第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月26日)現在において当社グループが判断したものです。

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは、「糖のチカラと可能性を切り拓き ”Well-being” を実現する」ことをPurpose(存在意義)に掲げ、以下のValues(価値観)のもと、すべての事業活動を通じて、より良い社会づくりに貢献してまいります。

・挑戦

常に若々しく、自ら高い志を掲げ、日々新たに挑戦し続けます。

・多様性

 多様な価値観を受容し、個々の違いや個性を強みとしつつ、一体感を持った組織であり続けます。

・持続可能性

 責任ある事業活動で、持続可能な社会の実現に貢献し続けます。

 

(2)資本政策の基本的な方針

当社の資本政策は、以下の4点により構成しております。

①中長期的なROE向上

当社は、親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)を持続的な企業価値増大に関わる中核的な指標と捉えています。売上収益利益率、財務レバレッジ、および総資産回転率を常に改善してまいります。

②安定性の上に業績連動を加味した株主還元

株主還元については、親会社所有者帰属持分配当率(DOE)の目標値を設定し、継続性・安定性を保持した上で、当期利益に対する比率(連結配当性向(DPR))目標を設定し、業績が好調な場合の連動性を高めた配当を実施します。配当に加え、自己株式の取得については、市場環境、資本効率等に鑑み適宜実施する可能性があります。

③長期的な成長と総資産回転率向上のための投資採択基準

長期的な成長と総資産回転率向上のための投資の規律として、リスクと戦略性のランク別に、投下資本利益率と投資回収期間を設定し、投資を厳選します。

④財務レバレッジの向上と安定性のバランス

成長投資の加速と株主還元の増大により、財務レバレッジを長期的に改善するとともに、継続的・安定的に企業理念を実現するため、健全なバランスシートを維持し、結果としてROEの持続的な改善を実現します。

 

当社では、こうした資本政策によって、成長投資と安定した株主還元を両立し、持続的な株主価値向上に努めてまいります。

 

(3)中長期的な会社の経営戦略および目標とする経営指標

当社グループは、上記の「(1)会社の経営の基本方針」および「(2)資本政策の基本的な方針」に基づいて、以下の重点戦略を推進してまいります。

重点戦略1: Food & Wellnessの事業拡大

重点戦略2: Sugarの基盤強化

重点戦略3: 人的資本経営の推進

重点戦略4: サステナビリティ経営の推進

 

重点戦略の詳細については、「(4)経営環境および優先的に対処すべき課題 (中期経営計画)」に記載しております。

また、目標とする経営指標につきましては、上記のとおり、ROEを中核的な指標と捉えております。

 

(4)経営環境および優先的に対処すべき課題

当社を取り巻く経営環境につきましては、新型コロナウイルスの感染症法上の分類が5類へと移行したことや、行動制限が緩和されたことにより、社会経済活動は正常化に向かい、またインバウンド需要も増加したことから緩やかな景気回復が続くことが見込まれる一方で、エネルギーコストや物流コスト等の上昇や円安の影響による物価上昇圧力を受け、お客様の生活防衛意識が高まり、2024年度においても先行き不透明な厳しい状況が続いております。

このような状況のもと、当社は、2024年10月1日付で当社を存続会社とし、グループ会社である日新製糖株式会社および伊藤忠製糖株式会社と合併する予定です。経営資源・ノウハウを当社に結集することで、効率的な経営のスピードアップを図るとともに、独自性の高い機能性素材の研究開発と市場展開を更に推進し、“Well-being”(幸せ・健康)に資する今後の成長分野への資源の投下を積極的に行っていくことにより、「食」と「健康」の両面で豊かな生活の実現に貢献し、企業価値の最大化を目指してまいります。

 

(中期経営計画)

今般、「糖のチカラと可能性を切り拓き“Well-being”を実現する」という当社のPurpose(存在意義)を軸に、ウェルネオシュガーグループの将来的なありたい姿を見据え、さらなる企業価値の向上を目指し、その実現に向けた中期経営計画として「WELLNEO Vision 2027」を策定いたしました。この中期経営計画では、以下4つの戦略の柱を立てており、これらに取り組むことにより、当社を取り巻く様々なステークホルダーの“Well-being”の実現を目指してまいります。

 

①Food&Wellnessの事業拡大

Food&Wellnessセグメントにおきましては、健康増進による人々の生活の質の向上に貢献するべく、フードサイエンス事業とフィットネス事業により、幅広い場面で活用される多種多様な機能性素材・サービスを提供してまいります。

フードサイエンス事業では、腸内・口腔フローラ(腸内・口腔内に生息する多種多様な細菌の集まり)環境を整えることが心身の健康に寄与することに注目し、フローラを制御・デザインする様々な素材を展開していくことで、Sugarセグメントに次ぐ収益の柱への成長を目指します。カップオリゴ(ガラクトオリゴ糖)やきびオリゴ(フラクトオリゴ糖)などの腸内環境の改善に資する機能性甘味料素材については、製造能力の増強や認知度の向上と販売拡大に取り組み、オーラルケア分野での効果が期待される当社グループ独自のサイクロデキストランは、今後の需要に対応するべく増産に向けた設備投資を行いながら、更なる付加価値の創出に向けた研究開発にも注力いたします。これまで実施してきたプレバイオティクス素材を活用した産学連携による技術開発にも引き続き取り組んでいくほか、ツルヤ化成工業株式会社にて研究開発を進めている食品添加物・高機能性食品や、ツキオカフィルム製薬株式会社の「可食フィルム」の事業展開や連携による商品開発力の強化など、グループ会社の資産や知見も最大活用してまいります。また、今後の更なる事業拡大においては、M&A等の活用も積極的に検討してまいります。

 

フィットネス事業では、新型コロナウイルスの感染症法上の分類が5類へと移行したことにより会員数の回復を見込んでおりますが、競合サービスの台頭など多様化が進み、経営環境は引き続き厳しい状況にあります。集客促進のための効果的な広告も実施し、総合型店舗における子ども向けスクール事業の強化と採算性を重視した経営に努め、安全・安心な健康・からだづくりの場の提供を行い、早期の業績回復を目指してまいります。

 

②Sugarの基盤強化

国内砂糖消費量は、コロナ禍による落ち込みからは徐々に回復しつつあり、インバウンド需要の回復も見込まれておりますが、海外原糖市況については、主要生産国の増産見通しはあるものの、投機資金の動き等から先行きを見通しにくい環境にあり、また地政学的リスクや円安にともなう国内物価上昇の傾向から消費購買意欲の低下が懸念されるなど、今後も不透明かつ厳しい市場環境が見込まれます。

 

当社グループとしては、消費者の皆様に対して、生活必需品である安全・安心な砂糖を安定的に供給することで社会的責任を果たしていくことを最優先に取り組みながら、採算性を重視したオペレーションに努め、今般の経営統合・合併によるシナジー効果を早期に発揮し、ビジネスプロセスの業務効率化・生産性の向上や、きび砂糖をはじめとする高付加価値品販売の推進を軸とする商品力・販売力の強化を図ることにより、事業基盤を強化するとともに、業績の向上を目指してまいります。また、強固な基盤づくりの一環として2025年10月1日を目標に、当社の連結子会社である第一糖業株式会社を吸収合併する基本方針を2024年5月24日付取締役会において決議いたしました。今後も業界再編の動きが更に加速していくことが予想され、この動きに適切に対応できるよう、引き続き、経営効率と経営品質の向上に取り組んでまいります。

 

③人的資本経営の推進

当社グループでは、会社と従業員が結びつき、価値創出のプロセスを示していきたいと考えております。事業戦略に必要な人材要件を言語化し示すことで、従業員の共感と挑戦を引き出すとともに、多様な価値観をリスペクトし受容するオープンな職場環境のもと、すべての従業員が自律したプロフェッショナルとして活躍できる新しい人事制度を導入・運用し、従業員一人ひとりの自立的なライフキャリアを尊重する人材育成を推し進めてまいります。そのような取り組みが新しい価値創出につながり、多様な人材に選ばれ続ける企業となる循環を生み、当社グループの持続的成長につながる取り組みと考えております。

 

④サステナビリティ経営の推進

サステナビリティの推進につきましては、従前定めておりました6つの重点領域をもとに、個人や企業を取り巻く社会環境、事業環境の変化を捉えたうえで、パーパス・事業戦略等を踏まえ、5つのマテリアリティ(重要課題)として特定いたしました。

今後これらのマテリアリティに対する取り組みを進め、持続可能な社会の実現に貢献し、当社グループの企業価値をより一層高めていくことで、サステナブル企業として、様々なステークホルダーの“Well-being”の実現に注力してまいります。

今後も社会環境、事業環境の変化を適切に捉えながら、ガバナンス体制の強化、既存事業の成長と事業領域の拡大を着実に進め、強固な経営基盤を構築することにより、プライム市場の上場会社として、更なる企業価値向上に努めてまいります。

 

 

※2024年5月24日に「中期経営計画『WELLNEO Vision 2027』の策定に関するお知らせ」を公表し、2024年5月30日に中期経営計画の詳細資料を公表いたしました。

上記資料は当社ホームページに掲載しております。以下のウェブページをご参照ください。

https://www.wellneo-sugar.co.jp/ir/event/explain.html

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティ経営の推進に関する考え方及び取組は、次のとおりです。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(マテリアリティ)

(1)マテリアリティの特定および考え方

 当社グループは、様々なステークホルダーの各種課題を“Well-being”に注目して整理し、社会環境、事業環境の変化を捉えたうえで、パーパス・事業戦略等を踏まえ、5つのマテリアリティ(重要課題)を特定しました。

 

        <検討プロセス ステークホルダーおよび自社の視点からの優先度検討>

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(2)特定したマテリアリティの詳細

 特定したマテリアリティと設定したKGI(重要目標達成指標)、および対応するSDGsは以下のとおりです。

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 これらの分野における取り組みを通じて、当社グループは持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指します。

 

(気候変動関連)

 気候変動問題に対してはマテリアリティの一つである「自然との共生」の中で取り組み、金融安定理事会の気候関連財務情報開示タスクフォース(以下「TCFD」という。)の提言に沿った適切な情報開示を行っています。

 今後も継続的にシナリオ分析を行い、気候変動が当社グループの事業に与えるリスクおよび機会を考察し、その結果を用いて、グループ全体で地球環境への負荷を低減した事業活動を行います。

 

(1)ガバナンス

 当社では、「サステナビリティ推進委員会」を適宜開催し、気候変動を含めた環境全体の取組を全社的に検討・推進します。

 サステナビリティ推進委員会では、気候変動に係る当社のリスクおよび収益機会が事業活動や収益等に与える影響について考察を行い、そのために必要なデータの収集と分析を全社横断的に行います。

また、気候変動を含む環境問題の基本方針や重要事項を策定し、それらを実践するための体制構築・整備、具体的な施策の審議・決定をするとともに、各種施策の進捗については定期的なモニタリングを行い、必要に応じて取締 役会に報告します。

 サステナビリティ推進委員会にて審議・検討した結果、当社経営に重大な影響を与えると判断された事項については、適宜取締役会にその内容を上程し、取締役会にて対応を審議・決議します。

 社内体制図については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ②コーポレート・ガバナンスの体制の概要および当該体制を採用する理由 a.コーポレート・ガバナンスの体制の概要 コーポレート・ガバナンスの体制の概要図(2024年6月26日現在)」に記載しています。

 

(2)戦略

シナリオ分析

 シナリオ分析については、精製糖事業を中心に4℃シナリオ、1.5℃シナリオ(一部2℃シナリオも併用)の2つのシナリオで、サステナビリティ全体像でも指標としている2030年時点を想定し、考察しました。

 

当社グループ事業に想定されるリスク

分類

種類

項目

想定されるリスク

影響度

時期

4℃

1.5℃

移行リスク

政策・法規制

カーボンプライシングの導入

・炭素税をはじめとする気候変動問題対策による操業コストの増加

中期

温室効果ガス(GHG)排出規制の強化

・施設や設備等のGHG排出削減対応コストの増加

再エネ/省エネ政策の強化

・再生可能エネルギー価格の上昇や省エネ設備什器への更新コストの発生

技術

低炭素技術の進展

・原材料(サトウキビ)がバイオエタノールに多く使用されることによる、原材料調達コストの変化

市場

エシカル消費への変化

・サステナビリティ認証等、環境に配慮した商品を展開しない場合、環境負荷未対応商品の売上減や、他社製品への顧客流出が発生

評判

顧客および投資家からの評価

・自社の気候変動への取り組みが不十分である場合、レピュテーションリスクが発生

物理リスク

急性

異常気象の激甚化
(台風、洪水、高潮、土砂等)

・サプライチェーンの寸断による一時的な操業停止

短期

・川沿い・海沿いに立地する工場が被災した場合、該当拠点の操業停止および復旧コストが発生

慢性

干ばつの発生や降雨量の変化

・主要原材料(サトウキビ・てん菜)の生育不良や収量の低下

中期

時間軸

評価

短期:0~3年 中期:4~10年(2030年)

長期:11年~

事業活動に与える影響を「大」「中」「小」で評価。

 

4℃シナリオ

 現状を上回る気候変動対策はとられず、産業革命時期比で2100年時点3.2~5.4℃上昇するとされているシナリオ。カーボンプライシングの導入はなく、再生可能エネルギーへの転換などは現状から特段大きく進展しないため、平均気温が上昇し、異常気象の激甚化などが顕著になる。

参考シナリオ:IEA Stated Policies Scenario

 

1.5℃シナリオ

 現状、各国が発表している以上の気候変動に対する厳しい対策がとられ、カーボンニュートラル実現を目指した積極的な取組が進むとされているシナリオ。気候変動対策としての法規制は現行より非常に強まり、再生可能エネルギーへの転換が進むとされる。

参考シナリオ:IEA Net Zero Emissions by 2050(一部、Sustainable Development Scenarioも併用)

 

リスク軽減および事業機会とするための取組

リスク項目

対応の方向性

リスク軽減および事業機会とするための取組

カーボンプライシングの導入

脱炭素化の推進

・日新製糖㈱千葉工場における太陽光設備設置および運用

・日新製糖㈱今福工場にて運河と「はしけ」を使った原料輸送

・社用車のエコカー「ハイブリッド車」100%導入

・日新製糖㈱および伊藤忠製糖㈱の物流部門でリードタイムの見直しや共同配送によるトラック台数の削減を行い、物流を効率化

・日新製糖㈱と伊藤忠製糖㈱にて照明のLED化を実施

・グループ会社の新光糖業㈱にて、バガス(サトウキビの搾りかす)を活用した電力で工場設備を稼働

・伊藤忠製糖㈱構内にて使用の作業車両のEV化、一部設備の冷媒ノンフロン化を実施

GHG排出規制の強化

再エネ/省エネ政策の強化

エシカル消費への変化

エシカル嗜好に対応する商品の使用と開発

・包材の薄肉化による廃棄物の削減

・一部製品の包材の印刷インキに水性・植物油・バイオマス系インキを使用し、石油原料使用量を削減

・一部製品の紙ロールにFSC認証紙を使用

・一部製品の完全紙化大袋に切り替え(実施検討中)

顧客および投資家からの評価

環境情報の適切な開示

・TCFDのフレームワークに沿った情報開示

・気候変動イニシアティブ(Japan Climate Initiative)への参加

異常気象の激甚化

防災・減災対策の強化

・当社グループ各拠点にて、地震・台風・水害といったあらゆる自然災害を想定し対策を実施

原材料調達の安定化

およびコスト変化

分散型調達の強化

・オーストラリアやタイ、国内産など様々な産地の原料糖を使用して砂糖を製造。原料や資材の調達が滞ることがないよう調達先の複数化・分散化

 

(3)リスク管理

 当社グループでは、企業経営を取り巻く様々なリスクに対応するため、リスク管理の基本方針および管理体制を「リスク管理規程」において定めています。

 また、全社横断的なリスク管理のため、執行役員社長をリスク管理の最高責任者とし、リスク管理担当執行役員を委員長とする「リスク管理委員会」を設置し、個々のリスクについての管理担当部を定め、同規程に則ったリスク管理体制を確立しています。

 同管理体制においては、顕在化あるいは潜在しているリスクを各事業所から抽出・特定し、経営に与える影響度等を基準に評価、分類のうえ、リスクレベルに応じた対応を行い、リスクの発生を未然に防止し、万一発生した場合でも、経営への被害を最小限に食い止めるよう措置を講じています。

 当社グループ事業活動で想定されるリスクの中でも特に気候変動関連リスクについて、当社グループでは原料であるサトウキビなどの自然資本を活用して、精製糖の製造・販売を行っているため、気候変動による原料調達の変化等、気候変動関連リスクは重要な問題であると認識しており、また、砂糖製造のサプライチェーンの中で「製造」と「物流」は環境負荷が高くなっているため、当社グループの事業活動が地球環境に与える影響があることを把握し、その影響を軽減することはサステナビリティの推進・向上に繋がると考えています。

 気候変動関連リスクについては、当社グループリスク管理体制の下、経営に与える影響度やシナリオ分析等により評価、分類し、サステナビリティ推進委員会、コンプライアンス委員会、リスク管理委員会が有機的に連動し、経営上重要なリスクについては、取締役会で審議・決議します。

 

(4)指標及び目標

 温室効果ガス(GHG)排出量

 当社グループでは、気候変動が経営に及ぼすリスクと機会等の影響を測定・管理するための指標として、温室効果ガス(GHG)排出量のうち、日新製糖㈱ではCO2排出量を指標とし、「2024年度までに対2019年度比5%低減」という目標を設定しています。

 今後、伊藤忠製糖㈱も含めた当社グループ全体でGHG排出量削減目標を策定するとともに、バリューチェーンにおけるGHG排出量の継続的な削減を目指していきます。

 

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※本社・千葉地区(新東日本製糖㈱は除く)・今福工場を対象に算定。また、上記数値は、経営統合前の当社(旧商号:日新製糖㈱)における算定数値。

 

削減目標(日新製糖):2024年度時点CO2排出量を15,357t-CO2に

     (2024年度までに対2019年度比5%低減)

 

(参考)

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※伊藤忠製糖㈱・第一糖業㈱を対象に算定

 

(人的資本関係)

(1)戦略

 当社グループでは、人的資本経営について、「多様性」の確保と「エンゲージメント」の向上を中心に据え、会社と従業員が強く結びつくことが新たな価値創出に繋がるものと考え、そのストーリーを示します。

 当社グループの持続的な成長のためには、Sugar軸における生産性向上がもたらす安定した事業基盤、ならびにFood&Wellness軸における新素材の開発および新規事業の創出が必要と考えています。Sugar軸・Food&Wellness軸の両軸において、マーケットイン型の製品・サービスの提供を展開していくうえで、変化のスピードが増し多様化する社会ニーズへ柔軟に対応するために、従来の知見に囚われない多様な価値観や考えを持つ人材が、オープンな職場環境下で、年齢・性別等を問わず自由闊達に様々なアイディア、意見を交わせることが必要不可欠です。すなわち、組織を構成する人材の「多様性」の確保と風通しの良い組織風土の醸成が、組織力や競争力の強化の源泉であり、多様な人材に「選ばれる企業」であり続けることが、当社グループの持続的成長にとって極めて重要と認識しています。

 上記観点から、当社は、こうした多様性や組織風土を評価する指標として、管理職に占める女性労働者の比率、男性の育児休業取得率、男女間の賃金差異の他に、新規学卒採用者やキャリア採用者の定着率(離職率)およびエンゲージメントスコアをモニタリングしながら、人事制度の改革や運用見直しに努めていきます。

 

 そして、多様な属性・価値観をリスペクトし受容するオープンな職場環境の下、すべての従業員が、年齢・性別等を問わず自律したプロフェッショナルとして活躍できる新しい人事制度を導入・運用し、スピード感をもってリーダーの育成や中核人材の拡充を行います。なお、当社の考えるプロフェッショナル人材とは、単に特定分野の業務に精通した専門家ではなく、高度な専門的知見を有するスペシャリスト、あるいは、ジョブローテーション等によって培われた多分野にわたって豊富な知見を有するオールラウンダーが、組織における重要な役割を担い、周囲を巻き込みながら大きな成果を生み出せる者であり、こうしたプロフェッショナル人材の中から、マネジメントに優れた者を組織長として任用していく方針です。

 

 また、当社は、HR-Tech を活用して人材の「見える化」を図り、多様な属性を持つ人材、未知の領域や困難な状況でも果敢に「挑戦」できる人材、自身の考えやアイディアを論理的に発信できる人材等を計画的に採用・育成し、適切な人員配置に活かすことで、経営戦略と人材戦略を効果的に連動させることを目指します。従業員に対しては、HR-Tech を使って自身の保有スキルや強み・弱みを自己分析して、自ら強化すべきスキル・経験の特定を促し、自律したプロフェッショナル人材として育成していきます。

 人材育成において、当社では、能力開発に必要な教育研修制度や自己啓発支援制度として、職群・グレードに応じた階層別研修、公的資格の取得を支援する資格取得報奨金制度、社員が自己研鑽のために業務と直接関連のない教材等を購入した際にも利用できる自己啓発補助制度(毎年、一定限度額内で実費を補助する仕組み)、外部機関と連携した英語自己学習プログラム等を運用しています。今後も、こうした人材育成プログラムをさらに拡充し、併せて自己申告制度やOJT、ジョブローテーション等を有効に活用しながら、従業員に対して「挑戦」の場となる実践の機会を公平に提供し、成果に対して公正な評価を行うことで、従業員のモチベーションを維持・向上させていきます。

 従業員の「挑戦」については、これを積極的に評価しつつ、もし失敗した場合でもセカンドチャンスを提供し、「挑戦」をしっかりと支援するだけでなく、「挑戦」を支える縁の下の力持ちの役割(ベストスタッフ)も評価する組織風土を醸成します。そして、従業員一人ひとりが、パーパスやビジョン、バリューに共感しながら前向きに働ける職場環境で、自己実現や自己の成長を実感することにより、働きがいを得られる会社であり続けることを目指します。それが従業員の心理的安全性の確保やエンゲージメントの向上に繋がり、従業員の成長と生産性向上が会社の持続的成長をもたらす好循環を生み、ひいては多様な人材に「選ばれる会社」になると考えています。

 

 さらに、当社は、ワークライフバランスの実現に向けた各種制度の導入・運用によって、個々の従業員に合った持続可能な働き方を提供し、従業員の心身の健康に配慮した「健康経営」に関する取り組みを推進することで、多様な人材にとって働きやすく働きがいのある会社を目指し、従業員の“Well-being”の実現に取り組んでいきます。

 

 

(2)指標及び目標

 人的資本に関する指標について、目標および実績は次のとおりです。なお、当社は従業員を有していないため、当社グループの主要な事業を行う会社における指標を記載しています。

 

指標

主要会社

目標

実績

管理職に占める女性労働者の割合※1

日新製糖㈱

伊藤忠製糖㈱

2030年度までに 25%

6.1%

8.1%

育児休業取得率※1

日新製糖㈱

伊藤忠製糖㈱

100%

男性:50.0% 女性:100.0%

男性:60.0% 女性:100.0%

労働者の男女の賃金の差異※1

日新製糖㈱

伊藤忠製糖㈱

78.9%

69.9%

新卒採用者定着率※2

日新製糖㈱

伊藤忠製糖㈱

87.5%

100.0%

※1 当事業年度の実績を記載しています。

※2 入社3年後の定着率で、前事業年度の実績を記載しています。

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。

当社グループは、リスク管理の基本方針および管理体制を「リスク管理規程」において定め、その基本方針および管理体制に基づき、全社横断的なリスク管理のため、執行役員社長をリスク管理の最高責任者とし、リスク管理担当執行役員を委員長とするリスク管理委員会で管理を行っております。また、リスクが顕在化した場合でも、経営への影響を最小限に食い止めるべく対応してまいります。ただし、すべてのリスクを網羅したものではなく、現時点では予見できない、または重要と見なされていないリスクの影響を将来的に受ける可能性があります。

なお、文中における将来に関する事項の記載は、当連結会計年度末日現在において当社グループが判断したものです。

 

①精製糖への依存と精製糖消費量減少・農業政策等に関するもの

当社グループは、売上収益の約9割を砂糖その他食品事業によっており、その主力製品は精製糖です。そのため業績は、精製糖業界を取り巻く環境の変化を受けやすい構造にあります。精製糖業界は、「砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律」等の適用を受けており、政府の農業政策および国際経済協定の影響を受けます。また、国内の精製糖消費量は、減少傾向にあります。当社は政府の農業政策に関する情報に対し随時慎重に対応を進め、原価低減に努めるとともに、精製糖事業以外の事業領域へ進出し、精製糖事業への依存度を低下させてまいりますが、政府の農業政策の変更および精製糖消費量減少の進行は、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

②新規事業領域への進出に関するもの

当社グループは、既存事業において堅実にキャッシュ・フローを創出しつつ、成長への投資を行うことを通じ、変化する事業環境に対応し、ステークホルダーへの信頼に永続的に応えるよう努めております。しかし、投資には不確実性があることから、当社においては投資審査委員会、経営会議および取締役会において、慎重に審査を実施しておりますものの、事業環境の変化その他の理由により、所期の利益をあげられない可能性があり、その場合には固定資産、のれんまたは投資の減損損失の計上を行い、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③食品の安全に関するもの

当社グループは、「食」と「健康」の両面で豊かな生活の実現に貢献するため、「糖のチカラと可能性を切り拓き、人々の“Well-being”を実現する」ことをPurpose(存在意義)として掲げており、食品の安全性向上のため品質保証体制を確立し、品質不良を発生させない仕組みを構築しております。しかし、特に近年の食品業界においては、食の安全に関わる問題が数多く発生しており、当社グループの取組みの想定を超える、予測できない原因により品質問題が発生するリスクは完全に排除できないため、製品不良による製品回収、損害賠償の発生、社会的評価の毀損等により、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

④医薬品の安全に関するもの

当社グループのツキオカフィルム製薬株式会社は、医薬品事業を営んでおり、製品の安全性には万全を期しておりますものの、何らかの原因で製品の安全性、品質および副作用に懸念が発生した場合、製品回収、損害賠償の発生、社会的評価の毀損等により、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤原材料の高騰に関するもの

精製糖の原料である輸入粗糖やその製造過程で使用されるエネルギー・資材は、海外商品市況と為替相場の影響を受けて価格が変動します。製品の販売価格は、これらの市況に従って変動する傾向にありますが、昨今の地政学リスクの急激な高まりを背景とした価格競争、世界的な需給バランスの変動、投機的な相場変動による価格高騰等により、原材料価格の上昇の一部または全部を製品価格に転嫁できない状態が生じた場合、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥災害・感染症等に関するもの

当社グループは、災害や事故に備えたリスク管理を実施しております。従業員の安全・健康を経営の基盤ととらえ、法令を遵守し、安全で働きやすい環境を整えるべく活動を行うとともに、重要な事業拠点については、合同で地震・台風等の災害に備えたBCP訓練を定期的に実施していく予定です。しかし、電力・ガス・水等のライフラインに問題が生じた場合には、生産や物流機能に支障が生じ、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、大規模な感染症の蔓延による、砂糖その他食品事業における消費低迷や、サプライチェーンの混乱、健康産業事業における店舗の一時閉鎖や利用客減少による影響、ならびに従業員や取引先への感染等による事業活動全般への影響が、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦情報システムに関するもの

当社グループは、生産、販売、管理等の情報をコンピュータにより管理しております。情報セキュリティの確保としては、経済産業省のサイバーセキュリティ経営ガイドラインに沿って計画的に、サイバー攻撃に強いシステム導入を行うとともに、外部への社内情報の漏洩が生じないように施策を実施しています。しかし、当社グループの取組みの想定を超える事態が発生し、情報システムの障害により、外部へ社内情報が流出する事態が生じた場合、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑧環境に関するもの

当社グループは、気候変動が当社グループの事業に与えるリスクおよび機会を考察し、その結果を用いて、グループ全体で地球環境への負荷を低減した事業活動を行います。しかし、環境対策の対応不足が生じた場合には、環境に配慮しない製品の排除などにより、当社グループの企業価値に影響を及ぼす可能性があります。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)重要性がある会計方針および見積り

当社グループの連結財務諸表は、国際財務報告基準(IFRS)に準拠して作成しています。

連結財務諸表の作成に当たって採用している重要性がある会計方針および見積りについての詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針」および同「4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載のとおりです。

 

(2)経営成績の状況・分析

①事業全体の状況・分析

当連結会計年度におけるわが国の経済につきましては、インバウンド需要が回復し企業業績の改善が見られるものの、不安定な国際情勢、世界的な金融引き締めによる為替影響、物価上昇による個人消費の伸び悩みなどにより先行き不透明な状況が続いています。

以下の当連結会計年度の経営成績の状況、分析等につきましては、前連結会計年度の期中(2023年1月1日)における日新製糖㈱と伊藤忠製糖㈱の経営統合により、主要な経営指標等の各計数が前連結会計年度と比較して大幅に変動しています。

 

 

2024年3月期

(百万円)

2023年3月期

(百万円)

増減率(%)

売上収益

92,192

58,347

58.0

売上原価

販売費及び一般管理費

75,950

10,530

49,079

7,543

54.7

39.6

営業利益

5,802

1,606

261.2

金融収益

金融費用

持分法による投資利益

1,584

81

322

117

59

139

1,243.5

37.1

131.0

税引前利益

7,627

1,804

322.8

親会社の所有者に帰属する当期利益

5,524

1,062

420.0

 

事業全体の経営成績の分析は以下のとおりです。報告セグメントごとの分析については②セグメントごとの状況・分析をご覧ください。

 

(売上収益)

売上収益は、伊藤忠製糖グループの業績が通期にわたって寄与するようになったこと、および主力の砂糖事業においてコスト上昇に対する売価への反映を進めたこと等により、前期比58.0%増の92,192百万円となりました。

 

(売上原価、販売費及び一般管理費)

売上原価は、有利な原料調達によってコストを抑えられているものの、経営統合により増加したことで、前期比54.7%増の75,950百万円となりました。

販売費及び一般管理費は、前期に計上した経営統合関連の一過性費用がなくなったものの、経営統合により増加したことで、前期比39.6%増の10,530百万円となりました。

 

(営業利益)

営業利益は、売上収益の増加等により、前期比261.2%増の5,802百万円となりました。

 

(金融収益、金融費用、持分法による投資利益)

金融収益は、国内の投資先からの受取配当金1,552百万円を計上した結果、前期比1,243.5%増の1,584百万円となりました。

金融費用は、前期比37.1%増の81百万円となりました。

持分法による投資利益は、前期比131.0%増の322百万円となりました。

 

(親会社の所有者に帰属する当期利益)

親会社の所有者に帰属する当期利益は、前期比420.0%増の5,524百万円となりました。

 

②セグメントごとの状況・分析

(百万円、%)

 

事業全体

調整

内訳(報告セグメント)

砂糖その他

食品事業

健康産業事業

倉庫事業

売上収益

対前期増減率

(構成比)

92,192

58.0

(100)

(-)

87,953

63.1

(95.4)

2,601

△0.5

(2.8)

1,637

△8.6

(1.8)

セグメント利益又は

損失(△)

対前期増減率

(構成比)

5,802

261.2

(100)

△586

(△10.1)

6,015

258.1

(103.7)

128

(2.2)

244

△26.7

(4.2)

(注)1.セグメント利益又は損失(△)は、連結財務諸表の営業利益と一致しています。

2.各セグメント利益は全社費用586百万円を含んでいません。

 

[砂糖その他食品事業]

海外原糖市況につきましては、1ポンド当たり22.35セントで始まり、主要生産国ブラジルでの穀物の輸出増加による物流面での混乱懸念等から4月下旬には27セント台半ばまで上昇しました。ブラジルでの生産や輸出が順調に進んだことで一時21セント台まで下落しましたが、インドの減産懸念から砂糖輸出禁止措置が発表されると再度上昇し、11月上旬に今期高値となる28.14セントに達しました。その後、ブラジルの輸出量が大幅に増加するとの見方から今期安値となる20.03セントまで急下落し、安値圏では実需国の買いが相場を下支えする中でインド、タイの減産観測の緩和により上値も抑えられ、22.52セントにて当期を終了しました。

 

海外原糖市況(ニューヨーク市場粗糖先物相場(当限))

         日付     セント/ポンド    円/kg   為替(円/ドル)

  始 値  2023年4月3日   22.35      66.10     134.15

  高 値  2023年11月7日   28.14      93.74     151.10

  安 値  2023年12月26日   20.03      63.26     143.27

  終 値  2024年3月28日   22.52      75.72     152.52

(注)1ポンドは約0.4536㎏として換算し、為替は当日の三菱UFJ銀行直物為替公表TTSによっています。

 

一方、国内精糖市況(日本経済新聞掲載、東京)につきましては上白糖1kg当たり227円~229円で始まり、海外原糖市況の高騰を受け、7月下旬に12円、1月中旬にも10円と合計22円上昇し、249円~251円で当期を終了しました。

このような状況のもと、主力の砂糖につきましては、インバウンド需要の回復により土産菓子、外食関係向けなどが持ち直したものの、食品価格の値上げが続いたことによる消費低迷や家庭内調理機会の減少の影響を受けました。そのような中、独自製品のきび砂糖、きびオリゴの出荷は好調に推移しました。売上収益につきましては、伊藤忠製糖グループの業績が通期にわたって寄与するようになったこと、およびコスト上昇に対する売価への反映を進めたことにより増加しました。利益面においては、有利な原料調達ができたこと、および前期に経営統合関連の一過性費用を計上していたことにより大幅な増益となりました。

ツキオカフィルム製薬㈱につきましては、箔押、食用純金箔、フィルムの各事業において受注が増加したこと等により増収増益となりました。

以上の結果、砂糖その他食品事業合計の売上収益は87,953百万円(前期比63.1%増)、セグメント利益は6,015百万円(同258.1%増)となりました。

 

 

[健康産業事業]

健康産業事業につきましては、フィットネスの会員数が前期比で緩やかに回復してきていること、および効率的な運営によるコスト削減を継続していることから、売上収益は2,601百万円(前期比0.5%減)、セグメント利益は128百万円(前期は減損損失145百万円を含むセグメント損失204百万円)となりました。なお、セグメント利益にはリース負債の見直しによる再測定益235百万円、および不採算店舗の退店決定による減損損失173百万円が含まれています。

 

[倉庫事業]

倉庫事業につきましては、港湾運送において輸入合板の取扱量が減少したこと、および桟橋更新工事による費用増加により、売上収益は1,637百万円(前期比8.6%減)、セグメント利益は244百万円(同26.7%減)となりました。

 

なお、各セグメントに関する他の情報は、「(3)財政状態 ②セグメントごとの状況」および「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 6.セグメント情報」に記載のとおりです。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

 至 2024年3月31日)

前期比(%)

砂糖その他食品事業(百万円)

61,839

169.8

(注)1.金額は製造原価によっており、内部取引額を除いています。

2.上記の金額には、消費税等は含まれていません。

 

b.受注実績

生産は原則として見込み生産であり、少量の受託加工を除き受注生産は行っていません。

 

c.販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

 至 2024年3月31日)

前期比(%)

砂糖その他食品事業(百万円)

87,953

163.1

健康産業事業(百万円)

2,601

99.5

倉庫事業(百万円)

1,637

91.4

合計(百万円)

92,192

158.0

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しています。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりです。

 

 

相手先

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

伊藤忠食糧㈱

8,409

14.4

36,501

39.6

住商フーズ㈱

10,414

17.9

11,663

12.7

 

 

④中期経営計画について

今般、「糖のチカラと可能性を切り拓き“Well-being”を実現する」という当社のPurpose(存在意義)を軸に、ウェルネオシュガーグループの将来的なありたい姿を見据え、さらなる企業価値の向上を目指し、その実現に向けた中期経営計画として「WELLNEO Vision 2027」を策定しました。

以下の重点戦略の推進により、下表の定量目標の実現を目指してまいります。

 重点戦略1: Food & Wellnessの事業拡大

 重点戦略2: Sugarの基盤強化

 重点戦略3: 人的資本経営の推進

 重点戦略4: サステナビリティ経営の推進

(百万円)

定量目標(連結)

2025年3月期

2028年3月期

増減額

(計画)

(計画)

営業利益+持分法による投資損益

7,100

10,100

 + 3,000

 

Sugar

8,000

9,000

+ 1,000

 

Food & Wellness

500

2,400

+ 1,900

 

全社費用

△ 1,400

△ 1,300

+  100

当期利益

5,000

7,000

+ 2,000

 

 

 

 

ROE

7 %

9 %

+  2 %

 

(3)財政状態

①事業全体の状況

(資産)

当連結会計年度末における流動資産は37,927百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,943百万円増加しました。これは主にその他の金融資産が954百万円減少した一方で、棚卸資産が1,760百万円、現金及び現金同等物が1,246百万円、営業債権及びその他の債権が791百万円それぞれ増加したことによるものです。非流動資産は57,990百万円となり、前連結会計年度末に比べ597百万円減少しました。これは主に持分法で会計処理されている投資が832百万円増加した一方で、使用権資産が664百万円、退職給付に係る資産が366百万円、有形固定資産が288百万円それぞれ減少したことによるものです。

この結果、資産合計は95,918百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,345百万円増加しました。

 

(負債)

当連結会計年度末における流動負債は20,847百万円となり、前連結会計年度末に比べ818百万円増加しました。これは主に借入金が1,000百万円減少した一方で、未払法人所得税等が1,374百万円、その他の流動負債が586百万円それぞれ増加したことによるものです。非流動負債は3,962百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,316百万円減少しました。これは主にリース負債が1,074百万円、繰延税金負債が247百万円それぞれ減少したことによるものです。

この結果、負債合計は24,810百万円となり、前連結会計年度末に比べ498百万円減少しました。

 

(資本)

当連結会計年度末における資本合計は71,107百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,843百万円増加しました。これは主に親会社の所有者に帰属する当期利益5,524百万円および配当金の支払による減少2,719百万円によるものです。

この結果、親会社所有者帰属持分比率は74.1%(前連結会計年度末比1.1ポイント増)となりました。

 

②セグメントごとの状況

[砂糖その他食品事業]

当連結会計年度末のセグメント資産は、主に現金及び現金同等物および棚卸資産の増加等により、前連結会計年度末に比べ5,611百万円増加し、85,938百万円となりました。

 

[健康産業事業]

当連結会計年度末のセグメント資産は、主に使用権資産の減少等により、前連結会計年度末に比べ687百万円減少し、3,511百万円となりました。

 

[倉庫事業]

当連結会計年度末のセグメント資産は、主に有形固定資産の増加等により、前連結会計年度末に比べ14百万円増加し、3,449百万円となりました。

 

(4)キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末より1,246百万円増加し、12,509百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、6,662百万円の収入となりました。

主なものは、税引前利益7,627百万円、減価償却費及び償却費2,427百万円、持分法による投資利益△322百万円、棚卸資産の増加△1,760百万円、法人所得税の支払額△1,001百万円、ならびに営業債権及びその他の債権の増加、営業債務及びその他の債務の増加、その他の増減による△476百万円です。

なお、前年同期は1,625百万円の支出であり、主なものは、税引前利益1,804百万円、減価償却費及び償却費1,843百万円、持分法による投資利益△139百万円、棚卸資産の増加△2,081百万円、法人所得税の支払額△2,438百万円、ならびに営業債権及びその他の債権の増加、営業債務及びその他の債務の増加、その他の増減による△749百万円です。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、822百万円の支出となりました。

主なものは、定期預金の純減額1,000百万円、有形固定資産及び無形資産の取得による支出△1,700百万円、有形固定資産の売却による収入431百万円、ならびに持分法で会計処理されている投資の取得による支出△527百万円です。

なお、前年同期は4,609百万円の収入であり、主なものは、定期預金の純減額490百万円、余資の運用である有価証券の純減額4,600百万円、ならびに有形固定資産及び無形資産の取得による支出△576百万円です。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、4,593百万円の支出となりました。

主なものは、短期借入金の純減額△1,000百万円、リース負債の返済による支出△875百万円、ならびに配当金の支払額△2,717百万円です。

なお、前年同期は3,684百万円の支出であり、これは、短期借入金の純増額3,300百万円、自己株式の取得による支出△3,245百万円、リース負債の返済による支出△928百万円、ならびに配当金の支払額△2,810百万円です。

 

 

(5)資金需要および資金の調達・使途

①資金需要

当社グループの資金需要は、主に運転資金需要と設備資金需要です。

運転資金需要として、製品を製造するための原材料の仕入・製造費・商品の仕入・販売費及び一般管理費等、設備資金需要として、砂糖生産設備等の経常的更新等および業務関連システム等のIT投資にかかるものが含まれます。

 

②資金の調達・使途

当社グループは運転資金につきましては、短期借入金と自己資金により充当しており、設備資金につきましては、自己資金により充当しています。

 

5【経営上の重要な契約等】

(1)精製糖等の共同生産に関する合弁契約

当社は、2000年10月、大日本明治製糖株式会社(現:DM三井製糖株式会社)および新東日本製糖株式会社との間で新東日本製糖株式会社における精製糖等の共同生産に関する合弁契約を締結しています。

 

(2)連結子会社による株式取得および第三者割当増資引受に関する決議

当社は、2023年4月13日開催の取締役会において、当社の連結子会社である伊藤忠製糖株式会社が、ツルヤ化成工業株式会社の株式取得および第三者割当増資を引き受けることにより、同社の発行済株式総数の20.03%を取得することについて決議しました。なお、2023年5月1日付で伊藤忠製糖株式会社は株式取得を完了し、同社を持分法適用会社としました。

 

(3)日新製糖株式会社および伊藤忠製糖株式会社の吸収合併

当社は、2024年5月24日開催の取締役会において、2024年10月1日(予定)を効力発生日として、当社を存続会社、当社の100%子会社である日新製糖株式会社および伊藤忠製糖株式会社を消滅会社とする吸収合併契約を締結しました。また、本合併に関する議案を2024年6月26日開催の第13回定時株主総会に付議し、本株主総会において承認されました。

詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 40.後発事象」に記載のとおりです。

 

(4)第一糖業株式会社の吸収合併

当社は、2024年5月24日開催の取締役会において、2025年10月1日を目標に、当社を存続会社、当社の連結子会社である第一糖業株式会社を消滅会社とする吸収合併を行うことを基本方針として決議しました。

詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 40.後発事象」に記載のとおりです。

 

6【研究開発活動】

当社グループは、日新製糖㈱、伊藤忠製糖㈱およびツキオカフィルム製薬㈱において研究開発部門を設置し、研究開発活動を行っています。

日新製糖㈱においては、砂糖その他の甘味料の新製品開発やヒトミルクに含まれる「ガラクトオリゴ糖」の新規機能性の研究を推進する一方、沖縄ラボにてオーラルケア機能や難溶性物質の可溶化が期待できる機能性糖質サイクロデキストラン(CI)の研究開発を行っており、2021年5月より製造販売を開始しました。これらの研究開発の推進にあたっては、専門性・効率性を高めるため、共同研究という形で積極的に大学等の研究機関と連携を深めています。

伊藤忠製糖㈱においては、藤田医科大学内に「医科プレ・プロバイオティクス共同研究講座」を2022年8月に開設し、自社保有のプレバイオティクス素材「ケストース」を中心に、ヒトの健康維持や病気の補完治療を目指した研究を行っています。ケストースは2021年10月より販売を開始しています。

また、2023年5月に持分法適用会社となったツルヤ化成工業㈱と研究開発分野においても連携を進めています。

なお、当社は今般の経営統合を契機に両社が保有する研究開発の知見やリソースを集結させ、多種多様な機能性素材を提供し、“Well-being”(幸せ・健康)を実現する体制の整備に取り組んでいます。

ツキオカフィルム製薬㈱においては、フィルムの持つ多様な特性を利用し、可食フィルム・フィルム化粧品・フィルム製剤の3領域において研究開発を推進しています。

当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費の総額は209百万円であり、砂糖その他食品事業におけるものです。