第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

当社グループは、企業理念である「三井製糖は、安心・信頼・天然の食品素材を誠実に提供し、豊かなくらしに貢献します」を実践し、継続的に企業価値の向上を実現することで全てのステークホルダーにご満足いただくことを経営の基本方針としております。また、重要情報の早期開示やIR活動等を通じて企業活動に関する積極的な情報開示に努め、透明性の高い経営を目指すと共に地球環境に配慮した企業活動を行い、社会からの信頼に応え得る企業グループ、スプーンブランドを目指します。

 

(2)経営戦略等

 国内砂糖事業を基盤とした競争力の維持・強化に加え、グローバル展開や成長分野への事業領域拡大などによる収益構造改革の推進を、中長期的な経営戦略と位置付けております。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標

当社グループでは、ROE(自己資本当期純利益率)8~10%を経営目標達成のための客観的な指標の一つとしております。引き続き成長分野への経営資源の投入を進めながら収益力の強化を図ってまいります。また、将来の成長に向けて取得してきた事業・資産に伴うのれん等の償却負担が増大している財務上の特徴を踏まえ、キャッシュ創出力を表すEBITDA指標を参考として、当社の財務の実態把握に努めてまいります。

 

(4)経営環境、事業上及び財務上の対処すべき課題等

 当社グループは砂糖事業が売上高の80%以上を占めており、北海道、鹿児島、沖縄にも国産糖製造会社を有しております。その結果、砂糖事業を取り巻く環境の変化による影響、農業政策や通商政策の影響を受けやすい事業構造にあります。また、国内砂糖需要は、少子高齢化や今後の人口減少、競合品である加糖調製品や異性化糖の影響により漸減が見込まれております。そのため、国内砂糖事業の基盤強化を図ると同時に、フードサイエンス事業や不動産事業、及び海外事業への取り組みを進め、バランスの取れた収益構造を早期に構築する必要があります。

 2021年3月期においては、新型コロナウイルス感染症の流行拡大により、日本のみならず世界経済への悪影響が長期化することが想定され、砂糖をはじめとする食品素材を安定してお届けする社会的責任を果たすことを第一に事業活動を進めてまいります。

 なお、過去数年間に亘り、当社業績に大きな貢献をしてきたフィンゴリモド「FTY720」の開発権及び販売権の許諾に基づく受取ロイヤリティーは、当社の共同特許権者である田辺三菱製薬㈱とノバルティス社との間で仲裁手続きが継続しているため、仲裁において疑義が提起されている部分について収益の認識を行わない会計処理を継続いたします。
 このような状況下、グループ各社の連携を推進し、具体的には下記の課題認識と対策をもって、既存事業の基盤強化と成長領域の事業拡大に取り組んでまいります。

 国内砂糖事業では、①安定供給のための投資を維持しつつ、人口減少等の社会構造の変化に対応するための自動化や省力化投資、②生産や物流現場における人手不足等のわが国全体に関わる課題を見据えた、生産、販売、物流に至るサプライチェーン全体の最適化の追求、③スプーンブランドを活用した競争力のある商品展開、及び④マーケットニーズの変化に対応した顧客目線による営業活動を推進してまいります。

 海外砂糖事業では、①シンガポールのSIS’88 Pte Ltdの競争力強化、②中国食品事業におけるBtoB、BtoCをカバーする砂糖のサプライチェーンの構築、及び③タイ国関連会社との連携強化による戦略的な取り組みを推進してまいります。

 フードサイエンス事業では、健康寿命の延伸や運動パフォーマンスの向上、健康と美味しさの融合等の領域で、グループ企業との連携強化やM&Aの活用など外部資源も活用し収益力の拡大を図ってまいります。

 不動産事業では、引き続き所有不動産の活用による安定的なキャッシュ創出に努めるとともに、岡山市南区及び神戸市長田区に有する不動産の開発を進め、一層の資産の効率化並びに収益力の強化を図ってまいります。
 研究開発部門では、バガス(サトウキビの搾汁後に残る固形物)からポリフェノールなどの有価物の製造及び応用利用の開発、サトウキビ農業の安定化・高収益化を目指し、栽培改善技術の開発を進める等、今後も環境に優しい植物であるサトウキビを最大限活用することで新たな事業創造を行ってまいります。

 また、2020年3月25日に公表いたしました大日本明治製糖㈱との経営統合及び日本甜菜製糖㈱との資本業務提携に向けた協議開始につきましては、厳しさを増す事業環境下において、わが国の精製糖業界に永年携わってきた3社がこれまで培ってきた生産技術、品質やコスト管理手法、物流・原料調達をはじめとする広範な経営ノウハウを結集し、安定的国内供給体制の基盤を一層強固なものにし、国際競争力を強化して企業としての成長を図るものにて、この実現に向け協議を進めてまいります。

2【事業等のリスク】

 当社グループの事業その他を遂行する上でのリスクについて、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる事項を以下に記載します。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。

①食の安全性に関する事項

  当社グループは、安全安心な製品を安定的に供給するための生産・品質管理体制を整備し、万全の体制で臨んでおります。しかし、品質上の重大な問題等が発生した場合、顧客の信頼喪失、売上低下、生産の停止や製品の回収、管理体制の強化や対策のための費用の発生を含め、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期は推測が困難ですが、当社グループでは品質上の重大な問題を未然に防ぐため、設備の改善やアクセス制御エリアの明確化などのハード面の対策とともに、ISOやFSSC規格の教育・遵守、委託先のモニタリングなどソフト面の対策を進め、フードディフェンスの強化に取り組んでおります。また、食品事故が発生した場合を想定し、それぞれで最小限の被害に抑えるための行動マニュアルや情報管理マニュアルを整備し、品質事故対応訓練を定期的に実施して役職員の注意を喚起しております。

②農業政策等の事業環境に関する事項

  当社グループは、砂糖事業が売上高の80%近くを占めており、当該事業を取り巻く環境の変化が当社グループの業績に影響を及ぼし易い構造になっております。国内砂糖需要は少子化や消費者の嗜好及びライフスタイルの変化により漸減傾向が続いております。国内砂糖事業は、政府の農業政策と「砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律」等の法令に基づく制度の中で行っておりますが、今後の政府の農業政策の変更、EPA(経済連携協定)・FTA(自由貿易協定)の進捗により、海外から砂糖を使用した安価な製品が輸入される場合や、将来的に安価な精製糖が輸入される場合には、売上の減少や固定資産の減損リスクなど当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期は推測が困難ですが、当社グループでは不断の情報収集に努め、想定に応じた影響度の把握と対策を常に検討しております。一方、アジアでは砂糖需要の増加傾向が持続しており、シンガポールの子会社や、タイ及び中国の関連会社を通じて海外砂糖事業の拡大を図り、グローバルな事業展開を進めることで国内の農業政策の変化による影響を分散し、長期安定的な成長に向けた体制を構築してまいります。

③原料仕入価格並びに製品の販売価格の変動に関する事項

  当社グループは、主力である砂糖事業において、原料である粗糖が外貨建ての相場商品であり、為替変動リスクの他、生産国であるブラジルやタイの天候やサトウキビの生育状況などによって市況が大きく変動する場合があります。また、製品価格も競争や代替甘味料へのシフト等の市場環境の変化により変動することがあり、原料価格の変動を適切に製品価格に反映できない場合や原料価格の変動と製品価格改定の間にタイムラグが生じた場合に、原価率の上昇など当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期は推測が困難ですが、当社グループでは情報収集の強化や原料調達ルートの多様化を図っております。

④気象災害、生産停止等に関する事項

  当社グループは国内外各地にて事業活動を行っておりますが、台風や地震等の大規模自然災害等により予想を超える事態が発生し、製品生産や物流機能への支障が長期間にわたった場合、売上低下など、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。特に近年は大型台風や集中豪雨など風水害の発生リスクが増加していると認識しております。また、装置産業ゆえに設備故障による不測の生産停止等の事故発生リスクも有しております。当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期は推測が困難ですが、当社グループでは、予防の観点で設備の定期メンテナンスを実施し、千葉、神戸、福岡の三工場体制を維持する他、定期的なBCP訓練やその見直し、原材料調達先との連携や複数購買など、当該事象発生時において主要事業の早期復旧を図るための体制を整備しております。

海外事業投資に関する事項

  当社グループは新たな成長戦略の柱の一つとして、海外への事業投資を行っております。在外のグループ各社は各国の通貨、法律、会計、税務等制度に則って事業を行っており、各制度の急激な変更、廃止等により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、投資に伴って計上するのれん及び無形固定資産につきましては、将来の収益力を適切に反映しているものと判断していますが、対象となる事業において将来の収益力が低下した等により、減損が必要になった場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期は推測が困難ですが、重要な投資につきましては、社内の重要案件審議委員会にて十分な審議を行った上、経営会議を経て取締役会にて決定し、投資後の各社取締役会等の重要会議への出席や定期的な経営管理を通じて事業価値の向上に努めております。

⑥感染症拡大に関する事項

 当社グループは国内外で事業展開しておりますが、大規模な感染症の拡大により、食品需要が低迷し当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 また、原料の生産や輸送ならびに製品の流通や販売に携わる人員が不足し、調達や販売が困難となる可能性や、生産や販売に携わる人員への感染により事業活動に支障が生じる可能性があります。現在、当該リスクが社会全体で顕在化しておりますが、当社では原料調達ルートの多様化の他、感染症拡大状況に対する予防策として、従業員の手洗い消毒や検温、時差出勤や在宅勤務の推奨、マスクの配布やマスク着用の徹底などを実施しております。また、製品の生産や販売に携わっている者が感染した場合に備え、他の者でも対応できるよう準備を行い、製品供給と流通や販売に支障を来さぬよう対策を取っております。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

経営成績等の状況の概要

(1)当連結会計年度の経営成績の分析

 当連結会計年度のわが国経済は、上半期は雇用・所得環境の改善を背景に緩やかな回復が続いておりましたが、下半期からは自然災害や消費税増税による個人消費の低下が見られた他、新型コロナウイルス感染拡大による経済への悪影響が特に懸念されております。

 このような状況の中、当社グループでは砂糖をはじめとする安全、安心な食品素材を安定してお届けする社会的責任を果たすことを第一としながら既存事業の収益力強化を図り、また、中国においては家庭用小袋や各種加工糖の製造販売を目的とする新たな合弁会社「遼寧長和制糖有限公司」を昨年12月に設立するなど、引き続きアジア地域を基点とした海外市場の成長の取り込みを目指し、国内と海外双方で事業基盤の強化に取り組んでまいりました。

 なお、2020年3月25日開催の当社取締役会におきまして、国内砂糖事業の一層の基盤強化を目指し、① 2021年4月1日を効力発生予定日とする当社と大日本明治製糖㈱との経営統合に関する協議、ならびに② 当社、大日本明治製糖㈱及び日本甜菜製糖㈱が別途合意する日を効力発生日とする資本業務提携に関する協議の双方を開始することを決議いたしました。詳細は決議同日開示いたしました「三井製糖㈱と大日本明治製糖㈱との経営統合、及び日本甜菜製糖㈱との資本業務提携に向けた協議開始について」をご参照ください。

 

砂糖事業

 砂糖事業の原料価格に影響を及ぼす海外粗糖相場は、期初は1ポンド当たり12セント台でスタートした後、世界的な需給緩和観測の拡大を受け、一時10セント台まで下落しました。その後、翌年度の主要生産国の減産見通しが相次ぐと相場は上昇基調に転じ、12月末には13セント台、2020年2月には15セント後半に到達したものの、新型コロナウイルス感染拡大による世界経済の減速感からマクロ環境が一転し、複合的な要因が砂糖需給環境に間接的に影響したことで粗糖価格が急落、10セント台で期末を迎えました。一方、精製上白糖の国内市中相場につきましては、期を通じて187円~188円で推移しました。
 販売面では、梅雨寒や夏場の長雨の影響で飲料ユーザー向けの出荷が振るわなかった他、第4四半期の工場操業遅れの影響もあり、全体の販売量は前期を下回りました。消費の傾向として家庭用1㎏小袋の販売量が漸減する中、当社では保存に適したチャック付き小容量小袋製品のアイテム数を増やし、首都圏の量販店を中心に定番化を進めてまいりました。
 コスト面では、人手不足による物流コストが増加し、安定操業のための設備更新により減価償却費等の固定費が増加しましたが、適切な原料糖調達に努めた結果、原料費が改善し、営業利益は前期を上回りました。

 海外では、中国において合弁会社「遼寧長和制糖有限公司」を設立し、今秋より日本で培ってきた家庭用小袋や各種加工糖を中国市場へ展開するための準備を進めております。
 一方、連結子会社につきましては、生和糖業㈱においては天候不順により生産量が減少した他、北海道糖業㈱においては販売単価が低下し、販売量が減少したことにより減益となりましたが、前第3四半期末に連結子会社化したSIS’88 Pte Ltdが期を通じて概ね順調に推移したことで収益に貢献いたしました。
 以上の結果、売上高は92,145百万円(前連結会計年度比9.5%増)、営業利益は3,240百万円(同37.9%増)となり
ました。

 

期中の砂糖市況

 国内市中相場(日本経済新聞掲載、東京上白大袋1㎏当たり)

 期を通じて187円~188円で推移

 海外粗糖相場(ニューヨーク砂糖当限、1ポンド当たり)

  始値 12.53セント 高値 15.90セント 安値 10.42セント 終値 10.42セント

 

フードサイエンス事業

 フードサイエンス事業につきましては、パラチノース、パラチニットの販売はやや低調な動きとなりましたが、パラチノースの利益率が改善され、営業利益は前連結会計年度を上回りました。また、さとうきび抽出物はサニテーション用途への採用が増えるなど増収増益となりました。なお、7月には、パラチノースを配合したスローカロリーシュガーが食後血糖値の上昇を抑える機能により機能性表示食品として受理されたことから、消費者の機能認知に向けた積極的な広告宣伝を行ってまいりました。

 連結子会社につきましては、㈱タイショーテクノスは販売増や新工場の稼働で原価率が改善したことにより、増収増益となりました。ニュートリー㈱は当期に譲り受けた流動食事業の販売増加等により増収増益となりました。
 以上の結果、売上高は19,766百万円(前連結会計年度比2.9%増)、営業利益は679百万円(同44.3%増)となりました。

 

不動産事業

 不動産事業につきましては、岡山市で2018年11月に開始した物流倉庫の賃貸が通年で寄与しましたが、売上高・営業利益ともに前連結会計年度並となり、売上高1,942百万円(前連結会計年度比0.7%減)、営業利益928百万円(前連結会計年度比0.7%増)となりました。

 

 以上の結果、当連結会計年度の売上高は113,854百万円(前連結会計年度比8.1%増)、営業利益は4,848百万円(同29.5%増)となりました。

 

 営業外損益におきましては、フィンゴリモド「FTY720」の開発権及び販売権の許諾に基づく受取ロイヤリティーを1,340百万円計上いたしました。なお、当社の共同特許権者である田辺三菱製薬㈱とNovartis Pharma AG(以下、「ノバルティス社」)との間で仲裁手続きが進行中であることを受け、ノバルティス社が契約の有効性に関し疑義を提起している部分については、引き続き収益としての認識を行いませんでした。

 この他、タイ国関連会社における海外粗糖相場の低迷を受けた販売単価下落や販売量減少を主要因とする持分法投資損失の計上等により、経常利益は4,982百万円(同51.7%減)となり、また、北海道糖業㈱で発生した重油流出事故による環境対策費234百万円を特別損失に計上したことも影響し、親会社株主に帰属する当期純利益は2,422百万円(同64.7%減)となりました。

 なお、将来の成長に向けて取得してきた事業・資産に伴うのれん等の償却負担が増大している財務上の特徴を踏まえ、当社がキャッシュ創出力の把握のため期間損益と並行的に重視しているEBITDA指標(※1)は11,132百万円となり、当社グループの事業活動における健全性を引き続き維持しております。(4)キャッシュ・フローの状況の分析も併せてご参照ください。

※1 連結営業利益に連結減価償却費等を簡便的に加えた計算値を用いております。

 

(2)経営成績に重要な影響を与える要因についての分析

 当社グループは、主力の砂糖事業において、原料となる粗糖が相場商品であること、また製品価格も競争や市場環境等により変動する場合があり、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。このような事業環境下、当社では適切な原料糖調達と適正販売価格帯の維持に努めてまいりました。

 

(3)経営上の目標指標に関する分析

当社グループでは、ROE(自己資本当期純利益率)8~10%を経営目標達成のための客観的な指標の一つとしております。当連結会計年度のROEは2.9%となりました。また、将来の成長に向けて取得してきた事業・資産に伴うのれん等の償却負担が増大している財務上の特徴を踏まえ、キャッシュ創出力を表すEBITDA指標を参考として、当社の財務の実態把握に努めてまいります。当連結会計年度のEBITDAは11,132百万円となりました。

 配当金額につきましては、安定的かつ継続的な配当を基本とし、将来の成長に向けた事業展開と、経営基盤強化のための内部留保の充実にも配慮し、現金配当と機動的な資本政策を組み合わせた総還元性向50%を目途として、都度の経営環境を考慮しつつ株主還元策を決定してまいりました。

 

(4)キャッシュ・フローの状況の分析

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、営業活動で11,167百万円増加した一方で、投資活動と財務活動で10,571百万円減少したことにより、前連結会計年度末に対して588百万円増加し、15,414百万円となりました。
 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次の通りであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果得られた資金は11,167百万円(前連結会計年度は資金の増加12,081百万円)となりました。
 これは主に税金等調整前当期純利益4,678百万円、減価償却費5,191百万円等による資金の増加があった一方で、法人税等の支払3,119百万円等による資金の減少があったことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動による資金の減少は7,146百万円(前連結会計年度は資金の減少20,652百万円)となりました。
  これは主に工場設備等に係る有形固定資産の取得による支出6,919百万円等による資金の減少があったことによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動による資金の減少は3,425百万円(前連結会計年度は資金の減少1,050百万円)となりました。

 これは主に借入金の純増加11,032百万円等による資金の増加があった一方で、社債の償還による支出10,000百万円、自己株式の取得による支出2,305百万円、配当金の支払2,106百万円等による資金の減少があったことによるものであります。

資本の財源及び資金の流動性)

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原料糖の購入費用のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資等によるものであります。

 短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、社債及び金融機関からの長期借入を基本としております。

 なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は19,906百万円となっております。

 

生産、受注及び販売の実績

(1)生産実績

 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2019年4月1日

至 2020年3月31日)

前年同期比(%)

砂糖事業(百万円)

73,419

100.0

フードサイエンス事業(百万円)

9,581

100.7

合計(百万円)

83,001

100.1

  (注)1.金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

 2.上記金額には、消費税等は含まれておりません。

(2)仕入実績

 当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2019年4月1日

至 2020年3月31日)

前年同期比(%)

砂糖事業(百万円)

16,812

189.4

フードサイエンス事業(百万円)

4,384

95.3

合計(百万円)

21,196

157.3

   (注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

 2.上記金額には、消費税等は含まれておりません。

(3)受注実績

 当社グループ(当社及び連結子会社以下同じ)は原則として見込み生産を行っているため、該当事項はありません。

(4)販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2019年4月1日

至 2020年3月31日)

前年同期比(%)

砂糖事業(百万円)

92,145

109.5

フードサイエンス事業(百万円)

19,766

102.9

不動産事業(百万円)

1,942

99.3

合計(百万円)

113,854

108.1

  (注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

 2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次の通りであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2018年4月1日

至 2019年3月31日)

当連結会計年度

(自 2019年4月1日

至 2020年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

三井物産㈱

49,578

47.1

49,041

43.1

双日㈱

10,359

9.8

10,209

9.0

 3.上記金額には、消費税等は含まれておりません。

財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

(1)重要な会計方針及び見積り

  当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては、合理的な判断に基づき、会計上の見積りを行っております。詳細につきましては、「第5 [経理の状況] 1 [連結財務諸表等] (1)[連結財務諸表] [注記事項] 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。

(2)財政状態

  当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末比1,837百万円増加し141,705百万円となりました。連結貸借対照表の主要項目ごとの主な増減要因等は、次の通りであります。
①流動資産
  流動資産は、前連結会計年度末比3,297百万円増加し57,156百万円となりました。これは主として、商品及び製品の増加3,161百万円、原材料及び貯蔵品の増加493百万円等があった一方で、受取手形及び売掛金の減少581百万円等があったことによるものであります。
②固定資産
  固定資産は、前連結会計年度末比1,459百万円減少し84,548百万円となりました。これは主として、機械装置及び運搬具の増加773百万円等があった一方で、のれんの減少748百万円、投資有価証券の減少1,373百万円等があったことによるものであります。
③負債
  負債は、前連結会計年度末比4,504百万円増加し49,309百万円となりました。これは主として、借入金の増加11,033百万円、その他固定負債の増加5,854百万円等があった一方で、1年内償還予定の社債の減少10,000百万円、繰延税金負債の減少1,117百万円等があったことによるものであります。
④純資産
  純資産は、前連結会計年度末比2,667百万円減少し92,395百万円となりました。これは主として、親会社株主に帰属する当期純利益2,422百万円、剰余金の配当2,111百万円、自己株式の取得2,305百万円等があったことによるものであります。

(3)経営成績

  当連結会計年度における経営成績の概要につきましては、「経営成績等の状況の概要(1)当連結会計年度の経営成績の分析」に記載しております。なお、連結損益計算書の主要項目ごとの主な増減要因等は、次の通りであります。
①売上高
  売上高は、前連結会計年度比8,579百万円増加し113,854百万円となりました。これは主として、砂糖事業の売上高の増加8,027百万円、フードサイエンス事業の売上高の増加565百万円等があったことによるものであります。
②営業利益
  営業利益は、前連結会計年度比1,105百万円増加し4,848百万円となりました。これは主として、砂糖事業において相場下落に伴う原料費のダウン等があったことによるものであります。
③経常利益
  経常利益は、前連結会計年度比5,331百万円減少し4,982百万円となりました。これは主として、受取ロイヤリティーの減少6,122百万円等があったことによるものであります。

④親会社株主に帰属する当期純利益

 当連結会計年度は経常利益の減少等を主因として、税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度比5,790百万円減少し4,678百万円となりました。
  法人税、住民税及び事業税、法人税等調整額及び非支配株主に帰属する当期純利益を控除した親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度比4,439百万円減少し2,422百万円となりました。

 

  (4)キャッシュ・フロー

 キャッシュ・フローの状況につきましては、「経営成績等の状況の概要(4)キャッシュ・フローの状況の分析」に記載しております。

 

4【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

5【研究開発活動】

 当社グループの研究開発活動につきましては、砂糖事業・フードサイエンス事業を中心とする当社事業の更なる拡大発展と、これら事業を核とする新規領域への展開を引き続き実施いたしました。なお、当連結会計年度にかかる研究開発費用の総額は1,093百万円であります。

主な内容は、以下の通りであります。

 

砂糖事業

砂糖事業では、加工糖、甘蔗糖、またはてん菜糖の連結子会社・関連会社を活用した砂糖新商品とその用途開発に取り組んでおります。また、タイ国製糖事業関連では、調査研究で解明した東北タイのさとうきび少収原因に基づき、栽培改善試験や農業機械改良試験を引き続き実施しました。

 

フードサイエンス事業

フードサイエンス事業では、主にパラチノースとさとうきび抽出物に関する取り組みを行っております。

パラチノースは、血糖値上昇抑制等の効果から生活習慣病予防の有望な素材と位置付け、研究開発及びパブリシティー活動を積極的に推進しており、6月にはパラチノースを使用した製品「スローカロリーシュガー」が糖類第1号の機能性表示食品として消費者庁に受理されました。またスポーツ分野では持続的なエネルギー供給源としての利用方法の訴求を積極的に展開しました。さとうきび抽出物に関しては、呈味改善、環境消臭、または飼料用途の製品の用途開発や機能性研究を進めております。新規領域では、免疫調節や抗ストレスに着目した機能性開発を産学共同で取り組んでおります。一方、神戸のR&Dセンターでは弊社でパラチノースの新製法として確立した乾燥技術を応用し、新たな製品開発を進めています。

㈱タイショーテクノスにおいては、食品添加物である着色料やゲル化剤、除菌剤・防腐剤について、ニュートリー㈱においては栄養療法食品・嚥下障害対応食品についてそれぞれ製剤開発・商品開発に取り組んでおります。北海道糖業㈱においては、てん菜の生産性向上を目的として農業技術の試験研究を行っております。また、グループ各社の研究開発連携を進めており、各社製品を活用した商品開発を進めております。

 

その他

新たな事業領域では、引き続きサトウキビの搾汁後に残る固形物(バガス)の高度利用に取り組んでおり、NEDO委託事業としてタイ国で実施しているバガスを原料としたセルロース糖製造とポリフェノール製造についての実証プラントによる試験を実施、また生産物であるポリフェノールの機能性、安全性の評価を行っております。

また、これまで蓄積してきた技術・知見を、特許、ノウハウ等知的財産権としてその有効利用を図っております。