第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは、経営理念及び基本姿勢を以下のとおり定め、サステナビリティ経営を軸に持続可能な循環社会の創造を目指してまいります。

 

「経営理念」

私達らしい金融・サービスで豊かな未来への架け橋となります。

 

「基本姿勢」

1.誠実な事業活動を通じて持続可能な地球社会の発展に貢献します。

2.想定を超えるサービスでお客さまと未来・社会をつなぎます。

3.一人ひとりが尊重しあい楽しくいきいきと働ける環境をつくります。

4.企業価値の増大によりステークホルダーの期待に応えます。

 

(2)経営環境及び対処すべき課題

現在、当社グループを取り巻く事業環境は、新型コロナウイルス感染症が5類感染症へ移行したこと等に伴い、社会経済活動の正常化が進みつつも、円安等を要因とした物価上昇、日銀のマイナス金利政策解除等により、事業環境は急速に変化しております。また、人件費をはじめとしたコストの増加、地政学リスクの顕在化・深刻化によるグローバルサプライチェーンの混乱等、様々な不確定要素を抱えている環境と認識しております。

当社グループは、このような事業環境下において、モノの所有から利用へのお客様のニーズの変化や、企業の働き方改革等に伴うアウトソーシングニーズの高まり、2050年のカーボンニュートラルに向けた再生可能エネルギーの導入拡大等を新たな事業機会と捉えております。

 

(3)中期経営計画

当社グループは2023年4月より新たに3ヵ年の中期経営計画をスタートさせております。前中期経営計画から掲げる中長期ビジョン『循環創造企業へ』を目指し、経営理念に掲げる「豊かな未来」の実現に向け、取り組んでまいります。

 

①リコーリースの目指す姿

当社グループのDNAであるベンダーリースを軸としたトランザクションデータの活用を通じた企業の成長機会に対する貢献と、事業を通じた社会課題の解決を行うために特定した4つのマテリアリティへの取り組みとの掛け合わせを戦略立案の軸とし、経営理念に掲げる「豊かな未来」の実現を目指します。

 

②経営戦略

これまで当社グループが取り組んできたリース&ファイナンス事業、サービス事業、インベストメント事業における既存ビジネスにおいては、更なる強化を図ります。

また、既存ビジネスから「投資の拡大とサービス多様化」、及び「新たなビジネスモデルへの挑戦」により、地続きな新規ビジネスの創出を目指します。

 

③事業成長戦略

<新たなビジネスモデルへの挑戦>

以下2分野を新たなビジネスモデルへの挑戦と位置付け、取り組んでまいります。

◆as a Service分野

従来のリース・割賦分野のようにモノ中心ではなく、サービスとして提供していくことにより、「所有」から「利用」へのニーズの変化に対応し、事業を拡大してまいります。

◆BPO分野

労働人口不足等、企業の経営課題解決に貢献するサービスの提供により、企業の成長機会に資するサービス展開を行います。

 

 

<事業&サービス付加による多様化>

以下3分野をサービス付加により事業を多様化する分野と位置付け、取り組んでまいります。

◆環境分野

2050年カーボンニュートラルに向け、再生可能エネルギーの導入に対するファイナンスや、自社発電事業を通じた貢献をはじめ、再生可能エネルギー発電事業者向けサービスや、3R(リデュース、リユース、リサイクル)に資するサービスを開発・提供してまいります。

◆不動産分野

多様化する住環境へのニーズに対応・貢献するためのファイナンスや事業の展開、及びサービスの開発・提供を行ってまいります。

◆介護分野

少子高齢社会において、様々な需要が生まれるなか、リース・割賦や融資、医療・介護報酬ファクタリング、介護事業を通じて、医療・介護の事業者や、利用者双方にとってメリットのあるサービスを開発・提供してまいります。

 

<効率を伴う更なる拡大>

オフィス分野、医療・ヘルスケア分野、設備投資分野においては、当社グループが強みとしてきた小口大量の業務を効率よく処理するノウハウをさらに磨き、効率性を向上させ、更なる成長を実現することで、企業をはじめとするお客様の設備投資におけるハードルを下げることに貢献してまいります。

 

④組織能力強化戦略

<事業成長につながるチャレンジの促進及び組織の活性化>

挑戦する人財の育成、風土の醸成や、多様な人財が活躍できる組織づくりを目指し、制度構築を行います。

 

<社会変化に合わせた柔軟なシステム及び業務体制の構築>

業務システムの切り替えによる自動化及び効率性の向上を目指します。同時にサイバーセキュリティ、ITガバナンスの強化を進めてまいります。

 

<関係会社を含めたガバナンス強化>

グループ各社のガバナンスを含めた連携強化により、事業拡大を目指します。また、外部とのコミュニケーションを通じ、サステナビリティ経営を継続して進化させてまいります。

 

⑤資本コストや株価を意識した経営の実現に向けて

当社グループは、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を実現するためには、自社の資本コストを把握した上で、資本収益性を意識した経営が重要であると考えています。その考えの下、事業分野毎の施策推進による利益の拡大、資本コスト経営の継続・推進による収益性の改善等に取り組みながら、事業ポートフォリオの変革と経営資源の配分の最適化を進めてまいります。

 

(株主資本コスト認識におけるギャップ)

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(PBR改善への取り組み)

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また、財務レバレッジの適正化に向けて、株主還元基本方針を見直し、配当の累進性と業界トップクラスの還元水準を意識し、持続的な成長と適正な資本構成及び財務体質の強化を図ります。

2023~2025年度中期経営計画の最終年度(2026年3月期)は、配当性向40%以上、2030年3月期には50%を目安に還元を行います。

 

(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループの経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、財務目標及び非財務目標を設定しております。

2023~2025年度中期経営計画における目標値は、以下のとおりです。

①財務目標

 

2024年3月期
実績

2025年3月期
予想

2026年3月期

中計目標

営業利益

210億円

211億円

235億円

親会社株主に帰属する当期純利益

112億円

147億円

160億円

ROA(総資産当期純利益率)

0.91%

1.14%

1.1%以上

ROE(自己資本利益率)

5.2%

6.5%

7%以上

配当性向

41.0%

34.6%

40%以上

(注)上記2025年3月期業績予想は、現在入手している情報及び合理的であると判断する一定の前提に基づいており、その達成を当社として約束する趣旨のものではありません。また、実際の業績等は、様々な要因により大きく異なる場合があることをご承知おきください。

 

②非財務目標

マテリアリティ

項目

2024年3月期

実績

2026年3月期

目標

クリーンな

地球環境をつくる

環境分野への

累計資金投下額 ※1

3,138億円

4,000億円

豊かな暮らしをつくる

集金代行稼働サービス数

17,861サービス

20,000サービス

持続可能な

経済の好循環をつくる

重点3分野契約実行高 ※2

(建機・車両・農業)

303億円

450億円

ハピネスな会社、

そして社会をつくる ※3

エンゲージメントスコア

(年間平均)

71点

75点

女性管理職比率

21.8%

25%

一人当たり教育費

40,016円

55,000円

※1 再生可能エネルギー分野におけるリース・割賦、融資の契約実行高、及び太陽光発電事業、エクイティ投資額の累計実績

※2 リース:取得した賃貸用資産の取得金額、割賦:割賦債権から割賦未実現利益を控除した額

※3 当社における目標及び実績

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

文中の将来に関する事項は、当社グループが有価証券報告書提出日現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。

 

(1)サステナビリティ共通

当社グループは、経営理念を最上位概念として、サステナビリティに対する考え方のもと、マテリアリティ(重要課題)への取り組みを通じて、サステナビリティ経営を推進しています。ESG(環境・社会・ガバナンス)や「持続可能な開発目標(SDGs)」など、サステナビリティの重要性の高まりを受け、事業を通じた社会課題への貢献をより一層推進するために4つのマテリアリティを特定し、中長期ビジョン『循環創造企業へ』を目指してサステナビリティ経営を推進しています。

 

《サステナビリティ経営の全体像》

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《サステナビリティ経営で目指す姿》

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《マテリアリティの方針》

マテリアリティ

方     針

クリーンな地球環境をつくる

徹底的な省エネで自社の“GHG(温室効果ガス)排出ネットゼロ”を目指すとともに、再生可能エネルギーの普及や環境配慮型製品の拡大など、事業を通じた取り組みを推進することで脱炭素社会の実現に貢献します。リース契約が終了した設備や機器のリユースやリサイクルの推進、レンタル機器のシェアリングによるリデュースを実現していくことで、資源の有効利用を促進し、循環型社会の実現に貢献します。

豊かな暮らしをつくる

これまでの事業活動において強みとしてきた「医」「職」「住」の3つの領域で付加価値化・差別化戦略を推進します。「医療・ヘルスケア」「BPO」「不動産」「介護(事業)」の分野において、私達らしい事業・サービスの創出をすることで社会課題の解決を目指します。

持続可能な経済の好循環をつくる

従来型のリースによる事業展開に加え、社会、市場、お客様の変化に的確に対応し、リース以外の新たな価値を社会に提供します。日本に多く存在する中小企業を支えることが、地域経済を支えることにつながると考え、各地域の社会課題解決や地域経済の好循環を生み出すことを目指します。

ハピネスな会社、そして社会をつくる

仕事の「やりがい」とその先にある個々の「幸せ」を手にすることができるよう「Happiness αt work(ハピネス アット ワーク)」を人事戦略の基盤に置き、「働きやすさ」に加え、事業成長につながるチャレンジの促進や組織活性化の施策を打ち、社員がいきいきと働くための施策づくりや環境整備に取り組みます。

 

①ガバナンス

当社グループは、持続可能な社会の実現と当社グループの持続的な成長を目指し、サステナビリティ経営を継続して推進していくために「サステナビリティ委員会」を設置しています。サステナビリティ委員会は、社長諮問機関として、常務執行役員以上及びサステナビリティに関連する本部長並びにグループ会社社長により構成され、サステナビリティ経営の基本方針・基本計画などの立案や、経営方針及び事業活動に対して、サステナビリティ視点で討議し、検討を行っています。

討議検討事項は経営会議にて審議・決定されたのち、決定事項は取締役会に共有され、取締役会の総意として助言がなされています。

 

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《当社グループのサステナビリティに関する主な議論》

取締役会

2023年9月

サステナビリティ委員会報告(第12回、第13回)

2024年1月

サステナビリティ委員会報告(第14回)

2024年3月

統合報告書2024制作方針について(報告)

経営会議

2023年5月

①環境マネジメント:2022年度目標値修正・2023年度目標値(承認)
②非財務目標の設定(討議)
③統合報告書制作(討議)
④コンプライアンス定期報告

⑤中計重点テーマ検討会(討議)

2023年7月

①統合報告書における非財務目標開示(承認)
②中長期CO排出量削減目標(スコープ1、2)の改訂(承認)
③FIT非化石証書代理購入サービス導入(承認)

2023年8月

①非財務目標設定(承認)
②「豊かな未来積立金」災害義援金寄付の実施(承認)

2023年9月

人権デュー・ディリジェンス構築(承認)

2023年11月

コンプライアンス定期報告

2024年3月

統合報告書2024制作方針について(承認)

サステナビリティ

委員会

第12回
2023年5月

①環境マネジメント:2022年度実績報告と2023年度目標値設定
②CDP(気候変動プログラム)調査対応
③非財務目標の定量化検討

第13回
2023年7月

①(有識者講話)生物多様性へ取り組み
②人権デュー・ディリジェンスの取り組み
③非財務目標のアウトカム・インパクト検討

第14回
2023年11月

①環境マネジメント:2023年度上期EMS実績進捗
②中期経営計画:非財務目標の2023年度上期進捗

第15回
2024年2月

①環境マネジメント:中長期CO削減施策、インターナルカーボンプライシング、プラスチック資源循環促進法

②2024年度サステナビリティ委員会運営体制検討

 

②戦略

当社グループは2023年4月より新たに3ヵ年の中期経営計画をスタートしました。当社グループのDNAであるベンダーリースを軸としたトランザクションデータの活用を通じた企業の成長機会に対する貢献と、事業を通じた社会課題の解決を行うために特定した4つのマテリアリティへの取り組みとの掛け合わせを「戦略立案の軸」とし、既存ビジネスの強化及び新規ビジネスを創出し、事業活動を通じた社会課題の解決に貢献していきます。

 

《当社グループ中期経営計画》

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《事業成長戦略》

当社グループが価値提供する先をより明確にし、収益性が高く、より事業機会の大きい分野にリソースを投入することを目的に3つの事業成長戦略に紐づく事業分野を定めました。市場軸での戦略立案により、持続的な成長を目指します。

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③リスク管理

当社グループでは、サステナビリティ推進体制における誠実な企業統治のもとに、リスク低減と事業機会創出を行うべく、リスクマネジメントの強化に努めています。リスク管理においては、不確実性が増す中において、事業活動に重大な影響を及ぼすリスクに対処するために、社会的責任を自覚し、損失の危機管理を網羅的・統括的に行うためにリスクマネジメント委員会を設置しています。当委員会においては、当社グループ共通の経営重点リスク及び各部門または関連会社特有のリスクに分類して管理を行っています。

 

④指標及び目標

当社グループは、サステナビリティ経営をより一層推進するために、2023~2025年度中期経営計画では4つのマテリアティ毎に非財務目標を設定しています。的確な指標及び目標を設定することで、取り組みへの進捗管理が可能となり、その結果において着実な対応が行われることになります。非財務目標の策定においては、サステナビリティ委員会において議論を重ね、社会へのインパクトが強く、企業価値の向上につながる注力すべき指標として、以下の20項目を選定しました。中でも、特に重要度の高い★印の6項目については、2023年5月の中期経営計画発表時に先行して開示し、2023年9月には統合報告書で20項目すべてを開示しました。今後は、取り組みをモニタリングすることで進捗状況を報告していきます。

 

 

《マテリアリティ/非財務目標》

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★は2023~2025年度中期経営計画先行開示済み項目

 

(2)気候変動への対応

当社グループは、気候変動を含む環境課題への対応を重要な経営課題の一つと認識し、マテリアリティとして、「クリーンな地球環境をつくる」を掲げ、「気候変動の緩和と適応」「資源循環」に取り組んでいます。当社グループでは2019年8月に気候関連財務情報開示タスクフォース(以下、「TCFD」)への賛同を表明し、2020年度は賛同企業や金融機関が議論する場であるTCFDコンソーシアムに加盟しました。TCFD提言に基づいて、気候変動が当社グループの事業に与えるリスク・機会を分析して経営戦略・リスクマネジメントに反映するとともに、適切な情報開示を進めています。

 

①ガバナンス

当社グループでは、財務上のリスク評価・予防計画の策定については「リスクマネジメント委員会」にて討議後、経営会議において経営判断がなされてきました。2020年4月には、気候変動関連課題に関する責任委員会となる「サステナビリティ委員会」を設置しました。四半期に一度開催され、議論するテーマに応じて事業部門の責任者を招集し、サステナビリティ課題を中長期的な視点で横断的に検討・議論しています。気候変動リスク項目の見直しやリスク及び機会のアセスメントを行い、その結果が中期経営計画に事業戦略として組み込まれ、各事業年度の目標に反映されています。

気候変動に関するガバナンスは、サステナビリティ経営のガバナンスに含まれています。詳細については、「(1)サステナビリティ共通 ①ガバナンス」を参照ください。

 

 

②戦略

脱炭素社会への移行や気候変動に伴う異常気象の増加により、当社のお客様のビジネスに影響が及ぶリスクが想定されます。近年我が国において気候変動に起因する自然災害が頻発していることを踏まえ、自社の事業のうち、気候変動による財務影響が懸念される5分類(リース資産(事務機器、自動車、産業機械)、太陽光発電、住宅賃貸)について定性的シナリオ分析を実施しました。その結果、事業への影響度が大きいと特定した項目について定量的に分析し、財務影響額を概算しました。

なお、事務機器については、風水害などによるリース資産の毀損を想定し、保険などの活用を考慮して分析の実効性を精査した結果、気候変動における当社事業への影響は小さいとの判断のもとに定量化分析の対象外としております。

 

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●当社事業への影響

シナリオ分析の結果、移行(1.5℃)及び物理的(4℃)、いずれのシナリオにおいても気候変動がもたらす当社グループの事業に対する負の影響は短期ではおおむね限定的であるとの分析結果になりました。また、リスク影響よりも機会のほうがトータルでは大きいとの結果になり、1.5℃のシナリオにおいては、売上及び利益について増加が見込めることが分かりました。

なお、定性分析の結果、4℃シナリオにおける物理的リスク(洪水、高潮、気温上昇などによる毀損に対する影響)については、当社事業への影響は少ないとの判断のもとに定量化分析は行っていません。

 

●気候関連リスクと機会への対応状況

当社グループは再生可能エネルギーの普及を目的とするFIT制度を背景に、2012年より、太陽光、小水力、小型風力、木質バイオマスなどの発電設備に対してファイナンスを提供してきました。2018年からはより一層の環境貢献及び事業収益の拡大を目的に自らを事業者とする太陽光発電事業を展開してきました。現在では、FIT制度によらないPPAスキームの開始や、エクイティ投資、また、当社以外の発電事業者を支援するサービス「ソーラーアシスト」の開始など、さまざまな手法を用いて、環境分野の事業拡大を図っています。

2023~2025年度中期経営計画においては、まずFIT制度を背景として稼働済みのセカンダリー案件の実績拡大を目指します。投資目的で開発した太陽光発電所を維持管理していくことが困難で譲渡を考えている投資家から新しい事業者へ渡る際の資金需要へのファイナンスや自社発電所としての取り込みを推進していきます。

一方、脱FIT戦略として、PPAスキームによる太陽光発電自家消費モデルの推進や2022年4月からFIT制度に代わり開始されたFIP制度の活用を推進していくなど、FIT制度によらないビジネスモデルにも取り組んでいきます。

 

また、陸上風力発電など太陽光に限らない他電源への取り組みや、今後需要が見込まれる蓄電池ビジネスなどの新たなビジネスモデルにもチャレンジしていきます。こうした取り組みを通じて、2025年度には再生可能エネルギー分野において4,000億円の累計投資を目指し脱炭素社会の実現に貢献していきます。

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③リスク管理

当社グループでは、重大な財務上の影響を把握するため、気候変動や自然災害リスクなどのリスク評価について、財務面での定義を内包した「経済的影響」と「発生頻度」の2軸で評価しています。また、戦略上での影響については、経営会議において物理的リスク対策などを協議しています。これらのリスクは、「リスクマネジメント委員会」で管理されるとともに、気候変動対策については「サステナビリティ委員会」において検討がなされ、「経営会議」にて決定しています。

 

④指標及び目標

当社グループは、SBTi※1における「1.5℃目標」を基準に、中長期のCO排出量削減目標を設定しています。スコープ1、2について、CO排出量ネットゼロの目標年を2050年から2030年に前倒ししました。スコープ3については、特に排出量が大きい、カテゴリー1(リース品の購入)とカテゴリー13(お客様のリース使用)の算出方法を精緻に見直しし削減に努めています。

また、2023~2025年度中期経営計画において、①環境分野への累計資金投下額を4,000億円、②再生可能エネルギー発電量を205,700MWh(2022年度実績:112,872MWh)、③EV取扱台数増加を非財務目標とすることで、環境課題の解決を目指しています。

中期経営計画の非財務目標については、「(1)サステナビリティ共通 ④指標及び目標 《マテリアリティ/非財務目標》」を参照ください。

 

<スコープ1+2>

2022年度のCO排出量のうちスコープ2については、電気使用によるCO排出量(510t-CO)を「トラッキング付FIT非化石証書※2」を活用することで、実質再生可能エネルギー化を実現しています。

(単位:t-CO

スコープ区分

2022年度実績

スコープ1(直接排出)

276

スコープ2(エネルギー間接排出)

189

合計

465

 

<スコープ3>

温室効果ガス排出量に占めるスコープ3の割合が99.9%と非常に大きい当社グループは、2013年度からサプライチェーン全体のCO排出量(スコープ3)の算出・開示に取り組み、お客様のリース機器使用時のCO排出量を推計・開示することで、お客様とともにCO削減に向け、環境配慮型製品の普及に努めています。2022年度は取扱高や営業資産が増加したことから、前年比4%増の1,007,687t-COとなりました。

 

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2022年度のスコープ3各カテゴリ温室効果ガス排出量

カテゴリ

カテゴリ名

CO排出量

(t-CO

温室効果ガス総排出量

に対する比率(%)

Cat1

購入した製品・サービス

737,697

73.2

Cat2

資本財

8,817

0.8

Cat3

スコープ1、2に含まれない

燃料及びエネルギー関連

200

0.0

Cat4

活動輸送、配送(上流)

1,312

0.1

Cat5

事業から出る廃棄物

245

0.1

Cat6

出張

232

0.0

Cat7

雇用者の通勤

495

0.0

Cat8

リース資産(上流)

1

0.0

Cat9

輸送、配送(下流)

(対象外)

0.0

Cat10

販売した製品の加工

(対象外)

0.0

Cat11

販売した製品の使用

(対象外)

0.0

Cat12

販売した製品の廃棄

(対象外)

0.0

Cat13

リース資産(下流)

258,617

25.7

Cat14

フランチャイズ

(対象外)

0.0

Cat15

投資

70

0.0

スコープ3合計

1,007,687

99.9

スコープ1、2

465

 

温室効果ガス排出量

1,008,152

100.0

※1 SBTi(Science Based Targets initiative):気候変動による世界の平均気温の上昇を、産業革命前と比べ1.5℃に抑えるという目標に向けて、企業に対し科学的知見と整合した削減目標を設定することを推進している協働イニシアティブ。

※2 非化石証書:非化石電源(石炭や石油といった化石燃料を使用せずに発電する電源)由来の電気が持つ環境価値を電気自体の価値と区別し証書化したもので、証書化することで環境価値のみの取引が可能となった。FIT非化石証書は、固定価格買取制度(FIT法)で認定された再生可能エネルギー電源に由来する環境価値を指し、電源の特定や産地の情報をFIT非化石証書に紐づけたものがトラッキング(追跡)付FIT非化石証書と呼ばれる。

 

詳細については、2024年9月に発行予定の「リコーリースグループ統合報告書2024」を参照ください。

https://www.r-lease.co.jp/sustainability/integrated_report/

 

(3)人的資本経営への取組

取り巻く環境が大きく変化していく中で、当社グループでは、多様な人財が活躍することにより、イノベーションを生み出していくという考え方の下、組織能力強化に取り組んでまいりました。

今後は、事業成長につながるように挑戦する人財の育成、及び挑戦する風土の醸成にも努め、人財マネジメントビジョン「Happiness αt Work」(仕事の「やりがい」とその先にある個々の「幸せ」を手にすることができる)を追求し続け、更なる組織能力強化に取り組むことで社員と当社グループ全体の持続的成長及び経営理念に掲げる「豊かな未来」を実現します。

 

①ガバナンス

人的資本経営に関するガバナンスは、サステナビリティ経営のガバナンスに含まれています。詳細については、「(1)サステナビリティ共通 ①ガバナンス」を参照ください。

 

 

②戦略

<人事戦略の目指すべきゴール>

事業戦略並びに当社グループの持続的成長及び経営理念に掲げる「豊かな未来」の実現を図るためには社員一人ひとりの力が必要です。当社グループは社員を「人財」と捉え、目指すべき人物像として変異を自ら創り出し、変異を受け入れ、自ら変異することにより、新たな循環を創造できる=働きがいを自ら創り出せる人財を掲げています。当社グループは、人財育成のための教育や働きやすい働きがいのある職場環境整備に、更に投資を行っていきます。

※一度の変化ではなく、二度三度繰り返すことによって大きな変化を生み出す状態

 

<人財育成・人財採用>

当社グループの事業成長につながる新規ビジネスの創出と拡大に向けて、社員一人ひとりが新たな強み、更なる専門性の獲得ができるよう、変異につながるスキル、機会を提供し、社員と当社グループ全体の持続的成長及び経営理念に掲げる「豊かな未来」を実現できる人財を育成・採用していきます。

 

<社内環境の整備>

変化する外部環境に柔軟に対応できる制度の構築を行い、多様な人財が活躍できる組織及び環境づくりや社員が事業成長につながるような挑戦をする風土の醸成を進めることで、社員と当社グループ全体の持続的成長及び経営理念に掲げる「豊かな未来」を実現します。

a.当社グループにおける人財活用に関する考え方

事業創造(イノベーション)及び人財変異につながる領域やポジションへの適切かつ積極的な人財配置を実施し、期待される人財マネジメントを行います。また、戦略的な人財配置を可能にする人事データの整備を進めてまいります。

b.当社グループにおけるダイバーシティ&インクルージョンの考え方

当社グループのダイバーシティ&インクルージョン(以下、D&I)は、一人ひとりが互いの個性や特性、価値観などの違いを認め尊重し合い、すべての社員が業務を通じて成長できる機会を持ち、多様な個性が活躍してイノベーションを生み出すという考え方に立つものです。

当社グループでは、D&Iは人財マネジメントの基本であると考え、性別、年齢、雇用形態、新卒・中途採用、障がいの有無、人種や国籍、ライフスタイル、宗教、性的志向・性自認などに関係なく多様な人財がいきいきと活躍できる職場環境づくりを進めています。

 

③リスク管理

人的資本経営に関するリスク管理は、サステナビリティ経営のリスク管理に含まれています。詳細については、「(1)サステナビリティ共通 ③リスク管理」を参照ください。

 

④指標及び目標

当社グループは、2023~2025年度中期経営計画において人的資本に関わる非財務指標として「エンゲージメントスコア」「女性管理職比率」「一人当たり教育費」を設定しています。グループ各社については、グループ傘下になった時期、従業員規模や業態にあわせて、目標設定を行ったうえで人的資本に関する情報開示を行ってまいります。

 

非財務目標

項目

2026年3月期目標

2024年3月期実績

エンゲージメントスコア(年間平均)

75

71

女性管理職比率

25.0

21.8

一人当たり教育費

55,000

40,016

(注)当社における目標及び実績を記載しております。

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性がある事項には、以下のようなものがあります。

なお、本項における将来情報に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、以下の記載は当社株式への投資に関連する全てのリスクを網羅するものではありませんので、ご留意ください。

 

(1)リスクマネジメント・コンプライアンス推進体制

当社グループは、社会的責任の重さを自覚し、損失の危機管理を網羅的、統括的に行うためにリスクマネジメント委員会を設置しています。また、損失を未然に防止するためにリスクマネジメント規程を定め、万一損失が発生した場合の被害(損害)を最小化するための初期対応に関する手順等を定めています。

リスクマネジメント委員会では、地震などの自然災害や雇用管理問題、コンプライアンス、情報セキュリティなど、重大リスクの未然防止及び発生時の初期対応に関する手順を定めるとともに、体制の整備及び未然防止策の推進を図っています。

 

(2)グループ重点経営リスク

当社グループでは、優先的に対策を行うべきリスクとして、「経営への影響が大きくなりうる、または比較的大きく、いつでも起こりうる事項」と、「緊急度としては今後5年以内または5年以上だが、リスクが発生した場合に経営への影響が大きくなりうる事項」に該当するリスクを特定し、グループ重点経営リスクとして管理しております。

リスク項目ごとに担当委員会を定めるとともに、各委員会において他リスクとの連携が必要と判断した場合には、リスクマネジメント委員会にて討議を行います。またリスク対応策のみならず、進捗状況の評価や必要に応じた計画の見直し等、活動をスパイラルアップさせるためのプロセスを仕組化しています。また、当社連結子会社であるテクノレント、エンプラス及びWelfareすずらんのリスクマネジメント進捗報告をリスクマネジメント委員会で共有しています。

 

特定した経営リスク項目と対応を審議する委員会など

リスク項目

委員会

リスク主管区

信用リスク

審査委員会

審査本部

事業投資リスク

投資委員会(ローンチ会議)

戦略投資本部

市場リスク

(金利変動リスク及び流動性リスク)

ALM委員会

財務部

気候変動・人権リスク

サステナビリティ委員会

経営企画部

雇用管理等リスク

リスクマネジメント委員会

人事部

災害等リスク

リスクマネジメント委員会

総務部

経営企画部

情報リスク

リスクマネジメント委員会

グループIT統括本部

コンプライアンス(不正)リスク

リスクマネジメント委員会

法務部

 

 

①信用リスク

当社グループの主力事業であるリース&ファイナンス事業では、信用供与(与信)が比較的長期間にわたることから、景気変動やその他の事由により延滞・倒産等が発生し、貸倒損失又は貸倒引当金繰入の負担が増加、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、経済環境の急激な変化や火災・水災等の災害によって、お客様の経営状況の悪化やリース物件等の破損・喪失で貸倒損失が当社の予想の範囲を大幅に上回り、当社グループの与信関連費用が増加する可能性があります。

また、当社グループの主要な顧客である中小企業は、景気動向の影響をより強く受ける可能性があります。

 

<リスクへの対応>

当社では、約40万社の中堅・中小企業のお客様との取引履歴等、大量の審査データの蓄積により、当社独自の審査(スコアリング)システムを構築することで、審査の自動化と迅速な与信判断を実現しております。また、そのための業務の標準化・効率化やスコアリングシステムの精度向上を日々行っております。

また、リース・割賦取引においては、1契約当たりの平均単価は約199万円と業界平均値よりも低く、信用リスクの分散化が図られております。一方、リース料等の不払いが生じた場合には、ベンダーと協力しリース物件等の売却や他の取引先への二次リース等の手段を講じており、これらの取り組みを通じて貸倒損失の低減を図っています。

 

②事業投資リスク

当社グループでは、2020年に事業創造を目的としたESG投資枠を設定するなど、企業買収や出資を行っています。これらの投資においては、経済環境の変化等によって投資先の事業がネガティブな影響を受け、期待された成果が得られないことや、企業価値が下がることにより、減損等の損失を被る可能性があります。

 

<リスクへの対応>

当社グループでは、経営陣を構成員とする「投資委員会」を設置し、入手し得る投資情報等をもとにあらゆる角度から企業買収を含む出資の審議を行っております。また、投資委員会では、出資先企業等の事業及び財務状況のモニタリング等を通じて、投資効果への悪影響や減損リスクの兆候を把握、分析し、必要な対策を迅速に検討、実行することで、事業投資リスクの低減を図っています。

 

③市場リスク(金利変動リスク及び流動性リスク)

当社グループでは、リース物件や割賦物件の購入や融資などのために、金融市場や金融機関から資金調達を行っており、リース会社はその事業構造上、総資産に対する有利子負債の割合が高くなっています。リース料金等は契約時の金利水準とお客様の信用水準に基づいて定額料金で契約を実行しますが、一方で、有利子負債には変動金利による資金調達が含まれているため市場金利の変動が当社グループの業績に影響を与える可能性があります(金利変動リスク)。このため、金利見通しを踏まえた有利子負債における固定金利・変動金利の調達比率は、重要な管理項目の一つであります。

また、市場金利の変動以外でも格付会社から当社の格付が引き下げられた場合、もしくは金融市場の混乱や市場環境が悪化した場合には、必要な資金の確保が困難となるリスク(流動性リスク)があります。また資金調達金利が著しく上昇することにより、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

格付会社名

長期格付

短期格付

株式会社日本格付研究所

AA-

J-1+

株式会社格付投資情報センター

A+

a-1

S&Pグローバル・レーティング・ジャパン株式会社

BBB

A-2

※上記は2024年6月21日現在の格付です。

 

<リスクへの対応>

当社グループでは、金利変動リスク・流動性リスクを適正に管理するため、「ALM委員会」を設置し、定期的に金融市場の動向や資産・負債の状況について分析・検討を実施しています。「ALM委員会」で検討された財務戦略は機動的に執行され、最適な調達・運用を目指しています。また、企業体質の更なる強化を図り、格付の維持・向上に取り組んでいます。

※ALM(Asset Liability Management):資産負債の総合管理。資産と負債の最適な組み合わせを同時に決定し総合的に管理する手法のこと。

 

 

④気候変動・人権リスク

企業活動における気候変動及び人権尊重の責任に対する関心が高まるなか、取り組みが不十分な場合、お客様及び市場等からの信用失墜等により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

<気候変動に関するリスクへの対応>

当社グループは、気候変動に対するシナリオ分析を実施し、気候変動リスクへの対応策を経営レベルで検討する等、気候変動に係るリスク管理の強化に取り組んでいます。

シナリオ分析については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)気候変動への対応」を参照ください。

 

<人権問題に関するリスクへの対応>

当社グループでは、2022年度において、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)」の内容に沿った「リコーリースグループ人権方針」を策定しました。また、サプライチェーン上における人権侵害の発生を防止するための「人権デュー・ディリジェンス」を実施することで、人権への負の影響を防止・軽減し、救済するための具体的な措置を行っていきます。

※国際社会の様々な動向を受け、2011年に国連によって採択された、人権尊重に関する国際基準。企業活動における人権尊重の指針として用いられている。

 

⑤雇用管理等リスク

当社グループの事業において、円滑な事業運営を継続するために、人財の確保及び育成は重要な課題となります。当社グループでは新卒、中途社員の採用、配置転換を行うなど、人財の確保に注力しておりますが、人財の確保が予定通り進まない場合、当社グループの事業運営等に影響を及ぼす可能性があります。

また、人財の多様化を確保するための社内環境整備への対応が遅れることにより、ハラスメント等、労務管理における諸問題に適切に対応できない、もしくは顕在化させることができない場合、社員の流出や社会的信用の失墜を招き、事業活動に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

<リスクへの対応>

当社グループでは、人財の確保、及び人財マネジメントの強化として以下の取り組みを行っております。

新卒採用においては、年間を通した採用計画に基づき、様々な媒体の活用及びインターンシップを通じて、学生との対話を重視した採用活動を行い、また中途採用においては、専門性の高い人財に対しスキルに見合った処遇を設定することで、優秀な人財の確保に努めております。

ハラスメント等、労務管理面においては、内部通報制度の整備をはじめ、社員が相談できる窓口を設置し、問題点を顕在化させ、窓口での相談を通じて適切な対応を取ること、及びエンゲージメント調査を定期的に実施し、組織の状況のモニタリングを行うことにより、人財の確保、流出に関するリスクの低減に努めております。

 

⑥災害等リスク

当社グループは、大規模地震、気候変動に伴う大型台風や洪水等による自然災害、感染症等の予測不能な事象により、従業員、事業所、取引先等の被害が発生し、想定外の経済的損失を被った場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

<リスクへの対応>

当社グループでは、自然災害を想定した災害備蓄品の準備と定期訓練を行い、緊急事態に備えています。また、安否確認システムや非常時の無線機、防災バック等を整備することで従業員の安全管理に努め、当社グループ全体で訓練を実施しています。

情報関連設備においては、震災等に対する耐久性に優れた施設に集約することや通信手段等の冗長化を図っています。また、テレワーク環境の整備によりオフィスの被災や従業員の出社困難時への対応も行っています。

緊急事態においては、代表取締役社長執行役員を本部長とする災害対策本部を立ち上げ、事業継続計画(BCP)が迅速に実行できるよう、対応の強化を進めています。

 

 

⑦情報リスク

当社グループでは、個人情報を含む情報の取り扱いにおける改ざん・漏えい等の発生、及びコンピュータシステムの障害、誤作動、不備、又は不正使用により、損失を被る可能性があります。なお、情報の取り扱いにおけるリスクは、コンピュータシステムの障害等に起因するものを含みます。

 

<リスクへの対応>

当社グループでは、情報セキュリティ基本方針及び個人情報保護方針を定め、情報セキュリティと個人情報保護のマネジメントシステムを一体的に運用し、個人情報を含む情報の保護、漏えい防止に努めています。

また、コンピュータシステムの安定稼働に向けた取り組みを重点課題と位置付け、取り組みを進めており、そのためのITガバナンスの強化、サイバーセキュリティ強化、システム更改等を重点的に推進しています。

 

⑧コンプライアンスリスク

当社グループでは、一般的な法令(会社法、金融商品取引法、税法等)のほか、各種取引に係る適用法令(貸金業法、割賦販売法等)、官公庁等による監督指針、ガイドライン、業界における自主的な取組などに適切に対応する態勢が求められています。これらが遵守されないことによる影響として、法的な制裁、経済的損失、社会的信用の失墜につながる可能性があります。

 

<リスクへの対応>

当社グループでは、各業務における適用法令等について認識を高め、かつ法改正等の動向を把握するため、各部門において法令点検等を毎年実施しています。

また、法令違反及び不正な取引・行為から生じる損失リスクを低減するための取組として、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策(AML/CFT)、腐敗/贈収賄防止、反社会的勢力との取引排除、その他重大なインシデントへの対応、輸出管理について、「コンプライアンスリスク」として、リスクマネジメント規程の管理項目の一つと位置づけ、規程の整備や態勢の維持、社員の啓発など取組の強化を図っています。

内部通報制度においては、社内外に相談窓口を設け、法令違反や不正な取引・行為に係る情報を、通報者保護等の必要な措置を講じた上で、リスクマネジメント委員会に連携することにより、潜在的なリスクを把握し、再発防止やリスクの回避、低減に向けた改善活動につなげる取組を推進しています。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

業績等の概要

(1)業績

当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症が5類感染症へ移行したこと等に伴い、社会経済活動の正常化が進みつつも、円安等を要因とした物価上昇、日銀のマイナス金利政策解除等により、事業環境は急速に変化しております。企業の設備投資においては、人手不足の深刻化を受けた企業の省力化ニーズは高まるものの、人件費をはじめとしたコストの増加、地政学リスクの顕在化・深刻化によるグローバルサプライチェーンの混乱等により、楽観視できない状況であるものと認識しております。

リース業界において、2023年度のリース取扱高は、前期比で7.4%増加し、4兆6,299億円となりました。(公益社団法人リース事業協会統計確定値)

このような状況の中、当連結会計年度における当社グループの業績は、売上高、売上総利益は増加したものの営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益は減少しました。

当社グループにおいては、2023年度よりスタートさせた3ヵ年の中期経営計画の初年度として、事業成長戦略及び組織能力強化戦略を推進してきました。

 

当連結会計年度における報告セグメント別の概況は次のとおりです。

 

①リース&ファイナンス事業

リース&ファイナンス事業は、契約実行高は不動産関連融資及び太陽光発電設備の割賦案件が増加したものの、設備投資関連の前年の大口案件の反動減により事業全体としては減少しました。新規契約利回りは収益性重視の方針の下、引き続き改善しました。売上高は増加したものの、セグメント利益は前年のコロナ関連レンタル特需の反動により減少しました。

 

②サービス事業

サービス事業は、集金代行サービスにおいては、既存顧客に対する取扱件数が増加したことに加え、新規成約案件も順調に稼働しました。医療・介護報酬ファクタリングサービスにおいては、公的支援等の終了によりサービスへの需要が戻り、取扱高は堅調に増加しました。また、前連結会計年度より子会社化した株式会社Welfareすずらんの業績を連結業績に反映しております。その結果、売上高、セグメント利益ともに増加しました。

 

③インベストメント事業

インベストメント事業は、太陽光発電においては、複数の発電所案件の実績化により投資は順調に進みました。不動産分野においては、信託受益権やエクイティ投資など手法を多様化しながら投資額は増加しました。その結果、売上高、セグメント利益ともに増加しました。

 

(2)キャッシュ・フロー

当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べて減少しました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況と要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、前期に比べて支出が減少しました。これは、営業貸付金の純増額の減少に伴い、支出が減少したこと等によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、前期に比べて支出が減少しました。これは、子会社株式の取得による支出が当期は発生しなかったほか、社用資産の取得による支出が減少したこと等によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、前期に比べて収入が減少しました。これは、借入金の実行による収入が減少したこと等によるものであります。

 

 

(3)特定金融会社等の開示に関する内閣府令に基づく貸付金(営業貸付金)の状況

「特定金融会社等の開示に関する内閣府令」(1999年5月19日大蔵省令第57号)に基づく、提出会社における貸付金の状況は次のとおりであります。

 

①貸付金の種別残高内訳

2024年3月31日現在

貸付種別

件数(件)

構成割合(%)

残高(百万円)

構成割合(%)

平均約定金利

(%)

消費者向

 

 

 

 

 

無担保(住宅向を除く)

594

7.47

260

0.10

3.50

有担保(住宅向を除く)

4,814

60.51

120,432

46.29

2.00

住宅向

744

9.35

7,576

2.91

1.71

6,152

77.33

128,269

49.30

1.98

事業者向

 

 

 

 

 

1,804

22.67

131,907

50.70

2.32

合計

7,956

100.00

260,176

100.00

2.15

 

②資金調達内訳

2024年3月31日現在

借入先等

残高(百万円)

平均調達金利(%)

金融機関等からの借入

735,500

0.30

その他

176,017

0.22

 

社債・CP

155,000

0.23

合計

911,517

0.29

自己資本

221,936

 

資本金・出資額

7,896

 

③業種別貸付金残高内訳

2024年3月31日現在

業種別

先数(件)

構成割合(%)

残高(百万円)

構成割合(%)

電気・ガス・熱供給・水道業

1

0.02

4,213

1.62

情報通信業

2

0.03

1,182

0.45

金融業・保険業

18

0.27

36,314

13.96

不動産業・物品賃貸業

16

0.24

9,244

3.55

医療・福祉

439

6.67

26,497

10.18

サービス業(他に分類されないもの)

862

13.10

14,465

5.56

個人

5,220

79.34

128,269

49.30

その他

21

0.32

39,990

15.37

合計

6,579

100.00

260,176

100.00

 

 

④担保別貸付金残高内訳

2024年3月31日現在

受入担保の種類

残高(百万円)

構成割合(%)

有価証券

 

うち株式

債権

 

うち預金

商品

不動産

225,743

86.77

財団

その他

14,346

5.51

240,089

92.28

保証

無担保

20,087

7.72

合計

260,176

100.00

 

⑤期間別貸付金残高内訳

2024年3月31日現在

期間別

件数(件)

構成割合(%)

残高(百万円)

構成割合(%)

1年以下

30

0.38

1,486

0.57

1年超 5年以下

916

11.51

48,886

18.79

5年超 10年以下

992

12.47

57,351

22.04

10年超 15年以下

538

6.76

18,268

7.02

15年超 20年以下

239

3.00

5,131

1.97

20年超 25年以下

276

3.47

3,603

1.38

25年超

4,965

62.41

125,448

48.22

合計

7,956

100.00

260,176

100.00

1件当たり平均期間

26.84年

(注)期間は、約定期間によっております。

 

 

営業取引の状況

(1)契約実行高

連結会計年度における契約実行高の実績を示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

(百万円)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

(百万円)

前期比(%)

リース

 

 

 

事務用・情報関連機器

129,798

126,274

97.3

産業・土木・建設機械

11,271

10,425

92.5

医療機器

22,926

23,359

101.9

商業及びサービス業用機器

9,374

8,411

89.7

その他

35,488

34,661

97.7

ファイナンス・リース計

208,860

203,132

97.3

オペレーティング・リース

19,767

17,947

90.8

リース計

228,628

221,079

96.7

割賦

52,765

53,749

101.9

融資

82,143

86,015

104.7

リース&ファイナンス事業計

363,537

360,844

99.3

(注)1.リースについては、取得した賃貸用資産の取得金額、割賦については、割賦債権から割賦未実現利益を控除した額を表示しております。なお、再リース取引の実行額は含んでおりません。

2.契約実行高の集計方法について一部見直ししたため、前連結会計年度の各金額については、見直し後の金額に変更しております。

 

 

(2)営業資産残高

連結会計年度末における営業資産残高をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

前連結会計年度

(2023年3月31日)

当連結会計年度

(2024年3月31日)

期末残高

(百万円)

構成比(%)

期末残高

(百万円)

構成比(%)

リース

 

 

 

 

事務用・情報関連機器

336,658

33.0

329,257

31.5

産業・土木・建設機械

49,956

4.9

48,143

4.6

医療機器

66,109

6.5

65,590

6.3

商業及びサービス業用機器

27,020

2.7

25,672

2.5

その他

100,686

9.9

106,224

10.2

リース債権流動化対象物件

△70,693

△6.9

△68,747

△6.6

ファイナンス・リース計

509,737

50.0

506,140

48.4

オペレーティング・リース

33,199

3.3

34,556

3.3

リース計

542,936

53.3

540,697

51.7

割賦

157,578

15.5

150,770

14.4

融資

253,706

24.9

260,176

24.9

リース&ファイナンス事業計

954,222

93.6

951,645

91.0

サービス事業

インベストメント事業

65,365

6.4

94,592

9.0

合計

1,019,587

100.0

1,046,237

100.0

(注)1.割賦については、割賦債権から割賦未実現利益を控除した額を表示しております。

2.上記営業資産残高は、連結貸借対照表における割賦未実現利益を控除した割賦債権の残高、リース債権及びリース投資資産、営業貸付金、有形・無形の賃貸資産等の各残高をセグメント別に集計し、記載しております。

 

 

(3)営業実績

連結会計年度における営業実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

前連結会計年度(2022年4月1日~2023年3月31日)

セグメントの名称

売上高

(百万円)

売上原価

(百万円)

差引利益

(百万円)

資金原価

(百万円)

売上総利益

(百万円)

リース

ファイナンス・リース

208,058

オペレーティング・リース

34,320

リース計

242,378

212,951

29,427

802

28,624

割賦

38,756

34,287

4,469

229

4,239

融資

5,347

300

5,046

343

4,703

リース&ファイナンス事業計

286,483

247,539

38,943

1,375

37,567

サービス事業

7,201

3,455

3,745

16

3,729

インベストメント事業

5,204

3,123

2,081

105

1,975

合計

298,889

254,119

44,770

1,497

43,272

(注)売上高について、セグメント間の内部売上高又は振替高は含まれておりません。

また、上記表の売上原価と資金原価の合計額が、連結損益計算書における売上原価の金額となります。

 

当連結会計年度(2023年4月1日~2024年3月31日)

セグメントの名称

売上高

(百万円)

売上原価

(百万円)

差引利益

(百万円)

資金原価

(百万円)

売上総利益

(百万円)

リース

ファイナンス・リース

205,542

オペレーティング・リース

34,912

リース計

240,455

210,610

29,844

1,043

28,801

割賦

47,318

42,297

5,021

287

4,733

融資

5,766

322

5,443

479

4,963

リース&ファイナンス事業計

293,539

253,230

40,309

1,811

38,498

サービス事業

8,785

3,624

5,160

17

5,143

インベストメント事業

6,009

3,911

2,098

172

1,925

合計

308,335

260,766

47,569

2,001

45,567

(注)売上高について、セグメント間の内部売上高又は振替高は含まれておりません。

また、上記表の売上原価と資金原価の合計額が、連結損益計算書における売上原価の金額となります。

 

 

財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

(1)当連結会計年度末の資産、負債及び純資産の状況

当連結会計年度末における総資産は前連結会計年度末に比べて増加し、純資産も増加しました。自己資本比率は前連結会計年度末に比べて上昇しました。資産の部、負債の部、純資産の部における主な内容は以下のとおりであります。

なお、当連結会計年度において、企業結合に係る暫定的な会計処理の確定を行っており、前連結会計年度の総資産、純資産及び自己資本比率については、暫定的な会計処理の確定による取得原価の当初配分額の重要な見直しが反映された後の金額によっております。

 

前連結会計年度

(2023年3月31日)

当連結会計年度

(2024年3月31日)

増減

総資産(百万円)

1,236,921

1,247,276

10,354

純資産(百万円)

211,701

221,936

10,234

自己資本比率(%)

17.1

17.8

0.7

 

①資産の部

総資産は、営業資産の増加等により、前連結会計年度末に比べて増加しました。

 

②負債の部

負債は、借入金の増加等により、前連結会計年度末に比べて増加しました。

 

③純資産の部

純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による増加、剰余金の配当による減少等により、前連結会計年度末に比べて増加しました。自己資本比率は前連結会計年度末に比べて上昇しました。

 

(2)当連結会計年度の経営成績の分析

当社では、2023年度より中期経営計画をスタートし、最終年度の2026年3月期において、以下の財務目標の達成を目指しております。

2023~2025年度中期経営計画期間では「営業利益」、「親会社株主に帰属する当期純利益」に加え、投下資本全体、及び株主資本の運用効率・収益性を図る指標である「ROA」及び「ROE」を中長期目標として設定しました。

それぞれの指標の目標は以下のとおりです。

 

イ.営業利益                    235億円

ロ.親会社株主に帰属する当期純利益         160億円

ハ.ROA(総資産当期純利益率)         1.1%以上

ニ.ROE(自己資本利益率)            7%以上

ホ.配当性向                    40%以上

 

財務実績

第47期

(2023年3月期)

第48期

(2024年3月期)

増減

営業利益

212億円

210億円

△2億円

親会社株主に帰属する当期純利益

148億円

112億円

△35億円

ROA(総資産当期純利益率)

1.23%

0.91%

△0.32ポイント

ROE(自己資本利益率)

7.2%

5.2%

△2.0ポイント

配当性向

30.1%

41.0%

+10.9ポイント

 

①営業利益

資産利回り改善やサービス事業の伸長、大口債権の早期返済等により売上総利益が増加しましたが、人財投資、その他経費の増加により、営業利益は210億円となり、前連結会計年度に比べて2億円減少しました。

 

 

②親会社株主に帰属する当期純利益

特別損失(投資有価証券評価損)の計上により、親会社株主に帰属する当期純利益は112億円となり、前連結会計年度末に比べて35億円減少しました。

 

③ROA(総資産当期純利益率)

総資産は増加したものの、親会社株主に帰属する当期純利益が減少したことにより、ROA(総資産当期純利益率)は0.91%となり、前連結会計年度に比べて0.32ポイント低下しました。

 

④ROE(自己資本利益率)

自己資本は増加したものの、親会社株主に帰属する当期純利益が減少したことにより、ROE(自己資本利益率)は5.2%となり、前連結会計年度に比べて2.0ポイント低下しました。

 

⑤配当性向

1株当たり年間配当金は期初予想通り150円となりましたが、親会社株主に帰属する当期純利益が減少したことにより、配当性向は41.0%となりました。

 

(3)資本の財源及び資金の流動性に係る情報

①資金需要

当社グループの資金需要のうち主なものは、リース・割賦契約に伴う物件の購入、営業貸付金の実行、事業投資等によるものであります。

 

②資金調達

上記資金需要に対する資金調達は、内部資金及び外部資金を有効に活用しております。外部資金については、金融機関等からの借入や社債、コマーシャル・ペーパーの発行、債権流動化を活用し、資金調達手段の多様化・調達コストの抑制を図っております。営業資産の増加に伴い、金融機関等からの借入、コマーシャル・ペーパーの発行による資金調達を行い、有利子負債残高(リース債務を除く)は前連結会計年度末に比べて増加しました。

 

③資金の流動性

必要資金の確保と運転資金の効率的な調達を行うため、金融機関26社と総額1,656億円の当座貸越契約及び貸出コミットメント契約を締結しております。

 

(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、期末日における資産・負債の金額及び決算期における収益・費用の金額に影響を与える見積りを使用する必要があります。当社において、連結財務諸表に重要な影響を与えていると考えているものは次のとおりであります。

 

貸倒引当金

当社グループの主力事業であるリース&ファイナンス事業の債権残高は多額であり、経営成績への影響が大きいため、会計上の見積りにおいて重要なものと判断しております。

なお、貸倒引当金の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

該当事項はありません。