第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)経営方針

当社は、当社グループの強みであるアルミニウムに関する広範な知見の蓄積と多様な事業群を最大限に活用して、企業価値の向上を目指すとともに、事業活動を通じて様々な社会課題の解決を図ることにより、持続可能な社会の実現に貢献していくことを目指しております。当社の経営理念や目的を定義した「日軽金グループ経営方針」は次のとおりです。

 

日軽金グループ経営方針

 

◆ 経営理念

アルミニウムを核としたビジネスの創出を続けることによって、

人々の暮らしの向上と地球環境の保護に貢献していく

 

◆ 基本方針

・健康で安全な職場をつくり、「ゼロ災害」を達成する

・グループ内外との連携を深化させ、お客様へ多様な価値を継続的に提供する

・持続可能な社会を実現するため、カーボンニュートラルに積極的に取り組む

・人権を尊重し、倫理を重んじて、誠実で公正な事業を行う

・多様な価値観を尊重し、長期的かつグローバルな視点で人財を育成する

 

(改定: 2022年5月16日)

 

(2)日本軽金属グループの経営環境

①事業領域

 当社グループはアルミニウム素材から中間製品、加工製品まで、アルミニウム総合メーカーならではのトータルソリューションの提供により、幅広く事業を展開し、高品質で付加価値の高い製品を生み出しております。

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②事業基盤

 当社グループの総合力は、異なる事業ユニットをマーケットインの発想で横断的につなぐ《横串》体制を基盤とした「チーム日軽金」としての一体感によって発揮されます。全従業員が「お客様のニーズを探索し、解決に導く」というマインドを持ち、「探って、創って、作って、売る」という一連の流れを担うことで、お客様とともに、市場競争力のある付加価値の高い商品・サービスの創出を行っております。

 

 

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(3)重要課題(マテリアリティ)

当社グループは、SDGsが目指す持続可能な社会の実現のために、アルミニウムに関する総合的かつ広範な事業領域を通じて貢献していきます。その中で当社グループが特に取り組むべき課題は何かを認識し、当社グループの持続的な成長および企業価値創造のための重要な経営課題としていくため、当社取締役会において『当社グループの重要課題(マテリアリティ)』を特定しています。

 

特定した重要課題

5つの重要課題テーマ

重要課題

地球環境保護

自社での温室効果ガス削減(スコープ1、2)

サプライチェーンでの温室効果ガス削減(スコープ3)

気候変動への対応(TCFD)

水ストレスへの対応

環境汚染の防止

持続可能な価値提供

再生可能エネルギーの利用拡大への取組み

低炭素商品・サービスの開発、提供

循環型経済・社会の推進

強靭なインフラ整備、提供

食糧の安定供給への貢献

イノベーションによる未来づくり

従業員の幸せ

労働の安全衛生

働きがいのある職場づくり

ダイバーシティ&インクルージョン

人財の確保、育成

責任ある調達・生産・供給

安全、安心な商品・サービスの提供

人権の保護、尊重

安定したサプライチェーンの構築

変化に柔軟で強靭なバリューチェーン

企業倫理・企業統治

ガバナンスの強化

コンプライアンス体制の強化

 

 

 

 

(4)対処すべき課題

 今後の世界経済は、緩やかな回復が続くことが期待されますが、世界的な金融引締め、中国の景気停滞、長期化するウクライナ情勢や中東情勢を含む地政学的リスクの高まり、米国大統領選挙の行方等、予断を許さない状況が続くと思われます。

 こうした状況のもと、当社グループが持続的な成長を遂げるためには、当社グループを取り巻く経営環境に注視しつつ、収益力向上に加え、企業風土の改革、人的資源の活用等、当社グループが克服すべき課題の解決に向けた持続的な取組みを強化し、引き続き経営改革・構造改革を推し進めるとともに、お客様のニーズと社会課題への対応を両立させた価値創出の実現に挑戦し続け、新しい日本軽金属グループへと生まれ変わることが必要であると認識しております。

 このような認識のもと、当社グループでは、「チーム日軽金」としての連携による新たな価値の創出を加速する組織構造への変革を目指してまいります。

 すなわち、当社グループ各社の属する市場、商品特性等を総合的に考慮したうえで事業のグルーピングを行い、市場分野が近接する事業をより一体的に運営することで、グループ連携の強化と資本効率の向上を図ります。加えて、グループ・ガバナンス強化の観点での組織の見直しを行います。これらの組織改革により、従来の当社グループの姿にとらわれない新しい日本軽金属グループを具現化し、経営資源の適切な配分による新商品・新ビジネス創出の加速、業務変革やグループ・ガバナンスの強化に加え、従来よりも広範かつ長期的な視点からの成長戦略を立案・実行し、当社グループとしての企業価値最大化を目指します。

 また、当社取締役会の「企業価値最大化のためのグループ戦略策定を中心とした監督機関」としての位置づけをより重視した取締役数・構成の見直し等により、コーポレート・ガバナンス体制の強化を図ります。

 加えて、カーボンニュートラルに向けた取組みとしては、リスク側面への対応にとどまらず、脱炭素社会の実現に向けて高まるアルミニウムに対するニーズにお応えするべく、脱炭素戦略のロードマップを作成し、社会的価値の創出への寄与と当社グループの企業価値向上を実現してまいります。

 その他、DXの促進による業務効率化・生産性向上、将来を見据えた成長分野への積極的な投資などを通じ、グループ一丸となって中期経営計画の目標達成に努めるとともに、経営改革の着実な実行により、強靭な収益体質を備えた新しい日本軽金属グループの礎を築いてまいります。

 

 

(5)中期経営計画

 当社グループにおいては不確実性を増す事業環境に柔軟に対応するべく昨年5月、「新生チーム日軽金への取組みおよび社会的な価値の創出に寄与する商品・ビジネスの提供を基本方針とする中期経営計画(2023年度~2025年度)を策定し当期は初年度としてサプライチェーン・ライフサイクル全体を通してお客様のニーズを満たし社会課題の解決にも寄与する多様な商品・ビジネスの提供を加速させております

 

◆基本方針1「新生チーム日軽金への取組み」

▶ グループの企業価値向上のための構造改革

▶ カーボンニュートラルへの対応

▶ 経営改革の推進および内部統制機能の強化

・お客様、ステークホルダーの皆様に確かな価値を提供し、改めて信頼をいただける企業グループに生まれ変わるべく、東洋アルミニウムの株式譲渡、自動車部品事業をはじめとするグループシナジーを更に創出できるグループ資源の最適配分や事業構造の変革を進めてまいります。

・2030年度での温室効果ガス30%削減(2013年度比)、2050年度でのカーボンニュートラルに向けて、当社に設置した「カーボンニュートラル推進室」により、当社グループの脱炭素戦略全般の立案・実行を統合的に推進いたします。

・経営トップが先頭に立ち、強い覚悟を持って経営改革に取り組んでまいります。昨年4月に当社に設置した「改革推進室」を核に、品質等に関する不適切行為に対する再発防止策を着実に遅滞なく推進します。なお、再発防止の取組みの進捗は定期的に当社ウェブサイトを通して報告いたします。

 

◆基本方針2「社会的な価値の創出に寄与する商品・ビジネスの提供」

▶ お客様ニーズを満足する商品・ビジネスの提供

▶ サプライチェーン・ライフサイクル全体を通じた多様な商品・ビジネスの提供

▶ 社会的課題を解決するためのグループ連携体制の強化

・自動車市場における環境対応車の需要拡大をはじめ市場環境の変化に対応した競争力の向上を図るため、当社グループの自動車部品事業を新会社「日軽金ALMO株式会社」に統合し、お客様へのサービス向上とグループシナジーを追求してまいります。

・経済安全保障の高まりを受けた国内での半導体生産工場増設に対応するため、日軽パネルシステム下関工場に第二工場を設置しクリーンルーム用ノンフロン断熱パネルの生産能力を増強する等、半導体関連ビジネスに積極的に取り組んでまいります。

・放熱性や軽量性といった素材としてのアルミニウムの強みを活かした商品の開発や提供を行っていくことで、お客様からのニーズが高まっている温室効果ガス削減にお応えするとともに、地球環境保護に貢献してまいります。

 

(6)経営指標

①財務指標

 当社グループが持続的に成長していくことを可能とするため、300億円台の経常利益を恒常的に達成できる体制を目指します。「23中計」では、事業部門個々の成長戦略による価値創出とともに、グループ課題への対応を図り、外部環境の変化への耐性が高い収益基盤を構築してまいります。

 

(金額単位: 億円)

 

2023年

3月期

(実績)

2024年

3月期

(実績)

2025年

3月期

(予想)

2026年

3月期

(23中計目標)

売上高

5,170

5,237

5,600

5,300

営業利益

75

182

210

300

経常利益

89

190

200

300

親会社株主に帰属する

当期利益

72

90

130

200

R O C E(%)*

3.2

6.0

6.3

10.3

*ROCE(使用資本利益率):

金利差引前経常利益÷使用資本(自己資本+有利子負債―現預金)

 

②利益配分の基本方針

 「財務体質と経営基盤の強化を図りつつ、中長期的な視点から連結業績等を総合的に勘案し株主の皆さまへの配当を実施する」ことを基本方針としております。利益還元の指標といたしましては、自己株式の取得を含む総還元性向を30%以上とし、配当額等を決定させていただきます。

 

2024年3月期

2025年3月期

(予想)

23中計最終年度

2026年3月期

中間

期末

中間

期末

年間目標

配当

10円

40円

20円

50円

100円

 

 自動車や半導体関連をはじめとする成長分野における事業拡大と、基盤ビジネス分野における需要創造・収益力拡大に向けた投資に加え、経営基盤の強化、研究開発や人財育成、及びカーボンニュートラルなど将来に向けての投資を行い、企業価値の向上に努めます。

「23中計」の諸施策の実施により収益力を高めたうえで、事業構造の見直しや資本効率の改善を図り、PBR向上を意識した経営に努めてまいります。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月25日)現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組み

 ① 戦略

 当社グループは「アルミニウムを核としたビジネスの創出を続けることによって、人々の暮らしの向上と地球環境の保護に貢献していく」ことを経営理念としており、サステナビリティを巡る課題への対応について、社会の持続可能な発展を実現すべく、サプライチェーン全体での環境負荷低減や責任ある調達・生産・供給、従業員の幸せの追求などに取り組んでおります。具体的な事業を通じた取組みとしては、アルミ二次合金(リサイクル)事業はもとより、環境対応車関連事業、半導体(5G)関連事業、インフラ関連事業、コールドチェーン関連事業などを推進してきたとともに、それらの基盤となるものとして、最優先事項である労働の安全衛生の確保や、働きがいのある職場づくりなどに取り組んできました。

 当社グループがサステナビリティを巡る課題への対応に関しどのような外部環境の変化を予測し、それをどのようなリスク・機会と捉えているか、また、財務・非財務の各資本を事業活動へ投入し、ステークホルダーへの価値提供、社会的価値の創出による各資本の循環を通じて人々の暮らしの向上と地球環境の保護に貢献していくプロセス、今後取り組むべき重要課題(マテリアリティ)を、統合報告書の価値創造プロセスで開示しております。また、各事業におけるサステナビリティの取組み、価値創造の基礎となる活動についても、統合報告書で開示しております。

 統合報告書2023(https://www.nikkeikinholdings.co.jp/ir/ir-data/p3.html)

 今後、特定したマテリアリティを基に長期的視野で描いた目指すべき姿に照らして現在の事業や各種取組みを評価し、評価結果に基づくサステナビリティ課題への短期・中期の取組み方針を中期経営計画・サステナビリティ推進計画に盛り込み、評価、改善、計画、実行のプロセスを回して、持続可能な社会の実現と企業価値の向上を推進していきます。また、これと併せて、サステナビリティ経営の視点を踏まえた長期的な取組み方針を、経営方針に織り込んでいきます。

 2022年度には、サステナビリティ経営の視点を踏まえたマテリアリティを盛り込んだ経営方針(日軽金グループ経営方針)の改定を行い、その後、2023年度を初年度とする中期経営計画・同推進計画を策定しました。この計画では、上記経営方針に基づくサステナビリティ経営の実現に向けた中期・短期の取組みとともに、ステークホルダーから信頼される企業グループとなるべく経営改革を推進していくことが盛り込まれております。

 また、カーボンニュートラル実現に向けた取組みとしては、脱炭素社会の実現に向け期待が高まるアルミニウムへのニーズにお応えするため、2030年度に2013年度比30%のCO削減(スコープ1・2、3)を当社グループのカーボンニュートラル戦略に掲げ、2023年4月に発足した「カーボンニュートラル推進室」が中心となり、循環型サプライチェーン構築に向けた当社グループの方針・戦略の策定を進めました。

 

 ② ガバナンス

 当社グループの持続的な成長及び企業価値創造のためには様々な経営課題があります。その中で特に重要な21の課題を重要課題(マテリアリティ)として特定し、それらを「地球環境保護」「持続可能な価値提供」「従業員の幸せ」「責任ある調達・生産・供給」「企業倫理・企業統治」の5つの重要課題テーマに再分類し、グループCSR委員会、グループ経営会議の審議を経て、取締役会で承認しております。重要課題(マテリアリティ)についてはそれぞれのKPI(評価指標)及び目標値を設定し、その達成に向けて、取締役会やグループ経営会議での議論だけでなく、グループ経営会議の下部組織である各種委員会等において、具体的なアクションプランの立案・審議を行っております。

 例えば、「地球環境保護」や「持続可能な価値提供」というテーマに対しては、社長を委員長とする「グループ環境委員会」や「グループCSR委員会」を設置しており、当社取締役(社外取締役を除く)、執行役員及び当社グループ内より広く選出されたメンバーなどで構成されたこれらの委員会のもとで、気候変動への対応を含むサステナビリティ推進計画を策定しております。

 また、「従業員の幸せ」というテーマに対しては、「グループ安全衛生委員会」や主要グループ各社の人事担当部長が参集する定例会議などを設置し、労働の安全衛生、働きがいのある職場づくり、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)、人財の確保・育成といった重要課題についての対応方針を協議し、その達成に向けての取組みを進めております。

 なお、コーポレート・ガバナンス体制については、「第4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 2.企業統治の体制の概要及び当該体制を採用する理由 ①企業統治の体制の概要」に記載しております。

 

 ③ リスク管理

 当社グループでは重要課題(マテリアリティ)を管理するために、各重要課題におけるリスクと機会の分析を進め、分析の内容については上記の各種委員会等に報告し、リスク管理計画の策定を進めると同時に、取締役会への定期的な報告も行うことでリスクへの対応を強化していきます。

 

 ④ 指標及び目標

 当社グループの重要課題(マテリアリティ)に設定したKPI(評価指標)、目標値及び2022年度の実績は次の通りであります。なお、2023年度の実績については、統合報告書2024及び当社ホームページにて開示いたします。

5つの

重要課題

テーマ

重要課題

主なKPI(評価指標)及び

2022年度実績

当社評価

目標(*1)

地球環境

保護

●自社での温室効果ガス削減

(スコープ1、2)

●サプライチェーンでの温室効果ガス削減(スコープ3)

●気候変動への対応(TCFD)

●水ストレスへの対応

●環境汚染の防止

●スコープ1、2総排出量

(売上高原単位、国内のみ)

 2022年度:1.38㌧‐CO2/百万円

●2013年度比△30%

●2050年度:実質ゼロ

●スコープ3総排出量

(売上高原単位、国内のみ)

 2022年度:4.67㌧‐CO2/百万円

●2013年度比△30%

●2050年度:実質ゼロ

●環境事故・苦情件数

 2022年度:環境事故6件、環境苦情7件

×

●0件

●2050年度:0件の継続

持続可能な

価値提供

●再生可能エネルギーの

利用拡大への取組み

●低炭素商品・サービスの

開発、提供

●循環型経済・社会の推進

●強靭なインフラ整備、提供

●食料の安定供給への貢献

●イノベーションによる

未来づくり

●環境対応車向け売上高伸長率(国内)

 2022年度:30%増

●2021年度比:300%増

●外部スクラップ購入比率

 2022年度:30%

●グループ全体:30%超

従業員の

幸せ

●労働の安全衛生

●働きがいのある職場づくり

●ダイバーシティ&インクルージョン

●人財の確保、育成

休業災害件数

 2022年度:国内16

×

●0件

2050年度0件の継続

男性の育児休暇取得率

 2022年度:40.6%(国内)

2024年度30%以上(国内)

●2030年度:100%(国内)

女性管理職比率

 2022年度:5.7%(連結)

2024年度7%以上(連結)

●2030年度:10%以上(連結)

次期経営者層研修受講者

 2022年度:16(国内)

管理職層研修受講率

 2022年度:100(国内)

●次期経営者層:毎年10名以上の継続

●管理職層:管理職登用者の100%

 

 

5つの

重要課題

テーマ

重要課題

主なKPI(評価指標)及び

2022年度実績

当社評価

目標(*1)

責任ある

調達・生産・供給

●安全、安心な商品・サービスの提供

●人権の保護、尊重

●安定したサプライチェーンの構築

●変化に柔軟で強靭なバリューチェーン

●CSR調達方針の理解と賛同を確認するアンケートに回答した主要サプライヤー(*2)の回答回収率

 2022年度:78%

●100%

●重大品質問題発生件数

 2022年度:21件

×

●0件

●2050年度:0件の継続

企業倫理・

企業統治

●ガバナンスの強化

●コンプライアンス体制の強化

●取締役会の自己評価実施回数

 2022年度:1回

●社外役員への事業所視察等の機会提供の回数

 2022年度:3回

●年間1回以上実施の継続

●年間2回以上の実施

●内部通報制度への信頼度

 2022年度:管理職50%、一般35%

●従業員匿名サーベイでのポジティブ回答率:管理職60%、一般50%

●コンプライアンス教育実施率

 2022年度:15%

×

●役員・従業員の教育実施率:年間80%以上

 (注)*1.特に言及のないものは2030年度目標

    *2.グループ総購買金額カバー率80%を満たすサプライヤー

 

 

(2)気候変動への対応(TCFDに基づく開示)

 ① 戦略

 当社グループはTCFDの提言に基づいた開示を行うにあたり、シナリオによる影響の違いが分かりやすいように、成り行きで想定される4.0℃と最も強い規制が整備された場合である1.5℃の、2つのシナリオに基づいた分析を進めております。対象年度については、分析結果に一定程度以上の確からしさを担保するため、2030年度としております。

 また、当社グループはさまざまな事業領域を抱えるため、全ての部門を分析の対象にするまでには至っていませんが、リスクと機会の影響度については、2022年度に対象とした日本軽金属㈱化成品事業部と板事業部に加え、日軽エムシーアルミ㈱、日軽金アクト㈱、日本フルハーフ㈱、日軽パネルシステム㈱といった当社グループの主要各社に範囲を拡げ、算定を進めています。

 そして、それぞれの項目について想定されるシナリオごとの影響度を、発生可能性と実際に発生した場合の影響の大きさの2つの観点から評価し、マッピングしました。その主な項目は次の通りとなっております。

 

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区分

リスク・機会のシナリオ内容

影響度

4.0℃

シナリオ

影響度

1.5℃

シナリオ

リスク

移行

政策・法規制

リスク

炭素税の導入や炭素価格の上昇が、自社商品に関わる原材料や部品の調達、製造コストを増加させ、収益を圧迫するリスクがある。

移行

政策・法規制

リスク

CO2排出権取引に係る直接的なコストが発生するほか、排出削減目標の国ごとの相違によるサプライチェーンの地域バランスの変化により、原材料や部品の調達コストが上昇する可能性がある。

中~高

移行

技術リスク

脱炭素やリサイクル推進のための新技術の開発などに向けた投資コストが増加するほか、新技術の開発遅延により市場での競争力が低下する可能性がある。

中~高

移行

市場リスク

気候変動への対応が遅れた場合、お客様の要求水準を充たせずにビジネス上の悪影響が発生する可能性があるほか、金融機関の脱炭素方針により資金調達コストが増加する恐れがある。

中~高

物理

急性

大規模な台風や豪雨が高頻度で発生すると、浸水・洪水による生産活動の停止やグループ内サプライチェーン寸断リスクのほか、設備等の損傷および補修コスト、損害保険料の上昇リスクがある。

機会

移行

商品・

サービス

環境対応車をはじめとする低炭素製品へのアルミニウム関連商品の採用が増加し、拡販による増収および商品ライフサイクルを通じた低炭素社会への貢献が期待できる。

移行

資源の効率性

リサイクル率の向上や水平リサイクルの推進により、資源効率のよい素材として見直され、アルミニウム関連商品の需要や認知が高まる。

低~中

中~高

 

 

 ② ガバナンス

 気候変動への対応に関する体制として、社長を委員長とする「グループ環境委員会」や「グループCSR委員会」を設置しており、これらの委員会のもとで、気候変動への対応を含むサステナビリティ推進活動計画を策定しています。また、世界的な脱炭素の潮流の中で、当社グループとして最適な脱炭素戦略の立案と実行により、当社グループの成長戦略をより確固とするため、統合的な権限と責任を持つ「カーボンニュートラル推進室」を設置しました。これにより、これまでの省エネ活動やリサイクル活動に加え、お客様からの要望が高まっているグリーンアルミの確保や、使用したアルミニウムを素材として再利用する循環型のサプライチェーン構築等、当社グループとしてのカーボンニュートラル実現に向けた取組みを統合的に推進しています。

 

 

 ③ リスク管理

 当社グループは、気候変動リスクを経営上の重要なリスクのひとつとしてとらえ、管理するために、2030年までのリスクと機会のシナリオ分析を行っています。重要性が高いと判断した項目については、今後、定量分析を行った上で開示内容を拡充し、目標達成に向けた取組みを推進していきます。2022年度は日本軽金属㈱のみを対象にしていましたが、2023年度は当社グループの主要部門を含む影響度の分析へと徐々に範囲を広げています。今後はさらに長期的な視点に立ち、2050年のシナリオ分析も行っていくことを予定しています。分析内容については「グループ環境委員会」や「グループCSR委員会」に報告し、「カーボンニュートラル推進室」との連携を図りながらリスク管理計画の策定を進めると同時に、取締役会への定期的な報告も行うことで、気候変動リスクへの対応を強化していきます。

 

 ④ 指標及び目標

 当社グループは、スコープ1、2にスコープ3を加えて、2050年のカーボンニュートラルを目指し、2030年の温室効果ガス排出量(売上高原単位)を2013年度(スコープ1+2:2.07㌧-CO2/百万円、スコープ3:5.60㌧-CO2/百万円)比で30%削減する目標に向けて取組みを推進しています。

 2022年度の実績は、スコープ1+2およびスコープ3とも、前年度比で総排出量およびCO2排出量売上高原単位が減少しました。なお、2023年度の実績については、統合報告書2024及び当社ホームページにて開示いたします。

 

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 (算定基準)

※ 集計範囲 : 国内連結子会社(製造)31社/海外連結子会社(製造)12社

※ 温室効果ガス排出量(スコープ1、2)は、「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)」および「地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)」に基づいて計算しており、次のCO2排出係数を使用しています。/国内電力:電気事業低炭素社会協議会公表の前年度使用端CO2排出係数/海外電力:2021年度以前はIEA「CO2FCOMB 2017」、2022年度はIEA「CO2FCOMB 2020」の各国別排出係数/燃料:環境省令の各燃料の単位当りのCO2排出係数(日本軽金属㈱蒲原製造所の水力発電由来の電気は、国内電力CO2排出係数を使用)

※ 実績値はエネルギー起源CO2排出量のみです。

 

(3)人的資本

(ア)人財戦略

当社グループは、社会的価値の創出および企業価値向上の基盤は人財であるとし、「働きがい」と「働きやすさ」が両立する職場づくりを通じて従業員エンゲージメントの向上を図っています。それぞれの職場で多様性に富む個人が能力を発揮することで、個人の成長が独自性・自律性を有する組織の成長につながり、個人と組織の成長サイクルを構築することにより、グループ力の持続的向上を図ります。また、グループの連携体制を強化することでグループエンゲージメントを高め、「チーム日軽金」による社会的価値の創出を通じて企業価値の向上を目指します。

「働きやすさ」の基盤となる職場環境整備については、2021年度に「『従業員は人財』の理念の下に計画的に職場環境の整備を進め、会社・従業員の一体感向上につなげる」をグループの福利厚生の基本方針に定めています。

また、従業員一人ひとりの安全と健康が保たれていることは「働きがい」と「働きやすさ」の前提です。「健康で安全な職場をつくり、『ゼロ災害』を達成する」というグループ基本方針に基づき、従業員の「安全」とその一歩先を見据えた従業員の「健康」保持・増進に向けた取組みを計画しています。

エンゲージメントの強化にはさまざまな次元でのコミュニケーションの深化が欠かせません。2019年のグループ本社の移転集約によるグループ力向上への取組みは、長期化したコロナ禍の影響により停滞していたものの、徐々に再始動をしています。今後は、テレワークを活用した「新しい働き方」による生産性のさらなる向上とコミュニケーション深化の両立が課題であると認識しています。

 

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(イ)人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針

当社グループでは「多様な価値観を尊重し、長期的かつグローバルな視点で人財を育成する」を経営の基本方針として掲げています。総合職合同採用においては求める人財像として「多様な価値観を理解して自分のことばにできる人」「幅広いフィールドに関心をもってチャレンジできる人」「人と人、知識と知識をつないで新しいものを生み出せる人」の3点を掲げ、採用活動を行っています。そして育成面では、当社グループは人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針(人財育成方針)を定めています。また、日軽金グループ行動理念の一つに「進化する自分を描く」を掲げ、従業員の自律的成長や学びの促進を図っています。

 

〇人財育成方針

 ◆人財が全ての基盤との認識の下、以下の三要件を兼ね備えたグループ中核人財を計画的に育成します。

  ・グループ内外との連携を通じて新たな価値を創出する人財

  ・強い達成志向と高い倫理観を同時に持ち合わせた人財

  ・周囲の人財に健全な関心を持ちその成長を支援する人財

 ◆計画的な人財育成に向けて多様な教育プログラムを整備、提供します。

 ◆従業員の自主性を尊重し本人意向を踏まえたキャリアパスにより個の力の強化を図ります。

 ◆永続的な人財輩出のために後進育成への注力を成果創出と同等に評価します

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〇体制

当社グループは、2014年度から総合職に関して日本軽金属㈱の単独採用から主要グループ会社との合同採用に移行し、現在は日本軽金属㈱、日軽金アクト㈱、日軽エムシーアルミ㈱の3社で合同採用を実施しています。入社後の3ヵ月間の配属前集合研修では、日軽情報システム㈱の新入社員も加わり4社合同で実施しており、長期間生活を共にすることで会社の垣根を超えた一体感を育みます。ここでの一体感が「チーム日軽金」を支えるひとつの柱になっています。従業員育成の体制としては、グループ各社で実施している研修・教育に合わせて、近年は特にグループ全体で実施する研修・教育に注力してきました。現在では多種多様な研修に延べ約30社のグループ会社が参加するに至っています。従来は日本軽金属㈱の研修体系にグループ各社が任意で参加する形を採っていましたが、総合職に関しては2025年度をめどに国内グループ全社を対象とした必須受講の統一研修に移行する計画です。統一研修への移行によりグループ全体の育成体制のレベルアップを図り、同時に経営方針の共有・理解、教育機会を通じた人的つながりの促進により「チーム日軽金」のさらなる強化を目指しています。

 

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(ウ)社内環境整備に関する方針

当社グループは「働きやすさ」と「働きがい」の向上を目指し、社内環境整備に関する方針(社内環境整備方針)を定めています。また、日軽金グループ行動理念に「ご安全に!」「やってみよう、やってみなよ」という標語(キャッチコピー)を掲げることで、従業員が日々の仕事の中で「安全」や「チャレンジできる職場づくり」を意識、実践する機会の促進を図っています。

 

〇社内環境整備方針

 ◆全ての人財が健康で安全に働ける職場をつくります。

 ◆コミュニケーション豊かな安心と働きがいにあふれた職場をつくります。

 ◆多様な価値観を尊重し全員が生き生きと働ける職場をつくります。

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〇体制

 「働きがい」のある職場づくりは、グループ各社の職場単位での取組みが大きい一方、当社グループとしてはグループ全体の視点から「従業員の幸せ」につながる取組みも展開しています。職場環境改善や健康経営については、定期的に開催する主要グループ各社の人事担当部長が参集する定例会議で検討を行い、さらに年1回開催するグループ人事担当者会議で計画や成果を共有する体制を採っています。特に従業員の「働きやすさ」に資する部分の大きい福利厚生投資については、主要グループ会社の投資計画・実績および中期計画について年次で調査・共有をおこなっており、好事例のグループ内展開などを通じてより効果的な福利厚生投資を追求しています。

 また、「日軽金プライド」や「社会貢献プロジェクト」活動は、グループ各社に対する積極的な呼びかけと社内報やイントラを活用した活動報告を継続することで、自発的な参加の促進を図っています。本活動にはグループ従業員と経営層が参画しており、会社や役職の垣根を超えたフランクな交流を通じ、グループでともに働く人たちの絆を広げる、深める体制づくりに注力しています。

 

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  (エ)指標及び目標

 当社グループは5つの重要課題(マテリアリティ)のテーマの一つである「従業員の幸せ」に関して、指標及び目標を設定し、具体的なアクションプランに基づいてその達成に取り組んでおります。KPI(評価指標)、目標値及び2022年度の実績は「(1)当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組み ④ 指標及び目標」に記載しております。なお、2023年度の実績については、統合報告書2024及び当社ホームページにて開示いたします。

3【事業等のリスク】

 当社グループは、事業戦略に対して直接または間接の損失発生、事業の中断や停止、信用・ブランドイメージを損なう等のリスクについて管理を行っております。

 なお、紛争や政治的な不安による地政学的リスク、原材料価格の高騰のような経済的リスク等をはじめとするサプライチェーンリスクに対しても、事業別に総合的分析を行い、事前に軽減策を検討しております。

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあると考えております。
 なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月25日)現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経済情勢及び景気動向等

 当社グループは、コモディティビジネスから脱却して経済情勢及び景気動向に左右されにくい強固で安定した経営基盤の構築を目指して事業運営をしておりますが、当社グループの製品需要は販売している国・地域の経済情勢及び景気動向の影響を免れるものではなく、特に日本国内の景気後退による需要の縮小、あるいは顧客ニーズの大幅な変化は、販売減少等により当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 為替相場の変動

 当社グループの外貨建ての売上、費用、資産、負債等の項目は、連結財務諸表作成のために邦貨換算しており、換算時の為替相場により現地通貨ベースの価値に変動がなくても邦貨換算後の価値に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループは、為替変動が財政状態及び経営成績等に及ぼす影響を軽減するために、外貨建ての資産・負債の一部について先物為替予約等によりヘッジを実施しておりますが、為替変動が当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 金利動向

 当社グループの金融機関等からの借り入れには変動金利によるものが含まれており、これに係る支払利息は金利変動により影響を受けます。当社グループは、金利変動が財政状態及び経営成績等に及ぼす影響を軽減するために、変動金利の借り入れの一部について金利スワップ契約によりヘッジを実施しておりますが、金利変動が当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 商品市況変動等

 当社グループは、主要原材料であるアルミニウム地金等を海外(国内外商社経由を含む)から調達しております。アルミニウム地金等の価格変動に対しては長期契約や先渡取引によるヘッジの実施に加え、基本的に価格変動部分は製品価格に転嫁しております。また、重油等の燃料価格や補助原材料の価格、原材料等を輸入する際の船賃等の仕入に係る価格変動についても、価格上昇を当社グループの製品価格に転嫁することを基本としております。しかしながら、価格上昇の製品コストへの影響を完全に排除できるわけではなく、特に最終ユーザーに近い加工製品等については、アルミニウム地金等の価格上昇分等を直接製品価格に転嫁することが困難となる場合があります。当社グループは商品市況変動等が財政状態及び経営成績等に及ぼす影響を軽減するため、コスト削減及びより高付加価値の製品への転換等により対処を図っておりますが、商品市況変動等が当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 事故・自然災害

 火災、地震、水災、停電等の災害を想定して、近隣まで含めた災害発生時の対処、復旧計画、各種損害保険加入による対策、データのバックアップ体制等について、製造設備関連のみならず情報システム関連についても訓練・点検等を実施し、定期的に内容の見直しを行っておりますが、災害発生により損害を被る可能性があります。
 かねてより大地震発生の可能性が言及されてきた、東海、東南海、南海トラフの連動巨大地震に対して、当社グループとしても、製造現場での防災対策等、重点的に対処しておりますが、大地震発生により当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 公的規制

 当社グループは、日本国内のみならず事業展開する各国において、事業の許認可、国家安全保障、独占禁止、通商、為替、租税、特許、環境等、様々な公的規制を受けております。当社グループは、これらの公的規制の遵守に努めておりますが、将来、コストの増加につながるような公的規制や、当社グループの営む各事業の継続に影響を及ぼすような公的規制が課せられる場合には、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 係争事件等

 当社グループは、日本国内のみならず各国において法令遵守に努めておりますが、広範な事業活動の中で、今後係争事件等の対象となる可能性があり、裁判等で不利益な判決や決定がなされる場合には、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 債務保証等

 当社グループは、投資先の借入金等に対しての債務保証契約等を金融機関等との間で締結しております。当社グループでは、債務保証等の履行を要求される可能性は僅少であると判断しておりますが、将来、債務保証等の履行を求められる状況が発生した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 製品・サービスの品質

 当社グループでは、社会やお客様からの要求事項や関連法令を把握し遵守することを徹底し、安全で安定した製品やサービスを提供し続けていくために、品質保証・管理活動を推進しておりますが、製品・サービスに関する品質問題が生じた場合は、顧客等から代品納入や補償等を求められるほか、製品・サービスへの信頼性低下から売上が減少する等により、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) 雨畑ダム堆砂対策

 当社の連結子会社である日本軽金属㈱が保有する雨畑ダム(山梨県南巨摩郡早川町)上流の雨畑川の水位が2019年8月の台風10号、同年10月の台風19号などによる豪雨の影響を受け上昇したことにより、周辺地域で浸水被害が発生いたしました。現在、地域の皆さまの安全を最優先に、関係各所との連携により浸水被害を防ぐための対策を進めております。また、国土交通省より抜本的な解決に向け、堆砂対策の計画を取りまとめ、計画的に取り組むよう指導されております。
 この状況を厳粛に受け止め、日本軽金属㈱は国土交通省、山梨県及び早川町との4者で構成する雨畑地区土砂対策検討会を設立し、周辺地域における浸水被害発生に対する応急対策、及び堆積土砂の抜本対策について検討を重ね、その内容に基づき雨畑ダム堆砂対策基本計画を策定し、その実行に伴う費用等を合理的に見積り、堆砂対策引当金という名称で連結貸借対照表に計上しております。今後の工事等の進捗状況によって見積りの前提となっている仮定に変更が生じた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があり、そのリスク内容は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 日本軽金属㈱は、基本計画に基づき対応を進めており、応急対策(堤防設置)、短期計画(2020年度~2021年度の土砂搬出計画)を概ね計画通り進捗させました。2022年度からの中期計画(2022年度~2024年度の土砂搬出計画)についても、関係機関との協議を重ね、具体的な搬出計画に基づき着実に実行し、今後も、地域の皆様の安全確保を最優先に、関係機関のご協力もいただきながら、誠心誠意対応してまいります。

 

(11) 品質不適切行為に関する対応

当社グループ会社において「鉱工業品及びその加工技術に係る日本産業規格(JIS)への適合性の認証に関する省令」に定める基準に関する不適切行為の事実が判明したことを受け、2021年6月に外部専門家等によって構成する特別調査委員会を設置し、以降、特別調査委員会の調査範囲をJIS認証事業所以外に拡大して調査を実施いたしました。当社は、2023年3月29日に特別調査委員会より「調査報告書」を受領し、同日公表しております。

なお、同調査において判明した不適切行為については、関連する顧客等への事実関係および製品の安全性の説明等を進めております。今後の進捗次第では、顧客等への補償費用を始めとする損失等の発生により、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループ会社で判明した品質等に関する不適切行為について2023年3月に策定・公表した再発防止への取組みについては、2023年4月に新設した「改革推進室」が中心となり、グループ・ガバナンス体制の再構築、内部統制機能の強化、そして、当社グループが真に持続可能な企業グループとなるための企業風土の改革にグループ一丸となって取り組んでおります。

 

 なお、現時点では予想できない上記以外の事象により、当社グループの経営成績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。

 

①財政状態及び経営成績の状況

 当期の世界経済は、米国における堅調な個人消費を中心とする景気の回復等、一部の地域では持ち直しの動きがみられた一方、世界的な金融引締め、中国における不動産市場の停滞の影響による景気減速、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化に加え、中東地域における地政学的リスクの高まりもあり、予断を許さない状況となりました。わが国においては、世界的な金融引締めや先行き不透明な中国経済等、海外景気の下振れによる景気の下押しリスクに加え、金融資本市場の変動、令和6年能登半島地震による経済への影響など、注視が必要な状況がみられたものの、日経平均株価が史上最高値を更新するなど、企業業績の回復や、雇用・所得環境の改善による個人消費の持ち直しの動きなど、総じて緩やかな回復傾向がみられました。

 アルミニウム業界においては、自動車関連の需要は前期に比べ増加したものの、アルミニウム製品の国内総需要は2期連続で前期を下回りました。また、原料となるアルミニウム地金などの原燃料価格は、前期と比べ比較的安定して推移しましたが、引き続き高い水準での推移となりました。

 当期の業績は、以下のとおりです。

 半導体関連の需要調整や中国における自動車関連向けの減速の影響を受けたものの、パネルシステム部門の好調やトラック架装関連での販売回復により、売上高は前期を上回りました。採算面においても、押出製品部門において米国新工場の操業安定化に時間を要している影響があったものの、パネルシステム部門の好調やトラック架装事業等における販売価格改定効果の拡大により、営業利益、経常利益および親会社株主に帰属する当期純利益は、前期を上回りました。

 なお、当社子会社である日本軽金属株式会社が保有する雨畑ダムにおいて、2020年4月に国土交通省に提出した基本計画の進捗等に伴い、土砂搬出に新たな工程等を追加する必要があることが判明したことにより、堆砂対策費用を特別損失として計上しております。

 

連結経営成績

 

 

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

当連結会計年度

(2024年3月期)

前連結会計年度

(2023年3月期)

比較増減

(△印減少)

売上高

523,715

516,954

6,761

(1.3%)

営業利益

18,189

7,539

10,650

(141.3%)

経常利益

19,033

8,859

10,174

(114.8%)

親会社株主に帰属する

当期純利益

9,037

7,203

1,834

(25.5%)

 

 

 セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。

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(アルミナ・化成品、地金)

アルミナ・化成品部門におきましては、主力の水酸化アルミニウムおよびアルミナにおける耐火物向けやセラミックス向けでの販売減少の影響が大きく、売上高は前期を下回りました。一方、採算面では、販売減少の影響があったものの、販売価格改定の効果により、営業利益は前期を上回りました。

地金部門におきましては、主力の自動車向け二次合金分野において、国内は自動車生産の回復で販売量が増加し、海外は米国とタイでの販売好調が継続したことから、アルミニウム地金市況を反映した販売価格下落の影響で売上高は前期を下回ったものの、営業利益は前期を上回りました。

 以上の結果、アルミナ・化成品、地金セグメントの売上高は前期比3.5%減の1,504億62百万円となりましたが、営業利益は前期比5.5%増の107億66百万円となりました。

 

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(板、押出製品)

 板製品部門におきましては、半導体製造装置向け厚板の販売低迷が継続していることに加え、アルミニウム地金市況を反映した販売価格下落の影響もあったことから、売上高は前期を下回りました。一方、採算面では、外注費などが増加したものの、販売価格改定の効果発現により、営業利益は前期を上回りました。

 押出製品部門におきましては、トラック架装向けや国内自動車関連向けで販売回復が進んでいるものの、半導体製造装置向けの販売低迷や中国における自動車関連向けの販売減速などにより、売上高は前期を下回りました。採算面では、販売面の影響に加え、米国新工場の量産操業安定に時間を要していることから、営業損益は前期を下回りました。

 なお、自動車関連市場の環境変化に対応し競争力向上を図るため、2023年10月1日付で当社グループの自動車部品事業(当部門の自動車関連向けのほか、熱交製品事業、素形材製品事業)を統合した「日軽金ALMO株式会社」が発足しました。

 以上の結果、板、押出製品セグメントの売上高は前期比9.2%減の975億33百万円、営業損失は32百万円悪化の5億73百万円の損失となりました。

 

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(加工製品、関連事業)

主要部門の概況は以下のとおりです。
 輸送関連部門におきましては、トラック架装事業は、トラックシャシーの供給正常化による生産増で販売が回復していることから、売上高は前期を上回りました。採算面では販売回復に加え、販売価格改定、生産性向上、固定費削減などに努めた結果、営業損益は前期と比べ大幅に改善し、黒字化を見通せる水準まで回復しました。

その他の輸送関連部門について、熱交製品事業は、エアコン用コンデンサの販売において、国内の自動車向けが堅調に推移し売上高は前期を上回りました。採算面は、エアコン用コンデンサの価格改定効果もあり営業損益は前期から改善しました。素形材製品事業は、中国向けの需要は減速したものの、国内向けは自動車生産の回復に加えブレーキ関連新商品の投入により好調に推移し、売上高、営業利益はともに前期を上回りました。なお、熱交製品事業および素形材製品事業は、2023年10月1日以降、当社グループの自動車部品事業の統合により発足した「日軽金ALMO株式会社」の事業となっております。

電子材料部門におきましては、半導体をはじめとした電子部品業界の需要低迷が継続しアルミ電解コンデンサ用電極箔の販売が減少したことに加え、薬品など資材価格の高止まりの影響により、売上高、営業損益はともに前期を下回りました。

パネルシステム部門におきましては、冷凍・冷蔵分野では、低温流通倉庫向けの大型物件は前年並みで推移したものの店舗向けの小型物件が堅調に推移し、クリーンルーム分野では、半導体関連メーカー向けクリーンルームの旺盛な需要に支えられたことにより販売が増加したことから、部門全体の売上高は前期を上回りました。採算面は、材料価格の値上がりなどの影響はありましたが、クリーンルーム向けの大型物件の増販により営業利益は前期を上回りました。

景観エンジニアリング部門におきましては、道路・橋梁向けにおいて点検用足場製品の販売は伸長しましたが、アルミ高欄の需要が減少し、部門全体の売上高は前期並みとなりました。採算面は、建設資材価格上昇の影響があったものの、高付加価値商品の販売に注力したことなどから、営業利益は前期を上回りました。

炭素製品部門におきましては、主力の鉄鋼業界向けカーボンブロックの販売は減少しましたが、アルミ製錬用カソードブロックの販売が増加したことに加え、円安による押し上げ効果もあり、売上高、営業利益はともに前期を上回りました。

以上の結果、加工製品、関連事業セグメントの売上高は前期比11.3%増の1,704億26百万円、営業利益は輸送関連部門の収益改善が寄与し、前期から65億6百万円増の65億65百万円となりました。

 

 

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(箔、粉末製品)

 箔部門におきましては、リチウムイオン電池外装用箔は前期並の販売を確保し、医薬包材向け加工箔は販売価格改定による増収効果があったことに加え海外市場向けが堅調であったことから、部門全体の売上高、営業利益はともに前期を上回りました。

 パウダー・ペースト部門におきましては、粉末製品は放熱用途の電子材アルミパウダーや窒化アルミの半導体関連での需要が下半期から回復傾向となり、ペースト製品は主力の自動車塗料向けが自動車生産の回復により海外向けを中心に販売増となったことから、部門全体の売上高、営業利益はともに前期を上回りました。

 日用品部門におきましては、コンシューマー向けではハウスケア用品の販売増とアルミホイルの販売価格改定の効果により、パッケージ用品向けでは冷凍食品向けの需要好調による販売増と販売価格改定の効果により、部門全体の売上高、営業利益はともに前期を上回りました。

 以上の結果、箔、粉末製品セグメントの売上高は前期比4.9%増の1,052億94百万円、営業利益は前期比271.1%増の56億34百万円となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当期末における連結ベースの現金及び現金同等物については、前期末に比べ38億24百万円(12.2%)増加の350億87百万円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは380億41百万円の収入となりました。これは税金等調整前当期純利益や減価償却費などの非資金損益項目が、法人税等の支払などによる支出を上回ったことによるものです。なお、営業活動によるキャッシュ・フロー収入は前連結会計年度と比べ373億46百万円増加しておりますが、これは主に税金等調整前当期純利益が増加したことや前連結会計年度で大きく増加していた運転資金が改善したことによるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは239億31百万円の支出となりました。これは、主として有形固定資産の取得による支出によるものです。なお、投資活動によるキャッシュ・フロー支出は前連結会計年度と比べ88億8百万円増加しておりますが、これは主に有形固定資産の取得による支出が増加したことによるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは110億49百万円の支出となりました。これは主として長期借入金の返済による支出によるものです。なお、財務活動によるキャッシュ・フローは前連結会計年度の85百万円の収入に対し、当連結会計年度は110億49百万円の支出となっておりますが、これは主に短期借入金の借入による収入が減少したことによるものです。

 

③生産、受注及び販売の実績

(a)生産実績及び受注実績

 当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様でなく、また、受注生産形態をとらない製品も多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。

 このため、生産実績及び受注実績については、「①財政状態及び経営成績の状況」におけるセグメント業績に関連付けて示しております。

(b)販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前連結会計年度比(%)

 

アルミナ・化成品

37,297

△3.3

 

地金

113,165

△3.6

 

アルミナ・化成品、地金

150,462

△3.5

 

板製品

49,154

△10.2

 

押出製品

48,379

△8.2

 

板、押出製品

97,533

△9.2

 

輸送関連製品

82,707

22.9

 

その他

87,719

2.2

 

加工製品、関連事業

170,426

11.3

 

箔、粉末製品

105,294

4.9

 合計

523,715

1.3

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.当連結会計年度において、主要な販売先として記載すべきものはありません。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

① 2023中期経営計画レビュー

 当社グループにおいては、不確実性を増す事業環境に柔軟に対応するべく、昨年5月、「新生チーム日軽金への取組み」および「社会的な価値の創出に寄与する商品・ビジネスの提供」を基本方針とする中期経営計画(2023年度~2025年度)を策定し、当期は初年度として、サプライチェーン・ライフサイクル全体を通してお客様のニーズを満たし、社会課題の解決にも寄与する多様な商品・ビジネスの提供を加速させております。

 具体的には、お客様のCO2削減ニーズの高まりを踏まえ、大型ウィングボデーの水平リサイクルによるリサイクルアルミニウムで実現した「グリーンボデー」をトラックボデー業界では初めて製造し、1台あたり約8トンのCO2排出量を削減(従来の大型ウィングボデーのアルミニウム材料の製造工程で排出されるCO2排出量の約80%削減)することに成功しました。さらに、国内における半導体産業の成長によるクリーンルームの需要増とCO2削減の両立に対応するべく、クリーンルーム用ノンフロン断熱不燃パネルの増産を目的とした工場建設にも着手しました。

 また、カーボンニュートラル実現に向けた取組みとしては、脱炭素社会の実現に向け期待が高まるアルミニウムへのニーズにお応えするため、2030年度に2013年度比30%のCO2削減(スコープ1・2、3)を当社グループのカーボンニュートラル戦略に掲げ、昨年4月に発足した「カーボンニュートラル推進室」が中心となり、循環型サプライチェーン構築に向けた当社グループの方針・戦略の策定を進めました。

 さらに、グループシナジーを創出する資源の最適配分を実現するため、当社グループの自動車部品事業を統合する会社として昨年10月に発足した「日軽金ALMO株式会社」が新商品の拡販に努めるとともに、米国新工場の操業安定化に向けた取組みを着実に進めました。

 また、2021年に当社グループ会社で判明した品質等に関する不適切行為について昨年3月に策定・公表した再発防止への取組みについては、昨年4月に新設した「改革推進室」が中心となり、グループ・ガバナンス体制の再構築、内部統制機能の強化、そして、当社グループが真に持続可能な企業グループとなるための企業風土の改革にグループ一丸となって取り組みました。

 

② 当連結会計年度の財政状態の分析

 当社グループは、より健全で強固な経営体質にすることを狙いとした中期経営計画の諸施策と並行し、財務体質改善のための有利子負債削減や自己資本の充実に注力しております。

 当連結会計年度末の総資産は、期末日休日による売上債権の増加や株価の上昇に伴う投資有価証券の時価評価額の増加などにより、前連結会計年度末と比べて169億92百万円増の5,431億93百万円となりました。
 負債は、長期借入金の返済による減少などにより、前連結会計年度末に比べて3億45百万円減の3,050億98百万円となりました。
 純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による利益剰余金の増加や、円安の進行による為替換算調整勘定の増加などにより、前連結会計年度末と比べて173億37百万円増の2,380億95百万円となりました。この結果、自己資本比率(期末純資産から非支配株主持分を控除したベース)は、前連結会計年度末の39.0%から40.7%となりました。

 

③ 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

(a)概要

 当連結会計年度の売上高は5,237億15百万円(前連結会計年度比 1.3%増、67億61百万円増)、営業利益は181億89百万円(同 141.3%増、106億50百万円増)、経常利益は190億33百万円(同 114.8%増、101億74百万円増)、親会社株主に帰属する当期純利益は90億37百万円(同 25.5%増、18億34百万円増)となりました。

 

(b)営業利益

 当連結会計年度の営業利益は、前連結会計年度と比べ、106億50百万円増の181億89百万円となりました。営業利益のセグメント毎の分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載しております。

 

(c)営業外収益・費用

 営業外収益は、持分法による投資利益が減少したことなどにより、前連結会計年度と比べ、16億26百万円減少し、53億32百万円となりました。
 営業外費用は、営業外費用に計上している事業再編費用が減少したことなどにより、前連結会計年度と比べ、11億50百万円減少し、44億88百万円となりました。

 

(d)特別利益・損失

 特別損失は、堆砂対策費用として17億96百万円、減損損失を7億62百万円計上いたしました。減損損失の内容については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結損益計算書関係)」に記載のとおりであります。

 

(e)税金費用等

 当連結会計年度の税金費用(法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額の合計額)は、課税所得が増加したこと等により、前連結会計年度と比べ、12億41百万円増加し、63億32百万円となりました。
 非支配株主に帰属する当期純利益は、主として子会社である日軽エムシーアルミ㈱の非支配株主に帰属する利益であり、当連結会計年度は11億6百万円となりました。

 

④ 経営成績に重要な影響を与える要因について

 経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しております。

 

⑤ 資本の財源及び資金の流動性に関する分析

(a)キャッシュ・フロー

 当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末と比べ38億24百万円(12.2%)増加の350億87百万円となりました。

 営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比べ、373億46百万円増加し、380億41百万円の収入となりました。これは主に税金等調整前当期純利益が増加したことや前連結会計年度で大きく増加していた運転資金が改善したことによるものです。
 投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度の151億23百万円の支出に対し、当連結会計年度は239億31百万円の支出となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出が増加したことによるものです。
 財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度の85百万円の収入に対し、110億49百万円の支出となりました。これは主に短期借入金の借入による収入が減少したことによるものです。

 

(b)資金需要・調達及び流動性について

 当社グループは、事業活動のための適切な資金確保、充分な流動性の維持に留意しております。当社グループの資金需要としては、製品製造のための原料及び操業材料の購入、製造費、販売費及び一般管理費等の営業活動に係る運転資金需要、製造設備の購入及び事業買収等の投資活動に係る長期資金需要があります。
 当社グループは、資金調達に当たって資金の安定性強化と資金コストの低減に傾注しつつ、社債の発行や、主力銀行をはじめとする幅広い金融機関からの借り入れによる調達を行なっております。
 また、流動性に関して、当社グループは金融情勢の変化等を勘案しながら、現金同等物の残高が適正になるように努めております。
 当社グループの営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度6億95百万円、当連結会計年度380億41百万円の収入であり、前連結会計年度に比べると約370億円増加しました。これは主に税金等調整前当期純利益が増加したことや前連結会計年度で大きく増加していた運転資金が改善したことによる影響です。2024年度以降も、営業キャッシュ・フローを安定的に創出できると考えておりますが、将来の当社グループの成長を維持するために必要な運転資金及び長期資金を調達するためには、必ずしも充分ではない可能性があることも認識しております。将来の成長を維持・加速するために必要な資金は、基本的に新商品・新規事業の創出による売上、収益の拡大を通じて営業キャッシュ・フローの増大により確保していく方針であります。

 

⑥ 重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するに当たり重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。当社グループでは、以下に記載した会計方針及び会計上の見積りが、連結財務諸表作成に重要な影響を及ぼしていると考えております。また、会計上の見積りのうち、翌連結会計年度の連結財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがあると識別したものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

(a)貸倒引当金

 当社グループは、売上債権等の貸倒損失に備えて回収不能見込額を見積り、貸倒引当金として計上しております。将来、顧客等の財務状況悪化、経営破綻等により、顧客等の支払能力が低下したとの疑義が生じたと判断される場合には、貸倒引当金の追加計上又は貸倒損失が発生する可能性があります。

 

(b)資産の評価

 当社グループは、棚卸資産については主として原価法(貸借対照表価額は収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により算定)を採用しておりますが、製品別・品目別に管理している受払状況から、滞留率・在庫比率等を勘案して、陳腐化等により明らかに市場価値が滅失していると判断された場合には、帳簿価額と正味売却価額との差額を評価損として計上しております。実際の市場価格が、当社グループの見積りよりも悪化した場合には、評価損の追加計上が必要となる可能性があります。
 当社グループは、長期的な取引関係の維持・構築のため、一部の顧客及び金融機関等の株式を所有しており、金融商品に係る会計基準に基づいて評価しております。将来において市場価格のある株式の時価が著しく下落したとき、回復する見込みがあると認められない場合には、評価損を計上する可能性があります。一方、市場価格のない株式については、将来において投資先の業績不振等により、帳簿価額に反映されていない損失あるいは帳簿価額の回収不能が発生したと判断された場合には、評価損を計上する可能性があります。
 当社グループは、固定資産の減損に係る会計基準を適用しており、将来において、資産の収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった場合には、減損損失の追加計上が必要となる可能性があります。

 

(c)繰延税金資産

 当社グループは、合理的で実現可能なタックスプランニングに基づき将来の課税所得を見積り、繰延税金資産の回収可能性を充分に検討し繰延税金資産を計上しております。
 将来、実際の課税所得が減少した場合、あるいは将来の課税所得の見積り額が減少した場合には、当該会計期間において、繰延税金資産を取り崩すことにより税金費用が発生する可能性があります。一方、実際の課税所得が増加した場合、あるいは将来の課税所得の見積り額が増加した場合には、繰延税金資産を認識することにより、当該会計期間の当期純利益を増加させる可能性があります。

 

(d)退職給付費用及び債務

 当社グループは、従業員の退職給付費用及び債務を算出するに当たり、数理計算上で設定した基礎率(割引率、昇給率、退職率、死亡率、期待運用収益率等)は、統計数値等により合理的な見積りに基づいて採用しております。これらの見積りを含む基礎率が実際の結果と異なる場合、その影響額は数理計算上の差異として累積され、将来期間にわたって償却されるため、将来において計上される退職給付費用及び債務に影響を及ぼします。当社グループは採用している基礎率は適切であると考えておりますが、実際の結果との差異が将来の当社グループの退職給付費用及び債務に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(e)堆砂対策引当金

 当社の連結子会社である日本軽金属㈱が保有する雨畑ダム(山梨県南巨摩郡早川町)上流の雨畑川の水位が2019年8月の台風10号、同年10月の台風19号などによる豪雨の影響を受け上昇したことにより、周辺地域で浸水被害が発生いたしました。現在、地域の皆さまの安全を最優先に、関係各所との連携により浸水被害を防ぐための対策を進めております。
 また、国土交通省より抜本的な解決に向け、堆砂対策の計画を取りまとめ、計画的に取り組むよう指導されております。
 この状況を厳粛に受け止め、日本軽金属㈱は国土交通省、山梨県及び早川町との4者で構成する雨畑地区土砂対策検討会を設立し、周辺地域における浸水被害発生に対する応急対策、及び堆積土砂の抜本対策について検討を重ね、その内容に基づき雨畑ダム堆砂対策基本計画を策定し、その実行に伴う費用等を合理的に見積っておりますが、見積りの前提として仮定した搬出計画(搬出方法や搬出先)は、必ずしもすべての内容につき実行の許認可を得られたものではなく、許認可の内容や工事方法の変更等によって見積り額が変動する可能性があります。

 なお、当見積り項目は、重要な会計上の見積りとして、そのリスク内容を「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

 

5【経営上の重要な契約等】

 

Ⅰ アルミニウム薄板連続鋳造に関する契約

契約会社名

相手方の名称

国名

契約内容

契約期間

日本軽金属㈱

連結子会社

ノベリス・インク

アメリカ

包括契約(付属契約を含む)

 アルミニウム薄板連続鋳造に係る設備設置及び技術・商標のライセンス

2002年4月1日から契約解除等による終了の日まで(注)

 (注)2023年10月31日付で解約しております。

 

Ⅱ 連結子会社の株式の譲渡に係る統合基本契約

 当社は、当社が保有する東洋アルミニウム株式会社株式の全部を、JICキャピタル株式会社が運用するJICPEファンド1号投資事業有限責任組合に譲渡する旨の統合基本契約を2022年8月31日付で締結し、2023年3月31日付で当該株式譲渡を実行することを予定しておりましたが、2023年2月27日付で当該実行予定日を延期することを決定しております。

 

6【研究開発活動】

 当社グループは、アルミニウムに関する経営資源をベースに、付加価値の高い機能材料と加工品を事業展開し、収益基盤を拡大することを事業戦略の力点に置いております。アルミニウム素材関連の要素技術に磨きをかけ、この技術を活かした新商品・新技術の創造を推し進めるとともに、グループ全体の有機的な連携を強め、高い付加価値商品・サービス群で構成された成長を持続する企業集団としての姿を追求しております。

 現在、当社グループは、技術・開発統括室を中心に、従来の組織分野ごとに蓄えられた知的資源・情報・技術を融合し、組織横断的な各々の市場ニーズに適応した「横串活動」へと展開し、市場競争力のある付加価値の高い商品及び事業の開発を進めております。

 また、日本軽金属㈱グループ技術センターは、マトリクス組織を導入し、永年培ってきた材料・表面処理・解析設計・接合加工・分析の技術を活かしながら、「横串活動」に積極的な参加を行っております。さらに、生産・販売に直結した技術・製品開発体制を整備し、また、高度化・多様化する市場・顧客ニーズに即応可能な技術サービス力の充実を図ることにより、利益拡大に貢献する新商品・新技術の開発を進めております。

 当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費は6,260百万円であり、各セグメントにおける研究目的、主要課題、研究成果及び研究開発費は次のとおりであります。

(アルミナ・化成品、地金)

 当社グループのアルミナ・化成品の製造部門を中心に、アルミナ、水酸化アルミニウム、各種化学品の高品質・高付加価値化に関する開発及び新用途開発等を行っており、多角的な視野から研究開発を進めております。

 地金に関しては、日本軽金属㈱グループ技術センターを中心に、自動車、通信機器、産業機械分野における多様な材料ニーズに対応するため、必要な特性を向上させた各種合金を開発しております。

 当セグメントに係る研究開発費は759百万円であります。

 

(板、押出製品)

 日本軽金属㈱グループ技術センターを中心に、自動車や鉄道等の軽量化・高機能化・リサイクルに適合するアルミニウム板、押出材の開発及びその量産技術、需要拡大につながる新規応用商品の開発等を行っております。

 当連結会計年度には、日軽金アクト㈱において、「人工衛星用ブラケット」をアルミ3D造形品にて大手宇宙機メーカーに供給いたしました。アルミ3D造形は製品形状の自由度があり、製品の軽量化・部品点数の削減等の効果が期待されております。今後の衛星打ち上げ市場は成長が見込まれており、今回の供給はその市場への足掛かりになることが期待されております。

 当セグメントに係る研究開発費は1,778百万円であります。

(加工製品、関連事業)

 日本軽金属㈱グループ技術センターを中心に、電子材料、景観関連製品、輸送関連製品、アルミニウム建築構造部材等のアルミニウム加工製品関連の研究開発を行っております。

 当連結会計年度には、日本フルハーフ㈱において、トラックボデー業界で初めてリサイクルアルミニウムで大型ウィングボデーの水平リサイクルを実現し「グリーンボデー」を製造しました。「グリーンボデー」は大型部材をリサイクルアルミニウム100%で製造することで、ウィングボデー1台の製造におけるCO2排出量の約8割の削減を実現しております。

 当セグメントに係る研究開発費は2,168百万円であります。

 

(箔、粉末製品)

 東洋アルミニウム㈱を中心に、アルミ箔、アルミペースト、粉末製品等に関する基礎研究、応用研究を行い、新素材や高機能材料等の開発を行っております。

 当連結会計年度には、オンシリコン多接合型太陽電池の研究開発が、「NEDO先導研究プログラム/新技術先導研究プログラム」公募に採択されました。高い変換効率を有する太陽電池であるIII-V族多接合型太陽電池において、実現可能な低コスト化プロセスを用いてシリコン基板上へIII-V族多接合型太陽電池を形成するための研究で、2040年以降の社会実装を目指しております。本件は、国立大学法人大阪大学大学院工学研究科における東洋アルミニウム半導体共同研究講座を中心として、国立大学法人東海国立大学機構名古屋大学および国立研究開発法人産業技術総合研究所との共同により提案、採択されたものであります。

 当セグメントに係る研究開発費は1,555百万円であります。