当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、基本理念として「人、そして物の移動を支え、豊かで住みよい世界と未来に貢献する」ことを会社の使命として掲げ、「世界のHINO」として広く社会から評価されるよう、事業活動を進めていきたいと考えております。
会社の使命を果たすため、当社グループの事業活動に対する取り組み方針を下記のとおり定めております。
1.世界の人々から信頼される商用車メーカーを目指し、グローバルな事業展開を行います。
2.技術の継承と革新を続け、お客様のお役に立つ商品やサービスを提供いたします。
3.変化を的確に捉え、社会との調和を図り、持続可能な発展を目指します。
4.社員の多様性を尊重し、活気あふれる企業風土をつくります。
(2)会社の環境及び対処すべき課題
<「目指す姿」の実現に向けた足元の正常化への取り組み>
企業としてあるべき正常な姿に戻るべく、全社の総力を結集して収益力の回復に努めてまいります。当社の「目指す姿」(注1)で掲げている商品品質とトータルサポート品質を掛合せた「総合品質」をより一層向上させ、お客様の事業をお支えし続けることが、当社の収益力を回復することにつながると考えております。
創業の原点に立ち返り、お客様・社会に必要とされる会社になるべく、認証不正問題公表以前の身の丈を超えた事業拡大を改め、お客様に貢献できていない事業および商品の再編を具体的な実行段階に移していきます。
また業務の生産性向上として、事務・技術系職場ではトヨタ自動車株式会社のノウハウも活用した「物と情報の見える化」を進め、徹底的なムダの排除に努めてまいります。
こうした選択と集中、生産性向上により創出したリソーセスを、原価低減活動に加え、「総合品質」の向上へ積極的に投入し、競争力の向上を図ります。
「総合品質」におけるトータルサポートでは「お客様の稼働を止めない」を目指し、「壊れる前に直す・壊れたらすぐに直す」取り組みを拡充してまいります。例としてICTサービス「HINO-CONNECT」のコネクティッド技術を活用した予防整備(注2)のご提案やお客様の困りごとに直ぐに対応するための24時間緊急サポート体制(注3)の構築など、お客様サポートの質を高めてまいります。このような取り組みを通じ、お客様のビジネスの発展に貢献する中で、「総合品質」の価値を認めていただけるお客様を増やし、より深く・より長く繋がり続け、当社も持続的に成長してまいります。
またお客様へお届けするリードタイムの短縮による流通在庫のリーン化、聖域を設けない固定費の徹底的なスリム化、保有資産の有効活用・売却などの取り組みを行い、財務基盤を立て直してまいります。
(注1)日野の「目指す姿」 2023年4月26日公表
(注2)(注3)日本における取り組み
<サステナブルな社会への貢献に向けた取り組みを継続>
当社はサステナブルな社会への貢献を目指したマテリアリティを新たに設定、カーボンニュートラルへの対応やお客様・社会の課題解決への取り組みを継続してまいります。
日本における物流の2024年問題など、社会課題への取り組みは待ったなしの状況です。当社は荷主として自社における荷待ち・荷役の効率化・時間短縮に取り組むだけでなく、当社子会社であるNext Logistics Japan株式会社ではダブル連結トラックによる物流の省人化・効率化に業種・業態を越えた荷主や物流事業者の皆様とともに取り組んでいます。
カーボンニュートラル実現に向けては、市場投入した小型BEVトラック「日野デュトロ Z EV」の稼働を最大化するエネルギーマネジメントプラットフォーム「エモプラっと」(注4)を子会社の株式会社CUBE-LINXにてご提供するなど、電動車の普及促進に取り組んでおります。
一方で当社一社だけで実現できることには限りがあり、志を同じくする仲間との協業が必要になります。2023年5月、当社は「移動を通じて豊かな社会に持続的に貢献する」ことを目指したトヨタ自動車株式会社、ダイムラートラック社、三菱ふそうトラック・バス株式会社との4社協業、三菱ふそうトラック・バス株式会社との経営統合を発表、現在協業に向けた協議を推進しています。
これらの取り組みを継続し、サステナブルな社会の実現に向けて一歩一歩進んでまいります。
(注4)充電設備の選定・設置からシステム導入・運用まで一貫してサポートするサービス
当社および当社グループは、トヨタグループの一員としてトヨタグループビジョン「次の道を発明しよう」を道標として、「HINOウェイ」を礎に「人財尊重」の組織風土づくりとコンプライアンス・ファーストによる「正しい仕事」を徹底的に追求し続ける経営基盤の下、お客様や社会からの信頼を一日も早く回復し、日野の「総合品質」による価値提供を通じ、世界中のお客様と社会から必要とされる企業になるべく、不断の努力を続けてまいります。
(1)全般
当社グループの主力製品であるトラック・バスは、人流・物流を支える社会インフラであり、「人、そして物の移動を支え、豊かで住みよい世界と未来に貢献する」という会社の使命のもと、お客様や社会が抱える物流・人流の課題に真摯に向き合い共に解決することによって、サステナブルな社会の実現に貢献したいと考えています。
2022年に策定した「HINOウェイ」の中で、「HINOサステナビリティ方針」を定め、当社グループの全ての従業員がサステナブルな社会の実現に向けて誠実に行動することを宣言しています。また、当社の経営ビジョンである「日野の『目指す姿』」※1を実現するために取り組むべき社会課題を洗い出し、その中から、当社が特に重要だと考える8つの課題をマテリアリティ(重要課題)※2として特定し、経営資源を適切に配分して取り組んでいます。
※1 日野の「目指す姿」
https://www.hino.co.jp/corp/for_investors/business_strategy.html
※2 マテリアリティ(重要課題)については統合報告書2023をご参照ください
https://www.hino.co.jp/corp/for_investors/pdf/integrated_report/integrated_report_2023_view.pdf
①ガバナンス
当社グループは、人流・物流に関する社会課題解決を含むサステナブルな社会実現に向けた取組みを経営の重要課題の一つに位置付け、経営の健全性、効率性、および透明性を確保し、適正な業務が行われるようガバナンス機能の強化と運用に努めています。
加えて、気候変動や人的資本に関する重要な課題については、経営会議にも報告しています。
当社のガバナンスについては、「
②戦略
当社グループは、サステナブルな社会の実現に貢献するため、人の成長を優先した経営基盤の強化と、商品品質とトータルサポート品質をかけ合わせた「総合品質」の磨き上げを通じ、マテリアリティに取り組んでいます。
具体的なサステナビリティ課題とそれらに対する取り組みについては、後述の「気候変動への対応(TCFD提言への取組)」「人的資本」にて記載しています。
③リスク管理
当社は、全社レベルのリスク管理体制として、CRO(Chief Risk Officer)を委員長とするリスクマネジメント委員会を設置し、サステナビリティに関するリスクを含む様々な経営リスクの洗い出し・評価・選別・管理を行っています。同委員会では全社共通の指標にてリスクアセスメントを定期的に実施しています。
④指標と目標
気候変動に関する指標と目標は後述の「気候変動への対応(TCFD提言への取組)」にて記載しています。その他のマテリアリティに対する指標と目標は、具体的な取組みとあわせて検討しています。
(2)気候変動への対応(TCFD提言への取組)
当社グループは、2022年12月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD; Task Force on Climate-related Financial Disclosures)に賛同しました。
TCFDのガイドラインに基づき、シナリオ分析を行い、事業活動に与えるリスクと機会を抽出し、気候変動におけるリスクと機会への取り組みを以下の通り開示し、今後も継続的に開示内容の充実を図っています。
①ガバナンス
当社は、気候変動を含む環境課題解決を経営の最重要課題の一つに位置付けています。
部門横断的組織として、代表取締役社長を委員長とする「日野環境委員会」を年4回開催し、中長期の環境方針と短期の実行計画について審議・報告を行い、企業経営へ反映しています。当社のガバナンスの全般については、「
②戦略
当社グループは、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)や国際エネルギー機関(IEA)などが公表した外部シナリオを考慮し、気温上昇が「4℃(注1)」、「2℃未満(注2)」の2つのシナリオを検討し、影響分析を実施しました。
(注1)4℃シナリオ :産業革命前と比べて4℃前後上昇するシナリオ
(注2)2℃未満シナリオ:産業革命前に比べて21世紀末に世界平均気温の上昇幅が2℃未満に抑えられるシナリオ
その結果、「4℃シナリオ」では異常気象が常態化し、干ばつや洪水など当社の事業活動に影響を及ぼす物理リスクが増大すると想定しています。
一方、「2℃未満シナリオ」においては先進国を中心とした積極的な対策(例:燃費・排ガス規制、車両電動化規制の強化等)により脱炭素社会が進展し、車両電動化を中心とした環境対応車の拡大を想定しております。「2℃未満シナリオ」では主に移行リスクおよび機会への対応が必要と考えています。
4℃シナリオの世界観
2℃未満シナリオの世界観
上記シナリオにおける当社事業へのリスクおよび機会を特定し、インパクトを分析すると共に対応策を検討した内容は以下の通りです。
(物理リスク)気候変動による災害など物理的影響に関連するリスク
(移行リスク・機会)脱炭素社会への移行に伴い発生するリスクと機会
シナリオ分析およびリスクと機会を特定した結果は、当社の経営戦略へ反映していきます。
気候変動に関するリスクや機会は日々大きく変化しております。今後も変化するリスクや機会に柔軟に対応を見直していくとともに、さらなる開示内容の充実に取り組みます。
③リスク管理
当社は、全社レベルのリスク管理体制として、CROを委員長とするリスクマネジメント委員会を設置し、環境を含むリスクの洗い出し・評価・選別・管理を行っています。同委員会では全社共通の指標にてリスクアセスメントを定期的に実施しています。
その中で、気候変動に関連するリスクについては、上記のシナリオ分析に基づき、日野環境委員会に属する各部会で分析や評価、優先順位付けを行い、長期や短期の対応策を決定し、進捗管理を行います。重要リスクについては定期的に日野環境委員会に報告しています。
④指標と目標
当社グループの環境活動は、長期ビジョン「日野環境チャレンジ2050」にて掲げた6つの重点的なチャレンジ項目を指標とし、全てのチャレンジにおいて環境負荷を最小化することを目標として掲げています。
その実現に向け、「日野環境マイルストーン2030」にてそれぞれのチャレンジ項目における2030年までに達成する中期目標を設定しました。更に5年ごとの「環境取り組みプラン」を策定し、毎年の実行目標へ落とし込み、活動を推進しています。
特にCO₂排出量においては「温室効果ガス(GHG)報告ガイドライン」に基づき、報告値および入手可能なデータを用いてScope1、Scope2に加えてScope3(注3)の排出量を算出しています。今後もライフサイクルCO₂排出量の管理を強化するとともに、CO₂削減活動に取り組んでいきます。
(注3) Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
Scope3:Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)
(3)人的資本
当社では、2022年3月4日に公表しましたエンジン認証に関する不正行為を受けて策定した、二度と不正を起こさないための「3つの改革」に関する取り組みを継続的に推進中でありますが、現下の激しい経営環境に対応し、当社の再生と飛躍を実現するためには、土台となる人的資本が非常に重要と考えております。
そのため、当社の中期事業計画と連動し、実現につながる人材戦略を策定いたしました。この戦略に基づき、人材を確保・育成し、当社でモチベーション高く働きたいと思える施策を行ってまいります。
1.企業理念「HINOウェイ」について
現在、当社グループは、2022年4月に策定した「HINOウェイ」(HINO基本理念、HINOサステナビリティ方針、HINO行動規範)の全社浸透を進めています。
「HINO基本理念」は判断・行動の礎、「HINOサステナビリティ方針」は持続可能な社会の実現に向けた会社の宣言、「HINO行動規範」は一人ひとりの具体的な行動の基準です。
私たちは、HINOウェイのもと同じ思いで結ばれ、一人ひとりが強い思いをもって、ありたい姿に向けて取り組んでいきます。
当社は、お客様や社会になくてはならない会社、いつまでも選んでいただける会社に生まれ変わります。そしてお客様や社会への貢献を通して、私たち自身も働きがいを実感し、成長し、従業員からも選ばれる会社でありたいと考えています。
2.人材育成方針
当社は、人材を重要な会社の財産と考えております。「HINOウェイや会社ビジョンに共感を持ち、お客様・社会の為に自ら考え・自主的に行動を起こし、新たな価値創造を生み出せる人材」を育成します。そして、「人、そして物の移動を支え、豊かで住みよい世界と未来に貢献する」という会社の使命の具現化のため、従業員一人ひとりの成長を支援します。
また、この方針に基づいて人の成長を実現・加速させることで、企業価値の向上につながる正のスパイラルを回し続け、当社の持続的な成長を目指しております。
3.社内環境整備方針 (経営戦略と人材戦略を連動させるための取組)
①CHROの配置
当社は、2023年2月に執行体制を見直すと共に、経営視点で人事戦略の策定を行うCHROを設置しました。現在、一連の不正事案を受けて、企業文化や職場風土に加え人事制度の改革に着手しておりますが、CHROが当社事業戦略と連動した人事戦略策定を一層牽引し、取締役会と密に連携しながら人材への投資を効果的に進めてまいります。
また、当社CHROは現取締役社長が兼任しており、社外役員を含めた取締役や監査役と密に議論を実施しています。
②人事部門のケイパビリティ向上
2023年2月に、タイムリーな課題推進と専門能力の習得に加え、組織的な能力向上と確実なアウトプットを狙いとし、本社人事機能を採用・育成・処遇・配置を司る組織と労務・ペイロールを推進する組織へ2分割しました。今後は、人事機能と各機能の人事部門との役割明確化と権限委譲を進め、各機能出身者(事業部門経験)と人事機能出身者とのローテーションを積極的に実施し、人事機能の強化と合理化を図っていきます。
③サクセッションプラン
当社では将来の経営層を継続的に輩出するため、若手層の抜擢人事や積極的な中途採用、他社でのマネジメント経験のある人材のChief Officer(機能・専門分野の責任者)登用を行っています。キャリアローテーションを活性化し、多くの経験を積む機会を増やし、経営者として必要な胆力を持ち合わせた人材の輩出に努めています。また、従来は取締役や専務役員の選任が中心議論であった役員人事案検討会議(任意の指名委員会)は、Chief Officerの選任についても関与をします。
④指名委員会委員長を社外取締役に任命
2023年7月以降、役員人事案検討会議(任意の指名委員会)の議長は、独立社外取締役が務めております。これにより、社外取締役の発言力を高め、経営の資質を持った取締役および経営人材の輩出に努めております。
⑤経営理念やビジョンの定義と従業員への浸透
当社では、2022年4月に当社グループ全員が同じ思いで結ばれ、チーム日野一丸となって取り組んでいくために、これまでの「基本理念体系」を改定・再編して、あらたにHINO基本理念、HINOサステナビリティ方針、HINO行動規範の3点を策定し、「HINOウェイ」と命名しました。これらは、お客様や社会に貢献するという当社の原点に立ち返り、一人ひとりが大切にすべき価値観とあるべき姿をまとめたものです。
従業員への浸透のための取組みとして、2022年6月以降、下記を実施しております。
・理念改定プロジェクトメンバーから、込めた思いとともに新たな理念の説明会
・HINOウェイを自分事化するため、職層別・部署別・職層間の対話会や研修を実施
・新たな理念に触れ考える機会を増やすため、冊子と携帯カードを全役員・従業員に配布、イントラネットを通じた
発信、ポスター、壁掛けでの掲示等を実施
お客様や社会に貢献するという当社の原点に立ち返り、今後も、一人ひとりが大切にすべき価値観の浸透活動を定期的に進めます。
⑥経営層との対話
当社では、HINOウェイのもと、「3つの改革」を(2022年10月7日公表)進めていますが、取り組みの一つである「人財尊重を中心に据えた組織風土改革」においては、経営層が積極的にその活動を牽引し、定期的に従業員との直接対話を行いながら、企業理念の浸透や経営状況の理解活動に努めています。従業員の意見や困り事に耳を傾け、双方向コミュニケーションを実施することで情報のオープン化と企業理念の浸透、風土改革を進めております。
⑦人材育成制度と福利厚生制度
「HINOウェイや会社ビジョンに共感を持ち、お客様・社会の為に自ら考え・自主的に行動を起こし、新たな価値創造を生み出せる人材」を育成するために必要な力を身につけられる環境を整えています。階層別研修や昇格者研修に加え、若年層を対象とした海外トレーニー制度や自己のキャリアを自ら考えるキャリアデザイン面談制度など、一人ひとりの成長を支援する制度の充実化を図っています。また、在宅勤務制度、副業許可制度、育児休職・育児短時間勤務制度、介護休職制度の導入など、従業員が安心して働ける環境・福利厚生制度の整備に努めております。
⑧人事制度の見直し
人材戦略と人材育成方針に基づき、人事制度の意義である「人材育成」と「モチベーションの向上」を主な目的とし、これまで以上にメリハリと公平性・納得性を重視した、従業員一人ひとりの成長を促進する人事制度に改め、2024年4月より運用を開始しております。
4.指標と目標
当社では前述の方針等を踏まえ、以下指標について目標を設定、達成に向けた取り組みを推進しております。
①女性管理職
目標:2026年までに65名 実績:2024年時点で56名 (参考:2014年時点で19名)
②外国人管理職
目標:2026年までに5% 実績:2024年時点で6.3%
また、上記以外に以下指標も、さらなる向上のため取り組みを続けております。
・男性社員の育児休業取得率
2020年度:11% 2023年度:64%
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
尚、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月26日)現在において当社グループが判断したものであります。
(1)需要及び価格の変動
国内においてのトラック・バス等の販売は、国及び地方自治体による環境規制強化の実施の有無による需要の変動に大きく影響を受けます。また、国内貨物輸送の低迷や物流改革の進行により今後のトラック需要は減少する可能性があります。さらに、他社との価格競争により当社製品の価格変動を引き起こす可能性があります。
海外においてのトラック・バス等の販売は、国・地域及びその市場における経済状況の影響を受け、かつ、他社との価格競争により当社製品の価格変動を引き起こす可能性があります。
これらの需要及び価格変動に対応するため、当社グループは商品力の強化と適正な生産体制の構築、原価改善等を推進し、需要・価格変動に強い企業体質を目指しております。
(2)材料価格の変動
当社グループは国内及び海外の複数のメーカーから鋼材等の資材、部品等を調達し、トラック・バス、エンジン等を生産しております。これらの材料価格は、業界の需要や原材料の価格に伴い変動しております。材料価格が高騰し、かつ、長期化する場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループはこれらの材料価格の変動に対応するため、原価改善等を推進しております。
(3)為替の変動
当社は円表示で連結財務諸表を作成しており、海外における現地通貨建の売上高、費用、資産等の項目は、連結財務諸表作成時に円換算されるため、換算時の為替レートによって、円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。
また、国内外での原材料等の仕入れや製品の販売において、外国為替相場の変動は当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。この為替変動リスクを抑えるために一部でデリバティブ取引を行っておりますが、それによって本来得られた利益を逸失する可能性があります。
当社グループは、これらリスクに対応するため、適切なグローバル調達・生産・販売体制を検討・構築しております。
(4)金利の変動
資金調達に係るコストは、市場金利が急激に上昇した場合、支払利息の負担が増大するなど、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは親会社であるトヨタ自動車株式会社とのインハウスバンキングを通じた資金調達のグローバル化等によって当該リスクの最小化を図っております。
(5)貸倒れリスク
当社グループは当社で生産したトラック・バスを全国の販売会社を通し様々な取引先に販売をしております。
これらの取引先において信用不安などにより予期せぬ貸倒れリスクが顕在化し、追加的な損失や引当の計上が必要となる場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは取引先の信用リスク情報などを適時入手し、当該リスクの最小化を図っております。
(6)親会社との取引
当社グループは、親会社であるトヨタ自動車株式会社より乗用車及び一部の小型トラックの生産を委託されており、また小型トラックのOEM供給を行っております。当連結会計年度の売上高の6.2%を同社に依存しております。
尚、当社とトヨタ自動車株式会社との取引は、「関連当事者情報」に記載しております。
(7)国内外での事業活動
当社グループは、日本をはじめアジアを中心とした世界各地で事業活動を展開しております。それらの事業活動には、通常、予期しない法律や規制の変更、産業基盤の脆弱性、人材の採用・確保の困難等、経済的に不利な要因の存在又は発生、テロ・戦争・自然災害・その他の要因による社会的又は政治的混乱等のリスクが存在します。こうしたリスクが顕在化することによって、当社グループの事業活動に支障が生じ、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
尚、当社グループの世界各地域における事業活動は、「セグメント情報」に記載しております。
(8)法規制等
当社グループは、国内外でのトラック・バス等の販売において、安全性や排出ガス、燃費、騒音、公害などに関する法規制等やその他各国の様々な法規制等の適用を受けているため、これらの規制に適合するために費用を負担しております。これら法規制等の制定又は改正が行われた場合、費用負担が増える可能性があります。
(9)製品の欠陥
当社グループは、基礎研究段階を含め、商品企画・開発からアフターサービスまでの各ステップにおいて、安全性への細心の配慮を行うとともに、品質の確保に努めております。
しかし、すべての製品について欠陥が無く、将来にわたりリコールや製造物責任賠償が発生しないという保証はありません。そのため、これらのリスクが顕在化する場合には、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(10)エンジン認証不正問題
当社の日本市場向けエンジンの複数機種について、認証手続上の不正行為があったことが判明し、国土交通省より、一部製品の型式指定の取消等の行政処分を受け、現在も国土交通省やお客様をはじめとして関係各所とのコミュニケーションを継続して行っています。また、当社の米国市場向け2010年モデルから2019年モデルのエンジン認証に関する法令違反の疑いについて、米国司法省及び他の当局による調査が行われております。これに関し、当社及び当社子会社に対し、2004年から2021年に米国で販売された車両に関する損害の賠償を求める訴訟が暫定的な集団訴訟として、米国フロリダ州南部地区連邦地方裁判所で提起されました。2023年10月25日に開示しましたとおり、当社及び当社子会社は、同日、2010年から2019年モデルのエンジンを搭載して米国内で販売・賃貸されたオンロード車両を購入した者又は賃借した者との間で、総額237.5百万米ドルの和解契約を締結しました。この和解契約は、2024年4月1日に裁判所の最終承認を受けた上で、同月11日に上記和解金の支払いを完了し、当該和解は、同年5月2日に確定しております。米国司法省及び他の当局による調査は、引き続き継続中です(なお、当社は2020年エンジンモデル以降米国向けに自社製エンジン搭載車は販売しておりません。)。また、オーストラリアにおいても当社及び当社子会社に対する訴訟が集団訴訟として提起されているほか、カナダにおいても当社及び当社子会社に対する2件の訴訟が集団訴訟として提起されております。今後も米国、オーストラリア、カナダ、その他の法域においてこれらと同様の訴訟を提起される可能性があります。さらに、米国以外の欧州法規等の対象エンジンについても認証手続の総点検を継続中です。これらに関連して当社に生じる金銭的負担について、現時点で合理的に見積もることは困難ですが、上記の当局調査の結果科される罰金などの行政、刑事手続上の制裁に加え、損害賠償や市場措置などにより当社の経営、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に対し、重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
(11)三菱ふそうトラック・バス株式会社との経営統合の成否及び条件等に関するリスク
当社は、2023年5月30日に、当社、三菱ふそうトラック・バス株式会社(以下「三菱ふそう」という。)、当社の親会社であるトヨタ自動車株式会社(以下「トヨタ」という。)及び三菱ふそうの親会社であるダイムラートラック社(以下「ダイムラートラック」という。)の4社で、当社と三菱ふそうとの経営統合(以下「本経営統合」という。)に関する法的拘束力のない基本合意書(以下「本基本合意書」という。)を締結し、今後、当社、三菱ふそう、トヨタ及びダイムラートラックの4社において、本経営統合を実現するための取引の諸条件に関する法的拘束力のある契約(以下「最終契約」という。)を締結する予定です。本経営統合の詳細については、「第2 事業の状況 5.経営上の重要な契約等 (7)三菱ふそうトラック・バス株式会社との経営統合に係る基本合意書の締結」をご参照ください。上記(10)のエンジン認証不正に関連して当社に生じる金銭負担の金額規模及びそれが判明するタイミング次第では、①本経営統合に関する最終契約の締結に至らないおそれ、②最終契約の締結に至った場合であっても、統合比率の決定内容又は調整の結果、当社株主の株式保有割合に著しい希薄化が生じるおそれ、③最終契約の実行に関する前提条件を充足せず、その結果、本経営統合の実施に至らないおそれ、及び④本経営統合の最終契約の規定に基づき、ダイムラートラック及び一定の条件に同意する三菱ふそうのその他の株主に対して特別補償の責任を負うおそれがあり、本経営統合の成否及び条件等、さらには当社の経営、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。
また、最終的に競争法その他法令上必要なクリアランス・許認可等が取得できないことにより、本経営統合の実施に至らない可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要、及び経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
尚、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況及び分析
当連結会計年度における世界経済は、多くの国々でコロナ禍より徐々に回復していた中での地域紛争、経済制裁、人道的危機などの地政学リスクに加え、世界的な金利・物価上昇やインフレ、人材不足、労働市場の逼迫等の影響もあり、緩やかな減速傾向にありました。
当連結会計年度の国内のトラック市場につきましては、半導体供給不足および部品供給不足の緩和により、大中型トラックおよび小型トラックの総需要は増加となりました。また、国内のバス市場につきましても、主として新型コロナウイルス影響からの回復に伴い、バスの総需要は増加となりました。以上により、国内トラック・バスの総需要合計では149.5千台と前期に比べ18.5千台(14.1%)の増加となりました。
認証不正問題への対応等を続け、堅実な販売活動を続けた結果、国内連結売上台数につきましては、トラック・バスの合計で38.6千台と、前期に比べ0.6千台(1.5%)の増加となりました。
海外のトラック・バス市場につきましては、アセアンを中心とした需要の減速傾向により、海外連結売上台数はトラック・バスの合計で92.1千台と前期に比べ21.8千台(△19.2%)減少いたしました。
以上により、日野ブランド事業のトラック・バスの総売上台数は130.6千台と前期に比べ21.2千台(△14.0%)減少いたしました。
また、トヨタ向け車両台数につきましては、SUV及び小型トラックともに台数が減少し、総売上台数は104.3千台と前期に比べ23.5千台(△18.4%)減少いたしました。
このような経営環境の中、当社は、外部変化に影響を受けにくい企業体質を構築するため、既存事業の競争力強化ならびにカーボンニュートラル実現、物流・人流課題への対応をはじめとする社会課題の解決に向けた取り組みを継続してまいりました。
2023年度は大型トラック「日野プロフィア」、中型トラック「日野レンジャー」、小型トラック「日野デュトロ」、路線バスなどの改良モデルを発売するなど、きめ細かくお客様のニーズにお応えする商品を提供してまいりました。
また、2022年6月に発売した小型BEVトラック「日野デュトロ Z(ズィー) EV」は、脱炭素社会の 実現を目指し、積極的にEVを導入されているヤマト運輸株式会社様、グリーンコープ生活協同組合ふくおか様をはじめとする全国のお客様に幅広くご愛用されており、2023年の販売台数は500台を超えるレベルに達しております。
物流・人流課題への対応としましては、2023年7月に、自家用有償旅客運送(注1)向けの遠隔による運行管理受託サービスを鳥取県智頭町において開始し、持続可能な地域公共交通を支える新たな取り組みを始めております。
また、2023年9月から12月にかけて、岐阜県加茂郡の新丸山ダムにおいて、自動自律建機等と自動運転ダンプトラックのDX施工(注2)に向けた実証実験を実施しました。
当社は、直面する課題解決や持続的な社会実現のため、CASE技術の活用ならびにお客様・パートナーとの共創によるソリューションのさらなる進化を推進してまいります。
(注1)バスやタクシーなどが運行されていない地域などにおいて、自家用車を使用して有償で旅客運送
できる制度
(注2)AI、ICT、IoT等のデジタル技術を取り入れて複合的に活用し、建設プロセス全体を最適化するもの
お客様車両の稼働を支えるトータルサポートに関しましては、国内外の販売会社の拠点新設・拡充・更新等を継続的に進め、スピーディーで質の高いサービスを提供し、お客様のビジネスに貢献し続けていくための体制を整えています。
世界的に動きが加速しているカーボンニュートラル実現に向けては、2023年10月に「カーボンニュートラルに向けた日野の取り組み」を公表し、サステナブルな社会の実現に挑む日野の姿勢や考え方を示しました。
当社は、内燃機関の改善とレンジエクステンダー(RE-BEV)(注3)プラットフォーム構想の実現により、お客様ニーズに寄り添った多様なエネルギーの選択肢(マルチパスウェイ)を提供してまいります。
(注3)様々なエネルギーを電気に変え電池に充電するバッテリーEV機構
燃料電池大型トラックにつきましては、2023年5月、日本初の走行実証を事業会社様とともに開始いたしました。
最後に2022年8月に除名されておりましたCJPT(Commercial Japan Partnership Technologies)への復帰を、2023年10月にCJPT参画各社様にご判断いただきました。いただいたこの機会を真摯に受け止め、CASE技術の普及を通じたカーボンニュートラル社会実現を目指し、CJPTの取り組みに貢献してまいります。
当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
ⅰ)財政状態
(資産合計)
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ1,026億39百万円増加し、1兆4,643億75百万円となりました。これは、棚卸資産が521億11百万円、及び退職給付に係る資産が242億97百万円増加したこと等によります。
(負債合計)
負債につきましては、前連結会計年度末に比べ726億27百万円増加し、1兆9億54百万円となりました。これは、有利子負債が833億37百万円増加したこと等によります。
(純資産合計)
純資産につきましては、前連結会計年度末に比べ300億11百万円増加し、4,634億20百万円となりました。これは、退職給付に係る調整累計額が97億34百万円増加、及び親会社株主に帰属する当期純利益を170億87百万円計上したこと等によります。
セグメントごとの財政状態は次のとおりであります。
(日本)
当連結会計年度末の棚卸資産が379億36百万円増加したことに加え、当連結会計年度末の売上債権が308億63百万円増加したこと等により、セグメント資産は1兆521億98百万円と前連結会計年度末に比べ、604億94百万円増加しました。
(アジア)
当連結会計年度末の売上債権が272億8百万円減少した一方で、棚卸資産が226億26百万円、リース債権が107億68百万円増加したこと等により、当セグメント資産は3,384億16百万円と前連結会計年度末に比べ、58億6百万円増加しました。
(その他)
当連結会計年度末の棚卸資産が101億13百万円減少したことに加え、当連結会計年度末の売上債権が49億4百万円減少したこと等により、セグメント資産は1,668億84百万円と前連結会計年度末に比べ、166億65百万円減少しました。
ⅱ)経営成績
(売上高)
当連結会計年度の連結売上高は1兆5,162億55百万円となりました。
国内トラック市場につきましては、半導体等、部品供給の改善に伴う各社の事業活動の回復により、売上高は2,933億23百万円となりました。
海外トラック・バスにつきましては、アセアンを中心とした需要の減速傾向により、売上台数が減少し、売上高は5,315億33百万円となりました。
トヨタ向け車両につきましては、SUVおよび小型トラックともに台数が減少し、売上高は722億6百万円となりました。
その他の部門の売上高につきましては、国内、海外における補給部品の売上高が増加したこと等により、6,191億92百万円となりました。
(営業利益)
国内での出荷再開による販売台数の増加及び為替環境の好転はあったものの、材料市況の高騰等により、連結営業損失は81億3百万円と前期に比べ255億10百万円の減益(前期は174億6百万円の連結営業利益)となりました。尚、売上原価の売上高に対する比率は84.6%(前期は84.1%)、販売費及び一般管理費の売上高に対する比率は15.9%(前期は14.7%)となりました。
(経常利益)
当連結会計年度は、経常損失は92億33百万円と前期に比べ250億21百万円の減益(前期は157億87百万円の経常利益)となりました。
(税金等調整前当期純利益)
当連結会計年度は、国内認証関連損失242億16百万円及び北米認証関連損失363億63百万円を特別損失に計上した一方で、固定資産売却益920億67百万円を特別利益に計上したこと等により、税金等調整前当期純利益は430億88百万円と前期と比べ1,326億12百万円の増益(前期は895億24百万円の税金等調整前当期純損失)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度の税金費用(法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額の合計額)は、178億67百万円と前期に比べ7億51百万円の減少となりました。
また、非支配株主に帰属する当期純利益は、81億32百万円と前期に比べ13億87百万円減少しました。
以上により、親会社株主に帰属する当期純利益は170億87百万円と前期に比べ1,347億52百万円の増益(前期は1,176億64百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
(日本)
日野ブランド事業の国内向けトラック・バスの売上高は、半導体等、部品供給不足の緩和等により、増収となりました。海外向けについては、アセアン向けを中心として売上台数が減少し、北米向けの売上台数は増加するも、全体としては減収となりました。また、トヨタ向けについてはプラドやFJクルーザー、ダイナ等で台数減により減収となりました。
以上により、売上高は1兆264億82百万円と前年同期に比べ35億77百万円(0.3%)の増収となりました。損益面におきましては、セグメント損失(営業損失)は156億40百万円と前年同期に比べ181億70百万円の減益(前年同期は25億29百万円のセグメント利益)となりました。
(アジア)
主にインドネシア等の売上台数が減少したこと等により、売上高は4,613億69百万円と前年同期に比べ756億17百万円(△14.1%)の減収となりました。セグメント利益(営業利益)は、319億1百万円と前年同期に比べ102億12百万円の減益(△24.2%)となりました。
(その他)
北米・中近東を中心として売上台数が増加したこと等により、売上高は2,795億77百万円と前年同期に比べ193億85百万円(7.5%)の増収となりました。セグメント損失(営業損失)は、263億21百万円と前年同期に比べ87億28百万円の減益(前年同期は175億92百万円のセグメント損失)となりました。
ⅲ)生産、受注及び販売の実績
(a)生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
区分 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
日本 |
トラック・バス(台) |
95,591 |
△12.6 |
|
トヨタ向け車両(台) |
104,241 |
△18.3 |
|
|
アジア |
トラック・バス(台) |
30,429 |
△27.8 |
|
トヨタ向け車両(台) |
85 |
△73.8 |
|
|
報告セグメント計 |
トラック・バス(台) |
126,020 |
△16.8 |
|
トヨタ向け車両(台) |
104,326 |
△18.4 |
|
|
その他 |
トラック・バス(台) |
6,891 |
+17.2 |
|
トヨタ向け車両(台) |
- |
- |
|
|
合計 |
トラック・バス(台) |
132,911 |
△15.6 |
|
トヨタ向け車両(台) |
104,326 |
△18.4 |
(b)受注実績
当社グループは国内及び海外の販売実績及び販売見込等の資料を基礎として見込生産を行っております。尚、トヨタ向け車両についてはトヨタ自動車株式会社からの受注に基づき生産しております。
(c)販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
日本(百万円) |
1,026,482 |
+0.3 |
|
アジア(百万円) |
461,369 |
△14.1 |
|
報告セグメント計(百万円) |
1,487,852 |
△4.6 |
|
その他(百万円) |
279,577 |
+7.5 |
|
調整額(百万円) |
△251,174 |
△19.7 |
|
合計(百万円) |
1,516,255 |
+0.6 |
(注)2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
|
相手先 |
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
||
|
金額 (百万円) |
割合 (%) |
金額 (百万円) |
割合 (%) |
|
|
トヨタ自動車㈱ |
116,858 |
7.8 |
93,859 |
6.2 |
(2)キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
①キャッシュ・フローの状況及び分析
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、有形固定資産及び投資有価の売却等による資金の増加があった一方、認証関連損失引当金の減少による資金の減少により、前期末に比べ79億50百万円減少(前期は130億20百万円増加)し、677億33百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動による資金の減少は1,104億10百万円(前期は407億99百万円の減少)となりました。これは棚卸資産が406億44百万円増加(前期は458億36百万円の増加)したことに加えて、認証関連損失引当金が789億49百万円減少(前期は701億8百万円の増加)したこと等によります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動による資金の増加は392億44百万円(前期は602億57百万円の減少)となりました。これは有形固定資産の売却による収入が992億90百万円(前期は75億88百万円)あった一方で、生産設備を中心とした有形固定資産の取得による支出が673億21百万円(前期は583億34百万円)あったこと等によります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動による資金の増加は556億38百万円(前期は1,142億8百万円の増加)となりました。これは、短期借入金の純増加額が630億88百万円(前期は959億32百万円の増加)あったこと等によります。
②資金需要
当社グループの資金需要の主なものは、設備投資、投融資などの長期資金需要と製品製造のための材料及び部品購入のほか、製造費用、販売費及び一般管理費等の運転資金需要であります。
③契約債務
2024年3月31日現在の契約債務の概要は以下のとおりであります。
|
|
年度別要支払額(百万円) |
||||
|
契約債務 |
合計 |
1年以内 |
1年超3年以内 |
3年超5年以内 |
5年超 |
|
短期借入金 |
328,010 |
328,010 |
- |
- |
- |
|
1年内返済予定の長期借入金 |
22,251 |
22,251 |
- |
- |
- |
|
長期借入金 |
12,258 |
- |
11,289 |
968 |
- |
|
1年内償還社債 |
3,367 |
3,367 |
- |
- |
- |
|
社債 |
7,902 |
- |
7,902 |
- |
- |
④財務政策
当社グループは、事業活動のための適切な資金調達、適切な流動性の維持及び財務構造の安定化を図ることを財務方針としております。設備投資、投融資などの長期資金需要に対しては、内部留保、長期借入債務及び社債の発行により、また、運転資金需要には短期借入債務により対応しております。借入債務については、主にトヨタ自動車株式会社、金融機関からの借入れによって調達しております。
また、当連結会計年度末において、株式会社三菱UFJ銀行及び株式会社三井住友銀行との間で合計220,000百万円のコミットメントライン契約を締結しております(借入実行残高62,500百万円、借入未実行残高157,500百万円)。
加えて、資金マネジメントについては、当社と子会社の資金管理の一元化を図るなかで、緊密な連携をとることにより、グローバルな資金効率の向上を図っております。
(3)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。連結財務諸表の作成にあたり、期末時点の状況をもとに、各種の見積りと仮定を行っております。連結財務諸表に与える影響が大きいと考えられる項目は以下のとおりです。
① 繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について定期的に回収可能性を検討し、当該資産の回収が不確実と考えられる部分に対して評価性引当額を計上しております。回収可能性の判断においては、将来の課税所得見込額と実行可能なタックス・プランニングを考慮し、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると考えられる範囲で繰延税金資産を計上しております。
将来の課税所得見込額はその時の業績等により変動するため、課税所得の見積に影響を与える要因が発生した場合は、回収懸念額の見直しを行い繰延税金資産の修正を行うため、親会社株主に係る当期純損益額が変動する可能性があります。
② 退職給付債務及び退職給付費用
退職給付債務及び退職給付費用は、主に数理計算で設定される退職給付債務の割引率、年金資産の長期期待運用収益率等に基づいて計算しております。割引率は、従業員の平均残存勤務期間に対応する期間の安全性の高い長期債利回りを参考に決定し、また、年金資産の長期期待運用収益率は、過去の運用実績及び将来見通し等を基礎として設定しております。割引率及び長期期待運用収益率の変動は、将来の退職給付費用に影響を与える可能性があります。
③ 製品保証引当金
当社は、製品のアフターサービスに対する費用の支出に備えるため、保証書の約款及び法令等に従い、過去の実績等を基礎にして計上しております。
引当金の見積り時において想定していなかった製品の不具合による保証義務の発生や、引当の額を超えて保証費用が発生する場合は、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。
④ 認証関連損失引当金
当社は、認証関連課題に関連した損失に備えるため、合理的に見積もることが可能な金額を計上しております。認証問題を起因とする税制優遇追加納付費用5,204百万円及び顧客への燃費補償費用等15,924百万円が含まれています。
引当金の見積り時において想定していなかった認証関連の損失の発生した場合、税制優遇追加納付費用及び顧客への燃費補償費用の見積り前提が変化した場合には、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。
(1)トヨタ自動車株式会社との業務提携
1966年10月より、当社はトヨタ自動車株式会社と業務提携を行っており、現在当社は同社より乗用車「ランドクルーザー250」の生産を受託し、小型トラック「ダイナ」を同社に対してOEM供給しております。また商品相互補完取引、台湾における合弁会社(国瑞汽車株式会社)への共同出資、トヨタ販売網を通じた当社製品の販売など各般にわたって提携関係の発展・強化を図っております。
(2)いすゞ自動車株式会社との株主間協定書
当社といすゞ自動車株式会社は、両社が保有するバス製造子会社である日野車体工業株式会社及びいすゞバス製造株式会社の株式を、バス事業統合準備会社として両社が折半出資により設立したジェイ・バス株式会社へ譲渡すること並びに統合の基本的事項について合意し、2003年9月12日、株主間協定を締結いたしました。
さらにその統合効果を最大限に引き出すことを目的として、ジェイ・バス株式会社はその傘下の両バス製造子会社と、2004年7月30日に合併契約を締結、2004年10月1日に合併いたしました。
(3)中国の上海日野エンジン有限会社の合弁契約書
当社は、今後、トラック・バスの大市場と見込まれる中国で、エンジンの現地生産及び販売を行うことを目的とし、中国のエンジン製造会社である上海柴油機股份有限公司との折半出資で合弁会社を設立する合弁契約を2003年8月6日に調印いたしました。これにより、2003年10月8日に合弁会社を設立いたしました。2007年9月、上海柴油機股份有限公司の出資持分の全部を上海電気(集団)総公司に譲渡したため、当社は上海電気(集団)総公司と修正合弁契約を締結いたしました。2010年4月、上海電気(集団)総公司が、出資持分の一部を広州汽車集団股份有限公司に譲渡したため、当社は上海電気(集団)総公司及び広州汽車集団股份有限公司と修正合弁契約を締結いたしました。2019年6月、上海電気(集団)総公司が、出資持分の全部を当社に譲渡したため、当社は広州汽車集団股份有限公司と修正合弁契約を締結いたしました。
(4)中国の広汽日野自動車有限会社の合弁契約書
当社は、中国において、商用車、シャシ及びエンジン等部品の開発・設計・生産・販売・アフターサービスを行うことを目的とし、中国での自動車製造・販売等を主要事業とする広州汽車集団股份有限公司と折半出資で合弁会社を設立する合弁契約を2007年8月10日に調印し、2007年11月28日に広汽日野自動車有限会社を設立いたしました。2024年1月、当社は広汽日野自動車有限会社における当社持分50%のうち39.72%を広州汽車集団股份有限公司へ、5.45%を広州氢雲(ケイウン)新能源科技投資パートナー企業(有限パートナー)(広汽日野自動車有限会社の経営陣と幹部社員による持株制度の運営を目的とする会社)へ、それぞれ譲渡し、それにより当社が受領する譲渡代金全額を広汽日野自動車有限会社株主が当該譲渡後の持分比率に応じて引き受ける同社の増資の払込みに充当することに合意し、2024年1月26日に契約を締結しました。中国当局の承認その他の手続が完了した後、持分譲渡と増資を実施する予定です。
(5)いすゞ自動車株式会社との北米向け車両OEM受給に関する合意
当社は、北米市場へのクラス4-5モデルの早期供給再開のため、いすゞ自動車株式会社からの北米市場向けディーゼルトラック「Nシリーズ」のOEM受給を決定し、これに伴い、当社の連結子会社である日野モータース セールス U.S.A.株式会社が、いすゞ自動車株式会社の連結子会社であるいすゞノースアメリカコーポレーションと車両供給に関する契約を2021年7月29日に締結しました。当該契約は2023年12月31日、契約期間満了により終了いたしました。
(6)コミットメントライン契約の締結
当社は、2022年11月1日、事業環境の変化に対応するため、機動的かつ安定的な資金調達手段を確保すると共に、財務基盤のより一層の安定を図ることを目的として、以下の内容のコミットメントライン契約を締結いたしました。
・コミットメントライン契約の概要
|
⑴契約形態 |
バイラテラル方式コミットメント契約 |
|
⑵組成金額 |
2,000億円 |
|
⑶契約期間 |
2022年11月1日~2025年3月31日 |
|
⑷担保の有無 |
無担保・無保証 |
|
⑸契約締結先 |
株式会社三菱UFJ銀行 |
(7)三菱ふそうトラック・バス株式会社との経営統合に係る基本合意書の締結
当社は、グローバルでのCASE 技術開発・商用車事業の強化を通じたカーボンニュートラルの実現、豊かなモビリティ社会の創造に向けて協業するため、三菱ふそうトラック・バス株式会社(以下「三菱ふそう」という。)との経営統合(以下「本経営統合」という。)について合意し、当社、三菱ふそうトラック・バス株式会社、当社の親会社であるトヨタ自動車株式会社(以下「トヨタ」という。)及び三菱ふそうトラック・バス株式会社の親会社であるダイムラートラック社(以下「ダイムラートラック」という。)の4社で、基本合意書(以下「本基本合意書」という。)を2023年5月30日に締結しました。なお、本基本合意書は本経営統合に関する法的拘束力のない合意であり、今後、当社、三菱ふそう、トヨタ及びダイムラートラックの4社において、本経営統合を実現するための取引の諸条件に関する法的拘束力のある契約(以下「最終契約」という。)を締結する予定です。
① 本経営統合の目的
本経営統合により、当社、三菱ふそう、トヨタ及びダイムラートラックは、グローバルでのCASE技術開発・商用車事業の強化を通じたカーボンニュートラルの実現、豊かなモビリティ社会の創造に向けて、以下の協業を行ってまいります。
■ 当社と三菱ふそうは対等な立場で統合し、商用車の開発、調達、生産分野で協業。グローバルな競争力のある日本の商用車メーカーを構築
■ ダイムラートラックとトヨタは、両社統合の持株会社(上場)の株式を同割合で保有。水素をはじめCASE技術開発で協業、統合会社の競争力強化を支える
② 本経営統合の方法、本経営統合に係る割当ての内容その他の本経営統合の内容
(ア)本経営統合の方法
本経営統合は、当社及び三菱ふそう(又はそれぞれの事業を営む会社)が統合会社(以下「本統合会社」という。)の完全子会社となる方法により実施する予定です。
また、トヨタ及びダイムラートラックの本統合会社の持分比率に関して、それぞれトヨタ及びダイムラートラックで別途合意する比率を保有し、その持分比率は同割合とする予定です。そのため、本経営統合の実施後、トヨタは当社の親会社でなくなる見込みです。なお、本統合会社の株式については東京証券取引所プライム市場及び名古屋証券取引所プレミア市場に上場されることを想定しております。
本統合会社の事業範囲及び持分比率を含む経営統合の具体的な形態及びその方法については、競争法当局との協議も踏まえ、当社、三菱ふそう、トヨタ及びダイムラートラックの4社において今後も引き続き協議の上で、下記「(イ)本経営統合に係る割当ての内容」に記載の原則に基づき、最終的に決定する予定です。
なお、本経営統合の日程に関しては、2024年3月の最終契約締結、及び2024年12月末までの本経営統合の実施を目指して、当社、三菱ふそう、トヨタ及びダイムラートラックの4社において協議しておりましたが、2024年2月に開示したとおり、競争法その他の法令に基づく必要な許認可取得や、当社のエンジンの排出ガス及び燃費を含む認証に関する問題(以下「エンジン認証問題」という。)への対応が継続しているため、日程を延期することに合意しました。最終契約の締結時期及び本経営統合の実施時期については、今後も引き続き4社間で協議の上で決定する予定です。
(イ)本経営統合に係る割当ての内容
本経営統合の統合比率は、現時点では確定しておらず、当社、三菱ふそう、トヨタ及びダイムラートラックの4社において今後協議の上で合意する予定です。
当社は、エンジン認証問題について従前から開示をしておりますが(2023年6月27日付第111期有価証券報告書等をご参照ください。)、エンジン認証問題にかかるリスクについては、三菱ふそうの株主は負担すべきではないとの基本的な考え方から、本経営統合の統合比率算定のベースとなる当社の株式価値については、大要以下の方法により、算定することを予定しております。
より具体的には、当社及び三菱ふそうの株式価値は、今後実施される予定のデュー・ディリジェンスの結果や、当社及び三菱ふそうがそれぞれ起用する第三者算定機関による価値算定の結果等の諸要素を踏まえて当事者間で協議・合意された当社及び三菱ふそうの企業価値(当社については、エンジン認証問題に関する潜在債務の影響を織り込まずに合意された企業価値)を基準として、本経営統合の実施日前の一定時点(具体的には、本経営統合の承認に係る当社の株主総会開催日から遡った直前四半期末日を想定しており、以下「本基準日」という。)において、純有利子負債及び運転資本等による調整を行い、最終的に確定する予定です。なお、今後の各種手続の進捗にもよるものの、当社のエンジン認証問題にかかる潜在債務の相当部分については、本基準日時点において合理的な見積に基づく引当てを行うことができる可能性があり、本基準日までに引き当てられた金額(以下「本引当金」という。)は、本基準日における純有利子負債の調整等による当社の株式価値算定に際して、当社の企業価値から控除されることになります。
(ウ)その他の本経営統合の内容
(a)エンジン認証問題に関する特別補償
本基準日以降に、本引当金に含まれないエンジン認証問題に起因する潜在債務が顕在化し、これにより本統合会社、当社又は三菱ふそうの株主が損害を被った場合、本統合会社及び当社は、当該株主が一定の条件に関し同意することを条件として、三菱ふそうの株主に対して、その損害につき一定の金銭補償義務を負う旨を最終契約に規定することを予定しています。
(b)本経営統合の成否及び条件等に関するリスク
「第2 事業の状況 3.事業等のリスク (11)三菱ふそうトラック・バス株式会社との経営統合の成否及び条件等に関するリスク」をご参照ください。
③ 三菱ふそうの概要
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(ア) |
名称 |
三菱ふそうトラック・バス株式会社 |
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(イ) |
所在地 |
神奈川県川崎市中原区大倉町10番地 |
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(ウ) |
代表者の役職・氏名 |
代表取締役社長 CEO カール・デッペン |
|
(エ) |
事業内容 |
トラック・バス、産業エンジンなどの開発、設計、製造、売買、輸出入、その他取引業 |
|
(オ) |
資本金 |
35,000百万円(2023年12月31日現在) |
(8)不動産売買契約の締結
当社は、2023年9月28日、経営資源の有効活用と資産効率向上のため、固定資産の一部(遊休資産等)である以下の不動産について、三井不動産株式会社に譲渡する不動産売買契約を締結し、同日引渡しを実施いたしました。
・譲渡資産の内容
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譲渡資産の内容および所在地 |
帳簿価額 |
譲渡益 |
現況 |
|
土 地 11.4万㎡ 所在地 東京都日野市日野台3丁目 1番地1 |
1億円 |
約500億円 |
工場用地 (日野工場の一部) |
(9)いすゞ自動車株式会社、スズキ株式会社、ダイハツ工業株式会社およびトヨタ自動車株式会社との商用事業にお
ける協業の合意
当社といすゞ自動車株式会社およびトヨタ自動車株式会社は、商用事業において新たな協業に取り組むことに2021年3月24日に合意し、2021年4月、協業を推進するため、商用車におけるCASE技術・サービスの企画を事業内容とするCommercial Japan Partnership Technologies株式会社を設立いたしました。
2021年7月21日、協業体制を軽自動車まで拡大することにより、トラックから軽商用車まで一気通貫での物流効率化を図ることを目的として、上記3社の合意にスズキ株式会社およびダイハツ工業株式会社が加わり、両社は Commercial Japan Partnership Technologies株式会社に出資をしました。
2022年8月24日、Commercial Japan Partnership Technologies株式会社において、当社における認証不正問題を踏まえ当社を除名するという意思決定がなされたことを公表しました。これを受けて、2022年8月31日、当社は、共同企画契約等の協業に関する契約の当事者から外れるとともに、当社のCommercial Japan Partnership Technologies 株式会社への出資持分(10%)をトヨタ自動車株式会社に譲渡しました。
2023年10月2日、Commercial Japan Partnership Technologies株式会社において、当社における認証不正問題への信頼回復に向けての取り組みやそれに対する世間の評価等を鑑み、当社の復帰を認めるという意思決定がなされました。これを受けて、同日、当社は、共同企画契約等の協業に関する契約の当事者に復帰するための契約を締結するとともに、トヨタ自動車株式会社に譲渡したCommercial Japan Partnership Technologies株式会社への出資持分 (10%)をトヨタ自動車株式会社から譲り受けました。
2024年2月13日、Commercial Japan Partnership Technologies株式会社は、ダイハツ工業株式会社からの認証不正を踏まえたCommercial Japan Partnership Technologies株式会社脱退の申し入れを受け、承認しました。これを受けて、2024年2月29日、ダイハツ工業株式会社は、共同企画契約等の協業に関する契約の当事者から外れるとともに、ダイハツ工業株式会社のCommercial Japan Partnership Technologies株式会社への出資持分(10%)をトヨタ自動車株式会社に譲渡しました。
(10)米国における訴訟に関する和解契約の締結
過去の不正行為等に起因して損害を被ったなどとして、米国において提起されていた暫定的な集団訴訟について、 当社、並びに当社の子会社であるHINO MOTORS MANUFACTURING U.S.A., Inc.及びHINO MOTORS SALES U.S.A., Inc. は、2023年10月25日に、和解金237.5百万米ドルを支払うことを内容とする和解契約を、当社の2010年から2019年モデルのエンジンを搭載し、米国内で販売・賃貸されたオンロード車両を購入した者又は賃借した者との間で締結しました。
(11)不動産売買契約の締結
当社は、2024年3月22日、経営資源の有効活用と資産効率向上のため、固定資産の一部である以下の不動産について、譲渡する不動産売買契約を締結し、同日引渡しを実施いたしました。
・譲渡資産の内容
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譲渡資産の内容および所在地 |
帳簿価額 |
譲渡益 |
現況 |
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土 地 267千㎡ 所在地 埼玉県日高市大字上鹿山 |
41億円 |
約400億円 |
完成車置き場 関係会社工場 |
*譲渡先については、譲渡先との守秘義務により記載を省略しております。
日野グループは、HINO基本理念において「人、そして物の移動を支え、豊かで住みよい世界と未来に貢献する」を会社の使命とし、人流・物流の課題の解決を通じて、持続可能な社会の実現に貢献しています。
技術・技能の継承と創造・革新・改善を続け、安全かつ高品質で、お客様のビジネスのお役に立つ商品・サービスを提供しています。
また、物流と人流を支える事業活動を通じて、お客様・社会の課題解決に積極的に取り組んでいます。
2022年3月に確認、公表したエンジン認証申請における不正行為においては、お客様、仕入先様はじめ、全てのステークホルダーにご迷惑をお掛けしました。信頼回復に向けた、抜本的な再発防止および、コンプライアンス・ファーストの企業体質再構築に取り組んでおります。
セグメントごとの研究開発活動を示すと次のとおりであります。
(日本)
[最近の新製品、新技術]
(1) 株式会社ドコマップジャパン(以下 ドコマップジャパン)と日野自動車株式会社(以下 日野)は、「docomap
Vehicle」に「プレミアムプラン」を追加し、2023年4月よりサービスを開始しました。「docomap Vehicle」は
ドコマップジャパンの車両位置情報管理サービス「DoCoMAP※(ドコマップ)」と日野のテレマティクスサービス
「HINO-CONNECT(ヒノコネクト)」が連携し、車両に専用GPS端末を設置することなく車両の位置情報を確認・管
理できるサービスとして、2022年4月より提供を開始しています。
今回新たに提供するプレミアムプランでは、対象車両の位置情報や走行履歴、車両の速度表示などベーシック
プランの機能に加え、環境問題に取り組む企業へのサポートを充実させるほか、安全装置の作動状況を確認でき
るなど、ドライバーの安全運転の意識向上に貢献します。
ドコマップジャパンと日野は、今後もDoCoMAPとHINO-CONNECTの連携を強化し、更なるサービスの拡充に
向け技術開発に邁進し、より安全で効率的な物流に貢献してまいります。
※車両に取り付けたGPS端末からの位置情報で、車両の位置をGoogleMaps上に表示・管理する車両位置情報管理サ
ービス。DoCoMAPは株式会社ドコマップジャパンの登録商標です。
(2) A09Cエンジンを搭載した大型トラック「日野プロフィア」を一部改良し、発売しました。今回の改良では、レーンキーピングアシスト※1、ドライバー異常時対応システム※2、オートヘッドランプを標準搭載し、安全運転をサポートします。なお、新しく導入される燃費試験方法であるJH25モードでの燃費値表示に対応しています。
※一部車型を除く
※1 レーンキーピングアシスト(LKA)
走行車線の左右白線をカメラで検知し、車線を逸脱しそうになると、システムがステアリング操作を電動アシ
スト制御します。
※2 ドライバー異常時対応システム(EDSS:Emergency Driving Stop System)
ハンドル手放し検知、ドライバーモニターⅡ、画像センサーによる車線逸脱状態判定より、ドライバーの異常
状態を検知すると、車内外に報知しながら制動を開始し、徐々に速度を落として車線内を維持しながら停止さ
せます。
(3) 持続可能な地域公共交通を支える新たな取り組みとして、自家用有償旅客運送※1向けの遠隔による運行管理受託サービスを、開始しました。また、鳥取県智頭町にて本サービスの提供を同日より開始しています。遠隔による運行管理業務を専門に受託する事業は、メーカーを含む民間企業として全国初の取り組みとなります(日野調べ)。
地方部においては人口減少や少子高齢化により、公共交通の維持が困難になるなど、人の移動を取り巻く環境は厳しいものになっています。このような地域では、市町村自治体やNPO団体等を運営主体とした自家用有償旅客運送を導入するケースが増えています。一方、こうした運営主体においては、交通事業に関するノウハウや後継者不足等により事業の継続に課題を抱えているケースは少なくありません。特に運行管理業務は点呼対応や帳票管理等の業務負荷が高いという声が多く聞かれています。
本サービスでは、日野が運営主体から委託を受け、運行管理業務を遠隔で行います。主な受託内容としては、ドライバーへの運行前後の点呼をはじめ、乗務記録や車両点検など法令で定められている業務の結果を帳票に記録、保管します。運行管理担当者がドライバーとスマートフォンやタブレット等で繋がることで、場所を問わずに遠隔での点呼※2を可能とし、中山間地等においてはドライバーが点呼場所へ移動する手間なく業務を開始できるようになります。
日野は、2019年7月に石川県小松市、香川県三豊市と「地域公共交通を活かした魅力あるまちづくりに関する協定」を結び、地域の皆様と実証実験等を行いながら、地域公共交通を支える持続可能なソリューションの検討を行ってきました。今後も自家用有償旅客運送の支援に留まらず、地域公共交通における課題解決に貢献していきます。
※1 バスやタクシーなどが運行されていない地域などにおいて、自家用車を使用して有償で旅客運送できる制度
※2 遠隔点呼の実施には地域協議会での合意が必要
(4) 小型トラック「日野デュトロ」の積載量1.5tクラスを一部改良し、発売しました。今回の改良では、バックカメラ・電子インナーミラーを全車標準装備するとともに、これまでの平ボデーに加えて新たにアルミバン、テールゲートといった架装ラインアップを追加し、お客様の安全性・利便性を向上します。
なお、エンジンはトヨタ自動車株式会社開発の1GD-FTVディーゼルエンジンを搭載しており、新しく導入された
燃費試験方法であるJH25モードでの燃費値のカタログ表記などにも対応しています。
(5) 大型路線バス「日野ブルーリボンハイブリッド」を一部改良し、発売しました。今回の改良では、自動検知式ドライバー異常時対応システム※、オートヘッドランプ、バックカメラ・モニターを搭載し、安全運転をサポートします。また、換気扇の吸気性能を高めるとともに排気用のエアアウトレットグリルを追加することで、換気能力向上に貢献します。これらはすべて標準装備となります。
なお、新しく導入された燃費試験方法であるJH25モードでの燃費値のカタログ表記などにも対応しています。
※ドライバー異常時対応システム(EDSS:Emergency Driving Stop System)
ドライバーモニターⅡや車線逸脱警報によりドライバーの運転姿勢や車両の挙動をモニターし、体調急変などに
よるドライバーの異常な状態を自動検知して徐々に減速し車両を停止させます。
(6) 苫小牧栗林運輸株式会社と日野自動車株式会社と株式会社三井E&Sが取り組む、「コンテナヤード内横持トレーラー※1運行の高度化に関する技術開発」が、国土交通省の令和5年度港湾技術開発制度に採択されました。
同技術開発は、物流の2024年問題における労働力不足等の課題解決、労働環境の改善、将来にわたっての港湾
機能の維持に向けて、令和7年度までの3年間にわたり、苫小牧港東港区苫小牧国際コンテナターミナル内におい
て実施してまいります。
本取り組みでは、既存のターミナルオペレーションシステム(以下 TOS)、運行管理システム、TOSと横持トレ
ーラーとの情報連携機能の開発と、同車両の運転補助※2機能を開発します。現在、ターミナル内横持トレーラ
ー※1は紙の指示書によって運行していますが、今回の技術開発によって、運転補助機能を搭載した同車両が、
TOSからコンテナの行き先指示を受けて運行することを目指します。車両には監視員が搭乗し安全監視を行いま
す。
今回の技術開発を踏まえ、さらなる生産性向上と労働環境改善の効果確認と将来に向けて本技術の活用検討を
進めてまいります。
※1 横持(よこもち)トレーラー:ターミナル内のコンテナの移動に使われるトレーラー
※2 運転補助:特定条件下においてシステムが全ての運転操作を実施する。搭乗した監視員が周辺安全監視を行うと共に、異常時にシステムからの警報に対して監視員が適切に対応する。
(7) 中型トラック「日野レンジャー」を一部改良し、発売しました。今回の改良では、エンジンおよびシャシに対し遮音カバー・吸音材を装着し、騒音規制※への対応を実施します。また、新しく導入された燃費試験方法であるJH25モードでの燃費値のカタログ表記などにも対応しています。
※車両総重量12t以下のクラス
(8) 小型トラック「日野デュトロ」の積載量2tクラスを一部改良し、発売しました。今回の改良では、バックカメラ・電子インナーミラー、オートヘッドランプ、デイタイムランニングライト※を全車標準装備し、お客様の安全性を向上します。なお、新しく導入された燃費試験方法であるJH25モードでの燃費値のカタログ表記などにも対応しています。
※昼間走行時に点灯することで、周囲からの視認性を高め、事故防止に貢献する
(9) 大型トラック「日野プロフィア ハイブリッド」を一部改良し発売しました。今回の改良では、非常時など電力が必要な場合に大容量バッテリーに蓄えられた電気を使用することができる外部給電機能※1を新規設定しました。また、プリクラッシュセーフティーシステム(PCS)※2やサイトアラウンドモニターシステム(SAMS)※3の性能向上ほか、ドライバー異常時対応システム(EDSS)※4、レーンキーピングアシスト(LKA)※5といった装備を搭載し、安全運転をサポートします。これらは全て標準装備となります。
なお、騒音規制への対応ほか、新しく導入された燃費試験方法であるJH25モードでの燃費値のカタログ表記な
どにも対応しています。
※1 「外部給電器」(別売り)を通して、家電が使用できる電力への変換が必要です。
※2 昼夜の歩行者や自転車運転者を検知し、トラックの衝突・追突事故の抑制に貢献します。PCSはトヨタ
(株)の商標です。
※3 前方死角エリアでの移動物を検知し、衝突のおそれがある場合にメーター表示と警報でドライバーに注意を
促します。
※4 ドライバーモニターⅡや車線逸脱警報によりドライバーの運転姿勢や車両の挙動をモニターし、体調急変な
どによるドライバーの異常な状態を自動検知して徐々に減速し車両を停止させます。
※5 走行車線の左右白線をカメラで検知し、車線を逸脱しそうになると、ステアリング操作を電動アシスト制御
します。
(10) 大型観光バス「日野セレガ」を一部改良し、発売しました。今回の改良では、レーンキーピングアシスト(LKA)※1、オートヘッドランプの新規設定のほか、プリクラッシュセーフティシステム(PCS)※2の作動条件拡大や、ドライバー異常時対応システム(EDSS)※3の車線内停止機能の追加といった各種装置の性能向上により、安全運転をサポートします。また、法規対応※4としてバックカメラ・モニターの装置変更を行っています。なお、これらの機能は全て標準装備となります。
※1 走行車線の左右白線をカメラで検知し、車線を逸脱しそうになると、ステアリング操作を電動アシスト制御
します。
※2 昼夜の歩行者や自転車運転者を検知し、車両の衝突・追突事故の抑制に貢献します。PCSはトヨタ(株)の
商標です。
※3 ドライバーモニターⅡや車線逸脱警報によりドライバーの運転姿勢や車両の挙動をモニターし、体調急変な
どによるドライバーの異常な状態を自動検知して徐々に減速し車両を停止させます。
※4 後退時車両直後確認装置の設置義務化
(11) 日野自動車株式会社(以下 日野)は、株式会社大林組(以下 大林組)と、実際のダム建設現場である新丸山ダム(岐阜県加茂郡八百津町、御嵩町)において自動自律建機等と自動運転ダンプ(レベル4相当)※1のDX施工※2に向けた実証実験を2023年12月までの4カ月間実施しました。
日野は、物流業・建設業が直面する課題の解決や持続可能な社会実現のため、CASE※3技術の活用ならびにお客様・パートナーとの共創によるソリューションの更なる深化を推進しています。その一環として、大林組とは互いの知見を合わせ自動自律建機等および自動運転ダンプの実用化に向けて取り組んでおり、両社での建設現場における実証実験は、2020年11月に実施以来二度目となります。
本実証では自動自律建機、自動運転ダンプ、ならびに有人運転建機と有人運転ダンプを、大林組の開発する建機フリートマネジメントシステム※4下で管制し、掘削積込みから運搬、敷き均し、転圧までの盛土工事を、計画から品質管理まで全自動化した実現検証を行いました。
※1 限定領域内の無人走行を想定した自動運転
※2 AI、ICT、IoT等のデジタル技術を取り入れて複合的に活用し、建設プロセス全体を最適化するもの
※3 C=Connected(コネクティッド・接続性)、A=Autonomous(自動運転)、S=Shared(シェアード・共有)、E=Electric(電動化)の頭文字からとった造語。新しい領域で技術革新、自動車業界を取り巻く変革の動き(トレンド)のこと
※4 複数台の建設機械が連動して協調運転するよう制御するシステム
■自動運転ダンプトラック
本実証で使用した自動運転ダンプは、ベース車両である大型トラック「日野プロフィア」に自動運転技術を搭
載しており、日々刻々と変化する施工現場内の不整地において、前後進、自動ダンプアップ/ダウン等のオペレー
ションを実行します。
車両の自己位置把握や走行安全機能はこれまでの実証実験から大幅なレベルアップを図るとともに、外部指示
に基づく自動経路生成や他車両との相対位置把握、高精度な正着制御を新技術として搭載しております。
本実証では安全を最優先し、想定外の事象に備えてシステム監視者が乗車しました。本実証の結果を踏まえ実
用化に向けた検討を進めるとともに、今後は自動運転トラック複数台が連携する無人化施工の実装を目指しま
す。
[最近の主な成果]
(1) 株式会社加藤製作所、新明工業株式会社、中部国際空港株式会社、日野自動車株式会社は、滑走路や誘導路を含む空港制限区域内における現場作業の安全性確保や生産性向上、労働力不足などの課題解決に向け、実証実験を実施しました。
本実証は、自動運転(レベル2相当)※1に対応した小型トラックをベースに、自動運転と路面清掃の技術連携により高機能化させた路面清掃車(真空吸込式)を用いて中部国際空港(愛知県常滑市)で実施します。本実証では、滑走路や誘導路を含む空港制限区域における路面清掃車としては日本で初めて自動運転車を導入します。
夜間や単調作業下での安全運行や、重複清掃や清掃漏れの削減による清掃品質や効率向上の確認、準中型免許で運転可能な小型トラックをベースとした路面清掃車の有用性についてデータを取得することを主な目的としています。本実証の結果を踏まえ、空港制限区域内での高機能化させた路面清掃車の実用化に向けて検討を進めてまいります。
1. 実証実験概要
(1)期間:2023年5月10日から約3週間
(2)場所:中部国際空港制限区域内(滑走路、誘導路、その他)
(3)車両:小型トラック「日野デュトロ」をベースに、加藤製作所が「真空吸込式路面清掃車」を製作し、新明工業
にて自動運転に必要な改造を実施
(4)台数:1台
2. 自動運転および利用システム
本実証で使用する車両は、小型トラックに自動運転技術を搭載し、時速20km以下で走行します。車両の走行位置や
経路は、GNSSデータ※2、LiDAR※3、赤外線カメラで把握し、障害物を検知すると自動で停止します。清掃区間ま
でドライバーが運転し、区間内は自動運転に切り替えて路面を清掃します。架装部分の清掃装置はタブレット操作に
より自動運転と連動して自動で清掃作業を行います。
※1 自動運転(レベル2相当):ドライバーが周辺監視を行い、特定条件下での自動運転機能(高機能化)
※2 GNSS:Global Navigation Satellite System、GPSなどの全地球衛星測位システム
※3 LiDAR(ライダー): Light Detection And Ranging、周辺環境の立体的な様子を捉える技術や機器
以上、当連結会計年度の「日本」セグメントの研究開発費の総額は、
(アジア)
主にASEAN最適車の現地での一貫した商品化・生産供給を目的として、タイ国内の商品企画・開発・生産の機能を集約・強化を進めてまいります。
当連結会計年度の「アジア」セグメントの研究開発費の総額は、
(その他)
該当事項はありません。