文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月25日)現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 当社グループの経営方針
当社グループは、信頼に値する企業を目指すことを第一に掲げ、2024年6月に修正公表した「Sawai Group Vision 2030」達成に向けた道筋をつけるため、2026年度(2027年3月期)を最終年度とする3か年の中期経営計画(以下「新中計」という。)を策定しました。
長期ビジョン「Sawai Group Vision 2030」
①2030年度に目標とする企業グループイメージ
(創りたい世界像)
より多くの人々が身近にヘルスケアサービスを受けられ、社会の中で安心して活き活きと暮らせる世界
(ありたい姿)
個々のニーズに応じた、科学的根拠に基づく製品・サービスを複合的に提供することで、人々の健康に貢献し続ける、存在感のある会社
②財務目標
売上収益 3,100億円 ROE 13%以上
中期経営計画「Beyond 2027」
①重点テーマ
「信頼される企業の地位確立」を土台となるテーマとして設定し、その上でさらに成長するために下記の重点テーマを設定
a.事業戦略重点テーマ
・GE市場における着実な成長
・GEビジネスの持続性確立
・成長分野への継続投資
b.経営基盤重点テーマ
・持続的成長を支える人財の創出
・サステナビリティへの取り組み
・資本効率改善
②株主還元方針
a.配当
中長期的な利益水準、DOE等を総合的に勘案しながら安定的かつ継続的な配当を目指す
b.自己株式取得
資本効率向上と株主還元策の一環として、フリーキャッシュフロー、市場動向等を踏まえ、機動的に実行
③定量目標
売上収益 2,200億円 ROE 10%以上
(2) 当社グループの現状認識
日本の医薬品市場を取り巻く環境としては、1961年に実現された国民皆保険制度の恩恵を受け、日本は世界最高水準の長寿社会を実現してきました。その反面、医療費をはじめとする社会保障費用は、年々増加の一途を辿っているため、少子高齢化も相まって現役世代の負担がますます重くなり、一定の自己負担で高水準の医療を受けられる仕組みの維持が困難になりつつあります。
このような状況に対して、近年、医療の質を落とすことなく、医療の効率化(医療費の削減)を図るべく、ジェネリック医薬品の使用促進が図られてきました。
政府は2017年6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2017~人材への投資を通じた生産性向上~」(骨太方針)及び、2019年6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2019~『令和』新時代:『Society5.0』への挑戦~」(骨太方針2019)において「2020年9月までの後発医薬品使用割合80%」を目標として、「後発医薬品の使用促進について、安定供給や品質のさらなる信頼性確保を図りつつ」、「インセンティブ強化も含めて引き続き取り組む」とし、さらに、2021年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2021」(骨太方針)では、「後発医薬品の品質及び安定供給の信頼性の確保を柱とし、官民一体で、製造管理体制強化や製造所への監督の厳格化、市場流通品の品質確認検査などの取り組みを進めるとともに、後発医薬品の数量シェアを、2023年度末までに全ての都道府県で80%以上とする」とされています。
ジェネリックシェア80%時代を迎え、ジェネリック医薬品が担う責任と重要性の高まっていく中で、グループの中核会社である沢井製薬の九州工場で製造するテプレノンカプセル50mg「サワイ」の安定性モニタリングの溶出試験において、不適切な試験が継続的に行われていたことが判明し、沢井製薬が2023年12月に厚生労働省、大阪府及び福岡県から「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」違反を理由とする行政処分を受けました。不適切な方法による試験行為に対する再発防止策に取り組み、当社グループ製品の品質に対する信頼性を確保するとともに、安定供給体制を構築してくことが、当社グループとして果たすべき社会的責任であると認識しています。
一方、政府により決定された薬価制度の抜本改革によって、通常の2年に1度の薬価改定の間の年度においても薬価調査・薬価改定(中間年改定)が導入されたことで毎年の薬価改定が行われる状況になっており、今後薬価の下落影響が拡大し続ける可能性があります。
このような経営環境の中で当社グループは、ジェネリック医薬品業界のリーディング・カンパニーとして、いち早く新しいジェネリック医薬品を開発・上市するとともに、品質・安定供給・情報提供においてトップレベルの水準を維持し続けることにより、ブランド価値を高め、競争に打ち勝つことが、持続的に成長していくために不可欠との判断の下、その達成のために次の(3)にあげた7点が最重要課題であると認識しております。
(3) 当面の対処すべき課題及び具体的取組状況等
① 信頼性の向上
ジェネリック医薬品の品質を確保し、信頼性を向上していくことが、医薬品メーカーとしての当社グループの責務です。こうした中、沢井製薬の九州工場で不適切な試験が継続して実施されてきた原因を踏まえ、再発防止策として、a.沢井製薬社長直轄の企業風土改革プロジェクトの実施、b.既存上市品の製造面及び品質面での再評価とその対策実施、c.全従業員に対する製造管理・品質管理基準(以下、「GMP」という。)教育の再実施や、管理職・監督職の責任の明確化、工場の品質管理部門、品質保証部門への社内外からの人材確保推進などの沢井製薬生産本部における再発防止策の実施を掲げ、すでに取り組みを開始しており、グループ一丸となって継続して取り組むことで、信頼性の回復と向上に努めてまいります。
② 安定供給の維持・確保
治療を必要とする患者さんの元に高品質な医薬品を安定的に供給することは、医薬品メーカーにとって最も重要な使命の一つです。生産設備の拡充による生産能力の増強をはじめとし、世界中から高品質で適切な原材料を確保し、適宜適切かつ継続的な設備投資、厳格な基準による製造管理・品質管理を行うとともに、的確な需要予測と適正在庫の確保を行うことを通じて、安定供給の維持・確保を図り、ジェネリック医薬品の需要増に対応してまいります。また、災害時にも安定供給を維持できるよう策定したBCP(事業継続計画)に基づき、原材料の複数ソース化、生産機械の共通化、代替要員の確保、人財の多能職化並びに工場間の人財交流及び技術の標準化等に取り組んでまいります。
③ 高付加価値ジェネリック医薬品のいち早い開発と確実な上市
競合が多いジェネリック医薬品業界において競争に打ち勝つためには、市場環境、患者さんや医療従事者のニーズに応えた他社品目との差別化が重要であり、また、一番手で上市することがジェネリック医薬品として患者さんのニーズに応えることにもなります。特許・技術・コスト・効率化等の諸課題に挑戦し、高付加価値ジェネリック医薬品の確実な一番手上市を目指してまいります。
④ 情報提供の充実
医薬品は、正確な情報を伴ってはじめて患者さんの治療目的が達成されるものであります。MRの活動のみならず、ウェブやコールセンター等のマルチチャネルを効率的に活用し、情報提供力の充実・強化を図ります。正確な効能・効果、用法・用量、副作用、品質や付加価値といった医薬品情報のほか有用な情報を医療関係者に迅速かつ確実に提供し、顧客満足度の向上に努めてまいります。
⑤ マーケティング機能の充実
競争優位を確立するためには、マーケット分析に基づいた的確な開発品目の選定、ターゲティングの明確化によるMRの生産性の向上が不可欠であります。マーケティング機能の充実と薬価制度改革や医療政策の変化等に伴う競争環境の変化を踏まえた営業戦略の見直しを図ってまいります。
⑥ 企業体質・経営管理の強化
沢井製薬が行政処分を受けた不適切な試験の背景としてa.安定性モニタリングを軽視する風潮の蔓延、b.上司の指示に疑問を持たずに従う傾向、c.試験関与者のGMPに対する理解の欠如といったコンプライアンス体制、意識に関連する事象が挙げられており、企業理念の浸透、コンプライアンス委員会の活動強化、リスク管理の充実、内部統制の整備・拡充といったコーポレート・ガバナンスの強化とSDGsに沿った取り組みによって企業体質の改善、強化を図ってまいります。また、環境変化に的確に対応できるよう意思決定や事業展開のスピードを追求するとともに、コスト削減等による徹底したコスト競争力の強化や業務の効率化、業容拡大に伴う経営基盤の整備・強化、会社の成長を支える人財の育成、ダイバーシティへの取り組みといった企業体質及び経営管理の強化に取り組んでまいります。
⑦ 新規事業基盤の構築・強化
当社グループが中長期ビジョンの達成を目指すにあたり、また、将来にわたって持続的成長を遂げていくためには、既存のジェネリック医薬品事業以外の新規領域への展開を図っていく必要があります。併せて、ジェネリック医薬品事業の周辺ヘルスケア分野への新たな展開に向け、事業分野調査をはじめとした新たな事業分野の開拓、展開に取り組んでまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
今やジェネリック医薬品は医療においても必要不可欠なインフラとなり、その公共性は極めて高くなりました。当社グループは、中核事業であるジェネリック医薬品の提供を通じて、患者さんの医療へのアクセス向上と医療財政の健全化に貢献することが最大の社会貢献であり、当社の存在意義であると考えています。
近年、医薬品全体で生じている供給不安を踏まえ、患者さんや医療関係者を始めとするステークホルダーの皆様に安心してご使用いただけるように取り組んでいる事項、例えば、高品質の原薬の確保、生産人員をはじめとする雇用・人財育成、省エネかつ低炭素排出の製造機器の導入、健康的な職場環境の整備等は、サステナビリティの取り組みと密接に関連しております。
(基本的な考え方)
1.当社グループにとって、「健全な社会の存在とその持続的(サステナブル)な発展」こそがその存立の基盤である。
2.「持続可能な社会の実現」のために、当社グループが必要な存在(=「社会の公器」)であると認められ、かつ、当社グループがすべてのステークホルダーとの間でしっかりとした信頼関係を継続できてこそ、当社グループのサステナビリティが実現できる。
3.社会は絶えず変化するものであり、当社グループも社会の変化に即応して絶え間ない進化を遂げることにより、サステナブルな存在であり続けることができる。
(基本方針)
1.「なによりも健やかな暮らしのために」という企業理念のもと、事業そのものを通じて、人々の健やかな暮らしと優れた医療制度等の維持・発展に貢献することで、サステナブルな社会実現の一翼を担うこと。
2.患者さん・生活者、医療機関等ヘルスケア従事者、取引先、社員、株主、地域社会、地球環境など、すべてのステークホルダーとの継続的なエンゲージメント(相互信頼に基づく絆の構築)に努めること。
3.当社グループがサステナブルな存在であり続けるために、創造性を追求し、社会とともに絶え間ない進化を遂げること。
この基本方針に沿って、当社グループで進めるサステナビリティに関する取り組みは次のとおりであります。
(1) サステナビリティ共通
当社グループの企業理念「なによりも健やかな暮らしのために」には、ジェネリック医薬品事業を中核に、社会とともに持続的に発展するヘルスケア企業グループとして、ひとりでも多くの人々の健康に貢献していきたいという願いを込めています。この実現のため、当社グループが取り組むべきテーマがサステナビリティの推進であり、気候変動への取り組みやダイバーシティ&インクルージョンの推進、コーポレート・ガバナンスの強化などについて、定期的に取締役会及びグループサステナビリティ委員会で議論しております。
<ガバナンス>
サステナビリティは、環境、社会、従業員、人権の尊重、贈収賄・腐敗防止、ガバナンス、サイバーセキュリティ、データセキュリティ等多岐にわたるため、当社ではテーマごとに各種専門委員会(グループサステナビリティ委員会、グループリスクマネジメント委員会、グループコンプライアンス委員会、グループ情報セキュリティ委員会)を設置しております。取締役会の監督の下、グループ各社の代表者から構成される委員を中心にサステナビリティに関する事項の協議・検討を行っております。
<戦略>
様々な社会課題のうち、当社グループが優先して取り組むべき重要な課題(マテリアリティ)を特定し、事業そのものを通じて、各課題の解決に貢献するとともに、ステークホルダーとの継続的なエンゲージメント(相互信頼に基づく絆の構築)に努め、当社グループがサステナブルな存在であり続けるために必要な目標をテーマごとに設定し、達成するための戦略を中期経営計画に設定しております。
2024年度からの新中計の作成にあたり、マテリアリティの見直しを行いました。見直しに当たっては、「ステークホルダーの関心」と「当社グループにとっての重要度」並びに「価値創造につながるマテリアリティ」と「持続的成長につながるマテリアリティ」の観点からサステナビリティ活動における重要課題を特定し、次の通り優先順位を設定いたしました。

当社グループのサステナビリティ課題(マテリアリティ)と中期目標は、外部評価の結果や国際ガイドライン等を参照し、次のプロセスを経て特定しております。
STEP1:課題のリストアップ
SASBスタンダード、GRIスタンダード、SDGsなどの国際的イニシアチブのほか、当社グループの企業理念・行動基準、グループビジョンや事業環境をもとに、ESGごとにグループサステナビリティ委員会メンバーによるワークショップを行い、中長期的な企業価値に関係が深いと考えられる経営課題をリストアップする。
STEP2:課題の抽出と重要度評価
STEP1でリストアップしたマテリアリティの候補を、ステークホルダーの関心と当社グループにとっての重要度の2軸でマッピングし、該当するエリアごとに「価値創造につながるマテリアリティ」と「持続的成長の基盤となるマテリアリティ」の2つに分類する。
STEP3:妥当性の確認
特定したマテリアリティについて、目標、取り組み、モニタリング指標を設定し、グループサステナビリティ委員会で妥当性について検証し、最終的に取締役会での議論・審議を経て、承認を取得する。
<リスク管理>
当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす可能性があるリスクには様々なものがあります。当社グループでは、事業活動に潜在する様々なリスクに適切な対応を行うため、グループリスクマネジメント委員会を設置し、リスクマネジメントの統括を行うととともに、発生頻度と事業に与える影響度から特に重要なリスクを特定しております。特定された重要なリスクについては、各担当部門が講じる対策を確認し、その進捗管理及び評価を行うことで、継続的な改善が行われる体制を構築しております。
当社グループが認識している主要なリスクの詳細については、
当社グループのサステナビリティ課題に係るリスクについては、特定したマテリアリティのうち、持続的成長の基盤となるマテリアリティを中心にリスク管理の対象として捉えており、関連する委員会・部署においてリスク管理への取り組みを行っております。特に「環境に配慮した事業」、「働き方・働きがい・人権尊重」、「コーポレート・ガバナンス」のほか、「人財育成」への対応を誤ると、当社グループの企業価値の毀損、ひいては当社グループのサステナビリティリスクが高まると考えております。
<指標及び目標>
当社グループが特定したサステナビリティ課題(マテリアリティ)として、経営基盤の強化のため、気候変動への対応やID&Eの推進、コーポレート・ガバナンス強化の取り組みを推進しております。
気候変動及び人的資本に関する目標は、それぞれの項目をご確認ください。
(2) 気候変動
気候変動が社会や経済にもたらす影響は大きく、当社グループに重大な財務的影響を与える可能性があるため、気候変動への対応を当社グループとして取り組むべき重要課題(マテリアリティ)の1つと捉えております。そのため、当社は、気候関連財務情報開示の重要性を認識し、2021年9月にTCFD(気象関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明いたしました。
当社グループは、パリ協定を始めとする国際的方針、日本国が決定する貢献(NDC)や気候変動に関連する法規制や政策を支持し、温暖化ガスの排出量の低減に取り組むとともに、TCFDの開示枠組みに沿った情報開示を行ってまいります。
<ガバナンス>
当社グループでは、気候変動を含む環境課題への対応を企業の社会的責任(CSR)と認識しており、当社グループのサステナビリティに関わる重要な課題の1つと捉えていることから、グループサステナビリティ推進室担当役員に気候変動問題に対する責任を割り当て、取締役会がその職務の執行状況を監督しております。
当社では、グループ各社からの代表者メンバーを含む「グループサステナビリティ委員会」を設置し、年4回、気候変動課題を含むサステナビリティに関する事項を協議・検討しております。「グループサステナビリティ委員会」は、取締役会へ活動報告を行うとともに、取締役会からの指示・監督の下、気候変動課題に関する意思決定を行っております。
また、委員会の下部組織としてグループ各社からのメンバーにより構成される「地球環境チーム」を設置して気候変動を含む環境課題への対応として具体的な取り組み・活動を推進し、四半期に1回、委員会に報告を行うとともに、委員会からの指示・助言等に従って取り組みや改善活動を継続しております。
<戦略>
当社グループは、企業理念「なによりも健やかな暮らしのために」及び当社グループの中核企業である沢井製薬の企業理念「なによりも患者さんのために」のもと、ジェネリック医薬品の製造販売を主たる事業として展開しております。生命と健康に関連する医薬品やヘルスケアサービスの安定供給を欠かすことができない制約の下、重要事項の1つである気候変動リスクにもバランスよく対応していくことが必要であると考えております。
一方、当社グループの事業拡大に伴う医薬品やヘルスケアサービスの需要増に応じて、温室効果ガス(GHG(当社グループでは主にCO2))の排出量も増加傾向にありますが、短期的には原単位ベースでの排出量削減に取り組むとともに、中長期的には、再生エネルギーの導入検討を含む排出量の削減に取り組んでまいります。
当社グループでは、気候変動関連課題を含むサステナビリティへの対応を経営の重要な課題として捉えており、当社グループの新中計において、2030年度までに削減するCO2排出量及び2050年度までに削減するCO2排出量の目標を設定し、その達成に向けて取り組みます。
シナリオ分析では、国際エネルギー機関(IEA)や、気候変動に関するIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が公表するRCPシナリオを参照したうえで、パリ協定の目標である「産業革命前からの全世界平均気温の上昇を2℃未満に抑える」ことが達成される場合を想定した1.5℃シナリオと、政策や規制に大きな変更がなく現状に近い状況でGHG排出量が増え続けて全世界平均気温が上昇する4℃シナリオの複数のシナリオにより、当社グループに及ぼす影響を検討しております。
<リスク管理>
当社グループは 、原材料調達から製造販売に至るサプライチェーンの各段階において気候変動に関連するリスクと機会を洗い出し、それらの発生可能性及びそれらが当社グループへ与える財務影響度からリスクと機会の評価付けを行い、当社グループにとって重要なリスクと機会を特定しております。「地球環境チーム」のメンバーを中心に、サプライチェーンの各段階に関係が深い部門又は関連各社の関与と協力を得て、選別・評価・特定されたリスクと機会が「グループサステナビリティ委員会」並びに取締役会へ報告されます。当該報告を基に「グループサステナビリティ委員会」並びに取締役会において検討・審議を経て決定がなされた気候変動リスク及び機会に対する取り組みは、短期的には毎年の事業計画に、中長期的には中期経営計画に適宜組み込まれる仕組みになっております。
<指標及び目標>
当社グループでは、CO2を含むGHG排出量の削減目標の設定に当たり、Scope1、Scope2及びScope3をモニタリング指標として採用し、毎年のScopeごとの実績を当社コーポレートサイトに開示しております。2022年度データより、グループのエネルギー使用量の8割を占める沢井製薬株式会社において、GHG排出量及び水使用量に関して、第三者検証を受けております。
新中計において、2030年度までにCO2の排出量(Scope1及びScope2)を総量で2013年度+α(注1)比46%削減、また2050年までにネットゼロを掲げております。また、Scope1、Scope2とも前年比少なくとも1%以上の削減を短期的な削減目標として毎年設定しております。
CO2の排出量を削減するため、非化石エネルギーの計画的な導入状況を指標として設定いたします。その目標設定については、当面は毎年3,000トンのCO2削減に相当する非化石エネルギーの導入を行っていく予定であります。
(注)1.比較対象となる2013年度時点におけるサワイグループの構成会社状況が変化しているため、基準となる
CO2排出量を適宜調整するため+αで表現しております。
(3) 人的資本・多様性に関する取り組み
当社グループでは『個を育て、個を活かす』を人事理念とし、人財育成に力を入れております。特に、事業環境が極めて不透明かつ刻々と変化する中、競争に勝ち抜くためには、多様な視点を持ち、状況変化を素早く感じ取って自ら判断し、自律的に行動に移せる人財が必要であると考えております。
<ガバナンス>
中期経営計画及び長期ビジョンに基づき、グループ人事部門の責任者と各事業責任者による議論及び検討を通して、求める人財要件を定義しております。その人財の採用及び育成について、グループ戦略会議の審議を経て、取締役会で審議・議論の後、承認されるプロセスになっております。また、取締役会は、人員計画の充足状況と各種研修の実施状況について適宜グループ人事部門の責任者に報告を求めることにより、継続的なモニタリングを行っております。
<戦略>
2026年度(2027年3月期)を最終年度とする新中計では、グループの中核事業であるジェネリック医薬品事業において、生産能力を220億錠へ規模を拡大して、ジェネリック医薬品の安定供給に努めていく計画であります。規模拡大の前提として、これまでと変わらない高品質で付加価値の高いサワイジェネリックをお届けしていくことは必須条件です。そのため、これまで以上の品質管理、品質保証、研究開発の体制と機能の拡充が必要と考えております。
これらを踏まえると、新中計の達成に向けては、事業拡大を支える①人財の確保と②人財の定着が何よりも重要になると考え、次の取り組みを実施しております。
①人財の確保
当社グループの中核会社である沢井製薬の2024年度採用において、2023年度比約2倍となる400名超の大量採用を計画しております。しかしながら、採用市場は年々厳しさを増しており、いわゆる売り手市場の状況が続いています。数ある会社の中から当社グループを選んで頂けるように、2024年度において、大幅なベースアップを含め月例給与の底上げを行いました。さらに、新卒採用者の初任給を引き上げ、採用力の強化を図っております。今後も、採用市場の動向を注視しながら、魅力ある労働条件の設定を検討してまいります。
②人財の育成と定着
前述のように、転職市場が活況で未曾有の売り手市場が続いていることを背景として、昨年の従業員離職率は例年に比して高い傾向となりました。長い年月をかけて当社グループで経験を積んだ従業員が当社グループを離れるのは大きな痛手です。特に当社グループでは、経験に裏打ちされる技能や技術、知識の蓄積が重要であることを踏まえ、次のような能力開発の取り組みを行っております。
さらに、多様性の推進、特に女性の活躍推進は、当社グループの今後の事業拡大を図る上で、重要な要素の一つです。日本の労働人口は低下の一途を辿っていますが、女性の就業や活躍は日本の労働力の低下を下支えする大きな要素になると考えております。当社グループにおいても例外ではなく、厳しい採用競争の中でも人財を確保していくためには、性別、人種、国籍、年齢等、様々な違いを認めながら、優秀な人財を獲得する必要があります。
現在、当社グループでは、従業員に占める女性の割合が約4割となっており、メーカー企業群としては、比較的高い水準にあります。また、近年の当社グループの採用活動においても、女性の採用が約4割を占めております。そのため、意欲と能力にあふれる人財がイキイキと働けるように、その環境づくりに努めております。
2022年には、メンバーを公募し、ID&E(注2)の推進施策を検討する全社プロジェクトを実施し、2023年10月には専任部署として「ID&E推進室」を設置いたしました。2024年2月には、経営層を対象とした「女性活躍推進研修」を実施し、研修の最終成果として女性活躍推進への会社としての決意や意気込みを全従業員に向けて発信しました。また、今年度からは、女性リーダー候補を対象にして、新しい研修をスタートさせること予定しております。
(注)2.I…Inclusionの頭文字。各人の持つ属性(人種・国籍・性・年齢等)の違いを理解し、認めあう事。
D…Diversityの頭文字。各人が持つバックボーンを問わずに、人財を活用する事。
E…Equityの頭文字。各人が持つバックボーンの違いを認め、公平に取り扱う事。
<リスク管理>
「なによりも健やかな暮らしのために」という企業理念を掲げる当社グループでは、「質の高い医薬品は心身ともに健康的な職場から生まれる」との考えを持っており、従業員が心身の健康を保って働ける環境づくりは、経営にとっても重要な課題と認識しております。
国内の主要事業所には保健師を配備し、従業員に心身の問題が生じた際は、産業医と連携して速やかに相談や対処ができる環境を整えております。加えて、医薬品の安定供給のリスクにもなり得る感染症の拡大を予防するため、従業員がインフルエンザの予防接種を実施することを奨励し、その費用は全額会社にて負担しております。将来的には、従業員が健康や生活に関する悩みを気軽に相談できるように、現在の体制の拡充を検討してまいります。
また、すべての従業員が心理的安全性を保ち、気持ち良く働けるよう、就業規則等でハラスメントの撲滅に向けた企業姿勢を明文化するとともに、「ハラスメントヘルプライン」を設けて、その撲滅に努めています。
<指標及び目標>
当社グループでは、『個を育て、個を活かす』人事理念のもとで社員一人ひとりの個性や創造性を大切にするため、従業員エンゲージメントの強化とダイバーシティの推進を重要課題とし、新中計における目標として、以下のとおり設定しております。
(注)2023年3月期の実績を記載しております。
当社グループの事業の概況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす可能性があると認識している主要なリスクは、次のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月25日)現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 「医薬品医療機器等法」等による規制
当社グループ傘下の企業は「医薬品医療機器等法」等関連法規の規制を受けており、事業所所在の各都道府県の許可・登録・免許及び届出を必要としております。当社グループは、十分な法令遵守体制をとっておりますが、かかる医薬品製造販売業の許可等に関して法令違反があった場合には、監督官庁から業務停止、許可等の取り消し等が行われ、当社グループの財政状態や経営成績に影響を与える可能性があります。
(2) 薬価制度及び医療制度の変更
当社グループの主要製品、商品である医療用医薬品を販売するためには、日本においては国の定める薬価基準への収載が必要です。薬価については市場実勢価の調査が行われ、その実勢価格をベースに政策的な側面も加味した薬価改定により多数の品目の薬価が引き下げられます。また、増大する医療費の適正化を目的として薬価制度や医療保険制度の改革議論が引き続き行われており、その動向には細心の注意を払って経営方針・経営戦略に反映させておりますが、薬価引下げ率や制度変更の内容によっては、当社グループの財政状態や経営成績に影響を与える可能性があります。
(3) 知的財産に関する訴訟
当社グループは物質・用途・製法・結晶形・用法・用量・製剤に関する特許並びに意匠及び商標等の知的財産権に関し徹底した調査を行い、また、不正競争防止法も十分に考慮した製品開発を心掛けておりますが、当社グループが販売するジェネリック医薬品の先発医薬品には物質・用途特許の期間満了後も複数の製法・結晶形・用法・用量又は製剤に関する特許等が残っていることが多く、当該特許等に基づき訴訟を提起される場合があります。このような事態が生じた場合には、当社グループの財政状態や経営成績に影響を与える可能性があります。
(4) 競合等の影響
当社グループは、日本において販売している製品が度重なる薬価引き下げのため不採算となり、販売中止を余儀なくされることのないように、適正利益を確保した価格で販売するように努めておりますが、多数のメーカーがジェネリック医薬品市場に参入すると、厳しい競争の中で価格の低下を招きやすくなります。さらには、先発医薬品メーカーが、オーソライズドジェネリックの投入等の諸施策により特許満了後の市場シェア低下への対応に努めており、その動向次第では当社グループが計画していた売上収益が確保できないことも想定されます。また、他社に先駆けて毎年数品目のジェネリック医薬品を上市できる研究開発力が当社グループの強みですが、競合他社の研究開発力の向上による競合リスクも高まってきており、当社グループの財政状態や経営成績に影響を与える可能性があります。
(5) 製品回収・販売中止
当社グループが販売するジェネリック医薬品の有効成分は、先発医薬品においてその使用実績から有効性と安全性が一定期間にわたって確認されており、また再審査・再評価を受けたものであり、基本的には未知の重篤な副作用が発生するリスクは極めて小さいものです。しかしながら、予期せぬ新たな副作用の発生、製品への不純物混入、新たな検査基準の設定又は厳格化といった事象が発生した場合には、製品回収・販売中止を余儀なくされるとともに当該事故等の内容によっては製造物責任を負う場合があり、当社グループの財政状態や経営成績に影響を与える可能性があります。
(6) 自然災害等による生産の停滞、遅延
当社グループでは、地震・風水害等の自然災害、その他新型コロナウイルス感染症を含むパンデミック等の重大な健康リスクに対しては、人命尊重を第一に事業が継続できるよう、BCPや危機管理規程等の整備・運用による対応を図っております。当社グループは、福岡県、兵庫県、千葉県、茨城県及び福井県に生産拠点を配置し製造所の分散及び製造機器の共通化等により操業停止リスクの低減を図っておりますが、自然災害、技術上・規制上の問題等の発生により、生産拠点の操業が停止した場合には、当該生産拠点で製造する製品の供給が停止し経営成績に影響を与える可能性があります。また、重要な原材料については、複数ソース購買などサプライチェーンリスクの管理・対応に努めておりますが、特定の取引先から供給を受けているものがありますので、自然災害等の要因によりその仕入れが停止し、その代替が困難である場合には、当社グループの財政状態や経営成績に影響を与える可能性があります。
(7) グローバル事業展開等
当社グループは、ジェネリック医薬品シェアの高まりに伴う国内市場の成長鈍化を見据え、従来から持続的な成長を目指し、海外展開、資本提携及び企業買収等による新規事業展開の検討を図っており、事業採算性のほか関連法令・政治経済情勢を含め十分な調査に努めておりますが、当初の想定を超える予期せぬ事情変更や投資に見合う効果が得られない場合があり、当社グループの財政状態や経営成績に影響を与える可能性があります。
(8) 情報管理
当社グループは、社内外の個人情報・営業秘密その他多くの重要な情報を保有しております。社内規程を整備し、ITセキュリティ対策や外部のデータセンターを含む複数拠点におけるデータの保存等を実施するほか、グループ情報セキュリティ委員会を設置して教育・啓発を実施する等、情報管理の徹底に努めておりますが、システム障害や事故、外部からの不正アクセス等により漏洩、改ざん、喪失等が発生した場合には、当社グループの財政状態や経営成績に影響を与える可能性があります。
(9) 米国事業
当社グループは子会社であるUpsher-Smith Laboratories, LLC(以下、「USL」という。)を通した米国ジェネリック医薬品市場におけるビジネス展開に伴い、USLの経営環境や事業の変化等に起因して、期待されていた効果が得られない場合、資産の減損処理を行う必要が生じるなど、当社グループの財政状態や経営成績に影響を与える可能性がありましたが、2024年1月16日開催の取締役会において、当社が保有するUSLの持分をBoraに譲渡することを決議し、2024年4月2日をもって譲渡が完了したことにより、当該米国事業に係るリスクは著しく軽減されることになりました。なお、米国事業に起因する反トラスト訴訟に関して譲渡後一定の期間において発生する損失を一定限度内でBoraに対して補償する義務を負っているため、想定されるリスク等を踏まえ見積金額を計上しております。今後、判決等の結果により見積金額を超過する損失が発生した場合には、当社グループの財政状態や経営成績に影響を与える可能性があります。
(10) その他
上記のほか、金融市況・為替変動によるリスク、コンプライアンスを含むコーポレート・ガバナンスに関するリスク、気候変動をはじめとする環境問題リスク、少子高齢化に伴う中長期的な人手不足、地政学的リスク等、様々なリスクがあり、ここに記載のリスクが当社グループにおけるすべてのリスクではありません。当社は、グループリスクマネジメント委員会を年2回開催し、発生頻度と事業に与える影響度から特に重要なリスクを絞り込んでディスカッションを行うなど、リスクに対して必要な対応・対策の整備に努めるほか、関連テーマについて別途グループコンプライアンス委員会、グループサステナビリティ委員会等において、より詳細に検討いたします。また、eラーニング等のツールを活用した定期的な教育啓発活動等により、役職員が法令違反や社会規範に反するリスクの低減を図っております。
4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当社グループでは、資本市場における財務情報の国際的な比較可能性を向上させることを目的として、IFRSを適用しております。なお、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 29.非継続事業」に記載のとおり、当連結会計年度より米国事業を非継続事業に分類しています。これにより、売上収益、営業利益、税引前当期利益については、非継続事業を除いた継続事業の金額を、当期利益及び親会社の所有者に帰属する当期利益については、継続事業及び非継続事業を合算した金額を表示しております。また、「米国」を非継続事業に分類したため、当連結会計年度より「医薬品等の製造及び販売」の単一セグメントに変更しております。
IFRSに基づいた当連結会計年度の業績につきましては、売上収益176,862百万円(前期比8.0%増)、営業利益18,620百万円(前期比16.0%増)、税引前当期利益18,262百万円(前期比15.2%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益13,695百万円(前期比8.1%増)となりました。なお、当社は、IFRSの適用に当たり、会社の経常的な収益性を示す利益指標として、「コア営業利益」を導入し、経営成績を判断する際の参考指標と位置づけることとしております。「コア営業利益」は、営業利益から当社グループが定める非経常的な要因による損益を除外しております。同基準に基づいた当連結会計年度の「コア営業利益」は、23,931百万円(前期比11.7%増)となりました。
(注) 売上収益、営業利益、税引前当期利益、コア営業利益は継続事業の業績を、親会社の所有者に帰属する当期利益は継続事業と非継続事業の合計の業績をそれぞれ表示しています。
当社グループは、持株会社体制の下、2021年5月に発表した長期ビジョン「Sawai Group Vision 2030」と2024年3月期を最終年度とする中期経営計画「START 2024(以下「中計」という。)」において、2030年度に目標とする企業イメージを(創りたい世界像)「より多くの人々が身近にヘルスケアサービスを受けられ、社会の中で安心して活き活きと暮らせる世界」、(ありたい姿)「個々のニーズに応じた、科学的根拠に基づく製品・サービスを複合的に提供することで、人々の健康に貢献し続ける存在感のある会社」と掲げると共に、「国内ジェネリック医薬品市場におけるシェア拡大」「米国事業における将来の成長に向けた事業投資」「新たな成長分野の開拓」を3つの柱としております。また、中計においては、ジェネリック医薬品事業では新製品の売上増加、安定供給力の強化、新規事業への進出に向けては、デジタル・医療機器事業、オーファン医薬品事業(ALS等)、健康食品事業の3領域に重点的にリソースを投入することとしております。
経営成績の状況は、次のとおりであります。
2021年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2021」(骨太方針)において、「後発医薬品の品質及び安定供給の信頼性の確保を柱とし、官民一体で、製造管理体制強化や製造所への監督の厳格化、市場流通品の品質確認検査などの取組を進めるとともに、後発医薬品の数量シェアを、2023年度末までに全ての都道府県で80%以上とする」とされたのをはじめ、2022年4月の診療報酬改定では、ジェネリック医薬品のさらなる使用促進を図る観点から、ジェネリック医薬品の調剤割合が高い薬局や使用割合が高い医療機関に重点を置いた評価の見直し等が行われました。その結果、2023年9月の政府の薬価調査による最新のジェネリック医薬品の数量シェアは80.2%となっています。さらに2024年3月の社会保障審議会医療保険部会では、「医薬品の安定的な供給を基本としつつ、後発医薬品の数量シェアを2029年度末までに全ての都道府県で80%以上」を主目標とすることに加え、副次目標として、「後発医薬品の金額シェアを2029年度末までに65%以上」とすることが掲げられております。更に、2024年10月からは後発品(ジェネリック医薬品)のある長期収載品の一部について追加で患者負担を求めることが予定されており、これによりジェネリック医薬の使用はさらに進むことが想定されます。
その一方、2020年末の準大手ジェネリック医薬品企業の製造する医薬品での健康被害の発生や、その後の大手ジェネリック医薬品企業をはじめとした複数のジェネリック医薬品企業の薬機法違反を起因として、医薬品全体で供給不安が生じています。このような状況の下、2022年8月から始まった厚労省の「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」では医薬品の流通、薬価制度、ジェネリック医薬品産業の構造上の問題などについて幅広い議論が行われ、2023年6月に報告書が取りまとめられ、現在は各分野についてそれぞれの会議体で対応策が議論されております。
このような環境におきまして、中計の下、ジェネリック医薬品業界のリーディング・カンパニーとして、業界全体への信頼回復に努めつつ、当社グループとして「国内ジェネリック医薬品市場におけるシェア拡大」に向け「品質管理の一層の強化」を図るとともに、「新製品の売上増加」と「安定供給力の強化」に取り組んでおります。
品質管理面においては、ジェネリック医薬品業界において重大な不祥事が発生していることから、中核会社の沢井製薬を中心に、製造管理・品質管理基準(GMP)を遵守した原薬の品質の確保、製造工場でのGMP遵守の恒常的確認による品質管理体制、国際基準であるPIC/S-GMPに基づく製造管理・品質管理を行う等の取組を行ってまいりました。また、2022年3月期には医療関係者の皆様が安心してご使用いただけるよう、沢井製薬では製品の製剤製造企業に関する情報と原薬製造所の監査に関する情報を公開し、「沢井製薬の品質に対する取組紹介動画」を公開する等の取組を行ってまいりました。しかしながら、沢井製薬の九州工場で製造するテプレノンカプセル50mg「サワイ」の安定性モニタリングの溶出試験において、不適切な試験が継続的に行われていたことが判明し、2023年12月に厚生労働省、大阪府及び福岡県から「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」違反を理由とする行政処分を受けました。当該不適切試験が継続して実施されてきた原因について、人的要因に起因する問題として、①安定性モニタリングを軽視する風潮の蔓延、②上司の指示に疑問を持たずに従う傾向、③試験関与者のGMPに対する理解の欠如が、物的要因に起因する問題として、①品質管理・品質保証の観点からの実効的な監督体制の不備、②試験記録管理の不十分さ、③試験を担当する品質管理部の業務過多及び人員不足が挙げられます。信頼の回復に向けた再発防止策として、①沢井製薬社長直轄の企業風土改革プロジェクトの立ち上げ、②既存上市品の製造面及び品質面での再評価とその対策実施、③全従業員に対するGMP教育の再実施や、管理職・監督職の責任の明確化、工場の品質管理部門、品質保証部門への社内外からの人材確保推進などの沢井製薬生産本部における再発防止策の実施、に一丸となって取り組んでおります。
生産・供給体制面においては、ジェネリック医薬品の需要拡大や供給不安、エネルギー価格や原材料価格が高騰する中、さらなる高効率・低コストを追求しており、既存の沢井製薬の全国6工場それぞれの特徴を活かした生産効率のアップに取り組んでおります。それに加えて、2022年9月に、九州工場注射剤棟の竣工、並びに第二九州工場の敷地内に最終的に30億錠の生産能力となる新たな固形剤棟の建設に着手しました。また、小林化工株式会社から生産活動に係る資産を譲受し、関連部門人員を受け入れたトラストファーマテックにおいては、沢井製薬の製品の受託製造を開始しており、今後、当社グループ生産能力年間200億錠以上の早期確立へ向け、引き続き体制の構築に取り組んでまいります。それらと合わせ、2022年3月期に開設・稼働した東日本第2物流センター、西日本第2物流センターを活用し、物流面での供給体制も強化しております。
販売面においては、原価高騰への対応策として、生産効率のさらなる改善と並行し、低薬価品を中心に原価高騰に伴う影響分を価格に反映しております。また、沢井製薬にて2023年6月に『アジルサルタン錠』を含む2成分8品目、12月には『レナリドミドカプセル』1成分2品目が薬価収載されました。
製品開発においては、沢井製薬にて、「お薬を服用する時により飲み心地がいいと感じられるような技術、お薬をより効率的に製造できる技術など、お薬に付加価値をプラスし、製剤上のハーモニーを生み出す技術」の中から6つを選択し、3つの技術カテゴリに分け、それらのオリジナル製剤化技術を総称して「SAWAI HARMOTECH®」と名付け、公開しております。
さらに新たな取組として、PHR(パーソナルヘルスレコード)事業に関しまして、沢井製薬ブランドのPHR管理アプリ「SaluDi(サルディ)」及び株式会社インテグリティ・ヘルスケアのPHR管理システム「Smart One Health」と東京大学COI個別化保健医療講座(岸暁子特任助教)開発の行動変容促進システム「MIRAMED®」を活用した特定保健指導を連携させ、「健康~未病~特定保健指導~受診勧奨のワンストップサービス」の実現可能性や効果の検証を行っております。また、2022年9月には、参加者同士の双方向のコミュニケーションを通して、健康寿命やヘルスケアへの意識向上や、PHRについての理解促進を図ることを目的とし、クオン株式会社と共同で「健康サポートコミュニティsupported by SaluDi」をオープンしました。さらに、2023年1月には兵庫県養父市の「養父市デジタルヘルシーエイジング事業」、2023年5月には長崎県の地域医療連携ネットワーク「あじさいネット」の「オフィシャルパーソナル・ヘルス・レコード(PHR)アプリ」として、SaluDiが採用され、2023年7月には凸版印刷株式会社(現 TOPPANホールディングス株式会社)とPHRの利活用事業での協業を検討していくことで合意しました。今後もデジタル技術を活用して人々の生活・健康をより良い方向に変化させてまいります。また、NASH(非アルコール性脂肪肝炎:Non-Alcoholic Steatohepatitis)領域においては、2022年8月にNASH領域におけるDTxの開発及び販売ライセンス契約を株式会社CureAppとの間で締結し、アプリを通じて、デジタルヘルスケア領域での技術や知見の強化とともに、IT技術を活用したソリューションを直接、患者さん・医療従事者の皆様にお届けすることを目指してまいります。医療機器事業においては、2022年12月に片頭痛の急性期治療に用いる医療機器として、独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)に製造販売承認申請を行った非侵襲型ニューロモデュレーション機器「SWD001」を中心として取り組んでまいります。
この結果、当社グループにおける継続事業の売上収益は176,862百万円(前期比8.0%増)、営業利益は18,620百万円(前期比16.0%増)、コア営業利益(参考値)は23,931百万円(前期比11.7%増)となりました。
当連結会計年度末における財政状態は、次のとおりであります。
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は239,985百万円となり、前連結会計年度末に比べ34,638百万円増加いたしました。これは主に、米国事業を非継続事業に分類したことにより売却目的で保有する資産が53,691百万円増加した一方で、後述のキャッシュ・フローの状況に記載のとおり現金及び現金同等物が6,708百万円減少したためです。また、売上債権及びその他の債権についても米国事業を非継続事業に分類したこと等により9,802百万円減少いたしました。非流動資産は142,039百万円となり、前連結会計年度末に比べ16,779百万円減少いたしました。これは主に、米国事業を非継続事業に分類した影響等により繰延税金資産が8,847百万円増加した一方で、有形固定資産が17,930百万円減少したためです。
この結果、資産合計は382,024百万円となり、前連結会計年度末に比べ17,859百万円増加いたしました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は93,618百万円となり、前連結会計年度末に比べ8,464百万円増加いたしました。これは主に、仕入債務及びその他の債務が7,193百万円減少した一方で、米国事業を非継続事業に分類したことにより売却目的で保有する資産に直接関連する負債が16,268百万円増加したためです。非流動負債は70,375百万円となり、前連結会計年度末に比べ4,103百万円増加いたしました。これは主に、社債の発行により社債及び借入金が6,743百万円増加したためです。
この結果、負債合計は163,993百万円となり、前連結会計年度末に比べ12,567百万円増加いたしました。
(資本)
当連結会計年度末における資本合計は218,030百万円となり、前連結会計年度末に比べ5,292百万円増加いたしました。これは主に、当期利益の計上、剰余金の配当及び為替レートの変動によるものであります。
この結果、親会社所有者帰属持分比率は55.7%(前連結会計年度末は55.4%)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は26,368百万円となり、前連結会計年度末に比べて6,708百万円減少いたしました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前当期利益18,262百万円、非継続事業からの税引前当期損失22,514百万円、減価償却費及び償却費18,055百万円、非継続事業を構成する処分グループを売却コスト控除後の公正価値で測定したことにより認識した損失20,918百万円、棚卸資産の増加9,168百万円、法人所得税等の支払額5,828百万円、売上債権及びその他の債権の増加3,930百万円、仕入債務及びその他の債務の減少2,927百万円を主因として23,149百万円の収入(前期比10,122百万円の収入増)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出17,915百万円、無形資産の取得による支出6,734百万円を主因として23,112百万円の支出(前期比4,022百万円の支出減)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の純増2,848百万円、長期借入金の返済による支出3,034百万円、社債の発行による収入9,943百万円、配当金の支払額5,694百万円を主因として2,363百万円の収入(前期は1,267百万円の支出)となりました。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 上記金額は、売価換算額で表示しております。
当社グループは見込み生産が主で受注生産は僅少であるため記載を省略しております。
当社グループは「医薬品等の製造及び販売」の単一セグメントであるため、
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
a.概要
当社グループは、主としてジェネリック医薬品の研究開発、製造及び販売を日本で行っております。「なによりも健やかな暮らしのために」の企業理念の下で、ジェネリック医薬品事業では、いち早く新しいジェネリック医薬品を開発・上市するとともに、品質・安定供給・情報提供においてトップレベルの水準を維持し続けることにより、ブランド価値を高め競争に打ち勝つことに努め、持続的な成長を通じて企業価値向上を図りました。
当社グループは、循環器官用薬、中枢神経系用薬、消化器官用薬など、さまざまな薬効の約800品目を提供しております。当社グループは、当連結会計年度末現在で11の製造拠点を有し、そのうち9つは日本に所在しております。当社グループにおいて、生産能力及び生産数量(外注含む)は当連結会計年度末で約185億錠及び約160億錠(ともに錠換算)となっております。
b.経営成績の分析
当連結会計年度の業績を前連結会計年度と比較した表は、次のとおりです。
売上収益は前連結会計年度より13,160百万円(8.0%)増加し、176,862百万円となりました。当社グループの薬効別売上収益は、次のとおりであります。
前連結会計年度に上市したアザシチジン(腫瘍用薬)、エソメプラゾール(消化器官用薬)、テリパラチド(ホルモン剤)の売上収益が伸長した一方、薬価改定による販売単価下落の影響を大きく受けました。
売上原価は前連結会計年度より9,093百万円(8.0%)増加し、122,543百万円となりました。売上総利益率は前年並みの30.7%となりました。売上原価は、主に原材料費、人件費、減価償却費で構成されております。売上総利益率が前年並みとなった主な要因は、薬価改定による影響及びエネルギー価格の上昇並びにトラストファーマテック株式会社の先行コストによる上昇と、価格政策による単価上昇に伴う下落が同程度の影響となったことであります。
販売費及び一般管理費は前連結会計年度より998百万円(4.5%)増加し、23,244百万円となりました。主な増加要因は、コスト削減に努めているものの、販売数量の増加に伴う運賃諸掛の増加等となっております。
研究開発費は前連結会計年度より321百万円(2.6%)減少し、12,189百万円となりました。主な減少要因は、前連結会計年度に減損損失3,463百万円を認識した反動であります。
その他の収益は前連結会計年度より542百万円(74.2%)減少し、189百万円となりました。主な減少要因は、前連結会計年度までは当社グループ賃借料収入があったことによる反動と保険料収入であります。
その他の費用は前連結会計年度より282百万円(162.1%)増加し、456百万円となりました。主な減少要因は、製品の販売中止による製造委託先に対する補償費用となっております。
以上より、営業利益は2,566百万円(16.0%)増加し、18,620百万円となりました。
Ⅰ キャッシュ・フロー
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、23,149百万円の収入となりました(前連結会計年度比10,122百万円の収入増)。当連結会計年度は安定供給力の強化に向け棚卸資産の購入・製造に係るキャッシュアウトが大きかったものの、前連結会計年度よりは増加幅は縮小しており、さらに税引前当期利益が18,262百万円となったこともあり、営業活動によるキャッシュ・フローは前連結会計年度比で収入増となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、23,112百万円の支出となりました(前連結会計年度比4,022百万円の支出減)。当連結会計年度は、沢井製薬第二九州工場における新固形剤棟に係る支払いが発生したものの、前連結会計年度よりは有形固定資産の取得による支出が減少したため、前連結会計年度比では支出減となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、2,363百万円百万円の収入となりました(前連結会計年度は1,267百万円の支出)。沢井製薬での運転資金需要に応じて短期借入金が増加したことに加え、普通社債の発行による収入により、配当金や長期借入金の返済を上回る収入となりました。
Ⅱ 資金需要
当社グループにおける主な資金需要は、市場の環境変化に対応した安定供給及び生産効率の最適化を目的とした設備投資並びにニーズを捉えた高付加価値ジェネリック医薬品の実現を目的とした研究開発投資によるものであります。
Ⅲ 財務政策
当社グループでは、持続的な企業価値の向上とそれを通じた株主還元の向上を実現するために、資本効率を向上させつつ、財務の健全性・柔軟性も確保された、最適な資本構成を維持することを基本方針としております。設備投資及び研究開発投資による資金需要につきましても、営業活動によるキャッシュ・フローを継続的に確保していくとともに、市場の環境変化に対応した柔軟な財務政策を実現していくことで基本方針を実現していきます。
当連結会計年度においては、営業活動によるキャッシュ・フローが23,149百万円の収入となり、当該資金をもとにUSL買収時の借入金の一部を返済しております。また、2024年6月に発表した新中計でも示しているとおり、成長に向けた投資を積極的かつ効果的に実施する予定であり、その内訳は中期経営計画期間の3年間合計で、研究開発投資約350億円、GE事業約785億円、新規事業35億円+α、機動的アロケーション約210億円+α、自己株取得約330億円+α、配当190億円以上となっております。このうち、GE事業投資については、将来の需要増に応じて生産キャパシティを拡大するべく、沢井製薬の第二九州工場新固形剤棟新設(ステップ1の一部、ステップ2の一部)等を見込んでおります。設備投資計画の詳細については、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」をご参照ください。
③ 経営成績に重要な影響を与える要因について
「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
当社グループの連結財務諸表はIFRSに準拠しております。当連結財務諸表の作成にあたり、経営者は資産及び負債の金額、財務諸表の末日時点の偶発資産及び偶発負債の開示、並びに報告期間における収益及び費用の金額に重要な影響を及ぼす見積り及び仮定の設定を行うことが求められております。見積り及び仮定は継続的に見直されます。経営者は過去の経験及び見積り及び仮定が設定された時点において合理的であると判断されたその他の様々な要因に基づき、当該見積り及び仮定を設定しております。実際の結果はこれらの見積り及び仮定とは異なる場合があります。
経営者の見積り及び仮定に影響を受ける重要性がある会計方針は次のとおりです。また、見積り及び仮定の変更が連結財務諸表に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(収益認識)
当社グループの収益は主に医薬品販売に関連したものであり、製品に対する支配が顧客に移転した時点で認識されております。収益の認識額は、当社グループが製品と交換に受け取ると見込まれる対価に基づいております。収益からは、主要顧客である卸売業者及び販売会社に対するリベート等の様々な項目が控除されております。これらの控除額は関連する義務に対し見積られますが、報告期間における当該収益に係る控除額の見積りには判断が伴います。総売上高からこれらの控除額を調整して、純売上高が算定されます。
収益に係る調整のうち最も重要なものは、次のとおりであります。
・顧客に対するリベート: 当社グループは、マーケットシェアの維持と拡大を確実にするために、卸売業者、販売会社等の顧客に対してリベートを付与しております。リベートは契約上取決めがなされているため、係る負債は各取決めの内容、過去の実績に基づく予想割戻率及び予想される流通チャネル内の在庫量を基に算定しております。
・返品に関する負債: 返品権付き製品を顧客に販売する際は、当社グループの返品ポリシーや過去の返品実績に基づいた予想返品率を考慮して返品見込み額を測定し、負債として計上しております。
引当額は見積りに基づくため、実際の発生額を完全に反映していない場合があり、特に予想される流通チャネル内の在庫数量及び当社グループの製品が最終的にどの卸売業者の顧客に販売されるのかの見積りにより変動する可能性があります。
これまで実績又は見積りの見直しの反映による当初の見積りに対する調整額が、当社グループの業績に重要な影響を与えたことはありません。しかしながら、当社グループが見積りに際して使用した比率、要因、評価、経験もしくは判断が将来の事象の見積りにおける適切な予測値ではなかった場合、当社グループの業績に重要な影響を与える場合があります。見積りの感応度は、制度及び顧客の種類により左右される可能性があります。
(無形資産の減損)
当社グループは、償却を開始している無形資産について、その資産の帳簿価額が回収不能であるかもしれないことを示す事象又は状況の変化がある場合、減損テストを行っております。また未償却の無形資産については、少なくとも年次で減損テストを実施しております。
資産は、通常、連結財政状態計算書上の帳簿価額が回収可能価額を超過する場合に減損していると判断されます。回収可能価額は個別資産、又はその資産が他の資産と共同で資金を生成する場合はより大きな資金生成単位ごとに見積られます。資金生成単位は独立したキャッシュ・インフローを形成する最小の識別可能な資産グループであります。製品に係る無形資産及び仕掛中の研究開発は、個別に回収可能価額を見積ります。
回収可能価額の見積りには、以下を含む複数の仮定の設定が必要となります。
・割引率
・将来キャッシュ・フローの金額及び時期
・競合他社の動向
キャッシュ・フローが変動する可能性のある事象としては、研究開発プロジェクトの失敗又は上市後製品の価値の下落があげられます。研究開発プロジェクトの失敗には、開発の中止、オーソライズドジェネリックの販売見込みや競合他社の参入等による収益性の悪化が含まれます。
当社グループは、これらの仮定を慎重に検討し、無形資産の減損損失は適切であると判断しております。
(繰延税金資産の回収可能性)
繰延税金資産及び負債は、期末日に施行又は実質的に施行される法律に基づいて一時差異が解消される時に適用されると予測される税率を用いて測定しております。
繰延税金資産は、未使用の税務上の繰越欠損金、税額控除及び将来減算一時差異のうち、将来課税所得に対して利用できる可能性が高いものに限り認識しております。繰延税金資産の回収可能性の判断に用いられる課税所得金額の発生見込みは事業計画を基礎としておりますが、当該事業計画には開発中の製品の上市及び市場シェアの拡大による販売数量の増加等並びに将来の薬価改定による影響等を主要な仮定として織り込んでおります。繰延税金資産は期末日毎に見直し、一部又は全部の繰延税金資産の便益を実現させるだけの十分な課税所得を獲得する可能性が高くなくなった部分について減額しております。
当社グループは、これらの仮定を慎重に検討し、繰延資産の回収可能性は適切であると判断しております。
(売却目的保有に分類された処分グループの測定)
継続的な使用ではなく売却により回収が見込まれ、現状で直ちに売却することが可能で、当社グループの経営者が売却計画の実行を確約しており、1年以内に売却が完了する予定である非流動資産又は処分グループは、売却目的保有に分類されます。売却目的保有に分類された資産は、帳簿価額と処分費用控除後の公正価値のいずれか低い金額で測定され、分類時に発生する減損損失については純損益として認識しております。売却目的で保有する資産に分類された有形固定資産又は無形資産は減価償却又は償却を行いません。
米国子会社(孫会社)の株式等譲渡
当社は2024年1月16日開催の取締役会において、当社が保有する米国事業の持株会社であるSawai America Holdings Inc.(以下、「SAH」という。)の全株式、並びにその傘下にあるSawai America LLC(以下、「SAL」という。)の当社持分とUSLの持分を、SALへの共同出資者であるSumitomo Corporation of Americas(以下「SCOA」という。)とともに、Boraに譲渡すること(以下、「本株式等譲渡」という。)を決議し、同日付で当該契約を締結するとともに、2024年4月2日に当該譲渡を完了いたしました。
当社グループは研究開発体制として、中核会社である沢井製薬において研究開発本部を設け、製剤工夫を施した高付加価値製品の開発など、医療のニーズに応える医薬品の開発に重点を置いた研究開発活動を推進しております。
当連結会計年度の研究開発費の総額は