第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 中長期的な会社の経営方針

当社グループは、上下水道および汚泥再生処理・バイオマス利活用設備を主要マーケットとする水環境事業と、化学分野や二次電池製造などに関連する産業インフラ設備および廃液や固形廃棄物処理などの環境関連設備を主要マーケットとする産業事業の2つを主たる事業と位置付けており、それら以外の事業をその他としております。

当社グループは、グループ経営の効率化とガバナンス体制の高度化を推進するため、2023年4月より持株会社体制に移行いたしました。当社グループの持続的な成長を目指すために、「サステナビリティ経営の推進」「事業領域の拡充とグループ収益力の強化」「資本効率の向上と株主還元の拡充」を基本方針とした中期経営計画(2023年4月~2027年3月)を策定し、推進することで、企業価値の向上に取り組んでまいりました。

中期経営計画の最終年度となる2027年3月期の数値目標については、連結売上高1,600億円、連結営業利益120億円、親会社株主に帰属する当期純利益70億円を目指してまいります。

 

(2) 目標とする経営指標

当社グループでは、営業利益、親会社株主に帰属する当期純利益を重要な経営指標と位置付けており、2025年3月期は営業利益70億円、親会社株主に帰属する当期純利益44億円の達成を目標としております。

 

 

2023年3月期
(実績)

2024年3月期
(実績)

2025年3月期
(目標値)

営業利益

5,004百万円

6,765百万円

7,000百万円

親会社株主に帰属する当期純利益

4,214百万円

2,675百万円

4,400百万円

 

 

(3) 会社の対処すべき課題

当社グループの事業環境に関する今後の景況感につきましては、米中貿易摩擦やロシアによるウクライナ侵攻の長期化、中東情勢の緊迫などの地政学的リスクの影響、および中国経済の減速、原材料価格の高騰や為替等の変動などが経済活動に与える影響について留意する必要があります。

国内の上下水道分野は、水インフラ関連の投資は引き続き堅調に推移していくものと推測されますが、中長期的には人口減による市場規模の縮小、および競争の激化等により事業環境が厳しくなることが予想されております。昨年10月に実施したJFEエンジニアリング株式会社との国内水エンジニアリング事業の統合は、中長期的な事業環境への対応策の一つでもあり、シナジーを創出することでさらなる事業基盤の安定化に取り組んでまいります。

民間の設備投資については、注力しているリチウムイオン二次電池向けの機器・プラントの市況は、欧米等における電気自動車に対する補助金の見直しの影響などもあり踊り場を迎えている状況ですが、中長期的には内燃機関から電気自動車へのシフトが進む方向性は変わらないと思われることから、引き続き競争力の強化に取り組み脱炭素社会の構築に貢献してまいります。

 

 

① サステナビリティ経営の推進

当社グループは、持株会社体制の移行に伴い、目指す方向性と存在意義を明確化するため、パーパスとして「環境技術で世界に貢献し未来を創る」を定義いたしました。また、従来の企業理念をグループ企業理念として再定義し、2030年に向けた長期ビジョン「豊かな生活・文化の創造に貢献し、快適でサステナブルな社会を実現する」を制定いたしました。

当社グループは、様々な環境・社会問題の解決を通じステークホルダーの皆様とともに事業の持続的な成長を実現するため、サステナビリティ経営に取り組んでまいります。

事業を通じた脱炭素社会への貢献については、最重要KPIとして脱炭素社会へ貢献する事業の売上高比率を水環境・産業事業ともに20%以上、脱炭素社会へ貢献する研究開発費の比率を30%以上と掲げております。当連結会計年度における売上高比率は水環境事業で46%、産業事業で55%、研究開発費は49%となりました。引き続き、気候変動などの環境課題の解決に取り組み、事業を通じて脱炭素社会へ貢献するため、カーボンニュートラルな資源である下水汚泥のエネルギー活用や、電気自動車などで利用されるリチウムイオン二次電池の材料を製造する設備の拡販を推進してまいります。

働きがいのある職場環境と制度を整備し、ダイバーシティ&インクルージョンを推進することで、人材育成に取り組んでまいります。2023年度には、社員向けのエンゲージメント調査を行い、その結果を受けて福利厚生の充実、労働時間の短縮等、就業規則の改定、社員教育プログラムの見直し、経営陣とのタウンホールミーティング等を実施しております。また、温室効果ガス削減プラグラムを策定するとともに将来の開示に向けたScope3算定対応を継続しております。今後も月島ホールディングス代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ委員会ならびにその下部組織である分科会において、サステナビリティに関連する各種施策の検討および推進に取り組んでまいります。

 

② 事業領域の拡充とグループ収益力の強化

水環境事業では、2023年10月にJFEエンジニアリング株式会社の国内水エンジニアリング事業を統合しました。両社の経営資源・ノウハウを集約させ、技術・サービスを高度化し、強固な事業基盤を構築することで、国内上下水道分野における強固な地位を確立し、リーディングカンパニーを目指してまいります。再生可能エネルギーを生み出す下水汚泥燃料化、消化ガス発電事業や創エネルギー型脱水焼却システムなどの創エネルギー事業に積極的に取り組んでまいります。近年、案件数が増加しているPFI、DBO事業や包括O&M業務などの官民連携事業についても、JFEエンジニアリング株式会社との統合効果により対応力を強化してまいります。

産業事業では、リチウムイオン二次電池の性能を左右する正極材活物質の製造に不可欠な晶析などの微粒子製造技術の強化を図っており、「超微粒子晶析装置」のパイロット機をリリースし顧客のサンプル製造に協力することで機器の販売につなげてまいります。脱炭素技術への取り組みとしては、アンモニアなどの次世代エネルギー技術の開発・活用に取り組んでまいります。また、業績が悪化した月島機械株式会社においては、再生計画を策定し、受注獲得および収益向上に取り組んでまいります。

両事業に共通する施策として、脱炭素社会に貢献する環境ビジネスや成長性が見込める官民連携事業など付加価値の高い領域を「重点領域」と定義して事業領域をシフトし、2027年3月期は売上高1,600億円、営業利益120億円を目指してまいります。官民連携事業については、「ウォーターPPP(*)」に類似する先進的な事例として「箱根地区水道事業包括委託事業(第3期)」を受託し、ノウハウと実績を積み重ねております。

 

 *:ウォーターPPP

上水道、下水道、工業用水道分野における官民連携事業の推進のため、公共施設等運営事業(コンセッション方式)に加え、コンセッション方式に段階的に移行するための官民連携方式として新たに位置付けられた「管理・更新一体マネジメント方式」を含めた事業

 

 

③ 資本効率の向上と株主還元の拡充

当社グループは、ROEとROICを新たに経営指標に設定し、資本効率の向上と資本コストを意識した企業価値経営を推進してまいります。また、キャピタルアロケーションを策定し、創出した営業キャッシュ・フローに加え政策保有株式の売却を実施し、通常の設備投資に加えデジタルトランスフォーメーション(DX)や人的資本などの戦略投資、株主還元に配分してまいります。M&Aなどの大規模投資には必要に応じて負債等による調達を活用し最適資本構成を目指します。なお、政策保有株式については継続的な縮減に取り組み、本中期経営計画の期間内で連結純資産の20%以内、金額として30~50億円の売却を目指しておりましたが、縮減をより一層加速させるべく目標を本中期経営計画期間中に70億円以上の売却に変更いたしました。売却により生じた資金については、中長期的な企業価値向上に向け、成長投資や株主還元に最適配分してまいります。

株主還元につきましては、総還元性向50%以上、配当性向40%以上を目標としておりましたが、本中期経営計画期間中における政策保有株式の売却拡大と検討中の設備投資の時期の見直しにより、2025年3月期の配当性向の目標を50%以上に拡充いたしました。

引き続き、安定的な配当と継続的な増配に努めるとともに、機動的な自己株式の取得にも取り組んでまいります。

以上の取り組みにより、企業価値の向上に努めてまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方および取組は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) サステナビリティ経営の推進

当社グループでは、サステナビリティを経営戦略の中心に据え、様々な環境・社会問題の解決を通じステークホルダーの皆様とともに事業の持続的な成長を実現し、事業を通じた社会価値創出と世界的な社会課題である環境問題の解決に取り組んでまいります。

 

① ガバナンス

当社グループでは、当社の代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ委員会を設置し、取締役会の監督体制のもと、サステナビリティ課題への対応についてグループ全体で取り組みを進めています。各施策の検討、展開は関係部門、子会社が実施しますが、グループ横断で取り組むべき課題については、委員会の下部組織として分科会を設置し活動しております。現在、環境分科会、人権分科会とエンゲージメントデザイン分科会を設置し、その活動内容は事務局を通じサステナビリティ委員会へ報告し、審議、決議を行う推進体制を取っております。また、必要に応じて社外有識者を招いた議論の場も設定し、マルチステークホルダーの視点を取り入れております。サステナビリティ委員会での議論の結果は取締役会に報告され、レビューを受ける体制になっております。2023年度においては、取締役会へ3回報告が実施されております。

 

体制図

 


 

 

主な活動内容

サステナビリティ委員会

 

開催日

会議

主な報告・審議・決議事項

2023年5月16日

第3回

人材育成方針、社内環境整備方針策定
月島ホールディングス調達方針策定
独立社外取締役の独立性判断基準改訂
2023年度分科会活動計画(報告)

2023年9月12日

第4回

月島ホールディングスグループ人権方針策定
2023年度分科会活動状況(報告)

2024年2月9日

第5回

Scope1,2温室効果ガス削減ロードマップ(報告)
エンゲージメント向上施策について(報告)
2023年度分科会活動状況(報告)
2024年度分科会活動計画(報告)

 

 

分科会

 

分科会名

主な活動実績内容

人権分科会

人権方針、社内環境整備方針の策定

環境分科会

Scope1,2温室効果ガス削減ロードマップ策定
Scope3  算出方法および対象範囲の検討、試算
TCFD気候関連リスク・機会・対応策の見直し

エンゲージメントデザイン分科会

エンゲージメント調査の実施、結果分析および社内開示
各種施策の検討
各種施策の社内開示

 

 

② 戦略

当社グループは、長期ビジョンの実現のために5つのマテリアリティを設定し、マテリアリティに対する重点施策を展開し、重点施策ごとに指標と目標を設定することでサステナビリティ経営を推進しております。

 

マテリアリティ

マテリアリティに対する重点施策

Ⅰ.脱炭素社会への貢献

・ 創エネルギー型焼却システムの拡大
・ 下水汚泥エネルギー活用
・ モビリティのEV化進展に伴う技術対応

・ GXへの対応
・ 温室効果ガス削減(Scope1,2削減)

Ⅱ.持続可能な資源利用への対応

・ 環境事業の研究開発強化
・ 環境保全技術の深耕
・ 有価物回収への取り組み
・ 海外の産業インフラ受注拡大

Ⅲ.快適でサステナブルな社会への貢献

・ 上下水道施設の包括受託の拡大、維持管理のDX化推進、自然災

  害時対応の強化
・ 海外の水の安全、水インフラ普及拡大への貢献

社会貢献活動

Ⅳ.魅力的で働きがいのある職場環境整備

・ 人権の尊重とダイバーシティ&インクルージョンの推進
・ 多様な人材の採用と育成
・ 労働安全衛生・健康経営推進
・ サプライチェーンにおける労務・人権課題の解消

Ⅴ.サステナビリティ経営の実現に向けた
  ガバナンス体制の構築

・ サステナビリティ委員会の設置と推進
・ 多方面からの取締役・監査役の選任
・ 気候変動リスクへの対応
・ 知的財産の取得・活用

 

 

 

③ リスク管理

当社は、当社およびグループ会社の損失の危険の管理を行うため、「月島ホールディングスグループリスクマネジメント規程」を定め、有事に際しては取締役等により構成される「危機管理委員会」が危機管理にあたります。危機管理委員会はその常設機関として総務部門等関連部門より構成される「危機管理委員会事務局」を設置し、危機管理に必要な活動を行います。平時においてはコンプライアンス推進部門にてリスク分析やリスク関連情報の収集、管理を行い、必要に応じ経営に報告いたします。

サステナビリティ委員会で承認された気候関連リスクは、コンプライアンス推進部門にも共有され、全社レベルのリスクを統合し、事業上特に重要なリスクについて、取締役会に報告されます。

 

④ 指標及び目標

重点施策の中でも特に重要と思われる項目については最重要KPI(Key Performance Indicator)と位置付け、以下の指標と目標を設定しております。

 


 

(2) 気候変動への対応(TCFD提言への取組)

当社グループでは、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同を表明し、気候変動がもたらすリスクおよび機会が経営に与える影響を評価し、それらのリスク回避および機会獲得への対応を推進することで、事業を通じた気候変動への対応および情報開示の高度化に取り組んでまいります。

 

 

① ガバナンス

気候変動関連リスク・機会に対して、取締役会による監督体制のもと、グループ全体で取り組みを進めています。サステナビリティ委員会の下部組織として環境分科会を設置し、各施策の検討、実施展開を推進する体制としています。

 

② 戦略

気候変動が与えるインパクトを把握するため、1.5℃~2℃以下シナリオ(IPCCによるシナリオRCP2.6、IEAによるNZE2050)、4℃シナリオ(IPCCによるRCP8.5)を参照して重要リスクと機会の特定を行いました。時間軸は、短期(現在~2030年)と長期(~2050年)で分類いたしました。

 

 

主なリスク

主な機会

移行リスク

・炭素税によるコスト増加
・規制対応のための技術開発コスト増加
・脱プラスチック化の進展による化学

 分野向けの需要減少

・再生可能エネルギー、創エネルギー需要の高まりによる

 売上増加(下水汚泥のエネルギー利用、リチウムイオン

 二次電池製造装置)
・AI、ICTを活用した設備の省人化、自動化による業務効

 率改善
・廃棄物、排ガスの有効活用
・下水処理場をエネルギー拠点としたバイオマス発電事業

 のビジネス機会の拡大
・上下水道インフラ強靭化による売上増加

物理的リスク

急性

・自然災害による工期遅延、事業運営

 中の施設(PFI、DBO事業)の被災

慢性

・平均気温の上昇等による生産性低下、

 工期遅延

 

 

時間軸を含めた詳細は、下記の当社企業情報サイトで公開しております。

https://www.tsk-g.co.jp/wp/wp-content/themes/tsk/img/esg/tcfd/strategy_pdf.pdf

 

③ リスク管理

気候変動関連のリスクに関しては、環境分科会で当社グループ全体の対応策の実施状況や進捗を確認しております。

環境分科会では、1年に1回以上の頻度で気候関連リスク・機会の見直しを行い、影響度評価、対応方針の検討を継続し、結果については、サステナビリティ委員会で審議を行い取締役会に報告を行っております。2023年度においては、JFEエンジニアリング株式会社との国内水エンジニアリング事業の統合による影響を反映させ、取締役会へ報告しております。

サステナビリティ委員会で承認された気候関連リスクは、コンプライアンス推進部門にも共有されます。

コンプライアンス推進部門にて洗い出された全社レベルのリスクと、サステナビリティ委員会で承認された気候変動関連リスクを統合し、事業上特に重要なリスクについて識別・評価し、取締役会に報告しています。

 

④ 指標及び目標

排出量削減目標の管理はScope1,2から行い、Scope3に関しては、公表に向けた取り組みを進めてまいります。当社グループでは、2050年度の温室効果ガス排出量ネットゼロの達成を目指し、自社の企業活動の省エネルギー化、再生可能エネルギー利用等に取り組んでまいります。

Scope1,2の温室効果ガス排出量

単位:CO2排出量(万トン/年)

2022年3月期

2023年3月期

2024年3月期

0.26

0.29

0.72

 

 

算出範囲は、2023年3月期までは単体ベース、2024年3月期より主要子会社合算ベースを計上しております。主要子会社とは、月島JFEアクアソリューション株式会社、月島機械株式会社、月島環境エンジニアリング株式会社、三進工業株式会社、サンエコサーマル株式会社、プライミクス株式会社です。

 

 

(3) 人的資本への対応

当社グループでは、創業以来、約120年にわたり、技術で産業の発展と環境問題の解決に貢献してまいりました。これからも時代の変化や社会のニーズに合わせた技術で、世界的な社会課題である環境問題の解決に取り組み、グループ全体でパーパス「環境技術で世界に貢献し未来を創る」を実践してまいります。また、「魅力的で働きがいのある職場環境整備」をマテリアリティとした以下の重点施策を実施し、長期ビジョン(2030年)「豊かな生活・文化の創造に貢献し、快適でサステナブルな社会を実現」を目指してまいります。

 


 

① 戦略

(人材育成方針)

当社グループは、「環境技術で世界に貢献し未来を創る」というパーパスを実践し、社会に貢献していく企業であり続けるためには、働きやすい職場づくりを通じて組織を活性化させ、社員のエンゲージメントを高めることが重要であると考えています。社員が自身の成長を実感し、能力を最大限に発揮できるよう、以下の人材育成方針に取り組んでまいります。

・ 多様な人材が個性を発揮して幅広く活躍できる機会を提供します
 ・ 自ら学び成長するための研修・人材育成プログラム充実に継続的に取り組みます
 ・ 積極的に挑戦し成果を出した社員を評価し登用します

 

〔技術の伝承〕

当社グループでは、特定の技術に関して深い知見を有するベテランエンジニアから技術を伝承しうる素養を有する中堅若手エンジニアに技術を伝承する「マイスター制度」により、当社グループの固有の技術の伝承と中堅若手技術者のレベルアップを図っています。

 

〔階層別研修制度〕

当社グループでは、社員のレベルに応じた階層別研修や資格取得など自己研鑽を支援する通信教育制度など、様々な研修制度を設けています。今後も、対面形式とウェブ形式を併用した研修により、人材育成を図っていきます。

 

 

〔高度なICT・AIに関する知見を有する人材の育成〕

当社グループでは、主要な研究開発テーマとして環境・エネルギー関連と、近年急速に発展しているICT・AI技術に注力しています。また、オープンイノベーションを推進するために大学との技術開発に取り組んでおり、国立大学法人室蘭工業大学とは包括協力協定の枠組みのなかで、モデル予測制御、コンピューターシミュレーションによる最適設計など幅広い分野で研究に取り組んでおります。具体的な研究例として実データに基づくAI・機械学習や、モデル予測制御を活用し、脱水・乾燥などの各種プロセスおよび機器の運転最適化を図っています。併せて、共同研究の展開を通じて社会人ドクター取得やインターンシップなどの人材育成に取り組んでいます。

 

(社内環境整備方針)

当社グループでは、従業員のウェルビーイング(*)を高め、いきいきと活動できる状態をつくる安全・安心・快適な職場づくりを推進します。

 

*:ウェルビーイング(well-being)

肉体的、精神的、社会的にすべて満たされ、心身ともに幸福な状態

 

〔安全・安心・快適な職場環境づくりに関する主な取り組み〕

福利厚生の充実

労働時間の短縮

就業規則の改定

社員教育プログラムの見直し

・経営陣とのタウンホールミーティング開催

 

② 指標及び目標

 

 

目標

実績

(2023年3月期末)

実績

(2024年3月期末)

女性管理職比率 (注) 1
* 当社基準(人事制度上の管理者の資格を有する者をカウント)

2027年3月期末までに6以上

3.8

4.6

男性社員育児休暇取得率 (注) 1,2

2027年3月期末までに100

75.0

84.6

取締役会の女性比率 (注) 3

2027年3月期末までに15以上

0.0

8.3

 

(注) 1 対象は、評価制度や研修体系等が共通の月島ホールディングス株式会社、月島JFEアクアソリューション株式会社、月島機械株式会社の計3社であります。

2 「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第2号における育児休業等及び育児目的休暇の取得割合を算出したものであります。

3 対象は月島ホールディングス株式会社であります。

 

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項につきましては、下記のようなものがあります。なお、下記項目における将来の予想に関する事項は、当連結会計年度末(2024年3月31日)現在において判断したものであります。
 

① 需要・市場環境

当社グループの事業のうち、水環境事業につきましては、主な顧客である地方自治体における浄水場、下水処理場等への公共投資の変動が業績に影響を及ぼす可能性があります。産業事業につきましては、米中貿易摩擦やロシアによるウクライナ侵攻の長期化、中東情勢の緊迫などの地政学的リスクに留意する必要があります。また、中国経済の減速、原材料価格の高騰、為替等の変動など世界経済の見通しに対する不透明感から、化学、鉄鋼、食品および環境・エネルギー関連の業界における当社グループの顧客の設備投資動向が業績に影響を及ぼす可能性があります。

なお、当社グループの売上高に関しましては、水環境事業における官公庁・公共事業案件は、工事完了および検収時期が年度末に集中することが多く、特に第4四半期に集中する傾向があります。また、別途発注の土木建築工事の遅れや顧客事由、半導体の納期長期化や鋼材の高騰などの影響により受注案件が翌期にずれ込む可能性があり、そうした場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 海外事業展開に伴うリスク

当社グループの海外事業におきましては、為替相場や原油、資源価格の変動のほか、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化、中東情勢の緊迫など各国における政情不安や体制変更、テロの発生、新型コロナウイルスのような感染症等によるロックダウン、経済状況の急激な変動、予期しない法規制や税制の変更があった場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

為替相場の変動対策としては、為替予約等のヘッジ取引を行うことで影響を軽減しております。

 

③ 設備工事および機器製造における事故および災害

当社グループが建設中または建設したプラントおよび単体機器の製造現場において、予期しない事故や災害等、偶発事象が発生した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社では、適切な品質および安全性を確保するため、品質保証安全管理部を設置し、品質保証システムと労働安全マネジメントシステムの構築・維持に努めてまいります。

 

④ 当社グループ事業の特性

当社グループは個別受注生産を中心としており、資材の調達価格や需給状況、外注費用など受注後のコスト上昇要因等により、契約締結時に見積もったコストと実際のコストとの間に差異が発生することがあります。また、設備工事では、工事途中での設計変更や手直し工事により想定外の追加コストが生じることがあります。加えて、納入した製品および設計・施工したプラント類の不具合等により、補償工事に伴う費用の発生や顧客への補償等費用負担の発生、さらには顧客等に損害を与えた場合には賠償請求等の訴訟や係争が生じる可能性があります。

子会社の月島ジェイテクノメンテサービス株式会社では、国内の浄水場、下水処理場において、設備の補修工事、薬品・燃料・電力等の供給を含めた包括的な維持管理業務を受託しております。燃料や電力の価格が変動した場合は委託者と協議を行いますが、価格変動分を速やかに精算できない可能性があります。

これらが生じた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 株式相場の変動

当社は株式等の投資有価証券を保有しており、株式相場の急激な変動が業績に影響を及ぼす可能性があります。
 

⑥ 退職給付債務

当社グループの年金資産の時価の変動や運用利回りの状況の変化等があった場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
 

 

⑦ 法的規制

当社グループは、建設業法、製造物責任法、計量法、廃棄物の処理及び清掃に関する法律等さまざまな法規制の適用を受けております。当社グループでは法令遵守の徹底を図っておりますが、法律・規制等が強化された場合、または予期し得ない法律・規則等の導入・改正等があった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑧ 大規模災害等の発生

当社グループの生産拠点や事業所、工事現場、ならびに取引先の事業拠点において、地震・洪水・火災・雪害等の大規模自然災害やその他の災害が発生した場合、生産設備や製品等の破損およびライフラインの破損等による生産機能の低下若しくは停止により、業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社では、首都圏直下地震などの災害を想定し、事業継続および早期復旧のための事業継続計画(BCP)を策定するとともに、今後は定期的な訓練により実効性を高めてまいります。

 

情報セキュリティ

当社グループは、事業活動を通して得た顧客・取引先の情報や、事業上の機密情報等を保有しております。これら機密情報に対して、想定を超えるサイバー攻撃、不正アクセス、コンピューターウイルスの感染等により、情報流出、重要データの破壊、改ざん、システム停止等を引き起こす可能性が高まっており、業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、情報セキュリティに関する事件や事故の発生を防止するために「情報セキュリティ基本規程」および「情報セキュリティ対策基準」を定め、それに基づく人的側面と情報システム面の両面からの情報セキュリティ対策を実施しております。人的側面においては従業員教育や情報セキュリティに対する考え方の周知・徹底など啓蒙活動を推進すると共に、システム面においては、常にセキュリティ対策を最新にすべく継続的な改善・向上を図ることで、リスクの最小化に努めております。

 

⑩ 知的財産

当社グループは、単体機器およびプロセスの競争力を確保するため、知的財産権の獲得と適切な管理、活用に努めております。国内外で事業を展開するなかで、新興国等で当社グループの保有する知的財産権が侵害される可能性があります。また、第三者が保有する知的財産権を侵害する可能性があり、そのような場合には、損害賠償責任を負うなど当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当社は、知的財産権の重要性を認識し、知的財産の権利化、重点的に強化する分野・技術における特許網の構築を推進してまいります。また、当社保有知財の侵害行為に対しては毅然とした対応をするほか、第三者が保有する知的財産権を尊重し適切に対応してまいります。

 

⑪ 人材

当社グループは、成長と発展のための最も重要な経営資源は人材であると認識しております。国内においては少子高齢化、熟練技術者の減少等により専門性を有する人材を継続的に確保することが困難となり円滑な事業活動に支障が生じる場合には、当社グループの事業、業績に影響を与える可能性があります。

当社グループは、社員のレベルに応じた階層別研修や通信教育を通じて人材を育成しながら、AI・IoTの活用やデジタル化を推進し省人化・効率化を図ることで生産性を高めてまいります。海外の設計拠点との人材交流を進めながら技術者の育成と多様化にも取り組んでおります。また、中途採用も積極的に行っており、専門性を有する人材の拡充にも努めてまいります。

 

 

⑫ 気候変動に関するリスク

気候変動に関するリスクとしては、当社グループの既存顧客が脱炭素化に向けた規制強化により業態や製造プロセスを変化させることによる当社機器・プロセスの需要減少、平均気温の上昇による建設現場や製造現場での生産性低下による工期遅延、自然災害の増加による損害および復旧・対応コストの増加などが当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当社グループは、気候変動リスクを重要な社会課題として認識しており、「環境技術で世界に貢献し未来を創る」というパーパスのもと、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを推進するため、サステナビリティ委員会を設置し、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への賛同を表明いたしました。脱炭素社会に貢献するために、下水汚泥のエネルギー利用を推進しリチウムイオン二次電池材料を製造する機器・プラントを展開することで、事業を通じて脱炭素社会に貢献し、気候変動リスクの低減に努めてまいります。

 

⑬ 持株会社としてのリスク

当社グループは2023年4月より持株会社体制へ移行いたしましたが、適切な経営資源配分、グループ戦略の見直しおよびグループ会社の監視・監督等といった持株会社統治、グループ管理の効果が十分発揮されなかった場合、当社グループの業績および財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。

また、持株会社の収入の大部分は、当社が直接保有している子会社からの経営指導料、業務受託料、受取配当金であります。子会社が十分な利益を計上できない場合は、当社に対する受取配当金を支払えなくなる可能性があります。

当社は、グループ各社からの事業報告およびその分析結果からグループ全体として適切な戦略判断と経営資源の配分を行ってまいります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用関連会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

  

① 財政状態及び経営成績の状況

a.経営成績の状況

当連結会計年度における当社を取り巻く市場環境は、国内外において米中貿易摩擦やロシアによるウクライナ侵攻の長期化、中東情勢の緊迫などの地政学的リスクの影響により依然として先行きが不透明な状況が続くなか、中国経済の減速、原材料価格の高騰や為替の変動などが経済活動に与える影響について留意する必要がありました。

このような環境の下で当社グループは、2023年4月より持株会社体制に移行しました。また、持続的な成長を目指すために「サステナビリティ経営の推進」、「事業領域の拡充とグループ収益力の強化」、「資本効率の向上と株主還元の拡充」を基本方針とした中期経営計画(2023年4月~2027年3月)を策定し、推進することで、企業価値の向上に取り組んでまいりました。また、2023年10月1日にJFEエンジニアリング株式会社の国内水エンジニアリング事業を月島アクアソリューション株式会社と統合し、商号を月島JFEアクアソリューション株式会社に変更しております。

セグメント別の取り組みは、次のとおりです。

水環境事業においては、上下水道設備や汚泥再生処理・バイオマス利活用設備などの水インフラの増設•更新需要の取り込みや、設備の維持管理業務、補修工事などの営業活動を展開してまいりました。また、脱炭素社会に貢献する創エネルギー事業、および水インフラを安定的に維持・運営していくために設備の建設と長期の維持管理業務が一体となったPFI(*l)、DBO事業(*2)や、包括O&M業務(*3)、FIT(*4)を活用した発電などの官民連携事業の受注拡大に取り組んでまいりました。

一方、産業事業においては、化学分野向けプラント・単体機器や持続可能な社会の実現に貢献する二次電池製造関連設備などの産業インフラ関連設備および廃液・固形物廃棄物処理などの環境関連設備の営業活動を推進してまいりました。

その結果、当連結会計年度における当社グループの業績は、以下のとおりとなりました。

受注高は1,652億87百万円(前期比55.9%増)、売上高は1,242億5百万円(前期比27.0%増)となりました。また、損益面につきましては、営業利益は67億65百万円(前期比35.2%増)、経常利益は78億10百万円(前期比38.2%増となりましたが、親会社株主に帰属する当期純利益は、固定資産の減損による特別損失を計上したこと等により26億75百万円(前期比36.5%減)となりました。

 

*1:PFI(Private Finance Initiative)

施設整備を伴う公共サービスにおいて、民間の有する資金、技術、効率的な運用ノウハウなどを活用する仕組み

*2:DBO(Design Build Operate)事業

事業会社に施設の設計(Design)、建設(Build)、運営(Operate)を一括して委ね、施設の保有と資金の調達は行政が行う方式

*3:包括O&M業務

  設備の運転管理業務だけでなく、設備の補修工事や薬品等の供給も含めた包括的な維持管理業務

*4:FIT(Feed-in Tariff) 

再生可能エネルギーを用いて発電された電気を、一定価格で電気事業者が買い取ることを義務付けた制度(固定価格買取制度)

 

当社グループは、当社と子会社41社および関連会社14社で構成され、上下水道および汚泥再生処理・バイオマス利活用設備を主要マーケットとする水環境事業と、化学分野や二次電池製造などに関連する産業インフラ設備および廃液や固形廃棄物処理などの環境関連設備を主要マーケットとする産業事業の2つを主たる事業と位置付けており、それら以外の事業をその他としております。

当連結会計年度におけるセグメント別の業績は、次のとおりであります。

なお、当連結会計年度より、従来、水環境事業に含めていた「一般・産業廃棄物処理事業」を産業事業にセグメント区分の変更を行っており、前期の数値は、セグメント変更後の数値で比較しております。

 

 

(水環境事業)

水環境事業は、水インフラ(機器・プラントの設計・建設)とライフサイクルビジネス(運転・メンテナンス・補修工事・サービス業務)により構成されております。

事業環境につきましては、国内の水インフラ関連投資は堅調に推移しております。また、複数年および包括O&M業務や設備建設と長期の維持管理業務を一体化したPFI、DBO事業などの発注は増加しております。一方で、原材料価格の高騰や為替の変動などが経済活動に与える影響について留意する必要がありました。

このような状況の下で当社グループは、国内の上下水道および汚泥再生処理設備の増設・更新需要を取り込むために、下水処理場向け汚泥処理設備、浄水場向け排水処理設備、し尿処理設備などの営業活動を推進してまいりました。また、脱炭素社会に貢献する技術開発および民間企業のノウハウを活用した官民連携事業の提案を推進してまいりました。その結果、下水処理場向け次世代型汚泥焼却システム、浄水場向け排水処理設備、汚泥再生処理設備、大型包括O&M事業などの受注を果たしました。また、メンテナンスなどのアフターサービス事業をより一層強化するために、包括O&M業務や補修工事の営業活動を展開し、受注高を確保してまいりました。

その結果、当連結会計年度における水環境事業の受注高は1,239億51百万円(前期比109.6%増)、売上高は809億59百万円(前期比35.7%増)、営業利益は50億83百万円(前期比56.3%増)となりました。

 

(産業事業)

産業事業は、産業インフラ(機器・プラントの設計・製造・建設)と環境(環境保全設備の設計・製造・建設、廃棄物処理事業)により構成されております。

事業環境につきましては、国内外において米中貿易摩擦やロシアによるウクライナ侵攻の長期化、中東情勢の緊迫などの地政学的リスクの影響により依然として先行きが不透明な状況が続くなか、中国経済の減速、原材料価格の高騰や為替の変動などが経済活動に与える影響について留意する必要がありました。

このような状況の下で当社グループは、化学分野などの産業インフラの設備更新需要や脱炭素社会に貢献する二次電池製造関連設備の設備投資需要を取り込むために、国内外における各種プラント設備および晶析装置、乾燥機、分離機、ろ過機、ガスホルダ、攪拌機などの単体機器の営業活動を展開してまいりました。環境分野においては、国内外向けに廃液燃焼システム、固形廃棄物焼却設備、排ガス処理設備や補修工事の営業活動を展開してまいりました。また、微粒子製造技術の競争力強化やアフターセールスの強化に取り組んでまいりました。

その結果、当連結会計年度における産業事業の受注高は400億2百万円(前期比13.9%減)、売上高は419億12百万円(前期比11.3%増)、営業利益は13億77百万円(前期比32.7%減)となりました。なお、当連結会計年度において、月島機械株式会社について現在の事業環境を踏まえて今後の事業計画を見直し、固定資産の減損による特別損失を16億46百万円計上しました。

 

 (その他)

その他事業は、主に不動産管理、賃貸に関する事業であり、市川工場跡地において三井不動産株式会社と共同で開発した物流施設の事業になります。当該物流施設は前期から操業を開始しており、当連結会計年度よりフリーレントが解消し収益貢献しています。

当連結会計年度における受注高は13億32百万円(前期比199.8%増)、売上高は13億32百万円(前期比199.8%増)、営業利益は3億8百万円(前期は営業損失2億94百万円)となりました。

 

 

b.財政状態の状況

当連結会計年度末の資産合計は2,080億14百万円となり、前連結会計年度末に比べ615億52百万円増加しました。これは主に、現金及び預金の増加67億73百万円、売掛金の増加253億28百万円、契約資産の増加137億47百万円や投資有価証券の増加63億82百万円などがあったことによるものです。

負債合計は1,024億76百万円となり、前連結会計年度末に比べ387億2百万円増加しました。これは主に、支払手形及び買掛金の増加72億39百万円、短期借入金の増加140億円や長期借入金の増加45億5百万円などがあったことによるものです。

純資産合計は1,055億38百万円となり、前連結会計年度末に比べ228億49百万円増加しました。これは主に、その他有価証券評価差額金の増加47億96百万円や非支配株主持分の増加166億80百万円などがあったことによるものです。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)の残高は276億1百万円となり、前連結会計年度末に比べ、46億2百万円増加しました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

   (営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果使用した資金は、56億32百万円となりました(前連結会計年度は82億32百万円の獲得)。これは主に、税金等調整前当期純利益の計上73億76百万円および減価償却費の計上34億25百万円などの増加要因があった一方、売上債権及び契約資産の増加232億15百万円などの減少要因があったことによるものです。

 

   (投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は、27億68百万円となりました(前連結会計年度は28億17百万円の支出)。これは主に、有形固定資産の取得による支出23億31百万円などの減少要因があったことによるものです。 

 

     (財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果得られた資金は、74億43百万円となりました(前連結会計年度は115億64百万円の支出)。これは主に、長期借入金の返済による支出37億96百万円や配当金支払による支出20億27百万円などの減少要因があった一方、短期借入金の増加額140億円などの増加要因があったことによるものです。

 

③ 生産、受注及び販売の状況

a.生産実績

当連結グループは、生産実績の表示は困難であります。

 

b.受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりとなります。

 

セグメントの名称

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

水環境事業

123,951

109.6

232,288

134.7

産業事業

40,002

△13.9

43,037

△4.3

報告セグメント計

163,954

55.3

275,326

91.3

その他

1,332

199.8

合計

165,287

55.9

275,326

91.3

 

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 当連結会計年度より、従来、水環境事業に含めていた「一般・産業廃棄物処理事業」を産業事業へセグメント区分を変更しており、前期比の数値は、セグメント変更後の数値で比較しております。

3  当連結会計年度の水環境事業の受注残高には、2023年10月1日付でJFEエンジニアリング株式会社の国内水エンジニアリング事業を統合したことに伴い受け入れた金額を含めて記載しております。

 

 

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりとなります。

 

セグメントの名称

販売高(百万円)

前期比(%)

水環境事業

80,959

35.7

産業事業

41,912

11.3

報告セグメント計

122,872

26.2

その他

1,332

199.8

合計

124,205

27.0

 

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 当連結会計年度より、従来、水環境事業に含めていた「一般・産業廃棄物処理事業」を産業事業へセグメント区分を変更しており、前期比の数値は、セグメント変更後の数値で比較しております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末(2024年3月31日)現在において当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用関連会社)が判断したものであります。

 

  当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容
 (受注高)

当連結会計年度の受注高は、前連結会計年度に比べ55.9%増加1,652億87百万円となりました。

水環境事業では、2023年10月にJFEエンジニアリング株式会社の国内水エンジニアリング事業を統合した効果に加え、設備の更新需要を積極的に取り込み下水処理場向け次世代型汚泥焼却システム、浄水場向け排水処理設備、汚泥再生処理設備、大型包括O&M事業などの案件を獲得したことにより受注高が648億22百万円増加したことによるものです。一方、産業事業では、中国経済の減速などによる市況低迷の影響から一部の顧客が設備投資を延期または凍結したことが影響して受注高が64億69百万円減少いたしました。なお、セグメント別の受注状況につきましては、「(1) 経営成績等の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況 a.経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 
 (売上高)

当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度に比べ27.0%増収1,242億5百万円となりました。これは、水環境事業は、2023年10月にJFEエンジニアリング株式会社の国内水エンジニアリング事業を統合した効果に加え、水環境事業、産業事業ともに受注済みの案件が順調に進捗し増収となったことによるものです。なお、セグメント別の売上高につきましては「(1) 経営成績等の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況 a.経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

 (営業利益)

当連結会年度の営業利益は、前連結会計年度に比べ35.2%増益67億65百万円となりました。これは、主に水環境事業において、2023年10月にJFEエンジニアリング株式会社の国内水エンジニアリング事業を統合した効果によるものです。なお、セグメント別の営業利益につきましては、「(1) 経営成績等の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況 a.経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

 

 (親会社株主に帰属する当期純利益)

当連結会計年度においては、支払利息などの営業外費用を2億44百万円計上した一方で、受取配当金などの営業外収益を12億89百万円計上し、経常利益は前連結会計年度に比べ38.2%増益78億10百万円となりました。また、投資有価証券売却益7億39百万円などの特別利益を13億22百万円計上した一方で、当社の連結子会社である月島機械株式会社について固定資産の減損による減損損失を16億46百万円計上するなど特別損失を17億57百万円計上しました。その結果、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べ36.5%減益26億75百万円となりました。

 

 (財政状態)

当連結会計年度における財政状態の分析につきましては、「(1) 経営成績等の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況 b.財政状態の状況」をご参照ください。

当連結会計年度末における自己資本比率は42.0%(前期比13.4ポイント減)となりました。

 

(3) 経営成績に重要な影響を与える要因について

当社グループの主力製品は個別受注生産であり、様々な外部要因によって、売上高および利益が計画どおりに計上されない可能性があります。
  なお、詳細は「第2 事業の状況  3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

(4) 資本の財源及び資金の流動性に係る情報について

当連結会計年度のキャッシュ・フローの概況につきましては、「(1) 経営成績等の概要 ② キャッシュ・フローの状況」をご参照下さい。

当社グループは、持続的な成長を目指すために「サステナビリティ経営の推進」、「事業領域の拡充とグループ収益力の強化」、「資本効率の向上と株主還元の拡充」を基本方針とした中期経営計画(2023年4月~2027年3月)を推進することで、企業価値の向上に取り組んでまいりました。この基本方針を実現するため、中期経営計画期間においては、研究開発投資、M&A投資、基幹システム更新などの戦略投資を実行してまいります。

また、当連結会計年度は、当社でのIT関連等のほか、連結子会社であるサンエコサーマル株式会社の一般廃棄物、産業廃棄物中間処理設備等で、総額32億81百万円の設備投資を実施いたしました。

当社グループは、中期経営計画に基づく持続的成長を支えるために、以下の「財務戦略」を掲げております。

 

① 調達方針

当社グループは運転資金および定常的な設備投資・研究開発につきましては、原則、営業活動によるキャッシュ・フローおよび自己資金にて賄っておりますが、キャッシュフローを超える大型の設備投資やM&Aについては外部調達にて対応します。当社グループは、資本コストを意識し外部調達を有効活用して「最適資本構成」(注1)を確立してまいります。

 

② 財務規律

財務基盤の安定を企図して以下の財務規律を定めております。

a.自己資本比率 40%~50%程度

b.D/Eレシオ(注2) 0.8倍以内

c.手許現預金を月商の2か月分確保

 

 

③ キャピタルアロケーション

当社グループは、ROEとROICを新たに経営指標に設定し、資本効率の向上と資本コストを意識した企業価値経営を推進してまいります。また、キャピタルアロケーションを策定し、創出した営業キャッシュ・フローに加え政策保有株式の売却を実施し、通常の設備投資に加えデジタルトランスフォーメーション(DX)や人的資本などの戦略投資、株主還元に配分してまいります。M&Aなどの大規模投資には必要に応じて負債等による調達を活用し最適資本構成を目指します。なお、政策保有株式については継続的な縮減に取り組み、本中期経営計画の期間内で連結純資産の20%以内、金額として30~50億円の売却を目指しておりましたが、縮減をより一層加速させるべく目標を本中期経営計画期間中に70億円以上の売却に変更いたしました。売却により生じた資金については、中長期的な企業価値向上に向け、成長投資や株主還元に最適配分してまいります。

 

④ 株主還元方針

当社は、財務体質と経営基盤の強化を図りつつ、毎期の業績、新規投資、連結配当性向等を総合的に勘案しながら安定配当に努めることを利益配分の基本方針としております。株主還元につきましては、総還元性向50%以上、配当性向40%以上を目標としておりましたが、政策保有株式の売却と検討中の設備投資の時期を見直したことにより、2025年3月期の配当性向の目標を50%以上に拡充いたしました。安定的な配当と継続的な増配に努めるとともに、機動的な自己株式の取得にも取り組んでまいります。

 

(注1)最適資本構成とは、株式会社の資本構成要素である他人資本(借入)と自己資本の比率や内容・内訳などがその企業によって最適なバランスをとり、資本コストが最適になる構成のこと。資本コストが最小に抑えられる。

(注2)D/Eレシオとは、負債が自己資本の何倍にあたるかを示す指標。

 

 (5) 経営者の問題認識と今後の方針について

今後の景況感につきましては、米中貿易摩擦やロシアによるウクライナ侵攻の長期化、中東情勢の緊迫などの地政学的リスクの影響、および中国経済の減速、原材料価格の高騰や為替の変動などが経済活動に与える影響について留意する必要があります。国内の上下水道分野は、水インフラ関連の投資は引き続き堅調に推移していくものと推測されますが、中長期的には人口減による市場規模の縮小、および競争の激化等により事業環境が厳しくなることが予想されております。2023年10月に当社グループの水環境事業とJFEエンジニアリング株式会社の国内水エンジニアリング事業を統合しました。シナジーを創出し、さらなる事業基盤の安定化に取り組んでまいります。民間の設備投資については、注力しているリチウムイオン二次電池向けの機器・プラントの市況は、欧米等における電気自動車に対する補助金の見直しの影響などもあり踊り場を迎えている状況ですが、中長期的には内燃機関から電気自動車へのシフトが進む方向性は変わらないと思われることから、引き続き競争力の強化に取り組み脱炭素社会の構築に貢献してまいります。

このような状況のもとで当社グループは、グループ戦略および経営基盤の強化を図り、事業子会社の業務執行に関する権限移譲により意思決定の迅速化を進めるために、2023年4月より持株会社体制に移行いたしました。当社グループの持続的な成長を目指すために、「サステナビリティ経営の推進」、「事業領域の拡充とグループ収益力の強化」、「資本効率の向上と株主還元の拡充」を基本方針とした中期経営計画(2023年4月~ 2027年3月)を策定し、推進することで、企業価値の向上に取り組んでまいりました。

2025年3月期の数値目標については、連結売上高1,300億円、連結営業利益70億円、連結経常利益78億円、親会社株主に帰属する当期純利益44億円を目指してまいります。

 

 *上記の業績予想は、現時点で入手可能な情報に基づき当社が判断したものです。実際の業績は、今後様々な要因によりこれらの業績予想とは異なる結果になる可能性があります。

 

 

  (6) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されており、経営陣は、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき見積りや判断を行っておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。財政状態および経営成績に関する主要な点は以下のとおりであります。

 

a.

当社グル-プの売上高は、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用し、工事契約に基づく収益を、一定の期間にわたり充足される履行義務について、履行義務の充足に係る進捗度を見積り、当該進捗度に基づき一定の期間にわたり収益を認識するものと、履行義務が全て充足された一時点で全ての収益を認識するものに分けております。

 

b.

退職給付費用および債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されております。したがって、実際の年金資産運用収益が前提条件に基づく期待運用収益に満たない場合等は、認識される費用および計上される債務に影響を及ぼします。

 

c.

当社グループは、繰延税金資産について定期的に回収可能性を検討しております。当該資産の回収が不確実と考えられる部分に対しては評価性引当額を計上しております。回収可能性の判断においては、将来の課税所得の見積額と実行可能なタックス・プランニングを考慮して、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると考えられる範囲で繰延税金資産を計上しております。

 

d.

のれんについては、今後の事業展開から期待される将来の超過収益力であり、取得原価と被取得事業の識別可能な資産及び負債の企業結合日時点の公正価値との差額で識別しております。

当社グループは、識別可能資産の認識及び測定の実施と、その結果として顧客関連資産への取得原価の配分にあたっては、外部専門家を利用し、顧客関連資産の評価を将来キャッシュ・フローの現在価値として算定することにより行っております。

取得原価の配分に当たっては、専門的な知識を必要とする複雑な会計上の見積りが含まれており、不確実性や経営者による主観的な判断が伴うため、市場環境等の変化により将来キャッシュ・フローの見積りに重要な影響が生じた場合には、翌連結会計年度以降の連結財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

 

e.

当社グループは、原則として各グループ会社において資産のグルーピングを行っています。資産グループについて営業活動から生ずる損益が継続してマイナスとなっている場合等に減損の兆候があると判定されます。減損の兆候がある場合は、当該資産又は資産グループについて事業計画を基礎とした割引前将来キャッシュ・フローの総額と有形固定資産および無形固定資産の帳簿価額を比較し減損損失を認識するかどうかの判定を行います。減損が必要と判定された場合は帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上します。なお、減損損失の認識の判定に利用した将来の事業計画等は、受注状況や事業環境などの重要な仮定を置いて算定されており、不確実性を伴うため、市場環境の変化等により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、減損処理が必要となる可能性があります。

 

f.

当社は、関係会社株式の評価について、超過収益力を反映した実質価額と帳簿価額を比較し、実質価額の著しい低下の有無を判定しております。判定の結果、実質価額の著しい低下が見られる株式に対して相当の減額を行い、帳簿価額の減少額を関係会社株式評価損として計上しております。
超過収益力の評価にあたっては、当該関係会社の翌事業年度以降の事業計画を基礎として見積もっておりますが、その前提となる事業計画は、直近の損益実績や経営環境および事業計画の達成状況を踏まえた仮定に基づいております。
事業計画については、将来の不確実な経済条件の変動などによって影響を受ける可能性があります。実績が事業計画と乖離した場合には、翌事業年度の財務諸表に影響を与える可能性があります。

 

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

1 JFEエンジニアリング株式会社との水エンジニアリング事業の統合

当社は、2022年12月5日開催の臨時取締役会において、2023年10月1日を効力発生日として当社グループの水環境事業とJFEエンジニアリング株式会社の国内水エンジニアリング事業の統合(以下、「本事業統合」という。)を複数の吸収分割の方法によって実施することを決議し、両社の間で合弁契約書(以下、「本最終契約」という。)を締結いたしました。

当社グループは、本最終契約に基づき、本事業統合のための一連の取引の一環として、2023年6月27日に吸収分割契約を締結し、2023年10月1日付で本事業統合を実施いたしました。

詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (企業結合等関係) Ⅱ.取得による企業結合 (JFEエンジニアリング株式会社との水エンジニアリング事業の統合)」に記載のとおりであります。

 

2 連結子会社間の合併

当社は、2024年2月8日開催の取締役会において、当社の完全子会社である月島環境エンジニアリング株式会社を存続会社、当社の完全子会社である大同ケミカルエンジニアリング株式会社を消滅会社とする吸収合併を行うことを決議し、月島環境エンジニアリング株式会社と大同ケミカルエンジニアリング株式会社は、2024年4月23日付で吸収合併契約を締結いたしました。

詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (追加情報) (連結子会社間の合併)」に記載のとおりであります。

 

3 技術受入契約

2024年3月31日現在

契約会社名

相手先の名称

内容

契約期間

対価の支払

月島JFEアクアソリューション株式会社

オーストリア
アンドリッツAG社

プレスロールフィルターおよびベルト濃縮機の設計、製作に関する技術

1975年10月4日から
解除通知より2年後の暦年末まで

販売価額に対する一定の実施料

米国
アンドリッツセパレーション社

デカンタ遠心分離機の製造技術

1988年7月18日から
解除通知より2年後の暦年末まで

同上

 

月島機械株式会社

スイス
フェルム・プロセス・システムズ

押出型遠心分離機の製造技術

1953年3月17日から

2027年6月29日まで

同上

ドイツ
ヒタチゾウセン・イノバ・シュタインミューラー社

廃棄物用焼却キルンシステムの製造技術

2003年4月1日から

2027年12月31日まで

対象設備の容量に対する一定の実施料

クボタ環境エンジニアリング株式会社

海水法排煙脱硫技術

2005年9月22日から

2024年11月30日まで

定額一括払

 

 

4 その他の契約等

2024年3月31日現在

契約会社名

相手先の名称

締結日

内容

月島ホールディングス株式会社

(当社)

JFEエンジニアリング株式会社

2010年11月24日

海外における上下水道設備・バイオマス関連設備・産業廃棄物処理設備等での共同展開を目的とした業務提携に関する基本合意

東京センチュリー株式会社

2017年5月25日

下水処理場におけるバイオマス混合消化、再生可能エネルギーを活用した発電事業および上下水道関連設備等における官民連携事業の共同検討・提案などを目的とした業務提携

株式会社日本製鋼所

2018年3月29日

両社の製造分野の協業に関する、日本製鋼所室蘭製作所内の製造設備賃借および機械加工に対する日本製鋼所への業務委託、日本製鋼所の大型圧力容器ほかについての製造委託に関する基本協定

三井不動産株式会社

2022年3月31日

市川工場閉鎖後の跡地活用として、物流施設の土地および建物の信託受益権を相互で取得・保有し、両社で物流施設の賃貸事業を推進する契約

 

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、会社が持続的に発展していく上では研究開発が重要であるとの認識の下、積極的に研究開発を推進しております。新規事業分野の基礎研究に取り組むとともに、大学や研究機関、さらには、同業他社や異業種企業との共同研究にも力を入れております。

なお、当連結会計年度の研究開発費は1,467百万円であります。

 

(1) 水環境事業

水環境事業分野では、創エネルギーと温室効果ガスの削減を目的とした濃縮脱水システム、焼却システムの開発をはじめ、バイオマス資源の有効利用、下水汚泥の利活用技術開発に注力しております。

2023年10月に月島アクアソリューション株式会社とJFEエンジニアリング株式会社の国内水エンジニアリング事業部が統合し、両社の技術を融合させた技術開発に着手しております。旧月島の技術である「過給式流動焼却システム」と旧JFEエンジニアリングの技術である「OdySSEA」を融合し、温暖化ガスであるN2Oの発生量を抑制するとともに、創エネルギー量を最大限まで高めた汚泥焼却システムの開発を進めております。

また、国土交通省の下水道革新的技術実証事業(B-Dashプロジェクト)として、肥料又は肥料原料として利用可能なリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)を脱水ろ液から効率的に回収する技術の実証事業を継続しております。

さらに、FIT制度を利用したバイオガス発電事業をより効率的に実施するため、バイオガス増量を目指した下水汚泥の可溶化技術の開発を進めております。

し尿・汚泥再生処理分野においては、人口減少等によってし尿および浄化槽汚泥の減少や希薄化が進んでおります。受入負荷が変動しても消費電力や薬品使用量を最小化させ、効率良く運転することが可能な担体サイクル処理システムを開発し、実証試験を継続しております。

昨今、少子高齢化・熟練技術者の不足といった課題が顕在化しており、ドローンやAIカメラを活用した点検業務の省力化、プラント設備全体を最小コストで運転するためのシミュレーション技術や自律運転技術の開発など、DXを推進しております。また、温室効果ガスの削減、環境保全に寄与する研究開発を継続してまいります。

なお、当連結会計年度の研究開発費は611百万円であります。

 

(2) 産業事業

産業事業分野では、コア技術である晶析・分離・ろ過・乾燥技術を活用し、より省エネルギーもしくは高効率の単位操作機器およびプロセスの開発に注力しております。

単位操作機器においては、リチウムイオン電池正極材を代表とする無機微粒子の製造技術開発に注力しております。超微粒、かつ、均一な粒子を製造する反応晶析装置(CRYSTALLEX®シリーズ)、それを洗浄ろ過する洗浄濃縮ろ過機(BoCross®フィルタ)、またそれを乾燥する間接加熱型の微粒子用乾燥機の開発を継続的に進めており、既に納入実績も上げ始めております。

プロセスにおいては、上記の開発機器および従来から保有する粉体ハンドリング技術などを駆使し、省エネルギー消費、かつ、建設コストを抑えたOPEX/CAPEXの両面からCO2排出を抑えるプロセス開発推進しております。

なお、当連結会計年度の研究開発費は417百万円であります。

 

(3) 全社(共通)

事業領域の拡充とグループ収益力の強化に主眼を置いた、各グループ会社の新商品開発や新事業創出に向けた技術支援を実施しております。技術支援は当社R&Dセンターを拠点として実施しております。試作、テスト、分析評価等を行い、蓄積したノウハウや技術情報等の付加価値の高い技術資産を提供し、開発を推進しております。持株会社体制への移行に伴い、グループ会社ごとに進められる研究開発の情報共有を行い、共通課題の解決、技術の融合に向けた取組体制を構築しております。

なお、当連結会計年度の研究開発費は438百万円であります。