当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
①基本方針
当社グループは、経営理念「私たちクラボウグループは、新しい価値の創造を通じてより良い未来社会づくりに貢献します。」のもと、ESG経営を推進し、当社グループが株主及び取引先をはじめとするステークホルダーから存在価値を評価され、信頼感が持てる企業、安心感を与える企業として支持されることを目指します。
また、社会的責任遂行のための行動指針「クラボウグループ倫理綱領」に則り、地球環境の保全をはじめとするサステナブルな社会の実現に貢献するとともに、豊かで健康的な生活環境づくりを目指して、独創的で真に価値のある商品・情報・サービスを提供し、グループの企業価値を高めてまいります。
②中期経営計画
当社グループは、2022年4月よりスタートした、2024年度を最終年度とする3ヵ年の中期経営計画「Progress'24」を実行中です。「Progress'24」では、基本方針を「高収益事業の拡大と持続可能な成長に向けた基盤事業の強化」、重点施策を①成長・注力事業の業容拡大と基盤事業の収益力強化、②R&D活動の強化による新規事業創出と早期収益化、③SDGs達成への貢献、④多様な人材の活躍推進の4点とし、変化の激しい経営環境にあっても、持続的に企業価値を高めていくための最適な事業ポートフォリオを構築してまいります。また、グループガバナンスを強化するとともに、社会課題の解決に取り組むなどサステナビリティを意識した経営を進めてまいります。
その目標数値は、以下のとおりです。
指 標 |
2022年度 |
2023年度 |
2024年度 |
売上高 |
1,450億円 |
1,520億円 |
1,600億円 |
営業利益 |
70億円 |
85億円 |
96億円 |
R O E |
5.5% |
6.3% |
7.0% |
R O A |
4.1% |
4.8% |
5.3% |
R O I C |
4.3% |
5.1% |
5.6% |
(注)ROE:自己資本当期純利益率、ROA:総資産営業利益率、ROIC:投下資本利益率
(2) 経営環境、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
今後の経済情勢につきましては、賃金・物価の循環的上昇により緩やかに成長するものと思われますが、外需面では中国経済の低迷や中東情勢の緊迫化による物流や資源価格への影響などが懸念されます。
当社グループでは、「イノベーションと高収益を生み出す強い企業グループ」を目指す「長期ビジョン2030」のセカンドステージにあたる中期経営計画「Progress'24」が進行中であり、高収益事業体制の確立に向けて、成長市場に向けた注力事業へ経営資源を集中するとともに、基盤事業の収益力強化に取り組んでおります。
このような経営環境のなかで、賃金や物流コストの上昇や原燃料価格の変動リスクへの対応が、継続的な課題であり、引き続き、価格転嫁やコストダウンを進めてまいります。
また、当社グループは、創業以来サステナブル経営を実践してきており、地球環境や社会情勢、価値観などが激変するなか、今後も新規技術やイノベーションで社会課題の解決に貢献していくことが当社グループの成長のキーファクターになると考えています。これらを踏まえ、サステナブル経営を重要な経営戦略の一つと捉え、マテリアリティ(重要課題)を特定し、課題の解決に取り組んでいます。さらに、気候変動については、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への賛同を表明し、同提言に基づく気候変動への取組みも推進しています。
当社グループは、引き続き、サステナブル経営を推進し、持続的な成長及び中長期的な企業価値の向上に努めてまいります。
当社グループのサステナビリティに関する取組みの詳細やTCFDの枠組みに基づく開示は、以下の当社ホームページに掲載しています。
当社グループのサステナビリティ https://www.kurabo.co.jp/sustainability/
クラボウ統合報告書 https://www.kurabo.co.jp/sustainability/report.html
セグメントごとの経営環境、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は、以下のとおりであります。
①繊維事業
(経営環境)
繊維事業では、紡績、織布、染色整理加工、縫製における独自の技術を生かし、綿を中心とした天然繊維をベースに高機能・高感度な糸、テキスタイル、繊維製品に関する事業を展開しています。繊維業界を取り巻く環境は、海外製品との価格競争の激化や衣料品需要の低迷に加え、原燃料価格や為替の大幅な変動などきびしい状況が続いていますが、一方で高機能繊維製品やサステナビリティを訴求した素材への需要が増加しています。
当社は収益向上を目指して、独自技術を生かした新商品・サービスの開発を進めるとともに、生産の効率化を目指してAI・IoTを活用したスマート工場実現に向けた取組みに注力するなど、新しい価値を提供するビジネスモデルへの変革を推進しています。
(優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題)
糸では、原料改質技術を活用した高機能製品「NaTech(ネイテック)」の開発推進と販売拡大、テキスタイル及び繊維製品では、ユニフォーム分野においては、「PROBAN(プロバン)」、「BREVANO(ブレバノ)」等の防炎素材や、暑熱環境下におけるリスク低減の管理システム「Smartfit(スマートフィット)」など、働く人へ安全と快適を提供するビジネスへの転換を進め、カジュアル分野においては、サステナブル原料を活用した商品展開や、アップサイクルシステム「L∞PLUS(ループラス)」を活用した製品の拡販等に取り組んでまいります。これらの取組みにより、各分野でサステナブル社会の実現に貢献できる商品・技術の開発、販売を行うとともに、原燃料価格の高騰に対しては製品価格への転嫁に加え、生産の効率化を進め、収益拡大に努めてまいります。
また、さらなる収益力の強化に向けて、海外拠点におけるQR対応力強化による効率的な適地生産や高機能製品の海外市場への拡販等に努めてまいります。
②化成品事業
(経営環境)
化成品事業では、自動車をはじめフィルム、半導体、建材、産業資材など様々な業界に幅広く、汎用から高機能にわたる合成樹脂を中心とした製品事業を展開しており、顧客に密着した商品開発・営業により、顧客ニーズに迅速かつ、きめ細かく対応できる体制を構築しています。それぞれの分野において処方開発、成形技術やSDGsを意識した商品開発など、開発体制の一層の強化と、生産技術の向上による業容の拡大に注力しています。
なお、原燃料価格の変動や、半導体市況の回復状況により事業に影響を及ぼすことが懸念されます。
(優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題)
高機能樹脂加工品、機能フィルム、機能資材、不織布を成長・注力事業と位置付け、経営資源を集中して業容拡大に取り組んでまいります。なかでも高機能樹脂加工品では、半導体市場の今後の更なる拡大に向け、積極的な設備投資による生産能力増強を図り、機能フィルムでは三重工場に新たに導入した新ラインを活用した拡販、機能資材では今後の市場拡大が見込まれる熱可塑性炭素繊維複合シート「KURAPOWER SHEET(クラパワーシート)」の早期事業化に向けたマーケティング活動と技術開発に注力してまいります。
基盤事業と位置付けている軟質ウレタン、住宅用建材では、安定した収益確保に向けて生産体制の効率化に取り組むとともに、新商品開発・新市場開拓にも取り組んでまいります。
また、原燃料価格や労務費、物流費の高騰に対しては、引き続き製品価格への転嫁に注力してまいります。
③環境メカトロニクス事業
(経営環境)
環境メカトロニクス事業では、エレクトロニクスは半導体回路基板、フィルムなど幅広い業界へ向けた検査・計測・制御システム等を開発・販売しています。画像処理及び情報処理を基盤技術として深化させ、当社独自技術を生かした最先端の検査・計測システムや、電子部品等の生産ラインの自動化を推進するFA設備は、多岐にわたる業界の生産現場で顧客企業の品質、生産性の向上に貢献しています。
エンジニアリングでは、環境関連プラントのエンジニアリング工事やバイオマス発電所の運営等を行っています。
バイオメディカルでは遺伝子抽出・解析及び各種検査試薬キットの販売を行っています。
(優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題)
エレクトロニクスでは、商品力強化による競争優位性の獲得、海外市場への拡販に努め、新技術であるロボットビジョンシステム「KURASENSE(クラセンス)」の商品開発力の強化や、路面検査装置のアジアをはじめとした海外市場への拡販、半導体関連の検査・計測ビジネスの拡大を図ってまいります。
エンジニアリングでは、敷料再生装置「FUNTO(フント)」など環境関連の新規事業の拡大及び海外市場への拡販に努めてまいります。
バイオメディカルでは、遺伝子抽出・解析関連での業容拡大に加え、撹拌脱泡装置「MAZERUSTAR(マゼルスター)」の美容・化粧品、エネルギーなど新分野への販促活動及び海外市場への拡販に取り組んでまいります。
④食品・サービス事業
(経営環境)
食品・サービス事業では、フリーズドライ食品の製造・販売やホテル等の運営を行っています。
食品事業が属するフリーズドライ業界では、内食需要の更なる低下に加え、小売り価格の値上げを背景とした消費者の節約志向の高まりが懸念されます。
ホテル関連では、宿泊が新型コロナウイルス感染症の5類感染症への移行に伴う観光客増加の効果や、インバウンド需要の回復などにより、好調に推移していることに加え、宴会やレストランなども回復傾向にあり、コロナ禍以前の状況に戻りつつあります。
(優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題)
食品事業では、消費者の節約志向に対応すべく、安価でありながら付加価値の高い商品の開発・提案にも注力し、顧客満足度の向上に努めてまいります。また、環境面に配慮した事業活動も積極的に進めてまいります。
ホテル関連では、インバウンド需要を取り込むための販促活動を強化するとともに、魅力的な商品・サービスの開発・提供などによる集客力の強化を図ってまいります。
⑤不動産事業
(経営環境)
不動産事業では、工場跡地等の遊休資産の有効活用による長期安定収益の確保を目指し、オフィスや商業施設、大規模メガソーラー用地等の不動産賃貸を展開しています。
賃貸事業の主力である大型商業施設では、ネット通販やドラッグストアとの競争激化などにより、賃貸先の経営環境に大きな影響を及ぼす可能性があります。
(優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題)
大型商業施設賃貸事業では、賃貸先の経営環境を注視しながら、効率的な事業推進を行い、引き続き、長期安定収益の維持・確保に努めてまいります。
また、遊休地の再開発等による早期収益化についても、取り組んでまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) サステナビリティに関する基本方針
当社グループでは、持続可能な社会の実現に貢献するためには、企業自らが持続的な企業価値の向上を目指さなければならないと考えており、付加価値の高い技術や商品・サービスを創出し、高収益事業を育成・拡大するとともに、当社グループの経営理念である「私たちクラボウグループは、新しい価値の創造を通じてより良い未来社会づくりに貢献します。」のもと、以下の実践に努めます。
①事業を通じた社会課題解決への貢献
②地球環境の保全を意識した事業活動の推進
③人権の尊重及び働きやすさとやりがいのある職場環境の整備
④信頼される企業づくりの推進
(2) ガバナンス
当社取締役会は、下記の「
当社のガバナンス体制は、「
(3) リスク管理
当社グループでは、「クラボウグループ倫理綱領」に則り、クラボウCSR委員会の統括のもと、8つのCSR専門委員会がそれぞれ担当するサステナビリティ関連のリスクや課題への対応を行っています。
クラボウCSR委員会は毎年4月に、各CSR専門委員会から前年度の活動結果の報告を受けるとともに、当該年度の活動内容を承認しています。これらの内容は、取締役会に報告され、その承認を得ています。
また、リスク管理・コンプライアンス委員会は、毎年、当社グループの事業リスクを抽出し、これをもとにリスクマップを策定しています。
■クラボウグループCSR活動推進体制図
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クラボウCSR委員会 |
(委員: 取締役(監査等委員である取締役を除く。)・執行役員、 |
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クラボウCSR推進委員会 |
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人権啓発 委員会 |
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安全衛生 管理委員会 |
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環境 委員会 |
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リスク管理・コンプライアンス委員会 |
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製品安全 委員会 |
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情報セキュリティ 委員会 |
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品質保証 委員会 |
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広報 委員会 |
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内部通報 体制(ホットライン) |
(4) 戦略
①中期経営計画「Progress'24」におけるサステナビリティ対応
当社は、中期経営計画「Progress'24」において、社会課題の解決に取り組むなどサステナビリティを意識したESG経営を進めることを表明し、重点施策として「SDGs達成への貢献」、「多様な人材の活躍推進」を掲げています。
「SDGs達成への貢献」に関しては、創業以来、労働環境の改善や地域社会の発展へ貢献してまいりましたが、メーカーとしての責任を果たすものとして、目標9の「産業と技術革新の基盤をつくろう」、目標11の「住み続けられるまちづくりを」及び目標12の「つくる責任 つかう責任」を最重要課題と捉え、その目標達成に注力してまいります。
「多様な人材の活躍推進」については、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンやフレックスタイム制度・テレワーク制度等の柔軟な働き方の推進により、多様な人材が個々の能力を最大限に発揮し、自律的に業務を進めることのできる企業風土づくりに努めてまいりましたが、今後はさらに、企業価値を持続的に向上させる事業変革力を持った社員を育成するとともに、社員が組織に主体的に貢献する「エンゲージメントの高い組織」の構築を目指してまいります。「多様な人材の活躍推進」の取組については、下記の「
②気候変動への対応
気候変動への対応についても、リスク・機会の面で事業を推進する上で重要なファクターの1つとして捉えております。気候変動に関する取組については、下記の「
③マテリアリティ
経営理念の実現という目的のもと、資源を有効に活用して事業活動の持続可能性を高め、企業価値を向上させるため、当社グループにおける重要課題(マテリアリティ)として、「安心・安全で快適な社会の実現」、「地球環境への配慮と循環型社会への貢献」、「多様な人材の活躍推進と人権尊重」、「持続的な成長に向けたガバナンス・CSRの強化」の4つを特定し、それぞれの施策の実行に努めています。
(5) 指標及び目標
「女性管理職比率」等の多様性に関する指標及び目標は下記の「
(6) 人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針
当社は1888年の創業当初から「従業員の幸福なくして事業の繁栄はなし」との労働理想主義のもと、従業員への教育、労働環境の改善、福利厚生の充実、従業員の健康管理に取り組むとともに、地域社会の発展にも尽力してまいりました。時代が変化した現在においても、この考えに変わりはなく、社員の幸福実現のため、働きやすさとやりがいを感じられる職場環境の構築に努めております。
また「イノベーションと高収益を生み出す強い企業グループ」を目指し、企業価値を持続的に向上させるため、初代社長大原孝四郎が残した「やる可(べ)し、大いにやる可(べ)し」をアレンジし現在の社員に向けて発信した「面白いこと やってやろう。」が指し示す、好奇心と行動力で新しい価値を生み出すことのできる、創業期のようなチャレンジ精神と創造的思考力を持った社員の育成に注力しています。
そのためには、社員一人ひとりが充実感やポジティブな感情を持ち、組織に主体的に貢献する「エンゲージメントの高い組織」の構築が不可欠と考え、①ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(以下「DE&I」といいます。)の推進による活力ある組織風土の醸成、②柔軟な働き方の推進、③多様な人材の確保と育成、を3つの柱として取り組んでおります。
①DE&Iの推進による活力ある組織風土の醸成
当社の社是「同心戮力(どうしんりくりょく)」は、一人ひとりの働きや才能が異なっていても、目的を達成するために、皆が心を一つにしてお互いに力を合わせて協力していこう、という意味であり、今日のDE&Iに通じる考え方として、創業当初から大切にされてきました。DE&Iの推進による活力ある組織風土の醸成のため、当社が取り組んでいる内容は次のとおりです。
ア.アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)の理解浸透とハラスメントのない職場づくり
誰もが持つアンコンシャス・バイアスに気づき、相手の気持ちに配慮できるよう、当社オリジナルの研修用冊子や動画を作成し、全社員への理解浸透を図っています。また、ハラスメントのない職場づくりのため、全社員に毎年1回以上のハラスメント研修の受講を義務付けています。
イ.女性活躍の推進
新卒者・経験者を問わず積極的な女性総合職の採用を継続的に行うとともに、様々な部署で活躍できるよう、配属課比率の更なる向上に取り組んでいます。
当社が本格的に女性総合職の採用を開始したのは2014年であり、2014年度~2023年度合計の新卒総合職採用に占める女性の割合は36.7%(180名中66名)です。また、経験者総合職採用に占める女性の割合は、2021年度~2023年度の合計で25.5%(55名中14名)であり、女性管理職は今後増加する見込みです。将来的には、総合職に占める女性の割合(2023年度は15%)と同程度の女性管理職比率を目指しております。
ウ.LGBTQ+の理解促進
研修の実施、配偶者の定義に事実上婚姻と同様の関係にある同性パートナーを含める社内規則改定、相談窓口の設置、イベントへの参加、オールジェンダートイレの設置などにより、PRIDE指標ゴールド認証を3年連続で取得しています。
エ.障がい者雇用
各事業所の雇用状況の把握、情報提供、採用フォローのほか、高いスキルを持つ新卒者、経験者を積極的に採用し、法定雇用率を上回るよう取り組んでいます。
②柔軟な働き方の推進
仕事と家庭生活などを両立できる、働きやすい職場づくりを推進するため、柔軟な働き方を推進しています。
ア.フレックスタイム制度・テレワーク制度、工場休日の増加
本社・支社・技術研究所・熊本事業所のほか、一部の工場にもフレックスタイム制度・テレワーク制度を導入しています。また、工場の年間休日も段階的に増加させています。
イ.年次有給休暇の取得促進及び半日有給休暇制度・時間単位有給休暇制度の活用促進
ウ.男性の育児休職取得率の向上
男性が育児に関わることは、子供の成長、父親自身のタイムマネジメント力やマルチタスク力の開発、パートナーのキャリア継続に繋がると考え、取得率の向上を目指しています。
エ.オフィスカジュアル、工場ユニフォームフルモデルチェンジ
自律的で自由な発想が生まれやすい職場づくりやコミュニケーションの活性化のため、本社・支社ではオフィスカジュアルを推奨しています。工場においては、2024年度より安全性と機能性を向上させた、ジェンダーレスのユニフォームにフルモデルチェンジしました。
オ.安全衛生管理の推進
「生産現場の安全は何よりも最優先される」と認識し、業務上災害ゼロを目標に、業務上災害を発生させないための「安全ルールの明文化」「安全教育の徹底」「安全行動の実践」を重点ポイントとして、安全衛生管理に取り組んでいます。
カ.健康経営の推進
健康保持推進施策の継続や充実により、偏差値50以上での健康経営優良法人認定取得を目指しています。
キ.諸制度活用のための周知
制度活用ハンドブックの社内ポータルサイトへの掲載やグループ社内報「ドウシン」を活用した周知を行っています。
③多様な人材の確保と育成
成長・注力事業領域に重点を置いた多様な人材の確保と育成に注力しています。
ア.採用力の強化
経験者を含む採用力強化のため、人材紹介サービスやダイレクトリクルーティングの活用、ホームページの採用サイトの全面リニューアル、アルムナイ採用ツールの導入を行っています。特に経験者採用数は、新卒者採用数を上回っており、人材の早期戦力化を図っています。また、外国籍の総合職社員を新卒者・経験者を問わず毎年採用しています。
イ.社内研修定着のための教育内容のフィードバック
職能等級に応じた階層別教育、専門能力を高めるテーマ別教育を行った際は、その定着のため、受講者上司へのフィードバックを行っています。
ウ.スマートファクトリー化や事業変革推進のためのIoT推進教育、DX技術活用教育
製造現場でIoTを活用できる人材を養成する教育を、技術系社員を対象に実施しているほか、DX技術を活用した事業変革をデザインできる人材育成を、中堅社員を対象に実施しています。
上記において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針については、次の指標を用いて管理しており、当該指標に関する目標及び実績は次のとおりです。すでに目標を達成している指標もありますが、次期中期経営計画策定の際、改めて指標及び目標を設定します。
なお、記載の方針や指標は当社単体のものであり、当社グループ各社の方針や指標は、各社の経営環境や経営課題が異なるため、記載しておりません。
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指標 |
2022 年度 |
2023 年度 |
目標 |
エンゲージメントスコア |
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43% |
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①活力ある組織風土の醸成 |
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2.2% |
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40.0% |
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26.1% |
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定めず |
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41.4% |
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2.57% |
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法定雇用率以上 |
②柔軟な働き方の推進 |
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13.6日 |
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39.1% |
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業務上災害発生件数 |
10件 |
9件 |
0件 |
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健康経営優良法人認定取得 (偏差値) |
認証 (48.2) |
認証 (49.8) |
偏差値50以上 |
③多様な人材の確保と育成 |
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69.7% |
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定めず |
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1名 |
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定めず |
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3.4万円 |
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当社が取り組む「エンゲージメントの高い組織」のKPIであるエンゲージメントスコアは、42%と満足できるレベルではありません。調査結果を分析した上で、1on1ミーティング実施等により個々のエンゲージメントを高めるほか、上記の諸施策に着実に取り組み、エンゲージメントの向上に努めてまいります。
(7) TCFD提言に基づく報告
当社グループでは、「地球環境への配慮と循環型社会への貢献」をマテリアリティの1つに掲げており、気候変動関連のリスクと機会が事業戦略に大きな影響を及ぼすものと認識し、「カーボンニュートラルの実現」を重要課題と位置付け、サステナブルな社会の実現を目指しています。
①ガバナンス
当社グループでは、サステナビリティに関する基本方針の中で、「地球環境の保全を意識した事業活動の推進」を掲げています。代表取締役社長が委員長を務めるクラボウCSR委員会の統括のもと、リスク管理・コンプライアンス委員会と環境委員会を中心に取組を推進しています。気候変動関連のリスクと機会の対応について、CSR委員会がリスク管理・コンプライアンス委員会と環境委員会の活動方針を承認するとともに、活動の結果報告を受け、同活動方針及び結果について、年1回取締役会へ報告しています。 取締役会は、その取組の目標や計画の内容、各施策の進捗状況を審議の上、監督しています。サステナビリティに関する基本方針やクラボウグループ環境憲章等、サステナビリティに関する戦略についても、取締役会において決定しています。 |
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<取締役会での主な審議・承認事項(2023年度)>
・環境レポートの作成
・TCFD賛同及びTCFD提言に基づく情報開示
②戦略
当社グループでは政府目標である2050年のカーボンニュートラルに向けて、2022年にCO2排出量削減の移行計画(カーボンニュートラルロードマップ)を定めており、グループ全体でCO2排出量削減に向けた活動を進めています。
加えて、2030年における気候変動が事業に及ぼす影響を網羅的に把握し、気候変動に起因する課題への取組を推進するために、リスクと機会の一覧表として整理しました。
リスクと機会の特定のプロセスとして、まず各部門から気候変動関連のリスクと機会についてヒアリングを実施し、網羅的にリストアップを行いました。さらに事業に与える影響の大きさの観点から整理と絞込みを行い、シナリオ分析の評価結果を踏まえ、当社グループの事業に対する重要な気候変動関連のリスクと機会を特定しました。
今後は内容の精査を進め、影響の大きいリスクの軽減と機会を的確に捉えた事業運営に努めてまいります。
■シナリオ分析の概要
シナリオ分析は国際エネルギー機関(IEA)「World Energy Outlook」の中で想定される「STEPS」、「SDS」、「NZE2050」、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次報告書の「SSP1-1.9」、「SSP5-8.5」を参照し、「1.5℃シナリオ」で移行リスクと機会、「4℃シナリオ」で物理リスクと機会を分析しました。
分析にあたっての影響度と時間軸の定義は以下のとおりです。
[影響度] 大:長期的に重大な影響、又は想定影響金額5億円以上
中:一時的に重大な影響、又は想定影響金額1億円以上
[時間軸] 短期:~3年、中期:3~10年、長期:10年~
■CO2排出量削減の移行計画(カーボンニュートラルロードマップ)
■リスクの一覧表
類型 |
小分類 |
リスクの影響 |
対応策 |
影響度 (大中) |
時間軸 |
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移行リスク |
政策 及び 法規制 |
GHG排出の価格付け進行 (カーボンプライシング) |
炭素税の導入によるエネルギーコストの増加 |
・ボイラ燃料転換、ヒートポンプ等の省エネルギー対策の推進 ・太陽光PPA等の再生可能エネルギーの導入 |
大 |
中長期 |
エネルギーや原材料等サプライチェーンへの炭素価格導入による価格転嫁発生 |
・低炭素の原材料開発等のサプライヤーへの働き掛け・連携 ・原材料調達手段の多様化 |
大 |
中長期 |
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既存製品・サービスに対する義務化と規制化 |
プラスチックをはじめとする取扱商品への環境規制強化による原材料価格上昇 |
・環境負荷を考慮した上でのサプライヤーの多様化 ・原材料、部材の使用量削減の取組 |
中 |
短中長期 |
類型 |
小分類 |
リスクの影響 |
対応策 |
影響度 (大中) |
時間軸 |
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移行リスク |
技術 ・ 市場 |
顧客行動の変化 |
省エネルギー化の推進、高効率設備導入等に伴うコストの増加 |
・自社の生産プロセスの高効率化 ・バリューチェーン全体における生産プロセスの高効率化 |
大 |
短中長期 |
脱炭素対応コストの高騰 |
再生可能エネルギー導入、クリーンエネルギーの購入に伴うコストの増加 |
・太陽光PPA等の再生可能エネルギーの導入 ・既設の大規模電源(メガソーラー、バイオマス)の有効活用 |
中 |
中長期 |
||
評判 |
ステークホルダーの不安増大又はマイナスのフィードバック |
研究開発人材の確保や、新卒採用等への影響発生 |
・人的資本経営の推進、高度化 |
中 |
短中長期 |
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物理リスク |
急性 リスク |
サイクロン・洪水等の異常気象の激甚化 |
台風・洪水等による設備損壊、活動停止に伴う生産減少、復旧コスト増加 |
・事業継続計画(BCP)の強化 ・自社拠点や主要取引先におけるハザードマップの確認とリスク評価 |
大 |
短中長期 |
台風・洪水等によるサプライヤーの被災、輸送ルート寸断による生産停止 |
・調達先の分散、供給網の再構築など生産・調達手法の多様化 ・サプライヤーにおける調達BCPの展開、BCPアセスメントの実施 |
中 |
中長期 |
|||
慢性 リスク |
平均気温の上昇 |
空調費用の増加 |
・工場、事業所における省エネ機器の導入と節電の強化 ・太陽光PPA等の再生可能エネルギーの導入 |
中 |
短中長期 |
■機会の一覧表
類型 |
小分類 |
機会の影響 |
対応策 |
影響度 (大中) |
時間軸 |
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機会 |
資源の効率 |
リサイクルの利用 |
循環型経済への移行を背景とした、循環型経済に適合する部材の需要拡大 |
・「L∞PLUS (ループラス)」等の服の裁断くず再資源化による循環型ビジネスの推進、拡大 ・「AIR FLAKE」等の再生ポリエステルや生分解性繊維商品の拡大 ・「KURATTICE ECO」等の再生木粉樹脂商品の拡大 |
大 |
短中長期 |
エネル |
より低排出のエネルギー源の使用 |
脱炭素化対策を通じたGHG排出量削減による炭素税負荷の低減 |
・ボイラ燃料転換、ヒートポンプ等の省エネルギー対策の推進 ・太陽光PPA等の再生可能エネルギーの導入 |
大 |
中長期 |
|
省エネ活動、安価で高品質の再生可能エネルギー・水素の調達によるエネルギーコストの低減 |
・ボイラ燃料転換、ヒートポンプ等の省エネルギー対策の推進 ・太陽光PPA等の再生可能エネルギーの導入 |
中 |
短中長期 |
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製品 及び サービス |
低排出商品及びサービスの開発・拡張 |
低炭素・脱炭素製品に対する要請の高まり/ニーズと需要の拡大 |
・カーボンフットプリントの把握による脱炭素化推進、製品競争力強化 ・「NaTech」等の環境配慮型高機能素材商品の拡大 ・「クランシール シリーズ」等の環境に配慮した機能性フィルムの拡大 ・不動産賃貸建物の環境認証等の取得によるテナント獲得 |
大 |
短中長期 |
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市場 |
新たな市場へのアクセス |
EVの急速的な普及による部材の需要拡大 |
・高機能樹脂加工品を通じた半導体需要拡大への対応 ・環境メカトロニクス事業をはじめとした各セグメントの主力商品や新開発商品の需要拡大 |
大 |
短中長期 |
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レジリエンス (弾力性) |
事業活動の継続性 |
生産拠点が地理的に分散していることによる災害への強い対応力を背景とした競争力の強化 |
・事業継続計画(BCP)の強化を通じた持続的な事業活動の実践 |
大 |
短中長期 |
③リスク管理
気候変動関連のリスクに関しては、以下の評価・管理プロセスに則り、リスク管理・コンプライアンス委員会、環境委員会のもと適切な管理をしています。また、気候変動関連リスクを当社グループの事業に大きな影響を与えるリスクの1つとして、当社グループ全体として管理をしています。
リスクの 洗い出し |
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リスクの 分析・評価 |
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対応策の検討 |
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戦略への 組込み・実行 |
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モニタリング |
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委員会事務局と各部門にて気候変動関連リスクの洗い出しを実施 |
→ |
委員会事務局と各部門にてリスクレベルを総合的に判断 |
→ |
各リスクに対する対応策を委員会事務局と各部門にて検討し、CSR委員会へ報告 |
→ |
対応策を戦略に組み込み、各部門にて対応策を実行 |
→ |
取締役会で対応策の進捗状況をモニタリング |
④指標及び目標
当社グループは、CO2排出量削減の長期目標として、2050年までにカーボンニュートラルを達成することを目指します。特に2030年までの期間については、CO2の自社排出量(Scope1、Scope2)の絶対量ベースで、政府目標である2013年度比46%削減を達成するためのロードマップを策定し当社グループ全体で取り組んでまいります。そしてこの取組を進めることが、企業グループの存在価値を更に高めるとともに、生産の効率化、製造業としての基盤強化、ひいては収益性の向上につながると考えています。なお、CO2サプライチェーン排出量(Scope3)に関しても算定準備を進めています。算定でき次第、CO2排出量削減目標(Scope3)の策定も検討してまいります。
■CO2排出量削減の中長期目標 |
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■CO2排出量実績 |
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2024年 |
2030年 |
2050年 |
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カテゴリー |
2023年度実績値 |
CO2排出量削減目標 |
40%削減 |
46%削減 |
カーボン |
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Scope1 |
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(Scope1, 2) |
(2013年度比) |
(2013年度比) |
ニュートラル |
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Scope2 |
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合計 |
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■環境目標及び実績
当社グループでは、計画的に環境保全を推し進めるため、「CO2排出量の削減」と「ゼロエミッションの推進としての再資源化率」の中期目標(3カ年の数値目標)を設定し、気候変動対策や資源の有効活用に努めています。
2023年度は、CO2排出量については、2013年度比39%削減目標を掲げ、省エネルギー対策等を通じてエネルギー使用量の削減を進めました。結果は38.0%削減となり、目標には至っておりませんが、2022年度実績である35.2%削減からは向上しております。ゼロエミッション推進については、再資源化率96%の目標に対して96.0%となり、目標を達成しました。
目標項目 |
2022年度実績 |
2023年度目標 |
2023年度実績 |
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CO2排出量の削減 |
絶対量での削減 (2013年度比) |
35.2%削減 |
39%削減 |
38.0%削減 |
ゼロエミッションの推進 |
再資源化率の向上 |
95.2% |
96% |
96.0% |
当社グループは、CO2排出量を2030年までに2013年度比46%削減し、2050年までのカーボンニュートラルを目指すことを、長期環境目標として設定しています。中期経営計画「Progress'24」(2022~2024年)の環境目標は、CO2排出量を2024年度に2013年度比40%削減としております。また、ゼロエミッションは更に進めるために97%としております。
目標項目 |
2024年度目標 |
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CO2排出量の削減 |
絶対量での削減 |
2013年度比 40%削減 |
ゼロエミッションの推進 |
再資源化率の向上 |
再資源化率 97% |
■今後対応を検討する項目
カーボンニュートラル推進体制強化の一環として、社内炭素価格(インターナル・カーボンプライシング)の導入や、RE100への参加及びSBT認定取得の検討を進めてまいります。また、気候変動だけではなく、水資源や生物多様性といった自然資本にも配慮した取組も推進してまいります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
当社グループでは、戦略・事業遂行上におけるリスク及びその対応策につき「リスク管理・コンプライアンス委員会」にて把握・検討し、取締役会及び経営会議での議論、検討を踏まえたうえで、当社グループの主要なリスクとして整理しています。
以下では、当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を与える主要なリスク及びその対応策につき記載しており、すべてのリスクを網羅している訳ではありません。当社グループの事業は、現在は未知のリスク、あるいは現時点では特筆すべき、又は重要とみなされていない他のリスクの影響を将来的に受ける可能性もあります。また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 市場リスク
①主要な市場における景気の悪化
当社グループは、様々な市場で事業を展開しておりますが、主要な市場は衣料品、自動車、半導体、住宅、不動産の各業界であり、経済情勢の変化等により当該市場における景気が悪化した場合には、受注減により売上が減少する等当該事業の経営成績及び財政状態に重要な影響を与える可能性があります。
当社グループでは、主要な市場における市況の変化を注意深く見守りつつ、中期経営計画「Progress'24」の重点施策であるR&D活動の強化により、各事業分野において新規事業、新規市場の開拓を図っております。
②競争優位性の低下
当社グループが関連する各事業分野においては、競合他社に対する品質面、価格面での競争が激化しており、優位性が低下した場合には、売上や利益が減少する等、当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を与える可能性があります。
当社グループでは、各事業分野において、独自技術を生かした持続可能な社会の実現に貢献できる新製品・サービスを開発、提供していくことで競争優位性、顧客満足の向上を目指してまいります。
(2) 事業運営、戦略リスク
①特定の取引先の業績悪化等
当社グループは、各種製品・サービスを国内外で販売・提供しておりますが、各事業分野においては収益への影響度が大きい特定の取引先が存在しており、当該取引先の業績悪化による受注減、大規模な在庫調整や生産調整等が生じた場合には、当社グループの売上が減少する等、当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を与える可能性があります。
当社グループでは、各事業分野において高品質かつ安定的な製品・サービスの提供による当該取引先との更なる関係強化を図るとともに、リスク分散のため、当該取引先以外の取引先への販売強化、新規顧客の開拓にも注力しております。
②原材料等の調達困難
当社グループが提供する製品で使用している一部の部品、原材料については、市場の需給状況や物流の混乱により、安定的な調達を確保できないリスクがあります。原材料等の供給不足により当社グループ製品の生産能力を十分に確保できない場合、販売機会喪失による売上高の減少、顧客への納入遅延が発生する等、当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を与える可能性があります。
当社グループでは、原材料等の備蓄、代替原材料又は代替の調達先の確保等を行い、原材料等の安定調達、製品の安定供給に努めてまいります。
(3) 経済リスク
①原材料価格、エネルギー価格の高騰
当社グループが使用している綿花、石化原料などの原材料や燃料は、市場の需給状況、国際商品市況やその他の環境要因(為替レート等)により購入価格が高騰することがあり、価格上昇分を製品価格に十分転嫁できない場合等には、利益の減少等当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を与える可能性があります。なお、近時の原油価格高騰の影響等により、当社グループが使用している石化原料が高騰しております。
当社グループでは、原材料やエネルギーの価格動向等に注意を払うとともに、価格高騰等の影響を最小限に抑えるべく国内外の複数の供給元の確保、当該供給元からの購買等の対応を行っております。また、販売価格への転嫁にも取り組んでおります。
②為替、株価等の相場変動
当社グループは、グローバルに事業を展開しており、為替レートの大幅な変動が生じた場合は、売上高やコストに影響が生じる等、当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を与える可能性があります。為替レートの変動の影響を最小限度に抑えるべく、為替予約等のヘッジ取引を行っております。
また、当社グループは、市場性のある株式を保有しており、株価が著しく下落した場合は、評価損が発生する等、当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を与える可能性があります。株式の時価評価を定期的に実施し、適切な会計処理を行うとともに、政策保有株式については、保有の意義が必ずしも十分でないと判断したものについては、縮減を図ることとしております。
③海外での事業活動
当社グループの繊維事業、化成品事業及び環境メカトロニクス事業並びにこれらに属する連結子会社は、世界各国での事業展開を行うとともに、ブラジル、タイ、インドネシア、中国等に事業拠点を有しております。これら海外での事業活動においては、予期しない法律又は規制の改廃、政治体制又は経済状況の変化、テロ・戦争・紛争等の社会的混乱、インフラの未整備等のリスクが内在しております。
当社グループでは、情報収集、海外関係子会社と連携を図りながら、状況に応じた対応を行ってまいります。また、海外での紛争等の有事の発生に関しては、安全確保・損失回避に向けた体制整備等の対応に努めております。
(4) 自然災害、事故リスク
当社グループは、国内外の各地で生産活動等の事業活動や、それに伴う原材料などの調達を行っておりますが、大規模な地震、台風、火災等の災害が生じた場合には、生産活動の停止、工場等の設備の損壊に加え、原材料などの調達や顧客への製品供給に支障が生じる等、当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を与える可能性があります。
当社グループでは、従業員の生命・安全を最優先として、気象予報などの情報収集により、想定される自然災害への事前の対応を綿密に行うことで災害発生を未然に防ぎ、また定期的な設備点検や防災訓練、マニュアルの整備、顧客やサプライチェーンとの情報共有等の連携などにより、事故のリスクや想定困難な自然災害発生時の生産活動等の事業活動への影響を最小限に留めるように日々努めております。また、万一被害が生じた場合に備えて、データセンターの活用や損害保険の付保などのリスクヘッジを行っております。
なお、2022年6月、当社の化成品事業部が防熱工事を実施した物流施設において火災事故が発生しました。この火災事故に関し、2023年9月6日付けでSBSフレック株式会社より当社を含む本件火災に関係する会社3社に対して約44億円の損害賠償請求訴訟(以下、「本件訴訟」といいます。)が提起されました。本件火災の影響等につきましては、連結財務諸表「注記事項(連結貸借対照表関係)8.偶発債務」に記載のとおりです。
当社といたしましては、本件訴訟の請求内容を精査し、代理人弁護士を通じて適切に対応してまいります。
(5) 人事リスク
当社グループは企業価値の持続的向上のため、異なる個性を持つ多様な人材の育成や確保に努めておりますが、それらが計画通りに進まなかった場合、中長期的に見て、当社グループの事業展開、業績及び成長の見通しに重要な影響を与える可能性があります。
当社グループでは、社員が充実感やポジティブな感情を持ち組織に主体的に貢献する、エンゲージメントの高い組織の構築を目指し、社員の能力を引き出すエンパワーメントやお互いの個性を認め合うダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの推進、フレックスタイム制度・テレワーク制度の活用による柔軟な働き方の実現、教育プログラムの充実、採用力の強化などに努めてまいります。
(6) 情報セキュリティリスク
当社グループは、事業活動を通じて機密情報、顧客情報、個人情報等を保有しており、また販売や生産等の事業活動において情報システムを利用しております。コンピュータウイルス・マルウェア等外部からの不正な手段によるコンピュータシステム内への侵入等の犯罪行為や使用人もしくは委託業者の過誤等により、これらの情報が流出又は改ざんされ、もしくは情報システムの長期間の停止が発生した場合は、販売活動や生産活動等の停止、損害賠償の発生や社会的信用の低下等、当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を与える可能性があります。
当社グループでは、情報セキュリティポリシーを制定し、適切な情報管理体制を構築するとともに、適切なセキュリティソフトの導入・更新、重要なデータのバックアップ、定期的な教育の実施などの対策を行っております。
(7) 気候変動リスク
当社グループは、サステナビリティに関連するリスクのうち、気候変動に関するリスクが重要なリスクの一つであると認識しております。当社グループの気候変動に関するリスクに関する取組みについては、上記「2.サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載のとおりです。
(8) 人権リスク
当社グループは、世界各国のサプライチェーンを通じて原材料の調達や製品の生産加工等をしておりますが、これらのサプライチェーンにおいて、労働環境・安全衛生の悪化や人権侵害行為、特に、強制労働や児童労働、ハラスメント、差別的行為等が発生し、これらの人権問題に適切に対応できない場合は、調達や生産への影響に加え、顧客及び取引先からの信用低下を招く等、当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を与える可能性があります。
当社グループでは、2023年度に、当社グループの事業に関わる全てのステークホルダーの人権尊重のため、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づいた「クラボウグループ人権方針」を策定し、人権尊重の取組みを実践しております。また、2024年度からは、サプライチェーンに対するCSRデュー・ディリジェンスを実施し、より一層の人権に配慮した事業運営に努めてまいります。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の5類感染症への移行により経済活動の正常化が進みましたが、物価上昇により個人消費が伸び悩むなど、景気は回復基調ではあるものの力強さに欠ける状況でした。
当社グループの成長・注力事業である高機能樹脂加工品等の販売先の半導体製造関連市場は調整局面に入り減速しましたが、当連結会計年度末にかけ、徐々に回復基調となりました。また、自動車市場におきましても、半導体不足による減産影響も収まり総じて回復基調となる一方、繊維・衣料品市場は、暖冬の影響もあり回復が遅れています。
このような環境下にあって当社グループは、現在進行中の中期経営計画「Progress'24」(2022年度-2024年度)の基本方針である「高収益事業の拡大と持続可能な成長に向けた基盤事業の強化」のもと、半導体製造関連や機能フィルムといった成長・注力事業の業容拡大と繊維や軟質ウレタンをはじめとする基盤事業の収益力強化などに注力しました。
この結果、売上高は1,513億円(前年同期比1.4%減)、営業利益は91億8千万円(同5.9%増)、経常利益は101億9千万円(同1.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は67億3千万円(同22.1%増)となり、各連結利益において過去最高を更新しました。
セグメントの業績は、次のとおりであります。
(繊維事業)
糸は、原料改質技術を活用した高機能製品「NaTech(ネイテック)」が順調に推移しましたが、ブラジル子会社が市況悪化の影響を受けて低調で、また、タイ子会社のデニム向けやインドネシア子会社のインナー向け及び靴下向けの受注が減少し、減収となりました。
テキスタイルは、ユニフォーム向け素材は、為替の影響等によるコストアップの価格転嫁を進めたものの、受注が伸び悩み低調に推移しましたが、カジュアル向け素材は、店頭販売が好調な製品用の追加発注などもあり、増収となりました。
繊維製品は、顧客の在庫調整などの影響を受けて受注が減少し、減収となりました。
この結果、売上高は511億円(前年同期比9.6%減)、コストアップの影響もあり営業損失は2億5千万円(前年同期は営業利益3億円)となりました。
(化成品事業)
軟質ウレタンは、自動車内装材向けでは、中国子会社が低調に推移しましたが、自動車生産の回復などに伴い国内及びブラジル子会社の受注が順調で、原燃料価格高騰によるコストアップの価格転嫁も進めた結果、増収となりました。
機能樹脂製品は、半導体需要の鈍化の影響を受けた半導体製造装置向け高機能樹脂加工品の受注が減少しましたが、太陽電池や自動車向けの機能フィルムの受注が回復し、増収となりました。
住宅用建材は、断熱材の販売が順調に推移しましたが、防熱工事が減少したことにより、減収となりました。
不織布は、マスクや自動車用フィルター向けの受注が減少し、減収となりました。
この結果、売上高は613億円(前年同期比2.7%増)、営業利益は39億6千万円(同6.7%増)となりました。
(環境メカトロニクス事業)
エレクトロニクスは、基板検査装置は低調に推移しましたが、部品供給不足の緩和により膜厚計及び液体成分濃度計などが順調で、また、子会社でも半導体洗浄装置の大型案件があり、増収となりました。
エンジニアリングは、排ガス処理設備や半導体業界向け薬液供給装置が順調に推移し、また、子会社でも医薬品製造業界向け設備の大型案件があり、増収となりました。
バイオメディカルは、撹拌脱泡装置の海外向け販売が好調で、増収となりました。工作機械は、工作機械等の製造販売を行っていた倉敷機械㈱の全株式を譲渡したことにより、当第4四半期連結会計期間は連結対象から除外され、減収となりました。
この結果、売上高は255億円(前年同期比5.2%増)、営業利益は35億7千万円(同26.1%増)となりました。
(食品・サービス事業)
食品は、外食需要の回復に伴う内食需要の低下や小売り価格の値上げによる買い控えの影響を受け、即席麺具材や成型スープなどが低調で、減収となりました。
ホテル関連は、宿泊が行動制限の撤廃やインバウンド需要などによる客室稼働率及び客室単価の上昇により好調に推移し、宴会やレストランも回復傾向となり、増収となりました。
この結果、売上高は95億円(前年同期比3.0%増)、営業利益は6億4千万円(同38.4%増)となりました。
(不動産事業)
不動産賃貸は、新規の賃貸開始により売上高は37億円(前年同期比1.8%増)となりましたが、修繕費の増加などにより営業利益は23億3千万円(同4.1%減)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ57億6千万円増加し、当連結会計年度末には161億2千万円となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動による資金の増加は、128億6千万円(前連結会計年度は25億1千万円の資金の増加)となりました。これは、法人税等の支払額29億5千万円があったものの、税金等調整前当期純利益105億1千万円や減価償却費の内部留保50億8千万円があったことなどによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動による資金の減少は、3億8千万円(前連結会計年度は29億6千万円の資金の減少)となりました。これは、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の売却による収入24億4千万円や投資有価証券の売却による収入21億8千万円があったものの、有形及び無形固定資産の取得による支出45億9千万円があったことなどによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動による資金の減少は、69億5千万円(前連結会計年度は35億8千万円の資金の減少)となりました。これは、自己株式の取得による支出24億7千万円や長期借入金の返済による支出19億1千万円があったことなどによるものです。
(キャッシュ・フロー関連指標の推移)
当社グループのキャッシュ・フロー関連指標の推移は以下のとおりであります。
|
2020年3月期 |
2021年3月期 |
2022年3月期 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
自己資本比率(%) |
53.7 |
54.8 |
57.4 |
58.2 |
60.6 |
時価ベースの自己資本比率(%) |
32.2 |
23.2 |
20.8 |
27.2 |
32.6 |
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年) |
2.9 |
3.0 |
1.5 |
6.2 |
1.0 |
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍) |
29.4 |
40.9 |
51.8 |
7.7 |
39.1 |
(注) 自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
1.いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
2.株式時価総額は、自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
3.営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の「営業活動によるキャッシュ・フロー」を使用しております。
4.有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の「利息の支払額」を使用しております。
③生産、受注及び販売の実績
ア.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
繊維事業(百万円) |
33,917 |
77.7 |
化成品事業(百万円) |
49,588 |
97.7 |
環境メカトロニクス事業(百万円) |
18,772 |
104.4 |
食品・サービス事業(百万円) |
5,400 |
94.6 |
合計(百万円) |
107,678 |
91.2 |
(注)1.セグメント間の取引については、仕入先の属するセグメントにおいて相殺消去しております。
2.繊維事業には、上記生産実績のほかに、販売を主たる事業とする会社の商品仕入実績が、10,736百万円あります。
3.不動産事業は、生産活動を行っておりません。
4.金額は製造原価で記載しております。
イ.受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前年同期比(%) |
受注残高(百万円) |
前年同期比(%) |
環境メカトロニクス事業 |
11,154 |
64.8 |
5,919 |
51.9 |
(注)1.上記以外は、主として見込生産を行っております。
2.当連結会計年度において、受注残高に著しい変動がありました。これは主に、連結子会社であった倉敷機械㈱の全株式を譲渡したため、同社及びその子会社を連結の範囲から除外したことによるものであります。
ウ.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
繊維事業(百万円) |
51,103 |
90.4 |
化成品事業(百万円) |
61,318 |
102.7 |
環境メカトロニクス事業(百万円) |
25,530 |
105.2 |
食品・サービス事業(百万円) |
9,572 |
103.0 |
不動産事業(百万円) |
3,790 |
101.8 |
合計(百万円) |
151,314 |
98.6 |
(注)1.セグメント間の取引については、販売会社の属するセグメントにおいて相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合については、相手先別販売実績が総販売実績の10%未満のため、省略しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
ア.当連結会計年度の経営成績の分析
(ア)売上高
当連結会計年度の売上高は1,513億円と前連結会計年度に比べ1.4%、22億円の減収となりました。これは「(1) 経営成績等の状況の概要」に記載のとおり、化成品事業や環境メカトロニクス事業が増収となったものの、繊維事業の繊維製品が顧客の在庫調整などの影響を受けて受注が減少したことなどによります。
(イ)営業利益
当連結会計年度の営業利益は91億8千万円と前連結会計年度に比べ5.9%、5億円の増益となりました。これは、化成品事業や環境メカトロニクス事業の売上が増加したことなどによります。
(ウ)経常利益
当連結会計年度の経常利益は101億9千万円と前連結会計年度に比べ1.7%、1億6千万円の増益となりました。これは、営業外損益で為替差益の減少があったものの、営業利益の増益があったことなどによります。
(エ)特別損益
当連結会計年度の特別利益は17億円でその主なものは、投資有価証券売却益16億円であります。一方、特別損失は13億7千万円でその主なものは、減損損失5億8千万円、関係会社株式売却損5億3千万円であります。
(オ)親会社株主に帰属する当期純利益
当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は67億3千万円と前連結会計年度に比べ22.1%、12億2千万円の増益となりました。これは、税金費用の増加があったものの、特別損益が前連結会計年度に比べて27億3千万円改善したことなどによります。
また、1株当たり当期純利益は362.50円と前連結会計年度に比べ75.42円増加しました。
イ.当連結会計年度の財政状態の分析
当連結会計年度末の総資産は、棚卸資産は減少しましたが、株価上昇に伴い投資有価証券が増加したことなどにより、1,927億円と前連結会計年度末に比べ187億円増加しました。
負債は、短期借入金は減少しましたが、繰延税金負債が増加したことなどにより、747億円と前連結会計年度末に比べ35億円増加しました。
純資産は、その他有価証券評価差額金や利益剰余金が増加したことなどにより、1,180億円と前連結会計年度末に比べ151億円増加しました。
以上の結果、自己資本比率は2.4ポイント上昇して60.6%となりました。
ウ.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
中期経営計画「Progress'24」2年目である2023年度は、半導体製造関連や機能フィルムといった成長・注力事業の業容拡大を図るとともに、繊維や軟質ウレタンをはじめとする基盤事業の収益力強化に努めました。結果、売上高は倉敷機械㈱が連結対象から除外されたことや、繊維事業における一部顧客の在庫調整の影響を受け若干の未達となりましたが、営業利益は半導体製造関連分野を中心に化成品事業や環境メカトロニクス事業が堅調に推移したことにより、「Progress'24」2年目の目標を達成し、順調に進捗しております。
指標 |
Progress'24(a)2023年度計画 |
2023年度(b)(実績) |
計画比(b)-(a) |
売上高 |
1,520億円 |
1,513億円 |
△6億円 |
営業利益 |
85億円 |
91億円 |
+6億円 |
R O E |
6.3% |
6.2% |
△0.1ポイント |
R O A |
4.8% |
5.0% |
+0.2ポイント |
R O I C |
5.1% |
5.2% |
+0.1ポイント |
(注)ROE:自己資本当期純利益率、ROA:総資産営業利益率、ROIC:投下資本利益率
エ.経営成績に重要な影響を与える要因について
「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
ア.キャッシュ・フロー
「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
イ.契約債務
2024年3月31日現在の契約債務の概要は以下のとおりであります。
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年度別要支払額(百万円) |
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契約債務 |
合計 |
1年以内 |
1年超2年 以内 |
2年超3年 以内 |
3年超4年 以内 |
4年超5年 以内 |
5年超 |
短期借入金 |
8,789 |
8,789 |
- |
- |
- |
- |
- |
長期借入金 |
2,855 |
541 |
351 |
1,771 |
148 |
42 |
- |
リース債務 |
696 |
154 |
124 |
119 |
92 |
41 |
163 |
その他有利子負債 |
139 |
- |
- |
- |
- |
- |
139 |
上記の表において、連結貸借対照表の短期借入金に含まれている1年内返済予定の長期借入金は、長期借入金に含めております。
当社グループの第三者に対する保証は、社会福祉法人の借入金に対する債務保証であります。保証した借入金等の債務不履行が保証期間に発生した場合、当社グループが代わりに弁済する義務があり、2024年3月31日現在の債務保証額は、98百万円であります。
ウ.財務政策
当社グループは、運転資金及び設備資金につきましては、内部資金又は借入により資金調達することとしております。このうち、借入による資金調達に関しましては、運転資金については短期借入金で、生産設備などの長期資金は、固定金利の長期借入金での調達を基本としております。また、当社及び国内子会社は、CMS(キャッシュ・マネジメント・サービス)を導入することにより、各社の余剰資金を当社へ集約し、一元管理を行うことで、資金の効率化を図っております。
なお、マーケット環境の一時的な変化など、不測の事態への対応手段確保のため、当連結会計年度末において、複数の金融機関との間で合計7,400百万円のコミットメントライン契約を締結しております(借入未実行残高7,400百万円)。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
当社は、2023年9月6日開催の取締役会において、当社が保有する倉敷機械㈱(連結子会社)の全株式を譲渡することを決議し、同日付けで株式譲渡契約を締結しました。また、2023年12月19日付けで契約内容の一部について変更合意書を締結しております。
これに基づき、2024年1月5日にDMG森精機株式会社及びDMG MORI Europe Holding GmbHに株式を譲渡しました。
詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (企業結合等関係)」をご参照ください。
当社グループ(当社及び連結子会社)は、新素材及び新製品の開発等を中心とした研究開発活動を行っております。
研究開発は、当社の技術研究所を中心に実施しており、研究スタッフは、グループ全体で99名であります。
当連結会計年度の研究開発費は
(1)繊維事業
繊維事業部では、テキスタイルイノベーションセンターを中心に、社会課題を解決するためのデジタル技術の応用や、紡織技術や加工技術など繊維製造技術を生かしたサステナブル商品の開発を行っております。
当連結会計年度は、繊維製品とAI・IoT技術の融合として研究開発に取り組んできた暑熱環境下におけるリスク低減管理システム(スマートフィット)については、顧客の要望の高かったスマートフォン不要のウォッチ型デバイスの追加機能開発に取り組みました。また、アルゴリズムの精度向上とユーザビリティの向上にも引き続き取り組み、新しく、職場環境の改善を支援する安全衛生ソリューションの開発も開始しました。
次に、サステナブルな取り組みの推進として、廃棄している裁断屑を再度原料にし、衣料を製造するシステム(L∞PLUS:ループラス)の開発の推進は、裁断屑の再利用で取り組みが拡大しておりますが、それに加えて回収衣料の再利用への展開、国内産地における端材の活用や地方自治体との衣料回収等の取組みも進めました。
また、サステナブル原料であるコットンに、グラフト重合技術を活用して、原料段階で機能を付与する商品(NaTech:ネイテック)の開発については、生産ラインの生産性向上も進み、更なる機能開発も引き続き行いました。
当事業に係る研究開発費は
(2)化成品事業
精密製品、機能フィルム、住宅建材及び高機能複合材料の商品開発を行っております。
当連結会計年度は、精密製品分野では、半導体分野向け商品の生産技術向上、高性能化に取り組みました。機能フィルム分野では、太陽電池・半導体・電子部品用途での新規機能性付与や生産技術の開発に取り組みました。住宅建材分野では、不燃無機材料による造形材用途の開発や現場吹付ウレタンフォームの厚み計測システムの開発に取り組みました。また、熱可塑性炭素繊維複合シート(クラパワーシート)の生産技術、加工技術の開発に引き続き取り組みました。
当事業に係る研究開発費は
(3)環境メカトロニクス事業
(エレクトロニクス分野)
画像処理技術及び情報処理技術を活用したインフラ保全システム、ロボットビジョンシステム、マシンビジョンシステム、また光応用計測技術を用いた半導体洗浄システムや膜厚計測システムについて、これら各種システムの市場調査・研究開発・商品開発を行っております。当連結会計年度は、鉄道会社と共同で、電車の軌道を構成する材料の計測を高速走行中に行う国内初のシステム「軌道材料モニタリングシステム」を開発しました。今後は実用化に向けた検証及びさらなる精度向上を行います。また従来の3Dビジョンセンサ(クラセンス)の高精度版を開発し、それを搭載した各種ロボットシステム製品を開発しました。その他、半導体洗浄プロセス向けリン酸循環システムのラインナップを拡充しました。
(エンジニアリング分野)
排ガス、排水の浄化システムや廃プラスチックや古紙を由来とするRPF燃料や未利用廃棄物を使用したボイラ・燃焼装置の開発を行っています。また、バイオマス発電の発電効率の向上と自動化制御に関する研究開発を行っています。当連結会計年度は、敷料再生装置(FUNTO)の装置改良と省エネルギー化並びに遠隔監視システムの検討・導入を行いました。徳島バイオマス発電所における発電効率の向上と自動制御化による安定運転を図るため、技術研究所と共同でボイラ・タービン等の運転データの収集と分析を継続して行っています。収集したデータを用いてボイラ内の燃焼やタービン等の解析を行い、燃焼の最適化と発電効率を向上させる取り組みにより、自動制御化を検討しています。また、新たに燃焼灰が溶融し塊となることを抑制するため、燃焼解析を行いました。
(バイオメディカル分野)
遺伝子検査や解析に用いるサンプルを各種生体試料から分離するシステムやプロトコルに関する研究開発を行っております。その核酸自動分離システム(QuickGene)の新装置の開発を進めています。核酸自動分離システムは、細胞溶解液からDNAやRNAを回収するもので、吸着媒体として多孔質メンブレンを使用している点が特長です。当連結会計年度は、一度に96サンプル処理が可能な大型装置(QuickGene-96prep)の開発を進めており、血液センターや検査センターでの需要を見込んでいます。また、技術研究所にて開発した細胞RNA/ウイルス抽出キット(QuickGene AS-RCV)の販売を開始しました。細胞数の少ない検体からのRNA抽出や、唾液や鼻咽頭からのウイルスRNA抽出に対応いたします。
(工作機械分野)
工作機械分野は倉敷機械㈱が開発を進めておりましたが、当連結会計年度において、同社の全株式を譲
渡したため、同社及びその子会社を連結の範囲から除外しております。
当事業に係る研究開発費は
(4)食品・サービス事業
真空凍結乾燥技術による乾燥加工食品の研究開発を行っております。当連結会計年度では「脱フロン」、「低炭素社会」の早期実現に向けて冷凍設備の自然冷媒化を進めるとともに、「乾燥状態の見える化技術」を開発いたしました。本技術によりエネルギー消費量を削減・抑制を達成し収益性改善、価格競争力強化に貢献しております。
当事業に係る研究開発費は
(5)その他(全社研究開発)
当社グループの研究開発組織である技術研究所は、「数理科学」、「情報工学」、「物理科学」、「光電工学」、「物質科学」、「生命科学」の6つの分野をコア技術領域と定めて研究活動を行っております。これらのコア技術を深耕・活用することにより、成長・注力事業の競争力を強化する活動と、社会課題の解決や環境に配慮した技術の創出に取り組みました。また、当社グループの成長・注力分野では、ロボット産業用のセンシングデバイスを開発する「ロボットセンシング」、半導体産業向けに取り組んでいる薬液計測・制御と新たな洗浄手法を開発する「セミコンソリューション」、革新的な核酸抽出手法や高度遺伝子解析でバイオメディカルの分野へ貢献できる製品を開発する「ライフサイエンス」、各種樹脂と強化繊維の複合素材やスーパーエンプラフィルムを応用した新規素材を開発する「マテリアルソリューション」、の4つのプロジェクトを推進しました。さらに、繊維分野ではNaTech事業の拡大を図るために、電子線グラフト重合を活用した原綿改質の技術開発と、環境に配慮したサステナブル染色技術の調査に取り組みました。
全社研究開発に係る研究開発費は1,010百万円であります。