対応していくため、各分野にわたって研究開発に取り組んでおり、売上高の一定割合を目途に研究開発投資を行っております。

当連結会計年度における研究開発関連費用の総額は2,791百万円となっております。また、当連結会計年度における各セグメント別の研究開発関連費用は下記のとおりであります。

(1) コーティング

多種多様なプラスチックに対し、高耐久性塗料、機能性付与塗料、そして環境対応型塗料など優れた独自性のあるコーティング材の開発を行っております。また、カーボンニュートラルへの機運が高まる中、CO2削減(省工程、省エネ、バイオマス)に繋がる製品開発を米国のRED SPOT PAINT & VARNISH CO.,INC.及び英国のFujichem Sonneborn Ltdとの連携を強化して取り組んでおります。

コーティングに係る研究開発費は1,694百万円であります。

(2) 塗料

集合住宅及び戸建住宅の新築、リフォームに対応する製品の開発を行っております。特に低汚染、高耐久、環境対応型及び新規デザイン等の当社の特徴を生かした開発に注力しております。

塗料に係る研究開発費は369百万円であります。

(3) 電子材料

電子・電機機器の高機能化・小型軽量化に対応するため、新工法、機能付与に対応できる導電性材料及び高機能性材料(例えば、センサーとして使用するストレッチャブル・成形特性を付与した導電性ペースト、低温・短時間硬化、Snめっき対応の導電性接着剤、グラビアオフセット印刷を用いた超細線回路用ペースト、ミリ波吸収可能なシールド材、磁気シールド材料等)の開発を行っております。また、これらに使用する新しい導電性フィラーの開発、応用展開も並行して行っており、独自性のある製品開発を進めております。

電子材料に係る研究開発費は234百万円であります。

(4) 化成品

複合機・プリンター向けを重点にトナー用樹脂及び樹脂系電荷制御剤、機能性微粒子の開発を行っております。

また、環境対応を基本にした、粘・接着剤分野、電子部品分野向けに高機能性樹脂及び体外診断薬を主としたメディカル材料を鋭意開発しております。

化成品に係る研究開発費は495百万円であります。