文中における将来に関する事項の記載は、本書提出日(2024年6月26日)現在において当社グループが判断したものです。
① 経営方針
当社グループは、「我々は勇敢に技術革新を追求し 人格を養い能力を高め社会の発展に寄与する」という創業の精神(綱領)に基づきながら、時代時代で生まれてくるお客さまの商品と同様に、当社グループも常に、新しい技術への挑戦と革新を続けることで、時代の変化に対応してきました。また、新しい市場、お客さま、商品技術に関わることで、当社グループの成長につなげるとともに、世界中での仕事を通じて個人の見聞を広げ、個人の能力を高め、世界で競争できる能力を高めてまいりました。
さらに、2022年には中期経営計画(2022年度~2024年度)の公表と同時に、70年を超える歴史の中で積み重ねてきた当社の経営哲学を集約した「人技幸献」というスローガンを公表しました。これは「Hirataに関わるすべての人を幸福にするとともに、社会に技術で貢献する」という意味であり、 Hirataは技術があってこそ、技術は人(社員)があってこそ、Hirataは働く社員の幸せがあってこそ存在するということを表現したものでもあります。
このような経営方針のもと、今後もあらゆるステークホルダーの皆さまとのコミュニケーションを深めながら、企業の持続的な成長に向けて取組んでまいります。
② 外部環境認識
当社が成長市場と位置付けている市場への設備投資は、足元の変動はありながらも拡大傾向にあります。自動車市場は各メーカーのEVに対する投資に一服感があるものの継続した設備投資があり、半導体市場は在庫調整期間を経て底を打ったとの認識で市場が拡大すると見込んでおります。また、米国においては、インフレ抑制法(IRA)と、経済安全保障政策により、設備投資が促進されております。それ以外の世界諸国においても投資促進策が施行されております。
そのような市場拡大の一方で、エネルギー価格の高騰や物価上昇、為替の円安進行の影響は、当社事業における調達品価格と人件費の上昇、人材確保に大きな影響を及ぼしており、収益性の向上に向けた重要な課題と認識しております。このような社会的要請への対応策として、調達品価格の上昇に対してはサプライヤーさまとの共存共栄を目指し価格転嫁を受け入れるとともに、付加価値向上への取組みにより、当社がお客さまから受注する価格を引き上げることに取組んでおります。また、人件費の上昇、人材確保に対しては、物価高騰を上回る賃金上昇を実施し、事業戦略の実現に必要な人的資本への積極的な投資の機会と認識しております。さらに、円安進行に対しては、海外向け設備における価格競争力につながっており、競争状況に応じて戦略的なシェア拡大に取組んでおります。
③ 中期経営計画の取組み状況
中期経営計画(2022年度~2024年度)においては、当社グループとしての経営基盤を固め、既存事業で利益を出しながら、成長市場でのビジネス拡大を図る3年間と位置付け、2025年3月期の売上高1,000億円、営業利益100億円、営業利益率10%、ROE11%を数値目標に掲げております。本中期経営計画の数値目標に対して、当期は売上高828億39百万円、営業利益60億47百万円、営業利益率7.3%、ROE7.0%となりました。なお、資本コスト(WACC)6.1%に対して、売上債権増加と工場設備投資による固定資産増加により、投下資本が増加したことに加え、物価上昇による利益押し下げの影響により、投下資本利益率(ROIC)は6.3%となりました。セグメント別の実績は、次のとおりです。
2022~2024年度セグメント別の売上高・営業利益の目標と実績 (単位:億円)
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セグメント |
中計最終年度目標 (2024年度) |
1年目実績 (2022年度) |
2年目実績 (2023年度) |
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売上高 |
自動車関連 |
400 |
302 |
369 |
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半導体関連 |
400 |
289 |
273 |
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その他自動省力機器 |
200
|
169 |
160 |
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その他(消去含む) |
22 |
23 |
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合計 |
1,000 |
784 |
828 |
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営業利益 (営業利益率) |
自動車関連 |
20 (5%) |
15.5 (5.1%) |
16.5 (4.5%) |
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半導体関連 |
60 (15%) |
34.4 (11.9%) |
44.5 (16.2%) |
|
|
その他自動省力機器 |
20 (10%)
|
9.3 (5.5%) |
1.1 (0.7%) |
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その他(消去含む) |
△0.1 (△0.7%) |
△1.7 (△7.3%) |
||
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合計 |
100 (10%) |
59.2 (7.5%) |
60.4 (7.3%) |
(注)「2023年度 決算説明資料」にて、2024年度の通期業績予想の営業利益と、中期経営計画で定めた営業利益の差異要因について、ご説明しております。詳細につきましては、以下をご参照ください。
https://www.hirata.co.jp/files/optionallink/ns_20240510_02.pdf
中期経営計画の基本方針と施策に対する実績と課題への対応策は、次のとおりです。
(1)成長市場でのビジネス拡大
自動車関連については、
・2023年後半より北米市場におけるEV販売台数の伸びが踊り場に入りましたが、当社は高性能なICE(内燃機関)にも柔軟に対応できる設計思想により、ICE、EV双方において変動する需要を取込んでおります。
・物価上昇に対応して2023年度の新規受注案件から本格的に価格転嫁の取組みを推進しております。
・持続的な収益拡大のため、人材・生産能力への先行投資として、人員採用数増、適切な人員配置、関西工場建替、七城工場増築等を実施し、量産効果が見込める設備の開発・改良に優先的に取組んでおります。
・注力分野であるEVバッテリーについては、充放電関連の大型案件を受注しております。また、中長期的な収益拡大に向けて、次世代バッテリー・燃料電池関連の量産効果を向上させるべく、標準モジュールを確立することに取組んでおります。さらに、新たに専門部署を設置し、お客さまの製品開発段階から参画することで、期待されるスペックを低コストで効率よく実現できる体制作りに取組んでおります。
・中期経営計画で目標に定めたキーデバイスの開発・改良における自動倉庫の改良、Dual Head Wire Bonding Machine、AGVの改良、Plant Simulationについては、2022年度に目標を達成しました。その開発成果から、Plant simulationについては、バッテリー組立・検査ライン、充放電ライン、EDU組立ライン、AGV・AMR(注)搬送システム等の成長市場における営業段階において、当社生産ラインだけでなく工場全体のモノの搬送の流れを解析し生産最適化する「物流解析ツール(搬送シミュレーション)」を積極的に導入し、お客さまに完成した動的イメージをご提案することで、大型で複雑な案件の受注につながっております。なお、開発未完了の充放電機については、専業メーカーとのパートナーシップにより、内製化から外部調達に切り替え、市場シェア拡大を優先しております。さらに、新たな開発品として、従来の無人搬送レベルから自律搬送レベルに機能を高度化したAMRを開発しております。
(注)AGV:Automatic Guided Vehicle(無人搬送車)
AMR:Autonomous Mobile Robot(自律走行搬送ロボット)
半導体関連については、
・生成AI向けの後工程装置や、EV車載向けパワー半導体をはじめとするレガシー半導体の投資が活性化したことにより、受注が増加傾向となっております。生産能力の拡大に向けては、海外関係会社と協力体制を構築しており、既存の中国・台湾に加え、東南アジア(マレーシア)においても連携を強化しております。
・中国においては当社と中国関係会社の間で、ロードポートの技術ライセンス契約を締結し、現地生産を拡大しております。地産地消により、輸送コスト削減、リードタイム短縮、貿易リスク回避を図っております。
・半導体需要が変動する中で、納品までのリードタイム短縮は継続的な課題と認識しており、サプライヤーさまによる協力に加え、DXの推進等による生産能力の向上と部材の入手性向上に取組んでおります。
・半導体関連生産設備の新規開発を加速させ受注拡大を目指すため、SEMI規格に準拠した標準ソフトウェアを開発・内製化しております。なお、このソフトウェア開発は、つながる工場化の脅威である、制御システムへのサイバー攻撃リスクを低減するOperation Technologyセキュリティへも対応しております。
その他自動省力機器・その他については、
・事業ポートフォリオの見直しという観点において、家電メーカー向け組立設備、医療・理化学機器等、高付加価値が見込まれる分野を見極めながら開発および生産を実施しております。
・医療・理化学機器においては、新分野への参入に注力しております。集束超音波技術および業界知見を持つソニア・セラピューティクス社と業務提携し、切除不能の膵がんを対象に、当社ロボットを組み込んだ治験用の集束超音波がん治療装置を共同開発し、国内病院に納入しております。今後は、国内向けの量産装置の開発、量産体制の構築、海外向けの臨床試験装置の開発を進めてまいります。
・新規事業創出や事業領域拡充を目指した取組みとして、かねてより取組んできた植物遺伝資源研究が事業化の体制構築段階へ移行しており、「ぷらんつプロ」という当社独自のサービスを開始しました。本サービスを通じて、植物遺伝資源提供国における社会的課題の解決に貢献するとともに、当社は遺伝資源の提供国と利用者との橋渡し役を目指すことで、事業と社会課題解決の両立を図ってまいります。
(2)グローバル企業としての競争力強化
・お客さまの地産地消のニーズに加え、物価上昇、人件費上昇等の経営環境変化に対しても、海外関係会社と連携強化し、定期的な教育・指導の実施や、連携案件を拡大させております。
・関係会社の事業ポートフォリオについて、高付加価値が見込め、量産が見込める分野へのシフトを図っております。中国の関係会社においては、これまで自動車関連設備を中心としてきましたが、半導体関連にも注力し、事業領域の拡大を図っております。
・当社グループの相乗的な企業価値向上に向けては、関係会社の経営体制およびレジリエンスを強化することが喫緊の課題であると認識しており、2023年度はその課題解決の前提となるグループガバナンス基本方針を社内向けに策定して活動開始しました。2024年度は、グループ経営体制のあり方を見直し、関係会社を統括するグループ本社としての機能を高度化する活動に注力してまいります。
(3)ESG経営の取組み強化
・中長期的な経営戦略と連動させながら全社的な取組みとして推進していくため、サステナビリティ推進委員会を設置しております。代表取締役社長が委員長を務め、適宜社外取締役や外部有識者の意見も取り入れながら、当社グループのサステナビリティ活動の推進を図っております。取組み状況については積極的に開示し、ステークホルダーの皆さまとの対話強化に取組んでまいります。
詳細については、「2.サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。
(4)ニューノーマル時代に即した経営の実現
・基幹業務をカバーする情報システム(PLM・ERP)については、2025年本稼働に向けたシステムの検証を進めております。製品の設計情報をライフサイクルに合わせて管理するPLMを導入することで、さらなる業務効率の向上、生産手法の最適化、品質の向上、保守ビジネスの拡大等が実現されることを目指しております。
・物流解析の推進、エミュレータの積極的な活用とリモートによる事前検証・出荷前検収により、生産効率の向上を図るとともに、お客さまへの提供価値の拡大につなげております。エミュレータは活用する事業分野の拡大と機能向上を進めており、検証や検収等での活用だけでなく、新たなサービスとして位置づけ、収益を生み出しております。
・VR・ARなどXRは導入が進み、さらなる活用拡大を検討しております。ARの具体的な取組みとして、組立・メンテナンスにおいてARを用いた作業マニュアルを導入することにより、メンテナンス作業の生産性向上、作業者の効果的な設備技術習得・トレーニングを実現することを目指しております。
・「デジタル化の進展への対応」はマテリアリティの一つとしても掲げており、サステナビリティ推進委員会においてもワーキンググループを立ち上げ、取組みを強化してまいります。
当社は、事業を通じて持続可能な社会の実現に寄与することを使命と認識し、すべてのステークホルダーに対する社会的責任を果たしながら、事業成長し続けるという両立視点を起点としたサステナビリティ基本方針を策定しております。この方針の下に、「気候変動への対応」、「持続可能な社会の構築」、「人を活かす」、「経営基盤の強化」のテーマにおいて、マテリアリティを特定し、取組みを推進しております。
<サステナビリティ基本方針>
Hirataグループは、当社に関わるすべての人を幸福にし、持続可能な社会の構築に貢献することを目指しています。そのために、私たちは、創業の精神「綱領」に基づく、人間尊重の精神と地球環境に配慮した製品・サービスの提供を通じ、経営の透明性と健全性を確保しながら、事業成長と社会課題解決の両立に取組みます。
2023年度からサステナビリティに関する取組みを本格稼働し、各マテリアリティにおける2030年目標達成に向け取組んでまいります。
サステナビリティに関わる活動については、ESG全般の取組みについての外部評価機関「EcoVadis」や国際的な環境非営利団体(NGO)である「CDP」による定期的な評価を受けることで、進捗の客観的評価を確認しております。
なお、EcoVadisによる2024年サステナビリティ調査において、「ブロンズ」評価(総合得点:57点)を獲得しました。
(1)サステナビリティ
①ガバナンス
当社はサステナビリティ基本方針に基づき、気候変動を含むサステナビリティ経営を推進するために、サステナビリティ推進委員会を設置しております。代表取締役社長が委員長を務め、適宜社外取締役や外部有識者の意見も取り入れるとともに、委員会の下にワーキンググループ(以下、WG)を立ち上げ、当社グループのサステナビリティ活動の推進を図っております。サステナビリティ推進委員会は当社のサステナビリティに関する目標・方針の策定および課題についての審議、活動に対する進捗状況の確認をおこない、マテリアリティの取組み推進は、2023年度の取締役会重点テーマの一つとして取締役会の監督を受けております。事務局は経営企画部が担当し、原則、年に2回以上開催します。2023年度はサステナビリティ推進委員会の初年度のため年に4回開催し、2024年度も年に4回開催予定です。
<サステナビリティ推進委員会体制>
(注)2023年度時点の体制図
<当社のサステナビリティに関する主な議論>
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取締役会 |
2022年2月 マテリアリティ特定 |
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2022年4月 サステナビリティ基本方針決議 |
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2022年10月 人権方針決議 |
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2023年6月 サステナビリティ推進におけるHirataグループの目指す姿・目標決議 |
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2023年7月 国連グローバル・コンパクト賛同表明について |
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2023年8月 第二回サステナビリティ推進委員会報告 |
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2023年11月 第三回サステナビリティ推進委員会報告 |
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2023年12月 Hirataグループ行動規範策定 |
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2024年2月 第四回サステナビリティ推進委員会報告 |
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2024年5月 第五回サステナビリティ推進委員会報告 |
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経営会議 |
2022年11月 TCFD賛同表明について |
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2023年10月 行動規範等の改正について |
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サステナビリティ推進委員会 |
2023年4月 各マテリアリティの活動計画、サステナビリティ推進規程の新設 |
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2023年7月 各WG活動の進捗報告 |
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2023年10月 各WG活動の進捗報告、2030年目標決議 |
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2024年1月 各WG目標決議および一部改正、来年度の計画と予算決議 |
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2024年4月 各WG活動の進捗報告 |
②戦略
中期経営計画においては、「ESG経営の取組み強化」を基本方針の一つとして掲げています。4テーマ・10項目から成るマテリアリティに対して、サステナビリティ推進委員会が主導して目標および指標を設定し、進捗を確認してまいります。
<マテリアリティ>
中長期的には、2030年において当社グループでサステナビリティへの取組みが定着し、事業課題と社会課題解決の両立という経営が成り立っていること、2050年にはサプライチェーン全体を巻き込んだサステナビリティ推進により、当社に関わるすべての人の幸福と持続可能な社会の構築に貢献していることを目指す姿としております。
また、2015年のパリ協定採択を機に気候変動問題に関する世界的な関心が急速に高まる中、綱領において「社会の発展に寄与すること」を使命とする当社は、2016年に環境方針を改定し、CO2排出量削減や環境負荷低減に貢献する商品の普及を通じた社会の発展と、気候変動問題をはじめとする環境問題解決の両立を目指しています。
2022年に「気候変動関連財務情報開示タスクフォース」(Task Force on Climate-related Financial Disclosures:TCFD提言)に賛同を表明しました。気候変動が経営にもたらす「リスク」「機会」について特定・分析・評価するとともに、株主・投資家をはじめとするステークホルダーの皆さまとのエンゲージメント(建設的な対話)に資する情報開示の充実に取組んでいます。
当社グループでは、シナリオ分析を通じ、IEAなどの科学的な情報に基づく1.5℃/4℃シナリオにおける2030年、2050年での当社グループとお客さまの業界への変化を把握し、気候変動リスク・機会を分析しました。
分析の結果、1.5℃上昇の将来社会像を踏まえ、当社グループでは省エネ製品の需要増加によるビジネス機会が大きくなる一方で、4℃では物理的リスクの影響が大きくなると認識しています。
これらの分析結果を踏まえ、当社グループは認識したリスクに対処しながら機会を最大化するための取り組みを実現性の高いものから順次検証し、経営戦略への反映・統合を推進していきます。
気候変動への対応については、以下をご参照ください。
https://www.hirata.co.jp/sustainability/esg/climate
CO2排出量削減への対応
当社は、2050年サプライチェーンも含めた事業全体でのカーボンニュートラルを目標としております。その目標を達成すべく、2023年1月にサステナビリティ推進委員会にてScope1,2についての目標を設定しました。目標につきましては、「④指標および目標」に記載しております。
また、サプライチェーンも含めたカーボンニュートラルを達成すべく、Scope3の現状把握にも注力しております。当社では15のカテゴリのうち大部分を占めるカテゴリ1(購入した製品サービス)、カテゴリ11(販売した製品の使用)を最優先(注)とし、WG活動の中で排出量の把握、削減目標策定などを検討してまいります。
(注)概算で算出したデータに基づく優先順位を設定しております。
③リスク管理
当社グループでは、サステナビリティ推進委員会が中長期の気候変動に関するリスク・機会の識別・評価、管理をおこないます。シナリオ分析において、関連するパラメータを抽出してリスク・機会を識別し、定期的に評価を実施します。また、各リスク・機会の財務的インパクトを定量的に評価することで、リスク・機会の管理をおこないます。
さらに、全社的なリスク管理体制を統括するリスク管理委員会では、社内外の要因により、当社グループの事業目標の達成または持続的な経営に影響する可能性がある事象に対処するため、サステナビリティ関連リスクを含む全社的なリスクについて包括的な評価を行い、その対応計画を承認するとともに、定期的なモニタリングをおこなっております。
なお、全社的なリスク管理の概要につきましては、「
④指標及び目標
サステナビリティ推進委員会において、マテリアリティに対する指標および目標を決議しております。
<マテリアリティ、目標・KPI>
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テーマ |
マテリアリティ(重要課題) |
主な取組み |
2030年目標・主なKPI(注) |
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気候変動への対応 |
①自社およびサプライチェーン上の環境負荷低減 |
・環境負荷の低減 ・温室効果ガス排出量の削減 ・資源循環社会の推進 |
・カーボンニュートラル達成(Scope1,2) ・水使用量を実質生産高比1%/年以上の削減 |
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②製品・サービスによるカーボンニュートラルへの貢献 |
・カーボンニュートラル市場の拡大 |
・エコ電動シリーズにおける売上拡大 |
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持続可能な社会の構築 |
③社会変化に伴う新たな顧客ニーズの創出 |
・社会変化に伴う新たな顧客ニーズの探索や改良の取組み |
・バッテリーおよび燃料電池関連での売上拡大 ・半導体関連の売上拡大 |
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④デジタル化の進展への対応 |
・デジタル化の進展への対応 ・スマート社会に向けた基盤の整備 |
・基幹システム入替による業務の効率化(30%削減) ・一人当たりの年間業務時間3%削減 |
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人を活かす |
⑤人材確保・育成 |
・人材確保・育成 ・DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン) |
・エンゲージしている人の割合20% ・女性従業員に占める管理職比率を男性従業員に占める管理職比率と同等にする ・障がい者雇用率 法定雇用率+0.3% |
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⑥多様で安全安心な職場づくり |
・ワークライフバランスの向上 ・安心して働ける安全な職場づくり |
・健康経営の取組み強化(ホワイト500の取得) ・労働災害度数率0.4以下 |
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経営基盤の強化 |
⑦製品安全・品質の向上 |
・製品安全・品質の向上 |
顧客満足度調査にて ・回答回収率90%以上 ・調査結果の加重平均4.5点以上 ・製品による重大事故発生0件の継続 |
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⑧サプライチェーンマネジメント |
・サプライチェーンマネジメント ・人権尊重 |
・CSR調達アンケート3.7点未満のサプライヤー数ゼロ(取引額上位90%) |
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⑨コーポレート・ガバナンスの強化 |
・ステークホルダーエンゲージメント ・コーポレート・ガバナンスの強化 |
・重大な法令違反件数ゼロ ・コンプライアンス重点項目に対する違反件数ゼロ |
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⑩リスクマネジメント |
・公正な取引に向けたコンプライアンス遵守 ・リスクマネジメント ・財務資本の健全性の維持 |
(注)本書提出日(2024年6月26日)時点では、平田機工単体を対象としております。今後は連結子会社も含めた目標・KPIの検討をおこなう予定です。
(2)人的資本
①戦略
<人材育成方針>
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当社では、会社が目指す姿として策定したスローガン「人技幸献」のもと、主体的に学び、一丸となって挑戦し続ける人材の育成を目指しています。 具体的には、従業員一人ひとりが自身の専門性や個性を最大限に活かして挑戦できるよう、経験やスキルに応じた階層別研修や技術専門研修を実施しています。 今後は、長期的な視点で当社の成長に必要な人材育成を目指し、多様な人材のキャリアを支援する研修プログラムや人事異動の活性化や適正な評価の推進などにより、高い技術力・専門性を持った人材に加え、グローバル人材、マネジメント人材の持続的な育成を推進してまいります。また、自己啓発支援制度の充実により、従業員一人ひとりが自己の夢や目標に向かって、自己の人格や能力を高め、自身の可能性へ挑戦し続ける環境・風土の醸成に、積極的に取組んでいきます。 |
<社内環境整備方針>
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当社では、多様なキャリア・社会的背景(性別、年齢、国籍、障がいの有無、ライフスタイル等)を持つ従業員が、仕事を通じて成長を実感し、やりがいや誇りを持って働き、幸せを感じられるような環境づくりを目指しています。 また、従業員の主体的なキャリア形成支援に向けた、ジョブローテーションの活性化推進、従業員が働きがいややりがいを実感できる評価・報酬制度の構築、健康経営を目指した取組みとして、時間外労働の削減等を通じたワークライフバランスの実現や、健康管理センターの体制強化など、多角的な環境づくりに取組んでまいります。 |
従業員エンゲージメントの向上
上記社内環境整備方針を実現するためには、現状や課題を把握する必要があり、客観的なデータを取得するため、「従業員エンゲージメント調査」を毎年実施しております。2023年度は、約1,100名の従業員を対象に調査を実施し、86%の従業員から回答を得ました。
今後、全社的な課題・各組織の課題を把握し改善していくことで、従業員一人ひとりが成長を実感し、やりがいや誇りを持って働ける風土や環境づくりを目指してまいります。
ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)
当社は、挑戦する一人ひとりが、「個性」を認められ、互いに尊重しあい、成長を実感し、人生が輝くような企業集団を目指し、DE&I推進の取組みを強化しております。2030年に向けては、ジェンダーおよび障がいのある社員に関する目標を設定し、各種施策に取組んでおります。
特にジェンダーに関する施策は、各種研修の実施、女性従業員の交流の場作りに加え、男性従業員の育児への参加を推奨する取組みなど、推進を強化してまいります。
②指標及び目標
当社は上記「①戦略」において記載した、人材育成方針および環境整備方針について、次の指標を掲げており、目標・実績は以下のとおりです。
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指標 |
目標( |
実績(2023年) |
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エンゲージしている人の割合 (心理的に「当事者意識」を持ちパフォーマンスと革新を推進し、組織を前進させている人の割合。) |
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男性従業員に占める管理職の割合と同等 |
女性 男性 20.4%
(参考:女性管理職比率 6.1%) |
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法定雇用率+0.3% |
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(注)1.いずれも提出会社における目標および実績数値です。
2.障がい者雇用率の実績は、「障害者雇用状況報告書」の最新値(2024年6月1日現在)で示しております。
(3)人権尊重の取組
当社グループは、自国および事業をおこなう国・地域に適用される法令を遵守し、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」のほか、人権尊重に関する国際規範等を支持、尊重します。
<人権方針>
1.強制労働の禁止
私たちは、強制労働を行わず、労働者が雇用を自ら終了する権利を守ります。また、人身売買を含む、いかなる形態の現代奴隷も許容しません。
2.児童労働の禁止
私たちは、最低就業年齢に満たない児童が働くことを認めません。また、18歳未満の若年労働者を健康や安全が損なわれる可能性のある危険業務に従事させません。
3.労働時間への配慮
私たちは、従業員の働く国・地域での法令を遵守したうえで、国際的な基準を尊重し、労働時間・休日・休暇を適切に管理します。
4.適切な賃金と手当
私たちは、各国・地域の最低賃金、時間外労働賃金、法定給付を含む従業員の報酬に関するすべての法令を遵守します。
5.非人道的な扱いの禁止
私たちは、従業員の人権を尊重し、従業員に対する精神的・肉体的な虐待、ハラスメントなどの非人道的な扱いならびにそのような可能性のある行為の発生を防止し、発生した場合には迅速に適切な対応をとります。
6.差別の禁止
私たちは、人種、肌の色、年齢、性別、性的指向、性自認、民族、国籍、障がいの有無、妊娠、宗教、政党・政治的見解、組合員であるかどうか、軍役経験の有無、保護された遺伝情報、結婚歴の有無、疾病の有無などにもとづく、あらゆる差別を禁止します。
7.結社の自由と団体交渉権
私たちは、各国・地域の法令を遵守したうえで、労働環境や賃金水準などの労使間協議を実現する手段として、従業員の結社の自由と団体交渉権を尊重します。
8.労働安全衛生
私たちは、従業員の働く国・地域での法令を遵守したうえで、国際的な基準を尊重し、従業員の業務に伴うケガや心身の病気を最小限に抑え、安全で衛生的な作業環境を整えます。
①ガバナンス
2023年度より、人権尊重のための体制づくりとして、熊本(および東京オフィス)、関東、関西の3拠点にそれぞれ人権啓発推進責任者、人権啓発推進担当者を選任し人権啓発推進体制を構築しました。また、サステナビリティ推進委員会にて「人権尊重WG」を設立し、当社グループおよびサプライチェーンでのより一層の取組強化に注力いたします。
<人権尊重推進体制>
②戦略
当社グループは、サステナビリティ基本方針に基づき、事業に関わるすべての人の基本的人権を尊重するために、2022年度にグローバルで実践する人権方針を制定しました。人権方針は、取締役会決議を経て定め、当社グループのすべての役員・従業員に適用します。また、人権方針に基づく人権尊重の取組みについては、JEITA「責任ある企業行動ガイドライン」などを参考に、人権尊重に向けた「人権方針」ガイドラインを制定し、サプライヤーさまを含むすべてのビジネスパートナーの皆さまにも賛同と実践をお願いしています。
当社グループは、グローバルに事業を展開しており、国内外のステークホルダーの人権に配慮した事業活動が重要であると認識しており、人権デュー・ディリジェンスによる人権リスクの把握、予防・軽減をおこなってまいります。
③リスク管理
2023年度は平田機工株式会社を対象とした「人権アセスメント」の実施をおこないました。当社の人権アセスメントは、強制労働の禁止、児童労働の禁止、労働時間への配慮、適切な賃金、非人道的な扱いの禁止、差別の禁止、従業員の団結権、安全・健康な労働環境をアセスメント項目としております。アセスメントの結果、「人権に関する教育の定期的な実施」と「移民労働者を含むすべての従業員に対する差別禁止教育の実施」が不十分と評価されました。
本結果に対する是正措置として、2024年3月に全従業員に「人権方針」ガイドラインの理解度テストを実施しております。
今後は人権アセスメントの対象を連結子会社やサプライヤーさまに拡大する予定です。なお、当社における人権アセスメントは隔年で実施する予定です。
人権相談窓口
各拠点の人権啓発推進担当者は社内での人権相談窓口も兼ねており、すべての従業員が人権に関する相談を気軽におこなえる風土づくりに努めています。それぞれの通報窓口は「改正公益通報者保護法」に準拠した体制を整備し、通報情報者の守秘義務や通報を理由とする不利益な取扱いの禁止を定めています。
[リスク管理の方針・概要]
当社グループは、全てのステークホルダーのご期待に応えるため、また企業としての社会的責任に応えるため、事業活動に関わる種々のリスクを的確に把握し、適時適切に対応することで経営への影響を低減することが肝要と考えております。
なお、リスク管理の概要につきましては、「第4 提出会社の状況 4.コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ③ 企業統治に関するその他の事項」に記載しております。
[主要なリスク]
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響をおよぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
また、文中における将来に関する事項の記載は、本書提出日(2024年6月26日)現在において当社グループが判断したものです。
(1)市場環境等の変化に係るリスク
当社グループは、自動車をはじめとするEV関連・半導体・家電関連企業など多分野にわたる製品の生産企業から自動省力機器を受注しております。そのため、国内外の経済動向の変化、顧客製品のライフサイクルが下降トレンドに入ること等によって、これら顧客の設備投資状況に変化が生じた場合、当社グループの業績および財務状態に影響をおよぼす可能性があります。
また、原材料の供給不足による生産計画の遅延、資源価格や原材料価格の上昇、人材不足による労務コスト上昇などが発生した場合、当社グループの業績および財務状態に影響をおよぼす可能性があります。
当社の技術力は顧客から高い信頼を得ておりますが、予想を超える急激な技術革新に適切に対応できないような事態が発生した場合、受注が確保できないおそれがあり当社グループの業績および財務状態に影響をおよぼす可能性があります。
当社グループでは、これらのリスクへの対策として、あるひとつの事業分野が好調であっても、その事業のみに資本を集中させることを避け、複数の事業を並行して推進することによって、特定の事業分野における製品のライフサイクルの循環等による経営への影響を低減させております。
また、常に技術革新を図る意識を活性化するため、各事業部門による技術交流会の実施や技術賞の授与等によって技術者の意識の活性化を図るとともに、改善提案等によるコスト低減に取組み、顧客ニーズに見合う製品の開発、他社との競争に勝ち抜く体質の強化を進めております。
(2)法規制等に係るリスク
当社グループは、海外でも事業活動を展開するにあたり、日本のみならず各国・地域の各種法規制に適切に対応するよう努めております。
しかし、行政当局等との法令解釈の相違等によって、違反行為を犯したと判断が下された場合、過料や課徴金等による損失によって当社グループの業績や財務状態およびそれに伴う企業イメージに悪影響を与える可能性があります。
また、法規制等に改正等が生じた場合、その対応整備のために、多額の費用が発生する可能性があります。その結果、当社グループの業績および財務状態に影響をおよぼす可能性があります。
当社グループでは、Hirataグループ行動規範において、関係法令等を遵守する旨明記するとともに、コンプライアンス委員会の開催、コンプライアンスに関する各種研修および施策の実施、実態調査による確認等により、会社や従業員の法令違反の可能性を低減する取組みをおこなっております。
(3)重要な訴訟の発生に係るリスク
①知的財産権に係るリスク
当社グループが保有する知的財産権について、他社によって当社グループの権利が侵害されるリスクは常時存在し、侵害された場合には、当社グループのビジネスに悪影響を与える可能性があります。また、当社グループが、意図せず他社の知的財産権を侵害した場合には、他社の権利に基づく損害賠償請求や差止請求等の訴訟が発生する可能性があります。その場合には、多額の費用負担が発生し、当社グループの業績および財務状態に影響をおよぼす可能性があります。
当社は知的財産権管理の専任部署である知財部において、設備受注前の引合段階や、受注後の企画、設計および製造等の各段階において、事業部や開発部門と知財部とで連携して先願調査をおこない、当社の製品や製造方法が他社の知的財産権を侵害していないことを確認する等によって、他社が保有する知的財産権の侵害を未然に防いでおります。
②製造物責任に係るリスク
当社は、国際標準化機構(ISO)が定める品質管理基準に基づいて自動省力機器の生産をおこなっており、当該設備を使用する作業者の安全面についても、ハード・ソフトの両面における配慮に努めております。
しかし、万が一当該設備に欠陥が発生し、顧客に損害を与えた場合、製造物責任を追及される可能性があります。その結果、製造物責任訴訟等を提起される可能性があり、多額の費用負担の発生および企業イメージの悪化により、当社グループの業績および財務状態に影響をおよぼす可能性があります。なお、当社グループは企業総合賠償責任保険に加入しておりますが、事故の内容等によっては賠償額を十分に補填できない可能性があります。
当社では、前記の取組みの他、製品の納入先の国や地域が定めるCEマーキング、UL508A等の安全関連の基準を満たす設備を納入するとともに、社員や顧客に対しても安全面にも十分配慮した操作やメンテナンス方法の説明をおこなうことで、事故の発生を未然に防止する取組みをおこなっております。
(4)情報管理に係るリスク
強力なマルウェア(コンピュータウィルス等)の侵入等、予期せぬ事態によって情報漏洩・ランサムウェア等による情報セキュリティインシデントが起こる可能性を完全に排除することはできません。万が一、情報セキュリティインシデントが起きた場合、多額の費用負担の発生および企業イメージの悪化により、当社グループの業績および財務状態に影響をおよぼす可能性があります。
当社は、高度化する情報セキュリティの脅威に対応するため、クラウド環境・ネットワークを含む社内情報システムへの不正アクセスを防止するシステムの導入、情報セキュリティ基本方針、社内規程や対応マニュアルの見直し、当社グループの役員や従業員への教育、サイバー攻撃を想定した訓練、およびマルウェア感染対策の強化等を実施しています。万が一、マルウェア感染などの情報セキュリティインシデントが発生したとしても、迅速で適切な対応ができるようマニュアルを整備しています。
また、当社では、情報セキュリティ統括責任者を委員長とする情報セキュリティ委員会にて情報セキュリティ管理を推進する体制を構築し、定期的なアセスメントを通して、情報セキュリティ管理レベルの維持・向上に努めています。
(5)環境規制および気候変動に係るリスク
当社は、製品の省電力化を通し、設備稼働時のCO2排出量の削減を実現させるなど、環境に配慮した製品開発をおこなうとともに、品質や環境についても国際標準化機構が定める管理基準に基づいた生産活動をおこなっており、環境法令を遵守し汚染物質の漏洩防止や廃棄物の減量等、環境負荷の低減に努めております。
しかし、気候変動をはじめとした地球環境問題等による各国の環境規制強化等に適切に対応できなかった場合には、多額の費用負担の発生および企業イメージの悪化により、当社グループの業績および財務状態に影響をおよぼす可能性があります。また、当社が排出した有害物質等によって想定外の環境問題が発生してしまった場合、多額の損害賠償責任の発生および企業イメージの悪化により、当社グループの業績および財務状態に影響をおよぼす可能性があります。一方で、気候変動に対する環境規制強化等に伴い、顧客の工場で電動化と自動化が進み、工場・設備の生産性向上および省エネ性能を高める製品需要増加等の機会も想定されます。
当社は独自に定めた環境方針のもと、経営者、環境管理責任者をトップとした環境マネジメントシステム(EMS)推進体制を構築しております。この体制の下、環境負荷の把握・低減を進めるべく、地球温暖化対策、資源の有効活用、化学物質管理等について目標を定め、それぞれの目標に沿ってエネルギー投入量、水資源投入量、PRTR法対象物質使用量、CO2排出量、産業廃棄物排出量等の環境負荷を測定し、当社ウェブサイトにも結果を掲載しております。
なお、EUの有害物質規制であるRoHS指令、REACH規則などの国内外の化学物質関連法規制に対応するため、製品に含まれる化学物質の管理強化を進めております。
また、当社および子会社タイヘイテクノス株式会社においては、敷地内にそれぞれ1,000kw以上の電力容量を持ついわゆるメガソーラーと呼ばれる規模の太陽光発電システムを設置しており、環境負荷低減などの面から社会に貢献しております。
なお、中長期的な気候変動に対する対策については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。
(6)為替相場変動によるリスク
当社は、海外企業との取引に際し、契約条件によっては米ドルもしくは現地通貨にて会計処理をおこなう場合があり、その結果、円換算時の為替レートにより、為替差損益が発生する場合があり、為替相場の変動が当社グループの業績および財務状態に影響をおよぼす可能性があります。
当社では、海外の顧客との取引開始時点において円貨での取引を提案し、為替相場変動によるリスク回避に努めており、円貨での取引ができない場合には受注時点で為替予約等によるリスクヘッジの取組みをおこなっております。
(7)海外での事業活動に係るリスク
当社グループは、北米、欧州、アジアに子会社を置き、世界的な事業展開を推進しております。これらの子会社では、現地国の政治動向の急激な変化、地政学的要因、予想しない法律または規制の変更、テロ・紛争、感染症等による社会的混乱等の影響を受ける可能性があり、その結果、当社グループの業績および財務状態に影響をおよぼす可能性があります。
当社グループでは、定期的に、また必要に応じて当社と国内外の子会社との間で情報交換をおこない、各社の経営状況の他、周辺環境の変化等についても積極的に情報の共有を図り、問題の早期把握と対応に注力しております。
(8)災害等に係るリスク
それぞれの事業拠点において大規模な災害等が発生した場合には、工場設備や情報機器の損壊、電力・水道等インフラの停止、物流網の寸断等により事業活動の停止を余儀なくされる可能性があり、その場合、当社グループの業績および財務状態に影響をおよぼす可能性があります。
当社では、予期せぬ災害や大規模な事故発生等の問題が事業の継続を危うくするような事態を避けるために、事前に想定されるリスクを抽出し、そのリスクの防止、防衛、低減を図ることで事業継続、さらに顧客への影響を緩和するとともに短期間での事業回復を図るため、いわゆるBCP(事業継続計画)を設定し、災害等への対応に備えております。
BCP方針に基づき、平常時には、各種訓練や点検、教育等を定期的に実施することで各々の取り組みの有効性を確認しており、状況に合わせて適時マニュアル等を改訂する体制を構築しております。また、備蓄品の保管等をおこなうことで有事に備えております。災害等発生時には、モバイル機器等で即時に社員の安否確認がおこなえるシステムを導入しており、また、対策本部の設置、緊急連絡等がおこなえる体制を整備しております。
新たな感染症の急拡大が生じた場合には、BCP対策本部を立ち上げ、コロナ禍のノウハウを活かした感染防止対策に取り組んでまいります。
(9)財務制限条項に係るリスク
当社は2024年3月末日現在、多通貨での借入および海外関係会社の安定した資金調達を目的として、銀行1行との間に総貸付極度額45億円のグローバル・コミットメントラインの契約を締結しております。2024年3月末日の実行残高は10億42百万円であります。
同契約には、以下の財務制限条項が付されております。
①国内借入人に関し、当事業年度末日における連結貸借対照表に記載される純資産の部の合計金額を、
(i)2023年3月期末日における連結貸借対照表に記載される純資産の部の合計金額の70%に相当する金額、または(ⅱ)直近の事業年度末日における連結貸借対照表に記載される純資産の部の合計金額の70%に相当する金額のうち、いずれか高いほうの金額以上に維持すること。
②国内借入人に関し、連結損益計算書において、営業損益を2期連続して損失としないこと。
また、当社は2024年3月末日現在、多通貨での安定した資金調達を目的として、銀行1行との間に総貸付極度額15億円のコミットメントライン契約を締結しております。2024年3月末日の実行残高はありません。
同契約には、以下の財務制限条項が付されております。
①借入人は、当事業年度末日の連結貸借対照表における純資産の部の金額を、直前の事業年度末日の連結貸借対照表における純資産の部の金額の80%以上に維持すること。
②借入人は、連結損益計算書において、営業損益を2期連続して損失としないこと。
さらに、当社は2024年3月末日現在、資金調達の安定性を高めることを目的として、銀行2行を貸付人として、それぞれ総貸付極度額10億円と20億円のコミットメントライン契約を締結しております。2024年3月末日の実行残高はそれぞれ10億円と12億円であります。
上記の2つの契約には、以下の財務制限条項が付されております。
①借入人は、当事業年度末日の連結貸借対照表における純資産の部の金額を、直前の事業年度末日の連結貸借対照表における純資産の部の金額の70%以上に維持すること。
②借入人は、連結損益計算書において、営業損益を2期連続して損失としないこと。
当社が仮に上記のコミットメントライン契約およびグローバル・コミットメントライン契約の制限条項に抵触し、上記の契約による融資を受けられなくなった場合でも、同契約以外での融資を受けられる環境にあり、ただちに資金繰りが逼迫する事態となる可能性は低いと考えております。しかし、資金運用の効率性や、資金的な緊急事態の発生可能性を考慮すれば、上記の契約による融資は重要であり、それが受けられなくなった場合、当社グループの財務状態に影響をおよぼす可能性があります。当社グループの事業展開において、海外関係会社の安定した資金調達のためにはグローバル・コミットメントラインの契約は重要であり、財務制限条項に抵触する事態が発生しないよう、更なる営業利益の確保、財務体質の強化を図ってまいります。
(1)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
当連結会計年度における当社グループを取り巻く経済情勢は、ウクライナ情勢や中東情勢の地政学的リスクの影響が長引く中、物価高によるコスト上昇や労働需給の逼迫が見られ、各国の金融引き締め政策や為替変動の影響など、景気の先行きは不透明な状況が続いております。米国におきましては、良好な雇用・所得環境を背景に、個人消費が景気を下支えしました。欧州におきましては、金融引き締めや海外経済の減速による影響で、内外需ともに低調に推移しました。中国におきましては、不動産不況等の影響により、景気は減速傾向が継続しました。わが国におきましては、人手不足や外需の持ち直しにより設備投資は堅調に推移しました。また、良好な企業収益や物価上昇を背景に、所得環境は緩やかな改善傾向となりました。
このような経営環境のもと、当社グループにおきましては、中期経営計画(2022年度~2024年度)の2年目を迎え、「成長市場でのビジネス拡大」、「グローバル企業としての競争力強化」、「ESG経営の取組み強化」、「ニューノーマル時代に即した経営の実現」に向けた展開を更に加速させるため、さまざまな施策に取組んでまいりました。
当連結会計年度におきましては、電気自動車(EV)関連メーカーからの受注が好調であったことに加え、シリコンウェーハ搬送設備を中心に半導体関連の原価率が改善しました。この結果、当連結会計年度の売上高は828億39百万円(前期比5.6%増)、営業利益は60億47百万円(前期比2.2%増)、経常利益は62億59百万円(前期比7.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は43億44百万円(前期比1.7%増)となりました。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきまして、「第2 事業の状況 3.事業等のリスク」に記載しております。
当社グループの経営方針・経営戦略および経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標につきましては、「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
セグメントの状況は以下のとおりであります。
①自動車関連
自動車関連におきましては、自動車メーカーからのEV関連の設備投資が堅調だったことで、売上高・利益ともに堅調に推移しました。この結果、売上高は369億84百万円(前期比22.1%増)、営業利益は16億51百万円(前期比5.9%増)となりました。
②半導体関連
半導体関連におきましては、シリコンウェーハ搬送設備の売上高が堅調に推移したものの、基板搬送設備などの売上高が減少しました。一方、利益面では、原価率の改善により前期を上回りました。この結果、売上高は273億90百万円(前期比5.4%減)、営業利益は44億50百万円(前期比29.2%増)となりました。
③その他自動省力機器
その他自動省力機器におきましては、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)関連や家電関連が売上高・利益ともに減少となりました。この結果、売上高は160億83百万円(前期比5.1%減)、営業利益は1億19百万円(前期比87.1%減)となりました。
財政状態の概況は以下のとおりであります。
(資産)
当社グループの当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に比べて162億65百万円増加し、1,307億87百万円となりました。その主な内訳は、売上債権等(受取手形、電子記録債権、売掛金、契約資産)の増加80億68百万円、検査・解析装置等の投資および七城工場増設・関西工場建替による有形固定資産の増加31億35百
万円、退職給付に係る資産の増加34億71百万円であります。
(負債)
負債につきましては、前連結会計年度末に比べて105億38百万円増加し、654億85百万円となりました。その主な内訳は、仕入債務(支払手形及び買掛金、電子記録債務)の減少18億50百万円、有利子負債(短期借入金、長期借入金)の増加72億73百万円、繰延税金負債の増加12億21百万円であります。
(純資産)
純資産につきましては、前連結会計年度末に比べて57億26百万円増加し、653億2百万円となりました。その主な内訳は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上43億44百万円および配当金の支払い9億40百万円により利益剰余金の増加34億3百万円、保有株式の株価上昇に伴うその他有価証券評価差額金の増加5億67百万円、退職
給付に係る調整累計額の増加17億12百万円であります。その結果、自己資本比率は前連結会計年度末の51.7%から49.7%となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度末における現金及び現金同等物残高(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べて4億81百万円減少し、106億52百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動による資金は、45億92百万円の支出(前年同期は56億87百万円の支出)となりました。主な要因は、税金等調整前当期純利益67億62百万円に対して、売上高が増加したことによる売上債権及び契約資産の増加69億72百万円、仕入債務の減少30億13百万円等によります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動による資金は、有形固定資産の取得による支出28億53百万円等により、22億33百万円の支出(前年同期は20億57百万円の支出)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動による資金は、58億66百万円の収入(前年同期は51億1百万円の収入)となりました。主な要因は、生産の高まりを受けて、資金需要が増加したことによる短期借入金の増加52億21百万円、長期借入れによる収入136億円、長期借入金の返済による支出115億75百万円等によります。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、建物および機械装置等の設備投資によるものであります。
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。
短期運転資金は自己資金および金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金につきましては、金融機関からの長期借入を基本としております。
当連結会計年度末における借入金の残高は370億30百万円、ならびに当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は106億52百万円となっております。
(3)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
文中における将来に関する事項の記載は、本書提出日(2024年6月26日)現在において当社グループが判断したものです。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
(4)生産、受注及び販売の実績
①生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前期比(%) |
|
自動車関連 (千円) |
37,422,622 |
119.6 |
|
半導体関連 (千円) |
27,656,870 |
90.9 |
|
その他自動省力機器 (千円) |
16,324,602 |
92.9 |
|
その他 (千円) |
2,488,830 |
107.3 |
|
合計(千円) |
83,892,925 |
102.8 |
(注)金額は、販売価格および製造原価によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
②受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
受注高(千円) |
前期比(%) |
受注残高(千円) |
前期比(%) |
|
自動車関連 |
44,492,794 |
116.6 |
39,150,295 |
123.7 |
|
半導体関連 |
25,107,234 |
73.7 |
19,470,330 |
89.5 |
|
その他自動省力機器 |
14,357,507 |
75.1 |
6,295,301 |
78.5 |
|
その他 |
2,281,665 |
94.2 |
488,781 |
83.1 |
|
合計 |
86,239,202 |
92.0 |
65,404,709 |
105.5 |
(注)金額は、販売価格によっております。
③販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前期比(%) |
|
自動車関連 (千円) |
36,984,975 |
122.1 |
|
半導体関連 (千円) |
27,390,046 |
94.6 |
|
その他自動省力機器 (千円) |
16,083,337 |
94.9 |
|
その他 (千円) |
2,381,098 |
106.4 |
|
合計(千円) |
82,839,457 |
105.6 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
前連結会計年度(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)
該当事項はありません。
当連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)
|
相手先 |
金額(千円) |
割合(%) |
|
General Motors LLC |
11,954,541 |
14.4 |
該当事項はありません。
当社グループの研究開発活動は、自動車関連、半導体関連、その他自動省力機器の生産システムの開発、搬送コンベアや操作盤等の汎用性の高いFA機器の開発、当社生産システムへの組込みや外販向けの産業用ロボットの開発、新規事業分野に向けた研究開発活動等に関するものであります。
当連結会計年度における研究開発費は、総額
自動車関連では、日本、北米、欧州、中国の自動車メーカーからのさらなる受注獲得のための競争優位性の向上を目指し、製品開発に取組んでおります。中期経営計画で目標に定めたバッテリー関連設備向けの開発・改良の達成により、開発した設備をラインの一部に含む大型案件において引合い・受注の拡大につながっております。
半導体関連では、生成AI向けの後工程製造装置や車載用パワー半導体への投資活発化による需要拡大に伴い、半導体製品の需要は増加傾向にあり、このような市場環境の変化を見据えた装置開発に取組んでおります。ロードポート、大気・真空対応のウェーハ搬送ロボット、それらを統合したEFEMなどにおいて、お客さまごとのニーズや仕様、さらにはSEMI規格等にも対応した付加価値の高い製品の開発に注力しております。
医療・理化学機器では、既存のバイオ関連分析機器などの医療機器に加えて、新分野としてがん治療を目的とした医療機器の開発に取組んでおります。具体的には集束超音波を照射するデバイスを搭載したロボットを医師が操作しながら、がんを焼灼できるシステムを新たに開発しました。
商品開発分野では、お客さま工場の環境負荷低減および低推力による高い安全性を実現するエコ電動シリーズの商品開発および商品ラインアップの拡充に取組んでおります。エコ電動シリーズにおいては、独自開発の小型・高効率のDCブラシレスモータを組み込んだ搬送コンベアや制御基板等につきましても開発・改良を進めております。
産業用ロボット分野では、当社既存ロボットの開発に加え、協働ロボットの開発にも取組んでおります。特に、成長市場である電気自動車(EV)・半導体関連において、さらなる生産性向上を実現するために、人とロボットが協働できるようロボットの安全機能の拡充を進めております。
新規事業分野では、生物遺伝資源(主に植物)ビジネスに向けた研究開発に取組んでおります。当社は、これまでにインドネシア農業研究開発庁およびアルゼンチン国立農牧技術院と、機能性食品、化粧品、その他トイレタリー、香料、生活資材および医療品を対象領域とする植物遺伝資源の探索・利用のための契約を締結しております。当該領域の企業に対して、これら資源提供国との複雑な手続きを経ることなく、植物遺伝資源サンプルを提供する「ぷらんつプロ」という当社独自のサービスを開始しました。完成したラボおよび独自開発の解析技術で制作したソフトウェアなどを用いて、生物遺伝資源を活用した研究開発を継続してまいります。