文中における将来に関する事項は、当事業年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、「いま、あたらしいことを。いつか、あたりまえになることへ」のSWCCパーパスのもと、経営理念である「SWCCグループは、信頼の輪をひろげます」に基づき、信頼される製品でインフラを支え、社会の安心安全に貢献する会社であり続けることを使命としております。
そして、長年積み上げてきた技術とサービスでお客様のニーズを掘り起こし、付加価値を創造する企業体として成長し続けるために、「SWCCはソリューション提案型メーカーへ!」をビジョンとして掲げております。
また、当社グループは、ビジョンを実現するために大切にすべき価値観や行動を示した行動基準として、「「迅速」・「情熱」・「考動」で価値創造を実現する」とする「SWCCウェイ」を定めております。
(2)中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、2023年4月に経営体制および商号変更に伴い新たにSWCCパーパスを策定するとともにグループの理念体系を整え、新生SWCCとして新たなスタートを踏み出しました。3年目を迎える中期経営計画「Change & Growth SWCC 2026」については、2021年11月の発表時点と足元の事業環境に大きな変化がみられることから、今年5月にローリングプランを策定しました。
(当社グループの中期経営計画「Change & Growth SWCC 2026 ローリングプラン2024」)
2030年までのありたい姿として、当社は総合電線メーカーの枠から脱却し、これまで以上に人々の暮らしを豊かにするソリューション提案型メーカーへの変貌を描いております。
中期経営計画「Change & Growth SWCC 2026 ローリングプラン2024」では、事業環境の変化と中期経営計画2年間の進捗をふまえて全体の計画をアップサイドに見直しながら、2030年までのありたい姿に近づくべく企業価値向上に向けた新たな重点施策を打ち出しました。
具体的には、ROIC経営にさらなる磨きをかけ事業のキャッシュ・フロー創出力を強化するほか、資本戦略の強化により資本コストの最適化と株主還元の充実を図ります。また、これまでの改革を後戻りさせない人的資本戦略も充実させるほか、今回の計画のアップサイド要素として、BD(Business Development)戦略を基軸とした新市場・新領域への事業拡大にも力を入れてまいります。
今回のローリングプランの位置づけと主な財務数値目標は以下のとおりです。
(3)経営環境および優先的に対処すべき事業上の課題
今後の見通しにつきましては、脱炭素社会を背景に電力網の強靭化や再生可能エネルギー関連をはじめとする電力インフラ需要に加え、BEV化の減速がみられるも依然長期的な市場拡大が見込まれる環境対応車需要や少子高齢化を背景とする省力化製品・サービスの需要等が見込まれる一方、2024年度問題を背景とした労働人口不足の問題、先行き不透明な国際情勢や円安を背景とする原材料価格の高騰、世界的な気候変動リスクの顕在化について、予断を許さない状況が見込まれます。
このような見通しを踏まえ、当社グループでは、2021年11月に発表し、今年3年目を迎える中期経営計画「Change & Growth SWCC 2026」について、事業環境の変化を織り込み、ローリングプランを策定いたしました。
このローリングプランでは、3事業セグメントを中心とした基盤事業のさらなる強化に加え、BD(Business Development)戦略など成長フェーズへの移行に向けた具体的取り組みをより確実に進めてまいります。また、ROIC経営については、事業別ROICの各部門への浸透を促進するとともに、事業ポートフォリオの最適化のための見直しや事業性評価、投資判断への活用を徹底してまいります。
①セグメント別の状況および課題
各セグメントの状況および課題については以下のとおりであります。
(エネルギー・インフラ事業)
エネルギー・インフラ事業は、国内の電力インフラ、建設関連向けの電線・ケーブル、免制震部材が主体の事業となっております。
電力インフラでは、国土強靭化対策による底堅い需要に加えて、再生可能エネルギーへのシフト、データセンターの市場拡大や送配電網増強に伴う旺盛な需要に対し、主力製品である高電圧電力ケーブル用コネクタ「SICONEX®(サイコネックス)」のデファクトスタンダード化を進めるとともに、さらなる増産投資を検討してまいります。
また、少子高齢化や2024年度問題を背景とする施工作業員不足の課題に対しては、戦略製品「SICONEX®」に工事や教育も含めた電力工事のソリューションビジネスである「SICOPLUS®(サイコプラス)」ブランドのもと、施工人財センターにてDX教材活用・模擬施設訓練・知識習得・現場OJTによる技術者の早期育成プログラムを実施して優秀な人財を確保してまいります。さらにスキルレスなユニバーサルデザインケーブルの浸透等をとおして省力化、省人化、作業効率化を推進してまいります。
建設関連向けの電線・ケーブルでは、原材料・物流費の上昇に対して販売価格転嫁と原価低減の取り組みでカバーするほか、合弁会社のSFCC㈱において、ROICを指標にDX活用を含むさらなる収益改善を進めてまいります。
(電装・コンポーネンツ事業)
電装・コンポーネンツ事業は、電線導体用の線材や汎用モータ用の巻線等の一般汎用製品と無酸素銅MiDIP®およびヒータ用銅合金線等の高品位線材や、環境対応車向け高機能巻線といった高機能製品が主体の事業となっております。
環境対応車向け製品については、BEV化の減速がみられるも依然長期的な市場拡大が見込まれることからBEV・HEVともに対応できる事業環境変化に強い生産体制構築を進めてまいります。また、昨今の低炭素部材に関する顧客ニーズに対しては、グリーンエネルギーの導入促進と高効率設備導入により、中計期間内にグリーン車載巻線の開発・販売を進めてまいります。
(通信・産業用デバイス事業)
通信・産業用デバイスは、通信ケーブル、家電や産業機器向けのワイヤハーネス、複写機向けデバイスが主体の事業となっております。
通信ケーブルでは、通信トラフィックの増大によるオフィスネットワーク向け需要の取り込みや海外のテレコム・データコム市場の拡大およびADAS市場拡大に伴う需要捕捉に注力してまいります。
ワイヤハーネスは、中国・ベトナムでの生産拠点の多元化と現地調達・地産地消の強化により地政学リスクのさらなる低減を図るほか、当事業年度に中国で、モータ製造企業と設立した合弁会社による「競争力強化」や車載部品企業および自動運転ソフトウェア開発企業と設立した合弁会社による「多角化展開」に注力してまいります。
精密デバイスは、コロナ特需の剥落による影響を受ける中で強化した収益改善の取り組みをベースに回復需要を捕捉してまいります。
(その他)
モビリティ、インダストリ、ITを軸に新たな事業創出に向けて取り組みを推進しております。IT事業の強化としては、㈱アクシオにおいてクラウドでのID管理マネージドサービスを中心とするゼロトラスト事業の拡大を推進しております。また、当社グループでは、これまで培ってきた技能やデータとDXに関する技術やツールを掛け合わせ、新しいビジネスモデルを創出する「SWCC Smart Stream(スマートストリーム)事業」を推進してまいります。
②品質向上に向けた取り組み
当社グループは、法令・規制、お客様との合意事項を遵守し、お客様に寄り添い、迅速な技術開発、サービスとものづくりを実現するため、グループ営業力を発揮して、お客様のニーズを確実に共有し、販・技・製一体での新たなサービスを提案するとともに、お客様に信頼いただける品質優先のものづくりを実現いたします。また、お客様、従業員、地域社会などのすべてのステークホルダーに満足を得られる品質活動を推進しております。
また、品質におけるコンプライアンスに関し、法令・法規、お客様との合意事項を遵守することを基本方針とし、品質不正を防止するためのチェック機能の強化、品質コンプライアンス教育の拡充を進めるとともに、トップマネジメントと第一線の社員とのコミュニケーション強化として、タウンホールミーティングなどを実施しております。
さらに、当社グループでは、2018年度より失敗コストの概念を導入し、品質向上に取り組んでおります。製品の企画・開発、設計、製造、検査、納入に至るまでのプロセスにおいて、品質管理体制を構築し、2026年度に品質起因による失敗コストを、2021年度比50%減とする目標の達成に向け取り組みを継続し、内部失敗コスト削減を重点的に取り組んでおります。
あわせて、ものづくりの基盤強化にむけ、モノづくり人財開発センターおよび2035ファクトリーPJを新たに立ち上げるとともに、DX取り組みの一環として、品質データのデジタル化に取り組むことにより、検査記録および合否判定の自動化も進めております。品質データのデジタル化では、全社報告会をとおし各部門の取り組みを共有化することにより、全体のレベルアップを図っております。
(4)2024年度のグループ経営方針
2024年度も引き続き、先行き不透明な国際情勢を背景としたエネルギー価格や原材料価格の高止まりによる事業への影響は免れない状況が見込まれますが、SWCCパーパスを基軸に、中期経営計画「Change & Growth SWCC 2026 ローリングプラン2024」の達成に向けた変革を着実に実行するとともに、市場や環境の変化に応じた柔軟でスピード感のある判断と施策を実施することで、このような経営環境下にあってもより一層、経営体質を強化し資本効率を高めてまいります。その観点から2024年度のSWCCグループ経営方針は以下のとおりとしております。
(ⅰ)Changeの精神に基づく継続的な変革
(ⅱ)Growth戦略のための施策の具体化と実行
(ⅲ)資本効率の向上
(ROIC経営の考え方の浸透、キャッシュ・フロー経営の深化とバランスシートの圧縮)
(ⅳ)品質管理および安全優先の取り組みの徹底
(信頼を取り戻すための覚悟と仕組みづくり)
(ⅴ)エンゲージメントの向上
(働きやすい職場づくりと健康経営の推進)
(ⅵ)「人づくり」を基に、変革が後戻りしない体制の整備
(新経営体制の始動ならびに企業風土改革)
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当事業年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
当社は、1936年の創業以来、社会インフラを支える企業としてさまざまな社会課題解決型ビジネスに取り組み、持続可能な社会の発展に貢献してまいりました。当社では、「サステナビリティ委員会」を設置し、「サステナビリティ基本方針」策定や「マテリアリティ(重要課題)」の特定など、サステナビリティ経営に向けた取り組みを推進するための体制構築や施策の展開を図っております。マテリアリティに紐づくKPIや施策は、経営戦略全般との整合性がとられており、事業戦略、財務戦略との三位一体で企業価値を高めてまいります。
(1)ガバナンス
以下は、当社グループのサステナビリティ経営に係るガバナンス体制です。
当社グループは、グループの経営理念に基づき、環境・社会・ガバナンスなどの観点において持続可能な企業運営を行うべく、取締役会の諮問機関として、CEO 社長執行役員を委員長とし、委員長が任命する各事業セグメントおよび人事、環境、調達などを担当する執行役員・フェローで構成される、「サステナビリティ委員会」を設置しております。サステナビリティに関する経営上の課題(※)について、事務局であるサステナビリティ推進部が事業部門・管理部門における課題や対応策を集約し、「サステナビリティ委員会」でそれらを協議し、機会やリスクにもとづく推進計画と進捗状況をまとめ、取締役会へ報告や提言を行っております。
(※)後述する、環境保全、気候変動、人的資本、人権尊重も含みます。
(2)戦略
当社グループは、(1)ガバナンスに記載している体制のもと、サステナビリティへの対応は、経営戦略を遂行する上で重要視しており、基本方針の策定やマテリアリティの特定を行い、定期的な進捗確認を行っております。
①サステナビリティ戦略
当社は、サステナビリティ推進体制の強化とともに、活動の基本となる「サステナビリティ基本方針」を策定しており、本方針のもと、さまざまな社会課題に対応する企業行動を実践しております。サステナビリティ基本方針は以下のとおりです。
(サステナビリティ基本方針)
SWCCグループは、信頼とイノベーションにより、「社会課題の解決」と「企業価値向上」を図り、サステナブルで豊かな未来社会を創ります。
・優れた技術とイノベーションを通じ、お客さまへ高い品質の製品・サービスを提供します。
・クリーンでグリーンなエネルギーの普及を図り、地球環境の保全に努めます。
・「共感」「共存」「共栄」の精神で、地域やバリューチェーンとのつながりを大切にします。
・個性や多様性を活かした働き方を推し進め、エンゲージメントの向上を図ります。
・役職員の人間性と倫理観を高め、良き企業文化を醸成します。
②マテリアリティの特定
当社グループでは、「サステナビリティ基本方針」に基づき「マテリアリティ」を特定し、サステナブル経営に向けた取り組みを加速させるための施策を展開しております。
「マテリアリティ」は、4つのステップを踏まえ、当社とステークホルダーの双方に影響の大きい社会課題を抽出し優先課題を特定したもので、技術、環境、地域、人、ガバナンスによる5つのテーマがあり、それぞれの行動方針を以下のとおり定めております。
また、行動方針に基づき評価指標を設定し、指標ごとに中期および単年度目標を掲げ、目標達成に向け取り組んでおります。2022年度には16の指標を設定し、中期経営計画(Change & Growth 2026)に準じ、中期目標を2026年度としておりますが、環境に関するテーマは、第7次環境自主行動計画で目標とする2025年度としております。今年度は中長期的な視点での目標を明確にし、目標に相応しいKPIの見直しも検討しております。
[環境保全の取り組み]
当社グループでは、環境理念および単年度の環境方針と重点テーマを定め、環境保全活動に取り組んでおります。また、環境中長期計画「Green Plan 2050」を掲げ、長期ビジョンおよび2030年度目標を実現するための5ヶ年計画として、第7次環境自主行動計画を推進しております。第7次環境自主行動計画では、日本国内のグループ全事業場を対象とし、地球温暖化防止、資源の有効活用、水資源の有効活用を柱に据え、事業活動を通じて排出される温室効果ガスや廃棄物を削減するとともに、資源の有効活用を図ることを推進しております。
イ 温室効果ガスの削減
地球温暖化防止に関する指標は、CO2を代表とする温室効果ガスで示します。事業活動におけるCO2の削減施策は、全社横断的なプロジェクトチーム「Green Energy Project」のもと、以下のような具体策を検討しております。
・省エネの深耕(設備更新、技術転換による生産方法見直し)
・自社内における創エネ(自家消費型太陽光発電の導入)
・非化石由来のエネルギー(燃料、電気)調達によるカーボンオフセット
また、プロジェクトでは、現状グループ内で排出するScope1(燃料)、Scope2(電気)の削減に取り組んでおりますが、今後は、Scope3(サプライチェーン)の中でも影響度の大きいカテゴリ1(購入した製品・サービス)の排出量削減にも取り組んでまいります。
ロ 資源の有効活用
限りある資源を有効活用し、生産活動によって排出されるさまざまな廃棄物を削減するとともに、さらに廃棄されたものが埋立等の最終処分とならないよう、廃棄物の解体・分別を促進し、電線・ケーブルの生産過程で生じた廃プラスチックに関しては、サーマル利用に加え、マテリアル再生を図るなど資源循環に取り組んでおります。
また、生産活動で使用される水についても、冷却水の循環利用や漏水等の点検を進め、投入量の削減に取り組んでおります。
[気候変動への対応]
当社は、2022年5月、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に賛同を表明しました。気候変動は、事業活動にとってリスクとなる一方、収益機会の獲得にもつながります。当社は、これら気候変動に関するリスク・機会の特定と対処が経営上の重要課題であるという認識のもと、TCFDの提言に沿って、気候変動関連リスク・機会に関する「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」の4項目について積極的な情報開示を進めており、脱炭素社会に向けた重要指標にCO2排出量を掲げ、2030年度までにCO2排出量(Scope1+Scope2)を2013年度比50%減とする目標を掲げました。
また、戦略の分野においては、事業セグメントごとに「1.5度シナリオ(脱炭素社会実現シナリオ)」と「4℃シナリオ(温暖化進展シナリオ)」の2つのシナリオ下でリスク・機会を分析し、事業への影響および今後の対応策をまとめております。
シナリオ分析および主要セグメントにおけるリスク・機会の詳細はこちらをご覧ください。
https://www.swcc.co.jp/jpn/news/images/220525B_PRESS_RELEASE.pdf
[人的資本戦略およびその取り組み]
当社グループでは、経営戦略を踏まえ「変革」「挑戦」「成長」を人事戦略の柱に、組織風土の刷新、人的資本投資の仕組みづくり等の課題に取り組んでおります。省人化・オートメーション化により年齢、性別に関係なく活躍できる製造現場への変革を進め、研修制度やキャリア形成の仕組みを高度化し、1人当たりの収益性向上による平均年収の向上につなげてまいります。また、従業員持株会制度活性化により、社員と会社の価値共有も進めております。当社は今後もこれまで取り組んできた人的資本経営をさらに推し進め、「ひとが輝く」企業を目指します。
当社グループは、「マテリアリティ」における3つの行動指針に従い、以下のような取り組みを行っております。
イ 多様な人材活用の促進(Diversity & Inclusion)
多様な考え方や経験、働き方を受け入れ、組織運営に活かしていくダイバーシティ経営が不可欠であり、年齢、性別、国籍を問わず能力を十分に発揮していくための機会と制度を整えることが必要であると考えております。
2021年4月には「女性活躍推進プロジェクト」を発足し、女性のキャリア形成の支援および意識醸成と啓発活動を推進しており、管理職における女性比率を高めていくことを目標としております。2022年と2023年には、理工系分野に興味のある女子中高生らを対象に当社グループの職場見学会や女性エンジニアとの交流を行う「理工チャレンジ(リコチャレ)」にも参画しました。これまでの取り組みが評価され、内閣府の依頼を受け、リコチャレ登録団体向け説明会で講演をしております。2023年4月からは同プロジェクトを「ダイバーシティ推進プロジェクト」へと進化させ、広くアンコンシャス・バイアスへの気づきを与える取り組みを推進しております。
ロ みらいへの人材育成
人財育成につきましては、当社グループが求める人財像である「先見性とバランス感覚を備え、変革やリスクを恐れないチャレンジ精神を持ったリーダー」、「高度な専門知識・技術・独創性を持って社会的な課題を解決できるプロ人財」、「信頼を重んじ、公平さと高い倫理観を持って行動できる社会人」となるような人財を育成していくために以下の施策を行っております。
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カテゴリ |
テーマ |
施策 |
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人財 |
外部からの刺激を受け、挑戦するためのマインドセットの実施 |
・サクセッションプラン(研修) ・異業種交流研修 ・各種セミナー・階層別研修 |
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カテゴリ |
テーマ |
施策 |
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場の提供 |
多様な人財のアイデアを実現する場の提供 |
・社長直轄プロジェクト ・提案制度 ・SWCCグループ社内ベンチャー制度 ・技術報告会・改善活動発表会 |
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時間 |
新たな価値創造に取り組む時間の確保 |
・シェアードサービス化の推進 ・SPS活動(改善・全体最適) ・どこでもワーク(テレワーク推進他) |
また、構造改革の推進や成長フェーズへの移行に際し、求められる人財スキルの変化に対応する人財を確保するため、以下のような人事制度を導入しております。
・必要な特定スキルを持つ即戦力人財、高度専門人財のいわゆる「ジョブ型採用」の強化
・適所適材配置の実現のため、ジョブチャレンジ制度・社内公募制度といった会社と従業員の要望をマッチングさせる制度の拡充
・挑戦する従業員の努力や成果がより適正に反映される処遇制度
ハ エンゲージメントの向上(働きがいのある仕事・職場づくり)
当社グループでは、経営戦略に紐づく人事戦略を展開するうえで、エンゲージメントの向上が最重要課題との認識のもと、新たに役員報酬の評価項目に加えるとともに、社内の環境整備に力を入れております。当社グループが行っている社内環境整備は以下のとおりであります。
(エンゲージメントの向上に関する施策)
2023年度は、SWCC発足により新たにSWCCパーパスを策定し、グループ会社を含めた国内拠点でタウンホールミーティングを開催しました。また、福利厚生サービスの拡充や健康経営の推進など、社員満足度向上に重点を置いた施策を実施しました。一方、グループ会社の統合に伴うシステム移行やリロケーションなどによって業務負荷が高まった部門もあり、エンゲージメントスコアは全体としては横這いとなったものの、一連の活動によりグループ力が高まり、過去最高益達成につなげることが出来ました。
2024年度は、SWCCパーパスをグループ全体でより深く共有・浸透させ、「変革や挑戦をおそれないマインドセットへの転換」を推進するとともに、経営と現場の対話をさらに深め、各職場のエンゲージメント向上のためのPDCAを回す仕組みを構築してまいります。
また、エンゲージメント向上が人事戦略の3つの柱である「終わりなき変革」「新たな挑戦」「持続的成長」を推進するプラットフォームであるとの認識のもと、これらを可視化する指標・KPIを設定し、管理していく予定です。
(健康保持増進に関する施策)
健康経営は、企業の持続的な成長を図るための経営戦略の一つであり、従業員の心身の健康保持増進は、健全かつ優秀な人財の安定した確保に基づく労働生産性の向上・従業員の創造性向上等による企業競争力強化への寄与が期待できることから、2023年4月の会社統合および新体制発足時にあらためて、グループCEOよりSWCCグループ「健康経営宣言」を発出し、着実に当社グループの健康課題の解決を図っております。
また、グループ各社・各拠点および健康保険組合との連携のもとで健康経営を推進すべくグループ横断の組織として衛生分科会を設置し、継続的なフォローを実施しております。
当事業年度に実施した主な取り組みは以下のとおりです。
<主な取り組み(2023年度)>
1)健康増進の支援活動
・ワークライフバランスの実現(福利厚生サービスの導入)
・ヘルスリテラシーの向上(eラーニングや健康アプリを活用したセルフケアと健康支援)
2)社内全面禁煙化の推進
・段階的に禁煙化を実施(2024年4月より敷地内禁煙化)
・健康保険組合による禁煙外来補助の実施
[人権尊重への対応]
2024年1月に、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に則り、「国際人権章典」、「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」などの国際規範を支持し、新たに「SWCCグループ人権方針」を策定しました。本方針は、当社グループすべての役職員に対して適用するとともに、当社グループの事業活動に関わるサプライヤーを含むビジネスパートナーに対しても、内容への理解や支持を期待し、人権尊重への取り組みを求めております。
「SWCCグループ人権方針」では、人権尊重への取り組み項目として、(1)差別の禁止、(2)強制労働、児童労働の禁止、(3)ハラスメントの禁止、(4)平等な機会の提供、(5)労働基本権の尊重、(6)労働安全衛生を掲げており、当社グループが直接・間接的に影響を及ぼす可能性のある人権への負の影響を特定し、防止・軽減を図るとともに、その取り組みの実効性を評価しております。こうした人権デュー・ディリジェンスの状況は、半期毎にリスクマネジメント委員会に集約され、取締役会へ報告します。また、人権毀損が生じた場合には是正と救済を行うとともに、未然防止を図るため役職員に対する定期的な教育・啓発も進めてまいります。
(3)リスク管理
当社グループの全社的なリスクマネジメントに関しては、「リスクマネジメント委員会」を中心とするリスクマネジメント体制を整備しております。具体的には、取締役会の諮問機関として、CEO 社長執行役員を委員長とし、委員長が任命する当社の執行役員・フェローで構成されるリスクマネジメント委員会にて、事業部門で実施したリスクの評価や対応策を議論のうえ、リスクマネジメント計画やリスク施策の進捗管理を実施し取締役会に報告を行っております。また、リスク統括部門として経営管理部内にリスクマネジメント部門を設置し、規則・ガイドラインの制定、教育研修およびモニタリングの実施等、グループ全体のリスク管理を統括し、事業の継続発展のために不可欠な全社的なリスクマネジメント体制の強化を図っております。
さらに、事業部門や管理部門で定常的に発生するリスクへ迅速に対応するため、リスク事象が発生した場合に担当部門よりリスク統括部門へ迅速にリスク情報を提供する仕組みとなる「リスク一報制度」を運営しており、報告されたリスク事象のうち緊急かつ重大な事象についてはリスクマネジメント委員や常勤監査等委員と情報共有しながら適切な初期対応を取ることで、グループ経営への影響を最小化するべく取り組んでおります。
また、環境、社会、ガバナンス関連のリスクについては、サステナビリティ委員会の事務局であるサステナビリティ推進部とも連携・情報共有を図っております。サステナビリティ委員会は全社的な「リスク」と「機会」について対応方法を検討し、審議内容を定期的(年2回以上)に取締役会に報告しております。
なお、優先度の高い事業リスクの抽出とともに、「気候変動」に関するリスク管理、「人権尊重」に関するデュー・ディリジェンスは当体制内で扱っております。
(4)指標及び目標
SWCCグループの5つのマテリアリティテーマのうち、「環境」(気候変動を含む)と「人」に関する取り組みにおける指標およびKPIは以下のとおりです。
〔環境〕「地球にやさしい」
<マテリアリティ指標およびKPI>
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指標・KPI |
2023年度実績 |
2024年度計画 |
2030年度目標 |
2023年度所見と2024年度施策 |
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温室効果ガス(CO2)排出量 (燃料+電気) |
2013年度比 38%減 |
2013年度比 40%減 |
2013年度比 50%減 |
2023年度は、製品の統廃合により生産効率を向上させ、エネルギー原単位の削減を図ったが、活動量の増加でエネルギー使用量は増加した。CO2に関しては、非化石由来の燃料活用等によりオフセットすることで排出量を前年度並みに抑えた。2024年度は、太陽光発電の増設や非化石由来の電気活用など再エネ導入率を高めていく。 |
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再生可能エネルギーの社内導入率 (非化石由来のエネルギーを含む) |
7% |
26% |
50% |
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指標・KPI |
2023年度実績 |
2024年度計画 |
2030年度目標 |
2023年度所見と2024年度施策 |
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廃棄物の 最終処分量 |
2018年度比 69%減 |
2018年度比 75%減 |
2018年度比 85%減 |
2023年度は、事業再編、活動量増加に伴い前年度より排出量は増加。マテリアルリサイクルへの転換を積極的に進め、最終処分量の低減を推進した。2024年度も活動量増加による排出量の増加は想定されるも、製品設計から廃棄までの環境配慮の取り組みを継続し、資源循環を推し進める。 |
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水使用量 |
2018年度比 28%減 |
2018年度比 25%減 |
2018年度比 50%減 |
2023年度は、設備老朽化による漏水や、活動量の増加、猛暑による冷却水使用が増加したが、一部工場における配管更新等の効果もあり、前年度より大幅に使用量を削減できた。2024年度以降も、循環利用、ムダ取り等により削減を図るが、引き続き活動量増加による影響が見込まれるため、2030年度目標について懸念があり、目標値の見直しも検討している。 |
〔人〕「ひとが輝く」
<マテリアリティ指標およびKPI>
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指標・KPI |
2023年度実績 |
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2026年度目標 |
2023年度所見と2024年度施策 |
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管理職に占める 女性比率 |
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8% |
2023年度は、育児休業等の取得推進やアンコンシャス・バイアス解消への気づきを与えるべく研修を実施。2024年度も同様の取り組みを継続するとともに、女性母集団拡大のための採用見直し等の施策も展開する。 |
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課長職以上に占める 女性比率 |
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10% |
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従業員1人あたり 年平均研修時間 |
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40時間 |
2023年度は、マネジメントスキル向上を目的に部長やライン課長研修、入社3年目の若手社員向けのキャリア研修・面談を新たに実施。2024年度はこれらに加え、自律型の部門内スキルアップ勉強会を強化する。また、モノづくり人財開発センターで技術者向けの研修体系の充実も図る。 |
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指標・KPI |
2023年度実績 |
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2026年度目標 |
2023年度所見と2024年度施策 |
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0.23 |
2023年度は、特定のグループ会社で休業災害が続発した。安全衛生活動診断に注力し、従業員の安全意識を高めるとともに、リスクアセス活動により安心・安全な職場環境を構築する。 |
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エンゲージメント スコア |
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55以上 |
2023年度は、従業員への共感、浸透を深めるためグループ会社を含めた国内拠点でのタウンホールミーティングを実施。また、eラーニングや福利厚生サービスの拡充などで従業員満足度の向上を図った。2024年度はエンゲージメント改善に向け現場ごとのPDCAが回る仕組みを導入する。 |
(注)上記指標・KPIのうち、「管理職に占める女性比率」は、当社における全管理職を対象とした女性の全管理職の割合を計算しております。また、「課長職以上に占める女性比率」は、当社における課長職以上の労働者を対象とした女性の課長職以上の労働者の割合を計算しております。なお、「課長職以上に占める女性比率」は、第1 企業の概況 5従業員の状況 (4)に記載しております「管理職に占める女性労働者の割合」と同じものを指しております。
<KPI選定の理由と財務的な影響への認識>
ダイバーシティ&インクルージョンへの取り組みやエンゲージメントスコアを高めることが、若手をはじめとする優秀な人財確保と1人あたりの生産性向上につながり、ひいては当社の変革と成長を推し進めこれまでにない成長のステージを実現することにつながると認識しております。
当社グループにおいて、リスクとは、経営の目的の達成を阻害する潜在的な要因であると定義しております。
また、リスクを適切に管理することは、経営上極めて重要な課題であるとの認識のもと、当社グループはリスクマネジメント委員会を中心とするリスクマネジメント体制を整備しております。当社グループのリスクマネジメント体制については「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご覧ください。
リスクのうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性がある主要リスクについては、本委員会にてリスクを識別、分析、評価をして判断しております。具体的には、グループ各社から挙げられたリスクを数値化する等して定量的に分析を行い、その上で当社グループとして重要な影響を及ぼす可能性があるリスクを主要リスクとして特定しております。また、「サステナビリティ基本方針」に基づきマテリアリティを定めていることから、それらとの関連付けや本社で認識したリスクについても追加の上、全社的に主要リスクへの対策を行っております。なお、マテリアリティに関する詳細は、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご覧ください。
ただし、以下に記載したリスクは当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではなく、記載されたリスク以外のリスクもあります。それらのリスク要因のいずれによっても、投資者の判断に影響を及ぼす可能性があります。
主要リスクとしては、以下のようなものがあります。
主要リスク
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リスク項目 |
マテリアリティ |
認識しているリスク内容 |
主要な取り組み |
残存するリスク |
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自然災害等 |
・地球にやさしい
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〇以下の自然災害等による製造拠点の操業停止や物流機能の麻痺等 ・大規模な地震・台風・洪水等の自然災害 |
・事前に想定されるリスクに対して円滑な初期対応を講じるために、BCP(事業継続計画)を策定、見直し ・製造拠点ではインフラ設備の強靭化投資を計画的に実施 |
・想定を超えた自然災害等により電力不足・物流の停滞等が生じ、社会インフラ機能そのものの低下が長期化する等、計画的な生産活動に大幅な制限が生じた場合の業績等への重要な影響 |
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原材料・エネルギー価格変動 |
・みらいを創る ・地球にやさしい
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〇主要原料の銅の価格変動 〇ポリエチレン等の石油化学製品の価格変動 〇激変緩和措置の終了等による電力・都市ガスの調達価格変動 |
・グループ調達本部による管理強化 ・計画的な安定調達実施による在庫削減 ・製品価格へのスライド転嫁 ・先物取引等を活用した銅価格変動リスクヘッジ ・調達先の多様化、複数購買の推進によるリスク低減 ・PPAモデルを活用した太陽光発電設備導入 |
・製品価格への転嫁が困難な場合や相場が大きく下落する局面で、損失が生じた場合の業績等への重要な影響
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人財の確保および 育成 |
・ひとが輝く |
〇営業機会の損失 〇製造の技能承継困難による事業継続への影響 〇製品やサービスの品質低下 〇成長機会の逸失による業績目標達成への影響 |
主要な取り組みについては、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご覧ください。 |
・組織編制上の制約や事業上の機会の逸失による業績等への重要な影響 |
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リスク項目 |
マテリアリティ |
認識しているリスク内容 |
主要な取り組み |
残存するリスク |
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サプライチェーン寸断・喪失 |
・ともに生きる
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〇サプライチェーンの寸断・喪失による原材料供給の停止、遅延 |
・調達先の多様化、複数購買の推進によるリスク低減 ・代替品の確保 ・調達先の個別管理徹底(廃業、事業撤退リスク管理) |
・原材料調達の停止、遅延による事業活動や業績への影響 ・調達難に起因する調達コストの増大 |
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サステナビリティ |
・地球にやさしい ・ともに生きる |
〇環境・気候変動への対応遅延等によるビジネスへの影響 〇CO₂排出削減コストの増大 |
主要な取り組みについては、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご覧ください。 |
・環境・気候変動への対応遅れによる信頼失墜、採用や業績への悪影響 ・中長期的な製造コストの増大による収益性の低下 |
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品質問題 |
・より良き企業に |
〇品質問題の発生(欠陥、不良品) 〇各種規格、法令、お客様との取り決め等に違反する製品の製造・販売 |
・品質統括部門によるモニタリング、監査統括部による監査 ・品質保証業務のデジタル化推進による品質管理徹底、不正防止 ・全社的教育プログラムの展開 ・品質部門の人財確保・育成 ・賠償保険の付保 |
・品質問題に起因する損失補償や製造物責任訴訟等 ・品質問題による信頼失墜、レピュテーションの毀損
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(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態の状況
当連結会計年度末における資産合計は1,615億83百万円で、前連結会計年度末より49億32百万円増加しております。その内訳としては、流動資産の増加23億89百万円、固定資産の増加25億43百万円であります。流動資産の増加は、主に現金及び預金が増加したことによるものであります。固定資産の増加は、主に退職給付に係る資産が増加したことによるものであります。
当連結会計年度末における負債合計は844億56百万円で、前連結会計年度末より38億3百万円減少しております。その内訳としては、流動負債の減少44億28百万円、固定負債の増加6億24百万円であります。流動負債の減少は、主に短期借入金が減少したことによるものであります。固定負債の増加は、主に長期借入金が増加したことによるものであります。
当連結会計年度末における純資産の合計は771億26百万円で、前連結会計年度末より87億36百万円増加しております。これは、主に親会社株主に帰属する当期純利益88億38百万円を計上したことによるものであります。
当連結会計年度末の有利子負債は302億82百万円となり前連結会計年度末より108億94百万円減少しました。自己資本比率は前連結会計年度比で3.9ポイント増の47.0%となりました。その結果、DEレシオは当連結会計年度末で40%となり、前連結会計年度比で21ポイントの改善となりました。
②経営成績の状況
当連結会計年度における当社グループを取り巻く事業環境は、先行き不透明な国際情勢のもと、原材料・エネルギー価格等が高止まりする一方で、国内における経済活動の正常化や賃上げの加速、緩和的な財政・金融政策などが下支えとなり、国内向け建設関連および電力インフラ関連市場が堅調に推移した他、xEV関連市場でも回復の傾向がみられました。
このような環境下、当社グループの当連結会計年度の売上高は2,139億4百万円(前年度比2.3%増)、営業利益は128億24百万円(前年度比22.4%増)、経常利益は122億13百万円(前年度比17.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は88億38百万円(前年度比6.1%減)となりました。
次にセグメントの状況をご説明いたします。
(エネルギー・インフラ事業)
国内の建設関連向けは、原材料・エネルギー価格・物流費の価格高騰が続く中で、合弁会社による収益改善施策の実施や、販売価格見直しと原価低減の取り組みによる適正な利益確保に努めつつ、高稼働での生産体制により、堅調な需要を取り込んでまいりました。電力インフラ向けは、特別高圧関連需要が依然底堅く続いているほか、期初の予測どおり、電力工事件名が下期以降増加しました。これらの結果、当事業における売上高は1,232億26百万円(前年度比8.7%増)、営業利益は106億98百万円(前年度比39.6%増)となりました。
(電装・コンポーネンツ事業)
xEV向け高機能製品の需要が一部回復する一方、一般汎用製品については、重電向けは堅調も産業機械向けの需要が低迷しました。これらの結果、当事業における売上高は552億83百万円(前年度比4.9%減)、営業利益は16億29百万円(前年度比3.7%減)となりました。
(通信・産業用デバイス事業)
産業用デバイスは、オフィス向け需要が一部回復するも、ワイヤハーネスは、中国・ベトナムの景気の悪化および国内家電需要の低迷による影響を受けました。また、国内の通信ケーブルは国内生産拠点の再編と適正価格販売の効果に加え、建設関連向け需要が堅調に推移した他、車載向けの高速通信ケーブルも本格稼働をしました。
なお、通信ケーブル事業は構造改革の一環として光ファイバの製造工程の見直しに伴う費用を第3四半期に計上しております。
これらの結果、当事業における売上高は307億14百万円(前年度比7.6%減)、営業利益は13億81百万円(前年度比22.1%減)となりました。
(その他)
売上高は46億78百万円(前年度比6.5%増)、営業利益は2億円(前年度比8.0%減)となりました。
(注) 上記、各セグメントの売上高には、セグメント間の内部売上高または振替高を含めておりません。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下、「資金」といいます。)は、72億27百万円となり、前連結会計年度末に比べ32億68百万円増加しております。
営業活動によるキャッシュ・フローは税金等調整前当期純利益、減価償却費、売上債権の減少等により177億40百万円の収入(前期比135億77百万円収入増)となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、戦略製品の増産投資等の固定資産取得等による支出がありましたが、投資有価証券の売却により10億21百万円の収入(前期比45億69百万円収入増)となり、フリーキャッシュ・フローは187億61百万円のプラスとなりました。財務活動によるキャッシュ・フローは借入金の返済、配当金の支払等により156億26百万円の支出(前期比155億41百万円支出増)となりました。
④生産、受注および販売の状況
当社および連結子会社の生産・販売品目は、広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も含まれるため、セグメントごとに生産規模および受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。
このため、生産、受注および販売の状況については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②経営成績の状況」におけるセグメントの業績に関連付けて示しております。なお、主要な販売先については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (セグメント情報等) 関連情報 3 主要な顧客ごとの情報」に記載のとおりであります。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に基づいて作成されております。当該連結財務諸表の作成に当たっては、資産、負債、損益の計上金額ならびに関連する偶発資産および偶発債務の開示に影響する見積りを用いております。過去の実績や見積り時点で取得可能な情報に基づき、合理的と考えられる様々な要因を考慮し見積りを行っておりますが、当該見積りに基づく計上金額や開示額は実際の結果と異なる場合があります。
なお、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容
当社グループの連結会計年度における売上高は、産業機械向けおよび白物家電需要は低迷するも、国内向け建設関連および電力インフラ関連市場が堅調に推移したほか、xEV関連市場においても回復の傾向が見られ、前年度比で増収となりました。営業利益については、通信事業の構造改革に伴う一時的な損失やICT事業の収益本格化の遅れがありましたが、原材料・エネルギーコストの上昇を、販売価格への転嫁や各種収益力改善の取り組みによりカバーし、前年度比で増益となりました。
③経営成績に重要な影響を与える要因について
経営者の問題意識と今後の方針については、「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
④経営戦略の現状と見通し
当社グループは、2023年4月に経営体制および商号を変更するとともに、SWCCパーパスを策定し、新生SWCCとして新たなスタートを切りました。3年目を迎える中期経営計画「Change & Growth SWCC 2026」については、2021年11月の発表時点と足元の事業環境に大きな変化がみられることから、本年5月に中期経営計画「Change & Growth SWCC 2026 ローリングプラン2024」を策定しております。
2022年度からはじまる中期経営計画の前半2年間においては、戦略製品の増産投資やキャッシュ・カウ事業のDX推進による収益力強化など、基盤事業の収益力強化やSmart Stream事業の立ち上げといった新規事業創出において一定の成果を上げることができた一方、海外事業の新展開については、コロナ禍や地政学的リスクを要因に計画の遅れが生じるなど、課題が残る形となっております。
ローリングプランでは、これらの経過と現在の事業変化を踏まえ、事業戦略と投資戦略を見直し、成長ドライバーへのさらなる投資やポートフォリオ転換を目指した施策を策定しております。具体的には、ROIC経営にさらなる磨きをかけて事業のキャッシュ・フロー創出力を強化するほか、資本戦略の強化により資本コストの最適化と株主還元の充実を図ります。また、これまでの改革を後戻りさせない人的資本戦略も充実させるほか、今回の目標値のアップサイド要素(インオーガニック)として、事業領域を広げるためのBD(Business Development)戦略にも注力してまいります。
⑤経営者の問題意識と今後の方針について
経営者の問題意識と今後の方針については、「1 経営方針、経営環境および対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
⑥資本の財源および資金の流動性について
当社グループは、安定した財務基盤の強化に努めつつ、中長期的な将来の成長に向け、現中計において戦略製品の増産投資等にキャッシュ・フローを戦略的に振り向けてまいりました。ローリングプランにおいては、事業戦略、投資戦略を見直し、成長ドライバーへのさらなる投資やポートフォリオ転換を目指した施策を策定し、キャッシュ・アロケーションも見直しております。
具体的には、営業活動によるキャッシュ・フローでは、収益力強化および運転資本圧縮を通じたキャッシュ創出力の維持・向上に努めてまいります。
投資活動によるキャッシュ・フローでは、グループ統合システムや厚生棟などの人的資本投資の強化や、エネルギー・インフラ事業の設備投資の拡充等、償却額を上回る投資額を計画しております。
財務活動によるキャッシュ・フローでは、引き続き財務健全性の維持に努めつつ、株主還元の充実をはかってまいります。
なお、複数の金融機関でコミットメントラインを設定し、緊急時の流動性を確保しております。
該当事項はありません。
当社グループは、「いま、あたらしいことを。いつか、あたりまえになることへ。」のSWCCパーパスのもと、信頼とイノベーションにより「社会課題の解決」と「企業価値向上」を図るサステナブルな未来社会に貢献する研究開発を実行しております。
基盤事業であるエネルギー・インフラ事業、電装・コンポーネンツ事業、通信・産業用デバイス事業では、高い公共性を有するインフラ、モビリティ分野に大きく関わる新製品やサービスの開発を進めております。また、DXによるソリューションビジネスへ展開するとともに、電線事業以外の領域への新製品・商品開発や新規事業の開拓を推進しております。
当連結会計年度における、当社グループの研究開発費は総額
(エネルギー・インフラ事業)
当事業における研究開発活動は、SWCC㈱、冨士電線㈱および㈱昭和サイエンスを中心に進められております。
電力事業分野では、軽量・コンパクトで環境にも配慮した戦略製品である66kV~275kVの接続部品「SICONEX®(サイコネックス)」を用いた高電圧電力ケーブル接続工事に加え、就労人口減少に対応するため、SICONEX®に工事や教育を含めた電力工事のソリューションビジネスである「SICOPLUS®(サイコプラス)」を推進しております。さらに教育ツールの1つとして仮想空間と現実とを重ね合わせるAVR®(Advanced Virtual Reality)システムを66/77kVのSICONEX®施工技能教育に導入しました。また、新人施工人員の現場での経験値を補うツールとして、ベテラン技術支援者と作業現場を映像と音声でリアルタイムにつなぐ遠隔サポートシステム「SICOREMO®(サイコリモ)」を実用化しました。これらは、各電圧階級の変電所・発電所・送電線の建設工事において、接続作業の省力化、簡素化、品質管理の強化が図れるため適用が広がっております。
免震分野では、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の「国家レジリエンス(防災・減災)の強化」で設置された大サイズ免震製品用試験機を使い、建物に多く使われる大サイズの天然ゴム系積層ゴムや弾性すべり支承の製品性能を測定しました。また錫プラグ入り積層ゴムや弾性すべり支承の基礎的な研究成果を大学と共同で(一社)日本建築学会で発表しました。本成果は、災害に有効な免震構造の発展に活用される予定です。
当事業に係る研究開発費は
(電装・コンポーネンツ事業)
当事業における研究開発活動は、SWCC㈱にて進められております。
電動化など大きな変革期にあるモビリティ市場への貢献を目的に「モビリティ開発センター」を設立しました。本センターで低損失巻線技術を応用した非接触給電コイルを開発し、国立大学法人東京大学が中心となり進めている柏の葉スマートシティ内の日本初電動車への走行中給電公道実証実験にて当社のコイルユニットが採用されました。また電動車向けの電装部品である車載バスバー用耐火仕様覆付き平角線を開発し、試供品提供を開始しました。本製品には高機能無酸素銅「MiDIP®(ミディップ)」を使用することで高い加工性や導電性を有しております。
高強度、高導電性で優位性がある銅銀合金の極細線製造技術を応用し、半導体検査装置用ピン材を開発し市場投入を開始しました。
当事業に係る研究開発費は
(通信・産業用デバイス事業)
当事業における研究開発活動は、SWCC㈱および冨士電線㈱を中心に進められております。
メタルLANケーブル「FLANTEC®(フランテック)」の技術を活用し、産業機器の自動化やプロセス制御用のインダストリー向けとして、10G伝送用Cat.6Aに対応した製品の超細径型・耐屈曲・高遮へいタイプの開発を継続しております。またモビリティ分野の車載カメラに使用されるSTQ(Shielded Twist Quad)高速伝送ケーブルを開発し市場参入しました。さらに細径・軽量なSPE(Single Pair Ethernet)ケーブルの開発と新市場展開を進めてまいります。
光通信分野では、各種機器の小型化、ケーブルの細径化・軽量化・高密度化が可能な戦略商品である光ローラブルリボン「e-Ribbon®(イーリボン)」を用い、米国市場に対応するためにTelecordia GR-20規格に適合したケーブルを開発しリリースしました。引き続き各国・各用途に合わせたさらなる製品ラインナップの開発・拡充を推進いたします。
当事業に係る研究開発費は
(その他)
当事業における研究開発活動は、SWCC㈱および㈱アクシオを中心に進められております。
研究開発テーマの探索と推進・人財育成を目的に国立大学法人東北大学と「SWCC×東北大学 高機能金属共創研究所」を設置しました。銅合金等の革新的材料をはじめ次世代の技術・商品につながる研究開発を進めます。
超電導システムでは、大きな省エネルギー効果が期待できる大電流送配電システムへの実装検討を進めております。また、NEDO委託事業として、航空機用超電導推進システムにて、小型軽量化した超電導ケーブルや機器との接続部品を開発しております。
ICT分野では、クラウドID管理の分野で、ID棚卸機能、ID更新履歴などID管理が適切に行われるように統制された仕組み(IGA:IDガバナンス管理機能)の充実を求める企業が増加しており、㈱アクシオの提供サービスである『Keyspider』において、IGA機能とAI(人工知能)/ML(Machine Learning:機械学習機能)の実装に向けて開発を行っております。
当事業に係る研究開発費は948百万円であります。