第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)経営方針

 当社グループは新たに中長期経営計画を策定・推進するにあたり、経営理念・行動指針についても時代の流れにあったものに見直しするとともに、合言葉を制定することで浸透を促進させ、全社員が一丸となって計画達成を目指します。

<経営理念体系と内容>

 社 是 :よい品をより安くより速く

 経営理念:「信頼される企業」、「挑戦し続ける企業」であることで「社会に選ばれる企業」になれ

 合言葉 :Trust & Challenge (信頼と挑戦)

 行動指針:「Trust」

       ・相互の関係を理解し相手の身になって考える

       ・他責ではなく自責で行動する

       ・感謝の気持ちを常に忘れない

 

      「Challenge」

       ・失敗を恐れず、困難を厭わず、高い目標に向かって挑戦する勇気を持ち続ける

       ※信頼関係を構築した上で新しいことに挑戦する(ひとりの力では成し得ない大きな成長のために)

(2)経営戦略等

 経営理念の下、以下のとおり中長期経営計画を策定し達成施策を確実に実行してまいります。

 持続的成長に向けた事業の変革

  ・量から質への転換(収益重視)

  ・新たな事業基盤の創出(連結)

  ・企業文化の進化(安心、安全、快適な製品づくり、経営基盤の強化)

 

(3)経営環境並びに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 今後の当社グループを取り巻く環境につきましては、長期化するインフレや米中間の輸出規制を始めとした貿易規制等の影響による景気減速の動きがみられます。自動車業界におきましては、中国における電動車市場の急成長と中国ローカルメーカーの台頭により、日本車の販売が低迷しており、タイでは金融機関のローン審査の厳格化により、国内新車販売台数が減少している状況にあります。また、日本では相次ぐ品質不正により生産にも影響が生じており、日本車の信頼回復が急務となっております。

 このような経営環境の中、当社グループにおきましては、2024年度は「中長期経営計画2029」フェーズ2(2024~2026年度)がスタートします。『新しい今仙の挑戦(Challenge by New IMASEN)』をテーマとして、フェーズ3での3本足の事業確立に向けて確実な足場固めを行ってまいります。

 シート・電装事業は、「量から質への転換」として引き続きテイ・エス テック株式会社とのシナジー創出活動の効果追求を行うとともに、積極的な営業活動による新規案件発掘を推進し、あわせて加工技術の進化と現調化で更なる競争力アップを図り、製造収益基盤の再構築を目指します。

 電子事業では、マツダ株式会社との合弁会社で進めているインバータ開発を確実にスケジュール通り製品化するべく開発人員を増強してまいります。製造領域においては高稼働率のマルチライン(自動化・汎用化)の実現に向けた技術開発を行い、収益性の高い製品開発を展開します。

 また新たな事業基盤創出の取り組みとしては、これまで培った歩行測定・診断の知見に基づき、ヘルスケア市場への製品・サービスの提供に向け、新たなビジネスモデルを構築すべく事業の立ち上げを推進いたします。

 これらの取り組みを成功させるためにも、足元の厳しい事業環境からのスピード感を持った建て直しを図るとともに、資本業務提携先であるテイ・エス テック株式会社にて経営手腕を発揮された長谷川健一氏を代表取締役社長として迎えるなど役員及び組織体制の見直しを行い、シート事業の将来に向けた事業成長と企業価値向上を目指してまいります。また、品質重視の環境を整備するべく、品質管理体制の強化、見直しなどにより、グローバル全体で製品の品質向上に取り組みます。引き続き、ESG経営の推進・強化を基軸とし、人材活用戦略、後任の育成の推進、2022年よりスタートしたDXプロジェクトの推進を行い、レジリエンスを高め盤石な経営基盤を構築してまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

 中長期経営計画(2021年〜2029年)においてESG経営を推進し経営基盤の強化を図ることを目指しており、ISP2030(IMASEN Sustainable Plan 2030)を掲げてサステナビリティ活動を推進しています。SDGsをはじめとした様々な社会課題や当社特有の課題の中から重要課題(マテリアリティ)を特定し、経営に取り込むことでサステナブルな社会への貢献と事業の持続的成長に努めています。

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 また、組織のガバナンスとして、会社全体におけるリスクについて審議・決定するリスクマネジメント委員会に加えて、サステナビリティ活動を推進するための専門委員会である『ISP2030委員会』を設置しています。この委員会は原則として年に3回開催され、社長が委員長を務め、常勤取締役が委員として構成されており、気候関連をはじめとするサステナビリティに関するリスク及び機会について審議します。委員会で審議された内容は取締役会に報告されることで、経営陣が監督する体制としています。

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(2)戦略

①気候変動

 気候変動の顕在化は、当社グループの事業展開のリスクとなると同時に脱炭素社会に対応する新たな事業を創出し、社会へ貢献する機会にもなります。気候変動への対応を検討するに当たり、当社グループの主要事業である自動車関連事業について、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)や国際エネルギー機関(IEA)などのシナリオを考慮し、リスクと機会を特定しました。具体的には、2℃以下シナリオでの低炭素社会への移行におけるリスク・機会と4℃シナリオでの気候変動による物理的リスクを抽出し、それぞれについての対応を定めております。

 

 ・2℃以下シナリオ・・・持続可能な発展の下で気温上昇を2℃未満に抑えるシナリオ

 ・4℃シナリオ  ・・・化石燃料依存型の発展の下で気候政策を導入しない最大排出量シナリオ

 

2030年を想定したリスクと機会の抽出及び当社の対応

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②人的資本

 当社グループは、異なる経験・技能・属性を反映した多様な視点や価値観が存在することは会社の持続的な成長を確保する上での強みとなり得るとの認識に立ち、社内における多様性の確保を推進しており、性別や国籍等の属性に関係なくその能力、識見、人格等を公正に評価するとともに、働きやすい環境作りに努める方針としております。

 

(3)リスク管理

 ESG経営を基盤とした事業運営により、社会課題の解決に貢献できるよう活動しております。サステナビリティに関連する事項については、サステナビリティの専門委員会であるISP2030委員会においてリスク・機会の特定や活動の進捗を審議します。また、リスクマネジメント委員会では事業活動全体に関わる事項の審議・決定を行うとともに、主要リスクの対策内容や進捗状況のチェックなどを実施します。こうした委員会活動やグループ各社、各部門における統制によってリスク管理を行っています。

 

 

(4)指標及び目標

 ISP2030で掲げたありたい姿を達成するため、目標値を設定して活動しています。

 

①気候変動

 気候変動への対応については、2050年でのカーボンニュートラル達成を目指しており、中長期経営計画に沿ってフェーズ1(2021年〜2023年)、フェーズ2(2024年〜2026年)、フェーズ3(2027年〜2029年)におけるマイルストーンを設定し、2030年までにCO2排出量50%削減を達成する目標としています。

 

CO2排出量削減目標(2013年度比 スコープ1、2)

CO2排出量削減

-目標-

フェーズ1 2023

フェーズ2 2026

フェーズ3 2029

10%

20%

50%

 

CO2排出量削減実績(2013年度比 スコープ1、2)

CO2排出量削減率実績

実績(当事業年度)

-17.2%

 

②人的資本

 人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。なお、当社においては、関連する指標のデータとともに、具体的な取り組みが行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われていないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の指標に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。

 

提出会社における指標と目標

指標

目標

実績(当事業年度)

管理職に占める女性労働者の割合

2026年3月31日時点

3.0

2.4

男性労働者の育児休業取得率

2030年12月31日時点

85.0

75.0

労働者の男女の賃金の差異

2026年3月31日時点

75.7

正 規  70.7

 

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 経済状況の変化について

 欧州、中東における地政学的なリスクの高まりは、当社グループが製品を製造・販売している国や地域の経済情勢の変動を招いているとともに、石油・天然ガスなどの資源価格の高騰や、金融市場にも大きな影響を与えています。加えて、SDGsやTCFDなど、人権や環境に対する社会的な意識の高まりや、自動車業界における、電動車市場の急成長などは、今後の経済動向に大きな変化をもたらすとみられ、当社グループの経営成績、財政状態も影響を受ける可能性があります。

 当社グループは、SDGsについては、今仙のサスティナビリティ活動施策である「ISP(Imasen Sustainable Plan)2030 ‐地球とIMASENを持続可能にする‐」を策定し、21年度から推進・展開するとともに、気候関連問題も重要な社会課題のひとつとして認識しており、2023年3月にTCFD提言に賛同を表明しております。加えて、電動車市場への対応では、完成車メーカーとの協業体制により、電動駆動ユニットの開発・生産に関する取り組みを行っております。また、欧州、中東における地政学的なリスクについては、そのリスクによって引き起こされる資源価格の高騰、金融市場の混乱、物流の混乱等について、影響度合いを注視しながら、個別に対応を検討してまいります。

 

(2) 為替レートの変動について

 当社グループの主要基盤である自動車部品関連事業については、引き続き海外売上高が一定の比率を占めるものと予想されます。他国の通貨に対する日本円の為替レートの変動は、販売価格面での競争力に影響を及ぼし、延いては経営成績に大きな影響を与える可能性があります。

 また、当社の外貨建取引による外貨換算額及び連結財務諸表作成に用いる海外グループ会社の財務諸表は、決済、換算時の為替レートにより円換算の価値に影響を与えることから、当社グループの経営成績、財政状態が影響を受ける可能性があります。

 当社グループは、為替変動に対しては社内基準に基づき為替予約を実施するとともに、外貨建取引については、その影響を抑えるべく、地産地消に向けた現地調達、現地生産の検討、実施を進めております。

(3) 特定得意先への依存について

 当社グループは自動車部品関連事業を主たる事業とし、グループ総売上高に占める当該事業の売上高の割合は、当連結会計年度において95.5%となっております。自動車部品関連事業の売上高のうち、本田技研工業㈱系列に対する売上高38.1%、㈱SUBARU系列に対する売上高17.9%、マツダ㈱系列に対する売上高15.1%、三菱自動車工業㈱系列に対する売上高7.9%、日産自動車㈱系列に対する売上高6.6%と高い割合になっており、各社の事業方針、経営施策、各社及び各社取引先における品質問題等が発生した場合の販売影響等により当社グループの経営成績が影響を受ける可能性があります。

 当社グループは、2021年度に開示した「中長期経営計画2029 - Trust & Challenge -」において、シート事業の事業基盤の強化を推進し収益重視の事業体質へと転換を図るとともに、電子事業の拡大、新事業の採算事業化に取り組むことにより、シート、電子、新事業の3事業のバランス化を推進し、特定得意先への依存リスクの軽減を図ります。

(4) 製品の不具合が生じた場合の責任について

 自動車部品関連事業において、当社グループが製造・販売した製品に何らかの不具合が生じた場合、得意先自動車メーカーが実施する改修費用のうち、責任割合に対応する負担が発生することとなり、当社グループの経営成績が影響を受ける可能性があります。

 当社グループは、法律上の損害賠償責任が発生した場合に備えて製造物賠償責任保険に加入しておりますが、この保険が最終的に負担する補償額を十分カバーできる保証はないことから、世界に通用する品質保証体制を確立し、お客様に満足いただける製品を提供することを目的として、自動車産業における世界共通の品質管理・保証規格であるIATF16949:2016の認証を取得しており、品質管理・品質保証体制を構築して、製品不具合リスクの軽減を図っております。また、品質重視の環境を整備するべく、品質管理体制の強化、見直しなどにより、グローバル全体で製品の品質向上に取り組みます。

(5) コンプライアンス違反について

 近年、モノ造り企業において品質に関連する不適切行為の報告が増加しております。当社グループにおいても、品質管理・保証規格であるIATF16949:2016の認証を取得し、品質保証体制を構築しておりますが、それだけでリスクを消し去るものではなく、ひとたびコンプライアンス違反が発生した場合は、当社グループの経営成績に影響を受けるばかりでなく、社会的信用も失墜する可能性があります。

 当社グループでは、コンプライアンス違反が発生しないよう、倫理綱領、行動規範の周知徹底や、コンプライアンス委員会からの啓発活動や、メールによる目安箱の設置など、風通しの良い企業風土の醸成に取り組んでおります。加えて、定期的な従業員満足度アンケートにより従業員の満足度、エンゲージメント数値を確認して、働きやすい職場を実現していくとともに、「信頼(Trust)と挑戦(Challenge)」を当社グループ経営理念の中心に据えて、当該リスクに対応するとともに、倫理、コンプライアンスを含む緊急事態発生に対するレポートラインを整備し、迅速な対応ができる体制整備に取り組んでおります。

(6) 原材料、部品の供給状況による影響について

 当社グループにて消費する原材料、部品の調達については、市況変化、資源エネルギーの供給不安による価格高騰の影響を受けており、当事業年度においても先行きが不透明にあります。今後、事態がさらに悪化した場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、日頃より原価低減活動に取り組むとともに、世界的な供給状況の混乱を受けて、調達先の複数化、在庫日数の延長や需給変動と調達期間のギャップ等、環境や調達先起因によるリスクを分析し、生産変動、供給維持に向けた対応を進めております。

 

(7) 自然災害、感染症等について

 当社グループの国内及び海外の生産拠点において、地震、洪水等の自然災害、感染症等が発生した場合、当社グループの操業に直接的又は間接的に影響を受ける可能性があります。

 当社グループは、災害、感染症拡大等の有事に備え、被害を最小限に抑え、事業の継続を図るべく、事業継続計画(BCP)を整備しその対応に努めるとともに、緊急事態発生に対するレポートラインを整備し、迅速な対応ができる体制整備に取り組んでおります。

(8) 固定資産の減損損失について

 当社グループが保有する有形固定資産、無形固定資産において、資産の価値が著しく下落した場合や事業の損失が継続するような場合には、固定資産の減損損失の計上により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、減損の兆候を捉えた場合、適時に減損損失額の把握を行い、業績及び財務状況に及ぼす影響を最小限とするよう、対応を行います。

(9) 情報漏洩、サイバー攻撃について

 当社グループが行う生産、販売活動及び各種事業活動は、ITシステム及びシステム間を繋ぐ通信ネットワークを利用しており、通信ネットワークにおける障害や、ランサムウェアに代表されるサイバー攻撃、ハードウェアの故障等のリスクに晒されており、その影響を受けた場合は、事業活動に支障が出る可能性があるとともに、社会的信頼を損ない、多額の費用負担が発生する可能性があります。

 当社グループでは、様々なITリスクへの対応と、変革するデジタル社会に適応するために、「従業員が どこでも 安全に ストレスフリーに仕事ができるIT環境」を目指したロードマップを作成し、ビジネスツール、セキュリティ基盤の整備を推進するとともに、「今仙情報セキュリティハンドブック」を社内WEB上で公開し、従業員のセキュリティ意識向上に活用しております。

(10) 人的資源の流失について

 当社グループの主力事業である自動車部品関連事業では、CASEに代表されるように百年に一度の大変革期を迎えており、業界各社がデジタル人材の獲得に動いています。加えてこれまでの年功序列型賃金は制度疲弊をしており、ジョブ型給与への移行が進むとみられ、ライフスタイルの変化とともに労働力の流動化が加速すると考えられます。今後、魅力的な仕事、ライフスタイルにマッチした賃金、福利厚生制度に対応できなければ、人財が流出し、事業の継続に影響を及ぼす事態になる可能性があります。

 当社グループでは、環境の変化に対応し、会社と従業員の持続的成長に向けた事業変革として、2024年4月より従来の年功序列型賃金から脱却し、どの世代でも高い目標にチャレンジし活躍している社員を評価する新人事制度に移行しました。今後は新人事制度を浸透させることにより、従業員とのエンゲージメントを高めて、当該リスクに対応してまいります。

(11) 国家間協定・条約等の影響について

 世界経済は、グローバル経済から、保護主義的な経済活動に移ってきており、資源エネルギーを取り巻く環境や、半導体製造やEV車などの電池製造などに関わる国家政策は、電機産業、自動車産業に留まらず、全ての経済活動に影響を及ぼしています。その結果がもたらす、各社及び各社取引先の事業方針、経営施策を含め、当社グループの事業計画が影響を受ける可能性があります。

 当社グループでは、国家間協定・条約等の影響を最小限に抑えるべく、各国、各地域の協定・条約の締結動向を注視するとともに、地産地消に向けた現地調達、現地生産の検討、実施を進めております。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

①財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症の収束による社会経済活動の正常化が進んだ一方、中国の景気後退、ウクライナ情勢や中東紛争による資源価格の上昇やインフレ、各国での金融引き締め等の影響により、先行きの不透明な状況が続きました。

 当社グループが関連する自動車業界におきましても、賃金上昇、原材料費高騰による影響を受けているほか、販売をけん引してきた中国市場において日本車の販売不振が続くなど、不安定な状況が続いております。

 このような経営環境の中、当社グループにおきましては、2021年度に策定した「中長期経営計画2029」において、「持続的成長に向けた事業の変革」を経営目標として掲げております。当連結会計年度はフェーズ1(2021~2023年度)の最終年度として、ESG経営推進による経営基盤強化の下、シート・電装事業の収益体質強化を図りつつ電子事業及び新規事業を成長・拡大させ、バランスのとれた3本足の事業確立に向け、事業拡大の種まきを行うとともに足元の業績の回復に取り組んでまいりました。

 シート・電装事業におきましては、北米ではメキシコ拠点の生産能力を米国オハイオ拠点に移管することにより輸送費と固定管理費の削減を図り、インドでは新規受注に対応すべく工場の生産能力を拡充し、中国ではコスト競争力強化のため外注製品の内製化を進めてまいりました。また日本と中国におきましては、急激な環境変化に対応するべく希望退職者を募り、人員の最適化・再配置を行いました。これらの取り組みにより、得意先のオーダー変動に追従し、ロスなく生産できる体制の構築を図ってまいりました。

 電子事業では、インバータ製品の量産に向けた体制強化として、広島工場に生産技術部を設立しました。これによりマツダ株式会社と設立したMazda Imasen Electric Drive株式会社との連携をさらに強め、高効率なインバータ生産技術の開発に取り組んでおります。また、グローバル展開の取り組みとして、中国武漢工場においてEMSにてユニットの生産体制を整えております。

 新規事業の創出に向けた取り組みとしては、歩行測定システムを使用したサービス製品の開発や、医療分野への展開を見据えた歩行改善機器の開発及び官学との協力関係構築を進めており、人々のQoL(Quality of Life)向上を通じて、社会に貢献できるヘルスケアビジネスの確立に向け取り組んでおります。

 このような施策に取り組んだ結果、中国における生産減少及び労務費・材料費高騰に伴う価格転嫁などの取り組み不足はあるものの、円安による為替の好影響もあり、当連結会計年度の売上高は99,730百万円(前期比0.0%減)、営業利益は14百万円(前期は770百万円の損失)、経常利益は260百万円(前期比825.6%増)、親会社株主に帰属する当期純損失は71百万円(前期は2,053百万円の損失)となりました。

 

 セグメントごとの業績は、次のとおりであります。

 

 (a) 日本

 売上高は40,326百万円(前期比1.3%増)とほぼ横ばいとなりましたが、電子事業における開発費の増強及び品質管理体制の強化などにより営業損失は322百万円(前期は458百万円の利益)となりました。

 

 (b) 北米

 為替影響により売上高は28,852百万円(前期比6.0%増)となりました。また前期の一過性の輸送コストの解消はあったものの賃金上昇や不安定な人員確保、原材料費高騰などの影響により営業損失は1,244百万円(前期は2,716百万円の損失)となりました。

 

 (c) アジア

 為替影響による増収はあったものの中国における日本車販売不振の影響を受け、希望退職の実施などによる体質改善を進めたものの売上高は30,551百万円(前期比6.6%減)、営業利益は1,308百万円(前期比20.0%減)となりました。

 

②生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

日本

40,681

3.1

北米

28,357

3.8

アジア

29,168

△8.1

合  計

98,207

△0.3

 (注) 上記の金額は、販売価格によっております。

 

b.受注実績

 当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高

(百万円)

前年同期比(%)

日本

40,777

2.3

4,762

10.5

北米

30,164

8.8

3,412

62.4

アジア

30,431

△6.1

2,145

△5.3

合  計

101,373

1.4

10,320

18.9

 

c.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

日本

40,326

1.3

北米

28,852

6.0

アジア

30,551

△6.6

合  計

99,730

△0.0

 (注) 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高

(百万円)

割合(%)

販売高

(百万円)

割合(%)

日本発条㈱

12,760

12.8

12,243

12.3

NHK Seating of America,Inc.

10,522

10.6

11,128

11.2

広州提愛思汽車内飾系統有限公司

10,182

10.2

(注) 当連結会計年度の広州提愛思汽車内飾系統有限公司については、総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため、記載を省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

①財政状態及び経営成績等の状況に関する分析・検討内容

財政状態の分析

a.流動資産

 当連結会計年度末における流動資産の残高は50,470百万円(前期比5,532百万円の減少)となりました。電子記録債権が495百万円、売掛金が564百万円増加したものの、現金及び預金が4,996百万円、棚卸資産が1,707百万円減少したことなどによるものであります。

b.固定資産

 当連結会計年度末における固定資産の残高は30,710百万円(前期比3,810百万円の増加)となりました。有形固定資産が539百万円、無形固定資産が242百万円増加、投資その他の資産が3,028百万円増加したことなどによるものであります。

c.流動負債

 当連結会計年度末における流動負債の残高は23,638百万円(前期比2,541百万円の減少)となりました。電子記録債務が543百万円増加したものの、支払手形及び買掛金が1,426百万円、短期借入金が2,003百万円減少したことなどによるものであります。

d.固定負債

 当連結会計年度末における固定負債の残高は6,272百万円(前期比1,562百万円の減少)となりました。長期借入金が1,465百万円減少したことなどによるものであります。

e.純資産

 当連結会計年度末における純資産の残高は、51,269百万円(前期比2,382百万円の増加)となりました。その他有価証券評価差額金が1,435百万円、為替換算調整勘定が1,193百万円増加したことなどによるものであります。

経営成績の分析

a.経営成績の概要

 当連結会計年度における売上高は99,730百万円(前期比0.0%減)となりました。セグメント別では、日本につきましては、売上高は40,326百万円(前期比1.3%増)とほぼ横ばいとなりました。北米は、為替影響により、売上高は28,852百万円(前期比6.0%増)、アジアは、中国における日本車販売不振の影響を受け、売上高は30,551百万円(前期比6.6%減)となりました。

 利益につきましては、前期の一過性輸送コスト等の解消により営業利益は14百万円(前期は770百万円の損失)、経常利益は260百万円(前期比825.6%増)となり、親会社株主に帰属する当期純損失は特別損失として希望退職による特別退職金を計上したものの、24年度に投資有価証券売却益を見込むことから繰延税金資産を計上し71百万円(前期は2,053百万円の損失)となりました。

b.売上原価及び販売費及び一般管理費

 当連結会計年度における売上原価は、原価低減活動に加え、北米において前期発生した輸送コスト増加が解消されたことなどから、売上高に対する割合は92.3%(前期は93.7%)となりました。

 また、販売費及び一般管理費は、7,629百万円(前期比8.1%増)、売上高に対する割合は7.6%(前期は7.1%)となりました。

c.営業外損益

 当連結会計年度における営業外損益は、為替差益236百万円(前期は565百万円)、受取配当金223百万円(前期は186百万円)などがあったことから、245百万円(前期は798百万円)となりました。

d.特別損益

 当連結会計年度における特別損益は、投資有価証券売却益280百万円を計上したものの、特別退職金977百万円を計上したことなどから、△437百万円(前期は△29百万円)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a.キャッシュ・フローの状況の分析

 当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は11,175百万円と前連結会計年度末に比べ4,709百万円の減少となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果増加した資金は、958百万円(前期は787百万円の減少)となりました。これは主として、棚卸資産の減少が2,317百万円であったことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動に使用した資金は、1,209百万円(前期比41.0%減)となりました。これは主として、有形固定資産の取得による支出が1,921百万円であったことによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果減少した資金は、4,995百万円(前期は30百万円の減少)となりました。これは主として、短期借入金の純減が2,374百万円、長期借入金の返済による支出が1,592百万円であったことによるものであります。

 

b.資本の財源及び資金の流動性

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原材料の購入費、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用、税金の支払い、新製品立ち上がりに伴う生産設備や金型投資等です。

 短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、自己資金及び金融機関からの長期借入を基本としております。

 なお、当連結会計年度において3,464百万円の設備投資を実施しており、資金の調達につきましては、自己資金及び借入金によっております。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績などを勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

 当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、第5「経理の状況」の連結財務諸表の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しておりますが、特に次の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすものと考えております。

 なお、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、繰延税金資産の回収可能性の判断及び固定資産の減損に関する判断に関しては、第5「経理の状況」の連結財務諸表の「重要な会計上の見積り」に記載しております。

 

a.製品保証引当金

 当社グループは、製品の品質保証期間内に発生する製品保証費の支払に備えるため、過去のクレームを基礎にして発生見込額を見積り計上しております。従いまして、実際の製品保証費は見積りと異なる場合があり、将来の業績に影響を及ぼす可能性があります。

b.退職給付に係る負債

 当社グループの退職給付費用及び退職給付債務は、数理計算上で使用される前提条件に基づいて算出されております。これらの前提条件には、割引率や年金資産の長期期待運用収益率など、多くの見積りが存在しております。このため、実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、将来の退職給付費用及び退職給付債務に影響を及ぼす可能性があります。

c.固定資産の減損

 当社グループは、固定資産のうち減損の兆候のある資産又は資産グループについて、将来キャッシュ・フローを見積り、将来キャッシュ・フローが帳簿価額を下回った場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。

d.繰延税金資産

 当社グループは、繰延税金資産の将来の回収可能性を検討して、回収可能な額を計上しております。繰延税金資産の回収可能性を評価するに当たって、将来の課税所得を合理的に見積もっております。この見積額の変動により、繰延税金資産の全部または一部を将来実現できないと判断した場合、当該判断を行った期間に繰延税金資産の調整額を税金費用として計上します。

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社グループは、企業の競争力維持のため、また将来的な成長のため、研究開発を最重要経営課題であると認識し、これに取り組んでおります。「よい品を より安く より速く」顧客に提供するために、常に「世界的な視野に立ったハイエスト・クオリティー、ローエスト・コスト」を理念として、独創技術の開発に努め、新技術及び新製品を提案できる開発型の企業として、先端技術、現行技術の革新・改良と、それらを量産に結びつけるための研究開発を行っております。

 当連結会計年度における研究開発活動に係る費用の総額は1,848百万円であります。なお、当該金額には既存製品の改良、応用等に関する費用が含まれており、「研究開発費等に係る会計基準」(企業会計審議会)に規定する「研究開発費」は197百万円であります。

 

セグメントごとの研究開発活動は、次のとおりであります。

なお、研究開発活動は主に日本国内において、自動車部品関連事業及び福祉機器関連事業の分野で行っております。

日本

(自動車部品関連事業)

(1) シート機構・電装製品

 主力製品であるシートアジャスタについては、「安全」「環境」「快適・利便」をキーワードとした製品開発を最重要テーマとして、『お客様のニーズにあった製品』の研究開発に取り組み、世の中の移動に貢献しています。

 「安全」については、衝突時の乗員保護をより高い次元で達成する製品や適正な姿勢を確保する製品の開発に取り組むとともに、各強度ごとのバリエーションに適応した製品開発を行っております。

 「環境」については、低燃費及び将来のEV化を見据え部品の削減、新素材、新加工による小型・軽量製品の開発に取り組んでおります。

 「快適・利便」については、お客様の感性領域まで考慮し、心地よい操作・作動を提供できるシートアジャスタの開発に取り組んでおります。

 また、CAE解析技術を活用した製品開発期間の短縮とスライド、リクライニング、ハイトなどの基本機能向上、低コスト化を目指した研究開発活動を行っております。パワー作動時の挟み込み防止やカメラ画像信号から適正な姿勢に調整する技術などシートの動作を制御する電子ユニットとの融合開発を行い、自動車メーカー、シートメーカーへの提案と新製品の開発活動を行っております。

(2) 電子製品

 電子製品領域については、以下を研究開発の重点テーマに位置付けております。

1. 高効率パワーエレクトロニクス技術開発:

DC-DCコンバータ、インバータ等の電力変換装置において、電力損失を最低限に抑えることで製品コスト低減とエネルギー損失の抑制を図る新技術を開発し量産への移行を推進しております。

2. モデルベース開発:

複雑で大規模・高度なソフトウエア開発を短納期で行うべく、最先端の開発プロセスと解析用ツールを導入しております。

3. EMC開発:

車載電子機器が発生する電磁ノイズを抑制するための製品コスト上昇と開発期間増加が問題になっています。これに対して社内での測定環境を整備して、技術ノウハウの蓄積と効率的な開発を行っております。

4. 電源システム開発:

車載電源は従来の鉛バッテリーのシステムから、リチウムイオン電源、キャパシター電源等の多彩なパワーソースの組み合わせへ変遷しています。これらは電動化の一環であることから重要なビジネスアイテムであると位置づけ独自の先行技術開発を行い、量産用製品への反映を推進しております。

 (3) その他の製品

 その他の製品としましては、機構・電装技術に加え、IoT・画像技術を融合し、人々の豊かな暮らしに貢献するべく、「歩く」を科学することで健康寿命の延伸と生活の質を高める研究開発に取り組んでおります。

 これまでに、簡便に歩行を可視化できる歩き方診断システムを開発し、現在、海外パートナーとも連携し、欧米人の歩行研究によるグローバルビジネス開発を行っております。

 また、「世界中,いつでも,どこでも」をコンセプトにクラウドやアプリを使用して、世界中の人に利用頂ける

歩き方診断システムの開発にも着手しております。

 

(福祉機器関連事業)

 福祉機器の電動車いすについては、暮らしを支えるかけがえのないパートナーとして、安全性・快適性を徹底的に追求し、使われる方の快適さはもとより、介助する方や周りの環境にも優しい機能、性能、デザインであることに心を配って開発しております。

 主力製品である重度障がい者を対象とした製品に加え、今後の超高齢化社会に向け、電動駆動のコア技術を活用した高齢者向け製品の研究開発も行っております。そして障がい者、高齢者の方にとって唯一の自力移動手段であることを踏まえ、使いやすさと安全性を重点に、一層の軽量化、小型化、高機能化を目指しております。

 義足については、「使う人の要求を、作る人の立場で考える」というコンセプトの下、様々な日本の生活環境、体型、年齢などに合わせた最適な義足を提供するため、パーツ選択や交換、調整を容易に行えるモジュール化した義足部品の研究開発を行っております。特に膝継手においては、国内だけでなく海外輸出を考慮した耐久性と耐環境性を備え、機能美といわれるデザイン性を重視した製品を開発しており、国内外から高い評価をいただいております。

 ミズノ株式会社と共同開発したスポーツ用義足は、東京パラリンピックでは、2名のパラアスリートに使用していただきました。この技術をもとに子供たちや初心者向けの製品を開発し、発売を開始しました。また、パラアスリートの山下千絵選手とスポンサー契約するなど障がい者スポーツの普及活動にも積極的に取り組んでいます。