当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)経営理念・経営方針
当社グループでは、成長を続ける企業であり続けるために、役員および社員が全員で共有し、いかなる行動を起こす場合においても基準となる共通の価値観として、グループ理念「inet Way」を制定しています。
「inet Way」は、「企業理念」・「企業ビジョン」・「経営方針」・「中期経営計画」の4つの柱から形成され、その土台には企業人として守るべき「企業行動憲章」と「inet Way」を達成するための原動力となる「行動指針」があります。
①企業理念
「情報技術で新しい仕組みや価値を創造し、豊かで幸せな社会の実現に貢献する」
②企業ビジョン
「創造」「挑戦」「信頼」をベースに持続的な企業価値向上を目指し、社会とステークホルダーに貢献する企業として成長する。
③経営方針
「持続的成長を可能にするエクセレントカンパニーへ」
当社グループの経営方針は、当社が持つ、高度なIT(情報技術)を活用し、顧客の事業発展に貢献するベストパートナーとして、常に最良のサービスを提供し続け、顧客とともに持続的に成長をする会社でありたいという、当社の経営に対する基本的な考えを示しております。
(2)事業戦略
当社グループはデータセンターを基盤とするプラットフォーム戦略を強化することで、社会の変革にあわせた持続的な成長を達成していく考えです。プラットフォーム戦略を事業の中心に据えて、プラットフォーム上のサービスと戦略的協業パートナーの拡大を通じた成長を目指しています。これにより、より広範な市場への参入や新たなビジネスチャンスの創出を実現し、当社グループの競争力を更に強化していきます。
(3)サービス展開モデル
当社グループの事業は、「情報処理サービス」と「システム開発サービス」の大きく2つのサービスとそれらに付随する「システム機器販売」の3つのサービス区分で構成されています。
「情報処理サービス」は、自社で運営するデータセンターを活用した事業です。当社グループの祖業である、サービスステーション向け受託計算サービスからスタートした、中核事業でもあります。「データセンター・クラウドサービス」、「受託計算サービス」、「プリント・メーリング・BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービス」で構成されています。
「システム開発サービス」は、ソフトウェア、及びハードウェアの開発/運用の受託事業です。主に、金融、流通、エネルギー、宇宙などの分野において、ソフトウェアなどの開発等の業務を請け負っております。
当社グループは、自社のデータセンターを軸に「情報処理サービス」と「システム開発サービス」を最適な形で組み合わせて提供することができます。当社グループが展開するサービスは、DXソリューション、クラウドサービス、受託計算、決済、プリント・メーリング・サービス・BPO、システム開発、組込制御、基盤開発・運用監視、など多岐にわたっております。
当社グループは、お客様がDX時代に必要とする最適なサービスを、安全にワンストップで提供することで、他社が安易に真似することのできない、独自の事業展開を行っております。「運用・BPOのアイネット」として、情報処理産業において確固たる地位を確立しています。
(4)経営環境、当社グループの現状の認識と当面の対処すべき課題
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウィルス感染症による行動制限がなくなったことにより、社会活動は正常化し、経済活動が活発化する等、明るい兆しが出てきております。一方で、世界的な原材料価格の高騰、ウクライナやパレスチナにおける地政学リスクの悪化、米ドル高の影響等により、引き続き全世界的な物価の上昇が続いており、景気回復に向けたリスクも依然として存在している状況です。
当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)が属する情報サービス業界においては、ニューノーマル時代における非接触・非対面への対応、クラウドコンピューティングの普及拡大、ビッグデータやAI(人工知能)の活用拡大、IoTの推進、業務効率化等、デジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みが進展しております。このような状況の中、当社グループは、中期経営計画(2022年4月-2025年3月)において掲げている目標を達成するため、当社グループ一丸となり、グループ全体の業容拡大に努めております。
当面の対処すべき課題としては、電気料金の値上がりをはじめとした原価やコスト上昇への対応力の強化、高い成長性を維持していくために必要となる設備投資余力の維持、及び人的資本の強化と考えております。加えて、第3データセンター新設への取り組みが必要となってきております。
(5)経営上目標とする指標
当社グループは、持続的な企業価値向上を目指すために、事業規模の継続的拡大を通じ、本業の成果を表す「売上高」、「営業利益」、「営業利益率」および「ROE」を重要な経営指標としております。
(中期経営計画)
2022年度より、中期経営計画(2022年4月~2025年3月)をスタートしました。
当社グループは、持続的な企業価値向上を目指すために、事業規模の継続的拡大を通じ、本業の成果を表す「売上高」、「営業利益」、「営業利益率」および「自己資本当期純利益率(ROE)」を重要な経営指標としております。
2022年4月に公表しました中期経営計画における2025年3月期の数値目標を以下となっております。
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(金額単位:百万円) |
2024年3月期 実績 |
2025年3月期 目標 |
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売上高 |
37,763 |
40,000 |
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営業利益 |
2,887 |
3,200 |
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営業利益率 |
7.6% |
8.0% |
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自己資本当期純利益率(ROE) |
11.7% |
10%以上 |
サービス別の事業戦略は以下となります。
①情報処理サービス
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データセンター・クラウドサービス |
・インフラ運用、システム運用、業務運用まで幅広いサービス提供推進 ・顧客に応じクラウドへの移行を手厚くサポート ・新サービス拡充(セキュリティ、ストレージ等) ・高効率、低消費電力サーバ・ストレージによる省エネサービスの提供 |
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受託計算サービス |
・石油元売り・商社向けDX推進強化(業務効率化提案等) ・大手特約店向けサービス拡充(規制対応、ASP利用拡大) ・顧客の拡大(SS向けサービス拡充、LPG業界向けサービス展開) |
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プリント・メーリング・BPOサービス |
・業務効率化コンサルティング推進(電子と紙のハイブリッド化) ・サービス多角化(協業先との連携 - BPO、配送サービス等) ・業務の質・量の強化に向けた設備の増強と効率的運営 |
②システム開発サービス
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・金融機関向けサービスの強化 ・販売管理システム、IoTプラットフォームのサービス展開強化 ・宇宙・衛星事業における協業と自社サービスの強化 |
(重点強化ポイント)
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重点強化ポイント |
主な取組み |
関連SDGs |
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①DX、New Normal時代に向けた顧客サービス、研究開発の推進 |
・クラウドサービス普及拡大 ・非接触、非密集対策 ・ビッグデータ・AI・IoT推進 |
9.産業と技術革新の基盤を作ろう 11.住み続けられるまちづくりを 12.つくる責任 つかう責任 |
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②共創・イノベーション推進と価値創出 |
・SDGs推進専門部署設置 ・産公学民連携事業推進 ・財団、特例子会社による事業活動推進 |
3.すべての人に健康と福祉を 9.産業と技術革新の基盤を作ろう 11.住み続けられるまちづくりを |
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③人材の多様化、高度化、生産性向上 |
・社員の能力開発 ・ダイバーシティ推進 ・キャリア形成支援 ・働き方改革の推進 |
3.すべての人に健康と福祉を 4.質の高い教育をみんなに 5.ジェンダー平等を実現しよう 8.働きがいも経済成長も 10.人や国の不平等をなくそう |
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④サービス展開モデルにおける事業ポートフォリオの適切な運営、企業価値の向上 |
・自社データセンターによるワンストップモデル推進 ・ストックビジネス強化 |
9.産業と技術革新の基盤を作ろう 11.住み続けられるまちづくりを |
①DX、New Normal時代に向けた顧客サービス、研究開発の推進
気候変動への対応を始めとする省電力、災害やBCPへの備えといったことに対するデータセンターサービスへの期待は益々高まると考えられます。また、非接触・非密集対策、ビッグデータ・AI・IoT推進など、時代の変化やニーズに応える事業として取り組んでまいります。
②共創・イノベーション推進と価値創出
SDGs推進専門部署設置、産公学民連携、当社創業者が設立した公益財団法人アイネット地域振興財団、障がい者雇用促進を目指す特例子会社、株式会社アイネット・データサービスとの連携など、社会課題の発掘とその解決策を提示すべく、当社グループの機能を最大限に活用してまいります。
③人材の多様化、高度化、生産性向上
経営における最大の財産は社員であるという理念のもと、多様性のある企業風土やダイバーシティ推進のメリットを最大限に引き出すべく取り組んでいます。また、社員のキャリア形成支援、働き方改革を通じ、社員の能力・スキルアップとともに、事業への貢献度を高め生産性を上げられるよう社員の能力とやりがいが結集する組織にしてまいります。
④サービス展開モデルにおける事業ポートフォリオの適切な運営、企業価値の向上
「自社データセンターによるワンストップモデル推進」及び、「ストックビジネス強化」を事業戦略として追求し、サービス展開力を強化してまいります。
(健康経営に向けた取り組み)
当社は、「社員が経営における最大の財産である」という理念のもと、社員の健康づくりを経営的な視点で捉え、社員が心身ともに健康であることこそが、持続的な企業価値向上の源泉であると考えております。社員の健康増進を支援する健康経営を積極的に推進するため、代表取締役兼社長執行役員を最高健康責任者に指名し、人事部・健康支援室・健康保険組合が一体となり、様々な活動に戦略的に取り組んでおります。
なお、以前より、当社は、健康経営に関する取り組みに一定水準の評価を得ており、経済産業省と日本健康会議が共同で優良な健康経営を実践している企業を選定する「健康経営優良法人2024~ホワイト500~」に認定されております。
当社グループは「情報技術で新しい仕組みや価値を創造し、豊かで幸せな社会の実現に貢献する」という企業理念のもと、創業者がガソリンスタンド(SS、サービスステーション)の事務効率化の課題を解決するために設立されました。以来、顧客の課題を情報技術で解決することにより、事業を通した社会づくりを行ってまいりました。
1971年の創立以来、神奈川県横浜市に本社を置き、地元の顧客やパートナー企業様に支えていただきました。これまでの感謝の気持ちを込め、社会貢献活動の一環として、2009年4月には障がい者雇用促進のための特例子会社を設立、NPO法人やボランティア団体等を支援する公益財団へのサポートをする等、様々な活動に取り組んでおります。
当社グループは、事業活動から環境に与える影響を最小化させていく活動にも取り組んでおります。ESG経営を推進するため、当社は2022年4月にSDGs推進室を新設しました。また、グループ全体でSDGsに取り組んでいくため、2022年度から、当社代表取締役兼社長執行役員を委員長とするSDGs推進委員会を設置し、年2回開催をしております。
SDGs推進委員会における審議、報告内容は速やかに取締役会に報告がなされており、取締役会は同委員会の活動状況の報告を受け、その運営状況や審議内容を監督しております。また、SDGs推進に係る重要なテーマや方針に関しては、取締役会にて審議の上、最終的な意思決定を行っております。監査役会、及び内部監査室は、これらの報告、意思決定プロセスが適切に運用されるよう、監督を行っています。
当社グループは、経営環境の変化に迅速に対応できるガバナンスの強化、社員の健康増進を支援する取り組み、多様化する社員のニーズを的確に対応するダイバーシティ推進の強化を通じて、社員一人一人の働きやすいビジネス環境づくりを、積極的に進めております。人材投資に係る各種施策は、主に総務人事本部に設置している人事部が従業員代表や各事業部門、外部機関と連携して行っております。人材投資に係る重要な事項については、取締役会にて審議の上、最終的な意思決定を行っております。内部監査室は、これらの報告、意思決定プロセスが適切に運用されるよう、監督を行っております。
今後もさらに成長を続ける企業であり続けるために、多彩な人材と情報技術やサービスを通じて、経済価値、社会価値、環境価値を創出し、様々なステークホルダーの皆様と共に豊かな社会づくりに尽力してまいります。
(1)気候変動に関する取り組み
①ガバナンス(気候変動マネジメント体制)
当社グループは、気候変動を含む環境課題への対応を重要な経営課題の一つと認識しており、ガバナンス方針と実行体制を整え、気候変動への対応に関する重要な方針や施策について審議・決定するとともに、改善や新たな取り組みにつなげています。
SDGs推進委員会では、気候変動に関連する取り組み、リスク・機会、対応方針、情報開示等につき、協議・決議します。進捗状況をモニタリングし、決議事項や進捗状況を取締役会に報告します。SDGs推進室は、SDGs推進委員会を運営するとともに、全社的な取り組み、リスク・機会、対応方針、情報開示等につき具体的な検討を行い、決議事項について各事業部門を通じ事業活動へ展開し、フォローを行います。
②戦略
イ.シナリオ分析(期間)
当社グループでは、気候変動による社会の変革、政策や規制の変更、市場の変化等が自社グループに与える影響を調べるために、中期、長期の期間に分けて、シナリオ分析を実施しました。
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区分 |
期間 |
目標年 |
背景 |
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中期 |
~10年 |
2030年 |
2020年パリ協定が求める目標年2030年までの期間、社会がカーボンニュートラルに移行することが可能となるかどうかがポイントとなる時期に相当すると考えられる。特に認識すべきリスクは、移行リスク(低炭素経済への移行に関するリスク)。 |
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長期 |
10~30年 |
2040年 |
日本を含むほぼすべての先進国、多くの国際機関、主要な企業がカーボンニュートラルを実現する目標として掲げている2050年までの長期的な視野に立った期間。当社は、2040年を目標年と定めて、前倒しで達成する。特に認識すべきリスクは、物理的リスク(気候変動による物理的変化に関するリスク)。 |
ロ.シナリオ分析(設定)
シナリオ分析を実施するに際しては、TCFD提言を踏まえ、国際エネルギー機関(IEA)等が公表するデータ等参照し、「2℃シナリオ」と「4℃シナリオ」の2パターンで検討を行いました。
2030年までは、「2℃シナリオ」、「4℃シナリオ」でほぼ同様の気温変化で推移しますが、2030年以降はシナリオ間の差が拡大するものと見込まれています。各シナリオにおいては、2030年に顕在化すると見込まれる移行リスク(低炭素経済への移行に関するリスク)と2040年時点での物理的リスク(気候変動による物理的変化に関するリスク)の観点から、分析を実施します。
ハ.シナリオ分析(前提)
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項目 |
期間 |
2℃シナリオ |
4℃シナリオ |
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移行リスク |
カーボンプライシング(炭素税)付加・上昇 |
中期 |
高額な炭素税が導入されて、商品・サービス価格が上昇、施設利用に関する費用が増加。排出権取引も活発になる。 |
現状程度のカーボンプライシングに留まり、炭素税付加の動きは低調。排出権取引も現状並みを維持。 |
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再生可能エネルギー導入 |
中期 |
再生可能エネルギー利用が一般的となり、導入コストが大幅に上昇する。 |
再生可能エネルギーと化石燃料を併用。 |
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|
気候変動に対応するシステムやサービス提供の遅延 |
中期 |
環境対応、環境性能がサービス利用の基準となり、非対応は衰退する。 |
環境対応がサービス利用における重要な判断材料となり、競争上優位を保つ。 |
|
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対応の遅れによる評判低下 |
中期 ~長期 |
機関投資家による投資の対象外となり、金融機関からの資金調達にも支障が出る恐れ。 |
機関投資家による投資の判断材料の一つとなる。金融機関からの調達コストが上昇する恐れ。 |
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物理的リスク |
自然災害増加 |
~長期 |
異常気象による災害が発生、稀に激甚化するものの、頻発ではない。 |
激甚災害が多発、集中豪雨や大型台風が頻発する。被災による復旧費用が大幅に増加、防災が重要課題。 |
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気温上昇 |
~長期 |
平均気温が上昇するものの、4℃シナリオほどではない。省エネ対応がさらに進む。 |
平均気温が上昇することで、猛暑日が大幅増、空調の利用頻度が大幅に増えて、コスト負担が増加する。 |
二.シナリオ分析(対象事業)
当社グループが展開する事業は「情報処理サービス」と「システム開発サービス」で売上高の約96%を占めています。
2023年度は、気候変動の影響を受けやすいデータセンター運営を抱える情報処理サービスを対象にTCFD提言に基づく「2℃、及び4℃の気温上昇」にてシナリオ分析を行いました。
当社グループの電力使用の99%がデータセンター由来であることから、「情報処理サービス」のみを分析対象としております。
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2℃シナリオ |
4℃シナリオ |
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影響 |
財務インパクト |
影響 |
財務インパクト |
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情報処理 サービス |
・多額の炭素税が課されることにより、化石燃料由来の電気料金は大幅上昇。電力使用による原価コストが嵩み、データセンター("DC")運営コストが上昇する。 ・省エネ対応機器、空調機器、環境対応等の設備投資コストが増加する。 |
高 |
・激甚災害、気温の上昇等の影響により、DCの運営コストが嵩むと共に、DCの運営そのものが出来なくなる懸念あり。 ・省エネ対応機器、空調機器、環境対応等の設備投資コストが増加する。 |
高 |
|
システム開発サービス |
・電気料金の高騰により、開発現場の電気料金等の費用増加が見込まれる。 ・但し、同サービスにおける使用電力は、DCが消費する電力量と比較すると極僅かであることから、電気料金によるコスト増の影響は相対的に大きくない。 |
低 |
・電気料金の高騰により、開発現場の電気料金等の費用増加が見込まれる。 ・但し、同サービスにおける使用電力は、DCが消費する電力量と比較すると極僅かであることから、電気料金によるコスト増の影響は相対的に大きくない。 |
低 |
ホ.リスク分析(情報処理サービス)
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項目 |
リスクファクター |
2℃シナリオ |
4℃シナリオ |
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概要 |
財務インパクト |
概要 |
財務インパクト |
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移行 リスク (2030年) |
カーボンプライシング(炭素税)付加・上昇 |
サーバーや機器の価格上昇、電気料金上昇を価格転嫁できないリスク |
中 |
サーバーや機器の価格上昇、電気料金上昇を価格転嫁できないリスク |
低 |
|
再生可能エネルギー導入 |
調達がままならずバリューチェーンから締め出されるリスク |
高 |
調達がままならずバリューチェーンから締め出されるリスク |
中 |
|
|
気候変動に対応するシステムやサービス提供の遅延 |
技術の変化や新たなサービス領域への進出が遅れるリスク |
中 |
技術の変化や新たなサービス領域への進出が遅れるリスク |
低 |
|
|
対応の遅れによる評判低下 |
企業価値低下、バリューチェーンから締め出されるリスク |
中 |
企業価値低下、バリューチェーンから締め出されるリスク |
低 |
|
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物理的 リスク (2040年) |
自然災害増加 |
停電増加、停電時の燃料供給が滞りDCが停止するリスク |
中 |
異常気象によりDCが被災するリスク 停電増加、停電時の燃料供給が滞りDCが停止するリスク |
高 |
|
気温上昇 |
空調コスト等の増加に設備投資が追い付かず価格競争力が低下するリスク |
中 |
空調コスト等の増加に設備投資が追い付かずDCの維持が困難になるリスク |
高 |
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移行リスク:低炭素経済への移行に関するリスク、 物理的リスク:気候変動による物理的変化に関するリスク
ヘ.機会分析(情報処理サービス)
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側面 |
概要 |
財務インパクト |
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2℃ シナリオ |
4℃ シナリオ |
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資源の効率性 |
データセンター("DC")は大量の電力と冷却システムを必要としますが、エネルギー効率を高めることでコスト削減や環境への負荷軽減が図れます。省エネルギーシステムや冷却技術の開発や導入により、DCの運営効率を向上させることが可能となり、このような技術の提供やコンサルティングサービス等、エネルギー効率化に関連するビジネスチャンスが期待できます。 |
高 |
中 |
|
エネルギー源 |
再生可能エネルギーの利用が求められる中、DCは再生可能エネルギーへの移行を促進する役割を果たすことができます。再生可能エネルギー発電所との提携や、再生可能エネルギーを導入することで、クリーンエネルギーを利用したDCとしてサービス提供が可能となります。さらに、エネルギー供給業者との連携や電力取引プラットフォームの構築により、DCがエネルギー市場に参入するチャンスも期待されます。 |
高 |
中 |
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製品/サービス |
DCは企業や組織のデータ管理やクラウドサービスを提供する役割を果たしています。気候変動リスクの高まりにより、DCを利用した災害対策やビジネス継続性プランの重要性が高まります。強力な災害復旧サービスやデータバックアップソリューションの提供、セキュリティ対策の強化等、気候変動によるリスクに対応するサービスへの需要の増加が期待できます。 |
高 |
高 |
|
市場 |
気候変動対策が企業や組織の重要な課題となる中で、企業は持続可能なビジネスモデルへの進化が求められています。DC事業者は、クライアントに対してエネルギー効率や持続可能性に関するデータやレポートを提供することで、環境負荷の削減や持続可能なビジネス戦略の支援を行うことが可能です。また、持続可能性指標に関するデータの収集・分析、報告ツールの提供等、市場における環境関連サービスの需要も拡大することが想定されます。 |
高 |
中 |
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強靭性(レジリエンス) |
企業は気候変動による自然災害に対する強靭性(レジリエンス)の向上が求められます。DC事業者は、DCの設計や運営を通じて、地震や洪水等の災害リスクに対する対策を講じることができます。強固なインフラストラクチャの構築や災害対応プランの策定、バックアップ施設の提供等、強靭性を高めるためのサービスやソリューションへのニーズが高まることが想定されます。 |
高 |
高 |
ト.対応
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想定されるリスク |
時間軸 |
リスクに対する対応策 |
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カーボンプライシング |
中期 |
2023年度から再生可能エネルギー由来の電力をデータセンター("DC")に導入しました。引き続き再生可能エネルギー由来の電力への依存度を高めて、化石燃料への依存度を低下させることで、炭素税の影響を低減する方針です。 |
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再生可能エネルギー導入 |
中期 |
2023年度から再生可能エネルギー由来の電力をDCに導入しました。2024年度は、DCに太陽光発電等の導入を進め、グリーン対応を促進します。将来的には、再生可能エネルギー源が枯渇する恐れがあることから、オフサイト電源の導入は、長期契約で安定的な調達を目指します。 |
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気候変動に対応するシステムやサービス提供の遅延 |
中期 |
DCのグリーン化を早期に実現することで、環境対応のシステム導入やサービス展開を早期に実現、リスク低減を図ります。 |
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対応の遅れによる評判低下 |
中期~長期 |
DCのグリーン化を前倒しで実現することで、対応の遅れによる評判の低下の可能性を低減させます。 |
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自然災害増加 |
~長期 |
DCバックアップ電源の強化(発電機追加、燃料タンク増強等)を実施すること等の施策により、自然災害への抵抗力を高めて、影響を軽減化します。 |
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気温上昇 |
~長期 |
DCの冷房能力増強を図ること、及び機器メンテナンス、更新を定期的に実施することで、気温上昇への対応能力を増強します。 |
③リスク管理
イ.リスクの特定・評価プロセス
当社グループでは、TCFD宣言に基づくシナリオ分析を通して、気候変動関連の重要なリスクと機会について、特定を行い、状況の把握と評価を実施しております。また、毎月定例で開催される、業務リスク管理を行うリスク管理委員会において、SDGs推進室が担当部署として気候変動関連リスクと関連性の高いオペレーショナルリスクの評価・判定も行っております。
ロ.リスクの管理プロセス
年2回開催されるSDGs推進委員会において、全体リスクの見直し、実施状況を把握して、グループ全体の環境戦略に反映をしております。また、SDGs推進室は、SDGs推進委員会で把握したリスクに対して、関連部門、関連部署との連携を図り、対処していきます。
ハ.経営におけるリスクコントロール
発生したリスクや課題について、SDGsを担当する役員、SDGs推進室が内容を把握し、速やかに経営陣に報告をいたします。経営陣及び取締役会は、報告に対して管理監督を行い、必要に応じて、指示、命令を行うことでリスクや課題に対応しています。
④指標及び目標
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2030年度 |
2040年度 |
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指標と目標 |
当社グループによる温室効果ガスの排出量(Scope1,2)を2022年度対比で50%以上削減する。 |
当社グループのバリューチェーン全体の温室効果ガスの排出量を100%削減する。 |
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具体的な対応 |
(1)自社データセンター("DC")で使用する電力の一部を再生可能エネルギー由来の電力に切り替える(KPI:2025年度は2022年度比で30%以上削減)。 |
(1)当社グループとして、効果的な戦略を立て、再生可能エネルギーの利用を更に推し進める(追加で再生可能エネルギーの導入を進める)。 |
Scope3の対応:当社グループ全体のバリューチェーンからの排出量を調査して、2040年度中に対応方針を決定する予定。
*)PUE(Power Usage Effectiveness): データセンターの電力使用効率を示す指標。 データセンター全体の消費電力を、サーバ等のICT機器の消費電力で割った数値。
⑤温室効果ガスの排出(過去データ)
⑥再生可能エネルギーの導入計画
(2)人的資本・多様性に関する取り組み
前述のとおり、当社は今後もさらに成長を続ける企業であり続けるために多彩な人材と情報技術やサービスを通じて、経済価値、社会価値、環境価値を創出し、豊かな社会づくりに尽力してまいります。実現のための当社における、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、以下の通りであります。なお、内容についてはグループにおける記載が困難であるため、提出会社における内容を記載しております。
当社は、「情報技術で新しい仕組みや価値を創造し、豊かで幸せな社会の実現に貢献する」という企業理念に基づいた人材投資戦略に取り組みます。
当社の人材投資戦略では、上述の企業理念のもと、「社員は経営における最大の財産である」と捉えています。社員が常に挑戦し、変化に対応できる環境を整えるため、「人材開発」「多様性の確保」「社内環境整備」に取り組み、これを人材確保と生産性向上に繋げて、業績規模の持続的な成長拡大を目指します。
①人材開発
人材開発においては、常に挑戦、変化し、顧客の利便性を追求する高い技術を有し、高度な専門知識をもって課題解決にあたることができる人材を育成することを方針として以下の各種施策に取り組んでおります。
イ.積極的・効果的な採用(新卒・中途)
お客様からのニーズに応え続けるために長期的な労働力の確保及び優秀な人材の定着は、重要な経営課題であると考えています。激化する人材獲得競争の中、優秀な人材を採用するための採用活動の強化を進めてまいります。また、新卒採用に加えて、即戦力として活躍する人材を迎え入れる中途採用も積極的に実施しています。当連結会計年度においては、社員が知人や友人を紹介できるリファラル採用制度を取り入れ、既に多くの採用実績が出ています。今後も、様々な採用チャネルを活用し、積極的・効果的な採用活動をおこなってまいります。
ロ. 充実した研修制度及びキャリア支援
新入社員研修に始まり、年次別研修・幹部育成研修等の階層別研修や、技術研修まで多岐にわたる研修を実施しています。社員に対し、網羅的に充実した研修を用意し、若手からシニアまですべての世代が活躍できることを目指しています。
また、社員の自律的なキャリアアップを支援する制度として、他部門や他職種へのキャリアチェンジを希望する社員が自ら手を挙げて挑戦することができるキャリアチャレンジ制度や社内のキャリアカウンセラーが全社員と年1回のキャリア面談を行うキャリアカウンセラー制度を導入し、キャリア相談の機会を設けています。
「社員が安心感を得て、それにより挑戦が促される。」心理的安全性を高める環境を社員に提供することで定着率を向上させることができると考えています。定着率の向上に繋がる取り組みを今後も積極的に導入・実施してまいります。
ハ.成長を促す資格取得奨励金制度
社員の技術力向上は企業の成長に欠かすことができません。そのため、当社では新入社員研修内での基本情報技術者試験実施を手始めに、各種資格取得奨励金制度を導入し、社員の自己研鑽を全面的にバックアップし、スキルアップをサポートしています。
二.社員の働きがいにつながる人事評価制度
当社は、会社の成長に向け「公正」かつ「社員の働きがいにつながる」人事制度の構築と運用を目指し、2022年4月に評価制度を刷新しました。新制度では、会社への貢献度をより重視し、若手社員の定期更改額の増加に加え、メリハリのある評価制度による賞与・定期更改額の決定の仕組みを導入し、従来以上に貢献度を重視し、成果に正しく報いる人事評価制度としています。
また、継続的な賃上げにも取り組んでいます。従業員の能力開発やスキル向上等を通じて生み出した収益・成果に基づいて、「賃金決定の大原則」に則り、自社の状況を踏まえた適切な方法による賃金の引上げを行い、持続的な還元を目指しています。
②多様性の確保
女性や外国人材等多様な価値観を持つ社員が生み出すシナジーに大きな期待を寄せています。ダイバーシティ推進室を設置し、性別・年齢・国籍・障がい・性的指向・性自認・価値観・結婚や子供の有無、働き方に関わらず多様な人材の能力や個性を戦略的に活かすことで、当社が50年以上かけて培ってきたデータセンター事業等の情報処理サービスやシステム開発サービス等の多種多様なビジネスを更に発展させることを目指しています。
イ.女性活躍
前連結会計年度に掲げた、2026年3月末までに女性管理職比率を12.0%とする目標を達成すべく、女性人材の育成を実施し、当連結会計年度においては8.7%(前期比2.4%増)となりました。これは、新卒採用時の女性採用比率40%維持や、管理職候補である女性リーダー層の育成、選抜型の次世代管理職育成研修において性別を問わない人選の実施等を積極的に行ってきたことによるものです。今後も、公平な人材採用・登用を行い、女性管理職の割合を向上してまいります。
役職別女性比率の目標と推移
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2021年3月 |
2022年3月 |
2023年3月 |
2024年3月 |
2026年3月 (目標) |
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管理職 |
4.9% |
4.8% |
6.3% |
8.7% |
12.0% |
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リーダー層 |
23.6% |
25.4% |
26.7% |
22.4% |
― |
|
一般職 |
34.4% |
37.4% |
37.7% |
35.4% |
― |
|
新人 |
45.3% |
50.0% |
48.9% |
33.3% |
40.0% |
|
全社員 |
25.5% |
26.8% |
27.0% |
25,4% |
― |
(注)グループにおける記載が困難であるため、提出会社における状況を記載しております。
また、労働者の男女の賃金の差異については、2026年3月末までに労働者の男女の賃金の差異を75.0%とすることを前連結会計年度に目標として掲げており、当連結会計年度においては、71.1%となりました。
(注)グループにおける記載が困難であるため、提出会社における状況を記載しております。
前連結会計年度より微減しておりますが、これは、当社全体の女性の人数を増やすことができたものの、若年層が多いことから賃金差異がやや広がったものと考えています。前述の女性管理職比率の向上は、男女の賃金の差異にも大きな影響を及ぼすことが期待できるため、過渡期として捉えております。
ロ.仕事と生活の両立支援
多様な人材が、それぞれのライフステージに応じた働き方を選択できるよう、社内環境を整備しています。育児との両立支援においては、性別に捉われない育児休業取得推進を目指し、前連結会計年度に掲げた目標である男性の育児休暇取得率70%を達成すべく、環境整備を実施し、当連結会計年度においては70.6%(前期比15.0%増)となりました。これは、本人や家族、上司の心構えや当社の支援制度等を網羅したガイドブック「育児と仕事の両立ガイドブック」の作成、周知や、希望する社員に育児休業を取得させることを義務とした制度の実施等によるものです。また、介護や育児を目的に利用が可能な時差勤務制度を創設し、仕事と生活の両立の支援により一層取り組みました。各種の取組が評価され、改正次世代育成支援対策推進法に基づく特例認定企業として、『プラチナくるみん』の認定を取得しております。
(注)グループにおける記載が困難であるため、提出会社における状況を記載しております。
当連結会計年度において、男性労働者の育児休業取得率の目標を達成することができたため、目標の見直しも含め、今後は更なる取得率向上のための施策を検討してまいります。
ハ.障がい者雇用
当社は、2009年に特例子会社の株式会社アイネット・データサービスを設立し、障がいのある方が、その能力と適正に応じた職業に就労し、自律した生活を送ることができる社会の実現に向けた支援を行っています。同社では、障がいを持つ方々を正社員として雇用し、データ入力やスキャニング等、アイネットグループの本業である情報サービス業に従事していただいている点が大きな特徴です。
障害者雇用促進法で定められている民間企業の法定雇用率は当連結会計年度においては2.3%であり、2024年4月に2.5%に引き上げられています。アイネットグループの障がい者雇用率は2024年3月時点において2.6%となっており、法定雇用率を充分に上回る基準を満たしています。引き続き、より多くの障がい者の方を雇用するため、そして障がい者の方が働きやすい環境を作るための取組みを進めてまいります。
ニ.外国人活躍
当社では、外国人人材が活躍しています。今後、新卒採用・中途採用において外国人人材をさらに積極的に採用すること、そして管理職向けのダイバーシティ研修や外国人人材同士の交流の場を提供する等、外国人人材の定着化に向けて効果的な施策を実施してまいります。
ホ.LGBTQ
LGBTQの理解促進は、多様化が加速する次世代人材の確保に欠かせない取り組みの一つであると捉えています。当社は、従業員の同性パートナーを配偶者とみなすパートナーシップ制度の導入や、セクシュアリティに関する相談窓口の設置、当事者への支援についての対応ガイドラインの策定、LGBTQに関する基礎知識の習得を目的とする社員研修、新卒採用のエントリーシートの性別記入欄に「無回答」の選択肢を追加、性別や慣習によらない服装を選べるオフィスカジュアル等を実施しています。各種の取組が評価され、LGBTQ等の性的マイノリティに関する取組みに関する指標であるPRIDE指標において、最高評価である「ゴールド」を2年連続で受賞しました。
ヘ.人権
当社は、法令遵守・基本的人権を尊重し、差別的な取り扱いを行わない、セクハラ・パワハラ等の各種ハラスメントによる人格を無視する行為をしないことを定め、人権尊重に関する指針としています。
③社内環境整備方針
当社は、多様な人材が最大限に力を発揮し、生産性を上げて働くことができる環境・制度の整備を行います。
なお、当社の人事部門は人材投資に係る各種リスクについて、定期的に取締役会及びリスク管理委員会に報告し、適切に管理しております。
イ.働き方改革
当社は、社員が居場所を感じながら安心して働くことができる心理的安全性の高い労働環境をつくるため、ワークスタイルの変革を推進しています。
a.テレワーク
ワークライフバランスの観点からテレワーク制度を取り入れています。テレワーク実施のための取り組みとして、在宅勤務手当の支給、ガイドラインの制定を行っています。
b.有給休暇取得
当社では、全社員が有給休暇を10日取得することを目標として掲げており、有給休暇取得平均日数は当連結会計年度において16.7日となりました。当社は今後も法定時間外労働時間の短縮に取り組み、働き方改革に積極的に取り組んでまいります。
ロ.健康経営
当社は、社員が心身ともに健康であることが、持続的な企業価値向上の源泉であると考え、社員の健康増進を支援する健康経営を積極的に推進しています。経営課題である「社員ひとりひとりの生産性向上」、「サービス力の向上」の解決につながる健康課題を特定し、その課題解決を健康の保持・増進に関する取り組みに落としこんだ、「戦略マップ」を策定しています。戦略マップに則り、プレゼンティーズムの低減、アブセンティーズムの低減、ワークエンゲージメントの向上を目標指標と掲げて健康経営を進めています。各種の取り組みが評価され、経済産業省と日本健康会議が共同で選出する「健康経営優良法人2024~ホワイト500~」に6年連続で認定されています。
ハ.福利厚生を含む待遇の充実
当社の持続的成長に基づく、賃金以外の総合的な還元施策として、従業員のエンゲージメント向上に資する福利厚生の充実を図っています。福利厚生は、社員の属性やライフスタイルによらない公平な提供に心がけ、選択型の福利厚生サービス中心の運営としています。
また、当社は、従業員持株会制度の充実にも取り組んでいます。従業員持株会は社員の経営への参画意識を高め、株主の皆様と中長期的な企業価値を共有することに繋がる制度であると捉えています。全社員の8割以上が従業員持株会に加入しております。
福利厚生における各種の取り組みが評価され、福利厚生充実に取り組む法人を表彰する、株式会社労務研究所が主催する「ハタラクエール」最優秀賞を2年連続で受賞しています。
④指標及び目標
当社では上記において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。
当該指標に関する目標及び実績は次のとおりであります。
|
指標 |
目標 |
実績(当連結会計年度) |
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|
|
|
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|
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|
|
(注)指標及び目標については、グループにおける記載が困難であるため、提出会社における状況を記載しております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。当社グループの事業、業績及び財務状況は、かかるリスク要因のいずれによっても著しい悪影響を受ける可能性があります。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針であります。
なお、文章中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)データセンター運営に関するリスクについて
当社グループのデータセンター事業は、当社と顧客企業を結ぶ通信ネットワーク及びシステムの安全かつ適正な運営により成り立っておりますが、当社グループに以下のような事態が生じた場合には、適正な運営ができなくなる可能性があることを認識しております。
① マシントラブル
② 外部からのコンピュータ・システムへの不正侵入
③ コンピュータ・ウィルスの感染
④ 顧客データの漏洩、盗難
⑤ 事業所内外の通信回線の切断
⑥ 電力供給の停止
⑦ 運用コスト増大
このような認識の下、当社グループは、通信ネットワーク・システムの保守、管理体制の維持並びに性能保持のために、事業所内にネットワーク技術者並びにシステム技術者による体制を構築するとともに、コンピュータメーカーとの間に保守管理契約を締結して万全な対策を施しております。また、システム運用業務においては、品質マネジメントシステムの適用及びエネルギー効率の向上により、継続的な運用品質の改善を行っております。このような対策にもかかわらず、発生した事態に対し適切かつ迅速に対応できず、データセンターの安定かつ適切な運営に支障が生じた場合、社会的信用の低下、発生した損害に対する賠償金の支払い等により、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響をおよぼす可能性があります。
(2)自然災害等に関するリスクについて
当社グループのデータセンターは免震構造で大規模地震にも耐え得る機能を有しておりますが、大規模地震の発生により想定外の損害を被った場合、処理運用が停止し、業績に影響をおよぼす可能性があります。更に、データセンターの修復又は代替のために多額な費用を要する可能性もあります。また、感染症は自然災害に見られるような局地的な範囲に止まらず、短時間のうちに人から人へ伝播すると予測され、人的被害が拡大することにより、業務が停滞し、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響をおよぼす可能性があります。
(3)システム構築に関するリスクについて
当社グループの売上高に占める割合が高いシステム開発に関しては、納期内にシステムを完成する責任を負っており、開発工程管理や品質管理を徹底しております。しかしながら想定外の仕様取り込み、問題発生により納期遅延等の損害賠償や想定を超える原価発生により当社グループの経営成績及び財務状況等に影響をおよぼす可能性があります。
(4)情報セキュリティに関するリスクについて
当社グループは業務遂行の一環として、個人情報や機密情報を取り扱うことがあります。そのため、当社グループではinet-SIRT(inet Security Incident Response Team)を組織して、サイバーセキュリティに関する脅威の監視や分析、未然防止対策を講じて、情報漏洩につながる状況への対応力の強化、及びリスクの低減に努めております。また、リスク管理委員会の月次運営により、個人情報保護を含む情報セキュリティ対策を更に充実させております。しかしながら、これらの情報について紛失、漏洩等が発生した場合、当社グループの社会的信用の低下、発生した損害に対する賠償金の支払い等により、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響をおよぼす可能性があります。
(5)コンプライアンスに関するリスクについて
当社グループは、社会の情報基盤を提供する基幹産業の一員として、健全な情報化社会の発展に貢献することを「アイネット企業行動憲章」として制定し、コンプライアンス推進体制を構築するとともに、役員・社員への教育啓発活動を随時実施し、企業倫理の向上及び法令遵守の強化に努めております。しかしながら、コンプライアンス上のリスクを完全に回避できない可能性があり、法令などに抵触する事態が発生した場合、当社グループの社会的信用の低下、発生した損害に対する賠償金の支払い等により、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響をおよぼす可能性があります。
(6)人材確保に関するリスクについて
当社グループはデータセンターやアウトソーシングサービスを安定的に運営するため、また業務アプリケーションを中心とするソフトウエアの開発を継続するため、優秀な従業員を獲得、維持する必要があります。そのため、当社グループの人事部門は、重要な技術部門に配属可能な人材を採用し雇用し続けることに注力しております。しかしながら、当社グループから優秀な従業員が多数離職したり、新規に採用することができなかった場合、当社グループの事業目的が困難となる可能性があります。また、社員の心身に関する事業主としての責任から生じる補償等のリスクが発生する可能性もあります。
(7)売上管理に関するリスクについて
①計上時期集中
当社グループの売上高に占める割合が高いシステム開発サービスは、収益認識に関する会計基準等の適用に伴い、一時点で充足される履行義務に基づき認識される収益と、一定の期間にわたって履行義務の充足に係る進捗度に基づき収益を認識しています。一時点で充足される履行義務に基づき認識される収益においては、検収時期が顧客企業の決算期にあたる第4四半期連結会計期間に集中する傾向にあります。また、顧客の検収作業の遅延等により、売上計上のタイミングが翌期にずれ込み、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響をおよぼす可能性があります。
②与信管理(多額な貸倒発生)
当社グループは、社内規程に基づいて締結された顧客企業との契約をベースに売上債権を管理しております。また、顧客企業毎に与信管理を実施し、信用度による適正与信金額を設定し、債権の滞留および回収状況を定期的に把握、必要に応じ貸倒引当金を計上しております。しかしながら、経済情勢の変化により経営基盤の脆弱な企業などにおいて、急速に経営状況が悪化する場合も考えられます。当社グループでは、今後、与信管理をより一層強化していく方針ですが、予測不能な事態が生じた場合には売上債権の回収に支障をきたし、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響をおよぼす可能性があります。
③取引先(戦略パートナーとの提携関係)
当社グループは、新製品の開発並びに既存製品の販売において様々な企業と戦略的提携関係を構築しています。これらの戦略的パートナーが、財務上の問題その他事業上の困難に直面した場合や、戦略上の目標を変更した場合、または当社グループとの提携メリットが薄いと認識した場合は、当社グループとの提携関係を解消する可能性があります。当社グループが提携関係を維持できなくなった場合、その事業における業績に影響を与える可能性があります。
④原価総額の見積り
当社グループは、システム開発サービスにおける開発請負契約の売上高について、期間がごく短い契約を除き、一定の期間にわたって履行義務の充足に係る進捗度に基づき収益を認識しております。履行義務の充足に係る進捗度の測定方法は、当連結会計年度末までに発生した原価が予想される原価総額に占める割合に基づく方法(インプット法)によっております。システム開発サービスにおける開発請負契約は、仕様や作業内容が顧客の要求に基づいて定められており、契約ごとの個別性が強く、また比較的長期にわたる契約も存在することから、想定外の仕様取り込み、問題発生による納期遅延等に伴う損害賠償や想定を超える原価発生により、原価総額の見積りが変動する可能性があります。当社グループでは、プロジェクトのモニタリング部門を設置し、所定の基準に該当するプロジェクトの実行計画とその原価総額の見積りの検証、定期的な原価総額の見積りと発生原価の比較や実際の作業の進捗状況と原価の発生状況との比較等を実施することにより、原価総額の見積り及びその見直しを行っておりますが、原価総額の見積りと実際発生額に大きな乖離が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響をおよぼす可能性があります。
(8)特定業種依存に関するリスクについて
当社グループは、石油業界を初め、情報サービス業、製造業、金融業、小売流通業、サービス業、官公庁等、幅広い業種の顧客に対してビジネスを展開しております。しかしながら、創業ビジネスである石油業界向け売上高は、依然として連結売上高の約2割を占めており、石油業界において法制度の変更や事業環境の急変が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響をおよぼす可能性があります。
(9)顧客企業の情報化投資におけるリスクについて
顧客企業の情報化投資は、経済動向の影響を色濃く反映いたします。今後、著しい景気後退、大幅な消費の落ち込み、業種特有の法制度の変更、業界内の統廃合等の影響があった場合、当社グループの業績に大きな打撃を与える可能性があります。当社グループの予算編成及び業績予想は、当社グループが属する市場の成長予測、各顧客企業の情報化投資の需要予測など、作成時点で入手可能な情報に基づいて作成されておりますが、実際の業績は予想数値から乖離し、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響をおよぼす可能性があります。
(10)価格低下圧力に関するリスクについて
情報サービス産業では、事業者間の競争が激しく、他業種からの新規参入や海外企業の台頭もあり、価格競争が発生する可能性があります。このような環境認識の下、当社グループは、顧客企業にこれまでに蓄積したノウハウを活かした付加価値の高いサービスを提供することで競合他社との差別化を図るとともに、生産性の向上に取り組んでいます。しかしながら、想定以上の価格競争が発生した場合、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響をおよぼす可能性があります。
(11)技術革新に関するリスクについて
当社グループが属する情報サービス産業では、情報技術の進化とそれに伴う市場ニーズの変化に迅速に対応する事が求められています。当社グループでは、先端技術や基盤技術等の多様な技術動向の調査・研究開発に努めています。しかしながら、予想を超える革新的な技術の進展への対応が遅れた場合、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(12)知的財産権に関するリスクについて
当社グループが業務を遂行する上で必要となる知的財産権等の権利につき、当該権利の保有者よりライセンス等を受けられず、その結果、特定の技術、商品又はサービスを提供できなくなる可能性があります。また、当社グループの事業が他社の知的財産権を侵害することがないよう、事前に調査を実施しております。しかしながら当社グループの事業が他社の知的財産権を侵害したとして、損害賠償請求を受ける可能性があります。いずれの場合も当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(13)設備投資に関するリスク
当社グループは、データセンターやクラウドサービスの展開においては、初期投資に加えて、設備の老朽化対応や需要増加に対する設備増強など、安定的に維持・運用するための継続的な設備投資に多額の資金及び期間を要します。これらの戦略的投資に際しては、事前に投資効果やリスク等を十分検討したうえで投資を実行しております。しかしながら市場環境の変化や収益悪化などにより、期待していた投資成果を創出できず回収可能性が低下した場合、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(14)出資に関するリスク
当社グループは、既存事業に関連する領域において出資や企業買収等を行っております。これらの実施にあたっては、事前に事業内容や財務状況等について、様々な観点から必要かつ十分な検討を行っております。しかしながら、出資や買収後に事業環境の急変や予期せぬ事象の発生等により、当初期待した成果をあげられない場合、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(15)法的事項に関するリスク
当社グループは、ビジネスユースの顧客へ幅広くサービスを提供しているため、多くの顧客情報を蓄積しております。このため当社グループは個人情報保護法に定める個人情報取扱事業者に該当し、個人情報の取扱いについて規制の対象となっております。
当社グループでは、専門部署を設置し、個人情報の保護に関する規定の整備運用、システムのセキュリティ強化、役員・社員への定期的な教育を実施するなど個人情報保護への取り組みを推進しております。しかしながら、昨今、コンピュータ・ウィルス等の侵入、不正なアクセスのリスクが高まっており、当社グループが保有する顧客情報が業務以外で使用されたり、外部に流出したりする事態になりますと、対応コストの負担、顧客からの損害賠償請求、風評被害による申し込み数の低下や解約の発生などにより、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
①経営成績の状況
当連結会計年度の業績は、売上高37,763百万円(前期比7.9%増)、営業利益2,887百万円(同35.6%増)、経常利益2,935百万円(同34.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益2,197百万円(同63.6%増)となりました。
売上高は、データセンター・クラウドサービスや、サービスステーション(SS、ガソリンスタンド)向けに受託計算等を提供している情報処理サービスが好調に推移した上、システム開発サービスにおいて、主に金融業向けシステム開発が順調に推移したことにより、前期比で増収となりました。
営業利益は、省エネ等を目的とした設備投資を行ったこと等により原価低減に努めたこと、及び単価見直しを中心とした適正販売に注力した結果、前期比で増益を達成しております。当連結会計年度より、自社データセンターの使用電力として、化石燃料価格の変動や為替相場に左右されない再生可能エネルギー由来の電力を導入しており、電気料金等の高騰による原価高の影響を低減させる努力を続けております。
親会社株主に帰属する当期純利益は、保有する有価証券の一部売却に伴う特別利益の計上もあったことから、前期比で大幅な増益を確保することができました。
当連結会計年度におけるサービス区分別の収益状況は以下のとおりです。
[情報処理サービス]
情報処理サービスは、売上高14,805百万円(前期比7.7%増)、売上総利益3,169百万円(同33.1%増)となりました。前期比で増収増益となった主たる要因は、以下のとおりです。
①社会のDX化進展に伴い、データセンターの利用が増加していること、及び電気料金の高騰に伴う原価上昇への対応力を高めて、取引採算の改善に努め、粗利益率が改善したこと
②当社グループの祖業であり、強みを持つ、SSからの受託計算サービス(事務処理、代金決済等)が堅調に推移したこと
③BPOサービスが増収基調となり、好調に推移したこと
情報処理サービスを構成する各種提供サービスの状況は以下のとおりです。
データセンター・クラウドサービスは、デジタル化推進やIT投資需要の高まりを背景に、既存顧客によるデータセンターやクラウドの活用が続いており、売上は好調を維持することが出来ました。ここ数年、拡大してきている顧客の需要に積極的に応えるため、当社グループは、サービス展開力を強化しています。
サービスステーション向けに販売管理・クレジット決済等課金代行システムを提供している受託計算サービスは、社会活動の活発化に伴う課金による手数料収入が増加していることに加えて、自社コンピュータの利用から、当社グループが提供するサービスの活用に切り替える事例もあり、収益の増加に貢献しました。
メーリングサービスは、プリンティングや郵送サービスの需要が縮小傾向にある中、当社グループは、受注・売上が順調に推移し、増収基調に復調しました。競合先が減少する一方で、安定的にサービスを提供できる先が限られてきており、当社の受注は好調に推移しました。ネット配信と郵便との複合型の新しいサービス提供を展開する等、新たな需要の開拓にも努めております。
[システム開発サービス]
システム開発サービスは、売上高21,340百万円(前期比7.7%増)、売上総利益4,700百万円(同3.3%増)となりました。前期比で増収増益となった主たる要因は、以下のとおりです。
①当社グループが強みを持つ、金融業や流通業向けのシステム開発案件が、引き続き順調に推移していること
②大手顧客から受託する運用保守ビジネスが安定収益として貢献していること
③システム開発子会社2社の業績が好調に推移したこと
当社グループが強みを持つ、金融業・流通業・通信サービス業・エネルギー関連・宇宙関連ビジネス等の分野において、当社グループが持つノウハウや技術力が高く評価されており、これが安定的な受注、売上の計上に繋がっております。
[システム機器販売]
システム機器販売は、売上高1,617百万円(前期比12.9%増)、売上総利益378百万円(同55.0%増)の増収増益となりました。
当社グループのデータセンターサービス利用顧客による設備投資が活発化したこと、及びシステム開発に伴う機器販売が好調に推移したことにより、前期比で増収増益となりました。
②財政状態の状況
(流動資産)
当連結会計年度末における流動資産残高は、12,813百万円(前連結会計年度末10,246百万円)となり、前連結会計年度末に比べて2,567百万円増加しました。これは主に、売掛金の減少(前期比296百万円減)及び契約資産の減少(同363百万円減)があったものの、現金及び預金の増加(同2,969百万円増)等があったことによるものであります。
(固定資産)
当連結会計年度末における固定資産残高は、24,793百万円(前連結会計年度末22,384百万円)となり、前連結会計年度末に比べて2,409百万円増加しました。これは主に、投資有価証券の増加(前期比1,288百万円増)等があったことによるものであります。
(流動負債)
当連結会計年度末における流動負債残高は、12,045百万円(前連結会計年度末9,294百万円)となり、前連結会計年度末に比べて2,750百万円増加しました。これは主に、短期借入金の減少(前期比353百万円減)があったものの、その他に含まれる未払金の増加(同877百万円増)、その他に含まれる仮受金の増加(同532百万円増)、未払法人税等の増加(同503百万円増)及び買掛金の増加(同428百万円増)等があったことによるものであります。
(固定負債)
当連結会計年度末における固定負債残高は、5,465百万円(前連結会計年度末5,753百万円)となり、前連結会計年度末に比べて288百万円減少しました。これは主に、繰延税金負債の増加(前期比355百万円増)があったものの、長期借入金の返済に伴う減少(前期比654百万円減)等があったことによるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産残高は20,097百万円(前連結会計年度末17,581百万円)となり、前連結会計年度末に比べて2,515百万円増加しました。これは主に、利益剰余金の増加(前期比1,398百万円増)及びその他有価証券評価差額金の増加(同737百万円増)等があったことによるものであります。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における連結キャッシュ・フローは次のとおりであります。
当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度と比較して2,969百万円増加し、当連結会計年度末には5,279百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動の結果得られた資金は6,665百万円となりました(前連結会計年度は2,239百万円の獲得)。
これは主に、法人税等の支払額529百万円(前期比385百万円減)等により資金が減少したものの、税金等調整前当期純利益の計上3,126百万円(同1,131百万円増)及び減価償却による資金の内部留保2,118百万円(同208百万円増)等があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動の結果使用した資金は1,793百万円となりました(前連結会計年度は2,118百万円の使用)。
これは主に、有形固定資産の取得による支出1,006百万円(前期比476百万円減)及び無形固定資産の取得による支出626百万円(同45百万円減)等があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動の結果使用した資金は1,902百万円となりました(前連結会計年度は1,496百万円の使用)。
これは主に、長期借入による収入2,030百万円(前期比570百万円減)があったものの、長期借入金の返済による支出3,038百万円(同177百万円減)及び配当金の支払い798百万円(同41百万円増)等があったことによるものであります。
④生産、受注及び販売の状況
イ.生産実績
当連結会計年度の生産実績をサービス別に示すと、次のとおりであります。
|
サービス別 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
情報処理サービス(千円) |
12,255,034 |
100.9 |
|
システム開発サービス(千円) |
17,155,421 |
109.9 |
|
合計(千円) |
29,410,455 |
106.0 |
(注)金額は、製造原価で表示しております。
ロ.商品仕入実績
当連結会計年度の商品仕入実績は、次のとおりであります。
|
品目 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
コンピュータ関連機器等(千円) |
1,361,296 |
115.8 |
|
合計(千円) |
1,361,296 |
115.8 |
(注)金額は、仕入価格で表示しております。
ハ.受注実績
当連結会計年度の受注実績をサービス別に示すと、次のとおりであります。
|
サービス別 |
受注高 |
前年同期比(%) |
受注残高 |
前年同期比(%) |
|
情報処理サービス(千円) |
17,739,016 |
122.0 |
14,080,057 |
126.3 |
|
システム開発サービス(千円) |
20,979,985 |
98.8 |
6,355,630 |
94.6 |
|
システム機器販売(千円) |
878,097 |
29.4 |
1,157,183 |
61.0 |
|
合計(千円) |
39,597,099 |
102.2 |
21,592,871 |
109.3 |
(注)金額は、販売価格によるものです。
ニ.販売実績
当連結会計年度の販売実績をサービス別に示すと、次のとおりであります。
|
サービス別 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
情報処理サービス(千円) |
14,805,349 |
107.7 |
|
システム開発サービス(千円) |
21,340,395 |
107.7 |
|
システム機器販売(千円) |
1,617,639 |
112.9 |
|
合計(千円) |
37,763,384 |
107.9 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。
②経営成績の分析・検討内容
当連結会計年度の業績は、売上高37,763百万円(前期比7.9%増)、営業利益2,887百万円(同35.6%増)、経常利益2,935百万円(同34.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益2,197百万円(同63.6%増)となりました。
システム開発サービスが好調に推移した上、クラウドサービスや受託計算等を提供している情報処理サービスも引き続き順調に推移した結果、売上高は2期連続で過去最高となりました。
一方で、当連結会計年度は、前期に引き続き、省エネ等を目的とした設備投資を行い、原価低減に努めた上、単価見直しを中心とした適正販売にも努めた結果、前期比で大幅な増益を達成し、過去最高となりました。営業利益、経常利益、及び親会社株主に帰属する当期純利益は、いずれも前期比で増加しております。
イ.売上高
当連結会計年度の売上高は、前期比7.9%増の37,763百万円となりました。
情報処理サービスの売上高は14,805百万円(前期比7.7%増)、システム開発サービスの売上高は21,340百万円(同7.7%増)、システム機器販売の売上高は1,617百万円(同12.9%増)と、いずれのサービスにおいても増収となりました。
情報処理サービスを構成する各種提供サービスの状況は以下のとおりです。
データセンター・クラウドサービスは、DX化推進やIT投資需要の高まりを背景に、既存顧客のデータセンターやクラウドの活用が続いており、売上は好調を維持することが出来ました。ここ数年、拡大してきている顧客の需要に積極的に応えるため、当社グループはデータセンターの能力向上に努めており、サービス展開力を強化しています。サービスステーション(SS、ガソリンスタンド)向けに販売管理システムを提供している受託計算サービスは、社会活動の活発化に伴い、クレジット決済等の課金代行手数料収入が増加していることに加えて、従来オンプレミス型の自社コンピュータを利用していたSSが、当社グループ提供サービスの活用に切り替える事例が増えており、受注は活発に推移し、売上増に貢献しました。メーリングサービスは、プリンティングや郵送サービスの需要が縮小傾向にありますが、当社グループは、ネット配信と郵便との複合型の新しいサービス提供を強化する等、新たな需要の開拓にも努めており、増収基調に復調しました。
システム開発サービスは、当社グループが強みを持つ、金融業・流通業・通信サービス業・エネルギー関連・宇宙関連ビジネス等の分野において、当社グループが持つノウハウや技術力が高く評価されており、これが安定的な受注、売上の計上に繋がっております。
システム機器販売についても、当社グループのデータセンターサービス利用顧客による設備投資が活発化したこと、及びシステム開発に伴う機器販売が好調だったため、順調に推移しました。
ロ.営業利益、営業利益率
営業利益は2,887百万円(前期比35.6%増)、営業利益率は7.6%(同1.5ポイント増)となりました。売上高が前期比で大幅に増加した上、原価と販売価格の改善にも努めた結果、収益性が向上しており、当連結会計年度の営業利益は過去最高となっております。
ハ.営業外損益
営業外収益は、主に受取配当金の増加(前期比16百万円増)及び助成金収入の増加(同5百万円増)等があったことにより、前連結会計年度の106百万円から17百万円増加し、123百万円となりました。
営業外費用は、主に支払利息の減少(前期比7百万円減)等があったものの、投資事業組合運用損24百万円の計上等があったことにより、前連結会計年度の60百万円から15百万円増加し、75百万円となりました。
ニ.経常利益
経常利益は、前連結会計年度の2,175百万円から760百万円増加し、2,935百万円(前期比34.9%増)となりました。主に、営業利益が前連結会計年度より減増加したことに伴うものです。
ホ.特別損益
特別利益は、主に投資有価証券売却益の増加(前期比274百万円増)等があったことにより、前連結会計年度から287百万円増加し、298百万円となりました。
特別損失は、主に本社移転関連損失39百万円の計上、固定資産除却損の増加(前期比17百万円増)及び減損損失30百万円の計上等がありましたが、前連結会計年度で投資有価証券評価損79百万円、固定資産売却損51百万円の計上等があったことにより、前連結会計年度から84百万円減少し、107百万円となりました。
ヘ.親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は経常利益及び特別利益が増加した結果、前連結会計年度の1,343百万円から854百万円増加し、2,197百万円となりました。
③財政状態の分析・検討内容
「(1)経営成績等の状況の概要 ②財政状態の状況」に記載の通りであります。
④資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、外注費や労務費等の製造経費、人件費や賃借料等の販売費及び一般管理費によるものであります。投資を目的とした資金需要は、設備投資によるものであります。運転資金及び投資資金は、主として自己資金及び金融機関からの借入で調達しております。
なお、当連結会計年度末における借入金残高は7,299百万円、リース債務残高は323百万円となっております。また、現金及び現金同等物の残高は5,279百万円となっております。
当社グループのキャッシュ・フロー指標のトレンドは下記のとおりであります。
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2023年3月期 |
2024年3月期 |
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時価ベースの自己資本比率(%) |
62.4 |
104.1 |
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インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍) |
52.1 |
185.7 |
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債務償還年数(年) |
3.7 |
1.1 |
(注)上記指標の計算式は下記のとおりであります。
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時価ベースの自己資本比率 |
: |
株式時価総額/総資産 |
|
インタレスト・カバレッジ・レシオ |
: |
営業キャッシュ・フロー/利払い |
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債 務 償 還 年 数 |
: |
有利子負債/営業キャッシュ・フロー |
該当事項はありません。
当連結会計年度における当社グループの研究活動状況は次のとおりであります。
(1)基盤技術
昨年度から引き続き、ビッグデータにおける3つのV(Volume、Velocity、Variety)に対し柔軟かつ拡張性のあるデータの集配信及び、効率的なデータ分析方法について研究を行いました。また、収集されたデータの付加価値創出のための、AIやデータサイエンスの研究にも取り組んでおります。
本年度も継続して今まで培ってきたクラウド、IoT、データサイエンスの技術を組み合わせた「IoTプラットフォーム(以下、Dream Data Sensing® Platform)」を中核として研究開発を実施しております。
主に本年度ではよりサービス化を意識しDream Data Sensing® Platformをベースとして、本社移転に伴う社内DXをユースケースとして開発研究及びPoCの実施を行いました。研究内容としては以下のとおりです。
①サービスプラットフォーム基盤の実装検証
サービスプラットフォームとしてDream Data Sensing® Platformの構成や機能・性能の検証の実装
②人感センサーと環境センサーを用いた空間モニタリング研究
人感センサーやCO2センサー等を利用した会議室等の空間の利用状況の可視化に向けたIoTデバイスの設計や集約されたデータの分析、その利活用についての研究
③RFID(※)やビーコンを用いた行動モニタリング研究
フリーアドレスにおける位置情報の可視化及び推定アルゴリズムについての研究
④バイタルセンサーを用いた顧客対応分析研究
バイタルセンサーによる感情推定と対応アルゴリズムについての研究
今後、新本社を実フィールドとしてPoCを継続して実施いたします。
また、その他の研究テーマとしましてはDream Data Sensing® Platformをベースとしたその他のユースケース検証、プラットフォームとしてのAI PaaSの検証を引き続き実施してまいります。
(2)社会課題解決への取り組み
(介護タクシー業界を変革するヘルスケアMaaSプロジェクト)
昨今、通常のタクシー業界においてアプリによる配車サービスの導入が加速していますが、介護タクシーについては、仕様・サービスが事業者によって細かく分かれており、利用者のニーズとマッチするタクシーを予約成立させるためのDX推進が欠かせなくなっています。これにより、利用者ニーズの拡大が促され移動の活性化につながるものと考えています。
当連結会計年度においては、当社は、アンケート等をもとに属性別、交通手段別、時間帯別等に分析し、アプリ機能として検討すべき課題を設定、今後の開発に活かすべく、利用促進のためのインターフェース、及び地域浸透・広域展開に関する機能について検討しました。
抽出された課題への対応を通じ、利用者層の拡大に向け完成度を高めてまいります。
なお、当連結会計年度における研究開発費用は、
<用語解説>
(※)RFID(radio frequency identification)
電波を使って離れた場所にある専用タグを、触らずにデータ読み書きする仕組み。