当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 経営方針
当社グループは、“業界一流のメーカーとして、本業を極め、本業に徹し、一流の商品をお客様にご提供することを通じて、社会の発展に貢献する”を経営理念とし、顧客ニーズに沿った商品開発に注力するとともに、自然環境の保護と社会の発展に貢献すべく企業活動を展開しています。
(2) 経営戦略等
当社グループでは、これからの厳しい競争時代を勝ち抜くため、着実に業績の伸展を目指し、次のような施策を実践していきます。
① 森林資源を保全する法正林施業(植林、育林、間伐、伐採)を採用したニュージーランドの育林事業により安定した品質と量の原材料確保を図ります。
② 貴重な資源を更に活かす為、高度な木材加工技術の更なる向上を図ります。
③ 木が持つ潜在能力を梃子(てこ)に、新成長市場であるアジア市場や国内のリフォーム、非住宅、商環境市場などで、“勝てる市場×勝てる仕掛け”を創造します。
④ 変化する市場の本質を見極め、魅力ある商品・サービスを提案し、新たなファンを創造します。
⑤ 新たな戦略を全社で迅速に推進する為、国内外の製造ネットワークを更に整備し、効率的な運営とコスト低減を図るとともに、社内の仕組みを再構築します。
⑥ 認証材を活用した国内外のニーズに応えていきます。
当社グループでは、ニュージーランドの自社林における森林経営において、二酸化炭素を吸収する森林面積を減らすことなく、一定の周期で毎年一定の木材を永続的に収穫することを基本方針とし、資源循環型の環境経営を目指しています。また、木材製品を生産し、長寿命化住宅を実現することは、植林で吸収した二酸化炭素を炭素として固定する貯蔵庫を生産しているといえます。国内では、バイオマス発電事業や再生エネルギーによる電力利用を推進することにより、カーボンニュートラルを目指しています。さらにクリーンな材料調達の証明としてニュージーランド子会社の全森林・全工場、香港子会社、フィリピン子会社工場、インドネシア子会社工場および国内の木質建材工場において森林認証を取得しています。
このように当社グループの事業活動自体が、サステナビリティに関する諸問題に対処するための取組みでもあります。
また、当社の強みであるニュージーランドで産出される木材を、一貫生産体制・国際分業体制をもって、さらに競争力のある製品として作り上げるべく、研究開発や知的財産投資も進めてまいります。
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、企業価値の向上と財務体質の強化を図るための経営指標として自己資本利益率(ROE)の向上を目指し、労働生産性の向上などによる収益性の改善や自己資本比率の維持・向上に取り組んでいます。また、事業の拡大と安定的な収益を獲得するために、グループ全体で連結売上高1,000億円を目指しています。
(4) 経営環境
当社グループの経営環境は、構造的な人口減少問題等により市場が縮小していく「量の面での変化」とともに、住宅の高性能化や住宅環境まで視野に入れた「質の面での変化」が同時に起こっており、当社グループがこれからの時代を生き抜き成長するためには、住まい手にとって魅力のある商品や提案を強化するとともに、リフォームや非住宅施設などの新しい市場を開拓していかなければなりません。また、住宅業界における職人不足による住宅品質の低下や工期遅れ、コスト高なども大きな課題となっています。このような環境下で、市場の変化をいち早く察知し、現状を肯定することなく自己変革に努め、常に当社グループ自らが環境の変化に合わせて変わっていくことが必要となっています。AIやIoTといったデジタル技術などを活用し、生産性を向上させることで、新たな付加価値の創造と売上・収益の向上を目指しています。
具体的には、国内においては新築戸建市場に加えてリフォーム、非住宅、商環境市場などの新市場の開拓、また海外においては発展が期待されるアジア圏の市場の開拓を主題とする成長戦略を策定し、当社グループ一丸となってこれらに取り組んでいます。
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
世界経済は、インフレの進行や、これを受けた金融引締め策が継続しているほか、ロシア・ウクライナ情勢や中東情勢を背景とした資源高に対する懸念等、景気の先行きに不透明感が高まっています。また、わが国経済は、これらの国際情勢や為替変動などの影響に注意が必要な状況となっています。
国内の住宅業界においては、当社グループの主力販売市場である戸建住宅市場における着工戸数が、2022年1月以降、前年を下回る水準で推移しています。また、海外子会社の販売においても主要販売市場であるニュージーランドや欧米などでの住宅需要が、各国における金融引締め策の長期化により低調に推移しています。
このような事業環境のもと、当社グループがこれからの時代を生き抜き成長するためには、既存市場でこれまで以上の存在感を示し続けるとともに、新しい市場に経営資源を段階的にシフトすること、また、併せて「脱炭素社会の実現」という世界的なニーズに対応した事業を展開していくことが経営課題と考えています。
当社グループは、ニュージーランドのラジアータパインや国産の杉・桧などの無垢材を使用した本物志向の無垢商品や収納商品、また職人不足に対応した省施工商品、付加価値の高いブランディング商品を開発して、リフォーム、非住宅などの国内新市場を開拓してまいります。2024年4月には、国内子会社が広島県庄原市において国産材の製材工場を新たに稼働させています。
海外においては、今期、工場の集約統合等の構造改革を実施したニュージーランド子会社では、当社グループ向けの生産数量を確保した上で、原木および木製品をニュージーランド国内やアジア市場へ拡販し、またインドネシア子会社では、突板ドアの生産体制を強化し、インドネシア国内や欧米市場向けの販路開拓を進めることにより、既存市場の動向に左右されない企業経営を目指してまいります。
なお、ニュージーランド子会社における森林経営は、二酸化炭素を吸収する森林面積を減らすことなく、30年の周期で毎年一定の木材を永久的に収穫できる資源循環型の環境経営を実践し、また国内では、バイオマス発電による電力利用を推進することにより、カーボンニュートラルを目指しています。また、クリーンな材料調達の証明としてニュージーランド子会社の全森林・全工場、香港子会社、フィリピン子会社工場、インドネシア子会社工場および国内の木質建材工場において森林認証を取得しています。当社グループの経営戦略の実践は、サステナビリティについての取組みでもあります。
また、生産企画・設計工程ならびに製造ラインにおけるデータ利活用の高度化や、営業部門の業務プロセス改革による効率化と顧客サービスレベルの更なる向上を目指したDX推進にも継続して取組んでまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 当社グループのサステナビリティ経営
当社グループは、再生可能な自然資源である木を植え、育てるところから事業を始めています。大切に育てた木を余すことなく建材として活かし、また植林する。その繰り返しの中で私たちは、人に優しい「住まい」づくりを追求し、自然と人と社会が循環共生する持続可能な社会を目指しています。
① ガバナンス
当社グループは「業界一流のメーカーとして、本業を極め、本業に徹し、一流の商品をお客様にご提供することを通じて、社会の発展に貢献する」との経営理念の下、自然と人が循環共生する持続的な社会と企業の持続的な成長を同時に目指すサステナビリティ経営を推進することを目的として、関連する経営課題の解決に向けた取組みを実施するため、取締役社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置しています。サステナビリティ経営に関する取組みやマテリアリティ(重要課題)の特定等については、取締役会において審議され、承認されています。サステナビリティ委員会の主な役割は以下の通りです。
1. 基本方針や戦略、重要課題(マテリアリティ)の審議、決定
2. 基本方針や戦略、重要課題(マテリアリティ)に沿った施策の推進および目標に関する進捗管理
3. その他上記すべてに関連する事項
また、サステナビリティ委員会の事前協議機関として、戦略統括本部内にサステナビリティ推進室を設置しています。
組織体制
② 戦略
当社グループ事業におけるESGのマテリアリティ(重要課題)および取組み
a. E/環境(Environment)
環境については、当社グループでは「森林育成・保全を地球環境の最重要課題とした持続可能な経営」をマテリアリティと捉えています。基本的な考え方として木の価値を最大限に生かした地球を守る経営を目指し、持続可能性や環境に配慮した木材・資材調達のため、自ら森を育て、加工・販売までを一貫して行う森林経営の徹底と気候変動の要因となる森林減少などの社会課題の解決に貢献することで、森林資源の持続的な活用と保全を行っています。
主な取組みとして、ニュージーランドで木を植え、育て、伐採し、また木を植える、木の年間成長分だけ毎年伐採を行う法正林施業によって森林資源を保全しながら、森林面積を減らすことなく、木材を永続的に収穫できる状態を保つ正しい林業のあり方を実践した持続可能な森林経営を行うとともに、ニュージーランド以外から調達する木材については、合法木材の利用を促進し、森林資源の保全にも努めています。
また、カーボンニュートラル(ゼロ)を目指し、生産過程で発生する木くずを有効活用したバイオマス発電を実施しています。また、自社のバイオマス発電所由来の再生可能エネルギーを利用推進し、CO₂排出量ゼロの電気を国内全ての製造拠点で使用しています。さらに、ニュージーランドの自社森林で育てた木材から製造加工した内装建材の製品カタログに、CO₂固定量を明記することで製品ごとの環境価値を見える化し、木質建材を選択する際の指標の一つとして活用していただくとともに、木質建材の環境価値を訴求する取組みを行っています。クリーンな材料調達の証明としてニュージーランド子会社の全森林・全工場、香港子会社、フィリピン子会社工場、インドネシア子会社工場および国内の木質建材工場において森林認証を取得しています。
2024年4月から子会社の株式会社フォレストワンが広島県・庄原市と提携し、主に庄原産材の製材を行う工場を新たに稼働させています。国内においても地域の循環型林業構築の一助となり、地域材の付加価値を高めていきたいと考えています。
事業活動にともなう環境負荷低減のために、使用電力の削減、廃棄物削減、ペーパーレス化の促進、輸送時の環境負荷低減などに取り組んでいます。
b. S/社会(Social)
社会については、第一に「安心・安全・快適な住空間の実現」をマテリアリティと捉え、「人が生き、そして暮らす」という住宅の本質として、お客様にとって住宅はいつまでも美しく丈夫で長持ちし、安全で快適なものであることが重要です。当社グループは木材を扱うプロとして、常に木材の「安心・安全・快適」な住宅部材としての本質を追求していきます。
主な取組みとして、長寿命化住宅実現のための技術・部材開発(耐久性の高い部材やリフォームしやすい内装部材の開発、耐震性の高い構造躯体の実現)やバイオマス由来の接着剤の開発、設計から品質管理まですべてのラインにおけるISO9001/14001認証取得と継続的改善を実施し、安全で快適な製品づくりを追求しています。
第二に「労働生産性向上の実現」をマテリアリティと捉えています。建築現場における職人不足などの課題が深刻化していくと予測される中、当社グループでは、長年現場の職人の声を聴き、労務工数を効率化する省施工システムの研究・提案を行ってきました。こうした活動を通じて、社会課題の解決に貢献していきます。
主な取組みとして、建築現場における労働生産性向上のため、省施工商品の開発や構造設計の見直しによる省施工への取組みとともに施工説明書のデジタル化などデジタルコンテンツの充実を行っています。
第三に「挑み成長できる組織づくり」をマテリアリティと捉えています。当社グループは全ての従業員とその家族が心身ともに健康であり、多様な価値観が尊重され、その能力を十分に発揮できる企業を目指しています。
主な取組みとして、持続的な価値向上には従業員の成長とスキルアップが重要と考え、社是「挑む」のとおり、やりがいをもって挑み、成長し続けられるよう、下記「(2)人的資本経営 ①戦略」に記載した人材育成方針・社内環境整備方針に基づき取り組んでいます。
c. G/ガバナンス(Governance)
ガバナンスについては、当社グループでは「公正かつ健全な事業活動の継続」をマテリアリティと捉えています。高い企業倫理の育成と健全な企業風土の醸成を図るため、各種規程やルールを整備し、当社監査役等と連携してこれらを運用・推進しています。さらに、財務報告の正確性と信頼性を確保するための仕組み強化の一環として、内部監査室等の体制面の充実を図っています。
主な取組みとして、サステナビリティ委員会の設置や、公正かつ健全な事業活動の実践として内部管理体制の構築とコンプライアンス規程の整備、継続的啓発の実施等の徹底のもと、高い企業倫理の育成と健全な企業風土の醸成を図り、トップを含めたすべての従業員が、公正かつ健全な事業活動を実践しています。
③ リスク管理
当社グループでは、リスク管理を企業価値向上の重要な取組みと位置付けています。社会的責任を果たし、社会的信用を確保することで、経営方針の実現を阻害するリスクを最大限排除することが重要であると考えており、当社ではあらかじめ事業や投資家の判断に重大な影響を及ぼす可能性があるリスクの評価を行い、想定される重大リスクを抽出しています。抽出した重大リスクは、重要課題(マテリアリティ)としてサステナビリティ委員会で審議・決定し、取締役会に報告し、審議・承認されています。また、サステナビリティ推進室を事務局とし、関連する部門、グループ会社と連携して、基本方針や戦略、重要課題(マテリアリティ)に沿った施策の推進および目標に関する進捗管理ができる仕組みづくりに努めています。
④ 指標及び目標
当社グループでは、ニュージーランド子会社における森林経営において、二酸化炭素を吸収する森林面積を減らすことなく、一定の周期で毎年一定の木材を永続的に収穫することを基本方針とし、資源循環型の環境経営を目指しています。また、木材製品を生産し長寿命化住宅を実現することは、植林で吸収した二酸化炭素を炭素として固定する貯蔵庫を生産しているといえます。国内では、バイオマス発電事業や再生可能エネルギーによる電力利用を推進することにより、カーボンニュートラルを目指しています。さらに、クリーンな材料調達の証明としてニュージーランド子会社の全森林・全工場、香港子会社、フィリピン子会社工場、インドネシア子会社工場および国内の木質建材工場において森林認証を取得しています。このように当社グループの事業活動自体が、サステナビリティに関する諸問題に対処する取組みであり、経営目標となります。今後の開示に向け、サステナビリティに関する達成目標時期や数値目標等をサステナビリティ委員会を中心に検討しています。
(2) 人的資本経営
① 戦略
人材育成方針・社内環境整備方針
当社は、人材ビジョンを「木と人を観る力・活かす力で、独創的な新市場を創り続け、『木のぬくもりと豊かな暮らし』を世界の人々に提供し続けるプロフェッショナル人材」、人事ポリシーを「成果・組織貢献に報いる仕組みを設け、各人と当社の成長のためにチャレンジする行動力のある人材を生み出す」と定めています。ひとり一人の自主自立を軸に、各人の成長に繋がり、また当社の成長戦略を実践することのできる人材育成を目指しています。
主な社内環境整備面の取組みとして、ひとり一人の成果・成果の最大化に向けた行動・組織貢献を軸に、各人の成果を反映した分かりやすい評価、またその成果・組織貢献・チャレンジを軸に、各人の成果・努力・自己成長に報いる処遇を目指して、2023年4月より人事制度を改正、運用を開始し、制度の定着化に努めています。
この人事制度は、女性社員の仕事と育児等の両立支援に係る育児休業、時短勤務、職場復帰や男性社員による育児休業の各種制度と併せ、女性・若手の活躍、高齢者の活躍にも対応できるものとなっています。また、変化の激しい市場環境に対応し、スピード感をもって事業創造できるスペシャリストの活用を強化するための専門職制度等の仕組みも導入しています。
② 指標および目標
当社グループでは、上記「(2)人的資本経営 ①戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、以下の指標および目標を掲げています。定量的な目標設定につきましては、重要な経営課題であると認識し、早期に対応できるよう取り組んでまいります。
当該指標に関する実績は、次のとおりです。
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指標 |
目標 |
実績(当連結会計年度) |
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男性労働者の子育て目的の休暇取得促進 |
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女性社員の役職者の育成・登用の促進 女性社員が安心して長く働ける職場の環境 整備 |
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(注) 実績の詳細は、「
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、後述のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 業績の変動要因について
① 新設住宅着工戸数の減少や職人不足による工期遅れの影響について
当社グループは、住宅建材及び住宅設備機器の製造販売を主たる事業としており、国内販売に関しては新設住宅着工戸数の減少や職人不足による工期遅れがもたらす販売減が、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
主な対応策として、新築戸建市場に加えてリフォーム市場や非住宅市場の開拓や海外での販路拡大など新しい顧客開拓に注力するとともに、職人不足に対応した省施工を可能にする商品開発等でその影響の軽減を図っています。
② 原材料の調達リスク及び価格変動リスクによる影響について
当社グループは、床材を主体とした木材の二次加工品の製造および造作材等木質建材商品の加工販売を主要な事業としており、原材料である木材について、調達が困難となった場合や価格が高騰した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
主な対応策として、ニュージーランド子会社であるJuken New Zealand Ltd.において、30年サイクルの循環型の持続可能な山林経営を行い、当社グループの原材料の主要な供給元とすることで木材の調達リスクや価格変動リスクを軽減しています。また、国内産の木材など、ニュージーランド子会社以外からの木材調達についても、調達先の多様化などで安定的な調達に努めています。
③ 木質バイオマス燃料の安定確保の影響について
木質バイオマス発電の運営においては、安定的に燃料を確保することが重要です。当社では、森林から直接産出する「間伐材等由来の木質バイオマス」、当社グループ内も含め製材所や木材加工所から生じる端材・木屑などの「工場残材由来の一般木質バイオマス」、建築解体現場から排出される「建設資材廃棄物由来のバイオマス」に加えて、フィリピン子会社で加工した木質燃料を輸入するなど、安定的に燃料調達を行っています。しかしながら、近隣での新たな大規模バイオマス発電所の稼働や自然災害などの不測の事態が発生した場合、社内外からの木質バイオマス燃料の供給が中断または減少する可能性があります。また、品薄により燃料価格が高騰した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。さらに、発電所が重大な故障などによる長期停止が発生した場合に電力売上が減少する可能性があります。
主な対応策として、フィリピン子会社で加工した木質燃料の輸入を増やすことで自社調達比率を上げ、外部調達の影響を縮小しています。加えて「間伐材等由来の木質バイオマス」の供給業者を増やし自然災害リスクの分散を図っています。
発電所の重大な故障等による長期停止に備えて、粗悪な燃料を排除するためのふるい機や選別機の活用や、メーカーによる定期点検、所員による日常点検などを徹底して行っています。また、予兆診断等の所員のレベルアップにも注力しています。
④ 為替変動による影響について
当社グループは、ニュージーランド子会社Juken New Zealand Ltd.からの木材の仕入れに関しては決済条件を円建てとしており、当社は為替の変動による影響は受けないものの、Juken New Zealand Ltd.ではニュージーランドドルの為替相場の変動によって、為替差損益が発生する可能性があります。また、海外子会社の借入金についても、現地通貨以外の通貨建てによる借入金において為替差損益が発生する可能性があります。
主な対応策として、為替変動が当社グループに与える影響度合いを勘案し、必要に応じて為替予約等によるリスクヘッジを行っています。
⑤ 温室効果ガス削減(脱炭素)への世界的な取組みの進展について
気候変動や地球温暖化の原因とされる温室効果ガス(GHG)の削減を目的とした取組みが世界的に進められています。今後、地球温暖化対策として規制の強化等により、これらに関連する対策費用が増加する場合や、特定地域における法令又は規制を遵守することが困難になった場合、当該地域における当社グループの事業運営が影響を受ける可能性があります。
主な対応策として、ニュージーランド子会社において30年サイクルの循環型の持続可能な山林経営を行い、気候変動や地球温暖化の原因とされる温室効果ガス(GHG)の削減に努めています。同社が経営する約40,000haの森林におけるラジアータパインによる二酸化炭素の吸収量は年間約68.7万トンになります。温室効果ガスである二酸化炭素は森林で樹木に吸収された後も炭素として木材中に固定されています。木材製品を生産することは植林で吸収した二酸化炭素を炭素として固定する貯蔵庫を生産しているといえます。
2022年4月より当社では、事業活動における環境負荷低減のため、関西電力株式会社が提供する「再エネECOプラントラッキング付帯」を活用し、自社のバイオマス発電所由来の再生可能エネルギーで、実質CO₂排出ゼロの電気を自社工場で使用しています。今後、当社グループは、温室効果ガスの削減(脱炭素)に継続的に取組み、様々な媒体を使って適時に情報開示に努めていきます。
⑥ 固定資産の減損会計による影響について
当社グループは、有形固定資産や美術品等の固定資産を所有しています。これらの資産については、減損会計を適用しています。有形固定資産については、将来のキャッシュ・フローが資産の帳簿価額を回収できるかどうかを検証し、美術品については、美術専門家等の第三者から入手した価格に基づいて回収可能な価額を算定し、減損が必要な資産については適切な会計処理を行っています。しかしながら、将来の環境変化により固定資産の将来キャッシュ・フロー見込額が減少した場合や美術品の回収可能価額が大きく下落した場合、追加の減損処理により、当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
主な対応策として、これらの資産価値を定期的に確認し、可能な限り価値低下を招かない方策を継続的に検討・実施しています。
⑦ 情報システムに関するリスクについて
当社グループは、生産、販売、管理等の情報をコンピュータにより管理しています。情報システム及び情報ネットワークは欠くことのできない基盤であり、これらの情報システムの運用については、大規模災害による被災、コンピュータウイルス感染によるシステム障害、ハッキング等の被害によるシステムダウンおよび外部への社内情報の漏洩が生じた場合、当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。さらに、当社の想定を超えた技術による情報システムへの不正アクセスやコンピュータウイルスへの感染等により、当社グループの情報システムに障害が発生したり、外部へ社内情報が流出する事態が発生したりした場合、当社グループの財政状態及び業績に、より大きな影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、セキュリティ対策は「システム」と「ユーザ(従業員)」の両面への継続的な対応が必要と考えており、主な対応策として、適切なウィルス対策ソフトの導入、ソフトウェア更新による脆弱性解消、不正アクセス常時監視等の対応とともに、全従業員を対象とした機密情報の取扱いやサイバーセキュリティに関する教育、インシデント発生時の対応態勢の強化に取り組んでいます。
⑧ 地震・津波・台風等の大規模な自然災害による影響について
地震・津波・台風等の大規模な自然災害が発生した場合、当社グループの生産・物流・販売活動に影響を与え、財政状態や業績に影響を及ぼす可能性があります。
大規模な自然災害による被害を完全に回避できるものではありませんが、主な対応策として、当社グループで策定した規程・ルールに基づき、非常時を想定した全社的なリスク管理体制を構築、運営しています。
具体的には安否確認システムの導入や定期的な防災訓練、地震保険への加入などを実施しています。
⑨ 海外展開にともなうリスクについて
当社グループは、ニュージーランド、フィリピン、インドネシアなど海外での投資や事業展開を進めています。これら海外への事業進出には、予期しない法律又は規制の変更、政治又は治安混乱、雇用環境の変化、テロ・戦争等といったリスクを内在しており、これらは今後の事業に影響を及ぼす可能性があります。
主な対応策として、海外の政治・経済情勢の情報収集に努め、必要に応じて外部専門家の助言等も得て、的確かつ迅速に対応しています。
⑩ 財務制限条項の抵触について
当社グループは、海外子会社を含め、国内外の住宅需要の低下による販売・生産数量の減少、円安やインフレの進行によるコストアップも進み、前年同期に比べ売上高や利益面で低調に推移しました。これにより、当社が締結しておりますシンジケートローン契約に規定する財務制限条項の「契約締結時以降の各年度の決算期における連結損益計算書に示される営業損益が、損失とならないこと」に抵触することとなりましたが、参加金融機関との協議により、期限の利益喪失に関わる条項は適用しない旨の承諾を得ています。
このような状況の中、主な対応策として、当社グループはニュージーランド子会社の事業再編を含む、収益性・生産性向上施策を進めてまいります。
(2) ニュージーランドにおける事業内容及び業績・総資産の推移について
当社グループは、ニュージーランドにおいてJuken New Zealand Ltd.を通じてラジアータパイン等の植林を含む山林経営を行っています。
山林経営は木材市況変化への対応力を高めると同時に原材料調達の安定化や部材調達コストの低減に役立っています。山林経営につきましては、立木の伐採可能量の増加に対応して設備投資が必要となっています。そのため、連結キャッシュ・フローにおきましては、投資活動により使用する資金の多くはニュージーランドにおける投資に充当しています。
ニュージーランドに関する内部取引を含む売上高、経常利益、総資産の推移は次のとおりです。
(ニュージーランドの売上高、経常利益、総資産の推移)
|
|
|
2020年3月期 (百万円) |
2021年3月期 (百万円) |
2022年3月期 (百万円) |
2023年3月期 (百万円) |
2024年3月期 (百万円) |
|
ニュージーランド |
売上高 (注) |
15,344 (7,200) |
15,882 (6,711) |
18,270 (6,209) |
18,742 (6,850) |
18,840 (5,268) |
|
経常利益又は 経常損失(△) |
△38 |
491 |
△287 |
△917 |
△2,588 |
|
|
総資産 |
27,695 |
33,465 |
37,936 |
38,886 |
41,951 |
(注) 売上高下段の括弧内数値は、所在地間の内部売上高又は振替高です。
(3) 有利子負債依存度について
当社グループにおける有利子負債依存度は、2024年3月期末39.0%となっています。当社グループにおきましては、今後も経営資源の効率化等により、有利子負債を適正水準に保つ方針ですが、今後の金利動向等金融情勢の変化によっては当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(有利子負債残高、有利子負債依存度の推移)
|
|
2020年3月期 |
2021年3月期 |
2022年3月期 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
|
総資産(百万円) |
80,688 |
91,142 |
95,062 |
97,018 |
101,754 |
|
純資産額(百万円) |
36,497 |
41,129 |
44,188 |
44,404 |
44,717 |
|
有利子負債残高(百万円) |
30,921 |
35,622 |
33,639 |
36,604 |
39,717 |
|
自己資本比率(%) |
44.2 |
44.0 |
45.2 |
44.6 |
43.0 |
|
有利子負債依存度(%) |
38.3 |
39.1 |
35.4 |
37.7 |
39.0 |
(注) 期末有利子負債残高は、社債及び借入金の合計額です。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、資源高による物価上昇が景気の下押し圧力となったものの、インバウンド需要や個人消費、企業の設備投資などが持ち直し、緩やかな回復傾向が続いています。しかし、ロシア・ウクライナ問題の長期化や中東情勢の緊迫化、不安定な為替相場、資源・エネルギー価格の高騰、世界的な金融引き締めなど、依然として先行き不透明な状況が続いています。
住宅業界においては、当社グループの主力販売市場である日本国内の持家と分譲戸建住宅を合わせた着工戸数は、2022年1月以降、前年を下回る水準で推移しています。また、海外子会社の主要販売市場であるニュージーランドや欧州などでの住宅関連の需要も、各国における金融引き締め政策の長期化による影響で低調に推移しています。
欧米や中国での木材需給の急激な逼迫に端を発した木材・木製品の供給不足や価格高騰については、需給逼迫のピークは過ぎ、木材価格は下落傾向となっているものの、副資材や電力費、燃料費等、さまざまなコストの上昇や高止まりが続いています。
当社グループはこのような事業環境のもと、無垢商品や省施工商品といった付加価値が高い商品を核とした内装建材等の拡販に注力するとともに、脱新築戸建依存に向けて国内のリフォーム・非住宅市場や海外市場といった新たな市場のさらなる開拓を進めています。また、デジタル技術などを活用した労働生産性の向上や経費削減への継続的な取り組みに加え、生産企画・設計工程ならびに製造ラインにおけるデータ利活用の高度化や、営業部門の業務プロセス改革による効率化と顧客サービスレベルのさらなる向上を目指したDX推進プロジェクトに取り組んでいます。さらに、サプライチェーン全体における持続可能な共存共栄関係の構築を目指し、「パートナーシップ構築宣言」を策定・公表(8月)しました。「持続可能な社会の実現」という世界的な課題に対しては、「人権方針」、「サステナビリティ調達方針」及び「サステナビリティ調達ガイドライン」を制定し、当社ウェブサイトに公表(9月)。2023年11月には「ウッドワン サステナビリティレポート2023」を公開、当社のマテリアリティ(重要課題)に対する考え方、具体的な対応事例を掲載し、さまざまなステークホルダーの方々とのコミュニケーションに努めています。
国内販売については、「商品にサービスを加えて提供する建材サービス業」を目指し、省施工商品や無垢商品など、お客様にとって付加価値のある商品の拡販に取り組み、取引店数のさらなる拡大を進めています。また、昨今の急激な原材料不足の拡大、原材料価格の高騰等、度重なる資材調達コストの上昇に対応して、生産性向上によるコストダウンやサプライチェーンの強化に加え、適正な収益確保を行うべく床材・造作材等の販売価格の改定に継続的に取り組んでいます。
商品開発については、調湿機能、やすらぎ効果、経年美化、断熱効果、衝撃吸収性といった無垢材の特長を生かした無垢商品や、サイズ・カラーが豊富で組み合わせ自由な収納商品、職人不足など建築現場での課題に対応した省施工商品、安全・安心な素材を使いあざやかな色彩や豊富なデザインを揃えた幼保施設向け商品といった付加価値のある新商品の開発に取り組んでいます。
リフォーム・非住宅市場については、開発営業部、構造システム営業部といった各専担部署がショールームでのキャンペーンや展示会への出展、オンラインセミナーや現場見学会なども活用し、脱炭素社会への取り組みや中大規模の建物を木造で建築した実例の紹介などを通じて、リフォーム・非住宅の新規物件や内装材案件の獲得に取り組んでいます。また、商環境開発部では非住宅市場への販売強化に向け、環境付加価値をもつニュージーパインⓇに特殊塗装を施した独創性の高い商品・サービスを提案の主軸に据え、設計事務所からの獲得案件数の拡大に取り組んでいます。
海外事業については、ニュージーランド子会社では、当社グループ向けの生産数量を確保した上で、原木や木製品などをニュージーランド国内市場などへ販売しています。また、インドネシア子会社では、欧米市場向けやインドネシア国内市場の販路開拓を続け、拡販に努めています。
こうした状況の中、日本国内での販売価格の改定による売上面・利益面での効果はあったものの、海外子会社を含め、国内外の住宅需要の低下による販売・生産数量の減少、円安やインフレの進行によるコストアップも進み、前年同期に比べ売上高や利益面で低調に推移しました。
この結果、当連結会計年度の連結売上高は、64,779百万円(前年同期比1.6%減)、営業損失は939百万円(前年同期は営業利益766百万円)、経常損失は1,286百万円(前年同期は経常利益668百万円)となり、親会社株主に帰属する当期純損失は2,315百万円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純利益365百万円)となりました。なお、特別損失は主にニュージーランド子会社の事業再編に伴い、将来使用見込みがない資産の減損および人員整理費用等を事業再編損として1,456百万円計上しました。また、2024年3月28日にニュージーランド政府から発表された税制改正の影響により、ニュージーランド子会社の法人税等調整額が460百万円増加し、親会社株主に帰属する当期純損失が増加しました。
当連結会計年度における連結財政状態は、為替の影響もあり、前連結会計年度に比べ資産が4,735百万円増加、負債が4,422百万円増加、純資産が313百万円増加しました。資産4,735百万円の増加は、流動資産が949百万円減少したものの、固定資産が5,685百万円増加したことによるものです。負債4,422百万円の増加は、主に借入金が3,112百万円増加(為替影響除きでは1,748百万円増加)したことによるものです。純資産313百万円の増加は、主に利益剰余金が2,538百万円減少したものの、為替換算調整勘定が1,938百万円増加、その他有価証券評価差額金が942百万円増加したことによるものです。
セグメント別の経営成績は次のとおりです。
a.住宅建材設備事業
住宅建材設備事業では、床材カタログ「ウッドワンのながく愉しめる床材~足感フロアダイジェスト~」を発刊しました(6月)。また、6月9日(無垢の日)に当社の公式Instagramアカウントを開設しました。2018年に開設したInstagramアカウント「Ki-Mama」とともに、当社の商品やイベントなどの情報を随時発信しています。11月には、当社商品を使用した施工事例を設計者や施工者から募集してコンテストを行う「ウッドワン空間デザインアワード2023」(第7回)を開催しました。3月には、世界的なプロダクトデザイナー深澤直人氏をディレクターに迎え、「WO Timeless standard collection」という新商品の展示会を開催しました。上質で時代に左右されず、暮らすうちに味わい深く変化していく新しい商品シリーズが生まれました。
リフォーム市場については、国土交通省など3省連携による補助事業に対応した商品を提案する「住宅省エネ2023キャンペーン」の特設サイトを開設しました(4月)。また、同キャンペーンの先進的窓リノベ事業に対応する無垢の木の内窓「MOKUサッシ」において、アルゴンガス入りLow-E複層ガラスを発売しました(6月)。このほか、お客様がキッチンをご自宅に設置したイメージや配置を3Dシミュレーションできるサービス「WOODONE AR Kitchen Simulator」の開始(9月)、「リフォーム・リノベーション向けカタログ」の発行(12月)などを行いました。こうした活動の結果、リフォーム向けの売上高は前年同期に比べ増加しました。
非住宅市場については、11月に、幼保施設向け商品・サービスのビジネス商談見本市「保育博2023」に昨年に続き2度目の出展を行い、幼保施設でも安心して長く使っていただける商品を提案しました。また、2月に開催した「第9回中大規模木造建築オンラインセミナー」では、国交省「住宅・建築物技術高度化事業」に採択され開発した木質ラーメン構造システム「STRONG ONE工法(非住宅向けJWOOD工法)」を、採用第一号の完成現場実例とともに紹介・提案しました。この工法は、耐力壁のないフレキシブルなオフィスや店舗の設計に活用でき、また将来的には解体・移築・再利用も可能な構造システムとなっています。
商品面については、収納商品では「仕上げてる棚板」、省施工商品では「セットオン階段」などの階段商品群や「小壁パネル」が引き続き好調に推移しています。また、新商品については、7月に、厳選した3ミリ厚のオーク挽板を贅沢に使用したフローリング「コンビットモノ 挽板3.0 足感フロア」を発売。一般社団法人日本商環境デザイン協会が開催する「PRODUCT OF THE YEAR 2023」で入賞した「ピノアース足感フロア」と同様の感性評価実験を実施し、レーダーチャート(足感チャート)で木が持つぬくもり・足ざわり・心地よさを可視化しました。このほか、ワンルームマンションやリノベーションなどでの設置を想定したコンパクトキッチン「W1200フレームキッチン」(8月)、無垢の木の洗面台に、環境に優しく、水回りでの使用にも対応できる新しい左官素材「オルトレマテリア」で仕上げた「コテノカウンター」(8月)、細やかなカスタムや打合せを必要とせず「このままでいい」キッチン「cono:mamma[コノママ]」(10月)などを発売しています。
海外事業については、ニュージーランド子会社では、原木の販売は堅調に推移しましたが、木製品については、日本国内の住宅需要の低下による当社グループ向け生産数量の減少に加えて、海外市場における住宅関連需要の低下で、グループ外向け売上高が減少するとともに、生産数量の減少による製造コストの増加などで利益面では低調に推移しました。このため、収益改善を目的として同社ギスボン工場を閉鎖し、生産拠点を集約することで生産性向上を通じた競争力の強化を図るとともに、今後の需要に応える生産量の確保を継続してまいります。また、インドネシア子会社では、主に欧州市場への売上高が大きく減少したため、前年同期に比べ売上高、利益面ともに低調な結果となりました。
この結果、当連結会計年度における住宅建材設備事業の売上高は63,755百万円(前年同期比1.6%減)、営業損失は1,012百万円(前年同期は営業利益683百万円)となりました。
b.発電事業
発電事業では、本社敷地内に設置している木質バイオマス発電設備で発電した再エネ電気を、電気事業者にFIT固定価格で全量売電しています。バイオマス燃料需要が増え続ける中、依然燃料代が高止まりしていることや、太陽光発電の急増に伴う電力の需給バランスの調整のために電気事業者から要請された「出力制御」の回数が前年同期に比べ大幅に増加したこともあり、売上高、営業利益ともに減少しました。
木質バイオマス発電において排出されるCO₂は、木が成長する過程で大気から吸収したものであり、大気中のCO₂量の実質的な増加には繋がらない(「カーボンニュートラル」)とされるものです。当社では、森林から直接産出される「間伐材等由来の木質バイオマス」、当社国内工場やフィリピン子会社などで生じる端材などの「一般木質バイオマス」、建築解体現場から排出される「建設資材廃棄物」を燃料として、2015年からバイオマス発電事業を行っています。
この結果、当連結会計年度における発電事業の売上高は1,065百万円(前年同期比2.7%減)、営業利益は73百万円(同11.5%減)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローにつきましては、営業活動により4,028百万円の増加、投資活動により5,070百万円の減少、財務活動により1,530百万円の増加となりました。
営業活動により増加した資金4,028百万円(前年同期は109百万円の資金増加)は、主に税金等調整前当期純損失2,815百万円、仕入債務466百万円減少に加えて、法人税等で569百万円の支払いがあったことにより資金が減少したものの、非資金項目である減価償却費3,885百万円、棚卸資産2,065百万円減少により資金が増加したものです。
投資活動により減少した資金5,070百万円(前年同期は2,944百万円の資金減少)は、主に国内および海外子会社での設備投資およびニュージーランド子会社での山林投資等に4,961百万円支出したことによるものです。
財務活動により増加した資金1,530百万円(前年同期は1,943百万円の資金増加)は、主に配当金として220百万円を支出したものの、借入金による資金調達により2,215百万円増加したことによるものです。
この結果、現金及び現金同等物は613百万円の増加となり、当連結会計年度末残高は5,161百万円(前連結会計年度比13.5%増)となりました。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績を品目ごとに示すと、次のとおりです。
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品目 |
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
|
床材 |
4,156 |
85.1 |
|
造作材 |
15,385 |
88.9 |
|
その他建材 |
21,957 |
110.5 |
|
住宅設備機器 |
1,668 |
98.2 |
|
住宅建材設備事業 計 |
43,167 |
98.7 |
|
発電事業 |
884 |
97.1 |
|
合計 |
44,052 |
98.6 |
(注)金額は製造原価により表示しており、セグメント間の内部振替前の数値によっています。
b.受注状況
当社グループの生産は見込み生産を主体とし一部受注生産を行っていますが、その比率は僅少であるため、記載を省略しています。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績を品目ごとに示すと、次のとおりです。
|
品目 |
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
|
床材 |
6,750 |
94.2 |
|
造作材 |
30,364 |
94.5 |
|
その他建材 |
22,675 |
106.5 |
|
住宅設備機器 |
3,924 |
94.8 |
|
住宅建材設備事業 計 |
63,714 |
98.4 |
|
発電事業 |
1,065 |
97.3 |
|
合計 |
64,779 |
98.4 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しています。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
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相手先 |
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
||
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金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
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住友林業㈱ |
8,818 |
13.4 |
8,253 |
12.7 |
|
SMB建材㈱ |
8,048 |
12.2 |
7,574 |
11.7 |
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループは、企業価値の向上と財務体質の強化を図るための経営指標として自己資本利益率(ROE)の向上を目指し、収益性の改善や自己資本比率の維持・向上に取り組むとともに、事業の拡大と安定的な収益を獲得するため、グループ全体で連結売上高1,000億円を目指しています。
当連結会計年度においては、企業の設備投資やインバウンド需要の回復などで緩やかな景気回復の動きが見られたものの、当社グループの主力販売分野である持家・分譲戸建住宅の着工戸数が住宅価格の高騰などを背景に前年を大きく下回る水準で推移したため、売上高は前年同期と比べ1,049百万円減収の64,779百万円(前年同期比1.6%減)となりました。今年度も引き続き利益の確保に重点を置き、付加価値の高い商品の拡販や生産の効率化を進めるとともに、全社的な取組みによる経費の抑制に努めました。
しかしながら、国内外の住宅需要の低下や消費低迷による販売・生産数量の減少、為替やインフレの進行によるコストアップが続き、売上総利益率は24.3%(同2.2ポイント減)となりました。また、販売数量の減少に伴い販売運賃は削減したものの、新商品の開発や旅費交通費の増加により販管費率は25.7%(同0.3ポイント増)、営業利益率は前期の1.2%から当期は△1.5%、経常利益率は前期1.0%から当期は△2.0%、親会社株主に帰属する当期純利益率は前期0.6%から当期△3.6%となりました。その結果、自己資本利益率は前期0.8%から当期は△5.3%、自己資本比率は前期44.6%から当期43.0%に低下しました。
a.経営成績
当連結会計年度は、海外においては、インドネシア子会社で主に欧州市場への売上高が大きく減少し、国内においては、主力販売分野である持家・分譲戸建住宅の着工戸数が前年を大きく下回る水準で推移し、連結売上高は64,779百万円(前年同期比1.6%減)となりました。また、海外における海上運賃の増加や生産数量の減少による製造コストの増加などもあり、売上総利益は15,722百万円(同10.0%減)となり、販売費及び一般管理費は、販売運賃等の経費削減に努め、16,662百万円(同0.2%減)となりました。その結果、営業損益は前年同期に比べ1,706百万円減少し939百万円の損失、経常損益は前年同期に比べ1,954百万円減少し1,286百万円の損失となりました。また、親会社株主に帰属する当期純損益は、ニュージーランド子会社の事業再編に伴い、将来使用見込みがない資産の減損および人員整理費用等を事業再編損として計上し、前年同期に比べ2,680百万円減少し2,315百万円の損失となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。
当連結会計年度における住宅建材設備事業の売上高は63,755百万円(前年同期比1.6%減)となりました。付加価値の高い商品の販売や、全社的な経費抑制の取組みを行ったものの、副資材、電力費、燃料費等、さまざまなコストの高止まりから営業損失は1,012百万円となりました。
品目別では、床材の売上高は6,750百万円(同5.8%減)となり、前年同期に比べ416百万円減少しました。
造作材の売上高は30,364百万円(同5.5%減)となり前年同期に比べ1,782百万円減少しましたが、高付加価値商品として注力している収納商品・省施工商品においては、収納商品では「仕上げてる棚板」、省施工商品では「セットオン階段」や「小壁パネル」といった商品の販売実績が好調でした。
その他建材の売上高は22,675百万円(同6.5%増)となり前年同期に比べ1,393百万円増加しました。特に、ニュージーランド子会社における原木の販売実績が好調でした。
住宅設備機器の売上高は、3,924百万円(同5.2%減)と前年同期に比べ214百万円減少しました。
発電事業では、本社敷地内に設置している木質バイオマス発電設備により、電気事業者にFIT固定価格で売電を行っています。前連結会計年度に比べ、依然燃料代が高止まりし、燃料構成の変化から売電価格が低下、さらに太陽光発電の急増に伴う電力需給バランスを調整するため、電気事業者から「出力制御」が行われたこともあり、当連結会計年度は、売上高が1,065百万円(同2.7%減)、営業利益が73百万円(同11.5%減)となりました。
b.財政状態
当連結会計年度における連結財政状態は、為替の影響もあり、前連結会計年度に比べ資産が4,735百万円増加、負債が4,422百万円増加、純資産が313百万円増加しました。
資産4,735百万円の増加は、流動資産が949百万円減少したものの、固定資産が5,685百万円増加したことによるものです。流動資産949百万円の減少は、現金及び預金が613百万円増加、売掛金が193百万円増加したものの、棚卸資産が1,767百万円減少したことによるものです。また、固定資産5,685百万円の増加は、主にニュージーランド子会社の事業再編に伴い、将来使用見込みがない資産の減損をしたものの、同社の立木等の増加、国内グループ子会社フォレストワンの庄原新工場への設備投資等の増加により、有形固定資産が4,169百万円増加(為替影響除きでは1,105百万円増加)したことによるものです。
負債4,422百万円の増加は、主に国内および海外子会社での設備資金や運転資金の調達等により、借入金が3,112百万円増加(為替影響除きでは1,748百万円増加)したことによるものです。
純資産313百万円の増加は、主に利益剰余金が2,538百万円減少したものの、為替換算調整勘定が1,938百万円増加、その他有価証券評価差額金が942百万円増加したことによるものです。
② キャッシュ・フローの状況分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの資金需要は、主に大きく分けて運転資金需要と設備資金需要の二つがあります。運転資金需要は、主に材料・外注費及び人件費などの商品の生産活動や販売費及び一般管理費等の営業活動によるものです。また、設備資金需要は、山林投資及び生産設備の新設・更新ですが、通常は減価償却費の範囲内を目安として支出しています。当連結会計年度の設備投資は、主に国内およびニュージーランド子会社における設備投資および山林投資に支出しました。
当社グループは、運転資金と設備資金については、営業収支資金より充当し、不足が生じた場合は有利子負債の調達を実施しています。長期の借入金、社債などの長期資金の調達は、事業計画に基づき調達計画を策定し、金利動向等の調達環境や既存の借入金の償還時期を考慮して調達しています。また、ニュージーランド子会社における設備及び山林の投資資金や国内グループ子会社フォレストワンの庄原新工場への設備投資等については、各社の年次資金計画を元に、各社が金融機関、またはグループ会社から調達を行っています。今後、不測の事態により想定を超えて資金面で悪影響が生じることが見込まれる場合には、従来から確保しているコミットメントライン等を活用していく予定です。
なお、当連結会計年度末における借入金及び社債(有利子負債)の残高は、39,717百万円となっています。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は5,161百万円となっています。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載の通りであります。
該当事項はありません。
当社グループでは、ニュージーランドで経営する森林から得られる植林木(森林認証を取得したラジアータパイン)を有効に活用し、「ともに暮らす。木と人と、地球と。」をテーマに、無垢の木のぬくもりある暮らしのご提供を目指しています。近年は、「環境貢献の価値」と「品質の向上と安定化」のために認証材活用や木材加工技術・品質管理技術の向上を進めるとともに、商品開発を中長期的課題として研究開発を行っています。
当連結会計年度における住宅建材設備事業セグメントでは研究開発費の総額は
当連結会計年度は、無垢や挽板の素材の良さをお届けできるように、「長く使うことが一番のサステナブル」をテーマに、住宅向け商品群と非住宅商品群の区分け・市場ごとに求められる仕様での商品展開を行いました。
住宅用建材では、床材カタログ「ウッドワンのながく愉しめる床材~足感フロアダイジェスト~」を発刊しました(6月)。その中でも、厳選した3ミリ厚のオーク挽板を贅沢に使用したフローリング「コンビットモノ 挽板3.0 足感フロア」は、一般社団法人日本商環境デザイン協会が開催する「PRODUCT OF THE YEAR 2023」で入賞した「ピノアース足感フロア」と同様の感性評価実験を実施し、レーダーチャート(足感チャート)で木が持つぬくもり・足ざわり・心地よさを可視化しました。
また、世界的なプロダクトデザイナー深澤直人氏をディレクターに迎え、「WO Timeless standard collection」という新商品の展示会を開催しました(3月)。上質で時代に左右されず、暮らすうちに味わい深く変化していく新しい商品シリーズが生まれました。
住宅設備機器では、無垢の木のキッチン「スイージー」の充実に加え、ワンルームマンションやリノベーションなどでの設置を想定したコンパクトキッチン「W1200フレームキッチン」(8月)、無垢の木の洗面台に、環境に優しく、水回りでの使用にも対応できる新しい左官素材「オルトレマテリア」で仕上げた「コテノカウンター」(8月)、細やかなカスタムや打合せを必要とせず「このままでいい」キッチン「cono:mamma[コノママ]」(10月)などを発売しました。
リフォーム市場でお客様のご要望にお応えするため、リフォーム・リノベーション向けカタログを12月に発刊。一般的リフォーム、修繕に向けた商品に加え、環境省が主導する先進的窓リノベ事業の対象商品である木製内窓「モクサッシ」をはじめとする断熱ECOリフォーム向け商品、1㎜ピッチで巾サイズをオーダーすることができる「仕上げてる棚板」をはじめとする省施工商品、現場の状況に柔軟に対応できるドレタス建具サイズオーダー商品などを提案しました。
非住宅分野においては、幼稚園・保育園・認定こども園向け建材カタログと高齢者施設・サービス付き高齢者向け住宅商品カタログを発刊。2023年11月には保育博2023にも出展し、無垢の木の良さに加え、色や足感などの付加価値提案を行いました。
当社グループでは、今後も新築住宅、リフォーム、非住宅分野など様々な市場で求められるニーズに応える商品やサービスを提供してまいります。