(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、患者様のQOL向上に資する経営を行うべく、「最先端の優れた医療機器の開発と販売を通じて医療に貢献する」という経営理念のもと、日米共同開発を基軸に、整形外科分野の医療機器の開発・製造・輸入・販売を通じて日本だけでなく世界の医療マーケットに真に価値ある医療機器を提供していくことで、医療に貢献することを経営方針としております。
(2) 目標とする経営指標
連結業績目標
(注)1 親会社株主に帰属する当期純利益
2 対ドル為替レート:1ドル150円
(3) 経営環境及び対処すべき課題
1.パーパス、経営方針
当社グループは、「患者さんのQOL向上に貢献する」をパーパスと定め、「最先端の優れた医療機器の開発と販売を通じて、医療に貢献する」という経営理念のもと、日米共同開発を基軸に、医療機器の開発・製造・販売を通して、日本だけでなく世界の医療マーケットに真に価値ある医療機器を提供していくことで、当社グループの持続的な発展と企業価値の向上に努めます。
2.経営環境
<日本>
・高齢者人口の増加
日本における65歳以上の高齢者人口は、2023年は約3,622万人であり、2040年には約3,920万人(総人口の約35%)と増加することが想定されております。高齢者人口の増加に伴い、骨疾患(変形性股関節症、変形性膝関節症や脊柱管狭窄症、骨粗鬆症等に起因する骨折)を抱える患者の増加が予想され、今後も当社製品を用いた適応症例の拡大が見込まれます。
・医療体制の変容(医師の働き方改革への対応)
2024年4月より、医師の健康と医療の質・安全を確保するため、医師の働き方改革が施行されています。整形外科にかかわる適応症例の拡大が見込まれる中、勤務医の時間外労働は年間上限が原則960時間とされました。この改革により、医師のタスクシフトや手術オペレーションの効率化など、より労働時間と医療の質のバランスを意識した変化が起きることが予想されております。当社としても、こうした変化を見越して、治療効果に優れた製品開発はもちろんのこと、習熟までの時間が短縮された使い勝手の良い製品の開発・導入を追求することが重要と考えております。
・償還価格の引下げ
国は効率・効果的で質の高い医療提供体制の構築を推進するために、大幅な税収増が見込めない中、社会保障関係費の抑制が不可避な状況であり、診療報酬改定による償還価格のマイナス改定を行うなど、当社にとって厳しい市場環境が継続するものと想定しております。また、当社製品や医療サービス等においても、厚生労働省発表による2024年6月1日付償還価格改定により償還価格が一部引下げられます。
<米国>
・高齢者人口の増加
米国の65歳以上の高齢者人口は、2022年は約5,779万人であり、2040年には約8,000万人(総人口の約21%)規模に増加すると見込まれております。また、高齢者以外でも肥満等に起因する変形性関節疾患を抱える患者のQOL(Quality of Life)向上ニーズも継続的に存在する見込みであることから、人工関節置換術を必要とする患者の増加が予想され、今後も当社製品を用いた適応症例の拡大が見込まれます。
・医療ニーズの変化
整形外科手術においても、術前の手術計画ソフトや術中の手術ナビゲーションシステム、ロボットを用いた手術、ウエアラブルデバイスから取得したデータを用いた手術後のリハビリテーションプログラムの展開などデジタルソリューションを活用した治療のトレンドが見受けられます。さらに、医療施設にとってはこうした新規技術を経済合理性が伴う形で導入し治療コスト削減に繋げていくことも重要な課題と当社は認識しております。
また、治療コスト削減においては、入院ではなく外来で人工関節手術を行うASC(Ambulatory Surgical Center)における人工関節手術が増加傾向にあり、医療施設にとって低コストでオペレーション効率の向上に寄与するインプラント・医療工具、簡易なデジタルソリューションの調達ニーズが拡大するものと考えており、当社としては、デジタル技術活用などについて多様化する医療施設のニーズに即して様々な選択肢を提供していくことが必要と認識しております。
<その他>
・製造原価上昇、及び為替変動(円安)による収益性低下
米国インフレ等の影響やサプライヤーからの調達コスト上昇により、米国子会社の製造原価が上昇し、また、対USドルの換算レートが150円台と円安傾向が続いており、米国子会社からの製品輸入において原価率の悪化が避けられない状況となっております。
当社は、「SAICOプロジェクト」(Strategic Actionable Initiatives for Cost Optimization)などにより、収益性の向上を図るべく、以下の施策を実行していきます。
① 内製化比率の拡大による原価低減
② 米国におけるサプライヤー(製造委託先)の複社購買化によるサプライチェーンのレジリエンス向上
③ アジア・欧州地域のサプライヤーへの製造委託拡大による原価低減
④ 自社製品の販売比率の拡大による収益性改善
⑤ 中国合弁会社WOMA社(Changzhou Waston Ortho Medical Appliance Co., Limited)を活用した医療工具コストの低減による設備投資・経費(減価償却費)の圧縮
・ PBR1倍割れへの課題
中期経営計画「MODE2023」では、最終年度の2024年3月期において、連結売上高231億円、営業利益率7.5%、ROE5.2%、ROIC4.5%と米国製造原価の悪化、及び急激な円安進行による日本国内の売上原価率の上昇の影響で収益性が低下し、株価もPBR1倍割れの状態となっています。
PBR1倍割れの改善策として、長期VISION「RT500」(2025年3月期~2033年3月期)のはじめの3年間である1st Stage(2025年3月期~2027年3月期)最終年度までに連結売上高300億円、営業利益率10.0%以上、ROE8.0%以上、ROIC7.0%以上を目標とします。目標達成の施策として、新製品導入により日米売上高を拡大し、円安進行による日本国内の原価悪化対策や米国製造原価の低減策としてSAICOプロジェクトなどに取り組むことで、収益性の向上を図ります。また、製品ポートフォリオを定期的に見直すとともに、新製品開発など成長投資を行い、株主資本コストを意識した経営を実現します。なお、株主還元策については、安定配当を基本とし、配当性向30%以上を目指します。
・三井化学株式会社との業務提携
2022年1月に資本業務提携契約を締結した三井化学株式会社と連携し、同社が保有するヘルスケア分野での開発・製造機能や各種事業運営上のノウハウと、当社グループが保有する日米に跨る医療機器分野の薬事・開発及び販売・マーケティング機能を相互に有効活用しながら、製品開発など協業を推進しております。
3.長期VISION「RT500」(2025年3月期~2033年3月期)
当社は、2033年3月期を最終年度とした長期VISION「RT500」を策定し、長期経営方針として「医療現場ニーズを把握し、治療価値向上に資するサービスをより高い専門性・品質をもってタイムリーかつ安定的に医療現場に提供する」を掲げました。
定量目標として、連結売上高500億円以上、営業利益率15%以上、ROE10%以上、配当性向30%以上を目標とし、企業価値の向上を目指します。
4.1st Stage(2025年3月期~2027年3月期)
当社は、長期VISION「RT500」のはじめの3年間を「1st Stage」として、以下の重点施策に取り組んでおります。
「今後3年間の重点施策」
・ 販売力強化(米国ビジネスの拡大、日本ビジネスの拡大、中国販売基盤の構築)
・ 製品ポートフォリオマネジメント強化
・ サプライチェーンマネジメント強靭化
5.サステナビリティ課題
当社は、「最先端の優れた医療機器の開発と販売を通じて、医療に貢献する」という経営理念のもと、マテリアリティ(重要課題)を特定し、ESG活動を通して企業の社会的責任(CSR)を果たし、SDGs(持続可能な開発目標)に貢献します。
「マテリアリティ(重要課題)」
・患者QOLの向上
・環境負荷の低減
・人権尊重への取組み
・多様な人材の活躍推進
・医療ニーズへの高品質対応
・コーポレート・ガバナンスの推進
文中において将来について記載した事項は、当連結会計年度末日現在において当社が判断したものであります。
1. サステナビリティを巡る取組みについての基本方針
当社は、「最先端の優れた医療機器の開発と販売を通じて、医療に貢献する」という経営理念のもと、マテリアリティ(重要課題)を特定し、ESG活動を通して企業の社会的責任(CSR)を果たすと共に、SDGs(持続可能な開発目標)に貢献します。
2. 国連グローバル・コンパクトへの加盟
国連グローバル・コンパクト(UNGC)は、持続可能な成長を実現するための世界的な枠組みづくりに参加する企業・団体の自発的な取組みです。UNGCに署名している企業は、「人権の保護」、「不当な労働の排除」、「環境への対応」、そして「腐敗の防止」の4つの領域に関わる10の原則の実現に向けて努力を継続します。当社は2022年から、UNGCに加盟しています。
当社は、UNGCに署名することで、企業姿勢を明確に表明するとともに、「最先端の優れた医療機器の開発と販売を通じて、医療に貢献する」という経営理念のもと、グローバルな視点からサステナビリティ推進活動に積極的に取り組むことで、様々なステークホルダーからの要請に応えるとともに、持続可能な社会づくりに貢献してまいります。
3. サステナビリティ・ガバナンス体制
当社の取締役会は、サステナビリティを巡る課題(気候変動などの地球環境問題への配慮、人権の尊重、エンゲージメントの向上、タレントマネジメント、従業員の健康・労働環境への配慮や公正・適切な処遇、取引先との公正・適正な取引、自然災害等への危機管理など)への対応が、リスクの減少のみならず収益機会にもつながる重要な経営課題であると認識し、サステナビリティに関する活動(ESG活動)を推進するため、サステナビリティ委員会を設置しています。
サステナビリティ委員会は、取締役会で策定された基本方針に基づき、当社グループのサステナビリティに関する重要事項を協議し、ESG活動を推進するとともに、定期的にESG活動の実績評価を行い、委員会での協議・評価などの結果について、取締役会に報告します。
当社は、「最先端の優れた医療機器の開発と販売を通じて、医療に貢献する」という経営理念のもと、優先的に取り組むべき環境・社会課題として、「事業活動におけるマテリアリティ」と「事業基盤におけるマテリアリティ」に区分し、6つのマテリアリティを特定しました。
5. 環境負荷の低減
(1) 環境方針
基本的な考え方
日本エム・ディ・エムグループは、環境への取組みを経営の重要課題と位置付け、社会の責任ある一員として、地球環境の保全や循環型社会の形成に貢献し、社会から信頼される企業を目指します。
(2) TCFD提言への対応
当社グループは、気候変動への対応もマテリアリティの一つとして捉え、2022年3月にTCFDの提言に賛同を表明するとともに、同提言に賛同する企業や金融機関等からなる TCFD コンソーシアムへ参画いたしました。気候変動に真摯に向き合い、事業に影響するリスク・機会への理解を深化させ、その取組みの積極的な開示に努めてまいります。なお、TCFD提言では、気候変動に関する「①ガバナンス ②戦略 ③リスク管理 ④指標と目標」の各項目に関する情報開示が推奨されています。当社は、シナリオ分析、気候変動に伴うリスクと機会を評価し、TCFD提言に従い4つの開示推奨項目に沿った情報を開示してまいります。
① ガバナンス
当社の取締役会は、サステナビリティを巡る課題(気候変動などの地球環境問題への配慮、人権の尊重、従業員の健康・労働環境への配慮や公正・適切な処遇、取引先との公正・適正な取引、自然災害等への危機管理など)への対応が、当社の事業リスクの減少のみならず収益機会にもつながる重要なマテリアリティ(重要課題)であると認識し、その対応に責任を持ちます。なお、TCFDへの対応については、サステナビリティ委員会※での協議・評価を経て年2回取締役会へ報告され、取締役会は委員会からの報告に基づき承認・監督・指導を行う体制としています。
※サステナビリティ委員会
社長執行役員が委員長を務め、執行役員、サステナビリティ推進室長及び委員長が指名する者を委員とし、サステナビリティ推進室が事務局となり年2回以上開催することとしています。
② 戦略
(ア)シナリオ分析
当社は、シナリオ分析の手法を用いて、移行・物理それぞれにおける気候変動関連のリスクと機会を特定しています。シナリオ分析では、IEA(国際エネルギー機関)等が公表する「シナリオ」を用いて、事業にどのような影響を及ぼすかを検討しました。今回実施したシナリオ分析は、国内(当社単体)の製品及びサービスの輸入、開発、製造、販売までのバリューチェーン全体を対象とし、4℃シナリオ、1.5℃シナリオの2つのシナリオを用いて、2030年時点における影響を考察・検討しております。今後、海外(関係会社)にも分析を広げ、継続してシナリオ分析を実施することでその精度を高めてまいります。また、審議結果は取締役会へ報告の上、不確実な将来に向けたレジリエンスを高めてまいります。
・4℃シナリオ
気温上昇が4℃を超え、気候変動の影響が顕在化した場合
低炭素化を推進する政策や規制が限定的にしか実施されないことで地球温暖化が進行し、平均気温が上昇することで、熱ストレスによる当社の労働環境悪化が見込まれます。また、気温上昇に伴う感染症の蔓延により急性疾患の手術が優先的に行われ、人工関節置換や脊椎固定の慢性疾患手術が延期もしくは中止されてしまい、当社の製品売上が減少する可能性があることを認識しております。
・ 1.5℃シナリオ
気温上昇が1.5℃以下に抑えられ、世界全体が低炭素社会へ移行した場合
脱炭素や低炭素を念頭においた経済活動が活発化し、世の中が規律型社会へと変革することが見込まれます。それに伴い、規制強化が生み出す炭素税導入、また市場の環境配慮志向が強まり、循環型社会を目指した環境配慮素材の利用が求められ、それらの対応コストが増幅すると予測されます。当社としては、脱炭素を推進する政府からの情報を迅速に入手し、省エネ・再エネへの投資を強化するほか、顧客等のサステナブル志向に合致した施策を実行することで循環型社会に貢献したいと考えております。
(イ)気候変動に伴うリスクと機会
対象範囲 : 国内のみ(当社単体)
時 期 : 短期(1年以内)、中期(1年超から3年以内)、長期(3年超)
影 響 度 : 小(0.5億円以内)、中(0.5億円超~2億円)、大(2億円超)
③ リスク管理
当社では、リスク管理規程に基づいて、リスク管理委員会の活動推進により、経営重点リスクを管理しています。気候変動のリスクについても、経営重点リスクに位置付け、リスク分析を行っています。サステナビリティ委員会は、下部組織であるリスク管理委員会、コンプライアンス委員会、及び人的資本委員会と連携し、サステナビリティに関するリスクの把握と適切な対応を審議し年2回取締役会に報告します。取締役会は、サステナビリティ委員会からのリスク管理の状況と対応について報告を受け、監督・指導を行います。
④ 指標と目標
当社は、気候変動における指標を温室効果ガス(GHG)の排出量と定め、2020年3月期のスコープ1、2におけるGHG排出量を基準とし、2031年3月期の削減目標を2020年3月期比30%削減、2051年3月期には「GHG排出量ゼロ」にすることを目標として掲げています。
各拠点における省エネ推進、再生可能エネルギー由来の電力調達、電気自動車の段階的導入など、GHG排出削減の取組みを計画的に実行し2050年のGHG排出量ゼロを目指します。
連結スコープ1、2、3GHG排出量実績:t-CO2
CDP2024気候変動に関する調査において「B-」評価に認定
CDPが世界の機関投資家と連携して企業の気候変動に関する戦略や温室効果ガス排出量の情報開示を求めるプロジェクトに参加しています。
当社は、2024年2月、国際的な環境評価の情報開示システムを運用するCDPから、環境問題によるリスクや影響を管理している企業としてスコアレベル「B-」評価(マネジメント)として評価されました。
6. 人権尊重への取組み
人権方針
基本的な考え方
日本エム・ディ・エムグループは、「最先端の優れた医療機器の開発と販売を通じて、医療に貢献する」ことを経営理念に掲げ、自らのすべての企業活動が、人権尊重を前提に成り立っているものでなければならないと認識しています。日本エム・ディ・エムグループは、人権尊重の取り組みをグループ全体で推進し、その責務を果たす努力をしていきます。
(1) 日本エム・ディ・エムにおける人権デューデリジェンス
人権方針に則り、グループ内での人権尊重の取り組みを進めています。
日本エム・ディ・エムは、人権尊重の取組みとして、人権侵害が起きないようコンプライアンス部門が毎年人権デューデリジェンスとしてアンケートを行ないます。コンプライアンス部門は、アンケートの結果、人権問題の有無をサステナビリティ委員会に報告し、インタビュー等により人権問題が確認された場合、是正・救済を行います。なお、サステナビリティ委員会は、アンケート調査の結果、人権問題の有無に関して取締役会に報告することとしています。
(2) 人権への負の影響の特定
ILO中核的労働基準を軸に当社の状況に沿った以下の従業員の潜在的な人権リスクを特定しました。
・人権リスク
①人権尊重に対する意識
②過剰・不当な労働時間、職場における待遇・適切な賃金、労働安全衛生
③ハラスメント、プライバシーの侵害、差別
④救済のアクセス
7. 多様な人材の活躍推進CMS(キャリア・マネジメント・システム)
(1) 人材育成方針
① 社員一人一人がキャリアを考え、会社や上司との相互作用でキャリア形成につなげる仕組み(CMS(キャリア・マネジメント・システム))の強化及び運営を推進します。
② 社会、医療、患者さん、仲間のために、という『貢献意識』を醸成します。
③ “自分らしさ”を大切に、属性を問わず活躍できるよう、全従業員の『個性の発揮』を推進します。
④ キャリアパスを意識し、当社独自の職務分類・職務要件一覧に基づいた研修プログラムの活用を推進します。
⑤ 各ポジションにおける専門性の向上を推進します。
(2) 社内環境整備方針
① 全職階、経営層においても多様性の確保が重要と考え、年齢、性別、国籍を問わず能力や経験に応じた採用・登用を推進します。
② 社員の職業生活と家庭生活の両立に資する社内制度を充実させます。
(例:時間単位休暇、フレックスタイム勤務、在宅勤務、コンバインドワーク、地域限定勤務、ウェルカムバック、各種研修、等)
③ 各ポジションにおける専門性を向上させるための研修プログラムの充実を目指します。
④ 自分のキャリアを考えるためのMyキャリア、会社や上司へ意識・要望などを伝えるMyボイス等のITシステムの活用を推進します。
⑤ 個人の意思を尊重したキャリアコンサルティング制度、全社員を対象としたセルフキャリアドック制度を推進します。
(3) 人材開発の取組み、ダイバーシティ&インクルージョン
当社は、社員一人一人が自分のキャリアを考え、会社や上司との相互作用でキャリア形成につなげるCMS(キャリア・マネジメント・システム)を導入しています。
人材開発に関しては、人的資本委員会にて、人材の多様性の確保を含む人材育成方針に基づき、エンゲージメントの向上、後継者育成(タレントマネジメント)などに取り組んでいます。
なお、この取組みを推進するために、自分のキャリアを考えるためのMyキャリア、会社や上司への要望などを伝えるMyボイスなどのITシステム、キャリア支援のためのキャリアコンサルティング制度、全社員を対象としたセルフキャリアドック制度、健康経営など、社内環境整備にも取り組んでいます。
(4) (多様性を含む人材育成方針及び社内環境整備方針に関する)指標の内容、目標、実績
① 女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供
② 職業生活と家庭生活との両立
③ その他、多様性を含む人材の確保と人材開発
文中において将来について記載した事項は、当連結会計年度末日現在において当社が判断したものであります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関連する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、主として以下のようなものがあります。
なお、当社グループの事業等はこれら以外にも様々なリスクを伴っており、ここに記載されたものがリスクのすべてではありません。当社グループはこれらのリスク発生の可能性を認識した上で、可能な限りリスク発生の防止に努め、リスクが発生した場合の的確な対応に努めていく方針です。また、文中において将来について記載した事項は、当連結会計年度末において判断したものであります。
(サプライチェーンに関するリスク)
当社グループが販売する製商品等は、ODEV社から調達する自社製品の他、販売提携契約等に基づいた他社からの仕入商品もあります。ODEV社の自社製造に関する部材調達先で問題が発生した場合や、他社からの調達商品の仕入・物流等が遅延または停止した場合、損益及び財政状態に影響を及ぼすリスクがありますので、部材調達先の多様化や自社製造の比率を高める対策を行っております。
(販売に関するリスク)
予期していなかった製品不具合の発生、他社との競合等は、売上を減少させ得る要因となり損益及び財政状態に影響を及ぼすリスクがありますが、不具合の発生状況や他社の販売動向について月次でレビューする仕組みを構築し、リスク低減を図っております。
(法規制、行政動向に関するリスク)
医療機器の販売は、様々な法規制を受けております。国内においては、2年毎に診療報酬が改定されるなどの行政施策が当社の損益及び財政状況に影響を及ぼすリスクもあります。また、米国における医療制度に関連した行政施策などが、当社の米国子会社の損益及び財政状況に影響を及ぼすリスクもあります。その対策として、より収益性が高い自社製品の販売比率を高めることや、自社製造比率を高める等の手段により売上原価の低減を図ることで、収益悪化リスクに対応しております。
この他、税制関連の法令改正等により法人税等実効税率が変更された場合、繰延税金資産の金額が変動し、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼすリスクがあります。
(研究開発に関するリスク)
新製品の研究開発は、開発期間中に、期待されていた有効性・安全性の確認ができず製品の開発を中止するリスクがあります。また、開発した製品の販売を開始するためには、各市場において薬事承認を取得する必要がありますが、薬事承認取得の可否及び取得に要する期間が当社の計画どおりとならないリスクがあります。
(知的財産に関するリスク)
当社グループが取扱う製商品、及び、医療工具等が他社の保有する特許等知的財産権に抵触した場合、係争の発生や販売停止、賠償金の支払いに至る可能性があり、当社の損益及び財政状態に影響を及ぼすリスクがあるため、製品の開発段階で関連する他社特許の内容を調査する、適宜外部の専門家に相談するなどリスク低減に努めております。
(訴訟に関するリスク)
公正取引に関する事案の他、特許、販売に関する契約、製造物責任、労務問題などに関し、訴訟を提起される可能性があり、その動向によっては損益及び財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。
(為替変動に関するリスク)
当社は主にODEV社からUSドル建てで輸入仕入していること、また、連結財務諸表においてODEV社のUSドル建て財務諸表を円換算していることから、為替相場の変動は当社グループの損益及び財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。なお、当社は為替予約方針を定め、当該方針に基づく運用により、USドル建ての輸入に関わる為替変動リスクの低減に努めております。
(感染症拡大に関するリスク)
感染症拡大に伴う各国保健行政の指針に従い、医療機関が人工関節置換術など緊急を要さない手術を延期させることなどにより当社グループの損益及び財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。
なお、当社は、感染症の拡大時には顧客、取引先、社員及び社員の家族の安全を第一とし、各国保健行政の指針に従いマスクの着用や3密(密閉・密集・密接)回避などの感染防止策を徹底し、感染リスクが高い国や地域への渡航・出張の原則禁止、多くの来場者を招いてのイベントの休止や延期及びリモート開催の併用、間接部門を中心としたテレワーク(在宅勤務)の実施などにより、更なる感染拡大の防止に努めます。
(気候変動に関するリスク)
世界的なGHG(温室効果ガス)排出増大に起因する地球温暖化がもたらす急性的あるいは慢性的な気候変動、及びそれに対して各国や地域行政が講じる政策・施策は、市場環境や原材料の調達などに大きな影響を与え、当社グループの事業の継続や業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。そのため、当社はサステナビリティ推進室を設置し、当社グループにおける全社的な気候変動対応に向けた施策の立案とESG活動の推進、経営陣に向けた提言、社員に向けた啓発と情報提供、そして、投資家をはじめとする社外ステークホルダーに向けた情報開示を遂行する体制を構築し、リスク低減に努めております。
(その他のリスク)
上記のほか、損益及び財政状態に影響を及ぼすリスクとしては、地震等大規模な災害の発生に伴う事業活動の停滞、情報セキュリティ問題によるITシステム停止、金利の変動、販売先の経営悪化などに起因する売上債権の貸倒れ等があります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当社グループの当連結会計年度における売上高は23,177百万円(前連結会計年度比1,869百万円増、同8.8%増)、営業利益1,746百万円(前連結会計年度比277百万円減、同13.7%減)、経常利益1,842百万円(前連結会計年度比200百万円減、同9.8%減)、親会社株主に帰属する当期純利益1,271百万円(前連結会計年度比152百万円減、同10.7%減)となりました。なお、連結売上高に占める自社製品売上高の割合は、80.2%(前連結会計年度は80.6%)となりました。
日本国内では、2023年4月、2024年1月に実施された償還価格引下げによる影響があったものの、獲得症例数が伸長したことにより、売上高は13,004百万円(前連結会計年度比647百万円増、同5.2%増)(「収益認識に関する会計基準」の適用による、販売促進費の一部控除後)となりました。
米国では、昨年開拓した新規顧客が成長に貢献し、人工膝関節製品の獲得症例数が伸長したことにより、米国の外部顧客への売上高は70,448千USドル(前連結会計年度比4,118千USドル増、同6.2%増)と伸長し、円換算後は円安の影響により10,173百万円(前連結会計年度比1,222百万円増、同13.7%増)となりました。(ご参考:前連結会計年度の米国売上の換算レートは1USドル134.95円、当連結会計年度は同144.41円)
日本国内の人工関節分野は、ハイドロキシアパタイト(HA)コーティングを施した人工股関節製品「Entrada Hip Stem」の獲得症例数が伸長し、人工股関節置換術(THA)の全体の売上が好調に推移しました。一方、人工骨頭置換術(BHA)は、「Entrada Hip Stem」、新製品「Promontory Hip Stem」などの獲得症例数が増加したものの「Ovation Hip Stem」などの獲得症例数が減少したことから、BHA全体の売上は僅かな成長に留まりました。また、人工膝関節製品「BKS TriMax」の人工膝関節置換術(TKA)は獲得症例数が伸長し、売上が2桁成長と好調に推移しました。その結果、本分野の日本国内売上高は4,932百万円(前連結会計年度比4.1%増)となりました。
米国の人工関節分野は、人工膝関節製品「BKS TriMax」、「BKS Revision Knee」などの人工膝関節置換術(TKA)の獲得症例数が顧客基盤の拡大に伴い伸長し、売上が2桁成長と好調に推移しました。一方、人工股関節製品は、「Entrada Hip Stem」、「Alpine Hip Stem」の売上は2桁成長したものの、「Ovation Tribute Stem」などTaper WedgeタイプのStemは一部顧客が他社のTriple TaperタイプのStemに移行したため、人工股関節置換術(THA)全体の売上が減少しました。その結果、本分野での米国売上高は70,224千USドル(前連結会計年度比6.4%増)となりました。(円換算後では円安の影響により10,141百万円(前連結会計年度比13.8%増))
骨接合材料分野は、「ASULOCK」、「Prima Hip Screw」の売上が引き続き2桁成長と順調に推移したことなどから、日本国内の売上高は4,563百万円(前連結会計年度比5.6%増)となりました。
脊椎固定器具分野は、日本国内において、「Vusion Ti 3D ケージ」、「Lince Plate(旧Lynx Plate)」、「KMC Kyphoplastyシステム」などの売上が伸長しました。特に「KMC Kyphoplasty システム」は、今期に入りBKP(Balloon Kyphoplasty)市場の拡大による成長機会を捉える施策を実行した結果、売上が伸長しました。これらの要因により、本分野での日本国内及び米国の売上高合計は3,354百万円(前連結会計年度比4.0%増)となりました。
売上原価はインフレ及び円安に伴う調達コストの上昇により増加しました。さらに、売上比では日本国内における償還価格引下げの影響などにより、売上原価率が36.3%(前連結会計年度は34.3%)となりました。販売費及び一般管理費は、米国の売上増加に伴う支払手数料(コミッション・ロイヤリティ)、研究開発費、賃上げを実施したことによる人件費が増加しました。下半期は、円安の影響により米国の費用が円換算ベースで増加したものの、経費を抑制した結果、13,015百万円(前連結会計年度比8.8%増)となり、売上高販管費率は56.2%(前連結会計年度は56.2%)となりました。
営業利益は、売上高が増加したものの、売上原価率が上昇したことに加えて販売費及び一般管理費が増加した結果、1,746百万円(前連結会計年度比13.7%減)となりました。
経常利益は、為替差益190百万円など営業外収益を213百万円計上し、持分法による投資損失65百万円、支払利息31百万円など営業外費用を116百万円計上した結果、1,842百万円(前連結会計年度比9.8%減)となりました。
特別損益は、投資有価証券評価損72百万円、医療工具などの固定資産除却損48百万円、第1四半期における和解関連費用75百万円の合計206百万円などを特別損失に計上しました。
親会社株主に帰属する当期純利益は、上記の結果、前連結会計年度比10.7%減の1,271百万円となりました。
セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。
日 本・・・・ 売上高は償還価格の引き下げの影響がありましたが、主要な分野で堅調に推移致しました。また、賃上げを実施したことにより給料及び手当が増加したことなどから、販売費及び一般管理費も増加しました。
その結果、当セグメントの売上高は13,004百万円(前連結会計年度比5.2%増)、営業利益は1,093百万円(前連結会計年度比11.2%減)となりました。
米 国・・・・ 売上高は人工関節分野の外部顧客への売上が増加しました。また、支払手数料(コミッション・ロイヤリティ)や研究開発費の増加により、販管費及び一般管理費も増加しました。
その結果、内部売上高を含んだ当セグメントの売上高は14,360百万円(前連結会計年度比12.3%増)、営業利益は636百万円(前連結会計年度比1.8%減)となりました。
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末と比べ2,051百万円増加し、31,485百万円となりました。主な増加は、商品及び製品880百万円、受取手形、売掛金及び契約資産644百万円、工具、器具及び備品335百万円、仕掛品325百万円であります。
負債合計につきましては、前連結会計年度末と比べ260百万円減少し、5,882百万円となりました。主な減少は、長期借入金472百万円、繰延税金負債375百万円、未払法人税等146百万円で、主な増加は、買掛金424百万円、退職給付に係る負債216百万円、短期借入金115百万円であります。
また、当連結会計年度末の有利子負債(短期借入金、長期借入金及びリース債務の合計額)から現金及び預金を控除した純有利子負債は△827百万円であります。
純資産合計は、前連結会計年度末と比べ2,311百万円増加し、25,603百万円となりました。主な増加は、利益剰余金927百万円、為替換算調整勘定1,451百万円であります。
その結果、当連結会計年度末の自己資本比率は81.0%(前連結会計年度末は78.7%)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ483百万円減少し、2,321百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは2,104百万円の収入(前連結会計年度は2,186百万円の収入)となりました。収入の主な内訳は税金等調整前当期純利益1,636百万円、減価償却費1,595百万円、支出の主な内訳は法人税等の支払額893百万円であります。
投資活動によるキャッシュ・フローは1,804百万円の支出(前連結会計年度は1,481百万円の支出)となりました。主な内訳は有形固定資産の取得による支出1,783百万円であります。
財務活動によるキャッシュ・フローは840百万円の支出(前連結会計年度は514百万円の支出)となりました。支出の主な内訳は長期借入金の返済による支出561百万円、配当金の支払額343百万円、収入の主な内訳は短期借入金の純増加額144百万円であります。
③ 生産、受注及び販売の状況
前連結会計年度及び当連結会計年度における生産実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。
(注) 上記金額は製造原価により、製品の再加工等が含まれております。
(ロ)受注実績
当社グループでは、見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
前連結会計年度及び当連結会計年度における販売実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。
(注)1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 日本の販売実績は、「収益認識に関する会計基準」を適用しているため、売上高から販売促進費の一部を 控除しております。
3 日本における品目別販売実績は、合理的な売上控除按分ができないため、当該売上控除額を一括で表示しております。
当連結会計年度の財政状態及び経営成績及びキャッシュ・フローの分析は、以下のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末日現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者により会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りとは異なる場合があります。
なお、上記会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは、「第5 経理の状況 1 連結財務相表等 (1)連結財務諸表 [注記事項](重要な会計上の見積り)」に記載しております。
② 当連結会計年度の経営成績の分析
当連結会計年度の経営成績の分析については、「第2[事業の状況]1[経営方針、経営環境及び対処すべき課題等]」をご参照ください。
③ 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2[事業の状況]3[事業等のリスク]」をご参照ください。
④ 当連結会計年度の財政状態及びキャッシュ・フローの状況の分析
財政状態については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」をご参照ください。また、キャッシュ・フローの状況の分析については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
⑤ 資本の財源及び資金の流動性の分析
財務政策につきましては、当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、主に金融機関からの借入金により資金調達を行っております。
資金需要につきましては、運転資金として、仕入高、販売費及び一般管理費等の営業費用があります。また、設備資金として、主に医療工具類の取得があります。
(3) 経営者の問題認識と今後の方針について
経営者の問題認識と今後の方針については、「第2[事業の状況]1[経営方針、経営環境及び対処すべき課題等]」をご参照ください。
(販売権契約等)
(2024年3月31日現在)
(注)1 2024年3月31日時点の当社グループの経営上の重要な契約を記載しております。
2 ODEV社製「KASM® Knee Articulating Spacer Mold」の米国における販売提携契約です。
3 常州華森医療器械有限公司の社名は中国語簡体字を含んでいるため、日本語常用漢字で代用しております。
(業務提携契約等)
当社グループにおける研究開発活動は、「日本」では薬事・開発本部、「米国」では米国子会社Ortho Development Corporation(以下ODEV社)の開発部門において行われております。
「日本」
薬事・開発本部では、整形外科分野における工具の改良・新機能の開発等に取り組んでおります。
「米国」
米国子会社ODEV社の開発部門では、骨接合材料、人工関節、脊椎固定器具など整形外科分野の製品開発に取り組んでおります。
なお、当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発に要した費用は、