文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、「事業を通じて広く社会に貢献し、幸せな人を育てる」「人間尊重、人間中心の経営」を企業理念とし、広く産業とくらしを支え、社会に貢献できる人、そして、自分を必要としてくれる社会に対して感謝の気持ちを持つことができる人、そういう幸せな人を育て、真に人間が働く喜びを味わえる企業経営を行うことを、経営の基本方針としております。
(2) 目標とする経営指標
当社グループは、安定的な成長を目指すため収益性を意識した経営が重要との観点から「売上高経常利益率」を重視しており、また資本効率を高め企業価値の向上を図る観点から「ROE(自己資本当期純利益率)」を重視しております。
(3) 中長期的な会社の経営戦略と対処すべき課題
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症に関する行動制限の緩和等による経済活動の正常化が進み、景気は緩やかに回復しているものの、ウクライナ情勢に伴う資源・エネルギー価格の高騰や世界的な物価上昇、中東での紛争の発生、長引く円安や中国経済の減速等により、依然として先行き不透明な状況が続いております。
中長期的には、当社グループの主要顧客が関連する自動車産業においてCASE(コネクテッド、自動化、シェアリング、電動化)への流れが着実に進んでおり、当社グループとしてもその変化への対応として次世代自動車への対応・拡販を成長戦略とし、対応を進めております。
また生成AIをはじめとしたAIの普及やデジタルトランスフォーメーション(DX)の進展等により当社グループが関連する半導体等の市場は世界的に拡大が続くものと考えられます。
社会的な環境としましては持続可能で強靱な社会の構築のため「脱炭素社会」、「循環型社会」の形成が強く求められており、企業においても持続的な成長のためその実現に向けた責任ある取り組みが求められております。
日本を取り巻く環境としては少子高齢化・人口減少による市場縮小や人財確保の競争激化、コロナ禍を契機とした事業構造・生活様式の変化、デジタル化の一層の推進など様々な変化が予測されております。
このような変化の激しい環境のもと顧客と社会の期待に応え成長し続けるため「変化に対応できる企業体質への転換」を中期方針とした2025年3月期からの3年を対象期間とする「中期経営計画2026」を策定しました。この中期方針のもと国内事業は成長の基盤(安定的に成長)とし、成長を牽引するのは海外事業、将来の成長基盤の育成として新事業の実現という方向性を定め、1.経営基盤の強化、2.生産性向上・業務効率化、3.海外事業の飛躍、4.脱炭素・循環型社会への貢献、5.新事業の確立を成長戦略として持続的に取り組んでまいります。
1.経営基盤の強化
当社グループは様々な環境・社会課題の解決と事業の持続的な成長の両立を実現するため、サステナビリティ経営に取り組んでまいります。脱炭素・循環型社会の実現に向けた高付加価値製品・技術の開発を進めるとともに温室効果ガス排出量の削減や省資源化への取り組みを実施してまいります。また、変化に対応できる自立型人財の育成を目指し、エンゲージメントの向上施策、教育制度の整備、新しい働き方への職場環境整備等を実施してまいります。これらのサステナビリティ経営の実現のため、ガバナンスの充実にも努めてまいります。
当社グループは直販体制による顧客ニーズの把握を強みとしておりますが、変化の激しい環境のもと顧客ニーズを的確に捉え、深耕を図るためには「あらゆる情報の見える化」、「お客様との接点強化」が喫緊の課題と捉えており、IT活用を含めた営業活動の強化を進めこれを実現してまいります。
また、営業部門のIT活用に加えて基幹システムの刷新等によるデジタル化を進め、データに基づいた意思決定の高度化を図ってまいります。
ブランドイメージの社外浸透やインナーブランディングの強化のためのコーポレートブランディングにも着手し、経営基盤の強化に努めてまいります。
2.生産性向上・業務効率化
国内営業部門におきましては、営業活動の分業化の推進や各営業拠点における人員配置の見直し等により営業活動の効率化を目指します。
国内生産部門におきましては、生産効率改革第1フェーズ(前中期経営計画)より実施してきた多品種少量生産における標準時間の設定や工程の見える化等を通じた生産管理の強化、現場改善等を組み合わせた生産性の向上を更に推し進めるとともに、生産効率改革第2フェーズとして本中期経営計画(2025年3月期-2027年3月期)においては多品種少量の生産工程におけるロボットの導入等による自動化、省人化を進めてまいります。
また営業部門でのIT活用や新基幹システムの刷新、ワークフローシステム導入等でのデジタル化による業務効率化や不採算製品の収益改善なども進めてまいります。
3.海外事業の飛躍
海外事業につきましては海外売上高比率25%以上(2027年3月期)を目指し、売上高拡大による成長を積極的に目指してまいります。
中国では電池、モーターコアなどの次世代自動車関連製品の積極的な展開や現地加工メーカーとの協業による競争力の確保、2024年3月に開設した東莞支店での顧客開拓等により売上高を拡大してまいります。
タイ、インドネシアでは製造拠点がある強みを生かし、生産性向上による競争力向上等により売上高を拡大してまいります。
またインドでは現地加工メーカーとの協業等により現在休眠中である拠点の再開を目指し、北米においては現地法人設立を視野に入れた市場調査を進める等活動を強化してまいります。
4.脱炭素・循環型社会への貢献
当社グループは環境・社会の課題解決を事業機会と捉え、脱炭素・循環型社会の形成に貢献する製品を積極的に開発、市場投入してまいります。
脱炭素社会への貢献としましては、モータコア金型用材種のラインナップ拡充や次世代エネルギー分野に向けた触媒関連製品の開発を進めてまいります。
当社グループの温室効果ガス排出量につきましては、2030年度に2018年度比で38%以上削減することを目標として掲げ、自社設備の省エネルギー化や再生可能エネルギーの導入等の施策を実施してまいります。
循環型社会への貢献としましては、省タングステン・コバルト合金の拡販によりレアメタル使用量の低減を図るとともに、熱エネルギーの循環に貢献できる製品の開発にも取り組んでまいります。
また当社グループにおいて超硬工具・金型のリサイクル強化を進めるなど、循環型社会に貢献してまいります。
5.新事業の確立
当社グループは「既存事業」と「新規事業」が独立しながら両輪で走ることが企業価値の向上に繋がるとの観点から、中長期の成長基盤の創出としてプロジェクトチームによる新事業の検討を進めてまいりました。本中期経営計画(2025年3月期-2027年3月期)において新たな事業の柱となる新規事業の実現及び事業創出サイクルの短縮化を目指して新規事業組織を2024年7月に発足いたします。
また、新規事業の早期実現に向けてM&Aや業務提携を積極的に進めてまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ基本方針について
③サステナビリティ全般に関するガバナンス
④サステナビリティ全般に関する戦略
当社は、企業価値の向上と持続可能な社会の発展に向けて、サステナビリティ基本方針に基づいた取り組むべき10項目の優先課題(マテリアリティ)を特定しました。その達成に向けて社内外に周知し、取り組みを進めてまいります。
※1 RMI(Responsible Minerals Initiative):紛争非関与鉱物など責任ある調達を企業と連携して促進する国際団体。
RMIが提唱する「責任ある鉱物保証プロセス(RMAP:Responsible Minerals Assurance Process)の監査を経て、認定。
⑤サステナビリティ全般に関するリスク管理
(2)気候変動に関する取組について
①ガバナンス
当社グループは、「事業を通じて広く社会に貢献し、幸せな人を育てる」ことを掲げ、より良い社会の形成と企業の持続可能な発展のため、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)に対する活動を積極的に進めております。サステナビリティに関する施策の立案や推進を専門に行う「サステナビリティ推進室」を設置し、サステナビリティに関する課題を経営層と共有し、その解決のための検討及び有効性評価の場として、「サステナビリティ委員会」を年4回(4月、7月、10月、1月)開催しています。本委員会は代表取締役社長を委員長とし、社内取締役、各部門の担当者で構成され、別途、取締役会にて実効的な監督を行う体制を整備しております。
今後、当社グループのサステナビリティに関する取り組みの更なる強化、推進を図ってまいります。

図1 ガバナンス体制
②戦略
a.気候変動による事業への影響の分析
気候変動による事業への影響を明らかにするため、2つのシナリオを用いてシナリオ分析を実施しております。積極的な政策により気温上昇を抑える1.5℃シナリオと、限定的な政策により気候変動が進む4℃シナリオを採用いたしました。
各シナリオにて、分析のために参考にしたシナリオは、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)から報告されているRCPシナリオと、IEA(国際エネルギー機関)から報告されているシナリオになります。RCPシナリオは、気候変動による物理的な影響(物理リスク)の分析のために参考にし、IEAのシナリオは脱炭素経済への移行に伴う影響(移行リスク)の分析のために参考にいたしました(表1)。また、分析における時間軸は、2050年カーボンニュートラルを達成するために重要な時点とされている2030年を設定いたしました。
表1:シナリオ分析で参考にした気候変動シナリオ
※1.5℃シナリオの情報がない場合は、2℃シナリオに分類される参考シナリオを使用
b.分析結果と対応
〈1.5℃シナリオ〉
1.5℃シナリオでは、炭素税など気候変動に対する政策・法規制の推進など、脱炭素社会への移行に伴う影響が起きることが予想されております。当社事業へのリスクとしては、炭素税の導入やレアメタル価格の上昇による調達コストの増加が挙げられました。そのため、再生可能エネルギーの導入や設備の省エネルギー化などGHG排出量削減のための取り組み、および製品設計による省資源化や新規合金の開発など資源価格高騰への対応を進めております。一方で、機会としては、電気自動車をはじめとする次世代自動車関連製品の売上増加が挙げられました。現在、中期経営計画における重点施策の1つとして、脱炭素・循環型社会への貢献を掲げており、次世代自動車用の製品の販売計画や、国内循環型の超硬粉末のリサイクルの取り組みを策定しております。
〈4℃シナリオ〉
4℃シナリオでは、異常気象の激甚化などの気候変動による物理的な影響が発生することが予想されております。当社のリスクとしても、異常気象がもたらす災害発生時における製造所の被災による製品販売の停止や、サプライヤーと顧客の被災による影響が挙げられました。現状、当社としては、海岸付近の製造所における防潮堤の設置や、BCP対応の強化を進めており、異常気象による事業へのリスク低減を進めております。
表2:シナリオ分析結果
③リスク管理
当社は、リスクマネジメント基本規程にてリスク管理方法を定めており、「(1)サステナビリティ基本方針について ⑤サステナビリティ全般に関するリスク管理」に記載の方法でリスク管理を行っております。
④指標と目標
当社は、サステナビリティの観点を踏まえた経営の進捗や、気候変動に対する政策等の影響を評価・管理するために、温室効果ガス排出量を指標として設定しており、2030年度に2018年度比で38%以上削減することを目標として掲げております。今後は、目標達成にむけて、自社設備の省エネルギー化や再生可能エネルギーの導入を進めてまいります。
表3:温室効果ガス排出量(t-CO2)
対象範囲:冨士ダイスグループ
※2023年度の排出量に関しては、2024年5月時点の排出係数を使用しております。
今後、排出係数は更新される可能性があります。
(3)人的資本に関する取組について
①人的資本に関する戦略(人財育成方針、社内環境整備の方針)
当社グループは人の成長が企業の成長の源泉であるという考えのもと、「事業を通じて広く社会に貢献し、幸せな人を育てる」「人間尊重、人間中心の経営」を企業理念として掲げ、広く産業とくらしを支え、社会に貢献できる人、そして、自分を必要としてくれる社会に対して感謝の気持ちを持つことができる人財を育てることを目指しております。
このような企業理念に沿った人財を育成することに加え、これからの不確実な環境において中長期における持続的な成長を果たすため、当事者意識を持ち、環境の変化に対応できる人財を継続的に輩出するために自立型人財の育成を目指しております。
これらの人財育成を達成するため、教育研修の提供、自主性・チャレンジ精神の重視、安全で健康的な職場環境の整備をしております。
[人財育成方針]
a.企業理念に沿った人財の育成
b.自立型人財(やることを決める、決めたことをやる、チームとして働く)の育成
[社内環境整備の方針]
企業理念に沿った人財の育成及び自立型人財の育成を可能とするため、具体的には以下の環境を整備しております。
また、当社グループでは、性別・経歴・国籍・文化的背景等を区別せず、知識や資質、業績、経験等を総合的に勘案し、経験者や外国人等の人財を登用しており、当社グループ内の多様性の確保を図ることとしております。
a.教育研修の提供
従業員が企業理念を理解するための教育研修や、自らのキャリアを描き、自身の能力や技術を磨いて、成長へとつなげられるよう能力を向上するための教育研修の機会を提供します。
b.自主性・チャレンジ精神の重視
従業員の自主性とチャレンジ精神を大切にし、組織とともに成長していくことを目指します。またチャレンジ精神のある従業員を評価するため、処遇面における公正性、透明性を確保します。
c.安全・安心で働きがいのある職場環境の整備
従業員の安全と健康を確保し、働きがいのある職場を重視します。また職場における良好なコミュニケーションを確保し、従業員一人ひとりの心と身体の健康保持・増進に取り組みます。
②指標と目標
当社グループでは、上記「人財育成方針」、「社内環境整備の方針」について、次の指標を用いております。また当該指標に関する目標は次のとおりであります。
なお、これらの指標については、当社においては関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取り組みが行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われていないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の指標に関する目標は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。
(1)当社グループのリスクマネジメント体制
当社グループは、リスクマネジメント基本方針に基づき、リスクマネジメントの効果的かつ円滑な運営及び適切な指導を行うために、代表取締役社長を委員長とするリスクマネジメント委員会を設置しております。リスクマネジメント委員会はリスクマネジメント基本規程に基づき定期的に開催され、重要リスクの特定・分析・評価・見直し、年間の活動計画(対応策)の策定及び活動状況の確認・評価、新規に発生したリスクのモニタリング等を行っております。
[リスクマネジメント基本方針]
当社グループは、次に示す方針のもと、リスクマネジメントに取り組み、企業価値の向上と持続可能な社会の発展に貢献する。
1.社会的責任を果たすために、可能な限り危機の未然防止を図り、リスクの組織的な監視体制を構築する。
2.リスクマネジメント委員会を中心に、リスクの識別・評価・低減等の活動を推進し、リスク対応力の強化を図
る。
3.危機発生時には、ステークホルダーの安全確保を第一とし、経営資源の保全及び被害・損失の極小化を図る。
また、早期復旧と継続操業に向け組織的に対応する。
4.教育、訓練、研修及びリスク情報の共有化により、リスクに対する認識を高め、対応能力の向上を図る。
5.定期的にリスクマネジメント体制の見直しを行い、リスクマネジメントが有効に機能するよう継続的な改善を
行う。
[リスクマネジメント体制]

※リスクマネジメント委員会は、当社より各本部長、副本部長、内部監査室長、各事業所長及び総務課長、国内子
会社(2社)より子会社社長及び総務課長、在外子会社(4社)より子会社社長のメンバーで構成されておりま
す。なお、事務局は当社の総務部が担当しております。
(2)リスクマネジメントプロセス
①リスクマネジメントプロセスの概要
当社グループにおける重要リスクの選定は年1回実施しており、そのプロセスの概要は次のとおりであります。
・リスクマネジメント委員会で当社グループの重要リスクになり得るリスクを「リスク候補」として選定。これら
のリスク候補ごとに所管部署を決定し、リスク候補に対する年間の活動計画(対応策)を策定。
・定期的に開催されるリスクマネジメント委員会にて、活動計画(対応策)に対する活動状況の確認・評価、新規
に発生したリスクのモニタリング等を実施。
・リスクマネジメント委員会の年間の活動等を踏まえ、事務局がリスク候補ごとに影響度及び発生可能性の面から
分析・評価を実施し、当社グループのリスクマップを作成。
・リスクマネジメント委員会の事務局が実施した分析・評価結果及び当社グループのリスクマップをリスクマネジ
メント委員会で審議。リスク値の高いリスクを当社グループの「重要リスク」として選定。
・リスクマネジメント委員会で選定した当社グループの重要リスクは取締役会へ報告し、承認を得る。

・影響度及び発生可能性は以下の目安をもとに評価を行っております。
②当連結会計年度の当社グループのリスク候補及び重要リスク
(注)当連結会計年度において当社グループが重要リスクと選定したリスクについては、(3)事業等のリスクに詳細を記載しております。
(3)事業等のリスク
当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況等に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。但し、これらのリスクは当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではなく、予見できないリスクや重要性が低いと考えられるリスクも存在し、将来的にそれらのリスクが、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況等に影響を与える可能性もあります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症に関する行動制限の緩和等による経済活動の正常化が進み、景気は緩やかに回復しているものの、ウクライナ情勢に伴う資源・エネルギー価格の高騰や世界的な物価上昇、中東での紛争の発生、長引く円安や中国経済の減速等により、依然として先行き不透明な状況が続いております。
こうした状況の中、当社グループは「革新(勇猛果敢)」を年度方針に掲げ、高品質・低コスト・短納期・充実したサービスの向上に努めてまいりました。
また、「筋肉質な企業体質への転換、中長期の成長基盤の構築」を目指し、2022年3月期から3ヵ年を対象期間とした中期経営計画を策定しており、1.生産性向上・業務効率化、2.次世代自動車への対応・拡販、3.新成長エンジンの創出、4.海外事業の強化、を重点施策に掲げ、最終年度となる2024年3月期も諸施策に取り組んでまいりました。
また、上記4つの重点施策の実施に加えて、機関投資家・個人投資家向け説明会の実施、各種メディアやホームページを通じた積極的な情報発信、増配を含めた株主還元の充実、当社の課題や今後の取り組みに関する理解促進等を目的とした株主様とのコミュニケーションの強化等に取り組んだ結果、2023年12月末時点において、プライム市場の全ての上場維持基準に適合することができました。
中期経営計画の4つの重点施策の実施につきましては、具体的には「1.生産性向上・業務効率化」として、原価率低減目標を4.4%(2020年3月期第2四半期比)に設定し、自動搬送装置や自動化ロボットの導入拡大、熊本製造所における冶金棟や岡山製造所におけるCIP装置のリニューアル、各生産拠点における加工条件や設備レイアウトの最適化等を進めてまいりました。
また「2.次世代自動車への対応」としては、車載用モーターコアの抜き金型向けとして市場投入した新素材(VG48)の販売の拡大や、材料ラインナップを拡充するための新素材開発に注力してまいりました。
「3.新成長エンジンの創出」については、高性能レンズ成型に適した高熱膨張合金「TR05/TR30」の拡販が本格化し、日本機械工具工業会において「技術功績大賞」を受賞、更に、「2023年 第66回十大新製品賞(日刊工業新聞社主催)」において「モノづくり賞」も受賞いたしました。また超硬合金の主原料であるタングステンやコバルトの使用量を大幅に削減した新素材「サステロイ(ST60)」が、「2023年超モノづくり部品大賞(モノづくり日本会議/日刊工業新聞社主催)」において「奨励賞」を受賞しております。
「4.海外事業の強化」については、より機動的な施策実施体制を構築するため、2023年7月に海外事業本部を設置するとともに担当役員を擁立し、2024年3月には中国華南エリアの東莞に同国で二つ目の営業拠点を開設いたしました。
これらの結果、当連結会計年度における売上高は16,678百万円(前連結会計年度比2.9%減)となりました。
超硬製工具類では、海外向け溝付きロールや一部の鋼管用引抜工具の販売が好調に推移した結果、売上高は4,788百万円(前連結会計年度比4.8%増)となりました。
超硬製金型類では、モーターコア用金型の販売が好調に推移したものの、顧客の生産地変更により二次電池向け金型の販売が大幅に減少したほか、自動車部品メーカーの在庫調整の影響を受け、関連する金型の販売が低調に推移した結果、売上高は3,920百万円(前連結会計年度比7.1%減)となりました。
その他の超硬製品では、半導体製造装置向けの需要が堅調に推移したものの、景気低迷が継続している中国市場の影響を受け、中国向け素材販売が低調に推移した結果、売上高は4,004百万円(前連結会計年度比6.0%減)となりました。
超硬以外の製品では、一部の鋼製自動車部品用工具・金型の販売が堅調に推移したものの、引抜鋼管の売上が低調に推移した結果、売上高は3,964百万円(前連結会計年度比3.9%減)となりました。
また利益につきましては、生産性向上・業務効率化の施策や原材料等の高騰に伴う価格改定等に一定の成果があったものの、売上高の減少や、熊本製造所冶金棟建設に伴う一時的な費用増の影響を受け、営業利益は809百万円(前連結会計年度比29.7%減)、経常利益は882百万円(前連結会計年度比28.0%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度における固定資産(土地)の譲渡益の反動減により709百万円(前連結会計年度比45.1%減)となりました。
なお、当社グループは耐摩耗工具関連事業の単一セグメントであるため、セグメント情報の記載を省略しております。
(資産の部)
当連結会計年度末の資産の部は、26,138百万円(前連結会計年度末26,253百万円)となり114百万円減少いたしました。流動資産は15,024百万円(前連結会計年度末15,724百万円)となり、700百万円減少いたしました。これは主に、現金及び預金が191百万円減少、受取手形が209百万円減少、原材料及び貯蔵品が226百万円減少したことによるものであります。また、固定資産は11,114百万円(前連結会計年度末10,528百万円)となり、585百万円増加いたしました。これは主に、建設仮勘定が1,172百万円減少したものの、建物及び構築物(純額)が1,413百万円増加、機械装置及び運搬具(純額)が198百万円増加したことによるものであります。
(負債の部)
当連結会計年度末の負債の部は、5,491百万円(前連結会計年度末5,860百万円)となり、369百万円減少いたしました。流動負債は3,871百万円(前連結会計年度末4,197百万円)となり、326百万円減少いたしました。これは主に、未払金が136百万円増加したものの、支払手形及び買掛金が116百万円減少、その他流動負債が368百万円減少したことによるものであります。また、固定負債は1,619百万円(前連結会計年度末1,662百万円)となり、42百万円減少いたしました。
(純資産の部)
当連結会計年度末の純資産の部は、20,647百万円(前連結会計年度末20,392百万円)となり、254百万円増加いたしました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金が709百万円増加、剰余金の配当により利益剰余金が634百万円減少、為替換算調整勘定が124百万円増加したことによるものであります。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ209百万円減少し、6,983百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは税金等調整前当期純利益995百万円、減価償却費988百万円の計上、売上債権の減少額365百万円などにより2,050百万円の収入(前連結会計年度は775百万円の収入)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは有形固定資産の取得による支出1,718百万円、無形固定資産の取得による支出125百万円、投資有価証券の売却による収入131百万円などにより1,656百万円の支出(前連結会計年度は712百万円の支出)となりました。この結果、フリー・キャッシュ・フローは394百万円の収入(前連結会計年度は62百万円の収入)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは配当金の支払額634百万円などにより651百万円の支出(前連結会計年度は453百万円の支出)となりました。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績は、次のとおりであります。
(注)1.当社グループの事業区分は「耐摩耗工具関連事業」の単一セグメントであります。
2.金額は当期製品製造原価によっております。
(注)当社グループの事業区分は「耐摩耗工具関連事業」の単一セグメントであります。
(注)当社グループの事業区分は「耐摩耗工具関連事業」の単一セグメントであります。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度の経営成績は、売上高は16,678百万円、営業利益は809百万円、経常利益は882百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は709百万円となりました。
当連結会計年度は売上高の目標を前連結会計年度比3.6%増の17,800百万円とし、車載用モーターコアの抜き金型向けとして市場投入した新素材(VG48)の拡販や高性能レンズ成型に適した高熱膨張合金「TR05/TR30」の拡販等に取り組みました。また海外売上高拡大のため海外事業本部の設置や中国華南エリアの東莞で営業拠点の開設をしました。しかしながら中国の経済停滞に伴う需要減、自動車部品関連金型の回復遅れに伴う需要減に加え、二次電池向け金型や引抜鋼管の需要減等により当連結会計年度の売上高は目標比6.3%減の16,678百万円となりました。
当連結会計年度の営業利益は、生産性向上・業務効率化の施策や原材料等の高騰に伴う価格改定等に一定の成果があったものの、売上高の減少による営業利益減少の影響が大きく、営業利益は目標比30.9%減の809百万円となりました。
当連結会計年度の経常利益は、営業利益が対目標で下回ったことから目標比28.3%減の882百万円となり、また親会社株主に帰属する当期純利益は、経常利益が対目標で下回ったことから目標比20.3%減の709百万円となりました。
これにより当社グループが重視する経営指標である売上高経常利益率は5.3%(対目標比1.6ポイント減)、ROE(自己資本当期純利益率)は3.5%(対目標比1.1ポイント減)となりました。
当連結会計年度における売上高経常利益率、ROEの目標未達は売上高の未達が主要因であり、今後の課題であると捉えております。
このような状況のもと、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(3)中長期的な会社の経営戦略と対処すべき課題」に記載のとおり、「変化に対応できる企業体質への転換」を中期方針とした2025年3月期からの3年を対象期間とする「中期経営計画2026」を策定しました。この中期方針のもと国内事業は成長の基盤(安定的に成長)とし、成長を牽引するのは海外事業、将来の成長基盤の育成として新事業の実現という方向性を定め、1.経営基盤の強化、2.生産性向上・業務効率化、3.海外事業の飛躍、4.脱炭素・循環型社会への貢献、5.新事業の確立を成長戦略として持続的に取り組んでまいります。
なお、当社グループは耐摩耗工具関連事業の単一セグメントであるため、セグメント情報の記載を省略しております。
当社グループは事業活動のための適切な資金確保、流動性の維持、並びに健全な財政状態を目指し、その財源として安定的な営業キャッシュ・フローの創出を最優先事項と考えております。
当社グループは事業活動に必要な運転資金及び設備投資資金は、主に手元のキャッシュと営業活動によるキャッシュ・フローで賄っており、また、健全な財政状態、営業活動によるキャッシュ・フローを生み出す能力により、当社グループの成長を維持するために将来必要な運転資金及び設備投資資金についても調達することが可能と考えております。またコミットメントライン契約により、自然災害等の緊急時も含め流動性を担保できるよう備えております。
当社におけるコミットメントライン契約の状況につきましては、以下のとおりであります。
コミットメントライン契約 10億円(当連結会計年度末の借入実行残高はありません)
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
(a)仕掛品(完成粉末を除く)の評価
仕掛品(完成粉末を除く)の評価に関しては「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(b)繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産の回収可能性は、将来の税金負担額を軽減する効果を有するかどうかで判断しております。当該判断は、収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性、タックス・プランニングに基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性及び将来加算一時差異の十分性のいずれかを満たしているかどうかにより行っております。
収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性を判断するにあたっては、一時差異等の解消見込年度及び繰戻・繰越期間における課税所得を見積っております。課税所得は、中期経営計画の前提となった数値を、経営環境などの外部要因に関する情報や当社グループが用いている内部の情報(予算など)と整合的に修正し見積っており、また中期経営計画の見積期間を超える期間の課税所得については、それまでの計画に基づく趨勢を踏まえた一定の仮定をおいて見積っております。
当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する繰延税金資産及び法人税等調整額の金額に重要な影響を与える可能性があります。
(c)退職給付債務の算定
当社グループには、確定給付制度を採用している会社が存在します。確定給付制度の退職給付債務及び関連する勤務費用は、数理計算上の仮定を用いて退職給付見込額を見積り、割り引くことにより算定しております。数理計算上の仮定には、割引率、退職率、予想昇給率、直近の統計数値に基づいて算出される死亡率等の様々な計算基礎があります。退職給付債務の算定にあたっては、退職給付見込額の期間帰属方法を給付算定式基準とし、割引率の設定は加重平均期間アプローチによる方法により算出しております。
当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する退職給付に係る負債及び退職給付費用の金額に重要な影響を与える可能性があります。
なお、当連結会計年度末の退職給付債務の算定に用いた主要な数理計算上の仮定は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (退職給付関係)(6)数理計算上の計算基礎に関する事項」に記載のとおりであります。
(d)減損会計における将来キャッシュ・フロー
減損損失を認識するかどうかの判定及び使用価値の算定において用いられる将来キャッシュ・フローは、中期経営計画の前提となった数値を、経営環境などの外部要因に関する情報や当社グループが用いている内部の情報(予算など)と整合的に修正し、資産グループの現在の使用状況や合理的な使用計画等を考慮し見積っております。
当社グループは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結損益計算書関係) ※8 減損損失」に記載のとおり、当連結会計年度において減損損失(0百万円)を計上いたしました。回収可能価額は正味売却価額により算定しております。
当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において追加の減損損失(特別損失)が発生する可能性があります。
該当事項はありません。
当社グループの研究開発活動は、連結財務諸表を作成している当社のみが行っており、当社技術開発本部がその担当部署となっております。
当社グループにおける研究開発の基本方針は、顧客のニーズに応える工具・金型材料の研究開発と加工技術の研究開発からなる製品化であり、現行の事業品目のみならず新規事業分野への展開を目指した研究開発を行っております。
基本方針のもと、材料の研究開発に関しては、粉末冶金技術を基軸とし、超硬合金、セラミックスおよび機能性複合材料に関する研究開発を行っております。
一方、加工技術に関する研究開発は、超精密加工技術を基軸とし、製品の加工精度向上、加工効率改善および新鋭設備を用いた新たな加工方法の構築を目的とした研究開発を行っております。
当連結会計年度の研究開発活動は、超硬合金材料の研究開発においては、中期経営計画に示した重要施策「新成長エンジンの創出」に基づき省タングステン・コバルト材料の開発に関する研究開発等を、加工技術の研究開発においては、同じく「新成長エンジンの創出」に基づき、医療分析デバイス用成型金型等の高精度品に対する微細加工技術開発により、一定の成果をあげることができました。
・省タングステン・コバルト材料の開発
希少金属であるタングステンやコバルトを90%以上削減し、環境に配慮した新材料サステロイ(ST60)を開発しました。この材料は、鋼より軽量でありながら、超硬合金に迫る硬さ・靭性を実現しております。
・電気化学反応用電極材料の開発
電気化学反応用電極材料の開発を進めております。この電極材料は水素等の発生反応の効率化が可能となり、今後成長が見込まれる環境・エネルギー分野への展開が期待されます。
・次世代光通信関連製品用高精度金型加工技術開発
次世代の光通信用デバイスの成形金型は、複雑かつ求められる精度が厳しいことが知られております。ツールパス等の加工条件を最適化することで品質要求精度の目標達成に向け、超精密加工技術の向上を目指してまいります。
今後につきましては、粉末冶金技術を駆使した新材料、または超精密加工技術の研究開発を進め、それにより得られる開発製品を通じて、次世代自動車、環境・エネルギー、次世代光通信等の成長分野への参入により、当社グループの事業領域拡大を進めてまいります。
なお、当連結会計年度の研究開発活動に要した費用は
当社グループは耐摩耗工具関連事業の単一セグメントであるため、セグメント情報の記載を省略しております。