(1)経営の基本方針
[企業理念]
[長期ビジョン]
[行動指針]
(2)経営環境及び対処すべき課題
世界的なカーボンニュートラル社会への移行の潮流から、将来的には石油製品を含む化石燃料の消費減退を 受け、当社主力の石油精製、石油化学関連のプラントメンテナンス・エンジニアリング市場は縮小傾向となると予想されます。一方、新たに再生可能エネルギーへの旺盛な設備投資が見込まれ、この分野への更なる進出が 課題となります。
また、2024年から建設業界にも適用される時間外労働上限規制への対応が求められており、DX技術を活用した業務効率化、生産性を向上させるための更なるICT技術の導入が喫緊の課題です。
当社グループでは、これら課題に対処する一方、中長期的な企業価値向上を目指して、2021年に長期ビジョン「RAIZNEXT Group V-2032」および「第2次中期経営計画 RAIZNEXT SYNERGY POWER」を策定しました。
第2次中期経営計画は2021~2024年度を期間とし、会社統合後の第1次中期経営計画とあわせた累計額で 「完成工事高200億円以上」「経常利益20億円以上」のシナジー効果創出を目指す目標を掲げています。本経営 計画は、①メンテナンス事業の強化、②エンジニアリング事業の強化、③タンク事業の強化、④経営基盤の強化の4本の柱からなり、最終年度である2024年度での目標達成を目指しています。
第2次中期経営計画における進捗は以下のとおりです。
①メンテナンス事業の強化
メンテナンス事業においては、全体最適を目的に組織統合を実施した結果、機動的な人員配置が可能と なり、大規模定期修理工事や新たな工場への参入など受注・収益の拡大を果たしました。
②エンジニアリング事業の強化
エンジニアリング事業においては、新規メガソーラー発電所やグリーンアンモニア製造プラントの建設 工事等、カーボンニュートラル社会に向けた新たな分野の工事受注を積み重ねております。
また、閉鎖製油所の将来計画への積極的な参画に努めています。まずはプラント無害化工事や設備撤去 工事等の基盤整備工事の受注に加え、顧客と協働して新規事業の事業化に向けた検討に積極的に取り組んでおります。電気自動車の普及や社会のIT化などにより需要が旺盛な非鉄金属分野においても、工場の新設 および増設工事を継続して受注しております。
③タンク事業の強化
タンク事業においては、未参入の石油備蓄会社、石油精製会社のタンク工事を新規受注いたしました。 また将来、化石燃料に替わるエネルギーとして期待される水素やアンモニア貯蔵タンクの設計・施工技術の調査・検討にも取り組んでおります。
④経営基盤の強化
経営基盤の強化については、持続的な会社の成長と企業価値向上を目指し、サステナビリティ経営を推し進めるため外部へのESGデータの開示やGHG排出量削減目標(Scope1&2)の策定・開示を行いました。
従業員に対しては、働きやすい職場環境実現のため、工事現場仮設事務所等における 執務環境の改善を継続し、本社においては執務室のフリーアドレス制度の拡大を行いました。老朽化した事業所事務所の建て替えも積極的に進めております。
2024年時間外労働上限規制への対応においては、派遣監督の増員と定期修理工事業務の標準化による業務効率化を進めるなど、全社で 1 年前倒しでの達成を目指した取り組みを行い、明確になった課題について 対処しました。
① 業績計画
第2次中期経営計画最終年度(2024年度 2025年3月期)業績目標
<連結>
② 経営指標の目標値
自己資本当期純利益率(ROE)・・・ 8%以上
連結配当性向 ・・・・・・・・・・40%以上
長期ビジョン、第2次中期経営計画の詳細につきましては、当社ウェブサイトに掲載しておりますので、そちらをご参照願います。(https://www.raiznext.co.jp/)
(1)サステナビリティ経営
サステナビリティ基本方針
レイズネクストグループは、「産業インフラを支える。豊かな未来を拓く。」という企業理念のもと、健全で透明性の高い経営と社会・環境に調和した事業活動を通じて、ステークホルダーの皆さまの信頼をより確かなものにするとともに、社会の持続的発展への貢献と中長期的な企業価値の向上を図るため、積極的にサステナビリティへの取り組みを推進します。
当社は、社会の持続的発展への貢献と中長期的な企業価値の向上を目的として、社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置し、サステナビリティ経営に関する戦略を中心に協議しています。
また、サステナビリティ委員会の下部組織「サステナビリティ推進会議」にて、その戦略に基づく具体的施策の進捗状況の管理等を行う体制としています。
なお、サステナビリティ委員会における協議結果は、取締役会に報告し、取締役会にて適切に監督されています。

② 戦略
2050年へ向けてのカーボンニュートラル社会を目指す世界的潮流において、当社はエネルギー産業を支える会社として、社会的な課題に対する挑戦に貢献できるものと考えております。このようなエネルギー産業の変革の時期を踏まえて、当社は2021年に、長期ビジョンRAIXNEXT Group V-2032を策定し、2032年までの中長期的に目指す“ありたい姿”を掲げ、カーボンニュートラル社会の実現に向けて取り組んでおります。


③ リスク管理
当社は、長期ビジョンの実現に向けて、企業価値向上およびサステナブルな事業をおこなうため、サステナビリティ経営に関わる重要課題(マテリアリティ)を特定しております。特定された重要課題(マテリアリティ)ごとに、リスクを把握したうえで、取り組み項目を決めております。
また、リスクに関しては、全社的リスクマネジメント委員会において、サステナビリティ経営に関わる事項も含めてリスクを管理しております。全社的リスクマネジメント委員会において管理されたリスクの中で、サステナビリティ経営に関わる重要課題(マテリアリティ)に関するリスクは、翌年度のサステナビリティに関する取り組みを決定する際に確認され、必要に応じて取り組み項目に反映しております。
当社は、サステナビリティに関する事業上のリスクを特定したうえで、当社のマテリアリティを選定し、毎年取り組み項目を定めております。2024年度の取り組み項目および指標は以下のとおりです。
環境

社会

ガバナンス

(2)気候変動への対応(TCFD提言への取り組み)
① ガバナンス
・気候変動に関わる基本方針や重要事項、リスク(脅威と機会)などについては、経営企画部管掌役員を議長とする「サステナビリティ推進会議」ならびに社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」で討議・検討・評価します。
・「サステナビリティ委員会」で協議された内容は、取締役会に年1回報告し、取締役会が管理・監督を行います。
・取締役会で報告された内容は、各部門に展開され、それぞれの経営計画・事業運営に反映します。
② 戦略
中長期的なリスクの一つとして「気候変動」を捉え、関連リスクを踏まえた戦略と組織のレジリエンスについて検討するため、当社はIEA(国際エネルギー機関)やIPCC(気候変動に関する政府間パネル)による気候変動シナリオ(2℃シナリオおよび4℃シナリオ)※を参照して、2040年までの長期的な当社への影響を考察し、メンテナンス事業とエンジニアリング事業を対象にシナリオ分析を実施しました。
※2℃シナリオ(移行):気温上昇を最低限に抑えるための規制の強化や市場の変化などの対策が取られるシナリオ
4℃シナリオ(物理):気温上昇の結果、異常気象などの物理的影響が生じるシナリオ


③ リスク管理
・気候変動リスクの優先順位付けとして、リスクの自社への発生可能性と影響度の大きさを勘案しながら、重点リスク要因に注力して取り組みます。
・気候変動リスクの管理プロセスとして、「サステナビリティ委員会」を通じて、気候変動リスクに関する分析、対策の立案と推進、進捗管理等を実践していきます。
・「サステナビリティ委員会」で分析・検討された内容は、経営会議に報告後、取締役会に報告し、全社で統合したリスク管理を行います。
④ 指標と目標
・気候変動リスクが経営に及ぼす影響を評価・管理するため、温室効果ガス(GHG:Greenhouse Gas)の排出量を指標とします。従来からの取り組みに加えて、再生可能エネルギーや新エネルギー関連技術の導入、脱炭素の資材や機材の使用等で、脱炭素社会への貢献に向けて取り組んでいきます。
・対象範囲をレイズネクスト株式会社および連結子会社とし、当社グループは自社の事業活動に関わるScope1とScope2の排出量について、2030年度までに2021年度比で30%の削減を目指します。

(注)記載事項のうち将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、入手可能な情報等に基づいて基づいた予測です。
(3)人的資本
当社は、企業理念や行動基準、行動指針をきちんと認識し、コンプライアンスや社会規範を守りながら、既存の枠組みに捉われず、新たな発想で積極的に挑戦できる人材を継続的に育成しています。また、従業員ひとりひとりの個性、考え方、ライフプラン等を尊重し、個々の成長に向けた自主的な取り組みを積極的に支援する体制を整備しています。
具体的には、「マルチステークホルダー方針」に基づき経営資源を有効に活かし企業価値を向上させるため、人事部に採用育成グループを設置し、体系的な知識や専門的なスキルを身につける教育を実施するとともに、自己啓発を奨励する制度を整えております。また、当社事業の核である監督者育成については、工務部に教育・訓練グループを設置し、個人の力量に応じた各種技術研修を実施することで、施工管理能力の維持・向上を図っております。
① ガバナンス
当社は、年に2回教育訓練検討会議を開催し、教育・訓練の基本方針、教育・訓練計画などを協議しております。
本協議に基づき策定された教育訓練計画は年に2回開催される拡大マネジメントレビュー会議にて、経営層に共有しております。
② 人材育成の方針
当社にとって、最大の資産は「人」です。「生涯育成」をテーマに、新入社員からベテラン社員までの全階層に、さまざまな成長の機会を提供しています。
その一つとして、技術系社員については、入社後6年目までの教育プログラムを策定し、当社事業の柱でメンテナンスとエンジニアリングの両事業で活躍できる監督者の早期育成に努めております。


③ 社内環境整備方針
当社は、企業理念(『産業インフラを支える。豊かな未来を拓く』)の実現に向けて、従業員それぞれの人格や 性別、年齢、国籍、思想信条、宗教、障がいの有無、人権、ライフステージ等の多様性を尊重し、ワークライフバランスと心身の健康を保ち、安全、安心で、やりがいをもって働ける社内環境(労働環境や諸制度など)を整備しています。
また、既存の取り組みに捉われず、新たな発想で積極的に挑戦できる人材を計画的に育成するために、従業員がお互いを高め合いながら、自主的に努力を継続でき、成果が適正に評価される仕組みをつくっています。
具体的には、テレワークや男性の育児休業取得を推進し働きやすい環境を整えることで、従業員の定着化および多様な人材の確保を図っております。さらに、企業理念や経営戦略の共有、社員の多様な意見の吸い上げを図るべく、社長と若手社員の意見交換会を、また、女性活躍推進という観点から、女性社員と経営者との意見交換を実施しております。加えて、経営統合後、従業員意識アンケートを3度実施し、その結果を踏まえて、社員が、より力を発揮できる働きやすい環境への改善を進めております。
④ 指標と目標・実績
2024年度の指標としては、前述当社サステナビリティにおける指標および目標に記載のとおり、マテリアリティ「全ての人にとって、働きがいのある魅力的な職場環境の実現」への取り組みとして、人材育成、社内環境整備への取り組み項目、KPIを掲げております。
当事業年度の実績
(注)1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。
2.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第2号における育児休業等の所得割合を算出したものであります。
3.なお、連結子会社については、一部の会社のみが具体的取組を行っているため、上記の実績は提出会社のみを記載しております。
当社グループの事業に関するリスクについて、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある主な事項には、以下のような項目があります。なお、当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生回避および発生した場合の対応に努める所存であります。なお、これらの項目のうち、将来に関する事項は当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(2) 特定の取引先・製品・技術等への依存
(3) 特有の法的規制・取引慣行・経営方針
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度のわが国経済は、持ち直しに足踏みがみられるものの、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の効果もあり、緩やかに回復しています。他方、世界的な金融引締めに伴う影響や中国経済の先行き懸念など、海外景気の下振れが国内景気を下押しするおそれと、物価上昇、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動等のリスクが懸念される状況が続いております。
当社を取り巻く事業環境につきましては、石油製品の構造的な需要減少と中国の内需減少による石化製品の市況悪化により、需要回復には至っておりません。一方で、政府は「GX実現に向けた基本方針」を公表し、産業界ではカーボンニュートラル社会実現に向けた新たな設備投資計画が打ち出され始めております。また建設業界においては、工事従事者の不足が顕在化している中、2024年度からは長時間労働規制の導入が予定されており、建設現場の働き方改革へ向けた対応が喫緊の課題となっております。
当社グループにおきましては、受注高は前期比で増加しました。メンテナンス分野では定期修理工事の増加を主な要因として前期比で増加しました。また、エンジニアリング分野では前期と同様に大型工事の受注があったことにより前期と同水準になりました。完成工事高は前期と同水準となりました。メンテナンス分野では受注高と同様に定期修理工事の増加を主な要因として、前期比で増加しました。また、エンジニアリング分野では改造工事や新規設備工事が減少したため、前年同期に比べ減少しました。完成工事総利益は複数の高採算工事の計上があった前期からの反動のため、前期比で減少しました。
(財政状態)
当連結会計年度末の資産合計は、1,107億46百万円で前連結会計年度末より、34億22百万円減少しました。これは、建物及び構築物が15億74百万円増加したものの、現金及び預金が53億10百万円減少したこと等によるものであります。
当連結会計年度末の負債合計は、266億22百万円で前連結会計年度末より、42億62百万円減少しました。これは、支払手形・工事未払金が14億98百万円、その他が29億27百万円それぞれ減少したこと等によるものであります。
当連結会計年度末の純資産合計は、841億23百万円で前連結会計年度末より、8億40百万円増加しました。これは、その他有価証券評価差額金が7億46百万円増加したこと等によるものであります。
(経営成績)
当社グループの連結の業績は、受注高1,517億81百万円(前期比9.3%増)、完成工事高1,403億66百万円(前期比0.2%増)、営業利益99億68百万円(前期比8.7%減)、経常利益102億61百万円(前期比8.7%減)、親会社株主に帰属する当期純利益72億49百万円(前期比6.4%減)となりました。
当社単体の業績は、受注高1,441億93百万円(前期比9.8%増)、完成工事高は1,325億44百万円(前期比0.2%増)、営業利益91億30百万円(前期比8.3%減)、経常利益96億11百万円(前期比8.1%減)、当期純利益67億14百万円(前期比8.8%減)となりました。
受注高の工事種類別内訳 (単位:百万円)
完成工事高の工事種類別内訳 (単位:百万円)
(注)その他事業は、不動産の賃貸業務等であります。
当連結会計年度末における連結ベースの現金および現金同等物は、前期末に比べ53億12百万円(前期比29.9%)減少し、期末残高は124億46百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、35億65百万円となり、前連結会計年度に比べ65億4百万円の減少になりました。主な支出は、未払消費税等の減少額36億50百万円、法人税等の支払額35億12百万円、主な収入は、税金等調整前当期純利益104億77百万円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、△17億38百万円となり、前連結会計年度に比べ1億42百万円の減少となりました。主な支出は、有形及び無形固定資産の取得による支出25億48百万円、主な収入は、有形及び無形固定資産の売却による収入5億75百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、△71億81百万円となり、前連結会計年度に比べ38億99百万円の増加となりました。これは主に、自己株式の取得による支出17億91百万円と配当金の支払額53億43百万円によるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
事業セグメント別
事業セグメント別
工事種類別
(注) 1 当社グループでは、エンジニアリング業以外は受注生産を行っておりません。
2 当社グループでは、生産実績を定義することが困難であるため「生産の状況」は記載を省略しております。
3 主な相手先別の完成工事高および総完成工事高に対する割合は、次のとおりであります。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 重要な会計方針および見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、期末日現在の資産、負債および期間中の収益、費用の報告額に影響する判断および見積りが要求され、過去の実績および状況に応じて合理的と考えられる様々な要因に基づいて行っております。
当社グループは特に以下の会計方針の適用において見積り特有の不確実性があるため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合もあります。
1)貸倒引当金
当社グループは、債権の貸倒れによる損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等の特定の債権については、保守的に見積った回収不能見込額を貸倒引当金として計上しております。
取引先の財政状態および業績が見込以上に悪化した場合等、貸倒懸念債権等の特定の債権の回収可能性の見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、来期以降の連結財務諸表において貸倒引当金の追加計上が必要となる可能性があります。
2)工事損失引当金
当社グループは、受注工事に係る将来の損失に備えるため、当連結会計年度末における未引渡工事のうち損失の発生が見込まれ、かつ、その金額を合理的に見積もることができる工事について、損失見込額を工事損失引当金として計上しております。
実際の工事施工状況が予定から乖離する等、工事損失発生の見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、来期以降の連結財務諸表において工事損失の追加計上が必要となる可能性があります。
3)完成工事補償引当金
当社グループは、完成工事に係る瑕疵担保等の費用に備えるため、過去の経験割合に基づく一定の算定基準を基礎に、期末日現在において予定されている瑕疵担保等の費用を合理的に見積った補償見込額を加味して完成工事補償引当金として計上しております。
瑕疵担保等の費用の見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、来期以降の連結財務諸表において補償損失の追加計上が必要となる可能性があります。
4)退職給付に係る負債
当社グループは、従業員の退職給付に備えるため、見積りを反映した各種の仮定に基づく数理計算により算出された退職給付に係る負債を計上しております。
これらの各種仮定には、割引率、長期期待運用収益率、予想昇給率等が含まれており、実際の結果が見積りの前提と異なる場合、または前提が変更された場合、来期以降の連結財務諸表において退職給付債務および費用に影響する可能性があります。
5)繰延税金資産
当社グループは、期末日後将来的に発生する課税所得を見積り、当該課税所得に係わる税金負担を軽減する効果を有すると判断した回収可能額を繰延税金資産として計上しております。
将来課税所得の見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、来期以降の連結財務諸表において繰延税金資産の調整額の計上により損益に影響する可能性があります。
6)収益及び費用の計上基準
当社グループは、履行義務の充足に係る進捗度の合理的な見積りができる工事については、一定期間にわたり履行義務が充足されると判断し、履行義務の充足に係る進捗度に基づき収益を認識しております。進捗度は、当連結会計年度末までの既発生原価累計額を工事完了までの見積総原価と比較することにより測定しております。また、履行義務の充足に係る進捗度の合理的な見積りができない工事については、原価回収基準、工事期間が短いメンテナンス工事については、完全に履行義務を充足した時点で収益を認識しております。
実際の工事施工状況が予定から乖離する等、工事収益総額および工事原価総額の見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、来期以降の連結財務諸表において工事損益に影響する可能性があります。
7)固定資産の減損
当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産または資産グループについては、当該資産または資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減損し、当該減少額を減損損失として計上しております。
減損の兆候の把握、並びに減損損失の認識および測定の前提となる割引前将来キャッシュ・フローの見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、来期以降の連結財務諸表において減損損失の追加計上が必要となる可能性があります。
1) 経営成績等の状況
当社グループの当期の経営成績は、受注高1,517億81百万円(前期比9.3%増)、完成工事高1,403億66百万円(前期比0.2%増)、営業利益99億68百万円(前期比8.7%減)経常利益102億61百万円(前期比8.7%減)、親会社株主に帰属する当期純利益72億49百万円(前期比6.4%減)となりました。
ア 受注高および完成工事高
受注高が前期比で129億32百万円増加となった要因は、メンテナンス分野で定期修理工事が前期比で増加したことによるものです。完成工事高が前期比で3億4百万円増加となった要因は、エンジニアリング分野では改造工事や新規設備工事が減少したものの、メンテナンス分野では定期修理工事の工事量が増加したことによるものです。
イ 営業利益
営業利益は、総利益が複数の好採算工事があった前期からの反動のため前期比で減少となったことにより、前期比9億49百万円減少の99億68百万円となりました。
ウ 経常利益
経常利益は、営業外損益において収支差し引きでプラス2億92百万円となり、前期比9億82百万円減少の102億61百万円となりました。
エ 親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は、前期比で4億91百万円減少の72億49百万円となりました。
経営成績に重要な影響を与える要因については、「3事業等のリスク」に記載したとおりであります。当社グループを取り巻く環境は、石油業界では、国内需要の低下により、製品需要は減少傾向が継続するものの、閉鎖製油所や遊休地の有効活用に向けた基盤整備工事の需要が新たに発生するものと予想され、これら需要の取り込みが当社の課題と考えております。
当社グループの当期末における現金および現金同等物は、前期末に比べ53億12百万円(29.9%)減少し、期末残高は124億46百万円となりました。概要については「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
当期におけるキャッシュ・フロー施策として、新規分野、新規事業への参入を行い、健全なキャッシュ・フローを維持できる収益の確保に努めてまいりました。
また、金融機関との取引関係の維持、調達先の分散など、資金調達リスクを軽減するため様々な対策をとっております。
当社グループは、「1経営方針、経営環境及び対処すべき課題」に記載したとおり、将来の事業環境を踏まえ、2021年3月に「2032年度までに当社グループがありたい姿」を描いた長期ビジョンである「RAIZNEXT Group V-2032」を策定いたしました。また、あわせて2021~2024年度を対象とする「第2次中期経営計画-RAIZNEXT SYNERGY POWER」を策定いたしました。第2次中期経営計画は、第1次中期経営計画に続く「シナジー効果の創出」の期間であるとともに、長期ビジョンの実現に向けたファーストステップと位置付けております。
該当事項はありません。
当社グループの研究開発活動は、当社が顧客に提供するソリューション・サービスに係る技術力の強化を目指して取り組んでいるものであります。
当連結会計年度は第2次中期経営計画の3年目として、「メンテナンス事業の強化」をキーワードに活動を展開しました。具体的には、作業の非熟練化、軽労化、作業の機械化および現場業務のIT化を踏まえ、DX(Digital Transformation)の推進を目指し、各種先進技術の活用・導入を図ってまいりました。
なお、当期の研究開発費の総額は
(1)メンテナンス作業の機械化
既存技術の付加価値向上に加え、作業員の非熟練化、軽労化および安全性の向上を目的とした作業の機械化に取り組みました。
①熱交換器チューブバンドルのリチュービング作業に関連する技術
技術者不足の懸念がある熱交換機チューブバンドルのリチュービング作業への取組みを行いました。当期においては、抜管用機材であるMAUS社製GRIPPULに対する当社保有訓練施設を活用した評価を行うとともに、リチュービングの付帯作業の1つであるシール溶接を自動で行う溶接機を導入し、同様に評価を実施しました。また、ロボットアームによる自動拡管機を当社千葉工場に設置し、次期に評価を行う計画です。次期ではこれらの活動を継続しつつ、既存製品を活用した現場作業の効率化を計画しており、当社オリジナル製品の開発も含めてリチュービング作業に適した機材のパッケージング化を行う事で、安定した品質の確保を目的に活動を進めてまいります。
②熱交換器内面洗浄の自動化検証
作業者の高齢化が顕著な高圧水を使用した洗浄作業において、当期は熱交換器の内面洗浄の自動化の検証を行いました。前期末に導入した自動洗浄機は事前に熱交換器のチューブ配列の寸法を入力する事で、半自動的に洗浄作業を行えるもので、アジア圏で初導入になるものです。今期はこれらの現場適用を行い、改良点の抽出や、優位性について評価を実施しました。次期では上記自動洗浄機の導入・普及を中心に、3Dスキャニング技術を活用し、さらに進んだ自動化技術について検証を進め、機械による安全で高品質な洗浄作業の普及を目指してまいります。
③配管切断技術
以前より活動を実施しているウォータージェットを利用した切断機に関して、配管の外径に限定されていた工具をフレキシブルに対応すべく専用機材の設計を行い、現在改善と検証を行っております。すでに機材が安定的に稼働し、適用実績も増えてきたことから、当社関連会社の港南通商株式会社へ移管を行い、コールドカッティング技術による切断作業の普及を図ってまいります。
④タンク工事に向けた自動溶接の適用範囲拡大
当期においてはタンク側板自動溶接の適用範囲を縦継手まで拡大すべく、溶接条件の検討並びに実験を行ってまいりました。板厚による溶接条件の確立や安定した溶接の品質確保を目標に今後も継続して取り組む計画です。また、需要が高まる低温タンクへの適用についても、同技術を生かして、取り組みを進めております。
(2)現場業務のIT化
現場で必要となる情報の一元化、情報取得の省力化等により、現場管理業務を効率化するとともに業務品質を向上させることを目指して、ITツールの開発とその活用法に取り組みました。
①プロット情報共有システム
当社が自社開発した通行止め情報等を共有する、プロット情報共有システム(SKY-Ai)は、多くの定期修理工事現場において、取引先に活用いただいております。当該システムの開発、運用から7年が経過したことから、今期、最新のITを活用してこれまで以上にユーザーフレンドリーなシステムにすべく抜本的に見直しに取組み、新たにSKY-AiRとしてリリースしました。次期の2024年度においては、試験運用を進め段階的に現場への導入と適用拡大を図り、試験運用にて得た課題等について、継続的に改修、機能追加を行ってまいります。また、同じく当社が自社開発した工事情報共有システム(SPIRIT)や、その他の社内システムと連携を見据えたシステムとする事で、社内業務の効率化を図ってまいります。
②プロジェクト可視化に向けたシステム開発
現在、工事のプロジェクト情報は、Excel等で個別に管理されているケースがほとんどであり、全体的に確認する方法がありません。また、各プロジェクトに付随する、監督者数や協力会社の動員計画人数および実績人数等は、膨大なデータ量であり、それらの確認や比較に非常に手間と時間を要しております。そこでプロジェクト情報を一元的に可視化することで、社内全体のプロジェクト状況を容易に把握できるようにし、データを俯瞰して分析することで、工事の状況把握を行い、トラブルの予測や原因究明、対策立案にいち早く対処できるようなシステムを構築すべく、ダッシュボード機能を有する既存システムを活用し、導入効果の検証に着手いたしました。
③画像認識技術の活用に向けた基礎研究
近年、現場で優先されるべき安全品質に関してトラブルが増加傾向にあり、それらの対応策の1つとして、現場管理の「目を増やす」ことを目的とし、クラウド型携帯カメラsafie等のカメラ導入を進めてまいりました。しかし、カメラのみでは監視や記録がメインとなり、リアルタイムでトラブルを防止することが難しいことから、画像認識技術を用いて、安全品質の向上を目指すべく、既存製品の調査検証に着手いたしました。
④溶接施工管理分野へのICT導入
重大な溶接施工品質トラブルを未然に防止するため、多くの管理項目や書類作成業務を抱える溶接検査業務にICTを導入し、品質保証並びに品質確保を行うべく、実業務の洗い出しと課題を抽出し、その結果から理想とする姿を描き、実現に向けたロードマップの作成と既存技術調査並びにシステム開発に向けた検証作業に着手しました。次期はシステムの本開発やDB構築に向けた検討を行い、溶接検査業務の効率化を図ってまいります。
当社グループの主要顧客である石油業界や石油化学業界においては、既存プラント設備の老朽化が進み、安全・安定操業に対するニーズの高まりや経年劣化による事故・トラブルの未然防止への取組みに加え、先進技術を活用したスマート保安の動きが広がりを見せるなど、プラントメンテナンスの重要性がますます高まっております。このような事業環境において、当社のようなメンテナンス請負企業に対する労働安全、品質管理への要求が厳しくなっていることに加え、先進技術の活用による生産性向上に対する要求も強まってきています。さらに社内においては時間外労働時間の削減が重要課題となっており、業務効率化を含めた働き方改革が早急に求められております。
当社グループはこれからも、こうした顧客ニーズや事業環境の変化に対応するため、研究開発活動を実施してまいります。研究開発のテーマ選定にあたっては、これまでどおり国内のみならず欧州や米国等における技術および市場調査の成果を有効に活用するほか、第2次中期経営計画に掲げたDXの推進に向けて、他部署との連携を強化し、デジタル技術や先進技術を活用したテーマを積極的に推進してまいります。