文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
当社グループは、「人と社会と共生し快適で豊かな生活空間を創造し続けることで人々を笑顔にする」をコーポレートビジョンとして掲げております。当社は、ビジョンの実現を通じてステークホルダーの要請・期待に応え、 持続可能な社会の実現に貢献することを目的に日々の活動に取り組んでおります。
当社のこれまでの歩みには、社是『互譲協調』があります。 『互譲協調』とは、「人と人との和」を大切にし、思いやり・助け合いの精神の下、何事にも使命感と自責心をもって臨み 組織の相乗作用による高い目標・目的を達成することで、社会や社業に貢献する姿勢を意味する当社創業以来脈々と受け継がれている基本的な価値観です。
当社はこの社是の精神に基づき、事業やステークホルダーが直面する 諸課題の解決に取り組み、そこから得られる信頼をベースに『選ばれ続ける企業』となることを目指しております。
当社グループは、事業の発展・拡大と共に資本コストを意識した経営を進めております。目標とする経営指標としましては、2024年度が最終年となる現在の中期経営計画「Transformative Value Evolution(TVE)」においてはROE必達8%としております。また、株主還元はDOEを採用し、4%まで引き上げることを計画しております。
なお、当該KPIの各数値については有価証券報告書提出日現在において予測できる事情等を基礎とした合理的な判断に基づくものであり、その達成を保証するものではありません。
(3) 中長期的な会社の経営戦略及び対処すべき課題
当社グループが関連する自動車業界におきましては、自動運転や電動化など多様な技術革新により、業界を取巻く環境は加速度的に変貌しており、技術競争は熾烈を極める状況であります。
2021年に現在の中期経営計画「Transformative Value Evolution(TVE)」と共に発表した2030年までの企業価値向上のロードマップでは、2021年~2024年を再生・強化と位置づけ、収益構造の改善と資産効率の改善で基盤を再構築するWave0、Wave1期間とし、2025年~2030年を空間プロデューサーとNon-Automotiveビジネスの両輪に向け大きく飛躍するWave2期間としております。
既存シートビジネス領域では、徹底したリーン化によって収益性を高め、そこで得られた経営資源を新たなビジネス領域へ積極的に投資を行ってまいります。具体的には、3つの“シンカ”「深化」、「進化」、「新化」によって、新たな価値に繋がるイノベーションを生みビジネス領域を拡大し、それぞれの成果を各ステークホルダーに還元すると共に、成長に向けた投資を行うことで企業価値の向上を目指しております。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、「人と社会と共生し快適で豊かな生活空間を創造し続けることで人々を笑顔にする」をコーポレートビジョンとして掲げております。当社は、ビジョンの実現を通じてステークホルダーの要請・期待に応え、持続可能な社会の実現に貢献することを目的にESGに取り組んでいきます。そのために、当社は「モノづくりを通じた社会貢献」と「事業プロセスにおける社会的責任」をESGの根幹と位置づけ、ESGと事業活動を一体化した経営を目指します。「モノづくりを通じた社会貢献」では、人々を笑顔にする革新的な技術を礎に自動車用シートを中心とした安心・安全・快適な車室空間を創造し続け、当社の商品やサービスによる提供価値を通じ社会へ貢献していきます。また、「事業プロセスにおける社会的責任」では、法令・社会ルールの遵守はもとより、ダイバーシティの推進や地球温暖化防止など社会が抱える課題に取組み、よき企業市民として社会的責任を果たしていきます。当社はESGを常に経営戦略の中心に据え、企業の持続的な成長を図りながら、これらの活動を通じて当社ビジョンの実現に取り組んでいきます。
■ESG経営概念図

(2) ESG推進体制
当社は、2019年6月にCSR活動推進会議(責任者:CSR担当役員、メンバー:CSR関連部門、事務局:総務部、経営企画室)を設置し、CSRに関する社会要請の把握、情報開示にむけたCSRの活動実績の取りまとめなどの活動を開始しました。2022年度にはESG推進室を新設し、社会的評価・信頼の一層の向上と「社是・企業理念・経営理念」の実現にむけて、ESG活動の強化に取り組んでいます。
■ガバナンス及びリスク管理

当社は「“座る”を追求し人と地球を支える」を企業活動の軸とし、ESG課題に対し活動を継続的に実施しております。その取組みについては社長が議長を務めるESG推進会議において、 活動方針の承認や四半期ごとの進捗フォローを実施しています。 ESG推進会議の内容は、定期的に取締役会へ報告され、取締役会の指示、監督のもと活動に反映しています。
当社は、リスク発生時の「損害規模」と「発生頻度」でリスクの重要性を評価し、その内容は全社リスクマネジメント委員会でレビューされ、取締役会へ報告されています。そのリスク評価に応じて講じるべき対策とその目標値を関係する部会で設定し、リスクマネジメント活動を推進しています。ESG関連リスクについてはESG推進会議で特定し、全社リスクマネジメント委員会でその他リスクに包含されレビューされます。これらリスクについては1年に一度全社リスクマネジメント委員会でレビューし、必要に応じて見直しを行います。
① 気候変動に関する戦略
今世紀末の平均気温が産業革命前との比較で4℃上昇するシナリオと、1.5℃の上昇に抑えられるシナリオを検討し、事業に与える気候関連リスクと機会を抽出しています。全社リスクマネジメント委員会での評価におけるリスク評価が高い気候関連リスクは、以下のとおりです。
これら、シナリオ分析の結果から、新たに必要な対応を経営戦略に反映し、事業のレジリエンス強化に取り組み、情報開示に努めてまいります。
② 人的資本に関する戦略
当社では、グループのコーポレートビジョン(企業理念)として「人と社会と共生し、快適で豊かな生活空間を創造し続けることで人々を笑顔にする」を、企業を営む上での未来永劫普遍的な考えとして掲げ、企業として持続的な成長を遂げるべく取り組んでいます。とりわけ、人的資本への投資はその中核要素であるという位置づけのもと、当社は、従業員一人ひとりの自主自立の思想・行動を尊重するとともに、仕事を通じて成長の場を提供することが、企業の社会的責任であると考えています。そのため、従業員の人格・個性と多様性を尊重し、安全で働きやすい環境を確保することで、仕事と家庭・社会における責任をともに果たし、従業員と企業がともに成長できる、活力と働きがいのある職場づくりを進めていきます。これらの実現のための具体的な取組みは、以下のとおりであります。
(ア) ダイバーシティの取組み(多様性への対応)
多様な個性や能力を生かせる組織づくりは不可欠であると考えており、人財の多様化に対応すべく、以下のとおり、女性活躍推進とグローバル人財の採用に取り組んでおります。
● 女性役員及び女性管理職(日本)
国内での取り組みとして、政府が掲げる2030年における女性役員比率30%達成に向けて候補者を選出し、役員による職場環境改善に対するコミットメントと、個々の育成計画を策定し進捗を管理します。また、女性役員の候補となる女性管理職比率としては、2030年目標を15%に再設定いたします。
● 女性活躍促進にむけた行動計画(日本)
国内の母数形成を図るための環境整備として、不妊治療休暇、産前・産後面談の制度導入により、これまで退職を余儀なくされていた社員が安心して就業できる環境を実現します。
● グローバル人財の採用活動(日本)
グローバル人財の採用活動定着化を通じ、持続的に社内の多様性を高めていくため、2021年度より以下の活動を実施しております。
・外国人留学生に対象を絞った企業説明会の実施
・現地、海外学生とのオンライン採用面接の実施
(イ) 教育
全社教育(法令順守マインド醸成、自己啓発支援)、階層別教育(ヒューマンスキル)、部門別教育(テクニカルスキル)の三本柱を教育体系として各種教育を実施しております。2023年度につきましては、各自がキャリアを描き、実現するための方法を学ぶことを目的とした中堅社員向けのキャリアビジョン研修を新たに導入しております。また、以下のとおり、変革を実現するための人財マネジメントとして、管理職層のマネジメント能力の向上(注1)、海外キーパーソンの育成(注2)に取り組んでおります。
(注) 1 部下の育成、チームマネジメント、メンバーのスキル・モチベーション向上にアプローチするための管理職向けアクションラーニング研修、リーダーシップ研修の実施。
2 将来の当グループを牽引する人財をグローバル全地域で発掘し、高い視野・視座をもつ変革人財の育成を実施。
①気候変動に関する指標
上記「(3)戦略 ①気候変動に関する戦略」に関し、2050年カーボンニュートラルを目指し、その指標と2030年目標は、以下のとおりであります。
2030年度目標
・CO2排出量スコープ1、2削減(国内):2013年度比△46%(2013年CO2排出量 21,509t-CO2)
・CO2排出量スコープ1、2削減(海外):2019年度比△43%(2019年CO2排出量 29,888t-CO2)
(注)スコープ3 「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベースver3.2」より算出。カテゴリー1~8を算出し、カテゴリー1が95%以上を占めるため、カテゴリー1のみ記載しております。
②人的資本に関する指標
上記「(3)戦略 ②人的資本に関する戦略」に記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する取組み及び社内環境整備に関する取組みについて用いる指標は、以下のとおりであります。
(注)1 評価範囲「1~5」、理解度テストの難易度は教育実施者に一任
(注)2 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異についての実績は、「第1 企業の状況 5 従業員の状況 (4) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」に記載しております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであり、事業等のリスクはこれらに限られるものではありません。
(1) 業績変動
当社グループの事業は自動車用座席及び座席部品の製造並びに販売であり、特定の自動車メーカーの系列に属さず、複数の自動車メーカーからの受注に基づいて生産・販売を行っております。従いまして、特定の自動車メーカーへの依存度は高くありませんが、販売先である自動車メーカー各社の市場での評価や支持、当社グループの製品を採用した車種の販売動向、あるいは新型車種投入時期により、業績に影響を受ける場合があり、また、売上高及び利益が上期、又は下期に偏る場合があります。さらに、自動車メーカーによる発注方針の変更、生産調整(原材料不足含む)、特定車種の生産工場移管、工場再編等により、業績に影響を受ける場合があります。加えて、当社グループはグローバルに事業活動を展開しております。これに伴い、各地域における売上、費用、資産、負債を含む現地通貨建ての項目は、連結財務諸表作成のため円換算されており、換算時の為替レートにより、現地通貨における価値が変わらなくても、円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。
(2) 新製品開発力
当社グループは、技術力とコスト競争力に裏打ちされた確固たる『グローバル・シート・システム・クリエーター』としての地位確立が急務であるとの認識から、業界標準たり得る差別化商品・新工法をユーザー及び自動車メーカーに提供するため、長期的視野に立ってシート技術の研究開発活動を展開しております。しかしながら、ユーザーと自動車メーカーの変化を充分に予測できず、魅力ある新製品を開発できない場合やタイムリーに提供できない場合、将来の成長と収益性を低下させ、更には投下資金の負担が業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(3) グローバル展開
当社グループは、特定のメーカーの系列に属さず、複数の自動車メーカーとの取引を行っていることは前述のとおりです。自動車メーカー各社は各様のグローバル展開を実践し、当社グループは、この施策に追従する必要性が出てきております。生産拠点を設けるにあたっては、予期しない法規又は税制の変更、あるいはテロ、戦争、その他の要因による社会的混乱等、事業の遂行に問題が生じる可能性があります。
(4) リスク評価により選定された対策優先リスク
当社では前述のリスク以外にも個別に企業の内部環境、外部環境といった視点からリスクを分類し、各リスクが当社に与える[損害規模]×[発生頻度の逆数]の大きさで評価を実施しております。評価されたリスクについては社内のリスクマネジメント委員会でリスクの大きさ(金銭的評価)とその大きさに関わらず当社として特に重要な事項(非金銭的評価)の二つの観点から協議することで、当社の対策優先リスクを選定しております。また、各リスクについては、その対策状況を確認し、必要に応じて改善状況のフォローを実施しております。なお、対策優先リスクは、当社グループ会社間で共有し、当社グループ全体でリスクの最小化に努めております。選定された対策優先リスクは、以下のとおりです。
① 火災・爆発
火災・爆発については、法定に基づいた消防設備の維持及び建屋の管理、危険物や可燃物等の管理、消防訓練の実施、火災保険の付保等の対策を推進しております。しかしながら、工場等で火災が発生し建屋、設備等が焼損するとともに、従業員が死傷した場合、また、復旧までの長期間にわたり、工場の操業を停止せざる得なくなった場合は、当社グループの生産及び社会的信用に影響が生じ、影響の規模によっては、事業の遂行に問題が生じる可能性があります。
② 製品欠陥・リコール
製品欠陥・リコールについては、予防体制・危機管理体制を構築し、月次での報告会の実施、市場クレームの分析、対策を行っており、社内での品質概要教育、製造物責任賠償についての保険の付保等も推進しております。しかしながら、当社製品の欠陥により事故等が発生、又は当該製品の回収が行われた場合、当社グループの生産及び社会的信用に影響が生じ、影響の規模によっては、事業の遂行に問題が生じる可能性があります。
③ 自然災害(地震)
自然災害については、法令に基づいた消防設備の維持及び建屋の管理、BCP規程の策定及び訓練の実施、ハザードマップの周知等の対策を進めております。しかしながら、生産拠点を含む地域で災害が発生し、建屋や生産設備・機械、出荷前の製品等が損傷するとともに、従業員が死傷した場合、また、治具等の関係上、他工場で代替生産ができず、工場が復旧するまで操業が停止した場合は、当社グループの生産及び社会的信用に影響が生じ、影響の規模によっては、事業の遂行に問題が生じる可能性があります。
④ 集団感染症・疾病
集団感染症・疾病については、疾病・感染状況などに関する情報収集及び周知、従業員向け予防アナウンスと定期的な教育の実施、出張規制等の実施、医薬品等の備蓄等を対策として推進しております。しかしながら、新型コロナウイルスを含む集団感染症がさらに蔓延した場合、また蔓延した集団感染症に多数の従業員が罹患して出社不可能な状態になり、工場を長期間にわたって停止する場合、又は間接業務に支障が生じた場合は、当社グループの生産及び業績と財務状況、社会的信用に影響が生じ、影響の規模によっては、事業の遂行にも問題が生じる可能性があります。
⑤ 海外現地法人・拠点の管理不備
海外現地法人・拠点の管理不備については、組織的又は個人による不正・違法・反倫理的行為、行動規範や社内ルール違反などについて相談・通報を受け付ける「内部通報制度」を、全てのグループ会社で整備しています。また、業務執行部門の業務の妥当性、準拠性、有効性を確認する「業務監査」を定期的に実施しており、その中で倫理・法令遵守状況等の確認も行っています。しかしながら、海外現地法人・拠点の管理が不十分であることにより、不正・不祥事が発生した場合、当社グループの業績と財務状況及び社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ サイバー攻撃
サイバー攻撃については、情報セキュリティの必要性・重要性について教育を通して従業員の認識を高めながら、常に従業員と連携し対応しています。また、セキュリティ対策システムは、次々に発生する情報セキュリティリスクに対応するために、常日頃から対策と監視を強化し、従業員が安全にIT環境を利用できるように、総合的な情報セキュリティ対策を行っています。しかしながら、高度化されたサイバー攻撃により当社の情報が万一漏洩、流出した場合、当社グループの生産及び社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当連結会計年度におけるわが国経済は、個人消費は物価高の影響で節約志向の強まりが見られるものの、本年3月の春闘において産業界全体で賃金引き上げが実施される中、日銀による約17年ぶりのマイナス金利解除も決定され、安定的な物価上昇が見通せる環境となってきています。今後、実質賃金の上昇に繋げられれば消費者センチメントの改善を伴う形での景気感の向上が期待できる状況になっています。設備投資につきましては、堅調な企業業績によりデジタル化・脱炭素化などの中長期視点の投資が進んでいます。ウクライナ情勢・中東情勢・東アジア情勢など、国際情勢における緊張に起因した海外経済の下振れ懸念が残るものの、緩やかな成長が続くことが見込まれています。
当社グループが関連する自動車業界におきましては、当社のお客様となる自動車メーカー各社は、半導体の供給制約の緩和を受け、グローバルでの需要回復に支えられ販売の拡大を図っています。今後の事業環境を見通すにあたっては、主要国での金利高の長期化による自動車販売への影響及び日本車の販売が総じて低迷している中国市場の動向を注視していく必要があります。
当連結会計年度の主な活動といたしましては、当社は、現在2024年度が最終年となる中期経営計画「Transformative Value Evolution(TVE)」に取り組んでおりますが、2021年度策定時からの3つの事業環境変化(①グローバル生産台数の減少、②中国での大幅な台数の低下、③グローバルでのインフレによる物価上昇)の影響を考慮し、当初2022年度末迄を予定していた収益確保を主眼とするWave 0期間を延長し、収益改善に向けた追加施策を実施してまいりました。本追加施策は3つの領域で進めております。1つ目は、事業縮小や工場集約などの不採算事業の収益改善。2つ目は、材料費や物流費の自社による更なる低減に加え、インフレに伴うコスト上昇分の販売価格への反映を通じた限界利益の向上。3つ目は開発・管理体制の見直し等による固定費の最適化です。この結果、日本・北米・中南米において収益構造改革が進み、各地域が確実に営業利益を創出できる利益構造への変革が見込める状態になってきております。主な事業活動成果としては、昨年10月に日本で最量販車種である本田技研工業株式会社向け新型N-BOXのシート生産を立ち上げたほか、グローバルで活動を強化している部品ビジネスの拡大が進んでいます。今後、自動車市場の拡大が見込まれるインド市場において合弁事業会社が量産を開始したほか、タイでは新しい拠点を開設しました。品質面ではこれまでの地道な取組みが評価され、各地域において昨年度同様、お客様から多くの品質賞を受賞しております。
このような経営環境のもと、当連結会計年度における業績は、売上高は2,929億4千7百万円と前年同期比20.3%増となり、これに伴い営業利益は72億5百万円(前年同期比426.9%増)、経常利益は87億5千5百万円(前年同期比343.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は54億2千2百万円(前年同期比6.9%減)となりました。
セグメントの業績は、次のとおりであります。
日 本
売上高は1,250億9千3百万円(前年同期比21.8%増)、営業利益は34億4千6百万円(前年同期比286.0%増)となりました。
北 米
売上高は545億8千7百万円(前年同期比8.2%増)、営業損失は10億2千3百万円(前年同期は営業損失20億5千2百万円)となりました。
中 南 米
売上高は911億7千5百万円(前年同期比43.3%増)、営業利益は39億8千5百万円(前年同期比147.8%増)となりました。
欧 州
売上高は0百万円(前年同期比99.9%減)、営業利益は1億7千4百万円(前年同期比50.1%減)となりました。
中 国
売上高は190億6千6百万円(前年同期比23.3%減)、営業利益は6億1百万円(前年同期比43.9%減)となりました。
東南アジア
売上高は30億2千5百万円(前年同期比108.0%増)、営業利益は3千8百万円(前年同期は営業損失3億9千7百万円)となりました。
セグメントごとの生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
①生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 金額は販売価格によっております。
当社グループは主に自動車座席及び座席部品を製造・販売しており、主要な顧客である自動車メーカー各社に対する納品までの期間が極めて短期間であるため、受注高及び受注残高の記載を省略しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 主な相手先別販売実績及びそれぞれの総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
当連結会計年度末の資産合計は、1,808億6百万円と前連結会計年度末に比べ108億1百万円増加しております。これは主に、現金及び預金が50億7千2百万円、原材料及び貯蔵品が10億7千1百万円それぞれ増加したことによるものであります。
セグメントごとの資産は、次のとおりであります。
日 本
総資産は1,203億4千9百万円と前連結会計年度末に比べ30億9千6百万円の減少となりました。これは主に、短期貸付金及び売掛金がそれぞれ減少したこと等によるものであります。
北 米
総資産は438億4千1百万円と前連結会計年度末に比べ27億4千2百万円の減少となりました。これは主に、短期貸付金が減少したこと等によるものであります。
中 南 米
総資産は498億9千4百万円と前連結会計年度末に比べ96億4千6百万円の増加となりました。これは主に、売掛金並びに原材料及び貯蔵品がそれぞれ増加したこと等によるものであります。
欧 州
総資産は33億3千5百万円と前連結会計年度末に比べ3億7千8百万円の増加となりました。これは主に、売掛金が減少したものの、現金及び預金が増加したこと等によるものであります。
中 国
総資産は265億3千9百万円と前連結会計年度末に比べ1億3千4百万円の減少となりました。これは主に、売掛金が増加したものの、現金及び預金並びに有形固定資産が減少したこと等によるものであります。
東南アジア
総資産は49億4千7百万円と前連結会計年度末に比べ2千6百万円の減少となりました。これは主に、原材料及び貯蔵品並びに売掛金が増加したものの、現金及び預金が減少したこと等によるものであります。
負債合計は、845億7百万円と前連結会計年度末に比べ9億8千4百万円増加しております。これは主に、長期借入金が55億円減少したものの、未払費用が38億9千5百万円、未払金等の増加により流動負債その他が20億9千3百万円それぞれ増加したことによるものであります。
純資産合計は、962億9千8百万円と前連結会計年度末に比べ98億1千7百万円増加しております。これは主に、利益剰余金が25億4千2百万円、為替換算調整勘定が52億3千4百万円それぞれ増加したことによるものであります。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、391億2千7百万円と前連結会計年度末に比べ62億6千3百万円(19.1%)増加しました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により得られた資金は、184億4千7百万円であり、前連結会計年度と比べ147億6百万円(393.2%)増加しました。これは主に、収益力の改善により営業利益が58億3千8百万円増加したことに加え、運転資本の改善により24億6千2百万円、未払費用等の増加により営業活動によるキャッシュ・フローその他が50億4千万円それぞれ増加したことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により使用した資金は、20億8千3百万円であり、前連結会計年度と比べ87億4千9百万円(前連結会計年度は66億6千6百万円の獲得)増加しました。これは主に、前連結会計年度では賃貸用不動産の売却があったこと等から有形固定資産の売却による収入が67億9千1百万円減少した一方で、有形固定資産の取得による支出は前連結会計年度と同等の額を継続して実施していることによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により使用した資金は、133億7千万円であり、前連結会計年度と比べ33億6千4百万円(33.6%)増加しました。これは主に、返済により短期借入金の純増減額が46億1千6百万円減少したことによるものであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。
当社グループは営業活動から得られるキャッシュ・フロー及び自己資金に加えて、金融機関との間で締結したコミットメントラインを含む短期借入枠により資金の流動性を十分に確保しております。
また、設備投資資金についてはグループの投資計画に基づき外部借入も機動的に活用することにより、全体で資本コストの適正化と財務の健全性の確保に努めております。
株主還元については経営における重要課題の一つと考えております。当社の配当政策については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」をご参照ください。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、決算日における資産・負債の報告数値及び報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積りを必要としております。これらの見積り及び判断は、過去の実績や状況に応じて合理的と考えられる様々な要因に基づき行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針及び重要な会計上の見積りは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」及び「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載しております。
当社は、2024年度が最終年となる中期経営計画「Transformative Value Evolution(TVE)」に取り組んでおりますが、2021年度策定時からの3つの事業環境変化(①グローバル生産台数の減少、②中国での大幅な生産台数の低下、③グローバルでのインフレによる物価上昇)の影響を考慮し、当初2022年度末までを予定していた収益確保を主眼とするWave 0期間を延長し、収益改善に向けた追加施策を実施してまいりました。なお、収益改善に向けた追加施策は、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績」に記載のとおりであります。
この結果、日本、北米、中南米の収益構造改革が進み、各地域が確実に営業利益を創出できる利益構造への変革が見込める状態になってきており、2023年度は営業利益72億5百万円、ROEは6.4%となりました。
株主還元に関しましては、主たる配当の財務指標としてDOEを採用し、2021年度から2024年度でDOEを3~4%に引き上げる方針を進めてまいりました。2023年度の株主還元につきましては、2024年度の経営目標であるROE必達8%は変更していないことから、TVEの当初目標のとおりDOE4%としております。
(重要な資産の譲渡)
当社は、2023年10月26日開催の取締役会において、固定資産の譲渡について決議し、2023年10月30日付で不動産売買契約を締結いたしました。詳細は「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 注記事項(重要な後発事象)」に記載のとおりであります。
当社グループは、社会・経済環境が大きく変化していく中、長期的視点に立ちシートに関連する技術のトレンドを的確にとらえ、ユーザー及び自動車メーカー(関連メーカー)各社のニーズに積極的に応えるため、競争力ある商品の開発、基盤技術・先行技術の研究開発活動を展開しております。
新製品の開発及び新技術の基礎研究は、主に国内の開発拠点を中心に海外の開発拠点とグローバルでの相互補完体制を構築、関係会社㈱TF-METALの機構部品開発も含めて、『グローバル・シート・システム・クリエーター』として、世界的レベルで研究開発活動を進めております。
なお、当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費の総額は
セグメントごとの研究開発活動を示すと次のとおりであります。
日 本
技術・モノづくりセンターを中心として、コア技術を日本で確立・標準化し、世界に展開することにより、開発業務の効率化を図るとともに、世界同一品質の実現と低コスト化を推進しております。
主たる成果は以下のとおりであります。
①シート及びオリジナル機構部品開発
自動車用シート、シートのリクライニングデバイス、スライドレール、リフター装置、パワーシートデバイス、シートアレンジデバイス及び付属機構や装備等を含めた開発をシートシステムとして行い、得意先各社へ提案し採用されております。
②標準フレーム
グローバルに、多様な車種で共通して使うことができる、汎用性が高く、軽量・低コストの標準フレームをタチエス独自で開発し、得意先各社へ提案し採用されております。
③環境対応技術開発
各種環境負荷物質の全廃に向けた製品・技術の開発、自動車の燃費向上のための新材料・新構造技術によるシートの軽量化技術の開発を行い、得意先各社へ提案し採用されております。
④安全性向上技術開発
サイドエアバック組込シート、スマートエアバックに対応した乗員検知・識別式シート、前面・後面・側面衝突時の荷重入力に対応した安全シート構造、頸部傷害軽減構造等の開発をシートシステムとして行い、得意先各社へ提案し、採用されております。
⑤原価低減商品の開発
製品開発技術の深化による開発期間の短縮、また、構造や部品の標準化・共通化や効率的な構造等による低コスト次世代シートを開発し、国内外の得意先各社に採用されております。
⑥生産技術開発
シートの接着成形技術、ヘッドレスト・アームレストの一体発泡成形技術、トリムカバー縫製に関わる技術、シート組立の省力化・自動化、CAD/CAMによる型製作等の技術開発を行い、展開しております。多様化する市場ニーズに対応し、多品種少量生産の混流ラインにより、車種数や商品構成の増加といった時代のニーズにお応えしております。
⑦シートの研究分野
シートの基本性能である「座り心地」や「人の快適感」の要因について継続的な研究を行い、自動車乗員のより快適な移動のためのシート構造や装備等の開発を行っております。さらに、CAM解析によるバーチャル試験技術の開発により、開発期間短縮、コストダウン等に貢献しております。
⑧シートデザインの開発
タチエス独自に、シートを中心とした将来の移動空間コンセプトに取り組み、将来のニーズ・シーズ創出活動を進めております。さらに、新商品のデザイン開発、コーポレートデザインなどタチエスに関するあらゆる分野のデザイン開発を行い、CI向上に取り組んでおります。また、国内外得意先各社へ、シート製造要件を織り込んだデザイン提案をし、採用されております。
北 米
米国ミシガン州にTACHI-S Engineering U.S.A., Inc.を構え、主に、米国内での各自動車メーカーの新製品開発に独自に対応し、米国やメキシコでの量産化に貢献しております。
中 南 米
メキシコ アグアスカリエンテス州にTACHI-S Engineering Latin America, S.A. de C.V.を構え、開発拠点および中南米地域における地域統括会社として、主に米国やメキシコでの量産化に貢献しております。
中 国
中国広東省広州市に泰極愛思(中国)投資有限公司、同河南省鄭州市に泰極愛思(鄭州)汽車座椅研発有限公司を構え、現地で開発し得意先へ提案できるよう体制の強化を図っており、中国生産車種のマイナーチェンジへの対応や、今後の中国国内の自動車メーカーからのご要望にお応えしております。
東南アジア
ベトナム ホーチミン市に開発拠点としてTACHI-S Engineering Vietnam Co., Ltd.を構え、設計開発強化を進めております。