第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、本報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

当社グループは「姿かたちを変えながら一生に寄り添い、幸せの時を広げる。」を企業理念として掲げております。「おいしい」「たのしい」「うれしい」など、人が生きている幸せを実感するときにそばにいることを事業活動の目標とし、その事業の源である自然への感謝を忘れずに、その恵みを様々な姿かたちにして広く社会に届け、幸せの時が広がる未来にずっと貢献できる企業グループを目指して一歩ずつ挑戦してまいります。

 

(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標

当社グループでは、ROE(自己資本当期純利益率)7%以上を経営目標達成のための客観的な指標の一つとしております。引き続き成長分野への経営資源の投入を進めながら収益力の強化を図ってまいります。また、将来の成長に向けて取得してきた事業・資産に伴うのれん等の償却負担が増大している財務上の特徴を踏まえ、キャッシュ創出力を表すEBITDA指標を参考として、当社グループの財務の実態把握に努めてまいります。

 

(3)経営環境、事業上及び財務上の対処すべき課題等

当社グループは、砂糖事業が売上高の大半を占めており、砂糖事業を取り巻く環境変化や、農業政策・通商政策の影響を受けやすい事業構造にあります。国内の砂糖消費量は、人口減や甘味需要の多様化を受け漸減傾向にある中、健康寿命の延伸や新しいライフスタイルの定着などが、人々の食のあり方そのものに新たな広がりをもたらしております。最先端のITを活用したフードテックにより、食品ロスが削減され環境保全に大きく影響するなど、食の持つ新たな可能性に期待の眼差しが向けられており、DXの推進やサステナビリティ意識の向上に対する取り組みは、さらに速度を増すことが想定されております。また、少子化と高齢化の一段の進行による国内の労働力・労働者層の変化や人材獲得競争の激化、さらには、他国との経済連携の進展、原油価格の上昇や円安、原材料価格の高騰、新型コロナウイルスの感染拡大や地政学的リスクの増大による世界的な政治経済の不安定化などにより、当社グループの事業を取り巻く環境は、より一層厳しさを増しております。

このような状況下、当社は、2023年3月期から2026年3月期までを対象とする中期経営計画-2026 Diversify into Nutrition & Healthを策定いたしました。新たな中期経営計画では、グループ全体の成長戦略と掲げる基本方針「グループビジネスモデルの変革」と「経営資源の再配分」のもと、グループ内事業の最適化を図ることで、①国内砂糖事業の強靭化、②海外事業の拡大、③ライフ・エナジー事業の成長、④グループの持つ研究開発力の集積・強化、⑤持続可能な社会実現への貢献を推進いたします。中期経営計画の達成に向け、グループの全役職員が多様な力を結集し、人と社会の幸せの ちからになるために必要とされる栄養と健康のソリューションを届ける企業グループを目指してまいります。

国内砂糖事業につきましては、バリューチェーン全体を抜本的に見直し、最適な原料調達や物流体制の構築による輸送・配送効率の向上を図ります。また、環境に配慮した生産体制のもとでのエネルギー使用量の削減や、付加価値のある販売戦略を推進してまいります。本年10月(予定)には、連結子会社である三井製糖㈱と大日本明治製糖㈱が合併し、商号もDM三井製糖㈱に改め始動いたします。両社のこれまでの経営ノウハウを結集し、合併効果の最大化と収益力の向上に取り組んでまいります。また、国内砂糖産業の長期安定への貢献として、2021年1月付で日本甜菜製糖㈱と締結した資本業務提携契約に基づき、連結子会社である北海道糖業㈱の生産体制の見直しを始めとするビート糖業の課題解決に向け取り組んでまいります。

海外事業につきましては、堅調な経済成長を持続するASEAN・中国・中東において、①シンガポール連結子会社のBtoC製品の充実及び事業エリアの拡大、②中国の巨大マーケット需要獲得、③タイ国関連会社での高品質砂糖の提供を推進するとともに、④ベトナムなど新たなエリアにも進出してまいります。

ライフ・エナジー事業につきましては、糖質・糖質由来成分に関する長年の知見を含む「栄養」「健康」領域に視野を広げ、日々のパフォーマンスや個々人のライフステージに適した栄養補給食を提供することで持続可能な社会に貢献してまいります。5大栄養素のうち、特に「タンパク質」の機能に着目し、R&Dを軸に新たな事業の柱を創出することで、国内では在宅市場への展開を見据えた介護・栄養療法食品の拡大を、また、各国市場に即した既存製品の海外展開などで、進むシニア市場の獲得を目指してまいります。他社との連携やM&Aなどによる外部資源の活用により、成長に必要な機能と新たな知見を獲得し、収益力の強化を図ってまいります。

不動産事業につきましては、引き続き所有不動産の活用による安定的なキャッシュ創出に努めるとともに、一層の資産の効率化並びに収益力の強化を図ってまいります。

研究開発につきましては、エネルギー源となる機能性糖質・タンパク質の開発、健康食の新たな提供方法・効率的な摂取方法の研究に着眼し、外部共同研究やM&Aなども活用しながら、グループが有する商材・知見・技術を活かした多様な商品開発を進めてまいります。

サステナビリティにつきましては、その重要課題、推進方針や施策等を継続的に審議するために、2021年11月1日付でサステナビリティ委員会を設置いたしました。サステナビリティの取り組みに対する基本方針として、「5つの「寄り添い」(※)で持続可能な社会の実現を目指す」を掲げ、企業を取り巻く地球環境や社会の課題に真摯に向き合い、その解決を図りながら新たな価値を生み出してまいります。

(※)①「環境」に寄り添う…気候変動・水資源問題への取り組み、廃棄物の削減をとおして環境改善に貢献します。

②「人」に寄り添う…労働安全衛生を強化し、ダイバーシティ&インクルージョン(人財の多様性と包摂性)への配慮をつうじて、人権が尊重される社会の実現に貢献します。

③「健康」に寄り添う…食品安全の徹底とともに、健康寿命の延伸、栄養ニーズの充実、美味しさの革新をとおして、皆さまの健やかな生活に貢献します。

④「地域社会」に寄り添う…産業の振興をとおして、地域社会の維持・発展に貢献します。

⑤「幸せ」の時に寄り添う…「適糖」生活を広げ、食の基盤づくりをとおして皆さまの幸せな未来に貢献します。

当社は、2022年4月4日付で、東京証券取引所市場第一部から新市場区分「プライム市場」に移行いたしました。今後もコーポレート・ガバナンスのさらなる充実を図るとともに、ステークホルダーからの信頼と期待に応えるべく、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指してまいります。

 なお、過去数年に亘り、当社グループの業績に大きな貢献をしてきたフィンゴリモド「FTY720」の開発権及び販売権の許諾に基づく受取ロイヤリティーにつきましては、当社の共同特許権者である田辺三菱製薬㈱と「ノバルティス社との間で仲裁手続きが継続しているため、仲裁において疑義が提起されている部分について収益の認識を行わない会計処理を継続いたします。

2【事業等のリスク】

 当社グループの事業その他を遂行する上でのリスクについて、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる事項を以下に記載します。なお、文中の将来に関する事項は、本報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)食の安全性に関する事項

 当社グループは、安全安心な製品を安定的に供給するための生産・品質管理体制を整備し、万全の体制で臨んでおります。しかし、品質上の重大な問題等が発生した場合、顧客の信頼喪失、売上低下、生産の停止や製品の回収、管理体制の強化や対策のための費用の発生を含め、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期は推測が困難ですが、当社グループでは品質上の重大な問題を未然に防ぐため、設備の改善やアクセス制御エリアの明確化などのハード面の対策とともに、ISOやFSSC規格の教育・遵守、委託先のモニタリングなどソフト面の対策を進め、フードディフェンスの強化に取り組んでおります。また、食品事故が発生した場合を想定し、それぞれで最小限の被害に抑えるための行動マニュアルや情報管理マニュアルを整備し、品質事故対応訓練を定期的に実施して役職員の注意を喚起しております。

 

(2)農業政策等の事業環境に関する事項

 当社グループは、砂糖事業が売上高の大半を占め、北海道・鹿児島県・沖縄県に国産糖製造会社を有しております。その結果、砂糖事業を取り巻く環境の変化や、農業政策・通商政策の影響を受けやすい事業構造にあります。また、国内の砂糖消費量は、人口減や甘味需要の多様化等により漸減傾向にあります。国内砂糖事業は、政府の農業政策と「砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律」等の法令に基づく制度の中で行っておりますが、今後の政府の農業政策の変更、EPA(経済連携協定)・FTA(自由貿易協定)・TPP(環太平洋パートナーシップ協定)の進捗により、海外から砂糖を使用した安価な製品が輸入される場合や、将来的に安価な精製糖が輸入される場合には、売上の減少や固定資産の減損リスクなど当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期は推測が困難ですが、当社グループでは不断の情報収集に努め、想定に応じた影響度の把握と対策を常に検討しております。一方、アジアでは砂糖需要の増加傾向が持続しており、シンガポールの子会社や、タイ及び中国の関連会社を通じて海外砂糖事業の拡大を図り、グローバルな事業展開を進めることで国内の農業政策の変化による影響を分散し、長期安定的な成長に向けた体制を構築してまいります。

 

(3)原料仕入価格並びに製品の販売価格の変動に関する事項

 当社グループは、主力である砂糖事業において、原料である粗糖が外貨建ての相場商品であり、為替変動リスクの他、原油価格の上昇や地政学的リスクの増大、生産国であるブラジルやタイの天候やサトウキビの生育状況などによって市況が大きく変動する場合があります。また、製品価格も競争や代替甘味料へのシフト等の市場環境の変化により変動することがあり、原料価格の変動を適切に製品価格に反映できない場合や原料価格の変動と製品価格改定の間にタイムラグが生じた場合に、原価率の上昇など当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期は推測が困難ですが、当社グループでは情報収集の強化や原料調達ルートの多様化を図っております。

 

(4)気象災害並びに生産停止等に関する事項

 当社グループは国内外各地にて事業活動を行っておりますが、台風や地震等の大規模自然災害等により予想を超える事態が発生し、製品生産や物流機能への支障が長期間にわたった場合、売上低下など、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。特に近年は大型台風や集中豪雨など風水害の発生リスクが増加していると認識しております。また、装置産業ゆえに設備故障による不測の生産停止等の事故発生リスクも有しております。当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期は推測が困難ですが、当社グループでは、予防の観点で設備の定期メンテナンスを実施し、自社工場として千葉、神戸、福岡の3工場を維持する他、定期的なBCP訓練やその見直し、原材料調達先との連携や複数購買など、当該事象発生時において主要事業の早期復旧を図るための体制を整備しております。

 

(5)海外事業投資に関する事項

 当社グループは新たな成長戦略の柱の一つとして、海外への事業投資を行っております。在外のグループ各社は各国の通貨、法律、会計、税務等制度に則って事業を行っており、各制度の急激な変更、廃止等により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、投資に伴って計上するのれん及び無形固定資産につきましては、将来の収益力を適切に反映しているものと判断していますが、対象となる事業において将来の収益力が低下した等により、減損が必要になった場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期は推測が困難ですが、重要な投資につきましては、十分な事前協議を行った上、経営会議を経て取締役会にて決定し、投資後の各社取締役会等の重要会議への出席や定期的な経営管理を通じて事業価値の向上に努めております。

 

(6)感染症拡大に関する事項

 当社グループは国内外で事業展開しておりますが、大規模な感染症の拡大により、食品需要が低迷し当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、原料の生産や輸送並びに製品の流通や販売に携わる人員が不足し、調達や販売が困難となる可能性や、生産や販売に携わる人員への感染により事業活動に支障が生じる可能性があります。現在、当該リスクが社会全体で顕在化しておりますが、当社グループでは原料調達ルートの多様化の他、感染症拡大状況に対する予防策として、従業員の手洗い消毒や検温、時差出勤や在宅勤務の推奨、マスクの配布やマスク着用の徹底などを実施しております。また、製品の生産や販売に携わっている者が感染した場合に備え、他の者でも対応できるように準備し、製品供給と流通や販売に支障を来さぬよう対策を取っております。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

経営成績等の状況の概要

(1)当連結会計年度の経営成績の分析

 当社は、2021年4月1日付の三井製糖㈱と大日本明治製糖㈱の経営統合により、商号を「DM三井製糖ホールディングス株式会社」に変更し、新たな企業理念「姿かたちを変えながら一生に寄り添い、幸せの時を広げる。」のもと、持株会社体制並びに監査等委員会設置会社に移行いたしました。また、コーポレート・ガバナンスの一層の充実を図るべく、取締役の指名及び報酬に関する透明性及び公正性をより向上させるため、取締役会の諮問機関であるガバナンス委員会を設置いたしました。

なお、当連結会計年度の期首より「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しており、かつ2021年4月1日付で大日本明治製糖㈱と経営統合したことも踏まえ、以下の当期の経営成績に関する説明は、前連結会計年度と比較しての増減額及び前年同期比(%)を記載せずに説明しております。

 

当連結会計年度のわが国経済は、世界的に長引く新型コロナウイルス感染症の影響下にあり、全国規模での緊急事態宣言の発出やまん延防止等重点措置の適用が繰り返されることによって、企業活動及び個人消費は引き続き低い水準で推移いたしました。その後、ワクチン接種の普及等により、9月末には国内の各種制限が一旦解除され、景気持ち直しの動きが見られたものの、新たな変異株の発生に伴う感染再拡大、原油価格の上昇や円安、原材料価格の高騰及び地政学的リスクの増大などにより、依然として先行き不透明な状況が続いております。

 このような状況下、当社グループでも全国的な経済活動縮小の影響を大きく受ける中で、販売状況に呼応した生産の最適化や各種経費の節減を行うと共に、各社間の連携を推進し、引き続き既存事業の基盤強化と成長領域の事業拡大に取り組んでまいりました。

 

砂糖事業

海外粗糖相場につきましては、1ポンド当たり14セント後半でスタートし、8月に入ると、ブラジルの天候不順によるサトウキビの減産懸念や、原油価格などの国際商品市況全般の上昇により、約4年半ぶりとなる20セント台に達しました。12月以降は、北半球の潤沢な産糖量を受けて一時軟化したものの、ウクライナ情勢を巡り、原油をはじめとする国際商品市場に投機資金が流入した結果、相場は再び上昇し、19セント半ばで期末を迎えました。

精製上白糖大袋の国内市中相場につきましては、192円~193円で始まりましたが、前期から続く海外粗糖相場の高騰及び高止まりや円安、コロナ禍における世界的な海上輸送コスト増などを受けた期中の出荷価格の引き上げが反映された結果、204円~205円にて期末を迎えました。なお、これら各種コストの増加を吸収するため、当社の出荷価格を7月と12月にそれぞれ6円引き上げております。

国内の精製糖販売面では、土産物や外食向け需要は、各自治体からの外出自粛要請が幾度となく発出された影響を受け、低調に推移いたしました。一方で、いわゆる巣ごもり消費の高まりによる受注が活発化する中、家庭用の片手で使えるハンディタイプ製品の販売を開始し、その詰め替え用製品も取り揃えるなど、人々のライフスタイルの変化を捉えると同時に、環境に配慮した対応も進めてまいりました。安定操業に努めた生産面においても、燃料価格の高騰による影響を大きく受けましたが、引き続きコストダウンに努めてまいりました。

また、シンガポールでも、行動制限緩和による販売量の持ち直しがあったものの、総体的には、粗糖相場の上昇と高止まりによる原料コストの大幅アップ等を出荷価格の引き上げなどでは吸収しきれず、損益面で大きな負担となりました。

 以上の結果、砂糖事業は、売上高123,430百万円(前連結会計年度は87,450百万円)、営業利益2,441百万円(前連結会計年度は1,689百万円)となりました。

 

期中の砂糖市況

 海外粗糖相場(ニューヨーク砂糖当限、1ポンド当たり)

  始値 14.71セント 高値 20.69セント 安値 14.68セント 終値 19.49セント

 国内市中相場(日本経済新聞掲載、東京上白大袋1㎏当たり)

  始値 192円~193円 終値 204円~205円

 

ライフ・エナジー事業 ※2021年4月1日付でフードサイエンス事業から名称変更

ライフ・エナジー事業につきましては、新型コロナウイルスの影響を受けながらも、パラチノースは清涼飲料向けで販売量が回復し、海外向け需要も伸長いたしました。パラチニットはキャンディ用途での新規採用品が定番化するなどし、さとうきび抽出物も食品及び飼料用の各用途での販売が好調でありましたが、全体として円安や海上輸送費高騰などの影響を受けました。

また、食品色素、食品添加物や工業用抗菌剤などの販売の増加も売上に貢献しましたが、コスト面では、介護・栄養分野における経腸栄養剤の営業活動強化を目的とした販売間接費が増加いたしました。

 以上の結果、ライフ・エナジー事業は、売上高21,839百万円(前連結会計年度は19,475百万円)、営業利益153百万円(前連結会計年度は1,045百万円)となりました。

 

不動産事業

 不動産事業につきましては、販売管理費の減少等により、売上高2,610百万円(前連結会計年度は1,961百万円)、営業利益1,034百万円(前連結会計年度は897百万円)となりました。なお、岡山工場跡地の再開発計画は順調に進捗しております。

 

以上の結果、経営統合による新規連結もあり、当連結会計年度の売上高は147,880百万円(前連結会計年度は108,887百万円)、営業利益は3,630百万円(前連結会計年度は3,631百万円)となりました。

 

営業外損益においては、フィンゴリモド「FTY720」の開発権及び販売権の許諾に基づく受取ロイヤリティーを560百万円計上いたしました。なお、当社の共同特許権者である田辺三菱製薬㈱とNovartis Pharma AG(以下「ノバルティス社」という。)との間で仲裁手続きが進行中であることを受け、ノバルティス社が契約の有効性に関し疑義を提起している部分につきましては、引き続き収益としては認識しておりません。

 持分法投資損益においては、5月よりスプーン印の精製糖製造を開始するなど、中国関連会社の事業が順調に伸長している一方で、タイ国関連会社の原料コスト上昇に伴う原価率の悪化を受け、経常利益は3,479百万円(前連結会計年度は3,788百万円)となりました。また、連結子会社である北海道糖業㈱において、2023年3月をもって、同社の本別製糖所の生産を終了する方針を決定したことで固定資産の減損損失を計上しましたが、経営統合による負ののれん発生益や当社所有ビルの売却益などもあり、親会社株主に帰属する当期純利益は3,657百万円(前連結会計年度は2,764百万円)となりました。

 

(2)経営成績に重要な影響を与える要因についての分析

 当社グループは、主力の砂糖事業において、原料となる粗糖が相場商品であること、また製品価格も競争や市場環境等により変動する場合があり、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。このような事業環境下、当社グループでは適切な原料糖調達と適正販売価格帯の維持に努めてまいりました。

 

(3)経営上の目標指標に関する分析

当社グループでは、ROE(自己資本当期純利益率)7%以上を経営目標達成のための客観的な指標の一つとしております。当連結会計年度のROEは3.9%となりました。また、将来の成長に向けて取得してきた事業・資産に伴うのれん等の償却負担が増大している財務上の特徴を踏まえ、キャッシュ創出力を表すEBITDA指標を参考として、当社グループの財務の実態把握に努めてまいります。当連結会計年度のEBITDAは10,396百万円となりました。

 配当金額につきましては、引き続き株主の皆様に対する利益の還元を経営の最重要課題の一つとして位置づけ、将来の成長に向けた事業展開と、経営基盤強化のための内部留保の充実にも配慮しつつ、安定的かつ継続的な配当の実施を基本方針としております。その上で、年間配当金額は、連結配当性向が100%を超えない限り、最低配当金額として1株当たり60円の配当を実施することとし、都度の経営環境を総合的に勘案し、現金配当と機動的な資本政策を組み合わせた総還元性向50%を目処とした株主還元を行ってまいりました。

 

(4)キャッシュ・フローの状況の分析

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、営業活動で6,356百万円増加、投資活動と財務活動で6,914百万円増加したことにより、前連結会計年度末に対して13,386百万円増加し、31,077百万円となりました。
 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次の通りであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果得られた資金は6,356百万円(前連結会計年度は資金の増加11,124百万円)となりました。
 これは主に税金等調整前当期純利益5,661百万円、減価償却費5,799百万円、仕入債務の増加5,059百万円等による資金の増加があった一方で、棚卸資産の増加4,710百万円、法人税等の支払4,075百万円等による資金の減少があったことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動による資金の増加は344百万円(前連結会計年度は資金の減少4,020百万円)となりました。
  これは主に有形固定資産の売却による収入6,128百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による収入4,972百万円等による資金の増加があった一方で、工場設備等に係る有形固定資産の取得による支出10,273百万円等による資金の減少があったことによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動による資金の増加は6,570百万円(前連結会計年度は資金の減少4,787百万円)となりました。

 これは主に社債の発行による収入10,000百万円等による資金の増加があった一方で、配当金の支払1,612百万円等による資金の減少があったことによるものであります。

(資本の財源及び資金の流動性)

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原料糖の購入費用のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資等によるものであります。

 短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、社債及び金融機関からの長期借入を基本としております。

 なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は30,032百万円となっております。

 

生産、受注及び販売の実績

(1)生産実績

 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

前年同期比(%)

砂糖事業(百万円)

106,955

158.5

ライフ・エナジー事業(百万円)

9,386

104.2

合計(百万円)

116,341

152.1

  (注)1.金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

(2)仕入実績

 当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

前年同期比(%)

砂糖事業(百万円)

22,326

139.2

ライフ・エナジー事業(百万円)

4,807

109.8

合計(百万円)

27,133

132.9

   (注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

(3)受注実績

 当社グループ(当社及び連結子会社以下同じ)は原則として見込み生産を行っているため、該当事項はありません。

(4)販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

前年同期比(%)

砂糖事業(百万円)

123,430

141.1

ライフ・エナジー事業(百万円)

21,839

112.1

不動産事業(百万円)

2,610

133.1

合計(百万円)

147,880

135.8

  (注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

 2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次の通りであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

三井物産㈱

47,295

43.4

47,704

32.3

 

 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

(1)重要な会計方針及び見積り

  当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては、合理的な判断に基づき、会計上の見積りを行っております。詳細につきましては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項」の(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)に記載しております。

(2)財政状態

  当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末比42,786百万円増加し189,497万円となりました。連結貸借対照表の主要項目ごとの主な増減要因等は、次の通りであります。
①流動資産
  流動資産は、前連結会計年度末比28,005百万円増加し88,935百万円となりました。これは主として、現金及び預金の増加13,679百万円、商品及び製品の増加4,862百万円、原材料及び貯蔵品の増加4,288百万円等があったことによるものであります。
②固定資産
  固定資産は、前連結会計年度末比14,780百万円増加し100,561百万円となりました。これは主として、建設仮勘定の増加3,737百万円、投資有価証券の増加5,376百万円等があったことによるものであります。
③負債
  負債は、前連結会計年度末比24,539百万円増加し79,570百万円となりました。これは主として支払手形及び買掛金の増加7,362百万円、社債の増加10,000百万円等があったことによるものであります。
④純資産
  純資産は、前連結会計年度末比18,246百万円増加し109,926百万円となりました。これは主として、新株発行による資本剰余金の増加8,311百万円、自己株式の処分による自己株式の減少4,489百万円等があったことによるものであります。

(3)経営成績

  当連結会計年度における経営成績の概要につきましては、「経営成績等の状況の概要(1)当連結会計年度の経営成績の分析」に記載しております。なお、連結損益計算書の主要項目ごとの主な増減要因等は、次の通りであります。なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、経営成績に影響を及ぼしております。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 会計方針の変更」に記載しております。


①売上高
  売上高は、前連結会計年度比38,993百万円増加し147,880百万円となりました。これは主として、2021年4月1日付で大日本明治製糖株式会社と経営統合したことによるものであります。
②営業利益
  営業利益は、前連結会計年度比1百万円減少し3,630百万円となりました。これは主として、砂糖事業において原料費の上昇に伴う原価の悪化等があったことによるものであります。
③経常利益
  経常利益は、前連結会計年度比308百万円減少し3,479百万円となりました。これは主として、受取ロイヤリティーの減少等によるものであります。

④親会社株主に帰属する当期純利益

 当連結会計年度は負ののれん発生益を主因として、税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度比409百万円増加し5,661百万円となりました。
  法人税、住民税及び事業税、法人税等調整額及び非支配株主に帰属する当期純利益を控除した親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度比892百万円増加し3,657百万円となりました。

 

  (4)キャッシュ・フロー

 キャッシュ・フローの状況につきましては、「経営成績等の状況の概要(4)キャッシュ・フローの状況の分析」に記載しております。

4【経営上の重要な契約等】

当社と日本甜菜製糖㈱(以下「日甜」という。)は、2021年8月30日付で、ビート糖の効率的生産体制構築に関する基本合意書を締結いたしました。

 

(1)背景と目的

   当社及び日甜を取り巻く事業環境は、国内砂糖消費量の長期的な漸減傾向が、今日のコロナ禍で一層拍車がかかっており、またTPPや多数の国との経済連携協定の進展で、今まで以上に国際的な競争にもさらされるなど、益々厳しさが増しております。また、北海道におけるビート糖事業においては、砂糖需要が減少する環境下の事業採算性の確保が大変厳しい状況となっております。

こうした状況に対応すべく、両社は2021年1月15日付で締結した資本業務提携契約に則り、当社の連結子会社である北海道糖業㈱(以下「北糖」という。)を交えて協議・検討を進めてまいりました。

北糖は1968年の設立以来、道南製糖所・北見製糖所・本別製糖所の生産拠点を保有し、北海道ビート糖事業の振興に努めてまいりましたが、近年の事業環境や生産設備の老朽化を総合的に検討した結果、三箇所の生産拠点すべての維持は困難という結論に至り、2023年3月をもって本別製糖所の生産を終了する方針を決定いたしました。

また一方で、現在全道で栽培されている原料てん菜の加工について、てん菜生産者に影響を及ぼさず、効率的に加工するための方策を鋭意検討した結果、日甜、当社、その連結子会社である三井製糖㈱及び北糖は、日甜芽室製糖所での生産委託を含むビート糖の効率的生産体制の構築について基本合意書を締結し、引き続き北海道ビート糖事業の振興を目指すことにいたしました。

 

(2)基本合意の内容

現在、北糖本別製糖所に搬入している原料てん菜は引き続き北糖が買い受け、ビート糖等の生産については北糖北見製糖所及び日甜芽室製糖所にて分担し、販売については北糖が行う予定です。今後、詳細に関しては関係各位と協議して行く予定です。

 

  (3)締結相手先会社の概要

名称

日本甜菜製糖株式会社

所在地

東京都港区三田三丁目12番14号

代表者役職・氏名

取締役社長 惠本 司

事業内容

ビート糖、精糖、イースト、オリゴ糖等食品素材、配合飼料、紙筒(移植栽培用育苗鉢)、種子、農業用機械機器等の製造販売及び不動産事業

資本金

8,279百万円

 

5【研究開発活動】

 当社グループの研究開発活動につきましては、砂糖事業、ライフ・エナジー事業を中心とする当社事業のさらなる拡大発展と、これら事業を核とする新規領域への展開を引き続き実施いたしました。なお、当連結会計年度にかかる研究開発費用の総額は1,001百万円となりました。

 主な内容は、次の通りであります。

 

砂糖事業

 砂糖事業では、加工糖、甘蔗糖、てん菜糖の連結子会社・関連会社を活用した砂糖新商品開発とその用途開発に取り組んでおります。また、タイ国製糖事業関連では、関連工場で使用するサトウキビの少収量を改善できる品種選定試験のサポートを実施いたしました。

 

ライフ・エナジー事業 ※2021年4月1日付でフードサイエンス事業から名称変更

 ライフ・エナジー事業では、主にパラチノースとさとうきび抽出物に関する取り組みを中心に行いながら、開発商品である不溶性食物繊維のアプリケーション開発を行っております。パラチノースは、血糖値上昇抑制等の効果から生活習慣病予防の有望な素材と位置付け、血管への影響についての研究を大学と共同で行っております。また、スポーツ分野での持続的なエネルギー供給源としての利用方法の訴求を継続するとともに、脳機能改善・集中力持続機能の分野での研究も継続しております。さとうきび抽出物に関しては、呈味改善、環境消臭、飼料用途での各製品の用途開発を進めております。また、不溶性食物繊維のアプリケーション開発では、さとうきび抽出物と併用したプラントベースフードの成形や各種食品への用途開発を行っております。一方、R&Dセンター(神戸市東灘区)ではサトウキビ由来の植物乳酸菌を利用した新商品開発を実施しております。

 ㈱タイショーテクノスにおいては、新型コロナウイルスの感染予防需要もあり、抗ウイルス製剤の開発が活況で、他にも食品添加物である着色料やゲル化剤、除菌剤・防腐剤について、ニュートリー㈱においては、栄養療法食品・嚥下障害対応食品についてそれぞれ製剤開発・商品開発に取り組んでおります。また、グループ各社の研究開発連携も引き続き進めております。2021年12月には、連結子会社である三井製糖㈱の研究開発部(東京都新宿区)と同じ拠点に、同じく連結子会社である大日本明治製糖㈱の研究開発部が移転し、本年10月(予定)の両社合併を前に、各社製品を活用した商品開発や共同研究を開始しております。

 

その他

 新たな事業領域では、サトウキビの搾りかす(バガス)の高度利用に取り組んでおり、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)委託事業として、タイ国で実施しているバガスを原料としたセルロース糖・オリゴ糖の製造とポリフェノール製造についての実証プラントによる試験を継続しております。また、生産物であるポリフェノールについては安全性が確認でき、機能性素材としての市場での評価について調査を開始いたしました。

 また、これまで蓄積してきた特許、ノウハウ等の知的財産権の有効利用を図っております。