当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは「進化し続けることで成長し、持続可能性の高い経営により、社会にとってなくてはならない存在を目指す」という企業理念のもと、パーパス、ビジョン、バリューを以下のとおり掲げています。
パーパス:たしかなテクノロジーで「信じられる社会」を築く。
デジタル社会がより高度化・複雑化するなか、私たちは練度の高い多様なテクノロジーを駆使して安心・安全な社会基盤を築き、人々が互いを支え合い、笑顔でいられる社会を実現します。
ビジョン:デジタル社会を生き抜く指針となる。
サイバーセキュリティをリードしてきたパイオニア精神を絶やさず、深化・高度化するデジタル社会における人々のいとなみを守り、業界文化を牽引し、新しい時代を生き抜く指針でありつづけます。
バリュー:4つの力で使命を果たします。
社会の安心・安全を守る業務に携わる者として職業倫理を胸に誠実に行動し、前例や従来手法にとらわれず「挑戦する力」、よりよい解決力を求めて「探求する力」、あきらめず結果を導く「遂行する力」、仲間を信じ共感し合う「結束する力」をもってお客様の課題、社会課題、未来課題へ迅速に取り組みます。
(2)経営戦略等
当社グループでは、2024年度より始まる3ヵ年の新たな中期経営計画を2024年5月に発表しました。本中期経営計画では、セキュリティサービス・開発サービスを軸とした既存事業を継続的に成長させ、売上高600億円、営業利益・経常利益40億円、ROE15%を経営目標に掲げております。中長期な視点で新たな価値創造を推進することで、さらなる成長を目指しています。
今般のIT環境において、デジタル活用は多様で広範囲かつ深化しており、加えて深刻なサイバー脅威が増大する環境変化に対し、当社グループでは、自動化・AIを生かした対応、総合サービス力による対応をもって事業の成長と進化に取り組みます。既存事業の付加価値や生産性の非連続な成長による中長期的な新たな価値創造に向けた以下の取り組みを着実に進めてまいります。
<新たな価値創造への着実な推進>
「AI×セキュリティ」
AIを様々なサービスに統合することで、サイバー脅威の検出から予測分析・対応などサービスの高度化と自動化による生産性向上を図ります。
「統合セキュリティサービスプラットフォーム」
各種セキュリティサービスで収集したデータを総合的に分析・利用する基盤を構築し、サービスの付加価値向上と生産性向上を図ります。
「セキュリティツール」
「AI×セキュリティ」「統合セキュリティサービスプラットフォーム」のデータ活用やセキュリティツールベンダーとの戦略的連携も視野に、世界に通用する新たなセキュリティツールの獲得に挑戦します。
(3)経営環境
世界情勢や金融市場など不安定な状況が続く一方で、技術革新は急速に進んでおり、社会全体のデジタル化はますます促進されることが予想されます。デジタル活用はより多様で広範囲かつ深く浸透すると同時に、サイバー脅威もさらに深刻化し、昨今では安全保障上の要求も高まっております。このような状況において、サイバーセキュリティはデジタル社会の基幹産業と位置づけられていると認識しており、これまでとは桁の違う水準での人材不足やサイバー攻撃者以上のテクノロジーの活用への対応が必須であり、私たちのよりどころとする自由主義や民主主義を守るうえでもサイバーセキュリティを軸とした連携が要になると推測しております。
このような市場背景のもと、社会やお客様におけるデジタル活用に見合う費用対効果をどのように生み出していくかを基軸に、複雑化、高度化するサイバー脅威への対抗、サプライチェーン全体のレジリエンスの継続性などの社会課題に対して、当社グループが果たすべく役割はますます大きくなるものと考えております。当社グループでは社会の要請に応えるべく、約30年にわたり磨き蓄積し続けてきた現場経験からの知見(インテリジェンス)をもつサイバーセキュリティの専門集団としての役割を発揮できるよう取り組んでまいります。
(4)優先的に対処すべき事業上および財務上の課題
当社グループでは、「たしかなテクノロジーで『信じられる社会』を築く。」というパーパスに基づき、常に変化と進化を続けているデジタル社会への対応が優先的に対処すべき課題と認識しております。中期経営計画に掲げる新たな価値創造に向け、当社グループが取り組むべき主な施策は以下のとおりです。
①セキュリティサービスへのAI活用
セキュリティ監視センター「JSOC」や診断、緊急対応などのサービスで培ったノウハウや蓄積されている大量の脅威データをAIによって高度分析し、さらに自動化することで生産性向上を図ります。また、巧妙化、深化するサイバー攻撃への新たな分析手段の開発にも取り組み、市場競争力を強化します。さらに自動化により費用対効果の高い新サービス開発につなげ、大手企業だけでなく、中小企業向けにも対応したサービス提供を目指します。
②統合セキュリティプラットフォームの構築
運用監視サービスをはじめ、診断、緊急対応や教育など各種セキュリティサービスのデータ分析・活用基盤を統合し、サイバーリスクマネジメントへと昇華させることにより、ネットワークや端末などに分断されているサイバーリスクの一元的な可視化とサービス提供を行います。
③セキュリティツールの獲得
上記の①、②の取り組みなどから得た脅威情報と連携したセキュリティツールの獲得を推進します。セキュリティツールの獲得には自社開発だけでなく、他社との戦略的提携やM&Aも選択肢として検討してまいります。また中堅・中小企業向けのセキュリティ市場への展開も視野に、セキュリティツール獲得を推進する中で当社が持つインテリジェンスを洗練させ、サービスのさらなる高度化に繋げます。
(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループでは、経営上の目標達成状況が客観的に判断可能な指標として、資本効率の観点からROE(自己資本利益率)を採用しております。当連結会計年度におけるROEは9.1%(前期比10.1ポイント増)となりましたが、新たな中期経営計画においてROE15%を目標に掲げ、引き続き持続的な株主価値向上に向け取り組んでまいります。
当社グループは、デジタル社会がより高度化・複雑化するなか、「たしかなテクノロジーで『信じられる社会』を築く。」をパーパス(存在意義)に位置づけ、事業を通じて社会課題の解決に貢献するとともに、環境、人的資本、ガバナンスなど財務・非財務の両面で持続可能な価値創造の取り組みを進めています。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)ガバナンス
当社グループのサステナビリティに関する重要課題に対して、経営基本方針等の最重要事項は、経営会議の審議を経て、取締役会にて審議し決定しております。経営会議、取締役会にて指示された方針等に基づき、担当する執行役員のもと、具体的な対応や取り組みの検討を行い実行しております。
なお、サステナビリティに関する課題に対し、様々な委員会や会議体を通じて活動しており、主な活動は以下のとおりです。
(リスク統括委員会)
リスクマネジメント活動を一元的に推進する体制を整えています。定期的に内部統制委員会との連携を図り、内部統制委員会が管理プロセスの評価をしております。
詳細は、
(EMS委員会)
当社における環境マネジメントシステム(最高責任者:代表取締役社長)の体制の構築および運用を適切に実施、推進するため、EMS委員会を設置しております。EMS委員会は年次運用計画に基づき開催しており、年1回定期
的に代表取締役社長のマネジメントレビューを行い、また監査部門による内部監査を実施しております。代表取締役社長より任命された環境管理責任者が委員長となり、各事業領域メンバーで構成されています。
(働き方改革プロジェクト)
当社の人的資本に関する重要課題の一つとして、社員の働きがい向上を目的としたプロジェクトを設置しております。代表取締役社長が最高責任者となり、コアメンバーとしてテーマごとに選任された執行役員で構成されております。担当の執行役員のもと、課題対策の検討、実施推進に取り組んでおります。毎月1回、定期的に代表取締役社長およびコアメンバーによる会議を開催し、テーマごとの報告を受け、協議を行っております。
(2)戦略
当社グループではサステナビリティに関する考え方を受けて、ビジネスと環境、社会など、当社グループの認識する重要課題に対する活動の推進を図ります。
当社グループにおいて、前例や従来手法にとらわれず「挑戦する力」、よりよい解決力を求めて「探究する力」、あきらめず結果を導く「遂行する力」、仲間を信じ共感し合う「結束する力」をバリューとして掲げており、変化の激しい時代に立ち向かうには過去の戦略を大胆に見直し、現状から「変革」し続けることが必要であると認識しております。人的資本に関しては、社員の能力が充分に発揮できる場を提供し、"個人"を尊重した人材の育成を図るとともに、職場の安全と健康の確保に努め、快適で働きがいのある 職場環境づくりを行うべく以下のとおり取り組みます。
①人材育成の推進
次世代人材育成を目的に設立した組織横断型の専門組織「ラックユニバーシティ」を中心に変革に対応すべくさまざまな育成プログラムを実行します。研修の集中受講月間の企画、ビジネスや業務スキルアップの他健康促進など幅広い分野の研修の実施など、すべての社員に学びの機会を提供することを積極的に推進します。
②ダイバーシティの取り組み
当社グループは、人種、性別、年齢などに関わらず、多様な社員が活躍できる環境を築くため、女性や障がい者の活躍推進、学歴によらない初任給制度の導入、65歳定年制の設定などに取り組んでいます。特に、女性社員の活躍促進において、2019年より女性活躍推進の優良企業として「えるぼし」認定の最高位三ツ星を取得しており、女性管理職比率の増加、女性の育児休業からの復職や男性育児休業の取得などに注力しております。また、ライフステージに沿ったワークライフバランスの実現や効率的な勤務に向けて継続的な働きやすい環境づくりにも重点を置いており、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方としてテレワークを推進しています。
③健康経営の推進
当社は、2022年に「健康企業宣言」を発信し、従業員の健康保持増進を目的として「健康管理室」を設置し、健康経営を戦略的に進めております。従業員が心身ともに健康で能力を最大限に発揮できるよう「イキイキと働ける環境づくり」に取り組むとともに、昨今重要視されている健康寿命の延伸に努めています。
環境面では、環境方針を定め、紙・電気の適正利用による環境保全への貢献、3R(リデュース、リユース、リサイクル)の推進による廃棄物の削減を重点的に管理し、環境負荷低減に努めています。
また社会に対しては、デジタル社会へと変革していく中で、より安心・安全な社会を実現するために事業を通じた貢献とともに、様々なセキュリティ関連団体の事務局・運営の支援や官公庁関連組織との連携を通じて、情報セキュリティ分野の活性化にも寄与しています。さらに、国内のサイバーセキュリティへの意識向上にも取り組んでおり、産学連携や地域社会における啓発活動を積極的に行っています。
なお、サステナビリティに関する具体的な活動については、当社グループにおける主要な事業を営む当社のみの取り組みがあります。
(3)リスク管理
リスク統括委員会において、年度方針や活動計画をもとに、リスクアセスメントのレビューを行い、リスク対策および実施状況を点検しており、リスク認識・評価・対応・対応状況の確認・改善の一連の継続的なプロセスを推進しております。
2023年度においては、当委員会は5回開催いたしました。加えて、内部統制システムの基本方針に対する取り組み状況をモニタリングする内部統制委員会の下部組織として、BCP・コンプライアンスリスク・リスクマネジメントの3分科会を設置し、事業継続、コンプライアンス、その他事業運営上のリスク等に関する取り組みの強化を図りました。なお、本有価証券報告書提出日現在、機能や役割を再評価し、BCP・品質管理の2分科会をリスク統括委員会の下部組織に設置し、定期的に内部統制委員会とリスク統括委員会の合同開催を行うことでより実効性の高いリスクマネジメントを図っております。
また、サステナビリティに関する課題により活動している委員会、会議体等については、各活動の方針や計画にあわせて対応しております。主なものとして、EMS委員会についてはISO14001に準拠し、課題認識の上、計画、対応状況の点検、評価を行い、改善につなげていく運用を推進しております。
(4)指標及び目標
上記「(2)戦略」に記載の人的資本に関する方針(人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針)について、次の指標を用いております。
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指標 |
目標 |
2023年度実績 |
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2023年度末時点 15%超
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2023年度末時点 25%超
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なお、当社においては関連する指標のデータ管理とともに具体的な取り組みが行われているものの、当社グループに属する全ての会社では行われてはいないため、当社グループにおける記載が困難であります。このため、上記指標に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。詳細は
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、必ずしもリスク要因に該当しない事項についても、投資家の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点から開示しておりますが、投資に関連するリスクを全て網羅するものではありません。
当社グループはこれらリスクを認識した上で、発生可能性およびリスクが顕在化した場合の経営や事業へのマイナスの影響の最小化に努める方針であります。なお、将来に関する情報は当連結会計年度末において判断したものであり、将来そのとおりに実現する保証はありません。
(1)ハザードリスク
(自然災害等に関するリスク)
2020年3月より、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、当社グループにおいて在宅勤務体制を整備し、感染症法上の位置づけが5類に移行した後も体制を維持しておりますが、これら災害等の発生ならびに緊急事態宣言発動や対応要請等による本社機能、重要なサービスの速やかな復旧または継続提供の困難化、一部業務・サービスの縮退などにより、当社グループの事業展開、経営成績および財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、広域にわたる大規模自然災害、新型インフルエンザ等のパンデミックの発生などに備え、事業継続計画および緊急対応マニュアルを策定し、迅速かつ適切に対応する体制を整備しております。
(2)戦略リスク
(人材の確保に関するリスク)
当社グループが成長に向けてさらなる企業基盤を確立し拡充するためには、関連する技術・ノウハウを有する優秀な人材の確保・育成が不可欠であります。また、情報セキュリティ技術を中心に特殊なノウハウや経験の蓄積等、無形の資産への依存が大きな割合を占めております。IT業界において慢性的に人材が不足するなか、業界をリードするノウハウを持った技術者の流出等により、当社グループが事業拡大を目指す上で、必要な人材を確保できない場合には、当社グループの事業展開、経営成績および財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、基礎能力の高い人材や即戦力として活用できる技術経験者を幅広く採用し、採用後は、様々な研修コースやOJTの実践による社員の育成、また働き方改革を通じた職場環境の改善や社員のモチベーション向上に注力しております。
(受注に関するリスク)
当社グループでは、通常、受注後にサービスの提供や仕入等を行いますが、戦略的に契約前に作業や仕入等を実施する場合があります。また、仕様変更に対応するための追加コスト、プロジェクト中断や契約解除時における仕掛品の発生および仕入先への先行支払いなどが発生する場合があります。これらの費用が結果として回収できない事態が生じた場合には、当社グループの事業展開、経営成績および財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(業績の季節偏重に関するリスク)
当社グループの売上は、顧客の予算執行サイクルにより、その決算期が集中する3月に偏重する傾向があります。一方で、原価における固定的な費用と販売費及び一般管理費は定常的に発生することから、営業利益については第4四半期において最も高くなる傾向があります。
そのため、3月に売上計上予定の案件について、スケジュールの変更や検収の遅延等が発生した場合には、売上および利益の計上時期が翌期となる可能性があり、これらの事象が大規模なプロジェクトにおいて発生した場合、当社グループの経営成績および財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(業務拡大による管理運営リスク)
当社グループは、事業拡大に向けた投資を伴う各種施策を実施しており、それにより事業運営上およびグループ経営上の各種マネジメント体制、システムの拡充が必要になることが予想されます。何らかの理由で実施中の施策を中止した場合、または拡充が十分に行えなかった場合あるいは拡充に伴うコスト負担が想定以上であった場合には、当社グループの事業展開、経営成績および財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(大株主との関係におけるリスク)
当連結会計年度末において、KDDI株式会社は、発行済株式(自己株式を除く)の31.59%を所有しており、当社のその他の関係会社に該当しております。
両社間においては、それぞれの商品やサービスに関する通常の取引関係があるほか、同社の提供するサービスに当社のサービスを付加する等の業務提携にもとづく事業展開もしております。また、業務・資本提携の強化を図る人的交流の一環として、当社は同社より取締役を含む人材を受け入れております。さらに、2018年3月7日付で、KDDIデジタルセキュリティ株式会社の株式を49.0%取得し、共同で事業を開始いたしました。
しかしながら、当社との資本関係、取引関係、人的関係の安定性は保証されているわけではありません。また、同社の当社の経営方針に関する考え方や利害が、当社の他の株主と常に一致するとの保証はありません。従いまして、当社と同社との関係性の変化が、当社グループの事業展開、経営成績および財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(3)外部環境リスク
(競争激化に関するリスク)
セキュリティソリューションサービス事業は、成長分野として有望視され、大手システムインテグレーターの他、外資系企業やベンチャー企業の新規参入も相次いでおります。当社グループは国内における情報セキュリティ分野の草分け的存在として、変化の激しい市場において、その方向性をリードしつつセキュリティソリューションサービス事業の拡大に努めておりますが、今後も競合会社の積極参入による競争激化が予想され、当社グループの事業展開、経営成績および財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(価格競争に関するリスク)
システムインテグレーションサービス事業分野において、IT投資に関する費用対効果を意識した顧客の要請は、提供するサービスの品質および価格の両面において厳しくなっております。当社グループは、セキュリティソリューションサービス事業との連携による競合会社との差別化、生産性の向上、外注先の選別などに取り組んでおりますが、市場における価格競争が一段と高まった場合には、当社グループの事業展開、経営成績および財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(技術革新への対応に関するリスク)
IT業界では人工知能(AI)をはじめ新しい技術が日々めざましく開発され、次々と実用化されております。今後、これらの技術革新や顧客ニーズの変化に対し、当社グループが適切かつ迅速に対応できなかった場合には、顧客との業務の継続関係や業務委託に関する契約が変更解消されること等により、当社グループの事業展開、経営成績および財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、従業員全体の能力を高め、顧客ニーズへ的確に対応する技術・ノウハウを習得するとともに、新規事業の創出に取り組んでおります。また情報セキュリティ分野においては、当社のサイバー・グリッド・ジャパンが先進のセキュリティ技術を研究しております。
(特定業種に対する取引依存のリスク)
当社グループにおいては、金融業の顧客に対する売上高が、他の業種の顧客に比べて高い割合を占めております。従いまして、金融業における情報化投資の規模が急激に変動した場合には、当社グループの事業展開、経営成績および財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(特定取引先等に対する取引依存のリスク)
当社グループにおいては、ビジネス・パートナー契約等の諸契約を締結している取引先や長期間にわたる主要顧客など特定の取引先との取引が継続的に一定割合を占めておりますが、今後これらの業務契約が何らかの理由で変更あるいは解消された場合や、取引先の事業や経営環境が変動した場合等には、当社グループの事業展開、経営成績および財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(4)情報セキュリティリスク
(当社グループにおける情報セキュリティに関するリスク)
当社グループの業務の性質上、顧客の保有する営業情報や顧客情報を当社グループの従業員が直接的または間接的に取り扱う場合があります。当社グループにおいて、サイバー攻撃による被害発生、情報漏えいへの関与または当社グループ技術の犯罪行為等への悪用等が行われた場合には、当社グループのブランドイメージの低下、事業継続の困難化、損害賠償の支払い等の発生、さらなる管理体制の強化のための投資負担等により、当社グループの事業展開、経営成績および財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、ISO27001規格に準拠して情報セキュリティに関する規程等を整備し、セキュリティシステムの導入、各種セキュリティ管理策の実施と従業員への研修やモラル教育等によるサイバー攻撃や情報漏えい等の情報セキュリティインシデントの未然防止を図っており、特に情報セキュリティサービスにおいて取り扱う重要機密情報に対しては、より厳格なネットワークやデータベースへのアクセス制御やログ管理などの対策を行いインシデント検知ならびに発生時の対応力強化に努めております。また、発生したインシデントに対しては、危機管理規程に基づき迅速な対処により被害最小化を図るとともに、収束後に原因究明を行い恒常的な再発防止に取り組んでおります。
(5)業務リスク
(情報セキュリティサービスの提供におけるリスク)
当社グループの情報セキュリティサービスにおける事業活動においては、顧客との契約により、顧客内情報システムのセキュリティ対策をトータルソリューションサービスとして一括して委託を受ける場合があり、当社グループでは、常に最適なサービス・製品を顧客へ提供するよう事業体制を整えております。
このような対応にもかかわらず、取引先の情報資産に対するサイバー攻撃や情報漏えい等のセキュリティ事件が発生した場合には、当社グループの責に帰すべき事由の有無に関わらず、当社グループの社会的信用やブランドイメージの低下、損害賠償の支払い等により、当社グループの事業展開、経営成績および財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(受託プロジェクト遂行上のリスク)
一括請負契約による受託においては、受注時には利益が計画されるプロジェクトであっても、予期し得ない理由により、当初見積以上に作業工数が発生することによる、コストオーバーランの発生や、契約不適合責任の権利行使による無償での作業、納期遅延や品質不良等に起因する損害賠償の支払い等が発生する可能性があります。赤字プロジェクトが発生した場合には、当社グループの事業展開、経営成績および財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、サービス品質をさらに向上し、赤字プロジェクトの発生を未然に防止するため、見積段階からのリスク要因のレビュー等による見積精度の向上と受託プロジェクト遂行上のリスク管理の徹底を図るとともに、プロジェクトマネジメントスキルの向上と審査・品質管理体制の拡充、強化に努めております。
(6)法務・コンプライアンスリスク
(コンプライアンスリスク)
当社グループは企業倫理の確立による健全な事業活動を基本方針とする「ラックグループコンプライアンスポリシー」を制定し、当社グループの役員・従業員への教育啓発活動を随時実施し、企業倫理の向上及び法令遵守の強化に努めています。
しかしながら、コンプライアンス上のリスクを完全には回避できない可能性があり、法令等に抵触する事態が発生した場合、当社グループの社会的信用やブランドイメージの低下、発生した損害に対する賠償金の支払い等により、当社グループの事業展開、経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(知的財産権等に関するリスク)
当社グループは、第三者の知的財産の侵害を行わないように留意して業務を遂行しておりますが、不可抗力により侵害する可能性は皆無ではありません。当社グループが提供するサービスまたは製品に対して、第三者より損害賠償、使用差止や当該特許に関する対価等の請求を受け支払義務が発生する可能性があり、これらにより、当社グループの事業展開、経営成績および財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(7)財務リスク
(事業投資の回収可能性に関するリスク)
当社グループは、事業拡大に向けM&Aや新商品開発等への事業投資を行っております。事業投資は、当社グループの事業成長には必要不可欠な要素であるものの、不確定な要素でもあります。M&Aや新商品開発等の効果が得られない場合、当社グループの事業展開、経営成績および財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(8)訴訟等のリスク
当社は、2021年9月13日付にて、株式会社日本貿易保険(以下、「NEXI」といいます。)より、2017年3月31日付で締結した次期貿易保険システム業務システム開発請負契約に関し、訴訟を提起され、総額5,803百万円の損害賠償を請求されております。
当社としては、NEXIからの提訴に対して応訴するとともに、当社のNEXIに対する損害賠償請求を訴訟手続において実現するのが適切と考え、反訴を提起いたしました。これらの訴訟等において、当社に不利な結果が生じた場合には、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
(経営成績の状況)
新型コロナウイルス感染症の位置づけが5類へ移行し、社会・経済活動は正常化に向けた動きが進みました。一方で、ウクライナ情勢の長期化や円安の影響等により原油をはじめとした資源・エネルギー価格が高騰するとともに、中東情勢の緊迫化の影響が懸念されるなど、社会・経済情勢は依然として不透明な状況が続きました。
このような状況のなかでも、企業や官公庁等におけるデジタル化が進められ、クラウド基盤の活用推進やビジネス変革、事業領域の拡大を目的としたデジタル投資は、様々な業種・業界で増加基調にあります。また、破壊的なテクノロジーともいわれる生成AIの登場により、あらゆる分野においてAI活用の可能性が探られるなど、デジタルビジネスを活性化させる動きも出ています。
このようなデジタル化の進展に伴ってサイバー脅威の領域が拡大しており、身代金要求型攻撃(ランサム攻撃)により部品製造業者がシステムを停止させられ、生産ラインも止めざるを得なくなったことでサプライチェーン全般にまで影響が及ぶようになるなど、サイバー被害は従来にも増して甚大化、複雑化しています。また、大手通信事業者の子会社において大規模な情報持ち出し被害などが報道され、内部不正対策は都度社会的な課題となり組織的な強化が図られるものの、年が経つにつれその記憶が忘れ去られてしまうことを改めて社会に認知させるに至りました。さらには、安全保障の観点で重要情報の管理を厳格化する動きがみられるなど、サイバーセキュリティ対策は一層の強化が求められる状況になっています。
当社は、セキュリティ事故において長年にわたりお客様に寄り添い対策してきた経験をもとに、検知から対策まで迅速かつ高度な対応を行う外部の脅威だけでなく内部不正を含めた対応力のさらなる向上のため、緊急対応サービスの事業体制強化や運用監視サービスのサービス力強化への取り組みを推進してきました。
当連結会計年度の売上高は、セキュリティソリューションサービス事業は製品販売や診断サービスなどが拡大し、またシステムインテグレーションサービス事業は開発サービスやHW/SW販売などが伸長したことにより、49,477百万円(前期比12.4%増)となりました。利益面では、営業利益は2,174百万円(同22.5%増)、経常利益は2,153百万円(同18.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,379百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失147百万円)となりました。
セグメント別の状況は次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、セキュリティソリューションサービス事業のサブセグメント間において組み替えを行っています。エンドポイント対策支援サービスをセキュリティコンサルティングサービスからセキュリティ運用監視サービスに、また標的型メール訓練サービスをセキュリティ診断サービスからセキュリティコンサルティングサービスへと組み替えています。それに伴い、前期比較においては、前期の数値を変更後の数値に組み替えて比較しております。
(セキュリティソリューションサービス事業)
セキュリティコンサルティングサービスは、緊急対応サービス案件の減少はあったものの、体制・対策強化に向けたコンサルティング案件の拡大や標的型メール訓練など教育サービスが伸長したことにより、売上高は3,898百万円(前期比1.0%増)となりました。
セキュリティ診断サービスは、年間で手掛ける大型案件の売上計上があったことや実践的な疑似攻撃を行い潜在的な脅威を調査するペネトレーションテストの案件が拡大したことなどにより、売上高は3,018百万円(同17.2%増)となりました。
セキュリティ運用監視サービスは、特定企業向けに高度な対策を行う個別監視サービスや内部不正監視サービスが伸長するとともに、エンドポイント対策支援サービスが拡大したことにより、売上高は6,598百万円(同6.1%増)となりました。
セキュリティ製品販売は、エンドポイント対策向けおよびサービス妨害型攻撃にも対応したWebセキュリティ対策向けクラウド対応製品や、潜在的な脅威情報を収集・分析するセキュリティ製品などが大幅に拡大したことにより、売上高は7,773百万円(同29.5%増)となりました。
セキュリティ保守サービスは、クラウド対応製品の拡大等で需要が縮小している影響はあるものの、既存案件等が増加したことにより、売上高は869百万円(同1.0%増)となりました。
この結果、セキュリティソリューションサービス事業の売上高は22,159百万円(同13.5%増)、セグメント利益は事業体制・サービス力強化のための先行投資などの影響により、2,260百万円(同4.5%減)となりました。
(システムインテグレーションサービス事業)
主力ビジネスである開発サービスは、大手銀行やクレジットカードなどの金融業向け案件に加え、公共向け案件が大幅に伸長したことにより、売上高は18,218百万円(前期比11.4%増)となりました。
HW/SW販売は、クラウドサービスの拡大等で需要は縮小しているものの、更新案件等の獲得により大幅に伸長し、売上高は3,530百万円(同43.5%増)となりました。
IT保守サービスは、更新案件等が減少したことにより、売上高は3,092百万円(同6.3%減)となりました。
ソリューションサービスは、サイバーセキュリティ対策にも寄与するクラウドソリューション製品の販売が拡大したことにより、売上高は2,475百万円(同3.9%増)となりました。
この結果、システムインテグレーションサービス事業の売上高は27,317百万円(同11.5%増)、セグメント利益は3,854百万円(同12.4%増)となりました。
(財政状態の状況)
当連結会計年度においては、セキュリティ事業基盤拡張のための内部システム開発投資を継続しております。また、株主還元については、中長期的な視点に立った投資やキャッシュ・フローの状況を勘案しつつ、DOE(株主資本配当率)を指標とする配当を継続しております。
総資産は、前連結会計年度末に比べ1,198百万円増加し、23,770百万円となりました。変動は主に現金及び預金の減少649百万円、売掛金の増加1,387百万円、商品の増加776百万円等によります。
負債は、前連結会計年度末に比べ613百万円増加し、8,365百万円となりました。変動は主に買掛金の増加703百万円、1年内返済予定の長期借入金の減少1,336百万円、未払法人税等の増加404百万円、契約負債の増加307百万円等によります。
純資産は、前連結会計年度末に比べ584百万円増加し、15,404百万円となりました。変動は主に親会社株主に帰属する当期純利益の計上による利益剰余金の増加579百万円等によります。この結果、自己資本比率は64.8%となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ649百万円減少し、5,494百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は2,177百万円となりました。これは主に税金等調整前当期純利益2,004百万円に減価償却費1,023百万円、のれん償却額72百万円、売上債権の増加額1,385百万円、棚卸資産の増加額938百万円、仕入債務の増加額703百万円等を反映したものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は708百万円となりました。これは主にソフトウエアの取得による支出442百万円等を反映したものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は2,134百万円となりました。これは主に長期借入金の返済による支出1,336百万円、配当金の支払額798百万円等を反映したものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
セキュリティソリューションサービス事業(百万円) |
10,040 |
113.4 |
|
システムインテグレーションサービス事業(百万円) |
14,250 |
108.8 |
|
合計(百万円) |
24,290 |
110.7 |
b.受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前年同期比(%) |
受注残高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
セキュリティソリューションサービス事業 |
23,562 |
113.0 |
11,464 |
113.9 |
|
システムインテグレーションサービス事業 |
30,242 |
115.3 |
12,845 |
129.5 |
|
合計 |
53,804 |
114.3 |
24,309 |
121.7 |
(注)上記の金額は、販売価格によっております。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
セキュリティソリューションサービス事業(百万円) |
22,159 |
113.5 |
|
システムインテグレーションサービス事業(百万円) |
27,317 |
111.5 |
|
合計(百万円) |
49,477 |
112.4 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合については、販売実績額が総販売実績額の100分の10以上となる販売先がないため省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績は、次のとおりであります。
(経営成績の認識及び分析)
当連結会計年度は、セキュリティ事業における体制強化やサービス力強化などの成長施策を推進するとともに、SI事業における収益改善に向けた取り組みや、生成AIを活用した社内生産性の向上と事業開発の検証などを進めました。
セキュリティソリューションサービス事業では、特定企業向けに高度な対策を行う個別監視サービスの前期受注案件の運用開始と受注拡大を着実に進めたほか、企業のIT環境を包括し監視対象領域を拡大する新たなサービス開発や、大規模監視向けに低コスト化を実現する分析基盤の導入などの取り組みを推進しました。また、自動ツールとノウハウを組み合わせた診断サービスにおいて、顧客の利便性を高める管理プラットフォームを活用した案件拡大に取り組むとともに、大規模案件を迅速かつ効率的に対応するための緊急対応サービスの事業体制強化を推進しました。
システムインテグレーションサービス事業では、クラウド型サービスの導入・活用を支援する付加価値の高いシステム開発案件の拡大とともに、高度な専門性を持つ先端IT人材のリスキリングを進めました。また、先進的なクラウドソリューション製品の取り扱い製品の拡充と販売拡大などに取り組みました。
経営成績の分析
(売上高)
当連結会計年度における売上高は、前連結会計年度に比べ5,458百万円増加し、49,477百万円(前期比12.4%増)となりました。これは、セキュリティソリューションサービス事業とシステムインテグレーションサービス事業の売上高の増加によるものであります。各セグメントの外部顧客に対する売上高の連結売上高に占める割合は、セキュリティソリューションサービス事業が44.8%、システムインテグレーションサービス事業が55.2%となりました。
(売上総利益)
当連結会計年度における売上総利益は、前連結会計年度に比べ476百万円増加し、10,086百万円(同5.0%増)となりました。また、売上総利益率は、前連結会計年度に比べ1.4ポイント減少し、20.4%となりました。
(営業利益)
当連結会計年度における販売費及び一般管理費は、前連結会計年度の社内基幹システム開発に伴う費用の減少があったもののオフィス更改関連やIT投資などの費用が増加したことにより、前連結会計年度に比べ76百万円増加し、7,912百万円(同1.0%増)となりました。
以上の結果、当連結会計年度の営業利益は、前連結会計年度に比べ399百万円増加し、2,174百万円(同22.5%増)となりました。
(経常利益)
当連結会計年度における営業外収益は、助成金収入や持分法による投資利益が減少したことなどにより、前連結会計年度に比べ55百万円減少し、31百万円(同63.6%減)となりました。営業外費用は、持分法による投資損失や投資事業組合運用損の計上があったことなどにより、前連結会計年度に比べ3百万円増加し、52百万円(同8.1%増)となりました。
以上の結果、経常利益は、前連結会計年度に比べ340百万円増加し、2,153百万円(同18.8%増)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度における特別利益は、固定資産売却益や投資有価証券売却益を計上したことにより、前連結会計年度に比べ63百万円増加し、63百万円(前期は特別利益は0百万円)となりました。特別損失は、前連結会計年度は社内基幹システム開発の中止に伴う損失の計上があったことなどにより、前連結会計年度に比べ1,743百万円減少し、212百万円(同89.1%減)となりました。
以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は1,379百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失147百万円)となりました。
(財政状態の認識及び分析)
当連結会計年度における財政状態の分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
セグメントごとの財政状態に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
(セキュリティソリューションサービス事業)
セキュリティソリューションサービス事業の主な資産は、各サービスの提供や製品販売、保守サービス等に係る売掛金、セキュリティ運用監視サービス提供のためのソフトウエア及びIT機器等の有形固定資産、中長期的に事業シナジーを期待できるセキュリティ関連企業への資本参加による投資等であります。主な負債は、製品販売、保守サービスの仕入れに伴う買掛金、セキュリティ運用監視サービスに際して顧客より受領する前受金に関連する契約負債等であります。
(システムインテグレーションサービス事業)
システムインテグレーションサービス事業の主な資産は、開発サービスの提供やHW/SW販売、IT保守サービス等に係る売掛金、HW/SW販売、IT保守サービスにおける商品等であります。主な負債は、開発サービスにおけるビジネスパートナーへの外注やHW/SW販売、IT保守サービスの仕入れに伴う買掛金等であります。
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおりであります。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。
当社グループの主な資金需要は経常的な運転資金及びセキュリティソリューションサービス事業の設備資金、関連事業を営む企業の買収や資本参加のための投資資金であります。資金は使途に応じて内部資金、増資または金融機関からの借り入れにより調達しております。また、当社グループは、運転資金の効率的かつ機動的な調達を行うため、取引銀行13行と当座貸越契約及び貸出コミットメント契約(総額8,420百万円)を締結しております。当連結会計年度末の借入実行残高はなく、借入未実行残高は8,420百万円であります。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づいて作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたり基本となる重要事項は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しているとおりであります。また当社は財務諸表の作成にあたり、過去の実績や当該取引の状況に照らして、合理的と考えられる見積りおよび判断を行っておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループは、特に以下の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定が重要であると考えております。
(繰延税金資産の回収可能性)
当社グループは、繰延税金資産について、スケジューリング可能な将来減算一時差異について回収可能性があるものとして繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提となる条件や仮定に変更が生じ、課税所得が変動した場合には、繰延税金資産の評価に影響を与える可能性があります。
重要な契約に関する事項
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会社名 |
契約締結先 |
国名 |
契約品目 |
契約内容 |
契約期間 |
|
株式会社ラック(当社) |
日本アイ・ビー・エム株式会社 |
日本 |
Supplier Relationship Agreement (IBM 戦略パートナー契約書を含む) |
日本アイ・ビー・エム株式会社に対し、製品およびサービスを、販売または提供することに関する契約 |
2022年3月4日から解約されるまで有効 (注)1 |
|
株式会社ラック(当社) |
日本アイ・ビー・エム株式会社 |
日本 |
IBMビジネス・パートナー契約書(製品取引) |
日本アイ・ビー・エム株式会社から製品を仕入れることに関する契約 |
2004年1月1日から 2005年12月31日 (注)2 |
|
株式会社ラック(当社) |
日本アイ・ビー・エム株式会社 |
日本 |
IBMビジネス・パートナー契約書(サービス取引) |
日本アイ・ビー・エム株式会社のサービスの提供を受けることに関する契約 |
2014年4月1日から 2015年12月31日 (注)2 |
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株式会社ラック(当社) |
KDDI株式会社 |
日本 |
資本提携契約書 |
KDDI株式会社との間の資本提携に関する契約 |
2013年12月9日から2016年12月8日 (注)3 |
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株式会社ラック(当社) |
KDDI株式会社 |
日本 |
業務提携基本契約書 |
KDDI株式会社との間の業務提携の基本的な条件に関する契約 |
2013年12月9日から2016年12月8日 (注)3 |
(注)1.日本アイ・ビー・エム株式会社と締結していた「GBS事業向けコア・パートナー契約書」については、
2023年5月30日付で合意解除したうえで、「IBM 戦略パートナー契約書」を締結しております。
2.契約期間満了後は、2年毎の自動更新となっております。
3.契約期間満了後は、1年毎の自動更新となっております。
当社グループは、セキュリティソリューションサービス事業及び今後の新規事業の開拓のために次の研究テーマに取り組んでおります。
なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は
[Ⅰ]. サイバー・グリッド・ジャパン
a.研究開発体制
当社グループでは、サイバーセキュリティ市場におけるリーディングカンパニーとして最新・最高の技術を維持向上するため、総勢27名体制で研究開発を行っております。
2024年3月期は、従前から引き続き、分野別の3部門体制で活動を行いました。なお、2018年度から視覚障がい者のエンジニア採用を実施しており、引き続き、キャリア形成支援や活躍の場を広げる取り組みを推進しています。
b.研究開発方針
サイバー・グリッド・ジャパンは、サイバーセキュリティに関する研究開発において他組織との連携強化をテーマとし、サイバー脅威インテリジェンス情報基盤の開発や、ナショナルセキュリティに関する研究を推進するとともに、啓発活動、産学官連携、情報発信の強化、グリッド・パートナー拡大など、セキュリティ業界にとどまらず、行政、教育、地域との連携の強化を進めてきました。
個別の研究テーマとその具体的な内容につきましては以下のとおりです。
(1)サイバー脅威インテリジェンスに関する研究
A.プラットフォーム開発
サイバー脅威インテリジェンスに関連する各種情報を、統合的に分析・管理するプラットフォームの研究をしており、情報の集積から共有・連携・活用までを研究対象として、情報基盤のプロトタイプの開発を進めております。その研究成果の1つとして組織間の脅威情報の共有・連携を行うための体制「SecureGRIDアライアンス」の運営活動を通じ、脅威情報の活用をテーマにした機能開発やデータの分析・評価に関わる研究開発を推進しています。
B.情報収集
サイバーセキュリティに関連するオープンデータを自動的に収集し、攻撃者の痕跡情報などの抽出を実現するAI分析エンジンの研究やサイバー犯罪におけるテクニカルサポート詐欺の調査分析をしています。
C.データ分析手法研究
情報源の異なる膨大な集積データを、検知・防御範囲が広く、より精度の高いサイバー脅威インテリジェンスに生成するための統合的な分析ロジックを研究しております。この独自の分析ロジックは、脅威情報提供サービス「JLIST」にも生かされています。
(2)ナショナルセキュリティに関する研究
国防をテーマに、国家主導のサイバー攻撃の背景となる政策や能力について調査・研究を進めています。近年のサイバー攻撃は、インターネットやSNSの普及により、電磁的な攻撃だけでなく、人間が攻撃の標的となるケースが増加しています。2023年に発生したイスラエルとハマスの衝突では、多くの国や組織が偽情報を拡散し、真実が歪められて伝えられる事例が見られました。また、同年に本格的にサービスが開始された生成AI技術は、瞬く間に世界中に広がり、偽情報の作成と拡散を容易にしています。安全保障関連の三つの文書には、能動的サイバー防御の導入と、認知領域を含む情報戦の強化が求められています。こうした状況を現代の安全保障の正念場と捉え、我々は高度化・複雑化するサイバー攻撃に備えるため、産学官の連携を密にし、多角的な分析を行う広い視野での研究を推進しています。2023年12月には「情報戦、心理戦、そして認知戦」をテーマにした研究成果を出版しました。引き続き、「国を衛る」ための研究を進め、サイバーセキュリティに関する啓発活動を行ってまいります。
(3)啓発活動
A.産学官連携
全国県警本部や地方自治体、教育委員会などとの産学官連携に積極的に参画しております。この産学官連携を通じ、それぞれの地域でのセキュリティ意識やICTリテラシーの向上のために、地域組織への支援と次世代を担うセキュリティ人材の育成に積極的に協力しております。
B.啓発活動
ICT利用環境啓発支援室では、全国各地における講演会での登壇や、外部団体活動への参画を通して、利用者における情報セキュリティ・情報モラルの重要性を発信しており、啓発講座の開催、研修講師・シンポジウム登壇時の講師の派遣、インターネット安全環境整備会議出席などの活動は200件を超えます。これらの活動により蓄積した知見に加え法学、教育学、社会学などの研究者の監修を受け発刊した「情報リテラシー啓発のための羅針盤(コンパス)」は全国の啓発・教育の現場において活用されております。また、GIGAスクール構想ならびに学習指導要領に謳われる「主体的・対話的で深い学び」をICT利活用の視点から支援し、デジタル社会の学びに資する活動も推進しております。
C.人材育成支援
小・中学生を含む未成年の技術者を目指す人材における技術力の向上、知識の習得、交流の促進を支援すべく「すごうで」を実施し、若年技術者の発掘と技術・資金提供を行っています。また「サイバーセキュリティ仕事ファイル」の発刊を通して次世代を担うセキュリティ人材の育成を支援しております。さらにセキュリティ対策に関する団体の事務局運営を通じ、啓発活動に関わる様々な組織や個人の連携を推進しております。
(4)情報発信
情報誌「サイバー・グリッド・ジャーナル」やオンラインでの成果報告発表会等を通じて、広くセキュリティ専門家から一般のICT利用者までを対象としたセキュリティ関連情報を提供しております。また、セキュリティに関する安全保障やセキュリティに関する事件やトラブルに関する取材や執筆活動について専門的な立場で積極的に対応しております。
(5)知的財産
A.知的財産開発
研究開発により創出した技術の特許を国内外で取得しております。
B.技術動向調査
技術動向を把握し、研究開発テーマの方向性を確認するため、特許情報を含めた先行技術調査を行っております。
2025年3月期は、引き続き自社独自の技術を創出する研究を推進しつつ、研究成果を活用したオープンイノベーションを推進してまいります。
[Ⅱ]. 新規事業開発
a.研究開発体制
セキュリティソリューションサービス事業、システムインテグレーションサービス事業を中核としつつ、第3軸の事業を創出するための研究開発、実証実験活動を15名体制で行っております。
2025年3月期は、2025年4月以降の事業化に関連し、分析手法と機能実装を進めていきます。
b.研究開発方針
スマートシティ(スーパーシティ)及び国内各地域活性化を市場として捉え、その都市の安全を守るための仕組み作りを目指し、サイバーセキュリティに留まらず、「セーフティ」に関わるサービス・プロダクトの創出に必要な技術・プロダクト、主に分析のための研究開発を進めております。また、分析対象となる製品、サービスについては、その研究を行いながら技術情報を把握するとともに、該当する事業会社との連携あるいは事業会社の創出に取り組みます。それらの実現のためには国内の地方公共団体との連携・協力は必須であるため、地方公共団体(及び地域住民)との連携強化も並行して進めます。
(1)協賛・実証実験活動
A.地域での実証実験
北海道旭川市、福岡県北九州市、長崎県長与町の3か所にて各種IoTデバイス及びデータ取得、分析の実証実験を継続し、段階的に機能リリースを進めてきました。機能の実証は北海道旭川市に集中し、サービスの実証を長崎県長与町、山形県庄内町で行います。福岡県北九州市は後述Bに目的を変更して取り組んでいます。
B.官民連携・産学連携による地域活性化
地方公共団体及び教育機関(大学等)と連携し、スマートシティ(スーパーシティ)に必要となる各種機能・サービスの創出活動を進めます。東京理科大学との共同研究による認証機能の実装、長崎県立大学との共同研究によるスマートシティ向けのプラットフォームサービスのアーキテクチャ検討、芝浦工業大学との共同研究による地域から取得したデータのシミュレーションへの利活用及び機能実装の検討、九州工業大学が保有する知財の事業化の検討を継続して実施しています。
(2)技術開発
スマートシティ(スーパーシティ)における「分析」「制御」技術に集中して技術開発を進めます。従来のサイバーセキュリティでは、不正アクセスに関わるデータの検知・分析・対処を行ってきました。今後重要になってくる技術要素は「正常状態のデータの蓄積・検知からリアルタイムに異常事情を検知し、デバイスを制御する」ことと捉え、その検知・分析手法の開発を元に、IoT機器の運用に関わるソフトパッケージ化に取り組んでおります。
また、位置情報と距離情報を元にした多要素認証に関わる保有知財を活用した機能実装を進めていきます。