第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

 (1) 会社の経営の基本方針

 当社グループは、「事業を通じて広く社会に貢献し、幸せな人を育てる」「人間尊重、人間中心の経営」を企業理念とし、広く産業とくらしを支え、社会に貢献できる人、そして、自分を必要としてくれる社会に対して感謝の気持ちを持つことができる人、そういう幸せな人を育て、真に人間が働く喜びを味わえる企業経営を行うことを、経営の基本方針としております。

 

 (2) 目標とする経営指標

 当社グループは、安定的な成長を目指すため収益性を意識した経営が重要との観点から「売上高経常利益率」を重視しており、また資本効率を高め企業価値の向上を図る観点から「ROE(自己資本当期純利益率)」を重視しております。

 

 (3) 中長期的な会社の経営戦略と対処すべき課題

当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症に関する行動制限の緩和等による経済活動の正常化が進み、景気は緩やかに回復しているものの、ウクライナ情勢に伴う資源・エネルギー価格の高騰や世界的な物価上昇、中東での紛争の発生、長引く円安や中国経済の減速等により、依然として先行き不透明な状況が続いております。

中長期的には、当社グループの主要顧客が関連する自動車産業においてCASE(コネクテッド、自動化、シェアリング、電動化)への流れが着実に進んでおり、当社グループとしてもその変化への対応として次世代自動車への対応・拡販を成長戦略とし、対応を進めております。

また生成AIをはじめとしたAIの普及やデジタルトランスフォーメーション(DX)の進展等により当社グループが関連する半導体等の市場は世界的に拡大が続くものと考えられます。

社会的な環境としましては持続可能で強靱な社会の構築のため「脱炭素社会」、「循環型社会」の形成が強く求められており、企業においても持続的な成長のためその実現に向けた責任ある取り組みが求められております。

日本を取り巻く環境としては少子高齢化・人口減少による市場縮小や人財確保の競争激化、コロナ禍を契機とした事業構造・生活様式の変化、デジタル化の一層の推進など様々な変化が予測されております。

このような変化の激しい環境のもと顧客と社会の期待に応え成長し続けるため「変化に対応できる企業体質への転換」を中期方針とした2025年3月期からの3年を対象期間とする「中期経営計画2026」を策定しました。この中期方針のもと国内事業は成長の基盤(安定的に成長)とし、成長を牽引するのは海外事業、将来の成長基盤の育成として新事業の実現という方向性を定め、1.経営基盤の強化、2.生産性向上・業務効率化、3.海外事業の飛躍、4.脱炭素・循環型社会への貢献、5.新事業の確立を成長戦略として持続的に取り組んでまいります。

 

1.経営基盤の強化

 当社グループは様々な環境・社会課題の解決と事業の持続的な成長の両立を実現するため、サステナビリティ経営に取り組んでまいります。脱炭素・循環型社会の実現に向けた高付加価値製品・技術の開発を進めるとともに温室効果ガス排出量の削減や省資源化への取り組みを実施してまいります。また、変化に対応できる自立型人財の育成を目指し、エンゲージメントの向上施策、教育制度の整備、新しい働き方への職場環境整備等を実施してまいります。これらのサステナビリティ経営の実現のため、ガバナンスの充実にも努めてまいります。

 当社グループは直販体制による顧客ニーズの把握を強みとしておりますが、変化の激しい環境のもと顧客ニーズを的確に捉え、深耕を図るためには「あらゆる情報の見える化」、「お客様との接点強化」が喫緊の課題と捉えており、IT活用を含めた営業活動の強化を進めこれを実現してまいります。

 また、営業部門のIT活用に加えて基幹システムの刷新等によるデジタル化を進め、データに基づいた意思決定の高度化を図ってまいります。

 

 ブランドイメージの社外浸透やインナーブランディングの強化のためのコーポレートブランディングにも着手し、経営基盤の強化に努めてまいります。

 

2.生産性向上・業務効率化

 国内営業部門におきましては、営業活動の分業化の推進や各営業拠点における人員配置の見直し等により営業活動の効率化を目指します。

 国内生産部門におきましては、生産効率改革第1フェーズ(前中期経営計画)より実施してきた多品種少量生産における標準時間の設定や工程の見える化等を通じた生産管理の強化、現場改善等を組み合わせた生産性の向上を更に推し進めるとともに、生産効率改革第2フェーズとして本中期経営計画(2025年3月期-2027年3月期)においては多品種少量の生産工程におけるロボットの導入等による自動化、省人化を進めてまいります。

 また営業部門でのIT活用や新基幹システムの刷新、ワークフローシステム導入等でのデジタル化による業務効率化や不採算製品の収益改善なども進めてまいります。

 

3.海外事業の飛躍

 海外事業につきましては海外売上高比率25%以上(2027年3月期)を目指し、売上高拡大による成長を積極的に目指してまいります。

 中国では電池、モーターコアなどの次世代自動車関連製品の積極的な展開や現地加工メーカーとの協業による競争力の確保、2024年3月に開設した東莞支店での顧客開拓等により売上高を拡大してまいります。

 タイ、インドネシアでは製造拠点がある強みを生かし、生産性向上による競争力向上等により売上高を拡大してまいります。

 またインドでは現地加工メーカーとの協業等により現在休眠中である拠点の再開を目指し、北米においては現地法人設立を視野に入れた市場調査を進める等活動を強化してまいります。

 

4.脱炭素・循環型社会への貢献

 当社グループは環境・社会の課題解決を事業機会と捉え、脱炭素・循環型社会の形成に貢献する製品を積極的に開発、市場投入してまいります。

 脱炭素社会への貢献としましては、モータコア金型用材種のラインナップ拡充や次世代エネルギー分野に向けた触媒関連製品の開発を進めてまいります。

 当社グループの温室効果ガス排出量につきましては、2030年度に2018年度比で38%以上削減することを目標として掲げ、自社設備の省エネルギー化や再生可能エネルギーの導入等の施策を実施してまいります。

 循環型社会への貢献としましては、省タングステン・コバルト合金の拡販によりレアメタル使用量の低減を図るとともに、熱エネルギーの循環に貢献できる製品の開発にも取り組んでまいります。

 また当社グループにおいて超硬工具・金型のリサイクル強化を進めるなど、循環型社会に貢献してまいります。

 

5.新事業の確立

 当社グループは「既存事業」と「新規事業」が独立しながら両輪で走ることが企業価値の向上に繋がるとの観点から、中長期の成長基盤の創出としてプロジェクトチームによる新事業の検討を進めてまいりました。本中期経営計画(2025年3月期-2027年3月期)において新たな事業の柱となる新規事業の実現及び事業創出サイクルの短縮化を目指して新規事業組織を2024年7月に発足いたします。

 また、新規事業の早期実現に向けてM&Aや業務提携を積極的に進めてまいります。

 

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ基本方針について

 ①サステナビリティ基本方針の考え方

 当社グループは、「事業を通じて広く社会に貢献し、幸せな人を育てる」、「人間尊重、人間中心の経営」の企業理念のもと、世界中の人々から信頼される品性ある企業グループ並びに企業人となることを目指しております。
 そして、当社グループの基本的な考え方(私たちが大切にする価値観)である「報恩感謝」「和」「創造と革新」「誠実」「質実剛健」を基礎とし、当社グループの製品を提供し続けることで、企業価値の向上と持続可能な社会の発展に貢献することを基本的な方針としております。

 

②サステナビリティ基本方針
  a.環境
 [自然環境配慮]
  私たちは、事業活動が自然の恩恵を受け成立していることに感謝し、
  ・新たな技術・製品の創造と革新で、人と地球環境を大切にする社会の実現に貢献します。
  ・持続可能な社会の実現にむけて温室効果ガスの削減に努めます。
  ・資源利用と環境影響の削減を両立させるため、資源を大切に使います。

 

b.社会
 [人権]
  私たちは、企業理念である人間尊重と私たちが大切にする価値観である和の考えのもと、
  ・企業活動で関わる全ての人々の人権を尊重し、直接的間接的にも人権侵害に加担しません。
  ・あらゆる形態の強制労働や児童労働の排除、また雇用と職業における差別をしません。

 

 [労働環境]
  私たちは企業理念である人間中心の経営を実践すべく、
  ・生産性・働きがい向上に繋がる柔軟な働き方、職場環境を築きます。
  ・多様性を尊重し、国籍・性別・年齢などの区別なく活躍できる企業を目指します。
  ・結社の自由を含め、従業員の権利を最大限尊重します。

 

c.ガバナンス
 [ガバナンス強化]
  私たちは、コーポレート・ガバナンスの基本的な考え方に沿って、
  ・ステークホルダーとの充実したコミュニケーションを通じて経営の透明性を確保し、信頼度を高めます。

 

 [腐敗防止]
  私たちは、誠実な企業グループ・企業人としての責任を果たし
  ・強要と贈収賄を含むあらゆる形態の腐敗防止に取り組みます。

 

③サステナビリティ全般に関するガバナンス

 サステナビリティに関する基本方針等の大きな枠組みについては、取締役会での議論を経て決定されております。また、サステナビリティに関する活動を強化する目的で、サステナビリティに関する施策の立案や推進を専門に行う「サステナビリティ推進室」を設置しております。さらに、サステナビリティの観点を踏まえた経営を推進するため、代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置しております。

 

④サステナビリティ全般に関する戦略

当社は、企業価値の向上と持続可能な社会の発展に向けて、サステナビリティ基本方針に基づいた取り組むべき10項目の優先課題(マテリアリティ)を特定しました。その達成に向けて社内外に周知し、取り組みを進めてまいります。

 

 

優先課題

指標

具体的な活動内容

環境

 自然環境配慮

高付加価値製品・技術の開発

市場投入件数

脱炭素・循環型経済へ貢献する製品の開発、提案

(次世代自動車関連製品等)

カーボンニュートラルへの取り組み

温室効果ガス排出量

省エネ設備等の導入の検討

再生可能エネルギー利用の検討

省資源化への取り組み

超硬原材料リサイクル率

超硬原材料のリサイクル率向上

市場投入件数

省レアメタル新開発材料の市場展開

環境負荷物質の取扱量

環境負荷物質の管理(PRTR対象化学物質)

廃棄物のリサイクル率

廃棄物削減、リサイクル率向上

社会

 人権/労働環境

人権の尊重

RMI※1認定製錬所・精製所

総数およびその比率

紛争鉱物調査の管理

研修実施件数

国籍等に関係なく、公平な人材育成機会の提供

(自立型人材の育成)

労働環境の整備

作業環境管理区分1の拠点数

作業環境測定の実施

労働災害件数

安全教育、リスクアセスメントの実施

ストレスチェック実施率

従業員の健康管理

(ストレスチェック、健康増進プログラムの実施等)

健康診断の実施率

多様性を活かした働き方改革

フレックスタイム制度の利用率

多様なライフスタイルに応じた社内制度の充実

(フレックスタイム制度等)

女性管理職の比率

女性活躍推進の取り組みの強化

女性採用比率

従業員との良好な関係性の確保

労使間の教育実施日数

社内報等を利用した労使間の経営理念、経営方針等の共有

ガバナンス

 ガバナンス強化/腐敗防止

ガバナンスの強化

コンプライアンス、リスクマネジメント

委員会で検討したテーマ件数

コンプライアンス、リスクマネジメント体制の充実

サステナビリティ委員会で検討した

テーマ件数

サステナビリティ経営の推進

危機管理対応の強化

知的財産教育の実施件数

知的財産基本方針に則った取り組みの強化

(保有する特許や技術、ノウハウなどの保護や流出防止等)

特許取得件数

国内外特許取得促進、自社権利正当行使及び他社権利の尊重

情報セキュリティ教育実施件数

情報セキュリティ教育の実施

コンプライアンス体制及び教育の充実

コンプライアンス教育実施件数

コンプライアンス教育の実施

 

※1 RMI(Responsible Minerals Initiative):紛争非関与鉱物など責任ある調達を企業と連携して促進する国際団体

RMIが提唱する「責任ある鉱物保証プロセス(RMAP:Responsible Minerals Assurance Process)の監査を経て、認定。

 

⑤サステナビリティ全般に関するリスク管理

 当社は、リスクマネジメント基本規程にてリスク管理方法を定めております。また、リスクマネジメントについて、効果的かつ円滑な運営及び適切な指導を行うために、代表取締役社長を委員長とするリスクマネジメント委員会を設置しております。本委員会は定期的に開催され、重要リスクの特定・評価を行っております。
 重要リスクは、影響度と発生可能性の2軸から、リスクマップを作成し、決定されております。決定された重要リスクは、取締役会にて承認された後、その対応のために、所管部署によって必要に応じて事業所及び子会社へ指示が出されています。サステナビリティに関するリスクについても、このような全社的なリスク管理方法に統合され、管理されております。

 

(2)気候変動に関する取組について

①ガバナンス

 当社グループは、「事業を通じて広く社会に貢献し、幸せな人を育てる」ことを掲げ、より良い社会の形成と企業の持続可能な発展のため、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)に対する活動を積極的に進めております。サステナビリティに関する施策の立案や推進を専門に行う「サステナビリティ推進室」を設置し、サステナビリティに関する課題を経営層と共有し、その解決のための検討及び有効性評価の場として、「サステナビリティ委員会」を年4回(4月、7月、10月、1月)開催しています。本委員会は代表取締役社長を委員長とし、社内取締役、各部門の担当者で構成され、別途、取締役会にて実効的な監督を行う体制を整備しております。

 今後、当社グループのサステナビリティに関する取り組みの更なる強化、推進を図ってまいります。

 


図1 ガバナンス体制

 

 

②戦略

 a.気候変動による事業への影響の分析

 気候変動による事業への影響を明らかにするため、2つのシナリオを用いてシナリオ分析を実施しております。積極的な政策により気温上昇を抑える1.5℃シナリオと、限定的な政策により気候変動が進む4℃シナリオを採用いたしました。

 各シナリオにて、分析のために参考にしたシナリオは、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)から報告されているRCPシナリオと、IEA(国際エネルギー機関)から報告されているシナリオになります。RCPシナリオは、気候変動による物理的な影響(物理リスク)の分析のために参考にし、IEAのシナリオは脱炭素経済への移行に伴う影響(移行リスク)の分析のために参考にいたしました(表1)。また、分析における時間軸は、2050年カーボンニュートラルを達成するために重要な時点とされている2030年を設定いたしました。

 

表1:シナリオ分析で参考にした気候変動シナリオ

 

政策により気温上昇が抑えられる世界

気温上昇・気候変動が進む世界

1.5℃シナリオ

4℃シナリオ

概要

2100年の気温上昇が19世紀後半から1.5℃に抑えられるシナリオ。炭素税など脱炭素社会への移行に伴う影響(移行リスク)を受ける。物理リスクの影響は4℃シナリオに比べ相対的に小さい。

2100年の気温上昇が19世紀後半から4℃上昇するシナリオ。災害など気候変動による物理的な影響(物理リスク)を受ける。気候変動に関する規制強化は行われず、移行リスクの影響は小さい。

参考シナリオ

移行

IEA Net Zero Emission by 2050(NZE)
IEA Sustainable Development Scenario(SDS)

IEA Stated Polices Scenario(STEPS)

物理

IPCC RCP 2.6

IPCC RCP 8.5

 

 ※1.5℃シナリオの情報がない場合は、2℃シナリオに分類される参考シナリオを使用

 

b.分析結果と対応

 〈1.5℃シナリオ〉

 1.5℃シナリオでは、炭素税など気候変動に対する政策・法規制の推進など、脱炭素社会への移行に伴う影響が起きることが予想されております。当社事業へのリスクとしては、炭素税の導入やレアメタル価格の上昇による調達コストの増加が挙げられました。そのため、再生可能エネルギーの導入や設備の省エネルギー化などGHG排出量削減のための取り組み、および製品設計による省資源化や新規合金の開発など資源価格高騰への対応を進めております。一方で、機会としては、電気自動車をはじめとする次世代自動車関連製品の売上増加が挙げられました。現在、中期経営計画における重点施策の1つとして、脱炭素・循環型社会への貢献を掲げており、次世代自動車用の製品の販売計画や、国内循環型の超硬粉末のリサイクルの取り組みを策定しております。

 

〈4℃シナリオ〉

 4℃シナリオでは、異常気象の激甚化などの気候変動による物理的な影響が発生することが予想されております。当社のリスクとしても、異常気象がもたらす災害発生時における製造所の被災による製品販売の停止や、サプライヤーと顧客の被災による影響が挙げられました。現状、当社としては、海岸付近の製造所における防潮堤の設置や、BCP対応の強化を進めており、異常気象による事業へのリスク低減を進めております。

 

 

表2:シナリオ分析結果

気候関連問題による影響
(リスク・機会)

想定される事象

重要度評価

自社の対応

1.5℃
シナリオ

4℃
シナリオ

脱炭素

社会への移行に伴う影響

リスク

炭素価格の

導入

・炭素税や排出量取引など、炭素価格の導入
 により、GHG排出量に応じて、課税や排
 出枠購入などのコストが発生する。

・再生可能エネルギーの導入
・空調の省エネタイプへの更新
・LED照明の導入

・工場外壁での断熱材の利用
室外機への遮熱塗料の塗布

・生産効率向上による電力消費の削減
・生産条件の見直し(積層造形による生産)
インターナルカーボンプライシングの導入
・カーボンオフセットの活用

再エネ・
省エネ政策の
導入

・再エネ調達に係る費用が増加する。
・省エネ政策の強化に伴い、設備の高効率化
 が必要となった場合、設備の更新などによ
 って支出が増加する。

情報開示義務

・自動車や電池関連の製品について、製品あ
 たりのCO₂排出量の算定(CFP)が要
 請され、対応費用が発生する。
・CFP算定要請未対応の場合に商品選好か
 ら除外され売上が減少する。

・サステナビリティ推進室の設置

・効率的なデータ取集体制の確立

省エネ・
低炭素技術の
拡大

・内燃機関自動車の需要低下により売上が減
 少する。

・次世代自動車用製品の拡販

次世代技術の
進展

・製造工程を大幅短縮し省エネに資する3D
 プリンタ技術の進展により、部品製造にお
 ける金型の需要が低下し、売上が減少す
 る。

・新規事業の探索

原材料コスト
の変化

・脱炭素製品の需要増加に伴う資源価格の高
 騰により、超硬合金の原材料コストが高騰
 する。

・脱タングステン合金など新規材料の開発
・省レアメタルに資する製品設計の検討
・金属屑やスクラップの回収

調達先からの
評判変化

・環境への取組が消極的な場合に、調達先が
 取引へ消極的な態度をとることが想定さ
 れ、原材料の調達が難航する可能性が発生
 する。

・CDPなどのESG評価結果の開示に

 よる自社取り組みの公開

機会

低炭素技術の
進展

・EVの普及により、EV関連製品の売上が
 増加する。

・次世代自動車用の製品の販売計画の策定

次世代技術の
進展

・3Dプリンタ技術の活用による金型製作時
 の省資源化が進むことで、収益率が向上す
 る。

・3Dプリンタ導入の検討

原材料コスト
の変化

・脱タングステン合金など新規材料の開発を
 実現した場合、資源価格高騰に対するレジ
 リエンス性を発揮することができる。

・原料に対するリサイクルへの取り組み

顧客・投資家
の評判変化

・環境への取組が積極的な場合、新規顧客の
 増加や投融資機会の増加につながる。

・CDPなどのESG評価結果の開示に

 よる自社取り組みの公開

 

気候変動による物理的な影響

リスク

異常気象の
激甚化
海面上昇

・台風や洪水など自然災害の増加により、自
 社設備が被災する可能性が増加する。
・調達先の被災により、納期の遅延や代替品
 確保などの対応が発生する。
・顧客の被災による購買力の低下により、売
 上が減少する。

・自社のBCP対応
・防潮堤の設置
・分散型調達

平均気温の
上昇

・気温上昇により、夏季における空調費が増
 加する。

・工場外壁での断熱材の利用

室外機への遮熱塗料の塗布

 

 

 

 

③リスク管理

 当社は、リスクマネジメント基本規程にてリスク管理方法を定めており、「(1)サステナビリティ基本方針について ⑤サステナビリティ全般に関するリスク管理」に記載の方法でリスク管理を行っております。

 

④指標と目標

 当社は、サステナビリティの観点を踏まえた経営の進捗や、気候変動に対する政策等の影響を評価・管理するために、温室効果ガス排出量を指標として設定しており、2030年度に2018年度比で38%以上削減することを目標として掲げております。今後は、目標達成にむけて、自社設備の省エネルギー化や再生可能エネルギーの導入を進めてまいります。

 

表3:温室効果ガス排出量(t-CO2)

 

 

2018年度

2023年度

自社の活動によるGHG排出(Scope1+Scope2)

18,838

15,749

(内訳)

Scope1(燃料の使用による直接排出)

2,031

1,717

Scope2(電力の使用による間接排出)

16,807

14,032

 

対象範囲:冨士ダイスグループ

 

※2023年度の排出量に関しては、2024年5月時点の排出係数を使用しております。

 今後、排出係数は更新される可能性があります。

 

(3)人的資本に関する取組について

 ①人的資本に関する戦略(人財育成方針、社内環境整備の方針)

 当社グループは人の成長が企業の成長の源泉であるという考えのもと、「事業を通じて広く社会に貢献し、幸せな人を育てる」「人間尊重、人間中心の経営」を企業理念として掲げ、広く産業とくらしを支え、社会に貢献できる人、そして、自分を必要としてくれる社会に対して感謝の気持ちを持つことができる人財を育てることを目指しております。

 このような企業理念に沿った人財を育成することに加え、これからの不確実な環境において中長期における持続的な成長を果たすため、当事者意識を持ち、環境の変化に対応できる人財を継続的に輩出するために自立型人財の育成を目指しております。

 これらの人財育成を達成するため、教育研修の提供、自主性・チャレンジ精神の重視、安全で健康的な職場環境の整備をしております。

 

 

[人財育成方針]

 a.企業理念に沿った人財の育成

 b.自立型人財(やることを決める、決めたことをやる、チームとして働く)の育成

 

[社内環境整備の方針]

 企業理念に沿った人財の育成及び自立型人財の育成を可能とするため、具体的には以下の環境を整備しております。

 また、当社グループでは、性別・経歴・国籍・文化的背景等を区別せず、知識や資質、業績、経験等を総合的に勘案し、経験者や外国人等の人財を登用しており、当社グループ内の多様性の確保を図ることとしております。

 

a.教育研修の提供

 従業員が企業理念を理解するための教育研修や、自らのキャリアを描き、自身の能力や技術を磨いて、成長へとつなげられるよう能力を向上するための教育研修の機会を提供します。

 

b.自主性・チャレンジ精神の重視

 従業員の自主性とチャレンジ精神を大切にし、組織とともに成長していくことを目指します。またチャレンジ精神のある従業員を評価するため、処遇面における公正性、透明性を確保します。

 

  c.安全・安心で働きがいのある職場環境の整備

 従業員の安全と健康を確保し、働きがいのある職場を重視します。また職場における良好なコミュニケーションを確保し、従業員一人ひとりの心と身体の健康保持・増進に取り組みます。

 

②指標と目標

 当社グループでは、上記「人財育成方針」、「社内環境整備の方針」について、次の指標を用いております。また当該指標に関する目標は次のとおりであります。

 なお、これらの指標については、当社においては関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取り組みが行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われていないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の指標に関する目標は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。

 

指標

目標

実績(当事業年度)

企業理念研修(集合研修)

80

75

管理職に占める女性労働者の割合

3.6

3.9

スキルアップ研修の実施

延べ335

延べ522

自立型人財育成研修

延べ72

延べ52

ストレスチェック高受検率維持

90

99.3

労働災害発生件数

0

19

 

 

3 【事業等のリスク】

(1)当社グループのリスクマネジメント体制

当社グループは、リスクマネジメント基本方針に基づき、リスクマネジメントの効果的かつ円滑な運営及び適切な指導を行うために、代表取締役社長を委員長とするリスクマネジメント委員会を設置しております。リスクマネジメント委員会はリスクマネジメント基本規程に基づき定期的に開催され、重要リスクの特定・分析・評価・見直し、年間の活動計画(対応策)の策定及び活動状況の確認・評価、新規に発生したリスクのモニタリング等を行っております。

 

[リスクマネジメント基本方針]

当社グループは、次に示す方針のもと、リスクマネジメントに取り組み、企業価値の向上と持続可能な社会の発展に貢献する。

1.社会的責任を果たすために、可能な限り危機の未然防止を図り、リスクの組織的な監視体制を構築する。

2.リスクマネジメント委員会を中心に、リスクの識別・評価・低減等の活動を推進し、リスク対応力の強化を図
   る。

3.危機発生時には、ステークホルダーの安全確保を第一とし、経営資源の保全及び被害・損失の極小化を図る。
   また、早期復旧と継続操業に向け組織的に対応する。

4.教育、訓練、研修及びリスク情報の共有化により、リスクに対する認識を高め、対応能力の向上を図る。

5.定期的にリスクマネジメント体制の見直しを行い、リスクマネジメントが有効に機能するよう継続的な改善を
   行う。

 

[リスクマネジメント体制]


※リスクマネジメント委員会は、当社より各本部長、副本部長、内部監査室長、各事業所長及び総務課長、国内子
  会社(2社)より子会社社長及び総務課長、在外子会社(4社)より子会社社長のメンバーで構成されておりま
  す。なお、事務局は当社の総務部が担当しております。

 

 

(2)リスクマネジメントプロセス

①リスクマネジメントプロセスの概要

当社グループにおける重要リスクの選定は年1回実施しており、そのプロセスの概要は次のとおりであります。

・リスクマネジメント委員会で当社グループの重要リスクになり得るリスクを「リスク候補」として選定。これら
  のリスク候補ごとに所管部署を決定し、リスク候補に対する年間の活動計画(対応策)を策定。

・定期的に開催されるリスクマネジメント委員会にて、活動計画(対応策)に対する活動状況の確認・評価、新規
  に発生したリスクのモニタリング等を実施。

・リスクマネジメント委員会の年間の活動等を踏まえ、事務局がリスク候補ごとに影響度及び発生可能性の面から
  分析・評価を実施し、当社グループのリスクマップを作成。

・リスクマネジメント委員会の事務局が実施した分析・評価結果及び当社グループのリスクマップをリスクマネジ
  メント委員会で審議。リスク値の高いリスクを当社グループの「重要リスク」として選定。

・リスクマネジメント委員会で選定した当社グループの重要リスクは取締役会へ報告し、承認を得る。


・影響度及び発生可能性は以下の目安をもとに評価を行っております。

影響度の目安

 

発生可能性の目安

1

小さい

 

1

低い

2

やや小さい

 

2

やや低い

3

 

3

4

やや大きい

 

4

やや高い

5

大きい

 

5

高い

 

 

 

②当連結会計年度の当社グループのリスク候補及び重要リスク

リスク候補

評価

大分類

中分類

小分類

No.

影響度

発生可能性

※重要

リスク

外部環境

自然災害

 

1

大きい

高い

環境問題

環境規制

2

やや小さい

やや高い

 

気候変動

3

やや大きい

やや高い

経済環境

景気変動(国内・海外)

4

やや大きい

為替変動

5

 

制度変更(会計・税務等)

6

やや小さい

やや高い

 

市場の変化

市場の縮小

7

やや大きい

やや高い

新素材・新製品の出現

8

小さい

やや低い

 

既存製品の陳腐化

9

小さい

やや低い

 

パンデミック

感染症・伝染病

10

小さい

やや低い

 

地政学リスク

 

11

やや大きい

やや高い

内部環境

戦略リスク

新規事業への投資(M&A含む)

12

大きい

プライム市場上場維持基準

13

 

原材料調達

 

14

大きい

やや高い

協力会社

 

15

やや高い

人財の育成及び確保

16

大きい

高い

財務リスク

棚卸資産の価値下落

17

高い

投資有価証券の時価下落

18

やや低い

 

繰延税金資産の計上

19

やや大きい

やや低い

 

固定資産の価値下落

20

やや大きい

やや高い

生産拠点の集約

 

21

小さい

低い

 

オペレー
ショナル
リスク

システム

システム障害

22

小さい

高い

 

情報セキュリティ

23

やや大きい

やや高い

事故

製品事故

24

やや低い

 

火災・爆発事故

25

やや低い

 

電気的・機械的事故

26

やや高い

労災・交通事故

27

高い

コンプラ
イアンス

人権問題

28

やや高い

知的財産権

29

 

法令違反

30

やや高い

不正行為

31

やや大きい

やや低い

 

社内規程違反

32

やや小さい

高い

 

 

(注)当連結会計年度において当社グループが重要リスクと選定したリスクについては、(3)事業等のリスクに詳細を記載しております。

 

 

(3)事業等のリスク

当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況等に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。但し、これらのリスクは当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではなく、予見できないリスクや重要性が低いと考えられるリスクも存在し、将来的にそれらのリスクが、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況等に影響を与える可能性もあります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

①災害に関するリスク

影響度:大きい

発生可能性:高い

[当該リスクが顕在化した場合の影響]

 

 

 当社グループでは、自然災害への対応として各種対策を講じております。しかしながら、全ての被害や影響を回避できるとは限らず、予想を超える規模の被災により建物や設備の倒壊・破損、ライフライン・輸送ルート・情報インフラの寸断等による操業の停止、といった不測の事態が発生した場合、顧客への製品供給に支障をきたすこと等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

[リスクへの対応]

 

 

 当社グループでは、地震、台風等の自然災害により操業停止をせざるを得ないような事態の発生に備え、自然災害を想定した防災訓練、社員の安否確認訓練を定期的に行うとともに、防災設備の設置、火災保険への加入、必要物資の備蓄、BCP(事業継続計画)の策定等の対策を講じております。災害の発生に対しては、緊急連絡体制を通じて、国内外の拠点や関係会社と連携する仕組みを構築しており、代表取締役社長を本部長とする対策本部を速やかに設置し、BCP(事業継続計画)が実行できる体制を整えております。

 

 

②気候変動に関するリスク

影響度:やや大きい

発生可能性:やや高い

 気候変動に関するリスクについては、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)気候変動に関する取組について」に記載しております。

 

 

③景気変動に関するリスク

影響度:やや大きい

発生可能性:中

[当該リスクが顕在化した場合の影響]

 

 

 当社グループは、日本及びアジアを中心にグローバルに事業を展開しており、幅広い業種との安定かつ多くの顧客との取引実績(取引社数約3,000社)がございますが、当社グループ及び当社グループの顧客が事業を展開する国・地域において、景気後退や経済危機が発生した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

[リスクへの対応]

 

 

 当社グループでは、定期的に開催する子会社業績報告会等において、進出する国の政治・経済情勢等の動向を当社グループ全体でモニタリングしております。また、日本国内の状況に関しては、与信管理の徹底に加え、当社グループに影響があると思われる事象・事案が発生した場合には、影響度調査、顧客の生産動向等の状況確認を迅速に行い、リスクマネジメント委員会へ報告する体制としております。これらの活動により、国内外の景気動向を注視するとともに、当社グループ全体で課題を認識・共有し、迅速に対応できる体制を構築しております。

 

 

④市場動向の変化に関するリスク

影響度:やや大きい

発生可能性:やや高い

[当該リスクが顕在化した場合の影響]

 

 

 当社グループの販売品目の多くは生産財であり、設備投資需要等に大きく影響を受けます。

 当社グループ及び当社グループの顧客が事業を展開する国・地域の景気が減速・後退する場合は、設備投資需要の低下等をもたらし、その結果、当社グループが提供する製品又はサービスの受注・売上が減少するなど、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

[リスクへの対応]

 

 

 当社グループでは、日本機械工具工業会から配信される情報等をもとに国内の市場動向を把握するとともに、営業活動から得られた顧客情報、各種課題、競合する他社の情報等を明確化し全社的に共有・分析することで、市場動向の変化に迅速に対応できる体制を整備しております。また、当連結会計年度においては、海外事業の強化を実現することを目的とし、当社に海外事業本部を新設いたしました。海外事業本部では、国内営業と情報を共有化するとともに、海外の市場動向の変化等にも迅速に対応できる体制の構築に注力しております。

[機会]

 

 

 当社グループでは、自然環境に配慮した市場ニーズに応えるため、粉末冶金技術及び超精密加工技術を活かした、新材料・高付加価値製品の開発が、持続可能な事業運営の実現につながるものと考えております。特に、低炭素技術関連では、EV(電気自動車)の普及により、EV関連製品の需要拡大が見込まれ、次世代技術関連では、3Dプリンタ技術の活用による金型製作時の省資源化を実現することで、持続的な事業成長の機会が得られるものと考えております。

 

 

⑤地政学リスク

影響度:やや大きい

発生可能性:やや高い

[当該リスクが顕在化した場合の影響]

 

 

 当社グループは、日本及びアジアを中心にグローバルに事業を展開しております。これらの国・地域において政治・経済情勢等の変化や社会的混乱により、生産の停止、物流の停滞等が発生した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。なお、地政学リスクは当社グループの原材料調達にも大きく関連するリスクであると認識しております。詳細については「⑦原材料の調達に関するリスク」に記載しております。

[リスクへの対応]

 

 

 当社グループでは、定期的に開催する子会社業績報告会等において、進出する国の政治・経済情勢等の動向を当社グループ全体でモニタリングしております。また、当連結会計年度においては、海外事業の強化を実現することを目的とし、当社に海外事業本部を新設いたしました。今後は海外事業本部を中心に、当社グループ全体で地政学リスクの影響を低減するための施策等を検討してまいります。

 

 

⑥新規事業への投資(M&Aを含む)に関するリスク

影響度:大きい

発生可能性:中

[当該リスクが顕在化した場合の影響]

 

 

 当社グループは、中長期の成長基盤の構築として新成長エンジンの創出を目指し、新規事業を開始する可能性があります。新規事業への投資を行う際は、これらのリスクへの対応として各種対策を講じる予定ですが、不確定要素も多く成功する保証はありません。当初期待した効果が得られず目的が達成できなかった場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

[リスクへの対応]

 

 

 新規事業については、ゼロからのスタートではなく、その領域において実績のある企業とのM&Aや業務提携を主な手段とする等でリスクを低減してまいります。また、選択肢の一つであるM&Aを行う場合には、対象企業の財務内容や契約関係等について、弁護士・税理士・公認会計士等の外部専門家の助言を含めたデューデリジェンスを実施すること等により、十分にリスクを検討した上で決定する方針であります。

 

 

⑦原材料の調達に関するリスク

影響度:大きい

発生可能性:やや高い

[当該リスクが顕在化した場合の影響]

 

 

 当社グループの主力製品である超硬工具は、産出地や生産量が限定されるタングステンカーバイド、コバルト等といった稀少な金属を原材料としております。

 当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあります。

 ・原料相場が大きく高騰した場合のリスク

 ・為替が大きく変動した場合のリスク

 ・戦争、暴動、テロ、伝染病、自然災害による社会的混乱

 タングステンカーバイド、コバルトの需給が世界的に逼迫して原料相場が高騰した場合、あるいは為替が円安になった場合、原材料費が上昇し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 また、タングステンカーバイドの調達はそのほとんどを中国からの輸入に、コバルトは粗原料をアフリカでの産出、中間原料の製錬を中国での生産に依存しております。中国やアフリカの政治・経済情勢等の変化、社会的混乱が発生し、生産の停止、物流の停滞等によりタングステンカーバイド及びコバルトが調達できなくなった場合は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

[リスクへの対応]

 

 

 当社グループでは、原材料の調達に関するリスクへの対応として、一定量の原材料在庫を社内に保有すると共に、原材料調達連絡会を定期的に開催し、関連部署間による各種課題の情報共有や具体的な対応策の検討等を行っております。また、原料相場の高騰や為替の変動、調達リスクへの対策及び環境への配慮等も踏まえ、リサイクル原料の購入も計画的に実施しております。さらに、原材料の調達先を対象にCSR調査を実施し、紛争鉱物への対応や環境への配慮等の社会的責任の観点も踏まえ、調達先との連携を強化するとともに、継続的な新規調達先の検討等、原材料の安定調達に向けた活動を行っております。

[機会]

 

 

 当社グループの製品に使用される鉱物資源が、コンフリクト・フリーであることを常にモニタリングし、安全性の高い製品を提供することで、当社グループの競争力向上につながる可能性があると考えております。また、脱タングステン合金など新規材料の開発を実現した場合、資源価格高騰に対するレジリエンス性を発揮することができるものと考えております。

 

 

 

⑧協力会社に関するリスク

影響度:中

発生可能性:やや高い

[当該リスクが顕在化した場合の影響]

 

 

 当社グループは製品の製造において協力会社にその加工の全てもしくは一部を委託しており、総製造費用に対する外注費の割合は約1割を占めております。現時点では優良な協力会社が多数あるものの、事業環境の悪化による外注費の値上がり、景気低迷による協力会社の経営破綻、協力会社の後継者不足による事業の廃止などのリスクがあります。これらのリスクに当社グループが対処できない場合には、外注費の増加、外注していた工程の内製化による設備投資の増加や製造原価の高騰により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

[リスクへの対応]

 

 

 当社グループでは、協力会社に関するリスクへの対応として、今までどおり協力会社との良好な関係を維持しつつ、特に重要度の高い協力会社とは、協働して安定的かつ継続的な生産体制を構築しております。なお、当連結会計年度においては、事前に廃業の連絡を受けていた協力会社と連携し、一部の委託品の内製化を実現しております。

 

 

⑨人財の育成及び確保に関するリスク

影響度:大きい

発生可能性:高い

[当該リスクが顕在化した場合の影響]

 

 

 当社グループは人を中心とした経営を実践しており、中長期的な成長は優秀かつ多様な人財を確保・育成し、適材適所の配置を実現することに大きく依拠しております。当社グループでは事業運営上必要な人財を採用し、その雇用の継続に努めていますが、

 ・適切な時期に優秀な人財を必要な事業領域において計画通り採用することができない

 ・事業活動を進める上で必要となる知識・スキル・能力を有した人財を適切な時期及び規模で育成できない

 ・優秀な人財が社外に流出してしまう

等により、中長期的な視点から当社グループの事業目的の達成が困難となり、その結果、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

[リスクへの対応]

 

 

 当社グループでは、中期経営計画(2025年3月期-2027年3月期)の基本コンセプトとして「変化に対応できる企業体質への転換」を掲げていますが、これらを実現するためには自立型人財の育成が不可欠であると考えております。そのため、階層別教育研修プログラムを導入し、各階層のスキルマップに沿った研修の充実を図り、体系的かつ継続的な人財育成に取り組んでおります。

 また、多様なライフスタイルに応じたワークライフバランスの実現に向け、継続的に各種労働環境の整備等を進めており、多様な人財を確保するための活動を推進しております。

 なお、人的資本に関する取組については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組(3)人的資本に関する取組」に記載しております。

 

 

⑩財務リスク-(1)棚卸資産の価値下落

影響度:中

発生可能性:高い

[当該リスクが顕在化した場合の影響]

 

 

 当社グループが保有している棚卸資産については、主として、個別法に基づく原価法(収益性の低下に基づく簿価切下げの方法)により評価しております。従って、原料相場の高騰や稼働率の低下により製品原価が売価を上回る可能性があり、この場合、収益性の低下による評価損が発生し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

⑪財務リスク-(2)固定資産の価値下落

影響度:やや大きい

発生可能性:やや高い

[当該リスクが顕在化した場合の影響]

 

 

 当社グループでは、生産能力や生産性の向上等のため製造設備などの設備投資を継続的に行っており、その結果、当連結会計年度末の連結貸借対照表において、有形固定資産を10,246百万円計上しております。当該有形固定資産については固定資産の減損に係る会計基準等に従い、資産の簿価が回収できない兆候が認められた場合は減損テストを行い、当該資産が十分な将来キャッシュ・フローを生み出さない場合は、減損損失を認識しております。多額の減損損失を認識した場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

 

⑫情報セキュリティに関するリスク

影響度:やや大きい

発生可能性:やや高い

[当該リスクが顕在化した場合の影響]

 

 

 当社グループは、情報セキュリティ対策として各種対策を講じておりますが、予期せぬ事態により、情報流出や破壊もしくは改ざん又は情報システムの停止等が引き起こされる可能性は皆無ではありません。このような事態が生じた場合には、社会的信用の失墜、損害賠償等の費用の発生、業務の停止等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

[リスクへの対応]

 

 

 当社グループでは、事業遂行に関連して多くの顧客情報や機密情報を有しております。これらの情報については、外部流出や破壊、改ざん等が発生しないよう厳格な管理体制を構築し、情報システムのハード面・ソフト面を含めた適切なセキュリティ対策、情報の取扱い等に関する規程類の整備や従業員等への周知・徹底を図るなど、情報セキュリティを強化しております。また、当連結会計年度においては、上記の各種対策に加え、更なる情報セキュリティを強化すべく、ITリテラシー教育の導入やインシデント対応への体制構築に向けた検討を開始し、活動を推進しております。

 

 

⑬電気的又は機械的事故に関するリスク

影響度:中

発生可能性:やや高い

[当該リスクが顕在化した場合の影響]

 

 

 当社グループの主たる事業である超硬合金を用いた耐摩耗工具及びその素材である超硬合金のチップの生産活動は、重要設備に依存しております。これらの重要設備において、電気的又は機械的事故等が発生した場合、生産活動に支障をきたし、また操業の停止により顧客への製品供給が停止する等といった事態も想定されます。それらに加え、破損・故障設備の復旧に伴う費用等も発生することから、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

[リスクへの対応]

 

 

 当社グループでは、電気的又は機械的事故に関するリスクへの対応として、生産設備の定期点検に加え、特に重要な設備については第三者立会のもとで実施する点検も導入し、生産設備の管理体制を強化しております。また、重要設備の一つである焼結炉の管理についてはメンテナンスチームを立ち上げ定期的に会議を開催し、設備の更新計画や消耗品の更新計画の策定、各事業所間で課題を共有する等、電気的又は機械的事故の未然防止に努めております。

 

 

⑭労働災害及び事故に関するリスク

影響度:中

発生可能性:高い

[当該リスクが顕在化した場合の影響]

 

 

 当社グループは、生産活動においては多くの生産設備を用いた業務、また営業活動においては自動車を使用しての顧客訪問等が主であります。労働災害や交通事故は、従業員の健康や人命に係わる重大なリスクであり、従業員の安全管理が不可欠であると認識しております。しかしながら、万一重大な労働災害や交通事故等が発生した場合には、生産活動や営業活動に支障をきたし、また補償金等の負担等も生じることが想定されることから、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

[リスクへの対応]

 

 

 当社グループでは、労働災害及び事故に関するリスクへの対応として、各事業所ごとに実施しているリスクアセスメント活動や安全衛生防火委員会の活動を推進し、安全な職場環境の整備に努めております。また、産業医による職場巡視時の助言や指導があった場合には、早急に改善策を検討する等、労働災害や交通事故等の未然防止に努めております。なお、労働災害や交通事故等が発生した場合には、リスクマネジメント委員会へ報告する体制としており、当社グループ全体で課題を認識・共有し、再発防止にも努めております。

 

 

⑮人権問題に関するリスク

影響度:中

発生可能性:やや高い

[当該リスクが顕在化した場合の影響]

 

 

 当社グループ及び当社グループのサプライチェーンにおいて、各種ハラスメント及び差別並びに強制労働や児童労働等の人権問題が発生した場合には、社会的信用の失墜、人財の流出、損害賠償等の費用の発生、生産活動や調達への影響等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

[リスクへの対応]

 

 

 当社グループでは、2022年10月に「パワーハラスメント防止宣言」を行い当社グループ全体に周知するとともに、ハラスメント教育の充実、内部通報制度や社内外の相談窓口の運用等を通じて、人権問題の未然防止及び早期把握に努めております。当連結会計年度においては、役員及び管理職従業員を対象に「ハラスメント防止&ラインケア研修」を実施いたしました。また、事業活動を通じて社会的責任を果たすため、「責任ある鉱物調達方針」を策定し、方針に沿った原材料の調達を推進しております。

 

 

 

⑯法的規制等に関するリスク

影響度:中

発生可能性:やや高い

[当該リスクが顕在化した場合の影響]

 

 

 当社グループは、日本及びアジアを中心にグローバルに事業を展開しており、様々な国の法令・規則の適用を受けております。法的規制等に関するリスクへの対応として各種対策を講じておりますが、グローバルに事業を展開するなか、これらのリスクを完全に回避することは困難であります。また、当社グループの役員及び従業員によるコンプライアンス違反等の不祥事も懸念されます。これらの法令違反や不祥事等が発生した場合には、社会的信用の失墜、損害賠償等の費用の発生、事業活動の制限による影響等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

[リスクへの対応]

 

 

 当社グループでは、コンプライアンス意識の徹底・向上を図るため、コンプライアンス教育を継続的に実施しております。また、内部通報制度や社内外の相談窓口の運用等を通じて、法令違反や不祥事等の未然防止及び早期把握にも努めております。当連結会計年度においては、海外事業の強化を実現することを目的とし、当社に海外事業本部を新設いたしましたので、国内でのコンプライアンス関連の教育に加え、在外子会社におけるコンプライアンス関連の教育にも注力いたしました。なお、法令違反や不祥事等が発生した場合には、コンプライアンス委員会へ報告する体制としており、当社グループ全体で課題を認識・共有し、再発防止にも努めております。

 

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

(1) 経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症に関する行動制限の緩和等による経済活動の正常化が進み、景気は緩やかに回復しているものの、ウクライナ情勢に伴う資源・エネルギー価格の高騰や世界的な物価上昇、中東での紛争の発生、長引く円安や中国経済の減速等により、依然として先行き不透明な状況が続いております。

 こうした状況の中、当社グループは「革新(勇猛果敢)」を年度方針に掲げ、高品質・低コスト・短納期・充実したサービスの向上に努めてまいりました。

 また、「筋肉質な企業体質への転換、中長期の成長基盤の構築」を目指し、2022年3月期から3ヵ年を対象期間とした中期経営計画を策定しており、1.生産性向上・業務効率化、2.次世代自動車への対応・拡販、3.新成長エンジンの創出、4.海外事業の強化、を重点施策に掲げ、最終年度となる2024年3月期も諸施策に取り組んでまいりました。

 また、上記4つの重点施策の実施に加えて、機関投資家・個人投資家向け説明会の実施、各種メディアやホームページを通じた積極的な情報発信、増配を含めた株主還元の充実、当社の課題や今後の取り組みに関する理解促進等を目的とした株主様とのコミュニケーションの強化等に取り組んだ結果、2023年12月末時点において、プライム市場の全ての上場維持基準に適合することができました。

 中期経営計画の4つの重点施策の実施につきましては、具体的には「1.生産性向上・業務効率化」として、原価率低減目標を4.4%(2020年3月期第2四半期比)に設定し、自動搬送装置や自動化ロボットの導入拡大、熊本製造所における冶金棟や岡山製造所におけるCIP装置のリニューアル、各生産拠点における加工条件や設備レイアウトの最適化等を進めてまいりました。

 また「2.次世代自動車への対応」としては、車載用モーターコアの抜き金型向けとして市場投入した新素材(VG48)の販売の拡大や、材料ラインナップを拡充するための新素材開発に注力してまいりました。

「3.新成長エンジンの創出」については、高性能レンズ成型に適した高熱膨張合金「TR05/TR30」の拡販が本格化し、日本機械工具工業会において「技術功績大賞」を受賞、更に、「2023年 第66回十大新製品賞(日刊工業新聞社主催)」において「モノづくり賞」も受賞いたしました。また超硬合金の主原料であるタングステンやコバルトの使用量を大幅に削減した新素材「サステロイ(ST60)」が、「2023年超モノづくり部品大賞(モノづくり日本会議/日刊工業新聞社主催)」において「奨励賞」を受賞しております。

 「4.海外事業の強化」については、より機動的な施策実施体制を構築するため、2023年7月に海外事業本部を設置するとともに担当役員を擁立し、2024年3月には中国華南エリアの東莞に同国で二つ目の営業拠点を開設いたしました。

これらの結果、当連結会計年度における売上高は16,678百万円(前連結会計年度比2.9%減)となりました。

超硬製工具類では、海外向け溝付きロールや一部の鋼管用引抜工具の販売が好調に推移した結果、売上高は4,788百万円(前連結会計年度比4.8%増)となりました。

超硬製金型類では、モーターコア用金型の販売が好調に推移したものの、顧客の生産地変更により二次電池向け金型の販売が大幅に減少したほか、自動車部品メーカーの在庫調整の影響を受け、関連する金型の販売が低調に推移した結果、売上高は3,920百万円(前連結会計年度比7.1%減)となりました。

その他の超硬製品では、半導体製造装置向けの需要が堅調に推移したものの、景気低迷が継続している中国市場の影響を受け、中国向け素材販売が低調に推移した結果、売上高は4,004百万円(前連結会計年度比6.0%減)となりました。

超硬以外の製品では、一部の鋼製自動車部品用工具・金型の販売が堅調に推移したものの、引抜鋼管の売上が低調に推移した結果、売上高は3,964百万円(前連結会計年度比3.9%減)となりました。

 

また利益につきましては、生産性向上・業務効率化の施策や原材料等の高騰に伴う価格改定等に一定の成果があったものの、売上高の減少や、熊本製造所冶金棟建設に伴う一時的な費用増の影響を受け、営業利益は809百万円(前連結会計年度比29.7%減)、経常利益は882百万円(前連結会計年度比28.0%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度における固定資産(土地)の譲渡益の反動減により709百万円(前連結会計年度比45.1%減)となりました。

なお、当社グループは耐摩耗工具関連事業の単一セグメントであるため、セグメント情報の記載を省略しております。

 

 (資産の部)

当連結会計年度末の資産の部は、26,138百万円(前連結会計年度末26,253百万円)となり114百万円減少いたしました。流動資産は15,024百万円(前連結会計年度末15,724百万円)となり、700百万円減少いたしましたこれは主に、現金及び預金が191百万円減少、受取手形が209百万円減少、原材料及び貯蔵品が226百万円減少したことによるものであります。また、固定資産は11,114百万円(前連結会計年度末10,528百万円)となり、585百万円増加いたしました。これは主に、建設仮勘定が1,172百万円減少したものの、建物及び構築物(純額)が1,413百万円増加、機械装置及び運搬具(純額)が198百万円増加したことによるものであります。 

 

 (負債の部)

当連結会計年度末の負債の部は、5,491百万円(前連結会計年度末5,860百万円)となり、369百万円減少いたしました。流動負債は3,871百万円(前連結会計年度末4,197百万円)となり、326百万円減少いたしました。これは主に、未払金が136百万円増加したものの、支払手形及び買掛金が116百万円減少、その他流動負債が368百万円減少したことによるものであります。また、固定負債は1,619百万円(前連結会計年度末1,662百万円)となり、42百万円減少いたしました

 

 (純資産の部)

当連結会計年度末の純資産の部は、20,647百万円(前連結会計年度末20,392百万円)となり、254百万円増加いたしました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金が709百万円増加、剰余金の配当により利益剰余金が634百万円減少、為替換算調整勘定が124百万円増加したことによるものであります。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ209百万円減少し6,983百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、以下のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは税金等調整前当期純利益995百万円、減価償却費988百万円の計上、売上債権の減少額365百万円などにより2,050百万円の収入(前連結会計年度は775百万円の収入)となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは有形固定資産の取得による支出1,718百万円、無形固定資産の取得による支出125百万円、投資有価証券の売却による収入131百万円などにより1,656百万円の支出(前連結会計年度は712百万円の支出)となりました。この結果、フリー・キャッシュ・フローは394百万円の収入(前連結会計年度は62百万円の収入)となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは配当金の支払額634百万円などにより651百万円の支出(前連結会計年度は453百万円の支出)となりました。

 

 

③ 生産、受注及び販売の実績

 a.生産実績 

 当連結会計年度における生産実績は、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

耐摩耗工具関連事業

12,476

99.8

 

(注)1.当社グループの事業区分は「耐摩耗工具関連事業」の単一セグメントであります。

      2.金額は当期製品製造原価によっております。 

 

 b.受注実績

 当連結会計年度における受注実績は、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高
(百万円)

前年同期比
(%)

受注残高
(百万円)

前年同期比
(%)

耐摩耗工具関連事業

16,567

93.8

2,533

95.8

 

(注)当社グループの事業区分は「耐摩耗工具関連事業」の単一セグメントであります。

 

 c.販売実績

 当連結会計年度における販売実績を製品区分ごとに示すと、次のとおりであります。

製品区分

販売高(百万円)

前年同期比(%)

超硬製工具類

4,788

104.8

超硬製金型類

3,920

92.9

その他の超硬製品

4,004

94.0

超硬以外の製品

3,964

96.1

合計

16,678

97.1

 

(注)当社グループの事業区分は「耐摩耗工具関連事業」の単一セグメントであります。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当連結会計年度の経営成績は、売上高は16,678百万円、営業利益は809百万円、経常利益は882百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は709百万円となりました。

当連結会計年度は売上高の目標を前連結会計年度比3.6%増の17,800百万円とし、車載用モーターコアの抜き金型向けとして市場投入した新素材(VG48)の拡販や高性能レンズ成型に適した高熱膨張合金「TR05/TR30」の拡販等に取り組みました。また海外売上高拡大のため海外事業本部の設置や中国華南エリアの東莞で営業拠点の開設をしました。しかしながら中国の経済停滞に伴う需要減、自動車部品関連金型の回復遅れに伴う需要減に加え、二次電池向け金型や引抜鋼管の需要減等により当連結会計年度の売上高は目標比6.3%減の16,678百万円となりました。

当連結会計年度の営業利益は、生産性向上・業務効率化の施策や原材料等の高騰に伴う価格改定等に一定の成果があったものの、売上高の減少による営業利益減少の影響が大きく、営業利益は目標比30.9%減の809百万円となりました。

当連結会計年度の経常利益は、営業利益が対目標で下回ったことから目標比28.3%減の882百万円となり、また親会社株主に帰属する当期純利益は、経常利益が対目標で下回ったことから目標比20.3%減の709百万円となりました。

これにより当社グループが重視する経営指標である売上高経常利益率は5.3%(対目標比1.6ポイント減)、ROE(自己資本当期純利益率)は3.5%(対目標比1.1ポイント減)となりました。

当連結会計年度における売上高経常利益率、ROEの目標未達は売上高の未達が主要因であり、今後の課題であると捉えております。

このような状況のもと、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(3)中長期的な会社の経営戦略と対処すべき課題」に記載のとおり、「変化に対応できる企業体質への転換」を中期方針とした2025年3月期からの3年を対象期間とする「中期経営計画2026」を策定しました。この中期方針のもと国内事業は成長の基盤(安定的に成長)とし、成長を牽引するのは海外事業、将来の成長基盤の育成として新事業の実現という方向性を定め、1.経営基盤の強化、2.生産性向上・業務効率化、3.海外事業の飛躍、4.脱炭素・循環型社会への貢献、5.新事業の確立を成長戦略として持続的に取り組んでまいります。

なお、当社グループは耐摩耗工具関連事業の単一セグメントであるため、セグメント情報の記載を省略しております。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループは事業活動のための適切な資金確保、流動性の維持、並びに健全な財政状態を目指し、その財源として安定的な営業キャッシュ・フローの創出を最優先事項と考えております。

当社グループは事業活動に必要な運転資金及び設備投資資金は、主に手元のキャッシュと営業活動によるキャッシュ・フローで賄っており、また、健全な財政状態、営業活動によるキャッシュ・フローを生み出す能力により、当社グループの成長を維持するために将来必要な運転資金及び設備投資資金についても調達することが可能と考えております。またコミットメントライン契約により、自然災害等の緊急時も含め流動性を担保できるよう備えております。

当社におけるコミットメントライン契約の状況につきましては、以下のとおりであります。

コミットメントライン契約 10億円(当連結会計年度末の借入実行残高はありません)

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。

 

(a)仕掛品(完成粉末を除く)の評価

仕掛品(完成粉末を除く)の評価に関しては「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

(b)繰延税金資産の回収可能性

繰延税金資産の回収可能性は、将来の税金負担額を軽減する効果を有するかどうかで判断しております。当該判断は、収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性、タックス・プランニングに基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性及び将来加算一時差異の十分性のいずれかを満たしているかどうかにより行っております。

収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性を判断するにあたっては、一時差異等の解消見込年度及び繰戻・繰越期間における課税所得を見積っております。課税所得は、中期経営計画の前提となった数値を、経営環境などの外部要因に関する情報や当社グループが用いている内部の情報(予算など)と整合的に修正し見積っており、また中期経営計画の見積期間を超える期間の課税所得については、それまでの計画に基づく趨勢を踏まえた一定の仮定をおいて見積っております。

当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する繰延税金資産及び法人税等調整額の金額に重要な影響を与える可能性があります。

 

 

(c)退職給付債務の算定

当社グループには、確定給付制度を採用している会社が存在します。確定給付制度の退職給付債務及び関連する勤務費用は、数理計算上の仮定を用いて退職給付見込額を見積り、割り引くことにより算定しております。数理計算上の仮定には、割引率、退職率、予想昇給率、直近の統計数値に基づいて算出される死亡率等の様々な計算基礎があります。退職給付債務の算定にあたっては、退職給付見込額の期間帰属方法を給付算定式基準とし、割引率の設定は加重平均期間アプローチによる方法により算出しております。

当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する退職給付に係る負債及び退職給付費用の金額に重要な影響を与える可能性があります。

なお、当連結会計年度末の退職給付債務の算定に用いた主要な数理計算上の仮定は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (退職給付関係)(6)数理計算上の計算基礎に関する事項」に記載のとおりであります。

 

(d)減損会計における将来キャッシュ・フロー

減損損失を認識するかどうかの判定及び使用価値の算定において用いられる将来キャッシュ・フローは、中期経営計画の前提となった数値を、経営環境などの外部要因に関する情報や当社グループが用いている内部の情報(予算など)と整合的に修正し、資産グループの現在の使用状況や合理的な使用計画等を考慮し見積っております。

当社グループは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結損益計算書関係) ※8 減損損失」に記載のとおり、当連結会計年度において減損損失(0百万円)を計上いたしました。回収可能価額は正味売却価額により算定しております。

当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において追加の減損損失(特別損失)が発生する可能性があります。

 

5 【経営上の重要な契約等】

  該当事項はありません。

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループの研究開発活動は、連結財務諸表を作成している当社のみが行っており、当社技術開発本部がその担当部署となっております。

当社グループにおける研究開発の基本方針は、顧客のニーズに応える工具・金型材料の研究開発と加工技術の研究開発からなる製品化であり、現行の事業品目のみならず新規事業分野への展開を目指した研究開発を行っております。

基本方針のもと、材料の研究開発に関しては、粉末冶金技術を基軸とし、超硬合金、セラミックスおよび機能性複合材料に関する研究開発を行っております。

一方、加工技術に関する研究開発は、超精密加工技術を基軸とし、製品の加工精度向上、加工効率改善および新鋭設備を用いた新たな加工方法の構築を目的とした研究開発を行っております。

当連結会計年度の研究開発活動は、超硬合金材料の研究開発においては、中期経営計画に示した重要施策「新成長エンジンの創出」に基づき省タングステン・コバルト材料の開発に関する研究開発等を、加工技術の研究開発においては、同じく「新成長エンジンの創出」に基づき、医療分析デバイス用成型金型等の高精度品に対する微細加工技術開発により、一定の成果をあげることができました。

 

・省タングステン・コバルト材料の開発

希少金属であるタングステンやコバルトを90%以上削減し、環境に配慮した新材料サステロイ(ST60)を開発しました。この材料は、鋼より軽量でありながら、超硬合金に迫る硬さ・靭性を実現しております。

・電気化学反応用電極材料の開発

電気化学反応用電極材料の開発を進めております。この電極材料は水素等の発生反応の効率化が可能となり、今後成長が見込まれる環境・エネルギー分野への展開が期待されます。

・次世代光通信関連製品用高精度金型加工技術開発

次世代の光通信用デバイスの成形金型は、複雑かつ求められる精度が厳しいことが知られております。ツールパス等の加工条件を最適化することで品質要求精度の目標達成に向け、超精密加工技術の向上を目指してまいります。

 

今後につきましては、粉末冶金技術を駆使した新材料、または超精密加工技術の研究開発を進め、それにより得られる開発製品を通じて、次世代自動車、環境・エネルギー、次世代光通信等の成長分野への参入により、当社グループの事業領域拡大を進めてまいります。

なお、当連結会計年度の研究開発活動に要した費用は314百万円であります。

当社グループは耐摩耗工具関連事業の単一セグメントであるため、セグメント情報の記載を省略しております。