文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。
当社グループは、持続的な成長と企業価値向上の実現を通してステークホルダーの期待に応えるとともに、社会に貢献するという企業の社会的責任を果たすため、経営理念および以下の基本方針に基づき、取締役会を中心に迅速かつ効率的な経営体制の構築並びに公正性かつ透明性の高い経営監督機能の確立を追求し、コーポレート・ガバナンスの強化及び充実に取り組んでまいります。
<経営理念>
「人々の暮らしを安全・快適にする技術や製品を提供し、社会に貢献するカヤバグループ」
1.規範を遵守するとともに、何事にも真摯に向き合います。
2.高い目標に挑戦し、より活気あふれる企業風土を築きます。
3.優しさと誠実さを保ち、自然を愛し環境を大切にします。
4.常に独創性を追い求め、お客様・株主様・お取引先様・社会の発展に貢献します。
<コーポレートガバナンス基本方針>
1.当社は、株主の権利を尊重し、平等性を確保する。
2.当社は、株主を含むステークホルダーの利益を考慮し、それらステークホルダーとの適切な協働に努める。
3.当社は、法令に基づく開示はもとより、ステークホルダーにとって重要または有用な情報についても主体的に開示する。
4.当社の取締役会は、株主受託者責任および説明責任を認識し、持続的かつ安定的な成長および企業価値の向上ならびに収益力および資本効率の改善のために、その役割および責務を適切に果たす。
5.当社は、株主との建設的な対話を促進し、当社の経営方針などに対する理解を得るとともに、当社への意見を経営の改善に繋げるなど適切な対応に努める。
ポストコロナ社会へシフトし経済活動は持ち直すも、ロシアのウクライナ侵攻や中東情勢緊迫化を始めとする地政学リスクの高まりに加え、米大統領選挙の結果は世界の構図に影響を及ぼすことも想定されます。また、欧州や中国地域の景気減速影響もあり、需要予測の困難な状況が長期化しております。また、インフレリスク再燃懸念や為替の不安定さにより、依然として世界経済には不透明感が漂っております。
当社を取り巻く事業環境は、AC事業は電動化や自動運転化、また、AIやIoTの発展により移動や運搬の概念とは異なる新たな価値創造がされ、大きな変革期を迎えております。HC事業は建設機械業界の無人化や省エネ化のトレンドに対して、電子化・電動化・システム化による高付加価値化を求められております。特装車両事業では、トラックメーカーの減産による影響は回復傾向にある一方、生コンクリート出荷量や工事の仕事量は減少傾向が見られます。
一方、グローバルでの法規制の強化と企業のESGやSDGs、カーボンニュートラルに対する社会的な要求が急速に高まっております。更には、人口や社会の変化による働き方の多様化とグローバル化や経済成長に伴う賃金上昇の加速、デジタル技術の飛躍的進化に伴う業界の垣根を越えた連携や異業種からの参入による産業構造の変化など、当社を取り巻く環境は急速な変化を見せています。
2023中期経営計画2年目の2024年度は、依然として続くエネルギー、原材料価格の高騰、急激な為替変動等にさらされながらも、不適切行為の再発防止、規範意識とコンプライアンスは永続的な課題として実施しながら、「品質経営を極める~TQM(※1)を実践し、チームの力を向上~」をスローガンに、TQM活動を起点にスピードをあげて以下の方策を展開、推進してまいります。また、IoTやAIなどデジタル技術を活用した業務変革を進めており、デジタル変革推進本部を中心に変革を強力に牽引してまいります。
1.マネジメント
「全員参加のTQM活動」「規範意識の醸成・定着」「成長戦略」「革新的モノづくり」「目標に向けた絶え間ないコスト低減活動」「環境対応への取り組み」
当社の経営の根幹であります「規範意識の醸成・定着」につきましては、過去の不適切行為を忘れることなく、更なる規範意識の浸透と不適切行為の再発防止に取り組んでまいります。ガバナンスを強化し、グループ全体で高い規範意識を定着してまいります。また、免震・制振用オイルダンパーの適合化は2023年度末で約99%まで進捗いたしました。引き続き適合化完了に向けて対応を進めてまいります。
「成長戦略」における環境認識としましては、就業人口の減少が予測され、自動施工、電動化対応は必至であります。デジタル化の進展によりモノづくりや働き方改革への取組み、自動化、無人化、脱炭素化・省エネ化に向け電子化・電動化への技術対応など大きな変化と認識しております。将来への種まきも踏まえて、電動化に対応した製品開発と、その早期投入や、需要拡大が見込まれる成長市場へM&Aも視野に入れた積極的投資を進め、新たなビジネス創出・利益拡大に努めてまいります。
「革新的モノづくり」につきましては、加工から組立が完全に一貫となった自己完結革新工場の2030年の実現を目指す、Ship’30活動を進めております。革新ラインの要素技術開発、信頼性の高い設備の開発と導入、TPM(※2)活動を通じた設備維持管理体制構築による設備故障率低減、これらの取り組みはAI・IoT技術を駆使して2030年の実現に向けて取り組んでまいります。
「目標に向けた絶え間ないコスト低減活動」につきましては、デジタル技術を活用した間接部門の業務合理化を進めることで総就業時間を削減し、固定費低減を進めてまいります。また、資材やエネルギーの高騰、短期間での為替レートの大きな変動がある中、調達部門、生産管理部門や技術部門と連携を強化したVE・VA提案、部品標準化による原価低減、為替変動を柔軟に対応できる生産拠点と他国の競争力ある部品の活用を組み合わせた最適調達を推進し、変動費低減を図ってまいります。さらには、棚卸資産回転率の指標管理を継続し、全社棚卸資産圧縮を推進してまいります。
「環境対応への取り組み」としては、2030年に「CO2排出量 2018年度比 50%削減」、また、2050年にカーボンニュートラル(CN)の目標を掲げており、サステナビリティ委員会、ESG推進部、CN推進室を中心に目標達成に向けた取り組みを強化しております。2023年度にはCDP(国際NGO)による「気候変動分野」でB評価の認定を取得しました。引き続き人と地球に優しい製品づくりを推進するとともに、環境保全活動を積極的に推進してまいります。
これらの活動につきましては、「全員参加のTQM活動」を推進し、方針管理・日常管理・小集団改善活動により仕事の質を高め、目標達成に向けて取り組んでまいります。
(※1)TQM:Total Quality Management(総合的品質管理)の略で、製造部門のみならず全社的な業務改善へも発展させた管理手法
(※2)TPM:Total Productive Maintenanceの略で、ロスを未然防止する仕組みを構築し、部署を越えた全員参加での改善・維持活動
2.オートモーティブコンポーネンツ事業
「新しい挑戦を!」~顧客・社会・働くカヤバ人財が満足出来る商品の為に~
AC事業の2023中期経営計画は「新しい挑戦を!」をスローガンに掲げ、母機の電動化・自動化のトレンドに対し、新商品・改良商品の開発を促進するとともに、新領域への進出を図り、収益力向上だけでなく全てのステークホルダーのニーズを満たす挑戦をしてまいります。
具体的には、高機能・高付加価値商品である電子制御セミアクティブサスペンションのラインアップ拡充による販売拡大、自動運転のカギとなるステアバイワイヤシステムの技術の深耕、またe-Axle向けの電動ポンプや二輪車用車高調整システムの開発、さらに、将来への種まきとして電動油圧アクティブサス、フル電動サスペンションやステアリングとサスペンションの協調制御といった、全ての移動を快適にする技術に挑戦してまいります。また、地方行政への道路維持管理支援としてサービス提供を進めている「スマート道路モニタリング」のセンシング技術を活用、AIを用いた情報処理によりステアリングやサスペンションの開発や制御に応用してまいります。
一方、成長市場への進出によるシェア拡大や新規顧客開拓へ向けた戦略構築を行い、市場でのプレゼンス向上を図ってまいります。環境対応の観点からは、原料生成過程でCO2を吸収できる天然系の基油を用いた作動油開発に挑戦、万が一の漏出時にも生分解性を有し、さらには廃棄後の回収・リサイクル性まで訴求し、LCAの観点で環境負荷低減とCO2排出ゼロを目指します。
3.ハイドロリックコンポーネンツ事業
「“ゆるぎない信頼”をベースにした成長への再スタート」
2023中期経営計画においては「“ゆるぎない信頼”をベースにした成長への再スタート」をスローガンに掲げ、ボリュームゾーンである既存ビジネスと次期主力商品となる新たなビジネスを両輪にして活動を進めてまいります。既存ビジネスでは価格・品質・供給の各分野で市場におけるプレゼンスを示すことで、収益性とシェアの確保に取り組み、さらに、新たなビジネスでは環境・性能・情報の各分野で既存製品にない付加価値の創造につながる製品・サービスの市場投入を意識した体制構築を加速してまいります。
具体的には、シリンダ・モータといった既存製品軸での原価低減活動を事業の総力を挙げて推進し、市場シェアの拡大につながるコスト競争力の強化を図ります。さらに、将来の建機の電動化・自動化に向けた電子制御化・電動化・システム化の先行開発を進め、建機ショベル以外の製品市場参入にも挑戦してまいります。また、油圧機器の油状態診断システム開発では、将来の事業化を見据え、建設機械や工場設備で評価を進めてまいります。これは、センサ・通信機を取り付けた油圧機器をクラウドで結び、建設機械や工場設備などの油圧機器の作動油状態をリアルタイムに診断するシステムで、作動油の廃棄量低減で環境にやさしく、メンテナンス作業の効率化が図れるようになるものです。これらの新たなビジネスへの取り組みを進めて「成長」し、景気変動に強い事業構造を目指してまいります。
4.特装車両事業
「真のダントツミキサメーカーを目指す」
特装車両事業につきましては、お客様目線で活動し、顧客価値の創造により、「真のダントツミキサメーカーを目指す」ことを基本戦略とし活動してまいります。リニア新幹線や都市再開発等の建設需要を確実に取り込みながら、ドラム軽量化による積載量の増加、生コン打設作業時の安全対策、使い勝手の向上など、お客様のニーズを反映させた高付加価値製品の市場投入に向け、開発を進めてまいります。また、トラック電動化への対応といたしましては、国内初となるEV対応ミキサの開発を進めてまいります。サービス体制におきましては、パーツカタログ整備や部品発注のDX化によるアフターサービスの強化を推進してまいります。これらの取り組みにより顧客価値の創造を目指し、お客様の満足度向上に努めるだけでなく、当社の新たな収益基盤として、これまで培った技術・経験を投入しキャンピングカーの事業化に向けた取り組みを進めてまいります。
5.航空機器事業
航空機器事業につきましては、2022年2月9日に公表いたしましたとおり、経営資源の選択と集中による企業競争力強化を図るべく、撤退を決定いたしております。お客様のご理解を得ながら、ご迷惑をおかけすることの無いよう、粛々と撤退を進めてまいります。
6.技術・製品開発
「[攻め]の研究 / 技術開発による永続的な新価値創造」
技術・製品開発におきましては現在起点の発想に基づくフォアキャスト型の製品ロードマップにより、お客様の困りごとや市場の課題に応えてまいりました。一方、CNやSDGsなどの社会環境変化へ対応するため、未来起点の発想に基づく、ありたい姿から「何をすべきか」という視点を取り入れた、バックキャスト型の技術ロードマップ活動も融合させて新技術・新製品開発や新規ビジネス創出を進めてまいります。成熟領域であるAC・HC事業の油圧製品におきましては電子制御・電動化・自動化製品を開発する一方、センシング技術・通信技術・データ分析技術を用いた情報サービス分野での事業創出を図ってまいります。また、これら事業戦略や新価値創造に際してはIPランドスケープ(※3)の活用・推進も行ってまいります。
先進的な研究開発・生産技術開発実現に向けて、デジタル技術を融合・活用した開発やプロセス革新も進めてまいります。モデルベース開発手法の拡大やデジタルツイン(※4)活用といったデジタル・リアルの融合のほか、Ship’30活動とも連携し、人に頼ったモノづくりから脱却する技術開発を行い、さらなる効率化を目指してまいります。これらデジタル技術を活用できる人財のみならず、電気・電子、電動化技術に係る人財を拡大し、全社一体となりさらなる開発の加速を進めてまいります。
(※3)IPランドスケープ:知財を中心とした情報を統合的に分析し、企業の経営戦略に役立てる活動
(※4)デジタルツイン:現実空間から収集した各種データを用い、仮想空間(コンピュータ)上で双子のように再現すること
7.人財育成
「従業員が心身ともに健康で働き甲斐のある職場づくり」
2023中期経営計画に掲げる「品質経営を極める」は2年目を迎え、2024年度はTQM実践教育により能力の向上を図ります。経営目標の達成および組織の活性化に向けては小集団活動を推進し、RPAやデジタル技術も活用しながら業務改善意識の定着を図り、抜本的なムダ取りに取り組んでまいります。
また、当社は従業員や家族の健康を重要な経営資源、企業活力の源泉と位置づけ、従業員が心身ともに健康で働き甲斐のある職場づくりに取り組んでおります。経営理念である「高い目標に挑戦し、より活気あふれる企業風土を築きます」の実現のため、健康増進活動に取り組む従業員への積極的な支援と、組織的な健康増進施策を推進し、2024年も「健康経営優良法人」に5年連続で認定されました。今後も継続して取得するとともに、2025年のホワイト500認定取得を目指してまいります。
8.モノづくり
「質を極め~量変動に追従できる革新的モノづくりの実現」
革新的モノづくりにつきましては、これまでも最適な生産を実現し生産革新活動を進めて収益性強化に努めてまいりました。次の時代に向けてモノづくり現場をより一層進化させ、自己完結革新工場を2030年に実現することを目指し、デジタル技術を軸にしたShip’30活動を前中期経営計画から進めております。2023中期経営計画ではShip’30活動における生産工程革新といたしまして、コンセプトライン構想および実現に向けた取り組みの推進、運搬や検査などの自動化の実現や、設備モニタリングシステムの展開といったIoTの活用を図ってまいります。また、革新ライン構築に向けて信頼性の高い設備開発と導入を進めてまいります。設備管理革新活動としては、高度化する設備群への対応と故障率低減に向けたTPM体制構築および故障分析と対策・保全の実施を進めてまいります。さらに、KPS(※5)活動を推進し、モノづくり現場の底上げを図り生産性を向上させるとともに、活動を通じ人財の育成を図ってまいります。
(※5)KPS:Kayaba Production Systemの略でムダの徹底的排除の思想に基づく生産方式を指す
当社グループは、これらの重点方策活動を着実に実施し、筋肉質で高収益な企業体質への改革に取り組んでまいります。
(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループでは、3年間(2024年3月期~2026年3月期)の2023中期経営計画を策定しており、当連結会計年度における実績、2025年3月期における見通し及び最終年度における目標数値は以下のとおりです。
(注) セグメント利益は、売上高から売上原価、販売費及び一般管理費を控除して算出したもので、日本基準の営業利益に相当いたします。
また、収益基盤の安定化を図るため、収益力改善については、固定費管理体制強化、最適調達による変動費削減、グローバル総原価低減の推進、グループ生産体制の最適化を、財務体質改善については、棚卸資産回転率の指標管理強化による全社棚卸資産圧縮を推進し、重要な指標と位置付けております当社グループ自己資本比率やROEの改善を進め、グループ一体となった利益確保を通じ企業価値向上に向けて取り組んでまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
当社グループでは環境や社会の課題解決に向けた活動を実践し、持続可能な社会の実現に貢献するべく活動を推進しています。経営理念である「人々の暮らしを安全・快適にする技術や製品を提供し、社会に貢献するカヤバグループ」を根幹に、創業者から受け継がれてきた独創の精神に立ち返り、豊かな未来を描く新たな歴史を創り続けます。
気候変動問題に対しては、地球温暖化防止、循環型の持続可能な社会の実現に向けて、人と地球に優しい製品づくりを目指すとともに、省エネ化や再生可能エネルギーの導入、廃棄物削減などを推進します。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループでは持続可能な社会の実現へ貢献すべく各種取り組みを推進しており、会社全体を取りまとめる組織として、ESG推進部が事務局、社長が委員長を務める「サステナビリティ委員会」を設置し、サステナビリティに関する取り組みを討議の上、取締役会へ3か月に1回報告または上申しております。
加えて、サステナビリティ委員会の傘下として、各事業部内に事業ESGワーキングチームを設置して、気候変動に関するリスクや機会の抽出、対応策の検討などを実施し、サステナビリティ委員会へ報告しております。また、気候変動リスクに対応するサステナビリティ委員会と会社全般のリスク管理を行うリスク管理委員会は連携しながら活動を行なっております。
取締役会ではサステナビリティ委員会からの報告または上申を受けてプロセスを監督し、必要に応じた決議を行っております。
また、気候変動や環境保全に関連して業績に影響を与える事項は、機能部門および事業部門が業務執行状況を報告する「経営報告会」や、安全・環境部による「環境安全監査」等においても監視を行っております。
サステナビリティに関する体制図は、以下のとおりです。

当社グループはESG経営を方針策定の基盤とし、環境への対応はもちろんのこと、機会を企業価値向上へと繋げ、持続可能な社会に貢献する製品開発を推進しています。またESG推進部を中心に環境・社会・ガバナンスに関するすべての社内活動を推進しています。
<気候変動>
当社グループは2050年カーボンニュートラル達成を目標として、温室効果ガス排出量削減の活動、製品の環境負荷物質低減のための対策、CO2低排出・省エネルギー製品の開発を行っています。気候変動に関するリスクとその影響から見えるビジネス機会に関しては、受注減や工場の操業が停止する事態に陥ることが重大な財務的影響の定義とし、発生の可能性、影響の大きさ、質的影響で分類し、どのくらいのインパクトがあるかを定義しています。下表に示すシナリオ分析により影響度を評価し、事業戦略や経営計画に反映させていきます。
また、当社グループにおける、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は次のとおりです。
※当社グループでは、「組織をつくるのは人であり、人は組織の財産」という考えのもと、人材を「人財」と表現しています。
当社グループは、人財の多様性を経営健全化実現のための重要な取り組みの一つと捉え、多様な価値観、文化、慣習を受容・尊重した働きがいのある職場を創出するとともに、経営戦略、製品開発に柔軟性のある風通しの良い企業風土の構築を目指します。
当社グループは、「カヤバ健康宣言」において、従業員や家族の健康を重要な経営資源、企業活力の源泉と位置付けており、働きやすい環境の下で当社グループで働く一人ひとりがそれぞれの能力を最大限発揮できるよう、従業員の働きがい・エンゲージメント向上に取り組みます。
また、以下のような方策に取り組んでおります。
女性の活躍推進に対する管理職の意識を変えることを目的とした研修を2023年度より新規で開始しています。
また、当社では女性の活躍推進に関する取り組みの実施状況が優れている企業に与えられる「えるぼし」を2023年に取得し、その中で、女性管理職比率が2年連続向上した点を評価いただきました。女性管理職に関しては、2025年度目標にて24名を掲げていますが、2023年度実績においては18名に留まっております。管理職候補となる職位の女性従業員の数を増やすため、座談会による女性従業員からの意見収集を行い、2024年度は自身のキャリアを考えるステップアップ研修を開講予定です。今後も女性従業員が活躍できる環境整備を進めていきます。
障がい者の担当業務領域の拡充と受け入れ職場の拡大等により、障がい者雇用率の向上と、障がい者と健常者がともに働きがいを感じられる職場環境の実現に向けた活動を進めております。当社では2019年9月に「業務支援センター」を設置し、社内の各部門、官公庁、学校、各種団体と連携して雇用促進や定着率の安定に向けた取り組みを進めてきた結果、2019年3月末に1.88%であった障がい者雇用率が、2024年3月末現在では2.55%となり、2024年4月より引き上げられた法定雇用率2.50%を上回る雇用率となっています。引き続き、職場環境の実現に向けた活動をしていきます。
従来より人財の固定化による不正リスク防止を目的としたローテーションを進めてきましたが、定期的なジョブローテーションによる組織の活性化および従業員のスキル向上を目的に加え、従業員のローテーション促進を進めていきます。
2023中期経営計画において、TQM活動を起点に重点方策を実施することから、2023年度はTQM教育を全社展開してまいりました。2024年度から各事業・各本部を対象に、外部講師による実践教育を通じて、経営目標達成に必要な組織能力を高めるために抽出した実施事項に取り組んでまいります。全社の活動を共有しそれぞれが自分事として課題や問題を顕在化させ、改善、フィードバックすることにより、中期スローガン“品質経営を極める”を実現していきます。
「経営理念(規範、活気、愛、独創)の実現に貢献する人財の育成」を基本とし、そのために必要な資質が備わる人財育成プログラムの体系を整備しています。2024年度より若手従業員の管理職へのステップアップを後押しするため、自身の位置づけや求められる期待役割を把握し、これからのキャリアについて学ぶ研修を開始していきます。
従業員一人ひとりに規範意識が浸透し風通しの良い職場にするため、毎年10月に全従業員を対象とした教育を行うほか昇格時研修においても実施しております。
経営トップ主導の元、2019年に立ち上げた健康経営推進プロジェクトを中心に健康経営に取り組んでおり、2023年度大規模法人、中小規模法人健康経営優良法人で、グループ計7社が認定されました。プロジェクト立ち上げ当初は、疾病による休業者を減らす活動を行っていましたが、現在は、疾病を未然に防ぐ健康増進活動にシフトしており、「喫煙率低減」「仕事満足度向上」「肥満該当率低減」「高ストレス者低減」「睡眠充足率向上」の5つを重点方策として掲げております。その活動による改善効果を経年で把握し、その後の施策検討をするため、健康診断結果や面談記録を一元管理する健康管理システムを2022年度に導入しました。また、上記重点方策のPDCAを回すためのツールとして、2023年度に「カヤバ健康支援サービス」を採用しました。2024年度は「喫煙率の低減」を最重要課題として捉え、受動喫煙・禁煙の双方の観点からの活動を強化するとともに、従業員の健康リテラシー向上を図るための「カヤバ健康支援サービス」の普及のため、人事部門・健康管理センター・健康保険組合・労働組合とコラボした活動を行っていきます。これら活動を継続することが、従業員の仕事満足度向上に寄与し、パフォーマンス最大化につながるものと考えています。

安心して仕事に従事できる職場環境作りやワークライフバランスの両立支援につなげるためテレワーク制度、フレックスタイム制度、育児・介護休職および短時間勤務制度、配偶者転勤休職制度などの様々な制度を設け、多様な働き方を推進しています。中でも、育児制度においては、出産育児にかかわる制度周知を目的とした「出産・子育てのためのガイドブック」を女性従業員用・男性従業員用・幹部従業員用それぞれの作成と各事業所相談窓口設置等により男性の積極的な育児参加を推進する取り組みを進めています。
なくす・へらす・かえるの観点から間接部門における業務合理化を進めており、2023年度はカヤバ生産方式(KPS)の思想を用いた改善による抜本的な業務ムダどりの実践に取り組んできました。また、RPA(Robotic Process Automation)などのデジタル技術を活用した合理化実践にも積極的に取り組んでおり、今後も従業員の総就業時間低減と年次有給休暇取得率向上を目指していきます。
会社全般のリスクへの対応については、取締役会の下部組織であるリスク管理委員会において、全社的な対策を講じる必要のある重点リスクと責任部署を決定し、各責任部署がリスク管理活動を行い、四半期毎に取締役会へ報告しています。詳細については、「
当社グループでは、上記「戦略」において記載した、気候変動について、当社及び連結子会社の生産拠点において次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。

また、当社グループでは、上記「戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。
なお、当該指標については、当社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取り組みが行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われていないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の指標に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。
当社グループの経営成績および財政状態のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主なリスクには、以下のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループでは、経営目的の達成および事業の運営を阻害する可能性のある事象をリスクと定義し、リスク管理に取り組んでおります。また、全社的リスク低減のため、「リスク管理委員会」を取締役会の下部組織として設置しております。リスク管理委員会において、全社的に対策を講じる必要のある重点リスクと責任部署を決定し、各責任部署がリスク管理活動を行っており、大規模災害等のBCPについても同様に活動しています。また、事業リスクに関しては当該リスクを抱える事業部が責任をもって取り扱う一方、リスク管理委員会はモニタリングを行います。
体制については「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要」に記載しておりますコーポレート・ガバナンス体制図をご参照ください。
また、リスク管理委員会の構成は、以下のとおりです。
以下のスケジュールに基づき、1年単位でリスク低減活動を行なっております。
リスクを、財務、人的被害、操業停止、法令違反、評判などの視点から事業の運営に及ぼす影響度と、発生する可能性から、リスクの大きさを評価しております。
2024年度のリスク管理活動では、子会社を含む全拠点から抽出したリスクから、リスクが大きいと評価した以下9件を重点リスクとして選定しております。これらについては、それぞれの責任部署が、年度活動計画を策定し、それに基づいてリスク低減活動を行なっており、活動の進捗や、リスクの状況については、四半期ごとに取締役会へ報告しております。
なお、2023年度より、重点リスクに3つのリスクを追加しております。紛争など地政学リスクが顕在化しており、従業員の安全をどう確保するかが重要な課題となってきたため、「紛争等有事の安全措置」を新たに追加しております。また、転職が一般化してきている現況より、これまでの対応だけでは人財のつなぎ止め、確保に限界が出てくることが予想されるために「人財不足」を、大規模災害以外にも取引先の撤退、倒産などによるサプライチェーン寸断が現実味を増しており、予防措置の重要性が高まってきたために「サプライチェーン寸断」を、それぞれの取り組みをより強化するために追加しております。
各全社リスクの詳細は以下のとおりです。
品質不正による法令違反やお客様との契約違反は、お客様からの損害賠償請求や是正対応費用などにより、財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、品質不正に直結する品質記録の改ざんなどを防止する活動を行っております。具体的には、拠点が自主監査で使用するマニュアルの見直し/改定を行い、拠点自身での発見力強化を行います。また拠点自主監査後の品質管理部による現地又はWeb監査により、品質不正の懸念事項の発見漏れを防ぎ、是正を行うことで品質不正リスクを低減してまいります。
当社グループでは、地震、火災、風水害での自社生産設備の損傷やサプライヤーチェーンの寸断、サイバーインシデントなどによる操業停止の可能性があるため、災害発生時の被害を最小化する活動や災害発生時の復旧訓練の実施など、生産能力早期復旧のための対策をとっております。また、発生の可能性が高いと推測される国内地震を中心に、国内外火災に対しても、訓練の実施に取り組んでまいります。また減災対応や復旧戦略策定についても見直し・強化を進め、大規模災害時の操業停止リスクを低減してまいります。
職場でハラスメントが発生した場合、職場環境悪化による生産性低下や人財流出によって事業活動が鈍化し、経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、労務訴訟などで賠償請求を受けるリスクもあります。
当社グループでは、いきいきと働くことのできる職場環境の土台づくりの一環として、内部通報件数やストレスチェックの結果から選定した重点拠点、部署への個別対応、および従業員へのハラスメント防止教材の事例集拡充により、多様な価値観を尊重する職場づくりをすすめ、ハラスメントによる事業活動の鈍化や労務訴訟リスクを低減してまいります。
近年の情報システム環境の進化・複雑化に加え、テレワークの普及による従業員の外部からのアクセス機会が増える一方、サイバー攻撃は急増し、複雑・高度化しており、情報セキュリティに係るリスクが高まっています。これらにより、情報漏えいやシステム障害等が発生した場合、当社グループの経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、グループ共通のサイバーセキュリティ教育・訓練、サプライチェーンセキュリティ強化、サイバーインシデント対応マニュアルの整備等を実施することで、グループ全体の防衛力を強化し、サイバー攻撃による操業停止リスクを低減してまいります。
労働災害の発生は、従業員の生命を脅かすだけでなく、是正対応などのために操業停止又は、生産能力が著しく低下する可能性があります。現在、発生頻度の高い災害を重点災害と位置づけ、重点災害発生拠点に対する特別管理および再発防止策をグループ内で水平展開することで、労働災害の人的被害リスクを低減してまいります。
当社グループの多くの工場では、油の特性を利用した油圧製品の生産を行っており、有機溶剤を使用する塗装設備、作動油・化学薬品等を貯蔵するタンク等が設置されていることから、火災の発生や有害物質が流出する可能性があり、万が一、事故が発生した場合には生産活動が一時的に停止する可能性があります。過去事例を反映した防火体制チェックリストによる点検の実施、火災の原因となりうる設備に加え、爆発リスクのある設備の見える化、清掃状況の見える化、防火教育にて、火災による操業停止リスクを低減してまいります。
当社グループはグローバルに事業活動を行っており、世界のさまざまな国や地域で発生する紛争等により、生産活動や販売活動の継続に影響を与えるだけでなく、従業員の生命を脅かす可能性があります。紛争等有事の際に従業員の安全を確保するため、円滑に退避できるように有事に特化した退避マニュアルの整備、運用等をすることで、従業員の人的被害リスクを低減し、事業活動再開にも備えてまいります。
転職が一般化してきている現状から、当社グループでも人財流出により、事業活動が鈍化し、経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。定期採用戦略、中途採用戦略を推進するとともに、退職理由の分析から職場環境の改善、人事制度の見直し等を実施し、人財不足リスクを低減してまいります。
当社グループのサプライチェーンには、後継者不足、設備老朽化などによる廃業、事業撤退が懸念される取引先があります。予期せず取引先からの部品供給が停止した場合、一時的に生産活動が停滞し、事業継続に影響する可能性があります。取引先の状況を注視し、コミュニケーションを深め、懸念取引先に対しては、転注等の代替手段で継続供給を確保し、供給停止リスクを低減してまいります。
全拠点から抽出したリスクのうち、各事業や各拠点で個別に対応するリスクについてはリスク管理委員会の活動に依らず、各事業等で対応しており、以下のものがあります。これらは、2023中期および2024年度方針に掲げ、各事業等の日常の管理活動の中でリスク低減活動を実施しております。その進捗については経営報告会等の会議体を通じて定期的に報告されております。
上記のリスクに関する詳細は以下のとおりです。
当社グループのAC(オートモーティブコンポーネンツ)事業・HC(ハイドロリックコンポーネンツ)事業の主要製品は自動車、建設機械および産業車両メーカー等(以下、お客様といいます)へ供給する組付用部品であり、世界的な自動車生産台数や建設機械生産台数に大きく左右されます。当社は世界的な供給体制を構築しておりますが、各市場における景気悪化による自動車ならびに建設機械需要の減退等により、この部門の収益性に大きな影響を与えます。また、ロシアのウクライナ侵攻や中東情勢緊迫化を始めとする地政学リスクの高まりに加え、米大統領選挙の結果は世界の構図に影響を及ぼすことも想定され、国際関係の変化が増しております。それを受け、製品や主要部材の供給遅延や制限に伴うお客様の生産調整や生産稼働停止が発生するだけでなく、該当地域での生産・販売活動停止や事業撤退により当社の事業継続が困難となり、収益性や生産活動に大きな影響を与える可能性があります。
2022年に撤退を表明した航空機器事業については、お客様等との調整を進め、ご迷惑をおかけすることの無いよう管理に努めておりますが、その中でも予見しきれない費用や損失が発生した場合、経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。特装車両事業の製品は、国内を中心に展開しております。特にコンクリートミキサ車を主力とする特装車両は、景気の先行きと相関の深い建設工事の増減により需要が変動する可能性があります。
当社グループでは、グローバルで情報収集・分析を行い、状況に応じた対応をしております。
品質に関しては、自動車では操縦安定性を支えるショックアブソーバや操舵力を補助するパワーステアリング等の重要な部品を供給しており、建設機械・産業車両等では母機を駆動させるシリンダ、モータ等の主要な機能部品を供給しております。また、特装車両事業部ではコンクリートミキサ車などの特装車両をお客様へ納入しております。仮に当社グループが供給した製品に品質不良が発生した場合、その損害賠償をお客様から求められる等で多額の費用が発生する可能性があります。当社グループでは、品質経営を基盤に品質管理体制強化など品質向上を継続して追求し、品質不良発生の未然防止に努めております。また、グループ全体での不正防止活動への取組やコンプライアンス教育を通じ、問題が発生した際には対応が迅速且つ確実に行われるよう体制を整備しています。
価格に関しては、国内・海外市場共に熾烈な価格競争にさらされており、お客様からのコスト低減、価格引下げ要請が常に存在します。当社グループでは、高品質・高付加価値製品を提供することによる競合優位を目指すと共に、生産性向上などを通じた継続的な原価低減によるコスト競争力向上に努めております。
当社グループは、原材料、構成部品等を多数の取引先から購入しておりますが、調達する原材料等は国際商品市況や為替等の影響を大きく受けます。複数購買の実施や購買機能の集約等による原価低減を図っておりますが、原材料等の価格上昇を当社の販売価格に十分に反映出来ない場合、あるいは、販売価格引下げを原材料および構成部品価格に十分に反映出来ない場合、経営成績に大きな影響を与える可能性があります。
当社グループは、主に国内外の金融機関等より設備資金ならびに運転資金の調達を実施しております。金融市場の動向には十分留意しておりますが、全般的な市況および景気の後退、金融収縮、当社グループの信用力の低下等の要因により、当社グループが望む条件で適時に資金調達できない可能性もあります。その結果、当社グループの財政状況や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、海外売上高が58.5%と海外市場に大きく依存しているため日本からの輸出はもとより在外関係会社の経営成績等も為替の影響を大きく受けます。このような為替変動リスクに対してはグローバルな生産拠点の配置や為替予約等によりリスクの軽減を図っておりますが、想定を超えた為替相場の変動は、当社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは有利子負債を有しており、固定金利での調達により金利変動リスクの軽減に努めておりますが、日本および海外における将来の金利上昇は、経営成績に大きな影響を与える可能性があります。
当社グループは、自動車、トラック並びに建設機械メーカー各社様や系列販売会社様をはじめ多くのお客様と取引を行っております。取引先の予期せぬ信用リスクにより、経営成績に影響を与える可能性があります。当社グループでは、取引先の信用リスクについては細心の注意を払い、与信管理や取引先との関係強化等を通じてリスク管理を行っています。
当社グループを相手とした訴訟が起こされ、当社の主張と相違する結果となった場合には、その請求内容等によっては、当社グループの経営成績に多大な影響を及ぼす可能性があります。国内外の弁護士と連携し、事案の内容に応じて適切に対応しております。
当社及び当社の子会社であったカヤバシステムマシナリー株式会社(当該子会社は2021年7月1日をもって当社を存続会社とした吸収合併により解散しております)は、建築物用の免震・制振部材としてオイルダンパーを製造・販売してまいりましたが、その一部について、性能検査記録データの書き換え行為により、大臣認定の性能評価基準(※)に適合していない、または、お客様の基準値を外れた製品を建築物に取り付けていた事実(以下、「本件」といいます。)が判明し、国土交通省に報告を行うとともに、対応状況について、2018年10月16日に公表いたしました。(※)制振用オイルダンパーについては、大臣認定制度はありません。
本問題に関する再発防止策および対応については、以下の当社ホームページ上で公表しておりますのでご参照ください。
なお、2022年3月末時点で、再発防止策の具体策全67項目の内、全項目を「完了」しており、引き続きその維持・定着の取り組みを継続しております。
再発防止策の進捗状況:https://www.kyb.co.jp/company/progress/prevent.html
対応の進捗状況:https://www.kyb.co.jp/company/progress/exchange_progress.html
本件に関し、現時点において収集可能な情報、及びその情報が合理的な事実に基づくものであると判断された免震・制振用オイルダンパーの交換工事に要する費用及び営業補償等について、製品保証引当金を計上しております。
なお、本件に関連して訴訟を提起されている案件もありますが、一部案件においては追加費用の発生なく終了し、またその他案件の訴訟手続きも進んでおり、現時点においては経済的便益の流出の可能性は低下していると判断しております。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
(百万円未満四捨五入)
当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症による経済活動制限の緩和が進み、景気回復の動きが見られましたが、一方で、中東地域を含めた地政学リスクの高まりによる不安定な世界情勢やエネルギー資源の高騰、インフレ加速に対する各国の金融引締め政策といった景気減速のリスクは依然として残されています。
こうした中、わが国経済は、海外からの入国者増加や政府による賃上げ方針といった景気循環の下地があるものの、円安基調による物価高の長期化が需要抑制要因となって個人消費は足踏み状態であり、構造的な人手不足問題や中国経済の減速等により、不確実性が高まる中で先行きの見通しづらい経営環境が続いています。
当社グループの事業に関する市場におきましては、自動車関連で需要の持ち直しがみられたものの、建設機械関連では中国市場を中心に需要が大きく減速したことや二輪需要の変動、米国や中米・欧州での生産性の悪化等により、当連結会計年度は前年比で厳しい経営環境となりました。
このような環境のもと、当社グループの売上高は4,428億円と、前連結会計年度に比べ116億円の増収となりましたが、営業利益につきましては224億円(前連結会計年度営業利益325億円)、税引前利益は214億円(前連結会計年度税引前利益318億円)となりました。また、親会社の所有者に帰属する当期利益は158億円(前連結会計年度親会社の所有者に帰属する当期利益272億円)となりました。
(建築物用免震・制振用オイルダンパーの検査工程等における不適切行為の影響について)
2019年3月期において、当社及び当社の子会社であったカヤバシステムマシナリー株式会社(当該子会社は2021年7月1日をもって当社を存続会社とした吸収合併により解散しております)にて、製造・販売してきた免震・制振用オイルダンパーの一部について、性能検査記録データの書き換え行為により、大臣認定の性能評価基準(※)に適合していない、または、お客様の基準値を外れた製品(以下、「不適合品」といいます。)を建築物に取り付けていた事実が判明いたしました。
(※)制振用オイルダンパーについては、大臣認定制度はありません。
当連結会計年度においては、2024年3月31日時点で交換が未完了の不適合品及び性能不明品(性能検査記録のデータ書き換え有無が確認できないもの)の全数(免震用オイルダンパー55本、制振用オイルダンパー344本の合計399本)を対象として、交換用免震・制振用オイルダンパーの交換工事に要する費用及び営業補償等を製品保証引当金に計上しており、当該製品保証引当金の当連結会計年度末の残高は29億円であります。
セグメント別の業績は次のとおりです。
なお、当社グループ再編に伴いセグメント管理区分の見直しを行った結果、従来「その他」に含まれていたその他製品の一部を「AC事業」に含めて開示しております。このため、以下の前連結会計年度比較については、前連結会計年度の数値を変更後の報告セグメントの区分に組み替えた数値で比較しております。
当セグメントは、四輪車用油圧緩衝器、二輪車用油圧緩衝器、四輪車用油圧機器とその他製品から構成されております。四輪車用油圧緩衝器は、中国市場における需要は減少したものの、北米や欧州における半導体不足からの回復によるOEM製品の生産増、円安による為替影響等により、売上高は2,149億円と前連結会計年度に比べ6.3%の増収となりました。二輪車用油圧緩衝器は、東南アジアや中国での需要減少により、売上高は413億円と前連結会計年度に比べ10.0%の減収となりました。
以上の結果、当セグメントの売上高は2,930億円と前連結会計年度に比べ4.8%の増収となったものの、北米や欧州での生産性悪化のためセグメント利益は165億円と前連結会計年度に比べ23億円の減益となりました。
当セグメントは、産業用油圧機器、システム製品、その他製品から構成されております。建設機械向けを主とする産業用油圧機器は、主要な市場である中国での需要減少の影響を大きく受け、売上高は1,245億円と前連結会計年度に比べ4.4%の減収となりました。
以上の結果、当セグメントの売上高は1,344億円と前連結会計年度に比べ2.5%の減収となり、セグメント利益は54億円と前連結会計年度に比べ21億円の減益となりました。
(c) 航空機器事業
当セグメントは、航空機器用油圧機器から構成されております。北米における一部製品の生産終了等により、売上高は39億円と前連結会計年度に比べ11.5%の減収となり、セグメント損失は20億円と前連結会計年度に比べ6億円の減益となりました。
当セグメントは、特装車両等から構成されております。コンクリートミキサ車を主とする特装車両において、半導体不足等の影響緩和により、国内得意先の需要が回復傾向にあることから、当セグメントの売上高は114億円と前連結会計年度に比べ23.7%の増収となり、セグメント利益は11億円と前連結会計年度に比べ5億円の増益となりました。
(百万円未満四捨五入)
流動資産は、現金及び現金同等物、営業債権及びその他の債権の増加等により40億円増加しました。また、非流動資産につきましては、持分法で会計処理されている投資及びその他の非流動資産の増加等により257億円増加しました。この結果、総資産は297億円増加し、4,765億円となりました。
負債につきましては、社債及び借入金が増加したものの、その他の金融負債が減少したことにより、負債総額は57億円減少し、2,501億円となりました。
資本は、当期利益に伴う利益剰余金の増加、為替影響によるその他の資本の構成要素の増加により、354億円増加し、2,264億円となりました。
親会社所有者帰属持分比率は、資本が増加したことから45.6%と前連結会計年度末に比べ4.7ポイント好転しました。
② キャッシュ・フローの状況
(百万円未満四捨五入)
当連結会計年度のキャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合わせて164億円の資金流入、また財務活動によるキャッシュ・フローは150億円の資金流出となり、為替換算により17億円増加した結果、現金及び現金同等物は前連結会計年度末比31億円増加し、466億円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により当連結会計年度は399億円の資金流入(前連結会計年度比159億円の増加)となりました。これは主に税引前利益214億円、減価償却費及び償却費189億円によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により使用した資金は235億円(前連結会計年度比100億円の支出増加)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出246億円によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により流出した資金は150億円(前連結会計年度は202億円の支出)となりました。主な流出は、長期借入金の返済による支出113億円や配当金の支払額68億円です。
当連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.金額は、販売価格によっております。
四輪車用・二輪車用油圧緩衝器およびパワーステアリング製品を主とするAC(オートモーティブコンポーネンツ)事業、建設機械向け産業用油圧機器およびシステム製品を主とするHC(ハイドロリックコンポーネンツ)事業は、見込み生産を行っております。航空機器用離着陸装置、同操舵装置等を主とする航空機器事業についても、一部製品においても正式受注が納期間際であることから、その殆どが内示に基づく見込み生産となっております。
特装車両事業及びその他についても、同様にその殆どが内示に基づく見込み生産となっております。従って、受注高および受注残高を算出することは困難であることから、記載を省略しております。
当連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合
(注)上記金額には、当該顧客と同一の企業集団に属する顧客に対する販売実績を含めております。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、連結財務諸表規則第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。
なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要性がある会計方針及び見積りは、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記事項 3.重要性がある会計方針 4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載のとおりであります。
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、中国経済の落ち込みによる減収があったものの、インフレコスト回収と為替円安効果により、売上高は前連結会計年度比2.7%増加の4,428億円となりました。一方、米国やメキシコでの生産性悪化によるコスト増、市販製品の販売減少に伴う製品構成の変化、及び中国や欧州市場低迷に伴う建設機械向け製品の販売数量減少により、セグメント利益は前連結会計年度比17.8%減少の210億円、営業利益は前連結会計年度比31.1%減少の224億円と、いずれも減益となりました。
セグメントごとの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は「(1) 経営成績等の状況の概要」に記載のとおりです。また、当社グループの経営成績等に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3.事業等のリスク」に記載のとおりであります。
当社グループは、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を可能とする経営基盤を築くことを目標に 2023中期経営計画を策定しております。当社グループは幅広い製品群の事業を展開しており、各事業及びその製品群のポートフォリオ評価や計画に対する進捗や見通しを把握するため、売上高、セグメント利益及びセグメント利益率の分析を重視しております。中期経営計画の数値目標については「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。
2023中期経営計画の初年度にあたる2024年3月期では、売上高4,500億円、セグメント利益280億円、セグメント利益率6.2%を目標に掲げて活動を進めてまいりました。しかしながら、当連結会計年度の経営成績は、それぞれ売上高4,428億円、セグメント利益210億円(セグメント利益率4.7%)と、中国・欧州市場低迷に伴う建設機械向け製品の販売数量減や米国・メキシコの生産性悪化によるコスト増の要因等により目標に対し未達の結果となりました。
2023中期経営計画では、「品質経営を極める」をスローガンに掲げ、顧客価値創造を目指した人財・情報・仕事の質を高めることで製品・サービスの質を向上させる活動を進めております。当社を支える2大コア事業であるAC(オートモーティブコンポーネンツ)事業とHC(ハイドロリックコンポーネンツ)事業の2023年度の基本方針及び進捗、2023中期経営計画の2年目にあたる2024年度の方針は以下のとおりです。
AC事業は、2023年度は「新しい挑戦を!」をスローガンに、母機の電動化・自動化のトレンドに対し、新商品・改良商品の開発を促進するとともに、新領域への進出を図り、収益力向上だけでなく全てのステークホルダーのニーズを満たす活動に取り組んでまいりました。2023年度ではVWグループ向け電子制御サスペンションやHero MotoCorp向け倒立フロントフォークの納入を開始し、高い付加価値を提供してまいりました。また、環境に優しいショックアブソーバー用環境作動油である「サステナルブ」を開発し、ラリー選手権参戦車両へも投入しました。当年度も引き続き、高付加価値製品の拡充と市場投入、新市場進出や新興メーカーへの参入、そして電動化への取組みを進めて事業の地盤固めと更なる飛躍を目指します。
HC事業は、2023中期経営計画では「“ゆるぎない信頼”をベースにした成長への再スタート」をスローガンに、ボリュームゾーンである既存ビジネスと次期主力商品となる新たなビジネスを両輪にして活動を進めてまいりました。その中で2023年度は、将来の事業化を見据え、当社の油圧技術の強みとセンサ技術を活かした油漏れ検知センサや油状態診断システムを開発いたしました。当年度、既存ビジネスでは価格・品質・供給の各分野で市場におけるプレゼンスを示すことで、収益性とシェアの確保に取り組んでまいります。加えて、新たなビジネスでは環境・性能・情報の各分野で既存製品にない付加価値の創造につながる製品・サービスの市場投入を意識した体制構築を加速してまいります。
この他、航空機器事業については、2018年度に判明いたしました防衛装備品の不適切事項からお客様からの信頼を取り戻すべく、コンプライアンス強化のもと、生産のしくみ改善に継続して取り組んでおります。
特装車両事業については、ドラム軽量化による積載量の増加、生コン打設作業時の安全対策、使い勝手の向上など、お客様のニーズを反映させた高付加価値製品の市場投入に向け、開発を進めてまいります。またトラックEV化に向けた製品仕様や脱炭素社会に貢献できる新製品及び他事業との連携による次世代製品の研究開発を推進し、特装事業の基盤強化を戦略として取り組んでおります。加えて、新たな収益基盤として、これまで培った技術・経験を投入しキャンピングカーの事業化に向けた取り組みを進めてまいります。
また、当社グループの資金需要、資本の財源及び資金の流動性については以下のとおりです。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、鋼材等の原材料の購入費用のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、主に設備投資によるものであります。
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、社債の発行および金融機関からの長期借入を基本としております。本連結会計年度におきましては、設備投資等のためDBJ-対話型サステナビリティ・リンク・ローン及びMizuho Eco Financeの借入契約の締結により総額70億円の借入を実行いたしました。当連結会計年度末における借入金及びリース負債を含む有利子負債の残高は1,015億円となっております。
また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は466億円となっております。
該当事項はありません。
当社では、モノづくりを通して豊かな社会づくりに貢献する信頼のブランドを確立していくため、2023年度よりスタートした2023中期経営計画の「品質経営を極める」をスローガンとして、カヤバグループ一丸となり研究開発活動を今後も精力的に推進してまいります。
現行製品の性能向上はもとより、高機能化やシステム化への対応及び軽量化や省エネルギー、CO2削減への貢献、環境負荷物質削減などを通して世界中の至る所で地域の人々の暮らしを支え、安心・安全・快適さを提供するための新製品開発と革新的なモノづくりに挑戦し続けています。また、グローバル化の加速に伴い、国際感覚を身につけた人財の育成やマネジメントシステムの構築も進め、グローバル生産・販売・技術の一体活動でイノベーションを起こすことによってカヤバグループの新しい価値を創造し、企業価値の向上に繋げ、技術の持続的成長を目指します。
当社では、基盤技術研究所と生産技術研究所を中核として、独創性に優れた先行技術の研究開発を行っています。
研究所では基礎研究や要素技術開発を、各事業の技術部門は新製品及び性能向上や低コスト化など商品力向上のための開発を担うとともに、全社を横断して研究所と各事業技術部門が一体となったプロジェクト活動も推進しています。また、研究開発からモノづくりまでを無駄なく連続的に、スムーズかつタイムリーに実施していくために、長期的な環境変化とそれに伴う社会ニーズや顧客ニーズの調査、分析、予測に基づいた将来技術のあるべき姿とそこに向けた持続的成長戦略を、ロードマップとして明確に定め、活動を進めています。また、欧州技術者駐在員事務所(欧州テクニカルセンターと同敷地内)を活用し、自動車、油圧機器を問わず、欧州地区をはじめとする世界の最先端情報を収集し、技術トレンドの把握と社内の研究開発テーマへのブレークダウンを行っています。
工機センターでは、先進性に溢れた信頼性の高い設備や金型の内製化に取り組んでおり、生産技術研究所で開発された新しい工法や各工場で培われたノウハウの具現化を推進しています。各部門でAIやIoTなどのデジタル技術の全社的活用・推進を行っています。
一方で、従来からの研究開発及び製品化に向けた体制に加え、新しい時代に対応するための取組みも進めております。
まず、持続的成長のための商品開発として、EV化や自動化に対応すべく当社のコア技術である振動制御・パワー制御と電子制御、センサ、電動機・インバータ等の技術を高度に融合させ、EV、建機、産業用車両の安全・快適性能の追求、エネルギー消費低減、自動運転へ貢献する製品の開発を進めております。2023年には基盤技術研究所に電動化ユニット先行開発室を設置し、電動化対応製品の開発加速を図っております。また収益力強化としてShip’30活動としてデジタル技術を軸にしたカヤバ生産方式の追究と進化による次世代革新工場を目指し、生産工程・設備管理革新のためのデジタル技術やAI技術の研究開発も進めております。
製品開発や新サービスの展開、生産工程・設備管理革新により、今まで以上にお客様に安心してお使いいただける製品のご提供を目指していきます。
当社グループの関係会社は、主に自動車機器・油圧機器・電子機器の製造販売及び製品の改良開発を行っています。そして、課題の解決にあたっては、当社の研究所をはじめとする機能部門や、各事業の技術・生産・品質部門が支援、協業する体制をとっています。
製品の高機能化やシステム化におきましては、当社独自の取組みは勿論のこと、お客様あるいは関連機器サプライヤーとの共同研究開発を推進するとともに、効率的な研究開発推進のために産学交流による最先端技術開発にも積極的に取り組んでいます。また、昨今、製品機能の高度化・複雑化に対応すると共に、開発効率の向上を図るため、全社的にモデルベース開発(MBD)の推進に取り組んでいます。これにより、開発期間の短縮と共にお客様からのニーズに素早く対応し、ご高評をいただけるように努めていきます。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発活動の金額は
四輪車用の油圧緩衝器では、比例ソレノイド(連結子会社である株式会社タカコと共同開発による内製)を搭載した電子制御減衰力調整式ショックアブソーバがトヨタ自動車株式会社様のクラウンスポーツ、クラウンセダン、クラウンエステート及びセンチュリー(SUV)に採用されました。オイルシールを低摩擦化することで、より上質で滑らかな走りと圧倒的な乗心地の良さを実現した本製品は、電動化・自動運転化が進む将来において益々の採用拡大が見込まれます。また、極微低速域における作動時の摩擦力をコントロールしたProsmooth®(プロスムース)を進化させた技術がトヨタ自動車株式会社様のカローラアクティブスポーツに採用されました。ピストン外周バンドに更に改良を加えることで、走りの楽しさと乗心地の良さを同時に追求した車両運動性能の実現に大きく寄与し、大変ご好評を頂いております。極微低速域における作動時の油圧力をコントロールしたSwing Valveを含め、今後多くの自動車メーカーへこれらの付加価値製品の採用拡大を図ってまいります。一方、環境に配慮した取り組みとして、業界初の生分解性を有する作動油SustainaLub®(サステナルブ®)を開発しました。スーパー耐久レース(トヨタ自動車株式会社様:水素カローラ)、全日本ラリー(カヤバラリーチーム)といった様々なモータースポーツでの試用を開始し、過酷な状況下で好成績に繋げるなど高い信頼性を実現しています。今後も更なる技術提案及び新製品展開を進め、持続可能なモビリティ社会への貢献を果たしてまいります。
欧州テクニカルセンターでは、電子制御減衰力調整式ショックアブソーバを制御ソフト含め、システムで開発しています。さらなる性能向上として、2つの減衰力可変機構を持つショックアブソーバの開発を行い、量産を開始しました。本製品は、伸び側と縮み側の減衰力を独立に、高速かつ精密な応答で調整可能となっており、お客様に対して、路面状況や好みに合わせて車両挙動を常に最適にコントロールすることで、安全でダイナミックな操縦性とかつてない乗り心地実現に貢献します。これらの製品を中心とした高付加価値製品の開発を継続し、カヤバグループの一員として、各欧州顧客へのアプローチを推進し、今後さらに高まる電動化・自動運転化に対する要求への対応を進めていきます。
二輪車用の油圧緩衝器では、電動モーターサイクル用に当社製リアクッションが採用されました。海外のお客様ではインドの現地顧客向けに当社製倒立型フロントフォークが初採用されました。小型倒立フロントフォークのネックである底付き性能を大幅改善した小径サイズのHCS(Hydraulic Compression Stop)を開発し、ヨーロッパメーカーのEV車両に初採用されました。またハイエンドアドベンチャーモデルに当社製気液分離型フロントフォーク及びリアクッションが採用されました。国内の二輪車レースシーンにおいては、全日本ロードレース選手権(JSB1000)及び全日本モトクロス選手権IA1クラスにおいて(いずれも最上級カテゴリー)、当社製のフロントフォークとリアクッションを装着した選手がいずれも総合優勝を収めました。今後も様々な製品開発を行い、多岐にわたって高い技術力をお届けします。
四輪車用電動パワーステアリング機器では、連結子会社である長岡カヤバ株式会社で生産するコントローラ一体型モータ(PowerPack)をベースに、要求が高まる自動運転やステアバイワイヤに対応可能なステアリングアクチュエータを開発しております。機能失陥後も作動が継続可能な冗長機能を有した次世代PowerPackを採用し、2024年後半より量産開始の予定です。また、将来のステアバイワイヤシステム提供を目指した自動車メーカーとの先行開発も進めています。
四輪用オイルポンプ製品では、これまでのトランスミッション用製品で培った高圧領域で静粛性や効率に優れるベーン式に加え、低圧領域での商品性の高い内接ギヤ式をポンプ部分のラインナップに加え、モータと組合せた電動オイルポンプを開発し、お客様へ試作品提供を始めました。需要が増えているeAxleやバッテリーなどEV基幹部品へ幅広く供給することを目指し、展示会への出展など幅広く開発・受注活動を推進して参ります。
鉄道車両用製品では、2024年3月に金沢-敦賀間の延伸開業となった北陸新幹線にセミアクティブサスペンションシステムが採用されております。また、在来線車両への普及を狙った電子制御サスペンションDTeeS®を開発中で、鉄道車両の乗り心地向上に貢献できるよう取り組んでおります。
また当事業ではモータースポーツへの取り組みを通し、常に新しい挑戦とチーム力育成(人財育成)を行っております。2023年には、全日本ラリー選手権へカヤバ社員チームでの参戦を開始し、好成績(最高位2位)を獲得。実践を通じたフィードバック開発により、カヤバサスペンション装着チームが、見事シリーズチャンピオンを獲得しております。2024年は更にステップアップ、社員ドライバーでの参戦とし、全日本ラリー選手権の最高峰クラスに挑戦しております。実践で得た技術ノウハウをフィードバックし、新たに新商品開発を推進してまいります。
電動化・自動運転の拡大や様々な情報流通インフラ整備を踏まえ、自社製品の作動状況(情報)を活用する道路モニタリングシステムの開発も進めており、電子制御を始めとしたシステム製品を応用することでCASE/MaaSに向けた新用途・新商品開発を推進しています。
当セグメントにおける研究開発費の金額は
② HC(ハイドロリックコンポーネンツ)事業
HC事業では、コア製品である油圧ポンプ、バルブ、シリンダ、モータのラインナップ拡充や省エネ性能向上、コスト低減といった競争力向上に向けた開発と併行し、自動化・遠隔操作・電動化・IoT化等の将来ニーズに対応する電子制御化、省エネシステム、センシング技術、電動ユニット等の新たな付加価値創造に向けた開発を進めています。中・大型建設機械用では、従来の性能・品質を維持しながらチューブ肉厚を20%薄肉化した油圧シリンダを開発、量産化しました。使用素材を低減することでSDGsなどの環境ニーズへの適応力を高めた商品として、すでに建機メーカー各社でご採用頂いています。ショベル向けでは、2022年度にミニショベル用で量産開始した、「電子制御コントロールバルブ(バルブの操作信号を油圧から電気信号へ変更)」のラインナップ拡大を順調に進めています。オペレータの操作要求に対して高い応答性・安定性を提供することで、母機の自動化対応、操作性・作業効率の向上に貢献します。ミニショベル向けでは、現行品(PSVL-42)に対し大幅な小型化、低コスト化、また最大押しのけ容積と最高使用圧力をUPした3~4tクラス向けロードセンシングシステム用ポンプ「PSVL-50」の開発を完了し、性能向上と環境ニーズを両立した商品として2024年に量産開始予定です。IoTを活用したシステム製品としては、「油状態診断システム」の開発を継続しています。建設機械や工場設備で使用される油圧機器の作動油状態をカヤバ独自の油状態センサでリアルタイムに検知しクラウド上で分析、作動油・機器の劣化異常を診断し、保守・交換の時期を適切なタイミングで提案します。2026年のサービス開始を目指し、市場での更なる評価を進め「モノ+コト売り」のシステム製品として、機械停止ロスの未然防止、廃油量削減、メンテナンス最適化への貢献を目指します。
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航空機器事業は、事業ポートフォリオの全面的な再検討の結果、経営資源の選択と集中による企業競争力強化を図るべく、2022年2月9日に事業の撤退を公表いたしました。その後、航空機器に関わる製品開発ならびに修理を含めたすべての製販活動を段階的に終了させていきます。
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④ 特装車両事業及びその他
環境性能や安全性向上などの社会ニーズにこたえるコンクリートミキサ車の開発を進めております。
また、ミキサ車業界以外の新規分野へも進出するための製品開発に取り組んでおります。レジャー分野へ進出する第一弾として欧州車両メーカーのバンをベースに、カヤバの架装技術・油圧技術・サスペンション技術などを取り入れ、これまでにない快適性と走行性を追求したキャンピングカーを開発しています。
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