文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
我が社は、信用を重んじ確実を旨とし、事業を通じて社会の進運及び民生の向上に貢献することを期する。
当社グループは、社会・環境の急激な変化にも適応できるよう、これまで以上に経営基盤を強化するとともに、社会課題の変化を成長機会に結びつけることで将来につながるサステナブルな経営を推進するべく、2021年度から3か年の中期経営計画に取り組んでまいりました。2023年度は、2022年度に上方修正しました数値目標(売上収益3,000億円、事業利益300億円、ROE10%)には届きませんでしたが、過去最高益の事業利益274億58百万円を達成しました。
これまでの3年間の総括を踏まえ、2030年ありたい姿からのバックキャストにより、2024年度から2026年度の新たな中期経営計画を策定するとともに、経営の重要課題(マテリアリティ)についても見直しを行いました。その骨子は、次のとおりであります。
新たな中期経営計画の初年度である2024年度における事業分野別の取り組みは次のとおりであります。全社取り組みの詳細については、「第2 事業の状況 2.サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。
(半導体関連材料)
回復、成長が見込まれる半導体市況を見据え、中国および台湾の新生産ライン増設により封止材のグローバル供給体制を強化して拡販を進め、グローバルシェアのさらなる拡大を目指します。研究開発においては、HPC(ハイパフォーマンス・コンピューティング)やパワーデバイスをはじめとする次世代半導体向けの材料開発や環境対応の推進を目的に、社外協業・共創の場となるオープンラボの拡充を図ってまいります。モビリティ分野におきましては、従来の戦略3製品(モーター磁石固定用封止材、ECU/TCU一括封止材、パワーモジュール用封止材)にステーター絶縁層・コイル封止材を加え、モビリティ戦略3+1製品と位置づけ、新生産拠点の本格稼働やオープンラボの拡充を通じてグローバル展開を加速します。
(高機能プラスチック)
グローバル視点での生産拠点の最適化、ならびにスマートファクトリー化推進による生産性向上等により、既存領域の製品の収益力強化を図るとともに、電動車(バッテリー、e-Axle、各種電動パーツ)、半導体関連(レジスト、パワーモジュール、センサー)、航空機(内装材)等の強化領域向けの高付加価値製品へ製品ポートフォリオ改革を推進します。また、循環型社会へ適応すべく、バイオマス製品の拡大に加え、熱硬化性樹脂のリサイクル技術の開発を推進し、早期の社会実装を目指すとともに、中長期的には他製品への応用展開につなげてまいります。
(クオリティオブライフ関連製品)
・医療機器事業およびバイオ事業
営業効率の向上や製品ラインナップの拡充など、引き続き、SBカワスミ株式会社との医療機器事業の統合によるグループシナジーの最大化を図ってまいります。強化領域(血管内、消化器、内視鏡領域)の製品ラインナップ拡充とあわせ、グローバル戦略として、主力製品の低侵襲医療機器、血液バッグ等については、それぞれ欧米、アジア地域への拡販を加速します。また、2024年2月に出資しました、医療機器に特化したベンチャーキャピタルファンドを活用し、スタートアップを含めた外部との協業機会の増加、新規事業の創出にも積極的に取り組んでまいります。バイオ事業においては、事業規模拡大を目指し、主力製品に加え、細胞・遺伝子治療支援製品の拡販とともに、新製品と位置づけている創薬支援用生体模倣システムの実用化を目指し、事業開発を推進してまいります。
・フィルム・シート事業
半導体関連製品のアジアへの展開強化、モノマテリアル医薬品包装製品の欧州への展開等、高シェア製品のグローバル展開を進めます。また、食品ロス削減への貢献が期待される食品包装用スキンパックの市場認知度の向上や、新たな環境対応製品の市場投入にも取り組みます。スマートファクトリー化による生産性向上を継続し、収益力の強化も図ってまいります。
・産業機能性材料事業および防水関連事業
高付加価値の機能材製品であるアイウェア、車載向け光学制御製品、および電動車向け絶縁シートを軸とした高収益ビジネスモデルへの転換とあわせ、グローバル展開による拡販を推進します。防水関連では、急増するリフォーム物件の取込み、太陽光発電向け防水部材の拡販等により、住宅領域での事業強化に取り組んでまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。
近年、環境側面において、プラスチックに対するネガティブなイメージが抱かれています。しかし、安全や安心、快適性を追求しながら、プラスチックを通じてしか発現できない機能をもって社会課題を解決するという役割は、これからも重要であり続けると考えております。
当社グループの基本方針(経営理念)は『我が社は、信用を重んじ確実を旨とし、事業を通じて社会の進運及び民生の向上に貢献することを期する。』です。本基本方針に基づき、「パーパス『プラスチックの可能性を広げることで、持続可能な社会を実現する』に向かって事業活動を行うことで、持続可能な企業価値の向上を目指します。」をサステナビリティ推進方針として新たに掲げ、サステナビリティを重視する取り組みをさらに強化してまいります。プラスチックの多様な機能を追求し、その可能性を広げながら、SDGsに則した新製品・新サービスを継続的に社会実装することにより、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
2030年ビジョン「お客様との価値創造を通じて『未来に夢を提供する会社』」の実現を目指し、持続的な企業価値の向上と経営基盤の一層の強化に取り組むため、経営の重要課題(マテリアリティ)の見直しを行いました。
「環境・社会価値の創造」に関しては、SDGs貢献と気候変動対応に取り組みます。これらを推進するため、価値創造のアクセルとして、「顧客との共創」、将来の利益創出を目指して新たな価値を生み出す「イノベーション」、ビジネスモデル改革を促進する「DX」、ならびに従業員の多様性の推進、自律性の強化、組織力の向上を実現する「人的資本(人材の活躍)経営」に取り組みます。
2024年2月1日に「住友ベークライトグループ人権方針」を制定し、国際的基準である国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」等に基づく人権デュー・ディリジェンス(人権DD)に着手しました。人権DDワーキンググループ(リーダー:人事本部長、副リーダー:調達本部長・総務本部長)をリスクマネジメント委員会内に設置し、当社グループの事業活動が人権に与える負の影響を特定・評価し、重要な課題を優先的に対処するための作業を進めております。
当社グループのサステナビリティ関連のリスクと機会を監視、および管理するためのガバナンスの過程、統制および手続を下図のように構築しています。この考え方は取締役会にて決議した内部統制システム構築の基本方針にも織り込まれています。
2023年4月にサステナビリティ推進部を設置し、サステナビリティ推進委員会の運営体制を強化しました。
サステナビリティ推進委員会は、経営の重要課題(マテリアリティ)やSDGs貢献製品の認定、各委員会の提案事項等、当社グループのサステナビリティにかかる戦略の策定等を行い、取締役会へ報告しています。
取締役会はサステナビリティ全般に関するリスクと機会を監視および管理する責任と権限を持っています。サステナビリティ推進委員会で協議および決定された事項については、取締役会で審議および監督が行われます。

サステナビリティ関連のリスクおよび機会の識別、評価、ならびに管理は、当社グループのリスクマネジメントプロセスに準拠し、実施しています。詳細については
2015年9月の国連サミットで採択された世界共通の目標であるSDGs(持続可能な開発目標)は、社会ニーズそのものであり、当社グループの基本方針にも通じるものであると考えております。当社グループでは、SDGsの目標3、7、8、9、12、13、14を重点的に取り組むべきSDGs領域「6+1」として定めるとともに、SDGsに寄与する製品を「SDGs貢献製品」と認定し、その売上収益比率を増加させる取組をSDGs推進委員会で行っております。
気候変動対応
当社グループは2021年にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明し、再生可能エネルギー由来の電力への切り替えやSDGs貢献製品比率アップに取り組むとともに、同年、全社横断のTCFDタスクチームをリスクマネジメント委員会の中に編成し、TCFD提言に基づく情報開示に向けた活動を推進しています。同タスクチームを中心に、2040年を想定した「気候関連シナリオ分析」を実施し、気候変動に伴う潜在的なリスクと機会を抽出しました。その中で、比較的財務影響が大きくなるであろうと想定されるリスクと機会を「シナリオ分析表」のとおり特定しました。
なお、2030年と2050年の温室効果ガス(GHG)排出削減目標は、カーボンプライスの引き上げ、GHG排出規制の強化、化石燃料価格の変動等(これらは1.5/2℃または4℃シナリオにおいてリスクとして抽出)への対応策として取り組んでいます。それら取組の前倒しを図り、長期的な移行リスクを短・中期の事業機会へと転換し、売上拡大を図ります。
2023年度に引き続き、新中期経営計画の初年度となる2024年度もリスクマネジメント委員会が中心となって(本シナリオ分析結果からのバックキャストによる)短期的な施策の具体化を図り、社内関係部門へ展開、スピード感をもって実行・推進しています。
◆シナリオ分析表
<1.5℃/2℃シナリオ>
<4℃シナリオ>
当社グループは、2030年のありたい姿の実現に向けてDXを全社横断で推進しております。研究開発では、MI(マテリアルズ・インフォマティクス)*の活用による研究・開発能力増強に向けて、デジタルスキルを有する人材の育成に力を入れております。さらに、人に頼らない生産システムの進化、業務プロセスや営業活動にデジタル技術・データを活用する取り組みなど、人生産性向上・働き方改革を推進する取り組みを行っております。これにより、DXを通じてビジネスモデルの変革を実現し、新たな顧客価値の創出に貢献してまいります。
特にデジタルスキルを有する人材の育成については、2023年度に教育講座の増設、褒賞制度も含めたデータサイエンティスト社内認定制度を導入しました。これらを修了したデジタル人材の活躍により、データ科学技術を取り入れた研究・開発業務の効率化や省コスト化、製品機能の向上など、多くの成果が生まれています。
*MI(マテリアルズ・インフォマティクス)とは、データ科学と物質・材料に関するデータとを駆使して新規材料の発見や高機能化など材料科学の諸問題を解明するための科学技術的手法。

当社グループは、経営の重要課題(マテリアリティ)のそれぞれについて、指標を設定しています。この指標を元に進捗状況の管理と開示を進めてまいります。
自動車の電動化に欠かせないモーター磁石固定用材料、化石燃料を使わない植物由来のフェノール樹脂、フードロス削減にも寄与するスキンパック用フィルム、環境に配慮したバイオマス樹脂を用いた医薬品包装用シートなど、新商品・新技術の中からもSDGs貢献製品が次々と生み出されており、SDGs貢献製品売上収益比率を2023年度に50%とする目標は達成することができました。2030年度の目標である70%の達成に向けて、2026年度の目標を新たに65%以上に設定し、引き続き売上収益比率向上を推進してまいります。
気候変動対応
化学産業界の一員として、SDGsの中でも気候変動への対応は特に重要であると考えております。2020年3月に策定した「環境ビジョン2050(ネットゼロ)」をもとに、国内すべての工場・研究所と欧州のグループ会社で再生可能エネルギー由来の電力に切り替え、さらに太陽光発電パネルの設置を拡大することで、日本政府目標である2030年度温室効果ガス(GHG)排出量46%削減(2013年度比)を、2023年度に前倒しで達成する見込みとなりました。今後のGHG排出量削減の取組を加速させるため、1.5℃基準に適合した新目標を設定するとともに、サプライチェーン全体でのGHG排出量削減(Scope3)にも取り組んでまいります。

住友ベークライトグループGHG排出量および削減計画
DXに関する取り組み
DXの取組における、データサイエンティストの育成に関わる指標および目標は下表のとおりです。
データサイエンティスト認定者、データサイエンススキル保有者ともに2023年度の目標値を達成しました。
その他、指標および目標を含め、経営の重要課題(マテリアリティ)に関する詳細な情報については2024年9月に公表予定の
当社グループは、従業員の多様性の推進、自律性の強化、組織力の向上を実現する「人的資本(人材の活躍)経営」に取り組みます。
当社は、経営として取り組む重要課題の一つとして「DE&I」(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)を掲げ、2022年10月に策定した「DE&Iの実現に向けた方針」に基づき、多様な人材が個性や能力を発揮し、一人ひとりの状況に応じた公正な機会が提供され、相互の理解と尊重のもとで生き生きと活躍できる会社の実現に向けて取り組んでおります。
まずは、女性の活躍推進を第一歩として、女性社員が自身のライフイベントキャリアを両立できるよう、女性社員が次の3点を実現できることを目標に掲げて各種施策に取り組んでおります。
・安定的、長期的に働き続けることができる
・高いパフォーマンスを発揮することができる
・高い職位を目指すことができる
また、2023年4月にDE&I推進室を設置し、女性活躍をはじめとして、シニア層の活躍、介護者の支援、外国人の採用、障がい者雇用の拡大等の推進に取り組んでおります。
2023年度は女性活躍の推進の一環として、「女性活躍ワーキンググループ」を発足させ、日本国内の全ての事業所の女性従業員を対象とした座談会を開催しました。女性社員同士がそれぞれの考え方や意見を共有し、相談できる関係の構築を促すことに加えて、参加者の声をもとに、制度の改定・啓発活動の強化など、女性の活躍に繋がる有効性の高い施策を実行しています。
<人材教育(SBスクール)>
当社では人材育成に関わる教育研修や仕組みの体系を“SBスクール”と銘打ち、当社グループ事業の持続的成長に必要な多くのことを学び、体験する場を提供しております。事業活動に関わる全部門・全階層に対して、必要な教育プログラムを企画し、体系的かつ計画的に実施することにより、事業に有為な人材の育成を行い、当社グループ事業の持続的成長と企業価値の向上を目指しております。
“SBスクール”は、従業員一人ひとりの成長こそが、事業の持続的成長の源泉になると考え、在籍するすべての従業員を受講対象としており、在学期間は従業員が当社に入社してから退職するまでの全ての期間です。
当社では、2024年度を初年度とする新たな中期経営計画に基づき、自律性の強化を目的とした360°評価を用いたリーダーシップを高める教育の幅広い層への展開と、個人及び組織のパフォーマンスを向上させること(組織力の向上)を目的としたマネジメント教育の充実に重点的に取り組んでおります。
「戦略」において記載した多様な人材の確保と活躍に関する方針および社内環境整備に関する方針に係る指標について、当社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取組が行われているものの、必ずしも連結グループに属する全ての会社において行われているわけではないため、連結グループにおける記載は困難であります。このため、次の指標に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。
<連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のデータ>
これまでも性差なく管理職への登用を行ってきましたが、積極的な女性採用と離職の防止などの施策に加え、DE&I活動を通じた各種施策により、同比率の向上を目指していきます。
●管理社員における女性比率の推移

(注) 1 執行役員を除く管理社員を対象としています。
2 管理社員の資格を有した出向者を含みます。
3 比率は各年度末の値です。
4 提出会社の数値です。
当社では育児目的休暇として「妻の出産休暇」を設けており、出産日を基準に3日前から2週間後までの間に断続的に5日(有給)の休暇を取得することを可能としています。また、2022年10月の法改正により新たに創設された「出生時育児休業」については、男性従業員の育児休業取得の妨げとならないよう、取得期間の初めの5日を有給(100%)としております。その結果、妻の出産休暇との合計で10労働日について有給での休暇取得が可能となっております。
これらの育児に関する制度を周知するとともに、男性従業員が育児に参加するために柔軟に休暇が取得できる職場環境を整備し男性育児休業取得率は前年比で大幅に向上しました。(2022年度25.9%→2023年度65.5%)今後も更なる向上に取り組んでまいります。
・男女の賃金の差異の低減
男性従業員の支払い賃金を100とした場合の女性従業員の賃金割合は、全労働者69.1%、正規雇用労働者69.7%、パート・有期労働者75.6%となります。
当社の賃金(例月の基準内賃金、諸手当、賞与)において、性別により支給条件が異なる賃金項目はありませんが、正規雇用労働者については管理社員の平均勤続年数が男性と女性で差があること(男性は女性の1.4倍)、非正規労働者については、再雇用嘱託社員の賃金水準が採用区分で異なっており現時点で定年を迎えている賃金水準の高い本社採用社員のほとんどが男性であることから賃金差異が生じております。これらの要因に対して、積極的な女性採用と離職の防止、管理社員への登用拡大等により、男女の賃金差異の低減に取り組んでまいります。
当社は法令に定めるとおり障がい者を雇用していくことを、企業の社会的な使命の一つと捉えております。障がいがありながら仕事をしていくために必要な配慮を行いつつ、ほかの従業員と同様に安全・安心な職場で、その能力を継続的に発揮・育成できる環境づくりに努めております。
また、障がいのある学生をインターンシップとして受け入れるなど、個人にあった仕事や働き方を見つける機会を提供するとともに、継続的な採用活動に取り組んでおります。
●最近5年間の障がい者雇用率推移

(注)各年度の障がい者雇用率は、各月1日時点の障がい者数の合計値を、同時点の常用雇用者数の合計値で除して算定しています。
当社では「戦略」において記載した人材育成の充実化について、「360°評価に基づく教育の受講者数」「マネジメント教育受講者数」の指標を用いております。当該指標に関する目標および実績は次のとおりであります。
(1) 当社グループのリスクマネジメント体制
当社グループのリスクマネジメント体制は次のとおりであります。
●リスクマネジメント体制図

なお、上記のほか、当社グループは、「第4 提出会社の状況 4.コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載のとおりの企業統治体制を整え、リスクマネジメントを含む内部統制システムを整備・運用しております。
当社グループにおける主要リスクの選定・承認は年1回実施しており、そのプロセスは次のとおりであります。
・リスクマネジメント委員会は、各事業部門・個別リスク主管部の統轄役員から「主要リスク抽出質問票」(リスクの内容と当該リスクが顕在化した場合の影響、発生可能性、影響度、現状とっている主な対応について、事業部門・個別リスク主管部としての評価を記入)の回答を収集。また、社長からのヒアリングを実施。
・「主要リスク抽出質問票」で抽出されたリスクについて、影響度と発生可能性をもとに算出したリスク指数が高いものを主要リスク候補として、リスクマネジメント委員会にてリスクマップの作成、主要リスクの選定・承認、主要リスクに対する次年度の対応計画への反映を実施。
・サステナビリティ推進委員会は、選定された主要リスクおよび主要リスクに対する対応計画を承認し、取締役会に報告。
●主要リスクの選定・承認フロー

(2) 主要リスクの内容と顕在化した際の影響、主要リスクへの対応策
本報告書に記載した当社グループの事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある主要リスクには、下記のものがあります。ただし、これらは当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、記載された事項以外の予見しがたいリスクも存在します。また、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項は、「第2 事業の状況」の他の項目、「第5 経理の状況」の各注記、その他においても個々に記載しておりますので、併せてご参照ください。文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
なお、「第2 事業の状況 1. 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の経営の重要課題(マテリアリティ)と主要リスクとの対比は次のとおりであります。
当期の経済環境は、新型コロナウイルス感染症の収束により経済活動は回復に向かいましたが、ウクライナ情勢の長期化や中東情勢の悪化による物価上昇や、主要国の金利引き上げにより回復は鈍化しました。米国では個人消費が堅調に推移しましたが、金融の引き締めの継続により企業の生産活動は回復には至りませんでした。欧州では、インフレによる個人消費の冷え込みにより、景気の回復が停滞しました。中国では輸出入に回復の兆しが見えるものの、不動産不況を背景とする景気悪化が継続し、内需の回復には至りませんでした。為替相場は第3四半期末に一時的に円高・ドル安方向に変動しましたが足元では反転し、近年にない円安・ドル高の水準になっております。
このような情勢のもと、当社グループの売上収益は、円安為替評価による海外売上の増加に加え、原料価格上昇に対応して製品価格改定を行った結果、前期と比べ0.8%増(以下の比率はこれに同じ)の2,872億67百万円となりました。事業利益は、販売品種の高付加価値品へのシフトや価格改定などの収益構造の改善により、7.9%増の274億58百万円、営業利益は、9.6%増の272億円となりました。親会社の所有者に帰属する当期利益は、受取利息の増加、為替差益等により7.6%増の218億31百万円となり、いずれも過去最高益となりました。
ROEにつきましては、分子である親会社の所有者に帰属する当期利益が前期と比べ増加したものの、為替変動の影響により分母である親会社の所有者に帰属する持分の増加額が上回った結果、0.6%減の7.8%となりました。
(セグメント別販売状況)
① 半導体関連材料
[売上収益 82,917百万円(前期比 4.2%増)、事業利益 16,139百万円(同 5.3%増)]
半導体封止用エポキシ樹脂成形材料は、パソコン、スマートフォンなどの需要が世界的に低迷していることから、情報通信機器向けの販売の苦戦が続いておりますが、モビリティ用途ではEV向けの需要が鈍化したものの、HV向けの販売増により販売数量・売上収益は前期を上回りました。
感光性ウェハーコート用液状樹脂は、DRAM向けに回復の兆しが見えてきた一方、昨年の秋から在庫調整の局面に入り、売上収益は前期を下回りました。
半導体用ダイボンディングペーストは、LED向けの販売増加等、中国での拡販活動の成果が出始めたものの、台湾などの情報通信機器向けの販売不調により売上収益は前期を下回りました。
半導体パッケージ基板材料「LαZ®」シリーズは、中国製スマートフォン向けの販売が順調に伸び、売上収益は前期を上回りました。
② 高機能プラスチック
[売上収益 101,401百万円(前期比 0.9%減)、事業利益 5,302百万円(同 14.3%増)]
工業用フェノール樹脂およびフェノール樹脂成形材料は、国内および中国、アジア地区では自動車や電機部品向けの需要が堅調に推移しましたが、北米の自動車タイヤ用や欧州の建築断熱材用は十分な水準まで回復しておらず、売上収益は前期比では減少しました。
銅張積層板はエアコンを含む家電の需要が低迷しており、売上収益は大幅に減少しました。
航空機内装部品は、新型コロナウイルス感染症の収束による旅客輸送の増加にともない、航空機の生産機数の増加による旺盛な需要が期初から継続し、売上収益は大幅に増加しました。
フェノール樹脂成形品は、中国での自動車用部品の拡販が好調なことから販売が増加しました。
③ クオリティオブライフ関連製品
[売上収益 102,186百万円(前期比 0.1%減)、事業利益 9,723百万円(同 5.6%増)]
医療機器製品は、国内・アジア・米国向けの血液関連製品の販売が大幅に増加し、透析用ろ過装置も堅調に推移したことで売上収益は前期を上回りました。
バイオ関連製品は、新型コロナウイルス感染症の流行による需要が落ち着き、売上収益は減少しました。
ビニル樹脂シートおよび複合シートは、医薬品包装用途はジェネリック医薬品の在庫拡充を背景に好調を継続しておりますが、食品包装用途はカット野菜での需要が落ち込み、産業用途は中国を中心とした需要が足元は回復基調にあるものの、十分な水準まで回復しておらず売上収益は前期比で減少しました。
ポリカーボネート樹脂板および塩化ビニル樹脂板は、サングラス用偏光板や車載用ヘッドアップディスプレイなどの高付加価値製品で販売数量を伸ばした一方、タブレットPC、電源アダプター向けの絶縁材や主力の国内建材用途、成型用産業用途の販売数量減により、売上収益は前期比で減少しました。
防水関連製品は、集合住宅向けが好調に推移し、売上収益は増加しました。
①資産の部
資産合計は、前連結会計年度末に比べ627億5百万円増加し、4,411億62百万円となりました。
主な増減は、現金及び現金同等物、有形固定資産およびその他の金融資産の増加であります。
②負債の部
負債合計は、前連結会計年度末に比べ166億69百万円増加し、1,374億35百万円となりました。
主な増減は、コマーシャル・ペーパーの発行による増加であります。
③資本の部
資本合計は、前連結会計年度末に比べ460億35百万円増加し、3,037億27百万円となりました。
主な増減は、当期利益の計上および為替変動影響による増加と、配当金の支払および自己株式の取得による減少であります。
当連結会計年度末の現金および現金同等物(以下、資金)は、前連結会計年度末に比べ220億16百万円増加し、1,216億35百万円となりました。
①営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動により得られた資金は402億17百万円となりました。
これは主に、税引前利益および減価償却費による収入と、法人所得税の支払による支出の結果であります。前期と比べると165億99百万円の収入の増加となりました。
②投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動に用いた資金は211億18百万円となりました。
これは主に、有形固定資産の取得による支出の結果であります。前期と比べると54億70百万円の支出の増加となりました。
③財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動に用いた資金は62億76百万円となりました。
これは主に、コマーシャル・ペーパーの発行による収入と、配当金の支払および自己株式の取得による支出の結果であります。前期と比べると166億78百万円の支出の減少となりました。
①財務戦略の基本的な考え方
当社グループは、健全かつ安定した財務基盤の維持を前提に、資本効率の向上を図り、事業活動の成長と拡大のための投資を継続的に行い、安定かつ継続的に株主還元を行うことを財務戦略の基本方針としております。
財務基盤に関しては、親会社所有者帰属持分比率は65%を超え、ネットキャッシュは650億円超のプラスという状況で、安定した水準を維持しております。引き続き財務体質の改善、信用力向上のための取組みに努めてまいります。また、資産効率に関しては、以下の施策をこれまで以上に強力に推進してまいります。
・収益性向上による営業キャッシュ・フロー確保のため、低採算・不採算事業の撲滅改善、製造原価の低減に加え、開発効率の向上や間接業務の効率化等の費用削減。
・資産のスリム化のため、売掛債権の回収促進、棚卸資産の適正水準や滞留の管理強化、政策保有株式の適宜見直し、不要・遊休資産の処分・売却の徹底、グローバルおよびリージョナルファイナンスによるグループ内資金の効率的な活用。
②資金需要
当社グループの資金需要の主なものは、生産効率および品質の維持向上、生産能力増強を目的とした設備投資等の長期の資金需要と、製品製造のための原材料および部品の購入費、製造経費、販売費及び一般管理費等の運転資金需要のほか、M&A、DX等の戦略的投資のための需要があります。
③資金調達
当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、自己資金および外部資金を有効に活用しております。
資金調達にあたっては、様々な手段の中から、その時々の市場環境も考慮したうえで、当社グループにとって最適かつ有利な手段を機動的に選択しております。
当社グループは、主要な取引先金融機関との間で長年にわたり良好な関係を維持しており、長期借入金、短期借入金、シンジケートローン等による資金調達のほか、緊急時の手元流動性と資金調達枠の確保を目的として、取引先金融機関との間に短期借入金枠およびコミットメントラインを設定しております。さらに金融市場からの安定的な資金調達能力の維持向上に努め、国内2社の格付機関から格付けを取得し、コマーシャル・ペーパーの発行による資金調達も行っております。
これらにより運転資金および設備資金に加え、戦略的な投資に対しても十分な流動性が確保でき、機動的かつ円滑な資金調達が可能となっております。
(5) 生産、受注および販売の実績
①生産実績および受注実績
当社グループの生産品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産を行わないため、セグメントごとに生産規模および受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。
このため生産の実績については、「第2 事業の状況 4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (セグメント別販売状況)」に関連付けて示しております。
②販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。
当社グループは、売上収益、事業利益およびROEを業績目標の指標に設定しております。
中期経営計画で掲げた最終年度(2026年度)の数値目標は「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境および対処すべき課題」および「第2 事業の状況 2.サステナビリティに関する考え方及び取組」に、各指標の当連結会計年度における達成状況については「(1) 当期の経営成績の状況」に記載のとおりであります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積りおよび見積りを伴う判断」に記載のとおりであります。
該当事項はありません。
当社は、経営方針の一つとして、持続可能な世界を実現するために2015年に国連で採択されたSDGsについて、全社規模で必要な施策を推進しております。当連結会計年度の研究・開発においても、社会課題解決につながる顕在ニーズのみならず潜在ニーズにも応えていくために、3つの創生領域として掲げる「高集積デバイス」、「自動車・航空機」、「ヘルスケア」領域において、SDGsを意識したイノベーションによる未来価値(環境価値、社会価値、経済価値)・競争優位性の高い革新的製品および技術の開発を推進しております。また、3R(リデュース、リユース、リサイクル)活動やカーボンニュートラルを目指した環境課題に研究・開発段階から取り組むと共に、LCA(ライフサイクルアセスメント)による環境影響評価ができる人材育成を推進しております。
当社グループは、中長期的視野に立ち新製品およびそれに必要な要素技術の研究を担当する先端材料研究所およびバイオ・サイエンス研究所、生産技術開発を担当するコーポレートエンジニアリングセンター、全社のデータ駆動型の研究・開発を推進するMI推進プロジェクト、ならびに新製品の商品化および現製品の改良研究を担当する各製品別5研究所(情報通信材料研究所、HPP技術開発研究所、フィルム・シート研究所、産業機能性材料研究所、およびSBカワスミ株式会社の殿町メディカル研究所)、さらに放熱材料事業開発部、光電気複合インターポーザ事業開発推進部、次世代電動アクスル事業化推進プロジェクトチーム、光回路材料開発プロジェクトチーム、電子調光デバイス開発推進プロジェクトチームという体制で、当社のコア事業分野である①半導体関連材料、②高機能プラスチック、③クオリティオブライフ関連製品における各マーケット動向に即座に対応すべく、研究・開発活動を進めております。
今期MI推進プロジェクトでは、従来では難しかった放熱性向上のための新規ポリマー構造を見出すことができました。また、複数特性を両立する処方の迅速な発見(従来比30%短縮)等の成果をあげました。さらにデータサイエンティストの養成と社内認定を行い、実践的なスキルと経験を有する人材を延べ45名認定しました。今後も情報科学技術の活用と実践による、さらなる価値創出およびデータ活用能力の向上を目指していきます。
また、コーポレート部門は海外研究・開発拠点として米国以外にもベルギーに技術駐在員を置くことにより一層ワールドワイドでの情報収集能力を強化しました。情報通信材料関係は中国、台湾、シンガポール、米国、ベルギーにオープンラボ機能を持った研究・開発拠点があります。高機能プラスチック関係は米国、カナダ、ベルギー、スペイン、中国、インドネシアに研究・開発拠点があり、米国とベルギーにはオープンラボ機能を併設しています。国内組織と緊密な連携をとりながらグローバル市場のニーズに対応しております。
さらに今期は2022年度に新規事業・研究開発テーマを継続的かつ着実に創出できる組織を目指して導入したイノベーション・マネジメントシステムを活用・推進しました。これにより、全社の売上に貢献する新プロジェクトになり得る大型テーマの発掘を目指します。
当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費は
各セグメント別の研究・開発活動は次のとおりであります。
①半導体関連材料
半導体封止用エポキシ樹脂成形材料、半導体用液状樹脂、半導体用感光性樹脂およびパッケージ基板用材料の開発に重点を置いております。当連結会計年度は、下記5製品を開発、上市しました。
なお、当セグメントに係る研究開発費は、
②高機能プラスチック
高機能成形材料と精密成形技術を基盤技術として、自動車、電機部品用等の産業資材用樹脂、成形材料および成形品の開発を進めております。特に環境対応材料に注力した開発を進めております。当連結会計年度は、下記7製品を開発、上市しました。
なお、当セグメントに係る研究開発費は、
③クオリティオブライフ関連製品
医療機器・器具、バイオ関連製品、医薬・食品等各種包装用材料および建築材料を中心に開発を進めております。医療機器については特に低侵襲治療分野に注力した開発を進めております。当連結会計年度は、下記12製品を開発、上市しました。
なお、当セグメントに係る研究開発費は、