当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
2019年4月に改定した経営理念は、ミッション(使命)、ビジョン(未来・目指す姿)、バリュー(価値観)の3つから成る、以下のような体系です。
※燦ホールディングスグループ経営理念
燦ホールディングスグループ経営理念のミッション「人生に潤いと豊かさを。よりよく生きる喜びを。」は、葬儀事業からライフエンディングのトータルサポート企業へ、また新規事業の展開へと新しい価値を創り出すことに挑戦しつづける当社が、商品やサービスを通じてお客様と地域の人々の人生に潤いと豊かさを感じてもらうこと、よりよく生きる喜びを感じてもらうことが社会に果たすべき使命であるということを意味しています。
ビジョンは、当社の目指すべき未来の姿として、人の心に寄り添い、人生の喜びと幸せを創出する企業、新しい価値、高い付加価値を創造し、持続的に安定成長していく企業、一人ひとりが情熱を持って、主体的に行動し挑戦しつづける企業になることを掲げました。
バリューは、ミッション、ビジョンを実現するために、当社グループとして大切にすべきこと、価値観をまとめました。
それに加えて、2022年4月に私たちの社会に対しての存在意義、存在価値をあらためて定義し、当社グループのパーパスを制定しました。
※燦ホールディングスグループパーパス
このパーパスと経営理念のもとに、人生100年時代の社会に貢献する取組みを進めていきます。
(2)経営環境と経営戦略
超高齢社会において、2040年までは死亡者数が増加すると予測されています。その一方で少子化が進み、日本の人口は減少傾向で将来を担う若者が減少する中、高齢者の割合が年々高まっています。
これらの社会情勢は人々の価値観に影響しており、葬儀についても家族を中心に近しい人だけで行う家族葬のほか、無宗教葬や一日葬など葬儀の形が多様化し、同時に葬儀の小規模化傾向は続いており、葬儀施行単価の下落につながっています。
そうした中、葬儀事業者による葬祭会館の新規出店や、葬儀紹介業者によるインターネットを通じた集客など、事業者間の激しい競争が続いています。
こうした事業環境の変化に対して、当社は2032年に迎える創業100周年に向けて当社のありたい姿を「新10年ビジョン」として策定しました。当社がこれまで築き上げてきた「信頼」とそのベースとなる「サービス品質」という強みをより一層磨き続けながら、「葬儀事業者」から「シニア世代とそのご家族によりそい、ささえるライフエンディングパートナー」への進化を実現させていきます。そのために以下の2つに挑戦します。
① 当社は葬祭業界のリーディングカンパニーとして、現状より幅広い層のお客様にご満足いただけるサービスを提供するために、出店エリアを全国規模に広げ、葬儀会館数は2031年度にはグループ全体で210会館を目指します。
② ライフエンディングサポート事業(注)をさらに拡大させ、シニア世代のライフエンディング・ステージを通じて様々な価値を提供することで、多くのシニア世代とそのご家族のクオリティ・オブ・ライフ向上に貢献します。2031年度には売上100億円を目指し、当社グループの事業の柱へと育てます。

(注)ライフエンディングサポート事業:ライフエンディング・ステージにおいて必要とされる、日常生活や、人生の「終末期」の準備サポート等、安心して心豊かな老後の時間を過ごすために必要とされるサービスや商品を提供することで、社会に貢献する事業。
(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
新10年ビジョン実現に向けて、経営環境の変化の兆候を捉え、戦略を確実に推進するため、3ヵ年の中期経営計画を3回策定・実行することを想定しています。2022年4月に策定したその第1期となる中期経営計画(2022年度~2024年度)において、以下の5つを重点課題として進めていきます。
① 葬儀事業の拡大
これまで葬儀事業で提供してきた葬儀ブランドに加えて、価格を抑えながらも高品質のサービスを提供する家族葬専用の新たな葬儀ブランド「エンディングハウス」を立ち上げました。この新葬儀ブランドを中心とした低投資・低コストオペレーションの会館を全国規模で展開し、より多くのお客様へサービス提供を行っていきます。新葬儀ブランドだけではなく、従来の葬儀ブランドの拡大やM&Aの活用も含めて出店を加速し、3ヵ年で31会館の出店を目指します。
② ライフエンディングサポート事業の拡大
現在葬儀事業会社で行っている葬儀前後のサービスや、子会社のライフフォワード㈱で行っている終活関連プラットフォーム事業などの終活から葬儀後までのライフエンディングサポート事業分野を拡大し、お客様とご家族の長期間のサポートを実現させます。3年後には売上30億円とし、葬儀事業に続く柱となる事業に育成します。
③ 既存葬儀事業の競争力強化
葬儀事業の拡大に向け、コンタクトセンターや葬儀関連業務(お葬式に必要な物の手配、寝台霊柩乗務、事務等)やその業務のコントロール機能など、従来グループ各社で行っていた施策や機能を集約することにより効率的/高品質な業務を提供する体制を実現することや、デジタルマーケティングによる営業機能の強化を行うことで他社との差別化を目指します。
④ 日本一満足・感動いただけるサービスを目指した仕組み強化
付加価値の高いサービスとその品質が当社の強みと認識しており、その質の向上・維持のため、当社の葬儀施行サービス、関連商品(供養品、料理等)、葬儀前後のサポート、空間(会館)に至る品質管理と教育を実施し、クオリティマネジメントシステムを強化し顧客満足度向上を目指します。
⑤ 経営基盤の強化
・成長戦略を加速させるために人材の採用と既存人材の育成を行うことで、組織の経営基盤を強化します。
・ESG(環境、社会、統治)に積極的に取り組み、環境・社会的課題(SDGs等)にも真摯に取り組むことで持続可能な社会の構築に積極的な役割を果たし社会に貢献します。
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
この3ヵ年において営業利益率は15.5%以上を維持し、ROICは7.0%以上を目指します。出店によりコストが先行するため、この3年間の営業利益率及びROICは一時的に悪化しますが、2025年度以降は出店による増益効果で改善を見込んでいます。
(単位:百万円)
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中計1年目 2023年3月期 |
中計2年目 2024年3月期 |
中計3年目 2025年3月期 |
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営業収益 |
20,800 |
21,800 |
23,000 |
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営業利益 |
3,400 |
3,450 |
3,630 |
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営業利益率 |
16.3% |
15.8% |
15.8% |
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ROIC |
7.0% |
7.0% |
7.0% |
※ROIC=税引後営業利益/投下資本
(投下資本=有利子負債+純資産、税引後営業利益=営業利益×(1-実効税率))
(1)サステナビリティ全般
現在、気候変動問題をはじめとする環境・社会的課題(SDGs等)への対応が重要性を増してきており、当社グループにおいても、事業のプロセスにおいてこれらの問題に取り組み、また、当社が目指している「ライフエンディングのトータルサポートサービス」を、社会問題や環境問題の解決に役立つビジネスへ進化させていくことが不可欠となっています。
2021年11月に環境・社会的課題(SDGs等)や改訂コーポレートガバナンス・コード対応等を意識した事業及び経営インフラの整備を推進するため、「人生に潤いと豊かさを。よりよく生きる喜びを。」という経営理念のもと、基本方針に「サステナビリティに配慮した事業マネジメント、ESG経営の推進」を掲げ、「燦ホールディングスグループESG方針」、「ESG行動指針」を制定し、ESGに関する各施策の取り組みを進めるため「ESG推進委員会」を設置しました。今後もグループの企業活動を通じSDGsへの貢献も果たしながら、持続可能な社会の実現を目指すESG経営を推進してまいります。
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燦ホールディングスグループESG方針 私たち燦ホールディングスグループは、グループのパーパス、経営理念(ミッション)、目指す姿 (ビジョン)、価値観(バリュー)に基づき、ライフエンディングのトータルサポート サービスにおいて新たな価値と感動を創造するとともに、環境(Environment)・社会 (Social)・企業統治(Governance)を経営の重要事項と認識し、環境・社会的課題 (SDGs等)に真摯に取り組むことで持続可能な社会の構築に積極的な役割を果たし社会 に貢献するとともに、グループの持続的な成長を目指します。
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ESG行動指針 1.健全な成長を実現する事業活動の推進 2.法令・諸規則の遵守 3.環境に配慮した事業活動の推進 4.保有会館を通じた地域・コミュニティへの貢献 5.顧客満足の向上 6.従業員満足の向上 7.ESG情報の開示
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(ア)ガバナンス ESGに関する各施策の取り組みを進めるための「ESG推進委員会」を2021年11月11日に設置しました。 ESG推進委員会はESGに関する方針や活動計画の審議、決定等を行うこととしています。また、同委員会は、社長が任命するESG推進担当執行役員を委員長として、ESG推進担当執行役員が指名する者にて構成されています(ESG推進体制は右図の通り)。 ESG推進委員会において審議した内容は定期的に取締役会に報告し、各関連部署と連携実施することで、事業活動に反映させています。2023年度は、マテリアリティの特定とマテリアリティに対応した施策やKPIの検討、GHG排出量の算定と削減策等について審議し、取締役会はそれらについて助言を行いました。
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(イ)戦略
当社グループは本中期経営計画(2022年度~2024年度)の中で、経営基盤強化の施策として「ESG経営の推進」を掲げ、ESG経営で注力すべきテーマを以下の通り特定しています。
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「グリーフケア・エンバーミングなど高付加価値のサービスと、質の高いホスピタリティサービスの提供を通じてお客様とそのご家族の心の平穏、そして社会の平穏に寄与してまいります」 |
このテーマは、創業100年に向けて今後10年間に当社グループが進むべき方向、ありたい姿(新10年ビジョン)と整合するものです。
当社グループが拡大を目指す「ライフエンディングサポート事業」とは、ライフエンディング・ステージにおいて必要とされる日常生活や、人生の「終末期」の準備・サポート等、安心して心豊かな老後の時間を過ごすために必要とされるサービスや商品を提供することで、社会に貢献する事業です。当社グループでの具体的な対象事業として、葬祭会社の葬儀前後のサービス、㈱ライフフォワード、エクセル・サポート・サービス㈱の介護、高齢者施設等での食事提供とその領域での新規事業が該当します。既存の葬儀事業に加えて、シニアライフ全体での新規事業の開拓/拡大を目指すことで、お客様のクオリティ・オブ・ライフ向上への貢献を目指します。また、中長期的には、葬祭業界の成長のために、当社グループの葬儀事業およびライフエンディングサポート事業のナレッジを葬儀事業者等に提供する、葬儀事業者向け「ソリューション」モデルの構築も視野に入れています。新10年ビジョンの実現に向けた事業戦略の推進が、当社グループの事業を通じて社会に価値をもたらすとともに、燦ホールディングスグループESG方針に基づくESG経営の推進を強化し、グループの持続的な成長につながるものと考えています。
今期は、当社グループのESG経営をさらに推進させるため、当社グループが掲げるパーパス「シニア世代とそのご家族の人生によりそい、ささえるライフエンディングパートナー」の実現のために解決が必要なマテリアリティ(重要課題)を特定しました。マテリアリティの特定プロセスと特定したマテリアリティは以下の通りです。
<マテリアリティの特定プロセス>
部門横断的なプロジェクトチームによりマテリアリティの特定を行い、取締役会において報告しました。検討過程では、サステナビリティに関する国際目標・規範なども参考にしながら、事業活動に影響を与えるリスク・機会につながる外部環境の変化や外部ステークホルダーの期待事項を踏まえて分析を実施、社内資料やインタビューなどをもとに整理した当社グループが認識したサステナビリティ課題などを踏まえ、ESGに関するリスク・機会の観点から課題の優先順位付けを行いました。優先順位付けにあたっては「ステークホルダーにとっての重要度」と「事業にとっての重要度」に鑑み重要度を定量化した上で優先順位付けをしました 。特定したマテリアリティは下表に示す5つであり、それぞれのマテリアリティについて、2031年度のありたい姿を定義し、それらを実現するための取組施策を取りまとめました。
(図)マテリアリティの特定プロセス
<マテリアリティ一覧>
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マテリアリティ |
2031年の状態定義 (ありたい姿) |
取組施策 |
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E |
「気候変動:気候変動への対応」 |
地球環境への負荷を最小化し脱炭素社会に適応 |
1.葬儀会館等への太陽光パネルの設置 2.再生可能エネルギーによる電力調達 3.ハイブリッド車両(寝台車・霊柩車)への切り替え |
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S |
「ライフエンディング:ライフエンディングサポートを通じた豊かさの創出」 |
シニア世代とそのご家族が安心して心豊かな時間を過ごすことができるライフエンディングサポートを提供 |
〔超高齢社会への貢献〕 1.よりよいお別れの場の提供 2.おひとりさま向けサービスの充実 3.ライフエンディングサポート事業の拡大 〔地域社会への貢献〕 4.グリーフケアの提供 |
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「品質:お客様に安心・信頼・満足をいただける品質の追求」 |
こころに寄り添う高品質なサービス・商品・空間でライフエンディングのトータルサポートを実現 |
1.高品質なサービス・商品・空間の提供(既存ブランド、新家族葬ブランド) 2.葬祭ディレクター技能審査の保有者数増加 |
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「人的資本:ホスピタリティ、主体性、実行力を兼ね備えた人財の育成と組織風土の変革」 |
パーパス実現に向け主体的に行動し挑戦しつづける人財を尊重 |
1.ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの推進 2.従業員エンゲージメント向上(経営理念・パーパスの浸透も含む) 3.労働安全衛生管理の向上 |
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G |
「ガバナンス:ガバナンスの充実を通じた経営基盤の強化」 |
持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目指す誠実な経営を推進 |
1.コンプライアンス教育の強化 2.データセキュリティの強化 |
(ウ)リスク管理
当社グループは、リスク管理を統括する「リスクマネジメント委員会」を設置し、委員長を議長として、「リスクマネジメント規程」及び「危機発生時対応マニュアル」を整備し、当該委員会が中心となって、当社グループ全体のリスク管理体制・施策等の審議を行うとともに、事業活動に関係する様々なリスクへの対応を検討・実施・推進しています(詳細は、「
2024年3月期は年1回開催し、リスクマネジメント活動方針の検討や、取り組み計画の進捗のモニタリング等を行ったほか、リスクマネジメント意識向上のための社員向け教育を実施しました。また、今期は、(イ)戦略に記載の通り重要課題(マテリアリティ)の特定を行いました。その際、ESGに関するリスク・機会の観点から課題の優先順位付けを行っており、特に気候変動(Eのマテリアリティ)、人的資本(Sのマテリアリティ)、ガバナンス(Gのマテリアリティ)を、リスクの側面において重要であるとして特定しました。マテリアリティに関するこれらのリスクについては、ESG推進委員会とリスクマネジメント委員会の連携により対処してまいります。
(エ)指標と目標
特定したマテリアリティについて、下記の通り、KPIと目標を設定しました。今後、取り組みの進捗を管理していきます。
マテリアリティ 気候変動:気候変動への対応
気候変動の詳細については、「
マテリアリティ ライフエンディング:ライフエンディングサポートを通じた豊かさの創出
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取組施策 |
KPI(注1) |
実績値 |
目標 |
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2023年度 |
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〔超高齢社会への貢献〕 |
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1.より良いお別れの場の提供 |
葬儀会館数 |
91会館 |
2024年度:107会館 2031年度:210会館 |
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2.おひとりさま向けサービスの開始 |
2024年5月より「喪主のいらないお葬式」のサービスを近畿エリアで開始 KPIと目標は、2024年度の実績を踏まえ設定予定 |
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3.ライフエンディングサポート事業拡大 |
ライフエンディング事業の売上規模 |
21.1億円 |
2024年度: 30億円 2031年度:100億円 |
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〔地域社会への貢献〕 |
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4.グリーフケア(注2)の提供 |
ひだまりの会(注3)の活動継続 |
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マテリアリティ 品質:お客様に安心・信頼・満足いただける品質の追求
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取組施策 |
KPI(注1) |
実績値 |
目標 |
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2023年度 |
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1.高品質なサービス・商品・空間の提供 (既存ブランド、新家族葬ブランド) |
顧客アンケートの総合満足度(当社の主要な子会社である㈱公益社の顧客アンケートの総合満足度)(注4) |
94.6% |
2024年度: 前年度の実績値以上 |
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2.葬祭ディレクター技能審査合格者数の増加 |
社内受験認定(既合格者を含む)した社員の内の葬祭ディレクター技能審査保有率(当社グループ各社の葬儀施行部門の正社員における保有率) |
99.1% |
2024年度:100% |
マテリアリティ 人的資本:ホスピタリティ、主体性、実行力を兼ね備えた人財の育成と組織風土の変革
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取組施策 |
KPI(注1) |
実績値 |
目標 |
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2023年度 |
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1.ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの推進 |
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(次期の中期経営計画(2025~2027年度)を策定する中で、中長期の目標値を検討し、公表予定。) |
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70歳までの継続雇用制度の導入 |
- |
2024年4月に、70歳までの継続雇用制度を導入済み |
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2.従業員エンゲージメント向上(経営理念・パーパスの浸透も含む) |
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3.労働安全衛生管理の向上 |
(注6) |
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マテリアリティ ガバナンス:ガバナンスの充実を通じた経営基盤の強化
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取組施策 |
KPI(注1) |
実績値 |
目標 |
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2023年度 |
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1.コンプライアンス教育の強化 |
コンプライアンス研修受講率 |
100% |
2024年度:100% |
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2.データセキュリティの強化 |
情報セキュリティ研修受講率 |
100% |
2024年度:100% |
(注)1.KPIは、グループ全体の値。ただし、データ対象範囲が異なる指標は、カッコ内に記載しています。
2.「グリーフケア」とは、「重要な他者を喪失した人、あるいはこれから喪失する人に対し、喪失から回復するための喪(悲哀)の過程を促進し、喪失により生じるさまざまな問題を軽減するために行われる援助」のことをいいます。
3. 「ひだまりの会」とは、「ご遺族の皆さまの悲しみや辛さに寄り添い、安全に安心してお話いただける場と時間を提供できればとの思いから、公益社が主催するご遺族同士の交流の場」のことをいいます。
4.「総合満足度」とは、当社の主要な子会社である㈱公益社の葬儀施行に関して、㈱公益社基準による顧客アンケートの満足度を集計した比率のことをいいます。顧客アンケートの項目が異なるため、㈱葬仙・㈱タルイは除いております。
5.「女性管理職比率」は、当社グループにおける「管理職」にある従業員の合計に占める「女性管理職」の割合を記載しております。「管理職」は、当社グループ各社における課長級相当職以上を対象に算出しております。
6.労働安全衛生度数率:労働災害による死傷者数/延べ実働労働時間数×1,000,000
(2)気候変動
(TCFD提言に対応した開示)
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ガバナンス
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◆取締役会の監督体制 当社取締役会は、気候変動を含むサステナビリティ課題への対応を重要な経営課題として認識しています。ESG推進委員会において関連する方針や活動計画の審議を行い、その審議内容を定期的に取締役会に報告しています。 取締役会では中期経営計画・年度予算等に気候関連課題もテーマに織込んでおり、次年度以降、進捗を監督していきます。
◆経営陣の役割 経営陣は、サステナビリティをグループ全体の経営課題として明確に位置づけ、サステナビリティに対する取組みを推進するための計画を策定するとともに、各関連部署と連携して実施できるよう周知し進捗管理を行い、必要に応じて是正対策を検討したうえで戦略を見直し、事業活動に反映させます。 2023年3月期から、当社では、「気候変動」を重要なESG課題と位置付け、TCFD提言への賛同、TCFDコンソーシアムへの参画を行いました。また、ESG推進委員会において当社グループとして初めてTCFDのフレームワークに沿った気候シナリオ分析、気候関連リスク及び機会の特定に取り組みました。その結果は取締役会に報告されました。分析の結果、全体的に当社グループのビジネスに大きな影響をもたらすリスク・機会は特定されませんでしたが、シナリオ毎の主要なリスク・機会が当社グループへもたらす可能性のある中長期的な財務的影響の評価を行い、対応の方向性を確認しました(戦略の項目参照)。2024年3月期中に開催した取締役会やESG推進委員会において、太陽光発電導入会館数や再生可能エネルギーの電力購入による電気料金削減額等の進捗報告がなされました。気候変動に関しては、引き続きESG推進委員会において必要に応じて社会的動向の把握やリスク・機会の見直しを実施し取締役会に報告するとともに、具体的な取り組みの方向性や目標設定、指標(KPI)の設定を行います。 |
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戦略
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◆気候変動のリスク及び機会、それらの組織のビジネス・戦略・財務計画に及ぼす影響 気候変動が顕在化する4℃シナリオと脱炭素社会への移行により規制強化などが見込まれる1.5℃シナリオの2つのシナリオに基づき、当社グループの事業に影響をもたらすリスク・機会の検討を行いました。
<気候変動シナリオ分析の概要>
◆2℃以下のシナリオ含む異なる気候関連のシナリオを考慮した組織戦略のレジリエンス 検討の結果、全体的に当社グループのビジネスに大きな影響をもたらすリスク・機会は特定されませんでした。 しかし、個別のシナリオ検討の結果、4℃シナリオにおいては、気温上昇や降水パターンの変化により、花材の生育不良が生じ、調達コストの増加、1.5℃シナリオにおいては、炭素税の導入による課税負担の増加が、財務的な影響をもたらす可能性のある主要なリスクとして特定されました。 今後、特定されたリスク・機会については、各関連部署と認識を共有し、これらのリスクを最小化/機会を最大化するための具体的な対応策を検討し、事業活動に反映させていきます。
※1 電力価格の上昇率×電力利用料 ※2 炭素価格×CO2排出量 ※3 PPA(Power Purchase Agreement:電力販売契約)方式により、合計10会館に設置(2024年3月実績)し、稼働開始しました。2024年度は、既存会館のうち、13会館について設置可否を調査し、検討する予定です。
※4 非化石価値取引市場(日本卸電力取引所に2018年5月に開設された非化石証書を取引する市場)からの調達によるCO2排出削減(合計5会館で契約(2024年3月実績)) ※5 寝台車のハイブリッド車両率は、34%から68%になりました(2024年3月実績)。2024年度は77%、2025年度は100%を目指しています。 |
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リスク管理
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◆気候関連リスクを特定し、評価するための組織のプロセス 当社は、ESG推進委員会において中長期的な観点からの気候変動リスク・機会の特定・評価を行っています。また、既に顕在化している気候変動に伴うリスク(主に台風・豪雨等の物理的リスク)に関しては、リスクマネジメント委員会において発生頻度と損失規模に基づくリスクの特定・評価を行っています。
◆気候関連のリスクをマネジメントするための組織のプロセス ESG推進委員会もしくはリスクマネジメント委員会で特定・評価された気候関連リスクを含む重要なリスク等については随時、取締役会等に報告、共有がなされており、適切な対応策の検討が行われています。具体的には、気候変動に関するリスクのうち、経営戦略に関連するリスクについては必要に応じて取締役会において審議を行い、個々の関連部署において指示・報告等を通じて、リスク事象の発生の回避及び発生した場合の対応策を検討しております。
◆組織の全体的なリスクマネジメントへの統合 当社では、「リスクマネジメント規程」及び「危機発生時対応マニュアル」を制定し、リスクマネジメント委員会が中心となって、当社グループ全体のリスク管理体制・施策等の審議を行うとともに事業活動に関係する様々なリスクへの対応を検討・実施・推進しています。 ESG推進委員会で特定された気候変動リスク等については随時、リスクマネジメント委員会に共有され、グループ全体のリスクの中での優先順位を検討し、中長期的な経営戦略との関連性の中で対応策を検討しています。
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指標と目標
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当社グループは、環境に配慮した事業活動の推進をESG行動指針に掲げ、温室効果ガス排出量削減に向けた取組を推進しています。
温室効果ガス排出量の推移(単位:t-(CO2))
※算定期間:2022年度(2022年4月1日~2023年3月31日)、2023年度(2023年4月1日~2024年3月31日) ※対象事業範囲:当社及び連結子会社(経営支配力基準を採用)の全拠点 ※算定基準:①Scope1において、ガスおよび燃料の換算係数は、環境省まとめの「算定・報告・公表制度における算定方法・排出係数一覧」を使用しています。②Scope2において、電力使用量からのCO2は、マーケット基準で算定しています。電力CO2排出係数は、地球温暖化対策の推進に関する法律に基づく電力事業者別の調整後排出係数を使用しています。 ※2023年度から、Scope3のカテゴリー1(購入した製品・サービス)の試算に着手しております。 ※現在、太陽光発電等の温室効果ガスの削減効果等を検証しており、中長期の目標や指標(KPI)につきましては、今後検討してまいります。 |
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(3)人的資本
(ア)経営戦略と人財戦略の連動
近年の社会や価値観の変化に合わせて、葬儀業界も進化しています。葬儀・供養スタイルの多様化、小規模・簡素化嗜好へのシフト、単身高齢世帯の増加など、事業環境・顧客志向に鑑み、当社グループの事業戦略もそれらのニーズに見合うものにする必要があります。また、その担い手である従業員に求めるスキル、行動の在り方も変えていく必要を認識しています。
当社グループは2032年度に創業100周年を迎えますが、これまでの「大切な人との最後のお別れに寄り添う葬儀事業者」というお客様との信頼に根差した在り方は引き続き大切にしつつ、今後は「シニア世代とそのご家族に寄り添い、ささえるライフエンディングパートナー」への進化を実現させるのが、当社グループの新10年ビジョンです。現在はそのための変革期間であり、本中期経営計画(2022年度~2024年度)は新10年ビジョン実現の「基盤作り」期間に該当します。その事業戦略として、「葬儀事業の拡大」「ライフエンディングサポート事業の拡大」「葬儀事業の競争力強化」「日本一満足・感動いただけるサービスを目指した仕組み強化」「経営基盤の強化」を掲げており、その実現に必要なスキル・専門性を備える人財を採用・育成・獲得していくこと(下図「人財の育成・確保」)が必要です。また、そうした事業変革を担う従業員に求める行動として、「ホスピタリティのこころ」を持った上で、過去にない変化へチャレンジしていく「主体性」、そして専門能力を発揮しながら変革をやり抜く「実行力」を有する人財を増やしていける組織風土作り(下図「組織風土の変革」)にも取り組んでいます。当社グループの進むべき方向性であるパーパスや経営理念に共感する従業員の土壌を築きつつ、人的資本の側面から事業戦略の実現性を高めるためのこれら両輪の取り組みを継続させた先に「挑戦し続ける組織風土」として常態化され、結果として中長期的に企業価値が向上し続けていく、それが当社グループの人的資本経営の考え方です。このような組織風土が根付いているか否かを確認するための指標として、当社グループの人的資本経営では「従業員意識調査」で従業員エンゲージメントの結果を取締役会で適宜モニタリングしています。
<燦ホールディングスの人的資本経営の基本コンセプト >
<燦ホールディングスの人財戦略ストーリー>
(イ)経営理念・パーパスの浸透
ここでは、当社グループの経営理念・パーパス浸透の取り組みの考え方について記載します。
当社グループの経営理念のミッション「人生に潤いと豊かさを。よりよく生きる喜びを。」は、葬儀事業からライフエンディングのトータルサポート事業へ、また新規事業の展開へと新しい価値を創り出すことに挑戦しつづける当社が、商品やサービスを通じてお客様と地域の人々の人生に潤いと豊かさを感じてもらうこと、よりよく生きる喜びを感じてもらうことが社会に果たすべき使命であるということを意味しています。加えて、2022年4月に私たちの社会に対しての存在意義、存在価値をあらためて定義し、当社グループのパーパスを制定しました。私たちは、シニア世代とそのご家族との長期にわたる関係を築きながらトータルサポートを提供することによって、その方の人生によりそい、支えてまいります。
2023年度は、全ての従業員に経営理念・パーパスを浸透させるために、グループ各社の社長が執行責任者となり、社長・部門長自らが課題設定およびコミットメントを行い、各社ごとに経営理念・パーパスを実践するために必要な行動を明確にし、日々の業務活動で実践していく取組みを行っています。特に、「日本一満足・感動いただけるサービス」を実現・達成していくための組織を作るには、当社グループで働く従業員一人ひとりが経営理念・パーパスに込められた経営の想いを理解し、会社への帰属意識を高めてもらうことが不可欠です。今後も従業員が経営理念・パーパスを理解し、自分事化し、主体的な行動に反映できるような施策を継続的に実施していく予定です。また、定期的な従業員意識調査の中で経営理念・パーパスの従業員への浸透状況をモニタリングし、浸透活動を進化させていきます。
<燦ホールディングスの経営理念・パーパス>

(ウ)人財育成方針
ここでは、「人財の育成・確保」として、事業戦略の実現に必要なスキル・専門性を有する人財を採用・育成・獲得していく考え方を中心に記載します。
葬儀単価は下落傾向にあるものの、死亡数は当面増加傾向にあり、我が国の葬儀市場は大幅な成長は難しいまでも一定の市場規模の維持は可能と考えています。それらを踏まえ、環境変化に対応した事業推進ができる戦略企画・将来の経営幹部候補人財の育成・確保を進めております。具体的には、採用競争力のある条件提示を可能とする人事制度の導入によって優秀な人財を外部から確保するとともに、管理職研修の強化と、幅広い視野や能力開発を目的としたローテーションを今後強化していくことで、戦略企画・経営幹部候補人財の育成に努めております。
既存の葬儀サービス事業では、新家族葬ブランド(エンディングハウス)を中心とした出店加速により葬儀事業エリアと顧客ターゲットを拡大していく必要性から、葬儀サービス人財の確保、および戦力化を進めております。特に葬儀サービス人財は、これまで以上に新卒および中途採用を強化することで人財の確保を進めてまいります。また、採用した人財を戦力とするための当社オリジナルの人財育成プログラムを開発し、葬儀サービス人財の育成とサービス品質の向上に努めております。
新事業・サービスとしては、終活から葬儀後までのライフエンディングサポート事業分野を拡大し、お客様と家族の長期間のサポートを実現させるとともに将来の柱となる事業に育てる計画を掲げております。それにあたり、シニア世代に向けた終活サービスのポータルサイトを通じた商品・サービスの提供を事業内容とするライフフォワード㈱の売上拡大・収益化を最重要課題の一つに位置付けています。その担い手として、マーケティングの専門性を有した人財の育成・確保が急務です。特にデジタルマーケティング領域においては、優秀な人財の中途採用に注力しております。また、新事業・既存事業ともに当社グループ全体においてマーケティングスキルの向上が重要と考えており、今後はマーケティングスキル向上の研修等を強化してまいります。
加えて、当社グループでは、死別等によって悲嘆されているご遺族の立ち直りのサポートの一助となるべく、社会貢献活動としてグリーフケア活動を行っております。ご遺族の悲しみを癒し、前向きに生きるエネルギーの源になって頂くための遺族サポートを行う「ひだまりの会」を2003年12月に立ち上げ、これまで1,000名を超えるご遺族の方々のサポートをしてまいりました。また、グリーフケア活動の一つであるエンバーミング(ご遺体に消毒殺菌・防腐・修復・化粧をし、生前のお姿に近づける技術)処置は、今後さらに重要性が増すと想定しております。昨今の新型コロナウイルス感染症等のパンデミックリスクだけに留まらず、今後、日本では地震や台風・水害等の大きな自然災害が発生することが想定されており、自然災害等でお亡くなりになった方に対してエンバーミング処置を行うことで故人の遺志や残された人たちの想いを十分に葬儀に反映することが可能となります。このようなグリーフケアを通じた社会貢献活動は、当社グループの社会価値向上のための非常に重要な取組みといえます。葬儀サービスだけでなく、グリーフケア活動まで担うことができる人財の育成を強化しており、エンバーミング処置ができる日本遺体衛生保全協会(IFSA)認定のエンバーマー資格保有者は現在25人(2024年3月末時点)で業界最大規模の人数となっております。今後もエンバーマー資格保有者の確保と育成に取り組んでまいります。
また、当社グループは、日本一満足・感動いただけるサービスを目指し、人のこころに寄り添うホスピタリティあふれるサービス・商品・空間(会館)を、妥協することのない質の高さをもって実現し、お客様にお届けすることが企業価値の源泉と考えており、これを実現する人財育成とクオリティマネジメントを徹底しています。ひとりひとりがプロフェッショナルとして質の高いサービス提供ができるように教育研修の専門部署を設けてサービス品質の向上を行っております。具体的には、入社後に教育専門部署による葬儀サービスの教育の機会を設け、厚生労働省認定「葬祭ディレクター技能審査資格」の資格取得に努めており、現在有資格者は業界でも最大規模となる322人(2023年11月末時点)となっております。また、サービス品質をさらに向上させるために、当社グループ独自の葬儀サービス人財の役割に応じたサービス認定制度を導入し、従業員のモチベーションを高め主体的に自らの成長を促していくプログラムとして運用しております。こうした取り組みによってホスピタリティ溢れるサービスを提供していくことでお客様の満足度の向上に努めております。
(エ)社内環境整備方針
ここでは、「組織風土の変革」として、「ホスピタリティのこころ」を持った上で、過去にない変化へチャレンジしていく「主体性」、そして専門能力を発揮しながら変革をやり抜く「実行力」を有する人財を増やしていく社内環境作りの考え方について記載します。
当社グループは、挑戦を行う従業員の育成および組織づくりを行うために、管理職に求める人財要件として、環境理解、戦略構築、成果志向・価値創出、挑戦・主体的行動、関係構築・協働、組織・人財開発の6項目を設定しました。この求める人財要件にもとづいた管理職の人事制度を2021年4月に導入しており、管理職研修を実施することで自ら率先して挑戦し、周囲を動機づけ、変革を巻き起こすリーダーシップを発揮する管理職の育成を強化しております。また、様々な表彰制度やインセンティブ制度を導入することで、従業員ひとりひとりが職場の中で主体性を持って挑戦と実行ができるような組織づくりを行っております。
さらに、超高齢社会の労働力人口が不足する中で、シニア人財がより長く当社グループで活躍する機会を創出することにも力を入れております。具体的には、これまで65歳までだった継続雇用制度を70歳までに延長し、よりモチベーション高く働いてもらうための人事制度を新たに導入しました。その他、多様な働き方を実現するための環境整備も行っており、テレワーク制度導入によるリモート勤務に必要なインフラ整備(ペーパーレス・電子化)や次世代育成手当の支給、障がい者雇用の強化、一部職種向けの副業制度も導入しております。今後は、女性活躍の推進にもより一層努めてまいります。
加えて、コンプライアンスを重視した組織風土の醸成にも力を入れております。役員・従業員が遵守すべき規範、普遍的な考え方を「行動規範・行動基準」としてまとめた「コンプライアンスブック」の全役員・従業員への配布とヘルプラインを周知するほか、コンプライアンス研修・個人情報保護(PMS)研修・ハラスメント研修等の定期的、継続的な教育を実施することで、コンプライアンスに対する意識向上を従業員に対して取り組んでおります。
(オ)組織風土
以上、当社グループの進むべき方向性である経営理念・パーパスに共感する従業員の土壌を築きつつ、人的資本の側面から事業戦略の実現性を高めるための取り組みとして、「人財の育成・確保」「組織風土の変革」を両輪で継続させた先に、「挑戦し続ける組織風土」として常態化されているかを確認するため、従業員意識調査で従業員のエンゲージメントスコア(働きがい)を最重要KPIと設定し、モニタリングしております。2023年度の従業員エンゲージメントのスコアは3.8点(5点満点中)でした。このエンゲージメントスコアは3.5点以上を基準にしており、従業員のエンゲージメントは一定程度高い状態であると言えます。今後も継続的に「挑戦し続ける組織風土」を常態化させるための各種施策に取組み、エンゲージメントスコアの向上に努めてまいります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月26日)現在において当社グループが判断したものであります。
(1)葬儀需要の変動に関するリスク
(死亡者数)
葬儀需要の数量的側面は死亡者数によって決定され、葬儀事業における所与の条件となります。死亡者数の中長期予測として、国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口」(2023年4月推計)における死亡者数の中位推計に依拠すれば、向こう10年間、年平均1%弱の伸び率で死亡者数が増加するとの予測が得られます。しかし年度毎に見ると、実績値は上記推定値から乖離した動きを示します。
したがって、仮にマーケット・シェアおよび葬儀1件当たりの平均単価が変わらないとしても、(当社グループ営業エリアの)死亡者数の変動によって、葬儀およびその関連事業を中核事業とする当社グループの単年度業績が、少なからず変動する可能性があります。
(季節的変動)
年間死亡者数の発生に季節性があるため、特に12月~2月が当社グループの葬儀施行件数が相対的に多い繁忙期となります。したがって、葬儀およびその関連事業を中核事業とする当社グループでは、上期よりも下期の営業収益が多くなっています。
また、この繁忙期(とりわけ1月~2月)はインフルエンザの罹患者の発生が多くなる時期でもありますので、その年のインフルエンザ流行の程度によって、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
(2)大規模葬儀の変動に関するリスク
当社グループでは、社葬・お別れの会・合同葬といった企業・団体・学校法人などが執り行う追悼セレモニーについて、豊富な施行実績に基づく運営のノウハウを有します。個人の方の葬儀(一般葬儀)と比較すると、参列者数の多い規模の大きな葬儀となる一方、限られた件数となりますので、年によって受託件数・金額の変動を生じます。したがって、追悼セレモニーという相対的に規模の大きな葬儀の受託件数・金額の多寡により当社グループの業績は影響を受ける可能性があります。(金額5百万円超の葬儀を大規模葬儀と定義した場合、主に受託する㈱公益社の葬儀施行収入全体の1割前後を占めます。)
(3)規制と競争環境に関するリスク
葬祭業界は法的規制、行政指導のない業界ですが、それは裏を返せば事業への参入障壁が低いことを意味します。
業界内には地域密着型で家業的な中小零細業者を圧倒的多数とする葬儀専業者と、広域展開している一部大手事業者を含む冠婚葬祭互助会とがあります。これまで婚礼を中核事業としてきた冠婚葬祭互助会が葬儀に注力しているほか、成長産業としての認識から、仏事関連産業はもとより異業種(電鉄、流通、生協、農協、ホテル等)からの参入が全国規模で進んでいます。また、インターネットによる葬儀紹介事業者の進出もあり一段と競争激化に拍車をかけています。参入障壁の低さが、今後新たな新規参入を招き、当社グループの業績に影響を与えるような競争環境の変化をもたらす可能性も否定できません。
(4)自然災害、感染症等の発生に関するリスク
(自然災害)
台風や豪雨、大規模な地震等の自然災害の発生は、当社グループが所有または運営する施設(主に葬儀会館)に損害を及ぼす可能性があります。これに伴う葬儀会館の一時的な稼働停止リスクに対しては、グループ内の他の葬儀会館や外部施設の利用により、葬儀施行への影響を最小限に抑えます。また、施設に係る経済的損害のリスクについては損害保険の付保により転嫁を図ります。しかし、それらの対応で十分に事業への影響や損失がカバーされる保証はありません。
(感染症等)
感染症の発生・蔓延は、人びとの移動や集いに大きな制約をもたらします。最悪の場合は、故人との対面でのお別れができないなど、葬儀形態そのものが制約を受けることも生じます。こうした事態は、葬儀の参列者の減少、小規模化をもたらし、また、社葬やお別れの会などの大規模葬儀の施行を困難にすることを通じて、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(5)固定資産の減損に関するリスク
当社グループは、葬儀会館に係る有形固定資産を中心に固定資産を保有しています。経営環境や事業の状況の変化等により収益性が低下し、十分なキャッシュ・フローを創出できないと判断される場合は、対象資産に対する減損損失の計上により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(6)法的規制に関するリスク
(食品衛生法)
当社グループの料理・飲料事業については食品衛生法により規制を受けています。当社グループが飲食店を営業するために、都道府県知事が定める基準により食品衛生責任者を置くことはもとより、厳格な衛生管理を実施することによって、食中毒の回避に万全を期しています。しかしながら、万が一食中毒を起こした場合、食品等の廃棄処分、営業許可の取り消し、営業の禁止、一定期間の営業停止等を命じられ、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(個人情報保護法)
当社グループでは、葬儀の請負等を通じて多くの個人情報を所有することから、2005年4月より施行された個人情報保護法の遵守体制構築を経営の最重要課題の一つと位置づけ、プライバシーマークの認証を取得いたしました。
しかしながら、予期せぬ事態により個人情報が流出した場合、当社グループの社会的信用に影響を与え、その対応のための多額の費用負担や企業イメージの低下が当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①経営成績等の状況の概要
当連結会計年度(以下、当期)におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の5類移行による人流の回復、雇用・所得環境の改善による個人消費の緩やかな改善などから回復傾向が続いた一方、不安定な国際情勢による地政学リスクの影響、資源価格の動向、企業の賃金・価格動向の影響による不確実性はきわめて高い状況にあります。
当社が事業展開をしている葬儀業界では、65歳以上の高齢者人口の増加を背景に、葬儀に関する潜在ニーズは2040年まで継続的な増加が見込まれる一方、故人との大切な最後のお別れの場である葬儀の本質は変わりませんが、核家族化の進行及びコロナ禍を契機とした葬儀の小規模化・簡素化の傾向は続いております。加えて、各地での新規出店の加速、インターネットによる葬儀紹介会社の台頭等により、特に小規模葬儀のサービス提供をめぐる競争が激化しております。近年、葬儀業界及びライフエンディング業界におけるM&Aが増加しており、業界全体の再編が進む状況下にあります。
当社は2032年に迎える創業100年に向けて当社グループが進むべき方向、ありたい姿を定めた「新10年ビジョン(2022年5月公表)」において掲げた、「葬儀事業の拡大」および「ライフエンディングサポート事業の拡大」の達成を目指し「中期経営計画(2022年度~2024年度)」を推進しております。
上記、中期経営計画の重点項目である「葬儀事業の拡大」の中核として、「リーズナブルでありながら高い品質のサービス」を提供する家族葬ブランド「エンディングハウス(ENDING HAUS)」を2023年3月に新たに立ち上げ、当期はエンディングハウス4会館を含む計7会館を出店しました。この「エンディングハウス」を中心とした新規出店と、M&Aによる店舗網の拡大によって同中期経営計画期間3ヶ年内で31会館の新規出店を計画しております。M&Aについては、2024年1月4日付で首都圏内における家族葬に特化した高品質のサービスを提供する㈱東京セレモニーの完全子会社化を実施しており、さらなるサービス提供体制の基盤強化・拡大を加速してまいります。
同重点項目の「ライフエンディングサポート事業の拡大」に関しては、2024年2月8日付で㈱公益社を分割会社、ライフフォワード㈱を承継会社とする当社完全子会社間の吸収分割を発表いたしました。当社は2020年4月のライフフォワード㈱の設立以来、当該事業におけるカスタマー・リレーション・マーケティングの機能強化に注力してまいりました。この度、ライフフォワード㈱のサービス機能と、当社中核子会社である㈱公益社の葬儀前後の付随サービスを提供する事業内容を統合し、多様化する顧客ニーズへの対応力強化とサービス品質の高度化を図り、さらなる事業の拡大をしてまいります。
当期のグループ葬祭3社の葬儀施行収入は、前連結会計年度(以下、前期)比2.2%の増収となりました。これは、全葬儀件数が前期比で0.6%低下した一方で、一般葬儀(金額5百万円以下の葬儀)を中心に葬儀施行単価が前期比2.8%増加したことによるものです。また、2022年から2023年初頭頃まで続いた全国的な超過死亡傾向が落ち着き、コロナ禍で抑えられていた大規模葬儀(金額5百万円超の葬儀)の件数に伸びが見られました。
葬儀に付随する商品の販売やサービス提供による収入は、仏壇仏具、後日返礼品を中心に前期比増収となりました。
費用については、将来的な新規出店に伴う葬儀件数増加及び売上拡大に備えた人員体制強化のための人件費・採用費の増加、新規出店に伴う地代家賃の増加、先行投資としての広告宣伝費の増加等により、営業費用は前期比4.8%の増加となりました。販売費及び一般管理費は、主に基幹情報システムの稼働によるソフトウエアの減価償却費の増加等により前期比5.0%増加しました。
この結果、当期の営業収益は224億37百万円となり、前期比3.6%の増収、営業利益は将来成長のための計画的な先行投資の実施により37億89百万円と前期比2.0%の減益となりました。経常利益については38億円となり、前期比1.1%の減益、税金費用を差し引いた親会社株主に帰属する当期純利益は23億63百万円と、前期比15.1%の減益となりました。なお、2022年4月に設立した葬祭会社「㈱グランセレモ東京」(㈱広済堂ホールディングス51%、当社49%の出資による合弁会社)に係る持分法による投資利益35百万円となり、堅調に推移しております。
当社グループでは、葬祭3社および当社を中心とした会社グループ別の4つのセグメント、「公益社グループ」、「葬仙グループ」、「タルイグループ」、「持株会社グループ」を報告セグメントとしております。なお、「公益社グループ」には、㈱公益社に加え、㈱公益社の葬儀サービスのサポートのほか、介護サービス事業や高齢者施設での食事の提供等を行うエクセル・サポート・サービス㈱および終活関連WEBプラットフォーム事業を行うライフフォワード㈱を含んでおります。また、上記M&Aによって当社グループ入りとなった㈱東京セレモニーについては、みなし取得日を2024年3月31日としているため、貸借対照表のみを連結しております。
当期のセグメント別の経営成績は次の通りです。
ア 公益社グループ
公益社グループの中核会社である㈱公益社においては、葬儀施行件数が主にコロナ関連葬儀の減少により前期比1.2%減少しましたが、葬儀施行単価は前期比2.8%上昇し、葬儀施行収入は前期比1.5%の増収となりました。
葬儀に付随する商品の販売やサービス提供は、販売強化により、仏壇仏具、後日返礼品を中心に前期比増収となりました。
費用については、将来の新規出店に伴う葬儀件数の増加や、売上拡大に備えた人員体制強化のための人件費・採用費の増加、先行投資としての広告宣伝費等の増加により、前期比増加しました。
この結果、当セグメントの売上高は185億2百万円(前期比3.2%増)、セグメント利益は23億49百万円(前期比3.8%減)となりました。
イ 葬仙グループ
葬仙グループの㈱葬仙においては、葬儀施行件数は前期比3.7%減少しましたが、会葬者の増加に伴う葬儀施行単価の上昇傾向が継続したことにより、葬儀施行収入は前期比1.5%の増収となりました。葬儀に付随する商品の販売やサービス提供についても販売に注力し、後日返礼品や仏壇仏具を中心に前年同期比増収となりました。
この結果、当セグメントの売上高は15億60百万円(前期比2.9%増)、セグメント利益は1億55百万円(前期比11.6%増)となりました。
ウ タルイグループ
タルイグループの㈱タルイにおいては、小規模な葬儀に適した新規会館を中心に葬儀施行件数が前期比7.9%増加と引続き堅調に推移したことと、葬儀施行単価が前期比0.7%増加となったことから、葬儀施行収入は前期比8.7%の増収となりました。また、葬儀に付随する商品の販売やサービス提供についても、主に仏壇仏具の販売増により、前期比増収となりました。
この結果、当セグメントの売上高は19億93百万円(前期比8.8%増)、セグメント利益は4億52百万円(前期比21.8%増)となりました。
エ 持株会社グループ
持株会社グループの燦ホールディングス㈱においては、主に配当金収入の増加により増収となりました。
費用については主に新規出店に伴う地代家賃・減価償却費等の固定費が増加しました。
この結果、当セグメントの売上高は66億83百万円(前期比8.7%増)、セグメント利益は30億27百万円(前期比14.0%増)となりました。
②財政状態の状況
(資産)
当連結会計年度末(以下、当期末)における流動資産は118億35百万円となり、前連結会計年度末(以下、前期末)比7億96百万円増加しました。これは主に、現金及び預金が5億97百万円、営業未収入金及び契約資産が4億43百万円それぞれ増加したことによるものです。
また、固定資産は主に、新規会館投資に伴う建設仮勘定の増加と減価償却の進行による有形固定資産の減少の差し引きにより、有形固定資産が40百万円増加したこと、無形固定資産がのれんの増加等により4億1百万円増加したこと、投資その他の資産が1億18百万円増加したことにより、前期末比5億60百万円増加しました。
この結果、総資産は375億85百万円となり、前期末比13億56百万円増加しました。
(負債)
当期末における流動負債は36億36百万円となり、前期末比76百万円増加しました。これは主に、営業未払金が35百万円増加したこと、賞与引当金が45百万円増加したこと等によるものです。
固定負債は10億71百万円となり、前期末比17百万円増加しました。これは主に、長期未払金が減少したものの、資産除去債務等が増加したことによるものです。
この結果、負債合計は47億8百万円となり、前期末比94百万円増加しました。
(純資産)
当期末における純資産合計は328億77百万円となり、前期末比12億62百万円増加しました。
これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益23億63百万円を計上する一方、剰余金の配当4億85百万円を支払うことにより利益剰余金が18億77百万円増加したこと、ならびに当期中に自己株式を6億62百万円取得したことによるものです。
この結果、自己資本比率は前期末比0.2ポイント上昇し、87.5%となりました。
③キャッシュ・フローの状況
当期末における現金及び現金同等物は、前期末より5億68百万円増加し、97億48百万円となりました。
当期における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは31億70百万円の増加(前期は32億62百万円の増加)となりました。
これは主に、税金等調整前当期純利益36億29百万円、減価償却費9億41百万円により資金が増加したのに対して、売上債権の増加額4億34百万円、法人税等の支払額16億56百万円などにより資金が減少したことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは14億42百万円の減少(前期は5億94百万円の減少)となりました。
これは主に、新規会館の建設工事や既存会館の改修工事等に伴う有形固定資産の取得による支出9億42百万円、新たな基幹情報システムの構築等に伴う支出2億52百万円、子会社株式の取得による支出2億6百万円等により、資金が減少したことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは11億59百万円の減少(前期は9億23百万円の減少)となりました。
これは主に、配当金の支払額4億85百万円、自己株式の取得による支出6億62百万円により、資金が減少したことによるものです。
④営業の実績
ア 営業売上実績
当連結会計年度における営業売上実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
|
|
|
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
|
公益社グループ |
18,502 |
103.2 |
|
葬仙グループ |
1,560 |
102.9 |
|
タルイグループ |
1,993 |
108.8 |
|
持株会社グループ |
6,683 |
108.7 |
|
合計 |
28,740 |
104.8 |
(注)上記の金額については、セグメント間の内部売上高又は振替高を含んでおります。
イ 葬儀請負の実績
当社グループのセグメントのうち主な事業である葬儀請負事業に係わる葬儀施行件数の、当連結会計年度における実績は次のとおりであります。
(公益社グループ)
|
区分 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
||||
|
式場数(式場) |
施行件数(件) |
前年同期比(%) |
稼働率(%) |
||
|
大規模会館 千里会館、枚方会館、西宮山手会館 |
大式場 |
3 |
34 |
97.1 |
6.2 |
|
一般式場 |
11 |
1,552 |
96.9 |
77.1 |
|
|
支店・営業所付属会館 天神橋、東大阪、堺、吹田、用賀、 岸和田、玉出、城東、西田辺、 宝塚、豊中、高槻、守口、雪谷、 富雄、はびきの、たまプラーザ、 なかもず、明大前、田園調布、 住吉御影、学園前、森小路、高輪、 石橋、高円寺、仙川、江坂、日吉、 西大寺、六甲道、くずは、喜多見、 甲南山手、武庫之荘、甲子園口、 千里山田、東久留米、津久野、 上板橋、吉祥寺、香里園、 川西多田、枚方出屋敷、練馬、 長居、国分寺、生駒、平野、経堂 エンディングハウス東四つ木、 エンディングハウス新小岩、 エンディングハウス大阪鶴見、 エンディングハウス大東、 箕面、エンディングハウス西淀川、溝の口、エンディングハウス弥刀、 エンディングハウス西船、 エンディングハウス石切 |
一般式場 |
77 |
9,118 |
97.5 |
68.8 |
|
小計 |
|
91 |
10,704 |
97.4 |
67.7 |
|
その他(自宅、寺院等) |
|
- |
2,187 |
106.1 |
- |
|
合計 |
- |
12,891 |
98.8 |
- |
|
(葬仙グループ)
|
区分 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
||||
|
式場数(式場) |
施行件数(件) |
前年同期比(%) |
稼働率(%) |
||
|
支店・営業所付属会館 鳥取、吉方、岩美、米子、安倍、安来、境港、余子、松江、 比津、金持テラスひの、東朝日町 皆生、米原 |
一般式場 |
16 |
1,206 |
101.4 |
41.6 |
|
その他(自宅、寺院等) |
|
- |
325 |
81.3 |
- |
|
合計 |
- |
1,531 |
96.4 |
- |
|
(タルイグループ)
|
区分 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
||||
|
式場数(式場) |
施行件数(件) |
前年同期比(%) |
稼働率(%) |
||
|
支店・営業所付属会館 舞子、大蔵谷、新明、大久保、 魚住、土山、東加古川、 神戸西、長坂寺、西明石、 北大久保、塩屋 |
一般式場 |
14 |
1,656 |
107.7 |
64.6 |
|
その他(自宅、寺院等) |
|
- |
56 |
112.0 |
- |
|
合計 |
- |
1,712 |
107.9 |
- |
|
(注)1.稼働率=施行件数÷基準件数×100
なお、式場利用は通常、通夜と葬儀の2日間にわたるため、基準件数は1式場2日間に1件の施行を標準として算出しております。
2.葬儀施行件数は、法事・法要件数を除いた件数を記載しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社が事業展開をしている葬儀業界では、65歳以上の高齢者人口の増加を背景に、葬儀に関する潜在ニーズは2040年まで継続的な増加が見込まれる一方、故人との大切な最後のお別れの場である葬儀の本質は変わりませんが、核家族化の進行及びコロナ禍を契機とした葬儀の小規模化・簡素化の傾向は続いております。加えて、各地での新規出店の加速、インターネットによる葬儀紹介会社の台頭等により、特に小規模葬儀のサービス提供をめぐる競争が激化しております。近年、葬儀業界及びライフエンディング業界におけるM&Aが増加しており、業界全体の再編が進む状況下にあります。
当社は2032年に迎える創業100年に向けて当社グループが進むべき方向、ありたい姿を定めた「新10年ビジョン(2022年5月公表)」において掲げた、「葬儀事業の拡大」および「ライフエンディングサポート事業の拡大」の達成を目指し「中期経営計画(2022年度~2024年度)」を推進しております。
上記、中期経営計画の重点項目である「葬儀事業の拡大」の中核として、「リーズナブルでありながら高い品質のサービス」を提供する家族葬ブランド「エンディングハウス(ENDING HAUS)」を2023年3月に新たに立ち上げ、当連結会計年度(以下、当期)はエンディングハウス4会館を含む計7会館を出店しました。この「エンディングハウス」を中心とした新規出店と、M&Aによる店舗網の拡大によって同中期経営計画期間3ヶ年内で31会館の新規出店を計画しております。M&Aについては、2024年1月4日付で首都圏内における家族葬に特化した高品質のサービスを提供する㈱東京セレモニーの完全子会社化を実施しており、さらなるサービス提供体制の基盤強化・拡大を加速してまいります。
同重点項目の「ライフエンディングサポート事業の拡大」に関しては、2024年2月8日付で㈱公益社を分割会社、ライフフォワード㈱を承継会社とする当社完全子会社間の吸収分割を発表いたしました。当社は2020年4月のライフフォワード㈱の設立以来、当該事業におけるカスタマー・リレーション・マーケティングの機能強化に注力してまいりました。この度、ライフフォワード㈱のサービス機能と、当社中核子会社である㈱公益社の葬儀前後の付随サービスを提供する事業内容を統合し、多様化する顧客ニーズへの対応力強化とサービス品質の高度化を図り、さらなる事業の拡大をしてまいります。
当期のグループ葬祭3社の葬儀施行収入は、前連結会計年度(以下、前期)比2.2%の増収となりました。これは、葬儀施行件数が、競合の出店等による競争の激化に加え、一過性ではありますが、コロナ禍の収束傾向により、特殊増減要因であるコロナ関連葬儀が大きく減少したことにより、新規出店による件数増加効果が相殺され、前期並みにとどまる一方で、葬儀施行単価はコロナ禍を契機に加速した葬儀の小規模化傾向が一時的に緩和し、一般葬儀の施行単価が上昇したこと、コロナ禍で抑えられていた社葬・お別れの会等の大規模葬儀(金額5百万円超の葬儀)の件数に伸びが見られたことで上昇しました。
また、葬儀に付随する商品の販売やサービス提供による収入も、仏壇仏具、後日返礼品を中心に前期比増収となりました。
費用については、将来的な新規出店に伴う葬儀件数増加及び売上拡大に備えた人員体制強化のための人件費・採用費の増加、新規出店に伴う地代家賃の増加、先行投資としての広告宣伝費の増加等により、営業費用は前期比4.8%の増加となりました。販売費及び一般管理費は、主に基幹情報システムの稼働によるソフトウエアの減価償却費の増加等により前期比5.0%増加しました。
この結果、当期の営業収益は224億37百万円となり、前期比3.6%の増収、営業利益は将来成長のための計画的な先行投資の実施により37億89百万円と前期比2.0%の減益となりましたが、当社の重要業績評価指標(KPI)である「売上高営業利益率15.5%以上」については、実績値が16.9%となり、目標を上回ることができました。
(財政状態)
総資産は375億85百万円となり、前期末比13億56百万円増加しました。
流動資産は118億35百万円となり、前期末比7億96百万円増加しました。これは主に現金及び預金と、営業未収金および契約資産が増加したことによるものです。固定資産は、257億50百万円となり、前期末比5億60百万円増加しました。
これは主に、新規会館投資に伴う建設仮勘定の増加と 減価償却の進行による有形固定資産の減少の差し引きにより、有形固定資産が増加したこと、無形固定資産は、M&Aによるのれんの発生、及び基幹情報システム構築に係る建設仮勘定が増加したものです。
流動負債は、営業未払金の増加や、賞与引当金の積み増しなどにより増加しました。固定負債は長期未払金が減少したものの、資産除去債務等が増加いたしました。
当期末における純資産合計は328億77百万円となり、前期末比12億62百万円増加しました。
これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益23億63百万円を計上する一方、剰余金の配当4億85百万円を支払うことにより利益剰余金が18億77百万円増加したこと、ならびに当期中に自己株式を6億62百万円取得したことによるものです。
この結果、自己資本比率は前期末比0.2ポイント上昇し87.5%、当社の重要業績評価指標(KPI)である資本効率目標「投下資本利益率(ROIC)」は7.5%となり、目標とする7.0%を上回りました。
※ROIC=税引後営業利益/投下資本
(投下資本=有利子負債+純資産、税引後営業利益=営業利益×(1-実効税率))
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
営業活動によるキャッシュ・フローは、主に一般葬儀の単価の上昇と大規模葬儀の件数に伸びが見られたことによる業績向上や売上債権の増加により、31億70百万円の増加となりました。
一方、投資活動によるキャッシュ・フローは、5つの葬儀会館の新規出店及び1つの既存会館のリニューアル等による有形固定資産の取得と新たな基幹情報システムの構築に係る無形固定資産(ソフトウエア)の取得、および㈱東京セレモニーの完全子会社化により、14億42百万円の減少となりました。さらに、前期に引き続き、当期も増配および自己株式の取得を実施し株主還元を充実させたことにより、財務活動によるキャッシュ・フローは、11億59百万円の減少となりました。
この結果、現金及び現金同等物は前期末比5億68百万円増加して97億48百万円となりました。
これにより、以下の資金使途や資金需要に対する原資の一部として、資金の流動性は十分に確保できていると判断しております。
当社は現在取り組んでいる中期経営計画(2022年度~2024年度)において、強固な財務基盤をベースに成長のための積極的な投資を行うことを明らかにし、営業キャッシュ・フローをまず、《既存設備への投資》と《成長投資》とに配分し、その余を株主還元に充当するという、キャピタル・アロケーションの枠組みを示しました。
ここで《既存設備への投資》とは葬儀会館を中心とする既存設備のリニューアルや改修であり、減価償却費の範囲内を基本とします。《成長投資》とは、葬儀会館の積極的な新規出店やライフエンディングサポート事業の強化といったオーガニックな成長のための投資とM&Aやアライアンスによるインオーガニックな成長のための投資からなります。
※ここでのオーガニックな成長とは、自社が有する技術や資産、人材等の資源を活用して成長することを意味し、インオーガニックな成長とは、社外に存在するそれらの資源を提携や買収などにより獲得し成長することを意味します。
葬儀の小規模化や家族葬ニーズの高まりという外部環境をふまえ、成長のための新規出店は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の「(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載のとおり、新たな葬儀ブランド「エンディングハウス」を中心とする計画ですが、残り1ヵ年で16会館の出店を目指す投資資金は、営業キャッシュ・フローを中心とした自己資金でまかなうことができる見込みです。ライフエンディングサポート事業に係る投資資金に関しても、同様と考えております。
なお、会館用地については賃借(事業用定期借地)を原則とする中で、首都圏においては元々候補物件自体が少ないことから、稀少な好物件については土地の取得という判断をすることもあり得ます。その場合、土地を賃借する場合と比べて、一時的に多額の投資資金を要する可能性があります。また、M&Aやアライアンスに係る投資においては、予期せぬ好投資案件に対して、資金調達に起因する機会損失を回避することが重要であると考えます。
これらのケースを含む緊急多額の資金需要に対しては、高い水準にある資金の流動性で対応するほか、取引銀行3行と締結している総額10億円のコミットメントライン契約に基づく借入れによって資金調達をすることがあります。なお、同契約に基づく当期末の借入実行残高はありません。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
④経営者の問題意識と今後の方針について
経営者の問題意識と今後の方針については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
(提出会社)
(1)土地信託契約
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相手方の名称 |
契約年月日 |
契約内容 |
信託不動産の内容 |
契約期間 |
備考 |
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三井住友信託銀行株式会社 |
1990年 3月29日 |
信託不動産の管理運用の委託 |
北浜エクセルビル 大阪市中央区北浜 二丁目15番,16番 土地 621.92㎡ 建物 延4,927.73㎡ 鉄筋コンクリート造地下1階、地上10階 その他 機械及び装置、構築物、工具、器具及び備品があります。 |
自1990年3月29日 至2026年3月31日 (期間延長することができる。) |
不動産信託受益権 455百万円 |
(2)不動産賃借契約
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事業所名 |
相手方の名称 |
契約年月日 |
契約内容 |
不動産の所在地等 |
契約期間 |
備考 |
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公益社 高輪会館 |
宗教法人道往寺 |
2011年 12月5日 |
不動産 賃借契約 |
東京都港区高輪 延床面積 270.17㎡ |
自2013年1月1日 至2032年12月31日 (20年間) |
賃料月額 0百万円 |
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公益社 甲南山手 会館 |
㈱NTT西日本アセット・プランニング |
2016年 3月1日 |
不動産 賃借契約 |
神戸市東灘区本庄町 延床面積 247.68㎡ |
自2016年3月1日 至2041年2月28日 (25年間) |
賃料月額 0百万円 |
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公益社 甲子園口 会館 |
㈲高浜興産 |
2017年 3月1日 |
不動産 賃借契約 |
兵庫県西宮市中島町 1-2 延床面積 450.79㎡ |
自2017年3月1日 至2042年2月28日 (25年間) |
賃料月額 1百万円 |
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公益社 西宮山手 会館 |
ネッツトヨタ神戸㈱ |
2017年 12月23日 |
不動産 賃借契約 |
兵庫県西宮市城ヶ堀町 74-3 延床面積 773.11㎡ |
自2017年12月23日 至2047年12月22日 (30年間) |
賃料月額 0百万円 |
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公益社 会館 箕面 |
琴屋興業㈱ |
2005年 11月11日 |
不動産 賃借契約 |
大阪府箕面市牧落 延床面積 488.43㎡ |
自2006年3月17日 至2046年3月16日 (40年間) |
賃料月額 1百万円 |
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葬仙 米子葬祭会館 |
㈲金鶴冠婚 |
2005年 4月1日 |
不動産 賃借契約 |
鳥取県米子市長砂町 |
自2005年4月1日 至2035年2月28日 (30年間) |
賃料月額 5百万円 |
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タルイ 本社 |
㈱タルイ会館 |
2006年 10月1日 |
不動産 賃借契約 |
兵庫県明石市林崎町 |
自2006年10月1日 至2037年3月10日 (30年間) |
賃料月額 8百万円 |
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葬仙 松江葬祭会館 及び 事務所 |
㈱川中唯章商店 |
2023年 5月8日 |
不動産 賃貸契約 |
島根県松江市古志原五丁目820番14 他 |
自2023年4月28日 至2043年4月27日 (20年間) |
賃料月額 1百万円 |
(3)合弁契約
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契約締結先 |
契約内容 |
出資比率 |
合弁会社名 |
設立年月 |
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㈱広済堂 ホールディングス |
葬儀事業運営の ための合弁契約 |
㈱広済堂ホールディングス:51% 燦ホールディングス㈱:49% |
㈱グランセレモ東京 |
2022年4月 |
特記すべき事項はありません。