第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中における将来に関する事項は、当社グループが当連結会計年度末現在において判断したものです。

(1) 経営方針

当社は、経営方針「Forging the future  未来を拓く」のもとで築いた強固な経営基盤を活かし、企業価値向上に向けた改革を加速して、KAITEKIの実現をリードするグリーン・スペシャリティの化学会社に「変身」することをめざしています。カーボンニュートラルの達成やサーキュラーエコノミーの深化といった社会課題解決への貢献を果たし、持続的な企業価値の向上を実現するため、2035年を見据えた新たなビジョンの策定を進めており、今秋に公表する予定です。

2024年度の業績予想及び2025年度の財務目標については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容」に記載のとおりです。

 

(2) 経営環境

当社グループを取り巻く経営環境については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容 ②経営環境と今後の見通し」に記載のとおりです。

 

(3) 対処すべき課題

 当社グループは、2021年より現経営方針「Forging the future 未来を拓く」の下、収益性と財務健全性の改善に焦点を当て、抜本的なコスト削減に加えて、価格マネジメント、運転資金や設備投資の管理を進めた結果、当期のコア営業利益は2,081億円となり、財務体質もネットD/Eレシオは1.16に改善する等、一定の成果を上げています。一方で、これらの成果は、堅調な産業ガス及びヘルスケアセグメントの貢献に負うところが大きく、スペシャリティマテリアルズ、MMA及びベーシックマテリアルズセグメントを中心にさらなる事業体質の改善が必要です。

 また、地政学リスクの高まり、気候変動の進行、生成AI(人工知能)技術の発展等により、経済社会システムが大きく変容する中、私たちが携わる化学産業にとっては、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーといった社会的な要請に応えていくことが一層大きな課題となっています。

 私たち三菱ケミカルグループのPurposeは、革新的なソリューションで、人、社会、そして地球の心地よさが続いていくKAITEKIの実現をリードしていくことです。当社は、カーボンニュートラルの達成やサーキュラーエコノミーの深化といった社会課題解決への貢献を果たし、持続的な企業価値の向上を実現するため、2035年を見据えた新たなビジョンの策定を進めています。

 また、最適な資源配分を見極め、ポートフォリオの変革を進めるとともに、以下に掲げる諸課題に取り組んでいます。

 ‐不採算事業からの撤退

 ‐低炭素コンビナートをめざした国内石化事業の再編

 ‐スペシャリティマテリアルズ事業の成長:当社の優位性の高い分野への投資

‐米国におけるMMA新プラント建設の検討:独自の製造プロセス(アルファ法)を用いたコスト競争力の強化と温室効果ガス削減の実現

‐医薬品事業の合理化とパイプライン拡充:米国市場に向けた成長戦略と2029年度まで延長された筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療薬ラジカヴァの排他販売期間の終了に備えた施策の検討及び実行

 

 当社グループは、企業の持続的成長の基盤として、安全管理・コンプライアンスの徹底、内部統制システムの確立を通じたグループガバナンスの強化に取り組むとともに、これらの諸課題にグループの総力を挙げて対処し、企業価値・株主価値の向上を図ってまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

文中における将来に関する事項は、当社グループが当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

当社グループは、「私たちは、革新的なソリューションで、人、社会、そして地球の心地よさが続いていくKAITEKIの実現をリードしていきます。」というPurposeを掲げ、サステナビリティを経営の中核の1つに据えた企業活動を行っています。

カーボンニュートラルの実現や、働く環境の整備と人材の育成・開発などの人的資本の拡充を含めた事業基盤の強化を通じて、サステナビリティの向上に努め、持続的成長をめざしてまいります。

 

(1)サステナビリティ全般

① ガバナンス

当社グループは、機能商品、素材及びヘルスケアの3つの分野で多岐にわたる事業活動を展開していることから、当社グループを取り巻く環境・社会課題は多様であり、また、その解決に貢献するソリューションを提供することが、当社グループの持続的成長につながる事業機会でもあります。そのため、様々な環境・社会課題を踏まえ、当社グループが取り組む重要課題(マテリアリティ)を特定しています。

特定したマテリアリティの詳細については、「②戦略」をご参照ください。

マテリアリティには、目標及び、その進捗を測る指標を設定し、当社執行役社長をはじめとした経営陣のリーダーシップのもと、定期的に進捗をモニタリングすることを通じ、関連施策を着実に推進してまいります。

指標等の詳細については、「④指標と目標」をご参照ください。

当社は、サステナビリティの諸活動のモニタリング、統括に加え、当社グループのサステナビリティに関する方針や関連事項の審議を行う機関として、当社執行役社長を委員長とし、当社の執行役等から構成するサステナビリティ委員会を設置しております。

取締役会は、当社のサステナビリティに関する状況の報告を受け、当社の諸活動が適切に行われるよう監督をしております。

 


 

また、経営の透明性の向上という基本方針のもと、サステナビリティに関する情報や指標、データを、統合報告書「KAITEKIレポート」等で積極的に開示することを通じ、ステークホルダーへの説明責任を果たしてまいります。KAITEKIレポート等に記載する環境パフォーマンス指標及び社会パフォーマンス指標に対して、独立した第三者保証を取得し、信頼性の高い情報の開示に努めております。

 

当社は、これらの諸活動の客観的な状況を把握するため、当社が重要と考えるESG評価をベンチマークとしています。その結果、ESG投資の世界的な指数であるDow Jones Sustainability Indicesの構成銘柄に7年連続で選定されるなど、相対的に競争力のある評価を得ております。今後も、評価結果から得られた視点や課題を検討し、関連する諸活動の一層の強化につなげてまいります。

当社は、執行役の報酬を構成する業績連動報酬を、年度ごとの目標値の達成状況の結果に応じて決定し、支払っています。評価は、経済効率性やイノベーションに加え、サステナビリティの向上に係る指標を用いるKAITEKI価値評価及び個人評価にて決定しています。2023年度の業績連動報酬の評価指標のうちサステナビリティに関するものは、温室効果ガスの排出量削減や従業員エンゲージメント向上等、KAITEKI価値評価のなかで執行役が特に注力すべきものを選定しました。詳細については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (4)役員の報酬等」をご参照ください。

 

② 戦略

当社グループは、グループ理念のもと、成長を実現し、企業価値を向上させることにより、顧客や株主の皆様をはじめとするすべてのステークホルダーへ貢献していくことをめざしております。

このめざす姿の実現に向けた指針として、当社グループを取り巻く経営環境を踏まえ、ステークホルダーの視点を取り入れながら、取り組むべき重要課題(マテリアリティ)を特定しています。

マテリアリティは、当社グループが重要と考える視点に基づき分類、整理した以下の5つのカテゴリーから構成されています。

 


 

 

イ 事業ポートフォリオ戦略として重要な課題

当社グループは、低炭素社会、さらには、その先のカーボンニュートラルが実現した社会における成長性と収益性の最大化を図るべく、市場の成長、競争力、サステナビリティにフォーカスしたポートフォリオの運営を推進しています。その考え方に基づき、経営方針「Forging the future 未来を拓く」では、EV/モビリティ、デジタル、食品、メディカルといった領域を注力市場と位置付けています。いずれの注力市場とも世界的な主要トレンドに沿っていることに加え、エネルギー効率化や電気自動車などによるGHG低減や、水資源の保全と食品ロス削減による持続可能な食糧・水供給といったサステナビリティの観点でも捉えることができます。


 

(出典:「三菱ケミカルグループインベスターデイ 2023」説明資料から引用)

 

ロ 事業基盤として重要な課題

当社グループは、経営方針「Forging the future 未来を拓く」で示す成長を実現するには、従業員のエンパワーメントや健康・安全が不可欠という強い思いから、「人材の育成・開発」や、「ダイバーシティとインクルージョン」といったマテリアリティのもと、企業文化の変革を進めております。

詳細については、「(3)人的資本」をご参照ください。

 

ハ 環境や社会への影響として重要な課題

当社グループは、企業活動を通じてステークホルダーに様々な価値を提供する一方、事業特性上、環境や社会に対するインパクトが大きい事業を展開しています。そのため、地球環境への負荷削減という観点からは、環境インパクトの削減やサーキュラーエコノミーといったマテリアリティに対して、ライフサイクル全体を通じて、資源を有効利用する取組みを推進し、最適化された循環型社会の実現をめざしております。また、持続的な成長を達成しつつ、2050年度までにカーボンニュートラルを実現するため、製造プロセスの合理化や、自家発電用設備の燃料転換といった施策を着実に講じてまいります。

 

ニ リスク管理上の重要な課題及び存立に関わる重要課題

当社グループは、「3 事業等のリスク」に記載のとおり、グループ全体に影響のある重大なリスクとして、事故・災害、法規制・コンプライアンスを認識し、事業活動の最優先事項として、そのリスク低減のための対策をとっております。これに加え、情報セキュリティや人権といった重大リスクに対し、加速度的に変化する事業環境や社会ニーズを踏まえ、適切な対応を図ってまいります。

 

③ リスク管理

当社グループは、全社的かつ総合的なリスク管理体制を整備、運用することで、先を見越したリスク管理と適切なリスクテイクを伴う経営を推進しており、サステナビリティに関連するリスクも、一体的な管理を志向してまいります。

 

④ 指標と目標

当社グループは、特定したマテリアリティに対する目標と、その進捗を測る指標として、「MOS(Management of Sustainability)指標」を設定し、運用しています。各指標について毎年の進捗をモニタリングすることで、マテリアリティへの取組みを着実に推進してまいります。

2023年度実績は、2024年9月以降に当社ホームページ上で公表する統合報告書「KAITEKIレポート」をご参照ください。

https://www.mcgc.com/ir/library/kaiteki_report.html

 

マテリアリティ

MOS指標

目標

2022年度実績

目標値

目標年度

事業ポートフォリオ戦略として重要な課題

成長事業領域(社会課題解決型事業)の売上収益割合

30%

2022

21%

事業基盤として重要な課題

休業度数率

0.71

2025

0.89

顧客満足度

80ポイント

2025

82ポイント

ESG株式指数に関する評価

DJSI、FTSE4Good等の
スコア維持・向上

2025

次のようなESG株式指数に継続的に組み入られています。

・DJSI World Index

・FTSE4Good Index Series

・FTSE Blossom Japan Index

環境や社会への影響として重要な課題

サーキュラーエコノミー及び気候変動対策に貢献する製品の売上収益割合

12%

2022

10%

GHG排出量の削減率

(2013年度比・国内)

15.0%

2025

26.0%

COD(国内)

現状水準の維持:

約1,600t(2019年度)

2025

1,314t

LCA活動の進捗度

100%

2025

44%

廃棄物最終処分量の削減率(2019年度比、国内)

50%

2025

△27%

存立に関わる重要課題/リスク管理上重要な課題

重大コンプライアンス違反件数

 0件/年

2025

1件/年

保安事故

16件/年

2025

13件/年

環境事故

 0件/年

2025

 0件/年

情報セキュリティ研修受講率

95.0%

2025

94.7%

 

(注) 2022年度実績は、前連結会計年度(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)の数値です。

上表の指標に加え、従業員エンゲージメント、経営層のダイバーシティ、ウェルネス意識の3つの指標については、「(3)人的資本」をご参照ください。

 

(2)気候関連

①ガバナンス及びリスク管理

当社グループは、重要課題(マテリアリティ)に、「GHG低減」「環境インパクト削減」「サーキュラーエコノミー」といった気候変動に関連する課題を定め、取締役会の監督の下、当社の執行役等から構成するサステナビリティ委員会が定期的にモニタリングし、関連施策を着実に推進しています。

詳細については、「(1)サステナビリティ全般 ①ガバナンス」をご参照ください。

また、リスク管理については、「(1)サステナビリティ全般 ③ リスク管理」をご参照ください。

 

②戦略及び指標と目標

イ 気候関連のリスクと対応

当社グループは、2030年にかけて直面する気候変動による影響のインパクトをシナリオ分析の考え方に基づき評価した結果、炭素税負担の増加や株式市場での気候変動対応の高まりなどにより、操業コストや時価総額へ影響が生じる可能性があることを認識しています。そのため、GHG排出量を2030年度に29%削減(2019年度比)、2050年に実質ゼロとするカーボンニュートラル達成をめざすという目標を掲げ、エネルギー転換や製造プロセスの合理化といったGHG排出量の削減策をロードマップに沿って着実に実行していきます。

ロードマップやその進捗については、当社ホームページ上をご参照ください。

https://www.mcgc.com/sustainability/environment/carbonneutral.html

 

また、自然災害の増加に伴い、沿岸地域の工場が災害によって操業停止するリスクに備え、被害の最小化と事業継続性の確保を推進しております。

加えて、これらの取組みには、ステークホルダーの理解と協力が不可欠であるため、気候関連などサステナビリティ情報の開示やエンゲージメントの充実化に努めてまいります。その一環として、インパクトの評価結果を含め、気候関連の情報を、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に沿った形で開示しております。詳細については、当社ホームページのTCFD提言に基づく報告をご参照ください。

https://www.mcgc.com/ir/library/tcfd.html

 

ロ 気候関連の事業機会と対応

当社グループは、カーボンニュートラルに移行する社会でも競争力のある企業をめざし、市場の成長性、競争力、サステナビリティにフォーカスしたポートフォリオへの変革を通じて、カーボンニュートラル実現に貢献する事業へ注力していきます。具体的には、モビリティ軽量化材料、車載用電池材料、バイオプラスチック、炭素繊維複合材料などの注力事業について、事業規模の拡大、収益力を強化していきます。

 

ハ 気候関連の指標と目標

当社グループは、マテリアリティの進捗を測る経営指標(MOS指標)の中に、GHG排出量の削減率を設定し、中期目標を掲げ、毎年進捗を評価していきます。詳細については、「(1)サステナビリティ全般 ④指標と目標」をご参照ください。また、GHG排出量は以下のとおりであります。

2023年度実績は、2024年9月以降に当社ホームページ上で公表する統合報告書「KAITEKIレポート」をご参照ください。また、エネルギー消費量等の関連する指標についても、統合報告書をご参照ください。

 

GHG排出量

(単位:千t-CO2e)

区分

2021年実績

2022年度実績

Scope1+2

16,079

14,369

Scope1

7,829

6,685

Scope2

8,250

7,685

 

(注)三菱ケミカル㈱、田辺三菱製薬㈱、㈱生命科学インスティテュート及び日本酸素ホールディングス㈱とこれらの国内及び海外のグループ会社を対象としています。

 

 

(3)人的資本

当社グループにとって、人材は価値創造の源泉であり、企業としての成長やPurpose実現の原動力そのものです。従業員一人ひとりが会社のめざす姿に共感し、多様な考えやスキル、日々の経験や挑戦の機会を活かして自身の持つポテンシャルを最大限に発揮していくことが、創造性や生産性を向上させ、組織全体の発展に結びつきます。私たちは従業員を尊重し、自分らしく生き生きと働くことができる環境を作っていけるように、方針や制度の整備、文化の変革に取り組み、組織の持続的な成長に向け努力しています。

<方針>

[人材の育成]

市場におけるプレゼンスを更に高め、ビジネス機会の拡大をめざすべく、既存の思考に囚われず、課題を自律的に解決に導くことができる人材を育成する。

[組織風土の醸成と環境整備]

意欲ある人材が、多様な思考を活かして最大限に能力を発揮することができるインクルーシブな組織風土の醸成と必要な環境整備に取り組む。

[グループ共通基盤の構築]

意思決定の効率性と事業成長の促進のための適切な権限移譲が行われた組織において、グループ全体の人的資本を最大化するためのグループ共通の組織基盤を構築する。

 

以下に人的資本に関する「戦略」、「ガバナンス」、「リスク管理」、「指標と目標」を示します。

 

① 戦略

Purpose実現に向け、従業員が自らのめざす姿を自律的に捉え、そのポテンシャルを最大限に引き出せるよう、組織風土や文化、環境を整備し、成長と学習の機会提供に取り組んでいきます。

そのために、上記方針に沿って、「次世代リーダー層の育成」、「企業文化の変革と価値創造マインドの醸成促進」、「人材戦略としてのDE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)の推進」、「働きやすい環境の整備」、「全体最適実現のためのグローバル一体運営体制の構築」、「グローバルでの人事ガバナンスの強化」の6つをメイン施策として据え、これらを重点的に進めています。

 

イ 次世代リーダー層の育成

変化の激しい環境において、正解がない中でも一歩前へ踏み出していくためには「自律的に課題を発見し、解決に導くことができる人材」の育成が必須です。人材育成プログラムをグローバルで構築・運用し、グループ・グローバルレベルでの経営リーダー候補の育成加速に取り組んでいます。

 

当社の考える経営リーダーの要件定義

基本的資質

・人間力(信頼・志・誠実さ・好奇心・胆力)

・Our Way(誠実、尊重、果敢、共創、完遂)の体現

・協働能力(コラボレーション、ステークホルダーリレーション)

経営コンピテンシー

・市場洞察力

・戦略思考

・未来志向に基づく変革力

・組織・人材マネジメント力(心理的安全性、多様性の受容力、ビジョン構築力、レジリエンス)

・結果へのこだわり

知識・経験

・既存事業の枠にとらわれない、社会課題を踏まえた高い専門性・尖った強み

・社外を含めた多様な経験

・幅広い教養

結果・実績

・中長期視点に基づき果敢な意思決定を通じた事業実績

・変革を牽引した顕著な実績

 

 

社内外でのカリキュラム受講やスキルアップの機会を通じて、候補者にグローバルでの活躍を見据えたリーダーとしての自覚を促していきます。

また、経営リーダーとしての共通的要件に加えて個々のポジションにおける人材要件を定め、重要ポジションについては継続的な後継者計画を運用することで、人材パイプラインを強化していきます。

 

ロ 企業文化の変革と価値創造マインドの醸成促進

・意欲を持った人材がより活躍し、それぞれの強みを活かしてチャレンジできる環境を創るため、従業員一人ひとりが自律的にキャリアを開発するための支援の提供と環境の整備に取り組んでいます。キャリア関連イベントやセミナーの参加者は年々増えており、主体的にキャリアを考える場であるキャリアデザインワークショップは2023年度は開催数17回に対し、計408名が参加しました。

 

  ワークショップ参加者数

年度

参加者数・回数

2020

342名/15回

2021

357名/15回

2022

252名/11回

2023

408名/17回

 

 

・上司と部下の間で個別に行われる1on1やキャリア面談を通じて双方向でのコミュニケーションを強化することで、キャリア意識の醸成やチャレンジする機会の創出、課題の共有などを行い、従業員のキャリア形成を支援しています。

・従業員が挑戦の機会を前向きに捉え、一人ひとりの行動変容へと繋がるマインドの育成にも取り組んでいます。社内公募の頻度を四半期毎から毎月に高めたことで、募集・応募ともにタイムリーに活用できるようになりました。公募による異動数は前年度比約1.6倍に増加しており、制度の社内浸透が進んでいます。今後は会社主導での異動との組み合わせを改善することで、挑戦機会の提供は継続しつつ、より速やかな要員充足と適所適材を図っていきます。

・成長・挑戦の機会の提供に加え、異文化・多様性の受容の深化を目的に、グローバルでの若手人材の海外育成プログラムも2023年度から始動しました。初年度は15名を公募し、各ポジションに立候補した若手人材が日本、タイ、ドイツといったグループ会社へ駐在し、実務経験を積んでいます。

・事業・技術環境の変化に対応するためのリスキリングや、自主的なスキルアップへの支援も行っています。オンラインでの自主学習ツールは従業員がプラットフォームを通じて自由に受講できる環境を整備しました。

・デジタル技術やデジタルビジネスモデルを活用してより効果的・効率的な働き方を実現していくスマート人材の育成にも注力しており、研修プログラムの開設や実務者同士の交流、社内事例の公開など部署や担当を越えた取組みを行っています。また、若手社員がメンターとなってマネジメント層のデジタルリテラシー向上を図りつつ、世代や立場を越えた人材の交流による行動変容を促すリバースITメンター制度を2022年度より実施しています。

 

ハ 人材戦略としてのDE&I

・より高い次元での挑戦と共創を実現できる組織風土を醸成するべく、様々な考えや特性を持った人材が属性に関わらずチャレンジできる環境の整備に取り組んでいます。多様な個を尊重し、市場価値や成果に沿って報酬・処遇を決めることは、これらのチャレンジを進めるにあたっての基盤となっています。

・多様な思考の理解推進に向け、機会作りにも注力しています。外部講師による講義や障がいを持つ方、LGBTQ当事者によるパネルディスカッションや経営層の意見交換といった従業員の関心が高いテーマを揃え、よりDE&Iを身近に感じてもらうべく取り組んでいます。

・様々なバックグラウンドを持った人材をマネジメント層として登用し、全社的な多様性の推進と包摂的な文化の醸成により一層取り組んでいきます。当社グループのサステナビリティ指標であるMOS指標にも「経営層のダイバーシティ」は組み入れられており(「④ 指標と目標」を参照)、KPIとして管理しながらめざす姿の実現に向けて前進していきます。

 

ニ 働きやすい環境の整備

・従業員がその能力を最大限発揮していくために最適な環境を整備し、生産性高く安心して働くことができる取組みを行っています。育児や介護、治療との両立に対しては制度支援だけでなく、専門家の講演や職位者への研修などを通じて相互理解を促進しています。男女とも育児休暇の取得を促進するため、経験談の共有や取得率の開示といった積極的な情報公開を行い、相互理解を深めた働きやすい職場をめざしています。(男女の育児休暇取得率については、「5 従業員の状況 (4) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」を参照ください。)

また、高いパフォーマンスを出すには業務から離れてリフレッシュすることも重要であることから連続休暇の取得を推奨しています。職位者は部下の休暇取得率も評価の対象となっているため、全社的に計画的な取得を促す文化が醸成されてきました。2023年度の主要事業会社3社の休暇取得率は80.6%となっています。

・従業員の健康増進については、健康診断後のフォローアップ、生活習慣改善への取組み、メンタルヘルスケア、禁煙のサポートおよびエイジフレンドリー対策など、様々な角度からアプローチを続けています。こうした活動が認められ、健康経営優良法人(ホワイト500)の認定も受けています。当社のサステナビリティ指標であるMOS指標にも「ウェルネス意識」を組み入れており(「④指標と目標」を参照)、定期的に実施するエンゲージメントサーベイを利用して従業員の意識を把握し、KPIとの比較から施策のブラッシュアップに繋げています。

 

ホ 全体最適実現のためのグローバル一体運営体制の構築

意思決定の効率性と事業成長を加速させるフラットでスリムな組織体制により、全体最適視点でのマネジメントを可能にする体制構築に取り組んでいます。グローバルでの共通方針を定めることで、ガバナンスを高めるとともに、効率的な組織運営に繋げています。また、全社的な人材情報の可視化を進めるほか、各地域のマネジメント層が一斉に集う機会を設けたり、ビジネス・コーポレート機能ごとにグローバルミーティングを開催したりと横の繋がりを強化し、より強固な体制の実現に取り組んでいます。

 

へ グローバルでの人事ガバナンスの強化

・グループ全体の人的資本を最大化するため、グループ共通の組織基盤の整備に取り組んでいます。人事業務におけるテクノロジーの活用や、グローバルでの人事施策・人事管理の共通化を進めることで、人事ガバナンスを強化するとともに人材マネジメントの高度化の実現をめざしています。人事基盤システムに関してはグループ共通のツールとして導入に取り組んできており、連結子会社(日本酸素ホールディングスグループを除く)の8割強を網羅して稼働を開始しました。これにより人材情報の統合管理が可能となるため、今後は活用領域の拡大を進め、タレントマネジメントの高度化や経営人材候補の計画的な育成を実現していきます。

・グローバル共通の懲戒マネジメントポリシーを制定することで、懲戒の公正・適正な実施にも取り組んでいます。懲戒を行う際に遵守すべき事項や取るべき手順を定めることで、懲戒対象となる従業員の権利も保護した上で、適切な処罰がなされる状態を構築し、コンプライアンス推進体制の強化に繋げています。

 

 

 

② ガバナンス

当社グループでは、人材戦略や人事組織の有効性を確保するために、以下の施策を行っております。

 

イ 経営による人材戦略のモニタリング

当社グループのサステナビリティ指標であるMOS指標において、「従業員エンゲージメント」、「経営層のダイバーシティ」、「ウェルネス意識」を人材戦略・人事施策に関する指標として設定し、執行役社長をはじめとした経営陣のリーダーシップのもとで定期的に進捗をモニタリングしています。執行役会議や取締役会における重要な施策の執行状況のモニタリングや、定期的に行われるエンゲージメントサーベイの報告を通じて戦略・施策の有効性を確認するとともに、経営戦略の策定にCHROが参画することで経営戦略と人材戦略の連動性を高めています。

 

ロ 全体最適実現のための整合性・一体感のある組織運営

人事ファンクションの組織運営は、HQ(Head Quarter、グローバル本社機能)が策定する全体戦略・方針に基づき、各リージョン・グループ各社が自律的に人事施策を実行する形態を採っています。これにより、施策の整合性や組織としての一体感を維持した上で、よりスピーディな組織運営を実現しています。

各施策の整合性を維持するために、人事業務におけるガバナンスポリシーを設けているほか、世界各地域の人事責任者(リージョンCHRO)との定期的な会議により戦略・方針の共有や人事施策のブラッシュアップを図り、リージョン内での対話を促進することで、戦略・方針の浸透に繋げています。

 

ハ 人事施策・オペレーション

グローバルや各リージョンの単位で人事施策・オペレーションの統合・共通化を進めることで、その有効性や効率性の向上を図っています。例えば、人事基盤システムの統合によるグローバルでの要員管理・タレントマネジメントの強化や、人事評価制度・プロセスの統合・共通化による評価尺度の統一と、それによる評価への納得感や従業員エンゲージメントの向上、給与計算を始めとする共通機能の集約による効率化などが挙げられます。新たな施策の導入・推進は人事ファンクション内でプロジェクト的に管理するほか、その重要度に応じて執行役会議で審議するなどして、その妥当性を確保しています。

 

 

③ リスク管理

上述の人事戦略における重要なリスク、およびそれに対する主な対応策は以下のとおりです。

リスク

主な対応策

人材確保に関するリスク

人材は経営戦略実現の原動力であることから、必要な人材を確保できないことで、経営戦略の実現や経営計画の進捗に遅れが生ずる恐れがあります。

経営戦略の実現に必要な人材ポートフォリオの具体化を進めると共に、人材を継続的に確保できるよう、以下の施策により当社グループで働くことの価値や従業員エンゲージメントを高め、採用競争力の向上とリテンションの強化に繋げています。

・タレントマネジメント・人材育成の強化

・自律的なキャリア開発の支援・成長環境の創出

・安全・安心かつ柔軟・多様な働き方を可能とする職場環境の整備

採用ブランディングとチャネルの多様化

DE&Iに関するリスク

イノベーションの源泉である多様性が欠如することで企業としての成長が阻害されたり、レジリエンスが低下する恐れがあります。

従業員の多様性を確保すると共に、それを受け入れ、活かすための組織風土を醸成するべく、以下の施策に取り組んでいます。

・グローバルでの適所適材実現のための人材登用

・属性に基づく人事管理の廃止

・採用チャネルの多様化等によるキャリア採用の強化と適切な要員管理

・DE&I関連KPIによるモニタリングと組織・地域等の状況に応じた施策の推進

人権啓発やセクハラ防止研修、障がい者雇用研修といった継続的な啓発活動の推進

・同性・事実上のパートナーも配偶者とみなした制度運用

 

 

④ 指標と目標

当社グループのサステナビリティ指標であるMOS指標において、「従業員エンゲージメント」、「経営層のダイバーシティ」、「ウェルネス意識」を人材戦略・人事施策に関する指標として設定しています。

指標

2025年度目標

2022年度実績

2023年度実績

従業員エンゲージメント

80

68%

69

経営層のダイバーシティ

40

24%

30

ウェルネス意識

85

77%

78

 

「従業員エンゲージメント」、「ウェルネス意識」は、定期的に実施するエンゲージメントサーベイにおける関連設問に対する好意的回答者の割合を示しており、その平均値に基づいて目標設定するほか、個別設問の結果・回答傾向を人事施策に反映させています。

また、上記3指標のほか、DE&Iや働きやすい環境の整備に関する各種項目を指標として管理・把握することで、人材戦略の進捗状況をモニタリングしています。

 

●人的資本に関わる詳細な活動は、最新の統合報告書・非財務データ集をご参照ください。

統合報告書 (https://www.mcgc.com/ir/library/kaiteki_report.html)

非財務データ集(https://www.mcgc.com/sustainability/data.html)

 

 

3 【事業等のリスク】

 

1.当社グループのリスク管理について

(1)リスクに対する考え方

 当社グループにおいては、複雑さと不安定さが増していく経営環境に対応するため、リスクを「目標の達成に好ましい、好ましくないまたはその両方の影響をもたらす不確かな事象」と定義し、全社的かつ総合的なリスク管理体制を整備、運用することで、先を見越したリスク管理と適切なリスクテイクを伴う経営を推進しています。

 

(2)リスク管理体制

当社グループは、執行役社長を当社グループにおけるリスク管理を統括する最高責任者とし、執行役社長と各執行役・執行役員から構成されるERM委員会を設置しています。ERM委員会においては、グループのリスク管理の基本方針等重要事項を審議し、またグループ全体に大きな影響を及ぼしうる重大リスクを識別・特定し、その管理状況をモニタリングします。また、リスク管理の状況は、取締役会に報告し、その監督を受けています。各組織においては、ビジネスグループ、コーポレートファンクションの長がERM部門責任者となり、その下で実務を担うERM部門管理者及びERM部門担当者を配置して、組織レベルでのリスク管理を推進しています。

 


 

(3)リスク管理の推進

当社は、事業ポートフォリオ戦略や事業基盤、環境や社会への影響など、当社グループにとっての課題を分類、整理し、社外有識者へのヒアリング、社外取締役連絡会での討議などを通じて多角的な観点から確認したうえで、当社グループが取り組むべき重要課題(マテリアリティ)を特定しています。リスク管理におけるリスクカテゴリーについては、このマテリアリティに基づき、当社グループの経営に影響を与えうるリスクを抽出、分類し、31個のリスクカテゴリーを定めています。

 

 

マテリアリティ

マテリアリティから分類された31個のリスクカテゴリー(2023年度)


 

 

当社グループにおけるリスク管理は、経営層が当社グループの経営に影響を与えるリスクを予め特定し、グループをあげて全社的に取り組む活動(全社視点リスク)と、各組織においてリスクを特定し、組織毎に対応を行う活動(組織独自視点リスク)とを両輪とした活動になっています。全社視点リスクについては、リスク主管役員がリスク主管部門を指揮し、組織独自視点リスクについては、各組織が自ら自組織の保有するリスクを特定・評価し、それぞれ対応策を検討・実行します。各組織で実施しているリスク対応策の実施状況については、リスク主管部門がモニタリングし、ERM委員会に報告するとともに、必要に応じて各組織に対して追加対応策実行の要請をします。この全社視点リスクの一連の活動は、ERM委員会での審議・報告が行われます。

 


 

(4)重大リスクへの対応

ERM委員会では、国際情勢や事業環境に照らして、近い将来にグループ全体に影響を与えうる重大なリスクを特定し、重大リスクとして対応を進めています。重大リスクについては、定期的にERM委員会において対応状況の報告がなされ、リスク対応策の有効性を評価し、必要に応じて各組織に対し追加対応策の要請を出すなど、適切にリスク管理が実行されるよう努めています。なお、2023年度は、地政学リスク、サプライチェーンリスク、情報セキュリティリスクなど9つのリスクを重大リスクとして特定し、個別事情に応じた対応策を講じ、当社の経営成績及び財政状態に与える影響の回避・低減に取り組んでおります。

 

(5)戦略リスクへの対応

中長期の戦略、事業目標や計画、投資など経営判断に起因して顕在化しうる戦略リスクは、機会の側面と脅威の側面の両方を有します。当社は、戦略立案から投資の意思決定に至るまでの成長機会と脅威双方の把握と可視化を行い、将来の期待利益だけでなく、脅威に関する評価を視点に加えた適切なリスクテイクを伴う経営を推進しています。

 

(6)クライシス(危機)への対応

 当社では、グループの役職員等の生命及び安全、並びに事業継続、社会的信用、企業価値等に多大な影響を与えるリスクが顕在化またはそのおそれがある事態が生じた場合に、損害の拡大抑止と早急な復旧を行うための危機管理体制の整備を進めています。対象とする危機事象には、大規模自然災害、大規模情報システム障害・情報セキュリティインシデント、パンデミック、保安及び環境上の重大事故、戦争・大規模テロを含みます。各組織は、危機事象の発生に備え、平時から事前対策の実行、BCPの整備、訓練の実施などの活動を行うとともに、危機事象の発生時には、有事の危機管理体制の下、人命・安全確保を最優先として、当社グループの財産・資産並びに社会に与える影響の最小化、社会的信用の保護を基本方針として、事態の収束に向けて最善を尽くします。

 

2.事業活動における個別リスク

 当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性のある主なリスクには、以下のようなものがあります。なお、以下の事項は有価証券報告書提出日(2024年6月25日)現在において判断した記載となっています。

 

(1)事業分野ごとのリスク

 当社グループの製品の多くは、国内外の需要や製品市況、原油・ナフサ・ユーティリティ等の原燃料・材料の価格や調達数量、為替、関連法規制等によって影響を受ける可能性があります。事業分野ごとに想定されるリスクとその対応策は以下のとおりです。なお、現時点における想定・予測を超えて事業環境が変化した場合、また当社の講じるリスク対応策が有効に機能しない場合には、当社の業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 

①機能商品分野

事業分野

機能商品分野(スペシャリティマテリアルズセグメント)

想定されるリスク及び影響

機能商品分野の製品は、品質・性能面で絶えず高度化が求められており、市場ニーズに合致した製品を適時に開発・提供する必要があります。市場ニーズが当社グループの予想を超えて大きく変化した場合または市場ニーズに合致した製品を適時に提供できない場合は、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、特定の地域やサプライヤーに依存している原材料もあり、必要な原材料を適時に確保できない場合は、業績に影響を与える可能性があります。

情報電子関連製品の中には、アジア等海外のメーカーから原材料を購入しているものも多く、その生産拠点で災害その他の要因により生産が停滞するなど、供給体制に不測の事態が生じた場合は、業績に影響を与える可能性があります。また、各種フィルム、シート製品については液晶パネル等の需要に負うところが大きく、需要動向が予測以上に変化した場合は、業績に影響を与える可能性があります。

リスク対策

このような事業の特性を踏まえ、当社グループにおいては業績に影響を及ぼす機会の追求とリスクの最小化を図るべく、以下の対策を講じております。

・製品の品質・性能面での継続的な高度化

・原材料の複数購買化及び代替原料の検討

・販売動向予測に基づく生産計画の調整及び在庫管理の徹底

・製造コストダウンによる競争力の確保

・新規顧客の獲得及び新規用途の開発

これらの対策により、急激な価格変動や需給バランスの変化、特定地域・サプライヤーの供給体制の変動に備えています。

 

 

②素材分野

事業分野

素材分野(ベーシックマテリアルズセグメント、MMAセグメント、産業ガスセグメント)

想定される

リスク及び

影響

 素材分野では、ナフサ等の原料を大量に消費するとともに、製造プロセスにおいて相当量の電気や蒸気を使用しております。そのため、原油価格、原燃料またはナフサの需給バランス、為替レート等の影響による急激なナフサ・燃料等の価格変動に対し、製品価格の是正を十分に行うことができない場合または製品価格の是正が遅れた場合は、業績に影響を与える可能性があります。また、特定の地域やサプライヤーに依存している原燃料もあり、必要な原燃料を適時に確保できない場合は、業績に影響を与える可能性があります。さらに、世界的な景気後退や他社による生産能力増強等により、各製品の需給バランスが崩れ、設備投資に見合う収益、成果を上げられない場合などには、業績に影響を与える可能性があります。

 また、素材分野の製品には特定の取引先への依存度が高いものがあり、例えば、特定の鉄鋼メーカーへの依存度が高いコークス事業は、粗鋼の需給状況の大きな変動等により当該鉄鋼メーカーの粗鋼生産量が減少した場合はその影響を受けるなど、特定の取引先における需要等が、業績に影響を与える可能性があります。

リスク対策

このような事業の特性を踏まえ、当社グループにおいては業績に影響を及ぼす機会の追求とリスクの最小化を図るべく、以下の対策を講じております。

・原燃料価格動向の早期の情報収集

・販売動向予測に基づく生産計画の調整及び在庫管理の徹底

・原燃料の複数購買化の実施

・製造コストダウンによる競争力の確保

・特許対応による知的財産の保護

・コークス炉の高効率化による競争力の強化

・輸出販売拡大のための出荷設備の増強など、最適な生産及び販売体制構築に向けた構造改革

これらの対策により、急激な価格変動や需給バランスの変化、特定の取引先の需要変動に備えています。

 

 

③ヘルスケア分野

事業分野

ヘルスケア分野(ヘルスケアセグメント)

想定される

リスク及び

影響

一般的に新薬の研究開発期間は他業種に比べて長期にわたる上、新薬が承認取得に至る確率も高くないことから、製品化の確度及び時期について正確な予測が困難な状況にあり、計画どおりに新薬を製品化できなかった場合には、業績に影響を与える可能性があります。新薬が製品化した場合においても、新薬が広く普及した段階で新たな副作用等が報告されたことにより販売数量が減少した場合、または承認が取り消された場合などは、業績に影響を与える可能性があります。

 医療用医薬品事業は、診療報酬や薬価基準等の各種医療保険制度による影響を強く受けることから、各国の医療費抑制策の動向等によっては、業績に影響を与える可能性があります。

 共同研究・開発、製品導出入、製造、販売など各種業務に関する委受託を行っております。提携先との契約の変更・解消、提携先の経営環境の悪化及び経営方針の変更並びにこれら企業からの医薬品供給の遅延または停滞が発生した場合、業績に影響を与える可能性があります。

リスク対策

このような事業の特性を踏まえ、当社グループにおいては業績に影響を及ぼす機会の追求とリスクの最小化を図るべく、以下の対策を講じております。

・中枢神経・免疫炎症・がんを注力領域に研究資源の集中

・外部からの導入によるパイプラインの充実

・パイプラインの定期的な評価を通じた成功確度の向上

・開発段階から市販後における安全性情報の収集・分析を行うグローバルな安全性管理体制の構築

・製品の品質管理の厳格化、原料調達体制の多様化・分散化による安定供給

・提携先やサプライヤーとの信頼できるパートナーシップの構築

これらの対策により、計画通りに新薬が製品化できない影響及び医薬品の供給遅延・欠品、副作用の発生による影響に備えています。

 

 

④サービス業務(その他)

事業分野

サービス業務(その他)

想定されるリスク及び影響

エンジニアリングや物流といった当社グループのサービス業務を担う会社において、これらの会社は当社グループ外からの受注もあります。これらの顧客とは、日常的にコミュニケーションをとり、顧客要望の的確な把握、提案型営業の強化に努めていますが、グループ内外の需要や市況等の大幅な変動があった場合には、業績に影響を与える可能性があります。

リスク対策

エンジニアリングや物流等のサービス業については、各事業の特性を踏まえ、業績に影響を及ぼす機会の追求とリスクの最小化を図るべく、以下の対策を講じております。

・DX(デジタルトランスフォーメーション)ツールの導入による各種管理活動の自動化、効率化の推進

・市場動向の早期情報収集

・物流業界や建設業界における、いわゆる2024年問題を踏まえた適切な労働環境の整備や従事者の処遇改善

これらの対策により、市場環境の変化、特定の取引先の需要変動に備えています。

 

 

 

(2)グループ全体に影響のあるリスク

①サプライチェーン・地政学に関連するリスク

リスク項目

サプライチェーン(地政学リスク・経済安全保障リスクを含む)

想定されるリスク及び影響

・当社グループの事業に関連する国・地域における大規模な自然災害、パンデミック、事故、ユーティリティ供給不足等インフラの未整備、貿易摩擦などの経済や金融環境の変動等、国・地域固有のリスクなどにより、サプライチェーンが寸断され、業績に影響を与える可能性があります。

・原材料ソースが偏在している部分について当該原材料の調達が困難な事態が発生した場合には、当社グループの生産・供給体制に影響が生じ、業績に影響を与える可能性があります。

・昨今のグローバルな物価上昇に伴う原材料価格の高騰の影響で、業績に影響を与える可能性があります。

・当社グループ製品が、法令違反を含むサプライチェーンにおける人権侵害や環境問題等に起因する経済安全保障にかかわる問題に関係した場合、または、経済安全保障に関し他国・地域から経済的威圧を被るなどした場合に、原材料の調達や製品の販売に影響が生じ、業績に影響を与える可能性があります。

・原材料の調達及び製品の販売における物流サービスに関する委託先の人材不足の影響により、調達コストの増加や製品納入遅延などが生じ、業績に影響を与える可能性があります。

・当社グループの事業に関連する国・地域における紛争、テロリズム、内乱、暴動、デモ、治安悪化等の地政学的問題、法規則、税務、労働環境や慣習等に起因する予測不可能な事態の発生等のカントリーリスクにより、原材料調達の困難や遅延、または、政府により海外送金規制が課されることなどで、当社グループ製品の供給遅延や販売代金回収不能等の事業環境の悪化などが生じて、業績に影響を与える可能性があります。

・特に、地政学リスクの増大が更に他の地域・事業に波及するだけでなく、原燃料の価格上昇及び輸送コストの上昇などによって経済活動にも影響を及ぼしており、また、経済安全保障をめぐる国際情勢の変化によるサプライチェーンの途絶などの可能性も孕んでおり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性のある重要度の高いリスクと考えています。

リスク対策

・調達先の分散や代替原材料の検討、また、安全操業による製品の生産や製品の品質の維持・向上に努め、安定的な調達・生産・供給体制を構築していくとともに、売上債権についても保険等の活用により、保全に努めています。

・取引先への人権デューデリジェンスを実施することで、事業活動を持続可能なものとするよう努めています。

・経済安全保障にかかるリスク対応推進体制を構築し、国際情勢や法令の制定・改正、規制動向などの情報収集・分析・提供をするなど、経済安全保障関連法令リスクについて適切な対応を行っています。

・当社グループ会社での情報収集や外部機関等を通じて事業を展開している国・地域のカントリーリスクの調査・情報収集・評価を行い、リスク対応のアクションプランの高度化を推進しています。

有事に備えた安全管理体制の整備・運用、事業継続計画(BCP)の強化などを行っています。

 

 

 

②情報セキュリティに関連するリスク

リスク項目

情報セキュリティ

想定されるリスク及び影響

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・サイバー犯罪者集団や利用するハードウェア・ソフトウェアの脆弱性、利用者の情報セキュリティに関するリテラシー不足等の要因により、自社システムもしくは自社利用クラウドサービスがサイバー攻撃を受けることで、企業活動(生産、販売、出荷、決済、開発等)が停止し、その結果、取引先に多大な影響を与え、その補償や活動再開のための対策などに追加費用が生じるだけでなく、社会的信用の失墜、ブランド価値が低下する可能性があります。

・自社または第三者が利用する技術情報、個人情報が社外に漏洩することで、競合他社や他国に機密情報が渡ってしまう、またそれらを技術転用されることで競争力の低下、契約相手から秘密保持契約違反を問われる可能性があります。

・個人情報については犯罪に利用されることにより、個人から損害賠償請求を受ける可能性、個人情報保護委員会など各国監督当局から指導・制裁を受ける可能性、刑事罰(個人情報保護法など)を受ける可能性があります。

また、自然災害や事故等による大規模システム障害が発生することにより、自社の技術情報、個人情報が漏洩・消失する可能性があります。

リスク対策

 

・情報セキュリティ実行委員会を設置し、情報セキュリティに関するポリシーや規則の制定、各種セキュリティ施策をグローバルで進めています。

・セキュリティインシデント対応チーム(CSIRT)やセキュリティオペレーションセンター(SOC)を設置し、日々社内ネットワークやインターネット通信の監視、アンチウイルスソフト(NGAV)やふるまい検知(EDR)機能を利用したPCの挙動監視により、不正侵入の兆候の早期検知、対処に努めています。また、継続的にインシデント対応訓練を実施して対応強化を図っています。

・サイバー攻撃は日々変化し巧妙化しているため、対策は継続して実施するとともにそのレベルを向上させていく必要があります。

・IT資産の脆弱性管理強化

IT資産(ハードウェア、ソフトウェア等)の脆弱性を定期的にチェックし、必要に応じパッチやその他の対策を講じることで、セキュリティレベルを維持・向上させています。

・サイバー脅威情報収集・活用

サイバー攻撃を早期に、未然に対処することができるよう、最新のサイバー脅威情報を収集し、それを基にセキュリティ対策の更新・強化に努めています。

・データの管理強化

情報資産管理レベル毎に保管区分や持ち出し/閲覧の手続きを厳格化するとともに、PCの管理者権限の制限やデータの読み取り/書き出しの制限等を通じて、容易に情報の持ち出しができないよう管理を強化しています。

・情報セキュリティ教育の実施

情報セキュリティに関する知識と意識を向上させるために、全従業員を対象に、E-learning(情報セキュリティ、情報管理等)や標的型攻撃メール訓練を継続的に実施しています。

・ITインフラ基盤(ネットワーク、データセンターなど)や情報資産の冗長化

自然災害や事故による情報システム障害に備え、システムや情報資産の重要度に応じて冗長化を実施し、一部のシステムが停止しても情報の消失リスクを低減、業務を継続できるような環境を構築します。

 

 

 

③DXに関連するリスク

リスク項目

デジタルトランスフォーメーション(DX)

想定されるリスク及び影響

 

・レガシーシステムの残存により、旧式のシステムやプロセスが適切にアップグレードされず、業務の円滑な運営やプロセス改革が効率的に行われない、また、進化するデジタル技術を効果的に活用することができず、競合他社に対して競争力で後れを取ることにより、新たな市場機会を失うだけでなく、既存の製品についても市場ニーズを適切に反映できず売上収益を失うことにつながり、将来における当社グループの業績に大きな影響を与える可能性があります。

・優秀なデジタル人材の確保及び育成が継続的になされないことにより、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進が遅れる可能性があります。

・DX投資が計画的かつ適切な投資が行われないことにより、将来に過大な投資が必要になるなど財務的な悪影響が生じるだけでなく、必要な改革プロジェクトの進行が遅れ、将来のビジネス機会を失う可能性があります。

リスク対策

 

・当社グループの業績改善に貢献するプロセス改革や効率化につながるデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進することで、「デジタルケミカルカンパニー」となることをめざしています。

・従業員一人ひとりがデジタル技術やデジタルビジネスモデルを活用した働き方を実現する「スマート人材」となることをめざした教育体系の整備を進めています。

・事業部門でのDX推進(市民開発)とそのための教育・サポート、ガイドラインの整備(DXツール、生成AI利用等)を進めています。

・ビジネスプロセスの標準化・自動化の加速に取り組んでいます。

・データ戦略をもとにした全社データ基盤整備と利活用の推進に取り組んでいます。

・基幹システムの統合をはじめ、DXツールやソリューションの標準化によるグローバルでの全体最適化を推進しています。

・デジタルインフラの整備・更新のための計画的かつ継続的な投資を行っています。

 

 

④法規制対応/コンプライアンスに関連するリスク

リスク項目

法規制対応/コンプライアンス

想定されるリスク及び影響

・法令・社内規則違反等のコンプライアンス違反が発生した場合、違反の内容によっては、業務停止・許認可の取消・課徴金の支払等の行政処分、取引停止・取引先への損害の賠償、刑事罰等が課せられる可能性があります。これらの場合、当社グループに多額の損失が発生するだけでなく、当社グループのブランドイメージ・社会的信用力が著しく低下することも予想され、当社グループの業績に大きな影響を与える可能性があります。

・上記の違反に対しては、是正及び再発防止措置をとる必要があり、その程度によっては業務負荷が大幅にかかることになり、従業員の疲弊、モチベーションの低下、離職率の増加につながるおそれがあります。

・当社グループが事業活動を進めるなかで影響し得る国内外の各種法規制の変更や強化、新たな法制度の整備等により、事業活動の機会も影響を受け、法規制への対応のために投資や労務負荷などの追加コストが発生する可能性があります。

・法規制に違反することにより、課徴金・罰金、取引先からの損害賠償請求等の金銭的な損失のみならず、刑事罰が下される、許認可等を取り消されるなど法律上、契約上の責任が問われ、レピュテーションやブランド価値が毀損され、取引先から取引を停止されるなど、当社グループの経営成績に多大な影響が生じ、事業の継続にも影響する可能性があります。

リスク対策

・コンプライアンス違反を起こさせない取組みとして、「不正のトライアングル」を意識して、①内部統制の仕組みの文書化等によるプロセス上の統制の強化を図るとともに、②コンプライアンス遵守の企業風土を醸成するために、コンプライアンスガイドブックやメールマガジン、イントラネット等、各種ツールを用いた情報の提供・発信や定期的な各種のコンプライアンス研修を実施し、③内部通報制度の整備・運用を含め、従業員の「声をあげる」環境の整備に努めています。

・上記の様々な取組みを効果的・効率的に実施するために、チーフコンプライアンスオフィサーを頂点とする「コンプライアンス推進体制」を整備するとともに、グループワイドに適用される「コンプライアンスプログラム」を制定しています。

・上記コンプライアンスプログラムに沿って、先に述べた各種の啓発・教育活動や内部通報制度の整備・運用に加えて、経営トップによるコンプライアンスメッセージの発信や必要な規則類の整備、従業員のコンプライアンス意識に係る定期的なモニタリングを実施しています

・コンプライアンス違反が発生した場合には、その迅速な是正対応や適切な社内処分を行う体制を整備しています。

・各法分野、各地域に担当の部門を設置し、現地法律事務所などを活用しながら各国の法規制動向をモニタリングしています。

・法令遵守のために各種社内規則を整備し、国内外を含めた従業員に社内周知を行っています。

・事業活動に関係する各種法規制に関する従業員教育を定期的に実施し、遵法意識を高める活動を行っています。

 

 

⑤人権に関連するリスク

リスク項目

人権

想定されるリスク及び影響

・近年欧米を中心とした児童労働や強制労働などを禁止する人権に関する法規制の強化がなされるなか、当社グループだけでなく、当社グループと取引のあるサプライチェーン先において、人権侵害に関与する事案が発生することにより、社会的信頼やブランド力の低下、取引停止などに繋がり、業績に影響を与える可能性があります。

・職場で差別やハラスメント行為が発生した場合には、従業員の健康の悪化やモチベーションの低下、離職率の増加などに繋がるだけでなく、当該行為が悪質だった場合、または、その対応が遅れたり、対応を誤った場合には、当事者による訴訟の提起やマスメディアによる批判など社会的な信用度の低下を招くおそれがあります。

リスク対策

・世界人権宣言、国連グローバル・コンパクト、国連のビジネスと人権に関する指導原則、及びISO26000などの国際規範に準拠した具体的な指針として「人権の尊重並びに雇用・労働に関するグローバルポリシー」を定めて、従業員への啓発や教育への取組みを行い、また、人権侵害の是正・救済体制の整備も実施しております。

・各国で適用される法令や人権に関する最善の慣行の遵守、従業員満足度の向上に努めています。

・適切なサプライチェーンを運営しながらグローバルな事業活動を持続的に展開していけるよう、社内や取引先等への人権デューデリジェンスを進めております。

 

 

 

⑥大規模自然災害に関連するリスク

リスク項目

大規模自然災害

想定される

リスク及び

影響

・地震、津波、台風、洪水、山火事等の大規模な自然災害が発生することにより、従業員とその家族への人的な被害の発生、事業所、製造所等における建屋や設備の損壊、道路、公共交通機関や社会インフラ(電気・ガス・水道)の寸断が生じ、当社グループにおける開発・製造・販売等の事業活動が一時的に停止する可能性があります。

・当社グループに対する自然災害の直接の影響が軽微であったとしても、サプライチェーンや物流関係が被害を受けることで、原材料の調達不足、輸送手段の確保困難により製造や出荷等の遅延、停止が想定され、市場への製品供給に支障がでるおそれがあります。

・自然災害の被害が広範囲に及び、その復旧・復興が長期にわたる場合には、製造設備等の復旧費用の増大、事業計画の大幅な見直し、消費マインドの冷え込みによる需要減少など、当社グループの業績に多大な影響を与える可能性があります。 

リスク対策

・大規模自然災害が発生した場合に備え、BCM(Business Continuity Management)ガイドラインや災害対策本部マニュアル等を策定するとともに、いち早く従業員とその家族の安否確認を行う仕組みを導入しています。

・各製造所において事業継続計画(BCP)を策定するとともに、有事発生時の情報収集体制を整備し、平時から製造所間及び本社との情報共有にも力を入れています

・平時より緊急時に備えた訓練を各事業所において実施するとともに、想定される最大規模の被害を基準として、これに耐え得る設備の防災性能強化を継続的に図り、対策の改善に努めています。

・万一大規模自然災害が発生した場合には多大な損害が生じることが想定されるため、損害を軽減させるために損害保険へ加入するなどの対策を講じております。 

 

 

⑦事故・事業活動に起因する災害に関連するリスク

リスク項目

事故・事業活動に起因する災害

想定される

リスク及び

影響

・製造プラントにおいて火災爆発などの事故が発生した場合、設備復旧の費用だけでなく、製造、販売などの事業活動の停止による影響も想定され、当社グループの事業目標や業績に多大な影響を与える可能性があります。また、死傷者などの人的被害や地域社会へ影響を与えた場合、補償や復旧のための費用だけでなく、社会的信頼性の低下を招く可能性があります。

・製造プラントにおいては様々な化学物質を取り扱っており、これらの化学物質が製造所外に漏洩した場合、人的被害や環境汚染などの地域社会に影響を生じさせるだけでなく、これを解決、解消するための費用やレピュテーションによる社会的信頼性の低下を招き、業績に影響を与える可能性があります。

リスク対策

・製造プラントの運転管理、設備管理、プロセス安全評価、変更管理等の安全活動を継続的かつ確実に実施することで、事故・災害等の未然防止、被害・影響の拡大防止、再発防止に努めています。

・DX技術(ビッグデータやAI等)を使用した類似災害防止システムの構築等の災害防止のためのシステム開発にも取り組んでいます。

・万一事故が発生した場合には多大な損害が生じることが想定されるため、損害保険への加入や事業継続計画(BCP)に基づく情報収集体制を整え、中核となる事業の継続や事業の早期復旧への取組みを進めています。

 

 

 

⑧品質・安全性に関連するリスク

リスク項目

製品の品質・安全性

想定されるリスク及び影響

・当社グループで製造・販売している各種製品において品質・安全性上の問題が発生した場合には、製品の出荷停止や回収のための追加費用が発生する可能性があります。さらに、品質や安全性上の問題に起因して人的被害が発生した場合には、その補償を含め多大な損害が発生することになります。また、取引先や社会からの信頼も失墜し、当社ブランドの価値が著しく低下する可能性があります。

・当社グループで製造・販売している各種製品の品質・安全性上の問題が製造物責任(PL)問題に発展した場合は、業績に多大な影響を与える可能性があります。

・当社グループで製造・販売している医薬品において、安全対策を講じてはいるものの、予期せぬ副作用が発現した場合には、製造・販売中止や製品回収を行う可能性もあり、業績に影響を与える可能性があります。

リスク対策

・国際的な品質マネジメントシステム規格であるISO9001等に従って各種製品を製造・販売しており、また、各国・地域の法規制にも対応したそれぞれの事業特性に最適な品質保証体制を構築しています。

・万が一重大な品質問題が発生した場合に備え、社内外の関係者と連携し、適切な対応を協議した上で、速やかに対応するとともに、再発防止に向けた対応を協議・実施する体制を整えています。

・新製品上市時や品質改善時には、事前に製造物責任(PL)のリスク検討を確実に実施することでPL問題の未然防止を図っております。

・製造物責任賠償については、PL保険に加入し、万一の事態に備えております。

・当社グループの医薬品については、規制当局や社外内の関係者と連携し、患者さんや医療機関への迅速かつ適切な情報提供体制を構築する等により、適正使用に向けた安全性情報提供活動を実施しております。

 

 

⑨知的財産権に関連するリスク

リスク項目

知的財産

想定されるリスク及び影響

・当社グループが製造・販売する各種製品が他社の知的財産権等を侵害していた場合、第三者から差止訴訟や損害賠償請求訴訟を提起され、その解決にともなう訴訟費用がかかるだけでなく、当社の主張が認められないときには、対象製品の販売停止や商標の使用禁止、賠償金や当該製品の販売継続のためのロイヤルティー等の支払いが発生し、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

・第三者によって当社グループの知的財産権が侵害されることによって、当社製品の売上の減少、当社グループのブランドイメージの低下等の影響が考えられます。

リスク対策

・当社グループは、新商品の開発や既存製品の改良などに即して、第三者の知的財産権の監視、対策を継続的に実施しています。

・商標の使用可否判断を網羅的、継続的に実施しています。

・当社グループは、知的財産を適切に保護し、権利化を継続的に実施しています。

・第三者による当社グループの知的財産権の侵害を発見した場合には、適切かつ厳正な措置対応を実施しています。

 

 

 

⑩為替変動・金利変動に関連するリスク

リスク項目

為替レートの変動/有利子負債・金利変動

想定されるリスク及び影響

・当社グループは、海外において広く生産・販売活動を展開しており、輸出入を中心とした外貨建て取引に係る為替相場の変動が業績に影響を与える可能性があります。また、連結財務諸表においては、各地域における外貨建の売上、費用、資産、負債等は日本円に換算して表示しているため、換算に使用する為替相場の変動が業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

・金融マーケットで金利が上昇した場合や当社グループの業績変動等に伴い格付けが低下した場合には、借入や社債発行等の財務活動において条件が悪化し、支払利息が増加するなど、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

リスク対策

・当社グループでは、為替予約等を使ったヘッジにより、為替相場の変動が業績や財政状態に与える影響を低減するように努めております。

・当社グループは、国内外における事業の資金需要や社債償還、長期資金の期限到来に伴う返済に対し、フリー・キャッシュ・フローの状況を見ながら、資金調達手段及びソースの多様化を図り、安定的な資金調達を行っています。また、長期資金調達を固定利率にて行うこと等により、金利変動リスクの抑制に努めるとともに、継続的に財務体質の強化に取り組み、資金調達力の維持、向上を図っています。

 

 

上記以外にも、サステナビリティに関連するリスク、気候変動等環境問題に関連するリスク、人的資本に関連するリスクを認識しており、当該リスクについては、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載のとおりです。

 本報告書に記載したリスクが発現して当社の事業に悪影響を及ぼした場合には、繰延税金資産の取り崩しや、非金融資産の減損損失が発生する可能性があります。また、当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではなく、対応策もこれらのリスクを完全に排除するものではありません。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」といいます。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。なお、文中における将来に関する事項は、当社グループが当連結会計年度末現在において判断したものです。

また、当社グループは第1四半期連結会計期間よりIAS第12号「法人所得税」(2021年5月改訂)を適用しております。これに伴い、遡及処理の内容を反映させた数値で前連結会計年度との比較·分析を行っております。会計方針変更の詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 2.作成の基礎」に記載しております。

 

(1) 経営成績等の状況の概要

① 経営成績

ⅰ 業績全般

当社グループの当連結会計年度における事業環境は、経済活動の正常化に伴い緩やかな持ち直しが続く一方で、物価上昇、欧米を中心とした金融引き締め、中国景気の減速、中東地域をめぐる情勢等の影響により、回復基調に一部足踏みが見られるなど、先行き不透明な状況が続いております。

このような状況下、売上収益は、4兆3,872億円(前連結会計年度比2,473億円減)となりました。利益面では、コア営業利益は2,081億円(同1,175億円減)、営業利益は2,618億円(同791億円増)、税引前利益は2,405億円(同725億円増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は、1,196億円(同232億円増)となりました。

 

 

 

 

 

(金額単位:億円)

 

前連結会計年度

2022年4月1日
2023年3月31日

当連結会計年度

2023年4月1日
2024年3月31日

増減額

増減率(%)

売上収益

46,345

43,872

△2,473

△5.3

コア営業利益 (注2)

3,256

2,081

△1,175

△36.1

営業利益

1,827

2,618

791

43.3

税引前利益

1,680

2,405

725

43.2

当期利益

1,355

1,784

429

31.6

 

親会社の所有者に帰属する当期利益

964

1,196

232

24.0

ナフサ (円/KL) (注3)

76,600

69,100

△7,500

 

為替 (円/$)  (注3)

136.0

145.3

9.3

 

 

(注)1 当社グループは、IFRS(国際会計基準)に基づいて、連結財務諸表を作成しております。

2 コア営業利益は、営業利益(又は損失)から非経常的な要因により発生した損益(事業撤退や縮小から生じる損失等)を除いて算出しております。

3 それぞれ、2022年4月~2023年3月、2023年4月~2024年3月の概算平均値です。

 

 

ⅱ  各セグメントの業績

各セグメントにおける売上収益及びコア営業利益の状況は、以下のとおりです。

なお、当社グループは第1四半期連結会計期間より報告セグメントを変更しております。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.事業セグメント (1)報告セグメントの概要」に記載のとおりです。

(金額単位:億円)

セグメント

前連結会計年度

当連結会計年度

増減額

売上収益

コア営業利益

売上収益

コア営業利益

売上収益

コア営業利益

スペシャリティマテリアルズ

12,337

515

11,729

53

△608

△462

産業ガス

11,779

1,210

12,469

1,630

690

420

ヘルスケア

5,354

1,442

4,372

563

△982

△879

MMA

3,052

△40

2,816

8

△236

48

ベーシック
マテリアルズ

11,218

121

10,086

△193

△1,132

△314

その他

2,605

152

2,400

144

△205

△8

調整額

△144

△124

20

合計

46,345

3,256

43,872

2,081

△2,473

△1,175

 

(注) セグメント間の取引については、相殺消去しております。

 

<コア営業利益 増減要因>

(金額単位:億円)

 

 

 

前連結

会計年度

 

当連結

会計年度

 

増減

 

 

 

 

 

 

売買差

数量差

コスト

削減

その他

(注)

全社

 

3,256

 

2,081

 

△1,175

 343

 △1,486

 1,006

 △1,038

 

スペシャリティマテリアルズ

 

515

 

53

 

△462

243

△574

160

△291

 

産業ガス

 

1,210

 

1,630

 

420

 249

 △40

 308

 △97

 

ヘルスケア

 

1,442

 

563

 

△879

 △13

△876

 336

 △326

 

MMA

 

△40

 

8

 

48

△52

61

68

△29

 

ベーシック
マテリアルズ

 

121

 

△193

 

△314

△82

△62

39

△209

 

その他

・調整額

 

8

 

20

 

 12

 △2

 5

95

 △86

 

(注) その他には、在庫評価益の前連結会計年度(195億円)と当連結会計年度(65億円)の差額△130億円、持分法投資損益の前連結会計年度(119億円)と当連結会計年度(76億円)の差額△43億円が含まれております。

 

 

 

 

 

 

為替影響

 132

 173

 0

 △41

 

 

 

 

 

 

 

内、換算差

126

 

 

 

 

 


 

セグメント

前連結会計年度から当連結会計年度への主なコア営業利益の増減要因

スペシャリティマテリアルズ

売買差:販売価格の維持・向上による各種製品の売買差改善等により増益。

数量差:総じて需要が減退したことによる減販等により減益。

その他:新製造ライン稼働等に伴う固定費の増加や、持分法投資利益の減少等により減益。

産業ガス

売買差:価格マネジメント等により増益。

コスト削減:DX活用、プラント操業最適化などの生産性向上活動により増益。

その他:インフレによる費用の増加により減益。

ヘルスケア

数量差:国内医療用医薬品の重点品・新製品や海外医療用医薬品の販売数量が伸長したこと等により増益。

コスト削減:メディカゴ社の事業撤退に伴う研究開発費等の減少等により増益。

その他:一部の国内医療用医薬品の終売及び新製品の上市に伴う販売費の増加等により減益。

MMA

売買差:MMAモノマー等の市況の下落に伴う売買差悪化により減益。

数量差:定期修理の影響が縮小したことにより増益。

コスト削減:英国のキャッセル工場閉鎖に伴う費用の減少等により増益。

ベーシック
マテリアルズ

売買差:コークス市況の下落等による売買差悪化。

数量差:需要減退及びトラブルに伴う各製品の減産・減販により減益。

その他:原料価格の下落に伴う在庫評価益の縮小等により減益。

 

 

 

セグメント別の業績の概要の詳細は、以下のとおりです。

 

イ  スペシャリティマテリアルズセグメント

(ポリマーズ&コンパウンズ、フィルムズ&モールディングマテリアルズ、アドバンストソリューションズ)

当セグメントの売上収益は1兆1,729億円(前連結会計年度比608億円減)となり、コア営業利益53億円(同462億円減)となりました。

ポリマーズ&コンパウンズサブセグメントにおいては、販売価格の是正に加え、為替影響があったものの、バリア包材や塗料・インキ・接着剤用途等の需要が減退したこと等による販売数量の減少により、売上収益は減少しました。
 フィルムズ&モールディングマテリアルズサブセグメントにおいては、販売価格の是正に加え、為替影響があったものの、炭素繊維や高機能エンジニアリングプラスチックを始め、食品包装用フィルムやポリエステルフィルム等、総じて需要が減退したこと等による販売数量の減少により、売上収益は減少しました。
 アドバンストソリューションズサブセグメントにおいては、為替影響があったものの、半導体関連事業を中心に販売数量が減少したことにより、売上収益は減少しました。
 当セグメントのコア営業利益は、販売価格の維持・向上により売買差が改善したものの、総じて需要が減退したことによる減販等により、大幅に減少しました。

 

当連結会計年度に当セグメントにおいて当社グループが実施または発生した主な事項は、以下のとおりです。

・電解液事業の拡大に向け、Neogen Chemical Limited(本社:インド・マハラシュトラ州)と、インドにおけるリチウムイオン二次電池(LIB)用電解液の製造技術ライセンス供与に関する契約を2023年4月に締結しました。また、フッ素ケミカルメーカーのKoura社(本社:アメリカ・マサチューセッツ州)と、北米におけるLIB用電解液のサプライチェーン強化などに向けた協業検討を実施する覚書を2023年4月に締結しました。

・負極材事業の拡大に向け、LIB用正極材メーカーの韓国L&F Co., Ltd.(本社:大韓民国・テグ市)と、米国FTA締結国におけるLIB用負極材のサプライチェーン強化などに向けた協業検討を実施する覚書を締結しました。

・炭素繊維事業の強化に向け、炭素繊維強化プラスチック製の自動車部材メーカーである持分法適用会社のシーピーシー社(本社:イタリア・モデナ市)の全株式を取得することを2023年10月に決定し、2024年1月に完了しました。このたびの全株式取得により、垂直統合したサプライチェーンの強化・拡大を図り、当事業の長期的な成長を加速していきます。

・高品質な食品の世界的な需要拡大に応えるため、乳化剤「シュガーエステル」について、2024年3月に稼働した九州事業所の製造設備(生産能力:2,000t/年)に加え、新ライン(生産能力:1,100t/年)を増設することを同年3月に決定しました。新ラインの稼働は、2026年3月を予定しています。

 

ロ  産業ガスセグメント(産業ガス)

当セグメントの売上収益は1兆2,469億円(前連結会計年度比690億円増)となり、コア営業利益は1,630億円(同420億円増)となりました。

国内外の需要は軟調であったものの、各地域で推進する価格マネジメントや為替影響等により、売上収益は増加しました。コア営業利益は、売上収益の増加に加え、コスト削減の影響等により増加しました。

 

当連結会計年度に当セグメントにおいて当社グループが実施または発生した主な事項は、以下のとおりです。

・Terranova nv(本社:ベルギー)とLuminus(本社:ベルギー)とともに、グリーン水素を製造する合弁会社Terranova Hydrogen NV(本社:ベルギー・ゼルザーテ)を設立し、グリーン水素製造プラントを建設し、運営します。製造開始は2025年初頭を予定しています。

 

・1PointFive社(本社:アメリカ)と、同社がテキサス州に建設するDAC(Direct Air Capture)プラント向け酸素供給契約を締結しました。2025年半ばの操業開始を予定しています。

・大陽日酸系統科技股份有限公司(本社:台湾・新竹県)に2023年11月に新工場を建設し、エレクトロニクス向け機器事業拡大に向け製作能力を約2倍に増強しました。

 

ハ  ヘルスケアセグメント(ヘルスケア)

当セグメントの売上収益は4,372億円(前連結会計年度比982億円減)となり、コア営業利益は563億円(同879億円減)となりました。

重点品・新製品や米国で発売した筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療薬「RADICAVA® ORS」の販売が順調に推移したものの、国内医療用医薬品の薬価改定の影響等に加え、前期は第4四半期連結会計期間において多発性硬化症治療剤「ジレニア®」のロイヤリティに係る仲裁判断の結果を受けた1,259億円の収益認識があり、売上収益は減少しました。コア営業利益は、メディカゴ社の事業撤退に伴う研究開発費等の減少があったものの、「ジレニア®」の収益認識の影響が大きく、減少しました。

 

当連結会計年度に当セグメントにおいて当社グループが実施または発生した主な事項は、以下のとおりです。

・エダラボン経口懸濁剤(開発コード:MT-1186)について、筋萎縮性側索硬化症(ALS)を適応症として、2023年5月にスイス(製品名:「RADICAVA® Oral Suspension」)で承認を取得しました。同剤は、米国・カナダ・日本で既に承認されています。

・SGLT2阻害剤「カナグル®錠 100mg」(一般名:カナグリフロジン水和物)について、口腔内崩壊錠(OD錠)の剤形追加承認を日本において2024年3月に取得しました。

 

ニ  MMAセグメント(MMA)

当セグメントの売上収益は2,816億円(前連結会計年度比236億円減)となり、コア営業利益は8億円(同48億円増)となりました。

MMAモノマー等の市況の下落により、売上収益は減少しました。コア営業利益は、英国のキャッセル工場閉鎖に伴う費用の減少に加えて、定期修理の影響が縮小したこと等により、増加しました。

 

当連結会計年度に当セグメントにおいて当社グループが実施または発生した主な事項は、以下のとおりです。

MMA及びアクリロニトリル事業の供給体制を最適化し、競争力を強化するため、広島事業所で生産しているACH法MMAモノマー(生産能力:107,000t/年)、アクリロニトリル(生産能力:90,000t/年)及びアクリロニトリル誘導品について、生産終了することを2024年2月に決定しました。同年7月より対象製品の生産を停止する予定です。

 

ホ  ベーシックマテリアルズセグメント(石化、炭素)

売上収益は前連結会計年度に比べ1,132億円減少1兆86億円となり、コア営業利益は同314億円減少193億円の損失となりました。

石化サブセグメントにおいては、為替影響があったものの、需要が減退したこと等による販売数量の減少に加え、原料価格の下落等に伴い販売価格が下落したことにより、売上収益は減少しました。

炭素サブセグメントにおいては、原料価格の下落及び需要の低迷に伴いコークスの販売価格が下落したことにより、売上収益は減少しました。

当セグメントのコア営業利益は、ポリオレフィン等において原料と製品の価格差が拡大したものの、コークス市況の下落等による売買差の悪化に加え、原料価格の下落に伴い在庫評価益が縮小したことや総じて需要の減退等に伴い販売数量が減少したことにより、大幅に減少しました。

 

 

当連結会計年度に当セグメントにおいて当社グループが実施または発生した主な事項は、以下のとおりです。

・LIBや半導体の需要拡大に対応するため、岡山事業所においてγ-ブチロラクトンの生産能力を、現在の18,000t/年から20,000t/年に増強することを決定しました。2024年7月の稼働を予定しています。

・ポートフォリオ改革の一環として、当社グループが保有する高純度テレフタル酸(PTA)事業を行う三菱ケミカルインドネシア社の株式を、PT Lintas Citra Pratamaに譲渡することを2023年12月に決定しました。これに伴い、当社グループの三菱ケミカルインドネシア社の株式保有比率は20%となる予定です。今後段階的に売却し、三菱ケミカルインドネシア社は将来的にPT Lintas Citra Pratamaの100%子会社となる予定です。

・ビスフェノールAの供給体制を最適化し、事業の競争力を強化するため、黒崎工場における生産を2024年3月末に終了しました(生産能力:120,000t/年)。

 

ヘ  その他

その他部門の売上収益は2,400億円(前連結会計年度比205億円減)となり、コア営業利益は144億円(同8億円減)となりました。

 

当連結会計年度に当セグメントにおいて当社グループが実施または発生した主な事項は、以下のとおりです。

・ポートフォリオ改革の一環として、当社グループが保有するクオリカプス㈱の全株式を、Roquette Frères SA(本社:フランス・レストロン)へ譲渡することで同社と合意し、2023年7月28日付で株式譲渡契約を締結し、同年10月に譲渡を完了しました。

 

ト グループ全般

当社グループは、2021年度から2025年度までの経営方針「Forging the future 未来を拓く」に基づき、「One Company, One Team」の考えによるフラットな組織体制への移行を進めています。これに伴い、2023年10月に、当社と三菱ケミカル㈱のシンガポールにおけるそれぞれの子会社を当事者とするグループ内組織再編を行い、分散している管理機能を再編し集約、最適化することにより、経営効率の向上を図ることといたしました。

 

なお、当社グループの生産品目は広範囲かつ多種多様であり、また、受注生産形態をとらない製品も多く、セグメント毎に生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。

また、主な販売先別の販売実績及び総販売額実績に対する割合については、当該割合が100分の10未満であるため、記載を省略しております。

 

 

② キャッシュ・フロー

(金額単位:億円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

営業活動によるキャッシュ・フロー

3,552

4,651

投資活動によるキャッシュ・フロー

△2,476

△2,461

フリー・キャッシュ・フロー

1,076

2,191

財務活動によるキャッシュ・フロー

△608

△2,417

為替換算差等

46

204

現金及び現金同等物の期末残高

2,972

2,949

 

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前利益や減価償却費等に加え、棚卸資産の削減等による運転資本の減少等により、4,651億円の収入(前連結会計年度比1,100億円の収入の増加)となりました。

当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、投資の売却及び償還による収入等があったものの、有形固定資産及び無形資産の取得2,745億円等により、2,461億円の支出(同15億円の支出の減少)となり、フリー・キャッシュ・フロー(営業活動及び投資活動によるキャッシュ・フロー)は、2,191億円の収入(同1,115億円の収入の増加)となりました。

当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、有利子負債の返済による支出1,666億円や配当金の支払い579億円等により、2,417億円の支出(同1,809億円の支出の増加)となりました。

これらの結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物残高は、前連結会計年度末と比べて23億円減少し、2,949億円となりました。

 

③ 財政状態

(金額単位:億円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

資産

57,743

61,045

負債

37,859

38,290

 

(内、有利子負債)

23,758

23,382

資本

19,884

22,755

親会社所有者帰属持分比率()

27.1

28.9

ネットD/Eレシオ (注)

1.33

1.16

 

(注) ネットD/Eレシオ=ネット有利子負債(*1)/親会社の所有者に帰属する持分

(*1)ネット有利子負債=有利子負債-(現金及び現金同等物+手元資金運用額(*2))

(*2)手元資金運用額は、当社グループが余剰資金の運用目的で保有する現金同等物以外の

譲渡性預金・有価証券等です。

 

当連結会計年度末の資産合計は、シーピーシー社(C.P.C. S.r.l.)の完全子会社化や、円安の進行に伴う在外連結子会社の資産の円貨換算額の増加等により、前連結会計年度末に比べ3,302億円増加し、6兆1,045億円となりました。

当連結会計年度末の負債合計は、社債及び借入金の減少等がありましたが、円安の進行に伴う在外連結子会社の負債の円貨換算額の増加等により、前連結会計年度末に比べ431億円増加し、3兆8,290億円となりました。

なお、当連結会計年度末のリース負債を含む有利子負債は、前連結会計年度末に比べ376億円減少し、2兆3,382億円となりました。

当連結会計年度末の資本合計は、配当による減少がありましたが、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上や、在外営業活動体の換算差額の増加等により、前連結会計年度末に比べ2,871億円増加し、2兆2,755億円となりました。

 

これらの結果、当連結会計年度末の親会社所有者帰属持分比率は、前連結会計年度末と比べて1.8ポイント増加し、28.9%となりました。なお、ネットD/Eレシオは、前連結会計年度末と比べて0.17減少し、1.16となりました。

 

(2) 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

① 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

経営方針「Forging the future 未来を拓く」(以下「経営方針」といいます。)で設定した財務目標に対する達成・進捗状況については、以下のとおりです。

 

売上収益・コア営業利益・EBITDA推移

 


注1)ジレニア仲裁判断の結果(1,259億円の収益認識)を控除して算定したFY22(当連結会計年度)の実績は

売上収益 45,086億円、コア営業利益 1,997億円、コア営業利益率 4.4%です。

注2)石化事業100%保有ケース

 


注1)ジレニア仲裁判断の結果を控除して算定したFY22の実績は

EBITDA 4,574億円、EBITDAマージン 10.1%です。

注2)石化事業100%保有ケース

 

 

収益性・安定性指標推移


注1)EPSは継続事業に係る1株当り利益を表示しています。

注2)ジレニア仲裁判断の結果を控除して算定したFY22の実績は、

EPS 4.9円、ROIC 3.6%、ROE 0.5%です。

注3)石化事業100%保有ケース

 

各種指標の算定式

指標

算定式

EBITDA

コア営業利益-コア営業利益に含まれる持分法による投資損益+減価償却費及び償却費

ROE

親会社の所有者に帰属する当期利益/親会社の所有者に帰属する持分(期首・期末平均)

ROIC

NOPAT(*3)/投下資本(期首・期末平均)(*4)

 

(*3) NOPAT=(コア営業利益-コア営業利益に含まれる持分法による投資損益)×
(1-税率)+コア営業利益に含まれる持分法による投資損益+受取配当金

 

(*4) 投下資本=資本合計+有利子負債

 

 

当連結会計年度は、半導体関連市場や広く産業材等において需要が低調に推移したなか、スペシャリティマテリアルズ及びベーシックマテリアルズの販売数量が前期比で大きく減少した一方で、産業ガス及びヘルスケアの北米におけるラジカヴァの販売等が好調を維持し、コア営業利益は前連結会計年度のジレニア影響(注)を除き4%の増益となりました。価格マネジメントやコスト削減活動を精力的に進め、前連結会計年度に比べて売買差改善及びコスト削減効果(1,006億円)を積み上げたことが、コア営業利益の増加につながりました。

 

(注)ヘルスケアセグメントにおいて多発性硬化症治療剤ジレニアのロイヤリティにかかる仲裁判断の結果を受け、前連結会計年度の第4四半期に一括で収益認識した影響(1,259億円)

 

② 経営環境と今後の見通し

当社グループを取り巻く事業環境は、緩やかな回復基調の継続が期待される一方で、金融資本市場の変動、中国景気の減速、地政学的な緊張などの下振れリスクに十分留意する必要があります。

このような状況下、当社グループにおいては、スペシャリティマテリアルズで総じて需要が回復することに加えて、MMA、ベーシックマテリアルズの石化製品やコークス等においても需要回復と市況の改善を見込んでおります。また産業ガスやヘルスケアについては好調継続を見込みます。

以上を踏まえ、翌連結会計年度の連結業績につきましては、売上収益は4兆6,230億円、コア営業利益は2,500億円、営業利益は2,100億円、税引前利益は1,710億円、当期利益は1,160億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は520億円となる見込みです。

 

 

上記の見通しにおける主要指標の想定値は以下のとおりです。

(金額単位:億円)

 

2024年3月期(実績)

2025年3月期(予想)

設備投資額

2,839

3,510

減価償却費      

2,754

2,730

研究開発費

1,216

1,290

為替(円/US$)     (注)

145.3

150.0

ナフサ価格(円/KL) (注)

69,100

75,000

 

(注)それぞれ、2023年4月~2024年3月、2024年4月~2025年3月の平均

 

(3) 資本の財源及び資金の流動性

① 財務方針及び企業価値の向上

当社グループは経営方針「Forging the future 未来を拓く」のもとで築いた強固な経営基盤を活かし、企業価値向上に向けた改革を加速して、KAITEKIの実現をリードするグリーン・スペシャリティの化学会社に「変身」することをめざします。

今秋の事業説明会において、そのための新たな成長戦略、財務目標等を公表する予定です。

 

 


 

 

当社グループでは資本コストを意識した経営に取り組んでおり、経営指標の策定や投資判断に活用しております。企業価値向上のため、株主資本コストを上回るROEを経営指標として設定するとともに、ROICを注力事業の選別基準の一つとし、市場の成長性、競争力、サステナビリティにフォーカスしてポートフォリオ運営を進めてまいります。

 


 

② 資金調達及び資金配分方針

当社グループは、運転資金及び設備資金については、内部資金に加え借入金、社債等による調達を実施しているほか、複数の金融機関とのコミットメント・ラインの設定に加え複数の金融機関との間のアンコミットメントベースの当座借越契約、コマーシャル・ペーパー発行枠及び国内社債発行登録枠等の確保により資金調達手段の多様化を図り、十分な流動性の確保を行っております。

資金配分の方針につきましては、今秋の事業説明会において、新たな成長戦略、財務目標とともに公表する予定です。

 

 

(4) 重要な会計上の見積り

連結財務諸表の作成にあたっては、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるために、これらの見積りと異なる場合があります。見積り及びその基礎となる仮定は、継続して見直されます。会計上の見積りの変更による影響は、その見積りが変更された会計期間及び影響を受ける将来の会計期間において認識されます。

 

当社グループの連結財務諸表に重要な影響を与える可能性のある会計上の判断、見積り及び仮定に関する主な情報は、以下のとおりです。

 

① 非金融資産の減損
 ⅰ 当連結会計年度の連結財務諸表に計上した金額

当社グループは、連結財政状態計算書に、有形固定資産2,043,330百万円、のれん832,899百万円、無形資産481,028百万円(うち、耐用年数を確定できない無形資産及び未だ使用可能でない無形資産68,793百万円)を計上しております。

なお、当連結会計年度において減損損失を33,530百万円計上し、連結損益計算書の「その他の営業費用」に含めております。その主な内訳は、三菱ケミカルインドネシア社の高純度テレフタル酸の製造設備です。減損損失の詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 16.減損損失」をご参照ください。

ⅱ 連結財務諸表利用者の理解に資するその他の情報

(ⅰ)算出方法

当社グループは有形固定資産、のれん及び無形資産について、減損の兆候がある場合、及び資産に年次の減損テストが必要な場合、その資産の使用価値や処分費用控除後の公正価値の算定を行っております。

使用価値の算定にあたっては、貨幣の時間価値及びその資産に特有のリスクについて現在の市場の評価を反映した税引前の割引率を用いて、見積将来キャッシュ・フローの割引現在価値を計算しております。なお、将来キャッシュ・フローの見積りにあたって利用する事業計画は原則として5年を限度とし、事業計画の予測の期間を超えた後の将来キャッシュ・フローは個別の事情に応じた5年を超える期間の長期平均成長率をもとに算定しております。

(ⅱ)主要な仮定

使用価値の算定における主要な仮定は以下のとおりです。

(技術に係る無形資産(仕掛研究開発費、開発段階にある導入契約により取得した権利))

規制当局の販売承認の取得の可能性、上市後の売上収益の予測及び割引率

(有形固定資産、上記を除く無形資産、のれん)

原則として5年を限度とする事業計画における将来キャッシュ・フローの見積り、割引率及び5年を超える期間の長期成長率。

将来キャッシュ・フローの見積額は主として、売上収益の予測及び市場の成長率に影響を受けます。

(ⅲ)翌連結会計年度の連結財務諸表に与える影響

主要な仮定について、経営者は妥当と判断しておりますが、将来の不確実な経済条件の変動の結果によって影響を受ける可能性があり、前提とした状況が変化すれば回収可能価額の算定結果が異なる可能性があります。

 

 

② 繰延税金資産の回収可能性

ⅰ 当連結会計年度の連結財務諸表に計上した金額

繰延税金資産(純額) 97,395百万円

ⅱ 連結財務諸表利用者の理解に資するその他の情報

(ⅰ)算出方法

当社グループでは、将来減算一時差異及び税務上の繰越欠損金に対して、予定される繰延税金負債の取崩、予測される将来課税所得及びタックス・プランニングを考慮し、繰延税金資産を計上しております。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性のある会計方針 (6) 法人所得税」をご参照ください。

(ⅱ)主要な仮定

将来課税所得の基礎となる将来の事業計画における主要な仮定は売上収益の予測です。

(ⅲ)翌連結会計年度の連結財務諸表に与える影響

認識された繰延税金資産については、過去の課税所得水準及び将来減算一時差異と繰越欠損金の解消が予測される期間における将来課税所得の予測に基づき、回収される可能性が高いと考えております。将来課税所得の予測及び主要な仮定について、経営者は妥当と判断しておりますが、将来の不確実な経済条件の変動の結果によって影響を受ける可能性があり、前提とした状況が変化すれば繰延税金資産の回収可能性の評価の算定結果が異なる可能性があります。

 

③ 確定給付制度債務の測定
 ⅰ 当連結会計年度の連結財務諸表に計上した金額

退職給付に係る負債 104,828百万円

ⅱ 連結財務諸表利用者の理解に資するその他の情報

確定給付制度に係る負債又は資産は、確定給付制度債務の現在価値から制度資産の公正価値を控除して算定しております。確定給付制度債務は年金数理計算により算定しており、その前提条件には割引率等の見積りが含まれております。主要な仮定について、経営者は妥当と判断しておりますが、将来の不確実な経済条件の変動の結果によって影響を受ける可能性があり、前提とした状況が変化すれば確定給付制度債務の評価額の算定結果が異なる可能性があります。

確定給付制度債務に係る詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 28.退職給付」をご参照ください。

 

④ 金融品の公正価値

ⅰ 当連結会計年度の連結財務諸表に計上した金額

公正価値ヒエラルキーがレベル3の株式及び出資金(売却目的で保有する資産を除く) 103,106百万円

 なお、上記の金額は、連結財政状態計算書の「その他の金融資産」に含めております。

ⅱ 連結財務諸表利用者の理解に資するその他の情報

当社グループにおいて活発な市場における公表価格が入手できない非上場株式及び出資金の公正価値は、合理的に入手可能なインプットにより、類似企業比較法又はその他の適切な評価技法を用いて算定しております。選択された価値評価技法と主要な仮定について、経営者は妥当と判断しておりますが、将来の不確実な経済条件の変動の結果によって影響を受ける可能性があり、前提とした状況が変化すれば公正価値の評価額の算定結果が異なる可能性があります。

詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 36.金融商品 (8) 金融商品の公正価値」をご参照ください。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

(1) 事業提携、事業再編等

・2023年7月、三菱ケミカル㈱は、保有するクオリカプス㈱の全株式を、Roquette Frères SAへ譲渡することで同社と合意し、株式譲渡契約を締結しました。

・2023年12月、三菱ケミカル㈱は、同社及びその子会社が保有する高純度テレフタル酸事業を行う三菱ケミカルインドネシア社の全株式を、PT Lintas Citra Pratamaに段階的に譲渡する旨の株式譲渡契約を締結しました。

 

(2) 合弁会社の設立

契約会社名

契約締結先

内容

契約締結日

出資比率

三菱ケミカル㈱

㈱神戸製鋼所
神鋼商事㈱
大阪瓦斯㈱

尼崎製鉄㈱(現 ㈱神戸製鋼所)の使用するコークスの製造を主たる目的とする関西熱化学㈱の設立 (注)

1965年6月15日

出資比率51%

日本ポリケム㈱

日本ポリオレフィン㈱

ポリエチレン樹脂の製造及び販売を主たる目的とする日本ポリエチレン㈱の設立

2003年6月30日

出資比率58%

日本ポリケム㈱

JNC石油化学㈱

ポリプロピレン樹脂の製造及び販売を主たる目的とする日本ポリプロ㈱の設立

2003年5月21日

出資比率65%

三菱ケミカル㈱

三菱瓦斯化学㈱

エンジニアリングプラスチック事業に関する三菱エンジニアリングプラスチックス㈱の設立 

1994年1月31日

出資比率25%

三菱ケミカル㈱

旭化成㈱

水島地区における基礎石化原料に関する事業の共同運営を主たる目的とする三菱化学旭化成エチレン㈱(現 三菱ケミカル旭化成エチレン㈱)の設立

2015年5月28日

出資比率50%

三菱ケミカル㈱

UBE㈱

ABS樹脂の製造及び販売を主たる目的とするユーエムジー・エービーエス㈱の設立

2001年12月26日

出資比率50%

三菱ケミカル㈱

三養ホールディングス社
ジーエス・カルテックス社

韓国におけるテレフタル酸の製造及び販売を主たる目的とする三南石油化学社の設立

1987年9月10日

出資比率40%

日本サウディメタクリレート合同会社

サウジ基礎産業公社

MMAモノマー、アクリル樹脂等の製造を主たる目的とするザ・サウジ・メタクリレーツ社の設立

2014年1月28日

出資比率50%

三菱ケミカル㈱

ロッテ・ケミカル社

MMAモノマー及びアクリル樹脂等の製造及び販売を主たる目的とするロッテ・エムアールシー社(現 ロッテ・エムシーシー社)の設立

2006年5月2日

出資比率50%

 

(注)  関西熱化学㈱設立に関する合弁契約は、三菱化成工業㈱(現 三菱ケミカル㈱)、㈱神戸製鋼所及び尼崎製鉄㈱(現 ㈱神戸製鋼所)との間で締結されましたが、その後、大阪瓦斯㈱が、1963年5月30日付にて、上記3社からの株式譲渡により、また、神鋼商事㈱が、2008年3月31日付にて、㈱神戸製鋼所からの株式譲渡により、それぞれ資本参加しております。

 

(3) 外国との技術提携(技術導入関係)

(三菱ケミカル㈱)

 

契約締結先

内容

契約締結日

有効期間

対価

(アメリカ)

 

 

 

 

ウルフスピード社

窒化ガリウム基板特許の実施許諾

2008年11月7日

2008年11月から特許消滅日まで

一時金及び
ランニング・
ロイヤリティ

 

 

(田辺三菱製薬㈱)

 

契約締結先

内容

契約締結日

有効期間

対価

(アメリカ)

 

 

 

 

ヤンセン・
バイオテク社

抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤「レミケード」の販売権の許諾

1993年11月26日

1993年11月から

田辺三菱製薬㈱が販売する間

一時金及び
マイルストーン

(アイルランド)

 

 

 

 

ヤンセン・サイエンシィズ・アイルランドUC社

ヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤「シンポニー」の開発・販売権の許諾

2006年8月3日

2006年8月から
発売後一定期間経過時まで

一時金及び
マイルストーン

 

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、各社において独自の研究開発活動を行っているほか、グループ会社間での技術や市場に関する緊密な情報交換や共同研究、研究開発業務の受委託等を通じて、相互に協力し、連携の強化を図るとともに、グループ外の会社等との間でも共同での研究開発を積極的に行うなど、新技術の開発や既存技術の改良に鋭意取り組んでおります。

当社グループの研究開発人員は3,867名、当連結会計年度における研究開発費の総額は1,216億円となっており、各事業部門別の研究内容、研究成果及び研究開発費は次のとおりであります。

(1) スペシャリティマテリアルズセグメント

ポリマーズ&コンパウンズ、フィルムズ&モールディングマテリアルズ、アドバンストソリューションズに関する研究開発を行っており、当連結会計年度の主な成果は次のとおりです。

・環境汚染や人の健康への影響が懸念されている有機フッ素化合物であるPFAS(パーフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物の総称)を一切使用することなく高難燃性を実現した高付加価値ポリカーボネート樹脂「XANTAR™(ザンター™)  XFシリーズ」を2023年9月に開発しました。

・軽量でありながら高強度、高靭性、高耐熱性といった特長を有するセラミックマトリックスコンポジットについて、セラミック繊維の代わりに当社グループが製造するピッチ系炭素繊維を用いたうえに表面に酸素透過バリア層を設けることで、耐熱温度1,500℃を実現したセラミックマトリックスコンポジット材料(C/SiC)を2024年2月に開発しました。

・速硬化性、耐熱性、高靭性等の特長をもつ炭素繊維プリプレグについて、独自の材料設計技術により、含浸させるエポキシ樹脂を植物由来品に置き替え最大で約25%のバイオマス度を実現した「BiOpreg#400シリーズ」を2024年3月に開発しました。

・独自の材料設計技術と製造技術により、高いバイオマス度、柔軟性、高い裂け強度、優れた加工性等の特長をもち、自然界の微生物によって分解される生分解性バイオポリエステル樹脂を2024年2月に開発しました。

本セグメントにおける当連結会計年度の研究開発費は318億円であります。

(2) 産業ガスセグメント

産業ガスに関する研究開発を行っており、当連結会計年度の主な成果は次のとおりです。

・国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業「燃料アンモニア利用・生産技術開発/工業炉における燃料アンモニアの燃焼技術開発」に参画し、アンモニア-酸素燃焼技術の開発を進めています。AGC㈱横浜テクニカルセンターのガラス溶融炉で、アンモニア-酸素燃焼技術の実証試験を2023年6月に世界で初めて成功させました。

・大陽日酸㈱とRasirc, Inc.社は共同でALD成膜技術の開発に取り組んでいます。窒化膜ALDには無水ヒドラジンが、酸化膜ALDには過酸化水素ガスがそれぞれ既存の窒化材、酸化材よりも良好なプロセスを実現できることを実証しています。有機溶媒と混合させることで安全性を高めた無水ヒドラジン供給ソース(Rasirc製BRUTE®-Hydrazine)を供給源とする高純度ヒドラジンガス供給システムを2024年2月に開発しました。

・化合物半導体の製造に必要となるMOCVD装置及びHVPE装置を製造・販売するとともに、用途拡大、改良改善のための開発に取り組んでいます。2023年6月、GaN(窒化ガリウム)系量産型MOCVD装置UR26Kに新機構として「基板自動搬送システム」と「一体型ドライ洗浄システム」を追加することに成功しました。従来機に比べ、およそ50%の大幅な生産効率向上に貢献します。

・重水素化アンモニアの製造プロセスを確立し、2023年5月に国内で初めて量産体制を構築しました。また、使用済み重水を再濃縮する装置を開発し、国内企業として初めて商業化しました。重水リサイクル体制の構築により、効率的でサステナブルな重水の利用を可能にするとともに、重水素化アンモニアをはじめとする重水素標識化合物のグローバルからの需要に対し、安定供給に貢献します。

本セグメントにおける当連結会計年度の研究開発費は45億円であります。

(3) ヘルスケアセグメント

医薬品に関する研究開発を行っており、当連結会計年度の主な成果は次のとおりです。

・エダラボン経口懸濁剤(開発コード:MT-1186)について、筋萎縮性側索硬化症(ALS)を適応症として、2023年5月にスイス(製品名:「RADICAVA® Oral Suspension」)で承認を取得しました。同剤は、米国・カナダ・日本で既に承認されています。

・SGLT2阻害剤「カナグル®錠 100mg」(一般名:カナグリフロジン水和物)について、口腔内崩壊錠(OD錠)の剤形追加承認を日本において2024年3月に取得しました。

 本セグメントにおける当連結会計年度の研究開発費は630億円であります。

(4) MMAセグメント

MMAに関する研究開発を行っており、当連結会計年度の主な成果は次のとおりです。

・アクリル樹脂にゴム粒子をコンパウンドすることで、自動車ボディに求められる耐衝撃性の向上を図ったポリメチルメタクリレート材料を本田技研工業株式会社と共同で開発しており、本開発品を使用したコンセプトモデルを2023年10月に公開しました。

本セグメントにおける当連結会計年度の研究開発費は33億円であります。

(5) ベーシックマテリアルズセグメント

石化、炭素に関する研究開発を行っており、当連結会計年度の主な成果は次のとおりです。

・アラブ首長国連邦アブダビ首長国において、世界初となる商業規模のCO2およびグリーン水素由来のポリプロピレン製造を含むカーボンリサイクルケミカル製造事業の実現に向けた共同調査について、Abu Dhabi Future Energy Company PJSC - Masdar及び株式会社 INPEXとの間で、2023年7月に契約締結を発表しました。

本セグメントにおける当連結会計年度の研究開発費は79億円であります。

(6) その他

エンジニアリング等に関する研究開発を行っており、その他部門における当連結会計年度の研究開発費は4億円であります。

 

 上記のほか、研究開発費には、特定の事業部門に区分できない基礎研究に要した研究開発費が108億円あります。