当社は2023年10月に2030年に向けてのありたい姿である長期ビジョン「MARUICHI 2030 Vision」及び、そのファーストステージとなる 2024年度から2026年度までを対象とした第7次中期経営計画(3ヵ年)を2024年4月に公表しており、その内容は以下の通りです。
長期ビジョン『MARUICHI 2030 VISION』
第7次中期経営計画(2024-2026年度)
今後の見通しにつきましては、日本経済の持ち直しの力強さが欠ける先行き不透明感、米国の更なるインフレや利上げ影響への懸念は若干和らいだものの、地政学リスクなどの種々の景気後退懸念リスクもあり、引き続き厳しい状況が見込まれます。日本国内では、足元では需要が盛り上がりに欠ける中で販売数量の確保が難しい状況となっています。米国では、(決算期が3ケ月ズレており)米国のHRC価格は、年初1月の1,200$台から3月には830$台まで下がりましたが、足元900$台半ばに反転しております。アジアも同様に、コイル価格は底打ちから回復しております。
このような情勢のもと、当社といたしましては、先般公表しました第7次中期経営計画のスタート年度として主要施策の着実な実行の為、各地域での状況変化を的確に把握し、マイナス要因をミニマイズする迅速な対応を引き続き進めてまいります。セグメント別には以下の通りとなっております。
(日本)
国内単体事業につきましては、中小建築分野を始め需要回復は期待薄で、年間の販売予定数量は前年度比横ばいに止まる見通しとしております。コイル仕入価格は国内材が高値で張り付いた状態のままにあると共に、輸入材は円安を背景に値上げ圧力も強く、販売数量の増加が見込めないため、前年度までの値上げ価格を維持しスプレッドの確保を最優先に取り組んでまいります。更には、電力等のエネルギーコストや副資材等の製造コストやパイプの切断加工賃等の外注コスト等に加え、2024年問題からの物流費の上昇もあり、コスト上昇分の製品販価への転嫁を継続しますが、単体利益は厳しい見通しとならざるを得ない状況です。丸一ステンレス鋼管㈱は、ステンレス管が管種構成比変動や原材料他コストアップ等から前年度比で減益となる見通しであり、またBA管は半導体不況の煽りで客先での在庫調整の為、年後半の回復を待たざるを得ない状況です。
設備投資関連では、女性も扱える次世代造管機をコンセプトとして造管機メーカーと共同で開発を進め、名古屋工場3号機(6インチミル)の老朽化更新への採用を進めております。また、工場の現場作業の環境対策の一環として、昨年夏に東京工場の一部ラインでエアコンを設置し効果もあることから、今後は全工場展開を予定しております。更には、先般公表しましたとおり、ステンレス鋼管事業の拡大のために丸一ステンレス鋼管㈱に隣接する中国電力の土地32.6万㎡を取得することとしましたので、この事業拡大に向けた取組み・検討を進めております。
(北米)
北米事業につきましては、米国の更なるインフレや利上げ影響への懸念もあり、問屋の在庫補充もスローとなってきました。米国のHRC価格は、足元は900$台に反転しており、数量とスプレッドの確保による利益確保に努めております。また、米国の半導体需要拡大に伴いテキサス州に新規設立したBA管製造子会社マルイチ・ステンレス・チューブ・テキサス・コーポレーション(MST-X社)では、建屋建設も完了し稼働に向けて鋭意進めておりますが、2024年度は初期立上げ費用や受注量からの固定費負担が重く、赤字見通しとしております。メキシコMaruichimex社では、モントレーの第2工場用の土地取得を終え、工場建設準備に取り組んでおります。
(アジア)
アジア事業につきましては、中国の輸出コイル価格の影響はあるものの、足元は横這い傾向にあります。ベトナムSUNSCO社では、中期的にはベトナム国内の販売比率拡大や日系家電メーカーへの鋼板拡販を目指すものの、国内建築需要の回復遅れへの対応として、短期的には輸出に注力しております。ベトナムSUNSCO(HNI)社では、バイク販売台数の落ち込みが見込まれ、販売数量予想は前年度割れとしています。インドKUMA社では、四輪市場の需要が急回復しており、加えて環境規制強化から商用車向け大径排気管需要が増加しており、グジャラート工場に新ライン建設を決定しました。今年度は更なる販売数量の増加を見込んでおります。フィリピンのMPST社では、足元二輪メーカーの現地生産の拡大を背景に受注を確実に取込み販売数量は前年度比の1.5倍の伸長を見込んでおります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、「顧客の信頼に応えることにより社会に貢献し、人間尊重を基本としてすべての人々を大切にする」という経営理念のもと、すべてのステークホルダーに配慮し事業活動を行うことによって、持続的な成長の実現を目指します。自らの持続的な成長とともに、持続可能な社会の実現に貢献するために、以下の方針に沿って重要課題(マテリアリティ)に取り組み、企業価値の向上を目指します。
当社グループは、株主の権利を尊重し経営の公平性・透明性を確保するとともに、取締役会を中心として株主に対する受託者責任・説明責任を果たし、同時に経営ビジョンの実現に向けて、コーポレート・ガバナンスを経営上の重要課題と位置付け、迅速かつ的確な意思決定および監督機能の強化を図ります。また、中長期的な企業価値向上と経営の健全性維持のため最良のコーポレート・ガバナンスを追求し、その充実に継続的に取り組みます。
当社グループでは、エンドユーザーに与える影響を配慮しつつお客様のニーズに適合した安全かつ高品質な製品を供給し、ご相談に誠実、迅速、かつ的確に対応するよう努めます。また、製品に関する情報提供を適切に行い、あらゆるお客様のさらなる満足の確保、維持、向上に努めます。さらに、各国の法およびその精神を遵守し、お客様をはじめ事業活動に関わる全ての人々の個人情報の保護を徹底します。
当社グループは、商取引にあたっては、正しい判断と節度を持って行動し、誤解や不名誉な評価を受けることのないよう、不当な利益を与えたり、得たりすることは行いません。商取引は、製品かサービスかを問わず、誠実で正当な交渉に基づき取引内容を公平に比較・評価したうえで正しい手続きを踏んで進めます。また、当社グループは賄賂を認めず、反社会的勢力との関係を断絶し、あらゆる形態の腐敗に関与しません。
当社グループでは、将来世代に住み良い環境を提供するため、法令遵守による社会的責任の遂行を基本として、より一層の地球環境保護に貢献します。リサイクル性の高い鉄を使用した製品の提供を通じて循環型社会の一端を担うとともに、生産活動における大気・水質・土壌等の環境汚染を予防します。また、日々技術を追求し、エネルギー、水、原料などの資源の効率的な活用のため努力します。これらに関連する目標、目的を設定し継続的な改善活動のためのマネジメントシステムを整備します。
当社グループは、さまざまな国、地域社会と共に発展・成長を遂げることを目指しています。事業を通じた貢献として、国や地域の多様なニーズに応じた製品を安定的に供給することで、産業のプラットフォームの構築と発展に寄与します。また、雇用機会の拡大、納税等による利益の再配分を通じ、豊かな社会の実現に寄与します。事業を行うにあたっては、環境・社会負荷を削減するよう配慮することで、事業の持続可能性を追求します。また、コミュニティの一員として社会課題解決への意識を持ち、社会貢献活動を積極的に展開することで、同じコミュニティに属し、志を共有する人々と積極的にエンゲージメントを図ります。
当社グループでは、「人間尊重」の理念のもと、多様な社員が平等にディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)に取り組むことで、人生を託すにふさわしい、夢にあふれた会社を実現します。そのために、個々の事情にあったワークライフバランス、多様で柔軟な働き方を実現します。高い安全衛生基準のもとで1人1人の能力開発を促進し、従業員が心身ともに安全・健康に働ける環境を整備します。また、従業員代表との対話の機会を設け、健全な労使関係を構築します。
当社グループでは、間接的な関与を含むあらゆる人権侵害行為を未然に防ぎます。また、性別や国籍等の個人の属性に関係なく、社会的に弱い立場や危機的状況にある人を含むすべてのステークホルダーの人権を守ります。人権を侵害する事業体に対する製品の提供や購買活動を行わず、人権を侵害された人を救済するための措置を整備します。
なお、当社のガバナンスの全般的な内容については第4「提出会社の状況」4「コーポレート・ガバナンスの状況等」を、リスクの全般的な内容については第2「事業の状況」3「事業等のリスク」をご参照ください。
当社グループは、上記7つの基本方針の中でも、昨今の気候変動問題は地球レベルでの気候危機に相当し、重要な経営課題の一つとの認識の下、地球上のすべてのステークホルダーに配慮した事業活動を行うことによって、パリ協定が示す「平均気温の上昇を1.5℃未満に抑えた世界」の実現を目指しております。そのため、当社グループは「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に賛同し、同提言に基づき、「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」についての情報開示をして参ります。
TCFD提言は、すべての企業に対し、「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」の4つの項目に基づいて開示することを推奨しています。当社グループは、TCFD提言の4つの開示項目に沿って、当社の気候関連への取組みを開示します。
・当社グループの気候変動に係る諸課題への対応のため、国内外グループ各社に環境管理責任者を置き、環境最高責任者(当社社長)をヘッドとする丸一グループ・カーボンニュートラル環境委員会を設置。
・環境最高責任者は、丸一グループ全体におけるカーボンニュートラルについての方針及び施策を決定し、その進捗について取締役会へ報告(半期に1回以上)。
・IPCCやIEAが公表する4℃シナリオおよび2℃未満シナリオを用いてリスク及び機会を分析。
・リスク及び機会を特定し、定量分析が可能な項目については2030年度時点における財務インパクトを試算。
・丸一グループ・カーボンニュートラル環境委員会が気候関連のリスクを識別し、財務インパクトへの影響度を評価、管理。
・コンプライアンス委員会が全社リスクと上記気候関連のリスクの相対的な評価を行い、発生頻度や財務インパクト等から重要なリスクを特定し定期的にモニタリング。
・リスク管理状況を取締役会へ報告し、リスクへの対応策を経営戦略や中期経営計画へ反映。
<主な気候関連リスク・機会と評価>
・2030年に国内当社グループのCO₂排出量を46%削減(2013年度比)。
・2050年にカーボンニュートラルの実現を目指す。
Scope別CO₂排出量データ(2024年3月期)
(注) 1.2023年3月期のScope2及び2024年3月期のScope1、Scope2は、再エネ由来電力購入等による削減分を減じた後の排出量です。
2.Scope3の算定範囲は、カテゴリ1~7、カテゴリ9、カテゴリ10、カテゴリ13です。
CO₂排出量削減のロードマップ
当社は2050年カーボンニュートラルの実現を達成するために、中長期CO₂排出削減計画(ロードマップ)を作成し、CO₂排出量削減に取り組んでおります。
2030年までは、更なる省エネルギー活動、低炭素エネルギーへの転換、再生可能エネルギーの活用(自家使用太陽光発電設備設置、再生可能エネルギー由来電力の導入)などによってCO₂排出量の削減を推進して参ります。海外の丸一鋼管グループ各社においても国内と同等レベルでのCO₂削減活動を推進して参ります。
当社では、「人間尊重」の理念のもと、「すべての人を大切にする」会社としてのあり方を追求し、雇用の維持、働き甲斐のある職場作りや、「少数が精鋭を作る」との考えの下、一人が複数の業務をこなす多能工の育成を大切にしてきましたが、変化の大きい不確実性が高い現在社会において、採用間口の拡大や長期的視野に立った育成・教育といった課題があります。
変化の大きな事業環境・グローバル展開を踏まえ、ダイバーシティ&インクルージョンを推進し、少子高齢化に対応するため女性・外国人・高齢者をより活用していくことで、課題を解決し企業価値の創出をしていきます。
社員が活躍する環境作りとして、もともと「男性社会」である鉄鋼業界にあって、これまで見落とされがちだった女性の視点を積極的に取り入れております。
女性の離職を防ぎ、持続的にその能力を発揮できる環境を構築するため、ライフイベントに対応する制度として育児休暇制度、育児短時間勤務制度、育児休暇早期復職サポートを導入し、スキル形成に向けた研修等の施策を実施しています。
また、業務内容の見直しや工場設備・職場環境のリニューアルにより、技能職においても女性社員が活躍できる環境をさらに整備してまいります。
他に、グローバルに活躍できる環境づくりとして、①人種や出身国・地域に関わらず活躍できる会社づくりとして外国人留学生の積極採用、②海外現地法人から技術職社員を国内工場で受け入れることにより、現地人材のスキルアップや帰国後の現地産業の発展に貢献、③社員の海外研修や国内当社グループから積極的に海外拠点へ出向することで、今後の当社グループをけん引するスキルフルな人材の育成等を行っております。
当社は、1人1人が複数の技術・知識を身につけ、幅広い業務に対応するマルチスキル人材を育成しております。
2021年3月期からは人事制度の抜本的な見直しを実施し、年功序列ではなく優秀な社員が早期にキャリアアップできる仕組みをつくりました。
また、従来実施していた新入社員から役員まで各階層で必要不可欠なスキルを身につけることで会社全体のレベルの底上げを目的とした階層別研修の他、従業員エンゲージメント調査の結果を踏まえ、上司が部下の育成やモチベーションの向上を目的とした1on1ミーティングや丸一グローバル・フォーラム2025(※)を開催し社員の育成を図ると共に従業員エンゲージメントの向上に取り組んでまいります。その他にも社員の自己啓発を目的として業務に必要とされる資格取得を支援する制度を導入しております。
(※)丸一グローバル・フォーラム2025は2025年大阪・関西万博を機に、国内外の丸一鋼管グループ社員を大阪に集め、会社の理念や社会的意義の共有を図る取組み
当社では、労働安全衛生方針・行動指針に従い、製造現場で働く社員および協力会社の社員に対し作業内容と設備の改善と安全衛生教育に継続して取り組み、安全で健康な職場環境の構築に向けて取り組んでおります。
具体的な取り組みとして、工場内の空調設備の設置や生産工程における重労働負荷の軽減を目的として次世代造管機の導入をすすめております。また、安全教育部を設置し新入社員から階層別研修を実施するとともに、社長をトップとした安全会議において全国各工場を一斉に巡回し、不安全行動の指摘やヒューマンエラー撲滅に向けた指差呼称の指導、安全衛生の基本である5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)の確認を行っております。
万が一、労働災害が発生した際は、現場担当者と安全教育部が中心となって、発生原因を分析、対策を立案して、全工場に展開することで類似災害の防止に取り組み、また、過去に発生した災害に対してもOJTによる教育訓練を定期的に実施しております。
また、職場環境の改善やメンタルヘルスケアを実施することで心身ともに安全かつ健康に働けるよう取り組んでおります。
人的資本・多様性に関する指標及び目標については、従業員の状況に記載しております。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、これらの事項は当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループで製造・販売している各種鋼管及びメッキ鋼板製品は、店舗・工場・倉庫などの中低層建造物の建築資材、自動車等輸送機器向け、ビニールハウス向け農芸用資材、公共施設・各種工場やプラントにおける電線管、配管用の資材及び道路標識や街灯の支柱などが主たる用途です。したがって、中低層の建築投資、輸送用機器の生産量、企業の設備投資及び公共投資、及び当社製品ユーザーの生産動向等によって、連結経営成績は影響を受ける可能性があります。
当社グループが取扱っている各種鋼管は、熱延コイルを主要原材料としておりますが、熱延コイルの市況は世界の鉄鋼原料及び鉄鋼製品の需給動向等によって変動いたします。当社グループでは、国内外の高炉メーカーを原材料の仕入先として安定した価格での購入と適正な販売価格体系構築に努めておりますが、原材料の価格が上昇し、販売価格への転嫁が十分に図れない場合等には、連結経営成績に影響が出る可能性があります。
当社グループでは、各種の規格、品質管理基準に従って製品を生産し、需要家のニーズに応えるべく品質の維持向上に万全を期しておりますが、全ての製品に欠陥が無いとは限らず、製造物賠償責任等に伴う費用が発生する可能性があります。
当社グループが保有している固定資産について収益性が低下し投資の回収が見込めなくなった場合、固定資産の減損損失が発生し連結経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの有価証券及び投資有価証券は、総資産の約2~3割を占めており、主な内容は、当社の関係会社株式、主要な取引先の株式及び債券となっております。当社グループでは、時価のある有価証券については、期末日時点での時価が取得原価に対して30%以上下落した場合、減損処理を実施しております。
このため、株式市場の低迷等、当社グループが保有する有価証券並びに投資有価証券の時価が大きく変動した場合、連結経営成績に影響が出る可能性があります。
当社グループは鋼管製造において成熟された技術力を有し、高品質・多品種・小ロットといった顧客の需要に応える生産体制を整えており、同業他社に対して優位性を確保しておりますが、鋼管製造において技術革新が起きた場合、当社の優位性が失われ連結経営成績に影響を受ける可能性があります。
当社グループでは、国内外において需要地生産体制をとり、生産拠点を需要地に設けることで自然災害やパンデミックに対するリスクを分散しております。また、工場等の安全対策として安全教育部による従業員教育を徹底して実施しておりますが、地震や風水害等の大規模災害、パンデミックの発生や事故等により当社グループの工場操業に支障が出た場合、連結経営成績に影響を受ける可能性があります。
当社グループが事業活動を展開する国や地域において、紛争やテロ、デモ、ストライキ、政情不安、通貨危機等が発生した場合、当社グループの事業に大きな影響を与えるリスクがあります。
当社グループは太陽光発電設備の導入や環境対応塗料の採用を進め、環境負荷の低減に取り組んでまいりましたが、二酸化炭素の排出量削減などを義務付ける新たな環境規制が導入された場合には、当社グループの事業活動に制約を受けたり、規制に適合する設備更新などに多額の費用が発生し連結経営成績に影響が出る可能性があります。
当社グループはグローバルに事業を展開し、各国における法令並びに条例を遵守しておりますが、貿易摩擦等で関税の引き上げや、輸出入に関する規制が強化されることにより事業活動に支障が生じた場合、連結経営成績に影響を与えるリスクがあります。
当社グループは国内の労働力人口の減少への対応や海外で活躍できる人材の育成と現地人材のレベルアップのため、女性の採用や海外研修に積極的に取り組んでおります。また、再雇用制度による技術継承や設備更新による省力化を進めております。これらの施策が計画通りに進まず優秀な人材を確保できなかったり、技術継承が行えなかった場合、当社グループの継続的発展に影響を与えるリスクがあります。
当社は情報セキュリティポリシーを策定し情報管理に万全を期しておりますが、予期せぬ事態により顧客・取引先等の機密情報、従業員の個人情報や営業秘密が漏えいした場合、当社グループの社会的評価や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
総資産は、前年度比363億6千4百万円増加し4,295億2千9百万円となりました。
流動資産は、47億8千8百万円増加し2,221億6千6百万円となりました。主な増減要因は、現金及び預金が33億2千3百万円、受取手形及び売掛金が23億8千5百万円、有価証券が18億9千2百万円増加した一方で、原材料及び貯蔵品が22億5千1百万円減少しました。
固定資産は、315億7千5百万円増加し2,073億6千3百万円となりました。主な増減要因は、MST-X社の工場立ち上げのため設備投資をしたこと等により有形固定資産が123億8千1百万円、投資有価証券が時価評価の影響により182億8千3百万円増加したことによります。
負債は、8千3百万円増加し690億2千8百万円となりました。主な増減要因は、投資有価証券の時価評価の影響で繰延税金負債が55億3千1百万円、設備関係支払手形が12億4千4百万円、未払金が8億3百万円増加した一方で、支払手形及び買掛金が36億2千7百万円、短期借入金が33億3千9百万円減少したことによります。
純資産につきましては、362億8千万円増加し3,605億1百万円となりました。主な増減要因は、親会社株主に帰属する当期純利益を261億1千3百万円確保、投資有価証券の時価評価の影響でその他有価証券評価差額金が117億8千8百万円増加した一方で、配当金の支払で99億3千8百万円減少したこと等によります。
なお、資本の財源および資金の流動性については、前連結会計年度と大きな変動は無く、運転資金及び設備資金は自己資金を中心に充当し、国内及び海外子会社の借入金の返済の流動性は満たしておりますが、経営環境の先行き不透明感からも、当社グループ全体での円滑な事業活動の資金について留意してまいります。
当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末と比べて50億3千5百万円増加し、1,578億3千万円となりました。新規連結した東洋特殊鋼業株式会社の営業資産45億7千3百万円のほか、丸一鋼管株式会社や丸一ステンレス鋼管株式会社等で設備の新設や更新を行ったことで固定資産が38億2千万円増加した一方で、在庫を圧縮したことで原材料が28億7千5百万円減少したことによるものです。
当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末と比べて82億6千3百万円増加し、370億3千7百万円となりました。主な要因は、MST-X社の工場立ち上げ等により固定資産が79億3千9百万円増加したことによるものです。
当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末と比べて8億5千7百万円減少し、257億4千8百万円となりました。売上の伸長により受取手形及び売掛金が9億2千5百万円増加した一方で、SUNSCO社において在庫数量が減少したこと等により原材料及び貯蔵品が8億7千7百万円、製品が9億9千万円減少したことによるものです。
販売数量面では、日本(単体)が前年度比割れとなった一方、北米及びアジアでは前年度比増となったことから、全体では前年度比+3.5%の増加となりました。売上高は、日本・北米が減収となったことから、2,713億1千万円(前年度比0.8%減)と減収になりました。利益面は、日本の減益を北米・アジアの増益でカバーし、営業利益は348億1千1百万円(同16.0%増)と増益になりました。営業外損益は、受取配当金や持分法による投資利益の減少などから前年度比8億5千3百万円悪化しましたが、経常利益は383億5千5百万円(同11.4%増)と増益になりました。特別損益は、投資有価証券売却益が減少したものの関係会社株式売却益が増加、固定資産除却損が増加したものの投資有価証券売却損が減少し、前年度比1億5千8百万円改善しました。これらの結果、親会社株主に帰属する当期純利益は261億1千3百万円(同8.1%増)と増益になりました。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因として、パイプの販売価格と材料コイルの仕入価格との値差(スプレッド)の変動が最も大きなものです。当連結会計年度は、日本における販売数量の減少及び北米における製品価格の値下がりにより減収となった一方で、北米セグメントにおいてスプレッドが改善したことに加え、アジアセグメントにおいてSUNSCO社の改善やMPST社の伸長の影響もあり、営業利益・経常利益共に増益となりました。
国内事業につきましては、自動車生産は回復傾向にあるものの、工場・倉庫等の着工床面積の減少等から当社主力の中小建築案件の需要が盛り上がらない中、単体の販売数量は前年度比△3.0%の実績となりました。また、パイプ販売単価についても、一部値下げ対応せざるを得ない状況の中、価格とスプレッド幅の維持に努めました。売上高は、単体は数量減から減収となり、丸一ステンレス鋼管㈱もステンレス管・BA管ともに数量減から減収となったことから、合計は1,627億9千5百万円(前年度比0.3%減)と減収になりました。セグメント利益は、単体が数量減による固定費負担増及びコストアップで減益となり、丸一ステンレス鋼管㈱も想定は上回ったものの減益となり、全体で247億1千8百万円(同10.1%減)と減益になりました。
北米事業につきましては、(決算期が1~12月とズレており)米国の熱間圧延コイル(HRC)価格(英国CRU社による米国中西部コイル価格指数)が、年初763$/トンでスタートしたものが4月末には1,300$台/トンまで上がり続け、製品値上げ局面の中で受注も堅調に推移、5月からは下がり始め9月末には700$台/トンに、その後12月年末には1,200$台/トンと乱高下しました。米国マルイチ・アメリカン・コーポレーション(MAC社)、米国マルイチ・レビット・パイプ・アンド・チューブLLC(Leavitt社)、米国マルイチ・オレゴン・スチール・チューブLLC(MOST社)、米国マルイチ・ネブラスカ・チューブLLC(MNT社)の米国4拠点合計の販売数量は、前年度比+7.2%の伸長となりました。また、メキシコのマルイチメックスS.A.de C.V.(Maruichimex社)の販売数量も、半導体不足解消による日系自動車メーカーの増産により前年度比+27.0%となりました。
売上高は、販売数量は増加しましたが、前年同期の高いHRC価格水準を背景とした販売価格対比では単価が下がっており、588億6千6百万円(前年度比9.5%減)と減収になりました。一方、セグメント利益は、第1~2四半期のHRC価格の上昇に連動した製品販売価格の値上げがコイル消費単価の上昇に先行し、結果スプレッドが改善出来たことから、49億4千万円(同319.2%増)と4.2倍の増益になりました。
アジア事業につきましては、ベトナムのマルイチ・サン・スチール・ジョイント・ストック・カンパニー(SUNSCO社)では、ベトナム市況に勢いが無く国内需要も回復の兆しが無い中で、輸出の増加で販売数量は前年度比+21.1%となりました。一方、マルイチ・サン・スチール・(ハノイ)・カンパニー・リミテッド(SUNSCO(HNI)社)では、日系二輪メーカーの販売台数減少から、販売数量は前年度比△25.1%となりました。フィリピンのマルイチ・フィリピン・スチール・チューブ・インク(MPST社)の販売数量は、二輪メーカーの現地生産の拡大を背景に受注を確実に取込み、前年度比+60.0%と大幅に増加しました。インドのマルイチ・クマ・スチール・チューブ・プライベート・リミテッド(KUMA社)では、乗用車販売が好調で販売数量は前年度比+12.2%増加しました。
結果、売上高は、SUNSCO(HNI)社以外の各社は増収を確保したことで、全体では496億4千8百万円(前年度比10.0%増)と増収になりました。セグメント利益は、SUNSCO社の改善やMPST社の伸長が大きく、全体では46億9千3百万円(同376.7%増)と4.8倍の増益になりました。
目標とする経営指標及びその達成状況につきましては、「1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 の(1)経営方針について」の第7次中期経営計画をご参照ください。
② 生産、受注及び販売の実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 金額は、販売価格によっております。
当社グループは、主として見込み生産をしており、金額的に重要性がないため、記載を省略しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は当該割合が10%に満たないため記載を省略しております。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という)の残高は、前連結会計年度末より22億9千4百万円増加し、774億1千8百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況と増減要因は以下のとおりであります。
営業活動によって増加した資金は356億8千7百万円(前年度比111億9千6百万円の収入増)となりました。主な収入は、税金等調整前当期純利益383億5千8百万円、減価償却費65億6千3百万円、棚卸資産の増減額60億8千9百万円であります。主な支出は、法人税等の支払額123億8千8百万円、仕入債務の増減額60億5百万円であります。
投資活動によって減少した資金は209億8千1百万円(前年度比252億8千6百万円の支出増)となりました。主な収入は、投資有価証券の売却及び償還による収入48億8千5百万円であります。支出につきましては、有形及び無形固定資産の取得による支出157億3千7百万円、投資有価証券の取得による支出57億8千4百万円等によるものであります。
財務活動によって減少した資金は131億2千3百万円(前年度比55億5百万円の支出増)となりました。主な収入はMST-X社の増資に対する非支配株主からの払込みによる収入21億2千7百万円、丸一ステンレス鋼管㈱において設備投資のために行った長期借入れによる収入17億円であります。主な支出は、配当金の支払額99億3千6百万円及び、短期借入金の純増減額46億2千6百万円などであります。
当社グループの運転資金及び設備資金については、主に自己資金を中心に、一部連結子会社は借入金により充当しております。当連結会計年度末における資金の残高は、前連結会計年度末より22億9千4百万円増加し、774億1千8百万円となりました。一方、当連結会計年度末の借入金残高は、短期借入金31億4千2百万円・長期借入金22億2千4百万円であり、これらの返済に必要な流動性は十分に満たしていると認識しております。従って、当社グループの財務の健全性は引き続き確保されており、第7次中期経営計画に沿った投融資・設備投資を含む当社グループの円滑な事業活動の資金には、大きな支障は無いと考えており、今後も当社グループ全体での円滑な事業活動の資金について留意してまいります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、見積りが必要な事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。
当社グループにおける重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況」(重要な会計上の見積り)に注記しております。
該当事項はありません。
当社グループは自動車、建築、エネルギーを主体として積極的に海外事業を展開しており、研究開発は市場開発活動を通じて、年々高度化・多様化する需要家のニーズ、動向を先取り把握することで新製品の開発を行うほか、世界的に高まっている環境負荷低減の要求への対応、生産技術の革新やコストの低減などについて、製造現場との意思の疎通を図りながらたえず幅広く行っております。
当連結会計年度の主要な技術開発は次のとおりです。
日本国内では、農芸用などに使用されるプレめっき鋼管の一時防錆表面処理について、膜厚の均一化を図り、更なる防錆力を高めるための技術開発を継続しております。2023年度にはオフラインのテストミルで塗装条件の最終見極めを実施し、その後東京工場のラインに設備実装を行い量産に移行しました。また、九州工場でも量産を開始しました。2024年度には苫小牧、名古屋、堺、四国の各工場の実ラインへの設備実装を行い、量産開始する計画です。
フェンスや住宅部材の耐食性ニーズの高まりを受け、新たに原材料のめっき鋼帯の見直しも視野に入れて、2023年度には造管トライし、各種評価が完了しました。今後はフェンスの杭材、住宅の床材の量産を開始する予定です。
鋼構造物に使用される角形鋼管、軽量形鋼などの一時防錆塗料「鉛・クロムフリーさび止めペイント JIS K 5674」(鉛丹色、グレー色)についてBCPの観点からサプライヤーの複数化を進めており、2023年度に東京、苫小牧、四国、九州の各工場で完了しました。今後は名古屋工場でライントライを実施予定です。
MARUICHI 2030 Visionで掲げたCO2削減への取組みとして、電炉材の使用を開始しています。2023年度には電炉材で製造した鋼管のJIS認証取得を進めました。今後は幅広い用途への電炉材適用を目指した取組みを進めます。
AI、IoT及びDXに関連する技術に関して、社内基幹系システムをハブとするシステム基盤づくりをしております。その一環として、ペーパレス、営業、製造、管理部門を含めた業務改革、社内インフラ環境に関する整備の充実、セキュリティ対策の強化を実施しております。
また、各工場の計画情報、操業情報、品質情報等の集約を行うことにより、安定的・効率的な生産稼働体制の構築を進め、製造現場の働き方改革に寄与できるよう最新IT技術を考慮し、生産性向上に繋がる製造情報共有化の仕組みづくりも引き続き進めます。
設備メーカーとの協働による次世代造管機の開発・検討ラインは、名古屋工場の最大径165.2φまでの生産ラインに 導入を検討しています。鹿島特品工場では、スピニング式縮管設備を導入すると共に、ポールなどのブラケット溶接にロボットを導入しています。これまで人の感覚や勘に頼っていた各種操業条件のデジタル化、ロボットの採用を行うことで、今までの造管ラインや加工ラインからさらに省力化・自動化を進めております。
また、堺工場SR仕上げライン(矯正機,面取機)、東京工場2号機仕上げライン、九州工場1号機ミル、四国工場7号機仕上げラインの設備更新を行い、自動化,省力化を行いました。
ステンレス鋼シームレス管を扱う丸一ステンレス鋼管(株)では、製造技術確立したコイル管において、サウジアラムコから40万mの大型受注あり、石油ガス市場向けに順調に量産を開始しました。また、成長事業分野に位置づけられる脱炭素化関連として水素、アンモニアの製造、輸送、利用における耐熱性、耐食性に特徴あるステンレス鋼管開発にも取り組んでいます。
なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は