文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、生物の生命維持に不可欠である免疫機構「抗体」について研鑽することによって、人類が病気から安全に免れるような治療用医薬品、診断用医薬品の開発や生活習慣病領域での検査サービスができるよう、独自の研究開発と大学・研究機関などとの共同研究の成果を製品の品質向上に結びつけるべく、研究開発活動を行っております。また、カイコ繭中に、抗体を始めとした様々な安全性の高いタンパク質を発現させる技術を用いて製品化を行っております。
このように、世界で難病に苦しむ人々が、1日も早く病気を克服し、明るく豊かな暮らしを営めるよう社会に貢献することを経営理念としております。
(2)目標とする経営指標
当社グループは、40年以上抗体を開発し抗体作製のノウハウが蓄積され、コア技術として確立されており、国内外の医薬品関連市場において開発・製造・販売を行ってまいりました。
当社グループは、以下の取り組みにより、収益の拡大をはかり財務を安定化し、株主の皆様への還元の早期実現を目指してまいります。
①市場規模が大きい診断用医薬品市場へ本格参入
②海外における研究用試薬市場の拡大
③医薬品シーズ関連の開発コストの選択と集中
④不採算事業の黒字化
(3)中長期的な会社の経営戦略
当社グループのセグメント別中長期経営戦略は、次のとおりであります。
・抗体関連事業
(診断試薬サービス)
製薬企業や大学等の研究用で使用する試薬サービスの領域は、非常に流動的であり、競争が激しいグローバル社会において、安定した収益を生み出すことが困難な領域ですが、Digital Marketingの強化をおこない、SNS等を活用した情報戦略を構築し、当社の独自技術について、日本をはじめ世界へ広め、販売拡大を目指してまいります。また、安定した収益を生み出すため、有用な協業先との連携により、体外診断用医薬品領域の製品化に注力してまいります。
当事業の研究開発の状況につきましては、下記の通りです。
〇医薬品シーズとしての可能性がある研究開発
・ABCONTEK社と、ダニ媒介性感染症であるSFTS(重症熱性血小板減少症候群)を治療するための抗体医薬品候補「ACT101」の共同開発について
⇒予定していたカニクイザルを使用した非臨床試験を一旦中止し、現時点で取得済みの試験結果を用いて早期の導出に注力してまいります(2023年3月14日公表の「連結持分法適用会社株式会社AI Bioの子会社化に関するお知らせ」を参照)。また、SFTSにおける動物用(ネコやイヌ等のペット)体外診断用医薬品について、検討を進めてまいりましたが、開発コストや開発期間等を総合的に勘案し、中止いたしました。
・国立大学法人徳島大学と胃や腸の消化管壁の粘膜下にある未熟な間葉系細胞に由来する「肉腫」の一種とされるGIST(消化管間質腫瘍)を診断、治療するための抗体医薬品の研究開発について
⇒日本国内における「c-KIT陽性腫瘍特異的抗体断片」に関する特許を取得(2024年4月4日公表の「特許取得に関するお知らせ」参照)し、今後について、提携先と協議を進めております。
〇下記の体外診断用医薬品の上市を目指します。(開発中の主なテーマと進捗状況)
・学校法人埼玉医科大学が所有する、難聴・めまいの原因を生化学的に診断できる世界初のバイオマーカー「CTP(cochlintomo-protein)」に関する発明を元に、体外診断用医薬品としての薬事申請・販売の権利を株式会社コスミックコーポレーションに譲渡しました。その後、2020年6月に体外診断用医薬品承認され、さらに、2022年7月1日付で、外リンパ瘻を疑う患者に対して、診断の補助を目的として保険収載(保険点数:460点)されました(2022年8月3日発表)。当社は本品の製造を担当いたします。
外リンパ瘻患者は突発性難聴やメニエール病などの症候学的に診断されている疾患に潜伏していることも多く、似通った症候を示す外リンパ瘻が見落とされるケースが発生しております。その患者数は正確には算出されておりませんが、潜在的に外リンパ瘻患者が含まれていると考えられる、めまいなどの有訴者数は約400万人にものぼると算出されており、外リンパ瘻の疑われる患者に対して本CTP ELISA「コスミック」を用いることにより正確な診断が可能になることが期待されます。
さらに、当社は、学校法人埼玉医科大学と簡便性・迅速性に優れたイムノクロマト法によるCTP測定試薬の開発を共同で行っております。
・グルカゴンは、膵臓のランゲルハンス島のα細胞から分泌されるホルモンで、血糖調節因子として知られておりますが、ELISA法による測定は類似ペプチドの交叉による影響を受けやすく、正確な測定が難しいとされてきました。両断端に特異的な2抗体を用いた膵グルカゴン特異的測定系の開発により、血中グルカゴン濃度の正確な評価が可能となり、今後、糖尿病の病態や病気を診断するための独立した新しい指標となる可能性が示唆されています。
当社は、群馬大学と共同で、血清中グルカゴン値を測定する体外診断用医薬品として、2025年3月期の承認申請に向けて研究開発を行っております。
・神経筋疾患患者の尿中に存在するタイチンというタンパク質に対するELISA測定キットを開発し、神経筋疾患の病気診断・病態のモニタリングマーカーとして、2025年3月期の販売承認申請を目指し、研究開発を行ってまいります。また、販売承認の申請までの間、研究用試薬として販売をするために、認定検査試薬としての確認申請を行い、承認されましたので、認定検査試薬として販売を開始しております。タイチンは神経筋疾患のみならず、老化に伴うサルコペニア、フレイル等の疾患との関係も示唆されており、対象疾患の広がりが期待されています。
・赤痢アメーバ症は赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)という寄生性の原虫が原因となって引き起こされる病気で、日本国内において、2012年以降、感染症法に基づく報告数は900例を超えてきており、増加傾向にあります。
そこで当社は、簡便な血液検査で赤痢アメーバ感染の有無をチェックできる体外診断用医薬品の開発を行っておりましたが、体外診断用医薬品(製品名:赤痢アメーバ抗体 ELISA-IBL)の製造販売承認を取得いたしました。現在、保険適用に向けて準備をしており、保険適用後、販売を開始致します。
・シスメックス株式会社との業務提携
両社の診断薬開発技術の相互利用を進めることで、より独創的で高品質な製品を開発し全世界に向けて提供することを目指しております。本業務提携によりIBLは、自社の特長ある抗体ライブラリをシスメックスのHISCLをはじめとする測定プラットフォーム向けに最適化し、診断薬原材料として供給することが可能になります。またIBLの強みである抗体開発技術を活かしてグローバル市場の様々な診断ニーズに対応した抗体を開発し、シスメックスへの供給を通じて診断薬市場向け事業を拡大します。
現在、数品目の診断薬原料候補の抗体やたんぱく質の共同開発を行っております。詳細につきましては、守秘義務があるため、開示しておりません。
(検査サービス)
秋田解析センターでは、生活習慣病領域での創薬・研究支援に加え予防・診断支援などに特化した事業を行っております。特に、世界で唯一の高感度ゲルろ過高速液体クロマトグラフィーを用いた血中リポタンパク質詳細プロファイリングサービス「LipoSEARCH」は、最先端のリポタンパク質解析技術として、当領域の専門研究機関・製薬企業・食品企業における研究・開発及び創薬支援として広く利用されております。
本「LipoSEARCH」は、血中の各リポタンパク質の粒子サイズにより分画した波形データ(クロマトグラム)と、各分画におけるコレステロール量と中性脂肪量を提供する事により、病態や薬剤投与の影響によるリポタンパク質プロファイルの全体的かつ詳細な変化をとらえることができます。
さらに、伴侶動物(ペット)向けの脂質代謝関連疾患検査サービス「LipoTEST」を動物病院の獣医師を経由して飼い主様に提供しております。
また、IBL解析センターでは、診断試薬サービスで開発された独自のELISA測定キットを用いた研究検査の受託測定を実施しており、生活習慣病関連疾患や老化関連疾患領域での総合的な支援を推進しております。
(TGカイコサービス)
遺伝子組換え手法によりカイコの繭に生産させた各種抗体等のタンパク質の販売を行っております。また、株式会社ニッピとの共同研究により、iPS細胞等の培養足場材として有効であるラミニン511-E8の生産にも成功し、研究用試薬としての販売も実現しております。遺伝子組換えカイコで生産したラミニン511-E8(iMatrix-511 silk)は、機能および価格的優位性から、多くの研究者の皆様に利用いただいております。また、化粧品原料「ネオシルクⓇ-ヒト型コラーゲンⅠ」につきましても、美容機器製品等の開発に成功したイタリア法人の303 Pharma との間でOEM契約を締結し、同社の自社ブランド製品として提供してまいります。
また、当サービスにおいては、ヒト感染性の病原体を持たないカイコを用い、組換え型の血漿フィブロネクチン(Fibronectin Neosilk®,Plasma)と細胞性フィブロネクチン(Fibronectin Neosilk®, Cellular)の生産技術を開発し、研究用試薬として販売を開始しました。
フィブロネクチンは、代表的な細胞外マトリックスタンパク質の一つであり、細胞の接着・伸展、移動、増殖および分化等を制御することから、間葉系幹細胞をはじめとする各種培養細胞の足場材として再生医療領域での研究等に使用可能です。また、本製品は、遺伝子組換えカイコの繭から精製するために動物由来成分の混入が無い、いわゆるXeno-freeであることから、安全性の高い製品としても期待されています。
・化粧品関連事業
当社グループの遺伝子組換えカイコサービスにおいて開発した化粧品原料「ネオシルクⓇ-ヒト型コラーゲンI」及びネオシルクⓇ-ヒト型コラーゲンⅠ配合化粧品「フレヴァン」を化粧品業界や医療業界に広く販売するため、連結完全子会社の株式会社ネオシルク化粧品が事業を展開しております。「ネオシルクⓇ-ヒト型コラーゲンI」は、遺伝子組換えカイコの繭に生産させたもので、現在使用されている魚や豚等の異種動物から生産されるコラーゲンとは異なる、今までにない全く新しい化粧品原料です。また、繭から生成したネオシルクⓇ-ヒト型コラーゲンIには、組換え遺伝子は含まれておらず、純粋にヒトのコラーゲンと同等なアミノ酸骨格を有するものであることから、安全性が高く、消費者の皆様に安心してお使いいただける化粧品原料であると考えております。また、化粧品原料「ネオシルクⓇ-ヒト型コラーゲンⅢ」の販売が開始され、今後は、「ネオシルクⓇ-ヒト型コラーゲンⅢ」を使用した高級化粧品の開発に取り組み、幅広いユーザーに提供できる製品を開発してまいります。
(4)当社グループをめぐる業界や市場の動向等の経営環境
・医薬品業界
世界の医薬品関連事業を取り巻く環境は大きく変化し、高齢化社会、高ストレス社会の進展により、医薬品や診断薬に対する需要が伸び続けております。さらに、重症熱性血小板減少症候群やコロナウイルスなどの、治療法がない、もしくは治療満足度の低い疾患が多数あり、そのような疾患に対する治療薬の開発が待たれており、医薬品事業の重要性は、ますます高まっているといえます。
しかしながら、創薬技術の高度化や医薬品承認要件の厳格化などにより、治療用医薬品あるいは診断用医薬品の開発には、多額の研究開発費と長い年月が必要であり、経営環境は厳しさを増しています。従って、これら医薬品や診断薬の開発には、当社グループの人的資源と効率を鑑み、自社では製品化するまでの全過程を行うことが可能かどうか注意深く検討し、製品開発においては、選択と集中により積極的な投資によって、抗体に付加価値を付け、パイプラインを充実させることで企業価値の最大化を追求いたします。
・化粧品業界
化粧品市場は、コロナ禍においてマスク着用の定着やテレワークの普及により化粧品の消費が減少しましたが、外出規制緩和に伴い口紅などのメイク用品の需要が伸びつつあります。さらに、訪日外国人の受け入れが再開され、インバウンド消費に期待が高まっています。また、新たなビジネスチャンスとして、ECサイトへのシフトチェンジやインフルエンサーマーケティングを活用して、異業種参入が増えております。
当社グループが販売する化粧品「フレヴァン」シリーズにつきましては、スキンケア製品を中心に安全・安心をコンセプトに製造販売を行っております。
一方で、高齢社会や人口縮小の日本では今後市場の縮小が懸念されていることから、日本の化粧品メーカーは生き残りを賭けて海外進出を図っておりますが、当社グループにおきましても中国や欧州を中心に海外販路の開拓を行っております。
(5)会社の対処すべき課題
・研究開発の重点投資
当社グループは、遺伝子組換えカイコによる医薬品原料生産に向けた新規開発を中止することといたしましたが、治療用医薬品及び診断用医薬品のさらなるパイプラインの充実が、事業の安定化のためには必要となります。そのため、資源投入の集中と研究開発の効率化を図り、また、現行の共同研究先である大学などに加え、優秀な人材を採用し、研究開発のスピードアップを図ってまいります。さらに、海外企業が保有する有用なシーズの発掘も積極的に行ってまいります。
・体外診断用医薬品関連への取り組み
診断・試薬事業の領域は、非常に流動的であり、競争が激しいグローバル社会において、安定した収益を生み出すことが困難な領域となっております。安定した収益を生み出すためには、体外診断用医薬品関連の領域の製品化が必要であると認識し、体外診断用医薬品の研究開発に注力してまいります。
・シスメックス株式会社との取り組み
当社とシスメックス株式会社は、両社の診断薬開発技術の相互利用を進めることで、より独創的で高品質な製品を開発し全世界に向けて提供することを目指しております。当社は、自社の特長ある抗体ライブラリをシスメックス株式会社のHISCLTMをはじめとする測定プラットフォーム向けに最適化し、診断薬原材料として供給することが可能になります。また当社の強みである抗体開発技術を活かしてグローバル市場の様々な診断ニーズに対応した抗体を開発し、シスメックス株式会社への供給を通じて診断薬市場向け事業を拡大します。
・遺伝子組換えカイコへの取り組み
遺伝子組換えカイコによる医薬品原料生産に向けた新規開発を中止することといたしましたが、カイコの繭中に目的タンパク質を産生する生産技術により遺伝子組換えカイコの繭より産生される抗体やタンパク質は、非特異反応が低いことや動物愛護の対象とならないことから、短期的には、研究用試薬・体外診断用医薬品関連にて使用する抗体をはじめとした目的タンパク質の置換え利用や化粧品原料等への産業利用を推進し、具体的な生産拡大や製造方法の改良を目指してまいります。
・化粧品関連事業における販売の取り組み
中国市場におけるBtoB販売は、コロナ禍の鎮静化により、販売を見込んでおりましたが、依然として、中国市場への展開が進まず、直接現地代理人との情報交換が出来ず、目途がついておりません。今後は、人材を採用し、SNSを活用して、中国国内のバイヤーの方々に直接情報発信し、販路拡大の準備をすすめてまいります。本事業については、既存製品での利益創出を重要課題ととらえ、販売拡大を目指してまいります。また、販売拡大の目途が立ち次第、遺伝子組換えカイコ事業が開発した、化粧品原料「ネオシルク®-ヒト型コラーゲンⅢ」を使用した高級化粧品の開発に取り組み、幅広いユーザーに提供できる製品を開発してまいります。
・人材の確保及び教育
当社グループは、各事業に精通した研究員及びプロジェクトを推進できる人材の確保が必要不可欠と考えており、研究開発の効率を上げるため、ハード面とソフト面の両面から研究開発に適した環境作りを行い、企業価値の最大化を目指してまいります。
研究開発型企業である当社グループにおいては、自由な発想が生み出される柔軟な組織がふさわしいと考えております。組織が硬直化し、研究開発活動が滞ることがないように、常に問題意識をもって物事に対処する集団として組織を維持運営いたします。
・財務安定性の確保
当社グループは、研究開発型企業として、選択と集中により積極的かつ継続的に研究開発に投資していく方針であります。投資の源泉は事業からの収益をもって行われることが望ましいと考えております。当社グループは、引き続き、収益確保のため、新製品の開発やコストの効率化に努めてまいります。また、研究テーマの選択を行い、経営資源を集中して効率的な経営を行うことが重要であると認識しております。
・経営管理体制の強化
既存事業に加え、新規事業やサービスの展開が加速し、多角期を迎える当社グループにおきましては、経営の公正性・透明性・継続性を確保するためのさらなる管理体制の強化が重要な課題であると認識しております。特に昨今におきましては、世界情勢の悪化や新型コロナウイルス感染症の影響により、物流の停滞・各種コストの増大・急激な為替の変動等、社会環境が不安定・不透明な状況となっております。その状況下においても着実に事業を継続するため、各種社内規程や関係法令等の遵守を積極的に推進し、内部統制に資する業務プロセスの整備・運用、必要に応じた是正活動を定常的に行うことで、より透明性が高く健全な経営管理体制を構築してまいります。
(注)用語解説については、「第4提出会社の状況 4コーポレート・ガバナンスの状況等」の末尾に記載しております。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
・基本的な考え方
当社グループは「世界で難病に苦しむ人々が1日も早く病気を克服し明るく豊かな暮らしを営めるように貢献する」を企業理念に掲げ、社会に貢献することを目指しております。
当社グループは、日々進歩する新しい科学技術を積極的に取り入れながら、創業以来40年以上、抗体の有する価値の最大化を追求し、柔軟な創造力と自由闊達な意欲を持った研究開発活動により、「抗体」に関連する新たな製品の実用化はもとより新たな事業化を目指しております。
そのような中、当社グループは、製品の安定供給、厳密な品質管理や適正な廃棄物処理など、持続可能な企業活動が求められていることから、真摯に持続可能な社会へ貢献してまいりました。また、当社グループ全体で物を大事にする考えや、環境への取り組み、人材への投資や育成、社会との共存共栄への考えや取り組みは、企業と社会、それぞれの持続可能性を高めていくと考えております。
・SDGs基本方針
当社グループは、生物の生命維持に不可欠である免疫機構「抗体」について研鑽し、がん、自己免疫疾患、脳・神経関連疾患などの難病にかかわるタンパク質に対する抗体の開発を追求し、医薬、診断薬、研究用試薬として供給し、社会に貢献することを目指しております。
企業理念実現のため、法令と倫理を遵守した事業活動を通じて、環境や社会を取り巻く状況の課題に積極的に取り組み、「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に貢献することは、非財務価値として企業価値向上につながるものと考えております。
重要課題
環境
当社グループは、地球環境の保全と事業活動の調和を経営の重要課題のひとつとして、環境法令・条例を遵守するとともに、省資源・省エネルギーに努めます。また、研究開発ならびに原料調達から製造、物流、消費に至る全てのプロセスで発生する環境負荷削減に努めます。
・水資源の効率的な使用
当社グループの主力事業である「抗体関連事業」では、当該製品を安心してご使用いただけるために、製品やサービス提供の製造過程において大量の水資源が必要となるため、水資源の効率的な使用に努めております。今後も将来に向けた事業継続の観点から、水資源の効率的な使用を推進してまいります。
・CO2排出量削減と省エネルギー
当社は、本社・研究所において、蛍光灯からLED照明への切り替えや間引き照明、空調設定温度の適正化を推進し、電気使用量の削減に取り組んでおります。また、本社では太陽光発電を導入し継続的な省エネルギーの実現に取り組んでおります。
・廃棄物や排水の適正管理
当社グループの事業活動において、廃棄物や排水の発生は避けられませんが、廃棄物や排水の処分については、環境法令・条例を遵守し、適正に管理しております。
当社グループは、ウサギやマウスを飼育し、糞尿が発生しておりますが、接触ばっ気方式による排水処理施設を設け、月2回の保守点検を実施し、年一回の水質分析を行い、適正に管理しております。
・生物多様性の保全
当社グループでは、遺伝子組換えカイコの技術を使用し、タンパク質や抗体の生産を行っておりますが、遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(通称カルタヘナ法)に基づく適切な運用と管理を行い、生物多様性の保全に取り組んでおります。
当社グループは、持続可能な「企業価値向上」の実現に向けて、経営監督機能と業務執行機能の明確化、意思決定の迅速化及び経営の健全性・透明性の確保を目指してコーポレート・ガバナンスの体制を構築しております。
・コンプライアンス
当社グループは、事業活動において、関連する法令・条例・契約・社内規程等、明確に文章化された社会ルール(法令)を遵守するコンプライアンスの徹底は、当社グループを取り巻く全てのステークホルダーの皆様の信頼を得る上で重要と考え、コンプライアンスを重視した経営を推進しております。
当社グループは、公正かつ透明な企業活動を目的とすることを経営の基本方針とし、「コンプライアンス・マニュアル」を定め、その遵守について、継続して周知徹底を図ります。また、内部通報制度として「内部通報制度に関する規程」を定め、監査役を通報窓口として設置し、法令違反その他の不正行為の早期発見及び是正を図るとともに、内部通報者の保護を行っております。
下記に当社のガバナンス模式図を示します。

人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略
・人権の尊重
当社グループは、個人の人権と人格を尊重し、個人の尊厳を傷つける不当な行為(ハラスメント)や差別につながる行為を排除することを「社内規程」に記載し、従業員への徹底を図っております。
また、性別・国籍・人種・宗教・年齢・思想・身体上のハンディキャップなどに基づく差別の排除はもちろんのこと、差別の意図がなくても相手に不快感を与える行為を避けるよう徹底しております。また、強制労働や児童労働などの奴隷的な扱いを排除するよう努めております。
・希少疾病用医薬品
当社は、医療上の必要性が高いにもかかわらず、個別の疾患の患者数が少ない事などにより、十分に研究開発が進まないと言われている希少疾病用医薬品シーズを開発しており、「誰一人取り残さない、持続可能でよりよい社会の実現」に向けて、取り組んでおります。
・従業員との関わり
当社グループは、従業員の人権・健康・安全衛生を重視し、従業員一人ひとりがやりがいを持って、安心して働ける就労環境の構築を進めております。そして、人材育成・人材教育により、成長とその能力を十分に発揮できる環境をつくることが重要であると考えております。
子育て・介護の支援については、通常の就業が困難な従業員でも安心して就業を継続できるよう、育児休業規程及び介護休業規程に基づく休業・休暇制度や時短勤務制度などを整えております。また、高年齢者の雇用については、60歳定年退職後の再雇用制度を導入し、従業員が長年培ってきた経験やノウハウ、技術を定年後も有効に活かして、各職場で活躍しております。
従業員の健康管理については、年に一回の健康診断を実施し、受診の結果、所見のあった従業員に対して、外部産業医や外部相談員などと連携を取りフォローを行っております。また、全国健康保険協会の実施する特定健診・特定保健指導にも積極的に協力し、従業員の疾病予防、健康維持・増進に努めております。さらに、メンタルヘルス対策については、メンタル不調の予防・早期発見・早期対応を目的に、適時ストレスチェックを行い、従業員のメンタルヘルス対策をサポートしております。
今後も、全国健康保険協会による外部相談窓口を活用しながら、外部産業医とも連携を取り、従業員の健康管理・メンタルヘルス管理に今後も積極的に取り組んでまいります。
当社グループは、企業理念の実現、経営計画を達成するうえで阻害要因となるリスクを適切に管理し、社会的責任を果たし、かつ持続可能な企業価値の向上に資することを目的として、リスクマネジメントに取り組んでおります。
・動物実験における倫理的配慮
当社グループは、「抗体」の開発においては、安全性や有効性を確認するために動物実験を行うことが必要不可欠です。当社グループは、「動物の愛護及び管理に関する法律」「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準」及び「厚生労働省の所管する実施機関における動物実験等の実施に関する基本指針」の趣旨を十分に反映し、かつ、動物を用いない代替試験法の活用(Replacement)、使用動物数の削減(Reduction)、苦痛の軽減(Refinement)を十分念頭において、社内規程を作成しております。当社グループでは、動物実験を実施するにあたり、関連法令及び社内規程を遵守し、動物愛護に配慮したうえで、科学的観点に基づき適正に実施されるよう、動物実験委員会による審査を行っております。
女性管理職比率、男性の育児休業取得率、男女間賃金格差について。
当社グループでは、上記「戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針に係る指標については、当社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取り組みが行われているものの、当社グループは従業員数が少なく、同一の従業員が複数の事業に従事しているため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の指標に関する実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。なお、当社グループは従業員数が少ないため、目標は設定しておりませんが、前年度実績からの改善を目標としております。
今後も継続して環境整備をはじめとした取り組みを推進し、維持・向上を目指してまいります。
(注)1.当事業年度における男性労働者の育児休業取得率については、該当者がおりません。
2.管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異についての実績は、「
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
当社グループの事業活動において、リスクとなる可能性があると考えられる主な事項について記載しております。また、当社グループとして必ずしも重要なリスクとは考えていない事項についても、投資判断の上で、あるいは当社グループの事業活動を理解する上で重要と考えられる事項については、投資家及び株主に対する積極的な情報開示の観点から開示いたします。
当社グループは、これらのリスクが発生する可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、当社グループの経営状況及び将来の事業についての判断は、以下の記載事項及び本書中の本項以外の記載を慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。なお、以下の記載における将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、当社グループで想定される範囲で記載したものであります。また、以下の記載は当社株式への投資に関連するリスクの全てを網羅するものではありません。
(1)他社との業務提携、合弁会社設立等について
当社グループは、戦略を実行していく上で、合弁企業の設立や子会社化(持分法適用会社化を含む)を行うなど、他社の買収やその他の株式投資を行う可能性があります。その際、各投資の実行の検討に際し、リスクの大きさに応じ、必要十分なデュー・ディリジェンスを実施した上で、定められた承認プロセスを経て投資判断を行っております。
当社グループの業務提携先や合弁先と共同事業を行う場合には、当局の許認可が必要となったり、当該業務提携先や合弁先と共同事業の内容について合意できることが前提となります。また、当社グループの業務提携先や合弁先に対して当社グループが支配権を有するとは限らず、これらの会社が、当社グループの意向にかかわらず、事業戦略を大幅に変更する可能性があります。さらに、第三者割当増資や当社グループ以外の株主がコールオプションを行使したことにより当社グループの持株比率が低下したり、その経営成績や財政状態が大幅に悪化する可能性もあります。これらの場合、その業務提携、合弁事業などが期待通りの成果を生まない可能性や、継続が困難となる可能性があります。また、特定の第三者との業務提携や合弁事業などを実施したことにより、他の者との業務提携や合弁事業などが制約される可能性もあります。その結果、当社グループの事業展開、財政状態および業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2)知的財産権に関連するリスクについて
当社グループの事業を遂行していく中で、他者が所有している知的財産権を使用する場合、ライセンス契約等の締結を行い、当該知的財産権を使用する事としておりますが、当社の認識外で他者の知的財産権を侵害してしまうこともあります。当該侵害に対して訴訟が提起された場合は、当社の事業戦略や業績に重大な影響を与える可能性があります。
そのため、当社グループでは、他者の知的財産権への抵触が判明した時は、遅滞なく当該抵触について検討の上、当該他社とライセンス契約を締結する等の対応策を講じております。また、事業の拡大とともにこのようなリスクは増大するものと思われますので、知的財産権に関する管理体制をより強化していく方針であります。
(3)機密情報の流出について
当社グループの事業を遂行する上で、社外の研究者や研究機関との情報交換は有益であると考えております。今後も積極的に情報交換を行っていく方針であり、商品・サービスの提供や営業活動に必要となる顧客氏名・性別・住所・電話番号等の個人情報、その他業務上、必要となる各種情報をシステム上で管理しております。第三者に当該機密情報を窃取された場合、企業にとって致命傷となりかねません。そのため、当社グループでは、基幹システムやサーバーのセキュリティー強化に加え、情報を外部に開示する際の手続を明確化して組織の末端まで周知徹底させております。しかしながら、万が一機密情報が流出した場合には、多大な損害を被るおそれがあります。
(4)個人情報に対する漏洩リスク
当社グループは、個人情報を保有しておりますが、個人情報の漏洩防止のため社内規程を整備し、セキュリティー対策を行っております。
しかしながら、昨今の企業情報漏洩に関しては、悪質化する犯罪の増加に伴い個人情報が流出するなどの不測の事態が起こっております。このような場合企業の信用は失墜し、社会的制裁を受ける事となり、「個人情報漏洩保険」に加入していますが、当社グループの業績の悪化と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(5)特定人物への依存について
代表取締役社長である清藤勉は、当社グループの創業以来の最高経営責任者であり、事業の立案や運営、開発活動の遂行等についてリーダーシップを発揮しています。また、当社グループは、小規模な組織であり、人的資源に限りがあるため、個々の役職員の働きに依存している面があります。こうした属人的な事業体制を見直すために、権限の委譲や業務分掌に取り組んでおります。今後の事業展開に必要な役職員が、不慮の事故等何らかの理由により当社グループの事業展開に関与することが困難になった場合には、当社グループの事業および業績に大きな影響を与える可能性があります。
(6)海外展開による影響について
当社グループの活動の範囲は、世界各地に及んでおり、各々の地域における経済状況等により影響を受ける可能性があります。具体的には、以下に掲げるいくつかのリスクが内在しています。
・政治的又は経済的要因
・事業・投資許可、租税、為替管制、独占禁止、通商制限など公的規制の影響
・他社と合弁・提携する事業の動向により生じる影響
・戦争、暴動、テロ、海賊、伝染病、ストライキ、コンピューターウイルス、その他の要因による社会的混乱の影響
・地震、津波、台風等の自然災害の影響
これらリスクに対しては、グループ内での情報収集、外部コンサルタント起用等を通じ、その予防・回避に努めてまいりますが、これらの事象が発生した場合には、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。
(注)用語解説については、「第4提出会社の状況 4コーポレート・ガバナンスの状況等」の末尾に記載しております。
当連結会計年度における日本経済は、新型コロナウイルス感染症が5類感染症へ移行され、行動規制が解除されたことにより経済活動の正常化が進み、景気に持ち直しの動きが見られたものの、物価上昇、金融資本市場の変動、中東地域をめぐる情勢など、引き続き先行きは不透明な状況が続いております。
こうした状況のもと、当社グループの業績につきましては、以下の通りとなりました。
セグメント別の経営成績は、次のとおりです。なお、第42期第1四半期より報告セグメントの区分を変更しております(2023年4月27日公表「報告セグメントの変更に関するお知らせ」をご参照ください)。
※遺伝子組換えカイコの研究開発費は、TGカイコサービスに含めております。
<抗体関連事業>
・診断試薬サービス
当サービスの売上高は、主力製品であるELISAキットの売上は、海外のCROへの販売が大幅に増加していることやSNS戦略が功を奏し、国内外ともに前年から大幅に伸びました。一方その他の製品においては、抗体製品の大口受注や動物用体外診断用医薬品の牛海綿状脳症測定キット(BSEキット)等の売上が計上されたものの、予想を下回る結果となりました。
・検査サービス
当サービスの売上高は、血中リポタンパク質プロファイリングサービス「LipoSEARCH」に関連する検査で、中型案件の売上が計上されたものの、全体的に受注が減少し、前年を下回る結果となりました。
・TGカイコサービス
当サービスの売上高は、ラミニン(iMatrix-511)の纏まった販売や大手体外診断用医薬品企業からの抗体受託サービスの売上が計上され、前年に比べ増加いたしました。
以上により、当事業の売上高は、812,850千円(前年同2.8%増)となりました。
営業利益につきましては、人件費や製造コスト等のコストが増加しましたが、資本金の減少による税金コストが大幅に減少したことや、新規取得の固定資産について、簿価の切り下げ処理を行わない会計処理(2024年5月10日公表の「通期業績予想の修正に関するお知らせ」を参照)にしたことにより、当事業の営業利益は、107,816千円(前年同52.9%増)となりました。
なお、前期まで遺伝子組換えカイコ開発事業として発生していた研究開発費につきましては、当事業に集約しております(2023年4月27日公表「報告セグメントの変更に関するお知らせ」を参照)。
<化粧品関連事業>
当事業における売上高は、国内通信販売が中心ですが、人材不足により販促活動が不足し、前年に比べ減少し3,851千円(前年同4.2%減)となりました。営業損益につきましては、高崎ショップの閉鎖等により販売費の抑制を図り営業損失3,516千円(前年同期は13,344千円の営業損失)となり、前年に比べ改善されました。
以上の結果、当社グループの連結売上高は、前年に比べ2.8%増の816,701千円となり、営業損益については、人件費や製造コスト等の増加があったものの、売上高の増加、業務効率の改善、資本金の減少による税金コストが大幅に減少したことや、新規取得の固定資産について、簿価の切り下げ処理を行わない会計処理(2024年5月10日公表の「通期業績予想の修正に関するお知らせ」を参照)にしたことにより、前年に比べ82.5%増の104,299千円の営業利益となりました。経常損益につきましては、為替差益や前期貸倒損失の戻し益を計上したことや前期において損益に大きな影響を及ぼしていた関係会社の持分法による投資損失等の影響が軽微だったため、前年同期の149,503千円の経常損失から黒字化し、125,413千円の経常利益となりました。親会社株主に帰属する当期純損益については、税効果会計を適用し、将来減算一時差異に対して繰延税金資産を計上したこと等により、前年同期の289,731千円の親会社株主に帰属する当期純損失から黒字化し、186,694千円の親会社株主に帰属する当期純利益となりました。
②財政状態
・流動資産
当連結会計年度における流動資産の残高は、前連結会計年度と比較して、8.3%増の1,262,120千円となりました。この主な要因は、年度末の売上債権が32,707千円減少しましたが、売上高の増加により現金及び預金が119,972千円増加したこと等によるものであります。
・固定資産
当連結会計年度における固定資産の残高は、前連結会計年度と比較し32.5%増の356,461千円となりました。この主な要因は、有形固定資産が16,540千円増加したことや税効果会計の適用により繰延税金資産67,908千円等を計上したことによるものであります。
・流動負債
当連結会計年度における流動負債の残高は、前連結会計年度と比較して2.3%増の257,824千円となりました。この主な要因は、長期借入金が1年以内に到達することにより10,532千円、新規借入により短期借入金が5,000千円それぞれ増加したこと等によるものであります。
・固定負債
当連結会計年度における固定負債の残高は、前連結会計年度と比較して8.0%減の95,446千円となりました。この主な要因は、約定弁済等や1年以内に到達する長期借入金の振り替え等により14,540千円減少したこと等によるものであります。
・純資産
当連結会計年度における純資産の残高は、前連結会計年度と比較して17.3%増の1,265,311千円となりました。この主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益186,694千円の計上等により増加となりました。
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)の期末残高は、前連結会計年度に比べ112,971千円増加し、674,969千円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により獲得した資金は133,775千円(前年は26,458千円の獲得)となりました。
この主な要因は、税金等調整前当期純利益を124,644千円計上したことや、その他が16,572千円減少したものの、売上債権の減少が32,707千円あったこと等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により減少した資金は24,496千円(前年は30,036千円の獲得)となりました。
この主な要因は、固定資産を18,660千円取得したこと等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により獲得した資金は991千円(前年は991千円の獲得)となりました。
(注)用語解説については、「第4提出会社の状況 4コーポレート・ガバナンスの状況等」の末尾に記載しております。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.金額は、製造原価によっております。
当連結会計年度における商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.金額は、仕入価格によっております。
当社グループは、主として見込生産を行っているため、該当事項はありません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①経営成績の分析
当社グループは抗体関連事業及び化粧品関連事業により構成されており、当連結会計年度の当社グループの業績の分析につきましては、次のとおりであります。
・売上高
抗体関連事業は、主力製品であるELISAキット及び抗体において、海外販売におけるeマーケティングを活用した情報戦略や円安効果により販売が拡大したことが主な要因となり、前年比2.8%増の812,850千円と増加しております。化粧品関連事業については、抗体関連事業へ投資を集中していることで、人材不足の影響により国内外の販売活動が出来ず、売上高は前年比4.2%減の3,851千円となっております。
・売上原価、売上総利益
原価面につきましては、作業効率の改善や仕入価格低減に向けた活動を絶えず行うこと等、原価低減活動を行っておりますが、諸物価高騰及び円安影響を受け、原材料、経費等にかなり影響を受けております。その結果、売上原価は前期比11.8%の増加となり299,408千円となりました。売上総利益は、売上高が増加となりましたが、売上原価の増加に伴い、前年比1.8%減の517,293千円となりました。
・販売費及び一般管理費、営業利益
円安や海外情勢の不安定化をはじめとしたさまざまな要因により物価高が進行しており、製造費用はもとより販売費及び一般管理費においても光熱水道費をはじめとして費用高騰圧力となっておりますが、その中にあって、遺伝子組換えカイコサービスにおいて研究項目を基礎研究にシフトしたこと等により販売費及び一般管理費は減少しました。また、前期まで取得した固定資産については、全額費用計上(簿価の切り下げ)を行ってまいりましたが、今期より全額簿価切り下げが不要と判断いたしました。その結果、販売費及び一般管理費は、前年比12.0%減の412,993千円となり、営業利益は、前年比82.5%増加し104,299千円となりました。
・営業外損益、経常利益
当連結会計年度においては、為替相場の動向が期初から期末にかけて円安傾向で推移したことにより外貨建売掛債権等において為替差益が8,702千円発生したことや前期貸倒損失の戻し益が6,697千円計上されました。また、当連結会計年度より関係会社の持分法投資損失の影響がなくなったこと(前期203,844千円計上)等により、前期の149,503千円の経常損失から、当期は125,413千円の経常利益となりました。
・特別損益、親会社株主に帰属する当期純利益
当連結会計年度においては、親会社株主に帰属する当期純利益の黒字化を達成できる見込みとなり、さらに、来期以降につきましても継続して親会社株主に帰属する当期純利益の計上を計画していることから、翌年の繰延税金資産の回収が見込めることとなったため、税効果会計を適用し、将来減算一時差異に対して繰延税金資産を計上いたしましたので、当連結会計年度において、法人税等調整額を67,908千円計上しております。これにより親会社株主に帰属する当期純利益は186,694千円(前期は289,731千円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源、資金の流動性に係る情報
当連結会計年度においては、営業活動が好調なことや遺伝子組換えカイコサービスにおいても研究項目の選択と集中等により営業収支が改善しており、営業活動によるキャッシュ・フローは133,775千円(資金の獲得)となっております。また、投資活動によるキャッシュ・フローにおいては、有形固定資産の取得等により24,496千円減少いたしました。
資金の財源については、自己資金で賄うことを基本としておりますが、状況に応じて金融機関からの借入や新株発行による増資等によるものも考慮に入れております。
資金の流動性については、前述のとおり当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローが133,775千円の資金の獲得、投資活動によるキャッシュ・フローが24,496千円の資金の減少、財務活動によるキャッシュ・フローが991千円の資金の獲得、現金及び現金同等物の期末残高は674,969千円であり、各キャッシュ・フローの規模等を勘案し、十分な手元流動性を確保しているものと考えております。
翌連結会計年度のキャッシュ・フローにつきましては、運転資金での支出が主なものであり、重要な設備投資は予定しておりませんので、先に述べましたとおり、現金及び現金同等物で十分賄える見込みであります。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
当連結会計年度で終了した契約は次のとおりです。
本研究成果有体物製造販売許諾契約に基づく製品は、当社が100%権利を引き継ぎ、製造販売を継続してまいります。
新たに締結した重要な契約は次のとおりです。
・業務提携契約
(注)用語解説については、「第4提出会社の状況 4コーポレート・ガバナンスの状況等」の末尾に記載しております。
当社グループは、製品開発型のバイオベンチャー企業として、当社グループ独自の技術による他社との差別化を図るために、経営資源を体外診断用医薬品関連へ積極的に投資しております。当連結会計年度における研究開発費は、抗体関連事業において、
研究開発活動
①診断・試薬サービス
当サービスでは、今までに研究用試薬として販売していたELISA測定キットのうち、診断に向け測定価値の認められるものを体外診断用医薬品原料や体外診断用医薬品登録に向けて開発を行ってまいります。既に国内外での登録を視野に入れ、海外他社との連携も開始しており、今後、生産量に応じた収益を見込んでまいります。
イ 学校法人埼玉医科大学が所有する、難聴・めまいの原因を生化学的に診断できる世界初のバイオマーカー「CTP(cochlintomo-protein)」に関する発明を元に、体外診断用医薬品としての薬事申請・販売の権利を株式会社コスミックコーポレーションに譲渡しました。その後、2020年6月に体外診断用医薬品承認され、さらに、2022年7月1日付で、外リンパ瘻を疑う患者に対して、診断の補助を目的として保険収載(保険点数:460点)されました(2022年8月3日発表)。当社は本品の製造を担当いたします。
外リンパ瘻患者は突発性難聴やメニエール病などの症候学的に診断されている疾患に潜伏していることも多く、似通った症候を示す外リンパ瘻が見落とされるケースが発生しております。その患者数は正確には算出されておりませんが、潜在的に外リンパ瘻患者が含まれていると考えられる、めまいなどの有訴者数は約400万人にものぼると算出されており、外リンパ瘻の疑われる患者に対して本CTP ELISA「コスミック」を用いることにより正確な診断が可能になることが期待されます。
さらに、当社は、学校法人埼玉医科大学と簡便性・迅速性に優れたイムノクロマト法によるCTP測定試薬の開発を共同で行っております。
ロ グルカゴンは、膵臓のランゲルハンス島のα細胞から分泌されるホルモンで、血糖調節因子として知られておりますが、ELISA法による測定は類似ペプチドの交叉による影響を受けやすく、正確な測定が難しいとされてきました。両断端に特異的な2抗体を用いた膵グルカゴン特異的測定系の開発により、血中グルカゴン濃度の正確な評価が可能となり、今後、糖尿病の病態や病気を診断するための独立した新しい指標となる可能性が示唆されています。
当社は、群馬大学と共同で、血清中グルカゴン値を測定する体外診断用医薬品として、2025年3月期の承認申請に向けて研究開発を行っております。
ハ 神経筋疾患患者の尿中に存在するタイチンというタンパク質に対するELISA測定キットを開発し、神経筋疾患の病気診断・病態のモニタリングマーカーとして、2025年3月期の販売承認申請を目指し、研究開発を行ってまいります。また、販売承認の申請までの間、研究用試薬として販売をするために、認定検査試薬としての確認申請を行い、承認されましたので、認定検査試薬として販売を開始しております。タイチンは神経筋疾患のみならず、老化に伴うサルコペニア、フレイル等の疾患との関係も示唆されており、対象疾患の広がりが期待されています。
ニ 赤痢アメーバ症は赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)という寄生性の原虫が原因となって引き起こされる病気で、日本国内において、2012年以降、感染症法に基づく報告数は900例を超えてきており、増加傾向にあります。
そこで当社は、簡便な血液検査で赤痢アメーバ感染の有無をチェックできる体外診断用医薬品の開発を行っておりましたが、体外診断用医薬品(製品名:赤痢アメーバ抗体 ELISA-IBL)の製造販売承認を取得いたしました。現在、保険適用に向けて準備をしており、保険適用後、販売を開始致します。
ホ シスメックス株式会社との業務提携により、両社の診断薬開発技術の相互利用を進めることで、より独創的で高品質な製品を開発し全世界に向けて提供することを目指しております。本業務提携によりIBLは、自社の特長ある抗体ライブラリをシスメックスのHISCLをはじめとする測定プラットフォーム向けに最適化し、診断薬原材料として供給することが可能になります。またIBLの強みである抗体開発技術を活かしてグローバル市場の様々な診断ニーズに対応した抗体を開発し、シスメックスへの供給を通じて診断薬市場向け事業を拡大します。
現在、数品目の診断薬原料候補の抗体やたんぱく質の共同開発を行っております。詳細につきましては、守秘義務があるため、開示しておりません。
②検査サービス
当サービスは、秋田解析センターにおける「LipoSEARCH」を主とした研究検査と登録衛生検査所「IBL解析センター」による検査で構成されております。
秋田解析センターでは、生活習慣病領域での創薬・研究支援に加え予防・診断支援などに特化した事業を行っております。特に、世界で唯一の高感度ゲルろ過高速液体クロマトグラフィーを用いた血中リポタンパク質詳細プロファイリングサービス「LipoSEARCH」は、最先端のリポタンパク質解析技術として、当領域の専門研究機関・製薬企業・食品企業における研究・開発及び創薬支援として広く利用されております。
本「LipoSEARCH」は、血中の各リポタンパク質の粒子サイズにより分画した波形データ(クロマトグラム)と、各分画におけるコレステロール量と中性脂肪量を提供する事により、病態や薬剤投与の影響によるリポタンパク質プロファイルの全体的かつ詳細な変化をとらえることができます。
さらに、伴侶動物(ペット)向けの脂質代謝関連疾患検査サービス「LipoTEST」を動物病院の獣医師を経由して飼い主様に提供しております。
また、IBL解析センターでは、診断試薬サービスで開発された独自のELISA測定キットを用いた研究検査の受託測定を実施しており、生活習慣病関連疾患や老化関連疾患領域での総合的な支援を推進しております。
このように、当社グループはヒトから伴侶動物に至るまで、豊富な研究ネットワークを有して、総合的な支援を通じた医療貢献を目指しております。
③TGカイコサービス
遺伝子組換え手法によりカイコの繭に生産させた各種抗体等のタンパク質の販売を行っております。また、株式会社ニッピとの共同研究により、iPS細胞等の培養足場材として有効であるラミニン511-E8の生産にも成功し、研究用試薬としての販売も実現しております。遺伝子組換えカイコで生産したラミニン511-E8(iMatrix-511 silk)は、機能および価格的優位性から、多くの研究者の皆様に利用いただいております。また、化粧品原料「ネオシルク®-ヒト型コラーゲンⅠ」につきましても、美容機器製品等の開発に成功したイタリア法人の303 Pharma との間でOEM契約を締結し、同社の自社ブランド製品として提供してまいります。
また、当サービスにおいては、ヒト感染性の病原体を持たないカイコを用い、組換え型の血漿フィブロネクチン(Fibronectin Neosilk®,Plasma)と細胞性フィブロネクチン(Fibronectin Neosilk®, Cellular)の生産技術を開発し、研究用試薬として販売を開始しました。
フィブロネクチンは、代表的な細胞外マトリックスタンパク質の一つであり、細胞の接着・伸展、移動、増殖および分化等を制御することから、間葉系幹細胞をはじめとする各種培養細胞の足場材として再生医療領域での研究等に使用可能です。また、本製品は、遺伝子組換えカイコの繭から精製するために動物由来成分の混入が無い、いわゆるXeno-freeであることから、安全性の高い製品としても期待されています。
(注)用語解説については、「第4提出会社の状況 4コーポレート・ガバナンスの状況等」の末尾に記載しております。